(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】雲台、撮像装置及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G03B 17/56 20210101AFI20240805BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20240805BHJP
H04N 5/222 20060101ALI20240805BHJP
H04N 23/695 20230101ALI20240805BHJP
【FI】
G03B17/56 B
G03B15/00 S
G03B15/00 P
G03B17/56 Z
H04N5/222 100
H04N23/695
(21)【出願番号】P 2020188714
(22)【出願日】2020-11-12
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】大山 勇己
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0100341(US,A1)
【文献】特開2009-065298(JP,A)
【文献】特開2007-121575(JP,A)
【文献】中国実用新案第210510961(CN,U)
【文献】特開2012-032636(JP,A)
【文献】特開2009-055076(JP,A)
【文献】特開平9-304831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/56
G03B 15/00
H04N 5/222- 5/257
H04N 23/00
H04N 23/40 -23/76
H04N 23/90 -23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラユニットを所定方向に回転させるための回転駆動部を有し、
前記回転駆動部は、駆動源と、駆動伝達手段を介して前記駆動源に係合する第1の減速機構と、前記第1の減速機構に係合し、前記カメラユニットを前記所定方向に回転させる第2の減速機構と、前記第1の減速機構に配置され、前記第1の減速機構の回転角度を検出する回転角度検出手段と、を有することを特徴とする雲台。
【請求項2】
前記回転角度検出手段は、それぞれ発光部及び受光部を備える複数のフォトインタラプタと、前記第1の減速機構の回転中心に対して所定の角度ごとに設けられ、前記フォトインタラプタの前記発光部の発した光を遮ることが可能な複数の遮光部を備え、
前記複数のフォトインタラプタは所定の回転位相差を持って離間して配置され、それぞれのフォトインタラプタの受光状態と遮光状態の組み合わせによって前記回転角度を検知することを特徴とする請求項1に記載の雲台。
【請求項3】
前記回転位相差は(nθ+θ/2)°、ただしnは整数、であることを特徴とする請求項2に記載の雲台。
【請求項4】
前記カメラユニットを前記所定方向に回転させるための駆動信号が出ていない状態において、
前記カメラユニットが前記所定方向に回転したことを前記回転角度検出手段が検出した場合、回転検知信号を発することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の雲台。
【請求項5】
前記駆動源から前記第1の減速機構へ駆動力を伝達する前記駆動伝達手段はタイミングベルトを含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の雲台。
【請求項6】
前記第1の減速機構ははすば歯車を含み、
前記第2の減速機構は前記第1の減速機構のはずば歯車に対して共に係合する、第1のはすば歯車と第2のはすば歯車を含み、
前記第1の減速機構のはずば歯車の回転軸方向に沿って、前記第1のはすば歯車と前記第2のはすば歯車を相対的に付勢する付勢手段を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の雲台。
【請求項7】
前記所定方向はパン方向とチルト方向の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の雲台。
【請求項8】
前記回転駆動部はパン回転駆動部とチルト回転駆動部を含み、前記パン回転駆動部と前記チルト回転駆動部とは、それぞれ前記駆動源と、前記第1の減速機構と、前記第2の減速機構と、前記回転角度検出手段と、を有することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の雲台。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の雲台に装着された前記カメラユニットを有する撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラユニットを所定方向に回転するための雲台等に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ鏡筒が回転するレンズ鏡筒回転型の撮像装置として、テレビ会議用のビデオカメラや、監視カメラがある。これらのカメラは、周囲を見渡すために水平方向(以下、パン方向)及び垂直方向(以下、チルト方向)に回転できるようになっている。また、被写体を撮影画角の中心にとらえるように、レンズ鏡筒を被写体に向けてパン方向及びチルト方向に回転できるようにするとともに、レンズ鏡筒の回転状態(回転の有無や回転の現在位置)を検知できるようにしている。
【0003】
特許文献1では、カメラユニットをチルト方向に回転させるチルト駆動機構を、カメラユニットを支えるひとつの支柱内に配置して、カメラユニットを支えるもう一方の支柱内に大型のエンコーダ機構を配置している。それによって、高精度にカメラユニットの回転状態を検知する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、カメラユニットをチルト方向に回転させるチルト回転機構を、カメラユニットを支える支柱内に配置して、もう一方の支柱内にエンコーダ機構を配置している。よって、エンコーダを配置するためのスペースが必要となり、装置全体が大型化してしまうおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、上記の問題を改良し、大型化することなく、高精度な回転検知が可能な雲台や撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明における雲台は、
カメラユニットを所定方向に回転させるための回転駆動部を有し、
前記回転駆動部は、駆動源と、駆動伝達手段を介して前記駆動源に係合する第1の減速機構と、前記第1の減速機構に係合し、前記カメラユニットを前記所定方向に回転させる第2の減速機構と、前記第1の減速機構に配置され、前記第1の減速機構の回転角度を検出する回転角度検出手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、大型化することなく、高精度な回転検知が可能な雲台や撮像装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例における撮像装置の正面斜視図である。
【
図2】本発明の実施例における撮像装置の内部構造を示す部分斜視図である。
【
図3】本発明の実施例における撮像装置の内部構造を示す底面図である。
【
図4】本発明の実施例における撮像装置のチルト回転検知部を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施例における撮像装置のフォトインタラプタとチルト回転検知リングの関係を示す図である。
【
図6】本発明の実施例における撮像装置のチルト回転検知リングが時計回りに回転したときのフォトインタラプタの受光状態と遮光状態を示す説明図である。
【
図7】本発明の実施例における撮像装置において意図せず回転動作をしたこと検知するフローを示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施例における撮像装置のパン回転検知部を示す斜視図である。
【
図9】本発明の実施例における撮像装置のフォトインタラプタとチルト回転検知リングの関係を示す図である。
【
図10】本発明の実施例における撮像装置のパン回転検知リングが時計回りに回転したときのフォトインタラプタの受光状態と遮光状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について実施例を用いて説明する。なお、各図において、同一の部材ないし要素については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略ないし簡略化する。
また、実施例においては、撮像装置としてライブ配信等に用いるネットワークカメラにパン、チルト用の雲台を組み合わせた例について説明する。しかし、撮像装置はデジタルスチルカメラ、デジタルムービーカメラ、カメラ付きのスマートフォン、カメラ付きのタブレットコンピュータ、車載カメラなどの撮像機能を有する電子機器等を含む。
【0011】
以下、
図1~10を参照して、本発明の実施例における撮像装置及び回転検知機構について説明する。
図1は、本発明の実施例における撮像装置の正面斜視図である。
撮像装置としてのビデオカメラ(ネットワークカメラ)1は、ベース部30の下面(設置面)を卓上や天井に設置することによって取り付けられ、ネットを介してライブ配信等に用いられる。
【0012】
ベース部30は回転部20を水平方向(パン方向)に回転可能に支持している。また、回転部20はレンズユニット10を垂直方向(チルト方向)に回転可能に支持している。ここでベース部30、回転部20によってカメラユニットをパン、チルト回転させるための雲台が構成されている。なお、カメラユニットは雲台から簡単に着脱できる構成にしてもよい。
【0013】
そして、レンズユニット10には、撮像用のレンズ鏡筒11等が取り付けられている。なお、本実施例ではベース部30の下面(設置面)に対して水平方向(パン方向)の回転軸が垂直になるように設定されている。しかし、ベース部30の下面(設置面)に対して水平方向(パン方向)の回転軸が垂直でなくてもよいのは言うまでもない。
【0014】
また、水平方向(パン方向)、垂直方向(チルト方向)の回転とは、ビデオカメラ1の設置面が例えば卓上や天井等の略水平面に取り付けられた場合に、略水平方向、略垂直方向に回転するように設定されていることを意味している。仮にビデオカメラ1の設置面が、水平に対して所定角度傾いた面に取り付けられた場合には、水平方向(パン方向)、垂直方向(チルト方向)の回転はそれぞれ水平または垂直に対して前記所定角度傾いた回転となる。
【0015】
回転部20は
図1における垂直軸を回転中心として水平方向(パン方向)に回転する。また、レンズユニット10は
図1に示す水平軸を回転中心として垂直方向(チルト方向)に回転する。このとき、垂直軸および水平軸はレンズ鏡筒11の光軸と交差するように設定されている。従って、回転部20の回転にともなってレンズユニット10が回転してもレンズ鏡筒11の光軸は常に垂直軸と水平軸を通る。
【0016】
次に、本実施例におけるビデオカメラ1のレンズユニット10の回転駆動機構について
図2を用いて説明する。なお、回転駆動機構はカメラユニットを所定方向に回転させるための回転駆動部として機能している。また本実施例ではパン方向の回転とチルト方向の回転の両方ができる構成について説明するが一方の方向の回転だけができるものであってもよい。
図2は、本実施例における撮像装置の内部構造を示す部分斜視図である。説明上不要で図が煩雑になるものは省略している。
【0017】
図2に示すように、レンズユニット10は、レンズ鏡筒11の光軸が水平軸(チルト方向の回転中心軸)と交差するようにしてレンズシャーシ12に支持されており、レンズシャーシ12は、チルト方向への回転のための回転軸13を備えている。そして、回転軸13は、チルト方向の回転中心軸である水平軸と一致するように回転部20に備えられたチルトシャーシ21に回転可能に支持されている。
【0018】
そのため、レンズシャーシ12の回転軸13を介してチルトシャーシ21に支持されているレンズ鏡筒11は、レンズシャーシ12と一体となってチルトシャーシ21に対してチルト方向に回転する。
【0019】
また、チルトシャーシ21は、パン方向の回転中心軸である垂直軸を中心として、ベース部30に対して回転可能に支持されている。したがって、レンズ鏡筒11は、レンズ鏡筒11の光軸が垂直軸(パン方向の回転中心軸)と交差しつつ、レンズシャーシ12、チルトシャーシ21と一体となってベース部30に対してパン方向に回転する。
【0020】
このように、レンズ鏡筒11は、水平軸を中心に、
図1に示すベース部30に対して、レンズシャーシ12と一体となってチルト方向に回転可能になっている。また、レンズ鏡筒11は、垂直軸を中心に、
図1に示すベース部30に対して、レンズシャーシ12及びチルトシャーシ21と一体となってパン方向に回転可能になっている。
【0021】
レンズ鏡筒11の後方には不図示の撮像素子が取り付けられる。撮像素子は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)デバイスやCCD(Charge Coupled Devices)等である。レンズ鏡筒11をチルト方向やパン方向に回転させれば、光軸方向に沿ってレンズ鏡筒11に入射した光が撮像素子の撮像面に結像する。そして、光学像が電荷分布に変換されて蓄積され、電気信号として読出される。これによって、レンズ鏡筒11の向いている方向の被写体を撮像し出力することができる。
【0022】
ここで、チルト回転駆動機構40について説明する。
チルト回転駆動機構40は、駆動源としてのチルトモータ41、防振ダンパ42、チルトモータ41に係合する駆動伝達手段としてのタイミングベルト43、歯付きプーリ44、テンションプーリ45、第1チルト歯車46、第2チルト歯車47等からなる。そして、チルト回転駆動機構40はすべてチルトシャーシ21の左側面(
図2中右手前側)に配置されており、チルトモータ41が防振ダンパ42を介してチルトシャーシ21に取り付けられている。
【0023】
チルトモータ41から発生する回転駆動力はタイミングベルト43を介して歯付きプーリ44に伝達される。このとき、タイミングベルト43の張力は、テンションプーリ45によって調整されている。
また、歯付きプーリ44の回転軸に設けられた歯車68(
図4参照)と第1チルト歯車46及び第2チルト歯車47とが噛み合っており、第1チルト歯車46は、レンズシャーシ12の回転軸13に連結されている。
【0024】
ここで、歯付きプーリ44の歯車68と第1チルト歯車46及び第2チルト歯車47の歯合部は、はすば歯車形状をしており、第1チルト歯車46及び第2チルト歯車47はそれぞれ第1のはすば歯車、第2のはずば歯車として機能している。
【0025】
第1チルト歯車46及び第2チルト歯車47は、歯付きプーリ44の歯車68にそれぞれ歯合するとともに平行に配置されている。また、第2チルト歯車47は、回転軸13に沿って移動可能に配置され、不図示のばねによって第1チルト歯車46の方向に付勢されている。即ち、第1のはすば歯車と第2のはすば歯車を相対的に付勢する付勢手段(ばね等)を有する。したがって、歯付きプーリ44の歯車68と第1チルト歯車46及び第2チルト歯車47は、どちらの方向に回転した場合でも常に歯車同士が噛み合いバックラッシを発生させずに駆動を伝達することができる。
【0026】
したがって、チルト回転駆動機構40のチルトモータ41を駆動させれば、その駆動力がタイミングベルト43によって歯付きプーリ44に伝達される。チルトモータ41から歯付きプーリ44にかけて回転速度が減速(一段目)され、さらに歯付きプーリ44から第1チルト歯車46及び第2チルト歯車47にかけて回転速度が減速(二段目)される。ここでタイミングベルト43、歯付きプーリ44によって第1の減速機構が構成されており、歯付きプーリ44の歯車68、第1チルト歯車46及び第2チルト歯車47によって第2の減速機構が構成されている。
【0027】
それによって、回転軸13を中心としてレンズシャーシ12及びレンズ鏡筒11をチルト方向に細かい回転角度で回転させることが可能になる。また、二段減速したうえでチルトモータ41の駆動力が伝達されるので、レンズ鏡筒11が4K画質等の高画質に対応した大きくて重い構成であっても、チルト方向にスムーズに回転駆動することができる。
また、防振ダンパ42及びタイミングベルト43によって駆動による振動や騒音の発生を低減することが出来る。
【0028】
なお、66は、フォトインタラプタ、67は、レンズシャーシ12と一体となって可動する遮光部であり、両者によって、レンズ鏡筒11のチルト方向の回転の基準となる水平基準位置を検知するように構成されている。なお、この実施例では、ベース部30の下面(設置面)に対してレンズ鏡筒11が平行となる回転位置が水平基準位置として設定されている。
【0029】
次に、パン回転駆動機構50について説明する。
図3は、実施例における撮像装置の内部構造を示す底面図である。
パン回転駆動機構50は、駆動源としてのパンモータ51、防振ダンパ52、パンモータ51に係合する駆動伝達手段としてのタイミングベルト53、歯付きプーリ54、テンションプーリ55、第1パン歯車56、第2パン歯車57等からなる。
【0030】
また、パン回転駆動機構50はベース部30の内部に配置されており、パンモータ51が防振ダンパ52を介してベース部30に取り付けられ、パンモータ51から発生する回転駆動力はタイミングベルト53を介して歯付きプーリ54に伝達される。このとき、タイミングベルト53の張力はテンションプーリ55によって調整されている。
【0031】
また、歯付きプーリ54の回転軸に設けられた歯車76(
図8参照)と第1パン歯車56及び第2パン歯車57とが噛み合っており、第1パン歯車56は、チルトシャーシ21の垂直軸に連結されている。ここで、歯付きプーリ54の歯車76と第1パン歯車56及び第2パン歯車57の歯合部は、はすば歯車形状をしており、第1パン歯車56及び第2パン歯車57はそれぞれ第1のはすば歯車、第2のはずば歯車として機能している。
【0032】
第1パン歯車56及び第2パン歯車57は、歯付きプーリ54の歯車76にそれぞれ歯合するとともに平行に配置されている。また、第2パン歯車57は、チルトシャーシ21の垂直軸に沿って移動可能に配置され、不図示のばねによって第1パン歯車56の方向に、付勢されている。
【0033】
このように第1のはすば歯車と第2のはすば歯車を相対的に付勢するばね等の付勢手段を有する。したがって、歯付きプーリ54の歯車76と第1パン歯車56及び第2パン歯車57は、どちらの方向に回転した場合でも常に歯車同士が噛み合いバックラッシを発生させずに駆動を伝達することができる。
【0034】
したがって、パン回転駆動機構50のパンモータ51を駆動させれば、その駆動力がタイミングベルト53によって歯付きプーリ54に伝達される。パンモータ51から歯付きプーリ54にかけて回転速度が減速(一段目)され、さらに歯付きプーリ54から第1パン歯車56及び第2パン歯車57にかけて回転速度が減速(二段目)される。
【0035】
ここでは、タイミングベルト53、歯付きプーリ54によって第1の減速機構が構成されており、歯付きプーリ54の歯車76、第1パン歯車56及び第2パン歯車57によって第1の減速機構に係合する第2の減速機構が構成されている。それによって、垂直軸を中心としてチルトシャーシ21及びレンズ鏡筒11をパン方向に細かい回転角度で回転させることが可能になる。
【0036】
また、二段減速したうえでパンモータ51の駆動力が伝達されるので、レンズ鏡筒11が4K画質等の高画質に対応した大きくて重い構成であっても、パン方向にスムーズに回転駆動することができる。
また、防振ダンパ52及びタイミングベルト53によって駆動による振動や騒音の発生を低減することが出来る。
このように、本実施例のビデオカメラ1は、レンズ鏡筒11がチルト回転駆動機構40によってチルト方向に回転し、パン回転駆動機構50によってパン方向に回転する。
【0037】
次に、チルト回転検知部60について説明する。また、パン回転検知部70については後述する。なお、チルト回転検知部60とパン回転検知部70は、第1の減速機構の回転角度を検出する回転角度検出手段として機能している。
図4は、本発明の実施例における撮像装置のチルト回転検知部を示す斜視図である。
図4に示すように、チルト回転検知部60は、2つのフォトインタラプタ64、65を備えている。
【0038】
また、第1の減速機構としての歯付きプーリ44の回転中心に対して所定の角度ごとに設けられ、フォトインタラプタの発光部の発した光を遮ることが可能な複数の遮光部62を備えている。また、複数の遮光部62の間に透光部(スリット)63を有し、遮光部62と透光部63によって回転検知リング61が構成されている。
フォトインタラプタ64,65はそれぞれ発光部と、発光部に離間して対向する受光部を有し、歯付きプーリ44の回転に伴って、発光部と受光部の間を、遮光部62と透光部63が通過するように構成されている。
【0039】
回転検知リング61は、歯付きプーリ44と一体となって回転する。そのため、チルトモータ41の回転駆動によって、タイミングベルト43を介して駆動力が歯付きプーリ44に伝達されると、回転検知リング61が回転する。ここで回転検知リング61に形成された遮光部62と透光部63が一定の幅で交互に配置され櫛歯状になっている。したがって、回転検知リング61が回転すると、フォトインタラプタ64、65からでる発光を遮光部62で遮光し、透光部63で透光することを交互に繰り返す。
【0040】
フォトインタラプタ64、65は回転検知リング61の回転数と回転角度を検知可能なように、チルトシャーシ21に所定の回転位相差を持って離間して配置されている。歯付きプーリ44は、円筒部であり、フォトインタラプタ64、65は歯付きプーリ44の円筒部の内部に配置されている。
なお、前述のように、
図2に示す、チルトシャーシ21に配置されたフォトインタラプタ66と、レンズシャーシ12と一体となって可動する遮光部67によって、レンズ鏡筒11のチルト方向の回転位置の基準位置(例えば水平基準位置)を検知する。
【0041】
図5は、実施例における撮像装置のフォトインタラプタとチルト回転検知リングの関係を示す図である。
なお、
図5に示すX軸及びY軸は、説明の便宜のために付記したもので、X軸が光軸と一致し、X軸の正方向がレンズ鏡筒11の正面方向となる。ここで、遮光部62の幅と透光部63のそれぞれの角度の幅はθとする。なお、フォトインタラプタ64、65の配置は一例であり、これに限定されるものではない。
【0042】
ここで、各遮光部62及び各透光部63のそれぞれの幅θは、回転検知リング61の回転方向(チルト方向)を検知するために必要な分解能と、フォトインタラプタが十分に遮光状態と透光状態を検知可能かどうかによって決定される。本実施例のビデオカメラ1においては、幅θを10°としている。
【0043】
また、フォトインタラプタ64はX軸から45°の位置に配置され、さらに105°(=10θ+θ/2)回転した位置にフォトインタラプタ65が配置されている。なお、フォトインタラプタ64とフォトインタラプタ65の間の離間間隔である回転位相差は(nθ+θ/2)°、ただしnは整数、であればよい。
【0044】
ここで、回転検知リング61が時計回り又は反時計回りに回転すると、上記の回転検知リング61の遮光部62及び透光部63の幅θ、フォトインタラプタ64、65の配置により、回転検知リング61の回転状態を検知することができる。すなわち、フォトインタラプタ64、65が受光状態と遮光状態を繰り返すことで回転の有無、回転角度が検知される。
【0045】
図6は、チルト回転検知部60の回転検知リング61が時計回りに回転したときのフォトインタラプタ64、65それぞれの受光状態と遮光状態を示す説明図である。
なお、以下では、便宜的にフォトインタラプタ64、65の発光体が発した光が透光部63を透過し、受光体が受光状態となるときをLo(Low)、発光体が発した光が遮光部62で遮られ、受光体が遮光状態となるときをHi(High)とする。
【0046】
図6に示すステップS1は、フォトインタラプタ64が透光状態、フォトインタラプタ65が透光状態に位置した状態を示している。そのため、フォトインタラプタ64、65の出力は(Lo、Lo)となる。
【0047】
次に、回転検知リング61の時計回りの回転によって遮光部62及び透光部63が移動するとステップS2に示す状態となり、フォトインタラプタ64が透光状態、フォトインタラプタ65が遮光状態となる。そのため、フォトインタラプタ64、65の出力は(Lo、Hi)となる。
【0048】
さらに、時計回りに回転してステップS3の位置に移動すると、フォトインタラプタ64が遮光状態、フォトインタラプタ65が遮光状態となる。そのため、フォトインタラプタ64、65の出力は(Hi、Hi)となる。
【0049】
その後、時計回りに回転してステップS4の位置に移動すると、フォトインタラプタ64が遮光状態、フォトインタラプタ65が透光状態となる。そのため、フォトインタラプタ64、65の出力は(Hi、Lo)となる。
そして、時計回りに回転してステップS5の位置に移動すると、フォトインタラプタ64が透光状態、フォトインタラプタ65が透光状態となり、ステップS1と同様の状態になる。
【0050】
このように、回転検知リング61が時計回りに回転すると、フォトインタラプタ64、65の出力は、ステップS1の(Lo、Lo)から(Lo、Hi)、(Hi、Hi)、(Hi、Lo)と変化していく。そしてステップS5でステップS1と同じ(Lo、Lo)に復帰し、その後は同じ変化パターンを繰り返す。
【0051】
このとき、フォトインタラプタ64とフォトインタラプタ65は、
図5に示すように、105°(=10θ+θ/2)だけ角度が異なるので、前記のステップS1からステップS5は5°(=θ/2)ごとにステップが切り替わっていく。すなわち、回転検知リング61が搭載されている歯付きプーリ44の回転を5°ごとの変化を検知することが可能である。
【0052】
このとき、本実施例のビデオカメラ1のチルト回転駆動機構40において、歯付きプーリ44から第1チルト歯車46及び第2チルト歯車47への減速比は7倍である。よって、第1チルト歯車46及び第2チルト歯車47と一体となってチルト方向に回転するレンズ鏡筒11の回転を0.71°ごとに検知することが可能である。このように、比較的安価なフォトインタラプタを用い、高精度にチルト方向の回転を検知することができる。
【0053】
このとき、
図2で示しているように、チルトモータ41の回転駆動を歯付きプーリ44に伝達するのにタイミングベルト43を用いている。したがって、チルトモータ41から歯付きプーリ44への駆動伝達の際にバックラッシが発生せず、チルトモータ41の回転と実際の歯付きプーリ44の回転に誤差が生じることがない。
【0054】
また、歯付きプーリ44から第1チルト歯車46及び第2チルト歯車47への駆動伝達では、前述のようにはすば歯車形状をした第1チルト歯車46及び第2チルト歯車47で歯付きプーリ44の歯車68を付勢力によって挟み込むように歯合させている。このように、バックラッシを発生させにくい構成としているので、歯付きプーリ44に搭載したチルト回転検知部60による回転検知と、レンズ鏡筒11のチルト方向の回転に誤差が生じにくい。また、チルト回転検知部60は、衝撃等でビデオカメラ1が意図せずチルト回転してしまった場合に、その回転を検知する手段としても利用できる。
【0055】
図7は、本発明の実施例における撮像装置において意図せず回転動作をしたこと検知するフローを示すフローチャートである。このフローチャートにおけるフローは撮像装置内の不図示のCPUがメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって実現される。
ステップS70において、ビデオカメラ1または雲台の起動状態で、レンズ鏡筒11がチルト方向に回転したとき、ステップS71において、チルト回転検知部60が常に回転を検知している。
【0056】
ステップS72で、ビデオカメラ1において正常なチルト回転駆動命令(駆動信号)が出ていない状態で、レンズ鏡筒11がチルト方向に回転していた場合にはNOと判断される。そしてステップS73に進む。即ち、物や人がぶつかるなどの外的衝撃等でカメラユニットのレンズ鏡筒11が意図せずに回転してしまったと判断し、ステップS73において、「動かされ検知」を示すための信号(回転検知信号)を発生(ON)する。
【0057】
「動かされ検知」の信号がONの状態では、ステップS74で、ビデオカメラ1にネットワークを介して接続された外部装置に、「動かされ検知」状態であると判断した検知結果を送信する。そして、
図2に示すビデオカメラ1に搭載されたインジケータ31や、ビデオカメラ1にネットワークを介して接続された操作端末の画面等でユーザーに「動かされ検知」状態であることを通知する。これにより、ユーザーはレンズ鏡筒11が意図せず回転してしまっていることに気付くので、目標とする被写体の方向にカメラの向きを修正することができる。
【0058】
次に本実施例のビデオカメラ1におけるパン回転検知部70について説明する。なお、パン回転検知部70は前述のチルト回転検知部60との類似点が多いため、適宜説明を省略する。
【0059】
図8は、実施例における撮像装置のパン回転検知部を示す斜視図である。
図8に示すように、パン回転検知部70は、2つのフォトインタラプタ74、75を備えている。また、第1の減速機構としての歯付きプーリ54の回転中心に対して所定の角度ごとに設けられ、フォトインタラプタの発光部の発した光を遮ることが可能な複数の遮光部72を備えている。
【0060】
また、複数の遮光部72の間に透光部(スリット)73を有し、遮光部72と透光部73によって回転検知リング71が構成されている。
フォトインタラプタ74、75はそれぞれ発光部と、発光部に離間して対向する受光部を有し、歯付きプーリ54の回転に伴って、発光部と受光部の間を、遮光部72と透光部73が通過するように構成されている。
【0061】
このとき、回転検知リング71は、歯付きプーリ54の回転と一体となって回転する。そのため、パンモータ51の回転駆動によって、タイミングベルト53を介して駆動力が歯付きプーリ54に伝達されると、回転検知リング71が回転する。回転検知リング71に形成された遮光部72と透光部73が一定の幅で交互に配置され櫛歯状になっている。したがって、回転検知リング71が回転すると、フォトインタラプタ74、75からでる発光を遮光部72で遮光し、透光部73で透光することを交互に繰り返す。
【0062】
フォトインタラプタ74、75は回転検知リング71の回転数と回転角度を検知可能なように、ベース部30に所定の回転位相差を持って離間して配置されている。
また、ベース部30のチルトシャーシ21に対向した面に配置された不図示のフォトインタラプタと、チルトシャーシ21と一体となって可動する不図示の遮光部によって、レンズ鏡筒11のパン方向の回転位置の基準となる基準位置を検知している。
【0063】
図9は、実施例における撮像装置のフォトインタラプタとパン回転検知リングの関係を示す図である。
なお、
図9に示すX軸及びY軸は、説明の便宜のために付記したもので、X軸が光軸と一致し、X軸の正方向がレンズ鏡筒11の正面方向となる。また、遮光部72と透光部73のそれぞれの角度の幅はθとする。なお、フォトインタラプタ74、75の配置は一例であり、これに限定されるものではない。
【0064】
各遮光部72及び各透光部73のそれぞれの幅θは、チルト回転検知部60と同様にθ=10°である。
フォトインタラプタ74はX軸から35°の位置に配置され、さらに55°(=5θ+θ/2)回転した位置にフォトインタラプタ75が配置されている。なお、フォトインタラプタ74とフォトインタラプタ75の間の離間間隔である回転位相差は(nθ+θ/2)°、ただしnは整数、であればよい。
【0065】
このようなパン回転検知部70において、チルト回転検知部60と同様にフォトインタラプタ74、75が受光状態と遮光状態を繰り返すことで回転の有無、回転角度が検知される。
【0066】
図10は、パン回転検知部70の回転検知リング71が時計回りに回転したときのフォトインタラプタ74、75それぞれの受光状態と遮光状態を示す説明図である。
図10に示すように、チルト回転検知部60と同様にパン回転検知部70において、回転検知リング71が時計回りに回転すると、フォトインタラプタ74、75は、ステップS1の(Lo、Lo)から(Lo、Hi)、(Hi、Hi)、(Hi、Lo)と変化していく。そしてステップS5でステップS1と同じ(Lo、Lo)に復帰し、その後は同じ変化パターンを繰り返す。
【0067】
このとき、フォトインタラプタ74とフォトインタラプタ75は、
図8に示すように、55°(=5θ+θ/2)だけ角度が異なるので、前記のステップS1からステップS5は5°ごとにステップが切り替わっていく。すなわち、回転検知リング71が搭載されている歯付きプーリ54の回転を5°ごとに検知することが可能である。
【0068】
このとき、本実施例のビデオカメラ1のパン回転駆動機構50において、歯付きプーリ54から第1パン歯車56及び第2パン歯車57への減速比は7倍である。よって、第1パン歯車56及び第2パン歯車57と一体となってパン方向に回転するレンズ鏡筒11の回転を0.71°ごとに検知することが可能である。このように、比較的安価なフォトインタラプタを用い、高精度にパン方向の回転を検知することができる。
【0069】
このとき、
図3で示しているように、パンモータ51の回転駆動を歯付きプーリ54に伝達するのにタイミングベルト53を用いている。したがって、パンモータ51から歯付きプーリ54への駆動伝達の際にバックラッシが発生せず、パンモータ51の回転と実際の歯付きプーリ54の回転に誤差が生じることがない。
【0070】
また、歯付きプーリ54から第1パン歯車56及び第2パン歯車57への駆動伝達では、前述のようにはすば歯車形状をした第1パン歯車56及び第2パン歯車57で歯付きプーリ54のはすば状の歯車76を付勢力によって挟み込むように歯合させている。このように、バックラッシを発生にくい構成としているので、歯付きプーリ54に搭載したパン回転検知部70による回転検知と、レンズ鏡筒11のパン方向の回転に誤差が生じにくい。
【0071】
また、パン回転検知部70においても、チルト回転検知部60と同様に意図せずにパン回転してしまった場合に、
図7で示したのと同様のフローを用いることによって意図しない回転を検知し表示することができる。
【0072】
以上のように、本実施例では、回転駆動部はパン回転駆動部とチルト回転駆動部を含み、前記パン回転駆動部と前記チルト回転駆動部とは、それぞれ同様の構成からなる。即ち、それぞれが、駆動源と、第1の減速機構と、第2の減速機構と、回転角度検出手段と、を有するのでパン回転とチルト回転の両方を同様の精度で検知することが可能となる。
【0073】
また、本実施例では、チルト回転検知部60とパン回転検知部70は、それぞれ一つの回転検知リング61、回転検知リング71により、安価で高精度な回転検知をすることが可能な構成となっている。また、歯付きプーリ44、歯付きプーリ54にそれぞれ回転検知リング61、回転検知リング71を配置することにより、チルト回転及びパン回転を同等の精度で検知することが可能になっている。
【0074】
なお、実施例における撮像装置では、各遮光部62及び各透光部63(各遮光部72及び各透光部73)の幅θをそれぞれ10°としているが、幅θはこれにかぎらず、チルト方向(パン方向)の回転を検知するために必要な分解能によって決定すればよい。
また、実施例ではカメラユニットをパン、チルト回転させるための雲台を構成するベース部30、回転部20はカメラユニットと結合されている。しかし、前述したように、雲台とカメラユニットとを簡単に着脱可能な構成とし、雲台に対して異なるカメラユニットを装着可能な構成としても良い。
【0075】
以上、本発明をその好適な実施例に基づいて詳述してきたが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨に基づき種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
なお、本実施例における制御の一部または全部を上述した実施例の機能を実現するコンピュータプログラムをネットワーク又は各種記憶媒体を介して雲台や撮像装置に供給するようにしてもよい。そしてその雲台や撮像装置におけるコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。その場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することとなる。
【符号の説明】
【0076】
1:ビデオカメラ
10:カメラユニット
20:回転部
21:チルトシャーシ
30:ベース部
40:チルト回転駆動機構
41:チルトモータ
43:タイミングベルト
44:歯付きプーリ
46:第1チルト歯車
47:第2チルト歯車
60:チルト回転検知部
61:回転検知リング
62:遮光部
63:透光部
64:フォトインタラプタ
65:フォトインタラプタ