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特許7532885半導体装置及びその製造方法、並びに半導体装置の製造に使用される構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法、並びに半導体装置の製造に使用される構造体
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20240806BHJP
   H01L 25/065 20230101ALI20240806BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20240806BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20240806BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H01L25/08 G
H01L25/08 E
H01L21/60 311Q
H01L21/52 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020085936
(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公開番号】P2021180285
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】夏川 昌典
(72)【発明者】
【氏名】蘇 ▲徳▼軒
(72)【発明者】
【氏名】上田 麻未
(72)【発明者】
【氏名】平本 祐也
(72)【発明者】
【氏名】綱島 友佳
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0049228(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0071810(US,A1)
【文献】特開2002-373968(JP,A)
【文献】特開2000-269407(JP,A)
【文献】特開2016-178196(JP,A)
【文献】特開2013-060524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/00-25/18
H01L 21/52
H01L 21/58
H01L 21/60-21/607
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)基板と、前記基板上に配置された第一のチップと、前記第一のチップと離間して前記基板上に配置された一又は二以上のスペーサーとを備える構造体を準備する工程と、
(B)前記第一のチップよりもサイズが大きい第二のチップと、前記第二のチップの一方の面に設けられた接着剤片とを備える接着剤片付きチップを準備する工程と、
(C)前記スペーサーの上面に前記接着剤片が接するように、前記第一のチップの上方に前記第二のチップを配置する工程と、
(D)前記第一のチップ、前記スペーサー、及び前記第二のチップを封止する工程と、
を含み、
前記スペーサーが、チップと、前記チップの一方の面に設けられた接着剤片とを備えるダミーチップであり、
(A)工程における前記構造体を平面視し、前記第一のチップの中心点を通る直線を引いたとき、前記スペーサーが配置されている第一の仮想領域と、前記スペーサーが配置されていない第二の仮想領域とに当該直線によって前記基板を区画することが可能であり、
(D)工程を実施する前において、前記スペーサーの上面の高さと、前記第一のチップの上面の高さとが一致しており
(A)工程で準備された前記構造体において、前記スペーサーの上面が前記第一のチップの上面よりも高く、
(C)工程において、前記接着剤片付きチップで前記スペーサーを押し潰すことによって前記スペーサーの上面の高さと前記第一のチップの上面の高さとを一致させる、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
記ダミーチップが備える前記接着剤片は、前記接着剤片付きチップが備える前記接着剤片よりも軟らかい、請求項に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ダミーチップが備える前記接着剤片は、前記接着剤片付きチップが備える接着剤片よりも厚い、請求項に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第一のチップは、フリップチップ接続によって前記基板に搭載されている、請求項1~のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は半導体装置及びその製造方法、並びに半導体装置の製造に使用される構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップと基板の接続にはワイヤーボンディングが広く適用されている。ワイヤーボンディングは、金ワイヤ等の金属細線を用いて半導体チップと基板を接続する方式である。半導体装置(以下、場合により、「半導体パッケージ」という。)に対する高機能化、高集積化、高速化等の要求に対応するため、フリップチップ接続と称される方式が広まりつつある。フリップチップ接続は、半導体チップ又は基板にバンプと呼ばれる導電性突起を形成して、半導体チップと基板との間で直接接続する方式である。
【0003】
上述のとおり、半導体パッケージは高機能化の他に、薄型化及び小型化が求められている。さらなる小型化及び薄型化及び高機能化が要求される半導体パッケージとして、チップスタック型パッケージ、POP(Package On Package)、TSV(Through Silicon Via)等も普及し始めている。これらの半導体パッケージは、平面状でなく立体状にチップが配置されるため、サイズを小さくできる。例えば、特許文献1は、第1半導体素子(例えば、コントローラ)が第2半導体素子を接着するための接着フィルムに埋め込まれている態様の半導体装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-120836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討によると、特許文献1に記載の半導体装置のように、基板上の第一のチップを接着フィルムに埋め込む場合、ボイドが発生し易いという課題がある。また、ボイド発生を抑制するため、流動性に優れる比較的軟らかい接着フィルムを使用すると、接着フィルムを介して接着される第二のチップの位置がずれたり歪みが生じたりして、その上にさらに複数のチップを積層することが困難となり易い。これに加え、第一のチップを埋め込むことができる充分な厚さを有する接着フィルムを使用する必要があり、半導体パッケージが厚くなる傾向にある。
【0006】
本発明者らは、第一のチップを接着フィルムで埋め込む代わりに、第一のチップが配置される位置の周囲にスペーサーを配置することによって空間を形成し、当該空間内に第一のチップを配置した後、封止材で空間を充填する構成を検討した。その結果、封止材によって空間を充填する際、スペーサーの上面の高さと第一のチップの上面の高さにずれがあると、封止材による充填が困難となり易いことが見出された。
【0007】
本開示は、第一のチップが基板上に搭載され、かつ第一のチップの上方に第二のチップが配置された構成の半導体装置の製造方法であって半導体装置が過度に厚くなることを抑制でき、第一のチップ及び第二のチップを封止材で封止する作業を容易に実施することができる製造方法を提供する。また、本開示は、過度に厚くなく、かつ封止材の充填性に優れた半導体装置及び当該半導体装置の製造に使用される構造体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る半導体装置の製造方法は、(A)基板と、基板上に配置された第一のチップと、第一のチップと離間して基板上に配置された一又は二以上のスペーサーとを備える構造体を準備する工程と、(B)第一のチップよりもサイズが大きい第二のチップと、第二のチップの一方の面に設けられた接着剤片とを備える接着剤片付きチップを準備する工程と、(C)スペーサーの上面に接着剤片が接するように、第一のチップの上方に第二のチップを配置する工程と、(D)第一のチップ、スペーサー、及び第二のチップを封止する工程とを含む。(A)工程における構造体を平面視し、第一のチップの中心点を通る直線を引いたとき、スペーサーが配置されている第一の仮想領域と、スペーサーが配置されていない第二の仮想領域とに当該直線によって基板を区画することが可能である(すなわち、(A)工程における構造体には、当該構造体を平面視し、第一のチップの中心点を通る直線を引いたとき、スペーサーが配置されている第一の仮想領域と、スペーサーが配置されていない第二の仮想領域とが基板上に存在している。)。(D)工程を実施する前において、スペーサーの上面の高さと、第一のチップの上面の高さとが一致している。なお、ここでいう「一致」とは、スペーサーの上面の高さと第一のチップの上面の高さとの差が10μm未満であることを意味する。
【0009】
上記(D)工程が実施される前に、スペーサーの上面の高さと、第一のチップの上面の高さとが一致しているということは、(C)工程で配置された接着剤片付きチップの接着剤片が第一のチップの上面にも接していることを意味する。仮に、第一のチップの上面と接着剤片とが接しておらず、両者の間に隙間があると、当該隙間に封止材を充填しにくく、ボイドが発生し易い。他方、第一のチップの上面と接着剤片との間隔を充分に広くすれば、封止材の充填性が高まるものの、半導体装置が厚くなる傾向にある。これに対して、本開示の製造方法によれば、封止材の優れた充填性と半導体装置の薄型化を両立できる。
【0010】
また、上記(A)工程における構造体を平面視し、第一のチップの中心点を通る直線を引いたとき、スペーサーが配置されている第一の仮想領域と、スペーサーが配置されていない第二の仮想領域とに当該直線によって基板を区画することが可能であるということは、第一の仮想領域内のスペーサーの上面に、接着剤片付きチップの接着剤片を接するように配置したときに、接着剤片の一方の端部が、スペーサーが配置されていない第二の仮想領域側の方に配置されることを意味する。そのため、接着剤片は、他のスペーサーに制限されることなく、第一のチップの上面と接着し易くなり、接着剤片は、例えば、接着剤片と接している第一の仮想領域内のスペーサーの上面の高さの調整によって、スペーサーの上面の高さと、第一のチップの上面の高さとを一致させ易くなる。また、第一のチップが配置される位置の周囲にスペーサーを配置して空間を形成する場合において、基板上にスペーサーが配置される領域が減少することから、従来に比べて、例えば、スペーサーの数を低減することができ、歩留まりの向上が期待できる。
【0011】
本開示の製造方法において、(D)工程が実施される前に、スペーサーの上面の高さと、第一のチップの上面の高さとが一致していればよい。例えば、(A)工程で準備された構造体において、スペーサーの上面の高さと、第一のチップの上面の高さとが一致していてもよく、あるいは、(A)工程で準備された構造体において、スペーサーの上面が第一のチップの上面よりも高く、その後の(C)工程において、接着剤片付きチップでスペーサーを押し潰すことによってスペーサーの上面の高さと第一のチップの上面の高さとを一致させてもよい。
【0012】
上記スペーサーの一態様は、チップと、当該チップの一方の面に設けられた接着剤片とを備えるダミーチップである。上記のように、(C)工程において、接着剤片付きチップでスペーサーを押し潰すことによってスペーサーの高さを調整する場合、ダミーチップが備える接着剤片は、接着剤片付きチップが備える接着剤片よりも軟らかいことが好ましい。また、ダミーチップが備える接着剤片は、接着剤片付きチップが備える接着剤片よりも厚いことが好ましい。
【0013】
半導体装置の高速化の観点から、第一のチップは、フリップチップ接続によって基板に搭載されていることが好ましい。フリップチップ接続によって第一のチップを基板に搭載する場合、接着フィルムを使用して基板に接着する場合と比較して接続部の高さにばらつきが生じ易く、その結果、第一のチップの上面の高さ位置にばらつきが生じ易い。そのため、第一のチップがフリップチップ接続によって搭載されている場合、(C)工程において、接着剤片付きチップでスペーサーを押し潰すことによって、スペーサーの高さを調整できるように、(A)工程において、スペーサーの上面が第一のチップの上面よりも高い構造体を準備することが好ましい。
【0014】
本開示に係る半導体装置は、基板と、基板上に配置された第一のチップと、第一のチップと離間して基板上に配置された一又は二以上のスペーサーと、第一のチップの上方に配置されており、第一のチップよりもサイズが大きい第二のチップと、スペーサーと第二のチップとを接着している接着剤片と、第一のチップ、スペーサー及び第二のチップを封止している封止材とを備える。基板及び第一のチップを平面視し、第一のチップの中心点を通る直線を引いたとき、スペーサーが配置されている第一の仮想領域と、スペーサーが配置されていない第二の仮想領域とに当該直線によって基板を区画することが可能であり、接着剤片は第一のチップの上面に接している。第一のチップは、例えば、コントローラーチップである。
【0015】
上記半導体装置は、本開示に係る製造方法によって製造することができる。本開示に係る半導体装置は、接着剤片が第一のチップの上面に接しているため、過度に厚くなく、かつ封止材の充填性に優れている。また、基板及び第一のチップを平面視し、第一のチップの中心点を通る直線を引いたとき、スペーサーが配置されている第一の仮想領域と、スペーサーが配置されていない第二の仮想領域とに当該直線によって基板を区画することが可能であると、接着剤片は、第一のチップの上面と接着し易くなるとともに、例えば、スペーサーの上面の高さの調整によって、スペーサーの上面の高さと、第一のチップの上面の高さとを一致させ易くなる。
【0016】
本開示は、上記半導体装置の製造に使用される構造体を提供する。第一の態様に係る構造体は、基板と、基板上に配置された第一のチップと、第一のチップと離間して基板上に配置された一又は二以上のスペーサーとを備え、基板及び第一のチップを平面視し、第一のチップの中心点を通る直線を引いたとき、スペーサーが配置されている第一の仮想領域と、スペーサーが配置されていない第二の仮想領域とに当該直線によって基板を区画することが可能であり、スペーサーの上面の高さと、第一のチップの上面の高さとが一致している。第二の態様に係る構造体は、基板と、基板上に配置された第一のチップと、第一のチップと離間して基板上に配置された一又は二以上のスペーサーとを備え、基板及び第一のチップを平面視し、第一のチップの中心点を通る直線を引いたとき、スペーサーが配置されている第一の仮想領域と、スペーサーが配置されていない第二の仮想領域とに当該直線によって基板を区画することが可能であり、スペーサーの上面が第一のチップの上面よりも高い。
【0017】
本開示に係る構造体は、第二のチップをさらに備えた態様であってもよい。当該態様の構造体は、基板と、基板上に配置された第一のチップと、第一のチップと離間して前記基板上に配置された一又は二以上のスペーサーと、第一のチップの上方に配置されており、第一のチップよりもサイズが大きい第二のチップと、スペーサーと第二のチップとを接着している接着剤片とを備え、基板及び第一のチップを平面視し、第一のチップの中心点を通る直線を引いたとき、スペーサーが配置されている第一の仮想領域と、スペーサーが配置されていない第二の仮想領域とに当該直線によって基板を区画することが可能であり、接着剤片は第一のチップの上面に接している。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、第一のチップが基板上に搭載され、かつ第一のチップの上方に第二のチップが配置された構成の半導体装置の製造方法であって半導体装置が過度に厚くなることを抑制できるとともに、第一のチップ及び第二のチップを封止材で封止する作業を容易に実施することができる製造方法が提供される。また、本開示によれば、過度に厚くなく、かつ封止材の充填性に優れた半導体装置及び当該半導体装置の製造に使用される構造体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本開示に係る半導体装置の第一実施形態を模式的に示す断面図である。
図2図2(a)及び図2(b)は、第一のチップと一又は二以上のダミーチップとの位置関係の例を模式的に示す平面図である。
図3図3(a)~図3(e)は、ダミーチップを製造する過程の一例を模式的に示す断面図である。
図4図4は、本開示に係る半導体装置の製造に使用される構造体の第一実施形態を模式的に示す断面図である。
図5図5は、接着剤片付きチップの一例を模式的に示す断面図である。
図6図6は、図4に示す構造体に、図5に示す接着剤片付きチップを圧着させた状態を模式的に示す断面図である。
図7図7は、本開示に係る半導体装置の製造に使用される構造体の他の実施形態を模式的に示す断面図である。
図8図8は、図7に示す構造体に、図5に示す接着剤片付きチップを圧着させた状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を適宜参照しながら、本開示の実施形態について説明する。以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸」の記載は、「アクリル酸」及びそれに対応する「メタクリル酸」を意味する。その他の類似表現も同様である。
【0021】
<第一実施形態>
(半導体装置)
図1は、本開示に係る半導体装置を模式的に示す断面図である。図1に示される半導体装置100は、基板10と、基板10の表面上に配置されたチップ(第一のチップ)S1と、チップS1と離間して基板10上に配置されたダミーチップD(スペーサー)と、チップS1の上方に配置されたチップ(第二のチップ)S2と、チップS2上に積層されたチップS3,S4と、基板10の表面上の電極(不図示)とチップS2,S3,S4とをそれぞれ電気的に接続するワイヤwと、チップS1,S2,S3,S4、ダミーチップD、及びワイヤwを封止している封止材50とを備える。チップS1の上面及びダミーチップDの上面と、チップS2との間には接着剤片の硬化物Scが配置されている。半導体装置100において、チップS1の上面の高さと、ダミーチップDの上面の高さとが一致している。つまり、硬化物Scは、チップS1の上面及びダミーチップDの上面に接している。
【0022】
基板10は、有機基板であってもよく、リードフレーム等の金属基板であってもよい。基板10は、半導体装置100の反りを抑制する観点から、基板10の厚さは、例えば、90~300μmであり、90~210μmであってもよい。
【0023】
チップS1は、例えば、コントローラーチップであり、フリップチップ接続によって基板10に搭載されている。平面視におけるチップS1の形状は、例えば、矩形(正方形又は長方形)である。チップS1の一辺の長さは、例えば、5mm以下であり、2~5mm又は1~5mmであってもよい。チップS1の厚さは、例えば、10~150μmであり、20~100μmであってもよい。
【0024】
チップS2は、例えば、メモリチップであり、接着剤片の硬化物Scを介してチップS1及びダミーチップDの上に接着されている。チップS2は、接着剤片の硬化物Scを介してチップS1の上面の少なくとも一部が接着していればよく、必ずしもチップS1の上面の全体が接着している必要はない。また、同様に、チップS2は、接着剤片の硬化物Scを介してダミーチップDの上面の少なくとも一部が接着していればよく、必ずしもダミーチップDの上面の全体が接着している必要はない。平面視でチップS2は、チップS1よりも大きいサイズを有する。平面視におけるチップS2の形状は、例えば、矩形(正方形又は長方形)である。チップS2の一辺の長さは、例えば、20mm以下であり、4~20mm又は4~12mmであってもよい。チップS2の厚さは、例えば、10~170μmであり、20~120μmであってもよい。なお、チップS3,S4も、例えば、メモリチップであり、接着剤片の硬化物Scを介してチップS2の上に接着されている。チップS3,S4の一辺の長さは、チップS2と同様であればよく、チップS3,S4の厚さもチップS2と同様であればよい。チップS3,S4のサイズとチップS2とのサイズは同じであっても、異なっていてもよい。
【0025】
ダミーチップDは、チップS1の周囲に空間を形成するスペーサーの役割を果たす。ダミーチップDは、チップD1と、チップD1の一方の面に設けられた接着剤片Daとによって構成されている。平面視におけるダミーチップDの形状は、例えば、矩形(正方形又は長方形)である。図2(a)に示すように、チップS1に離間した位置に、一つのダミーチップD(形状:長方形)を配置してもよいし、図2(b)に示すように、チップS1に離間した位置に、チップS1の角に対応する位置にそれぞれ一つずつダミーチップD(形状:正方形、計2個)を配置してもよい。平面視におけるチップD1の一辺の長さは、例えば、20mm以下であり、1~20mm又は1~12mmであってもよい。チップD1の厚さは、例えば、30~150μmであり、80~120μmであってもよい。ダミーチップDの数は、作業量を低減でき、歩留まりの向上が期待できることから、好ましくは一つである。一方で、ダミーチップDの数は、平面視におけるダミーチップDの占有面積が減少して、空間を封止材で充填し易くなることから、好ましくは二以上、より好ましくは二つである。
【0026】
ダミーチップDは、チップS1と離間して基板10上に配置されている。ダミーチップDとチップS1との距離Lは、空間を封止材でより充填し易くなることから、例えば、500μm以上、1000μm以上、又は2000μm以上であってよい。ダミーチップDとチップS1との距離Lは、例えば、10000μm以下であってよい。なお、ダミーチップDが二以上配置される場合(例えば、図2(b)に示すように、チップS1に離間した位置に、チップS1の角に対応する位置にそれぞれ一つずつダミーチップD(形状:正方形、計2個)が配置される場合)、各ダミーチップDの一辺とチップS1の一辺との距離Lが、平面視において、実質的に同一であることが好ましい。ここでいう「実質的に同一である」とは、それぞれの距離Lの差が100μm未満であることを意味する。
【0027】
本開示に係る半導体装置においては、基板及び第一のチップを平面視し、第一のチップの中心点を通る直線を引いたとき、スペーサーが配置されている第一の仮想領域と、スペーサーが配置されていない第二の仮想領域とに当該直線によって基板を区画することが可能である。当該直線によって第一の仮想領域と第二の仮想領域とに基板を区画できるか否かという点について、図2(a)及び図2(b)を用いて説明する。図2(a)のように、基板10及びチップS1が矩形であるとき、チップS1は、通常、基板10に対して平行に配置される。このとき、チップS1の中心点CPを通る直線SLを、基板の接点C1,C2において、基板10の対向する二辺と垂直になるように引くと、ダミーチップDが配置されている第一の仮想領域10aと、ダミーチップDが配置されていない第二の仮想領域10bとに当該直線SLによって基板10を区画することが可能である。すなわち、図2(a)のようなチップS1とダミーチップDとの位置関係では、第一の仮想領域10aと第二の仮想領域10bとに基板10を区画することが可能であるといえる。同様に、図2(b)のようなチップS1とダミーチップDとの位置関係においても、第一の仮想領域10aと第二の仮想領域10bとに基板10を区画することが可能であるといえる。
【0028】
このように直線SLで第一の仮想領域10aと第二の仮想領域10bとに基板10を区画することが可能であるということは、第一の仮想領域10a内のダミーチップDの上面に、チップS2に備えられている接着剤片を接するように配置したときに、接着剤片の一方の端部が、ダミーチップが配置されていない第二の仮想領域10b側に配置されることを意味する。そのため、チップS2に備えられている接着剤片は、他のスペーサーに制限されることなく、第一のチップの上面と接着し易くなり、例えば、接着剤片としているダミーチップDの上面の高さの調整によって、ダミーチップDの上面の高さと、チップS1の上面の高さとを一致させ易くなる。また、チップS1が配置される位置の周囲にダミーチップDを配置して空間を形成する場合において、基板10上にダミーチップDが配置される領域が減少することから、従来に比べて、例えば、スペーサーの数を低減することができ、歩留まりの向上が期待できる。
【0029】
上述のとおり、ダミーチップDの上面の高さと、チップS1の上面の高さとが一致している。例えば、接着剤片Daの厚さを調整することで、フリップチップ接続されているチップS1の上面の位置とダミーチップDの上面の位置を一致させることができる。
【0030】
図3(a)~図3(e)を参照しながら、接着剤片付きチップの一態様であるダミーチップDの作製方法の一例について説明する。まず、ダイシングダイボンディング一体型フィルム8(以下、場合により「フィルム8」という。)を準備し、これを所定の装置(不図示)に配置する。フィルム8は、基材フィルム1と粘着剤層2と接着剤層3Aとをこの順序で備える。基材フィルム1は、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)である。粘着剤層2は、紫外線が照射されることによって粘着性が低下する性質を有する。接着剤層3Aは、熱硬化性樹脂組成物からなる。
【0031】
図3(a)及び図3(b)に示すように、ウェハWの一方の面に接着剤層3Aが接するようにフィルム8を貼り付ける。ウェハWは、単結晶シリコンであってもよいし、多結晶シリコン、各種セラミック、ガリウム砒素等の化合物半導体であってもよい。なお、ダミーチップDを作製する場合、ウェハWは必ずしも半導体でなくてもよく、例えば、ガラス基板であってもよい。
【0032】
ウェハW及び接着剤層3Aをダイシングブレードによって切断する(図3(c)参照)。ウェハWがダイシングによって個片化されることでチップD1となる。接着剤層3Aがダイシングによって個片化されることで接着剤片Daとなる。その後、図3(d)に示すように、粘着剤層2に対して紫外線を照射することによって、粘着剤層2と接着剤層3Aとの間の粘着力を低下させる。紫外線照射後、図3(e)に示されるように、基材フィルム1をエキスパンドすることで、ダミーチップDを互いに離間させる。ダミーチップDをニードル42で突き上げることによって粘着剤層2からダミーチップDを剥離させるとともに、吸引コレット44で吸引してダミーチップDをピックアップする。
【0033】
(半導体装置の製造方法)
図4図6を参照しながら、半導体装置100の製造方法について説明する。半導体装置100の製造方法は、以下の(A)~(D)の工程を含む。
(A)基板10と、基板10上に配置されたチップS1と、チップS1と離間して基板10上に配置された一又は二以上のダミーチップDとを備える構造体30Aを準備する工程(図4参照)。
(B)チップS2と、チップS2の一方の面に設けられた接着剤片Saとを備える接着剤片付きチップS2aを準備する工程(図5参照)。
(C)ダミーチップDの上面及びチップS1の上面に接着剤片Saが接するように、チップS1の上方にチップS2を配置する工程(図6参照)。
(D)チップS1,S2,S3,S4、ダミーチップD等を封止する工程。
【0034】
[(A)工程]
(A)工程は、図4に示す構造体30Aを準備する工程である。構造体30Aは、基板10と、基板10上に配置されたチップS1と、チップS1と離間して基板10上に配置された一又は二以上のダミーチップDとを備える。構造体30Aにおいて、当該構造体30Aを平面視し、チップS1の中心点を通る直線を引いたとき、ダミーチップDが配置されている第一の仮想領域と、ダミーチップDが配置されていない第二の仮想領域とに当該直線によって基板10を区画することが可能である。構造体30Aにおいて、チップS1の上面の高さと、ダミーチップDの上面の高さとが一致している。例えば、まず、フリップチップ接続によってチップS1を基板10上の所定の位置に搭載し、その後、ダミーチップDを所定の位置に圧着すればよい。この圧着処理は、例えば、80~180℃、0.01~0.50MPaの条件で、0.5~3.0秒間にわたって実施することができる。ダミーチップDに加える押圧力を調整することで、ダミーチップDの上面の高さを調整することができる。ダミーチップDの接着剤片Daは(A)工程の時点で完全に硬化していてもよく、この時点では完全には硬化しておらず、(C)工程の時点で完全に硬化させてよい。
【0035】
[(B)工程]
(B)工程は、図5に示す接着剤片付きチップS2aを準備する工程である。接着剤片付きチップS2aは、チップS2と、その一方の表面に設けられた接着剤片Saとを備える。接着剤片付きチップS2aは、例えば、ダイシングダイボンディング一体型フィルムを使用し、ダイシング工程を経て得ることができる(図3(a)~図3(e)参照)。
【0036】
[(C)工程]
(C)工程は、ダミーチップDの上面及びチップS1の上面に接着剤片Saが接するように、チップS1の上方に接着剤片付きチップS2aを配置する工程である。具体的には、ダミーチップDの上面及びチップS1の上面に接着剤片Saを介してチップS2を圧着する。この圧着処理は、例えば、80~180℃、0.01~0.50MPaの条件で、0.5~3.0秒間にわたって実施することができる。次に、加熱によって接着剤片Saを硬化させる。この硬化処理は、例えば、60~175℃、0.01~1.0MPaの条件で、5分間以上にわたって実施することができる。これによって、接着剤片Saが硬化物Scとなる。
【0037】
本実施形態に係る構造体30Aにおいては、上述のとおり、チップS1の上面の高さと、ダミーチップDの上面の高さとが一致している。このため、接着剤片SaはダミーチップDの上面及びチップS1の上面の両方に接している。図6は(C)工程を経て得られる構造体を模式的に示す断面図である。図6に示される構造体40は、硬化物ScとチップS1の間に隙間がないため、(D)工程において封止材の優れた充填性を達成できる。
【0038】
(C)工程後であって(D)工程前に、チップS2の上に接着剤片を介してチップS3を配置し、さらに、チップS3の上に接着剤片を介してチップS4を配置する。接着剤片は上述の接着剤片Saと同様の熱硬化性樹脂組成物であればよく、加熱硬化によって硬化物Scとなる(図1参照)。その後、チップS2,S3,S4と基板10とをワイヤwで電気的にそれぞれ接続する。ワイヤwで基板10と各チップとを電気的にそれぞれ接続する場合、通常、各チップ上にワイヤwと接続されるワイヤパッドを設けるためのスペースが設けられている。そのため、チップの積層構造は、図1に示されるように、階段状となり得る。なお、チップS1の上方に積層するチップの数は、本実施形態の三つに限定されず、所望の半導体パッケージに合わせて、四以上に適宜設定することができる。この場合、基板10、ダミーチップD、チップSn(例えば、nは2~20の整数)、ワイヤw、及びワイヤwと接続されるワイヤパッドを平面視したとき、積層されるチップの安定性を確保する観点から、例えば、ダミーチップDは、チップS4のワイヤパッドを設けるためのスペースと重なるような位置に配置されていることが好ましい。
【0039】
[(D)工程]
(D)工程は、チップS1,S2,S3,S4、ダミーチップD、ワイヤwを封止材50によって封止する工程である。この工程を経て図1に示す半導体装置100が完成する。
【0040】
(熱硬化性樹脂組成物)
接着剤片Da及び接着剤片Saを構成する熱硬化性樹脂組成物について説明する。本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、半硬化(Bステージ)状態を経て、その後の硬化処理によって完全硬化物(Cステージ)状態となり得るものである。熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、エラストマとを含み、必要に応じて、無機フィラー及び硬化促進剤等をさらに含む。
【0041】
[エポキシ樹脂]
エポキシ樹脂は、硬化して接着作用を有するものであれば特に限定されない。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等の二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等の一般に知られているエポキシ樹脂を適用することができる。これらは一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0042】
[硬化剤]
硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂、エステル化合物、芳香族アミン、脂肪族アミン及び酸無水物等が挙げられる。これらの中でも、反応性及び経時安定性の観点から、硬化剤は、好ましくはフェノール樹脂である。フェノール樹脂の市販品としては、例えば、DIC株式会社製のフェノライトKA及びTDシリーズ、三井化学株式会社製のミレックスXLC-シリーズ及びXLシリーズ(例えば、ミレックスXLC-LL)、エア・ウォーター株式会社製のHEシリーズ(例えば、HE100C-30)、明和化成株式会社製のMEHC-7800シリーズ(例えば、MEHC-7800-4S)等が挙げられる。これらは一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0043】
エポキシ樹脂とフェノール樹脂との配合量は、硬化性の観点から、それぞれエポキシ当量と水酸基当量との当量比が、好ましくは0.30/0.70~0.70/0.30、より好ましくは0.35/0.65~0.65/0.35、さらに好ましくは0.40/0.60~0.60/0.40、特に好ましくは0.45/0.55~0.55/0.45である。配合比が上記範囲内であることによって、硬化性及び流動性の両方を充分に高水準に達成し易い。
【0044】
エポキシ樹脂及び硬化剤の合計の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の全量を基準としたとき、好ましくは10~70質量%、より好ましくは15~60質量%である。
【0045】
[エラストマ]
エラストマとしては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリブタジエン、アクリロニトリル、エポキシ変性ポリブタジエン、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、フェノール変性ポリブタジエン、カルボキシ変性アクリロニトリル等が挙げられる。
【0046】
エラストマは、溶剤への溶解性及び流動性の観点から、好ましくはアクリル系樹脂、より好ましくはグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート等のエポキシ基又はグリシジル基を架橋性官能基として有する官能性モノマーを重合して得られるエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂である。これらの中でも、アクリル系樹脂は、好ましくはエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びエポキシ基含有アクリルゴム、より好ましくはエポキシ基含有アクリルゴムである。エポキシ基含有アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とし、例えば、ブチルアクリレートとアクリロニトリル等との共重合体、エチルアクリレートとアクリロニトリル等との共重合体をからなる、エポキシ基を有するゴムである。なお、アクリル系樹脂は、エポキシ基又はグリシジル基に加えて、アルコール性又はフェノール性水酸基、カルボキシル基等の架橋性官能基をさらに有していてもよい。
【0047】
アクリル系樹脂の市販品としては、例えば、ナガセケムテック株式会社製のSG-70L、SG-708-6、WS-023 EK30、SG-280 EK23、SG-P3溶剤変更品(商品名、アクリルゴム、重量平均分子量:80万、Tg:12℃、溶剤はシクロヘキサノン)等が挙げられる。
【0048】
アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは-50~50℃、より好ましくは-30~30℃である。アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10万~300万、より好ましくは50万~200万である。Mwがこの範囲のアクリル系樹脂を熱硬化性樹脂組成物に配合することで、熱硬化性樹脂組成物をフィルム状に形成し易く、フィルム状での強度、可撓性、タック性を適切に制御し易い。これに加え、リフロー性及び埋込性の両方が向上する傾向にある。ここで、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて換算した値を意味する。なお、分子量分布の狭いアクリル系樹脂を用いることによって、埋込性に優れ、かつ高弾性の接着剤片を形成できる傾向にある。
【0049】
アクリル系樹脂の含有量は、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計量を100質量部としたとき、好ましくは20~200質量部、より好ましくは30~100質量部である。アクリル系樹脂の含有量がこのような範囲にあると、成形時の流動性の制御、高温での取り扱い性、及び埋込性をより一層優れる傾向にある。
【0050】
[無機フィラー]
無機フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミウィスカ、窒化ホウ素、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が挙げられる。これらは一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0051】
無機フィラーの平均粒径は、接着性を向上させる観点から、好ましくは0.005μm~1.0μm、より好ましくは0.05~0.5μmである。無機フィラーの表面は、溶剤及び樹脂成分との相溶性、並びに接着強度の観点から化学修飾されていることが好ましい。表面を化学修飾する材料としては、例えば、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤の官能基の種類として、例えば、ビニル基、アクリロイル基、エポキシ基、メルカプト基、アミノ基、ジアミノ基、アルコキシ基、エトキシ基が挙げられる。
【0052】
熱硬化性樹脂組成物の流動性及び破断性、並びに硬化後の引張弾性率及び接着力を制御する観点から、無機フィラーの含有量は、熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分量を100質量部としたとき、好ましくは20~200質量部、より好ましくは30~100質量部である。
【0053】
[硬化促進剤]
硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール類及びその誘導体、有機リン系化合物、第二級アミン類、第三級アミン類、第四級アンモニウム塩等が挙げられる。硬化促進剤は、適度な反応性の観点から、好ましくはイミダゾール類及びその誘導体である。イミダゾール類としては、例えば、2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール等が挙げられる。これらは一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0054】
硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計量を100質量部としたとき、好ましくは0.01~3質量部、より好ましくは0.04~0.2質量部である。硬化促進剤の含有量がこのような範囲にあると、硬化性と信頼性とを両立できる傾向にある。
【0055】
<第二実施形態>
上記第一実施形態においては、ダミーチップDの上面の高さと、チップS1の上面の高さが一致している構造体30Aを(A)工程で準備する形態を例示したが、ダミーチップDの上面がチップS1の上面よりも高い構造体を(A)工程で準備してもよい。図7に示す構造体30Bは、基板10と、基板10上に配置されたチップS1と、チップS1と離間して基板10上に配置されたダミーチップDとを備える。構造体30Bにおいて、基板10及びチップS1を平面視し、チップS1の中心点を通る直線を引いたとき、ダミーチップDが配置されている第一の仮想領域と、スペーサーが配置されていない第二の仮想領域とに当該直線によって基板10を区画することが可能である。構造体30Bにおいて、ダミーチップDの上面がチップS1の上面よりも高い。
【0056】
第一実施形態の(D)工程(封止材50で封止する工程)の前までに、ダミーチップDの上面の高さと、チップS1の上面の高さとが一致していればよく、(C)工程において、接着剤片付きチップS2aでダミーチップDの接着剤片Daを押し潰すことによってダミーチップDの高さとチップS1の上面の高さとを一致させればよい(図8参照)。フリップチップ接続によってチップS1を基板10に搭載する場合、フリップチップの接続部の高さに5μm程度のばらつきが生じ易く、その結果、チップS1の上面の高さ位置に5μm程度のばらつきが生じる。このばらつきを見越してダミーチップDの上面の位置を、接続後のチップS1の上面の設定位置よりも8~12μm程度高めに設定しておくことで、(A)工程においてダミーチップDの上面の高さとチップS1の上面の高さを厳密に一致させる必要がないという利点がある。
【0057】
本実施形態において、ダミーチップDは押し潰されることによって、ダミーチップDの上面の高さがチップS1の上面の高さと一致する材料を含んでいてもよい。ダミーチップDの接着剤片Daは、接着剤片付きチップS2aで押し潰される材料からなるものであってよい。より具体的には、ダミーチップDの接着剤片Daは、接着剤片付きチップS2aの接着剤片Saよりも軟らかいことが好ましい。接着剤片Daを接着剤片Saよりも軟らかくする手法としては、例えば、接着剤片Daの熱硬化性樹脂の含有量を接着剤片Saよりも多くしたり、接着剤片Daのエラストマの含有量を接着剤片Saよりも少なくしたりすることが挙げられる。
【0058】
ダミーチップDの接着剤片Da及び接着剤片付きチップS2aの接着剤片Saは、上述の熱硬化性樹脂組成物からなる接着フィルムから形成することができる。接着剤片Daの溶融粘度は、接着剤片Saの溶融粘度よりも小さいことが好ましい。接着フィルムの溶融粘度は、例えば、回転式粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、ARES-RDA)を用いて測定することができる。
【0059】
ダミーチップDの接着剤片Daの80℃における溶融粘度は、例えば、100Pa・s以上10000Pa・s未満であってよい。接着剤片付きチップS2aの接着剤片Saの80℃における溶融粘度は、例えば、10000Pa・s以上50000Pa・s未満であってよい。
【0060】
ダミーチップDの接着剤片Daは、接着剤片付きチップSa2の接着剤片Saよりも厚いことが好ましい。本実施形態において、例えば、接着剤片Daの厚さは接着剤片Saの厚さの1.1~8倍であり、1.2~6倍であってもよい。
【0061】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、チップS1をフリップチップ接続によって搭載する場合を例示したが、接着剤によってチップS1を基板10に固定した後、ワイヤーボンディングによって電気的な接続を行ってもよい。
【0062】
また、例えば、上記実施形態においては、スペーサーの一態様として、チップと、当該チップの一方の面に設けられた接着剤片とを備えるダミーチップを用いる場合を例示したが、スペーサーの他の一態様として、熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる支持片、あるいは、熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層と樹脂層又は金属層とを含む支持片であってもよい。樹脂層は、例えば、ポリイミド層であってよく、金属層は、例えば、銅層又はアルミニウム層であってよい。
【符号の説明】
【0063】
10…基板、10a…第一の仮想領域、10b…第二の仮想領域、30A,30B,40…構造体、50…封止材、100…半導体装置、C1,C2…接点、CP…中心点、D…ダミーチップ(スペーサー)、D1…チップ、Da…接着剤片、S1…チップ(第一のチップ)、S2…チップ(第二のチップ)、S2a…接着剤片付きチップ、Sa…接着剤片、Sc…硬化物(接着剤片)、SL…直線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8