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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】温度調節装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6568 20140101AFI20240806BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240806BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20240806BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20240806BHJP
【FI】
H01M10/6568
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/6556
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020102546
(22)【出願日】2020-06-12
(65)【公開番号】P2021197273
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100173598
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 桜子
(72)【発明者】
【氏名】丸笠 茂男
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-186924(JP,A)
【文献】特開2009-9853(JP,A)
【文献】特開2014-82047(JP,A)
【文献】特開2016-192280(JP,A)
【文献】特表2014-513382(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0237805(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6568
H01M 10/613
H01M 10/615
H01M 10/6556
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単電池の並び方向に伸びて熱媒体を流通させるとともに当該単電池に接触する第1流路を有する平板状の基部と、
前記熱媒体を流通させる第2流路を有するとともに、当該第2流路が前記複数の単電池の内の隣り合う単電池の少なくともいずれかの単電池に接触するように前記基部に対して交差する方向に伸びて当該隣り合う単電池間に設けられた交差部と、
を備え
前記基部および前記交差部は、前記第1流路および前記第2流路を有する平板にて成形された後に、当該交差部が、折り曲げられることで前記交差する方向に伸びている温度調節装置。
【請求項2】
前記第1流路と、前記第2流路とは、連通している
請求項1に記載の温度調節装置。
【請求項3】
前記基部は、前記並び方向に伸びて前記熱媒体を流通させるとともに前記単電池に接触する第3流路を有し、
前記第2流路は、前記第1流路と前記第3流路との間に設けられている
請求項1または2に記載の温度調節装置。
【請求項4】
前記第2流路は、前記並び方向に直交する方向に伸びた直交流路と、当該直交流路に交差する方向に伸びて当該直交流路と前記第1流路とを接続する第1接続流路と、当該直交流路に交差する方向に伸びて当該直交流路と前記第3流路とを接続する第2接続流路とを有し、
少なくとも前記直交流路が前記単電池に接触する
請求項3に記載の温度調節装置。
【請求項5】
前記第1接続流路および前記第2接続流路の少なくとも一部は湾曲している
請求項4に記載の温度調節装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、組電池に冷熱を伝えて冷却したり、温熱を伝えて加熱したりする温度調節装置が提案されている。
例えば、特許文献1に記載された温度調節装置は、熱媒体用の流路を有し、組電池を構成する複数の単電池に接触する温度調節板を備える。温度調節板は、アルミニウム製ロールボンドパネルからなり、流路の両端部が一方の短辺に開口して、外部から熱媒体を導入するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-186049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された温度調節装置においては、単電池の温度を調節する効率の向上を図るという点で、さらなる改善の余地があった。
本発明は、温度調節の効率の向上を図ることができる温度調節装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと完成させた本発明は、複数の単電池の並び方向に伸びて熱媒体を流通させるとともに当該単電池に接触する第1流路を有する平板状の基部と、前記熱媒体を流通させる第2流路を有するとともに、当該第2流路が前記複数の単電池の内の隣り合う単電池の少なくともいずれかの単電池に接触するように前記基部に対して交差する方向に伸びて当該隣り合う単電池間に設けられた交差部と、を備える温度調節装置である。
ここで、前記第1流路と、前記第2流路とは、連通していても良い。
また、前記基部は、前記並び方向に伸びて前記熱媒体を流通させるとともに前記単電池に接触する第3流路を有し、前記第2流路は、前記第1流路と前記第3流路との間に設けられていても良い。
また、前記第2流路は、前記並び方向に直交する方向に伸びた直交流路と、当該直交流路に交差する方向に伸びて当該直交流路と前記第1流路とを接続する第1接続流路と、当該直交流路に交差する方向に伸びて当該直交流路と前記第3流路とを接続する第2接続流路とを有し、少なくとも前記直交流路が前記単電池に接触しても良い。
また、前記第1接続流路および前記第2接続流路の少なくとも一部は湾曲していても良い。
また、前記基部および前記交差部は、前記第1流路および前記第2流路を有する平板にて成形された後に、当該交差部が、折り曲げられることで前記交差する方向に伸びていても良い。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、温度調節の効率の向上を図ることができる温度調節装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態に係る温度調節装置の概略構成の一例を示す図である。
図2】温度調節装置を、図1のIIの方向に見た形状の一例を示す図である。
図3図2のIII-III部の断面形状の一例を示す図である。
図4】ベース板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、実施の形態について詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係る温度調節装置10の概略構成の一例を示す図である。
図2は、温度調節装置10を、図1のIIの方向に見た形状の一例を示す図である。
図3は、図2のIII-III部の断面形状の一例を示す図である。
図4は、ベース板50の平面図である。
実施の形態に係る温度調節装置10は、組電池1の温度を調節する装置である。
組電池1は、複数(例えば12個)の単電池2を有している。単電池2は、一定の高さ(図1の上下方向の大きさ)、一定の厚み(図1の左右方向の大きさ)および一定の幅(図1の紙面に直交する方向の大きさ)の直方体状である。単電池2は、一対の端子3を有している。なお、図1においては、単電池2や端子3の外形の輪郭のみを示し、その他の接続用の部材等を省略して示している。
【0009】
温度調節装置10は、内部に熱媒体が流通する装置本体20と、装置本体20の外部から内部に温度調節用の熱媒体を流入させる入口パイプ11と、装置本体20の内部から外部に当該熱媒体を流出させる出口パイプ12と、を備えている。熱媒体の種類は特に限定されず、ロングライフクーラント(LLC)であることを例示することができる。
【0010】
装置本体20は、組電池1の組み付け側の面である第1面21と第1面21の裏側の面である第2面22との両方から突出して内部に流路23を形成する、アルミニウム製のロールボンドパネルにて成形されている。装置本体20は、図2に示すように、図1のIIの方向に見た場合の形状が長方形であり、流路23の両端部は、ともに一方の短辺に設けられている。そして、流路23の一方の端部である入口側端部24に、中空状の部材を介して入口パイプ11が取り付けられ、他方の端部である出口側端部25に、中空状の部材を介して出口パイプ12が取り付けられている。第1面21および第2面22は、平坦な面である。
【0011】
装置本体20は、流路23を有する平板状の基部30と、基部30に対して交差する方向であって隣接する単電池2間に設けられるとともに、流路23を有する複数の交差部40と、を備えている。
装置本体20には、複数の単電池2が、単電池2の厚み方向が長手方向となるように並んだ状態で載せられるため、交差部40は、長手方向に並んでいる。交差部40は、ロールボンドパネルの一部が、折り曲げられることで、基部30に対して交差する。
【0012】
図4には、交差部40が折り曲げられる前の装置本体20であるベース板50の平面図の一例を示している。
図4に示すように、ベース板50に形成された流路23は、入口側端部24から長手方向に伸びた入口側流路51と、出口側端部25から長手方向に伸びた出口側流路52とを有している。また、入口側流路51と出口側流路52との間に設けられた複数の中間流路53を有している。
【0013】
入口側流路51における、中間流路53との接続点には、中間流路53とは反対側に入口側流路51の内部に突出した凸部511が形成されている。また、出口側流路52における、中間流路53との接続点には、中間流路53とは反対側に出口側流路52の内部に突出した凸部521が形成されている。
【0014】
中間流路53は、入口側流路51から、出口側流路52の方へ短手方向に伸びた第1中間流路531と、出口側流路52から、入口側流路51の方へ短手方向に伸びた第2中間流路532とを有している。また、中間流路53は、第1中間流路531における出口側流路52側の端部から、入口側端部24とは反対方向に長手方向に伸びた第3中間流路533と、第2中間流路532における入口側流路51側の端部から、出口側端部25とは反対方向に長手方向に伸びた第4中間流路534とを有している。また、中間流路53は、第3中間流路533の端部と第4中間流路534の端部とを接続する、短手方向に伸びた第5中間流路535を有している。第3中間流路533、第4中間流路534および第5中間流路535は、図4に示すように、ベース板50の板面に直交する方向に見た場合に、「コ」の字状に成形されている。
【0015】
そして、ベース板50には、中間流路53の周りに、ベース板50の板面に直交する方向に見た場合に、「コ」の字状にベース板50を貫通する切り込み55が形成されている。切り込み55は、入口側流路51と第3中間流路533との間に、長手方向に伸びた第1切り込み551と、出口側流路52と第4中間流路534との間に、長手方向に伸びた第2切り込み552と、第1切り込み551と第2切り込み552とを接続するように短手方向に伸びた第3切り込み553とから構成される。
【0016】
装置本体20の交差部40は、切り込み55の内側の領域が、第1切り込み551における入口側端部24側の端部と、第2切り込み552における出口側端部25側の端部とを結ぶ線を起点として、折り曲げられている。そして、交差部40は、図1に示すように、基部30から遠い部分である先端側に設けられた、基部30に直交する方向の直交部41と、直交部41と基部30とを接続する湾曲した湾曲部42とを有している。
【0017】
交差部40は、直交部41が、中間流路53の第5中間流路535と、第3中間流路533および第4中間流路534の一部を有し、湾曲部42が、第3中間流路533および第4中間流路534の一部を有するように、折り曲げられている。湾曲部42の曲率半径は、折り曲げられる際に、第3中間流路533および第4中間流路534における熱媒体が通る面積が0にならないように設定されている。
【0018】
上述したようにして成形された温度調節装置10においては、入口パイプ11を介して装置本体20の流路23に流入した熱媒体は、入口側流路51を通って長手方向に進み、中間流路53、出口側流路52を通って、出口パイプ12を介して装置本体20から流出する。その際、入口側端部24から入口側流路51を通って長手方向に進んだ熱媒体は、その一部が凸部511にぶつかることもあり、そのまま入口側流路51を通って長手方向に向かうものと、中間流路53内に入って短手方向に向かうものとに分かれる。中間流路53内に入った熱媒体は、第1中間流路531、第3中間流路533、第5中間流路535、第4中間流路534、第2中間流路532を順に通って出口側流路52内に流入する。出口側流路52と中間流路53との接続点においては、出口側流路52を長手方向に進んできた熱媒体と、中間流路53を進んできた熱媒体とが合流する。
【0019】
上述した構成により、図1に示すように、各単電池2の底面5が、入口側流路51、出口側流路52、中間流路53の第1中間流路531および第2中間流路532に接触する。また、各単電池2の側面6が、交差部40の直交部41に設けられた、中間流路53の第5中間流路535、第3中間流路533および第4中間流路534の一部に接触する。また、各単電池2の底面5と側面6とを接続する接続部位7が、第3中間流路533および第4中間流路534の一部に接触する。
【0020】
すなわち、温度調節装置10は、複数の単電池2の並び方向に伸びて熱媒体を流通させるとともに単電池2に接触する第1流路の一例としての入口側流路51を有する平板状の基部30を備える。また、温度調節装置10は、熱媒体を流通させる第2流路の一例としての、第3中間流路533、第4中間流路534および第5中間流路535を有するとともに、これらの流路が複数の単電池2の内の隣り合う単電池2の少なくともいずれかの単電池2に接触するように基部30に対して交差する方向に伸びて当該隣り合う単電池2間に設けられた交差部40と、を備える。
【0021】
このように、本実施の形態に係る温度調節装置10によれば、単電池2の底面5と側面6が流路23に接するので、例えば単電池2の底面5のみが流路23に接する構成と比較して、単電池2と熱媒体との間の熱交換が促進される。その結果、温度調節装置10によれば、単電池2の温度調節の効率の向上を図ることができる。
【0022】
ここで、入口側流路51と、第3中間流路533、第4中間流路534および第5中間流路535とは連通している。つまり、入口側端部24から入口側流路51に流入した熱媒体が、第3中間流路533、第4中間流路534および第5中間流路535を流通する。これにより、例えば、単電池2の底面5と熱交換する熱媒体と、単電池2の側面6と熱交換する熱媒体とを別々に供給する場合と比較して、簡易な構成となる。また、一の熱媒体の熱を十分に、単電池2との間の熱交換に用いることができるので、少ない量の熱媒体で単電池2の温度調節を効率よく行うことが可能となる。
【0023】
また、基部30は、単電池2の並び方向に伸びて熱媒体を流通させるとともに単電池2に接触する第3流路の一例としての出口側流路52を有し、第3中間流路533、第4中間流路534および第5中間流路535は、入口側流路51と出口側流路52との間に設けられている。これにより、入口側流路51と、第3中間流路533、第4中間流路534および第5中間流路535とを連通することが可能となる。
【0024】
そして、第3中間流路533、第4中間流路534および第5中間流路535は、単電池2の並び方向に直交する方向に伸びた直交流路の一例としての第5中間流路535と、第5中間流路535に交差する方向に伸びて、第5中間流路535と入口側流路51とを接続する第1接続流路の一例としての第3中間流路533と、第5中間流路535と出口側流路52とを接続する第2接続流路の一例としての第4中間流路534とを有する。そして、少なくとも第5中間流路535が単電池2に接触する。第5中間流路535は、単電池2の並び方向に直交する方向に伸びているので、単電池2の側面6とより長く接触する。これにより、単電池2と熱媒体との間の熱交換がより促進される。
【0025】
そして、第3中間流路533および第4中間流路534の少なくとも一部は湾曲している。これにより、並び方向に直交する方向に伸びた第5中間流路535にて湾曲させることなく、第5中間流路535と単電池2の側面6とを接触させて単電池2と熱媒体との熱交換を図ることが可能となる。
【0026】
また、本実施の形態に係る温度調節装置10においては、基部30および交差部40は、入口側流路51および出口側流路52を有する平板の一例としてのベース板50にて成形された後に、交差部40が、折り曲げられることで交差する方向に伸びている。これにより、上述した機能を有する交差部40を簡易に成形することが可能となる。
また、ベース板50を、第1面21と、第2面22と、の両方から突出して内部に流路23を形成するロールボンドパネルにて成形している。これにより、第1面21又は第2面22の片方の面が平坦である場合よりも、流路23の断面積を大きくすることができ、熱媒体が流通する際の圧力損失を低減することができる。また、両面が突出しているベース板50は、片方の面が平坦である場合よりも、製作し易かったり、2つの材料の板厚を同じにし易かったりするので、ベース板50を容易に製作することができる。
【0027】
なお、上述した温度調節装置10の装置本体20は、単電池2の組み付け側の面である第1面21と、第2面22と、の両方から突出して内部に流路23を形成するロールボンドパネルにて成形されているが、特にかかる態様に限定されない。例えば、特許文献1に記載された温度調節装置のように、単電池2の組み付け側の面である第1面21の裏面である第2面22のみから突出して内部に流路を形成するロールボンドパネルにて成形されていても良い。単電池2の組み付け側の面である第1面21をフラットにすることにより、単電池2との接触面積を増やすことができ、冷却効率を向上させることが可能となる。
【0028】
また、温度調節装置10においては、入口パイプ11を介して装置本体20の流路23に熱媒体を流入させ、出口パイプ12を介して装置本体20から熱媒体を流出させる構成であるが、特にかかる態様に限定されない。例えば、温度調節装置10は、装置本体20の流路23に熱媒体を封入したヒートパイプパネルで構成しても良い。
【0029】
また、温度調節装置10に対する単電池2の設置姿勢は限定されない。図1には、端子3が、温度調節装置10の装置本体20と反対側の部位(図1の上部)において、装置本体20の板面に直交する方向に伸びるように、単電池2が設置されている態様を示しているが、特にかかる態様に限定されない。例えば、単電池2は、端子3が装置本体20の板面に平行な方向(図1の紙面に直交する方向)に伸びるように設置されていても良い。
【符号の説明】
【0030】
1…組電池、2…単電池、10…温度調節装置、11…入口パイプ、12…出口パイプ、20…装置本体、23…流路、30…基部、40…交差部、50…ベース板、51…入口側流路、52…出口側端部、53…中間流路、55…切り込み、531…第1中間流路、532…第2中間流路、533…第3中間流路、534…第4中間流路、535…第5中間流路、551…第1切り込み、552…第2切り込み、553…第3切り込み
図1
図2
図3
図4