(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】光学フィルム、パネルユニット、およびディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20240806BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20240806BHJP
G09F 9/40 20060101ALI20240806BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240806BHJP
G09F 9/33 20060101ALI20240806BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G02B5/02 B
G02B5/22
G09F9/40 301
G09F9/00 313
G09F9/33
B32B27/20 A
(21)【出願番号】P 2023076132
(22)【出願日】2023-05-02
(62)【分割の表示】P 2022534959の分割
【原出願日】2021-06-07
【審査請求日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2020117339
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】島田 光星
(72)【発明者】
【氏名】梅田 博紀
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-023185(JP,A)
【文献】特開2019-066613(JP,A)
【文献】特開2019-204905(JP,A)
【文献】特開2019-028370(JP,A)
【文献】国際公開第2015/163041(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/02
G02B 5/22
G09F 9/40
G09F 9/00
G09F 9/33
B32B 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルムであって、
前記光学フィルムは、複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置に用いられ、
前記パネルユニットは、複数のマイクロLED素子が配置された構造を含むLEDモジュールを含み、
前記光学フィルムは、前記ディスプレイ装置において、前記LEDモジュールよりも表示面側に配置され、
前記光学フィルムは、透光
性層
Aおよび基材層を含み、
前記透光
性層
Aは、粒子および着色剤を含み、前記透光
性層
Aの全光線透過率は、10%以上30%以下であ
り、
前記基材層は、透光性層Bであり、
前記透光性層A上に、前記透光性層Bが配置されており、
前記透光性層Aと、前記透光性層Bとは、1つの透光性層Aと、1つの透光性層Bとの積層体のヘイズを測定した際に、前記透光性層A側から光を入射させたときの値Hz(A-B)(%)と、前記透光性層B側から光を入射させたときの値Hz(B-A)(%)とが、Hz(A-B)<Hz(B-A)となる関係を満たす、
光学フィルム。
【請求項2】
前記透光性層
Aは、樹脂フィルムである、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記透光性層
Aの全光線透過率は、15%以上25%以下である、請求項1または2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記粒子は、無機酸化物粒子である、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記着色剤は、顔料である、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記基材層は、樹脂フィルムである、請求項
1~5のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記透光性層Aよりも前記表示面側に前記基材層が配置されている、請求項
1~6のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記マイクロLED素子は、LED発光チップと、前記LED発光チップを被覆する樹脂カバーとを含み、
前記マイクロLED素子の幅(W)および奥行き(D)は、いずれも300μm以下であり、
前記マイクロLED素子の高さ(H)は、200μm以下である、
請求項1~
7のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の光学フィルムを有するパネルユニット。
【請求項10】
パネルユニットであって、
前記パネルユニットは、複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置に用いられ、
前記パネルユニットは、光学フィルムおよび複数のマイクロLED素子が配置された構造を含むLEDモジュールを含み、
前記光学フィルムは、前記ディスプレイ装置において、前記LEDモジュールよりも表示面側に配置され、
前記光学フィルムは、透光性層を含み、前記透光性層は、粒子および着色剤を含み、前記透光性層の全光線透過率は、10%以上30%以下である、
パネルユニット。
【請求項11】
前記透光性層は、樹脂フィルムである、請求項10に記載のパネルユニット。
【請求項12】
前記透光性層の全光線透過率は、15%以上25%以下である、請求項10または11に記載のパネルユニット。
【請求項13】
前記粒子は、無機酸化物粒子である、請求項10~12のいずれか1項に記載のパネルユニット。
【請求項14】
前記着色剤は、顔料である、請求項10~13のいずれか1項に記載のパネルユニット。
【請求項15】
前記透光性層は、透光性層Aであり、
前記光学フィルムは、基材層をさらに含む、
請求項10~14のいずれか1項に記載のパネルユニット。
【請求項16】
前記基材層は、樹脂フィルムである、請求項15に記載のパネルユニット。
【請求項17】
前記透光性層Aよりも前記表示面側に前記基材層が配置されている、請求項15または16に記載のパネルユニット。
【請求項18】
前記マイクロLED素子は、LED発光チップと、前記LED発光チップを被覆する樹脂カバーとを含み、
前記マイクロLED素子の幅(W)および奥行き(D)は、いずれも300μm以下であり、
前記マイクロLED素子の高さ(H)は、200μm以下である、
請求項10~17のいずれか1項に記載のパネルユニット。
【請求項19】
複数の請求項
9~18のいずれか1項に記載のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置に用いられる光学フィルム、当該ディスプレイ装置に用いられるパネルユニット、ならびに当該ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の液晶式のディスプレイ装置に代わる次世代型のディスプレイ装置として、特開2018-14481号公報(米国特許出願公開第2018/0019233号明細書、米国特許出願公開第2018/0331085号明細書、または米国特許第2018/0331086号明細書に対応)に記載のようなマイクロLEDディスプレイ装置に代表される、自発光型のディスプレイ装置の開発が進められている。
【0003】
かような自発光型表示体においては、光源となる発光素子が実装されている基板等に反射した光が表示される映像品位に悪影響を及ぼすことを回避するために、可視光を吸収する遮光層を、発光素子を含む発光モジュールよりも表示面側に積層することが検討されている。
【0004】
特開2019-204905号公報には、複数の発光素子が配線基板に実装されてなる発光モジュールと、オレフィン系樹脂をベース樹脂とし、可視光線透過率が5%以上70%以下の黒色封止材シートと、透明光学層(透光性層)と、を備える自発光型表示体が開示されている。当該自発光型表示体において、黒色封止材シートは、発光素子、および配線基板の表面を被覆して発光モジュールに積層され、透明光学層は、黒色封止材シートに積層される。そして、当該文献には、かような黒色封止材シートは、遮光層として良好な特性を示すとともに、自発光型表示体の層構成を、従来の自発光型表示体よりも簡略化することができ、その結果、自発光型表示体の生産性を向上させることができることが開示されている。
【発明の概要】
【0005】
特開2019-204905号公報に係る黒色封止材シートによれば、複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置に用いた際に、各パネルユニット間のつなぎ目に由来する映像品位の低下を抑制することが可能である。しかしながら、特開2019-204905号公報に係る黒色封止材シートを用いたディスプレイ装置では、輝度が大きく低下するという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置において、各パネルユニット間のつなぎ目に由来する映像品位の低下の抑制と、十分な輝度との両立を可能とする手段を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の上記課題は、以下の手段によって解決されうる。
【0008】
粒子および着色剤を含み、全光線透過率が10%以上30%以下である、透光性層を含む、
複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置に用いられる、光学フィルム。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(A)~(C)は、各々、本発明の一実施形態で用いられる光学フィルムの断面構造を表す模式図である。1は後述する透光性層Aを、2は積層フィルムを、3は後述する透光性層Bを、3’は透光性層Bの母体(基礎)となる層またはフィルムを、4はハードコート層を、それぞれ表す。
【
図2】本発明の一実施形態に係る光学フィルムの製造装置の一例を表す模式図である。100は積層体(積層フィルム)を、110は支持体(例えば、透光性層B等の基材層)を、200は製造装置を、201は支持体(例えば、透光性層B等の基材層)のロール体を、210は供給部を、220は塗布部を、221はバックアップロールを、222は塗布ヘッドを、223は減圧室を、230は乾燥部を、231は乾燥室を、232は乾燥用気体の導入口を、233は排出口を、240は冷却部を、241は冷却室を、242は冷却風入口を、243は冷却風出口を、250は巻き取り部を、251は積層体(積層フィルム)のロール体を、a、b、c、dは搬送ロールを、それぞれ表す。
【
図3】本発明の一実施形態に係るパネルユニットの断面構造を示す模式図である。1は後述する透光性層Aを、2は積層フィルムを、3は後述する透光性層Bを、3’は透光性層Bの母体(基礎)となる層またはフィルムを、4はハードコート層を、10はパネルユニットを、11はLEDモジュールを、12は接着層を、それぞれ表す。
【
図4】本発明の一実施形態に係る独立モジュール型のディスプレイ装置の平面構造を示す模式図である。10はパネルユニットを、20は独立モジュール型のディスプレイ装置を、それぞれ表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等は、室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で測定する。
【0011】
また、本明細書において、(共)重合体とは共重合体および単独重合体を含む総称である。
【0012】
そして、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートの総称である。(メタ)アクリル酸等の(メタ)を含む化合物等も同様に、名称中に「メタ」を有する化合物と「メタ」を有さない化合物の総称である。
【0013】
以下、必要に応じて添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0014】
<透光性層A>
本発明の一態様は、粒子および着色剤を含み、全光線透過率が10%以上30%以下である、透光性層を含む、複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置に用いられる、光学フィルムに関する。本発明の一態様によれば、複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置において、各パネルユニット間のつなぎ目に由来する映像品位の低下抑制効果と、十分な輝度との両立を可能とする手段が提供されうる。
【0015】
なお、本明細書において、粒子および着色剤を含み、全光線透過率が10%以上30%以下である層を、透光性層Aとも称する。
【0016】
本発明者らは、本発明によって課題が解決されるメカニズムを以下のように推定している。
【0017】
複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置では、装置内に外光が入射すると、当該外光は光源となる発光素子が実装されている基板等により反射されて、反射光が生じる。そして、各パネルユニット間のつなぎ目において、例えば、この反射光が、隣接するパネルユニットの側面における反射または屈折を経て、表示面側に出射すること等によって、局所的な光の散乱が視認されることとなる。そして、かような局所的な光の散乱によって、各パネルユニット間のつなぎ目に由来する映像品位の低下が生じる。
【0018】
特開2019-204905号公報に係る黒色封止材シートは、可視光を吸収する機能を有することから、光源となる発光素子が実装されている基板等により反射された反射光を吸収して表示面側に向かう反射光を低減させ、また、出射する散乱光も低減させる。これにより、各パネルユニット間のつなぎ目に由来する映像品位の低下を抑制する。しかしながら、特開2019-204905号公報に係る黒色封止材シートは、光源となる発光素子から出射する出射光の多くを吸収するため、かようなシートを備えるパネルユニットまたはディスプレイ装置では、輝度が大きく低下する。
【0019】
一方、本発明において、透光性層Aは、着色剤を含み、全光線透過率が10%以上30%以下である。透光性層Aは、適切な範囲で可視光を吸収する機能を有することから、光源となる発光素子が実装されている基板等により反射された反射光を吸収して表示面側に向かう反射光を低減させ、また、出射する散乱光も低減させる。また、光源となる発光素子から出射する出射光の吸収量も一定以下となる。これらのことから、本発明に係る光学フィルムを備えるパネルユニットまたはディスプレイ装置では、十分な輝度が得られる。さらに、本発明において、透光性層Aは、粒子を含有する。粒子は光源となる発光素子が実装されている基板等により反射された反射光を全体として散乱することから、各パネルユニット間のつなぎ目で光の散乱が生じる場合であっても、その部分のみで局所的な光の散乱が生じる場合と比較して、光の散乱が目立ち難くなる。また、光源となる発光素子から出射する出射光についてもある程度は散乱させることから、各パネルユニット間のつなぎ目で光の散乱が生じる場合であっても、光の散乱が目立ち難くなる。
【0020】
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
【0021】
(ベース材料)
本発明の一実施形態に係る透光性層Aは、ベース材料を含むことが好ましい。ベース材料は、フィルムに自己支持性を付与し、フィルム中で粒子を保持するよう作用する。
【0022】
ベース材料の含有量は、特に制限されないが、光の透過性の観点から、透光性層Aの総質量に対して、50質量%超であることが好ましく、80質量%超であることがより好ましく、90質量%超であることがさらに好ましい。また、ベース材料の含有量は、光の吸収性や光の散乱性の観点から、透光性層Aの総質量に対して、100質量%未満であることが好ましい。
【0023】
ベース材料としては、特に制限されず、無機材料であっても、有機材料であってもよいが、有機材料であることが好ましい。
【0024】
また、透光性層Aは、樹脂フィルム等の透光性樹脂層であることが好ましい。透光性樹脂層とは、ベース材料として樹脂を含む透光性層を表し、樹脂フィルムとは、ベース材料として樹脂を含むフィルムを表す。ベース材料としての樹脂は、特に制限されず、例えば、アクリル樹脂(例えば、メチルメタクリレート-メチルアクリレート共重合体樹脂等)、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、シクロオレフィン樹脂(COP)、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂(例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等)、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等)等が挙げられる。これらの中でも、ヘイズ値と、光学均斉度との観点から、シクロオレフィン樹脂が好ましく、無機粒子や着色剤(特に顔料)の分散性の観点から、極性基を有するシクロオレフィン樹脂がより好ましい。極性基の例には、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、シアノ基、これらの基がメチレン基などの連結基を介して結合した基、カルボニル基、エーテル基、シリルエーテル基、チオエーテル基、イミノ基など極性を有する2価の有機基が連結基となって結合している炭化水素基などが含まれる。これらの中でも、カルボキシ基を有するシクロオレフィン樹脂が好ましい。なお、極性基が塩を形成することができる基である場合、極性基は塩を形成していてもよい。
【0025】
シクロオレフィン樹脂としては、特に制限されないが、下記一般式(A)で表されるシクロオレフィンモノマーの(共)重合体であることが好ましい。
【0026】
【0027】
一般式(A)の各Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換されたもしくは非置換の炭素原子数1~30の炭化水素基、または極性基を表す。また、一般式(A)のa、bは、それぞれ独立して、0以上の整数を示す。
【0028】
また、シクロオレフィン樹脂としては、下記一般式(A-1)または下記一般式(A-2)で表されるシクロオレフィンモノマーの(共)重合体であることがより好ましい。
【0029】
まず、一般式(A-1)で表されるシクロオレフィンモノマーについて説明する。
【0030】
【0031】
一般式(A-1)のR1~R4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換されたもしくは非置換の炭素原子数1~30の炭化水素基、または極性基を表す。但し、R1~R4の全てが水素原子となる場合を除き、R1とR2が同時に水素原子となるか、またはR3とR4が同時に水素原子となる場合はないものとする。
【0032】
ハロゲン原子は、特に制限されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であることが好ましい。炭素原子数1~30の炭化水素基は、特に制限されないが、炭素原子数1~30のアルキル基であることが好ましい。極性基は、特に制限されないが、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、シアノ基、これらの基がメチレン基などの連結基を介して結合した基、カルボニル基、エーテル基、シリルエーテル基、チオエーテル基、イミノ基など極性を有する2価の有機基が連結基となって結合している炭化水素基であることが好ましい。これらの中でも、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、またはアリルオキシカルボニル基であることがより好ましい。また、溶液製膜時の溶解性を確保する観点から、アルコキシカルボニル基、またはアリルオキシカルボニル基であることがさらに好ましい。
【0033】
R1~R4のうち少なくとも1つは、シクロオレフィン樹脂の溶液製膜時の溶解性を確保する観点などから、極性基であることが好ましい。
【0034】
一般式(A-1)のpは、0~2の整数を示す。フィルムの耐熱性を高める観点では、pは、1~2であることが好ましい。pが1~2であると、得られる樹脂が嵩高くなり、ガラス転移温度が向上しやすいからである。
【0035】
次に、一般式(A-2)で表されるシクロオレフィンモノマーについて説明する。
【0036】
【0037】
一般式(A-2)のR5は、水素原子、炭素原子数1~5の炭化水素基、または炭素原子数1~5のアルキル基を有するアルキルシリル基を表す。中でも、R5は、炭素原子数1~3の炭化水素基であることが好ましい。
【0038】
一般式(A-2)のR6は、極性基、またはハロゲン原子を表す。極性基は、特に制限されないが、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、またはシアノ基であることが好ましい。ハロゲン原子は、特に制限されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子であることが好ましい。これらの中でも、R6は、極性基であることが好ましく、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、またはアリルオキシカルボニル基であることがより好ましい。また、溶液製膜時の溶解性を確保する観点から、アルコキシカルボニル基、またはアリルオキシカルボニル基であることがさらに好ましい。
【0039】
一般式(A-2)で表されるようなシクロオレフィンモノマーを用いることで、分子の対称性が低くなり、溶媒揮発時の樹脂の拡散運動が促進されやすい。
【0040】
一般式(A-2)において、pは、0~2の整数を表す。
【0041】
以下に、一般式(A-1)および(A-2)の構造の具体例を示す。
【0042】
【0043】
一般式(A-1)または一般式(A-2)で表されるシクロオレフィンモノマーと共重合可能な共重合性モノマーの例には、一般式(A-1)または一般式(A-2)で表されるシクロオレフィンモノマーと開環共重合可能な共重合性モノマー、一般式(A-1)または一般式(A-2)で表されるシクロオレフィンモノマーと付加共重合可能な共重合性モノマーが含まれる。
【0044】
一般式(A-1)または一般式(A-2)で表されるシクロオレフィンモノマーと開環共重合可能な共重合性モノマーの例には、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ジシクロペンタジエンなどの他のシクロオレフィンモノマーが含まれる。
【0045】
一般式(A-1)または一般式(A-2)で表されるシクロオレフィンモノマーと付加共重合可能な共重合性モノマーの例には、不飽和二重結合含有化合物、ビニル系環状炭化水素化合物、(メタ)アクリレートが含まれる。不飽和二重結合含有化合物の例には、炭素原子数2~12(好ましくは2~8)のオレフィン系化合物であり、その例には、エチレン、プロピレン、ブテンが含まれる。ビニル系環状炭化水素化合物の例には、4-ビニルシクロペンテン、2-メチル-4-イソプロペニルシクロペンテンなどのビニルシクロペンテン系モノマーが含まれる。(メタ)アクリレートの例には、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの炭素原子数1~20のアルキル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0046】
一般式(A-1)または一般式(A-2)で表されるシクロオレフィンモノマーに由来する構造単位の含有量は、シクロオレフィン樹脂を構成する構造単位の合計に対して、好ましくは50~100モル%、より好ましくは60~100モル%、さらに好ましくは70~100モル%である。
【0047】
シクロオレフィン樹脂としては、一般式(A-1)または一般式(A-2)で表されるシクロオレフィンモノマーを単独重合または共重合して得られる重合体が好ましく、例えば、以下のものが挙げられる。これらの中でも、(1)~(3)および(5)が好ましく、(3)および(5)がより好ましい。
【0048】
(1)一般式(A-1)または一般式(A-2)で表されるシクロオレフィンモノマーの開環重合体;
(2)一般式(A-1)または一般式(A-2)で表されるシクロオレフィンモノマーと共重合性モノマーとの開環共重合体;
(3)上記(1)または上記(2)の開環(共)重合体の水素添加(共)重合体;
(4)上記(1)または上記(2)の開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化したのち、水素添加した(共)重合体;
(5)一般式(A-1)または一般式(A-2)で表されるシクロオレフィンモノマーと不飽和二重結合含有化合物との共重合体;
(6)一般式(A-1)または一般式(A-2)で表されるシクロオレフィンモノマーの付加型(共)重合体およびその水素添加(共)重合体;
(7)一般式(A-1)または一般式(A-2)で表されるシクロオレフィンモノマーとメタクリレート、またはアクリレートとの交互共重合体。
【0049】
また、シクロオレフィン樹脂としては、例えば、下記一般式(B-1)で表される構造単位および下記一般式(B-2)で表される構造単位のうちの少なくとも一方を有するものが挙げられる。これらの中でも、得られるシクロオレフィン樹脂のガラス転移温度が高く、かつ透過率の高いフィルムが得られやすいとの観点から、一般式(B-2)で表される構造単位を含む重合体、または一般式(B-1)で表される構造単位と、一般式(B-2)で表される構造単位とを有する共重合体が好ましい。
【0050】
【0051】
一般式(B-1)中、Xは、-CH=CH-で表される基、または-CH2CH2-で表される基である。R1~R4およびpは、一般式(A-1)のR1~R4およびpとそれぞれ同一である。
【0052】
【0053】
一般式(B-2)中、Xは、-CH=CH-で表される基、または-CH2CH2-で表される基である。一般式(B-2)のR5、R6およびpは、一般式(A-2)のR5、R6およびpとそれぞれ同一である。
【0054】
シクロオレフィン樹脂の固有粘度〔η〕inhは、特に制限されないが、0.2~5cm3/gであることが好ましく、0.3~3cm3/gであることがより好ましく、0.4~1.5cm3/gであることがさらに好ましい。シクロオレフィン樹脂の固有粘度〔η〕inhは、JIS K 7367-1:2002により測定することができる。
【0055】
シクロオレフィン樹脂の数平均分子量(Mn)は、特に制限されないが、8000~100000であることが好ましく、10000~80000であることがより好ましく、12000~50000であることがさらに好ましい。また、シクロオレフィン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、20000~300000であることが好ましく、30000~250000であることがより好ましく、40000~200000であることがさらに好ましい。数平均分子量(Mn)や重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算にて測定することができる。
【0056】
固有粘度〔η〕inh、数平均分子量および重量平均分子量がそれぞれ上記範囲にあると、シクロオレフィン樹脂の耐熱性、耐水性、耐薬品性、機械的特性、フィルムとしての成形加工性がより良好となる。
【0057】
シクロオレフィン樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に制限されないが、110℃以上であることが好ましく、110~350℃であることがより好ましく、120~250℃であることがさらに好ましく、120~220℃であることが特に好ましい。Tgが110℃以上であると、高温条件下での使用、コーティング、印刷などの二次加工により変形がより生じ難くなる。一方、Tgが350℃以下であると、成形加工がより容易となり、成形加工時の熱によって樹脂が劣化する可能性がより低くなる。シクロオレフィン樹脂のTgは、JIS K 7121-1987により測定することができる。
【0058】
シクロオレフィン樹脂は、市販品を用いても、合成品を用いてもよい。市販品の例としては、特に制限されないが、例えば、JSR株式会社製のアートン(ARTON)(登録商標、以下同じ)G(例えば、アートン G7810)、アートンF、アートンR、およびアートンRX等が挙げられる。
【0059】
シクロオレフィン樹脂は、1種単独で使用することができ、または2種以上を併用することができる。
【0060】
また、ベース材料は、1種単独で使用することができ、または2種以上を併用することができる。
【0061】
(粒子)
本発明の一実施形態に係る透光性層Aは、粒子を含む。粒子は、透光性層A中に分散することで、光学フィルムを透過する光を散乱するよう作用する。よって、透光性層Aが粒子を含まない場合、複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置における、各パネルユニット間のつなぎ目に由来する映像品位の低下抑制が不十分となる。
【0062】
なお、本明細書において、粒子には後述する着色剤は含まないものとする。
【0063】
粒子としては、特に制限されないが、例えば、有機粒子、無機粒子、有機無機複合粒子等が挙げられる。
【0064】
有機粒子としては、特に制限されないが、例えば、ポリメチルメタクリレートビーズ、アクリル-スチレン共重合体ビーズ、メラミンビーズ、ポリカーボネートビーズ、スチレンビーズ、架橋ポリスチレンビーズ、ポリ塩化ビニルビーズ、ベンゾグアナミン-メラミンホルムアルデヒドビーズ等が挙げられる。
【0065】
無機粒子としては、特に制限されないが、例えば、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、インジウム、亜鉛、スズ、アンチモン、セリウム、ニオブ、タングステン、ケイ素等の中から選ばれる少なくとも1つを含む酸化物からなる無機酸化物粒子等が挙げられる。具体的には、ZrO2、ZrSiO4、TiO2、BaTiO3、SrTiO3、Al2O3、ゼオライト、In2O3、ITO(Indium Tin Oxide)、ZnO、SnO2、Sb2O3、CeO2、Nb2O5、WO3、シリカ(SiO2)等が挙げられる。
【0066】
これらの中でも、無機粒子が好ましく、無機酸化物粒子がより好ましく、ケイ素を含む酸化物がさらに好ましく、シリカ(SiO2)が特に好ましい。
【0067】
また、粒子は、コア-シェル構造をはじめとする多層構造を有していてもよい。
【0068】
これらの粒子は、表面処理を施して用いるか、あるいは表面処理を施さずに用いるかを選択することができる。
【0069】
表面処理を行う場合、表面処理の具体的な材料としては、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム等の異種無機酸化物、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、オルガノシロキサン、ステアリン酸等の有機酸等が挙げられる。これら表面処理の材料は、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。中でも、分散液の安定性の観点から、表面処理の材料としては、異種無機酸化物および金属水酸化物の少なくとも一方が好ましく、金属水酸化物がより好ましい。
【0070】
粒子の平均二次粒子径は、特に制限されないが、50nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましく、150nm以上であることがさらに好ましい。これらの範囲であると、各パネルユニット間のつなぎ目に由来する映像品位の低下抑制効果がより向上する。また、粒子の平均二次粒子径は、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることがさらに好ましい。これらの範囲であると、全体として画像が不鮮明となる映像品位の低下抑制効果がより高まる。
【0071】
粒子の平均二次粒子径は、層の電子顕微鏡写真から二次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、透過型電子顕微鏡写真(TEM)(株式会社日立ハイテク製 H-7650)にて粒子像を測定し、ランダムに選択した100個の二次粒子の等面積円相当直径の平均値を求め、この値を平均二次粒子径とする。
【0072】
粒子は、市販品を用いても合成品を用いてもよい。市販品としては、特に制限されないが、例えば、日本アエロジル株式会社製 R972V等が挙げられる。
【0073】
粒子は、1種単独で使用することができ、または2種以上を併用することができる。
【0074】
透光性層A中の粒子の含有量は、特に制限されないが、ベース材料100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましく、0.3質量部以上であることが特に好ましい。これらの範囲であると、各パネルユニット間のつなぎ目に由来する映像品位の低下抑制効果がより向上する。また、透光性層A中の粒子の含有量は、特に制限されないが、ベース材料100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、1質量部以下であることがさらに好ましい。これらの範囲であると、全体として画像が不鮮明となる映像品位の低下抑制効果がより高まる。
【0075】
(着色剤)
本発明の一実施形態に係る透光性層Aは、着色剤を含む。着色剤は、透光性層Aを着色し、光学フィルムの全光線透過率を制御するよう作用する。よって、透光性層Aが着色剤を含まない場合、複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置における、各パネルユニット間のつなぎ目に由来する映像品位の低下抑制が不十分となる。
【0076】
着色剤としては、特に制限されないが、例えば、染料および顔料等が挙げられる。
【0077】
顔料としては、特に限定されないが、例えば、カラーインデックスに記載される下記の番号の有機顔料および無機顔料、鉱物等が挙げられる。
【0078】
黒顔料としては、特に制限されないが、例えば、カーボンブラック、磁性体、鉄・チタン複合酸化物ブラックなどが挙げられる。ここで、カーボンブラックとしては、特に制限されないが、例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが挙げられる。また、磁性体としては、特に制限されないが、例えば、フェライト、マグネタイトなどが挙げられる。
【0079】
赤またはマゼンタ顔料としては、特に制限されないが、例えば、C.I.Pigment Red 3、5、19、22、31、38、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、208、216、226、257、Pigment Violet 3、19、23、29、30、37、50、88、Pigment Orange 13、16、20、36、ルビー(クロム含有コランダム)、ガーネット(柘榴石)、スピネル(尖晶石)等が挙げられる。
【0080】
青またはシアン顔料としては、特に制限されないが、例えば、C.I.Pigment
Blue 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17-1、22、27、28、29、36、60、ブルーサファイア(鉄、チタン含有コランダム)等が挙げられる。
【0081】
緑顔料としては、特に制限されないが、例えば、C.I.Pigment Green
7、26、36、50等が挙げられる。
【0082】
黄顔料としては、特に制限されないが、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94、95、97、108、109、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193、イエローサファイア(ニッケル含有コランダム)等が挙げられる。
【0083】
また、染料としては、特に制限されず、従来公知の染料、例えば、国際公開第2015/111351号の段落「0057」~「0060」に記載のもの等が挙げられる。
【0084】
着色剤としては、ベース材料が樹脂である場合に、樹脂に対する良好な分散安定性を有し、かつ耐候性に優れる等の観点から、顔料が好ましい。すなわち、本発明の一実施形態に係る透光性層Aは、上記の粒子に加えて、顔料および樹脂をさらに含むことがさらに好ましい。また、顔料の中でも、映像の色の変化がより抑制され、本発明の効果をより好ましく発揮するとの観点から、黒顔料であることがより好ましく、カーボンブラックであることがさらに好ましい。
【0085】
着色剤が顔料である場合、顔料の平均二次粒子径は、特に制限されないが、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましい。これらの範囲であると、摺動性がより良好となり、より凝集し難くなることで、フィルムの全光線透過率のムラがより減少する。また、顔料の平均二次粒子径は、特に制限されないが、3μm未満であることが好ましく、2.6μm未満であることがより好ましい。これらの範囲であると、フィルム中の分散斑がより発生し難くなり、フィルムの全光線透過率のムラがより減少し、ヘイズ値も低下する。
【0086】
顔料の平均二次粒子径は、層の電子顕微鏡写真から二次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、透過型電子顕微鏡写真(TEM)(株式会社日立ハイテク製 H-7650)にて粒子像を測定し、ランダムに選択した100個の二次粒子の等面積円相当直径の平均値を求め、この値を平均二次粒子径とする。
【0087】
着色剤は、市販品を用いても合成品を用いてもよい。市販品としては、特に制限されないが、例えば、三菱ケミカル株式会社製 #950等が挙げられる。
【0088】
着色剤は、1種単独で使用することができ、または2種以上を併用することができる。
【0089】
透光性層A中の着色剤の含有量は、特に制限されないが、ベース材料100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましい。これらの範囲であると、各パネルユニット間のつなぎ目に由来する映像品位の低下抑制効果がより向上する。また、透光性層A中の着色剤の含有量は、特に制限されないが、ベース材料100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、1質量部以下であることがさらに好ましく、0.6質量部以下であることが特に好ましい。これらの範囲であると、輝度がより向上する。
【0090】
(他の成分)
本発明の一実施形態に係る透光性層Aは、本発明の効果を損なわない限り、上記説明した成分以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、特に制限されないが、例えば、公知の光学フィルム分野や、公知の光学用途の機能層分野で使用される各成分が挙げられる。具体的には、位相差調整剤、波長分散調整剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、水素結合性溶媒、イオン性界面活性剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
(全光線透過率)
本発明の一実施形態に係る透光性層Aの全光線透過率は、10%以上30%以下である。全光線透過率が10%未満であると、複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置において、輝度が不十分となる。また、全光線透過率が30%超であると、複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置における、各パネルユニット間のつなぎ目に由来する映像品位の低下抑制が不十分となる。複各パネルユニット間のつなぎ目に由来する映像品位の低下抑制効果と、輝度とを共に向上させるとの観点から、透光性層Aの全光線透過率は、15%以上25%以下であることが好ましい。
【0092】
全光線透過率は、ヘーズメーター(NDH4000、日本電色工業株式会社製)を用いて、JIS K 7361-1:1997(プラスチック-透明材料の全光線透過率の試験方法)に従い測定することができる。
【0093】
(透光性層Aの表面改質処理)
透光性層Aは、表面改質処理が施されていてもよい。表面改質処理の方法は、特に制限されないが、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、プラズマ処理等が挙げられる。
【0094】
(膜厚)
透光性層Aの膜厚は、特に制限されないが、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましく、8μm以上であることが特に好ましい。これらの範囲であると、複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置における、各パネルユニット間のつなぎ目に由来する映像品位の低下抑制効果がより向上する。また、透光性層Aの膜厚は、50μm未満であることが好ましく、20μm未満であることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましく、10μm以下であることが特に好ましい。これらの範囲であると、複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置において、輝度がより向上する。
【0095】
<透光性層Aと、基材層とを含む光学フィルム>
本発明の一実施形態において、上記の透光性層Aは、当該層のみからなる単層フィルムとして用いられてもよく、光学フィルムの一部を構成していてもよいが、光学フィルムの一部を構成することが好ましい。
【0096】
本発明の一実施形態に係る光学フィルムは、他の層である基材層をさらに含むことが好ましい。基材層は、透光性層Aの保護、光学フィルムへの機械的物性の付与、光学フィルムのハンドリング適性の向上等に寄与しうる。また、基材層は、使用の際には剥離される、剥離フィルムであってもよい。なお、基材層は、後述するように、片側または両側に、機能層を有するものであってもよい。
【0097】
基材層としては、特に制限されないが、透光性層Bであることが好ましい。透光性層Bは、少なくとも入射光の一部を透過することができるものであれば特に制限されない。透光性層Bの全光線透過率は、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましい。これらの範囲であると、上記の透光性層Aと、他の透光性層である透光性層Bとを含む光学フィルムを使用した際に、複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置において、輝度がより向上する。また、透光性層Bの全光線透過率は、特に制限されないが、95%以下であることがより好ましく、93%以下であることがさらに好ましく、91%以下であることが特に好ましい。これらの範囲であると、後述する透光性層Aと、透光性層Bとのヘイズ値の関係を満たすことがより容易となる。
【0098】
全光線透過率は、ヘーズメーター(NDH4000、日本電色工業株式会社製)を用いて、JIS K 7361-1:1997(プラスチック-透明材料の全光線透過率の試験方法)に従い測定することができる。
【0099】
本発明の一実施形態に係る光学フィルムは、基材層は、他の透光性層である透光性層Bであり、透光性層A上に、透光性層Bが配置されており、透光性層Aと、透光性層Bとは、1つの透光性層Aと、1つの透光性層Bとの積層体のヘイズを測定した際に、透光性層A側から光を入射させたときの値Hz(A-B)(%)と、透光性層B側から光を入射させたときの値Hz(B-A)(%)とが、Hz(A-B)<Hz(B-A)となる関係を満たすことが好ましい。この関係を満たすことで、複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置における、各パネルユニット間のつなぎ目に由来する映像品位の低下抑制がより向上する。この理由は、透光性層Aを発光モジュール側に、透光性層Bを表示面側(すなわち、ディスプレイ装置における視認側)に向けて光学フィルムを配置することで、光学フィルムを透過する光をより散乱するからであると推測しているが、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
【0100】
ヘイズ値は、ヘーズメーター(NDH4000、日本電色工業株式会社製)を用いて、JIS K 7136:2000に従い測定することができる。
【0101】
なお、本明細書において、「透光性層A上に、透光性層Bが配置される」とは、透光性層Aの表面上に、透光性層Aと接するよう透光性層Bが配置される構成のみではなく、透光性層Aと、透光性層Bとの間に、他の部材を介して、透光性層A上に、透光性層Bが配置される構成をも含むことを表す。これらの中でも、透光性層Aの表面上に、透光性層Aと接するよう透光性層Bが配置される構成であることが好ましい。
【0102】
また、本発明の一実施形態において、基材層は、1つであっても2つ以上であってもよいが、1つであることが好ましい。なお、光学フィルムが基材層を1つのみ有する場合であっても、2つ以上有する場合であっても、透光性層Aが光学フィルムの一方の最表面を構成することが好ましい。
【0103】
(基材層のベース材料)
基材層(基材層が後述する機能層を有する場合は、基材層の母体(すなわち、基礎)となる層またはフィルム等)は、ベース材料を含むことが好ましい。なお、本明細書において、後述する透光性層B等をはじめとする基材層が後述する機能層を有するものである場合、その上に機能層が形成される層またはフィルムを、「母体」または「基礎」と称する。
【0104】
ベース材料の含有量は、特に制限されないが、光の透過性の観点から、基材層(基材層が後述する機能層を有する場合は、基材層の母体(基礎)となる層またはフィルム等)の総質量に対して、50質量%超であることが好ましく、80質量%超であることがより好ましく、90質量%超であることがさらに好ましい。また、ベース材料の含有量は、光の吸収性や光の散乱性の観点から、基材層(基材層が後述する機能層を有する場合は、基材層の母体(基礎)となる層またはフィルム等)の総質量に対して、100質量%未満であることが好ましい。
【0105】
基材層(基材層が後述する機能層を有する場合は、基材層の母体(すなわち、基礎)となる層またはフィルム等)のベース材料としては、特に制限されず、上記の透光性層Aのベース材料として挙げたものと同様のものが挙げられる。これらの中でも、有機材料であることが好ましい。
【0106】
また、基材層(基材層が後述する機能層を有する場合は、基材層の母体(すなわち、基礎)となる層またはフィルム等)は、樹脂フィルム等の樹脂層(例えば、透光性樹脂層)であることが好ましい。樹脂フィルムとは、ベース材料として樹脂を含むフィルムを表す。ベース材料としての樹脂もまた、上記の透光性層Aのベース材料としての樹脂として挙げたものと同様のものが挙げられる。これらの中でも、ヘイズ値の観点から、ポリエステル樹脂であることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートであることがより好ましい。
【0107】
ベース材料は、1種単独で使用することができ、または2種以上を併用することができる。
【0108】
(基材層の他の成分)
基材層(基材層が後述する機能層を有する場合は、基材層の母体(基礎)となる層またはフィルム等)は、本発明の効果を損なわない限り、上記説明したベース材料以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、特に制限されず、例えば、上記の透光性層Aで説明した、粒子や着色剤が挙げられる。また、例えば、公知の光学フィルム分野や、公知の光学用途の機能層分野で使用される各成分が挙げられる。具体的には、粒子、着色剤、位相差調整剤、波長分散調整剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、水素結合性溶媒、イオン性界面活性剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0109】
(基材層の表面改質処理)
基材層は、表面改質処理が施されていてもよい。表面改質処理の方法は、特に制限されないが、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、プラズマ処理等が挙げられる。
【0110】
(基材層の機能層)
基材層は、その母体(基礎)となる層またはフィルム等の片側または両側に、機能層を有するものであってもよい。より詳細には、基材層は、透光性層A側に(すなわち、透光性層Aと、基材層の母体(基礎)となる層またはフィルム等との間に)、または透光性層Aとは反対側に、機能層を有するものであってもよい。
【0111】
なお、本明細書において、基材層が機能層を有するものである場合、機能層を含めて基材層として取り扱う。これより、例えば、透光性層Bが機能層を有するものである場合、機能層を含めて透光性層Bとして取り扱う。
【0112】
基材層の機能層としては、特に制限されず、例えば、光学用途で使用される機能層が挙げられる。具体的には、離型層、易接着層、帯電防止層、ハードコート層、反射防止層、防眩層、バリアー層、緩衝層、易滑性層等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、易接着層またはハードコート層が好ましく、易接着層がより好ましい。
【0113】
易接着層としては、特に制限されず、公知の易接着層を適宜使用することができる。
【0114】
本発明の一実施形態に係る光学フィルムにおいて、易接着層を、透光性層Bの母体(基礎)となる層またはフィルム等の一方の表面上のみ、または両方の表面上に設けることが好ましい。これらの中でも、少なくとも、透光性層Bの母体(基礎)となる層またはフィルム等の、透光性層A側の表面上に易接着層を設けることがより好ましい。
【0115】
ハードコート層としては、特に制限されないが、例えば、脂環式炭化水素を含む樹脂と、ポリマーシランカップリング剤で被覆されてなる微粒子とを含む硬化層が挙げられる。ハードコート層を設ける場合、ハードコート層とフィルムとの間に、緩衝層をさらに設けることが好ましい。緩衝層としては、特に制限されないが、例えば、ハードコート層に含まれる樹脂とは異なる樹脂と、ポリマーシランカップリング剤で被覆されてなる微粒子とを含む層が挙げられる。
【0116】
本発明の一実施形態に係る光学フィルムにおいて、ハードコート層は、透光性層Bの母体(基礎)となる層またはフィルム等の一方の面側のみ、または両方の面側に設けることが好ましい。これらの中でも、少なくとも、透光性層Bの母体(基礎)となる層またはフィルム等の、透光性層Aとは反対側の面側にハードコート層を設けることがより好ましい。また、透光性層Bの母体(基礎)となる層またはフィルム等の、透光性層Aとは反対側の面側のみにハードコート層を設けることがさらに好ましい。
【0117】
基材層は、片側または両側に、機能層を1層のみ有していても、2層以上積層して有していてもよい。
【0118】
基材層の機能層の膜厚は、特に制限されないが、10μm未満であることが好ましく、8μm未満であることがより好ましく、5μm未満であることがさらに好ましく、3μm未満であることが特に好ましい(下限0μm超)。
【0119】
(基材層の膜厚)
基材層の膜厚は、特に制限されないが、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましく、50μm以上であることが特に好ましい。これらの範囲であると、透光性層Aの保護効果、光学フィルムへの機械的物性の付与効果、光学フィルムのハンドリング適性等がより向上する。また、基材層が透光性層Bである場合、複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置における、各パネルユニット間のつなぎ目に由来する映像品位の低下抑制がより向上する。また、基材層の膜厚は、500μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましく、80μm以下であることが特に好ましい。これらの範囲であると、基材層が透光性層である場合、複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置において、輝度がより向上する。
【0120】
本発明の一実施形態において、透光性層Aの膜厚は、基材層の膜厚よりも薄いことが好ましい。
【0121】
(基材層の例)
基材層としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、特に制限されないが、基材層が透光性層Bである場合には、例えば、日本ゼオン株式会社製のゼオノア(登録商標)ZF16、東洋紡株式会社製のコスモシャイン(登録商標)A4300等が挙げられる。
【0122】
<他の機能層>
本発明の一実施形態に係る光学フィルムは、透光性層Aおよび基材層以外の機能層、すなわち、上記の基材層の機能層以外の他の機能層をさらに有していてもよい。例えば、本発明の一実施形態に係る光学フィルムでは、必要に応じて、透光性層Aの片側または両側に、他の機能層をさらに有していてもよい。当該他の機能層の詳細もまた、上記の基材層の機能層の説明と同様である。
【0123】
なお、本発明の一実施形態に係る光学フィルムにおいて、透光性層Aの片側または両側に他の機能層を有する場合、透光性層Aと、透光性層Aの片側または両側に設けられた他の機能層との積層体の全光線透過率は、10%以上30%以下であることが好ましく、15%以上25%以下であることがより好ましい。全光線透過率は、ヘーズメーター(NDH4000、日本電色工業株式会社製)を用いて、JIS K 7361-1:1997(プラスチック-透明材料の全光線透過率の試験方法)に従い測定することができる。
【0124】
また、本発明の一実施形態に係る光学フィルムにおいて、透光性層Aの片側または両側に、他の機能層を有する場合、1つの透光性層Aと、1つの透光性層Bと、透光性層Aの片側または両側に設けられた他の機能層との積層体のヘイズを測定した際に、透光性層A側から光を入射させたときの値Hz(A-B)(%)と、透光性層B側から光を入射させたときの値Hz(B-A)(%)とが、Hz(A-B)<Hz(B-A)となる関係を満たすことが好ましい。ヘイズ値は、ヘーズメーター(NDH4000、日本電色工業株式会社製)を用いて、JIS K 7136:2000に従い測定することができる。
【0125】
<フィルムの構成例>
図1(A)~(C)は、各々、本発明の一実施形態で用いられるフィルムの構成例を表す。
図1(A)は、透光性層A 1のみからなる単層フィルムを表す。また、
図1(B)は、透光性層A 1と、透光性層B 3とが積層されてなる、積層フィルム 2を表す。
図1(B)では、一方の最表面を透光性層A 1が構成し、他方の最表面を透光性層B 3が構成しており、透光性層A 1の表面上に、透光性層A 1と接するよう透光性層B
3が配置されている。例えば、透光性層Bが易接着層(図示せず)を有しており、透光性層A 1の表面上に、透光性層A 1と接するよう易接着層(図示せず)を有する透光性層B 3が配置されていることも好ましい。さらに、
図1(C)は、透光性層A 1と、透光性層B 3とが積層された積層フィルム 2であって、さらに、透光性層B 3が、透光性層A 1側とは反対側の面を構成するハードコート層 4を有するものであるフィルムを表す。図(1)Cでは、一方の最表面を透光性層A 1が構成しており、透光性層A 1の表面上に、透光性層A 1と接するよう透光性層B 3が配置されている。例えば、透光性層Bが易接着層(図示せず)を有しており、透光性層A 1の表面上に、透光性層A 1と接するよう易接着層(図示せず)を有する透光性層B 3が配置されていることも好ましい。また、例えば、易接着層(図示せず)を有する透光性層B 3の易接着層(図示せず)上に、ハードコート層 4が形成されることも好ましい。なお、
図1(C)において、3’は、透光性層B 3の母体(基礎)となる層またはフィルムを表す。
【0126】
<フィルムの製造方法>
本発明の一実施形態に係る光学フィルムの製造方法は、特に制限されず、公知のフィルムの製造方法を使用することができる。例えば、塗布法、溶液流延法、溶融流延法、気相成膜法等が挙げられる。これらの中でも、1)透光性層A形成用塗布液を得る、塗布液調製工程と、2)得られた透光性層A形成用塗布液を、支持体の表面に付与する、塗膜形成工程と、3)付与された透光性層A形成用塗布液の塗膜から溶媒を除去して、透光性層Aを形成する、乾燥工程とを有する方法が好ましい。
【0127】
ここで、上記の支持体が基材層(例えば、透光性層B)である場合、当該製造方法によって、透光性層Aと、基材層とを含む、積層フィルムを製造することができる。
【0128】
1)塗布液調製工程
本工程では、上記の透光性層Aで説明した粒子と、上記の透光性層Aで説明した着色剤と、溶媒とを含む透光性層A形成用塗布液を調製する。透光性層A形成用塗布液には、必要に応じて、ベース材料(例えば、樹脂)、またはその他の成分をさらに含有させてもよい。
【0129】
透光性層A形成用塗布液は、粒子分散液の調製、および着色剤分散液または着色剤溶液の調製を行い、これらの分散液または溶液と、溶媒と、必要に応じてベース材料と、必要に応じてその他の成分と、を混合することで調製することが好ましい。粒子分散液の調製、および着色剤分散液または着色剤溶液としては、特に制限されないが、以下の透光性層A形成用塗布液に用いられる溶媒の例として挙げたものを使用することが好ましい。また、粒子分散液の調製、および着色剤分散液または着色剤溶液の調製では、濾過を行うことが好ましい。濾過に際しては、公知の濾過装置を適宜使用することができる。
【0130】
透光性層A形成用塗布液に用いられる溶媒は、特に制限されないが、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等の塩素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル、乳酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酪酸エチルなどのエステル類、グリコールエーテル類(プロピレングリコールモノ(C1~C4)アルキルエーテル(具体的にはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等)、プロピレングリコールモノ(C1~C4)アルキルエーテルエステル(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート))、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、n-ヘキサン等の炭化水素類等が挙げられる。これらの中でも、ベース材料を溶解しやすく、低沸点で、乾燥速度および生産性を高めやすいとの観点から、塩素系溶媒、アルコール類、ケトン類を含むことが好ましく、塩素系溶媒を含むことがより好ましい。
【0131】
また、平面性が高い透光性層Aを形成しやすいとの観点から、塩素系溶媒、アルコール類、およびケトン類を含むことが好ましい。塩素系溶媒としては、ジクロロメタンが好ましい。アルコール類としては、メタノールまたはエタノールが好ましく、エタノールがより好ましい。ケトン類しては、メチルエチルケトンまたはアセトンが好ましく、メチルエチルケトンがより好ましい。すなわち、ジクロロメタンと、エタノールおよびメチルエチルケトンのうちの少なくとも一方とを含むことが特に好ましい。
【0132】
溶媒が塩素系溶媒と、その他の溶媒とを含む場合、塩素系溶媒の含有比率は、特に限定されないが、乾燥速度と平面性との両立の観点から、塩素系溶媒/その他の溶媒=100未満/0超~60/40(質量比)であることが好ましく、99.9/0.1~90/10(質量比)であることがより好ましく、99.5/0.5~99/1(質量比)であることがさらに好ましい。塩素系溶媒の割合が適度に多いと、乾燥性や生産性を高めやすい。
【0133】
透光性層A形成用塗布液中のベース材料の濃度は、粘度を適切な範囲に調整しやすくするとの観点から、1~20質量%であることが好ましい。さらに、塗膜の乾燥時の収縮量を少なくするとの観点から、透光性層A形成用塗布液中のベース材料の濃度は、5質量%超20質量%以下であることがより好ましく、5質量%超15質量%以下であることがさらに好ましい。
【0134】
透光性層A形成用塗布液、粒子分散液の調製、着色剤分散液または着色剤溶液等の、各種分散液または溶液の調製において、混合条件は特に制限されない。混合温度としても、室温で混合してもよいし、溶解性を向上させるため、加熱しながら混合してもよい。また、混合時間としても、特に制限されないが、ベース材料を混合する場合には、ベース材料が完全に溶解する時間とすることが好ましい。また、混合に際しては、公知の混合装置を適宜使用することができる。
【0135】
透光性層A形成用塗布液の粘度は、特に制限されないが、5~5000mPa・sであることが好ましい。透光性層A形成用塗布液の粘度が5mPa・s以上であると、適度な厚みの層を形成することがより容易となる。また、透光性層A形成用塗布液の粘度が5000mPa・s以下であると、溶液の粘度上昇によって、厚みムラの発生をより抑制することができる。同様の観点から、透光性層A形成用塗布液の粘度は、100~1000mPa・sであることがより好ましい。当該粘度は、25℃で、E型粘度計で測定することができる。
【0136】
2)塗膜形成工程
本工程では、得られた透光性層A形成用塗布液を、支持体の表面に付与する。具体的には、得られた透光性層A形成用塗布液を、支持体の表面に塗布する。
【0137】
透光性層A形成用塗布液の塗布方法は、特に制限されず、公知の塗布方法を使用できる。例えば、バックコート法、グラビアコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ロールコート法等が挙げられる。これらの中でも、薄くかつ均一な厚みの塗膜を形成しうる観点から、バックコート法が好ましい。
【0138】
積層フィルムを製造する場合、前述のように、支持体として基材層を用いることが好ましい。基材層の詳細は、上記で説明した通りである。また、支持体として基材層を用いる場合、基材層は機能層(例えば、易接着層等)を有するものであって、当該機能層が形成された面上に透光性層A形成用塗布液を付与することもまた好ましい。
【0139】
3)乾燥工程
本工程では、支持体に付与された透光性層A形成用塗布液の塗膜から溶媒を除去して、透光性層Aを形成する。具体的には、支持体に付与された透光性層A形成用塗布液の塗膜を乾燥させる。
【0140】
透光性層A形成用塗布液の塗布方法は、特に制限されず、公知の乾燥方法を使用できる。例えば、送風または加熱による方法等が挙げられる。これらの中でも、カールなどを抑制しやすくするとの観点から、送風による方法であることが好ましい。
【0141】
塗膜の乾燥速度は、特に制限されないが、0.0015~0.05kg/hr・m2であることが好ましく、0.002~0.05kg/hr・m2であることがより好ましい。なお、乾燥速度とは、単位時間、単位面積当たりに蒸発する溶媒の質量として表される。乾燥速度は、通常、乾燥温度によって調整することができる。また、乾燥温度は、特に制限されないが、使用する溶媒の沸点Tbに対して(Tb-50)~(Tb+50)℃であることが好ましく、例えば、50~200℃であることが好ましい。
【0142】
例えば、本工程の後、支持体より透光性層Aを剥離することで、透光性層Aのみからなる単層フィルムを得ることができる。
【0143】
また、例えば、支持体として基材層を用いる場合、本工程の後、基材層の形成の結果、透光性層Aと、基材層とを含む、積層フィルムが形成されることとなる。この場合、基材層から透光性層Aを剥離せずに、そのまま積層フィルムとして用いることができる。特に、基材層が前述の母体(基礎)である層またはフィルム等のみからなる透光性層Bである場合や、機能層(例えば、易接着層等)を有する透光性層Bである場合、透光性層Aを剥離せずに、そのまま光学フィルムとして用いることも可能となる。
【0144】
4)巻き取り工程
本発明の一実施形態に係る光学フィルムは、帯状であってもよい。したがって、光学フィルムの製造方法は、4)帯状の光学フィルムを、ロール状に巻き取り、ロール体とする、巻き取り工程をさらに含んでいてもよい。
【0145】
本工程では、得られた帯状の、透光性層A、透光性層Aと、基材層との積層体、またはこれらに必要に応じて他の機能層を形成したものを、その幅方向に直交する方向にロール状に巻き取り、ロール体とする。
【0146】
帯状の光学フィルムの長さは、特に制限されないが、例えば、100~10000m程度であることが好ましい。また、帯状の光学フィルムの幅は、1m以上であることが好ましく、1.3~4mであることがより好ましい。
【0147】
<フィルムの製造装置>
本発明の一実施形態に係る光学フィルムは、特に制限されないが、例えば、
図2に示される製造装置によって製造することができる。
【0148】
図2は、本発明の一実施形態に係る光学フィルムを製造するための製造装置200の模式図である。製造装置200は、供給部210と、塗布部220と、乾燥部230と、冷却部240と、巻き取り部250とを有する。a~dは、支持体110を搬送する搬送ロールを示す。
【0149】
供給部210は、巻き芯に巻かれた帯状の支持体110のロール体201を繰り出す繰り出し装置(不図示)を有する。
【0150】
塗布部220は、塗布装置であって、支持体110を保持するバックアップロール221と、バックアップロール221で保持された支持体110に、透光性層A形成用塗布液を塗布する塗布ヘッド222と、塗布ヘッド222の上流側に設けられた減圧室223とを有する。
【0151】
塗布ヘッド222から吐出される透光性層A形成用塗布液の流量は、不図示のポンプにより調整可能となっている。塗布ヘッド222から吐出する透光性層A形成用塗布液の流量は、予め調整した塗布ヘッド222の条件で連続塗布したときに、安定して所定の膜厚の塗布層を形成できる量に設定されている。
【0152】
減圧室223は、塗布時に塗布ヘッド222からの透光性層A形成用塗布液と支持体110との間に形成されるビード(塗布液の溜まり)を安定化するための機構であり、減圧度を調整可能となっている。減圧室223は、減圧ブロワ(不図示)に接続されており、内部が減圧されるようになっている。減圧室223は、空気漏れがない状態になっており、かつ、バックアップロールとの間隙も狭く調整され、安定した塗布液のビードを形成できるようになっている。
【0153】
乾燥部230は、支持体110の表面に塗布された塗膜を乾燥させる乾燥装置であって、乾燥室231と、乾燥用気体の導入口232と、排出口233とを有する。乾燥風の温度および風量は、塗膜の種類および支持体110の種類により適宜決められる。乾燥部230で乾燥風の温度および風量、乾燥時間などの条件を設定することにより、乾燥後の塗膜の残留溶媒量を調整することができる。乾燥後の塗膜の残留溶媒量は、乾燥後の塗膜の単位質量と、該塗膜を十分に乾燥した後の質量を比較することにより測定することができる。
【0154】
冷却部240は、乾燥部230で乾燥させて得られる塗膜(透光性層A(図示せず))を有する支持体110の温度を冷却し、適切な温度に調整する。冷却部240は、冷却室241と、冷却風入口242と、冷却風出口243とを有する。冷却風の温度および風量は、塗膜の種類および支持体110の種類により適宜決めうる。また、冷却部240を設けなくても、適正な冷却温度になる場合は、冷却部240はなくてもよい。
【0155】
巻き取り部250は、透光性層A(図示せず)が形成された支持体110(積層体100)を巻き取り、ロール体251を得るための巻き取り装置(不図示)である。
【0156】
なお、積層フィルムを製造する場合、前述のように、支持体110として基材層(例えば、透光性層B)を用いることが好ましい。この場合、透光性層Aと、支持体との積層体100が積層フィルムとなる。
【0157】
<用途>
本発明の一実施形態に係る光学フィルムは、複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置に用いられる。本発明の一実施形態に係る光学フィルムは、特に制限されないが、例えば、以下のパネルユニットやディスプレイ装置の詳細な説明で挙げたものに好ましく適用することができる。
【0158】
(パネルユニットおよび表示装置)
上記の光学フィルムが適用されるパネルユニットおよびこれを含むディスプレイ装置は、特に制限されないが、自発光型のパネルユニットおよびこれより構成される表示面を有するディスプレイ装置であることが好ましい。
【0159】
本発明の一実施形態では、上記の光学フィルムが、発光モジュールを有するパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置に用いられることがより好ましい。すなわち、本発明の他の一態様は、発光モジュールと、発光モジュールよりも表示面側(すなわち、ディスプレイ装置における視認側)に配置される、上記の光学フィルムと、を有する、複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置に用いられる、パネルユニットに関するとも言える。
【0160】
また、本発明の一実施形態では、上記の光学フィルムが上記の透光性層Aおよび上記の基材層(好ましくは、透光性層B)を含む場合、上記の透光性層Aよりも表示面側に上記の基材層(好ましくは、透光性層B)が配置されて、上記の光学フィルムは、発光モジュールを有するパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置に用いられることがより好ましい。すなわち、本発明の他の一態様は、発光モジュールと、発光モジュールよりも表示面側に配置される、上記の光学フィルムと、を有し、上記の透光性層Aよりも表示面側に上記の基材層(好ましくは、透光性層B)が配置されている、複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置に用いられる、パネルユニットに関するとも言える。この際、透光性層Aが光学フィルムの一方の最表面を構成しており、光学フィルムの透光性層A側の面と、発光モジュールとが互いに向き合うよう配置されることが好ましい。
【0161】
本発明の一実施形態において、パネルユニットは、特に制限されず、例えば、公知の発光モジュールを有するものを使用することができる。これらの中でも、微小かつ多数の発光素子を配線基板上にマトリクス状に実装し、各発光素子をこれに接続された発光制御手段により選択的に発光させることにより、視覚情報を、各発光素子の点滅により直接的に表示画面上に表示することができる発光モジュールであることが好ましい。また、発光モジュールに含まれる発光素子は、LED素子であることがより好ましい。すなわち、発光モジュールは、発光素子がLED素子であるLEDモジュールであることがより好ましい。
【0162】
パネルユニットが、発光モジュールと、上記の光学フィルムとを含む場合、発光モジュールと、上記の光学フィルムとが、接着剤で貼合されることが好ましい。積層フィルムを貼合する場合、上記の透光性層Aよりも表示面側に上記の基材層(好ましくは、透光性層B)が配置されることが好ましい。そして、発光モジュールと、上記の積層フィルムの上記の基材層(好ましくは、透光性層B)よりも上記の透光性層A側の最表面とが、接着剤で貼合されることが好ましい。この際、透光性層Aが光学フィルムの一方の最表面を構成しており、光学フィルムの透光性層A側の面と、発光モジュールとが互いに向き合うよう貼合されることが好ましい。接着剤としては、特に制限されず公知の接着剤を使用することができ、例えば、感圧接着剤、熱硬化型接着剤、光硬化型接着剤等が挙げられる。これらの中でも、感圧接着剤であることが好ましい。感圧接着剤としては、特に制限されないが、例えば、アクリル系感圧接着剤、ゴム系感圧接着剤、シリコーン系感圧接着剤、ウレタン系感圧接着剤、ポリアクリルアミド系感圧接着剤等が挙げられる。これらの場合、パネルユニットは、発光モジュールと、上記の光学フィルムと、これらの間に配置される接着層とを有することとなる。
【0163】
また、パネルユニットが、発光モジュールと、上記の光学フィルムとを含む場合、発光モジュールと、上記の光学フィルムと、必要に応じて採用される他の部材とは、熱プレス加工により一体化されることで貼合されてもよい。積層フィルムを貼合する場合、上記の透光性層Aよりも表示面側に上記の基材層(好ましくは、透光性層B)が配置され、発光モジュールと、上記の積層フィルムの上記の基材層(好ましくは、透光性層B)よりも上記の透光性層A側の最表面とが貼合されることが好ましい。この際、透光性層Aが光学フィルムの一方の最表面を構成しており、光学フィルムの透光性層A側の面と、発光モジュールとが互いに向き合うよう貼合されることが好ましい。熱プレス加工による一体化で貼合される場合、任意の部材間に上記の接着剤を適用してもよい。
【0164】
以下、発光モジュールの一種であるLEDモジュールの構成の一例を示す、ただし、本発明で使用されうるLEDモジュールは、この構成に限定されるものではない。
【0165】
LEDモジュールは、支持基板に配線部が形成されてなる配線基板に、1つまたは複数のLED素子が実装されて構成される。ここで、LEDモジュールは、複数のLED素子が実装されて構成されることが好ましい。
【0166】
配線基板は、支持基板の表面に、LED素子と導通可能な形態で、例えば、銅等の金属やその他の導電性部材によって形成される配線部が形成されてなる回路基板である。支持基板の材料は、特に制限されないが、例えば、電子回路の基板として用いられる従来公知の材料、例えば、ガラスエポキシ等が挙げられる。
【0167】
LEDモジュールにおいては、LED素子が、ハンダ層を介して、配線部の上に導電可能な態様で実装されている。
【0168】
LED素子は、別途接合されるICチップ基板等の発光制御手段により、それぞれ個別にその発光が制御される。
【0169】
LEDモジュールのサイズについては、特に制限されないが、一般的には、コストパフォーマンスの観点から、対角線の長さが10インチ~200インチ程度のものが好ましく、50インチ~200インチ程度のものがより好ましい。
【0170】
配線基板に実装されるLED素子は、特に制限されないが、P型半導体と、N型半導体とが接合されたPN接合部での発光を利用した発光素子であることが好ましい。かような発光素子の構造としては、特に制限されないが、例えば、P型電極、N型電極を素子上面、下面に設けた構造や、素子片面にP型、N型電極の双方が設けられた構造が挙げられる。特に、特開2006-339551号公報に「チップ状電子部品」として開示されているLED素子のような微小サイズのLED素子が好ましく用いられる。同文献に開示されているLED素子は、幅×奥行き×高さのサイズが、概ね25μm×15μm×2.5μmであるとされている。
【0171】
LED素子は、LED発光チップと、それを被覆するカバーとを含むことが好ましい。樹脂カバーの材料としては、特に制限されないが、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等の有機絶縁材料が挙げられる。これらの中でも、LED発光チップを物理的衝撃から保護するとともに、LED発光チップを構成する半導体と空気との屈折率の差に起因する半導体内への光の全反射を抑制して、LED素子の発光効率を高めるとの観点から、エポキシ樹脂が好ましい。
【0172】
LED素子は、「微小サイズのLED素子」であることがより好ましい。本明細書において、「微小サイズのLED素子」とは、具体的には、LED発光チップと、それを被覆する樹脂カバーとを含んだ発光素子全体のサイズについて、幅(W)および奥行き(D)が、いずれも300μm以下であり、高さ(H)が、200μm以下であるLED素子のことを表す。また、「微小サイズのLED素子」は、幅および奥行きが、いずれも50μm以下であり、高さが、10μm以下であることがより好ましい。また、LED素子の配置間隔は、0.03mm以上100mm以下であることが好ましく、0.05mm以上5mm以下であることがより好ましい。そして、発光素子がLED素子である発光モジュール(LEDモジュール)は、幅および奥行きが、いずれも50μm以下であり、高さが、10μm以下の微小サイズのLED素子が、数μm~数十μm程度のピッチで、数千×数千程度以上の個数でマトリクス状に配置されていることが特に好ましい。なお、本明細書において、上記の「微小サイズのLED素子」が、0.03mm以上100mm以下の配置間隔で、マトリクス状に配置されているLEDモジュールを含むパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置を、「マイクロLED表示装置」と称する。
【0173】
図3は、本発明の一実施形態に係るパネルユニットの断面構造を示す模式図である。
図3の上方が表示面側(すなわち、ディスプレイ装置における視認側)となる。パネルユニット 10は、LEDモジュール 11と、ハードコート層 4を有する積層フィルム 2とを有する。積層フィルム 2は、発光モジュール 11よりも表示面側に配置され、透光性層A 1よりも表示面側に透光性層B 3が配置される。この際、LEDモジュール 11と、積層フィルム 2の透光性層A 1側の面とは、接着層 12を介して貼合される。なお、
図3において、3’は、透光性層B 3の母体(基礎)となる層またはフィルムを表す。
【0174】
ディスプレイ装置とは、文字・画像・動画等の視覚情報の表示装置を表す。上記の光学フィルムが適用されるディスプレイ装置としては、特に制限されず、公知の装置を使用することができ、例えば、液晶表示装置のような非発光型の装置や、LED表示装置、有機EL表示装置等の自発光型の装置等が挙げられる。これらの中でも、自発光型の装置が好ましく、LED表示装置がより好ましく、上記で言及したようなマイクロLED表示装置であることが好ましい。
【0175】
発光モジュールを有する個々のパネルユニットは、複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置に用いられることが好ましい。すなわち、本発明の他の一態様は、上記の光学フィルムを含むパネルユニットの複数個で構成される表示面を有する、ディスプレイ装置に関するとも言える。
【0176】
なお、本明細書では、複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置を、独立モジュール型のディスプレイ装置とも称する。独立モジュール型のディスプレイ装置において、複数のパネルユニットは、曲面状に敷き詰められてもよく、また、タイル状(マトリクス状、平面状)に敷き詰められてもよい。これらの中でも、タイル状に敷き詰められることが好ましい。また、複数のパネルユニットは、個々の表示面が独立の視覚情報を構成してもよく、また、個々の表示面が全体として1つの視覚情報を構成していてもよい。これらの中でも、個々の表示面が全体として1つの視覚情報を構成することが好ましい。
【0177】
図4は、本発明の一実施形態に係る独立モジュール型のディスプレイ装置の平面構造を示す模式図である。独立モジュール型のディスプレイ装置20の表示面は、複数のパネルユニット10がタイル状(平面状)に敷き詰められて構成される表示面を有する。また、複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置は、これらに含まれる1つのまたは複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置に分解することができることが好ましい。
【0178】
なお、発光モジュールおよびディスプレイ装置としては、例えば、特開2019-204905号公報等に記載の公知のモジュールおよび装置を使用することもできる。
【実施例】
【0179】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0180】
<フィルムの製造>
[フィルム1(積層フィルム)]
(粒子分散液の調製)
10質量部のシリカ粒子(日本アエロジル株式会社製 R972V)と、90質量部のエタノールとをディゾルバーで30分間撹拌混合した後、高圧分散機であるマントンゴーリンを用いて分散させて、分散液を調製した。得られた分散液に、65質量部のジクロロメタンを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合して、希釈した。得られた溶液をアドバンテック東洋株式会社製ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW-PPS-1Nで濾過して、粒子分散液を得た。
【0181】
(顔料分散液の調製)
10質量部のカーボンブラック(CB)(三菱ケミカル株式会社製 #950)と、90質量部のメチルエチルケトン(MEK)とをディゾルバーで30分間撹拌混合した後、超音波分散機を用いて30分間分散させて、分散液を調製した。得られた分散液をアドバンテック東洋株式会社製ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW-PPS-1Nで濾過して、顔料分散液を得た。
【0182】
(透光性層A形成用塗布液の調製)
まず、加圧溶解タンクにジクロロメタンを添加した。次いで、シクロオレフィン樹脂(COP、重量平均分子量14万、極性基(カルボキシ基)を有するシクロオレフィン樹脂、JSR株式会社製 アートン(ARTON)(登録商標)G7810)を撹拌しながら投入した。次いで、上記調製した粒子分散液および顔料分散液を投入して、これを60℃に加熱して30分間撹拌し、シクロオレフィン樹脂を完全に溶解させて、透光性層A形成用塗布液を得た。
【0183】
≪透光性層A形成用塗布液の組成≫
シクロオレフィン樹脂 100質量部
ジクロロメタン 890質量部
粒子分散液 5質量部
顔料分散液 6質量部。
【0184】
(透光性層Aおよび透光性層Bを含む積層フィルムの作製)
透光性層Bとして、ゼオノア(登録商標)ZF16 (日本ゼオン株式会社製 厚み100μm)を準備した。この透光性層B上に、上記得られた透光性層A形成用塗布液を、バックコート法によりダイを用いて塗布した。その後、乾燥速度0.002kg/hr・m2、透光性層B側から当てる熱風と、透光性層A形成用塗布液の塗膜側から当てる熱風の温度とが130℃の条件で乾燥させて、厚み10μmの透光性層Aを形成し、積層フィルムであるフィルム1を得た。なお、透光性層A中のシリカ粒子の平均二次粒子径は、200nmであり、顔料の平均二次粒子径は、300nmであった。
【0185】
[フィルム2(積層フィルム)]
フィルム1の製造において、透光性層Bをポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)(東洋紡株式会社製 コスモシャイン(登録商標)A4300、厚み50μm)へと変更した以外は同様にして、積層フィルムであるフィルム2を得た。
【0186】
[フィルム3(積層フィルム)]
フィルム1の製造において、透光性層Aのカーボンブラックの添加量が、シクロオレフィン樹脂100質量部に対して0.55質量部になるよう、顔料分散液の添加量を変更した以外は同様にして、積層フィルムであるフィルム3を得た。
【0187】
[フィルム4(積層フィルム)]
フィルム1の製造において、透光性層Aのカーボンブラックの添加量が、シクロオレフィン樹脂100質量部に対して0.55質量部になるよう、顔料分散液の添加量を変更し、透光性層Bをポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)(東洋紡株式会社製 コスモシャイン(登録商標)A4300、厚み50μm)へと変更した以外は同様にして、積層フィルムであるフィルム4を得た。
【0188】
[フィルム5(積層フィルム)]
フィルム1の製造において、透光性層Aのカーボンブラックの添加量が、シクロオレフィン樹脂100質量部に対して0.50質量部になるよう、顔料分散液の添加量を変更し、透光性層Bをポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)(東洋紡株式会社製 コスモシャイン(登録商標)A4300、厚み50μm)へと変更した以外は同様にして、積層フィルムであるフィルム5を得た。
【0189】
[フィルム6(積層フィルム)]
フィルム1の製造において、透光性層Aのカーボンブラックの添加量が、シクロオレフィン樹脂100質量部に対して0.50質量部になるよう、顔料分散液の添加量を変更した以外は同様にして、積層フィルムであるフィルム6を得た。
【0190】
[フィルム7(単層フィルム)]
フィルム1の製造において、透光性層Aのカーボンブラックの添加量が、シクロオレフィン樹脂100質量部に対して0.55質量部になるよう、顔料分散液の添加量を変更した以外は同様にして、透光性層Aおよび透光性層Bを含む積層フィルムを得た。次いで、得られた積層フィルムから透光性層Bを剥離して透光性層Aのみとすることで、単層フィルムであるフィルム7を得た。
【0191】
[フィルム8(積層フィルム)]
フィルム1の製造において、透光性層Aの製造時に粒子分散液を添加せず、透光性層Aのカーボンブラックの添加量が、シクロオレフィン樹脂100質量部に対して0.55質量部になるよう、顔料分散液の添加量を変更し、透光性層Bをポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)(東洋紡株式会社製 コスモシャイン(登録商標)A4300、厚み50μm)へと変更した以外は同様にして、積層フィルムであるフィルム8を得た。
【0192】
[フィルム9(単層フィルム)]
フィルム1の製造において、透光性層Aの製造時に粒子分散液を添加せず、透光性層Aのカーボンブラックの添加量が、シクロオレフィン樹脂100質量部に対して0.55質量部になるよう、顔料分散液の添加量を変更した以外は同様にして、透光性層Aおよび透光性層Bを含む積層フィルムを得た。次いで、得られた積層フィルムから透光性層Bを剥離して透光性層Aのみとすることで、単層フィルムであるフィルム9を得た。
【0193】
[フィルム10(積層フィルム)]
フィルム1の製造において、透光性層Aのカーボンブラックの添加量が、シクロオレフィン樹脂100質量部に対して0.65質量部になるよう、顔料分散液の添加量を変更した以外は同様にして、積層フィルムであるフィルム10を得た。
【0194】
[フィルム11(積層フィルム)]
フィルム1の製造において、透光性層Aの製造時に顔料分散液を添加しなかった以外は同様にして、積層フィルムであるフィルム11を得た。
【0195】
なお、上記フィルム2~11において、透光性層Aの厚みは全て10μmであった。また、上記フィルム2~11において、シリカ粒子を含まない上記フィルム8、9を除いて、透光性層A中のシリカ粒子の平均二次粒子径は、全て200nmであった。そして、上記フィルム2~11において、顔料を含まない上記フィルム11を除いて、顔料の平均二次粒子径は、全て300nmであった。
【0196】
各フィルムの特徴を下記表1に示す。
【0197】
<フィルムの評価>
[透光性層Aおよび透光性層Bの全光線透過率]
積層フィルムであるフィルム1~6、8、10および11については、透光性層Bを剥離して、透光性層Aのみの状態で、単層フィルムであるフィルム7および9は、そのままの状態で(すなわち、透光性層Aのみの状態で)、全光線透過率(%)を評価した。これらの結果を下記表1に示す。
【0198】
また、透光性層Bとして用いた、日本ゼオン株式会社製のゼオノア(登録商標)ZF16、および東洋紡株式会社製のコスモシャイン(登録商標)A4300について、同様の方法で全光線透過率を測定したところ、それぞれ、91.90%、および90.41%であった。
【0199】
なお、全光線透過率は、ヘーズメーター(NDH4000、日本電色工業株式会社製)を用いて、JIS K 7361-1:1997(プラスチック-透明材料の全光線透過率の試験方法)に従い測定した。
【0200】
[積層フィルムのヘイズ]
積層フィルムであるフィルム1~6、8、10および11について、透光性層A側から測定したヘイズ値 Hz(A-B)(%)と、透光性層B側から測定したヘイズ値 Hz(B-A)(%)とを評価した。ヘイズ値は、ヘーズメーター(NDH4000、日本電色工業株式会社製)を用いて、JIS K 7136:2000に従い測定した。Hz(A-B)(%)と、Hz(B-A)(%)とのいずれが大きな値となるかについて、下記表1に示す。
【0201】
<ディスプレイ装置の評価>
[パネルユニットおよびディスプレイ装置の製造]
縦40cm、横40cmの大きさの外形を有する、縦横2mmのピッチのLED素子を含むLEDモジュールの、LED素子の樹脂カバーを含む表面上に、感圧接着剤から構成される接着層を貼合した。次いで、LEDモジュールの、LED素子の上記の表面上に、上記得られたフィルムを当該接着層を介して貼合して、パネルユニットを得た。ここで、フィルムが積層フィルムである場合には、積層フィルムの透光性層A側と、LED素子の上記の表面とが互いに向き合うような配置として貼合した。そして、得られたパネルユニットを横並びに2個連結させて独立モジュール型のディスプレイ装置を得た。
【0202】
[ディスプレイ装置の輝度およびシームレス性]
上記得られた独立モジュール型のディスプレイ装置について、サイバネットシステム株式会社製 ProMetric Color 1600を用いて、輝度(cd/m2)を測定し、パネルユニットの輝度平均値、および輝度均斉度の評価を行った。ここで、輝度均斉度は、パネル間のシームレス性が高いほどその値は小さくなる。これより、輝度均斉度は、複数のパネルユニットで構成される表示面を有するディスプレイ装置における、各パネルユニット間のつなぎ目に由来する映像品位の低下抑制効果の指標となりうる。輝度平均値、および輝度均斉度は、それぞれ以下の式を用いて算出することができる。下記式において、平均均斉度をLuとし、また平均輝度をLaとして表す。
【0203】
なお、上記得られたフィルムを貼合していないパネルユニットを用いた以外は、上記と同様にして製造した独立モジュール型のディスプレイの輝度平均値は、3000cd/m2であった。
【0204】
【0205】
L1:個々のパネルユニット内の中心と、中心から上下に10cmの位置の点との3点の輝度の平均値についての、2つのパネルユニットの平均値、
L2:隣接する2つのパネルユニット間の中心と、中心から上下に10cmの位置の点との3点の輝度の平均値。
【0206】
なお、輝度については、評価A~Cが良好な結果を示すと判断した。これらの結果を下記表1に示す。
【0207】
(輝度の評価基準)
A:輝度平均値が1000(cd/m2)以上、
B:輝度平均値が500(cd/m2)以上1000(cd/m2)未満、
C:輝度平均値が200(cd/m2)以上500(cd/m2)未満、
D:輝度平均値が200(cd/m2)未満。
【0208】
また、シームレス性については、評価A~Cが良好な結果を示すと判断した。これらの結果を下記表1に示す。
【0209】
(シームレス性の評価基準)
A:輝度均斉度が6以下、
B:輝度均斉度が6超12以下、
C:輝度均斉度が12超18以下、
D:輝度均斉度が18超。
【0210】
【0211】
上記表1より、本発明に係るフィルム1~7を使用したディスプレイ装置は、シームレス性および輝度の両方に優れることが確認された。一方、比較例に係る、透光性層Aが粒子を含有しないフィルム8および9はシームレス性に劣ることが確認された。また、透光性層Aの全光線透過率が本発明の範囲外であるフィルム10および11を使用したディスプレイ装置は、シームレス性および輝度の一方が不十分であることが確認された。
【0212】
また、フィルム1、3および6の比較、ならびにフィルム2、4および5の比較から、全光線透過率が15~25%の範囲内であると、シームレス性および輝度のバランスがより良好となることが確認された。
【0213】
そして、フィルム3、4および7の比較から、積層フィルムがHz(A-B)<Hz(B-A)となる関係を満たすことで、シームレス性がより向上することが確認された。また、フィルム1および2の比較、ならびにフィルム6および5の比較から、積層フィルムがHz(A-B)<Hz(B-A)となる関係を満たすことで、シームレス性がより向上することが確認された。
【0214】
本出願は、2020年7月7日に出願された日本特許出願番号2020-117339号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として組み入れられている。
【符号の説明】
【0215】
1 透光性層A
2 積層フィルム
3 透光性層B
3’ 透光性層Bの母体(基礎)となる層またはフィルム
4 ハードコート層
10 パネルユニット
11 LEDモジュール
12 接着層
20 独立モジュール型のディスプレイ装置
100 積層体(積層フィルム)
110 支持体(例えば、透光性層B等の基材層)
200 製造装置
201 支持体(例えば、透光性層B等の基材層)のロール体
210 供給部
220 塗布部
221 バックアップロール
222 塗布ヘッド
223 減圧室
230 乾燥部
231 乾燥室
232 乾燥用気体の導入口
233 排出口
240 冷却部
241 冷却室
242 冷却風入口
243 冷却風出口
250 巻き取り部
251 積層体(積層フィルム)のロール体
a、b、c、d 搬送ロール。