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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】射出成形機の型締装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/64 20060101AFI20240806BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20240806BHJP
   B22D 17/26 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B29C45/64
B29C45/17
B22D17/26 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022561888
(86)(22)【出願日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 JP2021040906
(87)【国際公開番号】W WO2022102552
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2020189415
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】内山 辰宏
(72)【発明者】
【氏名】西村 成弘
(72)【発明者】
【氏名】仙賀 正俊
【審査官】浅野 弘一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-009386(JP,A)
【文献】特開平11-198202(JP,A)
【文献】国際公開第2017/164420(WO,A1)
【文献】特開2006-051754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/64
B29C 45/17
B22D 17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型を保持する固定プラテンと、
リアプラテンと、
前記固定プラテンと前記リアプラテンとを連結する複数のタイバーと、
前記固定プラテンと前記リアプラテンとの間に配置され、可動金型と前記固定金型とが互いに向き合うように前記可動金型を保持し、前記タイバーの軸線方向に沿って移動可能な可動プラテンと、
モータによって回転されるボールネジと、
前記リアプラテンと前記可動プラテンとの間に配置され、前記ボールネジの回転によって前記軸線方向に沿って移動されるクロスヘッドと、
前記クロスヘッドの移動に応じて、前記可動プラテンを前記軸線方向に沿って移動させるトグル機構と、
前記クロスヘッドが前記リアプラテン側に向かって移動するように前記クロスヘッドを押圧するクロスヘッド押圧機構と、
を備え
前記クロスヘッド押圧機構は、前記軸線方向に沿って延びたネジ部材と、前記ネジ部材と螺合し、前記ネジ部材を支持する支持部材とを有し、前記ネジ部材が前記支持部材に対して回転することで、前記ネジ部材が前記クロスヘッドを押圧する、射出成形機の型締装置。
【請求項2】
固定金型を保持する固定プラテンと、
リアプラテンと、
前記固定プラテンと前記リアプラテンとを連結する複数のタイバーと、
前記固定プラテンと前記リアプラテンとの間に配置され、可動金型と前記固定金型とが互いに向き合うように前記可動金型を保持し、前記タイバーの軸線方向に沿って移動可能な可動プラテンと、
モータによって回転されるボールネジと、
前記リアプラテンと前記可動プラテンとの間に配置され、前記ボールネジの回転によって前記軸線方向に沿って移動されるクロスヘッドと、
前記クロスヘッドの移動に応じて、前記可動プラテンを前記軸線方向に沿って移動させるトグル機構と、
前記クロスヘッドが前記リアプラテン側に向かって移動するように前記クロスヘッドを押圧するクロスヘッド押圧機構と、
を備え、
前記クロスヘッド押圧機構は、前記軸線方向に沿って延びたロッドと、前記ロッドを前記軸線方向に沿って移動させる駆動部と、前記駆動部を支持する支持部材とを有し、前記ロッドが前記クロスヘッドを押圧する、射出成形機の型締装置。
【請求項3】
請求項またはに記載の射出成形機の型締装置であって、
前記支持部材は、前記リアプラテンに固定されている、射出成形機の型締装置。
【請求項4】
請求項に記載の射出成形機の型締装置であって、
前記軸線方向に延び、前記クロスヘッドをガイドするガイドロッドを備え、
前記支持部材は、前記ガイドロッドを支持する、射出成形機の型締装置。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の射出成形機の型締装置であって、
前記クロスヘッド押圧機構は、前記軸線方向と直交する前記型締装置の幅方向に関して、前記ボールネジに対して対称となるように複数設けられている、射出成形機の型締装置。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の射出成形機の型締装置であって、
前記クロスヘッド押圧機構は、前記トグル機構が所定以上に延びて、前記固定金型と前記可動金型との間に型締力が発生したロックアップ状態を解除する、射出成形機の型締装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の型締装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、金型(固定金型および可動金型)を開閉する型締装置を有する。型締装置は、例えば、駆動機構によって、トグル機構(トグルリンク等)を伸長させることで、型締力を発生する。ここで、駆動機構のエネルギー消費を抑制するために、型締力の発生時には、トグル機構が完全に伸長することが望ましい。しかし、この伸長しきった状態が長時間持続すると、油膜切れ等に起因して、トグル機構が固着し得る。その結果、型締装置は、動作不能となる。特開平11-198202号公報は、この対策として、型締装置を停止する前に、可動プラテンを金型タッチ位置よりも後退させる、技術を開示する。
【発明の概要】
【0003】
しかしながら、停電または故障等のために、駆動機構が動作不可となり、この結果、可動プラテンを後退できないという課題がある。このため、駆動機構が動作不可になったとしても、可動プラテンを後退させて、トグル機構の伸長状態を解除できることが好ましい。
【0004】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【0005】
一態様に係る射出成形機の型締装置は、固定金型を保持する固定プラテンと、リアプラテンと、前記固定プラテンと前記リアプラテンとを連結する複数のタイバーと、前記固定プラテンと前記リアプラテンとの間に配置され、可動金型と前記固定金型とが互いに向き合うように前記可動金型を保持し、前記タイバーの軸線方向に沿って移動可能な可動プラテンと、モータによって回転されるボールネジと、前記リアプラテンと前記可動プラテンとの間に配置され、前記ボールネジの回転によって前記軸線方向に沿って移動されるクロスヘッドと、前記クロスヘッドの移動に応じて、前記可動プラテンを前記軸線方向に沿って移動させるトグル機構と、前記クロスヘッドが前記リアプラテン側に向かって移動するように前記クロスヘッドを押圧するクロスヘッド押圧機構と、を備える。
【0006】
本発明によれば、トグル機構を駆動する駆動機構が動作不可となった場合でも、トグル機構の伸長状態の解除が可能な射出成形機の型締装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る射出成形機を表す図である。
図2図2は、実施形態に係る射出成形機において、可動プラテンからクロスヘッドを見た状態を表す斜視図である。
図3図3は、実施形態に係る射出成形機において、上側のトグルリンクからクロスヘッドを見た状態を表す上面図である。
図4図4は、変形例1に係る射出成形機において、上側のトグルリンクからクロスヘッドを見た状態を表す上面図である。
図5図5は、変形例2に係る射出成形機において、上側のトグルリンクからクロスヘッドを見た状態を表す上面図である。
図6図6は、変形例3に係る射出成形機において、上側のトグルリンクからクロスヘッドを見た状態を表す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に係る射出成形機の型締装置について、詳細に説明する。
【0009】
図1は、実施形態に係る射出成形機10を表す図である。射出成形機10は、ベース12と、金型14を開閉する型締装置16と、溶融樹脂を金型14に射出する不図示の射出装置とを有する。なお、図1には上下方向および前後方向が示される。
【0010】
ベース12は、型締装置16および射出装置を設置するための基台である。型締装置16は、固定プラテン20、リアプラテン22、可動プラテン24、駆動機構26、クロスヘッド28、トグルリンク30、およびクロスヘッドリンク32を有する。
【0011】
固定プラテン20およびリアプラテン22は、ベース12上に配置され、4本のタイバー34によって、互いに連結されている。4本のタイバー34は、互いに平行に前後方向に延び、且つ、可動プラテン24を挿通する。前後方向は、4本のタイバー34の軸線方向である。可動プラテン24は、スライド部36を介して、ベース12上の固定プラテン20とリアプラテン22との間に、設置されている。ガイドレール38が、ベース12上に前後方向に設けられる。スライド部36は、ガイドレール38に沿って、移動可能である。これにより、可動プラテン24は、固定プラテン20に対して、前後方向に、進退可能となる。なお、4本のタイバー34は、ガイド部材および型締力発生部材として機能する。ガイド部材は、可動プラテン24の前後方向への移動を案内する。型締力発生部材は、トグルリンク30の伸長時に、反力によって、金型14に所定の型締力を発生させる。
【0012】
固定プラテン20と可動プラテン24との間には、金型14が設けられている。金型14は、固定金型14aと可動金型14bとを有する。固定金型14aは、固定プラテン20の可動プラテン24を向く面に取り付けられている。可動金型14bは、可動プラテン24の固定プラテン20を向く面に取り付けられている。
【0013】
駆動機構26は、クロスヘッド28を前後方向に進退させる。駆動機構26は、型開閉モータ26a(駆動源)、駆動プーリ26b、ベルト26c、従動プーリ26d、ボールネジ26e、およびナット26fを備える。
【0014】
駆動プーリ26bは、型開閉モータ26aの回転軸と一体的に回転可能である。従動プーリ26dは、ボールネジ26eと一体的に回転可能である。ベルト26cは、駆動プーリ26bと従動プーリ26dとに掛けられる。ベルト26cは、駆動プーリ26bの回転力を従動プーリ26dに伝達する。ボールネジ26eは、タイバー34の軸線と平行になるように、前後方向に沿って延びる。ナット26fは、クロスヘッド28に固定され、且つ、ボールネジ26eと螺合している。
【0015】
型開閉モータ26aは、駆動プーリ26b、ベルト26c、および従動プーリ26dを介して、ボールネジ26eを回転させる。ボールネジ26eがナット26fに対して回転すると、ナット26fは、ボールネジ26eに沿って前後方向に進退する。これにより、ボールネジ26eの回転に伴って、クロスヘッド28が、ナット26fと共に、前後方向に進退する。
【0016】
ここでは、ボールネジ26eを回転させることで、ナット26fを進退させているが、次のように、ボールネジ26eとナット26fの配置および役割を逆にしてもよい。まず、型開閉モータ26aによって、ナット26fを回転させる。ナット26fの回転に伴って、ナット26fと螺合するボールネジ26eを進退させる。この結果、クロスヘッド28を進退させることができる。いずれにしても、ナット26fに対するボールネジ26eの(相対的な)回転によって、クロスヘッド28は前後方向に沿って移動する。
【0017】
クロスヘッド28の進退の安定のために、クロスヘッド28は、前後方向に延びるガイドロッド40に案内される。ガイドロッド40は、リアプラテン22に設けられる、ガイドロッドサポート42に保持される。
【0018】
2本のトグルリンク30および2本のクロスヘッドリンク32が上方に設けられる。また、2本のトグルリンク30および2本のクロスヘッドリンク32が下方に設けられる。すなわち、合計4本のトグルリンク30および合計4本のクロスヘッドリンク32が設けられる。ここでは、紙面表側の上方および下方に、2本のトグルリンク30および2本のクロスヘッドリンク32が示される。紙面裏側の、2本のトグルリンク30および2本のクロスヘッドリンク32は、後ろに隠れている。トグルリンク30の各々は、第1リンクロッド30a、第2リンクロッド30b、第1トグルピン30c、第2トグルピン30d、および第3トグルピン30eを有する。
【0019】
第1リンクロッド30aの一端は、第1トグルピン30cを介して、可動プラテン24に回動可能に接続される。第2リンクロッド30bの一端は、第2トグルピン30dを介して、リアプラテン22に回動可能に接続される。第1リンクロッド30aの他端と、第2リンクロッド30bの他端とは、第3トグルピン30eを介して、互いに回動可能に接続される。第2リンクロッド30bは、クロスヘッドリンク32を介して、クロスヘッド28と接続されている。
【0020】
トグルリンク30は、クロスヘッドリンク32を介して、クロスヘッド28に結合される。トグルリンク30は、クロスヘッド28の前後方向の進退に対応して、伸長、または、屈曲することで、トグルリンク30は、可動プラテン24を前後方向に進退させる。トグルリンク30およびクロスヘッドリンク32は、クロスヘッド28の前後方向の駆動力を増加し、増加した駆動力を可動プラテン24に伝えるトグル機構である。前方向へのクロスヘッド28の移動に伴って、トグルリンク30が伸長する。その結果、可動プラテン24は前方向に移動する。逆に、後方向へのクロスヘッド28の移動に伴って、トグルリンク30が屈曲して縮む。その結果、可動プラテン24が後方向に移動する。なお、トグルリンク30が伸びきった状態では、型開閉モータ26aによるクロスヘッド28の前方向への移動を停止させても金型14の型締力は維持される。
【0021】
以上のように、型開閉モータ26aによってボールネジ26eを回転させることで、クロスヘッド28は進退する。クロスヘッド28の進退に伴って、トグルリンク30が伸長、または、屈曲する。これにより、可動プラテン24は進退されて、金型14は前後方向に開閉される。
【0022】
型締装置16は、クロスヘッド押圧機構PMを備える。クロスヘッド押圧機構PMは、クロスヘッド28がリアプラテン22に向かって移動するように、クロスヘッド28を押圧する。上述したように、トグル機構(トグルリンク30およびクロスヘッドリンク32)が完全に伸長しきった状態が長時間持続すると、油膜切れ等によりトグル機構が固着し得る。その結果、型締装置16は、動作不能となる。クロスヘッド押圧機構PMは、型開閉モータ26aを用いなくても、トグル機構の伸長状態を解除するための機構である。なお、油膜切れとは、摺動する部材間に形成されていた油膜(潤滑油の膜)が失われた状態をいう。すなわち、摺動する部材同士は直接接触している。摺動する部材間とは、例えば、第1リンクロッド30aと第1トグルピン30cとの間である。トグル機構が伸びきると、例えば、第1リンクロッド30aと第1トグルピン30cとの間の油膜が圧力によって押し出されるために、油膜切れが生じ易くなる。
【0023】
以下、クロスヘッド28、ガイドロッド40、およびクロスヘッド押圧機構PMの詳細を説明する。図2は、実施形態に係る射出成形機10において、可動プラテン24からクロスヘッド28を見た状態を表す斜視図である。また、図3は、実施形態に係る射出成形機10において、上側のトグルリンク30からクロスヘッド28を見た状態を表す上面図である。なお、図2においては、判り易さのために、実線ではなく、仮想線によってタイバー34を表している。以下、基本的に図3に基づき説明する。
【0024】
クロスヘッド28は、中央部28aと、中央部28aから上方および下方に延びる2つのアーム28bと、中央部28aから左方および右方に延びる2つのアーム28cと、を有する。アーム28bには、クロスヘッドリンク32が接続されているが、図2および図3では判り易さのためにクロスヘッドリンク32の記載を省略している。2つのアーム28cには、それぞれ、2本のガイドロッド40が挿通される。すなわち、クロスヘッド28は、前後方向に延びる2本のガイドロッド40にガイドされて、前後方向に進退可能である。
【0025】
2本のガイドロッド40は、それぞれ、ボールネジ26eの左右に配置される。2本のガイドロッド40は、前後方向に延びる。2本のガイドロッド40の後端部がリアプラテン22に支持される。2本のガイドロッド40の前端部がそれぞれ、2つのガイドロッドサポート42に支持される。2つのガイドロッドサポート42は、略U字形状を有する。2つのガイドロッドサポート42の各々は、2つの基部42aと、支持部42bと、を備える。2つの基部42aは、リアプラテン22の前面に固定され、前方に突出する。支持部42bは、2つの基部42aの前端部に設けられる。支持部42bは、ガイドロッド40を支持する。
【0026】
型締装置16は、2つのクロスヘッド押圧機構PMを備える。2つのクロスヘッド押圧機構PMの各々は、ネジ部材44と、ネジ部材44と螺合し、ネジ部材44を支持する支持部材Sとを有する。本実施形態では、ガイドロッドサポート42の支持部42bが支持部材Sとして機能する。したがって、支持部42bは、ネジ部材44と螺合する、雌ネジ部(ネジ穴)42cを有する。
【0027】
ネジ部材44は、前後方向に沿って延びた形状であり、雄ネジ部44aと頭部44bとを有する。雄ネジ部44aは、支持部材S(支持部42b)の雌ネジ部42cと螺合する。頭部44bは、雄ネジ部44aの端部に固定されて、雄ネジ部44aを回転させる。頭部44bを把持するスパナ等の工具によって、頭部44bを支持部42bに対して回転させる。したがって、ネジ部材44は支持部42bに対して後方に移動する。これにより、ネジ部材44がクロスヘッド28を押圧し、クロスヘッド28が後方に移動する。
【0028】
このように、型開閉モータ26aが故障し、または、停電が起きた場合でも、ネジ部材44を回転させることで、クロスヘッド28を後退させることができる。これにより、トグル機構の伸長状態(例えば、ロックアップ状態)を解除することができる。ロックアップ状態は、トグルリンク30が所定以上に延び、その結果、固定金型14aと可動金型14bとの間に型締力が発生した状態である。トグル機構の伸長状態を解除することで、型締力は開放される。その結果、トグル機構の油膜切れ等に起因するトグル機構の固着を防止できる。クロスヘッド押圧機構PMのネジ部材44は、ロックアップ状態の解除に必要な力(軸力)を出力できる。一般に、型締力が発生しているときには、トグルリンク30内の摺動部材同士の摩擦は大きくなる。クロスヘッド押圧機構PMのネジ部材44には、工具によって、大きなトルクが印加される。その結果、トグルリンク30での摩擦に抗して、ロックアップ状態を解除するのに必要な力(軸力)が、ネジ部材44からクロスヘッド28に出力される。
【0029】
ここでは、2つのクロスヘッド押圧機構PM(ネジ部材44および支持部材S)は、前後方向と直交する、型締装置16の幅方向(左右方向)において、ボールネジ26eに対して対称に配置される。この結果、2つのクロスヘッド押圧機構PMから、クロスヘッド28に幅方向に対称な押圧力が印加される。これにより、クロスヘッド28の移動が容易となる。
【0030】
(変形例1)
変形例1に係る射出成形機10につき説明する。図4は、変形例1に係る射出成形機10において、上側のトグルリンク30からクロスヘッド28を見た状態を表す上面図である。なお、実施形態と同一の要素は、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0031】
変形例1に係る射出成形機10は、支持部材46を有する。支持部材46は、ネジ部材44と螺合することで、ネジ部材44を支持する、支持部材Sとして機能する。すなわち、ここでは、ガイドロッドサポート42は、支持部材Sとしては機能しない。支持部材46は、ガイドロッドサポート42に固定される。支持部材46は、2つのネジ部材44と螺合する2つの雌ネジ部46a(ネジ穴)を有する。このように、クロスヘッド押圧機構PMは、ガイドロッドサポート42に固定され、且つ、ガイドロッド40の支持には直接には寄与しない支持部材46を、支持部材Sとして有してもよい。以上の点を除き、変形例1は、実施形態と実質的に同様なので、詳細な説明を省略する。
【0032】
(変形例2)
変形例2に係る射出成形機10につき説明する。図5は、変形例2に係る射出成形機10において、上側のトグルリンク30からクロスヘッド28を見た状態を表す上面図である。なお、実施形態と同一の要素は、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0033】
変形例2に係るクロスヘッド押圧機構PMの支持部材Sは、リアプラテン22に固定される、基礎部材48に支持される。支持部材Sは、ネジ部材44と螺合する、雌ネジ部Sa(ネジ穴)を有する。基礎部材48は、ガイドロッドサポート42とは異なる部材である。このように、クロスヘッド押圧機構PMは、ガイドロッドサポート42には固定されない、支持部材Sを有してもよい。以上の点を除き、変形例2は、実施形態と実質的に同様なので、詳細な説明を省略する。
【0034】
(変形例3)
変形例3に係る射出成形機10につき説明する。図6は、変形例3に係る射出成形機10において、上側のトグルリンク30からクロスヘッド28を見た状態を表す上面図である。なお、実施形態と同一の要素は、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0035】
変形例3に係るクロスヘッド押圧機構PMは、ロッド52、駆動部54、および支持部材S(支持部42b)を有する。ロッド52は、前後方向に沿って延びた形状を有する。駆動部54は、ロッド52を前後方向に沿って移動させる、例えば、リニアモータ、または油圧シリンダである。支持部材S(支持部42b)は、駆動部54を支持する。支持部材Sは、ロッド52を貫通させる貫通孔42dを有する。なお、駆動部54は、モータと、回転運動を直線運動に変換する変換機構と、の組み合わせであってもよい。このように、クロスヘッド押圧機構PMは、駆動部54を有してもよい。クロスヘッド押圧機構PMの駆動部54は、トグルリンク30での摩擦に抗して、ロックアップ状態を解除するのに必要な力(軸力)を出力する。以上の点を除き、変形例3は、実施形態と実質的に同様なので、詳細な説明を省略する。
【0036】
(その他の変形例)
以上の実施形態および変形例では、2つのクロスヘッド押圧機構PMが設けられているが、クロスヘッド押圧機構PMの個数は、1つであっても、3つ以上であってもよい。1つまたは3つ以上のクロスヘッド押圧機構PMを用いて、クロスヘッド28を押圧し、後退させることができる。
【0037】
また、実施形態および変形例では、クロスヘッド押圧機構PMはリアプラテン22に設けられているが、クロスヘッド押圧機構PMを他の部材、例えば、ベース12に設けてもよい。
【0038】
変形例3において、駆動部54はガイドロッドサポート42の支持部42bによって支持されているが、変形例1または変形例2に示す支持部材46または支持部材Sによって支持されてもよい。
【0039】
[変形実施形態]
本発明は、上述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を取り得る。
【0040】
〔実施形態から得られる発明〕
上記実施形態および変形例から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0041】
〔1〕射出成形機(10)の型締装置(16)は、固定金型(14a)を保持する固定プラテン(20)と、リアプラテン(22)と、前記固定プラテンと前記リアプラテンとを連結する複数のタイバー(34)と、前記固定プラテンと前記リアプラテンとの間に配置され、可動金型(14b)と前記固定金型とが互いに向き合うように前記可動金型を保持し、前記タイバーの軸線方向に沿って移動可能な可動プラテン(24)と、モータ(型開閉モータ26a)によって回転されるボールネジ(26e)と、前記リアプラテンと前記可動プラテンとの間に配置され、前記ボールネジの回転によって前記軸線方向に沿って移動されるクロスヘッド(28)と、前記クロスヘッドの移動に応じて、前記可動プラテンを前記軸線方向に沿って移動させるトグル機構(30、32)と、前記クロスヘッドが前記リアプラテン側に向かって移動するように前記クロスヘッドを押圧するクロスヘッド押圧機構(PM)と、を備える。これにより、モータの故障、または、停電の場合であっても、クロスヘッド押圧機構によってクロスヘッドを押圧してリアプラテン側に向かって移動させることができる。この結果、可動プラテンを移動させて、可動金型を固定金型から離間させ、型締力を開放することができる。
【0042】
〔2〕前記クロスヘッド押圧機構は、前記軸線方向に沿って延びたネジ部材(44)と、前記ネジ部材と螺合し、前記ネジ部材を支持する支持部材(S、46、支持部42b)とを有し、前記ネジ部材が前記支持部材に対して回転することで、前記ネジ部材が前記クロスヘッドを押圧する。これにより、ネジ部材を回転させることで、クロスヘッドを押圧して移動させることができる。
【0043】
〔3〕前記クロスヘッド押圧機構は、前記軸線方向に沿って延びたロッド(52)と、前記ロッドを前記軸線方向に沿って移動させる駆動部(54)と、前記駆動部を支持する支持部材(S、支持部42b)とを有し、前記ロッドが前記クロスヘッドを押圧する。これにより、駆動部によって、ロッドはクロスヘッドを押圧し移動させることができる。
【0044】
〔4〕前記支持部材は、前記リアプラテンに固定されている。これにより、リアプラテンに固定された支持部材に保持されるネジ部材または駆動部を用いて、クロスヘッドを押圧し移動させることができる。
【0045】
〔5〕前記軸線方向に延び、前記クロスヘッドをガイドするガイドロッド(40)を備え、前記支持部材は、前記ガイドロッドを支持する。これにより、支持部材は、ガイドロッドおよびネジ部材(または駆動部)を支持することができる。
【0046】
〔6〕前記クロスヘッド押圧機構は、前記軸線方向と直交する前記型締装置の幅方向に関して、前記ボールネジに対して対称となるように複数設けられている。これにより、ボールネジに対して対称となる複数のクロスヘッド押圧機構を用いて、クロスヘッドに幅方向に対称な押圧力を印加することができる。
【0047】
〔7〕前記クロスヘッド押圧機構は、前記トグル機構が所定以上に延びて、前記固定金型と前記可動金型との間に型締力が発生したロックアップ状態を解除する。これにより、型締力を開放して、トグル機構の油膜切れ、ひいてはトグル機構の固着を防止できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6