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特許7538366情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/26 20090101AFI20240814BHJP
   H04W 84/06 20090101ALI20240814BHJP
   B64U 10/13 20230101ALI20240814BHJP
   G08G 5/00 20060101ALI20240814BHJP
   B64U 101/20 20230101ALN20240814BHJP
【FI】
H04W16/26
H04W84/06
B64U10/13
G08G5/00 A
B64U101:20
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024015980
(22)【出願日】2024-02-05
【審査請求日】2024-04-02
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、Beyond 5G研究開発促進事業「スマートモビリティプラットフォームの実現に向けたドローン・自動運転車の協調制御プラットフォームの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】足立 崇
(72)【発明者】
【氏名】塚本 航平
(72)【発明者】
【氏名】大河 亮介
(72)【発明者】
【氏名】志田 裕紀
【審査官】永田 義仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/033976(WO,A1)
【文献】特開2020-067881(JP,A)
【文献】特開2019-134493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64B1/00-1/70
B64C1/00-99/00
B64D1/00-47/08
B64F1/00-5/60
B64G1/00-99/00
B64U10/00-80/86
G08G1/00-99/00
H04B7/24-7/26
H04M3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信衛星と端末との間における通信を中継する中継局として用いられる飛行体の飛行を管理することが可能な情報処理装置であって、
前記飛行体を飛行させる期間において前記飛行体が前記通信衛星と通信可能な範囲を特定する範囲特定部と、
前記飛行体と通信を確立した前記端末の位置を特定する位置特定部と、
前記範囲特定部が特定した範囲内、かつ、前記飛行体と通信を確立した前記端末と通信可能な範囲内、かつ、前記飛行体の落下の可能性がある落下範囲に前記位置特定部が特定した前記端末の位置が含まれない範囲内において前記飛行体を飛行させる飛行体制御部と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記飛行体制御部は、前記位置特定部が特定した前記端末の位置が前記落下範囲に含まれる場合、前記範囲特定部が特定した範囲内、かつ、前記飛行体と通信を確立した前記端末と通信可能な範囲内において、前記端末の位置が前記落下範囲に含まれない位置まで前記飛行体を飛行させる、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記飛行体制御部は、前記飛行体と前記端末との通信が確立された後において、前記飛行体が移動中に前記飛行体と前記端末との通信が切断された場合、前記飛行体と前記端末との通信が切断される直前に前記飛行体がいた方向に前記飛行体を飛行させる、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記飛行体制御部は、前記範囲特定部が特定した範囲内、かつ、前記飛行体と通信を確立した前記端末と通信可能な範囲内に、前記位置特定部が特定した前記端末の位置が前記落下範囲に含まれない範囲がない場合、前記範囲特定部が特定した範囲内、かつ、前記飛行体と通信を確立した前記端末と通信可能な範囲内、かつ、前記落下範囲内において前記飛行体を飛行させる、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記飛行体制御部は、前記落下範囲内において前記飛行体を飛行させる場合、前記飛行体と通信を確立した複数の前記端末の位置に基づいて、前記落下範囲に含まれる前記端末の数が相対的に少ない範囲内、かつ、前記範囲特定部が特定した範囲内、かつ、前記飛行体と通信を確立した前記端末と通信可能な範囲内において前記飛行体を飛行させる、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記飛行体制御部は、前記落下範囲内において前記飛行体を飛行させる場合、前記飛行体に警告音を出力させる、
請求項4又は5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記飛行体は、遭難者の捜索に用いられ、
前記情報処理装置は、前記遭難者が存在する範囲として想定される想定存在範囲を特定するための情報を取得する取得部をさらに有し、
前記範囲特定部は、前記想定存在範囲及び前記期間において前記飛行体が前記通信衛星と通信可能な範囲を特定し、
前記情報処理装置は、前記飛行体が前記遭難者の端末と通信を確立した場合、当該端末の位置を所定の機関に通知する通知部をさらに有する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記範囲特定部は、前記遭難者の端末が移動体通信ネットワークにおいて最後に通信した時刻から所定の期間が経過したことを契機として、前記想定存在範囲及び前記期間において前記飛行体が前記通信衛星と通信可能な範囲を特定する、
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記情報処理装置は、前記飛行体と通信を確立した前記遭難者の端末を介して前記遭難者の安否を確認するための処理を実行する確認処理部をさらに有し、
前記通知部は、前記確認処理部による処理の実行結果として、前記遭難者の安否が確認できなかった場合に、前記遭難者の端末の位置を前記所定の機関に通知する、
請求項7又は8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
通信衛星と端末との間における通信を中継する中継局として用いられる飛行体の飛行を管理することが可能なコンピュータが実行する、
前記飛行体を飛行させる期間において前記飛行体が前記通信衛星と通信可能な範囲を特定するステップと、
前記飛行体と通信を確立した前記端末の位置を特定するステップと、
特定した範囲内、かつ、前記飛行体と通信を確立した前記端末と通信可能な範囲内、かつ、前記飛行体の落下の可能性がある落下範囲に特定した前記端末の位置が含まれない範囲内において前記飛行体を飛行させるステップと、
を有する情報処理方法。
【請求項11】
通信衛星と端末との間における通信を中継する中継局として用いられる飛行体の飛行を管理することが可能なコンピュータを、
前記飛行体を飛行させる期間において前記飛行体が前記通信衛星と通信可能な範囲を特定する範囲特定部、
前記飛行体と通信を確立した前記端末の位置を特定する位置特定部、及び
前記範囲特定部が特定した範囲内、かつ、前記飛行体と通信を確立した前記端末と通信可能な範囲内、かつ、前記飛行体の落下の可能性がある落下範囲に前記位置特定部が特定した前記端末の位置が含まれない範囲内において前記飛行体を飛行させる飛行体制御部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衛星通信をユーザ端末に提供する装置が知られている。特許文献1には、車両に搭載された衛星系の通信設備を使用してユーザ端末に通信を行わせる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-175134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、衛星通信においては、通信衛星と衛星系の通信設備との間に木や建物等の遮蔽物が存在すると品質が悪くなり得るため、通信衛星を提供する場所に応じて、衛星通信の品質の差が大きくなってしまう場合があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、衛星通信の品質の差を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様における情報処理装置は、通信衛星と端末との間における通信を中継する中継局として用いられる飛行体の飛行を管理することが可能な情報処理装置であって、前記飛行体を飛行させる期間において前記飛行体が前記通信衛星と通信可能な範囲を特定する範囲特定部と、前記飛行体と通信を確立した前記端末の位置を特定する位置特定部と、前記範囲特定部が特定した範囲内、かつ、前記飛行体と通信を確立した前記端末と通信可能な範囲内、かつ、前記飛行体の落下の可能性がある落下範囲に前記位置特定部が特定した前記端末の位置が含まれない範囲内において前記飛行体を飛行させる飛行体制御部と、を有する。
【0007】
前記飛行体制御部は、前記位置特定部が特定した前記端末の位置が前記落下範囲に含まれる場合、前記範囲特定部が特定した範囲内、かつ、前記飛行体と通信を確立した前記端末と通信可能な範囲内において、前記端末の位置が前記落下範囲に含まれない位置まで前記飛行体を飛行させてもよい。
【0008】
前記飛行体制御部は、前記飛行体と前記端末との通信が確立された後において、前記飛行体が移動中に前記飛行体と前記端末との通信が切断された場合、前記飛行体と前記端末との通信が切断される直前に前記飛行体がいた方向に前記飛行体を飛行させてもよい。
【0009】
前記飛行体制御部は、前記範囲特定部が特定した範囲内、かつ、前記飛行体と通信を確立した前記端末と通信可能な範囲内に、前記位置特定部が特定した前記端末の位置が前記落下範囲に含まれない範囲がない場合、前記範囲特定部が特定した範囲内、かつ、前記飛行体と通信を確立した前記端末と通信可能な範囲内、かつ、前記落下範囲内において前記飛行体を飛行させてもよい。
【0010】
前記飛行体制御部は、前記落下範囲内において前記飛行体を飛行させる場合、前記飛行体と通信を確立した複数の前記端末の位置に基づいて、前記落下範囲に含まれる前記端末の数が相対的に少ない範囲内、かつ、前記範囲特定部が特定した範囲内、かつ、前記飛行体と通信を確立した前記端末と通信可能な範囲内において前記飛行体を飛行させてもよい。
【0011】
前記飛行体制御部は、前記落下範囲内において前記飛行体を飛行させる場合、前記飛行体に警告音を出力させてもよい。
【0012】
前記飛行体は、遭難者の捜索に用いられてもよいし、前記情報処理装置は、前記遭難者が存在する範囲として想定される想定存在範囲を特定するための情報を取得する取得部をさらに有してもよいし、
前記範囲特定部は、前記想定存在範囲及び前記期間において前記飛行体が前記通信衛星と通信可能な範囲を特定してもよいし、前記情報処理装置は、前記飛行体が前記遭難者の端末と通信を確立した場合、当該端末の位置を所定の機関に通知する通知部をさらに有してもよい。
【0013】
前記範囲特定部は、前記遭難者の端末が移動体通信ネットワークにおいて最後に通信した時刻から所定の期間が経過したことを契機として、前記想定存在範囲及び前記期間において前記飛行体が前記通信衛星と通信可能な範囲を特定してもよい。
【0014】
前記情報処理装置は、前記飛行体と通信を確立した前記遭難者の端末を介して前記遭難者の安否を確認するための処理を実行する確認処理部をさらに有してもよいし、前記通知部は、前記確認処理部による処理の実行結果として、前記遭難者の安否が確認できなかった場合に、前記遭難者の端末の位置を前記所定の機関に通知してもよい。
【0015】
本発明の第2の態様における情報処理方法は、通信衛星と端末との間における通信を中継する中継局として用いられる飛行体の飛行を管理することが可能なコンピュータが実行する、前記飛行体を飛行させる期間において前記飛行体が前記通信衛星と通信可能な範囲を特定するステップと、前記飛行体と通信を確立した前記端末の位置を特定するステップと、特定した範囲内、かつ、前記飛行体と通信を確立した前記端末と通信可能な範囲内、かつ、前記飛行体の落下の可能性がある落下範囲に特定した前記端末の位置が含まれない範囲内において前記飛行体を飛行させるステップと、を有する。
【0016】
本発明の第3の態様におけるプログラムは、通信衛星と端末との間における通信を中継する中継局として用いられる飛行体の飛行を管理することが可能なコンピュータを、前記飛行体を飛行させる期間において前記飛行体が前記通信衛星と通信可能な範囲を特定する範囲特定部、前記飛行体と通信を確立した前記端末の位置を特定する位置特定部、及び前記範囲特定部が特定した範囲内、かつ、前記飛行体と通信を確立した前記端末と通信可能な範囲内、かつ、前記飛行体の落下の可能性がある落下範囲に前記位置特定部が特定した前記端末の位置が含まれない範囲内において前記飛行体を飛行させる飛行体制御部、として機能させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、衛星通信の品質の差を小さくすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施の形態に係る情報処理システムの概要を説明するための図である。
図2】第1の実施の形態に係る情報処理装置の機能構成を模式的に示す図である。
図3】情報処理システムの処理の流れについて説明する。
図4】第2の実施の形態に係る情報処理システムの概要を説明するための図である。
図5】第2の実施の形態における情報処理装置の機能構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1の実施の形態>
[情報処理システムSの概要]
図1は、第1の実施の形態に係る情報処理システムSの概要を説明するための図である。情報処理システムSは、情報処理サービスを提供するために用いられるシステムである。情報処理サービスは、衛星通信を提供するサービスである。情報処理システムSは、要求者端末1と、通信衛星2と、ユーザ端末3と、飛行体4と、情報処理装置5とを有する。
【0020】
要求者端末1は、要求者が使用する端末であり、例えば、スマートフォン、タブレット端末又はパーソナルコンピュータ等である。要求者は、例えば、キャンプ場等の所定の場所又は音楽ライブ等の所定のイベントを管理する者であって、所定の場所又は所定のイベントが開催される場所(以下、「対象場所」という。)において情報処理サービスの提供を要求する者である。対象場所は、例えば、移動体通信ネットワークを利用できない場所(例えば、移動体通信ネットワークの基地局の電波が届かない場所)である。
【0021】
通信衛星2は、地球の軌道上に存在する人工衛星である。通信衛星2は、衛星インターネットアクセスのサービスを提供する装置として用いられる。衛星インターネットアクセスのサービスは、例えば、当該サービスに加入した加入者に対して、衛星通信を提供するサービスである。
【0022】
ユーザ端末3は、ユーザが使用する端末であり、例えば、スマートフォン又はタブレット端末である。ユーザ端末3は、ユーザが通信事業者と契約した移動体通信サービスを提供する基地局を介して情報を送受信する。
【0023】
飛行体4は、無人で飛行する航空機である。飛行体4は、情報処理サービスにおいて、通信衛星2とユーザ端末3との間における通信を中継する中継局として用いられる。
【0024】
情報処理装置5は、飛行体4の飛行を管理することが可能な装置であり、例えば、サーバである。飛行体4及び情報処理装置5を管理する管理者は、例えば、移動体通信サービスを提供する通信事業者であって、衛星インターネットアクセスのサービスの加入者である。
以下において、情報処理システムSが実行する処理について説明する。
【0025】
図1に示す範囲R1は、飛行体4が通信衛星2と通信可能な範囲である衛星通信範囲を示す。例えば、飛行体4と通信衛星2との間に木や建物等の何らかの遮蔽物が存在すると、飛行体4は通信衛星2と通信できなくなる場合がある。図1は範囲R1を模式的に示しているが、範囲R1は地形データ等に基づいてあらかじめ定められている。また、図1に示す範囲R2は、ユーザ端末3と通信可能な範囲である端末通信範囲を示す。また、図1に示す範囲R3は、飛行体4の落下の可能性がある範囲である落下範囲を示す。
【0026】
まず、要求者が要求者端末1において情報処理サービスの提供を要求するための情報を入力すると、要求者端末1は、情報処理サービスの提供要求を情報処理装置5に送信する(図1における(1))。情報処理サービスの提供要求には、少なくとも飛行体4を飛行させる飛行期間を示す情報が含まれる。
【0027】
情報処理装置5は、情報処理サービスの提供要求に含まれる情報に基づいて、衛星通信範囲である範囲R1を特定する(図1における(2))。情報処理装置5は、特定した範囲R1を飛行させるための確立前指示を飛行体4に送信する(図1における(3))。確立前指示は、飛行体4がユーザ端末3と通信を確立させる前において飛行体4に所定の範囲を飛行させるための指示である。飛行体4は、指示された範囲R1内において飛行する。
【0028】
飛行体4が指示された範囲R1を飛行中にユーザ端末3と通信を確立させると、情報処理装置5は、範囲R1と、範囲R2と、範囲R3に飛行体4と通信を確立したユーザ端末3の位置が含まれない範囲とを満たす範囲を飛行させるための確立後指示を飛行体4に送信する(図1における(4))。確立後指示は、飛行体4がユーザ端末3と通信を確立させた後において飛行体4に所定の範囲を飛行させるための指示である。その後、飛行体4は、範囲R1内、かつ、範囲R2、かつ、範囲R3に飛行体4と通信を確立したユーザ端末3の位置が含まれない範囲内において飛行する。
【0029】
このようにすることで、情報処理システムSは、飛行体4を飛行させながら情報処理サービスをユーザ端末3に提供することができる。これにより、情報処理システムSは、木や建物等の遮蔽物による衛星通信の品質の影響を受けにくくすることができる。その結果、情報処理システムSは、情報処理サービスを提供する場所に応じた衛星通信の品質の差を小さくすることができる。また、情報処理システムSは、飛行体4の落下範囲に飛行体4と通信を確立したユーザ端末3の位置が含まれない範囲内において飛行体4を飛行させることにより、情報処理サービスを提供する際における安全性を向上させることができる。
以下、情報処理装置5の構成について説明する。
【0030】
[第1の実施の形態に係る情報処理装置5の構成]
図2は、第1の実施の形態に係る情報処理装置5の機能構成を模式的に示す図である。情報処理装置5は、通信部51と、記憶部52と、制御部53とを備える。図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、図2に示していないデータの流れがあってもよい。図2において、各機能ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、図2に示す機能ブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。機能ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0031】
通信部51は、ネットワークに接続するための通信インターフェースであり、外部の端末及び外部のサーバからデータを受信するための通信コントローラを有する。
【0032】
記憶部52は、情報処理装置5を実現するコンピュータのBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)や情報処理装置5の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、OS(Operating System)やアプリケーションプログラム、当該アプリケーションプログラムの実行時に参照される種々の情報を格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置である。
【0033】
制御部53は、情報処理装置5のCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部52に記憶されたプログラムを実行することによって、要求取得部531、範囲特定部532、飛行体制御部533、飛行体情報取得部534及び位置特定部535として機能する。
【0034】
要求取得部531は、要求者端末1から、情報処理サービスの提供要求を取得する。提供要求には、例えば、情報処理サービスの提供を要求する要求範囲を示す情報と、情報処理サービスの提供を要求する要求期間とが含まれる。要求範囲は、例えば、対象場所(要求者が管理する所定の場所又は要求者が管理する所定のイベントが開催される場所)である。要求範囲を示す情報は、要求者が地図で指定した範囲を示す複数の位置座標であってもよいし、要求者が入力した場所の名称であってもよい。
【0035】
範囲特定部532は、要求取得部531が取得した情報処理サービスの提供要求に含まれる要求範囲及び要求期間において飛行体4が通信衛星2と通信可能な範囲である衛星通信範囲を特定する。範囲特定部532は、例えば、所定のシミュレータを用いて、通信衛星範囲を特定する。
【0036】
所定のシミュレータは、通信衛星2の移動に応じて変化する当該通信衛星2と通信可能な範囲をシミュレーションするプログラムであり、例えば、範囲を示す情報と期間とが入力されると、当該範囲及び当該期間において通信衛星2と通信可能な範囲を示す情報を出力する。範囲特定部532は、例えば、所定のシミュレータに要求範囲を示す情報と要求期間とを入力し、当該入力に応じて所定のシミュレータが出力した情報を取得することにより、衛星通信範囲を特定する。
【0037】
飛行体制御部533は、飛行体4の飛行を制御する。飛行体制御部533は、例えば、飛行体4の飛行を制御するための制御指示であって飛行体4がユーザ端末3と通信を確立させる前における制御指示である確立前指示を飛行体4に送信することにより、飛行体4の飛行を制御する。確立前指示には、例えば、範囲特定部532が特定した衛星通信範囲を示す情報と、要求取得部531が取得した提供要求に含まれる要求期間とが含まれる。
【0038】
例えば、飛行体4が配置されている配置場所が衛星通信範囲内又は要求範囲内である場合、飛行体制御部533は、確立前指示を飛行体4に送信する。この場合、飛行体4は、現在時刻が要求期間の開始時刻を経過したことを契機として衛星通信範囲内において飛行し、現在時刻が要求期間の終了時刻を経過した場合に配置場所に帰還する。
【0039】
飛行体4の配置場所が衛星通信範囲外又は要求範囲外である場合、飛行体制御部533は、現在時刻が飛行期間の開始時刻に基づく飛行開始時刻と、飛行体4の配置場所と衛星通信範囲との間における移動ルートを示す情報とをさらに含む確立前指示を飛行体4に送信してもよい。飛行開始時刻は、飛行体4に飛行を開始させる時刻であり、例えば、飛行期間の開示時刻から移動ルートの所要期間前の時刻である。
【0040】
この場合、飛行体4は、現在時刻が飛行開始時刻を経過したことを契機として移動ルートに従って衛星通信範囲に移動し、衛星通信範囲内において飛行する。その後、飛行体4は、現在時刻が要求期間の終了時刻を経過した場合に移動ルートに従って配置場所に帰還する。なお、飛行体制御部533が、要求期間に応じて、飛行を開始させる制御指示と、帰還させる制御指示とを飛行体4に送信してもよい。
【0041】
飛行体情報取得部534は、飛行体4から種々の情報を取得する。飛行体情報取得部534は、例えば、飛行体4と通信を確立したユーザ端末3に関する情報を取得する。また、飛行体情報取得部534は、飛行体4に関する情報を取得してもよい。飛行体情報取得部534は、例えば、飛行体4に関する情報として、当該飛行体4の位置を示す飛行体4の位置情報(例えば、二次元座標又は三次元座標等)を取得する。
【0042】
位置特定部535は、範囲特定部532が特定した衛星通信範囲において飛行する飛行体4と通信を確立したユーザ端末3の位置を特定する。具体的には、まず、飛行体4が衛星通信範囲に存在するユーザ端末3と通信を確立させると、当該ユーザ端末3の位置を特定するための位置情報を情報処理装置5に送信する。そして、飛行体情報取得部534が飛行体4からユーザ端末3の位置情報を取得すると、位置特定部535は、当該ユーザ端末3の位置情報に基づいて、ユーザ端末3の位置を特定する。
【0043】
ユーザ端末3の位置情報は、例えば、ユーザ端末3がGPS(Global Positioning System)等の衛星測位システムを用いて測定した位置座標である。なお、ユーザ端末3の位置情報は、位置座標に限らず、ユーザ端末3が発した電波の強度を示す情報であってもよい。この場合、位置特定部535は、位置情報によって示される電波の強度に基づいて、ユーザ端末3と飛行体4との位置関係を推定することにより、ユーザ端末3の位置を特定する。
【0044】
また、例えば、ユーザ端末3との間において電波を送受信するための複数のアンテナが飛行体4に設けられている場合、ユーザ端末3の位置情報は、各アンテナがユーザ端末3によって発せられた電波を受信した方向を示す情報であってもよい。この場合、位置特定部535は、ユーザ端末3の位置情報によって示される各アンテナが電波を受信した方向に基づいて、ユーザ端末3の位置を特定する。位置特定部535は、例えば、ユーザ端末3の位置の特定にユーザ端末3が発した電波を用いる場合、公知の技術を用いてユーザ端末3の位置を特定することができる。
【0045】
位置特定部535は、所定の間隔(例えば、10秒おき、1分おき等)で、飛行体4と通信を確立したユーザ端末3の位置を特定する。例えば、まず、飛行体情報取得部534は、所定の間隔で、飛行体4からユーザ端末3の位置情報を取得する。そして、位置特定部535は、飛行体情報取得部534がユーザ端末3の位置情報を取得したことを契機として、飛行体4と通信を確立したユーザ端末3の位置を特定する。
【0046】
飛行体制御部533は、位置特定部535がユーザ端末3の位置を特定すると、範囲特定部532が特定した衛星通信範囲内、かつ、飛行体4と通信を確立したユーザ端末3と通信可能な範囲である端末通信範囲内、かつ、飛行体4の落下の可能性がある落下範囲に位置特定部535が特定したユーザ端末3の位置が含まれない端末位置外範囲内において飛行体4を飛行させる。端末通信範囲は、例えば、位置特定部535が特定したユーザ端末3の位置から予め定められた距離(例えば、10メートル、100メートル等)までの範囲、又はユーザ端末3の電波の強度が予め定められた閾値以上である範囲等である。端末位置外範囲は、例えば、位置特定部535が特定したユーザ端末3の位置又は当該ユーザ端末3の位置から予め定められた距離(例えば、1メートル、2メートル等)までの範囲と、飛行体4の落下範囲との一部が重ならない範囲である。飛行体4の落下範囲は、予め定められた範囲であってもよいし、地上から飛行体4までの高さ及び飛行体4が飛行する場所(要求範囲)の風速に基づいて定められた範囲であってもよい。
【0047】
例えば、飛行体制御部533は、まず、位置特定部535が特定したユーザ端末3の位置に基づいて、端末通信範囲を特定する。また、飛行体制御部533は、飛行体情報取得部534が取得した飛行体4の位置情報によって示される三次元座標と、当該飛行体4の位置情報によって示される場所の風速とに基づいて、飛行体4の落下範囲を特定し、特定した飛行体4の落下範囲と、位置特定部535が特定したユーザ端末3の位置とに基づいて、端末位置外範囲を特定する。飛行体4の位置情報によって示される場所の風速は、飛行体4が測定した情報であってもよいし、気象予報を管理する不図示のサーバから取得された情報であってもよい。そして、飛行体制御部533は、範囲特定部532が特定した衛星通信範囲内、かつ、特定した端末通信範囲内、かつ、特定した端末位置外範囲内において飛行体4を飛行させる。
【0048】
飛行体制御部533は、飛行体4がユーザ端末3と通信を確立させた後における制御指示である確立後指示を飛行体4に送信することにより、飛行体4の飛行を制御する。確立後指示には、衛星通信範囲を示す情報と、端末通信範囲を示す情報と、端末位置外範囲を示す情報とが含まれる。確立後指示には、例えば、衛星通信範囲内、かつ、端末通信範囲内、かつ、端末位置外範囲内を満たす範囲として、水平面において移動を許可する範囲と、垂直面において移動を許可する範囲とが含まれる。
【0049】
なお、飛行体4の落下範囲は、飛行体4の高度が低くなるほど小さくなり、飛行体4の高度が高くなるほど大きくなるため、飛行体4の高度を低くした方が、端末位置外範囲を満たしやすくなり得る。しかし、飛行体4の高度を低くすると、遮蔽物によって衛星通信の品質が低下したり、飛行体4が遮蔽物に接触したりするリスクが生じ得る。そのため、飛行体制御部533は、飛行体4の周囲に遮蔽物が存在する場合、予め定められた高度(例えば50メートル等)における範囲内(衛星通信範囲内、かつ、端末通信範囲内、かつ、端末位置外範囲内)において飛行体4を飛行させる。飛行体4は、確立後指示を取得すると、衛星通信範囲内、かつ、端末通信範囲内、かつ、端末位置外範囲内において飛行する。
【0050】
ここで、飛行体制御部533が確立後指示を飛行体4に送信しても、ユーザ端末3を所持するユーザが移動すると、ユーザ端末3の位置が後発的に飛行体4の落下範囲に含まれてしまう場合がある。そこで、情報処理装置5は、ユーザ端末3の位置が飛行体4の落下範囲に含まれる場合、飛行体4を移動させてもよい。
【0051】
具体的には、飛行体制御部533は、位置特定部535が特定したユーザ端末3の位置が飛行体4の落下範囲に含まれる場合、衛星通信範囲内、かつ、端末通信範囲内において、ユーザ端末3の位置が落下範囲に含まれない位置まで飛行体4を飛行させる。
【0052】
例えば、まず、飛行体情報取得部534は、飛行体4から当該飛行体4の位置を示す飛行体4の位置情報を取得する。そして、飛行体制御部533は、衛星通信範囲内、かつ、端末通信範囲内において、飛行体4の位置情報が示す飛行体4の位置から位置特定部535が特定したユーザ端末3の位置への方向とは反対の方向にユーザ端末3の位置が落下範囲に含まれない位置まで飛行体4を飛行させる。このようにすることで、情報処理装置5は、飛行体4が飛行しながら情報処理サービスを提供することに対する安全性を確保することができる。
【0053】
また、飛行体4が飛行していると、後発的に飛行体4の位置が端末通信範囲に含まれなくなってしまう場合がある。そこで、情報処理装置5は、後発的に飛行体4の位置が端末通信範囲に含まれなくなった場合、端末通信範囲の方向に飛行体4を移動させてもよい。
【0054】
具体的には、飛行体制御部533は、飛行体4とユーザ端末3との通信が確立された後において、飛行体4が移動中に飛行体4とユーザ端末3との通信が切断された場合、飛行体4とユーザ端末3との通信が切断される直前に飛行体4がいた方向に飛行体4を飛行させる。
【0055】
飛行体制御部533は、例えば、飛行体4を、飛行体4とユーザ端末3との通信が切断される直前に飛行体情報取得部534が取得したユーザ端末3の位置情報によって特定されるユーザ端末3の位置の方向に、飛行体情報取得部534がユーザ端末3との通信を確立させたことを示す情報を飛行体4から取得するまで飛行させる。このようにすることで、情報処理装置5は、飛行体4とユーザ端末3との通信を再度確立させる蓋然性を高めることができる。なお、飛行体4が、ユーザ端末3との通信が切断される直前に特定されたユーザ端末3の位置まで飛行しても、当該ユーザ端末3との通信を確立させることができない場合、飛行体制御部533は、飛行体4とユーザ端末3との通信が切断される直前に特定されたユーザ端末3の位置の方向への飛行を中断させてもよい。
【0056】
ここで、飛行体4と通信を確立させたユーザ端末3の数が多い場合、各ユーザ端末3の位置が飛行体4の落下範囲に含まれない範囲がない場合が生じ得る。そこで、情報処理装置5は、端末位置外範囲がない場合、当該端末位置外範囲の条件を除外して飛行体4を飛行させてもよい。
【0057】
具体的には、飛行体制御部533は、範囲特定部532が特定した衛星通信範囲内、かつ、端末通信範囲内に、位置特定部535が特定したユーザ端末3の位置が落下範囲に含まれない範囲がない場合、範囲特定部532が特定した衛星通信範囲内、かつ、端末通信範囲内、かつ、落下範囲内において飛行体4を飛行させる。このようにすることで、情報処理装置5は、端末位置外範囲が無い場合であっても、情報処理サービスを各ユーザ端末3に提供することができる。
【0058】
なお、端末位置外範囲の条件を除外して飛行体4を飛行させる場合、飛行体4の落下範囲に含まれるユーザ端末3の数が少ない範囲で飛行させることが望ましい。そこで、情報処理装置5は、飛行体4の落下範囲に含まれるユーザ端末3の数が少ない範囲内において飛行体4を飛行させてもよい。
【0059】
具体的には、飛行体制御部533は、飛行体4の落下範囲内において飛行体4を飛行させる場合、飛行体4と通信を確立した複数のユーザ端末3の位置に基づいて、飛行体4の落下範囲に含まれるユーザ端末3の数が相対的に少ない範囲内、かつ、範囲特定部532が特定した範囲内、かつ、飛行体4と通信を確立したユーザ端末3と通信可能な範囲内において飛行体4を飛行させる。
【0060】
例えば、まず、飛行体制御部533は、飛行体4と通信を確立した複数のユーザ端末3の位置に基づいて、衛星通信範囲及び各ユーザ端末3の端末通信範囲において、飛行体4の落下範囲に含まれるユーザ端末3の数が最も少ない範囲である端末最小範囲を特定する。そして、飛行体制御部533は、衛星通信範囲内、かつ、端末通信範囲内、かつ、特定した端末最小範囲内において飛行体4を飛行させる。このようにすることで、情報処理装置5は、飛行体4が飛行しながら情報処理サービスを提供することに対するリスクを最小限に留めることができる。
【0061】
端末位置外範囲の条件を除外して飛行体4を飛行させる場合、ユーザに飛行体4の位置を知らせながら飛行体4を飛行させることが望ましい。そこで、情報処理装置5は、飛行体4と通信を確立したユーザ端末3のユーザに対して、飛行体4の存在又は位置を通知する。
【0062】
具体的には、飛行体制御部533は、落下範囲内において飛行体4を飛行させる場合、飛行体4に警告音を出力させる。飛行体制御部533は、例えば、警告音の出力を示す情報を含む確立後指示を飛行体4に送信することにより、飛行体4に警告音を出力させる。このようにすることで、情報処理装置5は、ユーザに飛行体4の存在又は位置を知らせることができる。
【0063】
[情報処理システムSの処理]
続いて、情報処理システムSの処理の流れについて説明する。図3は、情報処理システムSの処理の流れを示すシーケンス図である。本処理は、要求者端末1が、情報処理サービスの提供要求を情報処理装置5に送信したことを契機として開始する(S1)。
【0064】
情報処理装置5において、要求取得部531が情報処理サービスの提供要求を取得すると、範囲特定部532は、当該提供要求に含まれる要求範囲及び要求期間に基づいて、衛星通信範囲を特定する(S2)。飛行体制御部533は、衛星通信範囲を示す情報及び要求期間を含む確立前指示を飛行体4に送信する(S3)。
【0065】
飛行体4は、確立前指示に基づいて、衛星通信範囲及び要求期間に従って飛行する(S4)。飛行体4がユーザ端末3の端末通信範囲に入ると、ユーザ端末3は、飛行体4と通信を確立させる(S5)。
【0066】
飛行体4は、通信を確立させたユーザ端末3の位置情報と、飛行体4の位置情報とを、通信衛星2を介して情報処理装置5に送信する(S6)。情報処理装置5において、飛行体情報取得部534が飛行体4からユーザ端末3の位置情報を取得すると、位置特定部535は、ユーザ端末3の位置情報に基づいて、ユーザ端末3の位置を特定する(S7)。
【0067】
飛行体制御部533は、位置特定部535が特定したユーザ端末3の位置に基づいて、端末通信範囲を特定する(S8)。また、飛行体制御部533は、飛行体情報取得部534が取得した飛行体4の位置情報によって示される三次元座標と、当該飛行体4の位置情報によって示される場所の風速とに基づいて、飛行体4の落下範囲を特定し、特定した飛行体4の落下範囲と、位置特定部535が特定したユーザ端末3の位置とに基づいて、端末位置外範囲を特定する(S9)。
【0068】
飛行体制御部533は、範囲特定部532が特定した衛星通信範囲を示す情報と、特定した端末通信範囲を示す情報と、特定した端末位置外範囲を示す情報とを含む確立後指示を飛行体4に送信する(S10)。そして、飛行体4は、確立後指示に基づいて、衛星通信範囲内、かつ、端末通信範囲内、かつ、端末位置外範囲内において飛行する(S11)。
【0069】
[第1の実施の形態における効果]
以上説明したとおり、情報処理装置5は、飛行体4に対して、衛星通信範囲内、かつ、端末通信範囲内、かつ、端末位置外範囲内において飛行させる。このようにすることで、情報処理装置5は、飛行体4を飛行させながら情報処理サービスをユーザ端末3に提供することができる。これにより、情報処理装置5は、木や建物等の遮蔽物による衛星通信の品質の影響を受けにくくすることができる。その結果、情報処理装置5は、情報処理サービスを提供する場所に応じた衛星通信の品質の差を小さくすることができる。また、情報処理装置5は、飛行体4の落下範囲に飛行体4と通信を確立したユーザ端末3の位置が含まれない範囲内において飛行体4を飛行させることにより、情報処理サービスを提供する際における安全性を向上させることができる。
【0070】
<第2の実施の形態>
[飛行体4を用いて遭難者を捜索する]
続いて、第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、所定の場所又は所定のイベントが開催される場所に集まったユーザに衛星通信を提供するために飛行体4を用いる例を説明した。これに対して、第2の実施の形態では、山や谷等のように、移動体通信サービスを利用することができないエリアで遭難した遭難者を捜索し、当該遭難者が使用するユーザ端末3に衛星通信を提供するために飛行体4を用いる点で第1の実施の形態とは異なる。以下において、第1の実施の形態と異なる部分について説明する。第1の実施の形態と同じ部分については適宜説明を省略する。
【0071】
図4は、第2の実施の形態に係る情報処理システムSの概要を説明するための図である。第2の実施の形態における要求者は、例えば、遭難者を救助する活動を行う所定の機関(例えば、警察、消防、軍等)に所属する者、又は遭難者の家族、友人等の遭難者と所定の関係を有する者等である。
【0072】
この場合において、要求者が要求者端末1において情報処理サービスの提供を要求するための情報を入力すると、要求者端末1は、情報処理サービスの提供要求を情報処理装置5に送信する(図4における(1))。第2の実施の形態における提供要求には、遭難者が存在する範囲として想定される想定存在範囲を特定するための範囲特定情報が含まれる。範囲特定情報は、例えば、山の名称、又は遭難者が登山において利用した登山ルートを示す情報である。
【0073】
情報処理装置5は、情報処理サービスの提供要求に含まれる情報に基づいて、衛星通信範囲を特定する(図4における(2))。情報処理装置5は、確立前指示を飛行体4に送信する(図4における(3))。飛行体4は、指示された衛星通信範囲内において、遭難者を捜索するための捜索ルートであるルートWを飛行する。
【0074】
飛行体4が、遭難者のユーザ端末の電波を受信することができる範囲に近づくと、飛行体4と遭難者のユーザ端末3とが通信を確立する。飛行体4がユーザ端末3と通信を確立させると、情報処理装置5は、確立後指示を飛行体4に送信する(図4における(4))。その後、飛行体4は、衛星通信範囲内、かつ、端末通信範囲内、かつ、端末位置外範囲内において飛行する。
【0075】
このようにすることで、第2の実施の形態に係る情報処理システムSは、遭難者の捜索に飛行体4を用いつつ、情報処理サービスを提供する際における安全性を向上させることができる。
【0076】
[第2の実施の形態に係る情報処理装置5の構成]
図5は、第2の実施の形態における情報処理装置5の機能構成を模式的に示す図である。第2の実施の形態に係る情報処理装置5が備える制御部53は、通知部536及び確認処理部537としてさらに機能する。
【0077】
要求取得部531は、要求者端末1から、範囲特定情報を含む情報処理サービスの提供要求を取得する。範囲特定部532は、要求取得部531が取得した情報処理サービスの提供要求に含まれる範囲特定情報によって特定される想定存在範囲及び捜索期間において飛行体4が通信衛星と通信可能な範囲である衛星通信範囲を特定する。捜索期間は、現在時刻に基づく期間であってもよいし、要求者が指定した期間であってもよい。現在時刻に基づく期間は、例えば、飛行体4が想定存在範囲に到着する時刻から予め定められた期間(例えば、1時間、日没までの期間等)が経過するまでの期間である。
【0078】
上記において、範囲特定情報が、登山ルートの範囲を示す情報である例を説明したが、これに限らない。例えば、範囲特定情報は、遭難者のユーザ端末3を識別するための端末識別情報(例えば、電話番号、ユーザ端末3のID等)であってもよい。この場合、範囲特定部532は、端末識別情報が示すユーザ端末3が移動体通信ネットワークにおいて最後に通信したときの当該ユーザ端末3の位置に基づいて、想定存在範囲を特定する。範囲特定部532は、例えば、移動体通信ネットワークにおいて最後に通信したときのユーザ端末3の位置から所定の距離(例えば500メートル、1キロメートル、10キロメートル等)までの範囲を、想定存在範囲として特定する。範囲特定部532は、衛星通信範囲内において捜索ルートを作成してもよい。
【0079】
飛行体制御部533は、衛星通信範囲を示す情報と捜索期間とを含む確立前指示を飛行体4に送信する。飛行体4は、確立前指示を取得すると、衛星通信範囲内の捜索ルートを飛行する。飛行体4は、情報処理装置5から捜索ルートを示す情報を取得してもよいし、衛星通信範囲を示す情報に基づいて捜索ルートを作成してもよい。
【0080】
通知部536は、飛行体4が遭難者のユーザ端末3と通信を確立した場合、当該ユーザ端末3の位置を通知する。通知部536は、ユーザ端末3の位置を、要求者に通知してもよいし、要求者(例えば、遭難者と所定の関係を有する者)とは異なる所定の機関に通知してもよい。具体的には、通知部536は、位置特定部535が捜索者のユーザ端末3の位置を特定した場合に、当該ユーザ端末3の位置を示す情報を通知する。このようにすることで、情報処理装置5は、通信を確立したユーザ端末3の位置を知らせることができる。
【0081】
情報処理装置5は、遭難者の安否の確認結果に応じて、ユーザ端末3の位置を通知してもよい。具体的には、情報処理装置5は、以下の2つのステップを実行することにより、遭難者の安否の確認結果に応じて、ユーザ端末3の位置を通知する。
【0082】
第1のステップとして、確認処理部537は、飛行体4と通信を確立した遭難者のユーザ端末3を介して遭難者の安否を確認するための処理を実行する。確認処理部537は、例えば、安否を確認するためのメッセージをユーザ端末3にプッシュ通知し、当該プッシュ通知に対する応答の有無に基づいて、遭難者の安否を確認する。
【0083】
第2のステップとして、通知部536は、確認処理部537による処理の実行結果に応じてユーザ端末3の位置を通知する。具体的には、通知部536は、確認処理部537による処理の実行結果として、遭難者の安否が確認できなかった場合に、遭難者のユーザ端末3の位置を所定の機関に通知する。一方、通知部536は、確認処理部537による処理の実行結果として、遭難者の安否が確認できた場合、遭難者のユーザ端末3の位置を所定の機関に通知せずに待機する。
【0084】
このようにすることで、情報処理装置5は、遭難者の状態に応じてユーザ端末3の位置を通知することができる。なお、通知部536は、確認処理部537による処理の実行結果として、遭難者の安否が確認できた場合であっても、遭難者のユーザ端末3の位置を所定の機関に通知してもよい。
【0085】
ここで、登山ルートには、遭難者以外の登山者が存在する場合があるため、飛行体4と通信を確立させたユーザ端末3の所有者が遭難者であることを特定する必要がある。そこで、情報処理装置5は、飛行体4と通信を確立させたユーザ端末3の所有者が遭難者であるか否かを判定してもよい。
【0086】
具体的には、位置特定部535は、判定部としてさらに機能し、飛行体4と通信を確立させたユーザ端末3の位置に基づいて、飛行体4と通信を確立させたユーザ端末3の所有者が遭難者であるか否かを判定する。位置特定部535は、例えば、地図情報を参照し、飛行体4と通信を確立させたユーザ端末3の位置が登山ルートではない場合、又は飛行体4と通信を確立させたユーザ端末3の位置が登山ルートから所定の閾値(例えば100メートル等)以上離れている場合に、飛行体4と通信を確立させたユーザ端末3の所有者が遭難者であると判定する。このようにすることで、飛行体4は、遭難者とは異なる者のユーザ端末3の位置を通知してしまう事態の発生を低減させることができる。
【0087】
<変形例>
上記において、情報処理システムSが、遭難者以外の者である要求者による情報処理サービスの提供要求に応じて、遭難者の捜索に係る処理を実行する例を説明したが、これに限らない。例えば、情報処理システムSは、遭難者が事前に登録した捜索条件を満たす場合に、遭難者の捜索にかかる処理を実行してもよい。
【0088】
捜索条件は、捜索を開始する条件であり、例えば、捜索を開始する開始時点を求めるための基準時点、又は基準時点から捜索の開始時点までの設定期間等である。基準時点は、例えば、遭難者のユーザ端末3が移動体通信ネットワークにおいて最後に通信した時刻、捜索者が登山を開始する日等である。なお、設定期間は、情報処理サービスにおいて予め定められた期間であってもよい。
【0089】
例えば、まず、要求取得部531は、事前に、遭難者のユーザ端末3から捜索条件を含む情報処理サービスの提供要求を取得する。そして、範囲特定部532は、基準時点から設定期間が経過したことを契機として、想定存在範囲及び捜索期間において飛行体が通信衛星と通信可能な範囲である衛星通信範囲を特定する。このようにすることで、情報処理装置5は、遭難者が遭難したことを発覚させやすくすることができる。
【0090】
[第2の実施の形態における効果]
以上説明したとおり、情報処理装置5は、飛行体4を用いて遭難者を捜索し、飛行体4が当該遭難者のユーザ端末3と通信を確立した場合に、衛星通信範囲内、かつ、端末通信範囲内、かつ、端末位置外範囲内において飛行する。このようにすることで、情報処理装置5は、遭難者の捜索に飛行体4を用いつつ、情報処理サービスを提供する際における安全性を向上させることができる。
【0091】
なお、本発明により、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献することが可能となる。
【0092】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0093】
1 要求者端末
2 通信衛星
3 ユーザ端末
4 飛行体
5 情報処理装置
51 通信部
52 記憶部
53 制御部
531 要求取得部
532 範囲特定部
533 飛行体制御部
534 飛行体情報取得部
535 位置特定部
536 通知部
537 確認処理部
S 情報処理システム
【要約】
【課題】衛星通信の品質の差を小さくする。
【解決手段】情報処理装置5は、通信衛星と端末との間における通信を中継する中継局として用いられる飛行体の飛行を管理することが可能な情報処理装置5であって、飛行体を飛行させる期間において飛行体が通信衛星と通信可能な範囲を特定する範囲特定部532と、飛行体と通信を確立した端末の位置を特定する位置特定部535と、範囲特定部532が特定した範囲内、かつ、飛行体と通信を確立した端末と通信可能な範囲内、かつ、飛行体の落下の可能性がある落下範囲に位置特定部535が特定した端末の位置が含まれない範囲内において飛行体を飛行させる飛行体制御部533と、を有する。
【選択図】図2

図1
図2
図3
図4
図5