(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】部品搭載装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/08 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
H05K13/08 Q
(21)【出願番号】P 2023578289
(86)(22)【出願日】2022-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2022004328
(87)【国際公開番号】W WO2023148902
(87)【国際公開日】2023-08-10
【審査請求日】2024-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004303
【氏名又は名称】弁理士法人三協国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡嵜 真一
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-224166(JP,A)
【文献】特開2011-233674(JP,A)
【文献】国際公開第2018/134862(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を保持して基板に搭載するヘッドと、
前記ヘッドが保持する部品を、当該ヘッドの下方側から撮像する撮像部と、
前記ヘッドに保持された部品の側方から当該部品に照明光を照射するサイド照明部を含む照明装置と、を備え、
前記サイド照明部は、前記照明光として、第1照射角で拡がる第1照射光を発する上段光線射出部と、前記上段光線射出部の下方に配置され前記第1照射角よりも小さい第2照射角で拡がる第2照射光を発する下段光線射出部と、を備える部品搭載装置。
【請求項2】
請求項1に記載の部品搭載装置において、
前記第1照射光および前記第2照射光の光軸が、水平面に対してなす角が0~20度の範囲で上方に傾斜するように、前記上段光線射出部および前記下段光線射出部が配設されている、部品搭載装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の部品搭載装置において、
前記上段光線射出部は、複数の第1点光源が環状に配列された上段環状光源群からなり、
前記下段光線射出部は、前記上段環状光源群の各第1点光源の下方に隣接するように、複数の第2点光源が環状に配列された下段環状光源群からなる、部品搭載装置。
【請求項4】
請求項3に記載の部品搭載装置において、
前記ヘッドは、各々が部品を保持する複数の単位ヘッドを備え、
一つの前記第1点光源と、前記一つの前記第1点光源の下方に隣接する一つの前記第2点光源との点光源ペアに対して、近い位置にある第1単位ヘッドと、遠い位置にある第2単位ヘッドとが存在し、
一つの前記第1点光源が発する前記第1照射光の光軸は、前記第1単位ヘッドの部品保持位置を指向し、
一つの前記第2点光源が発する前記第2照射光の光軸は、前記第2単位ヘッドの部品保持位置を指向している、部品搭載装置。
【請求項5】
請求項4に記載の部品搭載装置において、
前記第1照射光が前記第1単位ヘッドに保持された部品を照射する光度と、前記第2照射光が前記第2単位ヘッドに保持された部品を照射する光度とが略同一となるように、前記第1照射角および前記第2照射角が設定されている、部品搭載装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の部品搭載装置において、
前記第1点光源および前記第2点光源がLED光源からなり、
前記第1照射角および前記第2照射角は、前記LED光源の各々の光線出射面に配置する光学レンズの有無、もしくは前記光学レンズの集光度の相違によって設定される、部品搭載装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載の部品搭載装置において、
前記サイド照明部は、複数の点光源が一列の環状に配列された環状光源群からなり、
前記点光源の各々の光線出射面に配置され、第1集光特性を有する第1光学面と、前記第1集光特性よりも集光度の高い第2集光特性を有する第2光学面と、を備える光学部品をさらに備え、
前記上段光線射出部は前記第1光学面に設定され、前記下段光線射出部は前記第2光学面に設定されている、部品搭載装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の部品搭載装置において、
前記ヘッドは、環状に配列された複数の単位ヘッドを備えたロータリーヘッドである、部品搭載装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の部品搭載装置において、
前記照明装置は、前記ヘッドの下方から当該ヘッドに保持された部品の底面に向けて照明光を照射する同軸照明部と、前記ヘッドの斜め下方から前記部品の底面周縁部に向けて照明光を照射する拡散照明部と、をさらに備える、部品搭載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品を基板に搭載する部品搭載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
部品を基板に搭載する部品搭載装置は、ヘッドの吸着ノズルに吸着された部品を下方から撮像する部品認識カメラと、前記撮像時に部品に照明光を照射する照明装置とを備える。前記照明装置としては、ヘッドの下方から吸着ノズルに吸着された部品の底面に向けて照明光を照射する同軸照明部と、部品の斜め下方から当該部品の底面周縁部に向けて照明光を照射する拡散照明部と、部品の側方から当該部品の側面に向けて照明光を照射するサイド照明部とを備えた照明装置が知られている。部品認識カメラは、これらの照明光で照らされた部品の画像を撮像し、得られた画像に基づき部品の吸着状態や部品寸法等が認識される(例えば特許文献1参照)。サイド照明部が発する照明光の反射光が作る画像は、専ら部品の底面エッジ部分の形状認識に貢献する。
【0003】
上記のサイド照明部は、多数の点光源が当該照明装置の照明中心を取り囲むように環状に配列されてなる。複数の吸着ノズルが直線上に配列されたインライン型ヘッドでは、各ノズルに吸着された部品が前記照明中心を通るようにヘッドを移動制御すれば、撮像時に部品の全ての側面に均等に照明光を照射できる。しかし、例えば複数の吸着ノズルが円周上に配置されたロータリーヘッドでは、各ノズルに吸着された部品が前記照明中心からオフセットした位置に存在する状態で、これら部品の撮像を実行せざるを得ない場合がある。この場合、サイド照明部の点光源から遠い側の部品側面の照明光度が不足し、当該部品側面の底面エッジ付近からの反射光が十分に部品認識カメラへ入射しなくなる。従って、得られた画像上で識別される部品は、実際の形状とは異なるものとなり、部品の認識精度が低下することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、撮像する部品が照明装置の照明中心からオフセットしている場合でも、当該部品の側面にサイド照明光を均等に照射できる部品搭載装置を提供することにある。
【0006】
本発明の一局面に係る部品搭載装置は、部品を保持して基板に搭載するヘッドと、前記ヘッドが保持する部品を、当該ヘッドの下方側から撮像する撮像部と、前記ヘッドに保持された部品の側方から当該部品に照明光を照射するサイド照明部を含む照明装置と、を備え、前記サイド照明部は、前記照明光として、第1照射角で拡がる第1照射光を発する上段光線射出部と、前記上段光線射出部の下方に配置され前記第1照射角よりも小さい第2照射角で拡がる第2照射光を発する下段光線射出部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る部品実装装置の構成を概略的に示す平面図である。
【
図2】
図2は、前記部品実装装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、前記部品実装装置が備える照明装置の概略的な断面図である。
【
図4】
図4は、前記照明装置による部品の照明状況を示す図である。
【
図5】
図5は、従来の照明装置を用いた場合の問題点を説明するための図である。
【
図6】
図6は、従来の照明装置を用いた場合の問題点を説明するための図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係るサイド照明部の構成を示す図である。
【
図8】
図8(A)は、サイド照明部の照射光の光軸の設定例を示す図、
図8(B)は、前記光軸の傾きとサイド照明光の照射範囲との関係を示す図である。
【
図9】
図9(A)~(C)は、サイド照明部の各種実施形態を示す図である。
【
図10】
図10は、サイド照明部の他の実施形態を示す図である。
【
図11】
図11は、照射光の指向角と光度との関係を示す図である。
【
図12】
図12(A)および(B)は、照射角をもつ照射光および平行光で部品を照射したときの、反射光の部品認識カメラへの入射状況を各々示す図である。
【
図13】
図13(A)および(B)は、照射角をもつ照射光および平行光で部品を照射したときの、反射光の部品認識カメラへの入射状況を各々示す図である。
【
図14】
図14(A)および(B)は、部品認識カメラがエリアセンサである場合のサイド照明光の照射状況を示す図である。
【
図15】
図15(A)および(B)は、部品認識カメラがラインセンサである場合のサイド照明光の照射状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、本発明に係る部品搭載装置が、プリント基板に電子部品を実装する部品実装装置に適用される例を示す。電子部品は、例えばチップ抵抗やチップコンデンサ等のチップ部品、ボールバンプ部品、IC等のパッケージ型の部品である。本発明は、部品実装装置に限定されるものではなく、各種の部品を様々な基板に搭載する装置に適用可能である。
【0009】
[部品実装装置の全体構造]
図1は、部品実装装置1の概略構成を示す平面図である。部品実装装置1は、各種の電子部品6を基板Pに実装して回路基板を生産する装置である。なお、
図1のX方向は基板Pの搬送方向、Y方向はX方向と水平面内で直交する方向、Z方向は、X、Y方向と直交する方向を示す。部品実装装置1は、基台10、基板搬送部2、部品供給部3、ヘッドユニット4、基板認識カメラ5、照明装置8および部品認識カメラ11(撮像部)を含む。
【0010】
基台10は、平面視で長方形状を有し、上面が平坦な基台であって、基板搬送部2および部品供給部3が組付けられている。基板搬送部2は、電子部品6が実装される基板Pを搬送する。基板搬送部2は、基台10上において、基板Pを左右方向(X方向)へ搬送する一対のコンベア21、22を有している。コンベア21、22は、基板Pを右側から部品実装装置1の機内に搬入し、所定の作業位置、ここでは
図1に示す基板Pの位置まで左方へ搬送して一旦停止させる。この作業位置において、電子部品6が基板Pに実装される。実装作業後、コンベア21、22は基板Pを左側へ搬送し、部品実装装置1の機外へ搬出する。
【0011】
部品供給部3は、基板Pへ実装される電子部品6を供給する。部品供給部3は、基板搬送部2の前後方向(Y方向)に各々配置されている。前後方向の一方の部品供給部3は、左右方向に配列された複数のテープフィーダ31を備えている。各テープフィーダ31は、チップ部品61などの電子部品6を所定間隔で収容したテープが巻回されたリールを保持している。テープフィーダ31は、前記リールからテープを間欠的に繰り出し、フィーダ先端の部品供給位置にチップ部品61を供給する。前後方向の他方の部品供給部3は、複数のトレイ部品62を保持したトレイ部品供給機32を備えている。
【0012】
ヘッドユニット4は、部品供給部3からチップ部品61またはトレイ部品62などの電子部品6を取り出し、これらを基板Pに実装する。ヘッドユニット4は、基台10の上空にXY方向に移動可能に配置され、部品供給部3から電子部品6を取り出し、前記作業位置において電子部品6を基板Pの所定位置に実装する。基台10の上方には、X方向に延びる支持ビーム23が架設されている。ヘッドユニット4は、支持ビーム23に固定されたX軸固定レール24に対して移動可能に支持されている。
【0013】
ヘッドユニット4は、複数の単位ヘッド41が環状に配列されたロータリーヘッド40を備える。ロータリーヘッド40は、Z方向に延びる中心軸の軸回りに回転可能である。単位ヘッド41は、昇降および自身の中心軸回りの回転が可能である。単位ヘッド41の各々の下端には、吸着ノズル42(
図3参照)が装着されている。吸着ノズル42は、電子部品6を吸着して保持し、これを基板Pの表面に搭載することが可能である。
【0014】
支持ビーム23は、Y方向に延びるY軸固定レール25に支持され、このY軸固定レール25に沿ってY方向に移動可能である。X軸固定レール24に対して、X軸サーボモータ26およびボールねじ軸27が配置されている。Y軸固定レール25に対して、Y軸サーボモータ28およびボールねじ軸29が配置されている。ヘッドユニット4は、X軸サーボモータ26によるボールねじ軸27の回転駆動によってX方向に移動し、Y軸サーボモータ28によるボールねじ軸29の回転駆動によってY方向に移動する。
【0015】
基板認識カメラ5は、ヘッドユニット4の側部に搭載されている。基板認識カメラ5は、コンベア21、22により前記作業位置に搬入された基板Pの表面に付設されている各種マークを撮像する。
図1では、前記マークの一例として、矩形の基板Pの対角線上に付設された一対のフィデューシャルマークFMを示している。フィデューシャルマークFMは、搬入された基板Pの前記作業位置の原点座標に対する位置ズレ量を検知するためのマークである。
【0016】
部品認識カメラ11は、基台10に組み込まれており、基台10の上方を撮像視野とするカメラである。部品認識カメラ11は、吸着ノズル42による電子部品6の吸着状態を画像認識するために、吸着ノズル42に保持された電子部品6をロータリーヘッド40の下方側から撮像する。照明装置8は、部品認識カメラ11の上方に配置され、部品認識カメラ11による撮像の際に、電子部品6に照明光を照射する。照明装置8および部品認識カメラ11は、コンベア21、22を挟んで基台10の前後に各々配置されている。照明装置8の構造については、
図3に基づき後述する。
【0017】
[部品実装装置の電気的構成]
続いて、部品実装装置1の制御構成について説明する。
図2は、部品実装装置1の電気的構成を示すブロック図である。部品実装装置1は、基台10の内部もしくは機外に配置される制御装置7を備える。制御装置7は、所定のプログラムが実行されることで、上述の部品実装装置1が備える各部の動作を制御する。なお、
図2のブロック図には、
図1では記載が省かれたヘッド駆動モータ4Mが記載されている。
【0018】
ヘッド駆動モータ4Mは、ヘッドユニット4が備える各種駆動軸を駆動するモータ群である。ヘッド駆動モータ4Mは、ロータリーヘッド40を軸回りに回転させるN軸サーボモータ、単位ヘッド41および吸着ノズル42を軸回りに回転させるR軸サーボモータ、単位ヘッド41を昇降させるZ軸リニアモータ、吸着ノズル42への負圧供給用のV軸リニアモータなどを含む。
【0019】
制御装置7は、撮像制御部71、画像処理部72、照明制御部73、軸制御部74、主制御部75および記憶部76を機能的に備えている。撮像制御部71は、基板認識カメラ5および部品認識カメラ11の他、部品実装装置1に備えられている各種カメラの撮像動作を制御する。例えば撮像制御部71は、これらカメラに撮像動作を行わせるタイミングを指定する制御信号を与える。
【0020】
画像処理部72は、基板認識カメラ5および部品認識カメラ11により取得された画像データに対してエッジ検出処理、特徴量抽出を伴うパターン認識処理などの画像処理技術を適用して、当該画像から各種の情報を抽出する。具体的には、画像処理部72は、基板認識カメラ5が取得した画像データに基づき、フィデューシャルマークFMの位置を特定する処理を行う。また、画像処理部72は、部品認識カメラ11が取得した画像データに基づき、吸着ノズル42に保持された電子部品6の形状、吸着姿勢、吸着漏れなどを特定する処理を行う。
【0021】
照明制御部73は、照明装置8の点灯動作を制御する。照明制御部73は、部品認識カメラ11が撮像動作を行うタイミングにおいて、所定の光度で電子部品6に照明光を照射するように、照明装置8を制御する。
【0022】
軸制御部74は、X軸サーボモータ26およびY軸サーボモータ28を制御することによって、ヘッドユニット4のXY方向の移動動作を制御する。また、軸制御部74は、ヘッドユニット4が備えるヘッド駆動モータ4Mを制御することによって、ロータリーヘッド40の回転動作、単位ヘッド41および吸着ノズル42の回転動作、昇降動作などを制御する。
【0023】
主制御部75は、部品実装装置1に対する各種の動作を統括的に制御する。例えば、主制御部75は、撮像制御部71、画像処理部72、照明制御部73および軸制御部74に制御信号を与え、画像を撮像する動作、画像データに画像処理を行わせる動作、照明装置8を点灯させる動作、ヘッドユニット4を駆動させる動作を実行させる。記憶部76は、基板Pや電子部品6に関する各種の情報、部品実装装置1に関する各種の設定値やパラメータ、制御データ、動作プログラム等を記憶する。
【0024】
[照明装置の構造]
続いて、照明装置8の詳細構造を説明する。
図3は、照明装置8の概略的な断面図である。照明装置8の下方には部品認識カメラ11が配置されている。電子部品6を保持したロータリーヘッド40は、照明装置8の上方を通過するルートで、基板Pの部品搭載位置へ移動する。
図3では、ロータリーヘッド40が8本の単位ヘッド41を備え、これら単位ヘッド41の下端に装着された吸着ノズル42の各々に、電子部品6が吸着されている状態を示している。
【0025】
照明装置8は、ハウジング80と、このハウジング80の内部に配置された同軸照明部81、拡散照明部82およびサイド照明部83とを含む。ハウジング80は、部品認識カメラ11の撮像光軸11Aを通過させる中空部を備えた筒形状を有する。ハウジング80の中心軸は、当該照明装置8の発する照明光の照明中心8Cである。照明中心8Cに撮像光軸11Aが一致するように、部品認識カメラ11が配置されている。
【0026】
ハウジング80は、上面の開口801、大径部802、傾斜部803および小径部804を含む。開口801は、照明装置8から電子部品6に照明光を照射するための開口であり、且つ、前記照明光の電子部品6からの反射光を部品認識カメラ11に導入するための開口である。大径部802は、開口801を区画する開口面積の大きい部分である。傾斜部803は、大径部802の下端に連なり、下方に向かって開口面積が徐々に小さくなる部分である。小径部804は、傾斜部803の下端に連なる、開口面積の小さい部分である。
【0027】
同軸照明部81は、LED等の多数の点光源群で構成され、撮像光軸11Aと同軸方向から開口801の上方に向けて同軸照明光を射出する。同軸照明部81は、ハウジング80の小径部804の内壁に配設されている。同軸照明部81は、撮像光軸11Aに対して傾斜した状態で小径部804内に配置されたハーフミラー805を介して、開口801上のロータリーヘッド40の鉛直下方から、吸着ノズル42に保持された電子部品6の底面に向けて同軸照明光を照射する。
【0028】
拡散照明部82は、LED等の多数の点光源群で構成され、斜め上方向に開口801へ向かう拡散照明光を射出する。拡散照明部82は、照明中心8Cを取り囲むように、傾斜部803の内壁に配設されている。拡散照明部82は、開口801上のロータリーヘッド40の斜め下方から、吸着ノズル42に保持された電子部品6の底面周縁部に向けて拡散照明光を照射する。
【0029】
サイド照明部83は、LED等の多数の点光源群で構成され、水平に近い斜め上方向に開口801へ向かうサイド照明光を射出する。サイド照明部83は、照明中心8Cを取り囲むように、大径部802の内壁に配設されている。サイド照明部83は、開口801上のロータリーヘッド40のほぼ側方から、吸着ノズル42に保持された電子部品6の側面に向けてサイド照明光を照射する。
【0030】
サイド照明部83は、上下二段の点光源群である、上段環状光源群84(上段光線照射部)および下段環状光源群85(下段光線照射部)によって構成されている。上段環状光源群84は、複数の上段点光源84A(第1点光源)が、大径部802の開口801に近い内壁に環状に一列で配列されてなる。下段環状光源群85は、上段環状光源群84の一段下に配置される光源群であって、複数の下段点光源85A(第2点光源)が、環状に一列で配列されてなる。下段点光源85Aは、上段点光源84Aの下方に隣接するように、大径部802の内壁に配設されている。後記で詳述するが、本実施形態では、サイド照明部83を上段環状光源群84と下段環状光源群85との上下二段で構成し、それぞれに異なる照射角をもつ照射光を射出させる。これにより、開口801上のどの位置に電子部品6が存在していても、当該部品の側面全体に均等にサイド照明光を照射できる。
【0031】
図4は、上述の同軸照明光、拡散照明光およびサイド照明光による電子部品6の照明状況を示す図である。ここでは、次述の比較例の説明を考慮して、従来の照明装置800による照明状況を示す。照明装置800は、
図3に示した本実施形態の照明装置8と同様に同軸照明部81、拡散照明部82およびサイド照明部830を備えるが、サイド照明部830は同じ照射角の照射光S0を射出する複数の点光源830Aが環状に一列で配列されてなる構成である点で、本実施形態と相違する。
【0032】
図4では、吸着ノズル42で保持された電子部品6が、照明中心8Cの位置で照明光の照射および撮像が為される例を示している。例えば、インライン型ヘッドでは、照明中心8Cでの電子部品6の撮像が可能である。電子部品6としてはチップ部品が例示されており、当該電子部品6は平坦な底面601と、底面601に対して垂直な側面602と、底面601のエッジと側面602の下端とを繋ぐR面603とを備えた略直方体の形状を有している。
【0033】
同軸照明部81から射出される同軸照明光は、吸着ノズル42で保持された電子部品6の真下から、当該電子部品6の底面601に向けて射出される。ここでは底面601が撮像光軸11Aと直交する平面であるので、同軸照明光の反射光のうち、部品認識カメラ11に入射するのは、底面601からの正反射光である。従って、
図4の(a)ブロックに示すように、底面601に対応する第1領域LAの光像が部品認識カメラ11で撮像される。なお、前記ブロックの左図は電子部品6の側面図、右図は画像として観測される部品底面である。
【0034】
拡散照明部82から射出される拡散照明光は、電子部品6の斜め下方から当該電子部品6のR面603に向けて射出される。拡散照明光の光軸の撮像光軸11Aに対する傾き角は、例えば45度である。拡散照明光の反射光のうち、部品認識カメラ11に入射するのは、R面603の底面601に近い領域、並びに、底面601の外周縁付近に対応する部分からの反射光である。従って、
図4の(b)ブロックに示すように、R面603の底面601に近い領域、並びに、底面601の外周エッジ付近に対応する第2領域LBの光像が部品認識カメラ11で撮像される。
【0035】
サイド照明部830から射出されるサイド照明光は、電子部品6のほぼ真横から当該電子部品6の側面602に向けて射出される。サイド照明光の反射光のうち、部品認識カメラ11に入射するのは、側面602の下端付近およびR面603の側面602に近い領域に対応する反射光である。従って、
図4の(c)ブロックに示すように、側面602の下端付近およびR面603の側面602に近い領域に対応する第3領域LCの光像が部品認識カメラ11で撮像される。
【0036】
サイド照明光は、電子部品6の外周部を光らせる照明光となる。サイド照明光が電子部品6に照射されない場合、第3領域LCの光像が撮像されないことから、画像上で認識される電子部品6の寸法が、実寸法よりも小さく観測されてしまう。この場合、電子部品6の認識精度が低下する。従って、電子部品6の実寸法通りの画像を取得するためには、サイド照明光の照射が不可欠となる。
【0037】
[従来の照明装置の問題点]
続いて、従来の照明装置800を用いた場合の部品認識の問題点について説明する。電子部品6が照明装置800の照明中心8Cの位置で撮像される場合は、上述の通り特に問題は生じない。しかし、例えばロータリーヘッド40を用いた場合等、電子部品6を照明中心8Cの位置で撮像するのが困難な場合、従来の照明装置800での照明では正確な部品認識を行えないことがある。この点を
図5および
図6に基づいて説明する。
【0038】
図5は、従来の照明装置800で、ロータリーヘッド40の一つの吸着ノズル42Aに保持された電子部品6Aと、吸着ノズル42Aと対極に配置された吸着ノズル42Bに保持された電子部品6Bとに、照明光が照射されている状態を示している。ロータリーヘッド40の場合、複数の単位ヘッド41が円周上に配列されることから、各吸着ノズル42で保持された電子部品6は、照明中心8Cからオフセットした位置でサイド照明光の照射を受けることになる。このため、電子部品6のサイド照明部830に近い側面へのサイド照明光の照射量が多くなる一方、サイド照明部830から遠い側面については照射量が小さくなる傾向が出る。
【0039】
図5には、照明中心8Cから左方にオフセットしている吸着ノズル42Aに吸着された電子部品6Aと、右方にオフセットしている吸着ノズル42Bに吸着された電子部品6Bとが示されている。吸着ノズル42A、42Bは、ロータリーヘッド40において対極に位置しているノズルである。左方の電子部品6Aは、専らサイド照明部830の左方の点光源830Aからサイド照明光の照射を受ける。電子部品6Aの点光源830Aに近い側面602Aは、多くのサイド照明光が届くので照射量が多くなるが、点光源830Aから遠い側面602Bには、点光源830Aのサイド照明光が届かない。反対側の右方の点光源830Bのサイド照明光も、オフセット分だけ距離が遠いので十分に側面602Bに届かない。従って、当該側面602Bに対するサイド照明光の照射量が不足する。
【0040】
この結果、電子部品6Aに対するサイド照明光の照射状態は、左方の側面602Aに偏ったものとなる。このため、電子部品6Aについて撮像される画像L11には、右方の側面602Bの部分が反映されない。従って、電子部品6Aの実寸法d1よりも、側面602Bの部分が光らないことに伴う減少分Δd1だけ小さい計測寸法d11が、画像処理で導出されてしまう。また、画像L11は、左方の側面602Aから右方の側面602Bに向けて幅が縮小するテーパ形状を有しており、電子部品6Aがそのような部品形状と識別されてしまう。
【0041】
同様に、右方の電子部品6Bは、専ら右方の点光源830Bからサイド照明光の照射を受ける。電子部品6Bの点光源830Bに近い側面602Bにはサイド照明光が届くが、点光源830Bから遠い側面602Aにはサイド照明光が届かない。反対側の左方の点光源830Aのサイド照明光も、オフセット分だけ距離が遠いので十分に側面602Aに届かないことから、電子部品6Bについては側面602Aに対するサイド照明光の照射量が不足する。このため、電子部品6Bについて撮像される画像L12には、左方の側面602Aの部分が反映されない。従って、電子部品6Bの実寸法d2よりも、側面602Aの部分が光らないことに伴う減少分Δd2だけ小さい計測寸法d12が、画像処理で導出される。また、画像L12は、右方の側面602Bから左方の側面602Aに向けて幅が縮小するテーパ形状を有しており、電子部品6Bがそのような部品形状と識別されてしまう。
【0042】
以上のような画像L11、L12に基づいて電子部品6A、6Bの部品認識が行われると、認識精度が低下する。具体的には、側面602A、602B間の部品幅がΔd1、Δd2分だけ小さく求められるので、部品サイズの計測が不正確となる。また、部品実装の際に参照される部品中心位置の計測結果も不正確となる。さらに、部品形状も正確に識別されないので、部品吸着姿勢の評価が正確に行えない場合も生じ得る。
【0043】
図6は、
図5に示した問題の解消を企図した従来例を示す図である。
図6の例では、ヘッドがロータリーヘッド40である場合には、あえてサイド照明光を照射せずに部品撮像を行う。すなわち、同軸照明部81および拡散照明部82を点灯させ、部品に同軸照明光および拡散照明光は照射するが、サイド照明部830は消灯した状態で、部品認識カメラ11による撮像を行う。
【0044】
この場合、左方の吸着ノズル42Aに吸着された電子部品6Aについて取得される画像L21は、サイド照明光が省かれていることから、当該電子部品6Aの実寸法d3よりも全体的に小さい計測寸法d13が、画像処理で導出されることになる。同様に、右方の吸着ノズル42Bに吸着された電子部品6Bについて取得される画像L22も、当該電子部品6Bの実寸法d4よりも全体的に小さい計測寸法d14が、画像処理で導出される。
【0045】
図6の従来例では、サイド照明光が偏って照射されることを回避し、電子部品6A、6Bが実寸法d3、d4よりも全体的に小さい計測寸法d13、d14が導出されることを見越して部品認識を行っている。すなわち、画像L21、L22は、実際の部品形状と相似であって、
図5の例のように形状変形は生じない。そして、実寸法d3、d4と計測寸法d13、d14との乖離度合いを実験的に求め、乖離を埋める補正係数を予め設定しておく。電子部品6A、6Bの認識に当たっては、計測寸法d13、d14に前記補正係数を乗じる補正計算により、実寸法d3、d4の近似寸法を得る。
【0046】
図6の従来例によれば、ある程度は部品認識精度を上げることができる。しかし、サイド照明光の照射を省いていることから、実際に電子部品6A、6Bの外周部を光らせておらず、精度向上には限界がある。また、部品認識毎に補正計算が必要であることから、制御装置7の処理負荷を高める不具合がある。本実施形態では、
図5および
図6の従来例が抱える問題点を解消できる照明装置8を提供する。
【0047】
[実施形態に係るサイド照明部]
図7は、本実施形態に係るサイド照明部83の構成を示す図である。サイド照明部83は、既述の通り、上段環状光源群84および下段環状光源群85を備える。上段環状光源群84および下段環状光源群85は、それぞれ複数の点光源が照明中心8Cを中心として一列の環状に配列されてなる。
図7では、前記複数の点光源のうち、上段環状光源群84のものとして180度の対向関係にある点光源84A、84B(第1点光源)を、下段環状光源群85のものとして点光源85A、85B(第2点光源)を示している。
【0048】
上段環状光源群84が備える点光源84A、84Bの各々は、第1照射角R1で拡がる第1照射光S1を発する。下段環状光源群85が備える点光源85A、85Bの各々は、第2照射角R2で拡がる第2照射光S2を発する。第2照射角R2は、第1照射光S1よりも小さい照射角(R1>R2)である。ロータリーヘッド40における吸着ノズル42の配列円周径、ハウジング80の開口801や大径部802のサイズにも依るが、例えばR2は、R1の1/4~3/4程度の範囲から選択できる。
図7では、R2がR1の1/2程度である例を示している。
【0049】
第1照射光S1は第1光軸AX1を、第2照射光S2は第2光軸AX2を、それぞれ有している。ここで、照明中心8Cに対して左側にオフセットしている吸着ノズル42Aに近い位置にある上下二段の点光源84A、85Aを第1点光源ペアPAとし、右側にオフセットしている吸着ノズル42Bに近い位置にある上下二段の点光源84B、85Bを第2点光源ペアPBと称呼する。第1点光源ペアPAから見て、左方の吸着ノズル42A(第1単位ヘッド)は近い位置にあり、右方の吸着ノズル42B(第2単位ヘッド)は遠い位置にある。一方、第2点光源ペアPBから見ると、右方の吸着ノズル42B(第1単位ヘッド)が近い位置にあり、左方の吸着ノズル42A(第2単位ヘッド)が遠い位置にある。
【0050】
第1点光源ペアPAにおいて、上段点光源84Aが発する第1照射光S1の第1光軸AX1は、吸着ノズル42Aの部品保持位置を指向している。つまり、第1光軸AX1は、近い側の吸着ノズル42Aで保持される電子部品6Aの外側面を指向している。一方、下段点光源85Aが発する第2照射光S2の第2光軸AX2は、吸着ノズル42Bの部品保持位置を指向している。すなわち、第2光軸AX2は、遠い側の吸着ノズル42Bで保持される電子部品6Bの内側面を指向している。なお、電子部品6A,6Bの「内側面」は照明中心8Cに向いた側面、「外側面」はその反対側の側面である。
【0051】
これに対し、第2点光源ペアPBにおいては、上段点光源84Bが発する第1照射光S1の第1光軸AX1は、近い側の吸着ノズル42Bで保持される電子部品6Bの外側面を指向している。一方、下段点光源85Bが発する第2照射光S2の第2光軸AX2は、遠い側の吸着ノズル42Aで保持される電子部品6Aの内側面を指向している。
【0052】
なお、二つの吸着ノズル42A、42Bで、異なる部品高さの電子部品6を吸着する場合、つまり部品底面の高さが異なる場合が有る。これに対応できるよう、部品認識カメラ11の被写界深度Dfの範囲に収まるように、吸着ノズル42A、42Bは電子部品を保持する。第1光軸AX1および第2光軸AX2は、吸着ノズル42A、42BのXY位置と、被写界深度Dfの範囲とが重なる位置を指向しているとも言える。
【0053】
上記の通りに第1光軸AX1および第2光軸AX2が指向しているので、左方の電子部品6Aの外側面には、第1点光源ペアPAの上段点光源84Aの第1照射光S1が照射され、内側面には第2点光源ペアPBの下段点光源85Bの第2照射光S2が照射される。もちろん、サイド照明部83が備える図示していない他の点光源ペアの照射光も照射されるが、説明の簡略化のため、ここでは点光源ペアPA、PBだけを考慮している。第1照射光S1および第2照射光S2の照射により、電子部品6Aの側面全体に満遍なくサイド照明光が行き渡る。このため、部品認識カメラ11で撮像を行うと、サイド照明光の反射光に基づく電子部品6Aの外周部の画像L1が良好に観測されるようになる。従って、電子部品6Aの実寸法dAに応じた計測寸法を、部品認識カメラ11が撮像した画像より取得することができる。
【0054】
同様に、右方の電子部品6Bの外側面には、第2点光源ペアPBの上段点光源84Bの第1照射光S1が照射され、内側面には第1点光源ペアPAの下段点光源85Aの第2照射光S2が照射される。これらの照射により、電子部品6Bの側面全体に満遍なくサイド照明光が行き渡り、サイド照明光の反射光に基づく電子部品6Bの外周部の画像L2が良好に観測されるようになる。従って、電子部品6Bの実寸法dBに応じた計測寸法を取得することができる。
【0055】
図8(A)は、第1照射光S1の第1光軸AX1および第2照射光S2の第2光軸AX2の傾きの設定例を示す図である。サイド照明光は、
図4で説明した通り電子部品6の側面602の下端付近の第3領域LCを光らせる照明であることから、第1光軸AX1および第2光軸AX2は水平に近い方が望ましい。但し、ハウジング80上を通過する電子部品6に対して、開口801を通して照明光を照射する必要があるので、ある程度は第1光軸AX1および第2光軸AX2を上方に傾斜させることが望ましい。
【0056】
上記に鑑み、第1光軸AX1が水平面HSに対してなす角θ1、並びに第2光軸AX2が水平面HSに対してなす角θ2は、0~20度の範囲で上方に傾斜するように設定されることが望ましい。なお、
図8(A)では、θ1とθ2との関係がθ1≒θ2であるように描かれているが、これは一例であり、θ1<θ2あるいはθ1>θ2であっても良い。
図8(A)の例では、上段点光源84Aの第1光軸AX1のθ1は、当該上段点光源84Aのハウジング80への取り付け位置と、照射ターゲット位置である左方の吸着ノズル42Aの部品吸着位置とによって定められる。一方、下段点光源85Aの第2光軸AX2のθ2は、当該下段点光源85Aのハウジング80への取り付け位置と、右方の吸着ノズル42Bの部品吸着位置とによって定められる。
【0057】
図8(B)は、光軸AX1、AX2の傾きと、照明装置8の全照明光による電子部品6の照射範囲との関係の測定例を示す図である。この測定例では、θ1=θ2=10度に設定した場合、電子部品6の底面601からR面603を経て側面602に至る全領域(100%)のうち、99.6%の領域に照明光が照射された。θ1=θ2=20度でも、98.3%の領域に照明光が照射された。これに対し、θ1=θ2=30度とすると、96.2%の領域にしか照明光が照射されず、実寸法に対する縮小率が大きくなることが判明した。従って、θ1=θ2=0~20度に範囲で設定すれば、R面603の側面602に近い領域を光らせ、その反射光を良好に部品認識カメラ11へ入射させることができる。これにより、電子部品6の画像認識精度を高めることができる。
【0058】
[照射角設定の具体的構成例]
続いて、第1照射光S1の第1照射角R1および第2照射光S2の第2照射角R2の具体的設定例について説明する。照射角は、上段環状光源群84および下段環状光源群85が備える点光源の各々の光線出射面に光学レンズを配置するか否か、もしくは前記光学レンズの集光度の相違によって設定することが可能である。
【0059】
図9(A)~(C)は、サイド照明部83の各種実施形態を示す図である。ここでは、上段点光源84A(第1点光源)および下段点光源85A(第2点光源)として、上段LED光源86および下段LED光源87が用いられる例を示す。LED光源86、87としては、例えばフレキシブルなテープ基板上に多数のLEDチップがライン上に配列されたテープ型光源を用いることができる。
【0060】
図9(A)には、上段LED光源86としてレンズ無しLEDが、下段LED光源87として一体型集光レンズ91付きのLEDが、各々用いられている例を示している。つまり、下段LED光源87の光線出射面だけに集光用の光学レンズが配置される例が示されている。上段LED光源86は、レンズ無しLEDの本来の光線照射角が第1照射角R1となる第1照射光S1を射出する。一方、下段LED光源87は、集光レンズ91で第1照射角R1よりも絞られた第2照射角R2の第2照射光S2を射出する。
【0061】
図9(B)も
図9(A)と同様な例であり、下段LED光源87の光線出射面だけに、例えばアクリル樹脂で成形された後付けの集光レンズ92が配置される例を示している。集光レンズ92により、第1照射角R1よりも絞られた第2照射角R2で第2照射光S2が射出される。
【0062】
図9(C)は、上段LED光源86および下段LED光源87の光線出射面の双方に、集光効果を持つ後付けのレンズを配置する例である。ここでは、アクリル樹脂で成形されたレンズユニット93を例示している。レンズユニット93は、上段LED光源86の光線出射面に配置される第1集光部931と、下段LED光源87の光線出射面に配置される第2集光部932とを備える。第1集光部931および第2集光部932は、共に集光機能を持つ凸レンズを有するが、第1集光部931の方が第2集光部932よりも集光度の小さい凸レンズである。第1集光部931により所要の第1照射角R1をもつ第1照射光S1が、第2集光部932により所要の第2照射角R2をもつ第2照射光S2が、それぞれ作られる。
【0063】
図10は、サイド照明部83の他の実施形態を示す図である。ここでは、一列に配列された点光源を共用して、上段光線照射部および下段光線照射部が構成される例を示す。
図10の例におけるサイド照明部83は、複数の点光源としてのLED光源88が一列の環状に配列された環状光源群だけを有する。LED光源88の各々の光線出射面には、光学部品94が配置されている。
【0064】
光学部品94は、所定の第1集光特性を有する第1光学面941(上段光線照射部)と、前記第1集光特性よりも集光度の高い第2集光特性を有する第2光学面942(下段光線照射部)とを備える。第1光学面941は、実質的に集光機能を持たない平面からなる。第2光学面942は、第1光学面941の下端に連設された、集光機能を発揮する凸曲面を有する面である。LED光源88が発する光の一部は、第1光学面941から射出され、他の一部は、第2光学面942から射出される。
【0065】
第1光学面941は、近端側の吸着ノズル42Aに保持された電子部品6Aを照射する第1照射光S1を射出する。第2光学面942は、その凸曲面により、第1照射光S1よりも絞られた照射角の第2照射光S2を射出し、遠端側の吸着ノズル42Bに保持された電子部品6Bを照射する。
図10の例によれば、サイド照明部83の上段光線射出部用および下段光線射出部用として各々に点光源を配置せずとも、一つのLED光源88を用いて第1照射光S1および第2照射光S2を射出させることができる。すなわち、光学部品94でLED光源88が発する光線を分光させ、第1光学面941から第1照射光S1を、第2光学面942から第2照射光S2を各々射出させることができる。
【0066】
[光度の調整例]
ロータリーヘッド40の各吸着ノズル42A、42B・・・に保持される電子部品6A、6B・・・は、認識精度を高めるためには、それぞれ同じ光度で照明されることが望ましい。具体的には、
図7に示す本実施形態のサイド照明部83において、上段点光源84Aの第1照射光S1が近端側の吸着ノズル42A(第1単位ヘッド)に保持された電子部品6Aを照射する光度と、下段点光源85Aの第2照射光S2が遠端側の吸着ノズル42B(第2単位ヘッド)に保持された電子部品6Bを照射する光度とが略同一であることが望ましい。換言すると、そのような照射光度をもつように、第1照射角R1および第2照射角R2が設定されていることが望ましい。
【0067】
図11(A)および(B)は、照射光の指向角と光度との関係を示す図である。ここでは、点光源として、
図9(A)に示したレンズ無しの上段LED光源86と、一体型集光レンズ91付きの下段LED光源87とを例示している。
図11(A)には、上段LED光源86が指向角E1で第1照射光S1を照射している状態が、
図11(B)には、下段LED光源87が指向角E2(E1>E2)で第2照射光S2を照射している状態が、それぞれ示されている。なお、指向角は、照射光の光軸上の明るさから50%の明るさになる角度であり、単純に照射光の拡がりを示す上掲の照射角R1、R2とは異なる。
【0068】
照射光の全光束が同一且つ指向角が同一である場合、光源から照射対象物までの距離LWDと、光の強さを示す光度とは反比例する。具体的には、上段LED光源86から距離LWD1の位置の光度をCd1とすると、上段LED光源86からLWD1の2倍の距離LWD2の位置の光度Cd2は、Cd1の1/2になる。
図11(B)の集光レンズ91が、第2照射光S2の指向角E2を第1照射光S1の指向角E1の1/2にするレンズであるとする。全光束が同一で指向角が1/2であると、距離LWD1の2倍である距離LWD2の位置の光度Cd3は、光度Cd1と同一になる。
【0069】
上段LED光源86および下段LED光源87が、全光束が同一で上述の指向角E1、E2をもつ場合を想定する。この場合、距離LWD1の位置に吸着ノズル42Aに保持された電子部品6Aが、距離LWD2の位置に吸着ノズル42Bに保持された電子部品6Bが、それぞれ撮像時に位置する配置とすれば良い。これにより、吸着ノズル42A、42Bに各々保持された電子部品6A、6Bの側面に、光度が略同一のサイド照明光を照射することができる。
【0070】
なお、照射光S1、S2のように、距離に比例して拡散する照射光ではなく、平行光にコリメートされた照射光を用いることも考えられる。コリメート光であれば、距離LWDが異なる電子部品6A、6Bに対する照射光を、同じ光度にすることは可能である。しかし、電子部品6A、6Bは平面体ではなく立体物であり、立体箇所をサイド照明光で光らせるには、照射角R1、R2をもって拡がる照射光S1、S2を用いる必要がある。
【0071】
図12(A)は照射角をもつ照射光SLで、
図12(B)は平行光HLで、それぞれチップ部品61を照射したときの、反射光RSL、RHLの部品認識カメラ11の入射瞳11Bへの入射状況を各々示す図である。チップ部品61は、一般的にその底面のエッジ付近にR面や斜面を有している。照射光SLをチップ部品61の側方から照射した場合、様々な面角度をもつ前記底面のエッジ周辺面からの反射光RSLが、満遍なく入射瞳11Bへ入射する。これに対し、平行光HLでは、特定の反射角をもつ反射光RHLしか入射瞳11Bへ入射しない。このため、チップ部品61の外周形状を的確に撮像することができない。
【0072】
図13(A)および(B)は、半球状電極63をもつボールバンプ部品を、照射光SLおよび平行光HLで照射する例を示している。
図13(A)に示す照射角をもつ照射光SLを半球状電極63に照射すれば、当該半球状電極63の各部からの反射光RSLが入射瞳11Bへ入射する。一方、
図13(B)に示す平行光HLであると、半球状電極63のある一点からの反射光RHLしか入射瞳11Bへ入射しない。従って、サイド照明光としては、所定の照射角をもつ照射光SLを用いる必要がある。
【0073】
[撮像センサ別の撮像例]
本実施形態の照明装置8は、部品認識カメラ11が備える撮像センサがエリアセンサである場合、もしくはラインセンサである場合の双方に対応可能である。
図14(A)および(B)は、部品認識カメラ11がエリアセンサを具備する場合のサイド照明光の照射状況を示す図である。エリアセンサは、二次元の撮像範囲G1を有し、撮像範囲G1を一括で撮像して1フレーム分の画像を取得する。
図14(A)は、ロータリーヘッド40の円周配置された8つの吸着ノズル42(
図3参照)の全てに、電子部品6A、6B、6C・・・が吸着された状態が撮像されている様子を示している。
【0074】
この場合、全ての電子部品6A、6B、6C・・・が照明中心8Cからオフセットした位置で、サイド照明部83の上段環状光源群84および下段環状光源群85から第1照射光S1および第2照射光S2を受ける。既述の通り、上下二段の第1照射光S1および第2照射光S2の複合照射により、対極位置にある電子部品6A、6Bの全側面にサイド照明光を均等に照射できる。
【0075】
一方、
図14(B)は、8つのうち1つの吸着ノズル42だけが電子部品6Cを保持している例である。この場合、電子部品6Cは照明中心8Cの位置で撮像される。照明中心8Cにおいても、電子部品6Cの全側面にサイド照明光を照射できる。すなわち、電子部品6Cの左方の側面には、左方の下段環状光源群85の下段点光源85Aからの第2照射光S2が照射される。また、電子部品6Cの右方の側面には、右方の下段環状光源群85の下段点光源85Bからの第2照射光S2が照射される。残りの2つの側面も、他の下段点光源85Aのペアにより同様に照射される。
【0076】
図15(A)および(B)は、部品認識カメラ11がラインセンサを具備する場合のサイド照明光の照射状況を示す図である。ラインセンサは、ライン状の撮像範囲G2を有し、所定の撮像方向Fに相対移動しながら1ライン毎の画像を順次撮像し、1フレーム分の画像を取得する。
【0077】
図15(A)は、8つの吸着ノズル42の保持された電子部品のうち、最も移動方向先端の電子部品6Bの撮像が行われている状態を示している。この場合、電子部品6Bは照明中心8Cの位置で撮像される。従って、
図14(B)の場合と同様に、対極に配置された一対の下段点光源85Aが射出する第2照射光S2により、電子部品6Bの全側面にサイド照明光を照射できる。
【0078】
図15(B)は、8つの吸着ノズル42の保持された電子部品のうち、撮像方向Fと直行する軸上に位置する2つの電子部品6C、6Dの撮像が行われている状態を示している。この場合、電子部品6C、6Dは照明中心8Cからオフセットした位置で撮像される。このときは
図14(B)の場合と同様に、上下二段の第1照射光S1および第2照射光S2の複合照射により、対極位置にある電子部品6C、6Dの全側面にサイド照明光を均等に照射できる。以上の通り、部品認識カメラ11がエリアセンサまたはラインセンサのいずれを備える場合であっても、撮像位置が照明中心8Cの位置、もしくは照明中心8Cからオフセットした位置であっても、電子部品6の全側面に均等にサイド照明光を照射させることが可能である。
【0079】
[上記実施形態に含まれる発明]
本発明の一局面に係る部品搭載装置は、部品を保持して基板に搭載するヘッドと、前記ヘッドが保持する部品を、当該ヘッドの下方側から撮像する撮像部と、前記ヘッドに保持された部品の側方から当該部品に照明光を照射するサイド照明部を含む照明装置と、を備え、前記サイド照明部は、前記照明光として、第1照射角で拡がる第1照射光を発する上段光線射出部と、前記上段光線射出部の下方に配置され前記第1照射角よりも小さい第2照射角で拡がる第2照射光を発する下段光線射出部と、を備える。
【0080】
この部品搭載装置によれば、サイド照明部が上段および下段の二段の光線射出部で構成されるので、第1照射光による照明領域と第2照射光による照明領域とを、互い異なる領域に設定することが可能となる。また、前記第2照射光は、前記第1照射角よりも小さい第2照射角をもつので、前記第1照射光よりも遠い領域を照明領域とすることができる。従って、ヘッドに保持された部品が照明装置の照明中心からオフセットしている場合でも、前記第1照射光および前記第2照射光の複合照射により、当該部品の全ての側面にサイド照明光を均等に照射可能である。
【0081】
上記の部品搭載装置において、前記第1照射光および前記第2照射光の光軸が、水平面に対してなす角が0~20度の範囲で上方に傾斜するように、前記上段光線射出部および前記下段光線射出部が配設される構成とすることができる。
【0082】
この部品搭載装置によれば、ヘッドに保持された部品の側面に、サイド照明部の照明光を的確に照射できる。従って、部品の底面エッジ付近の反射光を良好に撮像部へ入射させることができ、部品の画像認識精度を高めることができる。
【0083】
上記の部品搭載装置において、前記上段光線射出部は、複数の第1点光源が環状に配列された上段環状光源群からなり、前記下段光線射出部は、前記上段環状光源群の各第1点光源の下方に隣接するように、複数の第2点光源が環状に配列された下段環状光源群からなる構成としても良い。
【0084】
この部品搭載装置によれば、上段光線射出部および下段光線射出部が、それぞれ点光源の環状配列体で構成されるので、サイド照明部の構築や制御を容易化できる。
【0085】
上記の部品搭載装置において、前記ヘッドは、各々が部品を保持する複数の単位ヘッドを備え、一つの前記第1点光源と、前記一つの前記第1点光源の下方に隣接する一つの前記第2点光源との点光源ペアに対して、近い位置にある第1単位ヘッドと、遠い位置にある第2単位ヘッドとが存在し、一つの前記第1点光源が発する前記第1照射光の光軸は、前記第1単位ヘッドの部品保持位置を指向し、一つの前記第2点光源が発する前記第2照射光の光軸は、前記第2単位ヘッドの部品保持位置を指向する構成としても良い。
【0086】
この部品搭載装置によれば、一つの点光源ペアの第1点光源および第2点光源により、第1単位ヘッドに保持された部品の前記第1点光源に対向する側面には第1照射光が照射され、第2単位ヘッドに保持された部品の前記第2点光源に対向する側面には第2照射光が照射される。点光源ペアは環状に配置されていることから、前記一つの点光源ペアの対極に位置する他の点光源ペアの第1点光源および第2点光源により、前記部品の反対側の側面に、それぞれ第1照射光および第2照射光が照射される。従って、第1単位ヘッドおよび第2単位ヘッドに各々保持された部品の全ての側面に、サイド照明光を照射することが可能となる。
【0087】
上記の部品搭載装置において、前記第1照射光が前記第1単位ヘッドに保持された部品を照射する光度と、前記第2照射光が前記第2単位ヘッドに保持された部品を照射する光度とが略同一となるように、前記第1照射角および前記第2照射角が設定されていることが望ましい。
【0088】
この部品搭載装置によれば、第1単位ヘッドおよび第2単位ヘッドに各々保持された部品の側面に、光度が略同一のサイド照明光を照射することが可能となる。
【0089】
上記の部品搭載装置において、前記第1点光源および前記第2点光源がLED光源からなり、前記第1照射角および前記第2照射角は、前記LED光源の各々の光線出射面に配置する光学レンズの有無、もしくは前記光学レンズの集光度の相違によって設定される構成としても良い。
【0090】
この部品搭載装置によれば、汎用のLED光源と光学レンズとの組み合わせにより、適宜な第1照射角をもつ第1照射光および第2照射角をもつ第2照射光を射出させることができる。
【0091】
上記の部品搭載装置において、前記サイド照明部は、複数の点光源が一列の環状に配列された環状光源群からなり、前記点光源の各々の光線出射面に配置され、第1集光特性を有する第1光学面と、前記第1集光特性よりも集光度の高い第2集光特性を有する第2光学面と、を備える光学部品をさらに備え、前記上段光線射出部は前記第1光学面に設定され、前記下段光線射出部は前記第2光学面に設定されている構成としても良い。
【0092】
この部品搭載装置によれば、上段光線射出部および下段光線射出部の各々に点光源を配置せずとも、第1照射光および第2照射光を射出させることができる。すなわち、光学部品で点光源が発する光線を分光させ、第1光学面から第1照射光を、第2光学面から第2照射光を各々射出させることができる。
【0093】
上記の部品搭載装置において、前記ヘッドは、環状に配列された複数の単位ヘッドを備えたロータリーヘッドであっても良い。
【0094】
ロータリーヘッドに保持される部品は、インライン型ヘッドのように直線上には並ばず、円周上に並ぶ。このため、当該部品は、照明装置の照明中心からオフセットした位置でサイド照明光が照射される。従って、上記の第1照射光および第2照射光を発するサイド照明部の適用するメリットが大きい。
【0095】
上記の部品搭載装置において、前記照明装置は、前記ヘッドの下方から当該ヘッドに保持された部品の底面に向けて照明光を照射する同軸照明部と、前記ヘッドの斜め下方から前記部品の底面周縁部に向けて照明光を照射する拡散照明部と、をさらに備えていれば、ヘッドに保持された部品の底面側に満遍なく照明光を照射でき、当該の認識精度を高めることができる。
【0096】
以上説明した本発明に係る部品搭載装置によれば、撮像する部品が照明装置の照明中心からオフセットしている場合でも、当該部品の側面にサイド照明光を均等に照射できる部品搭載装置を提供することができる。