IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 森村SOFCテクノロジー株式会社の特許一覧

特許7543336インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体、および、電気化学反応セルスタック
<>
  • 特許-インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体、および、電気化学反応セルスタック 図1
  • 特許-インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体、および、電気化学反応セルスタック 図2
  • 特許-インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体、および、電気化学反応セルスタック 図3
  • 特許-インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体、および、電気化学反応セルスタック 図4
  • 特許-インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体、および、電気化学反応セルスタック 図5
  • 特許-インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体、および、電気化学反応セルスタック 図6
  • 特許-インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体、および、電気化学反応セルスタック 図7
  • 特許-インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体、および、電気化学反応セルスタック 図8
  • 特許-インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体、および、電気化学反応セルスタック 図9
  • 特許-インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体、および、電気化学反応セルスタック 図10
  • 特許-インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体、および、電気化学反応セルスタック 図11
  • 特許-インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体、および、電気化学反応セルスタック 図12
  • 特許-インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体、および、電気化学反応セルスタック 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体、および、電気化学反応セルスタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0228 20160101AFI20240826BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240826BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240826BHJP
   C25B 9/19 20210101ALI20240826BHJP
   C25B 9/60 20210101ALI20240826BHJP
   C25B 9/65 20210101ALI20240826BHJP
   C25B 9/77 20210101ALI20240826BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20240826BHJP
   H01M 8/0206 20160101ALI20240826BHJP
   H01M 8/0215 20160101ALI20240826BHJP
   H01M 8/0243 20160101ALI20240826BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20240826BHJP
   H01M 8/1213 20160101ALI20240826BHJP
【FI】
H01M8/0228
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B9/19
C25B9/60
C25B9/65
C25B9/77
H01M8/02
H01M8/0206
H01M8/0215
H01M8/0243
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/1213
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022054969
(22)【出願日】2022-03-30
(65)【公開番号】P2022168837
(43)【公開日】2022-11-08
【審査請求日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2021074119
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021193783
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 保夫
(72)【発明者】
【氏名】堀田 信行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 吉晃
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伸輔
(72)【発明者】
【氏名】島津 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】田中 修平
(72)【発明者】
【氏名】森川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大村 肇
(72)【発明者】
【氏名】星子 琢也
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-022471(JP,A)
【文献】特開2019-200876(JP,A)
【文献】特開2013-225422(JP,A)
【文献】特開2007-280618(JP,A)
【文献】特開2018-018694(JP,A)
【文献】特開2018-160427(JP,A)
【文献】特表2020-502751(JP,A)
【文献】国際公開第2012/144600(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0090463(KR,A)
【文献】特開2000-294256(JP,A)
【文献】特開2011-174152(JP,A)
【文献】国際公開第2011/034002(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
C25B 1/04
C25B 9/00
C25B 9/19
C25B 9/60
C25B 9/65
C25B 9/77
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物を含む電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む電気化学反応単セルと、前記電気化学反応単セルの前記燃料極側に配置され、Mnを含むインターコネクタと、を備えるインターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、
前記燃料極における前記電解質層とは反対側の第1の表面は、前記インターコネクタに電気的に接続される集電領域と、前記集電領域とは異なる非集電領域と、を有しており、
前記インターコネクタにおける前記燃料極側の第2の表面のうち、前記燃料極の前記非集電領域と前記第1の方向で対向する対向領域の少なくとも一部が、前記対向領域からのMnの透過を制限するマンガン透過制限膜で覆われており、
前記マンガン透過制限膜は、金属箔であり、
前記金属箔と前記インターコネクタとがスポット接合された複数の接合部であって、互いに離間した位置に配置された複数の接合部を備え、
前記対向領域のうち、前記第1の方向視で前記複数の接合部を除く領域において前記マンガン透過制限膜と前記インターコネクタとが密着していないことを特徴とする、インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体。
【請求項2】
請求項1に記載のインターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、
前記マンガン透過制限膜は、金属箔の第1の箔部分であり、
前記金属箔は、前記インターコネクタに電気的に接続されており、かつ、前記金属箔のうち、前記第1の箔部分とは異なる第2の箔部分は、前記燃料極における前記集電領域に電気的に接続されていることを特徴とする、インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体。
【請求項3】
請求項2に記載のインターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、
前記燃料極における前記集電領域と前記インターコネクタとの間に配置されたスペーサーを備え、
前記金属箔の前記第2の箔部分の少なくとも一部は、前記燃料極における前記集電領域と前記スペーサーとの間に挟み込まれていることを特徴とする、インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体。
【請求項4】
請求項3に記載のインターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、
前記スペーサーは、前記金属箔を介することなく、前記インターコネクタに接触していることを特徴とする、インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体。
【請求項5】
請求項1に記載のインターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、
前記インターコネクタにおける前記燃料極の前記集電領域と前記第1の方向で対向する領域に電気的に接続される第1の接続部と、前記燃料極の前記集電領域に電気的に接続される第2の接続部と、前記第1の接続部と前記第2の接続部とをつなぐ連接部と、を有する導電性部材と、
前記導電性部材の前記第1の接続部と前記第2の接続部との間に配置されたスペーサーと、
を備え、
前記導電性部材は、Mnの透過を抑制する構成であり、かつ、前記第2の接続部における前記連接部とは反対側の先端部が前記マンガン透過制限膜に接触している、インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のインターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、
前記インターコネクタにおける前記対向領域のうち、60%以上の領域が、前記マンガン透過制限膜で覆われていることを特徴とする、インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のインターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、
前記マンガン透過制限膜は、前記インターコネクタにおける前記対向領域から前記第1の方向に離間している部分を有している、インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のインターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、
前記複数の接合部を除く前記対向領域の全体が前記マンガン透過制限膜に覆われていることを特徴とする、インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体。
【請求項9】
請求項1に記載のインターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、
前記マンガン透過制限膜は、Ni、Coの少なくとも1種を含む金属と、Al、Ti、Mg、S、Zr、Hf、Nb、Y、および、Ceの少なくとも1種を含む酸化物と、の少なくとも一方により形成されていることを特徴とする、インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載のインターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、
前記インターコネクタにおける結晶粒界にNbまたはTiを含む酸化物相が含まれていることを特徴とする、インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体。
【請求項11】
固体酸化物を含む電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む電気化学反応単セルと、前記電気化学反応単セルの前記燃料極側に配置され、Mnを含むインターコネクタと、を備えるインターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、
前記燃料極における前記電解質層とは反対側の第1の表面は、前記インターコネクタに電気的に接続される集電領域と、前記集電領域とは異なる非集電領域と、を有しており、
前記インターコネクタにおける前記燃料極側の第2の表面のうち、前記燃料極の前記非集電領域と前記第1の方向で対向する対向領域の少なくとも一部が、前記対向領域からのMnの透過を制限するマンガン透過制限膜で覆われており、
前記マンガン透過制限膜は、CrとMnとを含む金属酸化物により形成されており、
前記マンガン透過制限膜について、20%水蒸気を含む水素雰囲気下において1000℃で100hrの加速加熱試験をした上で、電子線マイクロアナライザにより分析をした場合の前記マンガン透過制限膜の厚み方向に沿った断面におけるMnマッピング画像においてMn濃度が5.0mass%以上であるピクセルのMn濃度の平均値Caは21.0mass%以下であることを特徴とする、インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体。
【請求項12】
固体酸化物を含む電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む電気化学反応単セルと、前記電気化学反応単セルの前記燃料極側に配置され、Mnを含むインターコネクタと、を備えるインターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、
前記燃料極における前記電解質層とは反対側の第1の表面は、前記インターコネクタに電気的に接続される集電領域と、前記集電領域とは異なる非集電領域と、を有しており、
前記インターコネクタにおける前記燃料極側の第2の表面のうち、前記燃料極の前記非集電領域と前記第1の方向で対向する対向領域の少なくとも一部が、前記対向領域からのMnの透過を制限するマンガン透過制限膜で覆われており、
前記マンガン透過制限膜は、CrとMnとを含む金属酸化物により形成されており、
前記マンガン透過制限膜について、20%水蒸気を含む水素雰囲気下において1000℃で100hrの加速加熱試験をした上で、電子線マイクロアナライザにより分析をした場合の前記マンガン透過制限膜の厚み方向に沿った断面におけるMnマッピング画像においてMn濃度が5.0mass%以上であるピクセルのMn濃度のばらつきCdは16.0mass%以下であることを特徴とする、インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体。
【請求項13】
請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載のインターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、
前記インターコネクタにおけるMn濃度は、0.01mass%以上、0.5mass%以下であることを特徴とする、インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体。
【請求項14】
前記第1の方向に並べて配列された複数のインターコネクタ-電気化学反応単セル複合体を備える電気化学反応セルスタックにおいて、
前記複数のインターコネクタ-電気化学反応単セル複合体の少なくとも1つは、請求項1から請求項13までのいずれか一項に記載のインターコネクタ-電気化学反応単セル複合体であることを特徴とする、電気化学反応セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の種類の1つとして、固体酸化物を含む電解質層を備える固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という)が知られている。SOFCは、一般に、所定の方向(以下、「第1の方向」という)に並べられた複数のインターコネクタ-燃料電池単セル複合体(以下、単に「複合体」という)を備える燃料電池スタックの形態で利用される。複合体は、電解質層と電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む燃料電池単セル(以下、単に「単セル」という)と、単セルの燃料極側に配置されたインターコネクタと、を備える(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-200874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インターコネクタは、Mn(マンガン)を含む金属材料(例えばステンレス等)により形成されたものが用いられることがある。本発明者は、鋭意検討を重ねることにより、このようなインターコネクタが単セルよりも燃料極側に配置された構成では、インターコネクタの形成材料に由来するMnが燃料極に面する燃料室に飛散することにより、例えば電解質層にクラックが発生するなど、単セルの性能に悪影響を及ぼすこと(Mn被毒が発生すること)を新たに見出した。
【0005】
なお、このような課題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」という。)の構成単位である電解セル単位を複数備える電解セルスタックにも共通の問題である。また、このような課題は、SOFCやSOECに限らず、他のタイプの電気化学反応セルスタックにも共通の課題である。なお、本明細書では、燃料電池単セルと電解単セルとをまとめて電気化学反応単セルと呼び、燃料電池スタックと電解セルスタックとをまとめて電気化学反応セルスタックと呼ぶ。
【0006】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示されるインターコネクタ-電気化学反応単セル複合体は、固体酸化物を含む電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む電気化学反応単セルと、前記電気化学反応単セルの前記燃料極側に配置され、Mnを含むインターコネクタと、を備えるインターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、前記燃料極における前記電解質層とは反対側の第1の表面は、前記インターコネクタに電気的に接続される集電領域と、前記集電領域とは異なる非集電領域と、を有しており、前記インターコネクタにおける前記燃料極側の第2の表面のうち、前記燃料極の前記非集電領域と前記第1の方向で対向する対向領域の少なくとも一部が、前記対向領域からのMnの飛散を抑制するマンガン飛散抑制膜で覆われている。本インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体では、インターコネクタにおける燃料極側の第2の表面のうち、対向領域の少なくとも一部が、対向領域からのMnの飛散を抑制するマンガン飛散抑制膜で覆われている。対向領域は、燃料極の非集電領域と第1の方向で対向する領域である。これにより、本インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体によれば、インターコネクタの形成材料に由来するMnが燃料室に飛散することを抑制することができる。
【0009】
(2)上記インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、前記マンガン飛散抑制膜は、金属箔の第1の箔部分であり、前記金属箔は、前記インターコネクタに電気的に接続されており、かつ、前記金属箔のうち、前記第1の箔部分とは異なる第2の箔部分は、前記燃料極における前記集電領域に電気的に接続されている構成としてもよい。本インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体では、金属箔が、電気化学反応単セルとインターコネクタとを電気的に接続する集電体と、インターコネクタからのMnの飛散を抑制するマンガン飛散抑制膜との両方の機能を兼ねている。そのため、本インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体によれば、集電体とマンガン飛散抑制膜とが別々の部材である構成に比べて、部品点数を低減しつつ、インターコネクタの形成材料に由来するMnが燃料室に飛散することを抑制することができる。
【0010】
(3)上記インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、前記燃料極における前記集電領域と前記インターコネクタとの間に配置されたスペーサーを備え、前記金属箔の前記第2の箔部分の少なくとも一部は、前記燃料極における前記集電領域と前記スペーサーとの間に挟み込まれている構成としてもよい。本インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体では、金属箔の第1の箔部分の少なくとも一部が、燃料極における集電領域とスペーサーとの間に挟み込まれることにより固定されている。そのため、本インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体によれば、例えば溶接等を要することなく、電気化学反応単セルと金属箔との電気的接続を行うことができる。
【0011】
(4)上記インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、前記スペーサーは、前記金属箔を介することなく、前記インターコネクタに接触している構成としてもよい。例えばスペーサーとインターコネクタとの間に金属箔が介在する構成では、インターコネクタの形成材料に由来するMnが金属箔を介してスペーサー側に飛散するおそれがある。それに対して、本インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体では、スペーサーが金属箔を介することなくインターコネクタに接触しているため、インターコネクタの形成材料に由来するMnが金属箔を介してスペーサー側に飛散することを抑制することができる。
【0012】
(5)上記インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、前記インターコネクタにおける前記燃料極の前記集電領域と前記第1の方向で対向する領域に電気的に接続される第1の接続部と、前記燃料極の前記集電領域に電気的に接続される第2の接続部と、前記第1の接続部と前記第2の接続部とをつなぐ連接部と、を有する導電性部材と、前記導電性部材の前記第1の接続部と前記第2の接続部との間に配置されたスペーサーと、を備え、前記導電性部材は、Mnの透過を抑制する構成であり、かつ、前記第2の接続部における前記連接部とは反対側の先端部が前記マンガン飛散抑制膜に接触している構成としてもよい。本インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体によれば、導電性部材のスペーサー側表面に形成された酸化被膜からMnが燃料室に飛散することを抑制することができる。
【0013】
(6)上記インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、前記インターコネクタにおける前記対向領域のうち、60%以上の領域が、前記マンガン飛散抑制膜で覆われている構成としてもよい。本インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体によれば、インターコネクタにおける対向領域のうち、60%未満の領域が、マンガン飛散抑制膜で覆われている構成に比べて、インターコネクタの形成材料に由来するMnが燃料室に飛散することを、より効果的に抑制することができる。
【0014】
(7)上記インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、前記マンガン飛散抑制膜は、前記インターコネクタにおける前記対向領域から前記第1の方向に離間している部分を有している構成としてもよい。本インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体によれば、マンガン飛散抑制膜が全体的にインターコネクタにおける対向領域に密着した構成に比べて、インターコネクタの形成材料に由来するMnが燃料室に飛散することを、より効果的に抑制することができる。
【0015】
(8)上記インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、前記マンガン飛散抑制膜は、金属箔であり、前記金属箔と前記インターコネクタとが、互いに離間した位置においてスポット接合された複数の接合部を備え、前記対向領域のうち、前記第1の方向視で前記複数の接合部を除く領域において前記マンガン飛散抑制膜と前記インターコネクタとが密着していない構成としてもよい。本インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体によれば、Mnの飛散の抑制効果が相対的に低い接合部の面積が相対的に狭いため、マンガン飛散抑制膜によるMnの飛散の抑制効果が有効に発揮されることにより、インターコネクタの形成材料に由来するMnが燃料室に飛散することを、より効果的に抑制することができる。
【0016】
(9)上記インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、前記複数の接合部を除く前記対向領域の全体が前記マンガン飛散抑制膜に覆われている構成としてもよい。本インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体によれば、複数の接合部を除く対向領域の一部しかマンガン飛散抑制膜に覆われていない構成に比べて、インターコネクタの形成材料に由来するMnが燃料室に飛散することを、より効果的に抑制することができる。
【0017】
(10)上記インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、前記マンガン飛散抑制膜は、Ni、Coの少なくとも1種を含む金属と、Al、Ti、Mg、S、Zr、Hf、Nb、Y、および、Ceの少なくとも1種を含む酸化物と、の少なくとも一方により形成されている構成としてもよい。本インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体によれば、マンガン飛散抑制膜が金属やAl等を含む酸化物により形成されていることにより、飛散したMnとの固溶体が形成されるため、インターコネクタの形成材料に由来するMnが燃料室に飛散することを、より効果的に抑制することができる。
【0018】
(11)上記インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、前記インターコネクタにおける結晶粒界にNbまたはTiを含む酸化物相が含まれている構成としてもよい。インターコネクタに含まれるMnは、その結晶粒界を通ることにより燃料室にまで拡散しやすい。本インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体においては、上記構成であることにより、インターコネクタに含まれるMnが結晶粒界を通って燃料室にまで拡散することが抑制される。そのため、本インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体によれば、燃料室におけるMn蒸気圧が上昇することに起因して電気化学反応単セルの発電性能が低下することを抑制することができる。
【0019】
(12)上記インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、前記マンガン飛散抑制膜は、CrとMnとを含む金属酸化物により形成されており、前記マンガン飛散抑制膜について、20%水蒸気を含む水素雰囲気下において1000℃で100hrの加速加熱試験をした上で、電子線マイクロアナライザにより分析をした場合の前記マンガン飛散抑制膜の厚み方向に沿った断面におけるMn濃度の平均値Caは21.0mass%以下である構成としてもよい。本インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体によれば、マンガン飛散抑制膜におけるMn濃度が比較的に低いため、マンガン飛散抑制膜の形成材料に由来するMnが燃料室に飛散することを抑制することができる。
【0020】
(13)上記インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、前記マンガン飛散抑制膜は、CrとMnとを含む金属酸化物により形成されており、前記マンガン飛散抑制膜について、20%水蒸気を含む水素雰囲気下において1000℃で100hrの加速加熱試験をした上で、電子線マイクロアナライザにより分析をした場合の前記マンガン飛散抑制膜の厚み方向に沿った断面におけるMn濃度のばらつきCdは16.0mass%以下である構成としてもよい。本インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体によれば、マンガン飛散抑制膜におけるMn濃度のばらつきが比較的に小さいため、マンガン飛散抑制膜の形成材料に由来するMnが燃料室に飛散することを抑制することができる。
【0021】
(14)上記インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、前記マンガン飛散抑制膜は、金属酸化物により形成されており、前記マンガン飛散抑制膜について、20%水蒸気を含む水素雰囲気下において1000℃で100hrの加速加熱試験をした場合に、前記マンガン飛散抑制膜は、X線回析法によってMnOが同定されない構成としてもよい。本インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体においては、マンガン飛散抑制膜についてX線回析法をした場合にMnOが同定される構成と比較して、インターコネクタに含まれるMnがガス中に飛散することが生じにくい。従って、本インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体によれば、燃料室におけるMn蒸気圧の上昇を抑制することができ、これにより電気化学反応単セルの発電性能を向上させることができる。」
【0022】
(15)上記インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、前記マンガン飛散抑制膜は、金属酸化物により形成されて、かつ、Mnと、Si,Al,TiおよびSから選択される少なくとも1つの元素である特定元素と、の化合物である特定化合物を含む構成としてもよい。インターコネクタに含まれるMnが特定化合物(Mnと特定元素との化合物)となることにより、ガス中に飛散しにくくなる。従って、本インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体によれば、燃料室におけるMn蒸気圧の上昇を抑制することができ、これにより電気化学反応単セルの性能を向上させることができる。
【0023】
(16)上記インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、前記マンガン飛散抑制膜は、さらにCrを含む構成としてもよい。本インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体では、マンガン飛散抑制膜の表面にCrが形成される。そのため、マンガン飛散抑制膜の表面に形成されるMnと特定元素の化合物を核として、Mn蒸気圧が低いMnとCrの化合物((Cr、Mn)等)を形成され、これにより、Mnが燃料室に飛散することが更に抑制される。従って、本インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体によれば、より効果的に、燃料室におけるMn蒸気圧の上昇を抑制することができ、これにより電気化学反応単セルの性能を向上させることができる。
【0024】
(17)上記インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、前記インターコネクタにおけるMn濃度は、0.01mass%以上、0.5mass%以下である構成としてもよい。インターコネクタにおけるMn濃度が0.01mass%以上、0.5mass%以下である構成では、インターコネクタの形成材料に由来するMnが燃料室に飛散することが顕著になる。このため、本発明を適用することにより、インターコネクタの形成材料に由来するMnが燃料室に飛散することを、より効果的に抑制することができる。
【0025】
(18)上記電気化学反応スタックにおいて、前記第1の方向に並べて配列された複数のインターコネクタ-電気化学反応単セル複合体を備える電気化学反応スタックにおいて、前記複数のインターコネクタ-電気化学反応単セル複合体の少なくとも1つは、上記インターコネクタ-電気化学反応単セル複合体である構成としてもよい。本電気化学反応スタックによれば、インターコネクタの形成材料に由来するMnが燃料室に飛散することを抑制することができる。
【0026】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、電気化学反応セルスタック(燃料電池スタックまたは電解セルスタック)、電気化学反応セルスタックを備える電気化学反応システム(燃料電池システムまたは電解セルシステム)、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図である。
図2図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図である。
図3図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。
図4図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図である。
図5図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
図6図5のVI-VIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
図7図5のVII-VIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
図8】実施形態の第1変形形態における発電単位102aの一部のXZ断面構成を示す説明図である。
図9】実施形態の第2変形形態における発電単位102bの一部のXZ断面構成を示す説明図である。
図10】実施形態の第3変形形態における発電単位102cの一部のXZ断面構成を示す説明図である。
図11】実施形態の第4変形形態における発電単位102dの一部のXZ断面構成を示す説明図である。
図12】第4変形形態における性能評価結果を示す説明図である。
図13】変形例の性能評価結果を示す説明である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
A.実施形態:
A-1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を「上方向」といい、Z軸負方向を「下方向」というものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図4以降についても同様である。なお、上下方向(Z軸方向)は、特許請求の範囲における第1の方向の一例である。
【0029】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)発電単位102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102から構成される集合体を上下から挟むように配置されている。
【0030】
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、エンドプレート104,106)のZ軸方向回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、「連通孔108」という。
【0031】
各連通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿入されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。なお、図2および図3に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の上端を構成するエンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の下端を構成するエンドプレート106の下側表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24とエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
【0032】
各ボルト22の軸部の外径は各連通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。図1および図2に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102に供給するガス流路である酸化剤ガス供給マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
【0033】
また、図1および図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)と、そのボルト22Dが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102に供給する燃料ガス供給マニホールド171として機能し、該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)と、そのボルト22Eが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
【0034】
燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。また、図2に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス供給マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、図3に示すように、燃料ガス供給マニホールド171を形成するボルト22Dの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス供給マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
【0035】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0036】
(発電単位102の構成)
図4は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図5は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。また、図6は、図4および図5のVI-VIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図であり、図7は、図4および図5のVII-VIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
【0037】
図4および図5に示すように、発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、スペーサー149と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿通される連通孔108に対応する孔が形成されている。
【0038】
インターコネクタ150は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、Mn(マンガン)やCr(クロム)等を含む金属材料(例えばフェライト系ステンレス)により形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(図2および図3参照)。
【0039】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで上下方向(発電単位102が並ぶ配列方向)に互いに対向する空気極(カソード)114および燃料極(アノード)116とを備える。すなわち、空気極114および燃料極116は、電解質層112を挟んで上下方向に互いに対向している。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で電解質層112および空気極114を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0040】
電解質層112は、上下方向視で略矩形の平板形状部材であり、緻密な(気孔率が低い)層である。ここでいう上下方向視は、「上下方向に平行な方向から見たとき」を意味する(以下における「上下方向視」も同様)。電解質層112は、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、SDC(サマリウムドープセリア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、ペロブスカイト型酸化物等の固体酸化物により形成されている。空気極114は、上下方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板形状部材であり、多孔質な(電解質層112より気孔率が高い)層である。空気極114は、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄酸化物))により形成されている。燃料極116は、上下方向視で電解質層112と略同一の大きさの略矩形の平板形状部材であり、多孔質な(電解質層112より気孔率が高い)層である。燃料極116の厚さは、例えば200μm以上、1000μm以下である。燃料極116における燃料極側集電体144の付近の部分の平均気孔率は、例えば25vol%以上、60vol%以下であり、当該部分の平均気孔径は、例えば0.5μm以上、4μm以下である。このような構成である本実施形態の単セル110(発電単位102)は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。
【0041】
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたろう材(例えばAgろう)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。
【0042】
図6に示すように、空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス供給マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。
【0043】
図7に示すように、燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス供給マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
【0044】
空気極側集電体134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、複数の略四角柱状の集電体要素から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102における空気極側集電体134は、上側のエンドプレート104に接触している。空気極側集電体134は、このような構成であるため、空気極114とインターコネクタ150(またはエンドプレート104)とを電気的に接続する。なお、本実施形態では、空気極側集電体134とインターコネクタ150とは一体の部材として形成されている。すなわち、該一体の部材の内の、上下方向(Z軸方向)に直交する平板形の部分がインターコネクタ150として機能し、該平板形の部分から空気極114に向けて突出するように形成された複数の凸部である集電体要素が空気極側集電体134として機能する。また、空気極側集電体134とインターコネクタ150との一体部材の空気極114側の表面は、導電性のコートによって覆われていてもよく、空気極114と空気極側集電体134との間には、両者を接合する導電性の接合層が介在していてもよい。
【0045】
燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ接続部146と、電極接続部145と、電極接続部145のX軸正方向側とインターコネクタ接続部146のX軸正方向側とをつなぐ連接部147とを備えている。電極接続部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に電気的に接続されている。本明細書において「A部材とB部材とが電気的に接続されている」とは、A部材とB部材とが互いに直接に接触している構成に限らず、A部材とB部材との間に他の導電性部材が介在している構成も含まれる。本実施形態では、電極接続部145は、燃料極116の上記表面に接触している。インターコネクタ接続部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に電気的に接続されている。すなわち、インターコネクタ接続部146は、発電単位102に備えられた一対のインターコネクタ150の内、単セル110に対して下方(上下方向の一方)の側に配置されているインターコネクタ150の表面に電気的に接続されている。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102におけるインターコネクタ接続部146は、下側のエンドプレート106に電気的に接続されている。本実施形態では、後述するように、インターコネクタ接続部146とインターコネクタ150との間に後述のマンガン飛散抑制膜154が介在している。なお、燃料極側集電体144は、特許請求の範囲における導電性部材の一例である。インターコネクタ接続部146は、特許請求の範囲における第1の接続部の一例である。電極接続部145は、特許請求の範囲における第2の接続部の一例である。
【0046】
本実施形態では、燃料極側集電体144は、例えばニッケルやニッケル合金、コバルトやコバルト合金等により形成される金属箔(例えば、厚さが10μm以上、800μm以下)により形成されている。なお、燃料極側集電体144は、略矩形の金属箔に曲げ加工を施すことにより製造される。
【0047】
燃料極側集電体144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)とを電気的に接続する。なお、本実施形態では、燃料極側集電体144のインターコネクタ接続部146と電極接続部145と連接部147とは一体の部材により構成されている。
【0048】
電極接続部145とインターコネクタ接続部146との間には、例えばマイカ等により形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)との電気的接続が良好に維持される。なお、スペーサー149の板厚は、例えば0.5mm以上、3mm以下である。なお、単セル110とセパレータ120と燃料極側フレーム140とインターコネクタ150とから構成された複合体は、特許請求の範囲におけるインターコネクタ-燃料電池単セル複合体の一例である。
【0049】
A-2.燃料電池スタック100の動作:
図2図4および図6に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス供給マニホールド161に供給され、酸化剤ガス供給マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、図3図5および図7に示すように、燃料ガス供給マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス供給マニホールド171に供給され、燃料ガス供給マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
【0050】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGに含まれる酸素と燃料ガスFGに含まれる水素との電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃以上、1000℃以下)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0051】
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、図2図4および図6に示すように、酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、図3図5および図7に示すように、燃料ガス排出連通孔143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0052】
A-3.インターコネクタ150の形成材料に由来するMnの飛散を抑制するための構成:
上述したように、本実施形態の燃料電池スタック100に備えられたインターコネクタ150は、Mn(後述の酸化被膜152を形成する程度の微量成分を含む材料により形成されている。本発明者は、鋭意検討を重ねることにより、このようなインターコネクタ150が単セル110の燃料極116側に配置された構成では、インターコネクタ150の形成材料に由来するMnが燃料室176に飛散することにより、例えば電解質層112にクラックが発生するなど、燃料電池スタック100(単セル110)の性能に悪影響を及ぼすことを新たに見出した。
【0053】
インターコネクタ150の形成材料に由来するMnが燃料電池スタック100の性能に悪影響を及ぼす要因として次のことが考えられる。すなわち、例えば燃料電池スタック100(または上記複合体)の製造時の熱処理や、燃料電池スタック100の発電運転中において、燃料ガスFGに含まれる水蒸気によって、図4および図5に示すように、インターコネクタ150における燃料極116側の表面(以下、「上面153」という」にMnを含む酸化被膜152が形成される。その後、燃料電池スタック100の発電運転中に、酸化被膜152からMn(OH)(水酸化マンガン)が蒸気として燃料室176内に飛散する。飛散したMn(OH)は、燃料極116を介して燃料極116と電解質層112との界面にてMnO(一酸化マンガン)として付着し、さらに電解質層112内に拡散する。拡散したMnOは、電解質層112内における高酸素分圧領域に到達すると、電解質層112中の粒界にMn(四三酸化マンガン)として析出することにより、電解質層112内に内部応力が発生し、その結果、電解質層112にクラックが発生すると考えられる。電解質層112にクラックが発生すると、例えば、電解質層112のイオン伝導性が低下して単セル110の発電性能が低下したり、燃料ガスFGが空気室166側にリークして発電効率が低下したりするおそれがある。そこで、本実施形態の燃料電池スタック100には、インターコネクタ150の形成材料に由来するMnの飛散を抑制するための構成が備えられている。
【0054】
A-3-1.インターコネクタ150の非接触領域153Bに形成される酸化被膜152からのMnの飛散を抑制するための構成:
まず、図4および図5に示すように、燃料極116における電解質層112とは反対側の表面(以下、「燃料極116の下面117」という)は、集電領域117Aと非集電領域117Bとを有している。集電領域117Aは、燃料極側集電体144の電極接続部145に接触することにより、燃料極側集電体144を介して、インターコネクタ150に電気的に接続される領域である。非集電領域117Bは、集電領域117Aとは異なる領域であり、燃料極側集電体144とは接触しない領域である。本実施形態では、集電領域117Aは、非集電領域117Bよりも小さい面積を有している。なお、燃料極116の下面117は、特許請求の範囲における第1の表面の一例である。
【0055】
インターコネクタ150の上面153は、接触領域153Aと非接触領域153Bとを有している。インターコネクタ150の接触領域153Aは、上下方向視で、燃料極側集電体144のインターコネクタ接続部146に重なる領域であり、後述するマンガン飛散抑制膜154を介して、インターコネクタ接続部146の下面に電気的に接続されている。非接触領域153Bは、接触領域153Aとは異なる領域であり、上下方向で燃料極116の非集電領域117Bと対向する領域である。なお、インターコネクタ150の上面153は、特許請求の範囲における第2の表面の一例であり、非接触領域153Bは、特許請求の範囲における対向領域の一例である。
【0056】
インターコネクタ150の非接触領域153Bは、酸化被膜152が形成される前において、燃料室176に露出している。このため、燃料室176内の燃料ガスFGに含まれる水蒸気によって、Mnを含む酸化被膜152がインターコネクタ150の非接触領域153Bに形成される。本実施形態では、この非接触領域153Bを覆うようにマンガン飛散抑制膜154が配置されている。本実施形態では、インターコネクタ150の非接触領域153Bの全体がマンガン飛散抑制膜154に覆われている。また、本実施形態では、マンガン飛散抑制膜154は、インターコネクタ150の非接触領域153Bだけでなく、接触領域153Aも覆っている。すなわち、燃料極側集電体144のインターコネクタ接続部146は、マンガン飛散抑制膜154を介して、インターコネクタ150の接触領域153Aに電気的に接続されている。
【0057】
マンガン飛散抑制膜154は、Mn(Mn(OH))の透過を制限し、Mnが燃料極116側に飛散することを抑制する機能を有する膜である。マンガン飛散抑制膜154は、例えば、Ni、Coの少なくとも1種を含む金属により形成されている。なお、マンガン飛散抑制膜154の性能評価については、850℃で1500時間発電する前後において、燃料極116の非集電領域117BにおけるMn濃度(mass%)を、XRFで測定し、その発電前後におけるMn濃度の増加量が0.1mass%以下であれば、Mn飛散を抑制できたと判断する。なお、マンガン飛散抑制膜154の厚さは、例えば0.01μm以上、1000μm以下である。
【0058】
マンガン飛散抑制膜154は、インターコネクタ150の非接触領域153Bから上下方向に離間している部分を有している。具体的には、図4および図5には、金属箔(例えばNi箔)により構成されたマンガン飛散抑制膜154が例示されている。マンガン飛散抑制膜154は、インターコネクタ150に部分的に接合されている。マンガン飛散抑制膜154のうち、インターコネクタ150に接合されていない部分の少なくとも一部は、酸化被膜152(インターコネクタ150)から離間しており、マンガン飛散抑制膜154と酸化被膜152との間に空間Uが形成されている。
【0059】
燃料電池スタック100は、マンガン飛散抑制膜154(金属箔)とインターコネクタ150とが、互いに離間した位置においてスポット接合された複数の接合部151を備えている。各接合部151は、例えばスポット溶接により形成される。インターコネクタ150の非接触領域153Bのうち、複数の接合部151を除く領域では、インターコネクタ150とマンガン飛散抑制膜154とは密着しておらず、インターコネクタ150とマンガン飛散抑制膜154との間に空間Uを形成可能である。本実施形態では、より詳細には、インターコネクタ150の上面153のうち、複数の接合部151を除く非接触領域153Bの全体がマンガン飛散抑制膜154に覆われている。
【0060】
A-3-2.燃料極側集電体144のインターコネクタ接続部146に形成される酸化被膜152からのMnの拡散を抑制するための構成:
本実施形態では、インターコネクタ150の非接触領域153Bだけでなく、燃料極側集電体144のインターコネクタ接続部146における燃料極116側の表面(以下、「上面146A」という)にも、Mnを含む酸化被膜152が形成される。すなわち、インターコネクタ接続部146の上面146Aからも、インターコネクタ150の形成材料に由来するMnが飛散し得る。この要因は次のように考えられる。すなわち、燃料電池スタック100の製造段階において、インターコネクタ150と燃料極側集電体144のインターコネクタ接続部146とは、マンガン飛散抑制膜154を挟みつつ上下方向から圧力を加えた状態で拡散接合される。この際に、マンガン飛散抑制膜154に含まれるMnがインターコネクタ接続部146の上面146A側に拡散し、その結果、インターコネクタ接続部146の上面146Aに酸化被膜152が形成されると考えられる。
【0061】
本実施形態では、燃料極側集電体144は、Mnの透過を抑制する構成(金属箔)である。また、燃料極側集電体144の電極接続部145は、連接部147とは反対側に延びる先端部148を有しており、その先端部148が、インターコネクタ150の非接触領域153Bを覆うマンガン飛散抑制膜154に接触している。本実施形態では、図7に示すように、先端部148は、スペーサー149の全長にわたって延びており、かつ、154に接触している。また、電極接続部145は、スペーサー149の長手方向において、スペーサー149の両端部よりも外側にそれぞれ突出する一対の突出部145Aを有している。各突出部145Aも、接合部151によりスポット溶接されている。
【0062】
ここで、例えばスペーサー149を構成するマイカ成分(例えばSi(シリコン)、Mg(マグネシウム)等)は、酸化被膜152に含まれるMnと反応してMnSiO(マンガンシリケート)等の化合物を生成し、その結果、インターコネクタ150の非接触領域153Bに面する空間におけるMn蒸気圧が低下する。しかし、本実施形態では、燃料室176のうち、インターコネクタ150の非接触領域153Bに面する空間と、スペーサー149等が配置された他の空間との間に電極接続部145が介在している。このため、インターコネクタ150の非接触領域153Bに面する空間に、スペーサー149を構成するマイカ成分が入り込みにくい。その結果、インターコネクタ150の非接触領域153Bに面する空間におけるMn蒸気圧が比較的に高く、多量のMn(OH)が飛散しやすくなっている。
【0063】
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態における燃料電池スタック100では、インターコネクタ150の非接触領域153Bが、酸化被膜152からのMnの飛散を抑制するマンガン飛散抑制膜154で覆われている。非接触領域153Bは、燃料極116の非集電領域117Bと上下方向で対向する領域である。これにより、本実施形態によれば、インターコネクタ150の形成材料に由来するMnが燃料室176に飛散することを抑制することができる。なお、インターコネクタ150におけるMn濃度が0.01mass%以上、0.5mass%以下である構成では、インターコネクタ150の形成材料に由来するMnが燃料室176に飛散することが顕著になる。これに対して、本発明を適用することにより、インターコネクタ150の形成材料に由来するMnが燃料室176に飛散することを、より効果的に抑制することができる。
【0064】
本実施形態では、マンガン飛散抑制膜154は、インターコネクタ150の非接触領域153Bから上下方向に離間している部分を有している。これにより、本実施形態によれば、マンガン飛散抑制膜154が全体的にインターコネクタ150の非接触領域153B(酸化被膜152)に密着した構成に比べて、マンガン飛散抑制膜154と酸化被膜152との相互拡散に起因してMnがマンガン飛散抑制膜154に拡散することが抑制されるため、Mnが燃料室176に飛散することを、より効果的に抑制することができる。
【0065】
本実施形態では、インターコネクタ150の非接触領域153Bのうち、複数の接合部151を除く領域では、インターコネクタ150とマンガン飛散抑制膜154とは密着しておらず、インターコネクタ150とマンガン飛散抑制膜154との間に空間Uを形成可能である。マンガン飛散抑制膜154とインターコネクタ150との接合部は、Mnの飛散の抑制効果が相対的に低い。しかし、本実施形態によれば、マンガン飛散抑制膜154とインターコネクタ150との接合部の面積が相対的に狭いため、マンガン飛散抑制膜154によるMnの飛散の抑制効果が有効に発揮されることにより、Mnが燃料室176に飛散することを、より効果的に抑制することができる。
【0066】
本実施形態では、インターコネクタ150の上面153のうち、複数の接合部151を除く非接触領域153Bの全体がマンガン飛散抑制膜154に覆われている。これにより、本実施形態によれば、複数の接合部151を除く非接触領域153Bの一部しかマンガン飛散抑制膜154に覆われていない構成に比べて、Mnが燃料室176に飛散することを、より効果的に抑制することができる。
【0067】
本実施形態では、燃料極側集電体144の電極接続部145は、連接部147とは反対側に延びる先端部148を有しており、その先端部148が、インターコネクタ150の非接触領域153Bを覆うマンガン飛散抑制膜154に接触している。これにより、本実施形態によれば、燃料極側集電体144の上面146Aに形成された酸化被膜152からMnが燃料室176に飛散することを抑制することができる。
【0068】
本実施形態では、マンガン飛散抑制膜154は、例えば、Ni、Coの少なくとも1種を含む金属により形成されている。これにより、本実施形態によれば、飛散したMnと反応性が高いNiやCoとの固溶体が形成されてMn蒸気圧が低下するため、インターコネクタ150の形成材料に由来するMnが燃料室176に飛散することを、より効果的に抑制することができる。
【0069】
A-5.本実施形態の変形形態:
上記実施形態では、Mnの飛散を抑制するためのマンガン飛散抑制膜154と、単セル110とインターコネクタ150とを電気的に接続するための燃料極側集電体144とは別体であった。これに対して、次の第1から第3の変形形態は、共通の金属箔200,200bが、マンガン飛散抑制膜と燃料極側集電体との両機能を兼ねる点で、上記実施形態とは異なる。金属箔200,200bは、例えばニッケルやニッケル合金、コバルトやコバルト合金等により形成されており、厚さは、例えば10μm以上、800μm以下である。本変形形態では、インターコネクタ150の上面153のうち、燃料極116の非集電領域117Bと上下方向で対向する領域を、対向領域153Cといい、集電領域117Aと上下方向で対向する領域、すなわち、燃料極の非集電領域117Bと上下方向で対向しない領域を、非対向領域153Dという。
【0070】
A-5-1.第1変形形態:
図8は、本実施形態の第1変形形態における発電単位102aの一部のXZ断面構成を示す説明図である。図8に示すように、第1変形形態の発電単位102aは、上記実施形態の発電単位102に対して、マンガン飛散抑制膜154および燃料極側集電体144の代わりに、金属箔200を備える点で異なる。
【0071】
具体的には、金属箔200は、第1の箔部分210と、第2の箔部分220と、一対の第3の箔部分230と、を有している。第1の箔部分210は、インターコネクタ150の対向領域153Cを覆っている部分であり、マンガン飛散抑制膜として機能する。図8の例では、第1の箔部分210は、インターコネクタ150の対向領域153Cのうち、第3の箔部分230により覆われる部分を除く全体を覆っている。第2の箔部分220は、燃料極116における集電領域117Aに電気的に接続されている部分である。図8の例では、第2の箔部分220は、燃料極116とスペーサー149との間に挟み込まれている。第3の箔部分230は、第1の箔部分210と第2の箔部分220とをつなぐ連結部分である。第3の箔部分230は、インターコネクタ150の対向領域153Cを覆っている部分であり、マンガン飛散抑制膜として機能する。なお、本第1変形形態では、金属箔200の第1の箔部分210は、接合部151によってインターコネクタ150に固定されている。このため、金属箔200がインターコネクタ150から離間することに起因して、金属箔200が燃料極側集電体として機能しなくなることを抑制することができる。
【0072】
本第1変形形態では、このような構成により、共通(例えば1枚)の金属箔200が、マンガン飛散抑制膜と燃料極側集電体との両機能を兼ねている。これにより、集電体とマンガン飛散抑制膜とが別々の部材である構成に比べて、部品点数を低減しつつ、インターコネクタ150の形成材料に由来するMnが燃料室176に飛散することを抑制することができる。また、金属箔200の第2の箔部分220の少なくとも一部が、燃料極116における集電領域117Aとスペーサー149との間に挟み込まれることにより固定されている。そのため、本第1変形形態によれば、例えば溶接等を要することなく、単セル110と金属箔200との電気的接続を確実に行うことができる。
【0073】
また、仮に、スペーサー149とインターコネクタ150との間に金属箔200が介在する構成では、インターコネクタ150の形成材料に由来するMnが金属箔200を介してスペーサー149側に飛散するおそれがある。それに対して、本第1変形形態では、スペーサー149が金属箔200を介することなくインターコネクタ150に接触しているため、インターコネクタ150の形成材料に由来するMnが金属箔200を介してスペーサー149側に飛散することを抑制することができる。
【0074】
A-5-2.第2変形形態:
図9は、本実施形態の第2変形形態における発電単位102bの一部のXZ断面構成を示す説明図である。図9に示すように、第2変形形態の発電単位102bは、上記第1変形形態の発電単位102aに対して、接合部151を備えない点と、金属箔200bの一部がスペーサー149とインターコネクタ150との間に挟み込まれている点とで異なる。
【0075】
具体的には、金属箔200bは、上記金属箔200と同様、第2の箔部分220と一対の第3の箔部分230の一方とを有する。金属箔200bは、さらに、第1の箔部分210bと、折り返し部分240bと、連結部分250bと、を有している。第1の箔部分210bは、インターコネクタ150の対向領域153Cに加えて非対向領域153Dを覆っている部分であり、マンガン飛散抑制膜として機能する。すなわち、第1の箔部分210bの一部は、燃料極116の非対向領域153Dとスペーサー149との間に配置されている。折り返し部分240bは、第1の箔部分210bのうち、非対向領域153Dを覆っている部分の一端から折り返すように配置された部分である。すなわち、第1の箔部分210bのうち、非対向領域153Dを覆っている部分と折り返し部分240bとが、燃料極116とスペーサー149との間に挟み込まれている。連結部分250bは、第2の箔部分220と折り返し部分240bとをつなぐ連結部分である。第3の箔部分230は、インターコネクタ150の対向領域153Cを覆っている部分であり、マンガン飛散抑制膜として機能する。
【0076】
本第2変形形態では、このような構成により、共通(例えば1枚)の金属箔200bが、マンガン飛散抑制膜と燃料極側集電体との両機能を兼ねている。これにより、集電体とマンガン飛散抑制膜とが別々の部材である構成に比べて、部品点数を低減しつつ、インターコネクタ150の形成材料に由来するMnが燃料室176に飛散することを抑制することができる。また、金属箔200bの第2の箔部分220の少なくとも一部が、燃料極116における集電領域117Aとスペーサー149との間に挟み込まれることにより固定されている。そのため、本第2変形形態によれば、例えば溶接等を要することなく、単セル110と金属箔200bとの電気的接続を確実に行うことができる。また、本第2変形形態では、第1の箔部分210bがスペーサー149とインターコネクタ150との間に挟み込まれている。このため、溶接等の固定手段を要することなく、金属箔200bがインターコネクタ150から離間することに起因して、金属箔200bが燃料極側集電体として機能しなくなることを抑制することができる。
【0077】
A-5-3.第3変形形態:
図10は、本実施形態の第3変形形態における発電単位102cの一部のXZ断面構成を示す説明図である。図10に示すように、第3変形形態の発電単位102cは、上記第1変形形態の発電単位102aに対して、接合部151を備えない点で異なる。本第3変形形態では、発電単位102cは、第2のスペーサー149cを有している。第2のスペーサー149cは、金属箔200の第1の箔部分210と、燃料極116の非集電領域117Bとの間に挟み込まれている。このため、溶接等の固定手段を要することなく、金属箔200がインターコネクタ150から離間することに起因して、金属箔200が燃料極側集電体として機能しなくなることを抑制することができる。
【0078】
A-5-4.第4変形形態:
図11は、本実施形態の第4変形形態における発電単位102dの一部のXZ断面構成を示す説明図である。なお、図11に示される燃料極側集電体144dは、インターコネクタ対向部146dと、電極対向部145dと、電極対向部145dとインターコネクタ対向部146dとをつなぐ連接部147dとを備えている。電極対向部145dとインターコネクタ対向部146dとの間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149dが配置されている。
【0079】
本第4変形形態におけるマンガン飛散抑制膜154dは、酸化被膜であり、インターコネクタ150のうち、燃料室176(特定ガス流路)を画定する部分の少なくとも一部(本第4変形形態では燃料極116と上下方向に重なる部分の全体)の表面に形成されている。マンガン飛散抑制膜154dは、例えば、インターコネクタ150の材料である鋼材の表面に、まず加湿しながら水素雰囲気で熱処理を施し、その後に大気雰囲気で熱処理を施すことにより形成することができる。
【0080】
マンガン飛散抑制膜154dは、燃料室176に面するMnを含む層と、Mnを含む層に隣接し、かつ、主にCr等により形成されたクロミア層とを含んでいる。Mnを含む層は、Mnと、Cr、Si(シリコン),Al(アルミニウム),Ti(チタン)およびS(硫黄)から選択される少なくとも1つの元素との化合物(例えば、MnCr)を含んでいる。また、インターコネクタ150のうち、マンガン飛散抑制膜154dに隣接する部分APは、金属材料(例えば、MnとCrを含むフェライト系ステンレス)から形成されており、その結晶粒界にNbまたはTiを含む酸化物相を含んでいる。
【0081】
マンガン飛散抑制膜154dについて加速加熱試験(詳細は後述)をした場合に、X線回析法によって、上記化合物(Mnと、Cr,Si,Al,TiおよびSから選択される少なくとも1つの元素との化合物)等が同定される一方で、MnOは同定されない。このX線回析法の測定条件は、以下の通りである。すなわち、管球電圧40kV、管球電流20mA、波長CuKα(1.541862Å)である。また、上記の「MnOが同定されない」とは、10°~80°の測定範囲において、MnOに帰属されるピークが2つ以上観察されないことを指す(以下、同様)。
【0082】
マンガン飛散抑制膜154dは、以下の条件Aを満たす。
(条件A)
マンガン飛散抑制膜154dについて、加速加熱試験(後述)をした上で、電子線マイクロアナライザ(EPMA)により分析(詳細は後述)をした場合のMn濃度の平均値Caは、21.0mass%以下である。
【0083】
マンガン飛散抑制膜154dは、更に、以下の条件Bを満たす。
(条件B)
Mn濃度の平均値Caは16.0mass%以下である。
【0084】
マンガン飛散抑制膜154dは、更に、以下の条件Cを満たす。
(条件C)
マンガン飛散抑制膜154dについて、加速加熱試験(後述)をした上で、下記のように電子線マイクロアナライザにより分析(後述)をした場合のMn濃度のばらつきCdは16.0mass%以下である。
【0085】
マンガン飛散抑制膜154dは、更に、以下の条件Dを満たす。
(条件D)
マンガン飛散抑制膜154dは、Mn濃度のばらつきCdは9.0mass%以下である。
【0086】
(加速加熱試験)
上述したマンガン飛散抑制膜154dを、電気炉に静置し、20%水蒸気を含む水素雰囲気下において、室温から1000℃まで+4℃/minの条件で電気炉内を昇温させる。1000℃の条件下で100時間保持した後、10時間をかけて室温まで電気炉内を降温させる。なお、正確な結果を得るために、電気炉に不純物(例えばSi)が混入しないことに留意すべきである。
【0087】
(電子線マイクロアナライザによる分析)
加速加熱試験後のマンガン飛散抑制膜154dを所定の長さに切断し、エポキシ樹脂に埋め込んで固化した後、マンガン飛散抑制膜154dの厚み方向(Z軸方向)に略平行な断面が観察できるように切断して、鏡面状に研磨する。その後、研磨面(観察面)にカーボン蒸着を行った後、マンガン飛散抑制膜154d(の厚み方向(Z軸方向)の全域)と、マンガン飛散抑制膜154dに隣接する部分(インターコネクタ150)とを含んだ視野で、電子線マイクロアナライザによる元素マッピング分析を行う。Mnマッピング画像およびCrマッピング画像において、マンガン飛散抑制膜154dに含まれるMnの質量濃度と、Crの質量濃度とが等しくなる位置を、マンガン飛散抑制膜154dにおけるMnを含む層とクロミア層との境界とする。Mnマッピング画像においてマンガン飛散抑制膜154dのMnを含む層におけるMn濃度が5.0mass%以上である全てのピクセル(ピクセルサイズは0.18μm)の質量濃度の平均値を「Mn濃度の平均値Ca」とし、それらピクセルの質量濃度の標準偏差を「Mn濃度のばらつきCd」とする。
【0088】
Mn濃度の平均値Caが21.0mass%以下であれば条件Aを満たし、16.0mass%以下であれば条件Bを満たすとする。Mn濃度のばらつきCdが16.0mass%以下であれば条件Cを満たすとし、9.0mass%以下であれば条件Dを満たすとする。
【0089】
なお、Mn濃度の平均値CaやばらつきCdは、鋼材(インターコネクタ150の材料)の表面にマンガン飛散抑制膜154dを形成するために施す熱処理の条件を種々変更すること等により調整することができる。例えば、上述したように加湿しながら水素雰囲気で熱処理を施す際の水蒸気濃度を低くすることにより、Mn濃度の平均値CaやばらつきCdを低下させることができる。
【0090】
以上説明したように、本第4変形形態では、マンガン飛散抑制膜154dについて、20%水蒸気を含む水素雰囲気下において1000℃で100時間の加速加熱試験をした上で、電子線マイクロアナライザにより分析をした場合のマンガン飛散抑制膜154dの厚み方向(Z軸方向)に沿った断面におけるMn濃度の平均値Caは21.0mass%以下である(条件A)。そのため、Mn濃度の平均値Caが21.0mass%より高い構成と比較して、マンガン飛散抑制膜154dに含まれるMnがマンガン飛散抑制膜154dから燃料室176(特定ガス流路)に放出されにくくなる。そのため、本第4変形形態によれば、燃料室176におけるMn蒸気圧の上昇が抑制(これにより電解質層112のMn被毒が抑制)され、その結果、単セル110の発電性能を向上させることができる。
【0091】
本第4変形形態では、Mn濃度の平均値Caは16.0mass%以下である(条件B)。そのため、本第4変形形態によれば、Mn濃度の平均値Caが特に低いことにより、特に効果的に、電解質層112のMn被毒を抑制することができる(ひいては単セル110の発電性能を特に向上させることができる)。
【0092】
本第4変形形態では、マンガン飛散抑制膜154dについて、20%水蒸気を含む水素雰囲気下において1000℃で100時間の加速加熱試験をした上で、電子線マイクロアナライザにより分析をした場合のマンガン飛散抑制膜154dの厚み方向に沿った断面におけるMn濃度のばらつきCdは16.0mass%以下である(条件C)。そのため、Mn濃度のばらつきCdが16.0mass%より高い構成と比較して、マンガン飛散抑制膜154dに含まれるCrがマンガン飛散抑制膜154dから燃料室176(特定ガス流路)に放出されにくくなる。これにより、本第4変形形態によれば、電解質層112のMn被毒と、Crが燃料極116に付着し、燃料極116の触媒活性が低下する燃料極116のCr被毒とを抑制することができる(ひいては単セル110の発電性能を更に向上させることができる)。
【0093】
本第4変形形態では、Mn濃度のばらつきCdは9.0mass%以下である(条件D)。そのため、本第4変形形態では、によれば、Mn濃度のばらつきCdが特に低いことにより、特に効果的に、電解質層112のMn被毒と燃料極116のCr被毒とを抑制することができる(ひいては単セル110の発電性能を特に向上させることができる)。
【0094】
本第4変形形態では、マンガン飛散抑制膜154dについて、20%水蒸気を含む水素雰囲気下において1000℃で100時間の加速加熱試験をした場合に、マンガン飛散抑制膜154dは、X線回析法によってMnOが同定されない。仮に、このように行うX線回析法によってMnOが同定される程度に多量のMnOがマンガン飛散抑制膜154dに存在する構成においては、比較的、マンガン飛散抑制膜154dに含まれるMnがマンガン飛散抑制膜154dから燃料室176(特定ガス流路)に放出されやすい。MnOが同定されない本第4変形形態においては、マンガン飛散抑制膜154dに含まれるMnがマンガン飛散抑制膜154dから燃料室176(特定ガス流路)に放出されにくいため、電解質層112のMn被毒を特に効果的に抑制することができる(ひいては単セル110の発電性能を特に向上させることができる)。
【0095】
本第4変形形態では、マンガン飛散抑制膜154dに隣接する部分APは金属材料からなり、マンガン飛散抑制膜154dに隣接する部分APは、その結晶粒界にNbまたはTiを含む酸化物相を含む。仮に、マンガン飛散抑制膜154dに隣接する部分APがこのような構成でないときには、マンガン飛散抑制膜154dに隣接する部分APに含まれるMnは、その結晶粒界を通ることにより燃料室176(特定ガス流路)にまで拡散しやすい。マンガン飛散抑制膜154dに隣接する部分APが上記の構成である本第4変形形態では、マンガン飛散抑制膜154dに隣接する部分APに含まれるMnが結晶粒界を通って燃料室176(特定ガス流路)に拡散することが更に抑制される。これによって、上述した燃料室176におけるMn蒸気圧の上昇が更に抑制(これにより電解質層112のMn被毒が抑制)され、その結果、単セル110の発電性能を更に向上させることができる。
【0096】
なお、上記の発明の効果を考慮すると、上述した電子線マイクロアナライザによる分析において、マンガン飛散抑制膜154dのどの位置の断面を分析対象とした場合においても上記条件(条件A、…、条件D)を満たすことが特に好ましいが、マンガン飛散抑制膜154dのいずれか1つの断面のみにおいて上記条件(条件A、…、条件D)を満たすとしてもよい。
【0097】
次に、本第4変形形態の性能評価について説明する。各特性が互いに異なる複数のマンガン飛散抑制膜154d(マンガン飛散抑制膜154dが形成されたインターコネクタ150)のサンプルを作製し、当該サンプルを用いて性能評価を行った。図12は、性能評価結果を示す説明図である。
【0098】
(サンプルについて)
図12に示すように、本性能評価では、マンガン飛散抑制膜154dの4個のサンプル(サンプルSA1、…、SA4)を用いた。各サンプルは、Mn濃度の平均値Caと、Mn濃度のばらつきCdとが互いに異なっている。
【0099】
各サンプルに形成されたマンガン飛散抑制膜154dは、上述した方法(インターコネクタ150の材料である鋼材の表面に、まず加湿しながら水素雰囲気で熱処理を施し、その後に大気雰囲気で熱処理を施す方法)により形成した。大気雰囲気で施す熱処理については、どのサンプルについても、850℃、2時間という条件で行い、加湿しながら水素雰囲気で施す熱処理については、950℃、100時間という条件で、水蒸気濃度を、サンプルSA1は2%、サンプルSA2は5%、サンプルSA3は10%、サンプルSA4は50%として行った。このようにマンガン飛散抑制膜154dを形成した各サンプルについて、加速加熱試験(上述)をした上で、電子線マイクロアナライザ(上述)による分析を行うことにより、Mn濃度の平均値CaとばらつきCdを測定した結果、図12に示すように、Mn濃度の平均値CaとMn濃度のばらつきCdとが互いに異なることを確認した。
【0100】
(電解質層112のMn被毒についての評価)
各サンプル(マンガン飛散抑制膜154d)について、当該サンプルを組み付けた燃料電池スタック100を用いて次の2つの耐久試験を行った。
「緩い条件の耐久試験」:各サンプルを850℃で1000時間(燃料利用率は82%、電流密度は0.47A/cm)の条件で燃料電池スタック100を作動させた後の単セル110について、電解質層112におけるクラックの発生の有無を確認した。
「厳しい条件の耐久試験」:各サンプルを850℃で2000時間(燃料利用率は82%、電流密度は0.47A/cm)の条件で燃料電池スタック100を作動させた後の単セル110について、電解質層112におけるクラックの発生の有無を確認した。
【0101】
なお、電解質層112におけるクラックの発生の有無の確認は、単セル110を、電解質層112の断面が露出するように切断し、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面画像を観察することにより行った。
【0102】
各サンプルについて、厳しい条件の耐久試験で電解質層112にクラックが発生しなかった場合に「特に良い(A)」と評価し、(厳しい条件の耐久試験で電解質層112にクラックが発生したが)緩い条件の耐久試験では電解質層112にクラックが発生しなかった場合に「良い(B)」と評価し、緩い条件の耐久試験で電解質層112にクラックが発生した場合に「不合格(C)」と評価した。
【0103】
その結果、図12に示すように、サンプルSA1,SA2は「特に良い(A)」、サンプルSA3は「良い(B)」、サンプルSA4は「不合格(C)」という評価結果となった。
【0104】
ここで、サンプルSA1,…,SA3では、Mn濃度の平均値Caが21.0mass%以下であるのに対し、サンプルSA4では、Mn濃度の平均値Caが21.0mass%より高い。この結果から、Mn濃度の平均値Caが21.0mass%以下である構成においては、Mn濃度の平均値Caが21.0mass%より高い構成と比較して電解質層112のMn被毒が抑制され、ひいては電解質層112におけるクラックの発生を抑制することができることが確認された。
【0105】
また、サンプルSA1,SA2では、Mn濃度の平均値Caが16.0%以下であるのに対し、サンプルSA3では、Mn濃度の平均値Caが16.0%より高い。この結果から、Mn濃度の平均値Caが16.0mass%以下である構成においては、より効果的に、電解質層112のMn被毒が抑制され、ひいては電解質層112におけるクラックの発生を抑制できることが確認された。
【0106】
(燃料極116のCr被毒についての評価)
各サンプル(マンガン飛散抑制膜154d)について、上記の耐久試験と同様に、当該サンプルを組み付けた燃料電池スタック100を850℃で2000時間(燃料利用率は82%、電流密度は0.47A/cm)の条件で作動させた後に、単セル110を、燃料極116の表面を含むように切断し、蛍光X線分析(XRF)を行った結果、Crが検出されなかった場合に「特に良い(A)」と評価し、検出されたCrの量が0.5mass%未満であった場合に「良い(B)」と評価し、検出されたCrの量が0.5mass%以上であった場合に「不合格(C)」と評価した。
【0107】
その結果、図12に示すように、サンプルSA1,SA2は「特に良い(A)」、サンプルSA3は「良い(B)」、サンプルSA4は「不合格(C)」という評価結果となった。
【0108】
ここで、サンプルSA1,…,SA3では、Mn濃度のばらつきCdが16.0mass%以下であるのに対し、サンプルSA4では、Mn濃度のばらつきCdが16.0massより高い。この結果から、Mn濃度のばらつきCdが16.0mass%以下である構成においては、Mn濃度のばらつきCdが16.0massより高い構成と比較して(電解質層112のMn被毒と)燃料極116のCr被毒とを抑制することができることが確認された。
【0109】
また、サンプルSA1,SA2では、Mn濃度のばらつきCdが9.0mass以下であるのに対し、サンプルSA3では、Mn濃度のばらつきCdが9.0mass%より高い。この結果から、Mn濃度のばらつきCdが9.0mass%以下である構成においては、より効果的に、(電解質層112のMn被毒と)燃料極116のCr被毒とが抑制され、ひいては電解質層112におけるクラックの発生を抑制できることが確認された。
【0110】
なお、本第4変形形態では、マンガン飛散抑制膜154dは、条件Aから条件Dまでの全てを満たしているが、条件Aまたは条件Cを満たしていれば、他の条件の少なくとも1つを満たしていなくてもよい。本第4変形形態では、マンガン飛散抑制膜154dは、上記のように行うX線回析法によってMnOが同定されないものであるが、上記のように行うX線回析法によってMnOが同定されるものであってもよい。本第4変形形態では、燃料電池スタック100に含まれるすべての発電単位102のインターコネクタ150にマンガン飛散抑制膜154dが形成されているが、一部の発電単位102のみにおいてインターコネクタ150にマンガン飛散抑制膜154dが形成されていてもよい。本第4変形形態では、マンガン飛散抑制膜154dに隣接する部分APは金属材料からなるが、金属材料以外の材料により形成されていてもよい。また、本第4変形形態では、インターコネクタ150の当該部分APは、その結晶粒界にNbまたはTiを含む酸化物相を含むが、このような組成でないものであってもよい。
【0111】
また、本第4変形形態において、マンガン飛散抑制膜154dは、Mnと、Si,Al,TiおよびSから選択される少なくとも1つの元素との化合物を含んでもよい。例えば、マンガン飛散抑制膜154dは、MnとSiとの化合物を含んでもよい。MnとSiとの化合物は、MnSiO(珪酸マンガン)、またはMnSiOに含まれるMnとSiの少なくとも一方の一部が他の元素で置換された化合物である。なお、Siは特許請求の範囲における特定元素の一例であり、MnとSiとの化合物は特許請求の範囲における特定化合物の一例である。
【0112】
このような構成によれば、マンガン飛散抑制膜154dがMnを含むものでありながら、マンガン飛散抑制膜154dに含まれるMnがガス中に飛散することが抑制され、燃料室176におけるMn蒸気圧の上昇を抑制することができ、これにより、単セル110の性能を向上させることができる。これは、Mnが特定化合物(Mnと特定元素(Si)との化合物)となることにより、ガス中に飛散しにくくなるからである。なお、マンガン飛散抑制膜145dが、Mnと、Si,Al,TiおよびSから選択される少なくとも1つの元素との化合物を含む構成を、条件A~Dを満たさないマンガン飛散抑制膜に適用してもよい。
【0113】
Mnと、Si,Al,TiおよびSから選択される少なくとも1つの元素との化合物を含むマンガン飛散抑制膜154dは、Crを含んでもよい。この構成によれば、マンガン飛散抑制膜154dにCrが形成される。そのため、マンガン飛散抑制膜154dの表面に形成されるMnと特定元素(Si)の化合物を核として、Mn蒸気圧が低いMnとCrの化合物((Cr、Mn)等)を形成され、これにより、Mnが燃料室176に飛散することが更に抑制される。従って、この構成によれば、より効果的に、燃料室176におけるMn蒸気圧の上昇を抑制することができ、これにより単セル110の性能を向上させることができる。
【0114】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0115】
上記実施形態(または変形例、以下同様)において、電極接続部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接合材を介して接触している構成であってもよい。また、上記実施形態において、インターコネクタ接続部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接合材を介して接触している構成であってもよい。
【0116】
また、上記実施形態では、燃料極側集電体144のインターコネクタ接続部146と電極接続部145と連接部147とは一体の部材により構成されているが、インターコネクタ接続部146と電極接続部145と連接部147との何れかまたはすべてが別体の部材により構成されていてもよい。
【0117】
上記実施形態では、燃料極側集電体144が金属箔により形成される構成であったが、燃料極側集電体144がメッシュ状の金属材料により形成される構成であってもよい。この場合、燃料極116表面のうち、メッシュ状の金属材料の線材と接触している部分が、特許請求の範囲における集電領域の一例であり、燃料極116表面のうちメッシュ状の金属材料の線材と接していない部分が非集電領域の一例である。
【0118】
上記実施形態では、インターコネクタ150と、インターコネクタ150と単セル110とを電気的に接続する接続部として機能する燃料極側集電体144とが別体であったが、インターコネクタ150と接続部とが一体形成された構成でもよい。
【0119】
また、上記実施形態では、燃料電池スタック100に含まれる全ての複合体について、インターコネクタ150の非接触領域153B(対向領域153C)がマンガン飛散抑制膜154に覆われている構成であったが、少なくとも1つの複合体について、インターコネクタ150の非接触領域153B(対向領域153C)がマンガン飛散抑制膜154に覆われている構成であれば、インターコネクタ150の形成材料に由来するMnの飛散に起因する燃料電池スタック100の発電性能の低下を抑制することができる。また、マンガン飛散抑制膜154は、金属材料で形成されている場合、金属箔に限らず、例えばメッシュであってもよい。さらに、メッシュ状の金属材料がマンガン飛散抑制膜154と燃料極側集電体との両機能を兼ねていてもよい。この場合、燃料極116の表面のうち、メッシュ状の金属材料の線材と接触している部分が、特許請求の範囲における集電領域の一例であり、燃料極116の表面のうち、メッシュ状の金属材料の線材と接していない部分が非集電領域の一例である。
【0120】
上記実施形態では、インターコネクタ150の上面153のうち、非接触領域153Bだけでなく、接触領域153Aも、一体のマンガン飛散抑制膜154に覆われている構成であったが、非接触領域153Bだけがマンガン飛散抑制膜154に覆われている構成でもよい。また、上記実施形態および変形例では、インターコネクタ150の非接触領域153B(対向領域153C)の全体がマンガン飛散抑制膜154に覆われている構成であったが、インターコネクタ150の非接触領域153B(対向領域153C)の少なくとも一部がマンガン飛散抑制膜154に覆われている構成であれば、非接触領域153B(対向領域153C)が全くマンガン飛散抑制膜154に覆われていない構成に比べて、インターコネクタ150の形成材料に由来するMnの飛散に起因する燃料電池スタック100(単セル110、複合体)の発電性能の低下を抑制することができる。なお、インターコネクタ150の非接触領域153B(対向領域153C)の一部がマンガン飛散抑制膜154に覆われている構成では、次の条件1~3の少なくとも1つを満たすことにより、同条件を満たさない構成に比べて、インターコネクタ150の形成材料に由来するMnの飛散に起因する燃料電池スタック100の発電性能の低下を、より効果的に抑制することができる。
条件1:インターコネクタ150の非接触領域153B(対向領域153C)のうち、60%以上の領域が、マンガン飛散抑制膜154に覆われていること。
条件2:インターコネクタ150の非接触領域153B(対向領域153C)のうち、相対的に温度が高い領域が、マンガン飛散抑制膜154に覆われていること。特にMnの拡散が顕著な高温領域においてMnの拡散を抑制することにより、全体として効果的にMnの拡散を抑制することができる。
条件3:インターコネクタ150の非接触領域153B(対向領域153C)のうち、燃料ガスFGの流路の上流側(燃料ガス供給連通孔142側)の領域が、マンガン飛散抑制膜154に覆われていること。上流側のMnの飛散を抑制することにより、下流側でのMnの単セル110への付着を抑制することができる。
なお、インターコネクタ150の上面153のうち、燃料極側フレーム140と上下方向において重なる部分には、マンガン飛散抑制膜154は形成されていなくてもよい。また、インターコネクタ150の上面153における外周側部分には、アルミナの酸化被膜を形成するアルミ二ウムを含有するセパレータが接合されていてもよい。
【0121】
図13は、変形例の性能評価結果を示す説明である。複数の発電単位102のサンプルを用いて行った性能評価について説明する。図13に示すように、各サンプル(S1~S6)は、上記実施形態の発電単位102に対して、マンガン飛散抑制膜154がNi箔であり、かつ、インターコネクタ150の非接触領域153B(対向領域153C)に対するマンガン飛散抑制膜154の被覆割合(非接触領域153B(対向領域153C)の全面積に対する、マンガン飛散抑制膜154に覆われた領域の面積の割合(%))が互いに異なるものである。
【0122】
各サンプルについて、700℃で1000時間発電したときにおける電解質層112のクラックの発生の有無を観察する第1の試験と、700℃で2000時間発電したときにおける電解質層112のクラックの発生の有無を観察する第2の試験とを行った。クラックの有無は、電解質層112の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影したSEM画像を観察することにより行った。
【0123】
図13に示す第1の試験結果によれば、マンガン飛散抑制膜154の被覆割合が0%であるサンプルS1では、電解質層112にクラックが発生したが、マンガン飛散抑制膜154の被覆割合が0%より高いサンプルS2~S6では、電解質層112にクラックが発生しなかった。これらの結果から、インターコネクタ150の非接触領域153B(対向領域153C)の少なくとも一部をマンガン飛散抑制膜154で覆うことにより、インターコネクタ150の形成材料に由来するMnが燃料室176に飛散することを抑制することができることが分かる。また、図13に示す第2の試験結果によれば、マンガン飛散抑制膜154の被覆割合が60%未満であるサンプルS1~S3では、電解質層112にクラックが発生したが、マンガン飛散抑制膜154の被覆割合が60%以上であるサンプルS4~S6では、電解質層112にクラックが発生しなかった。これらの結果から、マンガン飛散抑制膜154の被覆割合が60%以上であれば、インターコネクタ150の形成材料に由来するMnが燃料室176に飛散することを、より効果的に抑制することができることが分かる。
【0124】
上記実施形態では、燃料極側集電体144の先端部148は、スペーサー149の全長にわたって延びつつ、マンガン飛散抑制膜154に接触した構成であったが、燃料極側集電体144の一部に先端部148が設けられ、その先端部148の一部がマンガン飛散抑制膜154に接触した構成であっても、燃料極側集電体144の上面146Aに形成された酸化被膜152からMnが燃料室176に飛散することを抑制することができる。
【0125】
上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。例えば、マンガン飛散抑制膜154は、Al、Ti、Mg、S、Zr、Hf、Nb、Y、および、Ceの少なくとも1種を含む酸化物により形成されたコーティング膜であってもよい。このようなセラミックス系の酸化物でも、飛散したMnとの固溶体が形成されてMn蒸気圧が低下するため、インターコネクタ150の形成材料に由来するMnが燃料室176に飛散することを、より効果的に抑制することができる。なお、コーティング膜の形成方法の例は次の通りである。アルミナペーストをインターコネクタ150の上面153に印刷して焼成することによりパターンを形成し、900℃以上、1100℃以下の温度で約2時間焼成することにより、マンガン飛散抑制膜としてのコーティング膜を生成することができる。その後、レーザ加工により、インターコネクタ150の接触領域153Aに形成されたコーティング部分を除去し、その除去後の接触領域153A上に燃料極側集電体144を配置する。
【0126】
上記実施形態において、燃料極116における電解質層112とは反対側の表面(例えば上記非集電領域117B)の少なくとも一部に、Mnと固溶体を形成するNiを含むNi層を形成してもよい。これにより、電解質層112へのMnの飛散を抑制することができる。また、当該Ni層の形状は、所定範囲を隙間なく覆う膜状でもよいが、燃料室176を流れる燃料ガスFGが均等に燃料極116内に拡散するようにメッシュ状でもよい。なお、これらのNi層は、例えば、Niを含むペーストを燃料極116の上記表面に印刷し、焼き付けを行うことにより形成することができる。
【0127】
上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。
【0128】
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(SOEC)の最小単位である電解セル単位や、複数の電解セル単位を備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016-81813号に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替えればよい。
【0129】
本発明は、金属支持型(メタルサポート型)の単セルを備える複合体や電気化学反応セルスタックにも適用可能である。金属支持型の単セルは、燃料極と空気極との一方に対して電解質層とは反対側に配置された金属支持体を備え、金属支持体によって単セルにおける他の部分(空気極、固体電解質、燃料極など)を支持する。金属支持型の単セルを備える複合体等の適用例は、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。この場合、燃料極の表面のうち、金属支持体と接触している領域が、特許請求の範囲における集電領域の一例であり、燃料極の表面のうち、金属支持体に形成された貫通孔から露出している領域が、特許請求の範囲における非集電領域の一例である。インターコネクタ150の表面のうち、金属支持体に形成された貫通孔の直下の領域が、特許請求の範囲における対向領域の一例である。
【符号の説明】
【0130】
24:ナット 26:絶縁シート 27:ガス通路部材 28:本体部 29:分岐部 100:燃料電池スタック 102,102a~102d:発電単位 104,106:エンドプレート 108:連通孔 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 117:下面 117A:集電領域 117B:非集電領域 120:セパレータ 121:孔 124:接合部 130:空気極側フレーム 131:孔 132:酸化剤ガス供給連通孔 133:酸化剤ガス排出連通孔 134:空気極側集電体 140:燃料極側フレーム 141:孔 142:燃料ガス供給連通孔 143:燃料ガス排出連通孔 144,114d:燃料極側集電体 145,145d:電極接続部 145A:突出部 146,146d:インターコネクタ接続部 146A:上面 147:連接部 148:先端部 149,149d:スペーサー 149c:第2のスペーサー 150:インターコネクタ 151:接合部 152:酸化被膜 153:上面 153A:接触領域 153B:非接触領域 153C:対向領域 153D:非対向領域 154,154d:マンガン飛散抑制膜 161:酸化剤ガス供給マニホールド 162:酸化剤ガス排出マニホールド 166:空気室 171:燃料ガス供給マニホールド 172:燃料ガス排出マニホールド 176:燃料室 200,200b:金属箔 210,210b:第1の箔部分 220:第2の箔部分 FG:燃料ガス FOG:燃料オフガス OG:酸化剤ガス OOG:酸化剤オフガス U:空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13