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特許7544157無機粒子含有ペースト、無機粒子含有膜、及び積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】無機粒子含有ペースト、無機粒子含有膜、及び積層体
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240827BHJP
   C08G 63/08 20060101ALI20240827BHJP
   C08G 64/02 20060101ALI20240827BHJP
   C08K 7/18 20060101ALI20240827BHJP
   C08L 1/08 20060101ALI20240827BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H01G4/30 515
H01G4/30 516
H01G4/30 201Z
C08G63/08
C08G64/02
C08K7/18
C08L1/08
C08K3/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022579372
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(86)【国際出願番号】 JP2021045897
(87)【国際公開番号】W WO2022168446
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2021015277
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】塩田 準
(72)【発明者】
【氏名】吾郷 友樹
(72)【発明者】
【氏名】木南 信之
(72)【発明者】
【氏名】鶴 明大
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-182128(JP,A)
【文献】国際公開第2015/40924(WO,A1)
【文献】特開平9-278833(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/135170(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
C08G 63/08
C08G 64/02
C08K 7/18
C08L 1/08
C08K 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐型ポリマーと、無機粒子と、分散剤と、有機溶媒とを含み、
前記分岐型ポリマーの分子鎖が、セルロース系ポリマーからなる主鎖と、脂肪族ポリカーボネート、又は脂肪族ポリエステルからなる枝鎖とを有し、
前記枝鎖は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、
前記枝鎖は、2以上の前記主鎖に結合して2以上の前記主鎖を架橋してもよく、
前記分散剤が、ポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、及びポリカーボネート鎖からなる群より選択される少なくとも1種を有し、
前記無機粒子として金属粒子を含み、前記金属粒子を構成する金属が、Ni、Cu、Ag、及びAuからなる群より選択される少なくとも1種である、
無機粒子含有ペースト。
【請求項2】
前記セルロース系ポリマーが、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、及びセルロースアセテートからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の無機粒子含有ペースト。
【請求項3】
前記無機粒子として、さらにセラミック粒子を含み、前記セラミック粒子を構成する材料が、Ba、Ti、Sr、Ca、及びZrからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項、又はに記載の無機粒子含有ペースト
【請求項4】
前記有機溶媒が、エステル系溶媒を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の無機粒子含有ペースト。
【請求項5】
分岐型ポリマーの体積と前記無機粒子の体積との合計に対する、前記分岐型ポリマーの体積の比率が、17体積%以上29体積%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の無機粒子含有ペースト。
【請求項6】
分岐型ポリマーと、無機粒子と、分散剤とを含み、
前記分岐型ポリマーの分子鎖が、セルロース系ポリマーからなる主鎖と、脂肪族ポリカーボネート、又は脂肪族ポリエステルからなる枝鎖とを有し、
前記枝鎖は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、
前記枝鎖は、2以上の前記主鎖に結合して2以上の前記主鎖を架橋してもよく、
前記分散剤が、ポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、及びポリカーボネート鎖からなる群より選択される少なくとも1種を有し、
前記無機粒子が金属粒子を含み、焼成されることにより積層セラミック電子部品における内部電極層を与える導電性シートである、
無機粒子含有膜。
【請求項7】
少なくとも1層が、請求項に記載の無機粒子含有膜からなる積層体。
【請求項8】
焼成されることにより誘電体層を与えるグリーンシートと、焼成されることにより内部電極層を与える導電性シートとが積層されており、
前記導電性シートが、請求項に記載の前記無機粒子含有膜であり、
積層セラミック電子部品の製造に用いられる、請求項7に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機粒子含有ペーストと、当該無機粒子含有ペーストを用いて形成され得る無機粒子含有膜と、前述の無機粒子含有膜を含む積層体とに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の無機粒子を含有する膜が、種々の用途において使用されている。かかる膜を形成する方法としては、無機粒子を含むペーストが用いる方法が知られている。無機粒子を含むペーストを、塗布や印刷等の方法により製膜し、形成された膜を硬化させたり乾燥させたりすることにより、無機粒子を含有する膜を形成できる。
【0003】
無機粒子含有膜の体表的な用途としては、積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品を製造するために用いられる積層体が知られている。かかる積層体においては、通常、セラミック粉末を含むグリーンシートと、金属粒子を含む内部電極層の前駆膜とが積層されている。
【0004】
例えば、焼成により内部電極層を与える導電性シートを形成するための導電性ペーストとしては、金属粒子と、バインダー樹脂としてのエチルセルロースとを含む導電性ペーストが提案されている(特許文献1を参照。)。エチルセルロースは、有機溶媒への溶解性や焼成時の分解性に優れるとともに、印刷特性が良好な導電性ペーストを与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-168238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
積層セラミック電子部品を製造する際には、焼成されることで内部電極層を与える導電性シートとグリーンシートとを含む積層体を押切り等の方法により所定のサイズに切断して分割した後、分割された積層体を焼成する場合がある。しかし、エチルセルロースをバインダー樹脂として含む導電性ペーストを用いて形成された導電性シートを含む積層体を用いる場合、積層体を面方向に対して垂直又は略垂直方向に切断する際に切断面にかかるせん断力等の作用によって、層間剥離や凝集破壊による層内剥離が生じやすい問題がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、無機粒子含有膜を積層して得られた積層体を小片化するために切断する場合に、せん断力等の作用による他の層との層間剥離や凝集破壊による層内剥離を生じさせにくい無機粒子含有膜を与える無機粒子含有ペーストと、当該無機粒子含有ペーストを用いて形成され得る無機粒子含有膜と、前述の無機粒子含有膜を含む積層体とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、バインダー樹脂と、無機粒子と、有機溶媒とを含む無機粒子含有ペーストにおいて、セルロース系ポリマーからなる主鎖と、脂肪族ポリカーボネート、又は脂肪族ポリエステルからなる枝鎖とを有する分子鎖を有する分岐型ポリマーと、ポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、及びポリカーボネート鎖からなる群より選択される少なくとも1種を有する分散剤とを組み合わせて用いることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下の(1)~(3)を提供する。
【0009】
(1)分岐型ポリマーと、無機粒子と、分散剤と、有機溶媒とを含み、
分岐型ポリマーの分子鎖が、セルロース系ポリマーからなる主鎖と、脂肪族ポリカーボネート、又は脂肪族ポリエステルからなる枝鎖とを有し、
枝鎖は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、
枝鎖は、2以上の前記主鎖に結合して2以上の前記主鎖を架橋してもよく、
分散剤が、ポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、及びポリカーボネート鎖からなる群より選択される少なくとも1種を有する、無機粒子含有ペースト。
【0010】
(2)分岐型ポリマーと、無機粒子と、分散剤とを含み、
分岐型ポリマーの分子鎖が、セルロース系ポリマーからなる主鎖と、脂肪族ポリカーボネート、又は脂肪族ポリエステルからなる枝鎖とを有し、
枝鎖は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、
枝鎖は、2以上の前記主鎖に結合して2以上の前記主鎖を架橋してもよく、
分散剤が、ポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、及びポリカーボネート鎖からなる群より選択される少なくとも1種を有する、無機粒子含有膜。
【0011】
(3)少なくとも1層が、(2)に記載の無機粒子含有膜からなる積層体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、積層した場合に、せん断力等の作用による他の層との層間剥離を生じさせにくい無機粒子含有膜を与える無機粒子含有ペーストと、当該無機粒子含有ペーストを用いて形成され得る無機粒子含有膜と、前述の無機粒子含有膜を含む積層体とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
≪無機粒子含有ペースト≫
無機粒子含有ペーストは、分岐型ポリマーと、無機粒子と、分散剤と、有機溶媒とを含む。
分岐型ポリマーの分子鎖は、主鎖と枝鎖とを有する。主鎖は、セルロース系ポリマーからなる。枝鎖は、脂肪族ポリカーボネート、又は脂肪族ポリエステルからなる。枝鎖は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。枝鎖は、2以上の主鎖に結合して2以上の主鎖を架橋してもよい。
分散剤は、ポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、及びポリカーボネート鎖からなる群より選択される少なくとも1種を有する。
【0014】
無機粒子と有機溶媒とを含む無機粒子含有ペーストにおいて、上記の特定の構造の分岐型ポリマーと、特定の構造の鎖を有する分散剤とを組み合わせて用いることにより、無機粒子含有ペーストが、無機粒子含有膜を積層して得られた積層体を小片化するために切断する場合に、せん断力等の作用による他の層との層間剥離や、凝集破壊による層内剥離を生じさせにくい無機粒子含有膜を与える。
【0015】
以下、無機粒子含有ペーストが含んでいてもよい、必須、又は任意の成分について説明する。
【0016】
<分岐型ポリマー>
分岐型ポリマーは、その分子鎖において、主鎖と枝鎖とを有する。主鎖は、セルロース系ポリマーからなる。枝鎖は、脂肪族ポリカーボネート、又は脂肪族ポリエステルからなる。
枝鎖は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。枝鎖は、2以上の主鎖に結合して2以上の主鎖を架橋してもよい。
上記の分岐型ポリマーと、後述する分散剤とを組み合わせて用いることにより、無機粒子含有膜を積層して得られた積層体を小片化するために切断する場合に、せん断力等の作用による他の層との層間剥離や、凝集破壊による層内剥離を生じさせにくい無機粒子含有膜を与える無機粒子含有ペーストが得られる。
【0017】
分岐型ポリマーにおいて、主鎖の質量に対する、枝鎖の質量の比率であるグラフト率は、所望する効果が損なわれない範囲で特に限定されない。無機粒子含有ペーストを用いて形成された無機粒子含有膜を積層して得られた積層体を小片化するために切断する場合に、せん断力等の外力による層間剥離や、凝集破壊による層内剥離の発生を抑制しやすい点から、グラフト率は、10質量%以上400質量%以下が好ましく、50質量%以上250質量%以下がより好ましい。
グラフト率は、核磁気共鳴分光分析(NMR分析)により求めることができる。
【0018】
分岐型ポリマーの質量平均分子量は特に限定されない。分岐型ポリマーの質量平均分子量は、例えば、50,000以上1,000,000以下が好ましく、100,000以上600,000以下がより好ましい。分岐型ポリマーの質量平均分子量がかかる範囲内であると、分岐型ポリマーの、強度、伸び、及び靭性等の機械的特性や成形性が良好である。
【0019】
以下、主鎖、枝鎖、及び分岐型ポリマーの製造方法について説明する。
【0020】
(主鎖)
分岐型ポリマーは、セルロース系ポリマーからなる主鎖を有する。セルロース系ポリマーの種類は、セルロース系ポリマーの主鎖が、枝鎖が結合し得る官能基を有する限り特に限定されない。
セルロース系ポリマーの好適な具体例としては、セルロース;メチルセルロース、エチルセルロース、n-プロピルセルロース、イソプロピルセルロース、n-ブチルセルロース、tert-ブチルセルロース、及びn-ヘキシルセルロース等のアルキルセルロース;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシブチルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース;セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、及びセルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル;カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、及びカルボキシプロピルセルロース等のカルボキシアルキルセルロース;ニトロセルロース、アルデヒドセルロース、ジアルデヒドセルロース、及びスルホン化セルロース等のセルロース誘導体等が挙げられる。
分岐型ポリマーは、異なる種類のセルロース系ポリマーを主鎖として有する2種以上の分岐型ポリマー分子を含んでいてもよい。
【0021】
分岐型ポリマーの製造が容易で、無機粒子含有ペーストを用いて形成された無機粒子含有膜を積層した場合に、外力による層間剥離の発生を抑制しやすい点で、セルロース系ポリマーは、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、及びセルロースエステルからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
上記の好ましいセルロース系ポリマーの中では、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、及びセルロースアセテートからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0022】
セルロース系ポリマーの質量平均分子量は特に限定されない。セルロース系ポリマーの質量平均分子量は、例えば、5,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、100,000以上が特に好ましい。セルロース系ポリマーの質量平均分子量は、1,000,000以下が好ましく、750,000以下がより好ましく、500,000以下がさらに好ましい。
より具体的には、セルロース系ポリマーの分子量は、5,000以上1,000,000以下が好ましく、10,000以上750,000以下がより好ましく、10,000以上750,000以下がより好ましい。
【0023】
セルロース系ポリマーの置換度は、所望する効果が損なわれない範囲で特に限定されない。セルロース系ポリマーの置換度は、2以上3以下が好ましく、典型的には2.5である。
セルロース系ポリマーの置換度は、セルロース系ポリマーの構成単位中の全水酸基のうち、枝鎖以外の基によって置換されている水酸基の総数である。
【0024】
(枝鎖)
分岐型ポリマーは、セルロース系ポリマーからなる主鎖に結合する枝鎖を有する。枝鎖は、脂肪族ポリカーボネート、又は脂肪族ポリエステルからなる。枝鎖は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
典型的には、枝鎖は、1つの主鎖のみに結合する。枝鎖は、2以上の主鎖に結合して、2以上の主鎖を架橋してもよい。
【0025】
枝鎖が、主鎖に結合した状態で形成され得るか、主鎖に結合し得る限り、枝鎖を構成する脂肪族ポリカーボネート、又は脂肪族ポリエステルは、それぞれ特に限定されない。
枝鎖を構成する脂肪族ポリカーボネート、又は脂肪族ポリエステルの典型例については、以下の分岐型ポリマーの製造方法の説明において示す。
【0026】
(分岐型ポリマーの製造方法)
分岐型ポリマーの製造方法は特に制限されない。典型的には、グラフト重合法が採用される。グラフト重合法は、枝鎖の種類に応じて、公知の種々の方法から適宜選択され得る。
【0027】
グラフト重合法としては、例えば、開環重合法を採用できる。環状カーボネート化合物や、ラクトンのような環状エステル化合物を、セルロース系ポリマーの存在下に開環重合させることにより、脂肪族ポリカーボネート、又は脂肪族ポリエステルが、セルロース系ポリマーの分子鎖上に、グラフト鎖として生成する。
【0028】
例えば、環状化合物としてのプロピレンカーボネートは、ポリプロピレンカーボネートからなる枝鎖を与える。環状化合物としてのブチレンカーボネートは、ポリブチレンカーボネートからなる枝鎖を与える。環状化合物としてのシクロヘキセンカーボネートは、ポリシクロヘキセンカーボネートかなる枝鎖を与える。環状化合物としてのトリメチレンカーボネートは、ポリトリメチレンカーボネートからなる枝鎖を与える。環状化合物としての2,2-ジメチルトリメチレンカーボネートは、ポリ(2,2-ジメチルトリメチレンカーボネート)からなる枝鎖を与える。
【0029】
環状化合物としてのε-カプロラクトンは、脂肪族ポリエステルであるポリカプロラクトンからなる枝鎖を与える。環状化合物としてのL-ラクチドは、脂肪族ポリエステルであるL体のポリ乳酸を枝鎖として与える。環状化合物としてのD-ラクチドは、脂肪族ポリエステルであるD体のポリ乳酸を枝鎖として与える。環状化合物としてのメソ-ラクチドは、脂肪族ポリエステルであるシンジオタクチック体のポリ乳酸を枝鎖として与える。環状化合物としてのβ-プロピオラクトンは、脂肪族ポリエステルであるD体のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)を枝鎖として与える。環状化合物としてのβ-ブチロラクトンは、脂肪族ポリエステルであるポリ(3-ヒドロキシ酪酸)を枝鎖として与える。環状化合物としてのγ-ブチロラクトンは、脂肪族ポリエステルであるポリ(4-ヒドロキシ酪酸)を枝鎖として与える。環状化合物としてのδ-バレロラクトンは、脂肪族ポリエステルであるポリ(3-ヒドロキシ吉草酸)を枝鎖として与える。環状化合物としてのp-ジオキサノンは、脂肪族ポリエステルであるポリ(p-ジオキサノン)を枝鎖として与える。
【0030】
典型的には開環重合は触媒の存在下に行われる。開環重合に用いることができる触媒の具体例としては、ナトリウム、及びカリウム等のアルカリ金属;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアルミニウム、アルミニウムトリイソプロポキシド、n-ブチルリチウム、チタンテトライソプロポキシド、四塩化チタン、ジルコニウムテトライソプロポキシド、四塩化スズ、スズ酸ナトリウム、オクタン酸スズ、及びジブチルスズジラウレートジエチル亜鉛等の含金属触媒;ピリジン、4-N,N-ジメチルアミノピリジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBT)等の塩基性有機化合物;塩酸、酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ジフェニルリン酸、及びフェノール等の酸触媒;1,3-ビス(2-プロピル)-4,5-ジメチルイミダゾール-2-イリデン、及び1,3-ジイソプロピルイミダゾール-2-イリデン等のN-ヘテロ環状カルベンが挙げられる。
触媒は、1種単独で使用されても2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0031】
環状カーボネートを用いて開環重合を行う場合、触媒とともに助触媒を用いるのも好ましい。助触媒の具体例としては、N-シクロヘキシル-N’-フェニルチオ尿素、N,N’-ビス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]チオ尿素、N-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-N’-シクロヘキシルチオ尿素、及び(-)-スパルテイン等が挙げられる。
【0032】
開環重合に用いることができる触媒の使用量は、従来知られる開環重合反応における触媒の使用量を勘案して適宜定められる。典型的には、触媒の使用量は、環状化合物1モルに対して0.001モル以上が好ましく、0.005モル以上がより好ましい。触媒の使用量は、環状化合物1モルに対して0.2モル以下が好ましく、0.1モル以下がより好ましい。
より具体的には、触媒の使用量は、環状化合物1モルに対して0.001モル以上0.2モル以下が好ましく、0.005モル以上0.1モル以下がより好ましい。
助触媒の使用量は、触媒の使用量と同様である。
【0033】
開環重合は、溶媒の存在下に行われるのが好ましい。溶媒の種類としては、開環重合反応を阻害しない限り特に限定されない。
溶媒の好適な具体例としては、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、及びシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、及びブロモベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、及びアニソール等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、及び酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶媒が挙げられる。
【0034】
溶媒の使用量は、開環重合反応が良好に進行する限り特に限定されない。溶媒の使用量は、例えば、環状化合物100質量部に対して100質量部以上1000質量部以下が好ましい。
【0035】
典型的には、セルロース系樹脂、環状化合物、及び触媒と、必要に応じて助触媒、及び/又は溶媒等とを反応容器に仕込んだ後、反応容器内の混合物を撹拌することにより開環重合が行われる。
【0036】
開環重合を行う際の好ましい反応温度は、環状化合物、触媒の種類、触媒の使用量等によって異なる。典型的には、開環重合の反応温度は、-80℃以上が好ましく、-40℃以上がより好ましく、0℃以上がさらに好ましい。良好な収率と副反応の抑制との両立の点で、開環重合の反応温度は、250℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましく、150℃以下がさらに好ましい。
より具体的には、反応温度は、-80℃以上250℃以下が好ましく、-40℃以上200℃以下がより好ましく、0℃以上150℃以下がさらに好ましい。
【0037】
開環重合の反応時間は、環状化合物の種類、触媒の種類、触媒の使用量等によって異なる。典型的には、開環重合の反応時間は1時間以上40時間以下が好ましい。
【0038】
開環重合における環状化合物の使用量は、前述のグラフト率を勘案したうえで適宜定められる。
【0039】
分岐型ポリマーの製造方法の他の好ましい例としては、セルロース系樹脂の存在下に、環状エーテルと二酸化炭素との共重合を行う方法が挙げられる。かかる共重合反応によれば、脂肪族ポリカーボネートからなる枝鎖が生成する。セルロース系樹脂については前述の通りである。
【0040】
環状エーテルとしては、枝鎖としての脂肪族ポリカーボネートの対応する環状エーテルが適宜選択される。
環状エーテルの好ましい例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、トリメチレンオキシド(オキセタン)、3,3-ジメチルトリメチレンオキシド(3,3-ジメチルオキセタン)、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1-ペンテンオキシド、2-ペンテンオキシド、1-ヘキセンオキシド、1-オクテンオキシド、1-ドデセンオキシド、シクロペンテンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、ビニルシクロヘキサンオキシド、3-フェニルプロピレンオキシド、3,3,3-トリフルオロプロピレンオキシド、3-ナフチルプロピレンオキシド、2-フェノキシプロピレンオキシド、3-ナフトキシプロピレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、3-ビニルオキシプロピレンオキシド、及び3-トリメチルシリルオキシプロピレンオキシドが挙げられる。
【0041】
上記の環状エーテルの中では、重合反応性に優れることや、無機粒子含有ペーストを用いて形成された無機粒子含有膜を積層した場合に、外力による層間剥離の発生を抑制しやすい分岐型ポリマーが得られることから、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、トリメチレンオキシド、及び1,2-ブチレンオキシドが好ましく、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びトリメチレンオキシドがより好ましい。
【0042】
環状エーテルと二酸化炭素との共重合により生成する脂肪族ポリカーボネートの一例を以下に示す。エチレンオキシドは、ポリエチレンカーボネートを与える。プロピレンオキシドはポリプロピレンカーボネートを与える。トリメチレンオキシドは、ポリトリメチレンカーボネートを与える。
【0043】
環状エーテルと二酸化炭素との共重合は、金属触媒の存在下に行われる。金属触媒の好ましい例としては、亜鉛系触媒、アルミニウム系触媒、クロム系触媒、及びコバルト系触媒等が挙げられる。これらの中では、重合活性の高さから亜鉛系触媒、及びコバルト系触媒が好ましい。
【0044】
亜鉛系触媒の好適な具体例としては、例えば、ジエチル亜鉛-水系触媒、ジエチル亜鉛-ピロガロール系触媒、ビス((2,6-ジフェニル)フェノキシ)亜鉛、N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-3,5-ジ-tert-ブチルサリチルアルドイミナト亜鉛、2-((2,6-ジイソプロピルフェニル)アミド)-4-((2,6-ジイソプロピルフェニル)イミノ)-2-ペンテン酸アセテート、アジピン酸亜鉛、及びグルタル酸亜鉛等が挙げられる。
【0045】
コバルト系触媒の好適な具体例としては、酢酸コバルト-酢酸系触媒、N,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルサリチリデン)-1,2-シクロヘキサンジアミノコバルトアセテート、N,N’-ビス-(3,5-ジ-tert-ブチルサリチリデン)-1,2-シクロヘキサンジアミノコバルトペンタフルオロベンゾエート、N,N’-ビス-(3,5-ジ-tert-ブチルサリチリデン)-1,2-シクロヘキサンジアミノコバルトクロリド、N,N’-ビス-(3,5-ジ-tert-ブチルサリチリデン)-1,2-シクロヘキサンジアミノコバルトナイトレート、N,N’-ビス-(3,5-ジ-tert-ブチルサリチリデン)-1,2-シクロヘキサンジアミノコバルト2,4-ジニトロフェノキシド、テトラフェニルポルフィリンコバルトクロリド、テトラフェニルポルフィリンコバルトアセテート、N,N’-ビス[2-(エトキシカルボニル)-3-オキソブチリデン]-1,2-シクロヘキサンジアミナトコバルトクロリド、及びN,N’-ビス[2-(エトキシカルボニル)-3-オキソブチリデン]-1,2-シクロヘキサンジアミナトコバルトペンタフルオロベンゾエートが挙げられる。
【0046】
コバルト系触媒は、助触媒とともに使用されるのが好ましい。助触媒の具体例としては、ピリジン,4-N,N-ジメチルアミノピリジン、N-メチルイミダゾール、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムアセテート、トリフェニルホスフィン、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムクロリド、及びビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムアセテート等が挙げられる。
【0047】
環状エーテルと二酸化炭素との共重合に用いることができる触媒の使用量は、かかる共重合反応について従来知られている触媒の使用量を勘案して適宜定められる。典型的には、触媒の使用量は、環状エーテル1モルに対して0.001モル以上が好ましく、0.005モル以上がより好ましい。触媒の使用量は、環状エーテル1モルに対して0.2モル以下が好ましく、0.1モル以下がより好ましい。
より具体的には、触媒の使用量は、環状エーテル1モルに対して、0.001モル以上0.2モル以下が好ましく、0.005モル以上0.1モル以下がより好ましい。
助触媒の使用量は、触媒の使用量と同様である。
【0048】
環状エーテルと二酸化炭素との共重合は、溶媒の存在下に行われるのが好ましい。溶媒の種類としては、共重合反応を阻害しない限り特に限定されない。
溶媒の好適な具体例としては、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、及びシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、及びブロモベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、及びアニソール等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、及び酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶媒が挙げられる。
【0049】
溶媒の使用量は、共重合反応が良好に進行する限り特に限定されない。溶媒の使用量は、例えば、環状エーテル100質量部に対して100質量部以上1000質量部以下が好ましい。
【0050】
典型的には、セルロース系樹脂、環状エーテル、及び触媒と、必要に応じて助触媒、及び/又は溶媒等とを反応容器に仕込んだ後、反応容器内に二酸化炭素を圧入した後、反応容器内の混合物を撹拌することにより共重合が行われる。
【0051】
共重合を行う際の、環状エーテル、及び二酸化炭素の使用量は、前述のグラフト率を勘案したうえで適宜定められる。
共重合を行う際の、反応容器内の二酸化炭素の圧力は、良好な反応の進行の点から、反応温度におけるゲージ圧として0.1MPa以上が好ましく、0.2MPa以上がより好ましく、0.5MPa以上がさらに好ましい。耐圧性能が高い高価な耐圧容器を用いる必要性が無い点や、作業の安全性の点から、反応容器の内の二酸化炭素の圧力は、20MPa以下が好ましく、10MPa以下がより好ましく、5MPa以下であってもよい。
より具体的には、反応溶液内の二酸化炭素の圧力は、ゲージ圧として、0.1MPa以上20MPa以下が好ましく、0.2MPa以上10MPa以下がより好ましく、0.5MPa以上5MPa以下がさらに好ましい。
共重合反応は、二酸化炭素の超臨界条件で行われてもよい。
【0052】
共重合を行う際の好ましい反応温度は、環状エーテルの種類、触媒の種類、触媒の使用量等によって異なる。典型的には、共重合の反応温度は、0℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、30℃以上がさらに好ましい。良好な収率と副反応の抑制との両立の点で、共重合の反応温度は、100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、60℃以下がさらに好ましい。
上記の点で、共重合の反応温度は、0℃以上100℃以下が好ましく、20℃以上80℃以下がより好ましく、30℃以上60℃以下がさらに好ましい。
【0053】
共重合の反応時間は、環状エーテルの種類、触媒の種類、触媒の使用量等によって異なる。典型的には、開環重合の反応時間は1時間以上40時間以下が好ましい。
【0054】
開環重合における環状化合物の使用量は、前述のグラフト率を勘案したうえで適宜定められる。
【0055】
枝鎖が、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート等の、脂肪族ジカルボン酸とグリコール類とが重縮合した脂肪族ポリエステルからなる場合、セルロール系樹脂の存在下に、脂肪族ポリエステルの構造に応じた脂肪族ジカルボン酸とグリコール類とを、常法に従って共重縮合することによっても、分岐型ポリマーを製造することができる。
【0056】
無機粒子含有ペーストにおける、分岐型ポリマーの使用量は、所望する効果が損なわれない限りにおいて特に限定されない。
例えば、分岐型ポリマーの体積と無機粒子の体積との合計に対する、分岐型ポリマーの体積の比率が、17体積%以上29体積%以下であるのが好ましく、19体積%以上27体積%以下であるのがより好ましい。
【0057】
<無機粒子>
無機粒子含有ペーストは、無機粒子を含む。無機粒子としては、従来から種々の樹脂組成物に添加されている無機粒子を特定に制限なく用いることができる。
無機粒子としては、典型的には、セラミック粒子、及び/又は金属粒子が好ましい。
【0058】
無機粒子含有ペーストを用いて形成される無機粒子含有膜の好適な例としては、積層セラミック電子部品の前駆体として有用な積層体を構成する、金属粒子を含み、内部電極層を与える導電性シートや、セラミック粒子を含むグリーンシート等が挙げられる。
【0059】
無機粒子含有ペーストを用いて、積層セラミック電子部品における誘電体層を与えるグリーンシートを形成する場合、セラミック粒子が、無機粒子として使用される。
無機粒子含有ペーストを用いて、積層セラミック電子部品における内部電極層を与える電極シートを形成する場合、グリーンシートと電極シートとの親和性や、誘電体層と内部電極層の密着性の点で、無機粒子が金属粒子とセラミック粒子とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0060】
セラミック粒子について、その構成材料が、Ba、Ti、Sr、Ca、及びZrからなる群より選択される少なくとも1種を含むのが好ましい。
セラミック粒子の好ましい具体例としては、チタン酸バリウム粒子、チタン酸カルシウム粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、及びジルコン酸チタン酸鉛粒子等が挙げられる。
セラミック粒子としては、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、チタン酸バリウム粒子を主成分として、Ca、Zr、又はSrを含む構成成分を副成分として含むセラミック粒子を用いてもよい。
【0061】
セラミック粒子の粒子径は、所望する効果が損なわれない限り特に限定されない。セラミック粒子の平均粒子径は、BET換算法による平均粒子径として3nm以上500nm以下が好ましい。
【0062】
無機粒子含有ペーストを用いて、積層セラミック電子部品における内部電極層を与える導電性シートを形成する場合、無機粒子として金属粒子が好ましい。
金属粒子を構成する金属としては、Ni、Cu、Ag、及びAuからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
金属粒子の平均粒子径は、所望する効果が損なわれない限り特に限定されない。金属粒子の平均粒子径は、SEM径として3000nm以下が好ましく、30nm以上1000nm以下がより好ましい。
金属粒子は、2種以上の金属粒子を含んでいてもよい。金属粒子は、2種以上の金属を含む合金の粒子であってもよい。
【0063】
無機粒子が、セラミック粒子と金属粒子とを組み合わせて含む場合、セラミック粒子の質量が、金属粒子の質量に対して4質量%以上25質量%以下であるのが好ましい。
【0064】
<分散剤>
無機粒子含有ペーストは、分散剤を含む。分散剤は、ポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、及びポリカーボネート鎖からなる群より選択される少なくとも1種を有する。
分散剤が、ポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、又はポリカーボネート鎖を有することにより、分散剤が、脂肪族ポリカーボネート、又は脂肪族ポリエステルからなる枝鎖を有する分岐型ポリマーと馴染みやすい。
【0065】
ポリエステル鎖、及びポリカーボネート鎖としては、分岐型ポリマーの枝鎖として説明したポリエステル鎖、及びポリカーボネート鎖が挙げられる。
ポリエーテル鎖としては、ポリオキシアルキレン鎖が好ましい。ポリオキシアルキレン鎖の好ましい例としては、ポリオキシエチレン鎖、及びポリオキシプロピレン鎖が挙げられる。
【0066】
分散剤は、分散効果の点で、疎水性基を有するのが好ましい。疎水性基の好適な例としては、炭化水素基やフッ素化炭化水素基が挙げられ、脂肪族炭化水素基、及び脂肪族フッ素化炭化水素基がより好ましい。
【0067】
分散剤は、分散効果の点で、無機粒子の表面に結合し得る、カルボキシ基、アミノ基、リン酸基、スルホン酸基等の吸着性基を有するのが好ましい。
【0068】
分散剤の分子量は、所望する効果が損なわれない範囲において特に限定されない。分散剤は、所謂低分子化合物であってもよく、ポリマー型の分散剤であってもよい。分散剤に上記の種々の官能基を持たせる分子設計が容易である点では、分散剤としてはポリマー型の分散剤が好ましい。
ポリマー型の分散剤としては、例えば、炭化水素鎖のような疎水鎖を有する(メタ)アクリル系モノマーと、ポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、及びポリカーボネート鎖のような親水鎖を有する(メタ)アクリル系モノマーとを共重合したくし型構造の(メタ)アクリル樹脂を好適に用いることができる。公知の(メタ)アクリル樹脂に、側鎖として上記の疎水鎖、及び親水鎖が導入されたくし型構造の(メタ)アクリル樹脂も、ポリマー型の分散剤として好ましく使用される。
【0069】
分散剤の使用量は、分散対象とする粒子の表面積に対して0.5mg/m~5mg/mが好ましく、1.0mg/m~2.5mg/mがより好ましい。
【0070】
<その他の成分>
無機粒子含有ペーストは、所望する効果が損なわれない限りにおいて、上記の成分以外のその他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、例えば、可塑剤、及び帯電防止剤からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤が挙げられる。
その他の成分の使用量は、所望する効果が損なわれない限り特に限定されない。その他の成分の使用量は、上記の添加剤の種類に応じた通常使用され得る量を考慮して適宜決定される。
【0071】
<有機溶媒>
無機粒子含有ペーストは、有機溶媒を含む。有機溶媒の好適な例としては、イソプロパノール等のアルカノール類;トルエン、キシレン、及びイソホロン等の炭化水溶系溶媒;ターピネオール、及びジヒドロターピネオール等のターピネオール系溶媒;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸n-ヘキシル、酢酸n-ヘプチル、酢酸n-オクチル、ターピネオールアセテート、及びジヒドロターピネオールアセテート等のエステル系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、及びジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエステル系溶媒;ジメチルカーボネート、及びプロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、及びシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチル-2-ピロリドン等の含窒素極性有機溶媒等が挙げられる。
【0072】
これらの溶媒の中では、分岐型ポリマーや、分散剤との親和性が良好であることから、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸n-ヘキシル、酢酸n-ヘプチル、酢酸n-オクチル、ターピネオールアセテート、及びジヒドロターピネオールアセテート等のエステル系溶媒やエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエステル系溶媒が好ましい。
【0073】
有機溶媒の使用量は、所望する効果が損なわれない限りにおいて特に限定されない。有機溶媒の使用量は、無機粒子含有ペースト全体の体積に対して、60体積%以上97体積%以下が好ましく、80体積%以上94体積%以下がより好ましい。
【0074】
≪無機粒子含有膜≫
無機粒子含有膜は、分岐型ポリマーと、無機粒子と、分散剤とを含む。分岐型ポリマー、無機粒子、及び分散剤について、いずれも無機粒子含有ペーストについて前述した通りである。
無機粒子含有膜は、前述の無機粒子含有ペーストを膜状に成形した後に、無機粒子含有ペーストからなる膜から有機溶剤の少なくとも一部を除去することにより形成され得る。
有機溶媒を除去する方法は特に限定されない。例えば、加熱や、減圧雰囲気への暴露等の方法により有機溶媒が除去される。
【0075】
無機粒子含有膜としては、例えば、無機粒子がセラミック粒子を含み、焼成されることにより積層セラミック電子部品における誘電体層を与えるグリーンシートであるのが好ましい。
かかるグリーンシートは、例えば、ダイコータシート法やドクターブレード法等の公知の方法により形成され得る。グリーンシートの厚さは、4μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましい。
【0076】
無機粒子含有膜としては、無機粒子が金属粒子を含み、焼成されることにより積層セラミック電子部品における内部電極層を与える導電性シートであるのも好ましい。
導電性シートを形成する方法は特に限定されない。好ましくは、導電性シートは、上記のグリーンシート上に無機粒子含有ペーストを印刷することによって形成される。印刷法としては、例えば、グラビア印刷法やスクリーン印刷法等を適用できる。
導電性シートの膜厚は、例えば、1.5μm以下が好ましい。
【0077】
≪積層体≫
積層体は、前述の無機粒子含有膜からなる層を少なくとも1層含む。
好ましい積層体としては、焼成されることにより誘電体層を与えるグリーンシートと、焼成されることにより内部電極層を与える導電性シートとが積層されており、
グリーンシートが、前述の無機粒子含有膜であるか、導電性シートが、前述の無機粒子含有膜である積層体が挙げられる、かかる積層体は、積層セラミック電子部品の製造に好適に用いられる。
かかる積層体を焼成した後に、焼成された積層体に、積層セラミック電子部品を製造するための公知の種々の加工を施すことにより、積層セラミック電子部品が得られる。
積層セラミック電子部品としては、積層セラミックコンデンサ、インダクタ、圧電素子、サーミスタ等が挙げられる。
【実施例
【0078】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0079】
〔実施例1〕
無機粒子としてNi粒子を含む、導電性ペーストを作製した。
導電性ペーストの調製には、無機粒子として、平均SEM径200nmのNi粒子と、BET径20nmのチタン酸バリウム粒子とを用いた。
分岐型ポリマーとして、エチルセルロースからなる主鎖と、脂肪族ポリカーボネートであるポリプロピレンカーボネートからなる枝鎖とを有する樹脂を用いた。
分散剤としては、吸着性官能基であるカルボキシ基と、疎水性基である鎖状脂肪族炭化水素基と、ポリオキシエチレン基(ポリエーテル鎖)とを有する高分子分散剤を用いた。
有機溶媒としては、エステル系溶媒であるジヒドロターピネオールアセテートを用いた。
【0080】
(導電性ペースト調製)
Ni粒子40質量部と、チタン酸バリウム粒子4質量部と、分岐型ポリマー2質量部と、分散剤0.7質量部と、有機溶媒53.3質量部とを均一に混合した。得られた混合物をロール分散させて、導電性ペーストを得た。
【0081】
(誘電体ペースト調製)
脂肪族ポリカーボネートであるポリプロピレンカーボネート7.2質量部を、26質量部の酢酸n-ブチルと、26質量部のジメチルカーボネートに溶解させた。ポリプロピレンカーボネートは、繰り返し構造中にカルボン酸変性部位を有する。カルボン酸変性部位の割合は、全体構造中の0.8モル%である。得られた溶液に、40質量部のセラミック粒子としてのチタン酸バリウム粒子(BET換算径0.2μm)と、可塑剤として0.7質量部のポリエチレングリコールと、帯電防止剤0.1質量部を加えた。次いで、得られた懸濁液を、ボールミル中で所定の時間分散させて、誘電体ペーストを得た。
【0082】
(グリーンシート調製)
PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に、ドクターブレード法によって誘電体ペーストを塗布した。その後、塗布膜を乾燥させてセラミック粒子を含むグリーンシートを得た。グリーンシートの厚さは、焼成後の誘電体層の厚さが1.7μmになるように調整された。
【0083】
(導電性シート調製)
グリーンシート上に、導電性ペーストをスクリーン印刷した。印刷された導電性ペーストを乾燥させて導電性シートを得た。導電性ペーストは、切断及び焼成されたチップ状の積層体の平面寸法が3.2mm×1.6mmとなるようなパターンが形成されるように、グリーンシート上に印刷された。XRF測定による、金属成分だけの厚さとしての導電性シートの厚さは0.4μmであった。乾燥直後の導電性シートの厚さは0.8μmであった。
【0084】
(積層体製造)
導電性シートを備えるグリーンシートをPETフィルムから剥離した。剥離されたシートを200枚積層して、積層された200枚のシートを金型内に入れた。金型内のシートをプレスして圧着して積層体を得た。得られた積層体を、所定の大きさに押切りによりカットして、チップ状の未焼成の積層体を得た。
【0085】
(構造欠陥の発生の評価)
無作為に選択したチップ上の未焼成の積層体100個それぞれについて、切断面を光学顕微鏡により観察し、構造欠陥としての導電性シートとグリーンシートとの層間剥離、及び導電性シート内部での凝集破壊による層内剥離の有無を確認した。構造欠陥が観察された積層体の個数を構造欠陥の発生率として表1に記す。また、構造欠陥が観察された積層体の個数に基づき、構造欠陥の発生を以下の基準に従って評価した。
◎:構造欠陥が観察された積層体の個数が0又は1個である。
○:構造欠陥が観察された積層体の個数が2個以上10個以下である。
×:構造欠陥が観察された積層体の個数が11個以上である。
【0086】
〔実施例2〕
分岐型ポリマーを、エチルセルロースからなる主鎖と、脂肪族ポリエステルであるポリカプロラクトンからなる枝鎖とを有する樹脂に変えることの他は、実施例1と同様の試験を行った。構造欠陥の発生の評価結果を表1に記す。
【0087】
〔実施例3〕
分散剤が有するポリオキシエチレン基(ポリエーテル鎖)をポリカプロラクトン基(ポリエステル鎖)に変えることの他は、実施例1と同様の試験を行った。構造欠陥の発生の評価結果を表1に記す。
【0088】
〔実施例4〕
分散剤が有する親水性基をポリプロピレンカーボネート基(ポリカーボネート鎖)に変えることの他は、実施例1と同様の試験を行った。構造欠陥の発生の評価結果を表1に記す。
【0089】
〔実施例5〕
分岐型ポリマーを、エチルセルロースからなる主鎖と、脂肪族ポリエステルであるポリカプロラクトンからなる枝鎖とを有する樹脂に変えることと、分散剤が有するポリオキシエチレン基(ポリエーテル鎖)をポリカプロラクトン基(ポリエステル鎖)に変えることとの他は、実施例1と同様の試験を行った。構造欠陥の発生の評価結果を表1に記す。
【0090】
〔実施例6〕
分岐型ポリマーを、エチルセルロースからなる主鎖と、脂肪族ポリエステルであるポリカプロラクトンからなる枝鎖とを有する樹脂に変えることと、分散剤が有する親水性基をポリプロピレンカーボネート基(ポリカーボネート鎖)に変えることとの他は、実施例1と同様の試験を行った。構造欠陥の発生の評価結果を表1に記す。
【0091】
〔実施例7〕
導電性ペーストの調製にセラミック粒子を用いないことの他は、実施例1と同様の試験を行った。構造欠陥の発生の評価結果を表1に記す。
【0092】
〔実施例8〕
分岐型ポリマーを、エチルセルロースからなる主鎖と、脂肪族ポリエステルであるポリカプロラクトンからなる枝鎖とを有する樹脂に変えることと、導電性ペーストの調製にセラミック粒子を用いないこととの他は、実施例1と同様の試験を行った。構造欠陥の発生の評価結果を表1に記す。
【0093】
〔実施例9〕
金属粒子をSEM径500nmのCu粒子に変えることの他は、実施例1と同様の試験を行った。構造欠陥の発生の評価結果を表1に記す。
【0094】
〔実施例10〕
分岐型ポリマーを、エチルセルロースからなる主鎖と、脂肪族ポリエステルであるポリカプロラクトンからなる枝鎖とを有する樹脂に変えることと、金属粒子をSEM径500nmのCu粒子に変えることとの他は、実施例1と同様の試験を行った。構造欠陥の発生の評価結果を表1に記す。
【0095】
〔実施例11〕
分岐型ポリマーの使用量と、Ni粒子及びセラミック粒子の使用量とを調整して、導電性ペーストにおけるバインダー樹脂の体積と、無機粒子の体積との合計に対する、バインダー樹脂の体積の比率であるバインダー樹脂体積比率を17体積%に変えることの他は、実施例1と同様の試験を行った。構造欠陥の発生の評価結果を表1に記す。
【0096】
〔実施例12〕
分岐型ポリマーの使用量と、Ni粒子及びセラミック粒子の使用量とを調整して、導電性ペーストにおけるバインダー樹脂の体積と、無機粒子の体積との合計に対する、バインダー樹脂の体積の比率であるバインダー樹脂体積比率を29体積%に変えることの他は、実施例1と同様の試験を行った。構造欠陥の発生の評価結果を表1に記す。
【0097】
〔実施例13〕
分岐型ポリマーを、エチルセルロースからなる主鎖と、脂肪族ポリエステルであるポリカプロラクトンからなる枝鎖とを有する樹脂に変えることと、分岐型ポリマーの使用量と、Ni粒子及びセラミック粒子の使用量とを調整して、導電性ペーストにおけるバインダー樹脂の体積と、無機粒子の体積との合計に対する、バインダー樹脂の体積の比率であるバインダー樹脂体積比率を17体積%に変えることと、の他は、実施例1と同様の試験を行った。構造欠陥の発生の評価結果を表1に記す。
【0098】
〔実施例14〕
分岐型ポリマーを、エチルセルロースからなる主鎖と、脂肪族ポリエステルであるポリカプロラクトンからなる枝鎖とを有する樹脂に変えることと、分岐型ポリマーの使用量と、Ni粒子及びセラミック粒子の使用量とを調整して、導電性ペーストにおけるバインダー樹脂の体積と、無機粒子の体積との合計に対する、バインダー樹脂の体積の比率であるバインダー樹脂体積比率を29体積%に変えることと、の他は、実施例1と同様の試験を行った。構造欠陥の発生の評価結果を表1に記す。
【0099】
〔比較例1〕
分岐型ポリマーを、直鎖型ポリマーであるエチルセルロースに変えることの他は、実施例1と同様の試験を行った。構造欠陥の発生の評価結果を表1に記す。
【0100】
〔比較例2〕
分岐型ポリマーを、直鎖型ポリマーであるエチルセルロースに変えることと、分散剤を、吸着性官能基であるカルボキシ基と、疎水性基である鎖状脂肪族炭化水素基とを有するが、ポリオキシエチレン基(ポリエーテル鎖)を有さない高分子分散剤に変えることとの他は、実施例1と同様の試験を行った。構造欠陥の発生の評価結果を表1に記す。
【0101】
〔比較例3〕
分散剤を、吸着性官能基であるカルボキシ基と、疎水性基である鎖状脂肪族炭化水素基とを有するが、ポリオキシエチレン基(ポリエーテル鎖)を有さない高分子分散剤に変えることの他は、実施例1と同様の試験を行った。構造欠陥の発生の評価結果を表1に記す。
【0102】
〔比較例4〕
分岐型ポリマーを、エチルセルロースからなる主鎖と、脂肪族ポリエステルであるポリカプロラクトンからなる枝鎖とを有する樹脂に変えることと、分散剤を、吸着性官能基であるカルボキシ基と、疎水性基である鎖状脂肪族炭化水素基とを有するが、ポリオキシエチレン基(ポリエーテル鎖)を有さない高分子分散剤に変えることとの他は、実施例1と同様の試験を行った。構造欠陥の発生の評価結果を表1に記す。
【0103】
〔比較例5〕
分岐型ポリマーを、直鎖型ポリマーであるエチルセルロースに変えることと、分散剤が有する親水性基をポリカプロラクトン基(ポリエステル鎖)に変えることの他は、実施例1と同様の試験を行った。構造欠陥の発生の評価結果を表1に記す。
【0104】
〔比較例6〕
分岐型ポリマーを、直鎖型ポリマーであるエチルセルロースに変えることと、分散剤が有する親水性基をポリプロピレンカーボネート基(ポリカーボネート鎖)に変えることの他は、実施例1と同様の試験を行った。構造欠陥の発生の評価結果を表1に記す。
【0105】
〔比較例7〕
分岐型ポリマーを、直鎖型ポリマーであるエチルセルロースに変えることと、導電性ペーストの調製にセラミック粒子を用いないこととの他は、実施例1と同様の試験を行った。構造欠陥の発生の評価結果を表1に記す。
【0106】
〔比較例8〕
分岐型ポリマーを、直鎖型ポリマーであるエチルセルロースに変えることと、金属粒子をSEM径500nmのCu粒子に変えることとの他は、実施例1と同様の試験を行った。構造欠陥の発生の評価結果を表1に記す。
【0107】
〔比較例9〕
分岐型ポリマーを、直鎖型ポリマーであるエチルセルロースに変えることと、エチルセルロースの使用量と、Ni粒子及びセラミック粒子の使用量とを調整して、導電性ペーストにおけるバインダー樹脂の体積と、無機粒子の体積との合計に対する、バインダー樹脂の体積の比率であるバインダー樹脂体積比率を17体積%に変えることと、の他は、実施例1と同様の試験を行った。構造欠陥の発生の評価結果を表1に記す。
【0108】
〔比較例10〕
分岐型ポリマーを、直鎖型ポリマーであるエチルセルロースに変えることと、エチルセルロースの使用量と、Ni粒子及びセラミック粒子の使用量とを調整して、導電性ペーストにおけるバインダー樹脂の体積と、無機粒子の体積との合計に対する、バインダー樹脂の体積の比率であるバインダー樹脂体積比率を29体積%に変えることと、の他は、実施例1と同様の試験を行った。構造欠陥の発生の評価結果を表1に記す。
【0109】
下記表1中の、特定官能基は、ポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、及びポリカーボネート鎖のいずれかに該当する官能基の種類である。
バインダー樹脂体積比率は、導電性ペーストにおけるバインダー樹脂の体積と、無機粒子の体積との合計に対する、バインダー樹脂の体積の比率である。
下表中の略号は以下の通りである。
EC:エチルセルロース
PCL:ポリカプロラクトン(脂肪族ポリエステル)
PPC:ポリプロピレンカーボネート(脂肪族ポリカーボネート)
【0110】
【表1】
【0111】
実施例によれば、セルロース系ポリマーからなる主鎖と、脂肪族ポリカーボネート、又は脂肪族ポリエステルからなる枝鎖とを有する分岐型ポリマーと、ポリエーテル鎖のような親水性鎖を有する分散剤とを組み合わせて含む導電性ペーストを用いて形成された導電性シートを含む積層体をカットする場合、積層体をカットする際にせん断力が加えられても、構造欠陥としての層間剥離がほとんど生じないことが分かる。
他方、比較例によれば、導電性ペーストに含まれるバインダー樹脂がセルロース系ポリマーからなる主鎖のみからなったり、分散剤が特定の親水性鎖を有さない場合、積層体をカットする際に構造欠陥としての層間剥離が生じやすいことが分かる。