特許 7544183 エレベータ用レール装置、エレベータ及びエレベータ用レール装置の製造方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B1)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2024-08-26

(45)【発行日】2024-09-03

(54)【発明の名称】エレベータ用レール装置、エレベータ及びエレベータ用レール装置の製造方法

(51)【国際特許分類】

   B66B 7/06 20060101AFI20240827BHJP

【ＦＩ】

B66B7/06 N

【請求項の数】 6

(21)【出願番号】P 2023084335

(22)【出願日】2023-05-23

【審査請求日】2023-05-23

(73)【特許権者】

【識別番号】000112705

【氏名又は名称】フジテック株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110000729

【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】丸山 優馬

【審査官】須山 直紀

(56)【参考文献】

【文献】国際公開第２０２１／９５２２５（ＷＯ，Ａ１）

【文献】特許第７１１５６４６（ＪＰ，Ｂ２）

【文献】特開２００８－２９７１１０（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００７－２７６９９１（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００６－１６０４４８（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｂ６６Ｂ ７／０６

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

上下方向へ沿って延びるレールと、
上下方向へ並べられ、前記レールと昇降路とを接続する複数の接続部と、
上下方向へ並べられ、上下方向へ沿って延びる複数の保護線と、を備え、
前記複数の保護線は、上端部及び下端部のそれぞれが前記接続部に接続される、エレベータ用レール装置。

【請求項2】

前記複数の接続部は、第１接続部と、前記第１接続部よりも下方に配置される第２接続部と、を含み、
前記保護線の上端部は、前記第１接続部に接続され、前記保護線の下端部は、前記第２接続部に接続され、
前記保護線は、上下方向視において、前記第１及び第２接続部から横方向へ離れる離れ部を備える、請求項１に記載のエレベータ用レール装置。

【請求項3】

前記第１接続部は、上下方向へ貫通する第１貫通孔を備え、
前記第２接続部は、上下方向へ貫通する第２貫通孔を備え、
前記保護線は、
前記第１貫通孔に挿入される鉤部と、
上端が前記鉤部に連結され、下端が前記第２貫通孔に挿入される本体部と、
前記本体部の下端から曲がるように延びる曲げ部と、を備える、請求項２に記載のエレベータ用レール装置。

【請求項4】

前記第１接続部は、上下方向視にて角となる第１角部を備え、
前記第１貫通孔は、
第１遠方孔と、
前記第１遠方孔よりも前記第１角部の角の近くに配置される第１近傍孔と、を含み、
前記第２接続部は、上下方向視にて角となる第２角部を備え、
前記第２貫通孔は、
第２遠方孔と、
前記第２遠方孔よりも前記第２角部の角の近くに配置される第２近傍孔と、を含み、
前記鉤部は、前記第１近傍孔に挿入され、
前記本体部の下端は、前記第２遠方孔に挿入される、請求項３に記載のエレベータ用レール装置。

【請求項5】

請求項１～４の何れか１項に記載のエレベータ用レール装置を備える、エレベータ。

【請求項6】

請求項３又は４に記載のエレベータ用レール装置の製造方法であって、
前記鉤部を前記第１貫通孔に挿入させることと、
前記上端が前記鉤部に連結される長尺部の下端部を、前記第２貫通孔に挿入させることと、
前記長尺部の下端部を曲げることによって、前記長尺部から、前記本体部及び前記曲げ部を形成することと、を含む、エレベータ用レール装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本出願は、エレベータ用レール装置、エレベータ及びエレベータ用レール装置の製造方法に関する。

【背景技術】

【0002】

従来、例えば、エレベータ用レール装置は、上下方向へ沿って延びるレールと、上下方向へ並べられ、レールと昇降路とを接続する複数の接続部と、上下方向へ沿って延び、複数の接続部に取り付けられる一つの保護線とを備えている（例えば、特許文献１）。ところで、特許文献１に係るエレベータ用レール装置においては、保護線が一つであるため、保護線の長さが、長過ぎる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【文献】実開昭５６－１７０１７６号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

そこで、課題は、保護線の長さを適切にすることができるエレベータ用レール装置、エレベータ及びエレベータ用レール装置の製造方法を提供することである。

【課題を解決するための手段】

【0005】

エレベータ用レール装置は、
上下方向へ沿って延びるレールと、
上下方向へ並べられ、前記レールと昇降路とを接続する複数の接続部と、
上下方向へ並べられ、上下方向へ沿って延びる複数の保護線と、を備え、
前記複数の保護線は、上端部及び下端部のそれぞれが前記接続部に接続される。

【0006】

エレベータは、前記のエレベータ用レール装置を備える。

【0007】

エレベータ用レール装置の製造方法は、前記のエレベータ用レール装置の製造方法である。

【図面の簡単な説明】

【0008】

【図1】一実施形態に係るエレベータの概要図

【図2】同実施形態に係るエレベータ用レール装置の要部正面図

【図3】同実施形態に係るエレベータ用レール装置の要部側面図

【図4】図２のIV領域拡大図

【図5】図３のＶ領域拡大図

【図6】図５のVI－VI線断面図

【図7】図６のVII－VII線拡大断面図

【図8】図６のVIII－VIII線拡大断面図

【図9】同実施形態に係るエレベータ用レール装置の製造方法の説明図であって、要部正面図

【図10】同実施形態に係るエレベータ用レール装置の製造方法の説明図であって、要部側面図

【発明を実施するための形態】

【0009】

各図面において、構成要素の寸法は、例えば、理解を容易にするために、実際の寸法に対して拡大、縮小して示す場合があり、また、各図面の間での寸法比は、一致していない場合がある。なお、各図面において、例えば、理解を容易にするために、構成要素の一部を省略して示す場合がある。

【0010】

第１、第２等の序数を含む用語は、多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、構成要素は、この用語によって特に限定されるものではない。なお、序数を含む構成要素の個数は、特に限定されず、例えば、一つでもよい場合がある。また、以下の明細書及び図面で用いられる序数は、特許請求の範囲に記載された序数と異なる場合がある。

【0011】

以下、エレベータ及びエレベータ用レール装置における一実施形態について、図１～図１０を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、エレベータ及びエレベータ用レール装置の構成等の理解を助けるために例示するものであり、エレベータ及びエレベータ用レール装置の構成を限定するものではない。

【0012】

図１に示すように、エレベータ１は、例えば、人（乗客）が乗るためのかご２と、かご２を走行させるかご駆動部３と、かご２を案内するレール（「かごレール」ともいう）１１と、エレベータ１の各部を制御する処理部４とを備えていてもよい。なお、かご駆動部３の駆動方式は、特に限定されない。

【0013】

例えば、本実施形態のように、エレベータ１は、第１端部がかご２に接続されるかごロープ５と、かごロープ５の第２端部に接続される釣合錘６と、かご２の下部と釣合錘６の下部とを接続する釣合ロープ（「補償ロープ」ともいう）７と、釣合錘６を案内するレール（「錘レール」ともいう）１１とを備え、かご駆動部３は、かごロープ５が巻き掛けられる綱車３ａと、綱車３ａを回転させる駆動源３ｂ（例えば、モータ）と、綱車３ａを制動する制動部３ｃとを備えている、という構成でもよい。

【0014】

即ち、かご駆動部３は、巻上機であって、エレベータ１は、ロープ式の駆動方式である、という構成でもよい。なお、斯かる構成に限られず、例えば、かご駆動部３は、油圧装置であり、エレベータ１は、油圧式の駆動方式である、という構成でもよく、また、例えば、かご駆動部３は、リニアモータであって、エレベータ１は、リニアモータ式の駆動方式である、という構成でもよい。

【0015】

また、本実施形態においては、かごロープ５の第１端部がかご２の上部に接続され、かごロープ５の第２端部が釣合錘６の上部に接続されている、という構成であるが、斯かる構成に限られない。例えば、かごロープ５の両端部がそれぞれ昇降路Ｘ１の上部又は下部に固定され、かごロープ５がかご２のシーブ及び釣合錘６のシーブにそれぞれ巻き掛けられることによって、かごロープ５がかご２及び釣合錘６にそれぞれ接続されている、という構成でもよい。

【0016】

また、本実施形態に係るエレベータ１は、かご駆動部３である巻上機を機械室Ｘ２の内部に配置する、という構成であるが、斯かる構成に限られない。例えば、機械室Ｘ２が備えられておらず、エレベータ１は、巻上機を昇降路Ｘ１の内部に配置する、という構成でもよい。

【0017】

なお、各図において、第１方向Ｄ１は、第１横方向Ｄ１であり、第２方向Ｄ２は、第１横方向Ｄ１と直交する横方向である第２横方向Ｄ２であり、第３方向Ｄ３は、各横方向Ｄ１，Ｄ２とそれぞれ直交する上下方向Ｄ３であり、かご２及び釣合錘６が昇降する昇降方向である。

【0018】

エレベータ１は、例えば、本実施形態のように、かご２の走行速度を検出する調速機８を備えていてもよい。調速機８は、例えば、本実施形態のように、かご２に接続される無端環状のガバナロープ８ａと、かご２の速度を検出するために、ガバナロープ８ａが巻き掛けられるガバナ車８ｂと、ガバナロープ８ａに張力を付与するために、ガバナロープ８ａに吊り下げられる張り車８ｃと、ガバナロープ８ａを把持する把持部（図示していない）とを備えていてもよい。

【0019】

図２及び図３に示すように、エレベータ１は、例えば、上下方向Ｄ３へ沿って延びるレール１１と昇降路Ｘ１の壁Ｘ１ａとを接続するために、上下方向Ｄ３へ並べられる複数の接続部１２，１３を備えていてもよい。これにより、レール１１は、複数の接続部１２，１３によって、昇降路Ｘ１に対して固定されている。なお、接続部１２，１３の個数は、特に限定されず、図２及び図３においては、二つのみ図示されている。

【0020】

レール１１は、例えば、本実施形態のように、かご２又は釣合錘６を案内する案内部１１ａと、接続部１２，１３に接続されるベース部１１ｂとを備えていてもよい。案内部１１ａは、例えば、本実施形態のように、上下方向Ｄ３及び第２横方向Ｄ２へ沿って延びる板状に形成されていてもよく、また、ベース部１１ｂは、例えば、本実施形態のように、上下方向Ｄ３及び第１横方向Ｄ１へ沿って延びる板状に形成されていてもよい。

【0021】

接続部１２，１３の構成は、特に限定されない。図２～図６に示すように、接続部１２，１３は、例えば、昇降路Ｘ１の壁Ｘ１ａに固定される第１ブラケット１４と、第１ブラケット１４に固定される第２ブラケット１５と、第２ブラケット１５にレール１１を固定させる第１固定手段１６とを備えていてもよい。

【0022】

第１ブラケット１４は、例えば、本実施形態のように、上下方向Ｄ３へ沿って板状に延びる第１鉛直部１４ａと、第１鉛直部１４ａから第２横方向Ｄ２へ沿って板状に延びる第１水平部１４ｂとを備えていてもよい。なお、第１鉛直部１４ａは、例えば、図示していない第２固定手段（例えば、雄ネジ材及び雌ネジ材による締結、溶接材による溶接等）によって、昇降路Ｘ１の壁Ｘ１ａに固定されていてもよい。

【0023】

第２ブラケット１５は、例えば、本実施形態のように、第２横方向Ｄ２へ沿って板状に延びる第２水平部１５ａと、第２水平部１５ａから上下方向Ｄ３へ沿って板状に延びる第２鉛直部１５ｂとを備えていてもよい。なお、第２水平部１５ａは、例えば、図示していない第３固定手段（例えば、雄ネジ材及び雌ネジ材による締結、溶接材による溶接等）によって、第１水平部１４ｂに固定されていてもよい。

【0024】

第１固定手段１６の構成は、特に限定されない。第１固定手段１６は、例えば、本実施形態のように、雄ネジ部材１６ａ及び雌ネジ部材１６ｂと、雄ネジ部材１６ａ及び雌ネジ部材１６ｂが螺合することによって、第２ブラケット１５と協働してレール１１のベース部１１ｂを挟む挟み部材１６ｃとを備えていてもよい。

【0025】

ところで、エレベータ１は、上下方向Ｄ３へ沿って延びる長尺な対象物（以下、「長尺対象物」ともいう）を備えている。特に限定されないが、例えば、長尺対象物として、かごロープ５、釣合ロープ７、ガバナロープ８ａ、かご２と処理部４とを電気的に接続する移動ケーブル（図示していない）等が挙げられる。

【0026】

そして、例えば、長尺対象物が横方向Ｄ１，Ｄ２に揺れることによって、長尺対象物が接続部１２，１３に引っ掛かる虞がある。そこで、エレベータ１は、例えば、本実施形態のように、上下方向Ｄ３へ沿って延びる複数の保護線２１～２３を備えていてもよい。

【0027】

これにより、例えば、長尺対象物が保護線２１～２３に当たることによって、長尺対象物が接続部１２，１３に引っ掛かることを抑制することができる。なお、レール１１、接続部１２，１３及び保護線２１～２３を備える装置１０は、エレベータ用レール装置（以下、単に「レール装置」ともいう）１０という。

【0028】

保護線２１～２３は、例えば、本実施形態のように、上下方向Ｄ３で隣接する接続部１２，１３にそれぞれ接続されていてもよい。そして、保護線２１～２３の上端部及び下端部のそれぞれは、接続部１２，１３に接続されているため、保護線２１～２３の長さを適切にすることができる。

【0029】

これにより、例えば、昇降路Ｘ１の広範囲に相当する長い保護線を準備する必要が無くなる。したがって、一本の保護線２１～２３の長さを短くすることができるため、例えば、保護線２１～２３を接続部１２，１３に接続させる作業を、領域ごとに行うことができる。また、一本の保護線２１～２３の重さを軽くすることができるため、例えば、保護線２１～２３を接続部１２，１３に接続させる作業を、軽労働にすることができる。

【0030】

複数の保護線２１～２３は、例えば、本実施形態のように、上下方向Ｄ３に連続して並べられる保護線群２０を構成してもよい。なお、保護線群２０の個数は、特に限定されないが、例えば、本実施形態においては、四つである。

【0031】

特に限定されないが、保護線群２０のうち、上下方向Ｄ３で隣接される保護線２１，２２（２２，２３）の端部同士の最小離間距離は、例えば、保護線２１～２３の直径の１０倍以下であってもよく、また、例えば、保護線２１～２３の直径の５倍以下であってもよい。また、特に限定されないが、保護線群２０のうち、上下方向Ｄ３で隣接される保護線２１，２２（２２，２３）の端部同士の最小離間距離は、例えば、５０ｍｍ以下であってもよく、また、例えば、２０ｍｍ以下であってもよい。

【0032】

これにより、例えば、保護線群２０の複数の保護線２１～２３は、一本の保護線が連続して延びているように、配置することができる。なお、例えば、本実施形態のように、保護線群２０を構成する保護線２１～２３のうち、上下方向Ｄ３で隣接される保護線２１，２２（２２，２３）は、上下方向Ｄ３視にて、少なくとも一部が重なるように、配置されていてもよい。

【0033】

図２及び図３において、隣接される接続部１２，１３のうち、上方に配置される接続部１２は、第１接続部１２といい、下方に配置される接続部１３は、第２接続部１３という。また、図２及び図３において、下端部が第１接続部１２に接続される保護線２１は、第１保護線２１といい、上端部が第１接続部１２に接続され且つ下端部が第２接続部１３に接続される保護線２２は、第２保護線２２といい、上端部が第２接続部１３に接続される保護線２３は、第３保護線２３という。

【0034】

なお、第２保護線２２に対して、第１保護線２１は、第２保護線２２の上方に隣接して配置される上方隣接の保護線２１ともいい、第２保護線２２に対して、第３保護線２３は、第２保護線２２の下方に隣接して配置される下方隣接の保護線２３ともいう。また、第２保護線２２に対して、第１接続部１２は、第２保護線２２の上端部に接続される上方の接続部１２ともいい、第２接続部１３は、第２保護線２２の下端部に接続される下方の接続部１３ともいう。

【0035】

ここで、第１接続部１２と、第１接続部１２に接続される第１及び第２保護線２１，２２について、図４～図８を参照しながら説明する。なお、特に限定されないが、例えば、本実施形態のように、複数の接続部１２，１３のそれぞれの構成は、図４～図８に示す第１接続部１２の構成と同じであり、また、複数の保護線２１～２３のそれぞれの構成は、図４～図８に示す第１及び第２保護線２１，２２の構成と同じである、という構成でもよい。

【0036】

図４～図８に示すように、接続部１２は、例えば、上下方向Ｄ３視にて角１９ａとなる角部１９を備えていてもよい。角１９ａは、上下方向Ｄ３視にて、凸状の角であり、例えば、本実施形態のように、直角の角１９ａでもよく、また、例えば、鋭角の角や鈍角の角であってもよい。

【0037】

接続部１２は、例えば、本実施形態のように、角部１９に、上下方向Ｄ３へ貫通する貫通孔１７，１８を備えていてもよい。具体的には、接続部１２は、例えば、本実施形態のように、一つの保護線群２０に対して、遠方孔１７と、遠方孔１７から離れ、遠方孔１７よりも角部１９の角１９ａの近くに配置される近傍孔１８とを備えていてもよい。

【0038】

保護線２１，２２は、例えば、本実施形態のように、先の曲がった鉤部２４と、上端が鉤部２４に連結され、上下方向Ｄ３へ沿って直線状に延びる本体部２５と、本体部２５の下端から曲がるように延びる曲げ部２６とを備えていてもよい。鉤部２４は、例えば、本実施形態のように、先端側で直線状に延びる直線部２４ａと、直線部２４ａと本体部２５とを接続する湾曲部２４ｂとを備えていてもよい。

【0039】

第１保護線２１の本体部２５の下端は、例えば、本実施形態のように、第１接続部１２の遠方孔１７に挿入されていてもよい。これにより、曲げ部２６が第１接続部１２に引っ掛かるため、第１保護線２１の下端部は、第１接続部１２に取り付けられる。このように、保護線２１の本体部２５の下端が、下方の接続部１２の遠方孔１７に挿入されることによって、保護線２１の下端部は、下方の接続部１２に取り付けられる。

【0040】

第２保護線２２の鉤部２４は、例えば、本実施形態のように、第１接続部１２の近傍孔１８に挿入されていてもよい。これにより、鉤部２４が第１接続部１２に引っ掛かるため、第２保護線２２の上端部は、第１接続部１２に取り付けられる。このように、保護線２２の鉤部２４が、上方の接続部１２の近傍孔１８に挿入されることによって、保護線２２の上端部は、上方の接続部１２に取り付けられる。

【0041】

そして、保護線２２が、上端部に、鉤部２４を備えているため、保護線２２は、上下方向Ｄ３視において、接続部１２，１３から第１横方向Ｄ１へ離れている離れ部２７を備えている。本実施形態においては、離れ部２７は、保護線２２の上方側の部分に設けられており、鉤部２４の基端側の部分と本体部２５の上端側の部分とで構成されている。これにより、長尺対象物が、保護線２２の離れ部２７に当たり易くなるため、例えば、長尺対象物が接続部１２に当たることを抑制することができる。

【0042】

しかも、離れ部２７が、保護線２２の上方側の部分に設けられることに対して、鉤部２４は、第１近傍孔１８に挿入されている。これにより、離れ部２７が、角部１９の角１９ａの近くに配置されているため、例えば、長尺対象物が角部１９の角１９ａに当たることを抑制することができる。

【0043】

なお、特に限定されないが、レール１１、接続部１２，１３（ブラケット１４，１５、固定手段１６）及び保護線２１～２３のそれぞれは、例えば、金属等によって形成されていてもよい。また、特に限定されないが、保護線２１～２３は、例えば、直径が１ｍｍ～５ｍｍの金属線（例えば、亜鉛メッキ鉄線、ステンレス線）で形成されていてもよく、また、好ましくは、例えば、直径が２．６ｍｍ～５ｍｍの金属線で形成されていてもよい。

【0044】

本実施形態に係るエレベータ１の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係るレール装置１０の製造方法について、図９及び図１０を参照しながら説明する。なお、以下の方法は、エレベータ用レール装置１０の製造方法の理解を助けるために例示するものであり、エレベータ用レール装置１０の製造方法を限定するものではない。

【0045】

図９及び図１０（ａ）に示すように、保護線２２は、例えば、鉤部２４と、上端が鉤部２４に連結され、直線状に延びる長尺部２８とを備えていてもよい。そして、保護線２２の鉤部２４が、第１接続部１２の近傍孔１８に挿入され、保護線２２の長尺部２８の下端部が、第２接続部１３の遠方孔１７に挿入される。なお、挿入の順番は、どちらが先でもよい。

【0046】

そして、図１０（ｂ）に示すように、長尺部２８の下端部が曲げられることによって、長尺部２８から、本体部２５及び曲げ部２６が、形成される。これにより、保護線２２の上端部が、上方の接続部１２に取り付けられ、保護線２２の下端部が、下方の接続部１３に取り付けられる。したがって、例えば、保護線２２を接続部１２，１３のそれぞれに容易に取り付けることができる。

【0047】

［１］
以上より、エレベータ用レール装置１０は、本実施形態のように、
上下方向Ｄ３へ沿って延びるレール１１と、
上下方向Ｄ３へ並べられ、前記レール１１と昇降路Ｘ１とを接続する複数の接続部１２，１３と、
上下方向Ｄ３へ並べられ、上下方向Ｄ３へ沿って延びる複数の保護線２１～２３と、を備え、
前記複数の保護線２１～２３は、上端部及び下端部のそれぞれが前記接続部１２，１３に接続される、
という構成が好ましい。

【0048】

斯かる構成によれば、複数の保護線２１～２３が上下方向Ｄ３へ並べられている。そして、保護線２１～２３は、上下方向Ｄ３へ沿って延び、保護線２１～２３の上端部及び下端部のそれぞれは、接続部１２，１３に接続されている。これにより、保護線２１～２３の長さを適切にすることができる。

【0049】

［２］
また、上記［１］のエレベータ用レール装置１０においては、本実施形態のように、
前記複数の接続部１２，１３は、第１接続部１２と、前記第１接続部１２よりも下方に配置される第２接続部１３と、を含み、
前記保護線（本実施形態においては、第２保護線）２２の上端部は、前記第１接続部１２に接続され、前記保護線２２の下端部は、前記第２接続部１３に接続され、
前記保護線２２は、上下方向Ｄ３視において、前記第１及び第２接続部１２，１３から横方向（本実施形態においては、第１横方向）Ｄ１へ離れる離れ部２７を備える、
という構成が好ましい。

【0050】

斯かる構成によれば、保護線（本実施形態においては、第２保護線）２２の離れ部２７は、上下方向Ｄ３視において、第１及び第２接続部１２，１３から横方向（本実施形態においては、第１横方向）Ｄ１へ離れている。これにより、長尺対象物は、保護線２２の離れ部２７に当たり易くなる。

【0051】

［３］
また、上記［２］のエレベータ用レール装置１０においては、本実施形態のように、
前記第１接続部１２は、上下方向Ｄ３へ貫通する第１貫通孔１７，１８を備え、
前記第２接続部１３は、上下方向Ｄ３へ貫通する第２貫通孔１７，１８を備え、
前記保護線（本実施形態においては、第２保護線）２２は、
前記第１貫通孔１８に挿入される鉤部２４と、
上端が前記鉤部２４に連結され、下端が前記第２貫通孔１７に挿入される本体部２５と、
前記本体部２５の下端から曲がるように延びる曲げ部２６と、を備える、
という構成が好ましい。

【0052】

斯かる構成によれば、鉤部２４が第１貫通孔１８に挿入されることによって、保護線（本実施形態においては、第２保護線）２２の上端部は、第１接続部１２に取り付けられる。また、本体部２５の下端が第２貫通孔１７に挿入され、曲げ部２６が本体部２５の下端から曲がるように延びているため、保護線２２の下端部は、第２接続部１３に取り付けられている。そして、離れ部２７は、保護線２２の上方側の部分に設けられる。

【0053】

［４］
また、上記［２］又は［３］のエレベータ用レール装置１０においては、本実施形態のように、
前記第１接続部１２は、上下方向Ｄ３視にて角１９ａとなる第１角部１９を備え、
前記第１貫通孔１７，１８は、
第１遠方孔１７と、
前記第１遠方孔１７よりも前記第１角部１９の角１９ａの近くに配置される第１近傍孔１８と、を含み、
前記第２接続部１３は、上下方向Ｄ３視にて角１９ａとなる第２角部１９を備え、
前記第２貫通孔１７，１８は、
第２遠方孔１７と、
前記第２遠方孔１７よりも前記第２角部１９の角１９ａの近くに配置される第２近傍孔１８と、を含み、
前記鉤部２４は、前記第１近傍孔１８に挿入され、
前記本体部２５の下端は、前記第２遠方孔１７に挿入される、
という構成が好ましい。

【0054】

斯かる構成によれば、離れ部２７が、保護線２２の上方側の部分に設けられることに対して、鉤部２４は、第１近傍孔１８に挿入されている。これにより、離れ部２７は、第１角部１９の角１９ａの近くに配置されている。

【0055】

［５］
また、エレベータ１は、本実施形態のように、
上記［１］～［４］の何れか一つのエレベータ用レール装置１０を備える、
という構成が好ましい。

【0056】

斯かる構成によれば、保護線２１～２３の長さを適切にすることができる。

【0057】

［６］
また、エレベータ用レール装置１０の製造方法は、本実施形態のように、
上記［３］又は［４］のエレベータ用レール装置１０の製造方法であって、
前記鉤部２４を前記第１貫通孔１８に挿入させることと、
前記上端が前記鉤部２４に連結される長尺部２８の下端部を、前記第２貫通孔１７に挿入させることと、
前記長尺部２８の下端部を曲げることによって、前記長尺部２８から、前記本体部２５及び前記曲げ部２６を形成することと、を含む、
という構成が好ましい。

【0058】

斯かる構成によれば、鉤部２４を第１貫通孔１８に挿入させることによって、保護線（本実施形態においては、第２保護線）２２の上端部は、第１接続部１２に取り付けられる。また、長尺部２８の下端部が第２貫通孔１７に挿入され、長尺部２８の下端部が曲げられることによって、本体部２５及び曲げ部２６が形成されるため、保護線２２の下端部は、第２接続部１３に取り付けられる。これにより、保護線２１～２３の長さを適切にすることができる。

【0059】

なお、エレベータ１、エレベータ用レール装置１０及びその製造方法は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、エレベータ１、エレベータ用レール装置１０及びその製造方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。

【0060】

（Ａ）上記実施形態に係るエレベータ用レール装置１０においては、保護線２２の上端部は、第１接続部１２の第１貫通孔１８に挿入され、保護線２２の下端部は、第２接続部１３の第２貫通孔１７に挿入されている、という構成である。即ち、保護線２２は、接続部１２，１３に直接的に接続されている（接続部１２，１３に取り付けられている）、という構成である。しかしながら、エレベータ用レール装置１０は、斯かる構成に限られない。

【0061】

例えば、保護線２２の上端部及び下端部の少なくとも一方は、部品（例えば、クリップ等の接続具）を介して、接続部１２，１３に接続されている、という構成でもよい。即ち、保護線２２は、部品によって、接続部１２，１３に間接的に接続されている、という構成でもよい。

【0062】

（Ｂ）また、上記実施形態に係るエレベータ用レール装置１０においては、離れ部２７は、保護線２２の一部に設けられている、という構成である。即ち、保護線２２の一部は、上下方向Ｄ３視において、第１及び第２接続部１２，１３から横方向Ｄ１へ離れている、という構成である。しかしながら、エレベータ用レール装置１０は、斯かる構成に限られない。

【0063】

例えば、保護線２２の全体は、上下方向Ｄ３視において、第１及び第２接続部１２，１３と重なっている、という構成でもよい。即ち、保護線２２は、離れ部２７を備えていない、という構成でもよい。

【0064】

また、例えば、上記（Ａ）のように、保護線２２は、部品によって、接続部１２，１３に間接的に接続されており、保護線２２の全体は、上下方向Ｄ３視において、第１及び第２接続部１２，１３から横方向Ｄ１，Ｄ２へ離れている、という構成でもよい。即ち、離れ部２７は、保護線２２の全体に設けられている、という構成でもよい。

【0065】

（Ｃ）また、上記実施形態に係るエレベータ用レール装置１０においては、離れ部２７は、上下方向Ｄ３視において、第１及び第２接続部１２，１３から第１横方向Ｄ１へ離れている、という構成である。しかしながら、エレベータ用レール装置１０は、斯かる構成に限られない。

【0066】

例えば、離れ部２７は、上下方向Ｄ３視において、第１及び第２接続部１２，１３から第２横方向Ｄ２へ離れている、という構成でもよい。また、例えば、離れ部２７は、上下方向Ｄ３視において、第１及び第２接続部１２，１３から第１及び第２横方向Ｄ１，Ｄ２の両方へ離れている、という構成でもよい。

【0067】

（Ｄ）また、上記実施形態に係るエレベータ用レール装置１０においては、保護線２１～２３は、上下方向Ｄ３で隣接された接続部１２，１３にそれぞれ接続されている、という構成である。しかしながら、エレベータ用レール装置１０は、斯かる構成に限られない。例えば、保護線２１～２３の上端部は、第１接続部１２に接続されており、当該保護線２１～２３の下端部は、第１接続部１２に下方で隣接された第２接続部１３よりも、さらに下方に配置される第３接続部に接続されている、という構成でもよい。

【0068】

（Ｅ）また、上記実施形態に係るエレベータ用レール装置１０においては、保護線２２の鉤部２４が、第１接続部１２の第１貫通孔１８に挿入されることによって、保護線２２の上端部は、第１接続部１２に取り付けられる、という構成である。しかしながら、エレベータ用レール装置１０は、斯かる構成に限られない。

【0069】

例えば、保護線２２が、上端部に、第１接続部１２の第１貫通孔１７，１８よりも大きい抜け止め部（金属線に固定される部品、金属線を結んで形成される結び目等）を備えることによって、保護線２２の上端部は、第１接続部１２に取り付けられる、という構成でもよい。また、例えば、保護線２２が、上端が第１接続部１２の第１貫通孔１７，１８に挿入される本体部２５と、本体部２５の上端から曲がるように延びる曲げ部とを備えることによって、保護線２２の上端部は、第１接続部１２に取り付けられる、という構成でもよい。

【0070】

（Ｆ）また、上記実施形態に係るエレベータ用レール装置１０においては、保護線２２が、下端が第２接続部１３の第２貫通孔１７に挿入される本体部２５と、本体部２５の下端から曲がるように延びる曲げ部２６とを備えることによって、保護線２２の下端部は、第２接続部１３に取り付けられる、という構成である。しかしながら、エレベータ用レール装置１０は、斯かる構成に限られない。

【0071】

例えば、保護線２２が、下端部に、第２接続部１３の第２貫通孔１７，１８よりも大きい抜け止め部（金属線に固定される部品、金属線を結んで形成される結び目等）を備えることによって、保護線２２の下端部は、第２接続部１３に取り付けられる、という構成でもよい。また、例えば、保護線２２が、下端部に、第２接続部１３の第２貫通孔１７，１８に挿入される鉤部を備えることによって、保護線２２の下端部は、第２接続部１３に取り付けられる、という構成でもよい。

【0072】

（Ｇ）また、上記実施形態に係るエレベータ用レール装置１０においては、鉤部２４は、第１接続部１２の第１近傍孔１８に挿入され、本体部２５の下端は、第２接続部１３の第２遠方孔１７に挿入される、という構成である。しかしながら、エレベータ用レール装置１０は、斯かる構成に限られない。

【0073】

鉤部２４は、第１接続部１２の第１遠方孔１７に挿入され、本体部２５の下端は、第２接続部１３の第２近傍孔１８に挿入される、という構成でもよい。また、例えば、鉤部２４は、第１接続部１２の第１遠方孔１７に挿入され、本体部２５の下端は、第２接続部１３の第２遠方孔１７に挿入される、という構成でもよい。また、例えば、鉤部２４は、第１接続部１２の第１近傍孔１８に挿入され、本体部２５の下端は、第２接続部１３の第２近傍孔１８に挿入される、という構成でもよい。

【0074】

（Ｈ）また、上記実施形態に係るエレベータ用レール装置１０においては、第１保護線２１の下端部は、第１接続部１２の第１遠方孔１７に挿入され、第２保護線２２の上端部は、第１接続部１２の第１遠方孔１７から離れた第１近傍孔１８に挿入される、という構成である。しかしながら、エレベータ用レール装置１０は、斯かる構成に限られない。

【0075】

例えば、第１保護線２１の下端部は、第１接続部１２の貫通孔に挿入され、第２保護線２２の上端部は、第１接続部１２の同じ貫通孔に挿入される、という構成でもよい。具体的には、例えば、第１保護線２１の下端部と第２保護線２２の上端部とは、第１接続部１２の同じ長孔に一緒に挿入される、という構成でもよい。

【0076】

（Ｉ）また、例えば、エレベータ用レール装置１０においては、保護線群２０のうち、少なくとも一つの保護線の端部は、接続部１２，１３ではなく、接続部１２，１３とは別部品（例えば、電装品、制御盤等）に接続されていてもよい。

【0077】

（Ｊ）また、上記実施形態に係るエレベータ用レール装置１０の製造方法においては、保護線２２が第１接続部１２の第１貫通孔１８及び第２接続部１３の第２貫通孔１７に挿入されたときに、鉤部２４は、既に形成されており、曲げ部２６は、まだ形成されていない、という方法である。しかしながら、エレベータ用レール装置１０の製造方法は、斯かる方法に限られない。

【0078】

例えば、保護線２２が第１接続部１２の第１貫通孔１８及び第２接続部１３の第２貫通孔１７に挿入されたときに、既に曲げ部２６は、形成されており、鉤部２４は、まだ形成されていない、という方法でもよい。また、例えば、保護線２２が第１接続部１２の第１貫通孔１８及び第２接続部１３の第２貫通孔１７に挿入されたときに、鉤部２４及び曲げ部２６は、まだ形成されていない、という方法でもよい。

【0079】

（Ｋ）なお、例えば、特許請求の範囲、明細書及び図面において示した方法及び装置における動作、手順、ステップ、及び段階等の各工程の実行順序は、前の工程の結果物を後の工程で用いるものでない限り、任意の順序で実現できる。例えば、便宜上、「まず」、「次に」等を用いて説明したとしても、この順で実行することが必須であることを意味するものではない。

【符号の説明】

【0080】

１…エレベータ、２…かご、３…かご駆動部、３ａ…綱車、３ｂ…駆動源、３ｃ…制動部、４…処理部、５…かごロープ、６…釣合錘、７…釣合ロープ、８…調速機、８ａ…ガバナロープ、８ｂ…ガバナ車、８ｃ…張り車、１０…エレベータ用レール装置、１１…レール（かごレール、錘レール）、１１ａ…案内部、１１ｂ…ベース部、１２…第１接続部、１３…第２接続部、１４…第１ブラケット、１４ａ…第１鉛直部、１４ｂ…第１水平部、１５…第２ブラケット、１５ａ…第２水平部、１５ｂ…第２鉛直部、１６…第１固定手段、１６ａ…雄ネジ部材、１６ｂ…雌ネジ部材、１６ｃ…挟み部材、１７…遠方孔（貫通孔）、１８…近傍孔（貫通孔）、１９…角部、１９ａ…角、２０…保護線群、２１…第１保護線、２２…第２保護線、２３…第３保護線、２４…鉤部、２４ａ…直線部、２４ｂ…湾曲部、２５…本体部、２６…曲げ部、２７…離れ部、２８…長尺部、Ｄ１…第１横方向、Ｄ２…第２横方向、Ｄ３…上下方向、Ｘ１…昇降路、Ｘ１ａ…壁、Ｘ２…機械室

【要約】

【課題】 保護線の長さを適切にすることができるエレベータ用レール装置を提供する。
【解決手段】 エレベータ用レール装置は、上下方向へ沿って延びるレールと、上下方向へ並べられ、レールと昇降路とを接続する複数の接続部と、上下方向へ並べられ、上下方向へ沿って延びる複数の保護線と、を備え、複数の保護線は、上端部及び下端部のそれぞれが接続部に接続される。
【選択図】 図２

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】