(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240827BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20240827BHJP
B24B 55/06 20060101ALI20240827BHJP
B24B 41/047 20060101ALI20240827BHJP
B23D 5/02 20060101ALI20240827BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H01L21/304 631
B24B7/04 A
B24B55/06
B24B41/047
B23D5/02
B23Q11/00 L
H01L21/304 621B
(21)【出願番号】P 2020159551
(22)【出願日】2020-09-24
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】波岡 伸一
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-322056(JP,A)
【文献】特開2018-001290(JP,A)
【文献】特開2014-050899(JP,A)
【文献】特開2004-090128(JP,A)
【文献】特開2020-026012(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0049997(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 7/04
B24B 55/06
B24B 41/047
B23D 5/02
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面によってウェーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウェーハを加工するための加工具を備えた加工手段と、該加工手段を該保持面に垂直な方向に加工送りする加工送り手段と、該チャックテーブルと該加工具とを収容する加工室と、を備える加工装置であって、
該加工手段は、
該垂直な方向に延在するスピンドルの下端に上面が連結され、下面に第1加工具が装着されている第1マウントと、
該第1マウントの外径よりも大きい内径を有し、該第1マウントと同心の円環状で、下面に第2加工具が装着される第2マウントと、
該第1マウントと該第2マウントとを該垂直な方向に相対的に移動させることにより、該第1加工具または該第2加工具を選択的に該保持面に接近させる選択手段と、を備え、
該加工室は、
該選択手段によって該第2加工具よりも該第1加工具を該保持面に接近させ、該保持面に保持されたウェーハを該第1加工具によって加工している際に、該第1加工具を囲繞し、該加工室を上下に仕切り、該第1加工具がウェーハを加工した加工屑から該第2加工具を保護する仕切り機構を備え、
該仕切り機構は、
該第1加工具の外側面に沿った第1半円凹部を備え、水平方向に延在する第1仕切り板と、
該第1加工具の外側面に沿って該第1半円凹部に向かい合う第2半円凹部を備え、水平方向に延在する第2仕切り板と、
該第1仕切り板を水平方向に移動させる第1水平移動機構と、
該第2仕切り板を水平方向に移動させる第2水平移動機構と、を備え、
該第2加工具によって該保持面に保持されたウェーハを加工する際には、該第1仕切り板と該第2仕切り板とを、互いに水平方向に該スピンドルから遠ざけ、該第1半円凹部と該第2半円凹部との間を該第2加工具が通過可能にし、
該第1加工具によって該保持面に保持されたウェーハを加工する際には、該第1仕切り板と該第2仕切り板とを、互いに水平方向に該スピンドルに近づけ、該第1半円凹部と該第2半円凹部とを連結することによって形成される円によって該第1加工具を囲繞し、該第1加工具がウェーハを加工することによって発生する加工屑から該第2加工具を保護する、
加工装置。
【請求項2】
該第1加工具は旋削バイトまたは研削砥石であり、該第2加工具は研磨パッドである、
請求項1記載の加工装置。
【請求項3】
該第1仕切り板および該第2仕切り板に、該第1加工具に向かって水を噴出する水噴出口をさらに備える、
請求項1記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
貫通電極であるTSV(Through Silicon Via)を有するTSVウェーハでは、裏面を研削及びCMP(化学機械研磨)により平坦化し、表面側に露出した貫通電極をCMPにより平坦化している。近年では、貫通電極の配線が、アルミ配線から銅配線に切り替えられていることから、バイトによる旋削とCMPとによって、貫通電極を平坦化している。そのため、特許文献1に開示のように、一つの加工装置の加工手段で、バイトによる旋削とCMPとを可能にすることによって、装置を小型化し、生産性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の装置では、旋削とCMPとが、同じ加工室内で実施される。そのため、旋削加工の旋削屑が研磨パッドの下面に付着して、CMPの際にウェーハの被研磨面に傷が付いてしまう可能性がある。
【0005】
また、加工手段が研削とCMPとを実施することが可能な場合にも、研削加工の研削屑が研磨パッドの下面に付着して、CMPの際にウェーハの被研磨面に傷が付いてしまう可能性がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、一方の加工を実施した際に発生した加工屑によって、そのあとに実施される他方の加工が悪影響を受けることを、抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の加工装置(本加工装置)は、保持面によってウェーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウェーハを加工するための加工具を備えた加工手段と、該加工手段を該保持面に垂直な方向に加工送りする加工送り手段と、該チャックテーブルと該加工具とを収容する加工室と、を備える加工装置であって、該加工手段は、該垂直な方向に延在するスピンドルの下端に上面が連結され、下面に第1加工具が装着されている第1マウントと、該第1マウントの外径よりも大きい内径を有し、該第1マウントと同心の円環状で、下面に第2加工具が装着される第2マウントと、該第1マウントと該第2マウントとを該垂直な方向に相対的に移動させることにより、該第1加工具または該第2加工具を選択的に該保持面に接近させる選択手段と、を備え、該加工室は、該選択手段によって該第2加工具よりも該第1加工具を該保持面に接近させ、該保持面に保持されたウェーハを該第1加工具によって加工している際に、該第1加工具を囲繞し、該加工室を上下に仕切り、該第1加工具がウェーハを加工した加工屑から該第2加工具を保護する仕切り機構を備え、該仕切り機構は、該第1加工具の外側面に沿った第1半円凹部を備え、水平方向に延在する第1仕切り板と、該第1加工具の外側面に沿って該第1半円凹部に向かい合う第2半円凹部を備え、水平方向に延在する第2仕切り板と、該第1仕切り板を水平方向に移動させる第1水平移動機構と、該第2仕切り板を水平方向に移動させる第2水平移動機構と、を備え、該第2加工具によって該保持面に保持されたウェーハを加工する際には、該第1仕切り板と該第2仕切り板とを、互いに水平方向に該スピンドルから遠ざけ、該第1半円凹部と該第2半円凹部との間を該第2加工具が通過可能にし、該第1加工具によって該保持面に保持されたウェーハを加工する際には、該第1仕切り板と該第2仕切り板とを、互いに水平方向に該スピンドルに近づけ、該第1半円凹部と該第2半円凹部とを連結することによって形成される円によって該第1加工具を囲繞し、該第1加工具がウェーハを加工することによって発生する加工屑から該第2加工具を保護する。
【0008】
本加工装置では、該第1加工具は旋削バイトまたは研削砥石であってもよく、該第2加工具は研磨パッドであってもよい。
【0009】
また、本加工装置は、該第1仕切り板および該第2仕切り板に、該第1加工具に向かって水を噴出する水噴出口をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本加工装置では、第1加工具によってウェーハを加工する際に、第1仕切り板および第2仕切り板が、第1半円凹部および第2半円凹部によって第1加工具を囲繞するように、加工室を上下に仕切る。したがって、加工室の上側に位置している第2加工具を、加工室の下側にある第1加工具の先端がウェーハを加工することによって発生する加工屑から、保護することができる。これにより、第2加工具に加工屑が付着することを抑制することができる。このため、第2加工具によって加工されるウェーハの被加工面を加工屑によって傷つけてしまうことを、抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】互いに連結されている第1仕切り板および第2仕切り板を示す説明図である。
【
図5】互いに遠ざけられている第1仕切り板および第2仕切り板を示す説明図である。
【
図6】水噴出口を備えた第1仕切り板および第2仕切り板示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すように、本実施形態にかかる加工装置1は、被加工物としてのウェーハ100を研削および研磨するための装置であり、加工装置1の各部材を制御する制御部5を備えている。
【0013】
ウェーハ100は、たとえば、円形の半導体ウェーハである。ウェーハ100の表面101は、複数のデバイスを保持しており、保護テープ103が貼着されることによって保護されている。ウェーハ100の裏面102は、研削加工および研磨加工が施される被加工面となる。
【0014】
加工装置1は、被加工物を保持するための保持手段30を備えている。保持手段30は、チャックテーブル31、チャックテーブル31を支持する支持部材33、および、チャックテーブル31を回転させる回転手段34を含んでいる。
【0015】
チャックテーブル31は、ウェーハ100を保持する保持面32、および、保持面32を囲む枠体36を備えている。本実施形態では、枠体36の上面は、保持面32と略面一に形成されており、保持面32と同じ高さを有している。
【0016】
チャックテーブル31の保持面32は、たとえばポーラス材からなり、吸引源(図示せず)に連通されることにより、保護テープ103を介してウェーハ100を吸引保持する。すなわち、チャックテーブル31は、保持面32によってウェーハ100を保持する。
【0017】
また、チャックテーブル31は、下方に設けられた回転手段34により、保持面32によってウェーハ100を保持した状態で、保持面32の中心を通るZ軸方向に延在する中心軸を中心として回転可能である。したがって、ウェーハ100は、保持面32に保持されて保持面32の中心を軸に回転される。
【0018】
支持部材33の周囲には、カバー板37が設けられている。また、カバー板37における+Y側および-Y側には、Y軸方向に伸縮する蛇腹カバー(図示せず)が連結されている。そして、保持手段30の下方には、Y軸方向移動手段40が配設されている。Y軸方向移動手段40は、保持手段30をY軸方向に沿って移動させる。
【0019】
Y軸方向移動手段40は、保持手段30と加工手段70とを、相対的に、保持面32に平行なY軸方向に移動させる。本実施形態では、Y軸方向移動手段40は、加工手段70に対して、保持手段30をY軸方向に移動させるように構成されている。
【0020】
なお、加工装置1は、Y軸方向移動手段40に代えて、水平移動手段として、複数の保持手段30を有するターンテーブルを有していてもよい。
【0021】
Y軸方向移動手段40は、Y軸方向に平行なY軸ガイドレール42、このY軸ガイドレール42上をスライドするY軸移動テーブル45、Y軸ガイドレール42と平行なY軸ボールネジ43、Y軸ボールネジ43に接続されているY軸モータ44、および、これらを保持する保持台41を備えている。
【0022】
Y軸移動テーブル45は、スライド部材451を介して、Y軸ガイドレール42にスライド可能に設置されている。Y軸移動テーブル45の下面には、ナット部401が固定されている。このナット部401には、Y軸ボールネジ43が螺合されている。Y軸モータ44は、Y軸ボールネジ43の一端部に連結されている。
【0023】
Y軸方向移動手段40では、Y軸モータ44がY軸ボールネジ43を回転させることにより、Y軸移動テーブル45が、Y軸ガイドレール42に沿って、Y軸方向に移動する。Y軸移動テーブル45には、支持柱35を介して、保持手段30の支持部材33が載置されている。したがって、Y軸移動テーブル45のY軸方向への移動に伴って、チャックテーブル31を含む保持手段30が、Y軸方向に移動する。
【0024】
本実施形態では、保持手段30は、後方(+Y方向側)の加工位置と、前方(-Y方向側)の搬入出位置との間を、Y軸方向移動手段40によって、Y軸方向に沿って移動される。
【0025】
また、
図1に示すように、保持手段30の後方(+Y方向側)には、コラム3が立設されている。コラム3の前面には、ウェーハ100を加工する加工手段70、および、加工送り手段50が設けられている。
【0026】
加工送り手段50は、保持手段30と加工手段70とを、相対的に、保持面32に垂直なZ軸方向(加工送り方向)に加工送りする垂直移動手段である。本実施形態では、加工送り手段50は、保持手段30に対して、加工手段70を、保持面32に垂直なZ軸方向に加工送りするように構成されている。
【0027】
加工送り手段50は、Z軸方向に平行なZ軸ガイドレール51、このZ軸ガイドレール51上をスライドするZ軸移動テーブル53、Z軸ガイドレール51と平行なZ軸ボールネジ52、Z軸モータ54、Z軸モータ54の回転角度を検知するためのZ軸エンコーダ55、Z軸エンコーダ55の検知結果を記憶する記憶部57、および、Z軸移動テーブル53の前面(表面)に取り付けられたホルダ56を備えている。ホルダ56は、加工手段70を保持している。
【0028】
Z軸移動テーブル53は、スライド部材531を介して、Z軸ガイドレール51にスライド可能に設置されている。Z軸移動テーブル53の後面側(裏面側)には、ナット部501が固定されている。このナット部501には、Z軸ボールネジ52が螺合されている。Z軸モータ54は、Z軸ボールネジ52の一端部に連結されている。
【0029】
加工送り手段50では、Z軸モータ54がZ軸ボールネジ52を回転させることにより、Z軸移動テーブル53が、Z軸ガイドレール51に沿って、Z軸方向に移動する。これにより、Z軸移動テーブル53に取り付けられたホルダ56、および、ホルダ56に保持された加工手段70も、Z軸移動テーブル53とともにZ軸方向に移動する。
【0030】
加工手段70は、スピンドルユニット71を備えている。スピンドルユニット71は、保持面32に垂直な方向に延在するスピンドル72、スピンドル72を回転させるスピンドルモータ73、および、スピンドル72およびスピンドルモータ73を囲繞するケーシング74を備えている。
【0031】
スピンドル72は、第1軸部721と、第1軸部721よりも大径に形成された第2軸部723とを備えている。第1軸部721と第2軸部723との間には、スラスト板722が配設されている。スピンドル72は、さらに、第2軸部723の下方に形成されたシリンダ大径部724、および、シリンダ大径部724の下方に形成されたシリンダ小径部725を有している。
【0032】
ケーシング74の内部には、エア流路60が形成されている。エア流路60は、エア供給源39に接続されている。また、エア流路60は、ケーシング74の内部において、複数の分岐路に分岐している。エア流路60は、ケーシング74の上面61、側面62および下面63の開口部に連通されている。
【0033】
エア供給源39から供給されたエアは、ケーシング74のエア流路60を通って、ケーシング74の上面61、側面62および下面63の開口部から、ケーシング74の外部に噴出する。
【0034】
ケーシング74の上面61、側面62および下面63からエアが噴出されることにより、ケーシング74とスピンドル72のスラスト板722との間、ケーシング74とスピンドル72の第2軸部723との間、および、ケーシング74とスピンドル72のシリンダ大径部724との間に、隙間が形成される。これにより、これらの隙間に、スピンドル72を回転可能にエアによって非接触で支持するベアリングが形成される。
【0035】
スピンドル72の下端であるシリンダ小径部725の下端には、第1マウントとしての円板マウント95の上面が連結されている。また、スピンドル72のシリンダ大径部724の下面と円板マウント95との間には、両者を連結するガイド部84が配設されている。
【0036】
円板マウント95の下面には、研削ホイール96が装着されている。研削ホイール96は、ホイール基台97と、ホイール基台97の下端に環状に配列された略直方体状の複数の研削砥石98とを備えている。
研削砥石98は、スピンドル72、円板マウント95およびホイール基台97を介して、スピンドルモータ73によって回転されることが可能である。
【0037】
また、スピンドル72におけるシリンダ大径部724およびシリンダ小径部725には、進退機構80が配設されている。進退機構80は、スピンドル72のシリンダ大径部724に配設された収容室81を備えている。収容室81には、ピストン82が収容されている。
【0038】
ピストン82の下部には、複数のピストンロッド83が連結されている。複数のピストンロッド83は、ピストン82の周方向に等間隔を空けて設けられている。なお、
図1においては、1本のピストンロッド83のみが示されている。
【0039】
ピストンロッド83の下端には、環状板90が連結されている。また、環状板90には、上記したガイド部84が貫通する貫通孔901が形成されている。
【0040】
環状板90の下面には、第2マウントとしての環状マウント91が連結されている。環状マウント91の下面には、プラテン92を介して、被加工物を研磨加工する、第2加工具としての環状の研磨パッド93が装着されている。
【0041】
環状マウント91、プラテン92および研磨パッド93は、円板マウント95および研削ホイール96の外径よりも大きい内径を有し、円板マウント95と同心の円環状に形成されている。
【0042】
研磨パッド93は、その中心を軸に、スピンドル72、環状板90、環状マウント91およびプラテン92を介して、スピンドルモータ73によって回転されることが可能である。
【0043】
この研磨パッド93および上記した研削砥石98は、チャックテーブル31に保持されたウェーハ100を加工するための加工具の一例である。そして、研削砥石98は、内側に備えられた第1加工具の一例であり、研磨パッド93は、外側に備えられた第2加工具の一例である。
【0044】
進退機構80の収容室81には、レギュレータ85を介して、エア源86が接続されている。進退機構80においては、エア源86からのエアを、レギュレータ85を介して、収容室81に上方から供給することにより、ピストン82に-Z方向への押力を加えて、ピストン82をZ軸方向に降下させることが可能である。
【0045】
また、収容室81に下方からエアを供給することにより、ピストン82に+Z方向への押力を加えて、ピストン82をZ軸方向に上昇させることが可能である。
【0046】
ピストン82がZ軸方向に昇降移動すると、ピストン82にピストンロッド83を介して連結されている環状板90が、ガイド部84にガイドされながら昇降移動する。これに伴い、環状板90に装着されている研磨パッド93が昇降移動する。このようにして、研磨パッド93と研削砥石98とが、Z軸方向に沿って相対的に進退することとなる。
【0047】
このように、進退機構80は、円板マウント95と環状マウント91とを保持面32に垂直な方向であるZ軸方向に相対的に移動させることにより、研削砥石98または研磨パッド93を選択的に保持面32に接近させる選択手段として機能する。
【0048】
なお、上記したように、環状マウント91、プラテン92および研磨パッド93は、円板マウント95および研削ホイール96の外径よりも大きい内径を有している。したがって、環状マウント91、プラテン92および研磨パッド93の内側に円板マウント95および研削ホイール96が接触せずに収容され、研削砥石98に対して研磨パッド93が上下方向に相対移動可能となる。
【0049】
また、
図1、および、加工装置1をY軸方向に沿って示す断面図である
図2に示すように、加工装置1は、加工手段70の下方に、略筐形状の加工室20を有している。加工室20は、ウェーハ100が加工される際、ウェーハ100を保持する保持手段30のチャックテーブル31と、加工手段70の加工具である研削砥石98および研磨パッド93とを収容するように形成されている。
【0050】
図1および
図2に示すように、加工室20は、加工具導入穴211を有する上板21を備えている。加工具導入穴211は、加工手段70の加工具である研削砥石98および研磨パッド93を加工室20に導入することを可能とするために設けられている。加工室20は、この上板21、側板22、-Y側の前板23、+Y側の後板24、および、底板となる保持手段30のカバー板37を含むように構成されている。前板23は、保持手段30におけるY軸方向に沿う加工室20内への移動を可能とする長さで、上板21から垂下するように設けられている。
なお、加工室20の上板21とホルダ56の下面とを連結し加工具導入穴211を塞ぐ筒状で鉛直方向に伸縮可能のジャバラカバーを備え、加工屑が加工具導入穴211から噴出するのを防止している。
【0051】
また、加工室20は、
図1および
図2に示すように、仕切り機構10を備えている。仕切り機構10は、進退機構80によって研磨パッド93よりも研削砥石98を保持面32に接近させ、保持面32に保持されたウェーハ100を研削砥石98によって加工している際に、研削砥石98を囲繞し、加工室20を上下に仕切り、研削砥石98がウェーハ100を加工した加工屑から研磨パッド93を保護する。
【0052】
仕切り機構10は、
図2に示すように、ともに水平方向に延在する、第1仕切り板11および第2仕切り板12を備えている。
図3に、加工室20および仕切り機構10を上方から示す。この
図3に示すように、第1仕切り板11は、研削砥石98の外側面に沿った第1半円凹部111を備えている。また、第2仕切り板は、研削砥石98の外側面に沿って第1半円凹部111に向かい合う第2半円凹部121を備えている。
【0053】
さらに、仕切り機構10は、
図2に示すように、第1仕切り板11をX軸方向に沿って水平方向に移動させる第1水平移動機構13、および、第2仕切り板12をX軸方向に沿って水平方向に移動させる第2水平移動機構14を備えている。
これら第1水平移動機構13および第2水平移動機構14は、加工室20における上板21の下面に取り付けられている。
【0054】
第1水平移動機構13および第2水平移動機構14は、
図3に示すように、それぞれ、第1仕切り板11および第2仕切り板12に連結されたアーム部201、および、アーム部201をX軸方向に沿って移動させる駆動装置200を備えている。第1水平移動機構13および第2水平移動機構14では、駆動装置200によってアーム部201をX軸方向に沿って移動させることにより、第1仕切り板11および第2水平移動機構14をX軸方向に沿って水平方向に移動させて、これらを、互いに接近および連結させることが可能となっている。
【0055】
すなわち、仕切り機構10では、第1水平移動機構13および第2水平移動機構14によって、第1仕切り板11と第2仕切り板12とを接近および連結させることにより、第1仕切り板11および第2仕切り板12が、第1半円凹部111および第2半円凹部121によって研削砥石98を囲繞するように、加工室20を上下に仕切る。この際、第1半円凹部111および第2半円凹部121は、互いに連結され、
図3において破線によって示している研磨パッド93の外径よりも小さい円を形成し、この円が、研削砥石98を囲繞する。したがって、仕切り機構10は、研削砥石98がウェーハ100を加工した加工屑から研磨パッド93を保護することができる。
なお、第1仕切り板11と第2仕切り板12の移動を容易にするためにX軸方向に延在するガイドレールを備えていてもよい。
【0056】
このような構成を有する加工装置1では、制御部5は、保持面32に保持されたウェーハ100を研磨パッド93によって研磨加工する際には、
図4および
図5に示すように、第1仕切り板11と第2仕切り板12とを、互いに水平方向にスピンドル72から遠ざける。これにより、第1仕切り板11の第1半円凹部111と第2仕切り板12の第2半円凹部121との間を、研磨パッド93が通過できるようになる。そして、制御部5は、進退機構80を制御して、研磨パッド93を、研削砥石98よりも保持面32に接近させる。この状態で、制御部5は、保持面32によって保持されているウェーハ100に対する、研磨パッド93による研磨加工を実施する。
【0057】
一方、制御部5は、保持面32に保持されたウェーハ100を研削砥石98によって研削加工する際には、
図2および
図3に示すように、進退機構80を制御して、研削砥石98を研磨パッド93よりも保持面32に接近させる。そして、制御部5は、第1仕切り板11と第2仕切り板12とを、互いに水平方向にスピンドルに近づけ、第1半円凹部111と第2半円凹部121とを連結することによって形成される円によって、研削砥石98を囲繞する。この状態で、制御部5は、保持面32によって保持されているウェーハ100に対する、研削砥石98による研削加工を実施する。
【0058】
以上のように、本実施形態では、研削砥石98によってウェーハ100を加工する際に、第1仕切り板11および第2仕切り板12が、第1半円凹部111および第2半円凹部121によって研削砥石98を囲繞するように、加工室20を上下に仕切る。したがって、加工室20の上側に位置している研磨パッド93を、加工室20の下側に位置している研削砥石98の先端(下面)がウェーハ100を加工することによって発生する加工屑から、保護することができる。これにより、研磨パッド93に加工屑が付着することを、抑制することができる。このため、研磨パッド93によって研磨加工されるウェーハ100の裏面102を加工屑によって傷つけてしまうことを、抑制することが可能となる。
【0059】
なお、本実施形態では、
図6に示すように、第1仕切り板11および第2仕切り板12の上面に、研削砥石98に向かって水を噴出する複数の水噴出口16が備えられていてもよい。水噴出口16は、第1仕切り板11と第2仕切り板12とが連結されている研削砥石98による加工中に、
図6に矢印によって示すように、図示しない水源からの加工水を、研削砥石98に向かって側面から噴射するためのものである。
【0060】
この構成では、研削砥石98による加工中に研削砥石98に側面から加工水を噴射することにより、研削砥石98がウェーハ100を加工することによって発生する加工屑が、第1仕切り板11および第2仕切り板12と研削砥石98との隙間から研磨パッド93に到達することを、抑制することができる。したがって、研磨パッド93を、より良好に、加工屑から保護することができる。
【0061】
なお、水噴出口16は、第1仕切り板11および第2仕切り板12の上面に代えて、第1仕切り板11および第2仕切り板12の下面あるいは内部に、研削砥石98に向かって水を噴出することができるように備えられていてもよい。
また、第1仕切り板11の第1半円凹部111の内側面と第2仕切り板12の第2半円凹部121の内側面とに水噴出口16を備えてもよい。
【0062】
また、本実施形態では、加工装置1は、内側の第1加工具としての研削砥石98、および、外側の第2加工具としての研磨パッド93を備えている。この研磨パッド93は、CMP研磨用あるいはドライ研磨用のいずれの研磨パッドであってもよい。
【0063】
また、加工装置1において可能な第1加工具と第2加工具との組み合わせは、研削砥石98と研磨パッド93との組み合わせに限られない。たとえば、加工装置1は、内側の第1加工具として旋削バイトを有し、外側の第2加工具としての研磨パッド93を備えてもよい。あるいは、加工装置1は、内側の第1加工具として研削砥石98を有し、外側の第2加工具として旋削バイトまたは研削砥石98を備えてもよい。あるいは、加工装置1は、内側の第1加工具として旋削バイトを有し、外側の第2加工具として研削砥石98を備えてもよい。あるいは、加工装置1は、内側の第1加工具として研磨パッド93を有し、外側の第2加工具として旋削バイト、研削砥石98、または研磨パッド93を備えてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1:加工装置、3:コラム、5:制御部、
100:ウェーハ、101:表面、102:裏面、103:保護テープ、
10:仕切り機構、11:第1仕切り板、12:第2仕切り板、
111:第1半円凹部、121:第2半円凹部、
13:第1水平移動機構、14:第2水平移動機構、16:水噴出口、
20:加工室、21:上板、22:側板、23:前板、24:後板、
211:加工具導入穴、
30:保持手段、31:チャックテーブル、32:保持面、36:枠体、
33:支持部材、34:回転手段、35:支持柱、37:カバー板、
39:エア供給源、60:エア流路、
40:Y軸方向移動手段、50:加工送り手段、
70:加工手段、71:スピンドルユニット、
72:スピンドル、73:スピンドルモータ、74:ケーシング、
721:第1軸部、722:スラスト板、723:第2軸部、
724:シリンダ大径部、725:シリンダ小径部、
80:進退機構、81:収容室、82:ピストン、
83:ピストンロッド、84:ガイド部、
85:レギュレータ、86:エア源、
90:環状板、91:環状マウント、92:プラテン、93:研磨パッド、
95:円板マウント、96:研削ホイール、97:ホイール基台、98:研削砥石