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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20240903BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20240903BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B60C11/12 D
B60C11/03 100C
B60C11/13 B
B60C11/12 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020141912
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037668
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-162388(JP,A)
【文献】特開2018-090097(JP,A)
【文献】特開2013-071647(JP,A)
【文献】特開2019-111945(JP,A)
【文献】特開2019-094005(JP,A)
【文献】特開2019-094004(JP,A)
【文献】特開2015-054602(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00729854(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/12
B60C 11/03
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部には、タイヤ周方向に延びる複数の周方向溝と、前記周方向溝により区分された複数の陸部とが形成され、
前記周方向溝は、第1周方向溝と、前記第1周方向溝に隣接しかつ前記第1周方向溝よりも溝幅が大きい第2周方向溝とを含み、
前記陸部は、前記第1周方向溝と前記第2周方向溝との間に区分された第1陸部を含み、
前記第1陸部には、タイヤ軸方向に延びる複数の横溝と、タイヤ軸方向に延びかつ前記横溝よりも溝幅が小さい複数の横サイプとが設けられ、
前記第2周方向溝に連通する前記横溝及び前記横サイプの溝幅の合計値は、前記第1周方向溝に連通する前記横溝及び前記横サイプの溝幅の合計値よりも小さく、
前記横溝は、前記第1周方向溝から延びかつ前記第1陸部内で終端する第1横溝と、前記第2周方向溝から延びかつ前記第1陸部内で終端する第2横溝とを含み、
前記横サイプは、前記横溝よりも溝幅が小さい太横サイプと、前記太横サイプよりも溝幅が小さい細横サイプとを含み、
前記細横サイプは、前記第1横溝と前記第2周方向溝とを連通する第1細横サイプと、前記第2横溝と前記第1周方向溝とを連通する第2細横サイプとを含む、
タイヤ。
【請求項2】
前記第1横溝及び前記第2横溝のタイヤ軸方向の長さは、それぞれ、前記第1陸部のタイヤ軸方向の幅の20%~35%である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部には、タイヤ周方向に延びる複数の周方向溝と、前記周方向溝により区分された複数の陸部とが形成され、
前記周方向溝は、第1周方向溝と、前記第1周方向溝に隣接しかつ前記第1周方向溝よりも溝幅が大きい第2周方向溝とを含み、
前記陸部は、前記第1周方向溝と前記第2周方向溝との間に区分された第1陸部を含み、
前記第1陸部には、タイヤ軸方向に延びる複数の横溝と、タイヤ軸方向に延びかつ前記横溝よりも溝幅が小さい複数の横サイプとが設けられ、
前記第2周方向溝に連通する前記横溝及び前記横サイプの溝幅の合計値は、前記第1周方向溝に連通する前記横溝及び前記横サイプの溝幅の合計値よりも小さく、
前記横サイプは、前記横溝よりも溝幅が小さい太横サイプと、前記太横サイプよりも溝幅が小さい細横サイプとを含み、
前記太横サイプは、前記第1周方向溝から延びかつ前記第1陸部内で終端しており
前記太横サイプのタイヤ軸方向の長さは、前記第1陸部のタイヤ軸方向の幅の60%~80%である
タイヤ。
【請求項4】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部には、タイヤ周方向に延びる複数の周方向溝と、前記周方向溝により区分された複数の陸部とが形成され、
前記周方向溝は、第1周方向溝と、前記第1周方向溝に隣接しかつ前記第1周方向溝よりも溝幅が大きい第2周方向溝とを含み、
前記陸部は、前記第1周方向溝と前記第2周方向溝との間に区分された第1陸部を含み、
前記第1陸部には、タイヤ軸方向に延びる複数の横溝と、タイヤ軸方向に延びかつ前記横溝よりも溝幅が小さい複数の横サイプとが設けられ、
前記第2周方向溝に連通する前記横溝及び前記横サイプの溝幅の合計値は、前記第1周方向溝に連通する前記横溝及び前記横サイプの溝幅の合計値よりも小さく、
前記横サイプは、前記横溝よりも溝幅が小さい太横サイプと、前記太横サイプよりも溝幅が小さい細横サイプとを含み、
前記太横サイプの深さは、前記第1周方向溝の深さの60%~80%である
タイヤ。
【請求項5】
記太横サイプは、前記第1周方向溝から延びかつ前記第1陸部内で終端している、請求項4に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記細横サイプは、前記太横サイプと前記第2周方向溝とを連通する第3細横サイプを含む、請求項3又は5に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記横溝は、前記第1周方向溝から延びかつ前記第1陸部内で終端する第1横溝と、前記第2周方向溝から延びかつ前記第1陸部内で終端する第2横溝とを含み、
前記第1横溝及び前記第2横溝のタイヤ軸方向の長さは、それぞれ、前記第1陸部のタイヤ軸方向の幅の20%~35%である、請求項3ないし6のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第2周方向溝に連通する前記横溝及び前記横サイプの本数は、前記第1周方向溝に連通する前記横溝及び前記横サイプの本数に等しい、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記第1陸部には、前記第1周方向溝からタイヤ軸方向に凹む切欠部が設けられている、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記第1周方向溝は、タイヤ軸方向の外側に配されるショルダー周方向溝であり、
前記第2周方向溝は、前記ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向の内側に配されるクラウン周方向溝である、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド部を有するタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ周方向に延びる複数の周方向溝と、周方向溝により区分された複数の陸部とが形成されたトレッド部を有するタイヤが知られている。例えば、下記特許文献1のタイヤは、タイヤ周方向に延びるセンタ主溝及びショルダ主溝により区分されたミドル陸部が複数のミドル横溝とミドルサイプとを有することで、全天候走行可能なタイヤ、いわゆる、オールシーズンタイヤを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-114846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のタイヤは、溝の比率を大きくすることで排水性及び排雪性を向上させウェット性能及び雪上性能を向上しているが、溝の気中共鳴音によるパターンノイズが大きくなる傾向があり、ノイズ性能に対して更なる改善が求められていた。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ウェット性能及び雪上性能とノイズ性能とを両立し得るタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部には、タイヤ周方向に延びる複数の周方向溝と、前記周方向溝により区分された複数の陸部とが形成され、前記周方向溝は、第1周方向溝と、前記第1周方向溝に隣接しかつ前記第1周方向溝よりも溝幅が大きい第2周方向溝とを含み、前記陸部は、前記第1周方向溝と前記第2周方向溝との間に区分された第1陸部を含み、前記第1陸部には、タイヤ軸方向に延びる複数の横溝と、タイヤ軸方向に延びかつ前記横溝よりも溝幅が小さい複数の横サイプとが設けられ、前記第2周方向溝に連通する前記横溝及び前記横サイプの溝幅の合計値は、前記第1周方向溝に連通する前記横溝及び前記横サイプの溝幅の合計値よりも小さいことを特徴とする。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記第2周方向溝に連通する前記横溝及び前記横サイプの本数は、前記第1周方向溝に連通する前記横溝及び前記横サイプの本数に等しいのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記横溝は、前記第1周方向溝から延びかつ前記第1陸部内で終端する第1横溝と、前記第2周方向溝から延びかつ前記第1陸部内で終端する第2横溝とを含み、前記第1横溝及び前記第2横溝のタイヤ軸方向の長さは、それぞれ、前記第1陸部のタイヤ軸方向の幅の20%~35%であるのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記横サイプは、前記横溝よりも溝幅が小さい太横サイプと、前記太横サイプよりも溝幅が小さい細横サイプとを含み、前記細横サイプは、前記第1横溝と前記第2周方向溝とを連通する第1細横サイプと、前記第2横溝と前記第1周方向溝とを連通する第2細横サイプとを含むのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記横サイプは、前記横溝よりも溝幅が小さい太横サイプと、前記太横サイプよりも溝幅が小さい細横サイプとを含み、前記太横サイプは、前記第1周方向溝から延びかつ前記第1陸部内で終端しているのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記太横サイプのタイヤ軸方向の長さは、前記第1陸部のタイヤ軸方向の幅の60%~80%であるのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記細横サイプは、前記太横サイプと前記第2周方向溝とを連通する第3細横サイプを含むのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記太横サイプの深さは、前記第1周方向溝の深さの60%~80%であるのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤにおいて、前記第1陸部には、前記第1周方向溝からタイヤ軸方向に凹む切欠部が設けられているのが望ましい。
【0015】
本発明のタイヤにおいて、前記第1周方向溝は、タイヤ軸方向の外側に配されるショルダー周方向溝であり、前記第2周方向溝は、前記ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向の内側に配されるクラウン周方向溝であるのが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のタイヤにおいて、周方向溝は、第1周方向溝と、前記第1周方向溝に隣接しかつ前記第1周方向溝よりも溝幅が大きい第2周方向溝とを含み、前記陸部は、前記第1周方向溝と前記第2周方向溝との間に区分された第1陸部を含み、前記第1陸部には、タイヤ軸方向に延びる複数の横溝と、タイヤ軸方向に延びかつ前記横溝よりも溝幅が小さい複数の横サイプとが設けられている。このようなタイヤは、横溝及び横サイプにより排水性、排雪性及びエッジ効果を向上することができ、ウェット性能及び雪上性能を向上することができる。
【0017】
本発明のタイヤにおいて、前記第2周方向溝に連通する前記横溝及び前記横サイプの溝幅の合計値は、前記第1周方向溝に連通する前記横溝及び前記横サイプの溝幅の合計値よりも小さい。このようなタイヤは、大きい溝幅の第2周方向溝に連通する横溝及び横サイプの溝幅の合計値が小さいので、気中共鳴音を抑制し、ノイズ性能を向上することができる。このため、本発明のタイヤは、ウェット性能及び雪上性能とノイズ性能とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のタイヤのトレッド部の一実施形態を示す展開図である。
図2】第1陸部を示す拡大図である。
図3図1のA-A線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2を示す展開図である。図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、走行時に接地するトレッド部2を有している。
【0020】
タイヤ1は、例えば、乗用車やSUVに装着される全天候走行可能な空気入りタイヤとして好適に用いられる。ここで、全天候走行可能なタイヤ1とは、ドライ路面での操縦安定性(以下、「ドライ性能」という。)やウェット路面での制動性(以下、「ウェット性能」という。)、雪上路面での操縦安定性(以下、「雪上性能」という。)等が求められるタイヤ1である。タイヤ1は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、重荷重用の空気入りタイヤや内部に加圧空気が充填されない非空気式タイヤ等の様々なタイヤ1に用いることができる。
【0021】
本実施形態のトレッド部2には、タイヤ周方向に延びる複数の周方向溝3と、周方向溝3により区分された複数の陸部4とが形成されている。周方向溝3は、例えば、第1周方向溝3Aと、第1周方向溝3Aに隣接しかつ第1周方向溝3Aよりも溝幅が大きい第2周方向溝3Bとを含んでいる。本実施形態の陸部4は、第1周方向溝3Aと第2周方向溝3Bとの間に区分された第1陸部4Aを含んでいる。
【0022】
図2は、第1陸部4Aを示す拡大図である。図2に示されるように、第1陸部4Aには、タイヤ軸方向に延びる複数の横溝5と、タイヤ軸方向に延びかつ横溝5よりも溝幅が小さい複数の横サイプ6とが設けられるのが望ましい。このようなタイヤ1は、横溝5及び横サイプ6により排水性、排雪性及びエッジ効果を向上することができ、ウェット性能及び雪上性能を向上することができる。
【0023】
ここで、本明細書において、サイプとは、溝幅が2.0mm以下の細い切り込みとして定義される。一方、溝とは、溝幅が2.0mmよりも大きい凹みとして定義される。また、溝幅は、溝及びサイプの長手方向に直交する方向のタイヤ外表面での幅であり、後述する切欠部9aや面取部9b等の局所的に大きさが変化する部分を除く幅の最大値である。
【0024】
また、本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ1の各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。ここで、「正規状態」とは、タイヤ1が空気入りタイヤの場合、タイヤ1が正規リムにリム組みされ、かつ、正規内圧に調整された無負荷の状態である。
【0025】
「正規リム」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が有る場合、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。「正規リム」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が無い場合、メーカー等がタイヤ毎に定めるリムである。
【0026】
「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が有る場合、各規格がタイヤ毎に定める空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が無い場合、メーカー等がタイヤ毎に定める空気圧である。
【0027】
本実施形態の第2周方向溝3Bに連通する横溝5及び横サイプ6の溝幅の合計値は、第1周方向溝3Aに連通する横溝5及び横サイプ6の溝幅の合計値よりも小さい。このようなタイヤ1は、大きい溝幅の第2周方向溝3Bに連通する横溝5及び横サイプ6の溝幅の合計値が小さいので、気中共鳴音を抑制し、ノイズ性能を向上することができる。このため、本実施形態のタイヤ1は、ウェット性能及び雪上性能とノイズ性能とを両立することができる。
【0028】
より好ましい態様として、第2周方向溝3Bの溝幅W2は、第1周方向溝3Aの溝幅W1の105%~120%である。第2周方向溝3Bの溝幅W2が第1周方向溝3Aの溝幅W1の105%以上であることで、第2周方向溝3Bによる排水性を向上させ、タイヤ1のウェット性能をより向上することができる。このような観点から、第2周方向溝3Bの溝幅W2は、第1周方向溝3Aの溝幅W1の、より好ましくは、108%以上であり、さらに好ましくは、110%以上である。
【0029】
第2周方向溝3Bの溝幅W2が第1周方向溝3Aの溝幅W1の120%以下であることで、第1陸部4Aの剛性低下を抑制し、タイヤ1のドライ性能及び耐摩耗性能を向上することができる。このような観点から、第2周方向溝3Bの溝幅W2は、第1周方向溝3Aの溝幅W1の、より好ましくは、117%以下であり、さらに好ましくは、115%以下である。
【0030】
本実施形態では、第2周方向溝3Bに連通する横溝5及び横サイプ6の本数が、第1周方向溝3Aに連通する横溝5及び横サイプ6の本数に等しい。このため、本実施形態では、第1周方向溝3A及び第2周方向溝3Bに連通する横溝5及び横サイプ6の溝幅の合計値の差は、第1周方向溝3A及び第2周方向溝3Bに連通する横溝5及び横サイプ6の個々の溝幅の差に基づくものである。
【0031】
横溝5は、例えば、第1周方向溝3Aから延びかつ第1陸部4A内で終端する第1横溝5Aと、第2周方向溝3Bから延びかつ第1陸部4A内で終端する第2横溝5Bとを含んでいる。このような横溝5は、第1陸部4Aの剛性を低下させることなく、タイヤ1のウェット性能及び雪上性能を向上することができる。
【0032】
第1横溝5Aのタイヤ軸方向の長さL1は、好ましくは、第1陸部4Aのタイヤ軸方向の幅W3の20%~35%である。第1横溝5Aの長さL1が第1陸部4Aの幅W3の20%以上であることで、排水性及び雪柱せん断力を向上し、タイヤ1のウェット性能及び雪上性能を向上することができる。このような観点から、第1横溝5Aの長さL1は、第1陸部4Aの幅W3の、より好ましくは、23%以上であり、さらに好ましくは、25%以上である。
【0033】
第1横溝5Aの長さL1が第1陸部4Aの幅W3の35%以下であることで、第1陸部4Aの剛性を維持し、タイヤ1のドライ性能及び耐摩耗性能を向上することができる。このような観点から、第1横溝5Aの長さL1は、第1陸部4Aの幅W3の、より好ましくは、32%以下であり、さらに好ましくは、30%以下である。
【0034】
第2横溝5Bのタイヤ軸方向の長さL2は、好ましくは、第1陸部4Aのタイヤ軸方向の幅W3の20%~35%である。第2横溝5Bの長さL2が第1陸部4Aの幅W3の20%以上であることで、排水性及び雪柱せん断力を向上し、タイヤ1のウェット性能及び雪上性能を向上することができる。このような観点から、第2横溝5Bの長さL2は、第1陸部4Aの幅W3の、より好ましくは、23%以上であり、さらに好ましくは、25%以上である。
【0035】
第2横溝5Bの長さL2が第1陸部4Aの幅W3の35%以下であることで、第1陸部4Aの剛性を維持し、タイヤ1のドライ性能及び耐摩耗性能を向上することができる。このような観点から、第2横溝5Bの長さL2は、第1陸部4Aの幅W3の、より好ましくは、32%以下であり、さらに好ましくは、30%以下である。
【0036】
本実施形態の第2横溝5Bの長さL2は、第1横溝5Aの長さL1よりも小さい。このような第2横溝5Bは、溝幅W2が大きい第2周方向溝3B側の第1陸部4Aの剛性低下を抑制し、タイヤ1のドライ性能及び耐摩耗性能を向上することができる。
【0037】
第1横溝5Aの溝幅W4は、好ましくは、第1周方向溝3Aの溝幅W1の30%~40%である。第2横溝5Bの溝幅W5は、好ましくは、第2周方向溝3Bの溝幅W2の25%~35%である。本実施形態の第2横溝5Bの溝幅W5は、第1横溝5Aの溝幅W4に等しい。このような横溝5は、タイヤ1の雪上性能とノイズ性能とを両立するのに適している。
【0038】
図3は、図1のA-A線の断面図である。図3に示されるように、第1横溝5Aの深さd1は、好ましくは、第1周方向溝3Aの深さD1の60%~80%である。本実施形態の第2横溝5Bの深さは、第1横溝5Aの深さd1に等しい。このような横溝5は、雪上性能とノイズ性能とを両立するのに適している。
【0039】
図2に示されるように、本実施形態の横サイプ6は、横溝5よりも溝幅が小さい太横サイプ7と、太横サイプ7よりも溝幅が小さい細横サイプ8とを含んでいる。このような横サイプ6は、エッジ効果によるタイヤ1の雪上性能の向上と、小さい溝幅によるノイズ性能の向上とを両立することができる。
【0040】
本実施形態の太横サイプ7は、第1周方向溝3Aから延びかつ第1陸部4A内で終端している。太横サイプ7は、複数の、本実施形態では2つの屈曲部を含んでいる。太横サイプ7の溝幅W6は、好ましくは、1.2~1.5mmである。このような太横サイプ7は、タイヤ1のウェット性能及び雪上性能を向上することができる。
【0041】
太横サイプ7のタイヤ軸方向の長さL3は、好ましくは、第1陸部4Aのタイヤ軸方向の幅W3の60%~80%である。太横サイプ7の長さL3が第1陸部4Aの幅W3の60%以上であることで、良好な排水性及びエッジ効果を維持し、タイヤ1のウェット性能及び雪上性能を向上することができる。このような観点から、太横サイプ7の長さL3は、第1陸部4Aの幅W3の、より好ましくは、63%以上であり、さらに好ましくは、65%以上である。
【0042】
太横サイプ7の長さL3が第1陸部4Aの幅W3の80%以下であることで、第1陸部4Aの剛性を維持し、タイヤ1のドライ性能及び耐摩耗性能を向上することができる。このような観点から、太横サイプ7の長さL3は、第1陸部4Aの幅W3の、より好ましくは、77%以下であり、さらに好ましくは、75%以下である。
【0043】
図3に示されるように、太横サイプ7の深さd2は、好ましくは、第1周方向溝3Aの深さD1の60%~80%である。太横サイプ7の深さd2が第1周方向溝3Aの深さD1の60%以上であることで、排水性を向上することができ、タイヤ1のウェット性能を向上することができる。このような観点から、太横サイプ7の深さd2は、第1周方向溝3Aの深さD1の、より好ましくは、63%以上であり、さらに好ましくは、65%以上である。
【0044】
太横サイプ7の深さd2が第1周方向溝3Aの深さD1の80%以下であることで、第1陸部4Aの剛性を維持し、タイヤ1のドライ性能及び耐摩耗性能を向上することができる。このような観点から、太横サイプ7の深さd2は、第1周方向溝3Aの深さD1の、より好ましくは、77%以下であり、さらに好ましくは、75%以下である。
【0045】
細横サイプ8は、例えば、第1横溝5Aと第2周方向溝3Bとを連通する第1細横サイプ8Aと、第2横溝5Bと第1周方向溝3Aとを連通する第2細横サイプ8Bとを含んでいる。第2細横サイプ8Bの溝幅W8は、第1細横サイプ8Aの溝幅W7に等しいのが望ましい。第1細横サイプ8Aの溝幅W7及び第2細横サイプ8Bの溝幅W8は、好ましくは、1.0mm以下である。
【0046】
細横サイプ8は、さらに、太横サイプ7と第2周方向溝3Bとを連通する第3細横サイプ8Cを含むのが望ましい。第3細横サイプ8Cの溝幅W9は、例えば、第1細横サイプ8Aの溝幅W7よりも小さい。
【0047】
本実施形態の第1陸部4Aには、第1周方向溝3Aからタイヤ軸方向に凹む切欠部9aが設けられている。切欠部9aは、例えば、第1横溝5Aと太横サイプ7との間にわたり設けられている。このような切欠部9aは、第1周方向溝3Aの排水性を補助するとともに、雪柱せん断力を高め、タイヤ1のウェット性能及び雪上性能を向上させることができる。また、切欠部9aは、第1周方向溝3Aの長手方向に沿って部分的に設けられているので、タイヤ1のノイズ性能に与える影響を低減することができる。
【0048】
本実施形態の第1陸部4Aには、横溝5と周方向溝3との連通部分に面取部9bが設けられている。面取部9bは、例えば、横溝5と周方向溝3との鋭角の角部に設けられている。このような面取部9bは、角部に応力が集中することを抑制し、第1陸部4Aの部分的な欠けや偏摩耗を抑制することができる。
【0049】
図1に示されるように、陸部4は、例えば、第1周方向溝3Aを挟んで第1陸部4Aの反対側に区分される第2陸部4Bと、第2周方向溝3Bを挟んで第1陸部4Aの反対側に区分される第3陸部4Cとを含んでいる。本実施形態の第3陸部4Cは、一対の第2周方向溝3Bの間に区分されている。なお、第2周方向溝3Bが1本の場合は、第3陸部4Cは省略される。
【0050】
第2陸部4Bには、例えば、タイヤ軸方向に延びる第3横溝10、第4細横サイプ11A及び第5細横サイプ11Bが設けられている。第3横溝10は、少なくとも第1周方向溝3A側の端部が第2陸部4B内で終端している。このような第3横溝10は、第2陸部4Bの剛性を低下させることなく、タイヤ1のウェット性能及び雪上性能を向上することができる。また、第3横溝10は、第1周方向溝3Aに連通していないので、タイヤ1のノイズ性能を向上することができる。
【0051】
第4細横サイプ11Aは、第3横溝10と第1周方向溝3Aとを連通するのが望ましい。第5細横サイプ11Bは、例えば、第1周方向溝3Aから少なくとも一部がジグザグ状に延びている。このような第4細横サイプ11A及び第5細横サイプ11Bは、エッジ効果によるタイヤ1の雪上性能の向上と、小さい溝幅によるノイズ性能の向上とを両立することができる。
【0052】
本実施形態の第2陸部4Bには、タイヤ周方向に延びる縦サイプ12が設けられている。縦サイプ12は、例えば、第3横溝10及び第5細横サイプ11Bに交差するように延びている。このような縦サイプ12は、第2陸部4Bの剛性を低下させることなく、タイヤ1の雪上性能を向上することができる。
【0053】
第3陸部4Cには、例えば、タイヤ軸方向に延びる第4横溝13と第2太横サイプ14とが設けられている。第4横溝13は、第2周方向溝3Bから延びかつ第3陸部4C内で終端するのが望ましい。本実施形態の第4横溝13は、タイヤ軸方向の両側から第3陸部4Cの内部に向けて延びている。このような第4横溝13は、第3陸部4Cの剛性を低下させることなく、タイヤ1のウェット性能及び雪上性能を向上することができる。
【0054】
図3に示されるように、第4横溝13の深さd3は、好ましくは、第2周方向溝3Bの深さD2よりも小さい。このような第4横溝13は、雪上性能とノイズ性能とを両立するのに適している。
【0055】
図1に示されるように、第2太横サイプ14は、例えば、第3陸部4Cを横断している。本実施形態の第2太横サイプ14は、一対の第2周方向溝3Bのそれぞれに連通している。このような第2太横サイプ14は、タイヤ1のウェット性能及び雪上性能を向上することができる。
【0056】
本実施形態の第3陸部4Cには、第2周方向溝3Bからタイヤ軸方向に凹む第2切欠部15が設けられている。第2切欠部15は、少なくとも第4横溝13を含む位置に設けられている。このような第2切欠部15は、第2周方向溝3Bの排水性を補助するとともに、雪柱せん断力を高め、タイヤ1のウェット性能及び雪上性能を向上させることができる。また、第2切欠部15は、第2周方向溝3Bの長手方向に沿って部分的に設けられているので、タイヤ1のノイズ性能に与える影響を低減することができる。
【0057】
本実施形態では、第1周方向溝3Aは、タイヤ軸方向の外側に配されるショルダー周方向溝である。また、本実施形態の第2周方向溝3Bは、ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向の内側に配されるクラウン周方向溝である。このようなタイヤ1は、接地圧の大きいタイヤ軸方向の内側のクラウン周方向溝の溝幅が大きいので、排水性を向上することができ、ウェット性能を向上することができる。また、このタイヤ1は、タイヤ軸方向の外側のショルダー周方向溝の溝幅が小さいので、外部に伝播されるノイズを低減することができ、ノイズ性能を向上することができる。
【0058】
本実施形態の第1陸部4Aは、ミドル陸部である。また、本実施形態の第2陸部4Bは、ショルダー陸部である。さらに、本実施形態の第3陸部4Cは、クラウン陸部である。このようなタイヤ1は、ミドル陸部に設けられた横溝5及び横サイプ6により、ウェット性能及び雪上性能とノイズ性能とを両立することができる。
【0059】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。
【実施例
【0060】
図1のトレッドパターンを有するタイヤが表1の仕様の基づき試作された。比較例として、横溝が第1陸部を横切り、太横サイプが設けられないタイヤが試作された。これら試作されたタイヤを用いて、ドライ性能、ウェット性能、雪上性能、ノイズ性能及び耐摩耗性能がテストされた。主な共通仕様とテストの方法は以下のとおりである。
【0061】
<共通仕様>
タイヤサイズ : 255/50R20 105H
リムサイズ : 20×8.0J
空気圧 : 240kPa
テスト車両 : 中型四輪駆動車
タイヤ装着位置 : 全輪
【0062】
<ドライ性能>
試作されたタイヤを装着したテスト車両で、ドライ状態の舗装路面を走行したときの操縦安定性が、テストドライバーの官能により評価された。結果は、比較例を100とする指数で表され、数値が大きいほど官能評価が良好であり、ドライ性能に優れていることを示す。
【0063】
<ウェット性能>
試作されたタイヤを装着したテスト車両で、水膜1mmの舗装路面を初期時速100kmから制動したときの制動距離が測定された。結果は、比較例を100とする指数で表され、数値が大きいほど制動距離が小さく、ウェット性能に優れていることを示す。
【0064】
<雪上性能>
試作されたタイヤを装着したテスト車両で、雪上路面を走行したときの操縦安定性が、テストドライバーの官能により評価された。結果は、比較例を100とする指数で表され、数値が大きいほど官能評価が良好であり、雪上性能に優れていることを示す。
【0065】
<ノイズ性能>
試作されたタイヤを装着したテスト車両で、ノイズ計測路面を時速50kmで走行したときの通過騒音レベルが測定された。結果は、比較例を100とする指数で表され、数値が大きいほど通過騒音レベルが小さく、ノイズ性能に優れていることを示す。
【0066】
<耐摩耗性能>
試作されたタイヤを装着したテスト車両で、ドライの舗装路面を平均時速80kmで96時間走行したときの残溝量が測定された。結果は、比較例を100とする指数で表され、数値が大きいほど残溝量が大きく、耐摩耗性能に優れていることを示す。
【0067】
テストの結果が表1に示される。
【表1】
【0068】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例に対して、各性能の合計で評価されるバランス性能が良好であり、特に、ウェット性能及び雪上性能とノイズ性能とを両立していることが確認された。
【符号の説明】
【0069】
1 タイヤ
2 トレッド部
3 周方向溝
3A 第1周方向溝
3B 第2周方向溝
4 陸部
4A 第1陸部
5 横溝
6 横サイプ
図1
図2
図3