(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20240903BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20240903BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20240903BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240903BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20240903BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/0568
H01M10/052
H01M4/134
H01M4/38 Z
(21)【出願番号】P 2022555321
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(86)【国際出願番号】 JP2021033033
(87)【国際公開番号】W WO2022074999
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2020170718
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】松本 隆平
(72)【発明者】
【氏名】桑島 秀明
(72)【発明者】
【氏名】安田 寿和
(72)【発明者】
【氏名】中山 有理
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/021522(WO,A1)
【文献】特開2020-017362(JP,A)
【文献】特表2009-544136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 4/00- 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極および電解液を含む二次電池であって、
前記負極は金属リチウム電極であり、
前記電解液は、
スルホニル基含有リチウム塩;
グライム系溶媒;および
下記一般式(I)~(V)で表される化合物およびリチウムビス(オキサラート)ホウ酸からなる群から選択される1種以上の添加剤
を含
み、かつ前記グライム系溶媒を電解液全量に対して50重量%以上で含む、二次電池:
【化1】
(式(I)中、R
11およびR
12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数1以上10以下の炭化水素基である);
【化2】
(式(II)中、R
21、R
22、R
23およびR
24は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数1以上10以下の炭化水素基である);
【化3】
(式(III)中、mは1以上10以下の整数である);
【化4】
(式(IV)中、R
41、R
42、R
43およびR
44は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数1以上10以下の炭化水素基である;X
1およびX
2は、それぞれ独立して、酸素原子またはメチレン基である);および
【化5】
(式(V)中、Rhはハロゲン原子である)。
【請求項2】
前記電解液は前記添加剤を0.1w/v%以上20w/v%以下で含む、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記スルホニル基含有リチウム塩は、下記一般式(S1)で表されるスルホニルイミド系リチウム塩および下記一般式(S2)で表されるスルホン酸リチウム塩からなる群から選択される1種以上の化合物である、請求項1または2に記載の二次電池:
【化6】
(式(S1)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子または炭素原子数1以上10以下のハロゲン原子含有炭化水素基である);および
【化7】
(式(S2)中、R
3は、ハロゲン原子または炭素原子数1以上10以下のハロゲン原子含有炭化水素基である)。
【請求項4】
前記電解液は前記スルホニル基含有リチウム塩を0.1モル/L以上10モル/L以下で含む、請求項1~3のいずれかに記載の二次電池。
【請求項5】
前記グライム系溶媒は、下記一般式(G)で表される直鎖エーテルである、請求項1~4のいずれかに記載の二次電池:
【化8】
(式(G)中、R’およびR’’は、それぞれ独立して、炭素原子数1以上10以下の炭化水素基である;nは1以上10以下の整数である)。
【請求項6】
前記電解液は、前記添加剤として前記一般式(I)で表される化合物を単独で1.5w/v%以上15w/v%以下にて含む、請求項1~
5のいずれかに記載の二次電池。
【請求項7】
前記電解液は、前記添加剤として前記一般式(II)で表される化合物を単独で0.1w/v%以上20w/v%以下にて含む、請求項1~
5のいずれかに記載の二次電池。
【請求項8】
前記電解液は、前記添加剤として前記一般式(III)で表される化合物を単独で1.5w/v%以上15w/v%以下にて含む、請求項1~
5のいずれかに記載の二次電池。
【請求項9】
前記電解液は、前記添加剤として前記リチウムビス(オキサラート)ホウ酸を単独で0.1w/v%以上20w/v%以下にて含む、請求項1~
5のいずれかに記載の二次電池。
【請求項10】
前記電解液は、前記添加剤として前記一般式(V)で表される化合物を単独で0.1w/v%以上20w/v%以下にて含む、請求項1~
5のいずれかに記載の二次電池。
【請求項11】
前記二次電池はリチウムイオン二次電池である、請求項1~
10のいずれかに記載の二次電池。
【請求項12】
前記正極および前記負極はリチウムイオンを吸蔵放出可能な電極である、請求項1~
11のいずれかに記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、二次電池は、正極、負極、セパレータおよび電解液が外装体内に封入された構造を有している。このような二次電池においては、電池容量の増大の観点から、負極に金属リチウム電極を用いる試みがなされているが、デンドライトの発生およびサイクル特性の低下等の問題が生じている。
【0003】
そこで、金属リチウム電極を用いた二次電池におけるデンドライトの抑制およびサイクル特性の向上を目的として、リチウム金属と電解液が直接接触することで起こりうる副反応を回避させる手法が提案されており、例えば、以下の技術が報告されている。
例えば、特許文献1~3においては、ケイ素含有化合物、セラミック、硫化物、またはポリマーを用いて、負極(金属リチウム)表面に保護層を形成する技術が開示されている。
また例えば、特許文献4~5においては、グライム電解液に硝酸リチウムを添加する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】US2017-214053A
【文献】US2016-351878A
【文献】US2018-166743A
【文献】US2005-156575A
【文献】US2005-147886A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明の発明者等は、従来の技術では、以下の新たな問題が生じることを見出した。
(1)放電時において過電圧が上昇するため、電池のエネルギー密度を低く設定せざるを得ないという問題が生じていた。
(2)充放電の繰り返し時において、十分なサイクル特性が得られなかった。
【0006】
本発明は、過電圧をより十分に抑制する二次電池を提供することを目的とする。
【0007】
本発明はまた、過電圧をより十分に抑制するとともに、サイクル特性により十分に優れた二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
正極、負極および電解液を含む二次電池であって、
前記負極は金属リチウム電極であり、
前記電解液は、
スルホニル基含有リチウム塩;
グライム系溶媒;および
下記一般式(I)~(V)で表される化合物およびリチウムビス(オキサラート)ホウ酸からなる群から選択される1種以上の添加剤
を含む、二次電池:
【化1】
(式(I)中、R
11およびR
12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数1以上10以下の炭化水素基である);
【化2】
(式(II)中、R
21、R
22、R
23およびR
24は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数1以上10以下の炭化水素基である);
【化3】
(式(III)中、mは1以上10以下の整数である);
【化4】
(式(IV)中、R
41、R
42、R
43およびR
44は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数1以上10以下の炭化水素基である;X
1およびX
2は、それぞれ独立して、酸素原子またはメチレン基である);および
【化5】
(式(V)中、Rhはハロゲン原子である)
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の二次電池は、過電圧をより十分に抑制することができるとともに、サイクル特性により十分に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施態様として供される二次電池(円筒型二次電池)の模式的な断面図である。
【
図2】本発明の一実施態様として供される二次電池(平板型ラミネートフィルム型二次電池)の模式的な斜視図である。
【
図3】実施例で製造したハーフセルの模式的構成図である。
【
図4】実施例1で作成された初回充放電曲線を示すグラフである。
【
図5】実施例2で作成された初回充放電曲線を示すグラフである。
【
図6】実施例3で作成された初回充放電曲線を示すグラフである。
【
図7】実施例4で作成された初回充放電曲線を示すグラフである。
【
図8】実施例5で作成された初回充放電曲線を示すグラフである。
【
図9】実施例6で作成された初回充放電曲線を示すグラフである。
【
図10】実施例7で作成された初回充放電曲線を示すグラフである。
【
図11】実施例8で作成された初回充放電曲線を示すグラフである。
【
図12】実施例9で作成された初回充放電曲線を示すグラフである。
【
図13】実施例10で作成された初回充放電曲線を示すグラフである。
【
図14】実施例11で作成された初回充放電曲線を示すグラフである。
【
図15】実施例12で作成された初回充放電曲線を示すグラフである。
【
図16】実施例13で作成された初回充放電曲線を示すグラフである。
【
図17】比較例1で作成された初回充放電曲線を示すグラフである。
【
図18】比較例2で作成された初回充放電曲線を示すグラフである。
【
図19】各種添加剤のクーロン効率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[二次電池]
本発明は二次電池を提供する。本明細書中、「二次電池」という用語は充電および放電の繰り返しが可能な電池のことを指している。「二次電池」は、その名称に過度に拘泥されるものではなく、例えば、「蓄電デバイス」などの電気化学デバイスも包含し得る。
【0012】
本発明の二次電池は、正極、負極および電解液を含み、通常は正極と負極との間に配置されるセパレータをさらに含む。本発明の二次電池は通常、正極、負極、電解液およびセパレータ等が外装体内に封入されてなっている。
【0013】
(電解液)
電解液は非水系電解液である。非水系電解液とは、電解質イオンが移動する媒体が水を含まない電解液、すなわち媒体として有機溶媒のみを用いた電解液という意味である。
【0014】
本発明において、電解液は電解質、溶媒および特定の添加剤を含む。
【0015】
・電解質
本発明において電解液の電解質はスルホニル基含有リチウム塩を含む。電解質がスルホニル基含有リチウム塩を含まない場合、イオン伝導性に乏しい。
【0016】
スルホニル基含有リチウム塩は、分子構造においてスルホニル基(-SO2-)を含有する有機リチウム塩である。スルホニル基含有リチウム塩の具体例として、例えば、下記一般式(S1)で表されるスルホニルイミド系リチウム塩および下記一般式(S2)で表されるスルホン酸リチウム塩からなる群から選択される1種以上の化合物が挙げられる。スルホニル基含有リチウム塩は、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、好ましくは下記一般式(S1)で表されるスルホニルイミド系リチウム塩である。本明細書中、過電圧の抑制とは、過電圧のピークの大きさ(すなわち過電圧の絶対値)が低減されることを意味するものとする。従って、例えば実施例で測定される初回充放電曲線において、縦軸のピーク先端に関する電圧の読み取り値が大きくなるほど(すなわち下方へのピークが小さいほど)、より十分に抑制されていることを意味する。
【0017】
【0018】
式(S1)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子または炭素原子数1以上10以下のハロゲン原子含有炭化水素基であり、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、好ましくはハロゲン原子または炭素原子数1以上5以下のハロゲン原子含有炭化水素基であり、より好ましくは炭素原子数1以上3以下のハロゲン原子含有炭化水素基である。R1およびR2について、ハロゲン原子含有炭化水素基は、1価炭化水素基であり、ハロゲン原子を含有する限り、飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であってもよく、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基)が好ましい。ハロゲン原子含有炭化水素基に含有されるハロゲン原子の数は特に限定されず、炭化水素基が有する少なくとも一部の水素原子がハロゲン原子に置換されていればよい。ハロゲン原子含有炭化水素基は、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、炭化水素基が有する全ての水素原子がハロゲン原子に置換されていることが好ましい。ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子または臭素原子であってもよく、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、フッ素原子が好ましい。ハロゲン原子含有炭化水素基が飽和脂肪族炭化水素基であって、その全ての水素原子がフッ素原子に置換されている場合、当該ハロゲン原子含有炭化水素基はパーフルオロアルキル基と称され得る。R1およびR2について好ましいハロゲン原子含有炭化水素基として、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基等が挙げられる。R1およびR2は、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、相互に同じ基を示すことが好ましい。
【0019】
このような一般式(S1)で表される化合物(化合物(S1)またはスルホニルイミド系リチウム塩(S1)とも称され得る)として、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0020】
【0021】
【0022】
式(S2)中、R3は、ハロゲン原子または炭素原子数1以上10以下のハロゲン原子含有炭化水素基であり、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、好ましくはハロゲン原子または炭素原子数1以上5以下のハロゲン原子含有炭化水素基であり、より好ましくは炭素原子数1以上3以下のハロゲン原子含有炭化水素基である。R3について、ハロゲン原子含有炭化水素基は、R1およびR2のハロゲン原子含有炭化水素基と同様であって、1価炭化水素基であり、ハロゲン原子を含有する限り、飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であってもよく、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基)が好ましい。ハロゲン原子含有炭化水素基に含有されるハロゲン原子の数は特に限定されず、炭化水素基が有する少なくとも一部の水素原子がハロゲン原子に置換されていればよい。ハロゲン原子含有炭化水素基は、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、炭化水素基が有する全ての水素原子がハロゲン原子に置換されていることが好ましい。ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子または臭素原子であってもよく、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、フッ素原子が好ましい。ハロゲン原子含有炭化水素基が飽和脂肪族炭化水素基であって、その全ての水素原子がフッ素原子に置換されている場合、当該ハロゲン原子含有炭化水素基はパーフルオロアルキル基と称され得る。R3について好ましいハロゲン原子含有炭化水素基として、R1およびR2について好ましいハロゲン原子含有炭化水素基と同様の基が挙げられる。
【0023】
このような一般式(S2)で表される化合物(化合物(S2)またはスルホン酸リチウム塩(S2)とも称され得る)として、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0024】
【0025】
スルホニル基含有リチウム塩は市販品として入手可能である。
例えば、化合物(s1-1)はLiFSI(日本触媒社製)として入手可能である。
また例えば、化合物(s1-2)はLiTFSI(富山薬品工業製社製)として入手可能である。
また例えば、化合物(s1-3)はLiBETI(東京化成工業社製)として入手可能である。
また例えば、化合物(s1-5)はLiN(SO2C4F9)2(富山薬品工業社製)として入手可能である。
また例えば、化合物(s2-2)はLiCF3SO3(富山薬品工業社製)として入手可能である。
また例えば、化合物(s2-5)はLiC4F9SO3(富山薬品工業社製)として入手可能である。
【0026】
スルホニル基含有リチウム塩の含有量は特に限定されず、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、好ましくは0.1モル/L以上10モル/L以下、より好ましくは0.1モル/L以上5モル/L以下、さらに好ましくは0.5モル/L以上3モル/L以下である。スルホニル基含有リチウム塩は構造の異なる2種以上の化合物を含んでもよく、その場合、それらの合計含有量が上記範囲内であればよい。なお、単位「モル/L」は電解液全量1L中に含有されるモル数を意味する。
【0027】
本発明は、電解液がスルホニル基含有リチウム塩以外の電解質(以下、他の電解質ということがある)を含むことを妨げるものではない。他の電解質の含有量は通常、スルホニル基含有リチウム塩の含有量以下であり、例えば5モル/L以下、特に0.5モル/L以下であってもよい。他の電解質の含有量は、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、少ないほど好ましく、0モル/Lであることがより好ましい。
【0028】
・溶媒
本発明において電解液の溶媒はグライム系溶媒を主溶媒として含む。
【0029】
グライム系溶媒は、二次電池の分野でグライム系溶媒として使用されているあらゆる溶媒であってもよい。グライム系溶媒として、例えば、下記一般式(G)で表される直鎖エーテルからなる群から選択される1種以上の化合物が挙げられる。ここで、本発明にいう「直鎖エーテル」とは、少なくともエチレンオキシ構造単位の部位が分岐していないこと(すなわち、枝別れ構造を有していないこと)を意味している。それゆえ、下記一般式(G)におけるR’およびR’’については、必ずしも直鎖構造である必要はなく、枝別れ構造を有するものであってもよい。ある1つの好適な態様でいえば、本発明において電解液に用いられる直鎖エーテルは、エチレンオキシ構造単位の部位が枝別れ構造を有していないだけでなく、R’およびR’’もまた枝別れ構造を有していないグリコール系エーテルである。
【0030】
【0031】
式(G)中、R’およびR’’は、それぞれ独立して、炭素原子数1以上10以下の炭化水素基であり、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、好ましくは炭素原子数1以上5以下の炭化水素基であり、より好ましくは炭素原子数1以上3以下の炭化水素基である。R’およびR’’について、炭化水素基は、1価炭化水素基であり、飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であってもよく、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基)が好ましい。R’およびR’’について好ましい炭化水素基として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が挙げられる。R’およびR’’は、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、相互に同じ基を示すことが好ましい。
【0032】
nは1以上10以下の整数であり、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、好ましくは1以上5以下の整数であり、より好ましくは1以上3以下の整数であり、さらに好ましくは1である。
【0033】
このようなグライム系溶媒の好ましい具体例として、例えば、エチレングリコール系エーテル、ジエチレングリコール系エーテル、トリエチレングリコール系エーテル、テトラエチレングリコール系エーテルが挙げられる。過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、エチレングリコール系エーテル(特にエチレングリコールジメチルエーテル(ジメトキシエタン))が好ましい。
【0034】
エチレングリコール系エーテルとして、例えば、以下の化合物が挙げられる:
エチレングリコールジメチルエーテル(ジメトキシエタン)、エチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールメチルプロピルエーテル、エチレングリコールブチルメチルエーテル、エチレングリコールメチルペンチルエーテル、エチレングリコールメチルヘキシルエーテル、エチレングリコールメチルヘプチルエーテル、エチレングリコールメチルオクチルエーテル;
エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールエチルプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエチルエーテル、エチレングリコールエチルペンチルエーテル、エチレングリコールエチルヘキシルエーテル、エチレングリコールエチルヘプチルエーテル、エチレングリコールエチルオクチルエーテル;
エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールブチルプロピルエーテル、エチレングリコールプロピルペンチルエーテル、エチレングリコールプロピルヘキシルエーテル、エチレングリコールプロピルヘプチルエーテル、エチレングリコールプロピルオクチルエーテル。
【0035】
ジエチレングリコール系エーテルとして、例えば、以下の化合物が挙げられる:
ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルペンチルエーテル、ジエチレングリコールメチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールメチルへプチルエーテル、ジエチレングリコールメチルオクチルエーテル;
ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルペンチルエーテル、ジエチレングリコールエチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールエチルへプチルエーテル、ジエチレングリコールエチルオクチルエーテル;
ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールプロピルペンチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールプロピルへプチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルオクチルエーテル。
【0036】
トリエチレングリコール系エーテルとして、例えば、以下の化合物が挙げられる:
トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルプロピルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルペンチルエーテル、トリエチレングリコールメチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルへプチルエーテル、トリエチレングリコールメチルオクチルエーテル;
トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルプロピルエーテル、トリエチレングリコールブチルエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルペンチルエーテル、トリエチレングリコールエチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールエチルへプチルエーテル、トリエチレングリコールエチルオクチルエーテル;
トリエチレングリコールジプロピルエーテル、トリエチレングリコールブチルプロピルエーテル、トリエチレングリコールプロピルペンチルエーテル、トリエチレングリコールプロピルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールプロピルへプチルエーテル、トリエチレングリコールプロピルオクチルエーテル。
【0037】
テトラエチレングリコール系エーテルとして、例えば、以下の化合物が挙げられる:
テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)、テトラエチレングリコールエチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルプロピルエーテル、テトラエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルペンチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールメチルへプチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルオクチルエーテル;
テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールエチルプロピルエーテル、テトラエチレングリコールブチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールエチルペンチルエーテル、テトラエチレングリコールエチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールエチルへプチルエーテル、テトラエチレングリコールエチルオクチルエーテル;
テトラエチレングリコールジプロピルエーテル、テトラエチレングリコールブチルプロピルエーテル、テトラエチレングリコールプロピルペンチルエーテル、テトラエチレングリコールプロピルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールプロピルへプチルエーテル、テトラエチレングリコールプロピルオクチルエーテル。
【0038】
グライム系溶媒は市販品として入手可能である。
例えば、ジメトキシエタンは富山薬品工業社製として入手可能である。
また例えば、ジグライムは富山薬品工業社製として入手可能である。
また例えば、トリグライムは富山薬品工業社製として入手可能である。
また例えば、テトラグライムは富山薬品工業社製として入手可能である。
【0039】
グライム系溶媒は主溶媒として電解液に含まれる。グライム系溶媒の含有量は通常、電解液全量に対して50重量%以上であり、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、好ましくは60重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上である。グライム系溶媒の含有量の上限値は特に限定されず、例えば、グライム系溶媒の含有量は通常、95重量%以下、特に90重量%以下であってもよい。グライム系溶媒は構造の異なる2種以上のグライム系溶媒を含んでもよく、その場合、それらの合計含有量が上記範囲内であればよい。
【0040】
本発明は、電解液がグライム系溶媒以外の溶媒(以下、他の溶媒ということがある)を含むことを妨げるものではない。他の溶媒の含有量は通常、グライム系溶媒の含有量よりも少なく、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、電解液全量に対して、好ましくは30重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下であり、さらに好ましくは3重量%以下である。他の溶媒の含有量は、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、少ないほど好ましく、0重量%であることがより好ましい。
【0041】
・添加剤
本発明の電解液は、下記一般式(I)~(V)で表される化合物およびリチウムビス(オキサラート)ホウ酸からなる群から選択される1種以上の添加剤を含む。本発明においては、スルホニル基含有リチウム塩およびグライム系溶媒から構成される電解液に当該特定の添加剤を含有させることにより、リチウム金属負極析出溶解時(すなわち充放電時)の過電圧が低減される。本発明においては、このように、当該特定の添加剤の電解液への少量添加により、簡便に過電圧を低減することが可能となる。これにより金属リチウム電池を用いた電池のエネルギー密度向上、サイクル特性改善に効果が得られる。当該特定の添加剤は通常、電解液中、溶解されている。
【0042】
【0043】
式(I)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数1以上10以下の炭化水素基であり、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、好ましくは水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数1以上3以下の炭化水素基であり、より好ましくは水素原子またはハロゲン原子であり、さらに好ましくは水素原子である。R11およびR12について、炭化水素基は、1価炭化水素基であり、飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であってもよく、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基)が好ましい。ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子または臭素原子であってもよく、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、フッ素原子が好ましい。R11およびR12は、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、相互に同じ基を示すことが好ましい。
【0044】
このような一般式(I)で表される化合物(化合物(I)またはビニレンカーボネート類(I)とも称され得る)として、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0045】
【0046】
【0047】
式(II)中、R21、R22、R23およびR24は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数1以上10以下の炭化水素基であり、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、好ましくは水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数1以上3以下の炭化水素基であり、より好ましくは水素原子またはハロゲン原子であり、さらに好ましくはR21およびR22が水素原子であり、R23およびR24のうち一方が水素原子であり、他方がハロゲン原子(特にフッ素原子)である。R21、R22、R23およびR24について炭化水素基は、1価炭化水素基であり、飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であってもよく、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基)が好ましい。ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子または臭素原子であってもよく、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、フッ素原子が好ましい。
【0048】
このような一般式(II)で表される化合物(化合物(II)またはエチレンカーボネート類(II)とも称され得る)として、例えば、以下の化合物が挙げられる。好ましい化合物(II)は、ハロゲン原子(特にフッ素原子)を含有する。ハロゲン原子を含有する化合物(II)は、一般式(II)においてR21、R22、R23およびR24のうち少なくとも1つの基(特に1つの基のみ)がハロゲン原子である化合物であり、このような化合物はハロゲン化エチレンカーボネート類(II)とも称され得る。
【0049】
【0050】
【0051】
式(III)中、mは1以上10以下の整数であり、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、好ましくは2以上8以下の整数であり、より好ましくは2以上6以下の整数であり、さらに好ましくは3以上5以下の整数である。
【0052】
このような一般式(III)で表される化合物(化合物(III)またはアジポニトリル類(III)とも称され得る)として、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0053】
【0054】
【0055】
式(IV)中、R41、R42、R43およびR44は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数1以上10以下の炭化水素基であり、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、好ましくは水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数1以上3以下の炭化水素基であり、より好ましくは水素原子またはハロゲン原子であり、さらに好ましくはR41、R42、R43およびR44が水素原子である。R41、R42、R43およびR44について炭化水素基は、1価炭化水素基であり、飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であってもよく、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基)が好ましい。ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子または臭素原子であってもよく、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、フッ素原子が好ましい。
【0056】
X1およびX2は、それぞれ独立して、酸素原子またはメチレン基であり、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、好ましくはX1およびX2の少なくとも一方は酸素原子であり、より好ましくはX1およびX2の両方は酸素原子である。
【0057】
このような一般式(IV)で表される化合物(化合物(IV)または環状スルホニル化合物類(IV)とも称され得る)として、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0058】
【0059】
【0060】
式(V)中、Rhはハロゲン原子であり、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、好ましくはフッ素原子または塩素原子であり、より好ましくはフッ素原子である。Rhについてハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子または臭素原子であってもよい。
【0061】
このような一般式(V)で表される化合物(化合物(V)またはハロゲン化リチウム類(V)とも称され得る)として、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0062】
【0063】
電解液は、例えば、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、好ましくは以下の群Aから選択される1種以上を含み、より好ましくは以下の群Bから選択される1種以上を含み、さらに好ましくは以下の群Cから選択される1種以上を含み、特に好ましくは以下の群Dから選択される1種以上を含み、最も好ましくは以下の群Eから選択される1種以上を含む:
群A:一般式(I)、(II)、(III)および(V)で表される化合物ならびにリチウムビス(オキサラート)ホウ酸からなる群;
群B:一般式(I)、(II)および(V)で表される化合物ならびにリチウムビス(オキサラート)ホウ酸からなる群;
群C:一般式(I)、(II)および(V)(特にRh=塩素原子)で表される化合物からなる群;
群D:一般式(II)および(V)(特にRh=塩素原子)で表される化合物からなる群;
群E:一般式(II)および一般式(V)(特にRh=塩素原子)で表される化合物からなる群。
【0064】
電解液は、また例えば、過電圧のさらなる抑制と入手容易性とのバランスの観点から、一般式(I)および(II)で表される化合物ならびに一般式(V)で表される化合物(特にLiF)からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0065】
上記特定の添加剤の含有量は特に限定されず、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、好ましくは0.1w/v%以上20w/v%以下、より好ましくは0.1w/v%以上15w/v%以下、さらに好ましくは0.5w/v%以上15w/v%以下、特に好ましくは1.5w/v%以上12w/v%以下、最も好ましくは1.5w/v%以上10w/v%以下である。上記特定の添加剤は構造の異なる2種以上の化合物を含んでもよく、その場合、それらの合計含有量が上記範囲内であればよい。なお、単位「w/v%」は電解液全量100mL中に含有されるグラム数を意味する。
【0066】
上記特定の添加剤の好ましい含有量は種類に応じて変動してもよい。
例えば、電解液が上記特定の添加剤として前記一般式(I)で表される化合物を単独で含む場合、当該添加剤の含有量は、過電圧のさらなる抑制の観点から、好ましくは1.5w/v%以上15w/v%以下であり、より好ましくは5w/v%以上15w/v%以下であり、さらに好ましくは8w/v%以上12w/v%以下である。
【0067】
また例えば、電解液が上記特定の添加剤として前記一般式(II)で表される化合物を単独で含む場合、当該添加剤の含有量は、過電圧のさらなる抑制の観点から、好ましくは0.1w/v%以上20w/v%以下であり、より好ましくは0.5w/v%以上15w/v%以下であり、さらに好ましくは0.5w/v%以上12w/v%以下である。
【0068】
また例えば、電解液が上記特定の添加剤として前記一般式(III)で表される化合物を単独で含む場合、当該添加剤の含有量は、過電圧のさらなる抑制の観点から、好ましくは1.5w/v%以上15w/v%以下であり、より好ましくは5w/v%以上15w/v%以下であり、さらに好ましくは8w/v%以上12w/v%以下である。
【0069】
また例えば、電解液が上記特定の添加剤として前記リチウムビス(オキサラート)ホウ酸を単独で含む場合、当該添加剤の含有量は、過電圧のさらなる抑制の観点から、好ましくは0.1w/v%以上20w/v%以下であり、より好ましくは0.1w/v%以上10w/v%以下であり、さらに好ましくは0.5w/v%以上5w/v%以下である。
【0070】
また例えば、電解液が上記特定の添加剤として前記一般式(V)で表される化合物を単独で含む場合、当該添加剤の含有量は、過電圧のさらなる抑制の観点から、好ましくは0.1w/v%以上20w/v%以下であり、より好ましくは0.5w/v%以上15w/v%以下であり、さらに好ましくは0.5w/v%以上8w/v%以下であり、特に好ましくは0.5w/v%以上6w/v%以下である。この場合において、例えば、前記一般式(V)で表される化合物が塩化リチウム単独である場合、過電圧のさらなる抑制の観点から、その含有量は、上記範囲内であることが好ましい。また例えば、前記一般式(V)で表される化合物がフッ化リチウム単独である場合、過電圧のさらなる抑制の観点から、その含有量は、1.5w/v%以上6w/v%以下、特に1.5w/v%以上4w/v%以下であることが最も好ましい。
【0071】
本発明は、電解液が上記特定の添加剤以外の添加剤(以下、他の添加剤ということがある)を含むことを妨げるものではない。他の添加剤の含有量は通常、上記特定の添加剤の含有量よりも少なく、例えば5w/v%以下、特に0.5w/v%以下であってもよい。他の添加剤の含有量は、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、少ないほど好ましく、0w/v%であることがより好ましい。
【0072】
電解液は、少なくとも上記した電解質、溶媒および特定の添加剤を混合および撹拌することにより得ることができる。
【0073】
(正極および負極)
正極および負極はリチウムイオンを吸蔵放出可能な電極である。従って、本発明の二次電池は、電解液を介してリチウムイオンが正極と負極との間で移動して電池の充放電が行われる二次電池である。本発明の二次電池は、充放電にリチウムイオンが関与するため、いわゆる“リチウムイオン二次電池”に相当する。
【0074】
正極は、リチウムイオンを吸蔵放出可能な電極である限り特に限定されず、例えば、少なくとも正極層および正極集電体(箔)から構成された電極であってもよい。
【0075】
正極は、正極集電体の少なくとも片面に正極層が設けられている。この場合、例えば、正極は、正極集電体の両面に正極層が設けられていてもよいし、または正極集電体の片面に正極層が設けられていてもよい。二次電池のさらなる高容量化の観点から好ましい正極は正極集電体の両面に正極層が設けられている。
【0076】
正極層には正極活物質が含まれている。正極活物質は例えば粒状体から成るところ、粒子同士の十分な接触と形状保持のためにバインダーが正極層に含まれていることが好ましい。更には、電池反応を推進する電子の伝達を円滑にするために導電助剤が正極層に含まれていることも好ましい。正極層は、このように、複数の成分が含有されて成る形態ゆえ、“正極合材層”などと称すこともできる。
【0077】
正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵放出に資する物質である。かかる観点でいえば、正極活物質は例えば、硫黄およびリチウム含有複合酸化物からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。このような正極活物質は、単独種として含まれてよいものの、二種以上が組み合わされて含まれていてもよい。
【0078】
硫黄として、例えば、S8および/またはポリマー状の硫黄が挙げられる。
【0079】
リチウム含有複合酸化物として、例えば、リチウムと、コバルト、ニッケル、マンガンおよび鉄から成る群から選択される少なくとも1種の遷移金属とを含むリチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。リチウム含有複合酸化物は、例えば、コバルト酸リチウム(LCO)、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、チタン酸リチウム(LTO)、または、それらの遷移金属の一部を別の金属で置き換えたものであってよい。
【0080】
正極層に含まれる得るバインダーとしては、特に制限されるわけではないが、ポリフッ化ビリニデン、ビリニデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビリニデンフルオライド-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、スチレンブタジエンラバー、カルボキシメチルセルロース、およびポリアクリル酸などから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。正極層に含まれる得る導電助剤としては、特に制限されるわけではないが、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックおよびアセチレンブラック等のカーボンブラック、銅、ニッケル、アルミニウムおよび銀等の金属粉末、ならびに、ポリフェニレン誘導体などから選択される少なくとも1種を挙げることができる。より好適な態様では正極層のバインダーはポリフッ化ビニリデンであり、また、別のより好適な態様では正極層の導電助剤はカーボンブラックである。さらに好適な態様では、正極層のバインダーおよび導電助剤が、ポリフッ化ビニリデンとカーボンブラックとの組合せとなっている。
【0081】
正極に用いられる正極集電体は電池反応に起因して活物質で発生した電子を集めたり供給したりするのに資する部材である。このような集電体は、シート状の金属部材であってよく、多孔または穿孔の形態を有していてよい。例えば、集電体は金属箔、パンチングメタル、網またはエキスパンドメタル等であってよい。正極に用いられる正極集電体は、アルミニウム、ステンレスおよびニッケル等から成る群から選択される少なくとも1種を含んだ金属箔から成るものが好ましく、例えばアルミニウム箔であってよい。
【0082】
正極は、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、硫黄および/またはチタン酸リチウム(LTO)を含むことが好ましく、この場合、正極は硫黄および/またはチタン酸リチウム(LTO)を含む正極層および正極集電体(箔)を有する。
【0083】
正極は、正極活物質およびバインダー(ならびに必要により導電助剤)等を共に混合し、有機溶剤を加えてスラリーを作製し、スラリーを任意の塗工方法で正極集電体上に塗工し、乾燥させることにより、得ることができる。
【0084】
負極は金属リチウム電極であり、金属リチウムはリチウムイオンの吸蔵放出に資する物質である。「金属リチウム電極」とは、広義には、活性成分(すなわち、負極活物質)として金属リチウム(Li)を有する電極のことを指している。狭義には「金属リチウム電極」は、金属リチウムを含んで成る電極のことを指しており、例えば、リチウム金属あるいはリチウム合金を含んで成る電極、特にはそのような金属リチウム(例えば金属リチウム単体物)の負極を指している。金属リチウム電極は、リチウム金属またはリチウム合金以外の成分を含んでいてよいものの、ある好適な一態様ではリチウムの金属体から成る電極(例えば、純度90%以上、好ましくは純度95%以上、更に好ましくは純度98%以上のリチウム金属の単体物から成る電極)となっている。
【0085】
負極は、例えば、板状材料あるいは箔状材料から作製することができるが、これに限定するものではなく、粉末を用いて形成(賦形)することも可能である。
【0086】
金属リチウム電極(負極)は、負極集電体に支持されて使用されてもよい。例えば、金属リチウム電極は負極集電体上に形成されてもよい。負極集電体は、正極集電体と同様の集電体(または金属箔)が使用可能である。負極集電体は、過電圧のさらなる抑制およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、銅箔が好ましい。
【0087】
正極と負極とは後述のセパレータを介して交互に配置されている。正極および負極は、後述のセパレータとともに、平面積層構造を有していてもよいし、巻回構造を有していてもよいし、またはスタックアンドフォールディング構造を有していてもよい。詳しくは、二次電池はその内部において、正極、負極および正極と負極との間に配置されたセパレータを平面状に積層した平面積層構造を有していてもよいし、正極、負極および正極と負極との間に配置されたセパレータをロール状に巻回した巻回構造を有していてもよいし、または正極、負極および正極と負極との間に配置されたセパレータを積層してから折りたたんだ、いわゆるスタックアンドフォールディング構造を有していてもよい。
【0088】
(セパレータ)
セパレータは、正負極の接触による短絡防止および電解液保持などの観点から設けられる部材である。換言すれば、セパレータは、正極と負極との間の電子的接触を防止しつつイオンを通過させる部材であるといえる。好ましくは、セパレータは多孔性または微多孔性の絶縁性部材であり、その小さい厚みに起因して膜形態を有していてもよい。
【0089】
セパレータは無機セパレータあるいは有機セパレータであってもよい。無機セパレータとしては、例えば、ガラスフィルター、グラスファイバーを挙げることができる。有機セパレータとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンおよび/またはポリエチレン等から成る合成樹脂製の多孔質膜を挙げることができ、これらの2種類以上の多孔質膜を積層した構造とすることもできる。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜は短絡防止効果に優れ、且つ、シャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。
【0090】
(外装体)
外装体はフレキシブルパウチ(軟質袋体)であってもよいし、またはハードケース(硬質筐体)であってもよい。
外装体がフレキシブルパウチである場合、フレキシブルパウチは通常、ラミネートフィルムから形成され、周縁部をヒートシールすることにより、シール部を形成する。ラミネートフィルムとしては、金属箔とポリマーフィルムを積層したフィルムが一般的であり、具体的には、外層ポリマーフィルム/金属箔/内層ポリマーフィルムから成る3層構成のものが例示される。外層ポリマーフィルムは水分等の透過および接触等による金属箔の損傷を防止するためのものであり、ポリアミドおよびポリエステル等のポリマーが好適に使用できる。金属箔は水分およびガスの透過を防止するためのものであり、銅、アルミニウム、ステンレス等の箔が好適に使用できる。内層ポリマーフィルムは、内部に収納する電解質から金属箔を保護するとともに、ヒートシール時に溶融封口させるためのものであり、ポリオレフィンまたは酸変性ポリオレフィンが好適に使用できる。ラミネートフィルムの厚さは特に限定されず、例えば、1μm以上1mm以下であってもよい。外装体がフレキシブルパウチである場合、平面視における二次電池の周縁部でヒートシールされている。
【0091】
外装体がハードケースである場合、ハードケースは通常、金属板から形成され、周縁部をレーザー照射することにより、シール部を形成する。金属板としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、銅、ステンレスなどからなる金属材料が一般的である。金属板の厚さは特に限定されず、例えば、1μm以上1mm以下が好ましい。
【0092】
[二次電池の具体例]
以下、円筒型の二次電池および平板型のラミネートフィルム型の二次電池の具体例について説明する。
【0093】
円筒型の二次電池100の模式的な断面図を
図1に示す。二次電池100にあっては、ほぼ中空円柱状の電極構造体収納部材111の内部に、電極構造体121および一対の絶縁板112,113が収納されている。電極構造体121は、例えば、セパレータ126を介して正極122と負極124とを積層して電極構造体を得た後、電極構造体を捲回することで作製することができる。電極構造体収納部材(例えば電池缶)111は、一端部が閉鎖され、他端部が開放された中空構造を有しており、鉄(Fe)および/またはアルミニウム(Al)等から作製されている。一対の絶縁板112,113は、電極構造体121を挟むと共に、電極構造体121の捲回周面に対して垂直に延在するように配置されている。電極構造体収納部材111の開放端部には、電池蓋114、安全弁機構115および熱感抵抗素子(例えばPTC素子、Positive Temperature Coefficient 素子)116がガスケット117を介してかしめられており、これによって、電極構造体収納部材111は密閉されている。電池蓋114は、例えば、電極構造体収納部材111と同様の材料から作製されている。安全弁機構115および熱感抵抗素子116は、電池蓋114の内側に設けられており、安全弁機構115は、熱感抵抗素子116を介して電池蓋114と電気的に接続されている。安全弁機構115にあっては、内部短絡および/または外部からの加熱等に起因して内圧が一定以上になると、ディスク板115Aが反転する。これによって、電池蓋114と電極構造体121との電気的接続が切断される。大電流に起因する異常発熱を防止するために、熱感抵抗素子116の抵抗は温度の上昇に応じて増加する。ガスケット117は、例えば、絶縁性材料から作製されている。ガスケット117の表面にはアスファルト等が塗布されていてもよい。
【0094】
電極構造体121の捲回中心には、センターピン118が挿入されている。但し、センターピン118は、捲回中心に挿入されていなくてもよい。正極122には、アルミニウム等の導電性材料から作製された正極リード部123が接続されている。具体的には、正極リード部123は正極(例えば正極集電体)に取り付けられている。負極124には、銅等の導電性材料から作製された負極リード部125が接続されている。具体的には、負極リード部125は負極(例えば負極集電体)に取り付けられている。負極リード部125は、電極構造体収納部材111に溶接されており、電極構造体収納部材111と電気的に接続されている。正極リード部123は、安全弁機構115に溶接されていると共に、電池蓋114と電気的に接続されている。尚、
図1に示した例では、負極リード部125は1箇所(捲回された電極構造体の最外周部)であるが、2箇所(捲回された電極構造体の最外周部および最内周部)に設けられている場合もある。
【0095】
電極構造体121は、正極122と負極124とが、セパレータ126を介して積層されて成る。正極が正極層および正極集電体(箔)から構成されている場合、正極リード部123を取り付ける正極(例えば正極集電体)の領域には、正極層は形成されていない。
【0096】
二次電池100は、例えば、以下の手順に基づき製造することができる。
【0097】
まず、正極集電体の両面に正極層を形成し、正極を得る。金属リチウム箔状材料を切り出し、負極を得る。
【0098】
次いで、溶接法等を用いて、正極集電体に正極リード部123を取り付ける。また、溶接法等を用いて、負極に負極リード部125を取り付ける。次に、微多孔性ポリエチレンフィルムから成るセパレータ126を介して正極122と負極124とを積層し、捲回して、(より具体的には、正極122/セパレータ126/負極124/セパレータ126の電極構造体(すなわち、積層構造体)を捲回して)、電極構造体121を作製した後、最外周部に保護テープ(図示せず)を貼り付ける。その後、電極構造体121の中心にセンターピン118を挿入する。次いで、一対の絶縁板112,113で電極構造体121を挟みながら、電極構造体121を電極構造体収納部材111の内部に収納する。この場合、溶接法等を用いて、正極リード部123の先端部を安全弁機構115に取り付けると共に、負極リード部125の先端部を電極構造体収納部材111に取り付ける。その後、減圧方式に基づき電解液を注入して、電解液をセパレータ126に含浸させる。次いで、ガスケット117を介して電極構造体収納部材111の開口端部に電池蓋114、安全弁機構115および熱感抵抗素子116をかしめる。
【0099】
次に、平板型のラミネートフィルム型の二次電池について説明する。かかる二次電池の模式的な分解斜視図を
図2に示す。この二次電池にあっては、ラミネートフィルムから成る外装部材200の内部に、基本的に前述したと同様の電極構造体221が収納されている。電極構造体221は、セパレータを介して正極と負極とを積層した後、この積層構造体を捲回することで作製することができる。正極には正極リード部223が取り付けられており、負極には負極リード部225が取り付けられている。電極構造体221の最外周部は、保護テープによって保護されている。正極リード部223および負極リード部225は、外装部材200の内部から外部に向かって同一方向に突出している。正極リード部223は、アルミニウム等の導電性材料から形成されている。負極リード部225は、銅、ニッケル、および/またはステンレス鋼等の導電性材料から形成されている。
【0100】
外装部材200は、
図2に示す矢印Rの方向に折り畳み可能な1枚のフィルムであり、外装部材200の一部には、電極構造体221を収納するための窪み(例えばエンボス)が設けられている。外装部材200は、例えば、融着層と、金属層と、表面保護層とがこの順に積層されたラミネートフィルムである。二次電池の製造工程では、融着層同士が電極構造体221を介して対向するように外装部材200を折り畳んだ後、融着層の外周縁部同士を融着する。但し、外装部材200は、2枚の別個のラミネートフィルムが接着剤等を介して貼り合わされたものでもよい。融着層は、例えば、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレン等のフィルムから成る。金属層は、例えば、アルミニウム箔等から成る。表面保護層は、例えば、ナイロンおよび/またはポリエチレンテレフタレート等から成る。中でも、外装部材200は、ポリエチレンフィルムと、アルミニウム箔と、ナイロンフィルムとがこの順に積層されたアルミラミネートフィルムであることが好ましい。但し、外装部材200は、他の積層構造を有するラミネートフィルムでもよいし、ポリプロピレン等の高分子フィルムでもよいし、金属フィルムでもよい。具体的には、ナイロンフィルムと、アルミニウム箔と、無延伸ポリプロピレンフィルムとが外側からこの順に積層された耐湿性のアルミラミネートフィルムから成っていてよい。
【0101】
外気の侵入を防止するために、外装部材200と正極リード部223との間、および、外装部材200と負極リード部225との間には、密着フィルム201が挿入されている。密着フィルム201は、正極リード部223および負極リード部225に対して密着性を有する材料、例えば、ポリオレフィン樹脂等から成っていてよく、より具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレン、変性ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂から成っていてよい。
【実施例】
【0102】
[実験例1](ハーフセルの作成および放電時における過電圧の評価)
(試薬)
以下の試薬を用いた。
・LiTFSI(リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド):富山薬品工業製
・ジメトキシエタン(DME):富山薬品工業製
・フルオロエチレンカーボネート(FEC):富山薬品工業
・ビニレンカーボネート(VC):富山薬品工業製
・アジポニトリル(AdpN):富山薬品工業製
・エチレンサルフェート(DTD):東京化成工業
・塩化リチウム:キシダ化学
・フッ化リチウム:高純度化学
・リチウムビス(オキサラート)ホウ酸(LiBOB):Rockwood Lithium
【0103】
(実施例1)
・電解液の調製
ジメトキシエタン(DME)1Lに対し、電解質としてLiTFSI(リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド)を1mol/Lとなるように、かつ添加剤としてフルオロエチレンカーボネート(FEC)を1w/v%となるように、溶解させることで電解液を得た。
【0104】
・Liハーフセルの作成
作用極には1mm厚のLi箔(直径=16mm、純度99.9%)を用い、対極には10μm厚の銅箔(直径=15mm、純度99.9%)を用いた。また、セパレータには20μm厚(直径=19mm)のポリオレフィンを用いた。コイン缶にはCR2016を用い、
図3に示すように、作用極(負極)1、対極(正極)2、およびその間に配置されるセパレータ3を挟み、電解液を注入しカシめることでLiハーフセルを作成した。
図3は実施例で製造したハーフセルの模式的構成図である。
【0105】
・電気化学測定
放電(すなわちCuにLiを析出させる反応)を0.5mAの定電流で3時間行った。その後、充電(すなわちCuに析出させたLiを溶解させる反応)を0.5mAの定電流を行い、充電終止電位を1.0Vに設定した。このときの初回充放電曲線を作成し、
図4に示した。
図4において、放電時のピーク電圧を測定し、過電圧とした。
◎;-0.04≦過電圧(最良);
○;-0.05≦過電圧<-0.04(良);
△;-0.10≦過電圧<-0.05(合格:実用上問題なし);
×;過電圧<-0.10(不合格:実用上問題あり)。
【0106】
(実施例2)
添加剤として、ビニレンカーボネート(VC)を1w/v%となるよう添加した以外は実施例1と同様の方法により、電解液の調製、Liハーフセルの作成および電気化学測定を行い、初回充放電曲線(
図5)を作成した。
図5において、放電時のピーク電圧を測定し、過電圧とした。
【0107】
(実施例3)
添加剤として、アジポニトリル(AdpN)を1w/v%となるよう添加した以外は実施例1と同様の方法により、電解液の調製、Liハーフセルの作成および電気化学測定を行い、初回充放電曲線(
図6)を作成した。
図6において、放電時のピーク電圧を測定し、過電圧とした。
【0108】
(実施例4)
添加剤として、エチレンサルフェート(DTD)を1w/v%となるよう添加した以外は実施例1と同様の方法により、電解液の調製、Liハーフセルの作成および電気化学測定を行い、初回充放電曲線(
図7)を作成した。
図7において、放電時のピーク電圧を測定し、過電圧とした。
【0109】
(実施例5)
添加剤として、リチウムビス(オキサラート)ホウ酸(LiBOB)を1w/v%となるよう添加した以外は実施例1と同様の方法により、電解液の調製、Liハーフセルの作成および電気化学測定を行い、初回充放電曲線(
図8)を作成した。
図8において、放電時のピーク電圧を測定し、過電圧とした。
【0110】
(実施例6)
添加剤として、塩化リチウム(LiCl)を1w/v%となるよう添加した以外は実施例1と同様の方法により、電解液の調製、Liハーフセルの作成および電気化学測定を行い、初回充放電曲線(
図9)を作成した。
図9において、放電時のピーク電圧を測定し、過電圧とした。
【0111】
(実施例7)
添加剤として、フッ化リチウム(LiF)を1w/v%となるよう添加した以外は実施例1と同様の方法により、電解液の調製、Liハーフセルの作成および電気化学測定を行い、初回充放電曲線(
図10)を作成した。
図10において、放電時のピーク電圧を測定し、過電圧とした。
【0112】
(実施例8)
添加剤として、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を10w/v%となるよう添加した以外は実施例1と同様の方法により、電解液の調製、Liハーフセルの作成および電気化学測定を行い、初回充放電曲線(
図11)を作成した。
図11において、放電時のピーク電圧を測定し、過電圧とした。
【0113】
(実施例9)
添加剤として、ビニレンカーボネート(VC)を10w/v%となるよう添加した以外は実施例1と同様の方法により、電解液の調製、Liハーフセルの作成および電気化学測定を行い、初回充放電曲線(
図12)を作成した。
図12において、放電時のピーク電圧を測定し、過電圧とした。
【0114】
(実施例10)
添加剤として、アジポニトリル(AdpN)を1w/v%となるよう添加した以外は実施例1と同様の方法により、電解液の調製、Liハーフセルの作成および電気化学測定を行い、初回充放電曲線(
図13)を作成した。
図13において、放電時のピーク電圧を測定し、過電圧とした。
【0115】
(実施例11)
添加剤として、エチレンサルフェート(DTD)を10w/v%となるよう添加した以外は実施例1と同様の方法により、電解液の調製、Liハーフセルの作成および電気化学測定を行い、初回充放電曲線(
図14)を作成した。
図14において、放電時のピーク電圧を測定し、過電圧とした。
【0116】
(実施例12)
添加剤として、塩化リチウム(LiCl)を4w/v%となるよう添加した以外は実施例1と同様の方法により、電解液の調製、Liハーフセルの作成および電気化学測定を行い、初回充放電曲線(
図15)を作成した。
図15において、放電時のピーク電圧を測定し、過電圧とした。
【0117】
(実施例13)
添加剤として、フッ化リチウム(LiF)を2w/v%となるよう添加した以外は実施例1と同様の方法により、電解液の調製、Liハーフセルの作成および電気化学測定を行い、初回充放電曲線(
図16)を作成した。
図16において、放電時のピーク電圧を測定し、過電圧とした。
【0118】
(比較例1)
添加剤を添加しなかった以外は実施例1と同様の方法により、電解液の調製、Liハーフセルの作成および電気化学測定を行い、初回充放電曲線(
図17)を作成した。
図17において、放電時のピーク電圧を測定し、過電圧とした。
【0119】
(比較例2)
添加剤として、硝酸リチウム(LiNO
3)を1w/v%となるよう添加した以外は実施例1と同様の方法により、電解液の調製、Liハーフセルの作成および電気化学測定を行い、初回充放電曲線(
図18)を作成した。
図18において、放電時のピーク電圧を測定し、過電圧とした。
【0120】
各実施例/比較例における過電圧を以下の表に示す。
【0121】
【0122】
実施例1~7の過電圧の大きさ(すなわち絶対値)は、比較例1~2の過電圧の大きさ(すなわち絶対値)よりも小さいことが観察された。
FEC、VC、LiClまたはLiFは、1~20w/v%(特に1~10w/v%)のいずれかの含有量で含まれるとき、最良(◎)のレベルで過電圧が抑制されることが観察された。
上記結果より、過電圧のさらなる抑制の観点から、FECおよびLiClが最も好ましいことがわかる。
【0123】
[実験例2](サイクル特性の評価)
実施例1および2ならびに比較例1で得られたハーフセルを用いて、サイクル特性を評価した。
図19では各種添加剤のクーロン効率をn=2で比較した。平均クーロン効率は10~50サイクルの平均値で、その時のS.D.値をバーで示した。FECとVCはクーロン効率の向上が確認された。
クローン効率は以下の方法により測定した。
上記した電気化学測定の方法における放電容量1.5mAhをQ1とおき、充電で1.0Vに到達した際の充電容量をQ2とした。クーロン効率は以下の式で定義した。
クーロン効率=Q2/Q1x100
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明に係る二次電池は、電池使用または蓄電が想定される様々な分野に利用することができる。あくまでも例示にすぎないが、本発明に係る二次電池は、エレクトロニクス実装分野で用いることができる。本発明の一実施形態に係る二次電池はまた、モバイル機器などが使用される電気・情報・通信分野(例えば、携帯電話、スマートフォン、ノートパソコン、デジタルカメラ、活動量計、アームコンピューター、電子ペーパー、ウェアラブルデバイス、RFIDタグ、カード型電子マネー、スマートウォッチなどの小型電子機などを含む電気・電子機器分野あるいはモバイル機器分野)、家庭・小型産業用途(例えば、電動工具、ゴルフカート、家庭用・介護用・産業用ロボットの分野)、大型産業用途(例えば、フォークリフト、エレベーター、湾港クレーンの分野)、交通システム分野(例えば、ハイブリッド車、電気自動車、バス、電車、電動アシスト自転車、電動二輪車などの分野)、電力系統用途(例えば、各種発電、ロードコンディショナー、スマートグリッド、一般家庭設置型蓄電システムなどの分野)、医療用途(イヤホン補聴器などの医療用機器分野)、医薬用途(服用管理システムなどの分野)、ならびに、IoT分野、宇宙・深海用途(例えば、宇宙探査機、潜水調査船などの分野)に利用することができる。
【符号の説明】
【0125】
1:作用極(負極)
2:対極(正極)
3:セパレータ