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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】スクリュープロペラ
(51)【国際特許分類】
   B63H 5/07 20060101AFI20240904BHJP
   B63H 1/18 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
B63H5/07 C
B63H1/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023147083
(22)【出願日】2023-09-11
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】523346696
【氏名又は名称】篠原 滉佑
(73)【特許権者】
【識別番号】523346700
【氏名又は名称】譜久村 光正
(74)【代理人】
【識別番号】100135194
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 智雄
(72)【発明者】
【氏名】篠原 滉佑
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101234666(CN,A)
【文献】特開2010-065841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 5/07
B63H 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動されるボス部の外周に放射状に取り付けられた複数の回転翼を備えるスクリュープロペラであって、
前記回転翼は、放射方向に伸びる少なくとも一つの水案内手段を備え、
前記水案内手段が前記回転翼の翼端近傍に水を案内するように構成され、さらに、前記水案内手段は、放射方向に伸びる、断面中空の少なくとも一つの導水管であり、前記導水管の一端の開口が前記回転翼の翼端近傍で外部に露出し、前記導水管の他端の開口から導入した水が前記導水管を通って前記導水管の一端の開口から導出されるように構成した、スクリュープロペラ。
【請求項2】
前記導水管が前記回転翼の内部に設けられた請求項記載のスクリュープロペラ。
【請求項3】
前記導水管が前記回転翼の表面に設けられた請求項記載のスクリュープロペラ。
【請求項4】
前記導水管の他端の開口が、前記ボス部の回転軸近傍で外部に露出する請求項乃至の何れか一項記載のスクリュープロペラ。
【請求項5】
前記導水管の他端が、前記導水管に加圧された水を供給するための加圧導水管に接続された請求項乃至の何れか一項記載のスクリュープロペラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶のアクチュエータとして使用するスクリュープロペラに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶を推進させるための推進機として、スクリュープロペラが広く使われている。スクリュープロペラは、回転翼が水を掻くことによって回転軸方向に揚力を作り推進力を得ることができる。
【0003】
スクリュープロペラは、回転軸に相当するボス部分と、一定間隔で角度を付けて取り付けた複数の回転翼とを備えて構成される。回転翼の形状は、扇形または扇を変形した鎌形であり、回転翼を水中で回転させることにより、角度を持った翼が水を押し出して回転軸方向に水の流れを生み出して推進力を発生させる。
【0004】
水中で回転翼が回転すると、回転翼の翼端と回転翼の背面の流体の圧力が低くなる現象が起こる。回転翼の回転が早くなるほど圧力の低下が大きく、また回転半径が大きいほど圧力の低下が大きくなる。圧力が低下し飽和水蒸気圧以下になると気泡が発生する。この現象を空洞化現象、またはキャビテーションと言う。
【0005】
キャビテーションが起こると気泡が回転翼を部分的に覆い、空気を噛んだ状態になり、有効な推進力が得られなくなる。キャビテーションの発生を抑制するための技術がいくつか提案されており(特許文献1乃至4等)、例えば、回転翼の翼角を大きくしたハイスキュープロペラは、翼角の大きさを調整して常用する回転数付近でのキャビテーションの発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭55-33893号公報
【文献】特開平7-89488号公報
【文献】実開平2-135394号公報
【文献】実開平4-52995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ハイスキュープロペラは、キャビテーションの発生の抑制効果が翼角の大きさに依存するため、全ての回転数においてキャビテーションを抑制することはできない。常用する回転数の船速においてキャビテーションの発生を抑制することができるが、船速に依存することから船速が遅い状態では十分な効果を得ることができない。
【0008】
特許文献1記載の技術は、リング状構造物にプロペラによる水の吸い込みと船速による水の流れ込みを利用してプロペラ周辺の圧力を高めてキャビテーション全般の発生を低減することができるが、船速及び周辺の水流に依存していることから、船速が遅い状態では十分な効果を得ることができない。
【0009】
特許文献2に記載の技術は、独特なシャフトブラケットの配置により作り出される水流の作用でキャビテーションの発生を抑制しているが、船速に依存していることから、船速が遅い状態では十分な効果を得ることができない。
【0010】
特許文献3記載及び特許文献4記載の技術は、何れもプロペラ前方の整流フィンを設けてキャビテーションの発生を抑制するための水の流れを作り出しているが、船速に依存していることから、船速が遅い状態では十分な効果を得ることができない。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、全ての船速においてキャビテーションの発生を抑制することができるスクリュープロペラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
図9は、回転翼に発生するキャビテーションの様子を示している。図4に示すように、水中でスクリュープロペラを回転させると、回転翼の翼端及び回転翼の背面の流体の圧力が低くなる現象が起きる。
【0013】
圧力の低下は、回転翼の回転速度が早くなる程、また回転翼の回転半径が大きい程に顕著であり、圧力の低下が飽和蒸気圧以下になると、回転翼の翼端に翼端渦キャビテーションが発生し、回転翼の背面にシートキャビテーションが発生し、シートキャビテーションの崩壊によりクラウドキャビテーションが発生し、また回転翼の表面に気泡によるバブルキャビテーションが発生する。
【0014】
ベルヌーイの定理によれば、プロペラの圧力は式(1)により表すことができる。
【数1】
式(1)において、P0はプロペラ軸深さzの静圧(Patm + ρ gz)、ρは液体の密度、vはプロペラの前進速度、Vはプロペラに対する液体の流入速度を表す。
【0015】
キャビテーションは、プロペラの圧力Pが飽和蒸気圧Pv以下(P<=Pv)で発生し、式(2)で表される。
【数2】
式(2)において、Pvはプロペラ位置での同温における液体の蒸気圧を表す。
【0016】
キャビテーション数を示す空洞係数σは、式(3)で表すことができるから、キャビテーションを発生させないようにするためには空洞係数σを大きく設計する必要がある。
【数3】
式(3)において、Patmは大気圧を表す。
【0017】
式(3)から、空洞係数σを大きくするためには、プロペラの軸深さP0を大きくする及び/又はプロペラに対する液体の流入速度Uを小さくすればよいことがわかる。
【0018】
しかしながら、プロペラの軸深さp0を大きくするためには、深い位置にプロペラを装着しなければならず、潜水艦以外の通常船舶では非現実的である。また、プロペラに対する液体の流入速度Uを小さくするためには、船速を低くしたりプロペラの回転数を小さくしなければならずやはり非現実的である。
【0019】
ベルヌーイの定理から知見されるプロペラの装着位置、船速及びプロペラ回転に依存せずにキャビテーションの発生を抑制することができる本発明に係るスクリュープロペラは、回転駆動されるボス部の外周に放射状に取り付けられた複数の回転翼を備えるスクリュープロペラであって、前記回転翼は、放射方向に伸びる少なくとも一つの水案内手段を備え、前記水案内手段が前記回転翼の翼端近傍に水を案内するように構成される。
【0020】
図10に示す回転翼周辺の圧力と流速の関係を示す模式図を参照し、回転翼の船尾側面の圧力P1、回転翼の船首側面(船体側面)の圧力P2、回転翼の船尾側面の流速V1、回転翼の船首側面(船体側面)の流速V2、飽和蒸気圧Ps、水案内手段で供給する水により補助される圧力Pa、補助圧力Paを与えたときの回転翼の船首側面(船体側面)の流速Vaを定義すると、圧力の関係を式(4)で表すことができる。
【0021】
Ps<Ps+Pa<P2 ・・・(4)
【0022】
本発明によれば、流速が速くなり圧力が低下し、この圧力が飽和蒸気圧以下になり気泡が発生(空洞化)する現象を水案内手段による水の供給により飽和蒸気圧以上に維持してキャビテーションを抑制することができる。
【0023】
一態様において、発明に係るスクリュープロペラは、回転駆動されるボス部の外周に放射状に取り付けられた複数の回転翼を備えるスクリュープロペラであって、前記回転翼は、放射方向に伸びる、断面中空の少なくとも一つの導水管を備え、前記導水管の一端の開口が前記回転翼の翼端近傍で外部に露出し、前記導水管の他端の開口から導入した水が前記導水管を通って前記導水管の一端の開口から導出されるように構成した。
【0024】
上記構成によれば、回転翼に設けられた導水管の一端の開口が回転翼の翼端近傍で外部に露出しているので、回転翼の回転により導水管の一端の開口から導出した水がキャビテーションが発生し易い回転翼の翼端近傍領域に当たり、これにより回転翼の翼端近傍領域における水圧が飽和蒸気圧以下に低下することが抑制され、キャビテーションの発生が抑制される。
【0025】
上記構成において、前記導水管が前記回転翼の内部に設けられるように構成してもよく、また、前記導水管が前記回転翼の表面に設けられるように構成してもよい。
【0026】
また、上記構成において、前記導水管の他端の開口が、前記ボス部の回転軸近傍で外部に露出するように構成してもよい。
【0027】
上記構成によれば、回転翼の回転により負圧環境が形成されるボス部の回転軸近傍に導水管の他端の開口が形成されるから、導水管の長さを長く構築して大きな遠心力を発生させることができ、これにより他端の開口から効率よく導水管に水を取り込むことができる。
【0028】
また、上記構成において、前記導水管の他端が、前記導水管に加圧された水を供給するための加圧導水管に接続されるように構成してもよい。
【0029】
上記構成によれば、導水管に導入する水を加圧することにより、効率よく導水管に水を取り込むことができる。
【0030】
上記構成において、前記導水管の一端が、前記導水管から分岐する複数の開口を有するように構成してもよい。
【0031】
上記構成によれば、導水管の一端を複数の開口で形成することにより、開口から導出される水の量や導出される水の領域を調整することができ、キャビテーションが発生する領域に所望の量の水を当てることができる。
【0032】
上記構成において、前記導水管の一端が、前記回転翼の背面近傍に露出する開口を有するように構成してもよい。
【0033】
上記構成によれば、各開口が露出する位置を回転翼の翼端近傍や回転翼の背面近傍に設定することができ、キャビテーションが発生する複数の領域に水を当てることができる。
【0034】
他の態様において、本発明に係るスクリュープロペラは、前記水案内手段は、前回転翼の表面に設けられ、放射方向に伸びる少なくとも一つの整流板であるように構成した。
【0035】
上記構成によれば、回転翼の回転により発生する遠心力により、ボス部近傍の水が整流板に沿って翼端近傍のキャビテーションが発生しやすい領域に案内され、翼端近傍領域における水圧が飽和蒸気圧以下に低下することが抑制される。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、回転翼に設けられた導水管の一端の開口が回転翼の翼端近傍で外部に露出しているので、回転翼の回転により導水管の一端の開口から導出した水が、キャビテーションが発生し易い回転翼の翼端近傍領域に当たり、これにより回転翼の翼端近傍領域における水圧が飽和蒸気圧以下に低下することが抑制され、全ての船速においてキャビテーションの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明に係るスクリュープロペラの概略構成を示す図である。
図2図1に示したスクリュープロペラの回転翼内に配置される導水管に供給される水の流れを示す模式図である。
図3図1に示したスクリュープロペラの回転翼内に配置される導水管に供給される水の流れを示す他の模式図である。
図4】本発明に係るスクリュープロペラの他の実施形態の概略構成を示す図である。
図5図4に示したスクリュープロペラの回転翼表面に配置される導水管に供給される水の流れを示す模式図である。
図6図4に示したスクリュープロペラの回転翼表面に配置される導水管に供給される水の流れを示す他の模式図である。
図7図7は回転翼の表面に整流板を設けたスクリュープロペラの構成を示している。
図8図8は回転翼に設けた整流板に沿う水の流れを示す模式図である。
図9】回転翼に発生するキャビテーションの様子を示す図である。
図10】回転翼周辺の圧力と流速の関係を示す模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0039】
図1は、本発明に係るスクリュープロペラを軸方向から見た概略構成を示している。スクリュープロペラ10は、回転軸1を中心に回転駆動される円柱状のボス部の外周に等間隔で放射状に取り付けられた4つの回転翼2を備える。
【0040】
回転翼2は、略扇形の前縁を絞り、後縁を膨らませて形成され、回転軸1近傍から放射方向に伸びる断面中空の導水管4を内部に備え、プロペラ回転方向13に回転する。導水管4の一端の開口を回転翼2の翼端近傍で外部に露出させて翼端導水管開口5を形成し、導水管4の他端の開口をボス部の回転軸1近傍で外部に露出させて回転軸付近導水管開口6を形成する。
【0041】
翼端導水管開口5は、喇叭状に拡がる3つの開口を有し、正面視左側の開口が翼端の略最遠端に配置され、正面視中央及び右側の開口がそれぞれ翼端の最遠端より内側に配置される。
【0042】
図2はスクリュープロペラ10の回転翼2内に配置される導水管4に供給される水の流れを示す模式図である。回転軸1を中心に回転翼2が回転すると放射方向に発生する遠心力により、負圧環境になる回転軸付近導水管開口6から導入された水が導水管4を通り翼端導水管開口5へ導出される水流が形成される。
【0043】
翼端導水管開口5が形成される回転翼2の翼端近傍及び回転翼の翼端近傍の背面は飽和蒸気圧以下になり易くキャビテーションが発生し易い領域14である。翼端導水管開口5はキャビテーションが発生し易い領域14に形成されている。
【0044】
これにより、翼端導水管開口5から水を導出して放水12を当てることにより、キャビテーションが発生し易い領域14における水圧が飽和蒸気圧以下に低下することを抑制することができ、これにより、キャビテーションの発生を抑制することができる。
【0045】
図3はスクリュープロペラ10のプロペラ軸2内に配置される導水管4に供給される水の流れを示す他の模式図である。図2に示した模式図では、導水管4に導入される水はボス部近傍に形成された回転軸付近導水管開口6から遠心力を利用して取り込まれるのに対して、図3に示した模式図では、導水管4に導入される水を、図示しない船内から加圧送水する点で図2と相違する。
【0046】
導水管4に取り込む水を船内から加圧送水するために、導水管4の端部を船内まで案内する加圧導水管11を船内に搭載した図示しない加圧送水装置に接続し、加圧送水装置を作動させて導水管4内に水を導入するように構成している。
【0047】
回転翼2の回転により発生する遠心力と加圧送水装置からの加圧とにより、導水管4に導入された水が翼端導水管開口部5へ導出される水流が形成される。これによりキャビテーションが発生し易い領域14における水圧が飽和水蒸気以下に低下することを抑制することができる。
【0048】
船内に加圧送水装置を設けて導水管4に加圧送水する他、回転翼2内に加圧送水装置を設けたり、またボス部に設けるようにしても良い。さらに、図2に示した模式図において、負圧環境の回転軸付近導水管開口6から水を取り込む構成に加圧送水装置による加圧により水を導水管4に導入するようにしてもよい。
【0049】
キャビテーションが発生する領域が広い場合は、翼端導水管開口5の大きさを大きくしたり、翼端導水管開口5の個数を増やすことにより、広い領域に水が導出されるようにすることができる。
【0050】
また、一つの導水管4に形成されている翼端導水管開口5の大きさや個数を変える他、導水管4の数を増やし、複数の導水管4のそれぞれに形成した翼端導水管開口5の大きさを大きくしたり、翼端導水管開口5の個数を増やすことにより、広い領域に水が導出されるようにすることができる。
【0051】
翼端導水管開口5の位置は、キャビテーションの発生する領域に合わせて設計することができ、回転翼2の翼端近傍に開口を設ける他、回転翼2の背面近傍に開口を設けたり、もしくは異なる複数の位置にそれぞれ開口を設けるようにすることができる。
【0052】
導水管4を回転翼2の内部に設ける他、図4に示すスクリュープロペラ40のように、導水管4を回転翼2の表面に設けるようにしてもよい。図4において、図1に示したスクリュープロペラと同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。なお、図4に示した導水管4は、翼端導水管開口5を一つ備える場合を示しているが、図1に示すように、複数の翼端導水管開口を設けるように構成してもよい。
【0053】
図5及び図6はそれぞれ図4に示したスクリュープロペラの回転翼2表面に配置される導水管4に供給される水の流れを示す模式図であり、図5は導水管4に導入される水が、ボス部近傍に形成された回転軸付近導水管開口6から遠心力を利用して取り込まれる構造を示しており、図6は導水管4に導入される水が、図示しない船内から加圧送水される構造を示している。
【0054】
図7図1に示した導水管4に代えて若しくは導水管4と併せて回転翼2の表面に整流板71を設けた構成を示している。図7に示すスクリュープロペラ70において、図1に示したスクリュープロペラ10と同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。整流板71は、回転翼2上の水の流れを整えて翼端3近傍に案内するように構成されている。
【0055】
回転翼2の回転により発生する遠心力により、ボス部近傍の水が整流板71に沿って翼端3近傍のキャビテーションが発生しやすい領域14(図8参照)に案内される。整流板71の数は一つでもよく、図7に示すように複数でもよい。複数の整流板71の翼端3近傍の端部を拡開させて、キャビテーションが発生し易い領域に十分な水の放水12を得るように構成することができる。
【0056】
導水管4に水を導入するための開口をプロペラ軸1近傍に設ける他、回転翼2上に設けるようにすることもできる。この場合、導水管4が短くなり遠心力が小さくなるため、所望の遠心力を発生させることができる回転半径を有する回転翼2を選択する必要がある。なお、遠心力が不足することによる水流の低下を加圧送水装置による加圧による補償するようにしてもよい。
【0057】
本発明において、回転翼の数は4翼に限定されず、2翼から7翼以上の多翼でもよい。また、回転翼に設けられる導水管の数についても制限されることはない。また、全ての回転翼に導水管を設ける必要はなく、また、導水管の設置形態を回転翼ごとに変えるようにしてもよい。回転翼と導水管とを一体成形しても、回転翼と導水管とを別々に構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 回転軸
2 回転翼
3 翼端
4 導水管
5 翼端導水管開口
6 回転軸付近導水管開口
10、40,70 スクリュープロペラ
11 加圧導水管
12 放水
13 プロペラ回転方向
71 整流板
【要約】
【課題】全ての船速においてキャビテーションの発生を抑制することができるスクリュープロペラを提供することを目的とする。
【解決手段】回転駆動されるボス部の外周に放射状に取り付けられた複数の回転翼2を備えるスクリュープロペラ10であって、回転翼2は、放射方向に伸びる、断面中空の少なくとも一つの導水管4を備え、導水管4の一端の開口が回転翼2の翼端近傍で外部に露出し、導水管4の他端の開口から導入した水が導水管4を通って導水管4の一端の開口から導出されるように構成した。
【選択図】 図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10