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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】粉体材料の作製方法及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C22C 1/04 20230101AFI20240906BHJP
   B22F 9/16 20060101ALI20240906BHJP
   C22C 5/06 20060101ALI20240906BHJP
   C22C 9/00 20060101ALI20240906BHJP
   C22C 9/01 20060101ALI20240906BHJP
   C22C 9/02 20060101ALI20240906BHJP
   C22C 9/04 20060101ALI20240906BHJP
   C22C 9/06 20060101ALI20240906BHJP
   C22C 9/08 20060101ALI20240906BHJP
   C22C 9/10 20060101ALI20240906BHJP
   C22C 11/00 20060101ALI20240906BHJP
   C22C 12/00 20060101ALI20240906BHJP
   C22C 13/00 20060101ALI20240906BHJP
   C22C 18/00 20060101ALI20240906BHJP
   C22C 19/05 20060101ALI20240906BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20240906BHJP
   C22C 23/00 20060101ALI20240906BHJP
   C22C 24/00 20060101ALI20240906BHJP
   C22C 27/02 20060101ALI20240906BHJP
   C22C 27/06 20060101ALI20240906BHJP
   C22C 28/00 20060101ALI20240906BHJP
   C22C 30/00 20060101ALI20240906BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20240906BHJP
   B22F 1/07 20220101ALI20240906BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240906BHJP
【FI】
C22C1/04
B22F9/16
C22C5/06
C22C9/00
C22C9/01
C22C9/02
C22C9/04
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C22C12/00
C22C13/00
C22C18/00
C22C19/05 Z
C22C21/00 N
C22C23/00
C22C24/00
C22C27/02 101
C22C27/06
C22C28/00 A
C22C28/00 B
C22C30/00
C22C38/00 304
B22F1/07
B22F1/00 R
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2022554787
(86)(22)【出願日】2020-11-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-15
(86)【国際出願番号】 CN2020130961
(87)【国際公開番号】W WO2021179677
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】202010170579.1
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010673087.4
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011273980.4
(32)【優先日】2020-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522359202
【氏名又は名称】趙 遠雲
【氏名又は名称原語表記】ZHAO, Yuanyun
【住所又は居所原語表記】Room 1401, Building 7, Shanhu Garden, No. 1 Kaide Road, Dalingshan Town Dongguan, Guangdong 523000, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】趙 遠雲
(72)【発明者】
【氏名】劉 麗
【審査官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-538777(JP,A)
【文献】特開2005-116390(JP,A)
【文献】特表2017-531276(JP,A)
【文献】特表2023-500975(JP,A)
【文献】国際公開第2009/101394(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102367527(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103317141(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110775978(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101590527(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 1/04
B22F 9/16
C22C 5/06
C22C 9/00
C22C 9/01
C22C 9/02
C22C 9/04
C22C 9/06
C22C 9/08
C22C 9/10
C22C 11/00
C22C 12/00
C22C 13/00
C22C 18/00
C22C 19/05
C22C 21/00
C22C 23/00
C22C 24/00
C22C 27/02
C22C 27/06
C22C 28/00
C22C 30/00
C22C 38/00
B22F 1/07
B22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体材料の作製方法であって、
初期合金原料を選択し、初期合金成分の配合比率に応じて初期合金原料を溶融し、不純物元素T含有の均一な初期合金溶融体を得るステップ1であって、ただし、Tは、O、H、N、P、S、F、Cl、I、Brのうちの少なくとも一種類を含み、且つ前記初期合金溶融体の平均成分はAであり、
MはB、Bi、Si、Geのうち少なくとも一種類の元素を含み、AはSn、Ge、Cu、Zn、Pb、Ga、In、Bi、Alのうち少なくとも一種類の元素を含み、
MがBを含む場合には、AがSn、Ge、Cu、Znのうちの少なくとも一種類を含み、
MがBiを含む場合には、AがSn、Gaのうちの少なくとも一種類を含み、
MがSi、Geのうち少なくとも一種類を含む場合には、AがZn、Sn、Pb、Ga、In、Bi、Alのうちの少なくとも一種類を含み、
ただし、a、b、dは、対応の構成元素の原子百分率含有量を表し、且つ60%≦a<99.5%、0.5%≦b<40%、0<d≦10%との関係が満たされるステップ1と、
前記初期合金溶融体を初期合金ストリップに凝固させるステップ2であって、前記初期合金ストリップの凝固組織は、マトリックス相及び分散粒子相を含み、前記マトリックス相は、前記分散粒子相より融点が低く、前記分散粒子相は、前記マトリックス相に被覆され、前記初期合金溶融体の凝固中には、初期合金溶融体における不純物元素Tが分散粒子相及びマトリックス相に再分配され前記マトリックス相に富化されることにより、前記分散粒子相が精製され、前記初期合金ストリップにおける分散粒子相の成分は、Mx1z1であり、マトリックス相の平均成分は、Ax2z2であり、且つ98.5%≦x1<100%、0<z1≦1.5%、80%≦x2<100%、0<z2≦20%、z1<d<z2との関係が満たされ、x1、z1、x2、z2が、それぞれ、対応の構成元素の原子百分率含有量を表すステップ2と、
前記初期合金ストリップにおけるマトリックス相を除去し、マトリックス相の除去中に同時に除去できない分散粒子相を保存し、脱出された分散粒子相を収集することにより、元の分散粒子で構成された高純度の目標粉体材料を得る、前記初期合金ストリップにおけるマトリックス相を除去する方法は、酸反応除去、塩基反応除去、真空揮発除去、及びマトリックス相の自然酸化-粉化剥離除去のうちの少なくとも一種類であり、目標粉体材料の粒子粒形範囲は2nm~200nmであるステップ3を含み、
前記ステップ2における、前記初期合金溶融体の凝固の速度は10K/s~10K/sであり、
前記ステップ2における、前記分散粒子相の粒子形状は、枝状結晶状、球状、略球状、棒条状のうちの少なくとも一種類であり、前記分散粒子相の粒子粒径範囲は2nm~200nmである、
ことを特徴とする粉体材料の作製方法。
【請求項2】
前記初期合金溶融体におけるT不純物元素源は、初期合金原料から導入される不純物と、製錬中に雰囲気又は坩堝から導入される不純物と、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の粉体材料の作製方法。
【請求項3】
前記初期合金ストリップには、A及びMで構成された金属間化合物が含まない、
ことを特徴とする請求項1に記載の粉体材料の作製方法。
【請求項4】
前記初期合金ストリップ中の分散粒子における単結晶粒子の数が全ての分散粒子の数に占める割合は、60%以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の粉体材料の作製方法。
【請求項5】
2z1≦z2である、
ことを特徴とする請求項1に記載の粉体材料の作製方法。
【請求項6】
前記目標粉体材料の粒子の粒径範囲は2nm~100nmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の粉体材料の作製方法。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の作製方法による得られた粉体材料が、触媒材料における使用。
【請求項8】
請求項1~6の何れか一項に記載の作製方法による得られた粉体材料が、粉末冶金における使用。
【請求項9】
請求項1~6の何れか一項に記載の作製方法による得られた粉体材料が、複合材料における使用。
【請求項10】
請求項1~6の何れか一項に記載の作製方法による得られた粉体材料が、波吸収材料における使用。
【請求項11】
請求項1~6の何れか一項に記載の作製方法による得られた粉体材料が、殺菌材料における使用。
【請求項12】
請求項1~6の何れか一項に記載の作製方法による得られた粉体材料が、金属射出成形における使用。
【請求項13】
請求項1~6の何れか一項に記載の作製方法による得られた粉体材料が、3Dプリントにおける使用。
【請求項14】
請求項1~6の何れか一項に記載の作製方法による得られた粉体材料が、塗料における使用。
【請求項15】
初期合金原料を選択し、初期合金成分の配合比率に応じて初期合金原料を溶融し、不純物元素T含有の均一な初期合金溶融体を得るステップ1であって、ただし、Tは、O、H、N、P、S、F、Cl、I、Brのうちの少なくとも一種類を含み、且つ前記初期合金溶融体の平均成分はA であり、
MはB、Bi、Si、Geのうち少なくとも一種類の元素を含み、AはSn、Ge、Cu、Zn、Pb、Ga、In、Bi、Alのうち少なくとも一種類の元素を含み、ただし、
MがBを含む場合には、AがSn、Ge、Cu、Znのうちの少なくとも一種類を含み、
MがBiを含む場合には、AがSn、Gaのうちの少なくとも一種類を含み、
MがSi、Geのうち少なくとも一種類を含む場合には、AがZn、Sn、Pb、Ga、In、Bi、Alのうちの少なくとも一種類を含み、
ただし、a、b、dは、対応の構成元素の原子百分率含有量を表し、且つ60%≦a<99.5%、0.5%≦b<40%、0<d≦10%との関係が満たされるステップ1と、
前記初期合金溶融体を初期合金ストリップに凝固させるステップ2であって、前記初期合金ストリップの凝固組織は、マトリックス相及び分散粒子相を含み、前記マトリックス相は、前記分散粒子相より融点が低く、前記分散粒子相は、前記マトリックス相に被覆され、前記初期合金溶融体の凝固中には、初期合金溶融体における不純物元素Tが分散粒子相及びマトリックス相に再分配され前記マトリックス相に富化されることにより、前記分散粒子相が精製され、前記初期合金ストリップにおける分散粒子相の成分は、M x1 z1 であり、マトリックス相の平均成分は、A x2 z2 であり、且つ98.5%≦x1<100%、0<z1≦1.5%、80%≦x2<100%、0<z2≦20%、z1<d<z2との関係が満たされ、x1、z1、x2、z2が、それぞれ、対応の構成元素の原子百分率含有量を表すステップ2を備え、
前記ステップ2における、前記初期合金溶融体の凝固の速度は10K/s~10K/sであり、
前記分散粒子相の粒子形状は、状結晶状、球状、略球状、棒条状のうちの少なくとも一種類であり、記分散粒子相の粒子粒径範囲は2nm~200nmである、
作製方法による作製されることを特徴とする合金ストリップの製造方法。
【請求項16】
粉末材料の作製方法であって、
配合比率に応じて原料を秤量し、前記原料を溶融して合金溶融体を取得し、1K/s~10K/sの凝固速度で前記合金溶融体を凝固して初期合金を取得し、
成分がAであり、ミクロ組織が成分Aのマトリックス相及び成分Mの分散粒子相で構成された前記初期合金を提供し、
MはB、Bi、Fe、Ni、Cu、Agのうちの少なくとも一種類の元素を含み、AはSn、Ge、Cu、Pb、Ga、La、In、Na、K、Liのうち少なくとも一種類の元素を含み、
MがBである場合には、AがSn、Ge、Cuのうちの少なくとも一種類から選択され、
MがBiである場合には、AがSn、Gaのうちの少なくとも一種類から選択され、
MがFeである場合には、AがLa、In、Na、K、Liのうちの少なくとも一種類から選択され、
MがNiである場合には、AがNa、K、Liのうちの少なくとも一種類から選択され、
MがCuである場合には、AがPb、Na、K、Liのうちの少なくとも一種類から選択され、
MがAgである場合には、AがPb、Na、Kのうちの少なくとも一種類から選択され、
a、bは、対応の構成元素の原子百分率含有量を表し、且つ1%≦b≦40%、a+b=100%との関係が満たされるステップと、
前記初期合金と腐食液とを混合し、前記マトリックス相を前記腐食液と反応させてイオンになって溶液に入り、前記分散粒子相を脱離させることにより、成分がMである粉末材料を得るステップと、を備える、
ことを特徴とする粉末材料の作製方法。
【請求項17】
前記分散粒子相の粒子サイズは2nm~500μmである、
ことを特徴とする請求項16に記載の粉末材料の作製方法。
【請求項18】
選択される場合には、前記腐食液が酸溶液である、
ことを特徴とする請求項16に記載の粉末材料の作製方法。
【請求項19】
前記酸溶液における酸は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、シュウ酸のうちの少なくとも一種類を含む、
ことを特徴とする請求項18に記載の粉末材料の作製方法。
【請求項20】
AがSn、Pb、Ga、In、La、Ge、Cuのうちの少なくとも一種類から選択され、
前記酸溶液における酸のモル濃度は、0.01mol/L~20mol/Lである、
ことを特徴とする請求項19に記載の粉末材料の作製方法。
【請求項21】
AがNa、K、Liのうちの少なくとも一種類から選択される場合には、前記腐食液が水である、
ことを特徴とする請求項16に記載の粉末材料の作製方法。
【請求項22】
前記初期合金と前記腐食液の反応ステップには、反応時間が1min~5hであり、反応温度が0℃~100℃である、
ことを特徴とする請求項16に記載の粉末材料の作製方法。
【請求項23】
前記粉末材料の粒子サイズは2nm~500μmである、
ことを特徴とする請求項16に記載の粉末材料の作製方法。
【請求項24】
粉体材料の作製方法であって、
成分がAである初期合金を選択するステップであって、ただし、a、bが対応の構成元素の原子百分率含有量を表し、且つ0.1%≦b≦40%、a+b=100%との関係が満たされ、
MはB、Fe、Mn、Cr、Vのうちの少なくとも一種類の元素を含み、AはZn、Mgのうち少なくとも一種類の元素を含み、
MがB、Cr、Vのうちの少なくとも一種類である場合には、AがZnであり、
MがFe、Mnのうちの少なくとも一種類である場合には、AがMgであり、
前記初期合金を十分に溶融して初期合金溶融体が得られ、その後の冷却及び凝固中に、AとMとの間に金属間化合物が形成されずAとMとの分離が発生され、元素構成がMである分散粒子をAマトリックス相に分布する凝固状態合金が得られるステップ1と、
前記凝固状態合金におけるAマトリックス相を除去して、同時に除去できない分散粒子相を保存し分散して離脱させることにより、成分Mの粉体材料が得られ、前記凝固状態合金におけるマトリックス相を除去する方法は、酸反応除去、塩基反応除去、真空揮発除去、及びマトリックス相の自然酸化-粉化剥離除去のうちの少なくとも一種類を含むステップ2と、を備え、
前記初期合金溶融体の冷却凝固速度は1K/s~10K/sである
ことを特徴とする粉体材料の作製方法。
【請求項25】
前記凝固状態合金の厚さは10μm~50mmであり、前記凝固状態合金における分散粒子相の粒子サイズは2nm~500μmである、
ことを特徴とする請求項24に記載の粉体材料の作製方法。
【請求項26】
前記酸反応除去には、酸が塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、シュウ酸のうちの少なくとも一種類を含み、酸のモル濃度が0.1mol/L~15mol/Lであり、反応時間が1min~1hであり、反応温度が0℃~100℃である、
ことを特徴とする請求項24に記載の粉体材料の作製方法。
【請求項27】
前記塩基反応除去には、塩基がNaOH及びKOHのうちの少なくとも一種類を含み、塩基のモル濃度が0.1mol/L~15mol/Lであり、反応時間が1min~1hであり、反応温度が0℃~100℃である、
ことを特徴とする請求項24に記載の粉体材料の作製方法。
【請求項28】
前記真空揮発除去中には、前記凝固状態合金の存在する容器内の真空度が10Pa未満であり、処理温度がAマトリックス相の融点Tmに関連し、前記処理温度の範囲がTm-200K~Tm-1Kであり、処理時間が0.1h以上である、
ことを特徴とする請求項24に記載の粉体材料の作製方法。
【請求項29】
前記粉体材料の粒子サイズは2nm~500μmである、
ことを特徴とする請求項24に記載の粉体材料の作製方法。
【請求項30】
前記凝固状態合金からマトリックスを除去した後には、得られたM粉体材料を篩い分け、それぞれプラズマ球状化処理を実行することにより、最終的に粒径の異なる球状のM粉体材料を得る、というステップが行われる、
ことを特徴とする請求項24~29のいずれか一項に記載の粉体材料の作製方法。
【請求項31】
前記球状のM粉体材料の粒径範囲は1μm~500μmである、
ことを特徴とする請求項30に記載の粉体材料の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロナノ材料の技術分野に関し、特に粉体材料の作製方法及びその応用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ミクロン、サブミクロン、ナノの粒径の超微細粉体材料の作製方法には、物質の状態から見ると、固相法、液相法及び気相法がある。このうち、固相法には、主に、機械的粉砕法、超音波粉砕法、熱分解法、爆発法などがあり、液相法には、主に、沈殿法、アルコキシド法、カルボニル法、噴霧熱乾燥法、凍結乾燥法、電解法、化学凝集法などがあり、気相法には、主に、気相反応法、プラズマ法、高温プラズマ法、蒸発法、化学気相堆積法などがある。
【0003】
超微細粉末材料の作製方法には、様々のものがあるが、各方法には、何れもある程度の制限がある。例えば、液相法の欠点は、生産量が低く、コストが高く、工程が複雑になるといったことである。機械的法の欠点は、粉体材料の作製後に分級が困難になり、製品の純度、細かさ及び形態がいずれも保証しにくいということである。回転電極法及びガスアトマイズ法は、現在、高性能金属及び合金粉体を作製する主な方法であるが、その作製効率が低く、収率が高くなく、且つエネルギー消費が比較的に大きい。ジェットミル法、水素化脱水素法は、大量の工業化生産に適するが、原料及び合金に対する選択性が強い。
【0004】
また、粉体材料の不純物含有量、特に酸素含有量は、その性能に極めて影響している。現在、主に、原料の純度と真空度とを制御する方法により、金属や合金の不純物含有量が制御され、コストが高い。したがって、新しい高純度粉体材料の作製方法の開発は、重要な意義がある。
【発明の概要】
【0005】
上記に鑑みて、上記課題に対して、工程が簡単で操作しやすい粉体材料の作製方法を提供する必要がある。
粉体材料の作製方法であって、
初期合金原料を選択し、初期合金成分の配合比率に応じて初期合金原料を溶融し、不純物元素T含有の均一な初期合金溶融体を得るステップS1であって、ただし、Tは、O、H、N、P、S、F、Cl、I、Brのうちの少なくとも一種類を含み、且つ前記初期合金溶融体の平均成分はAであり、ただし、AはZn、Mg、Sn、Pb、Ga、In、Al、La、Ge、Cu、K、Na、Liのうちの少なくとも一種類を含み、MはB、Bi、Fe、Ni、Cu、Ag、Cr、V、Si、Geのうちの少なくとも一種類を含み、ただし、a、b、dは、対応の構成元素の原子百分率含有量を表し、且つ60%≦a≦99.5%、0.5%≦b≦40%、0≦d≦10%との関係が満たされるステップS1と、
【0006】
前記初期合金溶融体を初期合金ストリップに凝固させるステップS2であって、前記初期合金ストリップの凝固組織は、マトリックス相及び分散粒子相を含み、前記マトリックス相は、前記分散粒子相より融点が低く、前記分散粒子相は、前記マトリックス相に被覆され、前記初期合金溶融体の凝固中には、初期合金溶融体における不純物元素Tが分散粒子相及びマトリックス相に再分配され前記マトリックス相に富化されることにより、前記分散粒子相が精製され、
【0007】
前記初期合金ストリップにおける分散粒子相の成分は、主にMx1z1であり、マトリックス相の平均成分は、主にAx2z2であり、且つ98.5%≦x1≦100%、0≦z1≦1.5%、80%≦x2≦100%、0≦z2≦20%、z1≦d≦z2、2z1≦z2との関係が満たされ、ただし、x1、z1、x2、z2が、それぞれ、対応の構成元素の原子百分率含有量を表すステップS2と、
【0008】
前記初期合金ストリップにおけるマトリックス相を除去し、マトリックス相の除去中に同時に除去できない分散粒子相を保存し、脱出された分散粒子相を収集することにより、元の分散粒子で構成された高純度の目標粉体材料を得るステップS3と、を備える粉体材料の作製方法。
【0009】
前記ステップS1において、
さらに、Aは、Sn、Pb、Ga、In、Al、La、Ge、Cu、K、Na、Liのうちの少なくとも一種類を含み、Mは、B、Bi、Fe、Ni、Cu、Agのうちの少なくとも一種類を含む。
【0010】
好ましくは、MがBを含む場合には、AがSn、Ge、Cuのうちの少なくとも一種類を含み、MがBiを含む場合には、AがSn、Ga、Alのうちの少なくとも一種類を含み、MがFeを含む場合には、AがLa、In、Na、K、Liのうちの少なくとも一種類を含み、MがNiを含む場合には、AがNa、K、Liのうちの少なくとも一種類を含み、MがCuを含む場合には、AがPb、Na、K、Liのうちの少なくとも一種類を含み、MがAgを含む場合には、AがPb、Na、Kのうちの少なくとも一種類を含む。
【0011】
さらに、MがSi、Geのうちの少なくとも一種類を含む場合には、AがZn、Sn、Pb、Ga、In、Ag、Bi、Alのうちの少なくとも一種類を含み、MがB、Cr、Vのうちの少なくとも一種類を含む場合には、AがZnを含み、MがFeを含む場合には、AはMgを含む。
さらに、60%≦a<99.5%、0.5%≦b<40%、0<d≦10%との関係が満たされる。
【0012】
さらに、前記初期合金溶融体におけるT不純物元素源は、初期合金原料から導入される不純物と、製錬中に雰囲気又は坩堝から導入される不純物と、を含む。ただし、雰囲気から導入される不純物とは、合金溶融体により吸収される環境雰囲気におけるO、N、Hなどの不純物を意味する。
【0013】
さらに、Tは、不純物元素であり、O、H、N、P、S、F、Cl、I、Brのうちの少なくとも一種類を含み、且つこれらの不純物元素の総含有量は、T不純物元素の含有量である。
【0014】
さらに、原料が不純物元素含有の各単体又は中間合金である場合には、それを配合比率に応じて溶融することにより前記初期合金溶融体を作製してもよい。提供された原料がそのまま初期合金溶融体成分に対応する合金原料である場合には、それを再溶融して初期合金溶融体を取得してもよい。
【0015】
さらに、前記初期合金原料は、不純物元素T含有のM-T原料を含む。例えば、MがFeであり且つTがOを含む場合には、M-T原料がO不純物含有のFe-O原料を含む。
【0016】
さらに、前記ステップS1では、初期合金溶融体の平均成分におけるAとMとの組み合わせは極めて重要であり、その選択原則としては、合金溶融体の凝固中にAとMとの間に金属間化合物が形成されないことを確保できればよい。これにより、初期合金溶融体の凝固中に、Aを主のものとするマトリックス相とMを主のものとする粒子相との二相分離を達成することができ、その後のMを主のものとする粉体材料を作製することに役立つ。
【0017】
前記ステップS2において、
さらに、前記初期合金ストリップには、A及びMで構成された金属間化合物が含まない。
さらに、前記合金溶融体の凝固方式は、メルトスパン法(melt-spinning)、及び連続鋳造法(continuous casting)を含む。一般的に、メルトスパン法によっては、より薄い初期合金ストリップが得られ、連続鋳造法によっては、より厚い合金ストリップが得られる。
【0018】
メルトスパン法で得られた薄い合金ストリップであっても、連続鋳造法で得られた厚い合金ストリップであっても、いずれも一般的な鋳造法で得られた合金インゴットの形態と全く異なり、一般的な鋳造法で得られた合金インゴットは、一般的に、寸法としての長さと幅と厚さとの間に明らかな差別がない。
【0019】
さらに、前記初期合金ストリップの厚さ範囲は5μm~10mmであり、さらに、前記初期合金ストリップの厚さ範囲は5μm~5mmであり、好ましくは、前記初期合金ストリップの厚さ範囲は5μm~1mmであり、さらに好ましくは、前記初期合金ストリップの厚さ範囲は5μm~200μmであり、さらに好ましくは、前記初期合金ストリップの厚さ範囲は5μm~20μmである。
なお、初期合金ストリップの厚さがミリメートルのレベルである場合には、それが薄い合金板と呼ばれてもよい。
【0020】
さらに、前記初期合金ストリップの横断面は、幅が厚さの2倍以上であり、さらに、前記初期合金ストリップは、長さが厚さの10倍以上であり、好ましくは、前記初期合金ストリップは、長さが厚さの50倍以上であり、好ましくは、前記初期合金ストリップは、長さが厚さの100倍以上である。
さらに、前記初期合金溶融体の凝固速度は1K/s~10K/sである。
【0021】
さらに、前記分散粒子相の粒子のサイズと、初期合金溶融体の凝固速度とは、関連している。一般的に、分散粒子相の粒子の粒径のサイズと、初期合金溶融体の凝固速度とは、負の相関関係になり、即ち、初期合金溶融体の凝固速度が速いほど、分散粒子相の粒子の粒径が小さくなる。
【0022】
さらに、前記分散粒子相の粒子の粒径範囲は2nm~3mmであり、さらに、前記分散粒子相の粒径範囲は2nm~500μmであり、好ましくは、前記分散粒子相の粒径範囲は2nm~99μmであり、さらに好ましくは、前記分散粒子相の粒径範囲は2nm~5μmであり、さらに好ましくは、前記分散粒子相の粒径範囲は2nm~200nmであり、さらに好ましくは、前記分散粒子相の粒径範囲は2nm~100nmである。
さらに、前記初期合金溶融体の凝固速度が10K/s~10K/sである場合には、ナノスケールを主な粒径とする分散粒子が得られる。
さらに、前記初期合金溶融体の凝固速度が10K/s~10K/sである場合には、サブミクロンスケールを主な粒径とする分散粒子が得られる。
さらに、前記初期合金溶融体の凝固速度が10K/s~10K/sである場合には、ミクロンスケールを主な粒径とする分散粒子が得られる。
さらに、前記初期合金溶融体の凝固速度が1K/s~10K/sである場合、ミリスケールを主な粒径とする分散粒子が得られる。
【0023】
さらに、前記分散粒子相の粒子形状は限定されず、枝状結晶状、球状、略球状、ブロック状、ケーキ状、棒条状のうちの少なくとも一種類を含んでもよい。粒子形状が棒条状である場合には、粒子のサイズが特に棒条の横断面の直径寸法を意味する。
【0024】
さらに、分散粒子がナノスケール又はサブミクロンスケールである場合には、大確率で球状又は略球状の粒子が得られる。分散粒子がミクロンスケール以上のスケールである場合、大確率で枝状結晶状の粒子が得られる。
【0025】
さらに、前記分散粒子相は、前記初期合金溶融体から凝固して析出する。核成長理論によると、核成長の直後の略球状のナノ粒子でも、十分に成長したミクロンやミリスケールの枝状結晶粒子でも、その結晶成長がいずれも固定の配向関係を有し、これにより、析出した単一粒子がいずれも主に一つの単結晶で構成された。
【0026】
初期合金ストリップ全体における前記分散粒子の体積百分率が高い場合には、単結晶粒子の内生析出中、二つ又は二つ以上の粒子の合体状況が排除されない。二つ又は二つ以上の単結晶粒子は、多結晶材料のように正常な結晶境界を介して一つの粒子に十分に結合されず、単にソフトリユニオン(Soft Reunion)し、互いに吸着し、あるいは、わずかな部位のみで接触して接続されると、それが依然として二つの単結晶粒子となる。その特徴は、その後の過程でマトリックス相が除去された後、これらの単結晶粒子が超音波分散処理や気流粉砕などの技術により容易に分離されてもよいことにある。一方、正常な延性金属や合金の多結晶材料には、結晶境界が超音波分散処理、気流粉砕などの技術により分離されにくい。
好ましくは、前記初期合金ストリップ中の分散粒子における単結晶粒子の数が全ての分散粒子の数に占める割合は、60%以上である。
さらに好ましくは、前記分散粒子における単結晶粒子の数が全ての分散粒子の数に占める割合は、90%以上である。
【0027】
さらに、ある確定された初期合金ストリップとしては、該初期合金ストリップにおける前記分散粒子相の体積の百分率含有量が、初期合金溶融体成分、分散粒子相成分、マトリックス相成分、結合元素原子量、密度パラメータなどに応じて計算し決定してもよい。
さらに、前記分散粒子相が対応の初期合金ストリップにある体積の百分率含有量は、50%以下である。
【0028】
さらに、98.5%≦x1<100%、0<z1≦1.5%、80%≦x2<100%、0<z2≦20%、z1<d<z2、2z1<z2との関係が満たされる。
さらに、前記分散粒子におけるT不純物元素の原子百分率含有量z1は、M-T原料におけるT不純物元素の原子百分率含有量よりも少ない。
さらに、z1≦d≦z2、且つ2z1≦z2との関係が満たされる。
【0029】
好ましくは、z1≦d≦z2、且つ3z1≦z2との関係が満たされる。即ち、前記分散粒子相におけるT不純物の含有量は、前記初期合金溶融体におけるT不純物の含有量よりも少なく、且つ前記分散粒子相におけるT不純物の含有量の3倍は、依然として前記マトリックス相におけるT不純物の含有量よりも少ない。
【0030】
本発明では、原子百分率含有量によりT不純物含有量が表される。元素の原子百分率含有量により各元素の構成を表現する場合には、物質の量の概念により元素含有量の増減変化、例えば不純物元素の増減や変化を正確に表すことができる。元素の質量百分率含有量(又はppm概念)により各元素の含有量を表現する場合には、各元素の原子量の違いにより、誤った結論が下ろされやすい。例えば、原子百分率含有量がTi45Gd4510である合金は、100個の原子を含み、Oの原子百分率含有量が10at%である。この100個の原子をTi45(原子百分率構成がTi91.88.2である。)とGd45(原子百分率構成がGd88.211.8である。)との両部分に分ける場合には、Gd45における酸素の原子百分率含有量が11.8at%に増加し、Ti45における酸素の原子百分率含有量が8.2at%に減少し、GdにOが富化されたことを正確に表すことができる。Oの質量百分率含有量により評価する場合には、Ti45Gd4510におけるOの質量百分率含有量が1.70wt%であり、Ti45及びGd45におけるOの質量百分率含有量が、それぞれ2.9wt.%及び1.34wt.%であり、その結果、Ti45におけるO含有量がGd45におけるO含有量より明らかに増加するという誤った結論が得られる。
さらに、前記初期合金ストリップにおける成分は、主にMx1z1の分散粒子相に含まないA元素である。
さらに、前記初期合金ストリップにおける分散粒子相の成分は、Mx1z1である。
前記ステップS3において、
さらに、前記合金ストリップにおけるマトリックス相を除去する方法は、酸反応除去、塩基反応除去、真空揮発除去のうちの少なくとも一種類を含む。
前記酸溶液と塩基溶液の構成及び濃度は具体的に限定されず、マトリックス相を除去するとともに分散粒子相を保存すればよい。
前記真空処理の温度及び真空度は具体的に限定されず、マトリックス相を除去するとともに分散粒子相を保存すればよい。
さらに、前記初期合金ストリップにおけるマトリックス相を除去する方法は、マトリックス相の自然酸化-粉化剥離除去を含む。
【0031】
マトリックス相が酸素と極めて容易に自然酸化する、例えば、Laなどの元素である場合には、マトリックス相の自然酸化-粉化工程により、マトリックス相と分散粒子とを分離し、さらに他の技術手段、例えば磁選を介して、磁性付きの分散粒子相とマトリックス相の自然酸化物とを分離することができる。
【0032】
さらに、目標粉体材料が初期合金ストリップから離脱した分散粒子相であるため、前記目標粉体材料の成分、及び粒子の粒径などは、いずれも対応の分散粒子相の成分、及び粒子の粒径に相当する。
【0033】
さらに、前記目標粉体材料の粒子粒径範囲は2nm~3mmであり、好ましくは、前記目標粉体材料の粒子粒径範囲は2nm~500μmであり、好ましくは、前記目標粉体材料の粒子粒径範囲は2nm~99μmであり、さらに好ましくは、前記目標粉体材料の粒子粒径範囲は2nm~5μmであり、さらに好ましくは、前記目標粉体材料の粒子粒径範囲は2nm~200nmであり、さらに好ましくは、前記目標粉体材料の粒子粒径範囲は2nm~100nmである。
さらに、初期合金ストリップが酸溶液と反応した後、分散粒子が初期合金ストリップから離脱され洗浄して乾燥されることにより、目標粉体材料が得られる。
さらに、前記主成分がMx1z1である目標粉体材料には、A元素が含まない。
さらに、前記目標粉体材料の成分は主にMx1z1であり、好ましくは、前記目標粉体材料の成分はMx1z1である。
さらに、前記目標粉体材料におけるT不純物元素の原子百分率含有量は、1.5%以下である。
【0034】
さらに、前記ステップS3の後に、前記粉体材料を篩い分けた後、5μm~200μmの粒径範囲の粉体材料を選択してプラズマ球状化処理を実行することにより、球状の粉体材料を得る、というステップがさらに行われる。
【0035】
本発明は、触媒材料、粉末冶金、複合材料、波吸収材料、殺菌材料、金属射出成形、3Dプリント、及び塗料においての上記作製方法で得られた粉体材料や球状粉体材料の応用にさらに関するものである。
【0036】
さらに、金属粉3Dプリント分野において上記作製方法で得られた球状粉体材料の応用であって、球状粉体材料の粒径範囲が10μm~200μmであることを特徴とする球状粉体材料の応用。
【0037】
さらに、金属射出成形、粉末冶金において上記作製方法で得られた粉体材料の応用であって、粉体材料の粒径範囲が0.1μm~200μmであることを特徴とする粉体材料の応用。
さらに、塗料において上記作製方法で得られた粉体材料の応用であって、粉体材料の粒径範囲が2nm~5μmであることを特徴とする粉体材料の応用。
【0038】
本発明は、合金ストリップであって、内生粉及び被覆体を含み、前記合金ストリップの凝固組織は、前記被覆体であるマトリックス相と、前記内生粉である分散粒子相と、を備え、前記被覆体は、前記内生粉よりも融点が低く、前記内生粉末は、前記被覆体に被覆され、
【0039】
前記合金ストリップにおける内生粉の成分は主にMx1z1であり、被覆体の平均成分は主にAx2z2であり、且つ98.5%≦x1≦100%、0≦z1≦1.5%、80%≦x2≦100%、0≦z2≦20%、z1≦d≦z2、2z1≦z2との関係が満たされ、ただし、x1、z1、x2、z2がそれぞれ対応の構成元素の原子百分率含有量を表し、AがSn、Pb、Ga、In、Al、La、Ge、Cu、K、Na、Liのうちの少なくとも一種類を含み、MがB、Bi、Fe、Ni、Cu、Agのうちの少なくとも一種類を含む、ことを特徴とする合金ストリップにさらに関するものである。。
【0040】
好ましくは、MがBを含む場合には、AがSn、Ge、Cuのうちの少なくとも一種類を含み、MがBiを含む場合には、AがSn、Ga、Alのうちの少なくとも一種類を含み、MがFeを含む場合には、AがLa、In、Na、K、Liのうちの少なくとも一種類を含み、MがNiを含む場合には、AがNa、K、Liのうちの少なくとも一種類を含み、MがCuを含む場合には、AがPb、Na、K、Liのうちの少なくとも一種類を含み、MがAgを含む場合には、AがPb、Na、Kのうちの少なくとも一種類を含む。
【0041】
さらに、MがSi、Geのうちの少なくとも一種類を含む場合には、AがZn、Sn、Pb、Ga、In、Ag、Bi、Alのうちの少なくとも一種類を含み、MがB、Cr、Vのうちの少なくとも一種類を含む場合には、AがZnを含み、MがFeを含む場合には、AがMgを含む。
さらに、前記合金ストリップにおける主成分がMx1z1である内生粉末には、A元素が含まれない。
好ましくは、前記合金ストリップにおける内生粉の成分はMx1z1であり、被覆体の平均成分はAx2z2である。
【0042】
さらに、前記合金ストリップの厚さ範囲は5μm~10mmであり、好ましくは、前記合金ストリップの厚さ範囲は5μm~5mmであり、好ましくは、前記合金ストリップの厚さ範囲は5μm~1mmであり、さらに好ましくは、前記合金ストリップの厚さ範囲は5μm~200μmであり、さらに好ましくは、前記合金ストリップの厚さ範囲は5μm~20μmである。
【0043】
さらに、前記合金ストリップの横断面は、幅が厚さの2倍以上であり、さらに、前記初期合金ストリップは、長さが厚さの10倍以上であり、好ましくは、前記初期合金ストリップは、長さが厚さの50倍以上であり、好ましくは、前記初期合金ストリップは、長さが厚さの100倍以上である。
【0044】
さらに、前記内生粉の粒径範囲は2nm~3mmであり、好ましくは、前記内生粉の粒径範囲は2nm~500μmであり、好ましくは、前記内生粉の粒径範囲は2nm~99μmであり、さらに好ましくは、前記内生粉の粒径範囲は2nm~10μmであり、さらに好ましくは、前記内生粉の粒径範囲は2nm~1μmであり、さらに好ましくは、前記内生粉の粒径範囲は2nm~200nmであり、さらに好ましくは、前記内生粉の粒径範囲は2nm~100nmである。
さらに、前記内生粉の形状は枝状結晶状、球状、略球状、ブロック状、ケーキ状、棒条状のうちの少なくとも一種類を含む。
さらに、前記合金ストリップ中の内生粉末における単結晶粒子の数が全ての内生粉の数に占める割合は、60%以上である。
さらに、前記内生粉が前記合金ストリップにある体積の百分率含有量は50%以下である。
【0045】
さらに、98.5%≦x1<100%、0<z1≦1.5%、80%≦x2<100%、0<z2≦20%、z1<d<z2、2z1<z2との関係が満たされる。
さらに、2z2≦z1、且つ0≦z2≦1.5%との関係が満たされる。
好ましくは、3z2<z1、且つ0<z2≦1.5%との関係が満たされる。
さらに好ましくは、3z2<z1、且つ0<z2≦0.75%との関係が満たされる。
【0046】
なお、本発明に係る技術案では、前記A、MやTには、上記のような元素以外の他の元素又は不純物元素が含まれてもよい。これらの元素の導入又は含有量の変更は、初期合金凝固過程及び規律の「質変」の結果を引き起こさない限り、いずれも本発明の上記技術案の達成に影響しない。
【0047】
具体的に、前記初期合金凝固過程及び規律が「質変」を発生しない結果とは、前記A、MやTに上記のような元素以外の他の元素又は不純物元素が含まれる場合、下記1)~3)に挙げられた事実過程及び規律が依然として存在する、ことを意味しており、
1)前記初期合金ストリップには、A及びMで主に構成された金属間化合物が含まれなく、
【0048】
2)前記初期合金ストリップの凝固組織はマトリックス相及び分散粒子相を備え、前記マトリックス相は、前記分散粒子相よりも融点が低く、前記分散粒子相は前記マトリックス相に被覆され、
【0049】
3)初期合金溶融体におけるT不純物含有量が0でない場合には、前記分散粒子相におけるT不純物の含有量が前記初期合金溶融体におけるT不純物の含有量よりも少なく、且つ前記分散粒子相におけるT不純物の含有量の2倍が依然として前記マトリックス相におけるT不純物の含有量よりも少ない。
本発明に係る技術案は、以下の有益効果を有する。
【0050】
(1)、巧妙な合金設計により、初期合金溶融体を凝固時に相分離を発生させ、ある程度の粒径の目標成分の内生粒子を初期合金溶融体の凝固過程で形成し、その後の過程により分離することができる。一般的に、下から上への化学的方法、例えば化学的還元により、ナノ金属粒子を比較的容易に作製することができるが、粒子のスケールが数百ナノ乃至ミクロンまで増加すると、作製しにくくなってしまう。上から下への物理的方法、例えばアトマイズ法、ボールミル法などにより、数十ミクロン又は数百ミクロンの金属粒子を比較的容易に作製することができるが、粒子のスケールが数百ナノ~数ミクロンに低下すると、作製しにくくなってしまう。本発明の技術案は、初期合金ストリップの凝固過程での冷却速度の違いに応じて、ナノ、サブミクロン、ミクロン乃至ミリスケールの目標金属粉末粒子を極めて容易に作製することができ、上記技術的困難を乗り越えし、極大な利点を有する。
【0051】
(2)、低純度の原料で高純度の目標粉体材料を得ることが達成され、且つ低純度の原料で高純度の粉体材料を作製することに対しては、新たな道が現され、積極的な意義がある。本発明に係る目標粉体材料の純度向上は、主に以下の三つのメカニズムで達成される。即ち、1)高活性なマトリックスの主元素(例えばLa、Mgなどの元素)は、初期合金溶融物の不純物元素に対して「吸収」という作用を機能する。マトリックス元素は、一般的に高活性で低融点の元素であるため、合金溶融体の溶融及び凝固中に、不純物元素Tとの間に極めて強い親和性を有し、これにより、初期合金溶融体における不純物元素Tは、主にマトリックス相の主元素で構成されたマトリックス相により多く進入したり、溶融状態時にマトリックスの主元素とスラグを形成し、合金溶融体と分離して除去される。2)内部析出した分散粒子の相状核の成長中に、不純物元素Tが余剰溶融体に排出される。凝固中に内部析出した分散粒子相は、マトリックス相よりも遅れないと、その不純物が、何れも最後に凝固した部分の溶融体、即ち、主にマトリックス相の主元素からなり且つ凝固してマトリックス相を形成する一部の溶融体に富化される。3)第二相マトリックスの存在により、製錬過程において坩堝と溶融体との相互作用により溶融体に入った、坩堝に関連する不純物も、一般的に第二相のマトリックスに集中され、これにより、目標粉体材料の純度がより一層保証され、製錬中に坩堝に対する要求がさらに低下され、作製コストが大幅に低減される。
【0052】
(3)、単結晶粒子を主とする目標金属粉が得られる。単結晶粉体は、多結晶粉体に比べて多くの顕著で有益な効果を取得できる。前記初期合金溶融体の凝固中に、各内生分散粒子は、いずれも溶融体からある位置に核が形成された後に、特定の原子配列方式に従って成長して生成されるものである。初期合金ストリップにおける分散粒子相の体積百分率含有量が50%以下であるように制御することにより、各内生粒子を分散して分布する場合、各内生粒子の間に合弁・成長を発生させにくいことが確保される。したがって、最終的に得られた各分散分布の粒子相はほとんど単結晶相である。スケールが数十ミクロン又はミリの枝結晶粒子としても、その各二次枝結晶の成長方向が主枝結晶の成長方向とある程度の位相関係を保持し、それが依然として単結晶粒子に属する。多結晶材料に対しては、その結晶境界が一般的に凝固中に結晶内から排出された不純物元素を含みやすいため、高純度の多結晶体材料を取得しにくい。目標金属粉は、主に単結晶粒子で構成された場合、その純度が必然的に保障される。また、単結晶粒子の表面原子は特定の配列方式、例えば(111)面の配列などを有し、これらの特定の配列方式が目標金属粉の特殊な力学的、物理的、化学的性能を付与し、その結果、有益効果が奏する。
【0053】
(4)、前記内生粉及び被覆体(マトリックス相)で構成された合金ストリップは、元位生成(In-situ Reaction)されたマトリックス相を革新的に利用して内生粉を被覆し、内生粉の高純度及び高活性を保持する。具体的に、従来の化学的方法や物理的方法で作製された金属や合金粉、特に比表面積が極めて大きいナノ粉としては、自然酸化しやすく、いずれも粉体の保存が困難であるという問題を有する。この問題に対して、本発明に係る技術案は、内生金属粉及び被覆体(マトリックス相)で構成された合金ストリップを作製した後、被覆体を除去せず、被覆体をそのまま利用して内生金属粉を自然酸化させないように保護することができる。このような内生金属粉及び被覆体で構成された合金ストリップは、直接下流で作製された原料としてもよいため、ある特殊な製品になる可能性がある。下流の生産に高純度の粉体を使用する必要がある場合には、次の工程の特徴に基づいて、適切なタイミングを選択するとともに適切な環境で、内生金属粉を合金ストリップにおける被覆体から放出し、また、できるだけ短い時間で放出された内生粉を次の生産工程に進入させることにより、酸素などの不純物による内生金属粉の汚染機会を大幅に減少させることができる。例えば、内生金属粉がナノ粉である場合には、内生金属粉を被覆体から放出させると同時に又はその後に直ちに樹脂と複合することにより、高活性の内生金属粉付きの樹脂基複合材料を作製することができる。
【0054】
(5)、前記ステップS2において凝固により得られた固体合金はストリップ状であり、製品の形状の均一性及び大量生産の可能性が保証される。合金ストリップは、薄い合金ストリップであると、メルトスパン法により作製されてもよく、回転ローラへ合金溶融体の流量が固定に維持されるとよい。回転ローラの回転速度が固定であると、厚さの均一である薄い合金ストリップが得られ、且つ該作製過程を連続的に実施させることができ、大量生産に役立つ。合金ストリップが厚い合金ストリップである場合には、成熟した連続鋳造法により作製することができる。連続鋳造の原理はメルトスパン法の原理と類似し、溶融体により連続的で且つ厚さが均一である厚いストリップを取得することができ、作製過程も連続的に実施させることができ、大量生産に役立つ。合金ストリップの厚さが均一である場合、冷却速度も均一であり、得られた分散粒子の粒度も均一である。これに対して、凝固して得られた固体合金がインゴット状である場合に、常識によると、インゴットは、均一な厚さを有さず、明らかな長さ及び端点も有さないため、一般的に内部溶融体の放熱が困難になり、異常に大きい内生粒子が取得されやすく、単純に大きい凝集粒子を収集して精製する必要がある場合のみには、このような操作が必要である。且つ、一般的なインゴットは、連続的に作製されにくい。したがって、本発明は、凝固により合金ストリップを取得するため、その後に「相除去法」による粉体材料の作製方法に適用する。
【0055】
したがって、本発明の作製方法は、工程が簡単で、操作が容易で、コストが低いという特徴を有し、ナノ、サブミクロン、及びミクロンのスケールなどの複数種類の高純度の粉体材料を作製することができ、触媒材料、粉末冶金、複合材料、波吸収材料、殺菌材料、磁性材料、金属射出成形、3Dプリント、塗料などの分野において優れた適用の見通しがある。
本発明は、候補案のその一つとして、以下のようなステップが備えられる粉末材料の作製方法をさらに提供する。
粉末材料の作製方法であって、
【0056】
成分がAであり、ミクロ組織が成分Aのマトリックス相及び成分Mの分散粒子相で構成された初期合金を提供し、ただし、AはSn、Pb、Ga、In、Al、La、Ge、Cu、K、Na、Liのうちの少なくとも一種類から選択され、MはB、Bi、Fe、Ni、Cu、Agのうちの少なくとも一種類から選択され、a、bは、対応の構成元素の原子百分率含有量を表し、且つ1%≦b≦40%、a+b=100%との関係が満たされるステップS1と、
【0057】
前記初期合金と腐食液とを混合し、前記マトリックス相を前記腐食液と反応させてイオンになって溶液に入り、前記分散粒子を脱離させることにより、成分がMである粉末材料を得るステップS2と、を備える。
【0058】
ステップS1において、初期合金の成分は、特定の元素配合比率及び構成を有し、その原則としては、成分Aのマトリックス相及び成分Mの分散粒子相で初期合金のミクロ組織を構成することが保証できればよく、ただし、金属元素Aは、元素Mよりも化学活性が高い。
【0059】
金属元素A及び元素Mを成分Aのマトリックス相及び成分Mの分散粒子相によりよく形成させることにより、マトリックス相と分散粒子相との分離がより一層確保される。
具体的に、MがBである場合には、AがSn、Ge、Cuのうちの少なくとも一種類から選択される。
具体的に、MがBiである場合には、AがSn、Ga、Alのうちの少なくとも一種類から選択される。
具体的に、MがFeである場合には、AがLa、In、Na、K、Liのうちの少なくとも一種類から選択される。
具体的に、MがNiである場合には、AがNa、K、Liのうちの少なくとも一種類から選択される。
具体的に、MがCuである場合には、AがPb、Na、K、Liのうちの少なくとも一種類から選択される。
具体的に、MがAgである場合には、AがPb、Na、Kのうちの少なくとも一種類から選択される。
一実施例において、前記初期合金は、
配合比率に応じて原料を秤量し、前記原料を溶融して合金溶融体を取得し、
1K/s~10K/sの凝固速度で前記合金溶融体を凝固して前記初期合金を取得する、という方法で得られる。
前記初期合金は、「合金溶融体凝固+機械的破砕」又は「合金溶融体メルトスパン急凝固」などの方法で作製することができる。
【0060】
具体的に、初期合金の作製中に、成分がMである分散粒子相の粒子サイズは、作製過程における合金溶融体の凝固速度に関連する。一般的に、分散粒子相の粒径のサイズと、合金溶融体の凝固速度とは、負の相関関係になり、即ち、合金溶融体の凝固速度が大きいほど、分散粒子相の粒径が小さくなる。したがって、本発明では、作製中に、原料を溶融して得られた合金溶融体を初期合金に凝固する速度は、好ましくは1K/s~10K/sであり、得られた初期合金における分散粒子相の粒径は、2nm~500μmである。
【0061】
前記分散粒子相の粒子形状は限定されず、枝状結晶状、球状、略球状、ブロック状、ケーキ状、棒条状のうちの少なくとも一種類を含んでもよい。なお、粒子形状が棒状である場合には、粒子のサイズが特に棒の横断面の直径寸法を意味する。
【0062】
ステップS2において、AはSn、Pb、Ga、In、Al、La、Ge、Cuのうちの少なくとも一種類から選択される場合には、前記腐食液が酸溶液であり、前記酸溶液における酸が塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、シュウ酸のうちの少なくとも一種類を含む。
AがNa、K、Liのうちの少なくとも一種類から選択される場合には、前記腐食液が水であり、且つ前記水が脱酸素処理された。
【0063】
前記酸溶液における酸の濃度は、マトリックスと反応するとともに分散粒子相を基本的に保持することができればよく、該反応の温度及び時間も限定されない。好ましくは、前記酸溶液における酸のモル濃度は0.01mol/L~20mol/Lであり、該反応の反応時間は0.1min~5hであってもよく、反応温度は0℃~100℃であってもよい。
【0064】
分散粒子相が腐食液と反応しないか又はわずかに腐食液と反応するため、最終的に形成された成分がMである粉末材料は、粒子のサイズ及び形態が初期合金における分散粒子相の粒子のサイズ及び形態と大体に一致し、その粒子のサイズが2nm~500μmである。
【0065】
一候補案としての作製方法において、化学的活性が高い金属元素A及び化学活性が金属元素Aより低い元素Mを選択することにより成分がAである初期合金を作製し、該初期合金のミクロ組織は、成分がAであるマトリックス相及び成分がMである分散粒子相からなり、該組織構造がその後の分離に役立つ。具体的に、このような初期合金は、腐食液との反応時に、成分Aのマトリックス相が腐食液と反応してイオンになって溶液に入り、成分Mの分散粒子相が腐食液と反応しないか又は僅かに腐食液と反応することにより初期合金から脱離し、その結果、成分Mの粉末材料が得られる。
【0066】
したがって、一候補案としての作製方法は、従来の固相法、液相法及び気相法と比べて、工程が簡単で、操作が容易で、コストが低いという特徴を有し、且つナノ、サブミクロン及びミクロンのスケールのような様々な超微細サイズの粉末材料を作製することができ、触媒、粉末冶金、殺菌、3Dプリントなどの分野に素晴らしい応用の見通しがある。
候補案のその二つとして、以下のようなステップが備えられる粉体材料の作製方法を提供する。
本発明に提供される粉体材料の作製方法であって、
【0067】
成分がAaMbである初期合金を選択するステップであって、ただし、a、bが対応の構成元素の原子百分率含有量を表し、且つ0.1%≦b≦40%、a+b=100%との関係が満たされ、
MがSi、Geのうちの少なくとも一種類である場合には、AがZn、Sn、Pb、Ga、In、Ag、Bi、Alのうちの少なくとも一種類を含み、
MがB、Cr、Vのうちの少なくとも一種類である場合には、AがZnであり、
MがFe、Mnのうちの少なくとも一種類である場合には、AがMgであり、
MがCである場合には、AがMg、Znのうちの少なくとも一種類を含み、
【0068】
前記初期合金を十分に溶融して初期合金溶融体が得られ、その後の冷却及び凝固中に、AとMとの間に金属間化合物が形成されずAとMとの分離が発生され、元素構成がMである分散粒子をAマトリックス相に分布する凝固状態合金が得られるステップS1と、
【0069】
前記凝固状態合金におけるAマトリックス相を除去して、同時に除去できない分散粒子相を保存し分散して離脱させることにより、成分Mの粉体材料が得られるステップS2と、を備える。
【0070】
ステップS1において、初期合金の成分は、特定の元素配合比率及び構成を有し、その原則としては、成分Aのマトリックス相及び成分Mの分散粒子相で初期合金の凝固状態合金を構成することが保証できればよい。
【0071】
具体的に、凝固状態合金の作製中、成分がMである分散粒子相の粒子サイズと、作製中での初期合金溶融体の凝固速度とは、関連している。一般的に、分散粒子相の粒径のサイズと、初期合金溶融体の凝固速度とは、負の相関関係になり、即ち、初期合金溶融体の凝固速度が大きいほど、分散粒子相の粒径が小さくなる。したがって、本発明では、作製中に、原料を溶融して得られた初期合金溶融体を凝固状態合金に凝固する速度は、好ましくは1K/s~10K/sであり、得られた凝固状態合金における分散粒子相の粒径は、2nm~500μmである。
【0072】
前記凝固状態合金の厚さが10μm~50mmに制御され、「合金溶融体凝固+機械的破砕」又は「合金溶融体メルトスパン急凝固」などの方法により、得られた合金の反応面積をできるだけ増加させることにより、その後のAマトリックス相の円滑な除去が保証される。
【0073】
前記分散粒子相の粒子形状は限定されず、枝状結晶状、球状、略球状、ブロック状、ケーキ状、棒状のうちの少なくとも一種類を含んでもよい。なお、粒子形状が棒状である場合には、粒子のサイズが特に棒の横断面の直径寸法を意味する。
ステップS2において、Aマトリックス相を除去する方式は、酸反応除去、塩基反応除去、及び真空揮発除去などの方式のうちのいずれか一種類である。
【0074】
前記酸反応でAマトリックスを除去する過程において、酸溶液における酸は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、シュウ酸のうちの少なくとも一種類を含み、酸のモル濃度は0.1mol/L~15mol/Lであり、反応時間は1min~1hであり、反応温度は0℃~100℃である。
【0075】
前記塩基反応でAマトリックスを除去する過程において、塩基溶液における塩基はNaOH及びKOHのうちの少なくとも一種類を含み、塩基のモル濃度は0.1mol/L~15mol/Lであり、反応時間は1min~1hであり、反応温度は0℃~100℃である。
【0076】
前記真空揮発でAマトリックスを除去する過程において、前記凝固状態合金の存在する容器内の真空度は10Pa未満であり、処理温度はAマトリックス相の融点Tに関連し、その処理温度範囲はT-1K~T-200Kであり、処理時間は0.1h以上である。
【0077】
分散粒子相が腐食液と反応しないか又は揮発除去されないため、最終的に形成された成分Mの粉体材料は、粒子サイズ及び形態が凝固状態合金における分散粒子相の粒子のサイズ及び形態と大体に一致し、その粒子のサイズが2nm~500μmである。
【0078】
さらに、ステップS2の後に、得られたM粉体材料を篩い分け、それぞれプラズマ球状化処理を実行することにより、最終的に粒径の異なる球状のM粉体材料を得る、というステップが行われてもよい。
このように篩い分けた後の粉体材料は、プラズマ球状化処理により、球状化が達成できる。
前記球状M粉体材料の粒径範囲は1μm~500μmである。
【0079】
候補案のその二つの作製方法において、A凝固状態合金のミクロ組織は、成分がAであるマトリックス相及び成分がMである分散粒子からなり、該組織構造はその後の分離に役立つ。具体的に、酸反応除去又は塩基反応除去を採用する場合、成分がAであるマトリックス相は、腐食液と反応してイオンになって溶液に入り、成分がMである分散粒子相は、腐食液と反応せずに凝固状態合金から離脱することにより、成分Mの粉体材料が得られる。真空揮発除去を採用する場合、融点の低いAマトリックス相は、融点に近い時に強い揮発性を有する一方、融点の高いM分散粒子は、該温度でよく保持されることができる。したがって、Aマトリックス相の揮発が完了した後、M分散粒子も脱離し、その結果、対応の粉体材料が得られる。
【0080】
したがって、候補案のその二つの発明に係る作製方法は、従来の固相法、液相法及び気相法と比べて、工程が簡単で、操作が容易で、コストが低いという特徴を有し、且つナノ、サブミクロン及びミクロンのスケールのような様々な超微細サイズの粉体材料を作製することができ、触媒、粉末冶金、殺菌、粉末射出成形、3Dプリントなどの分野に素晴らしい応用の見通しがある。
【発明を実施するための形態】
【0081】
以下、下記のような具体的な実施例に基づき前記粉末材料の作製方法をさらに説明する。
実施例1
本実施例はナノのB粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0082】
配合成分の分子式がCu8020である合金を選択し、該配合方法に応じて原料を秤量し、真空誘導で製錬することにより、成分がCu8020である合金溶融体を得て、該合金溶融体を、銅ローラによるメルトスパン急凝固の方法によって~10K/sの速度で、厚さが~15μmであるCu8020の薄いストリップ状の初期合金断片に作製し、そのミクロ組織は、Cuで構成されたマトリックス相と、ナノのB粒子で構成された分散粒子相とを含み、ただし、分散粒子相の粒子サイズは、2nm~100nmである。
【0083】
室温で、0.25gの上記作製されたCu8020初期合金断片を、濃度が2mol/Lであり温度が60℃である50mLの塩酸水溶液に没入して反応させる。反応中に、Cuで構成されたマトリックス相が熱い塩酸と反応して溶液に入る一方、塩酸水溶液と反応しないナノのB粒子が次第に脱離して分散する。25min後、得られたナノのB粒子を溶液と分離し、洗浄して乾燥することにより、粒子サイズが2nm~100nmであるナノのB粒子粉末を得る。
実施例2
本実施例はサブミクロンのB粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0084】
配合成分の分子式がSn98である合金を選択し、該配合方法に応じて原料を秤量し、真空誘導で製錬することにより、成分がSn98である合金溶融体を得て、該合金溶融体を、銅ローラによるメルトスパン急凝固の方法によって10K/s~10K/sの速度で、厚さが150μmであるSn98の薄いストリップ状の初期合金断片に作製し、そのミクロ組織は、Snで構成されたマトリックス相と、サブミクロンのB粒子で構成された分散粒子相とを含み、ただし、分散粒子相の粒子サイズは、100nm~2μmである。
【0085】
室温で、0.25gの上記作製されたSn98初期合金断片を、濃度が0.5mol/Lである50mLの硫酸水溶液に没入して反応させる。反応中に、活性元素Snで構成されたマトリックス相が酸と反応して溶液に入る一方、酸と反応しないサブミクロンのB粒子が次第に脱離して分散する。20min後、得られたサブミクロンのB粒子を溶液と分離し、洗浄して乾燥することにより、サイズが100nm~2μmであるサブミクロンのB粒子粉末を得る。
実施例3
本実施例はナノのBi粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0086】
配合成分の分子式がAl75i25である合金を選択し、該配合方法に応じて原料を秤量し、真空誘導で製錬することにより、成分がAl75i25である合金溶融体を得て、該合金溶融体を、~10K/sの速度で、厚さが~20μmであるAl75i25の薄い合金ストリップに作製し、そのミクロ組織は、Alで構成されたマトリックス相と、ナノのBi粒子で構成された分散粒子相とを含み、ただし、分散粒子相の粒子サイズは、2nm~150nmである。
【0087】
室温で、0.5gの上記作製されたAl75i25初期合金断片を、濃度が1mol/Lである50mLの塩酸水溶液に没入して反応させる。反応中に、活性元素Alで構成されたマトリックス相が酸と反応して溶液に入る一方、酸と反応しないナノのBi粒子が次第に脱離して分散する。20min後、得られたナノのBi粒子を溶液と分離し、洗浄して乾燥することにより、粒子サイズが2nm~150nmであるナノのBi粒子粉末を得る。
実施例4
本実施例はサブミクロンのFe粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0088】
配合成分の分子式がLa75Fe25である合金を選択し、該配合成分に応じて原料を秤量し、真空誘導で製錬することにより、成分がLa75Fe25である合金溶融体を得る。該合金溶融体を、銅ローラによるメルトスパン急凝固の方法によって10K/s~10K/sの速度で、厚さが150μmであるLa75Fe25の薄いストリップ状の初期合金断片に作製し、そのミクロ組織は、Laで構成されたマトリックス相と、サブミクロンのFe粒子で構成された分散粒子相とを含み、ただし、分散粒子相の粒子のサイズは200nm~3μmである。
【0089】
室温で、0.5gの上記作製されたLa75Fe25初期合金断片を、濃度が0.01mol/Lである50mLの塩酸水溶液に没入して反応させる。反応中に、活性元素Laで構成されたマトリックス相が酸と反応して溶液に入る一方、活性のやや低い分散Fe粒子が脱離する。反応中に、補助磁場を印加することにより、分離された直後のFe粒子を酸溶液とタイムリーに分離させることが保証できる。30min後、サブミクロンのFe粒子を次第に収集し、洗浄して乾燥することにより、粒子のサイズが200nm~3μmであるサブミクロンのFe粒子粉末を得る。
実施例5
本実施例はサブミクロンのFe粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0090】
配合成分の分子式がLi75Fe25である合金を選択し、該配合成分に応じて原料を秤量し、真空誘導で製錬することにより、成分がLi75Fe25である合金溶融体を得る。該合金溶融体を、銅ローラによるメルトスパン急凝固の方法によって10K/s~10K/sの速度で、厚さが150μmであるLi75Fe25の薄いストリップ状の初期合金断片に作製し、そのミクロ組織は、Liで構成されたマトリックス相と、サブミクロンのFe粒子で構成された分散粒子相とを含み、ただし、分散粒子相の粒子のサイズは200nm~3μmである。
【0091】
室温で、0.5gの上記作製されたLi75Fe25初期合金断片を50mLの水溶液に没入して反応させる。反応中に、活性元素Liで構成されたマトリックス相が水と反応して溶液に入る一方、分散したFe粒子が脱離する。5min後、サブミクロンFe粒子を次第に収集し、洗浄して乾燥することにより、粒子のサイズが200nm~3μmであるサブミクロンのFe粒子粉末を得る。
実施例6
本実施例はナノのFe粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0092】
配合成分の分子式がLi75Fe25である合金を選択し、該配合成分に応じて原料を秤量し、真空誘導で製錬することにより、成分がLi75Fe25である合金溶融体を得る。該合金溶融体を、銅ローラによるメルトスパン急凝固の方法によって~10K/sの速度で、厚さが~15μmであるLi75Fe25の薄いストリップ状の初期合金断片に作製し、そのミクロ組織は、Liで構成されたマトリックス相と、ナノのFe粒子で構成された分散粒子相とを含み、ただし、分散粒子相の粒子サイズは2nm~200nmである。
【0093】
室温で、0.25gの上記作製されたLi75Fe25初期合金断片を、酸素がアルゴンガスで除去された50mLの水溶液に没入して反応させる。反応中に、活性元素Liで構成されたマトリックス相が水と反応して溶液に入る一方、分散ナノのFe粒子が脱離する。5min後、得られたナノのFe粒子を溶液と分離して、粒子サイズが2nm~200nmであるナノのFe粒子粉末を得る。
実施例7
本実施例はナノのNi粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0094】
配合成分の分子式がLi80Ni20である合金を選択し、該配合成分に応じて原料を秤量し、真空誘導で製錬することにより、成分がLi80Ni20である合金溶融体を得る。該合金溶融体を、銅ローラによるメルトスパン急凝固の方法によって~10K/sの速度で、厚さが~15μmであるLi80Ni20の薄いストリップ状の初期合金断片に作製し、そのミクロ組織は、Liで構成されたマトリックス相と、ナノのNi粒子で構成された分散粒子相とを含み、ただし、分散粒子相の粒子サイズは2nm~200nmである。
【0095】
室温で、0.25gの上記作製されたLi80Ni20初期合金断片を、アルゴンガスで酸素が除去された50mLの水溶液に没入して反応させる。反応中に、活性元素Liで構成されたマトリックス相が水と反応して溶液に入る一方、ナノのNi分散粒子が脱離する。5min後、得られたナノのNi粒子を溶液と分離して、粒子サイズが2nm~200nmであるナノのNi粒子粉末を得る。
実施例8
本実施例はナノのAg粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0096】
配合成分の分子式がPb75Ag25である合金を選択し、該配合成分に応じて原料を秤量し、真空誘導で製錬することにより、成分がPb75Ag25である合金溶融体を得て、該合金溶融体を、銅ローラによるメルトスパン急凝固の方法によって~10K/sの速度で、厚さが~20μmであるPb75Ag25の薄いストリップ状の初期合金断片に作製し、そのミクロ組織は、Pbで構成されたマトリックス相と、ナノのAg粒子で構成された分散粒子相とを含み、ただし、分散粒子相の粒子サイズは2nm~200nmである。
【0097】
室温で、0.5gの上記作製されたPb75Ag25初期合金断片を、濃度が2mol/Lである50mLの塩酸水溶液に没入して反応させる。反応中に、活性元素Pbで構成されたマトリックス相が酸と反応して溶液に入る一方、酸と反応しないナノのAg粒子が次第に脱離して分散する。10min後、得られた略球状のナノのAg粒子を溶液と分離し、洗浄して乾燥することにより、粒子のサイズが2nm~200nmであるナノのAg粒子粉末を得る。
実施例9
本実施例はミクロンのAg粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0098】
配合成分の分子式がPb75Ag25である合金を選択し、該配合成分に応じて原料を秤量し、真空誘導で製錬することにより、成分がPb75Ag25である合金溶融体を得て、該合金溶融体を、鋳造の方法により~500K/sの速度で、厚さが~2mmであるPb75Ag25の薄板に作製し、そのミクロ組織は、Pbで構成されたマトリックス相と、ミクロンのAg枝状結晶粒子で構成された分散粒子相とを含み、ただし、分散粒子相の粒子サイズは0.5μm~30μmである。
【0099】
室温で、0.5gの上記作製されたPb75Ag25初期合金断片を、濃度が3mol/Lである50mLの塩酸水溶液に没入して反応させる。反応中に、活性元素Pbで構成されたマトリックス相が酸と反応して溶液に入る一方、酸と反応しないミクロンのAg粒子が次第に脱離して分散する。20min後、得られた枝状結晶ミクロンのAg粒子を溶液と分離し、洗浄して乾燥することにより、粒子のサイズが0.5μm~30μmであるミクロンのAg粒子粉末を得る。
実施例10
本実施例はナノのAg粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0100】
配合成分の分子式がK75Ag25である合金を選択し、該配合成分に応じて原料を秤量し、真空誘導で製錬することにより、成分がK75Ag25である合金溶融体を得て、該合金溶融体を、銅ローラによるメルトスパン急凝固の方法によって~10K/sの速度で、厚さが~20μmであるK75Ag25の薄いストリップ状の初期合金断片に作製し、そのミクロ組織は、Kで構成されたマトリックス相と、ナノのAg粒子で構成された分散粒子相とを含み、ただし、分散粒子相の粒子サイズは2nm~200nmである。
【0101】
室温で、0.5gの上記作製されたK75Ag25初期合金断片を50mLの水溶液に没入して反応させる。反応中に、Kで構成されたマトリックス相が水と反応して溶液に入る一方、水と反応しないナノのAg粒子が次第に脱離して分散する。5min後、得られたナノのAg粒子を溶液と分離し、洗浄して乾燥することにより、サイズが2nm~200nmであるナノのAg粒子粉末を得る。
実施例11
本実施例はサブミクロンのAg粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0102】
配合成分の分子式がNa75Ag25である合金を選択し、該配合方法に応じて原料を秤量し、真空誘導で製錬することにより、成分がNa75Ag25である合金溶融体を得て、該合金溶融体を、銅ローラによるメルトスパン急凝固の方法によって10K/s~10K/sの速度で、厚さが~150μmであるNa75Ag25の薄いストリップ状の初期合金断片に作製し、そのミクロ組織は、Naで構成されたマトリックス相と、サブミクロンのAg粒子で構成された分散粒子相とを含み、ただし、分散粒子相の粒子サイズは100nm~3μmである。
【0103】
室温で、0.5gの上記作製されたNa75Ag25初期合金断片を50mLの水溶液に没入して反応させる。反応中に、Naで構成されたマトリックス相が水と反応して溶液に入る一方、水と反応しないサブミクロンのAg粒子が次第に脱離して分散する。5min後、得られたサブミクロンのAg粒子を溶液と分離し、洗浄して乾燥することにより、サイズが100nm~3μmであるサブミクロンのAg粒子粉末を得る。
実施例12
本実施例はミクロンのCu粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0104】
配合成分の分子式がPb80Cu20である合金を選択し、該配合成分に応じて原料を秤量し、真空誘導で製錬することにより、成分がPb80Cu20である合金溶融体を得て、該合金溶融体を、~200K/sの速度で、厚さが3mmであるPb80Cu20の薄片に作製し、そのミクロ組織は、Pbで構成されたマトリックス相と、ミクロンのCu粒子で構成された分散粒子相とを含み、ただし、分散粒子相の粒子サイズは1μm~50μmである。
【0105】
室温で、0.5gの上記作製されたPb80Cu20初期合金を、濃度が2mol/Lである100mLの塩酸水溶液に没入して反応させる。反応中に、活性元素Pbで構成されたマトリックス相が酸と反応して溶液に入る一方、酸と反応しにくいミクロンのCu粒子が次第に脱離して分散する。20min後、得られたミクロンのCu粒子を溶液と分離し、洗浄して乾燥することにより、粒子のサイズが1μm~50μmであるミクロンのCu粒子粉末を得る。
実施例13
本実施例はナノのCu粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0106】
配合成分の分子式がPb80Cu20である合金を選択し、該配合成分に応じて原料を秤量し、真空誘導で製錬することにより、成分がPb80Cu20である合金溶融体を得て、該合金溶融体を、銅ローラによるメルトスパン急凝固の方法によって~10K/sの速度で、厚さが~15μmであるPb80Cu20の薄いストリップ状の初期合金断片に作製し、そのミクロ組織は、Pbで構成されたマトリックス相と、ナノのCu粒子で構成された分散粒子相とを含み、ただし、分散粒子相の粒子サイズは2nm~200nmである。
【0107】
室温で、0.2gの上記作製されたPb80Cu20初期合金断片を、濃度が0.5mol/Lである200mLの塩酸水溶液に没入して反応させる。反応中に、活性元素Pbで構成されたマトリックス相が酸と反応して溶液に入る一方、酸と反応しにくいナノのCu粒子が次第に脱離して分散する。5min後、得られたナノのCu粒子を溶液と分離し、洗浄して乾燥することにより、粒子のサイズが2nm~200nmであるナノのCu粒子粉末を得る。
実施例14
本実施例はナノのB粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0108】
配合成分の分子式がZn8020である初期合金を選択し、該配合成分に応じて原料を秤量し、真空誘導で製錬することにより、成分がZn8020である初期合金溶融体を得て、該初期合金溶融体を、銅ローラによるメルトスパン急凝固の方法によって10K/sの速度で、厚さが25μmであるZn8020の薄いストリップ状の初期合金断片に作製し、そのミクロ組織は、Znで構成されたマトリックス相と、ナノのB粒子で構成された分散粒子相とを含み、ただし、分散粒子相の粒子サイズは2nm~100nmである。
【0109】
室温で、上記作製されたZn8020初期合金断片を、濃度が2mol/Lである塩酸水溶液に没入して反応させる。反応中に、Znで構成されたマトリックス相が塩酸と反応して溶液に入る一方、塩酸水溶液と反応しないナノのB粒子が次第に脱離して分散する。10min後、得られたナノのB粒子を溶液と分離し、洗浄して乾燥することにより、粒子サイズが2nm~100nmであるナノのB粒子粉末を得る。
実施例15
本実施例はサブミクロンのB粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0110】
配合成分の分子式がZn8020である初期合金を選択し、該配合成分に応じて原料を秤量し、真空誘導で製錬することにより、成分がZn8020である初期合金溶融体を得て、該初期合金溶融体を、銅ローラによるメルトスパン急凝固の方法によって10K/s~10K/sの速度で、厚さが200μmであるZn8020の薄いストリップ状の初期合金断片に作製し、そのミクロ組織は、Znで構成されたマトリックス相と、サブミクロンのB粒子で構成された分散粒子相とを含み、ただし、分散粒子相の粒子サイズは100nm~2μmである。
【0111】
室温で、上記作製されたZn8020初期合金断片を、濃度が5mol/LであるNaOH水溶液に没入して反応させる。反応中に、活性元素Znで構成されたマトリックス相が塩基と反応して溶液に入る一方、塩基と反応しないサブミクロンのB粒子が次第に脱離して分散する。20min後、得られたサブミクロンのB粒子を溶液と分離し、洗浄して乾燥することにより、サイズが100nm~2μmであるサブミクロンのB粒子粉末を得る。
実施例16
本実施例はナノのB粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0112】
配合成分の分子式がZn8020である初期合金を選択し、該配合成分に応じて原料を秤量し、真空誘導で製錬することにより、成分がZn8020である初期合金溶融体を得て、該初期合金溶融体を、銅ローラによるメルトスパン急凝固の方法によって10K/sの速度で、厚さが25μmであるZn8020の薄いストリップ状の初期合金断片に作製し、そのミクロ組織は、Znで構成されたマトリックス相と、ナノのB粒子で構成された分散粒子相とを含み、ただし、分散粒子相の粒子サイズは2nm~100nmである。
【0113】
室温で、上記作製されたZn8020初期合金断片を真空管に入れ、真空管内の真空度を5Pa以下に保持し、真空管を、温度が400℃である管状炉に置く。加熱中に、合金におけるZnで構成されたマトリックス相が揮発し続けて真空管内において他の温度のより低い領域に再凝縮する一方、揮発しないナノのB粒子が次第に脱離して分散する。30min後、粒子サイズが2nm~100nmであるナノのB粒子粉末を得る。
実施例17
本実施例はナノのCr粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0114】
配合成分の分子式がZn85Cr15である初期合金を選択し、該配合成分に応じて原料を秤量し、真空誘導で製錬することにより、成分がZn85Cr15である初期合金溶融体を得て、該初期合金溶融体を、銅ローラによるメルトスパン急凝固の方法によって10K/sの速度で、厚さが25μmであるZn85Cr15の薄いストリップ状の初期合金断片に作製し、そのミクロ組織は、Znで構成されたマトリックス相と、ナノのCr粒子で構成された分散粒子相とを含み、ただし、分散粒子相の粒子サイズは2nm~100nmである。
【0115】
室温で、上記作製されたZn85Cr15初期合金断片を、濃度が1mol/Lである塩酸水溶液に没入して反応させる。反応中に、Znで構成されたマトリックス相が塩酸と反応して溶液に入る一方、希塩酸水溶液と反応しないナノのCr粒子が次第に脱離して分散する。10min後、得られたナノのB粒子を溶液と分離し、洗浄して乾燥することにより、粒子サイズが2nm~100nmであるナノのB粒子粉末を得る。
実施例18
本実施例はミクロンのCr粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0116】
配合成分の分子式がZn85Cr15である初期合金を選択し、該配合成分に応じて原料を秤量し、真空誘導で製錬することにより、成分がZn85Cr15である初期合金溶融体を得て、該初合金溶融体を、鋳造方法により300K/sの速度で、厚さが2mmであるZn85Cr15の薄板に作製し、そのミクロ組織は、Znで構成されたマトリックス相と、ミクロンのCr枝状結晶粒子で構成された分散粒子相とを含み、ただし、分散粒子相の粒子サイズは0.5μm~30μmである。
【0117】
室温で、上記作製されたZn85Cr15初期合金薄板を、濃度が1mol/Lである塩酸水溶液に没入して反応させる。反応中に、Znで構成されたマトリックス相が塩酸と反応して溶液に入る一方、希塩酸水溶液と反応しないミクロンのCr粒子が次第に脱離して分散する。30min後、得られたミクロンのCr粒子を溶液と分離し、洗浄して乾燥することにより、粒子サイズが0.5μm~30μmであるミクロンのCr粒子粉末を得る。
実施例19
本実施例は球状マイクロのCr粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0118】
配合成分の分子式がZn85Cr15である初期合金を選択し、該配合成分に応じて原料を秤量し、真空誘導で製錬することにより、成分がZn85Cr15である初期合金溶融体を得て、該初合金溶融体を、鋳造方法により300K/sの速度で、厚さが2mmであるZn85Cr15の薄板に作製し、そのミクロ組織は、Znで構成されたマトリックス相と、ミクロンのCr枝状結晶粒子で構成された分散粒子相とを含み、ただし、分散粒子相の粒子サイズは0.5μm~30μmである。
【0119】
室温で、上記作製されたZn85Cr15初期合金薄板を、濃度が1mol/Lである塩酸水溶液に没入して反応させる。反応中に、Znで構成されたマトリックス相が塩酸と反応して溶液に入る一方、希塩酸水溶液と反応しないミクロンのCr粒子が次第に脱離して分散する。30min後、得られたミクロンのCr粒子を溶液と分離し、洗浄して乾燥することにより、粒子サイズが0.5μm~30μmであるミクロンのCr粒子粉末を得る。
【0120】
得られたミクロンのCr粉末を篩い分けた後、成熟したプラズマ球状化処理技術により、さらに粒径範囲が5μm~30μmである球状ミクロンのCr粉を作製する。
実施例20
本実施例はサブミクロンのV粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0121】
配合成分の分子式がZn8515である初期合金を選択し、該配合成分に応じて原料を秤量し、真空誘導で製錬することにより、成分がZn8515である初期合金溶融体を得て、該初期合金溶融体を、銅ローラによるメルトスパン急凝固の方法によって10K/s~10K/sの速度で、厚さが200μmであるZn8515の薄いストリップ状の初期合金断片に作製し、そのミクロ組織は、Znで構成されたマトリックス相と、サブミクロンのV粒子で構成された分散粒子相とを含み、ただし、分散粒子相の粒子サイズは100nm~2μmである。
【0122】
室温で、上記作製されたZn8515初期合金断片を、濃度が5mol/LであるNaOH水溶液に没入して反応させる。反応中に、活性元素Znで構成されたマトリックス相が塩基と反応して溶液に入る一方、塩基と反応しないサブミクロンのV粒子が次第に脱離して分散する。20min後、得られたサブミクロンのV顆粒を溶液と分離し、洗浄して乾燥することにより、サイズが100nm~2μmであるサブミクロンのV顆粒粉末を得る。
実施例21
本実施例はナノのMn粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0123】
配合成分の分子式がMg85Mn15である初期合金を選択し、該配合成分に応じて原料を秤量し、真空誘導で製錬することにより、成分がMg85Mn15である初期合金溶融体を得て、該初期合金溶融体を、銅ローラによるメルトスパン急凝固の方法によって10K/sの速度で、厚さが20μmであるMg85Mn15の薄いストリップ状の初期合金断片に作製し、そのミクロ組織は、Mgで構成されたマトリックス相と、ナノのMn粒子で構成された分散粒子相とを含み、ただし、分散粒子相の粒子サイズは2nm~100nmである。
【0124】
室温で、上記作製されたMg85Mn15初期合金断片を真空管に入れ、真空管内の真空度を0.1Pa以下に保持し、真空管を、温度が600℃である管状炉に置く。加熱中に、合金におけるMgで構成されたマトリックス相が揮発し続けて真空管内において他の温度のより低い領域に再凝縮する一方、揮発しにくいナノのMn粒子が次第に脱離して分散する。0.5h後、、粒子サイズが2nm~100nmであるナノのMn粒子粉末を得る。
実施例22
本実施例はナノのFeMn粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0125】
配合成分の分子式がMg80Fe10Mn10である合金を選択し、該配合成分に応じて原料を秤量し、真空誘導で製錬することにより、成分がMg80Fe10Mn10である初期合金溶融体を得て、該初期合金溶融体を、銅ローラによるメルトスパン急凝固の方法によって10K/sの速度で、厚さが20μmであるMg80Fe10Mn10の薄いストリップ状の初期合金断片に作製し、そのミクロ組織は、Mgで構成されたマトリックス相と、ナノのFeMn粒子で構成された分散粒子相とを含み、ただし、分散粒子相の粒子サイズは2nm~100nmである。
【0126】
室温で、上記作製されたMg80Fe10Mn10初期合金断片を真空管に入れ、真空管内の真空度を0.1Pa以下に保持し、真空管を、温度が600℃である管状炉に置く。加熱中に、合金におけるMgで構成されたマトリックス相が揮発し続けて真空管内において他の温度のより低い領域に再凝縮する一方、揮発しにくいナノのFeMn粒子が次第に脱離して分散する。0.5h後、粒子サイズが2nm~100nmであるナノのFeMn粒子粉末を得る。
実施例23
本実施例はナノのSi粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0127】
配合成分の分子式がZn80Si20である初期合金を選択し、該配合成分に応じて原料を秤量し、真空誘導で製錬することにより、成分がZn80Si20である初期合金溶融体を得る。該初期合金溶融体を、銅ローラによるメルトスパン急凝固の方法によって10K/sの冷却速度で、厚さが20μmであるZn80Si20の薄いストリップ状の初期合金断片に作製し、そのミクロ組織は、Znで構成されたマトリックス相と、ナノのSi粒子で構成された分散粒子相とを含み、ただし、分散粒子相の粒子サイズは5nm~300nmである。
【0128】
室温で、上記作製されたZn80Si20初期合金断片を、濃度が10mol/LであるNaOH水溶液に没入して反応させる。反応中に、活性元素Znで構成されたマトリックス相が塩基と反応して溶液に入る一方、塩基溶液と反応しないナノのSi粒子が次第に脱離して分散する。10min後、得られた略球状のナノのSi粒子を溶液と分離し、洗浄して乾燥することにより、粒子サイズが5nm~300nmであるナノのSi粒子粉末を得る。
実施例24
本実施例はサブミクロンのSi粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0129】
配合成分の分子式がSn80Si20である初期合金を選択し、該配合成分に応じて原料を秤量し、真空誘導で製錬することにより、成分がSn80Si20である初期合金溶融体を得る。該初期合金溶融体を、銅ローラによるメルトスパン急凝固の方法によって10K/s~10K/sの冷却速度で、厚さが150μmであるSn80Si20の薄いストリップ状の初期合金断片に作製し、そのミクロ組織は、Snで構成されたマトリックス相と、サブミクロンのSi粒子で構成された分散粒子相とを含み、ただし、分散粒子相の粒子サイズは20nm~2μmである。
【0130】
室温で、上記作製されたSn80Si20初期合金断片を、濃度が0.5mol/Lである硝酸水溶液に没入して反応させる。反応中に、活性元素Snで構成されたマトリックス相が酸と反応して溶液に入る一方、酸と反応しないサブミクロンのSi粒子が次第に脱離して分散する。20min後、得られたサブミクロンのSi粒子を溶液と分離し、洗浄して乾燥することにより、粒子のサイズが20nm~2μmであるサブミクロンのSi粒子粉末を得る。
実施例25
本実施例はミクロンのGe粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0131】
配合成分の分子式がSn75Ge25である初期合金を選択し、該配合成分に応じて原料を秤量し、真空誘導で製錬することにより、成分がSn75Ge25である初期合金溶融体を得る。該初期合金溶融体を、100K/sの凝固速度で凝固してSn75Ge25の初期合金を得て、そのミクロ組織は、Snで構成されたマトリックス相と、ミクロンのGe粒子で構成された分散粒子相とを含み、ただし、分散粒子相の粒子サイズは2μm~120μmである。
【0132】
室温で、上記作製されたSn75Ge25初期合金を、濃度が1mol/Lである塩酸水溶液に没入して反応させる。反応中に、活性元素Snで構成されたマトリックス相と酸が反応して溶液に入る一方、活性の低い分散Ge粒子が脱離する。20min後、得られたGe粒子を溶液と分離し、洗浄して乾燥することにより、粒子サイズが2μm~120μmであるミクロンのGe粒子粉末を得る。
実施例26
本実施例はナノのSi-Ge粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0133】
配合成分の分子式がZn80Si10Ge10である初期合金を選択し、該配合成分に応じて原料を秤量し、真空誘導で製錬することにより、成分がZn80Si10Ge10である初期合金溶融体を得る。該初期合金溶融体を、銅ローラによるメルトスパン急凝固の方法によって10K/sの冷却速度で、厚さが20μmであるZn80Si10Ge10の薄いストリップ状の初期合金断片に作製し、そのミクロ組織は、Znで構成されたマトリックス相と、ナノのSi-Ge粒子で構成された分散粒子相とを含み、ただし、分散粒子相の粒子のサイズは5nm~300nmである。
【0134】
室温で、上記作製されたZn80Si10Ge10初期合金断片を、濃度が1mol/Lである塩酸水溶液に没入して反応させる。反応中に、活性元素Znで構成されたマトリックス相が酸と反応して溶液に入る一方、酸溶液と反応しないナノのSi-Ge粒子が次第に脱離して分散する。10min後、得られた略球状のナノのSi-Ge粒子を溶液と分離し、洗浄して乾燥することにより、粒子のサイズが5nm~300nmであるナノのSi-Ge粒子粉末を得る。
実施例27
本実施例はサブミクロン-ミクロンのFe粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0135】
T(O、H、N、P、S、F、Cl、Br、Iが含まれる。)不純物元素の原子百分率含有量がそれぞれ1at.%、及び2.5at.%であるFeシート、及び希土La原料を選択する。約2:1のLa:Feモル比に応じて各合金原料を溶融し、原子百分率成分が主にLa65.3Fe32.7である均一な初期合金溶融体を得る。
【0136】
銅ローラによるメルトスパン技術によって約10K/sの凝固速度で、初期合金溶融体を、厚さが~100μmであるLa65.3Fe32.7の合金ストリップに作製する。該合金ストリップの凝固組織は、原子百分率成分が主にLa97.22.8であるマトリックス相と、大量の成分が主にFe99.70.3である分散粒子相とで構成される。ただし、Fe99.70.3分散粒子は、形状が略球状や枝状結晶状になり、粒径のサイズの範囲が500nm~3μmである。合金ストリップにおけるFe99.70.3分散粒子の体積百分率は約14%である。
【0137】
希酸溶液により合金ストリップにおけるLa97.22.8マトリックス相を除去するとともに、Feの磁性により、脱離されたFe99.70.3分散粒子を希酸溶液と素早く分離することにより、主成分がFe99.70.3であるサブミクロン-微小米粉を得て、ただし、その粒径のサイズ範囲は500nm~3μmであり、且つそれが含有するO、H、N、P、S、F、Cl、Br、Iの総含有量は0.3at.%である。
作製されたサブミクロン-ミクロンのFe粉末は、磁性材料に用いられることができる。
実施例28
本実施例はナノのFe粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0138】
T(O、H、N、P、S、F、Cl、Br、I含まれる。)不純物元素の原子百分率含有量がそれぞれ1at.%、及び2.5at.%であるFeシート、及び希土La原料を選択する。約60:40のLa:Feモル比に応じて各合金原料を溶融し、原子百分率成分が主にLa58.5Fe39.61.9である均一な初期合金溶融体を得る。
【0139】
銅ローラによるメルトスパン技術によって約10K/sの凝固速度で、初期合金溶融体を、厚さが~20μmであるLa58.5Fe39.61.9の合金ストリップに作製する。該合金ストリップの凝固組織は、原子百分率成分が主にLa97であるマトリックス相と、大量の成分が主にFe99.750.25である分散粒子相とで構成される。ただし、Fe99.750.25分散粒子は、形状が略球状になり、粒径のサイズの範囲が20nm~200nmである。合金ストリップにおけるFe99.750.25分散粒子の体積百分率は約17.5%である。
【0140】
空気におけるLaの自然酸化-粉化過程及びFe粒子の磁気特性により、Fe粒子を粉化後のLa酸化物と分離することにより、ナノのFe粒子を得て、ただし、その粒径のサイズ範囲は20nm~200nmであり、且つナノのFe粉末におけるO、H、N、P、S、F、Cl、Br、Iの総含有量は0.25at.%である。
実施例29
本実施例はナノのFe粉の作製方法を提供し、該作製方法は以下のようなステップを備える。
【0141】
T(O、H、N、P、S、F、Cl、Br、Iが含まれる。)不純物元素の原子百分率含有量がそれぞれ1at.%、及び2.5at.%であるFeシート、及び希土La原料を選択する。ただし、La原料には、1at.%のCeがさらに含まれ、Fe原料には、0.5at.%のMnがさらに含まれる。約60:40のLa:Feモル比に応じて各合金原料を溶融し、原子百分率成分が主に(La99Ce58.5(Fe99.5Mn0.539.61.9である均一な初期合金溶融体を得る。
【0142】
銅ローラによるメルトストリップ技術によって約10K/sの凝固速度で、初期合金溶融体を、厚さが~20μmである(La99Ce58.5(Fe99.5Mn0.539.61.9の合金ストリップに作製する。該合金ストリップの凝固組織は、原子百分率成分が主に(La99Ce97であるマトリックス相と、大量の成分が主に(Fe99.5Mn0.599.750.25である分散粒子相とで構成される。ただし(Fe99.5Mn0.599.750.25分散粒子は、形状が略球状になり、粒径のサイズの範囲が20nm~200nmである。合金ストリップにおける(Fe99.5Mn0.599.750.25分散粒子の体積百分率は約17.5%であり、且つ、合金溶融体におけるMn及びCeの導入は、初期合金ストリップにおいてLa、CeとFe、Mnとで構成された金属間化合物を生成させることを招かなく、また、合金ストリップにおけるマトリックス相及び分散粒子相の構成特徴に影響せず、分散粒子相における不純物含有量の低下規則にも影響しない。
【0143】
空気におけるLaの自然酸化-粉化過程及びFe粒子の磁気特性により、(Fe99.5Mn0.599.750.25粒子を粉化後のLa酸化物と分離することにより、ナノの(Fe99.5Mn0.599.750.25粒子を得て、その粒径のサイズ範囲は20nm~200nmであり、且つナノの(Fe99.5Mn0.599.750.25粉におけるO、H、N、P、S、F、Cl、Br、Iの総含有量は0.25at.%である。
【0144】
以上の前記実施例の各技術特徴を任意に組み合わせることができ、簡潔に説明するために、上記実施例における各技術特徴の全ての可能な組み合わせについて説明しないが、これらの技術特徴の組み合わせに矛盾がない限り、いずれも本明細書に記載の範囲に属すると考えられるべきである。
【0145】
以上の前記実施例は、本発明のいくつかの実施形態のみを表し、それに対する説明が具体的で詳細であるが、本発明の特許の保護範囲を限定するものと理解すべきではない。また、当業者にとっては、本発明の思想から逸脱せずにいくつかの変形や改善がさらに達成でき、これらがいずれも本発明の保護範囲に属する。したがって、本発明の特許の保護範囲は添付の特許請求の範囲を基準とすべきである。