IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブラザー工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-画像形成装置 図1
  • 特許-画像形成装置 図2
  • 特許-画像形成装置 図3
  • 特許-画像形成装置 図4
  • 特許-画像形成装置 図5
  • 特許-画像形成装置 図6
  • 特許-画像形成装置 図7
  • 特許-画像形成装置 図8
  • 特許-画像形成装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240910BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G03G15/20 555
H05B3/00 335
H05B3/00 310E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021025204
(22)【出願日】2021-02-19
(65)【公開番号】P2021140150
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2024-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2020035428
(32)【優先日】2020-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】野田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】原田 侑弥
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-004758(JP,A)
【文献】特開昭59-206915(JP,A)
【文献】特開2003-257591(JP,A)
【文献】特開2003-028722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/00
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像が形成されたシートを加熱する加熱部材を有する定着部と、
前記加熱部材からの赤外線を吸収するフィルムと、前記フィルムの温度に応じた第1検出値を出力する検出用サーミスタと、前記フィルムを保持する保持体の温度に応じた第2検出値を出力する補償用サーミスタと、を有する温度センサと、
前記第1検出値に基づく電圧と前記第2検出値に基づく電圧との差分値を第1増幅率で増幅し、第1出力電圧を出力する第1増幅部と、
前記第1検出値に基づく電圧と前記第2検出値に基づく電圧との差分値を前記第1増幅率よりも大きな第2増幅率で増幅し、第2出力電圧を出力する第2増幅部と、
前記第1出力電圧をアナログ・デジタル変換して第1温度情報を生成し、前記第2出力電圧をアナログ・デジタル変換して第2温度情報を生成し、前記第2検出値に基づく電圧をアナログ・デジタル変換して補償温度情報を生成する変換部と、
特定温度範囲での前記加熱部材の温度を前記第2温度情報及び前記補償温度情報に基づいて判定し、前記特定温度範囲を除く前記加熱部材の温度を前記第1温度情報及び前記補償温度情報に基づいて判定する温度判定部と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記特定温度範囲は、前記加熱部材によってシートを加熱する期間の温度を含む請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1増幅部は、前記差分値を増幅する第1オペアンプと、前記第1オペアンプの増幅率を前記第1増幅率に定める第1外部抵抗部と、を有し、
前記第2増幅部は、前記差分値を増幅する第2オペアンプと、前記第2オペアンプの増幅率を前記第2増幅率に定める第2外部抵抗部とを有する請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1増幅部は、前記第2検出値を増幅する第1サブオペアンプと、前記第1サブオペアンプの増幅率を第3増幅率に定める第3外部抵抗部と、を有し、
前記第2増幅部は、前記第2検出値を増幅する第2サブオペアンプと、前記第2サブオペアンプの増幅率を第4増幅率に定める第4外部抵抗部と、を有し、
前記第1オペアンプには、前記第1検出値に基づく電圧と、前記第1サブオペアンプの出力電圧とが入力され、前記第2オペアンプには、前記第1検出値に基づく電圧と、前記第2サブオペアンプの出力電圧とが入力される請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記変換部は、前記第1サブオペアンプの出力電圧を変換して前記補償温度情報を生成する請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記加熱部材の温度を制御する温度制御部を備え、
前記温度制御部は、前記第1温度情報又は前記第2温度情報により示される温度が前記特定温度範囲に含まれる場合に、前記第2温度情報及び前記補償温度情報に基づいて判定された温度を用いて、前記加熱部材の温度を制御する請求項1~5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記温度制御部は、前記補償温度情報により示される温度が所定の条件温度範囲に含まれ、かつ前記第1温度情報又は前記第2温度情報により示される温度が前記特定温度範囲に含まれる場合に、前記第2温度情報及び前記補償温度情報に基づいて判定された温度を用いて、前記加熱部材の温度を制御する請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記条件温度範囲は、前記特定温度範囲に対応する前記第2出力電圧が前記変換部の入力電圧範囲に含まれる温度範囲である請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記温度制御部は、前記補償温度情報により示される温度が、前記条件温度範囲に含まれない場合、又は前記第1温度情報又は前記第2温度情報により示される温度が前記特定温度範囲に含まれない場合に、前記第1温度情報及び前記補償温度情報に基づいて判定された温度を用いて、前記加熱部材の温度を制御する請求項6~8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
トナー像が形成されたシートを加熱する加熱部材を有する定着部と、
温度センサであって、前記加熱部材の表面温度に対応する第1検出値を出力する検出用サーミスタと、前記温度センサの環境温度に対応する第2検出値を出力する補償用サーミスタと、を有する温度センサと、
前記第1検出値に基づく電圧と前記第2検出値に基づく電圧とが入力され、第1増幅率を有する第1差動増幅部と、
前記第1検出値に基づく電圧と前記第2検出値に基づく電圧とが入力され、前記第1増幅率よりも大きい第2増幅率を有する第2差動増幅部と、
前記第1差動増幅部の出力をアナログ・デジタル変換して第1温度情報を生成し、前記第2差動増幅部の出力をアナログ・デジタル変換して第2温度情報を生成し、前記第2検出値に基づく電圧をアナログ・デジタル変換して補償温度情報を生成する変換部と、
特定温度範囲での前記加熱部材の温度を前記第2温度情報及び前記補償温度情報に基づいて判定し、前記特定温度範囲を除く前記加熱部材の温度を前記第1温度情報及び前記補償温度情報に基づいて判定する温度判定部と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱部材の温度を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、検出用サーミスタと、補償用サーミスタとを有する温度センサを用いて、加熱部材の温度を判定する画像形成装置が記載されている。各サーミスタからの検出値の差分は増幅回路により増幅された後、変換回路によりアナログ・デジタル変換され、マイクロコンピュータに出力される。マイクロコンピュータは、変換された差分と、補償用サーミスタからの出力値とを用いて加熱部材の温度を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-257591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、変換回路では、アナログ値をデジタル値に変換する際に量子化誤差が生じることが知られている。そのため、変換回路での量子化誤差に起因して、加熱部材の実際の温度に対して検出温度の誤差が大きくなることが懸念される。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みたものであり、温度センサにより検出された温度に対する変換回路による量子化誤差の影響を少なくすることにより、加熱ローラの温度を精度よく判定することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係る画像形成装置は、トナー像が形成されたシートを加熱する加熱部材を有する定着部と、加熱部材からの赤外線を吸収するフィルムと、フィルムの温度に応じた第1検出値を出力する検出用サーミスタと、フィルムを保持する保持体の温度に応じた第2検出値を出力する補償用サーミスタと、を有する温度センサと、第1検出値に基づく電圧と第2検出値に基づく電圧との差分値を第1増幅率で増幅し、第1出力電圧を出力する第1増幅部と、第1検出値に基づく電圧と第2検出値に基づく電圧との差分値を第1増幅率よりも大きな第2増幅率で増幅し、第2出力電圧を出力する第2増幅部と、第1出力電圧をアナログ・デジタル変換して第1温度情報を生成し、第2出力電圧をアナログ・デジタル変換して第2温度情報を生成し、第2検出値に基づく電圧をアナログ・デジタル変換して補償温度情報を生成する変換部と、特定温度範囲での加熱部材の温度を第2温度情報及び補償温度情報に基づいて判定し、特定温度範囲を除く加熱部材の温度を第1温度情報及び補償温度情報に基づいて判定する温度判定部と、を備える。
【0007】
上記構成では、特定温度範囲を除く温度では、第1検出値に基づく電圧と第2検出値に基づく電圧との差分値が第1増幅率で増幅されることで、第1出力電圧が出力され、この第1出力電圧をアナログ・デジタル変換した第1温度情報と、補償温度情報とを用いて、加熱部材の温度が判定される。一方で、特定温度範囲では、差分値が第2増幅率で増幅されることで、第2出力電圧が出力され、この第2出力電圧をアナログ・デジタル変換した第2温度情報と、補償温度情報とを用いて、加熱部材の温度が判定される。これにより、加熱部材の温度における特定温度範囲では、温度分解能を高くすることができるため、特定温度範囲において、温度センサにより検出された温度に対する変換回路の量子化誤差の影響を少なくし、加熱部材を精度よく判定することができる。
【0008】
本発明の一態様では、特定温度範囲は、加熱部材によってシートを加熱する期間の温度を含む。
【0009】
本発明の一態様では、第1増幅部は、差分値を増幅する第1オペアンプと、第1オペアンプの増幅率を第1増幅率に定める第1外部抵抗部と、を有し、第2増幅部は、差分値を増幅する第2オペアンプと、第2オペアンプの増幅率を第2増幅率に定める第2外部抵抗部とを有する。上記構成では、第1外部抵抗部と、第2外部抵抗部との間の抵抗差を調整することにより、第1増幅部と第2増幅部との間の増幅率の大小を定めることができる。
【0010】
本発明の一態様では、第1増幅部は、第2検出値を増幅する第1サブオペアンプと、第1サブオペアンプの増幅率を第3増幅率に定める第3外部抵抗部と、を有し、第2増幅部は、第2検出値を増幅する第2サブオペアンプと、第2サブオペアンプの増幅率を第4増幅率に定める第4外部抵抗部と、を有し、第1オペアンプには、第1検出値に基づく電圧と、第1サブオペアンプの出力電圧とが入力され、第2オペアンプには、第1検出値に基づく電圧と、第2サブオペアンプの出力電圧とが入力される。
【0011】
本発明の一態様では、変換部は、第1サブオペアンプの出力電圧を変換して補償温度情報を生成する。
【0012】
本発明の一態様では、加熱部材の温度を制御する温度制御部を備え、温度制御部は、第1温度情報又は第2温度情報により示される温度が特定温度範囲に含まれる場合に、第2温度情報及び補償温度情報に基づいて判定された温度を用いて、加熱部材の温度を制御する。上記構成では、加熱部材の温度を特定温度範囲内の温度に制御する場合に、量子化誤差に起因する悪影響を少なくすることができるため、加熱部材の温度を精度よく制御することができる。
【0013】
本発明の一態様では、温度制御部は、補償温度情報により示される温度が所定の条件温度範囲に含まれ、かつ第1温度情報又は第2温度情報により示される温度が特定温度範囲に含まれる場合に、第2温度情報及び補償温度情報に基づいて判定された温度を用いて、加熱部材の温度を制御する。これにより、特定温度範囲での加熱部材の温度をいっそう精度よく制御することができる。
【0014】
本発明の一態様では、条件温度範囲は、特定温度範囲に対応する第2出力電圧が変換部の入力電圧範囲に含まれる温度範囲である。
【0015】
本発明の一態様では、温度制御部は、補償温度情報により示される温度が、所定の条件温度範囲に含まれない場合、又は第1温度情報又は第2温度情報により示される温度が特定温度範囲に含まれない場合に、第1温度情報及び補償温度情報に基づいて判定された温度を用いて、加熱部材の温度を制御する。
【0016】
本発明の一態様では、トナー像が形成されたシートを加熱する加熱部材を有する定着部と、温度センサであって、加熱部材の表面温度に対応する第1検出値を出力する検出用サーミスタと、温度センサの環境温度に対応する第2検出値を出力する補償用サーミスタと、を有する温度センサと、第1検出値に基づく電圧と第2検出値に基づく電圧とが入力され、第1増幅率を有する第1差動増幅部と、第1検出値に基づく電圧と第2検出値に基づく電圧とが入力され、第1増幅率よりも大きい第2増幅率を有する第2差動増幅部と、第1差動増幅部の出力をアナログ・デジタル変換して第1温度情報を生成し、第2差動増幅部の出力をアナログ・デジタル変換して第2温度情報を生成し、第2検出値に基づく電圧をアナログ・デジタル変換して補償温度情報を生成する変換部と、特定温度範囲での加熱部材の温度を第2温度情報及び補償温度情報に基づいて判定し、特定温度範囲を除く加熱部材の温度を第1温度情報及び補償温度情報に基づいて判定する温度判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
以上説明した本発明では、温度センサにより検出された加熱部材の温度に対する変換回路の量子化誤差の影響を少なくすることができ、加熱部材の温度を制御よく判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】レーザプリンタの縦断面構造の概略を示す図。
図2】レーザプリンタの構成図。
図3】温度センサの構成を説明する図。
図4】特定温度範囲を説明する図。
図5】第1増幅率における出力電圧と温度との関係を説明する図。
図6】第2増幅率における出力電圧と温度との関係を説明する図。
図7】増幅回路とASICとの接続態様を説明する図。
図8】温度制御の手順を説明するフローチャート。
図9】条件温度範囲WS2を説明する図。
【0019】
本実施形態に係る画像形成装置を、図面を参照しつつ説明する。画像形成装置は、現像剤としてのトナーを用いて、記録用紙やOHPシート等のシートに画像を形成するレーザプリンタである。
【0020】
図1に示すように、レーザプリンタ1は、シート供給部3と、露光部4と、プロセス部6と、定着部8と、制御部10と、筐体2とを備えている。
【0021】
シート供給部3は、シートSを収容する供給トレイ31と、シート押圧板32と、供給機構33とを備えている。供給機構33は、ピックアップローラ33Aと、分離ローラ33Bと、第1搬送ローラ33Cと、レジストレーションローラ33Dとを備えている。シート供給部3では、供給トレイ31内のシートSが、シート押圧板32によってピックアップローラ33Aに寄せられ、ピックアップローラ33Aによって分離ローラ33Bに送られる。シートSは、分離ローラ33Bによって1枚に分離され、第1搬送ローラ33Cによって搬送される。レジストレーションローラ33Dは、シートSの先端の位置を揃えた後、プロセス部6に向けてシートSを搬送する。
【0022】
露光部4は、図示しないレーザ光源や、符号を省略して示すポリゴンミラー、レンズ、反射鏡などを備えている。露光部4では、レーザ光源から出射される画像データに基づくレーザ光が、後述するプロセス部6の感光体ドラム61の表面で走査されることで、感光体ドラム61に静電潜像が形成される。
【0023】
プロセス部6は、シートSにトナー像を形成する。プロセス部6は、筐体2内において露光部4の下方に配置されている。プロセス部6は、感光体ドラム61と、帯電器62と、転写ローラ63と、現像ローラ71と、供給ローラ72と、トナーとしての乾式トナーを収容するトナー収容部74とを備えている。
【0024】
プロセス部6では、感光体ドラム61の表面が帯電器62により一様に帯電された後、露光部からのレーザ光によって感光体ドラム61に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、トナー収容部74内のトナーは、供給ローラ72を介して現像ローラ71に供給される。現像ローラ71は、トナーを静電潜像が形成された感光体ドラム61に供給する。これにより、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム61上にトナー像が形成される。その後、シート供給部3から供給されたシートSが、感光体ドラム61と転写ローラ63の間を搬送されることにより、感光体ドラム61上に形成されたトナー像がシートS上に転写される。
【0025】
トナー像が転写されたシートSは、感光体ドラム61及び転写ローラ63によって、定着部8に搬送される。定着部8は、プロセス部6から搬送されてくるシートS上にトナー像を定着させる。定着部8は、シートSを加熱する加熱ローラ81と、加熱ローラ81との間でシートSを挟む加圧ローラ82とを有している。加熱ローラ81は、筐体2内において回転可能に保持された円筒形状のローラである。加圧ローラ82は、筐体2の内部において回転可能に保持されたローラである。定着部8では、トナー像が転写されたシートSが、加熱ローラ81と加圧ローラ82の間で搬送されることで、トナー像がシートS上に熱定着される。
【0026】
加熱ローラ81の内部には、ヒータ83が配置されている。本実施形態では、ヒータ83は、2本のハロゲンランプである。各ヒータ83は、加熱ローラ81における幅方向での長さ寸法と略同じ長さ寸法で延びた形状であり、加熱ローラ81の内部に並んで配置されている。加熱ローラ81は、加熱部材の一例である。
【0027】
トナー像が熱定着されたシートSは、第2搬送ローラ23および排出ローラ24によって排出トレイ22上に排出される。
【0028】
図2に示すように、制御部10は、シート供給部3と、露光部4と、プロセス部6と、定着部8と、ヒータ83とに接続されており、シート供給部3、露光部4,プロセス部6,定着部8,ヒータ83の駆動を制御する。具体的には、制御部10は、シート供給部3の各ローラを回転させるモータ、定着部8の加熱ローラ81及び加圧ローラ82を回転させるモータ、更には、プロセス部6の各光源の発光を制御する。
【0029】
制御部10は、加熱ローラ81の温度を検出する温度センサ40が接続されている。温度センサ40から出力される検出電圧(後述する、Va,Vb)は、制御部10に入力される。
【0030】
制御部10は、温度センサ40から出力される検出電圧を用いて、加熱ローラ81の温度を制御する温度制御を行う。具体的には、制御部10は、印刷処理においてシートSにトナーを定着させる場合に、加熱ローラ81の温度を所定の温度範囲内に制御する。一方、制御部10は、レーザプリンタ1が印刷処理を行わない待機モードにおいて、加熱ローラ81の温度を定着処理時での温度範囲よりも低い温度範囲に制御する。
【0031】
次に、温度センサ40について説明する。
温度センサ40は、非接触型のセンサであり、本実施形態では、サーミスタ温度センサである。図3に示すように、温度センサ40は、保持体の一例である本体44と、フィルム43と、検出用サーミスタ41と、補償用サーミスタ42と、を有している。本体44には、加熱ローラ81に向けられる面44aで開口する開口部44bが形成されている。開口部44bは、本体44の内部で検出用サーミスタ41及び補償用サーミスタ42が収容されるセンサ収容空間44cまで延びている。開口部44bにおける、面44aと反対側の端はフィルム43により閉塞されており、開口部44bとセンサ収容空間44cとの境界がフィルム43により間仕切られている。検出用サーミスタ41は、フィルム43に固定された状態でセンサ収容空間44c内に保持されている。補償用サーミスタ42は、センサ収容空間44cを形成する壁部に固定された状態で、センサ収容空間44c内に保持されている。
【0032】
上記構成の温度センサ40では、加熱ローラ81から放射された赤外線は、開口部44bを通じてフィルム43に伝わり、フィルム43に吸収される。検出用サーミスタ41は、フィルム43の温度に応じた第1検出電圧Vaを出力する。すなわち、検出用サーミスタ41は加熱ローラ81の表面の温度に対応した第1検出電圧Vaを出力する。また、補償用サーミスタ42は、本体44の温度に応じた第2検出電圧Vbを出力する。すなわち、補償用サーミスタ42は温度センサ40の環境温度に対応した第2検出電圧Vbを出力する。第1検出電圧Vaは、フィルム43の温度に応じてその電圧値が変化するアナログ信号である。第2検出電圧Vbは、本体44の温度に応じてその電圧値が変化するアナログ信号であり、第1検出電圧Vaを補償するために用いられる信号である。
【0033】
次に、制御部10の構成を説明する。制御部10は、ASIC11と、通電回路15と、増幅回路16とを備えている。
【0034】
通電回路15は、スイッチング素子としてのトライアックを有しており、不図示の交流電源から供給された交流電圧をヒータ83に供給する通電状態と、交流電圧をヒータ83に供給しない非通電状態とを切り替える。
【0035】
増幅回路16は、温度センサ40から受信した第1検出電圧Vaに基づく入力値と第2検出電圧Vbに基づく入力値との差分である差分電圧ΔVを増幅し、出力電圧VoをASIC11に出力する。また、増幅回路16は、第2検出電圧Vbを増幅し、補償出力電圧VsをASIC11に出力する。なお、増幅回路16の詳細な構成については後述する。
【0036】
ASIC11は、CPU12と、メモリ13と、ADC(アナログ・デジタルコンバータ)14とを有している。ADC14は、出力電圧Voをアナログ・デジタル変換して温度情報Tdを生成する。ADC14は、変換部の一例である。また、ADC14は、補償出力電圧Vsをアナログ・デジタル変換して補償温度情報Trを生成する。温度情報Td及び補償温度情報Trは、離散的な値を取るデジタル信号である。
【0037】
CPU12は、ADC14により生成された温度情報Td及び補償温度情報Trを用いて、加熱ローラ81の温度を判定する。CPU12は、温度判定部の一例である。メモリ13には、温度情報Tdと補償温度情報Trとの組み合わせと、加熱ローラ81の温度との対応関係を定めた温度テーブルを記憶している。CPU12は、温度テーブルを参照することにより、温度情報Tdと補償温度情報Trとの組み合わせに対応する温度を加熱ローラ81の温度として判定する。なお、CPU12は、温度情報Tdと補償温度情報Trとを用いた演算により温度を算出し、算出した温度を加熱ローラ81の温度として判定してもよい。
【0038】
CPU12は、判定した加熱ローラ81の温度を用いて、通電回路15によりヒータ83に供給される交流電圧の通電時間を可変する。CPU12は、温度制御部の一例である。具体的には、ASIC11は、加熱ローラ81の温度をもとにヒータ駆動信号を生成し、生成したヒータ駆動信号を通電回路15に出力する。ヒータ駆動信号は、通電回路15によりヒータに供給される交流電力の量を定める信号であり、具体的には、トライアックをオンオフ操作させる信号である。
【0039】
次に、加熱ローラ81の温度変化を説明する。図4は、定着部8によりシートSに対してトナー像の定着が行われている場合の加熱ローラ81の温度変化を示しており、具体的には、シートSが加熱ローラ81と加圧ローラ82との間を通過する期間(t1~t2)での温度変化を示している。
【0040】
時刻t1よりも前では、ヒータ83に対する交流電力の供給が開始されることにより、加熱ローラ81の温度が上昇していく。時刻t1以後では、加熱ローラ81と加圧ローラ82との間にシートSが挟まれており、加熱ローラ81の温度は160[℃]付近で変化している。図4では図示していないが、時刻t2以後は、加熱ローラ81と加圧ローラ82との間にシートSが挟まれておらず、加熱ローラ81の温度は一時的に増加する。そのため、シートSに対してトナー像の定着が行われる期間では、加熱ローラ81の温度は、150[℃]から200[℃]の温度範囲である特定温度範囲WS1で変化している。特定温度範囲WS1は、ヒータ83が通電され、加熱ローラ81が加熱制御されている状態で取りえる温度範囲の一部であって、シートSに対してトナー像の定着が行われている期間において、加熱ローラ81の温度が取りえる温度範囲を含む。また特定温度範囲WS1は、レーザプリンタ1の動作条件の下限温度として定められた温度(例えば、0[℃])や室温(例えば、25[℃])は含まない。
【0041】
特定温度範囲WS1において、加熱ローラ81の温度に対するADC14の量子化誤差が大きくなると、トナー像の定着が適正に行われない場合がある。本発明者は、シートSにトナー像を定着している期間での加熱ローラ81の温度が特定温度範囲WS1で変化することに着目し、加熱ローラ81の温度が特定温度範囲WS1に含まれる場合に、この特定温度範囲WS1においてのみ高い分解能を有する温度情報Tdを用いることを思い立った。具体的には、加熱ローラ81の温度が特定温度範囲WS1に含まれない場合は、第1温度情報TdAを用いて加熱ローラ81に対する温度制御を行う。第1温度情報TdAは、加熱ローラ81が取り得る温度として想定される全温度範囲での分解能が一定の範囲となる温度情報Tdである。一方、加熱ローラ81の温度が、特定温度範囲WS1に含まれる場合に、この特定温度範囲WS1での分解能が第1温度情報TdAよりも高い第2温度情報TdBを用いて加熱ローラ81に対する温度制御を行う。
【0042】
次に、温度情報Tdの分解能を変化させる原理を説明する。
図5は、差分電圧ΔVを第1増幅率A1で増幅した出力電圧Vo1を示している。横軸は加熱ローラ81の温度を示している。図5において、Vo1_a,Vo1_bは、第2検出電圧Vbが異なる例を示している。図6は、加熱ローラ81の温度が図5と同じ条件において、差分電圧ΔVを第2増幅率A2で増幅した出力電圧Vo2を示している。図6において、Vo2_a,Vo2_bは、第2検出電圧Vbが異なる例を示している。ADC14の入力電圧範囲の下限値をLowとし、上限値をUpとして示している。
【0043】
出力電圧Vo1_a,Vo1_bは、加熱ローラ81の温度が増加するに従い電圧値が緩やかに減少しており、加熱ローラ81の温度の変化に対する電圧値の変化を示す傾きが小さい。一方で、図6で示す、出力電圧Vo2_a,Vo2_bでは、加熱ローラ81の温度変化に対する傾きが出力電圧Vo1_a,Vo1_b(図5)よりも大きくなっている。そのため、特定温度範囲WS1において、出力電圧Vo2_a,Vo2_bを用いて算出される第2温度情報TdBは、出力電圧Vo1_a,Vo1_bを用いて算出される第1温度情報TdAよりも分解能が高くなる。
【0044】
一方で、第2増幅率A2で増幅された出力電圧Vo2_a,Vo2_bは、特定温度範囲WS1以外の温度において、上限値Upを上回る温度や、下限値Lowを下回る温度が存在する。増幅後の出力電圧Vo2_a,Vo2_bにおいて、上限値Upを上回る温度は上限値Upに飽和し、下限値Lowを下回る温度は下限値Lowに飽和する。そのため、特定温度範囲WS1以外では、第1温度情報TdAの方が、第2温度情報TdBよりも正確である。
【0045】
次に、増幅回路16の具体的な構成を、図7を用いて説明する。
増幅回路16は、温度センサ40に接続された第1入力端子51、第2入力端子52、第3入力端子53、及び第4入力端子54を有している。具体的には、第1入力端子51は、第1接続線L1を介して検出用サーミスタ41に接続されており、第1検出電圧Vaが入力される。第2入力端子52は、第2接続線L2を介して補償用サーミスタ42に接続されており、第2検出電圧Vbが入力される。第3入力端子53は、第1接続線L1から分岐する第3接続線L3を介して検出用サーミスタ41に接続されており、第1検出電圧Vaが入力される。第4入力端子54は、第2接続線L2から分岐する第4接続線L4を介して補償用サーミスタ42に接続されており、第2検出電圧Vbが入力される。
【0046】
また、増幅回路16は、出力電圧Voを出力する第1出力端子55及び第3出力端子57と、補償出力電圧Vsを出力する第2出力端子56及び第4出力端子58を有している。具体的には、第1出力端子55は、接続線L5を介してASIC11の第1差分電圧端子91に接続されている。第2出力端子56は、接続線L6を介してASIC11の第1補償電圧端子92に接続されている。第3出力端子57は、接続線L7を介してASIC11の第2差分電圧端子93に接続されている。第4出力端子58は、接続線L8を介してASIC11の第2補償電圧端子94に接続されている。
【0047】
増幅回路16は、第1増幅部160と、第2増幅部170とを備えている。第1増幅部160は、第1検出電圧Vaに基づく入力値と第2検出電圧Vbに基づく入力値との差分である差分電圧ΔVを、第1増幅率A1で増幅し、出力電圧Vo1を出力する。第2増幅部170は、第1検出電圧Vaに基づく入力値と第2検出電圧Vbに基づく入力値との差分である差分電圧ΔVを、第1増幅率A1よりも大きな第2増幅率A2で増幅し、出力電圧Vo2を出力する。
【0048】
第1増幅部160は、非反転増幅器として機能する第1メインオペアンプ161及び第1サブオペアンプ164を有している。第1メインオペアンプ161の非反転入力端子は、第1入力端子51に繋がる第1入力ライン162に接続されており、検出用サーミスタ41からの第1検出電圧Vaが入力される。1メインオペアンプ161の出力端子は、抵抗R3が直列接続された第1出力ライン163の一端に接続されている。第1出力ライン163の他端は、第1出力端子55に接続されている。第1メインオペアンプ161の反転入力端子と出力端子とは、抵抗R2により接続されている。本実施形態では、抵抗R2には、コンデンサC1が並列接続されている。また、第1出力ライン163は、コンデンサC2を介してシグナルグランドに接続されている。
【0049】
第1サブオペアンプ164の非反転入力端子は、第2入力端子52に繋がる第2入力ライン165に接続されており、補償用サーミスタ42からの第2検出電圧Vbが入力される。第1サブオペアンプ164の反転入力端子は、抵抗R5を介してシグナルグランドに接続されている。第1サブオペアンプ164の出力端子は、抵抗R7が直列接続された第2出力ライン166の一端に接続されている。第2出力ライン166の他端は第2出力端子56に接続されている。第1サブオペアンプ164の反転入力端子と出力端子とは、抵抗R6により接続されている。本実施形態では、抵抗R6には、コンデンサC3が並列接続されている。また、第2出力ライン166は、コンデンサC4を介してシグナルグランドに接続されている。
【0050】
第1メインオペアンプ161の反転入力端と第1サブオペアンプ164の出力端子とは、抵抗R4を介して接続されている。具体的には、抵抗R4の一端は、第1メインオペアンプ161の反転入力端子に繋がる抵抗R1に接続されており、他端は、第2出力ライン166のうち抵抗R6が接続された接点と、抵抗R7との間の接点K1に接続されている。第1メインオペアンプ161は、差動増幅回路(第1差動増幅部)を構成する。
【0051】
上記構成の第1増幅部160では、第2入力端子52を介して入力された第2検出電圧Vbは、第1サブオペアンプ164により増幅された後、第2出力端子56に出力される。第1サブオペアンプ164の出力端子からは、非反転入力端子に入力された第2検出電圧Vbを、第3増幅率A3(=(R5+R6)/R5)で増幅した電圧が、補償出力電圧Vs1として出力される。補償出力電圧Vs1は、抵抗R4を介して第1メインオペアンプ161の反転入力端子にも出力される。
【0052】
第1メインオペアンプ161は、反転入力端子に入力された補償出力電圧Vs1と、非反転入力端子に入力された第1検出電圧Vaとの差分(Va-Vs1)である差分電圧ΔVを増幅し、出力電圧Vo1を第1出力端子55に出力する。ここで、抵抗R2の抵抗値は、抵抗R1の抵抗値よりも大きい。これにより、第1メインオペアンプ161の出力端子からは、差分電圧ΔVを、第1増幅率A1(=(R1+R2)/R1)で増幅した電圧が、出力電圧Vo1として出力される。
【0053】
本実施形態では、第3増幅率A3は、補償出力電圧Vs1に対応する温度範囲において、補償出力電圧Vs1が飽和しないようにその値が定められていればよい。例えば、補償出力電圧Vs1に対応する温度範囲は、レーザプリンタ1の動作条件の下限温度として定められた温度(例えば、0[℃])と、温度センサ40の耐熱温度の上限温度として定めらえた温度(例えば、150[℃])との間の温度範囲である。
【0054】
第2増幅部170は、非反転増幅器として機能する第2メインオペアンプ171及び第2サブオペアンプ174を有している。第2メインオペアンプ171の非反転入力端子は、第3入力端子53に繋がる第3入力ライン172に接続されており、検出用サーミスタ41からの第1検出電圧Vaが入力される。第2メインオペアンプ171の出力端子は、抵抗R13が直列接続された第3出力ライン173の一端に接続されている。第3出力ライン173の他端は第3出力端子57に接続されている。第2メインオペアンプ171の反転入力端子と出力端子とは、抵抗R12により接続されている。本実施形態では、抵抗R12には、コンデンサC11が並列接続されている。また、第3出力ライン173は、コンデンサC12を介してシグナルグランドに接続されている。
【0055】
第2サブオペアンプ174の非反転入力端子は、第4入力端子54に繋がる第4入力ライン175に接続されており、補償用サーミスタ42からの第2検出電圧Vbが入力される。第2サブオペアンプ174の反転入力端子は、抵抗R15を介してシグナルグランドに接続されている。第2サブオペアンプ174の出力端子は、抵抗R17が直列接続された第4出力ライン176の一端に接続されている。第4出力ライン176の他端は第4出力端子58に接続されている。第2サブオペアンプ174の反転入力端子と出力端子とは、抵抗R16により接続されている。本実施形態では、抵抗R16には、コンデンサC13が並列接続されている。また、第4出力ライン176は、コンデンサC14を介してシグナルグランドに接続されている。
【0056】
第2メインオペアンプ171の反転入力端と第2サブオペアンプ174の出力端子とは、抵抗R14を介して接続されている。具体的には、抵抗R14の一端は、第2メインオペアンプ171の反転入力端子に繋がる抵抗R11に接続されており、他端は、第4出力ライン176のうち抵抗R16が接続された接点と、抵抗R17との間の接点K11に接続されている。第2メインオペアンプ171は、差動増幅回路(第2差動増幅部)を構成する。
【0057】
上記構成の第2増幅部170では、第4入力端子54を介して入力された第2検出電圧Vbは、第2サブオペアンプ174により増幅された後、第4出力端子58から出力される。第2サブオペアンプ174の出力端子からは、非反転入力端子に入力された第2検出電圧Vbを、第4増幅率A4(=(R15+R16)/R15)で増幅した電圧が、補償出力電圧Vs2として出力される。補償出力電圧Vs2は、抵抗R14を介して第2メインオペアンプ171の反転入力端子にも出力される。
【0058】
第2メインオペアンプ171は、反転入力端子に入力された補償出力電圧Vs2と、非反転入力端子に入力された第1検出電圧Vaとの差分(Va-Vs2)である差分電圧ΔVを増幅し、出力電圧Vo2を第3出力端子57に出力する。ここで、抵抗R12の抵抗値は、抵抗R11の抵抗値よりも大きい。これにより、第2メインオペアンプ171の出力端子からは、差分電圧ΔVを、第2増幅率A2((R11+R12)/R11)で増幅した電圧が、出力電圧Vo2として出力される。第2増幅率A2は、第1増幅率A1よりも大きくなるように、各抵抗R1,R2,R11,R12の抵抗値が定められている。本実施形態では、第4増幅率A4は、増幅後の第2検出電圧Vbにより検出される温度範囲において第2検出電圧Vbが飽和しないように、その値が定められていればよい。
【0059】
第1差分電圧端子91を通じて入力された出力電圧Vo1と、第1補償電圧端子92を通じて入力された補償出力電圧Vs1とは、ADC14に入力される。ADC14は、出力電圧Vo1をアナログ・デジタル変換することで、第1温度情報TdAを出力し、補償出力電圧Vs1をアナログ・デジタル変換することで、第1補償温度情報TrAを出力する。第2差分電圧端子93を通じて入力された出力電圧Vo2と、第2補償電圧端子94を通じて入力された補償出力電圧Vs2とは、制御部10のADC14に入力される。ADC14は、出力電圧Vo2をアナログ・デジタル変換することで、第2温度情報TdBを出力し、補償出力電圧Vs2をアナログ・デジタル変換することで、第2補償温度情報TrBを出力する。
【0060】
次に、第1,第2温度情報TdA,TdB及び第1,第2補償温度情報TrA,TrBを用いた温度制御を、図8を用いて説明する。図8に示す処理は、レーザプリンタ1がシートSに対してトナー像の定着を開始することを契機に、CPU12により実行される処理であり、主体の記載を省略する。
【0061】
ステップS11では、ADC14により生成された第1温度情報TdA及び第1補償温度情報TrAを取得する。ステップS12では、ADC14により生成された第2温度情報TdB及び第2補償温度情報TrBを取得する。
【0062】
ステップS13では、第1補償温度情報TrAにより示される温度が、条件温度範囲WS2に含まれるか否かを判断する。条件温度範囲WS2は、特定温度範囲WS1での第2温度情報TdBを精度よく検出するための補償温度情報Trの温度範囲である。図9は、出力電圧Vo2を示している。ここで、出力電圧Vo2_1は、補償温度情報Trが「10℃」の場合の検出電圧であり、出力電圧Vo2_2は、補償温度情報Trが「80℃」の場合の検出電圧であり、出力電圧Vo2_3は、補償温度情報Trが「100℃」の場合の検出電圧である。
【0063】
出力電圧Vo2_1では、特定温度範囲WS1において、入力電圧範囲の下限値Lowに飽和している。これは、出力電圧Vo2_1が第2増幅率A2で増幅されたことにより、特定温度範囲WS1において下限値Lowを下回ったためである(図中、破線で示す。)。即ち、出力電圧Vo2_1を用いて算出される第2温度情報TdBは、特定温度範囲WS1において不正確である。一方で、出力電圧Vo2_2及び出力電圧Vo2_3は、特定温度範囲WS1において、入力電圧範囲の上限値Upと下限値Lowとの間の値を取っている。
【0064】
そこで、本実施形態では、特定温度範囲WS1における第1補償温度情報TrAの範囲を、第2温度情報TdBを不正確にしない条件温度範囲WS2に定めている。具体的には、特定温度範囲WS1における第1補償温度情報TrAの範囲を、出力電圧Vo2がADC14の入力電圧範囲の上限値Upと下限値Lowとの間の値となる条件温度範囲WS2に定めている。例えば、条件温度範囲は、シートSの定着時に想定される温度センサ40の本体44の温度範囲であり、例えば、下限値H3を20[℃]とし、上限値H4を125[℃]とする温度範囲である。
【0065】
ステップS13では、第1補償温度情報TrAが、条件温度範囲WS2に含まれることを条件に、ステップS14に進み、第1温度情報TdAが特定温度範囲WS1に含まれるか否かを判定する。具体的には、ステップS13では、第1補償温度情報TrAにより示される温度が、条件温度範囲WS2の下限値H3以上であり、かつ条件温度範囲WS2の上限値H4以下であるか否かを判断する。
【0066】
ステップS13を肯定判定すると、ステップS14に進む。ステップS14では、加熱ローラ81の温度が、特定温度範囲WS1に含まれるか否かを判断する。本実施形態では、第1温度情報TdAにより示される温度が、特定温度範囲WS1の下限値H1以上であり、かつ特定温度範囲WS1の上限値H2以下であるか否かを判断する。
【0067】
ステップS14を肯定判定すると、ステップS16に進む。加熱ローラ81の温度が特定温度範囲WS1に含まれる場合、第2温度情報TdBの分解能が、第1温度情報TdAの分解能よりも高くなる。そのため、ステップS16では、第2温度情報TdB及び第2補償温度情報TrBを用いて、加熱ローラ81に対する温度制御を行う。上述したように、温度テーブルを参照して、第2温度情報TdB及び第2補償温度情報TrBの組み合わせに対応する加熱ローラ81の温度を判定する。そして、判定した温度を用いてヒータ駆動信号を生成し、生成したヒータ駆動信号を通電回路15に出力する。
【0068】
ステップS13を否定判定する場合、又はステップS14を否定判定する場合、ステップS15に進む。ステップS15に進む場合、第2温度情報TdBは、第1温度情報TdAよりも不正確である。そのため、本実施形態では、第1温度情報TdA及び第1補償温度情報TrAを用いて、加熱ローラ81に対する温度制御を行う。
【0069】
ステップS15又はステップS16の処理を終了する場合、図8の処理を一旦終了する。第1検出電圧Vaが第1検出値の一例であり、第2検出電圧Vbが第2検出値の一例である。抵抗R1,R2が第1外部抵抗部の一例であり、抵抗R11,R12が第2外部抵抗部の一例である。
【0070】
以上説明した本実施形態では、以下の効果を奏することができる。
レーザプリンタ1は、温度センサ40により出力された第1検出電圧Vaに基づく電圧と、第2検出電圧Vbに基づく電圧との差分を、第1増幅部160により第1増幅率A1で増幅することで、出力電圧Vo1を出力する。また、第1増幅部160と、第1検出電圧Vaに基づく電圧と、第2検出電圧Vbに基づく電圧との差分を、第2増幅部170により第2増幅率A2で増幅することで、出力電圧Vo2を出力する。ADC14は、出力電圧Vo1をアナログ・デジタル変換して第1温度情報TdAを生成し、出力電圧Vo2をアナログ・デジタル変換して第2温度情報TdBを生成する。CPU12は、特定温度範囲WS1での加熱ローラ81の温度を第2温度情報TdB及び第2補償温度情報TrBに基づいて判定し、特定温度範囲WS1を除く加熱ローラ81の温度を第1温度情報TdA及び第1補償温度情報TrAに基づいて判定する。
【0071】
これにより、特定温度範囲WS1では、この特定温度範囲WS1において温度分解能が高い第2温度情報TdBを用いて加熱ローラ81の温度が判定されるため、加熱ローラの検出温度に対する変換回路による量子化誤差の影響を少なくすることにより、加熱ローラ81の温度を精度よく検出することができる。
【0072】
第1増幅部160は、第1メインオペアンプ161と、第1メインオペアンプ161の増幅率を第1増幅率に定める抵抗R1,R2と、を有し、第2増幅部170は、第2メインオペアンプ171と、第2メインオペアンプ171の増幅率を第2増幅率A2に定める抵抗R11,R12とを有する。これにより、各抵抗R1,R2,R11,R12間の抵抗差を調整することにより、第1増幅部160と第2増幅部170との間の増幅率の大小を定めることができる。
【0073】
CPU12は、第1温度情報TdAにより示される温度が特定温度範囲WS1に含まれる場合に、第2温度情報TdB及び第2補償温度情報TrBに基づいて判定された温度を用いて、加熱ローラ81の温度を制御する。これにより、加熱ローラ81の温度を精度よく制御することができる。
【0074】
CPU12は、第1補償温度情報TrAにより示される温度が所定の条件温度範囲WS2に含まれ、かつ第1温度情報TdAにより示される温度が特定温度範囲WS1に含まれる場合に、第2温度情報TdB及び第2補償温度情報TrBに基づいて判定された温度を用いて、加熱ローラ81の温度を制御する。これにより、加熱ローラ81の温度をいっそう精度よく制御することができる。
【0075】
CPU12は、第1補償温度情報TrAにより示される温度が、所定の条件温度範囲WS2に含まれない場合、又は第1温度情報Tdにより示される温度が特定温度範囲WS1に含まれない場合に、第1温度情報TdA及び第1補償温度情報TrAに基づいて判定された温度を用いて、加熱ローラ81の温度を制御する。これにより、温度制御の精度を極力低下させないようにすることができる。
【0076】
(その他の実施形態)
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
・CPU12は、図8のステップS14において、第2温度情報TdBを用いて、加熱ローラ81の温度が特定温度範囲WS1に含まれるか否かを判断してもよい。
【0077】
・CPU12は、図8のステップS13において、第2補償温度情報TrBが条件温度範囲WS2に含まれているか否かを判断してもよい。
【0078】
・シートSにトナー像を定着させる際に加熱ローラ81で取り得る温度範囲を特定温度範囲WS1に用いたことは一例に過ぎない。例えば、レーザプリンタ1が印刷処理を行わない待機モードでの温度範囲を、特定温度範囲WS1に用いてもよい。
【0079】
・条件温度範囲WS2と特定温度範囲WS1とが一部の温度で重なっていてもよい。例えば、条件温度範囲WS2の上限値H4が、特定温度範囲WS1の下限値H1よりも高くてもよい。
【0080】
・温度判定部及び温度制御部の各機能は、ASIC11により実行されるものに限定されない。例えば、レーザプリンタ1が複数のASICや、CPUを備えている場合に、何れか一つのASICやCPUが、温度判定部や、温度制御部として機能するものであってもよい。
【0081】
・画像形成装置は、レーザプリンタ1に限定されず、複写機や複合機であってもよい。また、画像形成装置は、それぞれ異なる色に対応する複数のプロセス部を有するカラープリンタであってもよい。
【0082】
・加熱部材は、加熱ローラ81に限定されない。加熱部材は、無端状のベルトと、ベルト内周面を加熱するヒータとを備えた加熱ベルトであってもよい。また、加熱部材は、ローラ又はベルトからなる回転体と、回転体の外周面を加熱するヒータとを備えた外部加熱方式の加熱部材であってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…レーザプリンタ、8…定着部、10…制御部、11…ASIC、12…CPU、40…温度センサ、81…加熱ローラ、83…ヒータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9