(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】姿勢判定装置、姿勢判定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/107 20060101AFI20240918BHJP
【FI】
A61B5/107 300
(21)【出願番号】P 2022545182
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2020032488
(87)【国際公開番号】W WO2022044236
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】新島 有信
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101017418(CN,A)
【文献】特開2016-193020(JP,A)
【文献】特表2014-502203(JP,A)
【文献】中国実用新案第204634116(CN,U)
【文献】中国実用新案第209149553(CN,U)
【文献】中国実用新案第203912278(CN,U)
【文献】実開昭59-164524(JP,U)
【文献】実開平2-6398(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0049052(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06- 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに装着された音波送信部から出力された非可聴域の音波を受信する音波受信部と、
前記非可聴域の音波に基づいて、前記ユーザの姿勢の良否を判定し、判定結果を出力する姿勢判定部と、
前記ユーザに対する姿勢判定結果に応じて、前記音波送信部から出力する可聴域の音波を加工するための音波加工部と
を備える姿勢判定装置。
【請求項2】
前記姿勢判定装置は、前記音波送信部を備え、
前記音波送信部は、前記ユーザの上半身に装着され、前記ユーザの身体の下方向に前記非可聴域の音波を送信する
請求項1に記載の姿勢判定装置。
【請求項3】
前記音波受信部より受信した音波の周波数解析を行って、前記非可聴域の音波の周波数のパワーを取得する周波数解析部
を更に備える請求項1又は2に記載の姿勢判定装置。
【請求項4】
前記姿勢判定部は、前記パワーと閾値とを比較することにより、前記ユーザの姿勢の良否を判定する
請求項3に記載の姿勢判定装置。
【請求項5】
前記姿勢判定部により、前記ユーザの姿勢が悪いと判定された場合において、前記音波加工部は、前記可聴域の音波に対してオーディオデジタルエフェクトを適用することで音質を低下させる
請求項
1に記載の姿勢判定装置。
【請求項6】
姿勢判定装置が実行する姿勢判定方法であって、
ユーザに装着された音波送信部から出力された非可聴域の音波を受信する音波受信ステップと、
前記非可聴域の音波に基づいて、前記ユーザの姿勢の良否を判定し、判定結果を出力する姿勢判定ステップと、
前記ユーザに対する姿勢判定結果に応じて、前記音波送信部から出力する可聴域の音波を加工する音波加工ステップと
を備える姿勢判定方法。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1ないし
5のうちいずれか1項に記載の姿勢判定装置における姿勢判定部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの作業中の悪い姿勢を矯正するための技術に関連するものである。
【背景技術】
【0002】
ノートパソコンやスマートフォンを使って仕事や勉強をする機会が増えるにつれ、コンピュータビジョン症候群やテキストネック症候群が大きな問題となっている。長期間、悪い姿勢で作業を続けると、眼精疲労、ドライアイ、頸部痛、腰痛などを引き起こす。
【0003】
これらの症状を防ぐためには、ユーザが作業中に良い姿勢を意識することが重要である。例えば、ユーザがノートパソコンを操作中には、ユーザの目とスクリーンとの間の距離を40cm以上離すことが推奨されている。また、ユーザがスマートフォンを操作するときには、ユーザは顔の正面にスマートフォンを持ってきて、うつむいた状態で操作しないようにすることが推奨されている。
【0004】
しかしながら、ユーザにとって作業中の姿勢を常に意識することは難しい。そこで、そのような姿勢を常時モニタリングするためのウェアラブルセンサが開発されている(例えば、非特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】KHURANA, Rushil, et al. NeckGraffe: a postural awareness system. In: CHI'14 Extended Abstracts on Human Factors in Computing Systems. 2014. p. 227-232.
【文献】MIN, Chulhong, et al. Tiger: Wearable Glasses for the 20-20-20 Rule to Alleviate Computer Vision Syndrome. In: Proceedings of the 21st International Conference on Human-Computer Interaction with Mobile Devices and Services. 2019. p. 1-11.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に開示された技術では、ユーザの姿勢を加速度素子(ジャイロ)を用いて検出し、検出姿勢が悪いと判定した際には、「振動」を利用してユーザに姿勢の状態をフィードバックしている。非特許文献1に開示された技術では、ユーザの身体に対して、加速度素子(ジャイロ)を粘着させる。しかし、ユーザに対して身体に素子を粘着させることは、日常的な利用機器としては使い難いものになってしまう。
【0007】
また、非特許文献2に開示された技術では、眼鏡型の専用モジュールを用いており、当該モジュールにおいて、角速度・加速度を高精度に計測する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)を装備している。このような装置は、汎用的な機器ではないので高価であり、ユーザが日常的に利用することは困難である。
【0008】
ユーザの作業中の悪い姿勢を矯正するために使用する装置は日常的に継続して利用する必要がある。しかし、上記のような従来技術では、姿勢検出のためだけに専用のウェアラブルデバイスを日常的に装着する必要があり、ユーザにとって負荷が大きく、継続して利用することが難しい。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ユーザが容易に継続して利用することができる、姿勢を矯正するための装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
開示の技術によれば、ユーザに装着された音波送信部から出力された非可聴域の音波を受信する音波受信部と、
前記非可聴域の音波に基づいて、前記ユーザの姿勢の良否を判定し、判定結果を出力する姿勢判定部と、
前記ユーザに対する姿勢判定結果に応じて、前記音波送信部から出力する可聴域の音波を加工するための音波加工部と
を備える姿勢判定装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
開示の技術によれば、ユーザが容易に継続して利用することができる、姿勢を矯正するための装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】姿勢フィードバック装置の構成例を示す図である。
【
図2】姿勢フィードバック装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図3】姿勢フィードバック装置を構成する具体的な装置の例を示す図である。
【
図4】ウェアラブルスピーカとラップトップPCとの間の位置関係のイメージを示す図である。
【
図5】ウェアラブルスピーカとスマートフォンとの間の位置関係のイメージを示す図である。
【
図6】ラップトップPCのマイクによるパワー測定結果を示す図である。
【
図7】スマートフォンのマイクによるパワー測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(本実施の形態)を説明する。以下で説明する実施の形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施の形態は、以下の実施の形態に限られるわけではない。
【0014】
(実施の形態の概要)
本実施の形態では、日常生活で負荷なく継続して利用できるウェアラブルスピーカ(ネックスピーカ)を用いた、コンピュータビジョン症候群やテキストネック症候群を防ぐための姿勢フィードバック装置が提供される。
【0015】
本実施の形態の姿勢フィードバック装置において、ウェアラブルスピーカから音楽を流すと同時に超音波を送信し、ノートパソコンやスマートフォンのマイクでその超音波を拾い、音圧の変化からウェアラブルスピーカとマイクとの間の相対位置関係を推定し、それによりユーザの姿勢を推定する。姿勢が悪いと判定した場合は、流れている音楽に音響エフェクトをかけて音質を低下させることで、ユーザに姿勢が悪いことを気づかせることができる。
【0016】
本実施の形態の姿勢フィードバック装置は、日常生活において音楽を楽しむために使われているウェアラブルスピーカを使って実現しているため、ユーザにとって装着負荷が少なく、継続して利用することができる。
【0017】
なお、本実施の形態では、音波送信部としてウェアラブルスピーカ(ネックスピーカ)を用いているが、ウェアラブルスピーカ(ネックスピーカ)を用いることは一例である。ユーザの姿勢を判定できるように、ユーザの上半身(腰よりも上の部分)に装着され、非可聴域の音波を送信できる装置であれば、音波送信部としてどのような装置を用いてもよい。
【0018】
例えば、ウェアラブルスピーカ(ネックスピーカ)に代えて、ユーザの頭部に装着するヘッドセット(イヤーフォーンを含む)等を用いてもよい。また、ユーザの胸部(胸ポケット等)に装着するスピーカやスピーカフォン等を用いてもよい。
【0019】
ユーザの頭部、ユーザの肩、ユーザの首、ユーザの胸部等は、いずれもユーザの上半身の例である。
【0020】
以下、本実施の形態における姿勢フィードバック装置の構成と動作を、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
(装置構成)
図1に、本実施の形態における姿勢フィードバック装置の構成例を示す。
図1に示すように、本実施の形態における姿勢フィードバック装置は、音波送信部10と、音波受信部20と、周波数解析部30と、姿勢判定部40と、音波加工部50とを有する。各部の機能は下記のとおりである。なお、姿勢フィードバック装置は、姿勢の良否を判定する装置でもあるため、これを姿勢判定装置と称してもよい。
【0022】
また、音波送信部10と音波加工部50を備えずに、音波受信部20と、周波数解析部30と、姿勢判定部40とを備える装置を姿勢判定装置と称してもよい。また、周波数解析部30が姿勢判定部40の中に含まれる構成であってもよい。
【0023】
音波送信部10は、可聴域の音波と、非可聴域の音波である超音波とを同時に提示する。なお、便宜上、可聴域の音波を「音」と記載する場合がある。音波受信部20は、音波送信部10から送信された音と超音波とを受信する。周波数解析部30は、音波受信部20により受信した音波の信号の波形に対してFFTを用いて周波数解析することでパワースペクトルを算出する。
【0024】
姿勢判定部40は、周波数解析部30により算出されたパワースペクトルから推定される超音波のパワーを基にユーザの姿勢の良否を判定する。音波加工部50は、姿勢判定部40による姿勢判定結果に応じて、音波送信部10から送信される可聴域の音を加工する。
【0025】
(動作概要)
図2のフローチャートを参照して、本実施の形態における姿勢フィードバック装置の動作概要を説明する。
【0026】
S1(ステップ1)において、音波送信部10が音と超音波を同時に送信する。S2において、音波受信部20は、音波送信部10から送信された音と超音波を受信する。
【0027】
S3において、周波数解析部30は、音波受信部20により受信した信号(音と超音波)に対してサンプリングを行って、一定サンプル数毎にFFTで周波数解析をしてパワースペクトルを算出する。
【0028】
その後、S4において、姿勢判定部40が、超音波の周波数帯におけるパワーからユーザの姿勢の良否を判定し、判定結果を出力する。S4において、ユーザの姿勢が悪いことを示す判定結果が出力された場合、S5に進み、当該判定結果を受信した音波加工部50が、可聴域の音を加工して、加工後の音(及び超音波)を音波送信部10に提示させる。これにより、ユーザは姿勢が悪いことに気づくことができる。S4において、ユーザの姿勢が悪いと判定されない場合、S6に進み、音を加工せずにS1に戻る。
【0029】
なお、上記のように、音波加工部50を用いることで、ユーザの姿勢が悪いことをユーザにフィードバックすることは一例である。音波加工部50を用いずに、例えば、姿勢判定部40が、ユーザの姿勢が悪いことをユーザにフィードバックするための情報(例:音声、光、画像、文字等)を出力してもよい。
【0030】
(具体的な構成例)
以下、本実施の形態をより具体的に説明する。
図3は、本実施の形態の姿勢フィードバック装置の実装例を説明するための図である。本実施の形態では、音と超音波を送信するための音波送信部10としてウェアラブルスピーカ(ネックスピーカ)100を用い、音波受信部20、周波数解析部30、姿勢判定部40、及び音波加工部50を実現する装置として、ラップトップPC200又はスマートフォン300を使用している。
【0031】
より具体的には、ラップトップPC200又はスマートフォン300のマイクが音波受信部20に相当する。周波数解析部30、姿勢判定部40、及び音波加工部50はそれぞれ、ラップトップPC200又はスマートフォン300上で動作するプログラム(アプリケーション)により実現される。
【0032】
(動作例)
次に、ウェアラブルスピーカ100と、ラップトップPC200又はスマートフォン300を使用する構成例に基づいて、
図2に示したフローチャートの手順における処理をより詳細に説明する。ここでは、音波送信部10であるウェアラブルスピーカ100(ネックスピーカ)が、ユーザの首にかけられており(あるいは、ユーザの肩付近に装着されており)、ユーザがラップトップPC200又はスマートフォン300で作業を行っているとする。
【0033】
<S1>
S1において、音波送信部10(ウェアラブルスピーカ100)が音と超音波を同時に送信する。音は、ユーザに聞こえる音楽等の音である。超音波の周波数は、例えば20kHzである。周波数を20kHzとすることで、ユーザには聞こえないが音波受信部20(マイク)では捉えることができる超音波を提示できる。
【0034】
なお、音波送信部10(ウェアラブルスピーカ100)が音と超音波を同時に送信することは一例である。通常状態(ユーザの姿勢が悪くない状態)において、音を送信せずに、超音波のみを送信することとしてもよい。この場合、ユーザの姿勢が悪いことをユーザに知らせるときに、音波送信部10(ウェアラブルスピーカ100)は音を送信する。
【0035】
また、通常状態(ユーザの姿勢が悪くない状態)と、ユーザの姿勢が悪い状態のいずれの場合においても、音波送信部10(ウェアラブルスピーカ100)が超音波のみを送信することとしてもよい。この場合、ユーザの姿勢が悪いことをユーザに知らせる場合に、例えば、姿勢判定部40が、ユーザの姿勢が悪いことをユーザにフィードバックするための情報(例:音声、光、画像、文字等)を、ラップトップPC200又はスマートフォン300のディスプレイあるいはスピーカから出力する。
【0036】
<S2、S3>
S2において、音波受信部20(マイク)は、音波送信部10(ウェアラブルスピーカ100)から送信された音と超音波を受信する。
【0037】
S3において、周波数解析部30は、音波受信部20(マイク)により受信した信号(音と超音波)に対してサンプリングを行って、例えば1024サンプル毎にFFTで周波数解析をしてパワースペクトルを算出し、超音波の周波数である20kHz付近のパワーを算出する。なお、後述するように、マイク(音波受信部20)を備える装置として、特定のスマートフォンを使用する場合には、12kHz付近のパワーを算出し、12kHz付近のパワーを姿勢判定に用いることとしてもよい。
【0038】
<S4>
S4において、姿勢判定部40は、周波数解析部30により算出された20kHz付近のパワーに基づいて、予め定めた手順により、ユーザの姿勢が悪いか否かを判定する。判定方法の詳細は後述する。
【0039】
<S5>
S4において、ユーザの姿勢が悪いと判定された場合、S5に進み、音波加工部50が、音を加工して、加工後の音を音波送信部10に送信させる。超音波は継続して音波送信部10から送信されている。
【0040】
音の加工方法は、特定の方法に限られないが、例えば、音にホワイトノイズを加えたり、バンドパスフィルタを適用して音域を絞ったり、ディストーションを適用して音を歪めたりする等のオーディオデジタルエフェクトを適用することで音質を低下させる。ユーザは音質の低下から姿勢が悪いことに気づき、音質を上げるために姿勢を正す。
【0041】
(姿勢判定手順例)
音波送信部10(ウェアラブルスピーカ100)から超音波が下向き(斜め下向きを含む)に提示されている場合における、姿勢判定部40が実行する姿勢判定手順の例を説明する。以下では、ウェアラブルスピーカ100を装着しているユーザがラップトップPC200を操作する場合を例1とし、ウェアラブルスピーカ100を装着しているユーザがスマートフォン300を操作する場合を例2として説明する。
【0042】
<例1>
ユーザがラップトップPC200を操作している状態で姿勢が悪くなった(前屈みになった)場合、ウェアラブルスピーカ100とラップトップPC200のマイク(音波受信部20)との間の距離が近くなり、結果として超音波のパワー(音圧)が増加する。
【0043】
従って、姿勢判定部40は、超音波のパワーが予め定めた閾値よりも大きくなったことを検知した場合に、ユーザがラップトップPC200を操作しているときに、ユーザの姿勢が悪くなったと判定する。
【0044】
図4は、例1のイメージを示す図である。
図4には、ユーザが通常状態である場合のウェアラブルスピーカ100の位置がAとして示され、ユーザの姿勢が悪くなった場合のウェアラブルスピーカ100の位置がBとして示されている。
図4に示すように、AからBになると、ウェアラブルスピーカ100のスピーカ部分(音・超音波が出力される部分)は、マイクに近くなる。よって、上述したとおり超音波のパワーが増加する。
【0045】
<例2>
ユーザがスマートフォン300を操作している状態で姿勢が悪くなった(うつむいて操作した)場合、スマートフォン300がウェアラブルスピーカ100の下側に位置することで、マイク(音波受信部20)が超音波を拾いやすくなり、結果として超音波のパワー(音圧)が増加する。
【0046】
従って、姿勢判定部40は、超音波のパワーが予め定めた閾値よりも大きくなったことを検知した場合に、ユーザがスマートフォン300を操作しているときに、ユーザの姿勢が悪くなったと判定する。
【0047】
図5は、例2のイメージを示す図である。
図5には、ユーザが通常状態である場合のウェアラブルスピーカ100の位置がAとして示され、ユーザの姿勢が悪くなった場合のウェアラブルスピーカ100の位置がBとして示されている。
図5に示すように、AからBになると、スマートフォン300がウェアラブルスピーカ100の下側に位置するため、上述したとおり超音波のパワーが増加する。
【0048】
例1と例2のいずれの場合も、閾値については、事前にキャリブレーションする(姿勢が良い場合と悪い場合のパワーを測定する)ことによって決定することができる。
【0049】
(実験結果)
実際に、ウェアラブルスピーカ100を下向きにして超音波を出力し、マイクが受信した超音波のパワー(音圧)を測定する実験を行った。実験結果のグラフを
図6、
図7に示す。
【0050】
図6は、ウェアラブルスピーカ100とラップトップPC200のマイクとの間の距離を0cmから40cmまで、10cmごとに変えたときの20kHz付近のパワースペクトルの値を示している。
【0051】
グラフの値は、各距離において100回測定した結果の中央値を示し、距離0cmのときのパワーで割ることで正規化している。
図6より、良い姿勢(40cm)のときに比べて悪い姿勢(0-30cm)のときにはパワーが増加していることがわかる。
【0052】
図7は、ウェアラブルスピーカ100を装着しているユーザがスマートフォン300を良い姿勢で持った(顔の正面に持った)場合と悪い姿勢で持った(うつむいて持った)場合におけるパワーを示す。
【0053】
実験の結果は、100回測定した結果の箱ひげ図として示されている。ここでは、距離0cmのときの値で正規化している。
図7より、良い姿勢のときに比べて悪い姿勢のときはパワーが増加していることがわかる。
【0054】
以上の結果から、20kHz付近のパワーの変化を見ることで、ユーザがラップトップPC200やスマートフォン300を操作している状態における姿勢の悪化を推定することができることがわかる。また、超音波は、可聴域の音波と干渉しないため、ウェアラブルスピーカ100で音楽を流しながら利用することができ、姿勢が悪い場合は、その音楽の音質を低下させることで、ユーザに姿勢改善を促すことができる。
【0055】
なお、一部のスマートフォンのマイクは、声の帯域に合わせて15kHz付近でローパスフィルタをかけているものがあり、その場合は20kHzのパワーを算出することができない。しかし、マイクのアンプの特性により、超音波により、可聴域(12kHz付近)にノイズとしてパワーのピークが見えることが知られている。従って、ラップトップPC200又は特定のスマートフォン以外のスマートフォン300で利用する場合は20kHz付近のパワーで姿勢を判定し、特定のスマートフォンで利用する場合は12kHz付近のパワーで姿勢を判定することとしてもよい。
【0056】
(ハードウェア構成例)
本実施の形態における姿勢フィードバック装置における、周波数解析部30、姿勢判定部40、及び音波加工部50はいずれも、例えば、マイク(音波受信部20)を備えるコンピュータにプログラムを実行させることにより実現できる。前述したラップトップPC200及びスマートフォン300は、当該コンピュータの例である。
【0057】
すなわち、当該装置(周波数解析部30、姿勢判定部40、音波加工部50等を有する装置)は、コンピュータに内蔵されるCPUやメモリ等のハードウェア資源を用いて、当該装置で実施される処理に対応するプログラムを実行することによって実現することが可能である。上記プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(可搬メモリ等)に記録して、保存したり、配布したりすることが可能である。また、上記プログラムをインターネットや電子メール等、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0058】
図8は、上記コンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
図8のコンピュータは、それぞれバスBで相互に接続されているドライブ装置1000、補助記憶装置1002、メモリ装置1003、CPU1004、インタフェース装置1005、表示装置1006、入力装置1007、出力装置1008等を有する。
【0059】
当該コンピュータでの処理を実現するプログラムは、例えば、CD-ROM又はメモリカード等の記録媒体1001によって提供される。プログラムを記憶した記録媒体1001がドライブ装置1000にセットされると、プログラムが記録媒体1001からドライブ装置1000を介して補助記憶装置1002にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体1001より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置1002は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0060】
メモリ装置1003は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置1002からプログラムを読み出して格納する。CPU1004は、メモリ装置1003に格納されたプログラムに従って、当該装置に係る機能を実現する。インタフェース装置1005は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。表示装置1006はプログラムによるGUI(Graphical User Interface)等を表示する。入力装置1007はマイク、キーボード、マウス、ボタン、又はタッチパネル等で構成され、様々な情報を入力させるために用いられる。出力装置1008は演算結果を出力する。
【0061】
(実施の形態の効果)
以上、説明したとおり、本実施の形態に係る技術により、ユーザが容易に継続して利用することができる、姿勢を矯正するための装置が提供される。
【0062】
また、音波送信部10として、日常生活において音楽を楽しむために使われているウェアラブルスピーカを使用することで、ユーザにとって装着負荷が少なく、継続して利用できる構成が提供される。なお、音及び超音波を出力する音波送信部10は、ウェアラブルスピーカに限られるわけではない。音及び超音波を出力する汎用的な装置をユーザに装着することで、ユーザが容易に継続して利用することができる、姿勢を矯正するための装置を提供できる。
【0063】
前述したように、非特許文献1に開示された技術では、ユーザの身体に対して、加速度素子(ジャイロ)を粘着させるので、日常的な利用機器としては使い難いものになってしまう。それに対し、本実施の形態に係る技術では、超音波を用いてユーザの姿勢を検出し、「音」で姿勢の状態をユーザにフィードバックすることができるので、ユーザの身体に対し機器を粘着する必要がなく、ユーザは本実施の形態に係る装置を日常的に容易に継続して使用できる。
【0064】
また、非特許文献2に開示された技術では、専用装置を使用しており、高価であり、ユーザが日常的に利用することは困難である。それに対し、本実施の形態に係る技術では、汎用の装置(例:ウェアラブルスピーカ)を超音波の提示装置、及び、ユーザへの姿勢判定結果のフィードバック装置として利用することができるので、専用装置を用いなくても安価に装置構成を実現できる。
【0065】
(実施の形態のまとめ)
本明細書には、少なくとも下記各項の姿勢判定装置、姿勢判定方法、及びプログラムが開示されている。
(第1項)
ユーザに装着された音波送信部から出力された非可聴域の音波を受信する音波受信部と、
前記非可聴域の音波に基づいて、前記ユーザの姿勢の良否を判定し、判定結果を出力する姿勢判定部と
を備える姿勢判定装置。
(第2項)
前記姿勢判定装置は、前記音波送信部を備え、
前記音波送信部は、前記ユーザの上半身に装着され、前記ユーザの身体の下方向に前記非可聴域の音波を送信する
第1項に記載の姿勢判定装置。
(第3項)
前記音波受信部より受信した音波の周波数解析を行って、前記非可聴域の音波の周波数のパワーを取得する周波数解析部
を更に備える第1項又は第2項に記載の姿勢判定装置。
(第4項)
前記姿勢判定部は、前記パワーと閾値とを比較することにより、前記ユーザの姿勢の良否を判定する
第3項に記載の姿勢判定装置。
(第5項)
前記ユーザに対する姿勢判定結果に応じて、前記音波送信部から出力する可聴域の音波を加工するための音波加工部
を更に備える第1項ないし第4項のうちいずれか1項に記載の姿勢判定装置。
(第6項)
前記姿勢判定部により、前記ユーザの姿勢が悪いと判定された場合において、前記音波加工部は、前記可聴域の音波に対してオーディオデジタルエフェクトを適用することで音質を低下させる
第5項に記載の姿勢判定装置。
(第7項)
姿勢判定装置が実行する姿勢判定方法であって、
ユーザに装着された音波送信部から出力された非可聴域の音波を受信する音波受信ステップと、
前記非可聴域の音波に基づいて、前記ユーザの姿勢の良否を判定し、判定結果を出力する姿勢判定ステップと
を備える姿勢判定方法。
(第8項)
コンピュータを、第1項ないし第6項のうちいずれか1項に記載の姿勢判定装置における姿勢判定部として機能させるためのプログラム。
【0066】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
10 音波送信部
20 音波受信部
30 周波数解析部
40 姿勢判定部
50 音波加工部
100 ウェアラブルスピーカ
200 ラップトップPC
300 スマートフォン
1000 ドライブ装置
1001 記録媒体
1002 補助記憶装置
1003 メモリ装置
1004 CPU
1005 インタフェース装置
1006 表示装置
1007 入力装置