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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】プリフォーム加熱装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/78 20060101AFI20240925BHJP
   B29C 49/64 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B29C49/78
B29C49/64
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021039422
(22)【出願日】2021-03-11
(65)【公開番号】P2022139161
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 充夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆章
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-533195(JP,A)
【文献】特開平11-348106(JP,A)
【文献】特開2003-251687(JP,A)
【文献】特表2007-521986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/78
B29C 49/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性容器のプリフォームを加熱するプリフォーム加熱装置の制御方法であって、
前記プリフォーム加熱装置は、前記プリフォームを収容して所定の炉温度で加熱する少なくとも1つの炉を備え、
前記制御方法は、
前記炉温度と前記プリフォームの外面温度との関係を示す第1の温度モデルを取得するステップと、
前記プリフォームの外面温度と前記プリフォームの内面温度との関係を示す第2の温度モデルを取得するステップと、
前記第1の温度モデルに基づいて、前記プリフォームの外面温度の時間的変化を示す第1の温度関数を計算するステップと、
前記第2の温度モデルに基づいて、前記プリフォームの内面温度の時間的変化を示す第2の温度関数を計算するステップと、
前記第1及び第2の温度関数に基づいて、前記プリフォームの内面温度と予め決められた内面温度目標値との誤差を予め決められたしきい値よりも低減するように前記炉温度の設定値を計算するステップと、
前記計算された炉温度の設定値を前記炉に設定するステップとを含む、
プリフォーム加熱装置の制御方法。
【請求項2】
前記第2の温度モデルは、前記プリフォームの外面温度から前記プリフォームの内面温度への伝達関数により表される、
請求項1記載のプリフォーム加熱装置の制御方法。
【請求項3】
前記第2の温度モデルは、ラプラス変換された関数の領域における、利得及び時定数のパラメータを含む1次遅れ形式又は2次遅れ形式の伝達関数により表される、
請求項2記載のプリフォーム加熱装置の制御方法。
【請求項4】
前記第2の温度モデルを取得するステップは、
前記プリフォームの外面温度の時間的変化を示す第1の時系列データを取得するステップと、
前記プリフォームの内面温度の時間的変化を示す第2の時系列データを取得するステップと、
前記第1及び第2の時系列データに基づいて前記第2の温度モデルの伝達関数を計算するステップとを含む、
請求項3記載のプリフォーム加熱装置の制御方法。
【請求項5】
前記第1の時系列データを取得するステップは、前記プリフォームの外面をステップ状の温度プロファイルで加熱するとき、前記プリフォームの外面に設けられた第1の温度センサから前記プリフォームの外面温度を取得するステップを含み、
前記第2の時系列データを取得するステップは、前記プリフォームの外面を前記ステップ状の温度プロファイルで加熱するとき、前記プリフォームの内面に設けられた第2の温度センサから前記プリフォームの内面温度を取得するステップを含む、
請求項4記載のプリフォーム加熱装置の制御方法。
【請求項6】
前記第1の温度モデルは、前記炉温度から前記プリフォームの外面温度への伝達関数により表される、
請求項1~5のうちの1つに記載のプリフォーム加熱装置の制御方法。
【請求項7】
前記第1の温度モデルは、ラプラス変換された関数の領域における、利得及び時定数のパラメータを含む1次遅れ形式又は2次遅れ形式の伝達関数により表される、
請求項6記載のプリフォーム加熱装置の制御方法。
【請求項8】
前記第1の温度モデルを取得するステップは、
前記炉温度の時間的変化を示す第3の時系列データを取得するステップと、
前記プリフォームの外面温度の時間的変化を示す第4の時系列データを取得するステップと、
前記第3及び第4の時系列データに基づいて前記第1の温度モデルの伝達関数を計算するステップとを含む、
請求項7記載のプリフォーム加熱装置の制御方法。
【請求項9】
前記炉温度の設定値を計算するステップは、前記プリフォームの内面温度と前記内面温度目標値との誤差を低減するように、前記炉温度の設定値を反復的に変化させるステップを含む、
請求項1~8のうちの1つに記載のプリフォーム加熱装置の制御方法。
【請求項10】
前記炉温度の設定値を計算するステップは、前記第1及び第2の温度関数に基づいて、前記プリフォームの内面温度と前記内面温度目標値との誤差を前記しきい値よりも低減するように、かつ、前記プリフォームの外面温度と予め決められた外面温度目標値との誤差を前記しきい値よりも低減するように、前記炉温度の設定値を計算するステップを含む、
請求項1~9のうちの1つに記載のプリフォーム加熱装置の制御方法。
【請求項11】
前記炉温度の設定値を計算するステップは、前記プリフォームの内面温度と前記内面温度目標値との誤差を低減するように、かつ、前記プリフォームの外面温度と前記外面温度目標値との誤差を低減するように、前記炉温度の設定値を反復的に変化させるステップを含む、
請求項10記載のプリフォーム加熱装置の制御方法。
【請求項12】
前記内面温度目標値は前記外面温度目標値と同じ値に設定される、
請求項10又は11記載のプリフォーム加熱装置の制御方法。
【請求項13】
前記内面温度目標値は、前記外面温度目標値に対して所定の温度差を有する値に設定される、
請求項10又は11記載のプリフォーム加熱装置の制御方法。
【請求項14】
前記プリフォーム加熱装置は、前記プリフォームが逐次に通過するように互いに隣接して配置された複数の炉を備え、
前記複数の炉のそれぞれについて、前記炉温度の設定値は時間的に一定である、
請求項1~13のうちの1つに記載のプリフォーム加熱装置の制御方法。
【請求項15】
熱可塑性容器のプリフォームを加熱するプリフォーム加熱装置であって、前記プリフォーム加熱装置は、
前記プリフォームを収容して所定の炉温度で加熱する少なくとも1つの炉と、
前記炉温度の設定値を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記炉温度と前記プリフォームの外面温度との関係を示す第1の温度モデルを取得し、
前記プリフォームの外面温度と前記プリフォームの内面温度との関係を示す第2の温度モデルを取得し、
前記第1の温度モデルに基づいて、前記プリフォームの外面温度の時間的変化を示す第1の温度関数を計算し、
前記第2の温度モデルに基づいて、前記プリフォームの内面温度の時間的変化を示す第2の温度関数を計算し、
前記第1及び第2の温度関数に基づいて、前記プリフォームの内面温度と予め決められた内面温度目標値との誤差を低減するように前記炉温度の設定値を計算し、
前記計算された炉温度の設定値を前記炉に設定するように構成された、
プリフォーム加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱可塑性容器のプリフォームを加熱するプリフォーム加熱装置に関し、また、そのようなプリフォーム加熱装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PET(polyethylene terephthalate)ボトルなどの熱可塑性容器は、まず、プリフォームと呼ばれる試験管のような形状を有する小型の容器を射出成形し、次いで、プリフォームを加熱し、加熱されたプリフォームの内部に空気を吹き込んで膨張させること(ブロー成形)により製造される。例えば、特許文献1は、PET樹脂製のプリフォームを2軸延伸ブロー成形する際に用いるプリフォームの加熱方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5692648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プリフォームを製造する際、加熱されたプリフォームの外面及び内面の間に大きな温度差が存在すると、容器の厚さ及び強度のばらつき等の不良が発生する。このため、プリフォームの外面及び内面の温度差を所望の範囲内に抑えるように、好ましくは、内面温度を外面温度に一致させるようにプリフォームを加熱することが求められる。
【0005】
しかしながら、プリフォームの加熱装置はプリフォームの外面を加熱し、プリフォームの内面は直接には加熱されないので、プリフォームの内面において所望の温度を達成することは困難である。
【0006】
また、プリフォームは、一般に、加熱装置の内部を回転しながら搬送されるので、プリフォームの内面温度を測定するために、有線接続された接触式の温度センサを使用することは困難である。赤外線温度センサなど、非接触式の温度センサを使用しても、プリフォームの外面温度を測定することはできるが、プリフォームの内面温度を測定することはできない。
【0007】
このように、プリフォームの内面を直接に加熱できないので、最終的な成形品の品質を見ながら加熱装置の温度を試行錯誤的に調整しなければならず、温度調整に多大な工数がかかる。また、プリフォームの内面温度が不明であるので、加熱装置の温度を最適に調整することができず、小さな環境変化等に起因して不良品が発生するおそれがある。従って、温度調整に大きな手間をかけることなく、プリフォームの内面温度を所望の目標値に近づけるようにプリフォームを加熱することができるプリフォーム加熱装置の制御方法が求められる。
【0008】
本開示の目的は、温度調整に大きな手間をかけることなく、プリフォームの内面温度を所望の目標値に近づけるようにプリフォームを加熱することができるプリフォーム加熱装置の制御方法を提供することにある。本開示の目的はまた、そのようなプリフォーム加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、
熱可塑性容器のプリフォームを加熱するプリフォーム加熱装置の制御方法であって、
前記プリフォーム加熱装置は、前記プリフォームを収容して所定の炉温度で加熱する少なくとも1つの炉を備え、
前記制御方法は、
前記炉温度と前記プリフォームの外面温度との関係を示す第1の温度モデルを取得するステップと、
前記プリフォームの外面温度と前記プリフォームの内面温度との関係を示す第2の温度モデルを取得するステップと、
前記第1の温度モデルに基づいて、前記プリフォームの外面温度の時間的変化を示す第1の温度関数を計算するステップと、
前記第2の温度モデルに基づいて、前記プリフォームの内面温度の時間的変化を示す第2の温度関数を計算するステップと、
前記第1及び第2の温度関数に基づいて、前記プリフォームの内面温度と予め決められた内面温度目標値との誤差を予め決められたしきい値よりも低減するように前記炉温度の設定値を計算するステップと、
前記計算された炉温度の設定値を前記炉に設定するステップとを含む。
【0010】
これにより、温度調整に大きな手間をかけることなく、プリフォームの内面温度を所望の目標値に近づけるようにプリフォームを加熱することができる。
【0011】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、
前記第2の温度モデルは、前記プリフォームの外面温度から前記プリフォームの内面温度への伝達関数により表される。
【0012】
これにより、プリフォームの内面温度を考慮して炉温度の設定値を計算することができる。
【0013】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、
前記第2の温度モデルは、ラプラス変換された関数の領域における、利得及び時定数のパラメータを含む1次遅れ形式又は2次遅れ形式の伝達関数により表される。
【0014】
これにより、プリフォームの内面温度を含む温度モデルを適切に表現することができる。
【0015】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、
前記第2の温度モデルを取得するステップは、
前記プリフォームの外面温度の時間的変化を示す第1の時系列データを取得するステップと、
前記プリフォームの内面温度の時間的変化を示す第2の時系列データを取得するステップと、
前記第1及び第2の時系列データに基づいて前記第2の温度モデルの伝達関数を計算するステップとを含む。
【0016】
これにより、プリフォームの内面温度を含む温度モデルを適切に計算することができる。
【0017】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、
前記第1の時系列データを取得するステップは、前記プリフォームの外面をステップ状の温度プロファイルで加熱するとき、前記プリフォームの外面に設けられた第1の温度センサから前記プリフォームの外面温度を取得するステップを含み、
前記第2の時系列データを取得するステップは、前記プリフォームの外面を前記ステップ状の温度プロファイルで加熱するとき、前記プリフォームの内面に設けられた第2の温度センサから前記プリフォームの内面温度を取得するステップを含む。
【0018】
これにより、プリフォームの内面温度を含む温度モデルを適切に計算することができる。
【0019】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、
前記第1の温度モデルは、前記炉温度から前記プリフォームの外面温度への伝達関数により表される。
【0020】
これにより、炉の内部の温度を考慮して炉温度の設定値を計算することができる。
【0021】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、
前記第1の温度モデルは、ラプラス変換された関数の領域における、利得及び時定数のパラメータを含む1次遅れ形式又は2次遅れ形式の伝達関数により表される。
【0022】
これにより、炉の内部の温度を含む温度モデルを適切に表現することができる。
【0023】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、
前記第1の温度モデルを取得するステップは、
前記炉温度の時間的変化を示す第3の時系列データを取得するステップと、
前記プリフォームの外面温度の時間的変化を示す第4の時系列データを取得するステップと、
前記第3及び第4の時系列データに基づいて前記第1の温度モデルの伝達関数を計算するステップとを含む。
【0024】
これにより、炉の内部の温度を含む温度モデルを適切に計算することができる。
【0025】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、
前記炉温度の設定値を計算するステップは、前記プリフォームの内面温度と前記内面温度目標値との誤差を低減するように、前記炉温度の設定値を反復的に変化させるステップを含む。
【0026】
これにより、炉温度の設定値を適切に計算することができる。
【0027】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、
前記炉温度の設定値を計算するステップは、前記第1及び第2の温度関数に基づいて、前記プリフォームの内面温度と前記内面温度目標値との誤差を前記しきい値よりも低減するように、かつ、前記プリフォームの外面温度と予め決められた外面温度目標値との誤差を前記しきい値よりも低減するように、前記炉温度の設定値を計算するステップを含む。
【0028】
これにより、温度調整に大きな手間をかけることなく、プリフォームの外面温度を所望の目標値に近づけるようにプリフォームを加熱することができる。
【0029】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、
前記炉温度の設定値を計算するステップは、前記プリフォームの内面温度と前記内面温度目標値との誤差を低減するように、かつ、前記プリフォームの外面温度と前記外面温度目標値との誤差を低減するように、前記炉温度の設定値を反復的に変化させるステップを含む。
【0030】
これにより、炉温度の設定値を適切に計算することができる。
【0031】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、
前記内面温度目標値は前記外面温度目標値と同じ値に設定される。
【0032】
これにより、プリフォームの外面温度及び内面温度の差を低減することができる。
【0033】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、
前記内面温度目標値は、前記外面温度目標値に対して所定の温度差を有する値に設定される。
【0034】
これにより、プリフォームの外面温度及び内面温度が互いに異なる場合であっても、プリフォームの外面温度及び内面温度をそれらの所望の目標値に近づけるようにプリフォームを加熱することができる。
【0035】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、
前記プリフォーム加熱装置は、前記プリフォームが逐次に通過するように互いに隣接して配置された複数の炉を備え、
前記複数の炉のそれぞれについて、前記炉温度の設定値は時間的に一定である。
【0036】
これにより、複数の炉を含む連続炉を用いてプリフォームを加熱することができる。
【0037】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、
熱可塑性容器のプリフォームを加熱するプリフォーム加熱装置であって、前記プリフォーム加熱装置は、
前記プリフォームを収容して所定の炉温度で加熱する少なくとも1つの炉と、
前記炉温度の設定値を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記炉温度と前記プリフォームの外面温度との関係を示す第1の温度モデルを取得し、
前記プリフォームの外面温度と前記プリフォームの内面温度との関係を示す第2の温度モデルを取得し、
前記第1の温度モデルに基づいて、前記プリフォームの外面温度の時間的変化を示す第1の温度関数を計算し、
前記第2の温度モデルに基づいて、前記プリフォームの内面温度の時間的変化を示す第2の温度関数を計算し、
前記第1及び第2の温度関数に基づいて、前記プリフォームの内面温度と予め決められた内面温度目標値との誤差を低減するように前記炉温度の設定値を計算し、
前記計算された炉温度の設定値を前記炉に設定するように構成される。
【0038】
これにより、温度調整に大きな手間をかけることなく、プリフォームの内面温度を所望の目標値に近づけるようにプリフォームを加熱することができる。
【発明の効果】
【0039】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、温度調整に大きな手間をかけることなく、プリフォームの内面温度を所望の目標値に近づけるようにプリフォームを加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】第1の実施形態に係るプリフォーム加熱装置100の構成を示すブロック図である。
図2図1のプリフォーム10の構成を示す斜視図である。
図3図1のプリフォーム加熱装置100によって加熱されたプリフォーム10をブロー成形により処理してボトル11を製造する工程を説明する図である。
図4図1の炉2の構成を示すブロック図である。
図5図1の制御装置1によって実行される設定値計算処理を示すフローチャートである。
図6図1のプリフォーム加熱装置100において炉2の温度モデルを取得する構成を示すブロック図である。
図7図6の測定装置41によって取得される炉2の温度モデルの一例を示すグラフである。
図8図1のプリフォーム10の温度モデルを取得する構成を示す概略図である。
図9図8の測定装置51によって取得されるプリフォーム10の温度モデルの一例を示すグラフである。
図10図5のステップS5において設定された炉温度の設定値の初期値を用いたときの、プリフォーム10の外面温度及び内面温度の一例を示すグラフである。
図11図5のステップS9において設定された炉温度の設定値を用いたときの、プリフォーム10の外面温度及び内面温度の一例を示すグラフである。
図12】第2の実施形態に係るプリフォーム加熱装置110の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本開示の一側面に係る実施形態を、図面に基づいて説明する。各図面において、同じ符号は同様の構成要素を示す。
【0042】
[適用例]
図1は、第1の実施形態に係るプリフォーム加熱装置100の構成を示すブロック図である。プリフォーム加熱装置100は、PETボトルなどの熱可塑性容器のプリフォーム10を加熱する。プリフォーム加熱装置100は、少なくとも、プリフォーム10を収容して所定の炉温度で加熱する少なくとも1つの炉2-1~2-3と、炉温度の設定値を制御する制御装置1とを備える。
【0043】
図1の例では、プリフォーム加熱装置100は、プリフォーム10が逐次に通過するように互いに隣接して配置された複数の炉2-1~2-3を備える。プリフォーム10は、炉2-1、2-2、及び2-3の順に通過するように、ベルトコンベア3により搬送される。
【0044】
本明細書では、炉2-2~2-3をまとめて「炉2」とも呼ぶ。
【0045】
図2は、図1のプリフォーム10の構成を示す斜視図である。プリフォーム10は、試験管のような形状を有するように射出成形される。プリフォーム10は、外面10a及び内面10bを有する。前述したように、プリフォーム10を製造する際、加熱されたプリフォーム10の外面10a及び内面10bの間に大きな温度差が存在すると、容器の厚さ及び強度のばらつき等の不良が発生する。このため、プリフォーム10の外面10a及び内面10bの温度差を所望の範囲内に抑えるように、好ましくは、内面温度を外面温度に一致させるようにプリフォーム10を加熱することが求められる。以下、温度調整に大きな手間をかけることなく、プリフォーム10の内面温度を所望の目標値に近づけるようにプリフォーム10を加熱するためのプリフォーム加熱装置100の制御方法について説明する。
【0046】
制御装置1は、炉2の温度モデル、すなわち、炉温度とプリフォーム10の外面温度との関係を示す第1の温度モデルF1(s)を取得する。制御装置1はさらに、プリフォーム10の温度モデル、すなわち、プリフォーム10の外面温度とプリフォーム10の内面温度との関係を示す第2の温度モデルF2(s)を取得する。制御装置1はさらに、第1の温度モデルF1(s)に基づいて、プリフォーム10の外面温度の時間的変化を示す第1の温度関数Tout(t)を計算する。制御装置1はさらに、第2の温度モデルF2(s)に基づいて、プリフォーム10の内面温度の時間的変化を示す第2の温度関数Tin(t)を計算する。制御装置1はさらに、第1の温度関数Tout(t)及び第2の温度関数Tin(t)に基づいて、プリフォーム10の内面温度Tin(t)と予め決められた内面温度目標値Tin_tgt(t)との誤差を予め決められたしきい値Δfeよりも低減するように炉温度の設定値Tr1,Tr2,Tr3を計算する。制御装置1はさらに、計算された炉温度の設定値Tr1,Tr2,Tr3を炉2に設定する。
【0047】
図1のプリフォーム加熱装置100によれば、プリフォーム10の外面温度と内面温度との関係を示す温度モデルF2(s)を用いることにより、例えば各炉2の温度及び/又はベルトコンベア3の速度を試行錯誤により調整することを必要とすることなく、また、加熱時にプリフォーム10の内面温度を測定することなく、プリフォーム10の内面温度を所望の目標値に近づけるようにプリフォーム10を加熱することができる。従って、図1のプリフォーム加熱装置100によれば、温度調整に大きな手間をかけることなく、プリフォーム10の内面温度を所望の目標値に近づけるようにプリフォーム10を加熱することができる。
【0048】
図3は、図1のプリフォーム加熱装置100によって加熱されたプリフォーム10をブロー成形により処理してボトル11を製造する工程を説明する図である。プリフォーム加熱装置100によって加熱されたプリフォーム10は、図3(a)に示すように、ボトル11のための金型31に挿入される。図3(a)~図3(c)は金型31の破断図を示す。プリフォーム10の内部には、高圧空気源に接続された管路32が挿入される。図3(b)に示すように、管路32を介してプリフォーム10の内部に空気を吹き込むことによりプリフォーム10は膨張する。最終的に、図3(c)に示すように、プリフォーム10はボトル11の形状に成形される。その後、図3(d)に示すように、成形されたボトル11は金型31から取り出される。プリフォーム加熱装置100によってプリフォーム10を予め加熱することにより、厚さ及び強度のばらつき等の不良を発生することなく、高品質のボトル11を製造することができる。
【0049】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照して、第1の実施形態に係るプリフォーム加熱装置100についてさらに説明する。
【0050】
[第1の実施形態の構成例]
図1をさらに参照すると、炉2-1~2-3は、温度調節器21-1~21-3、ヒーター22-1~22-3、及び温度センサ23-1~23-3をそれぞれ備える。
【0051】
本明細書では、温度調節器21-1~21-3をまとめて「温度調節器21」とも呼ぶ。また、本明細書では、ヒーター22-1~22-3をまとめて「ヒーター22」とも呼ぶ。また、本明細書では、温度センサ23-1~23-3をまとめて「温度センサ23」とも呼ぶ。
【0052】
図4は、図1の炉2の構成を示すブロック図である。図1の炉2-1~2-3のいずれも、図4の炉2と同様に構成される。温度調節器21には、制御装置1から炉温度の設定値が入力される。温度調節器21は、炉温度の設定値に従ってヒーター22を動作させる。ヒーター22は、例えば赤外線ヒーターである。温度センサ23は、実際の炉温度、例えば、炉2の内部の温度であって、プリフォーム10が通過する位置の近傍の温度を測定して温度調節器21に通知する。従って、温度調節器21は、炉2の内部の温度を設定値に近づけるように、ヒーター22をフィードバック制御する。
【0053】
プリフォーム10は、長手方向の軸の周りに回転しながらベルトコンベア3により搬送されてもよい。また、各炉2において、ヒーター22は、プリフォーム10を包囲するように配置されてもよい。これにより、プリフォーム10の全体を実質的に一様に加熱することができる。
【0054】
図1をさらに参照すると、プリフォーム加熱装置100はさらに、ベルトコンベア3、駆動装置4、温度センサ5、入力装置6、及び表示装置7を備えてもよい。
【0055】
駆動装置4は、制御装置1の制御下で、ベルトコンベア3を所定の速度で駆動する。ベルトコンベア3に沿った各炉2の長さをベルトコンベア3の速度で除算することにより、各炉2によるプリフォーム10の加熱時間がわかる。
【0056】
温度センサ5は、炉2の外部の温度、例えば、プリフォーム加熱装置100の近傍の気温を測定して制御装置1に通知する。気温は、加熱前のプリフォーム10の温度に等しい。
【0057】
入力装置6は、プリフォーム加熱装置100の状態を設定するユーザ入力を受けて制御装置1に入力する。入力装置6は、キーボード及びポインティングデバイスを含んでもよい。
【0058】
表示装置7は、プリフォーム加熱装置100の状態を示すデータを制御装置1から受けて表示する。
【0059】
制御装置1は、プリフォーム加熱装置100の全体の動作を制御する。特に、制御装置1は、図5を参照して後述する設定値計算処理を実行し、プリフォーム10を加熱するための炉温度の設定値を計算して各炉2に設定する。このため、制御装置1は、図6を参照して後述する測定装置41から、炉温度とプリフォーム10の外面温度との関係を示す温度モデルF1(s)を取得する。また、制御装置1は、図8を参照して後述する測定装置51から、プリフォーム10の外面温度と内面温度との関係を示す温度モデルF2(s)を取得する。制御装置1は、測定装置41,51から温度モデルF1(s),F2(s)を取得するために、有線又は無線LAN(Local Area Network)のような通信インターフェースを含んでもよく、また、USB(Universal Serial Bus)のような他のインターフェースを備えてもよい。
【0060】
制御装置1は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備え、情報処理に応じてプリフォーム加熱装置100の各構成要素を制御する。制御装置1は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置をさらに備え、制御装置1によって実行されるプログラム、制御装置1によって取得されたデータ等を記憶する。
【0061】
[第1の実施形態の動作例]
プリフォーム加熱装置100は、炉2の温度の測定値に基づいて予め生成された炉2の温度モデルF1(s)を取得し、また、プリフォーム10の温度の測定値に基づいて予め生成されたプリフォーム10の温度モデルF2(s)を取得する。次いで、プリフォーム加熱装置100は、炉2の温度モデルF1(s)及びプリフォーム10の温度モデルF2(s)に基づくシミュレーションを行って、プリフォーム10の外面温度Tout(t)及び内面温度Tin(t)を計算し、外面温度Tout(t)及び内面温度Tin(t)をそれらの目標値Tout_tgt(t),Tin_tgt(t)にそれぞれ近づけるように炉温度の設定値Tr1,Tr2,Tr3を計算する。プリフォーム加熱装置100は、計算された炉温度の設定値Tr1,Tr2,Tr3を炉2に設定することにより、プリフォーム10の外面温度Tout(t)及び内面温度Tin(t)をそれらの目標値Tout_tgt(t),Tin_tgt(t)にそれぞれに近づけるようにプリフォーム10を加熱することができる。
【0062】
図5は、図1の制御装置1によって実行される設定値計算処理を示すフローチャートである。
【0063】
ステップS1において、制御装置1は、図6及び図7を参照して後述するように、炉2の温度モデル、すなわち、炉温度とプリフォーム10の外面温度との関係を示す温度モデルF1(s)を取得する。
【0064】
ステップS2において、制御装置1は、図8及び図9を参照して後述するように、プリフォーム10の温度モデル、すなわち、プリフォーム10の外面温度とプリフォーム10の内面温度との関係を示す温度モデルF2(s)を取得する。
【0065】
ステップS3において、制御装置1は、プリフォーム加熱装置100の各パラメータを設定する。プリフォーム加熱装置100のパラメータは、例えば、以下のものを含む。
【0066】
・N:反復回数の最大値。例えば、N=1000。
・Δfe;収束条件のしきい値。例えば、Δfe=0.001。
・tz1,tz2,tz3:ベルトコンベア3によって搬送されるプリフォーム10が炉2-1~2-3をそれぞれ通過する時間長。例えば、tz1=tz2=tz3=30[秒]。
・tend:計算される温度の時間的変化を示す関数(外面温度Tout(t)及び内面温度Tin(t)など)の時間長。すなわち、tend=tz1+tz2+tz3。
・Δt:計算される温度の時間的変化を示す関数(外面温度Tout(t)及び内面温度Tin(t)など)のサンプリング時間幅。例えば、Δt=0.1[秒]。
・Tout1_tgt,Tout2_tgt,Tout3_tgt:炉2-1~2-3からそれぞれ出力されるときのプリフォーム10の最終的な外面温度目標値。例えば、Tout1_tgt=100,Tout2_tgt=200,Tout3_tgt=220[℃]。
・Tin1_tgt,Tin2_tgt,Tin3_tgt:炉2-1~2-3からそれぞれ出力されるときのプリフォーム10の最終的な内面温度目標値。例えば、Tin1_tgt=Tout1_tgt,Tin2_tgt=Tout2_tgt,Tin3_tgt=Tout3_tgt。
・Tout_tgt(t):プリフォーム10の外面温度目標値の時間的変化を示す温度関数。すなわち、最初の時間長tz1にわたってTout_tgt(t)=Tout1_tgtになり、次の時間長tz2にわたってTout_tgt(t)=Tout2_tgtになり、最後の時間長tz3にわたってTout_tgt(t)=Tout3_tgtになる。
・Tin_tgt(t):プリフォーム10の内面温度目標値の時間的変化を示す温度関数。すなわち、最初の時間長tz1にわたってTin_tgt(t)=Tin1_tgtになり、次の時間長tz2にわたってTin_tgt(t)=Tin2_tgtになり、最後の時間長tz3にわたってTin_tgt(t)=Tin3_tgtになる。
・a,b:評価関数値の計算に使用される重み係数。例えば、a=1,b=1。
・Tref:プリフォーム加熱装置100の近傍の気温。例えば、Tref=25℃(固定値)。
【0067】
ステップS4において、制御装置1は、処理の反復回数iをゼロに初期化する。
【0068】
ステップS5において、制御装置1は、炉2-1~2-3の炉温度の設定値Tr1(i),Tr2(i),Tr3(i)の初期値(すなわち、i=0のときの値)を設定する。初期値は、例えば、Tr1(0)=Tr2(0)=Tr3(0)=200℃に設定される。
【0069】
ステップS6において、制御装置1は、炉2の温度モデルF1(s)に基づいて、プリフォーム10の外面温度の時間的変化を示す温度関数Tout(t)をシミュレーションにより推定する。また、ステップS6において、制御装置1は、プリフォーム10の温度モデルF2(s)に基づいて、プリフォーム10の内面温度の時間的変化を示す温度関数Tin(t)を推定する。温度関数Tout(t)は、最初の時間長tz1にわたって、炉2-1によって加熱されているときのプリフォーム10の外面温度を示し、次の時間長tz2にわたって、炉2-2によって加熱されているときのプリフォーム10の外面温度を示し、最後の時間長tz3にわたって、炉2-3によって加熱されているときのプリフォーム10の外面温度を示す。同様に、温度関数Tin(t)は、最初の時間長tz1にわたって、炉2-1によって加熱されているときのプリフォーム10の内面温度を示し、次の時間長tz2にわたって、炉2-2によって加熱されているときのプリフォーム10の内面温度を示し、最後の時間長tz3にわたって、炉2-3によって加熱されているときのプリフォーム10の内面温度を示す。
【0070】
ステップS7において、制御装置1は、プリフォーム10の推定された外面温度Tout(t)及び内面温度Tin(t)と、それらの目標値Tout_tgt(t),Tin_tgt(t)との誤差を示す評価関数値fe(i)を計算する。
【0071】
ステップS8において、制御装置1は、評価関数値fe(i)が収束したか否かを判断し、YESのときはステップS9に進み、NOのときはステップS10に進む。
【0072】
ステップS9において、制御装置1は、現在の炉温度の設定値Tr1(i),Tr2(i),Tr3(i)を、設定値Tr1,Tr2,Tr3として炉2-1~2-3にそれぞれ設定し、処理を終了する。
【0073】
ステップS10において、制御装置1は、反復回数iが最大値Nに達したか否かを判断し、YESのときはステップS11に進み、NOのときはステップS12に進む。
【0074】
ステップS11において、制御装置1は、炉温度の設定値を決定できなかったことを示すエラーメッセージを表示装置7に表示し、処理を終了する。
【0075】
ステップS12において、制御装置1は、反復回数iを1だけインクリメントする。
【0076】
ステップS13において、制御装置1は、炉温度の設定値Tr1(i),Tr2(i),Tr3(i)を変化させ、ステップS6~S8の処理を繰り返す。制御装置1は、公知の山登り法、遺伝的アルゴリズム、シミュレーテッドアニーリング等を用いて、プリフォーム10の内面温度Tin(t)と内面温度目標値Tin_tgt(t)との誤差を低減するように、かつ、プリフォーム10の外面温度Tout(t)と外面温度目標値Tout_tgt(t)との誤差を低減するように、炉温度の設定値Tr1(i),Tr2(i),Tr3(i)を反復的に変化させる。
【0077】
ステップS9において炉温度の設定値Tr1,Tr2,Tr3を炉2-1~2-3にそれぞれ設定した後、制御装置1は、プリフォーム10を加熱するように各炉2及び駆動装置4を制御する。
【0078】
[炉2の温度モデルの生成]
次に、図5のステップS1において取得される炉2の温度モデルを生成する方法について説明する。
【0079】
図6は、図1のプリフォーム加熱装置100において炉2の温度モデルを取得する構成を示すブロック図である。炉2の温度モデルを生成して取得するために、測定装置41及び少なくとも1つの温度センサ42を用いる。図6において、測定装置41及び温度センサ42以外の構成要素は、図1又は図4の対応する構成要素と同様に構成される。温度センサ42は、非接触式の温度センサ、例えば赤外線温度センサである。温度センサ42は、プリフォーム10が炉2によって加熱されるとき、ヒーター22によって発生された熱を受けることなく、プリフォーム10の外面温度を測定できるように、炉2の内部又は外部に設けられる。測定装置41は、温度センサ23から、炉温度の時間的変化を示す時系列データを取得し、また、温度センサ42から、プリフォーム10の外面温度の時間的変化を示す時系列データを取得し、取得された時系列データを制御装置1に送る。
【0080】
図1の炉2-1~2-3のそれぞれに対して、少なくとも1つずつの温度センサ42が設けられる。各温度センサ42は、ベルトコンベア3によって搬送されるプリフォーム10を追跡して、プリフォーム10の外面温度の時間的変化を測定できるように設けられる。
【0081】
図7は、図6の測定装置41によって取得される炉2の温度モデルの一例を示すグラフである。時刻t0は、ベルトコンベア3によって搬送されるプリフォーム10が炉2-1に進入した瞬間を示し、時刻t1は、プリフォーム10が炉2-1から出て炉2-2に進入した瞬間を示し、時刻t2は、プリフォーム10が炉2-2から出て炉2-3に進入した瞬間を示し、時刻t3は、プリフォーム10が炉2-3から出た瞬間を示す。時刻t0~t1の時間長、時刻t1~t2の時間長、及び時刻t2~t3の時間長は、前述したように、時間長tz1,tz2,tz3によってそれぞれ表される。炉2-1~2-3をオンしてから十分に長い時間が経過して温度が定常状態に達したとき、各炉2-1~2-3の実際の炉温度は、その設定値Tr1,Tr2,Tr3に一致していると考えられる。これにより、プリフォーム10の外面は、ステップ状の温度プロファイルで加熱される。図7に示すように、炉2-1~2-3のそれぞれによってプリフォーム10を加熱することにより、プリフォーム10の外面温度は、炉温度の設定値Tr1,Tr2,Tr3に次第に近づく。
【0082】
制御装置1は、炉温度の時系列データ及びプリフォーム10の外面温度の時系列データに基づいて、炉温度とプリフォーム10の外面温度との関係を示す炉2の温度モデルを計算する。炉2の温度モデルは、炉温度からプリフォーム10の外面温度への伝達関数により表される。炉2の温度モデルは、例えば次式のように、ラプラス変換された関数の領域における、利得及び時定数のパラメータを含む1次遅れ形式の伝達関数により表される。
【0083】
F1(s)=k1/(T1・s+1) (1)
【0084】
ここで、k1は利得を示し、T1は時定数を示す。
【0085】
ここで、炉温度の時間的変化を示す温度関数をTr(t)により表す。すなわち、最初の時間長tz1にわたってTr(t)=Tr1になり、次の時間長tz2にわたってTr(t)=Tr2になり、最後の時間長tz3にわたってTr(t)=Tr3になる。このとき、ラプラス変換された関数の領域において、炉温度Tr(s)を入力とし、プリフォーム10の外面温度Tout(s)を出力とする系は、次式で表される。
【0086】
Tout(s)=F1(s)・Tr(s) (2)
【0087】
炉2-1~2-3のそれぞれにおいて炉温度Tr1,Tr2,Tr3は一定であるので、炉温度Tr1,Tr2,Tr3のそれぞれは、振幅A1を有するステップ関数A1・u(t)により表される。ここで、A1は、プリフォーム10が炉2-1~2-3のそれぞれに進入したときのプリフォーム10の外面温度と炉温度との差を示す。ステップ関数A1・u(t)のラプラス変換はA1/sにより表される。この場合、式(2)にTr(s)=A1/sを代入して逆ラプラス変換することにより、次式のように、プリフォーム10の外面温度の時間的変化を示す時間領域の温度関数Tout(t)が得られる。
【0088】
Tout(t)=A1・k1(1-exp(-t/T1))+B1 (3)
【0089】
ここで、B1は、プリフォーム10が炉2-1~2-3のそれぞれに進入したときのプリフォーム10の外面温度を示す。
【0090】
式(3)は、ステップ関数A1・u(t)に対するステップ応答を表す。公知の最小二乗法などを用いてプリフォーム10の外面温度の時系列データを式(3)にあてはめることにより、式(1)の利得k1及び時定数T1が計算される。これにより、炉2の温度モデルの伝達関数F1(s)を同定することができる。
【0091】
制御装置1は、炉温度の時系列データ及びプリフォーム10の外面温度の時系列データとともに、プリフォーム加熱装置100の各パラメータの対応する設定値の時系列データを取得してもよい。これにより、炉温度の所定の時間的変化及びプリフォーム10の外面温度の所定の時間的変化を再現するようにプリフォーム加熱装置100を動作させることができる。
【0092】
炉2の温度モデルF1(s)は、炉温度の時系列データ及びプリフォーム10の外面温度の時系列データに基づいて測定装置41によって計算され、測定装置41から制御装置1に送られてもよい。
【0093】
[プリフォーム10の温度モデルの生成]
次に、図5のステップS2において取得されるプリフォーム10の温度モデルを生成する方法について説明する。
【0094】
図8は、図1のプリフォーム10の温度モデルを取得する構成を示す概略図である。プリフォーム10の温度モデルを生成して取得するために、測定装置51、温度センサ52,53、断熱容器54、及び熱湯55を用いる。温度センサ52,53は、例えば熱電対である。温度センサ52はプリフォーム10の外面に設けられ、温度センサ53はプリフォーム10の内面に設けられる。温度センサ52,53は、例えば接着又は埋め込みにより、プリフォーム10の外面及び内面にそれぞれ固定される。断熱容器54の内部に熱湯55が注がれ、プリフォーム10のほぼ全体が熱湯55に浸漬される。ただし、プリフォーム10は、その内部に熱湯55が流れ込まないように保持される。測定装置41は、温度センサ52から、プリフォーム10の外面温度の時間的変化を示す時系列データを取得し、また、温度センサ53から、プリフォーム10の内面温度の時間的変化を示す時系列データを取得し、取得された時系列データを制御装置1に送る。
【0095】
図9は、図8の測定装置51によって取得されるプリフォーム10の温度モデルの一例を示すグラフである。時刻t10は、プリフォーム10が熱湯55に浸漬された瞬間を示す。また、時刻t11は、プリフォーム10の内面温度が、熱湯55の温度Tref+A2に対して所定割合の値、例えば、Tref+A2a=Tref+A2×0.632に達した瞬間を示す。図7に示すように、プリフォーム10を熱湯55に浸漬することにより、プリフォーム10の外面温度はステップ状の温度プロファイルを有し、プリフォーム10の内面温度は外面温度に次第に近づく。
【0096】
制御装置1は、プリフォーム10の外面温度及び内面温度の時系列データに基づいて、プリフォーム10の外面温度と内面温度との関係を示すプリフォーム10の温度モデルを計算する。プリフォーム10の温度モデルは、プリフォーム10の外面温度から内面温度への伝達関数により表される。プリフォーム10の温度モデルは、例えば次式のように、ラプラス変換された関数の領域における、利得及び時定数のパラメータを含む1次遅れ形式の伝達関数により表される。
【0097】
F2(s)=k2/(T2・s+1) (4)
【0098】
ここで、k2は利得を示し、T2は時定数を示す。
【0099】
ここで、ラプラス変換された関数の領域において、プリフォーム10の外面温度Tout(s)を入力とし、プリフォーム10の内面温度Tin(s)を出力とする系は、次式で表される。
【0100】
Tin(s)=F2(s)・Tout(s) (5)
【0101】
図9の例では、プリフォーム10の外面温度は、振幅A2を有するステップ関数A2・u(t)により表される。ステップ関数A2・u(t)のラプラス変換はA2/sにより表される。この場合、式(5)にTout(s)=A2/sを代入して逆ラプラス変換することにより、次式のように、プリフォーム10の内面温度の時間的変化を示す時間領域の温度関数Tout(t)が得られる。
【0102】
Tin(t)=A2・k2(1-exp(-t/T2))+Tref (6)
【0103】
式(6)は、ステップ関数A2・u(t)に対するステップ応答を表す。公知の最小二乗法などを用いてプリフォーム10の内面温度の時系列データを式(6)にあてはめることにより、式(4)の利得k2及び時定数T2が計算される。これにより、プリフォーム10の温度モデルの伝達関数F2(s)を同定することができる。
【0104】
プリフォーム10の温度モデルF2(s)は、プリフォーム10の外面温度及び内面温度の時系列データに基づいて測定装置51によって計算され、測定装置51から制御装置1に送られてもよい。
【0105】
[プリフォーム10の外面温度Tout(t)及び内面温度Tin(t)の推定]
次に、図5のステップS6におけるプリフォーム10の外面温度Tout(t)及び内面温度Tin(t)をシミュレーションにより推定する方法について説明する。
【0106】
ステップS6の処理では、時間tは、サンプリング時間幅Δtにより離散化される。制御装置1は、時刻t=0からtendまで以下のステップ(i)~(iv)の処理を実行し、サンプリング時間幅Δtごとに外面温度Tout(t)及び内面温度Tin(t)の値を計算する。
【0107】
ステップ(i)
時刻t=0において、プリフォーム10の加熱の開始時におけるプリフォーム10の外面温度Tout(t)及び内面温度Tin(t)の初期値を設定する。プリフォーム10の外面温度Tout(t)及び内面温度Tin(t)の初期値は、例えば、Tout(0)=Tin(0)=Tref=25[℃]に設定される。
【0108】
ステップ(ii)
シミュレーションの反復回数1、すなわち時刻t=Δtにおいて、制御装置1は、炉温度Tr(0)を読み込み、以下の値を計算する。
【0109】
Tout′(1)=-aout・Tout(0)+bout・Tr(0)
Tout(1)=Tout(0)+Tout′(1)・Δt
Tin′(1)=-ain・Tin(0)+bin・Tout(0)
Tin(1)=Tin(0)+Tin′(1)Δt
【0110】
ここで、aout、bout、ain、及びbinは、次式で表される。
【0111】
aout=1/T1
bout=k1/T1
ain=1/T2
bin=k2/T2
【0112】
また、Tout′(1)は、t=1における温度関数Tout(t)の微分係数を示し、Tin′(1)は、t=1における温度関数Tin(t)の微分係数を示す。
【0113】
ステップ(iii)
シミュレーションの反復回数j、すなわち時刻t=j・Δtにおいて、制御装置1は、炉温度Tr(1)を読み込み、以下の値を計算する。
【0114】
Tout′(j)=-aout・Tout(j-1)+bout・Tr(j-1)
Tout(j)=Tout(j-1)+Tout′(j)・Δt
Tin′(j)=-ain・Tin(j-1)+bin・Tout(j-1)
Tin(j)=Tin(j-1)+Tin′(j)・Δt
【0115】
ステップ(iv)
時刻t=j・Δtがtendに達したら処理を終了して図5のステップS7に進み、そうでないときは、反復回数jをインクリメント(j=j+1)してステップ(iii)に戻る。
【0116】
このように、ステップS6の処理によれば、炉2の温度モデルF1(s)に基づいて外面温度Tout(t)を推定することができ、また、プリフォーム10の温度モデルF2(s)に基づいて内面温度Tin(t)を推定することができる。
【0117】
[評価関数値fe(i)の計算]
図5のステップS7において使用される評価関数値fe(i)は、例えば以下のように計算される。
【0118】
【数1】
【0119】
ここで、aは外面温度誤差eout(t)の重み係数を示し、bは内面温度誤差ein(t)の重み係数を示す。また、eout(t)は、次式のように、プリフォーム10の内面温度Tin(t)と内面温度目標値Tin_tgt(t)との誤差を示し、ein(t)は、次式のように、プリフォーム10の内面温度Tin(t)と予め決められた内面温度目標値Tin_tgt(t)との誤差を示す。
【0120】
eout(t)=|Tout(t)-Tout_tgt(t)|
ein(t)=|Tin(t)-Tin_tgt(t)|
【0121】
ここで、|x|はxの絶対値を表す。
【0122】
図5のステップS8では、評価関数値fe(i)が収束したか否かを判断するために、制御装置1は、計算された最新の評価関数値と、処理の直前の反復において計算された評価関数値との差がしきい値Δfe以下であるか否かを判断してもよい。また、評価関数値fe(i)が収束したか否かをより確実に判断するために、制御装置1は、次式のように、計算された最新の評価関数値と、処理の複数回前の反復、例えば10回前の反復において計算された評価関数値との差がしきい値Δfe以下であるか否かを判断してもよい。
【0123】
|fe(i-10)-fe(i)|<Δfe (8)
【0124】
[第1の実施形態の効果]
図10は、図5のステップS5において設定された炉温度の設定値の初期値を用いたときの、プリフォーム10の外面温度及び内面温度の一例を示すグラフである。図11は、図5のステップS9において設定された炉温度の設定値を用いたときの、プリフォーム10の外面温度及び内面温度の一例を示すグラフである。上述した例では、炉温度の設定値Tr1(i),Tr2(i),Tr3(i)の初期値は、互いに等しい値Tr1(0)=Tr2(0)=Tr3(0)=200℃に設定され、この場合、図10に示すように、時刻t3に達しても、プリフォーム10の外面温度及び内面温度の差が残ることがある。一方、図5の設定値計算処理を実行して炉温度の設定値Tr1,Tr2,Tr3を適切に計算することにより、プリフォーム10の外面温度及び内面温度の差を削減することができる。
【0125】
第1の実施形態に係るプリフォーム加熱装置100によれば、制御装置1は、プリフォーム10の内面温度を示す温度モデルを予め生成して取得する。また、第1の実施形態に係るプリフォーム加熱装置100によれば、制御装置1は、非接触の温度センサ42により測定されたプリフォーム10の外面温度をプリフォーム10の温度モデルに適用することにより、プリフォーム10の内面温度を推定することができる。また、第1の実施形態に係るプリフォーム加熱装置100によれば、制御装置1は、フィードバック制御を含むシミュレーションにより炉温度の設定値Tr1,Tr2,Tr3を反復的に計算することにより、プリフォーム10の内面温度Tin(t)と内面温度目標値Tin_tgt(t)との誤差を低減し、好ましくは最小化することができ、また、プリフォーム10の外面温度Tout(t)と外面温度目標値Tout_tgt(t)との誤差を低減し、好ましくは最小化することができる。また、第1の実施形態に係るプリフォーム加熱装置100によれば、制御装置1は、計算された炉温度の設定値Tr1,Tr2,Tr3を炉2-1~2-3にそれぞれ設定し、プリフォーム10の内面温度を所望の目標値に近づけるようにプリフォーム10を加熱することができる。
【0126】
第1の実施形態に係るプリフォーム加熱装置100によれば、温度調整に大きな手間をかけることなく、プリフォーム10の内面温度を所望の目標値に近づけるようにプリフォーム10を加熱することができる。
【0127】
[第2の実施形態]
図12は、第2の実施形態に係るプリフォーム加熱装置110の構成を示すブロック図である。図12のプリフォーム加熱装置110は、制御装置1A、1つの炉2A、及び温度センサ5を備える。実施形態に係るプリフォーム加熱装置は、図1に示すように、複数の炉2-1~2-3に及びベルトコンベア3を備えるものに限定されない。炉2Aは、プリフォーム10がベルトコンベア3によって搬送されるのではなく、その内部にプリフォーム10が収容されることを除いて、図4の炉2と同様に構成される。制御装置1Aは、図1の3つの炉2-1~2-3及び駆動装置4を制御することに代えて、1つの炉2Aを制御することを除いて、図1の制御装置1と実質的に同様に動作する。ただし、制御装置1Aは、炉2Aの炉温度の設定値を時間的に変化させてもよく、例えば、図11に示すように変化させてもよい。図12のプリフォーム加熱装置110によれば、図1のプリフォーム加熱装置100と同様に、温度調整に大きな手間をかけることなく、プリフォーム10の内面温度を所望の目標値に近づけるようにプリフォーム10を加熱することができる。
【0128】
[他の変形例]
以上、本開示の実施形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本開示の例示に過ぎない。本開示の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。
【0129】
上述した例では、炉2の温度モデルの温度モデルF1(s)及びプリフォーム10の温度モデルF2(s)が一次遅れ形式の伝達関数によって表される場合について説明したが、他の伝達関数、例えば次式によって表されてもよい。
【0130】
F1(s)=k10/((T11・s+1)(T12・s+1)) (9)
F2(s)=k20/((T21・s+1)(T22・s+1)) (10)
【0131】
ここで、k10,k20は利得を示し、T11~T22は時定数を示す。式(9)及び式(10)は、2次遅れ形式の伝達関数である。炉2の温度モデルの温度モデルF1(s)及びプリフォーム10の温度モデルF2(s)は、1次遅れ形式及び2次遅れ形式に限らず、他の伝達関数によって表されてもよい。
【0132】
上述した例では、プリフォーム10の内面温度目標値Tin1_tgt,Tin2_tgt,Tin3_tgtが、プリフォーム10の外面温度目標値Tout1_tgt,Tout2_tgt,Tout3_tgtにそれぞれ等しい場合について説明したが、これらの目標値は互いに異なっていてもよい。内面温度目標値Tin_tgt(t)は、外面温度目標値Tout_tgt(t)に対して所定の温度差を有する値に設定されてもよい。
【0133】
図5のステップS7において、式(7)に代えて、次式を用いてもよい。
【0134】
【数2】
【0135】
加熱時間の最後の方の誤差がより重要であるので、式(11)の右辺では、経過時間tを重み係数として乗算している。
【0136】
上述した例では、式(7)の重み係数a=b=1である場合について説明したが、他の重み係数a,bの値を用いてもよい。例えば、重み係数a=0,b=1を設定することにより、図5のステップS7においてプリフォーム10の外面温度を無視し、プリフォーム10の内面温度Tin(t)と内面温度目標値Tin_tgt(t)との誤差を予め決められたしきい値Δfeよりも低減するように炉温度の設定値Tr1,Tr2,Tr3を計算することができる。
【0137】
上述した例では、ベルトコンベア3によって搬送されるプリフォーム10が炉2-1~2-3をそれぞれ通過する時間長tz1,tz2,tz3が互いに等しい場合について説明したが、これらの時間長は互いに異なっていてもよい。
【0138】
[まとめ]
本開示の各側面に係るプリフォーム加熱装置及びその制御方法は、以下のように表現されてもよい。
【0139】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、熱可塑性容器のプリフォーム10を加熱するプリフォーム加熱装置の制御方法が提供される。プリフォーム加熱装置は、プリフォーム10を収容して所定の炉温度で加熱する少なくとも1つの炉2を備える。制御方法は、炉温度とプリフォーム10の外面温度との関係を示す第1の温度モデルF1(s)を取得するステップを含む。制御装置はさらに、プリフォーム10の外面温度とプリフォーム10の内面温度との関係を示す第2の温度モデルF2(s)を取得するステップを含む。制御装置はさらに、第1の温度モデルF1(s)に基づいて、プリフォーム10の外面温度の時間的変化を示す第1の温度関数Tout(t)を計算するステップを含む。制御装置はさらに、第2の温度モデルF2(s)に基づいて、プリフォーム10の内面温度の時間的変化を示す第2の温度関数Tin(t)を計算するステップを含む。制御装置はさらに、第1の温度関数Tout(t)及び第2の温度関数Tin(t)に基づいて、プリフォーム10の内面温度Tin(t)と予め決められた内面温度目標値Tin_tgt(t)との誤差を予め決められたしきい値Δfeよりも低減するように炉温度の設定値Tr1,Tr2,Tr3を計算するステップを含む。制御装置はさらに、計算された炉温度の設定値Tr1,Tr2,Tr3を炉2に設定するステップを含む。
【0140】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、第2の温度モデルF2(s)は、プリフォーム10の外面温度からプリフォーム10の内面温度への伝達関数により表される。
【0141】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、第2の温度モデルF2(s)は、ラプラス変換された関数の領域における、利得及び時定数のパラメータを含む1次遅れ形式又は2次遅れ形式の伝達関数により表される。
【0142】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、第2の温度モデルF2(s)を取得するステップは、プリフォーム10の外面温度の時間的変化を示す第1の時系列データを取得するステップと、プリフォーム10の内面温度の時間的変化を示す第2の時系列データを取得するステップと、第1及び第2の時系列データに基づいて第2の温度モデルF2(s)の伝達関数を計算するステップとを含む。
【0143】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、第1の時系列データを取得するステップは、プリフォーム10の外面をステップ状の温度プロファイルで加熱するとき、プリフォーム10の外面に設けられた第1の温度センサ52からプリフォーム10の外面温度を取得するステップを含む。第2の時系列データを取得するステップは、プリフォーム10の外面をステップ状の温度プロファイルで加熱するとき、プリフォーム10の内面に設けられた第2の温度センサ53からプリフォーム10の内面温度を取得するステップを含む。
【0144】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、第1の温度モデルF1(s)は、炉温度からプリフォーム10の外面温度への伝達関数により表される。
【0145】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、第1の温度モデルF1(s)は、ラプラス変換された関数の領域における、利得及び時定数のパラメータを含む1次遅れ形式又は2次遅れ形式の伝達関数により表される。
【0146】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、第1の温度モデルF1(s)を取得するステップは、炉温度の時間的変化を示す第3の時系列データを取得するステップと、プリフォーム10の外面温度の時間的変化を示す第4の時系列データを取得するステップと、第3及び第4の時系列データに基づいて第1の温度モデルF1(s)の伝達関数を計算するステップとを含む。
【0147】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、炉温度の設定値Tr1,Tr2,Tr3を計算するステップは、プリフォーム10の内面温度Tin(t)と内面温度目標値Tin_tgt(t)との誤差を低減するように、炉温度の設定値Tr1,Tr2,Tr3を反復的に変化させるステップを含む。
【0148】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、炉温度の設定値Tr1,Tr2,Tr3を計算するステップは、第1の温度関数Tout(t)及び第2の温度関数Tin(t)に基づいて、プリフォーム10の内面温度Tin(t)と内面温度目標値Tin_tgt(t)との誤差をしきい値Δfeよりも低減するように、かつ、プリフォーム10の外面温度Tout(t)と予め決められた外面温度目標値Tout_tgt(t)との誤差をしきい値Δfeよりも低減するように、炉温度の設定値Tr1,Tr2,Tr3を計算するステップを含む。
【0149】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、炉温度の設定値Tr1,Tr2,Tr3を計算するステップは、プリフォーム10の内面温度Tin(t)と内面温度目標値Tin_tgt(t)との誤差を低減するように、かつ、プリフォーム10の外面温度Tout(t)と外面温度目標値Tout_tgt(t)との誤差を低減するように、炉温度の設定値Tr1,Tr2,Tr3を反復的に変化させるステップを含む。
【0150】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、内面温度目標値Tin_tgt(t)は外面温度目標値Tout_tgt(t)と同じ値に設定される。
【0151】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、内面温度目標値Tin_tgt(t)は、外面温度目標値Tout_tgt(t)に対して所定の温度差を有する値に設定される。
【0152】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置の制御方法によれば、プリフォーム加熱装置は、プリフォーム10が逐次に通過するように互いに隣接して配置された複数の炉2を備える。複数の炉2のそれぞれについて、炉温度の設定値Tr1,Tr2,Tr3は時間的に一定である。
【0153】
本開示の一側面に係るプリフォーム加熱装置によれば、熱可塑性容器のプリフォーム10を加熱するプリフォーム加熱装置が提供される。プリフォーム加熱装置は、プリフォーム10を収容して所定の炉温度で加熱する少なくとも1つの炉2と、炉温度の設定値Tr1,Tr2,Tr3を制御する制御装置1とを備える。制御装置1は、炉温度とプリフォーム10の外面温度との関係を示す第1の温度モデルF1(s)を取得する。制御装置1はさらに、プリフォーム10の外面温度とプリフォーム10の内面温度との関係を示す第2の温度モデルF2(s)を取得する。制御装置1はさらに、第1の温度モデルF1(s)に基づいて、プリフォーム10の外面温度の時間的変化を示す第1の温度関数Tout(t)を計算する。制御装置1はさらに、第2の温度モデルF2(s)に基づいて、プリフォーム10の内面温度の時間的変化を示す第2の温度関数Tin(t)を計算する。制御装置1はさらに、第1の温度関数Tout(t)及び第2の温度関数Tin(t)に基づいて、プリフォーム10の内面温度と予め決められた内面温度目標値Tin_tgt(t)との誤差を予め決められたしきい値Δfeよりも低減するように炉温度の設定値Tr1,Tr2,Tr3を計算する。制御装置1はさらに、計算された炉温度の設定値Tr1,Tr2,Tr3を炉2に設定する。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本開示によれば、PETボトルなど熱可塑性容器のプリフォームをブロー成形のために加熱するプリフォーム加熱装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0155】
1,1A 制御装置
2,2-1~2-3,2A 炉
3 ベルトコンベア
4 駆動装置
5 温度センサ
6 入力装置
7 表示装置
10 プリフォーム
10a 内面
10b 外面
11 ボトル
21,21-1~21-3 温度調節器
22,22-1~22-3 ヒーター
23,23-1~23-3 温度センサ
31 金型
32 管路
41 測定装置
42 温度センサ
51 測定装置
52,53 温度センサ
54 断熱容器
55 熱湯
100,110 プリフォーム加熱装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12