(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】重合性コレステリック液晶組成物、光学異方性膜、及び電磁波反射膜
(51)【国際特許分類】
C08F 220/10 20060101AFI20240925BHJP
C09K 19/38 20060101ALI20240925BHJP
G02B 5/30 20060101ALN20240925BHJP
【FI】
C08F220/10
C09K19/38
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2023056896
(22)【出願日】2023-03-31
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和之
(72)【発明者】
【氏名】奥山 健一
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/093093(WO,A1)
【文献】特開2013-087109(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第115572499(CN,A)
【文献】特開2009-286885(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第115449112(CN,A)
【文献】国際公開第2021/241226(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/020287(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C09K19/38
G02B 5/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体-液晶相転移温度が50℃~120℃のアキラルな重合性液晶化合物と、相転移温度が60℃~90℃のキラルな重合性化合物と、光重合開始剤と
、溶剤を含有し、
当該溶剤は、前記キラルな重合性化合物の相転移温度±20℃の範囲内の沸点を有する溶剤を全溶剤中に30質量%以上含有し、
前記相転移温度が60℃~90℃のキラルな重合性化合物が、下記一般式(2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つから選択され、
フルオレン骨格を有する重合性液晶化合物を含有しない、重合性コレステリック液晶組成物。
【化1】
(一般式(2)において、
L
3
及びL
4
はそれぞれ独立して、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、又は、単結合を表し、
A
3
及びA
4
はそれぞれ独立して、1,4-フェニレン基、1,4-シクロへキシレン基、又はナフタレン-2,6-ジイル基を表し、
R
3
及びR
4
はそれぞれ独立して、下記一般式(R-2)から選ばれる基を表し、
一般式(R-2): -L
r2
-R
sp2
-Z
2
一般式(R-2)中、L
r2
は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、又は、単結合を表し、R
sp2
は、1個の-CH
2
-又は隣接していない2個以上の-CH
2
-が各々独立して-O-、-COO-、又は-OCO-に置き換えられても良い炭素原子数1~20のアルキレン基を表し、Z
2
は下記式(Z-1)から選ばれる基を表す。
置換基E
2
及びE
3
はそれぞれ独立して、炭素数1~3のアルキル基、又はハロゲンであり、
n3及びn4はそれぞれ独立して、2~3を表し、m1及びm2はそれぞれ独立して、0~2を表し、
L
3
、L
4
、A
3
、及びA
4
がそれぞれ複数存在する場合は、各々同一であっても異なっていても良い。)
【化2】
(式(Z-1)中、R
z
は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。)
【請求項2】
さらに、非フッ素系レベリング剤を含有する、請求項1に記載の重合性コレステリック液晶組成物。
【請求項3】
前記アキラルな重合性液晶化合物が、下記一般式(1)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1又は2に記載の重合性コレステリック液晶組成物。
【化3】
(一般式(1)において、Arは、1,4-フェニレン基、又はナフタレン-2,6-ジイル基を表し、
L
1及びL
2はそれぞれ独立して、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CH
2-CH
2-OCO-、-OCO-CH
2-CH
2-、-CH
2-OCO-、-OCO-CH
2-、又は、単結合を表し、
A
1及びA
2はそれぞれ独立して、1,4-フェニレン基、1,4-シクロへキシレン基、又はナフタレン-2,6-ジイル基を表し、
前記Ar、A
1及びA
2はそれぞれ、1つ以上の置換基E
1によって置換されていても良く、当該置換基E
1は、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、テトラゾール基、炭素数1~7のアルキル基又は炭素数1~7のアルコキシ基であり、
R
1及びR
2はそれぞれ独立して、下記一般式(R-1)から選ばれる基を表し、
一般式(R-1): -L
r1-R
sp1-Z
1
一般式(R-1)中、L
r1は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、又は、単結合を表し、R
sp1は、1個の-CH
2-又は隣接していない2個以上の-CH
2-が各々独立して-O-、-COO-、又は-OCO-に置き換えられても良い炭素原子数1~20のアルキレン基又は単結合を表し、Z
1は重合性官能基を表す。
n1及びn2はそれぞれ独立して、0~2の整数を表すが、n1+n2は1以上であり、
L
1、L
2、A
1、及びA
2がそれぞれ複数存在する場合は、各々同一であっても異なっていても良い。)
【請求項4】
請求項1または2に記載の重合性コレステリック液晶組成物の硬化膜である光学異方性膜。
【請求項5】
請求項1または2に記載の重合性コレステリック液晶組成物の硬化膜である電磁波反射膜であって、
当該電磁波反射膜を90℃で72時間加熱した後において、
前記重合性コレステリック液晶組成物の硬化膜におけるコレステリック液晶のらせんピッチが下記式(A-1)、式(A-2)、及び式(A-3)を満たす、電磁波反射膜。
P
1-P
1×0.05≦P
2≦P
1+P
1×0.05 (A-1)
P
1-P
1×0.05≦P
3≦P
1+P
1×0.05 (A-2)
P
2-P
2×0.05≦P
1≦P
2+P
2×0.05 (A-3)
(ここで、P
1は前記硬化膜の第1の表面の位置を含むらせんピッチの長さ、P
2は前記硬化膜の前記第1の表面とは反対側の第2の表面の位置を含むらせんピッチの長さ、P
3は前記硬化膜の層厚方向中央部の位置を含むらせんピッチの長さを表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、重合性コレステリック液晶組成物、及び当該液晶組成物を用いた光学異方性膜、並びに電磁波反射膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、偏光板、偏光反射板、位相差板などの光学異方性膜に重合性の液晶化合物が利用されている。重合性液晶化合物は、液晶状態において光学異方性を示し、重合によりこの異方性が固定化されるためである。光学異方性膜に必要な光学的特性は目的によって異なるので、目的にあった特性を有するために、種々の化合物を組み合わせて重合性液晶組成物として利用されることがある。
【0003】
特許文献1及び2には、フルオレン骨格を有する重合性液晶化合物と、光学活性化合物とを含む重合性液晶組成物が開示されている。これらの光学活性化合物を含む重合性液晶組成物は、光学活性化合物の種類や添加量を制御することにより、ねじれ配向を有する光学異方性膜のらせんピッチを変化させることで種々の用途への応用が可能となる。ねじれ配向を有する光学異方性膜は、らせんピッチの長さおよびらせんの回転方向に合致した光を反射する。らせんピッチの長さが380nm~780nmの範囲であるとき、可視光線を反射する。らせんピッチの長さが780nmより長いとき近赤外線や赤外線を反射し、らせんピッチの長さが380nmより短いとき紫外線を反射する。
【0004】
光学異方性膜の用途としては、ディスプレイの輝度向上フィルム(例えば、特許文献3)や、近赤外反射層(例えば、特許文献4)や、電磁波反射フィルム(例えば、特許文献5)も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-113131号公報
【文献】特開2015-110728号公報
【文献】特開2017-194709号公報
【文献】特開2009-522399号公報
【文献】国際公開2012/014552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に具体的に記載されている重合性コレステリック液晶組成物の硬化膜である光学異方性膜は、未だ耐熱性が不十分であり、熱によりらせんピッチが変動しやすいという問題があった。
本開示の実施形態は、前述のような実情を鑑み、耐熱性に優れる光学異方性膜を形成可能な重合性コレステリック液晶組成物、当該重合性コレステリック液晶組成物を用いた、電磁波反射膜等の光学異方性膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、特定の相転移温度を有するキラルな重合性化合物と、特定の固体-液晶相転移温度を有するアキラルな重合性液晶化合物と、光重合開始剤とを含有し、フルオレン骨格を有する重合性液晶化合物を含有しない、重合性コレステリック液晶組成物とすることにより、耐熱性が向上することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本開示には、以下の態様が含まれる。
【0008】
[1] 固体-液晶相転移温度が50℃~120℃のアキラルな重合性液晶化合物と、相転移温度が60℃~90℃のキラルな重合性化合物と、光重合開始剤とを含有し、フルオレン骨格を有する重合性液晶化合物を含有しない、重合性コレステリック液晶組成物。
[2] さらに、非フッ素系レベリング剤を含有する、前記[1]に記載の重合性コレステリック液晶組成物。
[3] さらに、溶剤を含有し、
当該溶剤は、前記キラルな重合性化合物の相転移温度±20℃の範囲内の沸点を有する溶剤を全溶剤中に30質量%以上含有する、前記[1]又は[2]に記載の重合性コレステリック液晶組成物。
[4] 前記アキラルな重合性液晶化合物が、下記一般式(1)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つである、前記[1]~[3]のいずれかに記載の重合性コレステリック液晶組成物。
【0009】
【化1】
(一般式(1)において、Arは、1,4-フェニレン基、又はナフタレン-2,6-ジイル基を表し、
L
1及びL
2はそれぞれ独立して、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CH
2-CH
2-OCO-、-OCO-CH
2-CH
2-、-CH
2-OCO-、-OCO-CH
2-、又は、単結合を表し、
A
1及びA
2はそれぞれ独立して、1,4-フェニレン基、1,4-シクロへキシレン基、又はナフタレン-2,6-ジイル基を表し、
前記Ar、A
1及びA
2はそれぞれ、1つ以上の置換基E
1によって置換されていても良く、当該置換基E
1は、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、テトラゾール基、炭素数1~7のアルキル基又は炭素数1~7のアルコキシ基であり、
R
1及びR
2はそれぞれ独立して、下記一般式(R-1)から選ばれる基を表し、
一般式(R-1): -L
r1-R
sp1-Z
1
一般式(R-1)中、L
r1は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、又は、単結合を表し、R
sp1は、1個の-CH
2-又は隣接していない2個以上の-CH
2-が各々独立して-O-、-COO-、又は-OCO-に置き換えられても良い炭素原子数1~20のアルキレン基又は単結合を表し、Z
1は重合性官能基を表す。
n1及びn2はそれぞれ独立して、0~2の整数を表すが、n1+n2は1以上であり、
L
1、L
2、A
1、及びA
2がそれぞれ複数存在する場合は、各々同一であっても異なっていても良い。)
[5] 前記キラルな重合性化合物が、下記一般式(2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つである、前記[1]~[4]のいずれかに記載の重合性コレステリック液晶組成物。
【0010】
【化2】
(一般式(2)において、
L
3及びL
4はそれぞれ独立して、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、又は、単結合を表し、
A
3及びA
4はそれぞれ独立して、1,4-フェニレン基、1,4-シクロへキシレン基、又はナフタレン-2,6-ジイル基を表し、
R
3及びR
4はそれぞれ独立して、下記一般式(R-2)から選ばれる基を表し、
一般式(R-2): -L
r2-R
sp2-Z
2
一般式(R-2)中、L
r2は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、又は、単結合を表し、R
sp2は、1個の-CH
2-又は隣接していない2個以上の-CH
2-が各々独立して-O-、-COO-、又は-OCO-に置き換えられても良い炭素原子数1~20のアルキレン基又は単結合を表し、Z
2は重合性官能基を表す。
置換基E
2及びE
3はそれぞれ独立して、炭素数1~3のアルキル基、又はハロゲンであり、
n3及びn4はそれぞれ独立して、1~3を表し、m1及びm2はそれぞれ独立して、0~2を表し、
L
3、L
4、A
3、及びA
4がそれぞれ複数存在する場合は、各々同一であっても異なっていても良い。)
【0011】
[6] 前記[1]~[5]のいずれかに記載の重合性コレステリック液晶組成物の硬化膜である光学異方性膜。
[7] 重合性コレステリック液晶組成物の硬化膜である電磁波反射膜であって、
当該電磁波反射膜を90℃で72時間加熱した後において、
前記重合性コレステリック液晶組成物の硬化膜におけるコレステリック液晶のらせんピッチが下記式(A-1)、式(A-2)、及び式(A-3)を満たす、電磁波反射膜。
P1-P1×0.05≦P2≦P1+P1×0.05 (A-1)
P1-P1×0.05≦P3≦P1+P1×0.05 (A-2)
P2-P2×0.05≦P1≦P2+P2×0.05 (A-3)
(ここで、P1は前記硬化膜の第1の表面の位置を含むらせんピッチの長さ、P2は前記硬化膜の前記第1の表面とは反対側の第2の表面の位置を含むらせんピッチの長さ、P3は前記硬化膜の層厚方向中央部の位置を含むらせんピッチの長さを表す。)
[8] 前記重合性コレステリック液晶組成物が前記[1]~[5]のいずれかに記載の重合性コレステリック液晶組成物である、前記[7]に記載の電磁波反射膜。
【発明の効果】
【0012】
本開示の実施形態によれば、耐熱性に優れる光学異方性膜を形成可能な重合性コレステリック液晶組成物、当該重合性コレステリック液晶組成物を用いた、電磁波反射膜等の光学異方性膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示の電磁波反射膜の1実施形態を示す模式断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の電磁波反射膜を含む積層体の1実施形態を示す模式断面図である。
【
図3】
図3は、本開示の電磁波反射膜を含む積層体の1実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態や実施例などを、図面等を参照しながら説明する。但し、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態や実施例等の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。また、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明する場合があるが、上下方向が逆転してもよい。
「本明細書において、ある部材又はある領域等のある構成が、他の部材又は他の領域等の他の構成の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限り、これは他の構成の直上(又は直下)にある場合のみでなく、他の構成の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の構成の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
【0015】
本開示において配向規制力とは、液晶化合物を特定方向に配列させる作用をいう。
本開示において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタアクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの各々を表す。
また、本明細書において「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではなく、「フィルム面(板面、シート面)」とは、対象となるフィルム状(板状、シート状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるフィルム状部材(板状部材、シート状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
また、本開示において、数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0016】
A.重合性コレステリック液晶組成物
本開示の重合性コレステリック液晶組成物は、固体-液晶相転移温度が50℃~120℃のアキラルな重合性液晶化合物と、相転移温度が60℃~90℃のキラルな重合性化合物と、光重合開始剤とを含有し、フルオレン骨格を有する重合性液晶化合物を含有しない、重合性コレステリック液晶組成物である。
【0017】
本開示の重合性コレステリック液晶組成物は、固体-液晶相転移温度が50℃~120℃のアキラルな重合性液晶化合物に、相転移温度が60℃~90℃のキラルな重合性化合物を組み合わせて含有し、フルオレン骨格を有する重合性液晶化合物を含有しないことから、耐熱性が向上した重合性コレステリック液晶組成物とすることができ、耐熱性試験前後でらせんピッチの変動を抑制できる。耐熱性が向上する作用については未だ不明であるが、以下のように推定される。
アキラルな重合性液晶化合物の固体-液晶相転移温度は概ね50℃~180℃であるものが多いが、溶液にして塗膜を形成して液晶相とする際には、固体-液晶相転移温度より低温で相転移する傾向がある。一方で、重合性液晶組成物の硬化膜を形成するための基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材やトリアセチルセルロース(TAC)基材等の樹脂基材が多く用いられるが、このような樹脂基材は、高温で加熱すると熱皺が生じやすい。そのため、基材上に重合性液晶組成物を塗布して、通常60℃以上120℃以下、好ましくは110℃以下や100℃以下で加熱することにより、溶媒を乾燥すると共に液晶を配向させて、重合性液晶組成物の塗膜が形成されている。
本開示の重合性コレステリック液晶組成物は、固体-液晶相転移温度が50℃~120℃のアキラルな重合性液晶化合物に、相転移温度が60℃~90℃のキラルな重合性化合物を組み合わせて含有することから、重合性コレステリック液晶組成物の塗膜を形成後、通常の好ましい温度で加熱されると、相転移温度が60℃~90℃のキラルな重合性化合物が先に相転移するか、キラルな重合性化合物とアキラルな重合性液晶化合物が同時に相転移する。このような場合、キラルな重合性化合物の分子運動が活発になり、キラルな重合性化合物と重合性液晶化合物との良好な混合状態が得られ、膜厚方向でキラルな重合性化合物と重合性液晶化合物の濃度が均一な塗膜が得られる。このような良好な混合状態の塗膜において、重合性液晶化合物が配向し、その後キラルな重合性化合物と重合性液晶化合物とで重合が進行することにより、キラルな重合性化合物と重合性液晶化合物との重合率も向上する。その結果、膜厚方向でらせんピッチの均一性が高く、且つ、耐熱性が高くなり、耐熱試験後にも膜厚方向でらせんピッチの均一性が高い液晶組成物の硬化膜が得られる。
また、キラルな重合性化合物の相転移温度を60℃以上としたことから、キラルな重合性化合物の純度を向上しやすく、塗膜でブリードし難くなり、耐熱性も確保できる。
【0018】
一方で、キラルな重合性化合物の相転移温度が90℃より高いと、キラルな重合性化合物と重合性液晶化合物との良好な混合状態が得られ難くなり、キラルな重合性化合物と重合性液晶化合物との重合率も低くなることから耐熱性が低くなると考えられる。
また、フルオレン骨格を有する重合性液晶化合物は、構造が剛直なため溶媒に対する溶解性が低く、キラルな重合性化合物との相溶性も低いことから、キラルな重合性化合物と重合性液晶化合物との重合率が不十分となり、耐熱性が低くなる(後述の比較例)と考えられる。従って、本開示の重合性コレステリック液晶組成物は、フルオレン骨格を有する重合性液晶化合物を含有しないことにより、耐熱性が向上していると考えられる。
【0019】
本開示の重合性コレステリック液晶組成物は、少なくとも、固体-液晶相転移温度が50℃~120℃のアキラルな重合性液晶化合物と、相転移温度が60℃~90℃のキラルな重合性化合物と、光重合開始剤とを含有し、フルオレン骨格を有する重合性液晶化合物を含有しないものであるが、更に、溶剤を含有することが好ましい。また、レベリング剤を更に含有してもよい。さらに、効果を損なわない範囲で更に他の成分を含有してもよい。以下、本開示の重合性液晶組成物を構成する各成分について、順に説明する。
【0020】
1.固体-液晶相転移温度が50℃~120℃のアキラルな重合性液晶化合物
固体-液晶相転移温度が50℃~120℃のアキラルな重合性液晶化合物は、従来公知の不斉炭素原子を有しない重合性液晶化合物の中から適宜選択して用いることができる。
本開示において、固体-液晶相転移温度とは、液晶化合物が固体から液晶に変化する温度を意味する。本開示において液晶化合物の固体-液晶相転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定するものとする。示差走査熱量計(DSC)を用いた測定方法は、液晶化合物2種以上混合している場合や後述のキラルな重合性化合物が混合している場合であっても測定可能である。
本開示において液晶化合物の固体-液晶相転移温度は、具体的には以下の方法により測定する。なお、測定はJIS K7121-1987の8に準じて実施する。相転移温度はJIS K7121-1987の9.1(2)に従った補外融解開始温度(Tim)の値を採用する。ただし、溶媒を留去して試料を調製する方法と、昇温と冷却プログラム(加熱速度、冷却速度、加熱開始温度、終了温度)は以下のように行う。
まず、ロータリーエバポレータを用いて液晶組成物から溶媒を留去し、測定用試料を得る。測定用試料5mgをアルミサンプルパンに封入後、DSCにセットし、窒素雰囲気下において25℃から-25℃/分の速度で、-10℃まで冷却し、-10℃で15分維持する。その後、昇温1回目として、10℃/分の速度で-10℃から150℃まで昇温し、150℃で1分維持する。冷却1回目として、-10℃/分の速度で150℃から-10℃まで冷却し、-10℃で10分維持する。その後、昇温2回目として、10℃/分の速度で-10℃から150℃まで昇温し、150℃で1分維持する。冷却2回目として、-10℃/分の速度で150℃から25℃まで冷却する。2回目の昇温で検出される吸熱開始温度、すなわち、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、融解ピークの低温側の曲線にこう配が最大になる点で引いた接線の交点の温度である補外融解開始温度(Tim)を相転移温度とする。
【0021】
なお、本実施例及び比較例のDSC測定はいずれも、上限温度を150℃として行った。しかしながら、150℃までに重合を開始する化合物の場合、DSC測定の上限温度を、当該化合物の重合開始温度よりも低くするように、変更する。
その場合、以下i)~iii)の手順にて化合物が重合しているか否かを観察し、DSC測定時の上限温度を決める。
i)昇温1回目の到達温度を150℃として測定し、2回目の昇温でピークが検出されなかったもしくは著しくピーク面積が小さくなった場合には、昇温1回目の到達温度を5℃低くした条件にて新たにDSC測定をする。
ii)昇温1回目の到達温度を5℃低くしても2回目の昇温でピークが検出されなかったもしくは著しくピーク面積が小さくなった場合には、昇温1回目の到達温度をさらに5℃低くした条件にて再度DSC測定をする。
iii)2回目の昇温でピークが検出するまで、上記ii)を繰り返す。2回目の昇温でピークを検出できる温度をDSC測定の上限温度(昇温温度の上限値)として設定する。
【0022】
本開示において、アキラルな重合性液晶化合物は、メソゲン基の少なくとも一方の末端に重合性官能基を有する重合性液晶化合物であってもよいが、耐熱性を向上させる点から、メソゲン基の両末端に重合性官能基を有する重合性液晶化合物であることがより好ましい。1分子中に重合性官能基を2つ以上有する重合性液晶化合物は、塗膜の硬度や耐久性を向上させることができる。
1分子中に重合性官能基を2つ以上有する重合性液晶化合物の例としては、Nature vol 378, page467-469 (1995)に記載あるネマチックモノアクリレート2;特開2002-145830号公報の段落0013に記載の(17)~(28)、段落0018に記載の(a-1)~(a-35)、段落0022に記載の(a-36)~(a-63);国際公開2022/215751号公報の段落0336に記載の化74や段落0337に記載の化75;DIC Technical Review 2001 P38記載のM5、M6、M7などに記載の化合物から、適宜選択して用いることができる。
本開示に用いられるアキラルな重合性液晶化合物としては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物からなる群から選択される重合性液晶化合物が挙げられる。
【0023】
【化3】
(一般式(1)において、Arは、1,4-フェニレン基、又はナフタレン-2,6-ジイル基を表し、
L
1及びL
2はそれぞれ独立して、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CH
2-CH
2-OCO-、-OCO-CH
2-CH
2-、-CH
2-OCO-、-OCO-CH
2-、又は、単結合を表し、
A
1及びA
2はそれぞれ独立して、1,4-フェニレン基、1,4-シクロへキシレン基、又はナフタレン-2,6-ジイル基を表し、
前記Ar、A
1及びA
2はそれぞれ、1つ以上の置換基E
1によって置換されていても良く、当該置換基E
1は、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、テトラゾール基、炭素数1~7のアルキル基又は炭素数1~7のアルコキシ基であり、
R
1及びR
2はそれぞれ独立して、下記一般式(R-1)から選ばれる基を表し、
一般式(R-1): -L
r1-R
sp1-Z
1
一般式(R-1)中、L
r1は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、又は、単結合を表し、R
sp1は、1個の-CH
2-又は隣接していない2個以上の-CH
2-が各々独立して-O-、-COO-、又は-OCO-に置き換えられても良い炭素原子数1~20のアルキレン基又は単結合を表し、Z
1は重合性官能基を表す。
n1及びn2はそれぞれ独立して、0~2の整数を表すが、n1+n2は1以上であり、
L
1、L
2、A
1、及びA
2がそれぞれ複数存在する場合は、各々同一であっても異なっていても良い。)
【0024】
L1及びL2はそれぞれ独立して、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CH2-CH2-OCO-、-OCO-CH2-CH2-、-CH2-OCO-、-OCO-CH2-、又は、単結合を表すが、原料の入手容易さ及び合成の容易さの観点から、各々独立して-O-、-COO-、-OCO-、又は単結合を表すことが好ましく、複数存在する場合は各々同一であっても異なっていても良い。
【0025】
A1及びA2における1,4-シクロへキシレンは、L1、L2又はLr1と結合する炭素原子の立体配置の相違に基づく、シス型、トランス型の立体異性体が存在し得る。1,4-シクロへキシレンは、シス型であってもトランス型であっても、あるいはシス型とトランス型の異性体混合物であってもよいが、配向性が良好であることから、トランス型あるいはシス型であるのが好ましく、トランス型がより好ましい。
【0026】
n1及びn2はそれぞれ独立して、0~2の整数を表し、n1+n2は1以上であるが、2以上であってよく、3以下であってよい。
【0027】
一般式(R-1)中、Rsp1として具体的には、原料の入手容易さ及び合成の容易さの観点から、各々独立して、1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-COO-、-OCO-に置き換えられても良い炭素原子数1~12のアルキレン基又は単結合を表すことがより好ましく、各々独立して、炭素原子数1~12のアルキレン基又は単結合を表すことが更に好ましく、各々独立して、炭素原子数2~10のアルキレン基を表すことがより更に好ましく、各々独立して、炭素原子数2~6のアルキレン基を表すことが特に好ましく、複数存在する場合は各々同一であっても異なっていても良い。
【0028】
一般式(R-1)中、Lr1は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、又は、単結合を表すが、原料の入手容易さ及び合成の容易さの観点から、各々独立して-O-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、又は単結合を表すことが好ましく、複数存在する場合は各々同一であっても異なっていても良い。
【0029】
一般式(R-1)中、Z1は重合性官能基を表す。本開示に用いられる重合性官能基は、従来の重合性液晶化合物に使用される基が制限なく適用可能である。重合性官能基としては、例えば、オキシラン環、オキセタン環等の環状エーテル含有基、エチレン性二重結合含有基等が挙げられるが、中でも光硬化性を示し、取り扱い性に優れる点から、エチレン性二重結合含有基であることが好ましい。
Z1における重合性官能基は、それぞれ独立して下記式(Z-1)から式(Z-7)から選ばれる基を表すことが好ましい。なお、下記式(Z-1)から式(Z-7)において、*(アスタリスク)はRsp1との結合位置を示す。
【0030】
【化4】
(式(Z-1)~(Z-7)中、R
zはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、又はトリフルオロメチル基である。)
【0031】
重合方法として紫外線重合を行う場合には、Z1は、式(Z-1)、式(Z-2)、式(Z-3)、式(Z-5)、または式(Z-7)が好ましく、式(Z-1)、式(Z-3)、または式(Z-7)がより好ましく、式(Z-1)がさらに好ましく、式(Z-1)において、Rzが水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である場合がさらに好ましい。
【0032】
前記Ar、A1及びA2に置換されていてもよい置換基E1は、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、テトラゾール基、炭素数1~7のアルキル基又は炭素数1~7のアルコキシ基が挙げられる。
ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素が挙げられ、好ましくはフッ素、塩素または臭素であってよい。
炭素数1~7のアルキル基としては、直鎖若しくは分岐のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基等の直鎖アルキル基、i-プロピル基、i-ブチル基、t-ブチル基、2-メチルブチル基等の分岐アルキル基が挙げられ、炭素数1~5のアルキル基であってよく、炭素数1~3のアルキル基であってよい。
炭素数1~7のアルコキシ基としては、-ORa(ここでRaは炭素数1~7のアルキル基)で表され、-ORaにおけるRaの例としては、前記炭素数1~7のアルキル基と同様のものが挙げられ、炭素数1~5のアルコキシ基であってよく、炭素数1~3のアルコキシ基であってよい。
置換基E1の数は、前記Ar、A1及びA2の各々において、0~3であってよく、0~2であってよく、0又は1であってよい。
【0033】
重合性液晶化合物に含まれるメソゲン基、乃至、-(A1-L1)n1-Ar-(L2-A2)n2-としては、下記化学式(m-1)~(m-11)で表される部分構造が好ましく用いられ、中でも溶剤溶解性の点から、下記化学式(m-2)、(m-3)、(m-5)、(m-7)、(m-8)、及び(m-10)よりなる群から選択される少なくとも1種で表される部分構造が、好ましく用いられる。下記化学式(m-1)~(m-11)で表される部分構造におけるフェニレン基やナフチレン基における水素原子は、前記置換基E1によって置換されていても良い。
【0034】
【0035】
本開示で用いられるアキラルな重合性液晶化合物は、一般式(1)におけるR1-(A1-L1)n1-Ar-(L2-A2)n2-R2の具体例として、下記表のLc-1~Lc-120に示される構造を有し固体-液晶相転移温度が50℃~120℃である重合性液晶化合物を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
前記Lc-1~Lc-120で表される構造において、Rsp1におけるnは1~20を表すが、中でもRsp1におけるnは、2以上であることが好ましく、更に4以上であることが好ましく、一方で、12以下であることが好ましく、更に10以下であることが好ましく、6以下であってよい。
また、Z1において、式(Z-1)中のRzとしては、それぞれ独立して、中でも水素原子、又はメチル基であることが好ましく、更に水素原子であることが好ましい。
なお、前記Lc-1~Lc-120で表される構造において、R1とR2は、異なっていてもよく、例えばRsp1におけるnが異なっていてもよい。
【0040】
さらに、前記Lc-1~Lc-120で表される構造において、Arの、1,4-フェニレン基、又はナフタレン-2,6-ジイル基、A1及びA2の1,4-フェニレン基又はナフタレン-2,6-ジイル基はそれぞれ、1つ以上の前記置換基E1によって置換されていても良い。前記Ar、A1及びA2の1,4-フェニレン基又はナフタレン-2,6-ジイル基はそれぞれ、具体的には例えば、下記の構造を有していてもよい。
【0041】
【0042】
また、本開示において用いられる固体-液晶相転移温度が50℃~120℃のアキラルな重合性液晶化合物の固体-液晶相転移温度は、液晶を配向させる製造装置の負荷の点から、50℃~100℃であることが好ましく、50℃~90℃であってもよく、50℃~80℃であってもよい。
【0043】
また、本開示において用いられる固体-液晶相転移温度が50℃~120℃のアキラルな重合性液晶化合物は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、及びシクロヘキサノンからなる群から選択される少なくとも1種の溶剤に10質量%以上溶解することが、更に20質量%以上溶解することが、重合性コレステリック液晶組成物の溶剤溶解性が向上する点から好ましい。重合性液晶組成物の溶剤溶解性が向上すると、当該重合性コレステリック液晶組成物を用いて塗膜を形成する際に、均一な塗膜を形成しやすく、溶剤を乾燥させるための製造工程や製造装置の負荷が軽減される点、使用可能な基材の選択肢が広がる点、及び配向時のプロセスマージンが広がり、配向性がより均一に良好になる点から好ましい。
【0044】
なお、本開示においては、耐熱性を向上する点から、フルオレン骨格を有する重合性液晶化合物を含有しない。ここでフルオレン骨格を有する重合性液晶化合物とは、メソゲン基の少なくとも一方の末端に重合性官能基を有する重合性液晶化合物のうち、下記構造で表されるフルオレン骨格を含む化合物をいう。
【0045】
【化7】
(式中、W
11は独立して水素原子または置換基を表す。)
【0046】
本開示において用いられる固体-液晶相転移温度が50℃~120℃のアキラルな重合性液晶化合物は、従来公知の合成方法により合成可能であり、Makromol. Chem., 190, 3201-3215 (1989)、Makromol. Chem., 190, 2255-2268 (1989)、国際公開97/000600号公報、米国特許第5770107号明細書、特開2004-231638号公報などを適宜参照して合成可能である。また、アキラルな50℃~120℃のアキラルな重合性液晶化合物は、市販品から適宜選択して用いてもよい。
【0047】
本開示において用いられる固体-液晶相転移温度が50℃~120℃のアキラルな重合性液晶化合物は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本開示において用いられる固体-液晶相転移温度が50℃~120℃のアキラルな重合性液晶化合物の含有割合は、所望の光学異方性等を調整するために適宜調整されれば良く、限定されるものではないが、重合性コレステリック液晶組成物の固形分全量に対して、75質量%~99質量%であってよく、85質量%~96質量%であってよく90質量%~96質量%であってもよい。
【0048】
本開示の重合性コレステリック液晶組成物においては、本発明の効果が損なわれない範囲で、固体-液晶相転移温度が50℃~120℃のアキラルな重合性液晶化合物とは異なる液晶化合物を用いてもよい。固体-液晶相転移温度が50℃~120℃のアキラルな重合性液晶化合物とは異なる液晶化合物としては、従来公知の液晶化合物を用いることができる。本開示の重合性コレステリック液晶組成物においては、固体-液晶相転移温度が50℃~120℃のアキラルな重合性液晶化合物は、耐熱性を向上する点から、アキラルな液晶化合物全量に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であってよく、80質量%以上であってよく、100質量%であってよい。
【0049】
2.相転移温度が60℃~90℃のキラルな重合性化合物
キラルな重合性化合物は、カイラル剤としてコレステリック液晶相のらせん構造を誘起する機能を有する。キラルな重合性化合物(カイラル剤)は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物であってもよい。
キラルな重合性化合物は、液晶性を示しても示さなくてもよい。キラルな重合性化合物が液晶性を示す場合、相転移温度は固体-液晶相転移温度であり、キラルな重合性化合物が液晶性を示さない場合、相転移温度は固体-液体相転移温度である。
キラルな重合性化合物の固体-液晶相転移温度は、前記アキラルな重合性液晶化合物と同様に測定する。キラルな重合性化合物が液晶性を示さない場合の固体-液体相転移温度も、前記アキラルな重合性液晶化合物と同様に、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定する。測定用試料をDSCにセットし、昇温及び冷却を2回繰り返し、2回目の昇温で検出される吸熱開始温度(補外融解開始温度)をキラルな重合性化合物の相転移温度とする。測定温度の上限値は、化合物の重合開始温度を測定し、重合開始温度より低くするように決める。
【0050】
本開示においては、キラルな重合性化合物と重合性液晶化合物とがいずれも重合性官能基を有するため、キラルな重合性化合物と重合性液晶化合物との重合反応により、重合体を形成することができ、耐熱性を向上することができる。そのため、キラルな重合性化合物が有する重合性官能基は、重合性液晶化合物が有する重合性官能基と、同種の基であることが好ましい。すなわち、重合性液晶化合物が有する重合性官能基が、前記(Z-1)及び(Z-2)のような不飽和重合性基などのラジカル重合性基である場合は、キラルな重合性化合物が有する重合性官能基もラジカル重合性基であり、重合性液晶化合物が有する重合性官能基が、前記(Z-3)~(Z-7)のようなカチオン重合性基である場合は、キラルな重合性化合物が有する重合性官能基もカチオン重合性基であってよい。
【0051】
本開示において、相転移温度が60℃~90℃のキラルな重合性化合物の例としては、例えば、特開2015-135474の段落0127~0139に記載の相転移温度が60℃~90℃のキラルな重合性化合物、特開2015-127793の段落0209に記載の相転移温度が60℃~90℃のキラルな重合性化合物、特開2015-110728の段落0210に記載の相転移温度が60℃~90℃のキラルな重合性化合物などに記載の化合物から適宜選択して用いることができる。
本開示に用いられるキラルな重合性化合物としては、例えば、下記一般式(2)で表される化合物からなる群から選択される重合性化合物が挙げられる。
【0052】
【化8】
(一般式(2)において、
L
3及びL
4はそれぞれ独立して、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、又は、単結合を表し、
A
3及びA
4はそれぞれ独立して、1,4-フェニレン基、1,4-シクロへキシレン基、又はナフタレン-2,6-ジイル基を表し、
R
3及びR
4はそれぞれ独立して、下記一般式(R-2)から選ばれる基を表し、
一般式(R-2): -L
r2-R
sp2-Z
2
一般式(R-2)中、L
r2は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、又は、単結合を表し、R
sp2は、1個の-CH
2-又は隣接していない2個以上の-CH
2-が各々独立して-O-、-COO-、又は-OCO-に置き換えられても良い炭素原子数1~20のアルキレン基又は単結合を表し、Z
2は重合性官能基を表す。
置換基E
2及びE
3はそれぞれ独立して、炭素数1~3のアルキル基、又はハロゲンであり、
n3及びn4はそれぞれ独立して、1~3を表し、m1及びm2はそれぞれ独立して、0~2を表し、
L
3、L
4、A
3、及びA
4がそれぞれ複数存在する場合は、各々同一であっても異なっていても良い。)
【0053】
L3及びL4はそれぞれ独立して、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、又は、単結合を表すが、原料の入手容易さ及び合成の容易さの観点から、各々独立して-O-、-COO-、-OCO-、又は単結合を表すことが好ましく、複数存在する場合は各々同一であっても異なっていても良い。
【0054】
A3及びA4における1,4-シクロへキシレンは、A1及びA2における1,4-シクロへキシレンと同様であってよい。
また、一般式(R-2)における、Lr2、Rsp2、Z2は、それぞれ、前記一般式(1)の一般式(R-1)における、Lr1、Rsp1、Z1と同様であってよい。
【0055】
n3及びn4はそれぞれ独立して、1~3を表すが、相転移温度により適宜選択されてよい。
【0056】
置換基E2及びE3における、炭素数1~3のアルキル基、又はハロゲンとしては、前記置換基E1で挙げたものと同様のものが挙げられる。
m1及びm2はそれぞれ独立して、0~2を表すが、0又は1であってよい。
【0057】
本開示で用いられるキラルな重合性化合物は、一般式(2)における-(L3-A3)n3-R3及び-(L4-A4)n4-R4の具体例として、下記表のCh-1~Ch-60に示される構造を有し、相転移温度が60℃~90℃である重合性化合物を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
表において、n3及びn4=1のL3/L4がビナフタレン部位に結合している側であり、例えばCh-13は、n3及びn4=2であり、n3及びn4=2のA3/A4が、R3/R4に結合していることを表す。
【0058】
【0059】
前記Ch-1~Ch-60で表される構造において、Rsp2におけるnは1~20を表すが、中でもRsp2におけるnは、2以上であることが好ましく、更に4以上であることが好ましく、一方で、12以下であることが好ましく、更に10以下であることが好ましく、6以下であってよい。
また、Z2において、式(Z-1)中のRzとしては、それぞれ独立して、中でも水素原子、又はメチル基であることが好ましく、更に水素原子であることが好ましい。
なお、前記Ch-1~Ch-60で表される構造において、R3とR4は、異なっていてもよく、例えばRsp2におけるnが異なっていてもよい。
【0060】
また、一般式(2)で表される化合物において、ビナフタレンはそれぞれ、1つ以上の前記置換基E1によって置換されていても良く、具体的には例えば、下記の構造を有していてもよい。
【0061】
【0062】
また、本発明に用いられる相転移温度が60℃~90℃のキラルな重合性化合物の例としては、前記一般式(2)で表される重合性化合物に限定されず、例えば、下記の重合性化合物を用いることができる。
【0063】
【0064】
また、本開示において用いられる相転移温度が60℃~90℃のキラルな重合性液晶化合物の相転移温度は、加熱により液晶混合物を相転移させる製造装置の負荷の点から、60℃~80℃であってもよい。
【0065】
また、本開示において用いられる相転移温度が60℃~90℃のキラルな重合性液晶化合物は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、及びシクロヘキサノンからなる群から選択される少なくとも1種の溶剤に10質量%以上溶解することが、更に20質量%以上溶解することが、重合性コレステリック液晶組成物の溶剤溶解性が向上する点から好ましい。重合性液晶組成物の溶剤溶解性が向上すると、当該重合性コレステリック液晶組成物を用いて塗膜を形成する際に、均一な塗膜を形成しやすく、溶剤を乾燥させるための製造工程や製造装置の負荷が軽減される点、使用可能な基材の選択肢が広がる点、及び配向時のプロセスマージンが広がり、配向性がより均一に良好になる点から好ましい。
【0066】
本開示において用いられる相転移温度が60℃~90℃のキラルな重合性化合物は、従来公知の合成方法により合成可能であり、例えば、特開2005-263778号公報、GB2298202号公報、DE19843724号公報などを適宜参照して合成可能である。また、相転移温度が60℃~90℃のキラルな重合性化合物は、市販品から適宜選択して用いてもよい。
【0067】
本開示において用いられる相転移温度が60℃~90℃のキラルな重合性化合物は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本開示において用いられる相転移温度が60℃~90℃のキラルな重合性化合物の含有割合は、所望の光学異方性等を調整するために適宜調整されれば良く、限定されるものではないが、重合性コレステリック液晶組成物の固形分全量に対して、0.01質量%~15質量%であってよく、1質量%~10質量%であってよく、1質量%~5質量%であってもよい。
【0068】
本開示の重合性コレステリック液晶組成物においては、本発明の効果が損なわれない範囲で、相転移温度が60℃~90℃のキラルな重合性化合物とは異なるキラルな化合物を用いてもよい。相転移温度が60℃~90℃のキラルな重合性化合物とは異なるキラルな化合物としては、従来公知のコレステリック液晶組成物のカイラル剤を用いることができる。しかし、本開示の重合性コレステリック液晶組成物においては、相転移温度が60℃~90℃のキラルな重合性化合物は、耐熱性を向上する点から、キラルな化合物全量に対して、90質量%以上であることが好ましく、100質量%であってよい。
【0069】
3.光重合開始剤
本開示において光重合開始剤は、前記アキラルな重合性液晶化合物及びキラルな重合性化合物の重合性官能基に合わせて、従来公知の物の中から適宜選択して用いることができる。
前記アキラルな重合性液晶化合物及びキラルな重合性化合物の重合性官能基がラジカル重合性基である場合には、ラジカル重合開始剤を用い、重合性官能基がカチオン重合性基である場合には、カチオン重合開始剤を用いることができる。
【0070】
このような光重合開始剤の具体例としては、例えば、チオキサントン等を含む芳香族ケトン類、α-アミノアルキルフェノン類、α-ヒドロキシケトン類、アシルフォスフィンオキサイド類、オキシムエステル類、芳香族オニウム塩類、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物等が好適に挙げられ、中でも、塗膜の内部まで硬化し耐久性が向上するため、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系重合開始剤、α-ヒドロキシケトン系重合開始剤、及びオキシムエステル系重合開始剤よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0071】
アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤としては、例えばビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-フォスフィンオキサイド(例えば、商品名:イルガキュア819、BASF社製)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(商品名:Lucirin TPO:BASF社製等)等が挙げられる。
【0072】
また、α-アミノアルキルフェノン系重合開始剤としては、例えば、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(例えばイルガキュア907、BASF社製)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン(例えばイルガキュア369、BASF社製)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(イルガキュア379EG、BASF社製)等が挙げられる。
【0073】
また、α-ヒドロキシケトン系重合開始剤としては、例えば、2-ヒドロキシ-1-{4-〔4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル〕-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(例えば、商品名:イルガキュア127、BASF社製等)、2-ヒドロキシ-4’-ヒドロキシエトキシ-2-メチルプロピオフェノン(例えば、商品名:イルガキュア2959、BASF社製等)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(例えば、商品名:イルガキュア184、BASF社製等)、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}(例えば、商品名:ESACURE ONE、Lamberti社製等)等が挙げられる。
【0074】
オキシムエステル系重合開始剤としては、1.2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)](商品名:イルガキュアOXE-01、BASF製)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)(商品名:イルガキュアOXE-02、BASF製)、メタノン,エタノン,1-[9-エチル-6-(1,3-ジオキソラン,4-(2-メトキシフェノキシ)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)(商品名ADEKA OPT-N-1919、ADEKA社製)等が挙げられる。
【0075】
本開示において光重合開始剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本開示において光重合開始剤の含有割合は、重合性化合物の硬化を促進する点から、重合性コレステリック液晶組成物の固形分全量に対して、0.5質量%~10質量%であってよく、0.5質量%~8質量%であってよく、0.5質量%~5質量%であってもよい。
【0076】
4.レベリング剤
本開示の重合性コレステリック液晶組成物は、塗膜の表面張力を均一にし、塗工性を向上させる点から、さらにレベリング剤を含有してもよい。
塗膜の表面張力を均一にし、塗工性を向上させる点から、レベリング剤としては、非イオン性界面活性剤であってよく、非イオン性界面活性剤の種類としては、ビニル系、シリコーン系、フッ素系、炭化水素系界面活性剤等が挙げられる。
塗膜の表面張力を均一にし、塗工性を向上しさせる点から、本開示の重合性コレステリック液晶組成物に用いられるレベリング剤は、非フッ素系レベリング剤が好ましい。非フッ素系レベリング剤としては、ビニル系、シリコーン系、炭化水素系界面活性剤が挙げられる。非フッ素系レベリング剤を用いた場合には、反射率が上昇し、ヘイズが低減される傾向がみられる。
【0077】
ビニル系界面活性剤としては、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルビニルエーテル、ポリブタジエン、ポリオレフィン、ポリビニルエーテル等が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤としては、ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルシロキサン、特殊変性シロキサン、フッ素変性シロキサン、表面処理シロキサン等が挙げられる。
炭化水素系界面活性剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、パラフィン、流動パラフィン、塩素化ポリプロピレン、塩素化パラフィン、塩素化流動パラフィン等が挙げられる。
【0078】
レベリング剤は単独でも、二以上を混合して用いてもよい。
中でも、塗膜の表面張力を均一にし、塗工性を向上させる点から、非イオン性界面活性剤のビニル系界面活性剤が好ましく、ポリアルキルアクリレート(アクリルポリマー)あるいはポリアルキルメタクリレート等のアクリル系界面活性剤がより好ましい。
このようなアクリル系ポリマーやアクリル(コ)ポリマーを主成分としたアクリル系界面活性剤としては、ポリフローシリーズ(No.7、No.50E、No.50EHF、No.54N、No.75、No.77、No.85、No.85HF、No.90、No.90D-50、No.95、No.99C)、TEGO Flowシリーズ(300、370、ZFS460)、BYKシリーズ(350、352、354、355、356、358N、361N、381、392、394、3441、3440)などが挙げられる。
【0079】
本開示においてレベリング剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本開示においてレベリング剤を重合性コレステリック液晶組成物に含有する場合の含有割合は、重合性コレステリック液晶組成物の固形分全量に対して、0.0001質量%~0.5質量%であってよく、0.0002質量%~0.01質量%であってよく、0.0003質量%~0.05質量%であってもよい。
【0080】
5.溶剤
本開示の重合性コレステリック液晶組成物は、塗工性の点から、さらに溶剤を含有してもよい。溶剤としては、重合性コレステリック液晶組成物に含まれる各成分を溶解乃至分散し得る従来公知の溶剤の中から適宜選択すればよい。
溶剤としては、例えばエステル系溶剤、アミド系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、グリコールモノアルキルエーテル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、ハロゲン化脂肪族炭化水素系溶剤、脂環式炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、およびアセテート系溶剤等が挙げられる。
【0081】
エステル系溶剤の好ましい例としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、酢酸イソブチル等が挙げられる。
アミド系溶剤の好ましい例は、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
アルコール系溶剤の好ましい例としては、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール等が挙げられる。
エーテル系溶剤の好ましい例としては、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ビス(2-プロピル)エーテル、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、メチルテトラヒドロフラン、および、4-メチルテトラヒドロピラン等が挙げられる。
【0082】
グリコールモノアルキルエーテル系溶剤の好ましい例としては、エチレングリコールモノメチルエーテルおよびエチレングリコールモノブチルエーテル)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤の好ましい例としては、トルエン、アニソール、キシレン等が挙げられる。
ハロゲン化脂肪族炭化水素系溶剤の好ましい例としては、クロロホルム、モノクロロベンゼン等が挙げられる。
脂環式炭化水素系溶剤の好ましい例としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0083】
ケトン系溶剤の好ましい例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、およびメチルプロピルケトン等が挙げられる。
アセテート系溶剤の好ましい例としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、アセト酢酸メチル、および1-メトキシ-2-プロピルアセテート等が挙げられる。
【0084】
溶剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
塗工適性にかかる粘度や導電率の点からは、溶剤は、ケトン系溶剤、及び、エステル系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。
【0085】
本開示の重合性コレステリック液晶組成物は、耐熱性を向上する点から、溶剤は、前記キラルな重合性化合物の相転移温度±20℃の範囲内の沸点を有する溶剤を全溶剤中に30質量%以上含有することが好ましい。前記キラルな重合性化合物の相転移温度±20℃の範囲内の沸点を有する溶剤を全溶剤中に30質量%以上含有すると、塗工乾燥工程において、溶媒の蒸発とキラルな重合性化合物の相転移が競争的となることから、キラルな重合性化合物が膜内に均一に分布することとなって、耐熱性を向上することができる。
前記キラルな重合性化合物の相転移温度±20℃の範囲内の沸点を有する溶剤としては、中でも、前記キラルな重合性化合物の相転移温度以上前記キラルな重合性化合物の相転移温度+20℃以下の範囲内の沸点を有する溶剤であってよい。
なお、本開示において溶剤の沸点は、1気圧における沸点をいう。
【0086】
本開示の重合性コレステリック液晶組成物は、耐熱性を向上し、且つピッチを均一にする点から、溶剤は、前記キラルな重合性化合物の相転移温度±20℃の範囲内の沸点を有する溶剤からなる群から選択される少なくとも1種と、前記キラルな重合性化合物の相転移温度+20℃超過の沸点を有する溶剤からなる群から選択される少なくとも1種との混合溶剤であってもよく、溶剤は、前記キラルな重合性化合物の相転移温度以上前記キラルな重合性化合物の相転移温度+20℃以下の範囲内の沸点を有する溶剤からなる群から選択される少なくとも1種と、前記キラルな重合性化合物の相転移温度+20℃超過の沸点を有する溶剤からなる群から選択される少なくとも1種との混合溶剤であってもよい。前記キラルな重合性化合物の相転移温度+20℃超過の沸点を有する溶剤からなる群から選択される少なくとも1種の沸点の上限値は、205℃以下であってよい。
【0087】
本開示の重合性コレステリック液晶組成物が溶剤を含有するときの含有割合としては、塗布する際のその最適粘度を考慮して適宜設定されればよく、特に限定されない。溶剤は、溶剤を含む重合性コレステリック液晶組成物全量に対して、70質量%~85質量%であってよく、80質量%~85質量%であってよい。
【0088】
6.その他の成分
本開示の重合性液晶組成物は、効果を損なわない範囲で更に他の成分を含有してもよい。具体的には、他の成分として帯電防止剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、硬化助剤、アクリレート樹脂等を含有してもよい。これらは従来公知の材料を適宜選択して用いればよい。
【0089】
本開示の重合性液晶組成物は、従来公知の分析法を用いて各成分を分析可能である。
重合性液晶組成物から、アキラルな重合性液晶化合物と、キラルな重合性化合物との相転移温度を求める場合、最初にアキラルな重合性液晶化合物と、キラルな重合性化合物とを単離してから、各相転移温度を求めてもよい。
単離方法としては、例えば、シリカゲルクロマトグラフィー法、分取HPLC法、再沈殿法を用いることができる。
単離した化合物の相転移温度とNMR測定等の結果から、アキラルな重合性液晶化合物であるか、また、キラルな重合性化合物であるか、確認することができる。
単離した化合物(アキラルな重合性液晶化合物、キラルな重合性化合物)各々について、後述の実施例に記載するようにDSC測定を行うことで各化合物単体での吸熱ピーク(相転移温度)を求めることができる。化合物単体でのDSC測定の吸熱ピーク(相転移温度)と、重合性液晶組成物(混合状態)のDSC測定の吸熱ピークの検出温度を比較することで、重合性液晶組成物におけるアキラルな重合性液晶化合物とキラルな重合性化合物のピークを区別することができる。
【0090】
本実施形態の重合性コレステリック液晶組成物は、耐熱性が良好であることから種々の用途に好適に用いられる。本実施形態の重合性コレステリック液晶組成物は、例えば、後述する電磁波反射膜や、ディスプレイの輝度向上フィルムや、熱線遮蔽フィルムなどの各種光学部材用途に好適に用いられる。
【0091】
B.光学異方性膜
本開示の光学異方性膜は、前記本開示の重合性コレステリック液晶組成物の硬化膜である。
本開示の光学異方性膜は、前記本開示の重合性コレステリック液晶組成物を成膜し、前記成膜された前記重合性コレステリック液晶組成物中の重合性液晶化合物をねじれ配向させ、配向した前記重合性液晶化合物及びキラルな重合性化合物を重合することにより得られる重合体組成物である。配向した前記重合性液晶化合物及びキラルな重合性化合物を重合することにより、当該ねじれ配向は固定化される。
【0092】
前記本開示の重合性コレステリック液晶組成物の成膜は、配向処理された支持体上に、重合性コレステリック液晶組成物を均一に塗布して塗膜を形成してよい。
重合性コレステリック液晶組成物の塗布量や重合性コレステリック液晶組成物の濃度を適宜調整することにより、所望の光学異方性を与えるように膜厚を調整する。
【0093】
支持体としては、ガラス基材および樹脂基材が挙げられる。樹脂基材としては、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクロニトリル、メタクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等の樹脂を用いて形成された透明樹脂基材等が挙げられる。これらの支持体は、コロナ処理やプラズマ処理など従来公知の表面処理が施されたものであってもよく、また、積層体であってもよい。
【0094】
支持体上の配向処理としては、従来公知のラビング処理や光配向処理等による表面処理が挙げられ、水平配向膜として従来公知のもの適宜選択して用いることができる。
ラビング処理は支持基材に直接施されていてもよく、または支持基材上に予め重合体被膜を設け、その重合体被膜にラビング処理を施してもよい。
【0095】
ラビング法により配向規制力を付与する場合、水平配向膜には、ラビングにより配向規制力を発現するポリマーが用いられる。当該ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアミド及びこれらの誘導体が挙げられ、中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。
ラビング法による水平配向膜の形成方法は、従来公知の方法から適宜選択すればよい。例えば、前記支持体上に、上記ポリマーを含む塗膜を形成した後、公知のラビングローラ等を用いてラビングすることにより、水平配向膜を得ることができる。
【0096】
水平配向膜を光配向法により形成する場合、配向膜用組成物として、偏光を照射することにより配向規制力を発現する光配向性材料を含有する光配向性組成物が用いられる。当該光配向性材料としては、光二量化型材料であっても、光異性化型材料であってもよい。具体的には、例えば、シンナメート、クマリン、ベンジリデンフタルイミジン、ベンジリデンアセトフェノン、ジフェニルアセチレン、スチルバゾール、ウラシル、キノリノン、マレインイミド、または、シンナミリデン酢酸誘導体を有するポリマー等が挙げられ、中でも、シンナメート及びクマリンのうち少なくとも一方を有するポリマー、並びにこれらの誘導体が好ましく用いられる。このような光二量化型材料の具体例として、例えば、特開平9-118717号公報、特表平10-506420号公報、特表2003-505561号公報、WO2010/150748号公報、特開2015-151548号公報、及び、特開2021-103225号公報に記載された化合物を挙げることができる。
【0097】
光配向法による光配向膜の形成方法は、従来公知の方法から適宜選択すればよい。例えば、前記支持体上に、前記光配向性組成物を均一に塗布し、偏光を照射し、次いで、塗膜全面に光照射することにより、光配向膜を得ることができる。
【0098】
塗布方法は、所望の厚みで精度良く成膜できる方法であればよく、適宜選択すればよい。例えば、グラビアコート法、リバースコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、カーテンコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、エクストルージョンコート法、E型塗布方法などが挙げられる。
【0099】
また、前記成膜された前記重合性コレステリック液晶組成物中の重合性液晶化合物をねじれ配向させる。成膜された重合性コレステリック液晶組成物中の前記重合性液晶化合物が、配向可能な温度に調整し、加熱する。
当該加熱は、成膜する際の前記重合性コレステリック液晶組成物中に含まれる溶剤の乾燥と同時に行ってよい。
当該加熱処理により、重合性液晶化合物の配向性を有する主鎖部分を配向させて乾燥することができ、前記配向状態を維持した状態で固定化することができる。
配向可能な温度は、重合性コレステリック液晶組成物中の各物質に応じて異なるため、適宜調整する必要がある。本開示の重合性コレステリック液晶組成物は、固体-液晶相転移温度が50℃~120℃のアキラルな重合性液晶化合物と、相転移温度が60℃~90℃のキラルな重合性化合物とを含有し、耐熱性を向上する点から、加熱処理は、例えば、60℃以上120℃以下の範囲内で行うことが好ましい。
加熱手段としては、公知の加熱、乾燥手段を適宜選択して用いることができる。
また、加熱時間は、適宜選択されれば良いが、例えば、10秒以上2時間以内、好ましくは20秒以上30分以内の範囲内で選択される。
【0100】
前記配向工程の後に、前記重合性液晶化合物及びキラルな重合性化合物を重合する。硬化膜を形成する際の重合方法は、本開示の重合性液晶化合物等に含まれる重合性官能基に合わせて適宜選択することができる。前記配向工程において、少なくとも重合性液晶化合物の配向状態を維持した状態で固定化された塗膜に、例えば光照射することにより、重合性液晶化合物を重合することができ、前記重合性コレステリック液晶組成物の硬化膜である光学異方性膜を得ることができる。
【0101】
光照射に用いられる光の波長は特に限定されないが、光重合開始剤の吸収極大波長と可能な限り合致させることが好ましい。電子線、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)などを利用することができる。通常は、紫外線または可視光線を用いればよい。
波長の範囲は150~500nmである。好ましい範囲は220~450nmであり、より好ましい範囲は250~400nmである。光源の例は、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)である。光源の好ましい例は、メタルハライドランプやキセノンランプ、超高圧水銀ランプおよび高圧水銀ランプである。光源と重合性液晶層との間にフィルターなどを設置して特定の波長領域のみを通すことにより、照射光源の波長領域を選択してもよい。
光源から照射する光量は、塗膜面到達時で通常2~10000mJ/cm2である。光量の好ましい範囲は10~3000mJ/cm2であり、より好ましい範囲は100~2000mJ/cm2である。また、重合環境の雰囲気は窒素雰囲気、不活性ガス雰囲気、空気雰囲気のい ずれでもよいが、窒素雰囲気あるいは不活性ガス雰囲気が硬化性を向上させる観点から好ましい。
【0102】
前記支持体及び配向膜は、光学異方性膜が形成された後に、剥離されて除去されてもよい。
【0103】
このように得られる光学異方性膜は、後述する電磁波反射膜や、ディスプレイの輝度向上フィルムや、熱線遮蔽フィルムなどの各種光学部材などの各種光学部材用途に好適に用いられる。
【0104】
C.電磁波反射膜
本開示の電磁波反射膜は、重合性コレステリック液晶組成物の硬化膜である電磁波反射膜であって、
当該電磁波反射膜を90℃で72時間加熱した後において、
前記重合性コレステリック液晶組成物の硬化膜におけるコレステリック液晶のらせんピッチが下記式(A-1)、式(A-2)、及び式(A-3)を満たす。
P1-P1×0.05≦P2≦P1+P1×0.05 (A-1)
P1-P1×0.05≦P3≦P1+P1×0.05 (A-2)
P2-P2×0.05≦P1≦P2+P2×0.05 (A-3)
(ここで、P1は前記硬化膜の第1の表面の位置を含むらせんピッチの長さ、P2は前記硬化膜の前記第1の表面とは反対側の第2の表面の位置を含むらせんピッチの長さ、P3は前記硬化膜の層厚方向中央部の位置を含むらせんピッチの長さを表す。)
【0105】
本開示の電磁波反射膜は、当該電磁波反射膜を90℃で72時間加熱した後において、前記重合性コレステリック液晶組成物の硬化膜におけるコレステリック液晶のらせんピッチが前記式(A-1)、式(A-2)及び式(A-3)を満たすことから、耐熱性が高く、膜厚方向のらせんピッチの均一性が高い電磁波反射膜である。
【0106】
コレステリック液晶相は、特定の波長において選択反射性を示すことが知られている。
一般的なコレステリック液晶相において、選択反射の中心波長(選択反射中心波長)λは、コレステリック液晶相におけるらせんピッチPに依存し、コレステリック液晶相の平均屈折率nとλ=n×Pの関係に従う。そのため、このらせんピッチを調節することによって、選択反射中心波長を調節することができる。
コレステリック液晶相の選択反射中心波長は、らせんピッチが長いほど、長波長になる。
なお、らせんピッチとは、すなわち、コレステリック液晶相のらせん構造1ピッチ分(らせんの周期)であり、言い換えれば、らせんの巻き数1回分であり、すなわち、コレステリック液晶相を構成する液晶化合物のダイレクター(棒状液晶化合物であれば長軸方向)が360°回転するらせん軸方向の長さである。
【0107】
コレステリック液晶相のらせんピッチは、重合性コレステリック液晶組成物の硬化膜を形成する際に、アキラルな液晶化合物と共に用いるキラルな化合物(カイラル剤)の種類および添加濃度に依存する。従って、これらを調節することによって、所望のらせんピッチを得ることができる。
【0108】
また、コレステリック液晶相は、特定の波長において左右いずれかの円偏光に対して選択反射性を示す。反射光が右円偏光であるか左円偏光であるかは、コレステリック液晶相のらせんのねじれ方向による。コレステリック液晶相による円偏光の選択反射は、コレステリック液晶層のらせんのねじれ方向が右の場合は右円偏光を反射し、らせんのねじれ方向が左の場合は左円偏光を反射する。
なお、コレステリック液晶相の旋回の方向は、コレステリック液晶層を形成するアキラルな液晶化合物の種類および/またはキラルな化合物(カイラル剤)の種類によって調節できる。
【0109】
図1は、本開示の電磁波反射膜の断面を走査透過電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope)を用いて観察した際に見られる明部Bと暗部Dとの縞模様の一例を模式的に表した図である。
図1に示すように、重合性コレステリック液晶組成物の硬化膜である本開示の電磁波反射膜10の断面では、通常、明部B(明部Bが成す連続線)と暗部D(暗部Dが成す連続線)とを交互に積層した層状構造が観察される。
図1に示すようなSTEM断面において、明部Bおよび暗部Dは、重合性コレステリック液晶組成物の硬化膜中で液晶化合物がらせん状に配向されて厚み方向(
図1中上下方向)の位置によって液晶化合物の向きが異なることに起因して観察される。従って、重合性コレステリック液晶組成物の硬化膜のSTEM断面において、らせん構造1ピッチの長さ(らせんの周期)は、明部B、暗部D、明部B、及び暗部Dの4層分の厚みとなる。
【0110】
本開示の電磁波反射膜10は、当該電磁波反射膜を90℃で72時間加熱した後において、前記重合性コレステリック液晶組成物の硬化膜におけるコレステリック液晶のらせんピッチが下記式(A-1)、式(A-2)、及び式(A-3)を満たす。従って、本開示の電磁波反射膜10は、90℃で72時間加熱する前も、通常、前記重合性コレステリック液晶組成物の硬化膜におけるコレステリック液晶のらせんピッチが下記式(A-1)、式(A-2)、及び式(A-3)を満たす。
P1-P1×0.05≦P2≦P1+P1×0.05 (A-1)
P1-P1×0.05≦P3≦P1+P1×0.05 (A-2)
P2-P2×0.05≦P1≦P2+P2×0.05 (A-3)
ここで、P1は前記硬化膜の第1の表面S1の位置を含むらせんピッチの長さ、P2は前記硬化膜の前記第1の表面S1とは反対側の第2の表面S2の位置を含むらせんピッチの長さ、P3は前記硬化膜の層厚方向中央部Cの位置を含むらせんピッチの長さを表す。
【0111】
本開示の電磁波反射膜におけるらせんピッチは、電磁波反射膜の断面を走査透過電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope)を用いて観察して求める。
具体的には、電磁波反射膜(光学異方性膜)のサンプルの中央部を短冊状(2mm×5mm)に切り出し後、熱硬化性樹脂にて包埋した後に、ミクロトームで切削して平滑な断面を切り出した超薄切片(厚さ80nm)を作製する。得られた断面の超薄切片を、STEMにより、以下の測定条件(検出器 TE、加速電圧30kV、エミッション電流10μA、倍率5000倍)にて観察し、電磁波反射膜(光学異方性膜)の断面画像を得る。STEMを用いた断面画像において、暗部D-明部B-暗部D-明部B、もしくは明部B-暗部D-明部B-暗部Dで1ピッチであり、断面画像の解析ソフト(日立ハイテク製、データマネージャー)により1ピッチを測長する。
測長は1視野について、ピッチ長P1、P2、P3にあたる箇所を各々3回測長し、3回測長の平均値をP1、P2、P3とする。ピッチの長さは解析ソフトを用いて暗部D-明部B-暗部D-明部B、もしくは明部B-暗部D-明部B-暗部Dに該当する箇所に解析ソフトで直線を引き、その直線の長さを解析ソフト上で計算することで求める。
【0112】
本開示の電磁波反射膜は、波長反射帯が熱により変化しないことが望ましいことから、90℃で72時間加熱する前及び後において、前記重合性コレステリック液晶組成物の硬化膜におけるコレステリック液晶のらせんピッチが下記式(A’-1)、式(A’-2)、及び式(A’-3)を満たすことがより好ましく、下記式(A”-1)、式(A”-2)、及び式(A”-3)を満たすことがさらに好ましい。
P1-P1×0.03≦P2≦P1+P1×0.03 (A’-1)
P1-P1×0.03≦P3≦P1+P1×0.03 (A’-2)
P2-P2×0.03≦P1≦P2+P2×0.03 (A’-3)
P1-P1×0.02≦P2≦P1+P1×0.02 (A”-1)
P1-P1×0.02≦P3≦P1+P1×0.02 (A”-2)
P2-P2×0.02≦P1≦P2+P2×0.02 (A”-3)
【0113】
また、本開示の電磁波反射膜は、耐熱性の点から、下記式(B)を満たすことが好ましい。
式(B)
ΔPave={|(P1b-P1a)|/P1b+|(P2b-P2a)|/P2b+|(P3b-P3a)|/P3b}/3 ≦ 0.05
(ここで、P1bは90℃で72時間加熱する前の前記硬化膜の第1の表面S1の位置を含むらせんピッチの長さ、P1aは90℃で72時間加熱後の前記硬化膜の第1の表面S1の位置を含むらせんピッチの長さ、P2bは90℃で72時間加熱する前の前記硬化膜の前記第1の表面S1とは反対側の第2の表面S2の位置を含むらせんピッチの長さ、P2aは90℃で72時間加熱後の前記硬化膜の前記第1の表面S1とは反対側の第2の表面S2の位置を含むらせんピッチの長さ、P3bは90℃で72時間加熱する前の前記硬化膜の層厚方向中央部Cの位置を含むらせんピッチの長さ、P3aは90℃で72時間加熱後の前記硬化膜の層厚方向中央部Cの位置を含むらせんピッチの長さを表す。)
【0114】
前記ΔPaveは、0.04以下であってよく、0.03以下であってよく、0.02以下であってよく、0.01以下であってよい。
【0115】
図1の電磁波反射膜10においては、明部B(明部Bが成す連続線)および暗部D(暗部Dが成す連続線)の縞模様(層状構造)は、前記硬化膜の表面(形成面)と平行となるように形成されている。このような態様の場合、電磁波反射膜10は、鏡面反射性を示す。すなわち、電磁波反射膜10の法線方向から光が入射される場合、法線方向に光は反射される。
【0116】
本開示の電磁波反射膜は、反射波長315nm~1000nmにおいて、反射率が42%以上であることが好ましく、45%以上であることがより好ましい。
本開示において、反射波長と反射率は、分光光度計を用いて測定する。
より具体的には、電磁波反射膜が樹脂基板を有する場合は剥離して、電磁波反射膜を粘着付きガラスに転写して測定サンプルとする。ガラスに転写した測定サンプルについては、裏面からの反射光が測定値に影響を与えないように、ガラス面に黒色テープを貼り付けて測定する。
反射率測定は、JIS R3106-2019に準じて実施し、分光光度計により測定波長380nmから780nmの反射スペクトルを測定する。なお、硫酸バリウム白板の正反射光をベースラインとし、サンプルの測定位置はサンプルの中央位置とする。
得られたスペクトルを紫外可視分光光度計用ソフトウェアにて解析し、横軸反射波長、縦軸反射率の線グラフを作成する。作成した線グラフのピークトップの位置の反射波長と反射率を測定値として採用する。なお、ピーク形状が台形となった場合は台形上辺の中央位置をピークトップとする。
【0117】
本開示の電磁波反射膜は、ヘイズが1.5%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましい。
本開示において、ヘイズは、JIS K7361-1:2000に準拠して、ヘイズメータを用いて測定する。ヘイズ値は、電磁波反射膜を50mm×50mmの大きさに切り出した後、電磁波反射膜1つに対して3回測定し、3回測定して得られた値の平均値とする。「3回測定する」とは、同じ場所を3回測定するのではなく、異なる3箇所を測定する。
【0118】
本開示の電磁波反射膜は、重合性コレステリック液晶組成物の硬化膜であり、重合性液晶化合物とカイラル剤を含む重合性コレステリック液晶組成物を適宜選択して製造されればよく、本開示の電磁波反射膜は、前記本開示の重合性コレステリック液晶組成物の硬化膜であってよい。
【0119】
本開示の電磁波反射膜の厚さは目的毎に異なるが、目安として1μm~15μmが挙げられ、好ましい範囲は1μm~10μmであり、さらに好ましい範囲は2μm~6μmである。
【0120】
本開示の電磁波反射膜が、重合性コレステリック液晶組成物の硬化膜であることは、電磁波反射膜から材料を採取し分析することで確認することができる。分析方法としては、NMR、IR、GC-MS、XPS、TOF-SIMSおよびこれらの組み合わせた方法を適用することができる。
【0121】
本開示の電磁波反射膜は、重合性コレステリック液晶組成物を用いて、前記本開示の光学異方性膜の製造と同様に製造することができる。
【0122】
本開示の電磁波反射膜は、電磁波反射膜を含む積層体であってよい。
図2~
図3は、各々本開示の電磁波反射膜を含む積層体の1実施形態を示す。
図2の例に示される電磁波反射膜を含む積層体100の1実施形態は、支持体20上に配向膜30と電磁波反射膜10がこの順に積層されている積層体である。
図3の例に示される電磁波反射膜を含む積層体100の1実施形態は、支持体20’上に電磁波反射膜10が積層されている積層体である。
図3の例に示される電磁波反射膜を含む積層体100は支持体20’の電磁波反射膜10側表面に配向規制力を発現する配向処理がされていてもよい。
前記積層体における支持体や配向膜、配向処理については、前記光学異方性膜で説明したものと同様であってよい。
また前記積層体において、電磁波反射膜は単層であってもよいし、2層以上の積層体であってもよい。
【実施例】
【0123】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明は以下の実施例に限定され制限されるものではない。
なお、以下実施例10については、参考例とする。
【0124】
<固体-液晶相転移温度又は固体-液体相転移温度の測定方法>
示差走査熱量計(DSC)(島津サイエンス製、DSC-60)を用いた次の方法にて測定した。なお、測定はJIS K7121-1987の8に準じて実施した。相転移温度はJIS K7121-1987の9.1(2)に従った補外融解開始温度(Tim)の値を採用した。ただし、溶媒を留去して試料を調製する方法と、昇温と冷却プログラム(加熱速度、冷却速度、加熱開始温度、終了温度)は以下のように行った。
まず、ロータリーエバポレータを用いて液晶組成物から溶媒を留去し、測定用試料を得た。測定用試料5mgをアルミサンプルパンに封入後、DSCにセットし、窒素雰囲気下において25℃から-25℃/分の速度で、-10℃まで冷却し、-10℃で15分維持した。その後、昇温1回目として、10℃/分の速度で-10℃から150℃まで昇温し、150℃で1分維持した。冷却1回目として、-10℃/分の速度で150℃から-10℃まで冷却し、-10℃で10分維持した。その後、昇温2回目として、10℃/分の速度で-10℃から150℃まで昇温し、150℃で1分維持した。冷却2回目として、-10℃/分の速度で150℃から25℃まで冷却した。2回目の昇温で検出される吸熱開始温度、すなわち、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、融解ピークの低温側の曲線にこう配が最大になる点で引いた接線の交点の温度である補外融解開始温度(Tim)を相転移温度とした。
【0125】
実施例及び比較例で使用した化合物を以下に示す。
(1-A);固体-液晶相転移温度:80℃
(1-B);固体-液晶相転移温度:54℃
(1-C);固体-液晶相転移温度:120℃
(C1-a);フルオレン骨格を有する重合性液晶化合物、固体-液晶相転移温度:84℃
(2-A);相転移温度:76℃
(2-B);相転移温度:60℃
(2-C);相転移温度:76℃(上記2-Aの光学異性体)
(2-D);相転移温度:88℃
(C2-a);相転移温度:110℃
(C2-b);相転移温度:138℃
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
前記化合物(1-A)は東京化成工業株式会社より市販されている試薬を用いた。
前記化合物(1-B)はBASF社より市販されているPaliocolorLC242を用いた。
前記化合物(1-C)は、次の方法で合成した。化合物1(5.0g)、トリエチルアミン塩酸塩(TEA・HCl)(7.7g)、アジ化アトリウム(2.0g)をトルエン20mLに加えて110℃で5時間撹拌した。反応液を60℃まで冷却した後に水30mLを加え、さらに15分撹拌下後に静置した後に分液作業により水層を回収した。回収した水層にpHが4になるまで35%塩酸を加え、生じた固体をろ過により回収した。回収した固体を40℃で減圧乾燥し、化合物2(6.2g)を得た。化合物1(1.5g)と特願2019-116420を参照して合成した化合物3(7.7g)をクロロホルム15mLに加えた後、15℃でジメチルアミノピリジン(0.01g)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(3.0g)を加えて、4時間撹拌した。次いで、メタノール500mLを加えて析出した固体をろ過にて回収した。回収した固体を40℃で減圧乾燥することで、化合物(1-C)を得た。
【0130】
【0131】
前記化合物(C1-a)は、特開2003-238491号公報に記載の方法に従って合成した。
【0132】
前記化合物(2-A)、化合物(2-B)及び化合物(2-C)は、特開2005-263778号公報、米国特許第5886242号明細書、英国特許出願公開第2298202号明細書に記載の方法を組み合わせた方法で合成した。前記化合物(2-A)、化合物(2-B)において、ビナフタレン部位はR体を用いた。前記化合物(2-C)において、ビナフタレン部位はS体を用いた。
【0133】
前記化合物(2-D)は、次の方法で合成した。
化合物4(1.1g)と4-ヒドロキシ安息香酸(1.0g)を塩化メチレン10mLに加えた後、15℃でジメチルアミノピリジン(0.01g)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(1.4g)を加えて、1時間撹拌した。反応液から溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで下記化合物5(2.6g)を取得した。次いで、化合物5(2.6g)とメルク社(シグマアルドリッチ)から入手した化合物6(4.8g)を塩化メチレン20mLに加えた後、15℃でジメチルアミノピリジン(0.01g)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(1.3g)を加えて、4時間撹拌した。次いで、メタノール200mLを加えて、析出した固体をろ過にて回収した。回収した固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(2-D)(5.6g)を取得した。
【0134】
【0135】
前記化合物(C2-a)は、BASF社より市販されているPaliocolorLC756を用いた。
【0136】
前記化合物(C2-b)は、以下の方法で合成した。
下記化合物7(10.0g)と下記化合物8(15.0g)を塩化メチレン100mLに加えた後、15℃でジメチルアミノピリジン(0.1g)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(8.0g)を加えて、17時間撹拌した。次いで、メタノール500mLを加えて、析出した固体をろ過にて回収した。回収した固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、下記化合物9(0.5g)を取得した。下記化合物3(0.5g)と下記化合物4(0.1g)を塩化メチレン10mLに加えた後、15℃でジメチルアミノピリジン(0.01g)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(0.1g)を加えて、5時間撹拌した。反応混合液を減圧濃縮した後に、濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(C2-b)(0.1g)を取得した。
【0137】
【0138】
[実施例1]
(1)重合性コレステリック液晶組成物の製造
アキラルな重合性液晶化合物(化合物(1-A))24.5質量部、キラルな重合性化合物(化合物(2-A))0.5質量部、光重合開始剤(Omnirad907、東京化成工業株式会社製)1質量部、及びレベリング剤(アクリル系界面活性剤、ポリフローNo.75、共栄社化学製)0.01質量部を、メチルエチルケトン(MEK)24質量部及びメチルイソブチルケトン(MIBK)50質量部に溶解させ、重合性コレステリック液晶組成物1を製造した。
【0139】
(2)電磁波反射膜(光学異方性膜)の製造
(2-1)光配向膜の形成
特開2021-103225の実施例1の光配向膜材料と同様にして、光配向膜用組成物を調製した。
PET基板(東洋紡(株)製、E5100、厚さ38μm)の片面上に、前記光配向膜用組成物を、硬化後の膜厚が0.2μmとなるようにスピンコートにより塗布し、90℃のオーブンで2分間加熱して乾燥及び熱硬化を行い、硬化塗膜を形成した。その後、この硬化塗膜表面にHg-Xeランプおよびグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線を基板法線から垂直方向に露光量100mJ/cm2で照射することで、配向膜を形成した。
【0140】
(2-2)電磁波反射膜(光学異方性膜)の作製
形成した配向膜上に、前記重合性コレステリック液晶組成物1を、硬化後の膜厚が
約4μmになるように塗布し、重合性液晶組成物を成膜した。その後、当該膜を、90℃にて2分間オーブン中で乾燥させた後に、窒素雰囲気下でFusion社製のHバルブを用いて紫外線(UV)を照射量400mJ/cm2で照射して電磁波反射膜(光学異方性膜)を形成した。
【0141】
[実施例2~15、比較例1~3]
(1)重合性コレステリック液晶組成物の製造
実施例1において、アキラルな重合性液晶化合物、キラルな重合性化合物、溶剤、及び、レベリング剤の少なくとも1種の種類及び/又は量を下記表5に従って変更した以外は、実施例1と同様にして、重合性コレステリック液晶組成物2~15、及び比較重合性コレステリック液晶組成物1~3を得た。
(2)電磁波反射膜(光学異方性膜)の製造
実施例1において、重合性コレステリック液晶組成物1の代わりに、重合性コレステリック液晶組成物2~15及び比較重合性コレステリック液晶組成物1~3をそれぞれ用い、乾燥温度を表5に記載した温度とした以外は、実施例1と同様にして、電磁波反射膜(光学異方性膜)2~15及び比較電磁波反射膜(光学異方性膜)1~3を得た。
【0142】
[評価]
<サンプル作成>
各実施例及び各比較例で得られた電磁波反射膜(光学異方性膜)のPET基板を剥離して、電磁波反射膜(光学異方性膜)及び配向膜を粘着付きガラス(コーニング製EagleXGガラス(50mm×50mm)にリンテック製粘着剤CLEAR-PET50-06-50を貼り合わせたもの)に転写したサンプルを用いて、反射率とヘイズ測定を行った。ガラスに転写したサンプルにおいて電磁波反射膜も50mm×50mmの大きさに切り出した。
【0143】
<反射波長と反射率の測定>
各実施例及び各比較例で得られた電磁波反射膜(光学異方性膜)について、分光光度計(UV2700、島津製作所製)を用いて、反射波長と反射率を測定した。
測定するサンプルについては、裏面からの反射光が測定値に影響を与えないように、ガラスに転写したサンプルのガラス側全面に黒色テープ(ヤマト製ビニールテープ NO200-50-21)を貼りつけた。
反射率測定はJIS R3106-2019に準じて実施し、測定波長380nmから780nmの反射スペクトルを測定した。なお、硫酸バリウム白板の正反射光をベースラインとし、サンプルの測定位置はサンプルの中央位置とした。測定回数は1回とした。
得られたスペクトルをUVProbe(島津製作所製、紫外可視分光光度計用ソフトウェア)にて解析し、横軸反射波長、縦軸反射率の線グラフを作成した。作成した線グラフのピークトップの位置の反射波長と反射率を測定値として採用した。なお、ピーク形状が台形となった場合は台形上辺の中央位置をピークトップとした。
反射率が5%以上あればコレステリック液晶相を形成していると判断される。
【0144】
<らせんピッチの測定>
各実施例及び各比較例で得られた電磁波反射膜(光学異方性膜)の断面について、ミクロトームで超薄切片を作製し、走査透過電子顕微鏡(STEM、日立ハイテクノロジーズ社製、S-4800)で観察し、らせんピッチの長さを測定した。
具体的には、電磁波反射膜(光学異方性膜)のフィルムサンプルの中央部を短冊状(2mm×5mm)に切り出し後、Luft法に準じて調製した熱硬化性樹脂(A液(ナカライテスク製ルベアック812を62mLと富士フィルム和光製ドデセニルコハク酸無水物(DDSA)を100mL)とB液(メルク製メチルナジック酸無水物(MNA)とDMP30(商品名、日新EMより入手)をA液:B液を7:3(体積比)で混合)により、80℃で6時間硬化させることにより包埋した後に、ミクロトームで切削して平滑な断面を切り出した超薄切片(厚さ80nm)を作製した。得られた断面の超薄切片を、STEMにより、以下の測定条件(検出器 TE、加速電圧30kV、エミッション電流10μA、倍率5000倍)にて観察し、電磁波反射膜(光学異方性膜)の断面画像を得た。STEMを用いた断面画像において、暗部D-明部B-暗部D-明部B、もしくは明部B-暗部D-明部B-暗部Dで1ピッチであり、断面画像の解析ソフト(日立ハイテク製、データマネージャー)により1ピッチを測長した。
測長は1視野について、ピッチ長P1、P2、P3にあたる箇所を各々n=3で測長し、平均値をP1、P2、P3とした。ピッチの長さは解析ソフトを用いて暗部D-明部B-暗部D-明部B、もしくは明部B-暗部D-明部B-暗部Dに該当する箇所に解析ソフトで直線を引き、その直線の長さを解析ソフト上で計算することで求めた。
【0145】
<耐熱性試験>
得られた電磁波反射膜(光学異方性膜)を、オーブンを用いて、90℃で72時間加熱した。
90℃で72時間加熱後の電磁波反射膜(光学異方性膜)について、前述のようにらせんピッチの測定を行った。
(らせんピッチ変動の評価基準)
A:下記式(A”-1)、式(A”-2)、及び式(A”-3)を満たす。
P1-P1×0.02≦P2≦P1+P1×0.02 (A”-1)
P1-P1×0.02≦P3≦P1+P1×0.02 (A”-2)
P2-P2×0.02≦P1≦P2+P2×0.02 (A”-3)
B:前記式(A”-1)、式(A”-2)、及び式(A”-3)を満たさないが、下記式(A-1)、式(A-2)、及び式(A-3)を満たす
P1-P1×0.05≦P2≦P1+P1×0.05 (A-1)
P1-P1×0.05≦P3≦P1+P1×0.05 (A-2)
P2-P2×0.05≦P1≦P2+P2×0.05 (A-3)
C:前記式(A-1)、式(A-2)、及び式(A-3)を満たさない。
【0146】
<ヘイズの測定>
各実施例及び各比較例で得られた電磁波反射膜(光学異方性膜)について、JIS K7361-1:2000に準拠して、ヘイズメータ(HM-150N、MURAKAMI COLORLAB製)を用いて測定した。ヘイズ値は、50mm×50mmの大きさに切り出した電磁波反射膜をガラスに転写したサンプルを用いて、ガラス基板側が光源側となるように設置し、電磁波反射膜1つに対して3回測定し、3回測定して得られた値の平均値とした。「3回測定する」とは、同じ場所を3回測定するのではなく、異なる3箇所を測定した。
【0147】
【表5】
なお、表中の溶剤及びレベリング剤の略語は以下のとおりである。
MEK:メチルエチルケトン(沸点80℃)
MIBK:メチルイソブチルケトン(沸点116℃)
CPN:シクロペンタノン(沸点131℃)
EtOAc:酢酸エチル(沸点77℃)
Me-THF:2-メチルテトラヒドロフラン(沸点78℃)
4-Me-THP:4-メチルテトラヒドロピラン(沸点105℃)
【符号の説明】
【0148】
10 電磁波反射膜
20 支持体
20’ 支持体
30 配向膜
100 積層体
【要約】 (修正有)
【課題】耐熱性に優れる光学異方性膜を形成可能な重合性コレステリック液晶組成物、当該重合性コレステリック液晶組成物を用いた、電磁波反射膜等の光学異方性膜を提供する。
【解決手段】固体-液晶相転移温度が50℃~120℃のアキラルな重合性液晶化合物と、相転移温度が60℃~90℃のキラルな重合性化合物と、光重合開始剤とを含有し、フルオレン骨格を有する重合性液晶化合物を含有しない、重合性コレステリック液晶組成物。
【選択図】なし