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特許7559952無線通信の干渉回避システム、干渉回避方法および干渉回避装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】無線通信の干渉回避システム、干渉回避方法および干渉回避装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 5/16 20060101AFI20240925BHJP
   H04W 74/08 20240101ALI20240925BHJP
【FI】
H04L5/16
H04W74/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023534471
(86)(22)【出願日】2021-07-13
(86)【国際出願番号】 JP2021026294
(87)【国際公開番号】W WO2023286153
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古谷 博幸
(72)【発明者】
【氏名】宮城 利文
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 正文
(72)【発明者】
【氏名】福園 隼人
(72)【発明者】
【氏名】小野 優
(72)【発明者】
【氏名】栗山 圭太
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-252557(JP,A)
【文献】特開2020-155955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 5/16
H04W 74/08
IEEE Xplore
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先発送信のTDD無線機と、
前記先発送信のTDD無線機と隣接して配置される次発送信のTDD無線機とを含み、
前記次発送信のTDD無線機は、プロセッサユニットを備え、
当該プロセッサユニットは、
前記先発送信のTDD無線機から発せられた回り込み信号を受信する処理と、
前記回り込み信号に基づいて、前記先発送信のTDD無線機が当該次発送信のTDD無線機と同種のものであるか異種のものであるかを判別する異同判別処理と、
前記同種の判別が得られた場合に、既知の送信周期に従って、前記先発送信のTDD無線機が用いる周期と同期をとったタイミングで送信波を発する処理と、
前記異種の判別が得られた場合に、前記先発送信のTDD無線機からの信号が観測されなくなった後に通信を再開するキャリアセンスの手法で前記送信波を発する処理と、
を実行する無線通信の干渉回避システム。
【請求項2】
前記異同判別処理は、前記回り込み信号の周期が既知の周期と一致するか否かに基づいて、前記同種の判別または前記異種の判別を下す処理を含む請求項1に記載の干渉回避システム。
【請求項3】
前記プロセッサユニットは、前記次発送信のTDD無線機が送出する前記送信波に、既知の強弱パターンを重畳させる処理を更に実行し、
前記先発送信のTDD無線機が前記次発送信のTDD無線機と同種のものである場合は、前記回り込み信号に前記既知の強弱パターンが重畳され、
前記異同判別処理は、
前記回り込み信号に重畳されている強弱パターンを読み取るパターン解析処理と、
読み取った前記強弱パターンが、前記既知の強弱パターンと一致するか否かに基づいて、前記同種の判別または前記異種の判別を下す処理と、
を含む請求項1に記載の干渉回避システム。
【請求項4】
前記次発送信のTDD無線機は、
外部からの送信波を受信するアンテナと、
前記アンテナが受信した信号に自動ゲイン制御を施すAGC回路と、を備え、
前記パターン解析処理は、前記アンテナに前記回り込み信号が受信されている際の、前記AGC回路の反応に基づいて前記強弱パターンを読み取る処理を含む請求項3に記載の干渉回避システム。
【請求項5】
前記AGC回路には、通信波として想定される送信波の強度を処理するに足るゲイン制御能力が付与されており、
前記回り込み信号の最大強度は、当該ゲイン制御能力の上限を超える値である請求項4に記載の干渉回避システム。
【請求項6】
前記プロセッサユニットは、
前記同種の判別が得られた場合に、
前記既知の送信周期に従って、前記先発送信のTDD無線機の無信号期間を判別する処理と、
前記無信号期間の判別が否定される場合に、前記AGC回路を不感状態とする処理と、
を更に実行する請求項4または5に記載の干渉回避システム。
【請求項7】
先発送信のTDD無線機と、当該先発送信のTDD無線機と隣接して配置される次発送信のTDD無線機との間に生ずる無線通信の干渉を回避するための干渉回避方法であって、
前記次発送信のTDD無線機が、前記先発送信のTDD無線機から発せられた回り込み信号を受信するステップと、
前記回り込み信号に基づいて、前記先発送信のTDD無線機が当該次発送信のTDD無線機と同種のものであるか異種のものであるかを判別するステップと、
前記同種の判別が得られた場合に、前記次発送信のTDD無線機が、既知の送信周期に従って、前記先発送信のTDD無線機が用いる周期と同期をとったタイミングで送信波を発するステップと、
前記異種の判別が得られた場合に、前記次発送信のTDD無線機が、前記先発送信のTDD無線機からの信号が観測されなくなった後に通信を再開するキャリアセンスの手法で前記送信波を発するステップと、
を含む無線通信の干渉回避方法。
【請求項8】
先発送信のTDD無線機と隣接して配置される次発送信のTDD無線機を含む無線通信の干渉回避装置であって、
プロセッサユニットを備え、
当該プロセッサユニットは、
前記先発送信のTDD無線機から発せられた回り込み信号を受信する処理と、
前記回り込み信号に基づいて、前記先発送信のTDD無線機が当該次発送信のTDD無線機と同種のものであるか異種のものであるかを判別する処理と、
前記同種の判別が得られた場合に、既知の送信周期に従って、前記先発送信のTDD無線機が用いる周期と同期をとったタイミングで送信波を発する処理と、
前記異種の判別が得られた場合に、前記先発送信のTDD無線機からの信号が観測されなくなった後に通信を再開するキャリアセンスの手法で前記送信波を発する処理と、
を実行する無線通信の干渉回避装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、無線通信の干渉回避システム、干渉回避方法および干渉回避装置に係り、特に、TDD(Time Division Duplex)方式を用いる無線通信システムに生ずる干渉の回避に好適な無線通信の干渉回避システム、干渉回避方法および干渉回避装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、TDD方式を用いる無線機(以下、「TDD無線機」と称す)を複数包含する従来の構成を示す。具体的には、図1に示す構成は、四台のTDD無線機10-A、10-A´、10-Bおよび10-B´を含んでいる。ここでは、TDD無線機10-AとTDD無線機10-A´との間に通信を確立し、また、TDD無線機10-BとTDD無線機10-B´との間に通信を確立することが求められている。以下、前者の対を「Aシステム」、後者の対を「Bシステム」と称す。また、TDD無線機の夫々を区別する必要がない場合は、以後、符号の添え字を省略して、「TDD無線機10」のように表記する。
【0003】
図1に示す構成では、TDD無線機10-AとTDD無線機10-Bが近接して配置されており、TDD無線機10-A´とTDD無線機10-B´は十分に離間して配置されているものとする。TDD無線機10-AとTDD無線機10-Bが近接しているため、図1中に矢印12で示すように、前者の送信波は、後者の受信回路に回り込むことがある。
【0004】
上記の回り込みによる信号(以下、「回り込み信号」と称す)が、TDD無線機10-Bの受信タイミングで発生すると、TDD無線機10-B´からの電波が妨害されてしまい、TDD無線機10-Bが、その電波を適切に受信できない事態が生ずる。このような事態の発生を回避する技術として、例えば下記特許文献1は、GPS(Global Positioning System)を利用する手法を開示している。
【0005】
図2は、GPSを利用して、AシステムとBシステムが同期を取る構成を示している。このような構成によれば、TDD無線機10夫々のクロックを揃えて、AシステムとBシステムとの間で、送受信のタイミングを同期させることができる。例えば、TDD無線機10-Aの送信タイミングとTDD無線機10-Bの送信タイミングが揃っていれば、前者の送信波が、後者に受信されることはなく、上述した回り込み信号に起因する問題は解決できる。
【0006】
回り込み信号の問題に対処する手法としては、GPSを利用する技術の他にも、AシステムとBシステムとを電気的に接続して両者のタイミングを同期させる手法も知られている。図3は、その手法を用いる構成の一例を示す。この構成によっても、GPSを利用する場合と同様に、例えばTDD無線機10-AとTDD無線機10-Bの送信タイミングを揃えて、上記の回り込み信号の問題を解決することができる。
【0007】
回り込み信号の問題については、別のアプローチでの解決も提案されている。図4は、フィルタを用いてその問題を解決する従来の構成を示す。図4に示す構成では、TDD無線機10-Bに物理的な周波数フィルタが挿入されている。Aシステムが用いる周波数チャネルとBシステムが用いる周波数チャネルとが異なっていれば、このようなフィルタを用いることにより、TDD無線機10-B´からの電波を遮ることなく、TDD無線機10-Aからの回り込み信号だけを遮断することができる。このため、図4に示す構成によっても、回り込み信号の問題は解決することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-251989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図2に示す構成を実現するためには、GPS信号を受信するための新たなアンテナ設備等をTDD無線機10に備え付ける必要が生ずる。また、GPS信号の受信感度は、常に一定ではなく、その感度が低下する状況下では、システム間の同期が十分に取れなくなる問題が生ずる。
【0010】
また、図3に示す構成を実現するためには、AシステムとBシステムとを電気的に接続する配線を敷設する必要が生ずる。そして、このような配線の敷設には一般に多大なコストが伴う。更に、複数のシステムを配線で接続する構成では、どのシステムのクロックをマスタクロックとするかなど、優先順位の設定なども必要となる。
【0011】
更に、図4に示す物理的フィルタは、一般に非常に高価であると共に大型である。このため、図4に示す構成を採用する場合、TDD無線機10の夫々が、高価となり、かつ大型化するというデメリットが伴う。
【0012】
このように、回り込み信号の問題を解決するための従来の構成は、何れも、多大なコストを要し、簡便に導入し難いという特質を有するものであった。本開示は、このような課題に鑑みてなされたものであり、近接配置された複数のTDD無線機の間に生じ得る干渉を、安価かつ簡便に回避するための干渉回避システムを提供することを第1の目的とする。
【0013】
また、本開示は、近接配置された複数のTDD無線機の間に生じ得る干渉を、安価かつ簡便に回避するための干渉回避方法を提供することを第2の目的とする。
【0014】
また、本開示は、近接配置された複数のTDD無線機の間に生じ得る干渉を、安価かつ簡便に回避するための干渉回避装置を提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示の第1の態様は、上記の目的を達成するため、先発送信のTDD無線機と、
前記先発送信のTDD無線機と隣接して配置される次発送信のTDD無線機とを含み、
前記次発送信のTDD無線機は、プロセッサユニットを備え、
当該プロセッサユニットは、
前記先発送信のTDD無線機から発せられた回り込み信号を受信する処理と、
前記回り込み信号に基づいて、前記先発送信のTDD無線機が当該次発送信のTDD無線機と同種のものであるか異種のものであるかを判別する異同判別処理と、
前記同種の判別が得られた場合に、既知の送信周期に従って、前記先発送信のTDD無線機が用いる周期と同期をとったタイミングで送信波を発する処理と、
前記異種の判別が得られた場合に、前記先発送信のTDD無線機からの信号が観測されなくなった後に通信を再開するキャリアセンスの手法で前記送信波を発する処理と、
を実行することが望ましい。
【0016】
また、本開示の第2の態様は、先発送信のTDD無線機と、当該先発送信のTDD無線機と隣接して配置される次発送信のTDD無線機との間に生ずる無線通信の干渉を回避するための干渉回避方法であって、
前記次発送信のTDD無線機が、前記先発送信のTDD無線機から発せられた回り込み信号を受信するステップと、
前記回り込み信号に基づいて、前記先発送信のTDD無線機が当該次発送信のTDD無線機と同種のものであるか異種のものであるかを判別するステップと、
前記同種の判別が得られた場合に、前記次発送信のTDD無線機が、既知の送信周期に従って、前記先発送信のTDD無線機が用いる周期と同期をとったタイミングで送信波を発するステップと、
前記異種の判別が得られた場合に、前記次発送信のTDD無線機が、前記先発送信のTDD無線機からの信号が観測されなくなった後に通信を再開するキャリアセンスの手法で前記送信波を発するステップと、
を含むことが望ましい。
【0017】
また、本開示の第3の態様は、先発送信のTDD無線機と隣接して配置される次発送信のTDD無線機を含む無線通信の干渉回避装置であって、
プロセッサユニットを備え、
当該プロセッサユニットは、
前記先発送信のTDD無線機から発せられた回り込み信号を受信する処理と、
前記回り込み信号に基づいて、前記先発送信のTDD無線機が当該次発送信のTDD無線機と同種のものであるか異種のものであるかを判別する処理と、
前記同種の判別が得られた場合に、既知の送信周期に従って、前記先発送信のTDD無線機が用いる周期と同期をとったタイミングで送信波を発する処理と、
前記異種の判別が得られた場合に、前記先発送信のTDD無線機からの信号が観測されなくなった後に通信を再開するキャリアセンスの手法で前記送信波を発する処理と、
を実行することが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
第1乃至第3の態様によれば、次発送信のTDD無線機は、先発送信のTDD無線機が同種のものである場合は既知の周期に従うことで先発送信のTDD無線機との同期を取ることができる。また、次発送信のTDD無線機は、先発送信のTDD無線機が異種のものである場合は、キャリアセンスの手法で干渉を避けることができる。このため、これらの態様によれば、近接配置された複数のTDD無線機の間に生じ得る干渉を、安価かつ簡便に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】TDD無線機を複数包含する従来の構成を示す。
図2図1に示す構成に、GPSを利用するための設備を備え付けた従来の例を示す。
図3図1に示す構成に、TDD無線機間で同期を取るための配線を追加した従来の例を示す。
図4図1に示す構成に、隣接するTDD無線機からの回り込み信号を遮断するためのフィルタを追加した従来の例を示す。
図5】本開示の実施の形態1の干渉回避システムの構成を示す。
図6】本開示の実施の形態1の干渉回避システムに含まれる先発送信のTDD無線機および次発送信のTDD無線機夫々の構成を機能的に示すブロック図である。
図7】本開示の実施の形態1において、先発送信のTDD無線機の種類に応じてモードを切り替えるために次発送信のTDD無線機が実施する処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図8】本開示の実施の形態1において、先発送信のTDD無線機が同種であった場合に次発送信のTDD無線機が実施する処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図9】本開示の実施の形態2の干渉回避システムに含まれる先発送信のTDD無線機および次発送信のTDD無線機夫々の構成を機能的に示すブロック図である。
図10】一般的な無線フレームを示す。
図11】本開示の実施の形態2で用いられる無線フレームの一例を示す。
図12】本開示の実施の形態2において、先発送信のTDD無線機の種類を判断するために次発送信のTDD無線機が実施する処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図13】本開示の実施の形態2で用いられる無線フレームの第一の変形例を示す。
図14】本開示の実施の形態2で用いられる無線フレームの第二の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
図5は、本開示の実施の形態1の無線通信の干渉回避システムの構成を示す。図1に示すシステムには、四台のTDD無線機20が含まれている。それらは、図1に示す場合と同様に配置されている。具体的には、TDD無線機20-AとTDD無線機20-Bが近接して配置され、TDD無線機20-A´とTDD無線機20-B´が離間して配置されている。また、TDD無線機20-AとTDD無線機20-A´は、一方が他方を通信相手とするAシステムを構成し、TDD無線機20-BとTDD無線機20-B´は、一方が他方を通信相手とするBシステムを構成している。
【0021】
図1は、Aシステムが先に通信を確立した後に、Bシステムの通信が開始される例を示している。以下、先に通信を始めるシステムに属するTDD無線機20-Aを「先発送信のTDD無線機」と称し、後に送信を始めるTDD無線機10-Bを「次発送信のTDD無線機」と称する。
【0022】
図1に示す干渉回避システムでは、図中に矢印22で示すように、先発送信のTDD無線機20-Aから発せられる送信波が、回り込み信号として次発送信のTDD無線機20-Bに受信されることがある。本実施形態の干渉回避システムは、次発送信のTDD無線機20-Bが、その回り込み信号に基づいて、TDD無線機20-Aが自身と同種のものであるか否かを判別し、その結果に基づいて、通信のモードを切り替える点に特徴を有している。
【0023】
図6は、先発送信のTDD無線機20-Aの構成と、次発送信のTDD無線機20-Bの構成の夫々を機能的に説明するためのブロック図である。図6に示す構成は、具体的には、各種のハードウェア装置、プロセッサユニット、メモリ装置、およびプロセッサユニットで実行されるべくメモリ装置に格納されているプログラム等により実現される。
【0024】
先発送信のTDD無線機20-Aは、図6に示すように、タイミング制御部22-Aを備えている。タイミング制御部22-Aは、時分割で送信する無線フレームの送信タイミングを生成する。以下、このタイミングを「フレームタイミング」と称す。
【0025】
タイミング制御部22-Aが生成するフレームタイミングは、変調部24-Aに提供される。変調部24-Aには、また、無線信号に変換して送信するべきデータが提供されている。変調部24-Aは、フレームタイミングに合わせて、規定の変調をデータに施して送信信号を生成する。このようにして生成された送信信号は、増幅部26-Aで増幅された後、アンテナ28-Aから送信される。
【0026】
先発送信のTDD無線機20-Aが備える上記の要素は、次発送信のTDD無線機20-Bにも備わっている。即ち、TDD無線機20-Bは、図6下段の右側の領域に示されているように、タイミング制御部22-B、変調部24-B、増幅部26-Bおよびアンテナ28-Bを備えている。これらは、TDD無線機20-Aが備える上記の要素と同様に機能する。
【0027】
図6下段の左端に示すように、アンテナ28-Bは、外部から送られてくる送信波の受信にも用いられる。アンテナ28-Bで受信された信号はAGC(Auto Gain Control)回路30-Bに提供される。AGC回路30-Bは、受信信号の振幅を復調可能な幅に収めるために、受信信号の電力に合わせて自動的にゲインを制御する回路である。
【0028】
本実施形態において、TDD無線機20-Bのアンテナ28-Bには、遠方に位置するTDD無線機20-B´からの送信波と、近接して配置されているTDD無線機20-Aからの回り込み信号が到達する。TDD無線機20-Aからの回り込み信号は、TDD無線機20-B´からの送信波に比して著しく高い強度を有している。
【0029】
TDD無線機20-Aからの回り込み信号は、TDD無線機20-Bにおいて復調する必要がない。このため、AGC回路30-Bには、TDD無線機20-Aからの回り込み信号は処理し切れないが、TDD無線機20-B´からの送信波は適正に処理できるだけの能力が与えられている。
【0030】
AGC回路は、アンテナ28-Bによって受信された送信波が自らの能力に収まる場合は、適正なゲインを加えてその信号を復調部32-Bに提供する。図6中の復調部32-Bの下方に示すように、本実施形態では、無線フレームに「トレーニング信号」と、それに続く「データ」とが含まれている。復調部32-Bは、それらを含む一連の信号を復調してデータを復元する。
【0031】
アンテナ28-Bによって受信された信号は、AGC回路30-Bを経由して送信周期判定部34-Bにも提供される。送信周期判定部34-Bは、AGC回路30-Bの能力を超える電力を伴う送信波をTDD無線機20-Aからの回り込み信号と認識し、その回り込み信号が送られてくる周期を判定する。そして、送信周期判定部34-Bは、その周期に基づいて、TDD無線機20-Aが、TDD無線機20-Bと同種のものであるかを判別する。
【0032】
無線通信が行われる環境には、様々な通信機器が存在する。例えば、AシステムとBシステムに同じ仕様が与えられていれば、TDD無線機20-AとTDD無線機20-Bは、無線フレームを同じ周期で発生させる。他方、AシステムとBシステムに異なる仕様が与えられていれば、TDD無線機20-AとTDD無線機20-Bが、異なる周期で無線フレームを発生させる事態が生ずる。
【0033】
本実施形態において、送信周期判定部34-Bは、アンテナ28-Bに受信される回り込み信号の周期と、TDD無線機20-Bの送信周期とが一致する場合は、TDD無線機20-AがTDD無線機20-Bと同種であると判別する。一方、その周期が一致しない場合は、TDD無線機20-Aが、TDD無線機20-Bとは異種のものであると判別する。
【0034】
TDD無線機20-AがTDD無線機20-Bと同種であると判別された場合、送信周期判定部34-Bは、TDD無線機20-Aから回り込み信号を受信するタイミングと同期させて、送信可能タイミングをタイミング制御部22-Bに提供する。この場合、TDD無線機20-Bの送信タイミングがTDD無線機20-Aの送信タイミングと揃うため、TDD無線機20-Bの受信タイミングにTDD無線機20-Aの送信タイミングが重なるのを避けることができる。つまり、TDD無線機20-Bが、TDD無線機20-B´からの送信波と同時に、TDD無線機20-Aからの回り込み信号を受信してしまうのを避けることができる。
【0035】
送信周期判定部34-Bは、TDD無線機20-AがTDD無線機20-Bと異種のものであると判別した場合は、回り込み信号に起因する干渉を避けるために、TDD無線機20-Bに、無線通信を一旦停止させる。そして、キャリアセンスの手法でTDD無線機20-Aが送信波を発していないタイミングを見つけて送信可能タイミングをタイミング制御部22-Bに提供する。これにより、本実施形態の干渉回避システムは、TDD無線機20-AがTDD無線機20-Bと異種のシステムに属するものであっても、回り込み信号の問題を回避することができる。
【0036】
[実施の形態1における具体的処理]
図7は、上記の機能を実現するために、次発送信のTDD無線機20-Bが実施する処理の流れを説明するためのフローチャートである。図7に示すように、このルーチンでは、先ず、アンテナ28-Bで受信される信号が観測される(ステップ100)。具体的には、ここでは、AGC回路30-Bの能力を超える信号、つまり、TDD無線機20-Aから送られてくる強度の強い信号が観測される。そして、その信号の送信周期に基づいて、TDD無線機20-Aが、TDD無線機20-Bと同種のシステムに属するものであるか、異種のシステムに属するものであるかが決せられる。
【0037】
次に、上記ステップ100の結論が、「同種システム」であるか「異種システム」であるかが判別される(ステップ102)。そして、「同種システム」の結論が得られている場合は、「同期送信モード」が選択される(ステップ104)。一方、「異種システム」の結論が得られている場合は、「キャリアセンスモード」が選択される(ステップ106)。
【0038】
「キャリアセンスモード」が選択された場合、TDD無線機20-Bは、干渉回避のために無線通信を一旦停止させる。そして、キャリアセンスの手法で通信の空きスロットを見つけて、TDD無線機20-B´に向けて送信波を発する。これにより、AシステムとBシステムとの間での干渉が回避される。
【0039】
図8は、「同期送信モード」においてTDD無線機20-Bが実施する処理の流れを説明するためのフローチャートである。図8に示すルーチンでは、先ず、無線フレームの送信タイミングが到来したか否かが判別される(ステップ110)。本ステップ110では、例えば、TDD無線機20-Aからの回り込み信号を受信する毎に送信タイミングの到来を判定することができる。また、同期送信モードは、TDD無線機20-Bにとって、TDD無線機20-Aのフレームタイミングが既知である状況下で実施される。このため、本ステップでは、TDD無線機20-Aとの同期を取ったTDD無線機20-Bが、自ら、既定の周期毎に送信タイミングの到来を判定してもよい。
【0040】
ステップ110で、送信タイミングの到来が認められた場合は、TDD無線機20-Bにおいて、フレームタイミングが生成される(ステップ112)。その結果、以後、TDD無線機20-Aの送信処理と同期して、TDD無線機20-Bにおいても送信処理が行われる。
【0041】
一方、ステップ110で送信タイミングが否定された場合は、次に、現時刻が、TDD無線機20-Aの無信号期間に当たるか否かが判別される(ステップ114)。TDD無線機20-Bは、TDD無線機20-Aと同じ周期で動作する。このため、本ステップ114の判別は、現時刻が、自身の無信号期間であるか否かにより決することができる。
【0042】
上記ステップ114で現時刻が無信号期間であると認められた場合は、AGC回路30-Bの感度がONとされる(ステップ116)。無信号期間は、TDD無線機20-Aからの回り込み信号を受信することはなく、受信する信号がTDD無線機20-B´からの送信波に限られる。TDD無線機20-B´は、送信相手であるTDD無線機20-Bに向けて、定期的にビーコン信号を送信している。無信号期間にAGC回路30-Bの感度をONとしておくと、そのビーコン信号を受信して、AGC回路30-Bに、TDD無線機20-Bからの受信に適した適切な感度を与えておくことができる。そして、TDD無線機20-Bから無線フレームを受信した際には、円滑にそのフレームを処理することができる。
【0043】
上記ステップ114で無信号期間の判別が否定された場合は、TDD無線機20-Aからの回り込み信号が、TDD無線機20-Bに到達する可能性があると判断できる。この場合、TDD無線機20-Bは、AGC回路30-Bの感度をOFFとする(ステップ118)。AGC回路30-Bの感度をOFFしておけば、TDD無線機20-B´からの受信に適した感度が、強度の大きな回り込み信号により変化してしまうのを避けることができる。このため、TDD無線機20-Bは、無信号期間が明けてTDD無線機20-B´から信号が送られてくると、その信号を、即座に処理することができる。
【0044】
以上説明した通り、本実施形態では、次発送信のTDD無線機20に、先発送信のTDD無線機20が自身と同種のものであるかを判別させる。そして、次発送信のTDD無線機20は、その判別の結果に基づいて、簡便な手法により先発送信のTDD無線機20との同期を実現する。つまり、本実施形態の干渉回避システムは、GPSも、複数のシステムを接続する配線も用いることなくAシステムとBシステムを同期させることができる。そして、両システムの同期が取れるため、回り込み信号を遮断するための物理フィルタも必要としない。
【0045】
更に、本実施形態では、次発送信のTDD無線機20が、受信した信号を復調することなく、送信周期に基づいて先発送信のTDD無線機20の異同を判断する。このような手法によれば、AGC回路30-Bに、回り込み信号の復調に要する能力を与える必要がなく、AGC回路30-Bに要するコストも十分に抑えることができる。このため、本実施形態の干渉回避システムによれば、近接配置された複数のTDD無線機20の間に生じ得る干渉を、安価かつ簡便に回避することができる。
【0046】
[実施の形態1の変形例]
但し、本開示は、TDD無線機20-Bが、TDD無線機20-Aからの回り込み信号を復調し、その結果に基づいてTDD無線機20-Aの異同を判断する技術を排除するものではない。即ち、本開示の干渉回避システムでは、AGC回路30-Bに、TDD無線機20-Aからの回り込み信号を処理できる能力を与えて、次発送信のTDD無線機20-Bに、回り込み信号の復調結果に基づいて、先発送信のTDD無線機20-Aの異同を判断させても良い。
【0047】
実施の形態2.
次に、図5図7および図8と共に、図9乃至図14を参照して本開示の実施の形態2について説明する。本実施形態の干渉回避システムは、図5に示す構成において、四台のTDD無線機20を四台のTDD無線機40に置き換えることで実現される。本実施形態においても、TDD無線機40-AとTDD無線機40-A´がAシステムを構成し、TDD無線機40-BとTDD無線機40-B´がBシステムを構成する。
【0048】
図9は、本実施形態で用いられるTDD無線機40の構成を機能的に説明するためのブロック図である。図6の場合と同様に、図9の上段は、先発送信のTDD無線機40-Aの構成を示す。また、図9の下段は、次発送信のTDD無線機40-Bの構成を示す。本実施形態の干渉回避システムは、次発送信のTDD無線機40-Bが、先発送信のTDD無線機40-Aの異同を判断する手法に特徴を有している。尚、図9において、図6に示す要素と同一の要素については、共通する符号を付して、その説明を省略または簡略する。
【0049】
図9に示すTDD無線機40-Aは、タイミング制御部22-Aがパターン制御部42-Aに置き換えられている点を除いて、図6に示すTDD無線機20-Aと同様の構成を有している。また、図9に示すTDD無線機40-Bは、タイミング制御部22-Bがパターン制御部42-Bに置き換えられ、かつ、送信周期判定部34-Bがパターン判定部44-Bに置き換えられている点を除いて、図6に示すTDD無線機20-Bと同様の構成を有している。
【0050】
図10は、上述した実施の形態1においてTDD無線機20が発する無線フレームの波形を示す。この無線フレームには、トレーニング信号50とデータ52とが含まれている。そして、実施の形態1では、トレーニング信号50からデータ52に至るまで、無線フレームに含まれる一連の信号が一定の電力で送信される。
【0051】
図11は、本実施形態において、TDD無線機40が発する無線フレームの波形を示す。図11に示すように、本実施形態では、無線フレームに意図的に強弱のパターンが加えられる。より具体的には、図11に示す無線フレームでは、データ52には一定の電力が与えられるが、トレーニング信号54の電力には、既定パターンの強弱が与えられる。
【0052】
再び図9を参照して、TDD無線機40-Aの機能を説明する。パターン制御部42-Aは、無線フレームの起点を定めるフレームタイミングを発生すると共に、その無線フレームに、意図的に上記の強弱パターンを加えるため処理を行う。パターン制御部42-Aで生成されるパターンは、増幅部26-Aに提供される。
【0053】
増幅部26-Aは、変調部24-Aから提供される変調信号に、そのパターンに従った増幅処理を施す。その結果、図9の上段右上の領域に示すように、TDD無線機40-Aのアンテナ28-Aからは、送信電力にパターンを持つトレーニング信号54と、一定の電力を持つデータ52とが送信される。
【0054】
TDD無線機40-Aから送信される無線フレームは、回り込み信号としてTDD無線機40-Bに到達すると共に、通信のための送信波としてTDD無線機40-A´に到達する。TDD無線機40-A´で信号を復調するうえでは、受信する無線フレームの強度は一定であることが望ましい。本実施形態では、トレーニング信号54には強弱をつけているが、データ52には一律に最大の電力が与えられている。このため、無線フレームに与えたパターンは、TDD無線機40-A´が「データ52」を復調することについては、何らの悪影響も及ぼさない。このため、上記のパターンを付加することで通信の品質が劣化することはない。
【0055】
TDD無線機40-Bは、アンテナ28-Bにおいて、TDD無線機40-B´からの送信波と、TDD無線機40-Aからの回り込み信号とを受信する。本実施形態では、TDD無線機40-B´からの送信波にも、上記の強弱パターンが重畳されているものとする。
【0056】
TDD無線機40-Bが、TDD無線機40-B´からの送信波を復調するうえでは、その送信波が一定の強度を有していることが望ましい。しかし、TDD無線機40-BのAGC回路30-Bは、TDD無線機40-B´からの送信波に含まれる強弱パターンを吸収するゲイン制御の能力を有している。このため、図9中、復調部32-Bの下方に示すように、復調部32-Bには、電力の強弱が平滑化された無線フレームが到達する。これにより、TDD無線機40-Bは、TDD無線機40-B´からの送信波に強弱パターンが重畳していても、適切な復調処理を行うことができる。
【0057】
AGC回路30-Bには、実施の形態1の場合と同様に、TDD無線機40-Aからの回り込み信号を処理できるほどの能力は与えられていない。但し、AGC回路30-Bは、強弱を持つ回り込み信号が受信されている間は、その強弱に応じた増幅動作を示す。このため、AGC回路30-Bの増幅動作には、回り込み信号に含まれている強弱パターンと連動する反応が表れる。
【0058】
TDD無線機40-Bのパターン判定部44-Bは、アンテナ28-Bが受信した信号がAGC回路30-Bの能力を超えるものである場合に、その信号を受信している間のAGC回路30-Bの反応を監視する。そして、その反応が、既知の強弱パターンに一致するか否かに基づいて、回り込み信号の送信元であるTDD無線機40-Aが、自らと同種のものであるか否かを判断する。
【0059】
そして、パターン判定部44-Bは、TDD無線機40-Aの異同に応じて、実施の形態1における送信周期判定部34-Bと同様に、パターン制御部42-Bに送信可能タイミングを提供する。具体的には、TDD無線機40-Aが同種のものである場合は、「同期送信モード」(上記ステップ104参照)で送信可能タイミングを提供する。また、TDD無線機40-Aが異種のものである場合は、「キャリアセンスモード」(上記ステップ106参照)で送信可能タイミングを提供する。
【0060】
パターン制御部42-Bは、受け取った送信可能タイミングに従って変調部24-Bにフレームタイミングを提供する。また、パターン制御部42-Bは、TDD無線機40-Aのパターン制御部42-Aと同様に、既定の強弱パターンを無線フレームに与えるための情報を増幅部26-Bに提供する。
【0061】
その結果、TDD無線機40-Aが同種である場合は、TDD無線機40-Aと同期したタイミングで、TDD無線機40-Bから送信波が発せられる。また、TDD無線機40-Aが異種である場合は、TDD無線機40-Aが送信波を発していないタイミングで、TDD無線機40-Bから送信波が発せられる。これにより、AシステムとBシステムとの間での干渉が確実に回避される。
【0062】
図12は、先発送信のTDD無線機40-Aが同種であるか異種であるかを判別するために、本実施形態において、次発送信のTDD無線機40-Bが実施する一連の処理の流れを説明するためのフローチャートである。図12に示すルーチンでは、先ず、アンテナ28-BがTDD無線機40-Aからの回り込み信号を受信したか否か、つまり、AGC回路30-Bの能力を超える高強度な信号を受信したか否かが判別される(ステップ120)。
【0063】
その結果、回り込み信号の受信が認められた場合は、AGC回路30-Bの反応に基づくパターン解析が実施される(ステップ122)。AGC回路30-Bは、回り込み信号の強弱に応じてゲインを変化させる。本ステップ122では、その反応に表れるパターンが記録される。
【0064】
上記のパターン解析が終わると、次に、そのパターンが、自身で記憶している既知のパターンであるか否かが判別される(ステップ124)。TDD無線機40-Bは、自身が発する送信波に重畳させる強弱パターンを記憶している。ここでは、回り込み信号のパターンが、その強弱パターンと一致しているか否かが判別される。
【0065】
先発送信のTDD無線機40-Aが、自身と同じ種類のものであれば、パターン解析により得たパターンは、自身で記憶しているパターンと一致するはずである。従って、上記ステップ124の判別が肯定された場合は、TDD無線機40-Aについて「同種判定」が下される(ステップ126)。一方、上記ステップ124の判別が否定された場合は、TDD無線機40-Aについて「異種判定」が下される。
【0066】
TDD無線機40-Bは、上記図7に示すルーチン中、ステップ100の処理として、上記図12に示すルーチンを実行する。つまり、TDD無線機40-Bは、図12に示す一連の処理に続けて図7に示すステップ102以降の処理を実行する。そして、上記の「同種判定」または「異種判定」に従って、実施の形態1の場合と同様の「同時送信モード」(図8参照)または「キャリアセンスモード」により通信を確立する。
【0067】
以上説明した通り、本実施形態において、次発送信のTDD無線機40-Bは、回り込み信号に重畳しているパターンに基づいて、先発送信のTDD無線機40-Aが、自身と同種であるか異種であるかを判別する。実施の形態1の干渉回避システムでは、回り込み信号の周期が偶然に自身の周期と一致するような状況下では、異種のシステムを同種のシステムと誤認してしまう事態が生じ得る。本実施形態の干渉回避システムでは、そのような誤認を生じさせることがなく、実施の形態1の場合に比して更に正確なタイミング調整を実現することができる。そして、このような正確なタイミング調整が実現できると、干渉回避の確実性が向上すると共に、何らかの原因で接続障害が生じたような場合における原因の切り分けを容易にすることができる。
【0068】
[実施の形態2の変形例]
ところで、上述した実施の形態2では、強弱パターンをトレーニング信号54にだけ与えることとしている。しかしながら、そのパターンは、トレーニング信号に代えて、或いはトレーニング信号と共にデータに与えることとしてもよい。
【0069】
図13は、強弱パターンを、トレーニング信号54と共にデータ56にも与えた波形の例を示す。ここでは、具体的には、トレーニング信号54に与えるパターンに比して凹凸の小さなパターンをデータ56に与えることとしている。回り込み信号のパターンを正しく抽出するためには、送信波に与えられる凹凸は大きいほど好ましい。一方で、受信波を正しく復調する観点からは、大きな凹凸は好ましいものではない。
【0070】
図13のデータ56に与えるような小さな凹凸は、復調時の支障を十分に小さく抑えることができる。一方で、そのような小さな凹凸でも、時間軸レイク合成の場合と同様に、複数回の無線フレームを積算して凹凸を増幅させれば、正確なパターン抽出が可能となる。このため、無線フレームに与える凹凸は、図13のデータ56に与えているような凹凸の小さなものとしてもよい。
【0071】
尚、図13においては、データ56にのみ凹凸の小さなパターンを与えることとしているが、本開示はこれに限定されるものではない。時間軸レイク合成の手法を用いることを前提として、トレーニング信号54にも凹凸の小さなパターンを与えることとしてもよい。
【0072】
また、上述した実施の形態2では、図11に示すように、無線フレームに、最大電力を有する「強」部分と、それより小さな「弱」部分とを与えることとしているが、本開示はこれに限定されるものではない。図14は、最大電力より小さな「中」部分と、それより小さな「弱」部分をトレーニング信号58に与えた無線フレームの例を示す。
【0073】
本実施形態では、回り込み信号が最大電力を持つ部分では、AGC回路30-Bの能力が上限を超えてしまうことが想定される。これに対して、図14に示すような「中」「弱」の部分は、AGC回路30-Bが、ゲイン制御の能力内で処理することができる。このため、無線フレームに図14に示すような「中」「弱」パターンを重畳させることとすれば、AGC回路30-Bの反応に基づいてそのパターンをより正確に再現し、先発送信のTDD無線機40の素性をより正確に判定することが可能となる。
【0074】
[実施の形態1、2に共通の変形例]
上述した実施の形態1および2では、干渉回避システムに、AシステムとBシステムの二つが含まれている。しかしながら、本開示はこれに限定されるものではない。本開示の干渉回避システムは、一方が他方を通信相手とするシステムを三つ以上含むものであってもよい。
【0075】
また、上述した実施の形態1および2では、AシステムのTDD無線機20、40に先発送信させた後に、BシステムのTDD無線機20、40に次発送信させることとしているが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば、BシステムのTDD無線機20、40が先発送信した後に、AシステムのTDD無線機20、40が次発送信してもよい。この場合、Aシステムの通信が開始された後に、BシステムがAシステムとの干渉を検知して一旦停止する。その後Bシステムの通信が再開されると、結果的に、Aシステムが先発送信、Bシステムが次発送信の環境が確立されて、干渉を回避しながらの通信が実現される。
【0076】
また、上述した実施の形態1および2では、BシステムのTDD無線機20、40にだけ、先発送信のTDD無線機20、40の異同を判断する機能を与えているが、本開示はこれに限定されるものではない。即ち、AシステムのTDD無線機20、40に、BシステムのTDD無線機20、40と同様に、先発送信のTDD無線機の異同を判断する機能を与えてもよい。この場合、Bシステムが先発送信する状況下では、Aシステムが、Bシステムとの同期を図り、Bが先発、Aが次発の状況のままで干渉回避が実現される。
【符号の説明】
【0077】
20、20-A、20-A´、20-B、20-B´、40、40-A、40-A´、40-B、40-B´ TDD無線機
22-A、22-B タイミング制御部
24-A、24-B 変調部
26-A、26-B 増幅部
28-A、28-B アンテナ
30-B AGC回路
32-B 復調部
34-B 送信周期判定部
42-A、42-B パターン制御部
44-B パターン判定部
50、54、58 トレーニング信号
52、56 データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14