(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】バッテリ装置の保護のための保護方法を検査するための方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/392 20190101AFI20240925BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240925BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240925BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20240925BHJP
【FI】
G01R31/392
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/00 Q
G01R31/367
(21)【出願番号】P 2021559951
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 AT2020060156
(87)【国際公開番号】W WO2020210854
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-04-14
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】521104458
【氏名又は名称】エイヴィエル リスト ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】AVL List GmbH
【住所又は居所原語表記】Hans-List-Platz 1, 8020 Graz, AUSTRIA
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デーメル, マティアス
(72)【発明者】
【氏名】フリッツベルグ, ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】グシュヴェイテル, クルト
(72)【発明者】
【氏名】ディングラ, ヴィープル
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-219352(JP,A)
【文献】特許第4689756(JP,B1)
【文献】特許第4042917(JP,B1)
【文献】特開2009-128194(JP,A)
【文献】国際公開第2011/004464(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/392
H01M 10/48
H02J 7/00
G01R 31/367
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ装置(100)、特に前記バッテリ装置(100)の電極を保護するための保護方法を検査するための方法であって、
-前記バッテリ装置(100)の少なくとも1つの電気的バッテリパラメータ(EBP)を監視する工程と、
-前記バッテリ装置(100)の動作電流(IB)の少なくとも1つの動作パラメータ(BP)を監視する工程と、
-前記バッテリ装置(100)の外乱電流(IS)の少なくとも1つの外乱パラメータ(SP)を監視する工程と、
-前記監視された外乱パラメータ(SP)、前記監視された動作パラメータ(BP)、及び/又は前記監視されたバッテリパラメータ(EBP)を前記バッテリパラメータ(EBP)及び/又は前記動作パラメータ(BP)に基づく少なくとも1つの比較パラメータ(VP)と比較する工程と、を有
し、
前記比較の結果が、前記外乱パラメータ(SP)の生成のために使用されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記比較が、特に、以下のパラメータ
-前記バッテリ装置(100)の経年劣化状態、
-前記バッテリ装置(100)の充電状態、
-前記バッテリ装置(100)の温度、
-前記外乱パラメータ(SP)の質及び/又は量、
-前記動作パラメータ(BP)の質及び/又は量、
-前記バッテリパラメータ(EBP)の質及び/又は量、
のうちの少なくとも1つを考慮する前記バッテリ装置(100)のシミュレーションモデル(110)に基づいて行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
外乱電流(IS)の印加が終了した後、バッテリパラメータ(EBP)及び/又は動作パラメータ(EBP)が比較パラメータ(VP)と比較されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記比較パラメータ(VP)は、前記外乱電流(IS)の印加前及び/又は印加中のバッテリパラメータ(EBP)及び/又は動作パラメータ(BP)を含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記比較の結果が、外乱電流(IS)の後続の印加のために考慮されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
バッテリパラメータ(EBP)として、前記外乱電流(IS)後の前記バッテリ装置(BP)の経年劣化状態が、前記外乱電流(IS)前及び/又は前記外乱電流(IS)中の前記バッテリ装置(100)の経年劣化状態の形式の比較パラメータ(VP)とともに用いられることを特徴とする、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記経年劣化状態の比較中に、経年劣化勾配(AM)が決定されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの外部バッテリ装置(100)からの比較パラメータ(VP)が前記比較のために用いられることを特徴とする、請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
比較パラメータ(VP)として、外乱電流(IS)を印加しないバッテリパラメータ(EBP)及び/又は動作パラメータ(BP)が使用されることを特徴とする、請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記比較パラメータ(VP)のために前記バッテリ装置(100)のシミュレーションモデル(110)が使用されることを特徴とする、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
バッテリ装置(100)を検査するための検査装置(10)であって、バッテリ装置(100)の少なくとも1つの電気的バッテリパラメータ(EBP)を監視することと、前記バッテリ装置(100)の動作電流(IB)の少なくとも1つの動作パラメータ(BP)を監視することと、前記バッテリ装置(100)の外乱電流(IS)の少なくとも1つの外乱パラメータ(SP)を監視することと、のための監視モジュール(20)を備え、前記監視された外乱パラメータ(SP)、前記監視された動作パラメータ(BP)、及び/又は前記監視されたバッテリパラメータ(EBP)を、前記バッテリパラメータ(EBP)及び/又は前記動作パラメータ(BP)に基づく少なくとも1つの比較パラメータ(VP)と比較するための比較モジュール(30)をさらに備え
、
前記比較の結果が、前記外乱パラメータ(SP)の生成のために使用されることを特徴とする、検査装置。
【請求項12】
前記監視モジュール(20)及び/又は前記比較モジュール(30)が、請求項1乃至
10のいずれか1項に記載の特徴を有する方法を実行するように設計されていることを特徴とする、請求項
11に記載の検査装置(10)。
【請求項13】
コンピュータプログラムであって、前記プログラムがコンピュータによって実行される場合に、請求項1乃至
10のいずれか1項に記載の特徴を有する方法をこれに実行させる命令を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ装置、特にバッテリ装置の電極を保護するための保護方法を検査するための方法、及びその種の方法を実行するための検査装置、ならびに対応するコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
その種のバッテリ装置の経年劣化プロセスを減じるために、バッテリ装置は保護されるべきであることが知られている。既知のバッテリ装置には、バッテリをその性能に関して経年劣化させる経年劣化プロセスがある。この経年劣化プロセスは、化学的及び物理的原理に基づいている。バッテリ装置の経年劣化に関する1つの問題は、バッテリ装置のそれぞれの電極における層の蓄積に基づいている。バッテリ装置の動作時、すなわち充電及び放電時、あるいは電気エネルギーの貯蔵及び放出時に、それぞれの電極で電子若しくはイオンの遷移が起こる。これらの遷移では、遷移が部分的にしか成功裏に行われず、このようにして電極に材料が堆積するということが起こり得る。この材料の堆積が積み重なると、電極に層が形成され、この層が電子若しくはイオンの遷移に対して絶縁作用をする。この層が配置される面積が大きくなるほど、若しくはこの層が形成される厚さが増すほど、バッテリ装置の性能が低下し、それにしたがって、その健全性若しくはその経年劣化状態が低下する。
【0003】
バッテリ装置の経年劣化を制限するための既知の解決策は、バッテリ装置の温度に能動的に影響を及ぼすことを目標とする。温度はバッテリの経年劣化状態の化学的及び物理的プロセスに影響を与えるので、既知の解決策によって、温度調節はバッテリ装置を急速な経年劣化から保護する可能性を提供することができる。しかしながら、温度調節を使用する場合、特に温度調節機能が果たされる間、バッテリ装置の有用性が低下することが不利である。さらに、温度調節自体に、例えば低温のバッテリ装置を加熱したり、高温のバッテリ装置を冷却したりするために比較的高いエネルギーの消費が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の課題は、上記の欠点を少なくとも部分的に解消することである。特に、本発明の課題は、バッテリ装置、特にバッテリ装置の電極を保護するための保護方法をより安価、かつより簡単に検査することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、上記課題は、バッテリ装置、特にバッテリ装置の電極を保護するための保護方法を検査するための方法によって実現される。この種の方法は、以下の工程を有する。
-バッテリ装置の少なくとも1つの電気的バッテリパラメータを監視する工程、
-バッテリ装置の動作電流の少なくとも1つの動作パラメータを監視する工程、
-バッテリ装置の外乱電流の少なくとも1つの外乱パラメータを監視する工程、
-監視された外乱パラメータ、監視された動作パラメータ、及び/又は監視されたバッテリパラメータをバッテリパラメータ、及び/又は動作パラメータに基づく少なくとも1つの比較パラメータと比較する工程。
【0006】
上記課題は、請求項1の特徴を有する方法、請求項12の特徴を有する検査装置、及び請求項14の特徴を有するコンピュータプログラム製品によって解決される。本発明の他の特徴及び詳細は、従属請求項、以下の記載、及び図面から明らかになる。その場合、本発明による方法との関連で説明される特徴及び詳細は、当然、本発明による検査装置及び本発明によるコンピュータプログラム製品との関連でも、かつその逆も当てはまり、それにより本発明の個々の態様の開示に関して常に相互に参照される、若しくは参照することができる。
【0007】
本発明による方法は、バッテリ装置、特にバッテリ装置の電極又は他の構成要素を保護するための保護方法が行われることに基づいている。この種の保護方法は、特に外乱電流を使用する保護方法である。外乱電流とは、本発明の意味において、バッテリ装置の動作電流とは別にバッテリ装置に付加される電流と解されるべきである。例えば、バッテリ装置が充電状態にあるとき、動作電流は充電電流によって利用可能になる。その種の動作電流の対応する動作パラメータは、その種の充電電流の電流周波数及び電流振幅である。このような場合、電気的バッテリパラメータは、例えば、バッテリ装置の基本的な充電状態、又は端的にステート・オブ・ヘルス(SOH)とも呼ばれる経年劣化状態である。ステート・オブ・チャージ、すなわちバッテリ装置の充電状態(SOC)によっても、さらなる電気的バッテリパラメータが提供され得る。
【0008】
次いで、本発明の意味における保護方法では、この動作電流に少なくとも1つの所定の外乱パラメータを有する外乱電流が重畳される。その場合、本発明によれば、外乱電流は、特に少なくとも1つの電流パラメータの点で動作電流とは異なることが好ましい。その場合、その種の電流パラメータは、殊にそれぞれの外乱パラメータを形成する。特に、その種の外乱パラメータは、外乱電流の電流振幅及び/又は電流周波数でもある。
【0009】
その場合、本発明によれば、外乱電流が能動的かつ的確に付加されるかどうか、又はそれがバッテリ装置の電気回路に存在する外乱電流として認識されるか、したがって本発明によれば意識的に許容されるかどうかは重要でない。しかしながら、バッテリパラメータ及びバッテリ電流の動作パラメータに基づいて、対応する外乱パラメータを決定し、外乱電流を生成し、それを動作電流に印加する能動的保護方法が用いられる場合が好ましい。
【0010】
その場合、本発明によれば、その種の保護方法は、検査する仕方で実行されるだけでなく、それに加えて本発明による方法によりさらに監視される。この監視は、少なくとも1つの比較パラメータとの比較によって行われる。その場合、比較パラメータは、バッテリパラメータ及び/又は動作パラメータに直接的又は間接的に基づくことが好ましい。したがって、比較パラメータが動作パラメータ又はバッテリパラメータによって直接形成されていることが考えられる。ただし、比較パラメータは、バッテリパラメータ及び/又は動作パラメータを間接的に反映するか、又は一緒にこれらの組み合わせを形成することさえできる。
【0011】
すなわち、本発明によれば、方法の最後の工程は、電極を保護するための保護方法を検査して監視することを可能にするフィードバックを提供する。これは第1に、監視された外乱パラメータ、監視された動作パラメータ、又は監視されたバッテリパラメータを量又は質に関して比較パラメータと比較し、それにより監視するために用いられる。最も単純な事例では、これは直接的検査、したがって保護方法の品質確保のために用いられる。このようにして質的に、基本的に、保護機能が適切な方向で、かつ適切に形成された外乱電流の質及び量で提供されることを監視することができる。ただし、これに加えて量的な監視も可能であり、それにより保護作用の量を監視できるだけでなく、後から説明するように、次の外乱電流のためにフィードバックできるように改善することもできる。
【0012】
換言すると、この場合、外乱方法が直接的又は間接的に監視され、バッテリ装置の耐用期間にわたって改善されて適用されるか、又はそれどころかバッテリ装置の動作時間を増すために用いることさえできる。
【0013】
本発明による方法では、比較が、バッテリ装置のシミュレーションモデルに基づいて行われ、このシミュレーションモデルが特に以下のパラメータのうちの少なくとも1つを考慮する場合に有利である。
-バッテリ装置の経年劣化状態、
-バッテリ装置の充電状態、
-バッテリ装置の温度、
-外乱パラメータの質及び/又は量、
-動作パラメータの質及び/又は量、
-バッテリパラメータの質及び/又は量。
【0014】
上記の列挙は最終的なリストではない。その場合、個々のデータを、例えばテストベンチによって利用可能にすることができ、それに伴い、対応するシミュレーションモデルに一回限りインポートすることができる。ただし、シミュレーションモデルが、データの純粋に数値的な再現を越えて、いわゆる人工知能又はニューラルネットワークを有することも考えられる。このようにして、バッテリ装置を車両での使用にも、他の定置型の使用にも利用可能にすることができる。
【0015】
さらに、本発明による方法では、外乱電流の印加が終了した後、バッテリパラメータ及び/又は動作パラメータが比較パラメータと比較される場合に有利である。基本的に、本発明による方法を当然、連続的、半連続的、又は段階的に実行することができるが、特に外乱電流を印加した後にこの外乱電流の結果が比較パラメータによって評価可能になる場合決定的な利点を得ることができる。その場合、比較パラメータは、殊に、外乱電流を印加する前の状況、又は印加しない状況に該当する。換言すると、バッテリパラメータ、特にバッテリ装置の経年劣化状態、又は動作パラメータ、例えばバッテリ装置の動作電流は、外乱電流が印加された後に検査され、かつ動作パラメータ若しくはバッテリパラメータの比較パラメータと比較される。例えば、外乱電流を印加した後のバッテリパラメータとして、経年劣化状態を対応する比較パラメータと比較することが考えられる。このような場合、比較パラメータが経年劣化状態をも表し、それにより外乱電流を印加した後に比較パラメータによる経年劣化状態とバッテリパラメータによる特定の経年劣化状態との差を求めることができる。その場合、この差は、外乱電流が所望の作用を達成したかどうか、及び達成した量を示すことができる。
【0016】
上記の段落による方法では、比較パラメータが外乱電流の印加前及び/又は印加中のバッテリパラメータ及び/又は動作パラメータを有することが可能である。したがって、先行する段落で述べられた比較がさらに具体的に可能になる。すなわち、理想的には、例えば、外乱電流が適用された後のバッテリパラメータは、外乱電流後の経年劣化状態を有することができ、次に、外乱電流が印加される前の経年劣化状態の形式の比較パラメータと比較することができる。それによって、経年劣化、したがってこれらの2つの経年劣化状態の差を外乱電流前と外乱電流後に互いに比較することができる。このことは、外乱電流を印加した場合の推移によりバッテリ装置の性能の低下を検知することを可能にする。特に、このことは、外乱電流の印加中の経年劣化がどれほど遅く、又はどれほど速く進むのかを示す。外乱電流の印加前と後を純粋に比較する他に、これは当然、外乱電流の印加中も考えられ、それにより検査は、保護メカニズム後だけでなく、この種の保護メカニズムの実行中も検査機能を提供する。
【0017】
先行する段落により方法では、比較の結果が次の外乱電流の印加のために考慮される場合にも有利であり得る。すなわち、バッテリ装置において外乱電流の印加がその質に関して伴う評価が可能になる場合、次の印加時に外乱電流を異なる方法で生成若しくは許可するためにこの成果評価を用いることができる。換言すると、本発明による品質監視を利用可能にできるだけでなく、さらに、フィードバックも本発明による保護方法の過程にわたって質を改善することができる。このフィードバックは、単一のバッテリ装置内だけでなく、複数のバッテリ装置にわたって行うこともできる。この成果評価を、例えば上位のデータクラウドに反映させて保存しておくことができ、そこから、別の使用場所にある他のバッテリ装置に相応のフィードバックが利用可能にされる。当然、本発明による方法の進行中にシミュレーションモデルの質をさらに改善するために、バッテリ装置のすでに説明されたシミュレーションモデルにフィードバックを実行することも可能である。
【0018】
さらに、本発明による方法では、バッテリパラメータとして、外乱電流後のバッテリ装置の経年劣化状態が、外乱電流前及び/又は外乱電流中のバッテリ装置の経年劣化パラメータの形式の比較パラメータとともに用いられる場合に有利である。すなわち、明示的に経年劣化状態が互いに比較可能になり、その結果、外乱電流の推移により経年劣化速度を認識可能になる。特に、このようにして経年劣化の低減を検証することができ、それにより外乱電流の成果の検査を実行することができる。すでに何度も述べたように、将来付加される外乱電流を用いたフィードバックと、バッテリ装置のシミュレーションモデルの形式の経年劣化モデルを用いたフィードバックの両方が行われ得る。
【0019】
さらに、本発明による方法では、これらの経年劣化状態の比較時に経年劣化勾配が決定される場合に有利である。すなわち、経年劣化状態の増加若しくは経年劣化状態の減少を決定することができ、それにより経年劣化の速度を外乱電流の成果の質の特徴として用いることができる。このことは、可能な限りコンパクトで単一の比較パラメータ若しくは成果パラメータに質を結びつけ、さらなる評価のために利用可能にすることを可能にする。
【0020】
本発明による方法において、比較の結果が特に後続の外乱パラメータの生成のために使用される場合、さらなる利点を得ることができる。その場合、この種のフィードバックは、外乱パラメータを能動的に生成、及び外乱電流を能動的に生成する場合に、これを将来の外乱電流状況のために過去の外乱電流状況からの知見に適合させることを可能にする外乱検査へのフィードバックである。すなわち、このフィードバックは、外乱電流自体の中での制御だけでなく、電極の保護方法を用いた将来の印加のための、いわば継続的な自己学習システムを可能にする。
【0021】
本発明による方法において、少なくとも1つの外部バッテリ装置の比較パラメータが比較のために用いられる場合、さらに利点を伴う。すでに述べたように、比較の結果をクラウドに保存し、それにより他のバッテリ装置で利用できるようにすることが可能であり得る。バッテリ装置が、例えば、様々な地理的使用状況で定置型で使用されるか、又はバッテリ装置が様々な車両において移動可能である場合、本発明による方法は、このようにして、これらのバッテリ装置間での検査装置の通信を提供することができる。しかしその場合、バッテリ装置間で完全な検査データを交換する必要はなく、むしろ比較の結果又は比較パラメータ自体を交換しさえすればよい。このようにして、経年劣化状態、個々の外乱電流の成果結果だけでなく、外乱パラメータ及び特定の外乱電流の使用も、異なるバッテリ装置間で簡単に、安価に、そしてとりわけ非常に少ないデータ量で交換することができる。
【0022】
本発明による方法において、比較パラメータとして、バッテリパラメータ及び/又は動作パラメータが外乱電流の印加なしに使用される場合も有利であり得る。この種の情報は、例えば、対応するシミュレーションモデルから、又は並行テストベンチで実行されるバッテリ装置との比較によって取得される。さらに、シミュレーションモデルとして、バッテリ装置の後からの利用の基礎とすることができるテストベンチモデルもここで基本的に考えられる。換言すれば、外乱電流印加時、外乱電流印加中、及び/又は外乱電流印加後の実際の状況をその種の外乱電流なしの状況と比較することができる。したがって、保護されていないバッテリ装置と少なくとも想像上比較を実行することが可能になり、このようにして、バッテリ装置の経年劣化状況の延長若しくは利用状況の延長を少なくとも想像上検証及び記録することができる。
【0023】
本発明による方法において、バッテリ装置のシミュレーションモデルが比較パラメータに使用される場合、さらなる利点を伴うことができる。車両でのシミュレーション、バッテリ装置でのシミュレーション、しかしさらにテストベンチでのシミュレーションからのこの種のシミュレーションモデルも利用可能であり得る。このような場合、実際の比較値は必要でなくなり、それによりそれに対応する検知のコスト、特に必要なセンサ装置を低減することができる。すでに何度も述べたように、その種のシミュレーションモデルを、成果検査時に相応のフィードバックによって学習能力のあるように形成することができ、それにより本発明による方法の耐用期間にわたって改善し、したがって、方法全体も発明の質に関して最適化することができる。
【0024】
本発明の主題は、バッテリ装置の検査のための検査装置でもある。その種の検査装置は、バッテリ装置の少なくとも1つの電気的バッテリパラメータを監視し、バッテリ装置の動作電流の少なくとも1つの動作パラメータを監視し、バッテリ装置の外乱電流の少なくとも1つの外乱パラメータを監視するための監視モジュールを有する。さらに、比較モジュールは、監視された外乱パラメータ、監視された動作パラメータ、及び/又は監視されたバッテリパラメータを、バッテリパラメータ及び/又は動作パラメータに基づく少なくとも1つの比較パラメータと比較するために企図されている。その場合、監視モジュール及び/又は比較モジュールは、殊に本発明による方法を実行するように形成されている。したがって、本発明による検査装置は、本発明による方法との関連で詳しく説明されたのと同じ利点を伴う。
【0025】
本発明の主題は、プログラムがコンピュータによって実行される場合に本発明による方法をコンピュータに実行させる命令を含むコンピュータプログラム製品でもある。したがって、本発明によるコンピュータプログラム製品も、本発明による方法に関して詳しく説明されたのと同じ利点を伴う。
【0026】
本発明の他の利点、特徴及び詳細は、本発明の実施例が図面を参照して詳細に説明される以下の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明による検査装置の一実施形態の図である。
【
図4】本発明による検査装置の一実施形態の図である。
【
図5】外乱電流なしの推移の場合の経年劣化状態の図である。
【
図6】第1の外乱電流による経年劣化状態の図である。
【
図7】2つの外乱電流による経年劣化状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に、車両におけるモバイルバッテリ装置100が模式的に示されている。ここでは、モバイルバッテリ装置は、本発明による方法が実行される検査装置10を備えている。例えば電気的バッテリパラメータEBP及び対応する動作パラメータBPに基づいて外乱電流ISを生成することが可能になり、この外乱電流が動作電流IBに重ねられる。例えば二次部品130によって、例えばバッテリ装置100のインバータの形式で、バッテリ装置の電気回路でこの外乱電流ISを生成することができる。
【0029】
この種の外乱電流ISの機能について、
図2及び
図3を用いて簡単に説明する。通常の動作電流IBが例えば
図2により示されている。ここでは動作電流IBの2つの動作パラメータBPが所定周波数と所定振幅で示されている。次に
図3によれば、これに基づいて外乱電流ISが検知され、ここでは外乱パラメータSPとして、動作電流IBと比べて大きい振幅及び短い周波数を決定することができる。
図1を参照して説明したように、例えば二次部品130によって外乱電流ISの生成を生成することができる。リップル電流と呼ぶこともできるこの外乱電流ISは、次に、動作電流IBに印加され、これにいわば重畳される。このようにして、バッテリ装置100のそれぞれの電極を化学的及び/又は物理的に保護することが可能になる。なぜなら、それぞれの電極における不調和な遷移がそれぞれの電極への層の蓄積を妨げるか、又は完全に回避さえするからである。外乱電流ISが動作電流IBに重畳する限り、この効果が生じる。
【0030】
次に、
図4において、監視モジュール20及び比較モジュール30を用いて検査を行うことを可能にする本発明の検査装置10が模式的に示されている。例えば、センサ装置120だけでなく、シミュレーションモデル110もデータの入力として用いることができる。
【0031】
本発明による保護方法の機能方式は、
図5~
図7から特によく見ることができる。
図5は、ここではバッテリ装置100の経年劣化プロファイルを経年劣化曲線AKの形式で模式的に線図で示す。x軸の時間上にステート・オブ・ヘルスSOHがy方向にプロットされている。次に、バッテリ装置100の通常の動作で利用する場合、ステート・オブ・ヘルスSOHが経年劣化曲線AKの範囲内で低下する。実際には、これが線形相関になることはまれであり、通常、非線形相関になるだろう。本発明によれば、この経年劣化速度を低減するために監視することが可能になる。すでに説明したように、低減するために外乱電流ISを用いることができる。対応する例が
図6に示されている。次に、時間窓において外乱電流ISが印加され、この外乱電流は、その物理的及び/又は化学的保護作用によりバッテリ装置100のそれぞれの電極の経年劣化速度を抑制する。経年劣化は、引き続き生じ、すなわち外乱電流ISの印加中も経年劣化曲線AK、及びそれに伴いステート・オブ・ヘルスSOHが下降するが、速度は遅くなる。次に、この外乱電流ISの成果の質及び/又は量を決定し、したがって検査を保証できるようにするために、様々な比較パラメータVPを用いることができる。特に、外乱電流ISが印加された後、外乱電流ISを印加する前の比較パラメータVPを用いて、又は外乱電流ISを印加しない比較を用いて比較が行われる。対応する情報を、例えば、センサ装置120及び/又はシミュレーションモデル110によって利用可能にすることができる。さらに、
図6において、変化勾配AMがさらに示され、この変化勾配を比較パラメータVPとしてだけでなく、バッテリパラメータEBPとしても使用することができる。
【0032】
純粋な検査の他に、
図6に示されるように、
図7に示すように次の外乱電流ISのためのフィードバックも可能である。したがって、第1の外乱電流ISの成果から第2の外乱電流ISのためのフィードバックを引き出すことができ、第2の外乱電流は、改善された仕方で例えば経年劣化勾配AMをさらに減速させる。当然、シミュレーションモデル110へのフィードバックもまた、本発明の範囲内で考えられる。
【0033】
上記の実施形態の説明は、本発明を例の範囲内で説明するにすぎない。当然、実施形態の個々の特徴は、技術的に有意義である限り、本発明の範囲から逸脱することなしに自由に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0034】
10 検査装置
20 監視モジュール
30 比較モジュール
100 バッテリ装置
110 シミュレーションモデル
120 センサ装置
130 二次部品
EBP バッテリパラメータ
BP 動作パラメータ
IB 動作電流
SP 外乱パラメータ
IS 外乱電流
VP 比較パラメータ
AK 経年劣化曲線
AM 経年劣化勾配
SOH ステート・オブ・ヘルス