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特許7561744酸性ガスを流体ストリームから、ピペラジン環を含む液体吸収剤で除去する方法
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  • 特許-酸性ガスを流体ストリームから、ピペラジン環を含む液体吸収剤で除去する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】酸性ガスを流体ストリームから、ピペラジン環を含む液体吸収剤で除去する方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20240927BHJP
   C10L 3/10 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/14 220
C10L3/10
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021547693
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-07
(86)【国際出願番号】 EP2020053924
(87)【国際公開番号】W WO2020169477
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】19157704.8
(32)【優先日】2019-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エルンスト,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】イングラム,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】フォルベルク,ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】シーダー,ゲオルク
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/001669(WO,A1)
【文献】特表2012-533414(JP,A)
【文献】国際公開第2018/146233(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/186466(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/224350(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14 - 53/18
B01D 53/34 - 53/85
C10L 3/00 - 3/12
B01J 20/00 - 20/34
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性ガスを流体ストリームから除去する方法であって、流体ストリームを吸収剤と接触させて、処理した流体ストリーム及び吸収した吸収剤を得、吸収剤が、希釈剤及び一般式(I)
【化1】
(式中、
R1がC1~C5-アルキルであり、
R2が水素であり、
R3が水素であり、
R4が水素及びC1~C5-アルキルから選択され、
R5が、イソプロピル、tert-ブチル又はtert-ペンチルから選択され、
nが0又は1である)の化合物を含み、
吸収剤が、吸収剤の合計重量に対して、10重量%から70重量%の合計量の一般式(I)の化合物を含む、方法。
【請求項2】
一般式(I)の化合物において、R 5 がtert-ブチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一般式(I)の化合物が、
3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル-tert-ブチルアミン、及び
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル-tert-ブチルアミンから選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
希釈剤が、水、有機溶媒及びそれらの組合せから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
吸収剤が、一般式(I)の化合物以外に、第三級アミン又は2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エタノール(TBAEE)、2-(2-tert-ブチルアミノ)プロポキシエタノール、2-(2-tert-アミルアミノエトキシ)エタノール、2-(2-(1-メチル-1-エチルプロピルアミノ)エトキシ)エタノール、2-(tert-ブチルアミノ)エタノール、2-tert-ブチルアミノ-1-プロパノール、3-tert-ブチルアミノ-1-プロパノール、3-tert-ブチルアミノ-1-ブタノール、3-アザ-2,2-ジメチルヘキサン-1,6-ジオール、2-N-メチルアミノプロパン-1-オール、2-N-メチルアミノ-2-メチルプロパン-1-オール、2-アミノ-2-メチルプロパノール(2-AMP)、2-アミノ-2-エチルプロパノール、2-アミノ-2-プロピルプロパノール、1,2-ビス(tert-ブチルアミノエトキシ)エタン、ビス(tert-ブチルアミノエチル)エーテル及び2-(2-tert-ブチルアミノエトキシエトキシ)エタノールから選択される第一級若しくは第二級アミンを含、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
流体ストリームから二酸化炭素よりも硫化水素を選択的に除去する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
吸収した吸収剤が、加熱、減圧及びストリッピングの手段の少なくとも1つによって再生される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
希釈剤及び一般式(I)
【化2】
(式中、
R1がC1~C5-アルキルであり、
R2が水素であり、
R3が水素であり、
R4が水素及びC1~C5-アルキルから選択され、
R5が、イソプロピル、tert-ブチル又はtert-ペンチルから選択され、
nが0又は1である)の化合物を含み、
吸収剤が、吸収剤の合計重量に対して、10重量%から70重量%の合計量の一般式(I)の化合物を含む、酸性ガスを流体ストリームから吸収するための吸収剤。
【請求項9】
一般式(I)の化合物において、R 5 がtert-ブチルである、請求項8に記載の吸収剤。
【請求項10】
一般式(I)の化合物が
3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル-tert-ブチルアミン、及び
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル-tert-ブチルアミンから選択される、請求項8又は9に記載の吸収剤。
【請求項11】
希釈剤が、水、有機溶媒及びそれらの組合せから選択される、請求項8から10のいずれか一項に記載の吸収剤。
【請求項12】
酸性ガスを流体ストリームから除去するための、一般式(I)
【化3】
(式中、
R 1 がC 1 ~C 5 -アルキルであり、
R 2 が水素であり、
R 3 が水素であり、
R 4 が水素及びC 1 ~C 5 -アルキルから選択され、
R 5 が、イソプロピル、tert-ブチル又はtert-ペンチルから選択され、
nが0又は1である)の化合物の使用。
【請求項13】
一般式(I)の化合物において、R 5 がtert-ブチルである、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
一般式(I)の化合物が、
3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル-tert-ブチルアミン、及び
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル-tert-ブチルアミンから選択される、請求項12又は13に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性ガスを流体ストリームから除去する方法、及び酸性ガスの流体ストリームからの吸収に好適な吸収剤に関する。
【背景技術】
【0002】
酸性ガス、例えばCO2、H2S、SO2、CS2、HCN、COS又はメルカプタンの、流体ストリーム、例えば天然ガス、製油所ガス又は合成ガスからの除去は、様々な理由で望ましい。天然ガス中の硫黄化合物は、特に天然ガスが同伴することが多い水と共に、腐食性酸を形成する傾向がある。パイプラインでの天然ガスの運搬又は天然ガス液化プラントにおけるさらなる加工(LNG=液化天然ガス)では、したがって硫黄を含有する不純物に対して一定の制約が遵守されなければならない。さらに、多数の硫黄化合物は低濃度でも悪臭を放ち、毒性がある。
【0003】
二酸化炭素は、高濃度のCO2がガスの発熱量を低下させるため、天然ガスから除去されなければならない。さらに、CO2は湿度と共に、パイプ及びバルブの腐食を引き起こし得る。
【0004】
酸性ガスを除去する公知の方法は、無機又は有機塩基の吸収剤水溶液を用いた洗浄作業を含む。酸性ガスが吸収剤に溶解している場合、イオンが塩基と共に生じる。吸収剤は、より低い圧力への減圧及び/又はストリッピングにより再生でき、それによってイオン性化学種は逆反応し、酸性ガスが放出され、且つ/又は不活性流体、例えばスチームによってストリッピングされる。再生プロセス後、吸収剤は再使用できる。
【0005】
CO2及びH2Sが実質的に除去される方法は、「全吸収」と呼ばれる。CO2の除去は、腐食の問題を避け、消費者に必要な発熱量を提供するのに必須なことがあるが、時折、混合物からH2Sを選択的に除去する一方、CO2の除去を最小限に抑えるように、CO2及びH2Sの両方を含有する酸性ガス混合物を処理することが必須になる、又は望ましい。天然ガスパイプラインの仕様は、H2SがCO2より毒性且つ腐食性なので、例えばH2Sレベルに対してCO2より厳密な制約を定めており、通例の天然キャリアガスパイプラインの仕様は、典型的にはH2S含有量を4ppmvに制約しており、CO2に対する制約は2vol-%でより緩い。選択的なH2S除去は、硫黄回収ユニット、例えば下流のClausプラントへの供給流中のH2Sレベルを高めるのに望ましいことが多い。
【0006】
高度立体障害第二級アミン、例えば2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エタノール(TBAEE)及び第三級アミン、例えばメチルジエタノールアミン(MDEA)は、CO2よりもH2Sに対して動的選択性を呈する。そのようなアミンは、したがって、CO2及びH2Sを含むガス混合物からCO2よりもH2Sを選択的に除去するのに好適であり、一般的に水性混合物として利用される。これらのアミンは、CO2と直接反応しないが、その代わりCO2は、遅い反応でアミン及び水と反応して、重炭酸イオンが得られる。反応速度論により、H2Sは収着剤のアミン基と直接、より急速に反応して、水溶液中に水硫化物イオンを形成できる。
【0007】
US2015/0027055A1は、立体障害がある末端エーテル化アルカノールアミンを含む吸収剤によって、CO2を含有するガス混合物から、H2Sを選択的に除去する方法について記載している。
【0008】
US2017/182455A1は、CO2も含むガス混合物から、H2Sを選択的に分離する方法であって、ガス混合物のストリームが、1つ以上のアミン、アルカノールアミン、ヒンダードアルカノールアミン、キャップされたアルカノールアミン、又はそれらの混合物を含む吸収剤溶液と接触する、方法について記載している。
【0009】
WO2014/001664A1は、アミノアルキル置換モルホリン誘導体、及び酸性ガスの除去におけるその使用について記載している。
【0010】
DE40 272 49A1は、2個の窒素原子を有するヘテロ環式部分を含む化合物、並びにガスストリームからの無機及び有機硫黄化合物の選択的除去におけるその使用について記載している。
【0011】
WO2014/001669A1は、アミノアルキルピペラジン誘導体を含む吸収剤溶液、及びガス状流出物から酸化合物を除去する方法におけるその使用について記載している。後続する実施例及び比較例に示されているように、これらの化合物は、おそらくピペラジン環外のアミノ部分に立体障害がないため劣化しやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、さらなる吸収剤、及び酸性ガスを流体ストリームから除去するのに好適な方法を提供することである。吸収剤は、硫化水素を流体ストリームから選択的に除去するのに有用である。吸収剤は、高い酸性ガス担持能力(loading capacity)、高い安定性及び低い揮発性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
目的は、酸性ガスを流体ストリームから除去する方法であって、流体ストリームを吸収剤と接触させて、処理した流体ストリーム及び吸収した吸収剤を得、吸収剤は、希釈剤及び一般式(I)
【0014】
【化1】
(式中、
R1は、C1~C8-アルキル及びC2~C8-ヒドロキシアルキルから選択され、
R2は、水素及びC1~C8-アルキルから選択され、
R3は、水素及びC1~C8-アルキルから選択され、
R4は、水素及びC1~C8-アルキルから選択され、
R5はC1~C8-アルキルであり、
但し、以下の条件(i)及び(ii):
(i)R5は、第二級又は第三級炭素原子を経由して窒素原子に結合しているC3~C8-アルキルである、
(ii)R4が水素である場合、R3はC1~C8-アルキルであるか、又は
R4がC1~C8-アルキルである場合、R2及びR3の少なくとも1つは、C1~C8-アルキルである、
の少なくとも1つを満たすことを条件とし、
nは、0から6の整数である)の化合物を含む、方法により達成される。
【0015】
そのような吸収剤は、高い酸性ガス担持能力、高い安定性及び低い揮発性を有利に顕示することが見出された。
【0016】
さらに、本発明は、酸性ガスを上記の流体ストリームから吸収するための吸収剤、及び酸性ガスを流体ストリームから除去するための、一般式(I)の化合物の使用に関する。本明細書に記載されている実施形態が、適用可能な場合は本発明の態様すべて、すなわち、吸収剤、式(I)の化合物の使用及び方法に関することは理解される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の方法を行うのに好適なプラントの概略図である。
図2】3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル-tert-ブチルアミン(TBAP-MPIP)のマススペクトルを示す図である。
図3】2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル-tert-ブチルアミン(TBAE-MPIP)のマススペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
一般式(I)の化合物は、2個の第三級アミノ基を含み、その窒素原子は、ピペラジン環構造の一部である。ピペラジン環構造にはアルキレン部分が結合し、このアルキレン部分は、第三級アミノ基、又は立体障害第二級アミノ基であるアミノ基により終了する。一般式(I)の化合物が、第二級アミノ基を含む場合、すなわちR4が水素である場合、R3はC1~C8-アルキルであり、且つ/又はR5は、第二級又は第三級炭素原子を経由して窒素原子に結合しているC3~C8-アルキルである。したがって、第二級アミノ基における窒素原子は、少なくとも1個の直接隣接した第二級又は第三級炭素原子を有し、ひいては立体障害している。
【0019】
一般式(I)の化合物のすべてのアミノ官能基は、第三級アミノ基又は立体障害第二級アミノ基であるので、化合物は、H2Sの除去に対する動的選択性を示す。
【0020】
R1は、C1~C8-アルキル及びC2~C8-ヒドロキシアルキルから選択される。R1は、好ましくはC1~C8-アルキル、より好ましくはC1~C5-アルキルである。R1は、最も好ましくはメチル、エチル、n-プロピル及びn-ブチル、とりわけメチルから選択される。
【0021】
R2は、水素及びC1~C8-アルキルから選択される。R2は、好ましくは水素である。一実施形態では、R2は、C1~C5-アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル又はn-ブチル、とりわけメチルである。
【0022】
R3は、水素及びC1~C8-アルキルから選択される。R3は、好ましくは水素である。一実施形態では、R3は、C1~C5-アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル又はn-ブチル、とりわけメチルである。
【0023】
R2が、C1~C8-アルキルである場合、R3は水素であることが好ましい。R3がC1~C8-アルキルである場合、R2は水素であることが好ましい。一実施形態では、R2はメチルであり、R3は水素である。別の実施形態では、R2は水素であり、R3はメチルである。好ましい実施形態では、R2及びR3の両方は水素である。
【0024】
R4は、水素及びC1~C8-アルキルから選択される。R4は、好ましくは水素である。或いは、R4は、C1~C5-アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル又はn-ブチル、とりわけメチルであり得る。
【0025】
R5はC1~C8-アルキルである。R5は、例えば直鎖状C1~C5-アルキル、例としてメチル、エチル、n-プロピル若しくはn-ブチル、とりわけメチルであり得、又はR5は、例えば第二級又は第三級炭素原子を経由して窒素原子に結合しているC3~C8-アルキル、例として第二級又は第三級炭素原子を経由して窒素原子に結合しているC3~C5-アルキル、例としてイソプロピル(-CH(CH3)2)、tert-ブチル(-C(CH3)3)及びtert-ペンチル(-C(CH3)2-CH2-CH3)、とりわけtert-ブチルであり得る。
【0026】
一般式(I)の化合物では、以下の条件(i)及び(ii):(i)R5は、第二級又は第三級炭素原子を経由して窒素原子に結合しているC3~C8-アルキルであり、(ii)R4が水素である場合、R3はC1~C8-アルキルであり、又はR4がC1~C8-アルキルである場合、R2及びR3の少なくとも1つは、C1~C8-アルキルである、の少なくとも1つを満たす。条件(i)に当てはまる場合、R5は、最も好ましくはイソプロピル、tert-ブチル及びtert-ペンチル、とりわけtert-ブチルから選択される。
【0027】
nは、0から6の整数、すなわち0、1、2、3、4、5又は6である。nは、好ましくは0から3の整数、すなわち0、1、2又は3である。最も好ましくは、nは0又は1である。
【0028】
「アルキル」という用語は、指定された数の炭素原子を有する、分岐状及び直鎖状飽和脂肪族炭化水素基の両方を含むことが理解される。これは、ヒドロキシアルキル置換基に含まれるアルキル基にも当てはまる。
【0029】
一実施形態では、
R1はC1~C5-アルキルであり、
R2は、水素及びC1~C5-アルキルから選択され、
R3は、水素及びC1~C5-アルキルから選択され、
R4は、水素及びC1~C5-アルキルから選択され、
R5はC1~C5-アルキルであり、
但し、以下の条件(i')及び(ii'):
(i')R5は、第二級又は第三級炭素原子を経由して窒素原子に結合しているC3~C5-アルキルである、
(ii')R4が水素である場合、R3はC1~C5-アルキルであるか、又は
R4はC1~C5-アルキルである場合、R2及びR3の少なくとも1つは、C1~C5-アルキルである、の少なくとも1つを満たすことを条件とし、
nは1から4の整数である、
例えば、
R1はC1~C5-アルキルであり、
R2は水素であり、
R3は水素であり、
R4はC1~C5-アルキルであり、
R5は、イソプロピル、tert-ブチル又はtert-ペンチル、好ましくはtert-ブチルから選択され、
nは0又は1である、
又は、好ましくは、
R1はC1~C5-アルキルであり、
R2は水素であり、
R3は水素であり、
R4は水素であり、
R5は、イソプロピル、tert-ブチル又はtert-ペンチル、好ましくはtert-ブチルから選択され、
nは0又は1である。
【0030】
一般式(I)の化合物の例は:
2-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル-ジメチルアミン、
3-メチル-3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル-ジメチルアミン、
4-メチル-4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ブチル-ジメチルアミン、
5-メチル-5-(4-メチルピペラジン-1-イル)ペンチル-ジメチルアミン、
N-メチル-1-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチルアミン、
N-メチル-1-メチル-3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピルアミン、
N-メチル-1-メチル-4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ブチルアミン、
N-メチル-1-メチル-5-(4-メチルピペラジン-1-イル)ペンチルアミン、
1-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル-ジメチルアミン、
1-メチル-3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル-ジメチルアミン、
1-メチル-4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ブチル-ジメチルアミン、
1-メチル-5-(4-メチルピペラジン-1-イル)ペンチル-ジメチルアミン、
N-メチル-N-イソプロピル-1-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチルアミン、
N-メチル-N-イソプロピル-2-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチルアミン、
N-メチル-N-tert-ブチル-1-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチルアミン、
N-メチル-N-tert-ブチル-2-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチルアミン、
N-メチル-N-イソプロピル-1-メチル-3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピルアミン、
N-メチル-N-イソプロピル-3-メチル-3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピルアミン、
N-メチル-N-tert-ブチル-1-メチル-3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピルアミン、
N-メチル-N-tert-ブチル-3-メチル-3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピルアミン、
N-メチル-N-イソプロピル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチルアミン、
N-メチル-N-イソプロピル-3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピルアミン、
N-メチル-N-イソプロピル-4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ブチルアミン、
N-メチル-N-イソプロピル-5-(4-メチルピペラジン-1-イル)ペンチルアミン、
N-メチル-N-tert-ブチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチルアミン、
N-メチル-N-tert-ブチル-3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピルアミン、
N-メチル-N-tert-ブチル-4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ブチルアミン、
N-メチル-N-tert-ブチル-5-(4-メチルピペラジン-1-イル)ペンチルアミン、
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル-イソプロピルアミン、
3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル-イソプロピルアミン、
4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ブチル-イソプロピルアミン、
5-(4-メチルピペラジン-1-イル)ペンチル-イソプロピルアミン、
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル-tert-ブチルアミン、
3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル-tert-ブチルアミン、
4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ブチル-tert-ブチルアミン及び
5-(4-メチルピペラジン-1-イル)ペンチル-tert-ブチルアミンを含む。
【0031】
好ましくは、一般式(I)の化合物は、2-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル-ジメチルアミン、N-メチル-1-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチルアミン、3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル-tert-ブチルアミン(TBAP-MPIP)及び2-(4-メチル-ピペラジン-1-イル)エチル-tert-ブチルアミン(TBAE-MPIP)から、最も好ましくは3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル-tert-ブチルアミン(TBAP-MPIP)及び2-(4-メチル-ピペラジン-1-イル)エチル-tert-ブチルアミン(TBAE-MPIP)から選択される。
【0032】
吸収剤は、好ましくは、吸収剤の合計重量に対して10重量%から70重量%、より好ましくは15重量%から65重量%、最も好ましくは20重量%から60重量%の合計量の一般式(I)の化合物を含む。
【0033】
一般式(I)の化合物は、それ自体公知である、又は式(Ia)
【0034】
【化2】
のアルコールを、水素存在下での昇温昇圧における、好適なアミノ化触媒の存在下で、アミンHNR4R5と反応させることにより合成され得る。アミンは、第一級アミン(R4は水素である)、例えばtert-ブチルアミン、又は第二級アミン(R4はC1~C8-アルキルである)、例えばジメチルアミン又はメチル-tert-ブチルアミンであり得る。
【0035】
好ましくは、アミンHNR4R5は、反応中、式(Ia)のアルコールのモル量を超えるモル過剰量で使用される。好ましい実施形態では、アミンのモル量は、反応開始時のアルコールのモル量を、アルコールの量に対して5から5,000mol-%、好ましくは50から1,000mol-%まで超える。
【0036】
好ましくは、反応は、水素化/脱水素化触媒の存在下で、例えば銅含有水素化/脱水素化触媒の存在下で実行される。触媒は、担体、例えばアルミナ担体に適用され得る。
【0037】
一実施形態では、担体付銅、ニッケル及びコバルト含有水素化/脱水素化触媒が使用され、触媒の触媒活性材料は、水素を用いたその還元前に、アルミニウム、銅、ニッケル及びコバルトの酸素化合物、並びにSnOとして計算して0.2から5.0重量%の範囲でスズの酸素化合物を含む。好ましい実施形態では、WO2011/067199で請求されている触媒による触媒、特にWO2011/067199の実施例5による触媒が使用される。
【0038】
触媒充填(catalyst load)は、式(Ia)のアルコール0.01から2kg/(L・h)の範囲で、好ましくは0.1から1.0kg/(L・h)の範囲で、とりわけ好ましい実施形態では、0.2から0.8kg/(L・h)の範囲で、変動し得る。
【0039】
好ましい実施形態では、反応は150から260℃の温度にて実行される。とりわけ好ましい実施形態では、反応は170から240℃、例えば170から200℃の温度にて実行される。
【0040】
反応は、圧力5から300barにて、液相又は気相で実行され得る。好ましい実施形態では、反応は、60から220barの圧力にて実行される。説明の全体を通じて、別途注記のない限りすべての圧力は絶対圧力(絶対bar)である。
【0041】
反応は、撹拌タンク反応器、固定床管型反応器及び多管型反応器を使用して実行され得る。これは、粗反応混合物のリサイクルを伴う、また、伴わないバッチ、セミバッチ及び連続モードで実行され得る。好ましい実施形態では、反応は、固定床管型反応器において連続モードで実行される。
【0042】
一実施形態では、過剰なアミンHNR4R5は、ワンステップ蒸留による反応の生成物から分離する。「ワンステップ蒸留」という用語は、リボイラーで生成された蒸気が直ちにコンデンサーに向けられる単純な蒸留設定の場合のように、単一の分離段階のみを伴う蒸留を意味すると理解される。反対に、精留塔は、例えば、いくつかの分離した段階を有し、分別蒸留を表す。別の実施形態では、過剰なアミンHNR4R5は、分別蒸留により反応の生成物から分離する。好ましくは、分離される過剰なアミンは、アミン(I)のさらなる生産にリサイクルされる。
【0043】
アミン(I)、アルコール(Ia)及びアミンHNR4R5以外に、反応生成物は、いくつかの他の物質を含有する。通常、反応生成物は、水及び副産物、例えばアルコール(Ia)のエーテル誘導体を含有する。
【0044】
好ましい実施形態では、水及び副産物は、反応の生成物から分離する。とりわけ好ましい実施形態では、水及び副産物、並びに、上記の蒸留後に反応生成物に依然留まる過剰なアミンは、さらなる蒸留ステップ、好ましくはワンステップ蒸留ステップにより反応生成物から除去される。このステップは、好ましくは約90mbarの圧力にて実行される。任意の適したリボイラーを、このステップに適用してよい。流下膜式蒸発器又は薄膜蒸発器を使用してよい。特に、「Sambay」タイプエバポレーターを使用した薄膜蒸発が適用され得、生成されたガスは室温にて凝縮される。
【0045】
後処理ステップ後、得られた生成物は、本発明の吸収剤を得るために、希釈剤と混合され得る。さらなる物質を、上記のように添加してよい。
【0046】
或いは、後処理ステップ後、得られた生成物は、酸性ガス吸収剤の利用箇所、例えばガス洗浄プラントに運搬され、希釈剤と現場で混合されて、本発明の吸収剤を得ることができる。さらなる物質は、上記のように現場で添加され得る。
【0047】
吸収剤は希釈剤を含む。好ましくは、希釈剤は、水、有機溶媒、好ましくは水混和性有機溶媒、及びそれらの組合せから選択される。吸収剤は、吸収剤の合計重量に対して、好ましくは20重量%から90重量%、より好ましくは30から80重量%、最も好ましくは40から65重量%の合計量の希釈剤を含む。
【0048】
好ましい実施形態では、希釈剤は水を含む。しかし、吸収剤の水含有量は、例えば最高で20重量%、或いは最高で10重量%、好ましくは最高で5重量%、又は最高で2重量%に制約することが望ましい。吸収剤の水含有量の制約は、CO2よりもH2Sに対する吸収剤の選択性を改善し得る。
【0049】
有機溶媒は、好ましくは:
C4~C10アルコール、例えばn-ブタノール、n-ペンタノール及びn-ヘキサノール、
ケトン、例えばシクロヘキサノン、
エステル、例えば酢酸エチル及び酢酸ブチル、
ラクトン、例えばγ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン及びε-カプロラクトン、
アミド、例えば第三級カルボキサミド、例えばN,N-ジメチルホルムアミド又はN-ホルミルモルホリン及びN-アセチルモルホリン、
ラクタム、例えばγ-ブチロラクタム、δ-バレロラクタム及びε-カプロラクタム及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、
スルホン、例えばスルホラン、
スルホキシド、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、
グリコール、例えばエチレングリコール(EG)及びプロピレングリコール、
ポリアルキレングリコール、例えばジエチレングリコール(DEG)及びトリエチレングリコール(TEG)、
ジ又はモノ(C1~C4-アルキルエーテル)グリコール、例えばエチレングリコールモノメチル又はジメチルエーテル、
ジ又はモノ(C1~C4-アルキルエーテル)ポリアルキレングリコール、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル及びトリエチレングリコールジメチルエーテル、
環状尿素、例えばN,N-ジメチルイミダゾリジン-2-オン及びジメチルプロピレン尿素(DMPU)、
チオアルカノール、例えばエチレンジチオエタノール、チオジエチレングリコール(チオジグリコール、TDG)及びメチルチオエタノール、
並びにそれらの混合物から選択される。
【0050】
より好ましくは、有機溶媒は、スルホン、グリコール及びポリアルキレングリコールから選択される。最も好ましくは、有機溶媒は、スルホンから選択される。好ましい有機溶媒は、スルホランである。
【0051】
一実施形態では、吸収剤は、一般式(I)の化合物以外に、第三級アミン又は高度立体障害第一級アミン及び/若しくは高度立体障害第二級アミンを含む。高度立体障害は、第一級又は第二級窒素原子に直接隣接している第三級炭素原子を意味すると理解される。この実施形態では、吸収剤は、一般式(I)の化合物以外に、第三級アミン又は高度立体障害第一級若しくは第二級アミンを、吸収剤の合計重量に対して、一般的に5重量%から50重量%、好ましくは10重量%から40重量%、より好ましくは20重量%から40重量%の量で含む。
【0052】
好適な第三級アミンは、とりわけ:
1.第三級アルカノールアミン、例えば
ビス(2-ヒドロキシエチル)メチルアミン(メチルジエタノールアミン、MDEA)、トリス(2-ヒドロキシエチル)アミン(トリエタノールアミン、TEA)、トリブタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール(ジエチルエタノールアミン、DEEA)、2-ジメチルアミノエタノール(ジメチルエタノールアミン、DMEA)、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール(N,N-ジメチルプロパノールアミン)、3-ジエチルアミノ-1-プロパノール、2-ジイソプロピルアミノエタノール(DIEA)、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)メチルアミン(メチルジイソプロパノールアミン、MDIPA)、
2.第三級アミノエーテル、例えば
3-メトキシプロピルジメチルアミン、
3.第三級ポリアミン、例えばビス-第三級ジアミン、例として
N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチル-N',N'-ジメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'-テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N',N'-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン(TMPDA)、N,N,N',N'-テトラエチル-1,3-プロパンジアミン(TEPDA)、N,N,N',N'-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン、N,N-ジメチル-N',N'-ジエチルエチレンジアミン(DMDEEDA)、1-ジメチルアミノ-2-ジメチルアミノエトキシエタン(ビス[2-(ジメチルアミノ)エチル]エーテル)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(TEDA)、テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン、
及びそれらの混合物を含む。
【0053】
第三級アルカノールアミン、すなわち、窒素原子に結合している少なくとも1個のヒドロキシアルキル基を有するアミンは、一般的に好ましい。メチルジエタノールアミン(MDEA)は特に好ましい。
【0054】
一般式(I)の化合物以外に、好適な高度立体障害第一級又は第二級アミン(すなわち、第一級又は第二級窒素原子に直接隣接している第三級炭素原子を有するアミン)は、とりわけ:
1.高度立体障害第二級アルカノールアミン、例えば
2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エタノール(TBAEE)、2-(2-tert-ブチルアミノ)プロポキシエタノール、2-(2-tert-アミルアミノエトキシ)エタノール、2-(2-(1-メチル-1-エチルプロピルアミノ)エトキシ)エタノール、2-(tert-ブチルアミノ)エタノール、2-tert-ブチルアミノ-1-プロパノール、3-tert-ブチルアミノ-1-プロパノール、3-tert-ブチルアミノ-1-ブタノール及び3-アザ-2,2-ジメチルヘキサン-1,6-ジオール、2-N-メチルアミノプロパン-1-オール、2-N-メチルアミノ-2-メチルプロパン-1-オール、
2.高度立体障害第一級アルカノールアミン、例えば
2-アミノ-2-メチルプロパノール(2-AMP)、2-アミノ-2-エチルプロパノール及び2-アミノ-2-プロピルプロパノール、
3.高度立体障害アミノエーテル、例えば
1,2-ビス(tert-ブチルアミノエトキシ)エタン、ビス(tert-ブチルアミノエチル)エーテル、
並びにそれらの混合物を含む。
【0055】
高度立体障害第二級アルカノールアミンは、一般的に好ましい。2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エタノール及び2-(2-tert-ブチルアミノエトキシエトキシ)エタノールが特に好ましい。
【0056】
一般式(I)の化合物は、H2S除去に固有の動的選択性を示すが、ある実施形態では、H2SとCO2を除去することが望ましいことがある。CO2の除去は、活性化物質を吸収剤に組み込むことにより促進され得る。
【0057】
一実施形態では、吸収剤は、立体的に障害がない第一級アミン、及び/又は立体的に障害がない第二級アミンから選択される、少なくとも1つの活性化物質を含む。立体的に障害がない第一級アミンは、第一級又は第二級炭素原子のみが結合している第一級アミノ基を有する化合物を意味すると理解される。立体的に障害がない第二級アミンは、第一級炭素原子のみが結合している第二級アミノ基を有する化合物を意味すると理解される。立体的に障害がない第一級アミン又は立体的に障害がない第二級アミンは、CO2吸収の強力な活性化物質として作用する。したがって、活性化物質の存在は、酸性ガスの非選択的除去を対象とした用途、又はCO2の除去がとりわけ重要な用途に望ましくなり得る。
【0058】
活性化物質は、好ましくは酸性基、例えば、詳細にはホスホン酸、スルホン酸及び/又はカルボン酸基を含まない。
【0059】
活性化物質は、例えば、
アルカノールアミン、例えばモノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、エチルアミノエタノール、1-アミノ-2-メチルプロパン-2-オール、2-アミノ-1-ブタノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール及び2-(2-アミノエトキシ)エタンアミン、
ポリアミン、例えばヘキサメチレンジアミン、1,4-ジアミノブタン、1,3-ジアミノプロパン、3-(メチルアミノ)プロピルアミン(MAPA)、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、3-(ジメチルアミノ)プロピルアミン(DMAPA)、3-(ジエチルアミノ)プロピルアミン、N,N'-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、
環内に少なくとも1個のNH基を有し、環内に窒素及び酸素から選択される1又は2個のさらなるヘテロ原子を含み得る5-、6-又は7員環飽和ヘテロ環、例えばピペラジン、2-メチルピペラジン、N-メチルピペラジン、N-エチルピペラジン、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、ホモピペラジン、ピペリジン及びモルホリンから選択される。
【0060】
環内に少なくとも1個のNH基を有し、環内に窒素及び酸素から選択される1又は2個のさらなるヘテロ原子を含み得る5-、6-又は7員環飽和ヘテロ環が、特に好ましい。ピペラジンが特にきわめて好ましい。
【0061】
一方、H2S選択性が望ましい場合、吸収剤は、好ましくは立体的に障害がない第一級アミン又は立体的に障害がない第二級アミンを一切含まない。立体的に障害がない第一級アミン又は立体的に障害がない第二級アミンは、CO2吸収の強力な活性化物質として作用するので、吸収剤にそれらが存在すると、吸収剤のH2S選択性が失われ得る。したがって、高いH2S選択性が望ましい用途では、そのような化合物を本質的に含まない吸収剤が好ましい。
【0062】
一実施形態では、吸収剤は酸を含む。酸は、吸収剤を再生させて充填(loading)を少なくし、方法の効率を向上させるのを助ける。プロトン化平衡が、酸及び一般式(I)の化合物の間において生じる。平衡の位置は温度依存性であり、平衡は、高温にて、遊離オキソニウムイオン及び/又はプロトン化エンタルピーがより低いアミン塩へとシフトされる。吸収ステップにおいて見られる比較的低い温度では、より高いpHが効率的な酸性ガス吸収を促進するのに対して、脱着ステップにおいて見られる比較的高い温度では、より低いpHが吸収された酸性ガスの放出を支持する。
【0063】
酸は、25℃にて測定して、好ましくは6未満、とりわけ5未満のpKAを有する。1つ超の解離段階を有し、したがって1つ超のpKAを有する酸の場合では、この要件は、pKA値の1つが、指定された範囲内である場合に満たされる。酸は、好適にはプロトン酸(ブレンステッド酸)から選択される。
【0064】
酸は、好ましくは120℃にて測定した水溶液のpHが、7.9から9.5未満、好ましくは8.0から8.8未満、より好ましくは8.0から8.5未満、最も好ましくは8.0から8.2未満であるような量で添加される。
【0065】
酸の量は、吸収剤の合計重量に対して、一実施形態では、0.1重量%から5.0重量%、好ましくは0.2重量%から4.5重量%、より好ましくは0.5重量%から4.0重量%、最も好ましくは1.0重量%から2.5重量%である。
【0066】
酸は、有機及び無機酸から選択される。好適な有機酸は、例えば、ホスホン酸、スルホン酸、カルボン酸及びアミノ酸を含む。特定の実施形態では、酸は多塩基酸である。
【0067】
好適な酸は、例えば、
鉱酸、例として塩酸、硫酸、アミド硫酸、リン酸、リン酸の部分エステル、例としてリン酸モノ及びジアルキル、並びにリン酸モノ及びジアリール、例としてリン酸トリデシル、リン酸ジブチル、リン酸ジフェニル及びビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ホウ酸、
カルボン酸、例として飽和脂肪族モノカルボン酸、例としてギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、n-ヘプタン酸、カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプロン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸;飽和脂肪族ポリカルボン酸、例としてシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸;脂環式モノ及びポリカルボン酸、例としてシクロヘキサンカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、樹脂酸、ナフテン酸;脂肪族ヒドロキシカルボン酸、例としてグリコール酸、乳酸、マンデル酸、ヒドロキシ酪酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸;ハロゲン化脂肪族カルボン酸、例としてトリクロロ酢酸又は2-クロロプロピオン酸;芳香族モノ及びポリカルボン酸、例として安息香酸、サリチル酸、没食子酸、位置異性体のトルイル酸、メトキシ安息香酸、クロロ安息香酸、ニトロ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸;工業用(technical)カルボン酸混合物、例としてバーサティック酸(Versatic acid)、
スルホン酸、例としてメチルスルホン酸、ブチルスルホン酸、3-ヒドロキシプロピルスルホン酸、スルホ酢酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、p-キシレンスルホン酸、4-ドデシルベンゼンスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸及びジノニルナフタレンジスルホン酸、トリフルオロメチル-又はノナフルオロ-n-ブチルスルホン酸、カンファースルホン酸、2-(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル)エタンスルホン酸(HEPES)、
有機ホスホン酸、例として式(A-I)
R101-PO3H (A-I)
(式中、R101は、カルボキシル、カルボキシアミド、ヒドロキシル及びアミノから独立して選択される4個までの置換基により任意選択で置換されているC1~18アルキルである)のホスホン酸である。
【0068】
これらは、アルキルホスホン酸、例えばメチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、2-メチルプロピルホスホン酸、t-ブチルホスホン酸、n-ブチルホスホン酸、2,3-ジメチルブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸;ヒドロキシアルキルホスホン酸、例えばヒドロキシメチルホスホン酸、1-ヒドロキシエチルホスホン酸、2-ヒドロキシエチルホスホン酸;アリールホスホン酸、例えばフェニルホスホン酸、トリルホスホン酸、キシリルホスホン酸、アミノアルキルホスホン酸、例えばアミノメチルホスホン酸、1-アミノエチルホスホン酸、1-ジメチルアミノエチルホスホン酸、2-アミノエチルホスホン酸、2-(N-メチルアミノ)エチルホスホン酸、3-アミノプロピルホスホン酸、2-アミノプロピルホスホン酸、1-アミノプロピルホスホン酸、1-アミノプロピル-2-クロロプロピルホスホン酸、2-アミノブチルホスホン酸、3-アミノブチルホスホン酸、1-アミノブチルホスホン酸、4-アミノブチルホスホン酸、2-アミノペンチルホスホン酸、5-アミノペンチルホスホン酸、2-アミノヘキシルホスホン酸、5-アミノヘキシルホスホン酸、2-アミノオクチルホスホン酸、1-アミノオクチルホスホン酸、1-アミノブチルホスホン酸;アミドアルキルホスホン酸、例えば3-ヒドロキシメチルアミノ-3-オキソプロピルホスホン酸;並びにホスホノカルボン酸、例えば2-ヒドロキシホスホノ酢酸及び2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸;
式(A-II)
【0069】
【化3】
(式中、R102は、H又はC1~6アルキルであり、QはH、OH又はNR103 2であり、R103は、H又はCH2PO3H2である)のホスホン酸、例えば1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸;
式(A-III)
【0070】
【化4】
(式中、Zは、C2~6-アルキレン、シクロアルカンジイル、フェニレン又はシクロアルカンジイル若しくはフェニレンにより中断されるC2~6-アルキレンであり、Yは、CH2PO3H2であり、mは0から4である)のホスホン酸、例えばエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びビス(ヘキサメチレン)トリアミンペンタ(メチレンホスホン酸);
式(A-IV)
R104-NR105 2 (A-IV)
(式中、R104は、C1~6アルキル、C2~6-ヒドロキシアルキル又はR105であり、R105は、CH2PO3H2である)のホスホン酸、例えばニトリロトリス(メチレンホスホン酸)及び2-ヒドロキシエチルイミノビス(メチレンホスホン酸);
第三級アミノ基、又はアミノ基に直接隣接した少なくとも1個の第二級若しくは第三級炭素原子を有するアミノ基を有するアミノカルボン酸、
例えば
第三級アミノ基、又はアミノ基に直接隣接した少なくとも1個の第二級若しくは第三級炭素原子を有するアミノ基を有するα-アミノ酸、例としてN,N-ジメチルグリシン(ジメチルアミノ酢酸)、N,N-ジエチルグリシン、アラニン(2-アミノプロピオン酸)、N-メチルアラニン(2-(メチルアミノ)プロピオン酸)、N,N-ジメチルアラニン、N-エチルアラニン、2-メチルアラニン(2-アミノイソ酪酸)、ロイシン(2-アミノ-4-メチルペンタン-1-オイック酸)、N-メチルロイシン、N,N-ジメチルロイシン、イソロイシン(1-アミノ-2-メチルペンタン酸)、N-メチルイソロイシン、N,N-ジメチルイソロイシン、バリン(2-アミノイソ吉草酸)、α-メチルバリン(2-アミノ-2-メチルイソ吉草酸)、N-メチルバリン(2-メチルアミノイソ吉草酸)、N,N-ジメチルバリン、プロリン(ピロリジン-2-カルボン酸)、N-メチルプロリン、N-メチルセリン、N,N-ジメチルセリン、2-(メチルアミノ)イソ酪酸、ピペリジン-2-カルボン酸、N-メチルピペリジン-2-カルボン酸、
第三級アミノ基、又はアミノ基に直接隣接した少なくとも1個の第二級若しくは第三級炭素原子を有するアミノ基を有するβ-アミノ酸、例えば3-ジメチルアミノプロピオン酸、N-メチルイミノジプロピオン酸、N-メチルピペリジン-3-カルボン酸、
第三級アミノ基、又はアミノ基に直接隣接した少なくとも1個の第二級若しくは第三級炭素原子を有するアミノ基を有するγ-アミノ酸、例えば4-ジメチルアミノ酪酸、
或いは第三級アミノ基、又はアミノ基に直接隣接した少なくとも1個の第二級若しくは第三級炭素原子を有するアミノ基を有するアミノカルボン酸、例えばN-メチルピペリジン-4-カルボン酸を含む。
【0071】
無機酸のうち、リン酸及び硫酸、とりわけリン酸が好ましい。
【0072】
カルボン酸のうち、ギ酸、酢酸、安息香酸、コハク酸及びアジピン酸が好ましい。
【0073】
スルホン酸のうち、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及び2-(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル)エタンスルホン酸(HEPES)が好ましい。
【0074】
ホスホン酸のうち、2-ヒドロキシホスホノ酢酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(HDTMP)及びニトリロトリス(メチレンホスホン酸)が好ましく、そのうち1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸が特に好ましい。
【0075】
第三級アミノ基、又はアミノ基に直接隣接した少なくとも1個の第二級若しくは第三級炭素原子を有するアミノ基を有するアミノカルボン酸のうち、N,N-ジメチルグリシン及びN-メチルアラニンが好ましい。
【0076】
より好ましくは、酸は無機酸である。
【0077】
吸収剤は、添加剤、例えば腐食防止剤、酵素、消泡剤等も含み得る。一般に、そのような添加剤の量は、吸収剤の合計重量に対して、約0.005%から3%の範囲である。
【0078】
酸性ガスを流体ストリームから除去する方法では、流体ストリームを、上記の実施形態のいずれかで定義されている吸収剤と接触させ、処理した流体ストリーム及び吸収した吸収剤が得られる。
【0079】
一実施形態では、方法は、流体ストリームから二酸化炭素よりも硫化水素を選択的に除去する方法である。この文脈では、「二酸化炭素よりも硫化水素に対する選択性」は、以下:
【0080】
【数1】
(式中、
【0081】
【数2】
は、ガス相と接触する液相におけるモルH2S/CO2比であり、
【0082】
【数3】
は、ガス相におけるモルH2S/CO2比である)の指数の値を意味すると理解される。標準的なガス洗浄プロセスでは、液相は、吸収器の下部の吸収した吸収剤であり、ガス相は、処理される流体ストリームである。
【0083】
方法は、上記指数の値が1を超える場合、CO2よりもH2Sに対して選択的と理解される。流体ストリームから二酸化炭素よりも硫化水素を選択的に除去する方法の場合では、二酸化炭素よりも硫化水素に対する選択性は、好ましくは少なくとも1.1、より一層好ましくは少なくとも2、最も好ましくは少なくとも4、例えば少なくとも6である。
【0084】
本発明の吸収剤は、あらゆる種類の流体の処理に好適である。流体は、まずガス、例えば天然ガス、合成ガス、コークス炉ガス、クラッキングガス、石炭ガス化ガス、サイクルガス、ランドフィルガス及び燃焼ガス、次に吸収剤と本質的に非混和性の液体、例えばLPG(液化石油ガス)又はNGL(天然ガス液)である。本発明の方法は、炭化水素系流体ストリーム、とりわけ炭化水素系ガスストリーム、例えば天然ガスストリームの処理に特に好適である。存在する炭化水素は、例えば脂肪族炭化水素、例としてC1~C4炭化水素、例としてメタン、不飽和炭化水素、例としてエチレン若しくはプロピレン、又は芳香族炭化水素、例としてベンゼン、トルエン又はキシレンである。
【0085】
一実施形態では、流体ストリームは、天然ガスストリームである。この実施形態では、流体ストリームにおける硫化水素分圧は、典型的には少なくとも2.5mbarである。特に、少なくとも0.1bar、とりわけ少なくとも1barの硫化水素分圧、及び少なくとも0.2bar、とりわけ少なくとも1barの二酸化炭素分圧が、流体ストリームに存在する。より好ましくは、流体ストリームにおいて少なくとも0.1barの硫化水素分圧、及び少なくとも1barの二酸化炭素分圧が存在する。より一層好ましくは、流体ストリームにおいて少なくとも0.5barの硫化水素分圧、及び少なくとも1barの二酸化炭素分圧が存在する。定められた分圧は、吸収ステップにおける、吸収剤との最初の接触における流体ストリームに基づく。好ましい実施形態では、少なくとも1.0bar、より好ましくは少なくとも3.0bar、より一層好ましくは少なくとも5.0bar、最も好ましくは少なくとも20barの全圧が、流体ストリームに存在する。好ましい実施形態では、多くとも180bar、例えば多くとも90barの全圧が、流体ストリームに存在する。全圧は、吸収ステップにおける、吸収剤との最初の接触における流体ストリームに基づく。
【0086】
いくつかの場合では、例えば、パイプラインガス又は販売ガスとしての使用のために、天然ガスから酸性ガスを除去する場合では、二酸化炭素の全吸収は望ましくない。一実施形態では、処理した流体ストリームにおける残留二酸化炭素含有量は、少なくとも0.5体積%、好ましくは少なくとも1.0体積%、より好ましくは少なくとも1.5体積%である。
【0087】
一実施形態では、吸収剤は、硫化水素及び二酸化炭素を含む流体ストリームからの硫化水素の選択的除去に好適であり、低い溶媒循環速度で高いH2Sの選択的清浄化を可能とする。そのような吸収剤は、硫黄プラントテールガス処理ユニット(TGTU)用途、希薄酸オフガスを処理ユニットからより高品質のClausプラント供給流へとアップグレードする酸性ガス富化(AGE)プロセス、又は付随ガス及び製油所ガスの処理に有用である。これらのプロセスでは、1.0から2.0barの範囲の全圧は、通常、流体ストリームに存在する。全圧は、吸収ステップにおける、吸収剤との最初の接触における流体ストリームに基づく。
【0088】
TGTU用途では、流体ストリームにおける硫化水素分圧は、典型的には少なくとも3mbarである。特に、少なくとも8mbar、とりわけ少なくとも10mbarの硫化水素分圧、及び少なくとも30mbar、とりわけ少なくとも50mbarの二酸化炭素分圧が、流体ストリームに存在する。
【0089】
AGE用途では、流体ストリームにおける硫化水素分圧は、典型的には少なくとも5mbarである。特に、少なくとも20mbar、とりわけ少なくとも50mbarの硫化水素分圧、及び少なくとも500mbar、とりわけ少なくとも800mbarの二酸化炭素分圧が、流体ストリームに存在する。
【0090】
H2S及びCO2の除去以外に、流体ストリームに存在し得るさらなる酸性ガス、例えばSO3、SO2、CS2、HCN、COS及びメルカプタンも除去され得る。SO3及びSO2は、アミンと熱安定性塩を形成する傾向があり、再生においてストリッピングされないことがある。
【0091】
本発明の方法では、流体ストリームは、吸収ステップで吸収器において吸収剤と接触させ、その結果として、二酸化炭素及び硫化水素は、少なくとも部分的に洗い落とされる。これにより、CO2及びH2Sが排除された流体ストリーム及びCO2及びH2Sを吸収した吸収剤が得られる。
【0092】
使用される吸収器は、慣例のガス洗浄プロセスに使用される洗浄装置である。好適な洗浄装置は、例えば、不規則充填物、構造化充填物を有し、トレイを有する塔(column)、膜接触器、ラジアルフロー洗浄器、ジェット洗浄器、ベンチュリ洗浄器及びロータリー噴霧洗浄器、好ましくは構造化充填物を有し、不規則充填物を有し、トレイを有する塔、より好ましくはトレイを有し、不規則充填物を有する塔である。流体ストリームは、好ましくは、塔において、向流で吸収剤を用いて処理される。流体は一般的に、塔の下方領域、吸収剤は塔の上方領域に供給される。シーブトレイ、バブルキャップトレイ又はバルブトレイがトレイ塔に取り付けられ、その上を液体が流れる。
【0093】
不規則充填物を有する塔は、異なる成形体で満たしてよい。熱及び物質移動は、通常約25から80mmの大きさの成形体によって引き起こされる表面積の増加により改善される。公知の例は、Raschigリング(中空シリンダー)、Pallリング、Hiflowリング、Intaloxサドルなどである。不規則充填物は、順番に、或いは無作為に(ベッドとして)塔に導入され得る。考えられる材料は、ガラス、セラミック、金属及びプラスチックを含む。構造化充填物は、順序付けられた不規則充填物のさらなる発展である。これらは、規則的構造を有する。結果として、充填物の場合では、ガス流における圧力下降を抑制することが可能である。様々な設計の構造化充填物、例えば織物充填物又はシート金属充填物が存在する。使用される材料は、金属、プラスチック、ガラス及びセラミックであり得る。
【0094】
吸収ステップにおける吸収剤の温度は、一般的に約30から100℃であり、塔が使用される場合、例えば塔の上部で30から70℃、及び塔の下部で50から100℃である。
【0095】
本発明の方法は、1つ以上、とりわけ2つの連続する吸収ステップを含み得る。吸収は、複数の連続する構成ステップで実施され得、この場合では、酸性ガス成分を含む粗ガスは、構成ステップのそれぞれにおいて吸収剤のサブストリームと接触させる。粗ガスが接触する吸収剤は、酸性ガスを既に部分的に包含していることがあり、例えば、下流吸収ステップから最初の吸収ステップにリサイクルされている吸収剤、又は部分的に再生した吸収剤であり得ることを意味する。二段階吸収の実施に関しては、公報EP0 159 495、EP0 190 434、EP 0 359 991及びWO00100271が参照される。
【0096】
当業者は、例えば、吸収ステップにおける条件、例えば吸収剤/流体ストリーム比、吸収器の塔の高さ、吸収器における接触を促進する内部構造のタイプ、例えば不規則充填物、トレイ若しくは構造化充填物、及び/又は再生した吸収剤の残留担持量を変動させることにより、定義されている選択性で高いレベルの硫化水素除去を達成できる。
【0097】
CO2はH2Sよりもゆっくり吸収されるので、短い滞留時間よりも長い滞留時間でより多くCO2が吸収される。したがって、長い滞留時間は、H2Sの選択性を低下する傾向がある。より高い塔は、したがって選択的吸収がより少なくなる。比較的高い液体のホールドアップを有するトレイ又は構造化充填物も、同じくより少ない選択的吸収を引き起こす。再生の際に導入される加熱エネルギーは、再生した吸収剤の残留担持量を調整するために使用され得る。再生した吸収剤の残留担持量がより少ないと、改善した吸収につながる。
【0098】
方法は、好ましくは、CO2及びH2Sを吸収した吸収剤が再生される再生ステップを含む。再生ステップでは、CO2及びH2S、並びに任意選択でさらなる酸性ガス成分が、CO2及びH2Sを吸収した吸収剤から放出されて、再生した吸収剤が得られる。好ましくは、再生した吸収剤は、続いて吸収ステップにリサイクルされる。一般に、再生ステップは、加熱、減圧及び例えば不活性流体を用いたストリッピングの手段の少なくとも1つを含む。
【0099】
再生ステップは、好ましくは、例えばボイラー、自然循環エバポレーター、強制循環エバポレーター又は強制循環フラッシュエバポレーターによって、酸性ガス成分を有する、吸収した吸収剤を加熱するステップを含む。吸収される酸性ガスは、溶液を加熱することにより得られたスチームによってストリッピングされる。スチームではなく不活性流体、例えば窒素を使用することも可能である。「不活性流体」という用語は、酸性ガス、特に二酸化炭素及び硫化水素との化学反応を受けない流体に関すると理解される。脱着装置における絶対圧力は、通常0.1から3.5bar、好ましくは1.0から2.5barである。温度は、通常50℃から170℃、好ましくは70℃から140℃であり、110℃から135℃がより好ましい。再生温度は、再生圧力に依存する。
【0100】
再生ステップは、減圧を代替として又は追加で含んでよい。これは、吸収した吸収剤の、吸収ステップの誘導に存在する高圧からより低い圧力への、少なくとも1回の減圧を含む。減圧は、例えば、スロットルバルブ及び/又は減圧タービンによって達成され得る。減圧段階を伴う再生は、例えば、公報US4,537,753及びUS4,553,984で記載されている。
【0101】
酸性ガス成分は、例えば減圧塔、例として、垂直若しくは水平に取り付けられたフラッシュ容器、又は内部構造を有する向流塔において再生ステップで放出され得る。
【0102】
再生塔は、同じく不規則充填物を有し、構造化充填物を有し、又はトレイを有する塔であり得る。再生塔は、下部にヒーター、例えば循環ポンプを有する強制循環エバポレーターを有する。上部に、再生塔は、放出された酸性ガスの流出口を有する。同伴される吸収媒体の蒸気は、コンデンサーにおいて凝縮され、塔に再循環される。
【0103】
複数の減圧塔を連続してつなげることが可能であり、そこでは再生が異なる圧力で遂行される。例えば、再生は、予備減圧塔において、典型的には、吸収ステップにおける酸性ガス成分の分圧を約1.5barを超える高圧で、また、主要な減圧塔において低圧、例えば1から2絶対barで遂行できる。2つ以上の減圧段階を用いる再生は、公報US4,537,753、US4,553,984、EP0 159 495、EP0 202 600、EP0 190 434及びEP0 121 109に記載されている。
【0104】
本発明は、添付の図面及び後続する実施例により詳細に例証される。
【0105】
図1によれば、硫化水素及び二酸化炭素を含む好適に前処理したガスは、注入口Zを経由して吸収器A1に供給され、吸収剤ライン1.01を経由して吸収器A1に供給された再生した吸収剤と、向流で接触する。吸収剤は、吸収により硫化水素及び二酸化炭素をガスから除去し、これにより、オフガスライン1.02を経由して、硫化水素及び二酸化炭素が排除されたガスを得る。
【0106】
吸収剤ライン1.03、吸収剤ライン1.05を通って誘導された再生した吸収剤からの熱により、CO2及びH2Sを吸収した吸収剤が加熱される熱交換器1.04、及び吸収剤ライン1.06を経由して、CO2及びH2Sを吸収した吸収剤は、脱着塔Dに供給され、再生される。
【0107】
吸収器A1及び熱交換器1.04の間に、1つ以上のフラッシュ容器を設けてよく(図1に示されていない)、そこではCO2及びH2Sを吸収した吸収剤は、例えば、3から15barに減圧される。
【0108】
脱着塔Dの下方部から、吸収剤はボイラー1.07に誘導され、そこで加熱される。生じたスチームは、脱着塔Dにリサイクルされる一方、再生した吸収剤は、吸収剤ライン1.05、再生した吸収剤が、CO2及びH2Sを吸収した吸収剤を加熱すると同時に、再生した吸収剤が冷却される熱交換器1.04、吸収剤ライン1.08、冷却器1.09及び吸収剤ライン1.01を経由して吸収器A1に再度供給される。
【0109】
描写されているボイラーの代わりに、エネルギーを導入するために、他の熱交換器タイプ、例えば自然循環エバポレーター、強制循環エバポレーター又は強制循環フラッシュエバポレーターを使用することも可能である。これらのエバポレータータイプの場合では、再生した吸収剤及びスチームの混合相ストリームが、脱着塔Dの下部へ戻り、そこで蒸気及び吸収剤の間における相分離が起きる。熱交換器1.04に供給される再生した吸収剤は、脱着塔Dの下部からエバポレーターに誘導される、又は別のラインを経由して、脱着塔Dの下部から直接熱交換器1.04に誘導される循環ストリームから取り出される。
【0110】
脱着塔Dで放出されるCO2及びH2S含有ガスは、オフガスライン1.10を経由して脱着塔Dから出る。これは、一体化した相分離1.11を伴うコンデンサーに供給され、そこで同伴する吸収剤蒸気から分離される。本発明の方法の実施に好適なこの、及び他のすべてのプラントにおいて、凝縮及び相分離は、互いに別々に実施してもよい。続いて、凝縮物は、吸収剤ライン1.12を通して脱着塔Dの上方領域へと誘導され、CO2及びH2S含有ガスは、ガスライン1.13を経由して排出される。
【0111】
以下の略語が使用される:
TBA:tert-ブチルアミン
MDEA:メチルジエタノールアミン
TBAEE:2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エタノール
M3ETB:(2-(2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エトキシ)エチル)メチルエーテル
TBAEPY:1-[2-(tert-ブチルアミノ)エチル]ピロリジン-2-オン
TBAP-MPIP:3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル-tert-ブチルアミン
TBAE-MPIP:2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル-tert-ブチルアミン
DEAE-EPIP:2-(4-エチルピペラジン-1-イル)エチル-ジエチルアミン
【0112】
[実施例1]
3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル-tert-ブチルアミン(TBAP-MPIP)の合成
【0113】
【化5】
3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル-tert-ブチルアミンの合成は、体積2.5Lの高圧オートクレーブを使用して、3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパン-1-オールから開始して実行した。オートクレーブは、触媒成形体を網にかけるための金属でできているバスケット、メカニカルスターラー、バッフル、電熱マントル及びH2及びN2の注入口を備えていた。Al2O3上にNi、Co、Cu、Snを含有する還元不動態化触媒の100gの3×3mmペレット(WO2011/067199A1、実施例5に従って得られた)をバスケットに充填し、730g(10.0mol)のtert-ブチルアミン及び200g(1.264mol)の3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパン-1-オールの混合物を、オートクレーブに導入した。
【0114】
オートクレーブを閉じ、テストを行って、N2を用いて加圧することにより、オートクレーブが200barで密閉されることを確実にした。オートクレーブは、次いで5barに加圧することによりN2で3回パージし、圧力を1barに開放した。次いで、これを水素で50barに、撹拌しながら加圧し、内容物を180℃に加熱した。この温度に達した時点で、圧力を200barに調整した。これらの条件下で15時間撹拌した後で、オートクレーブを冷却し、減圧した。液体混合物を取り出し、濾過した。
【0115】
粗反応生成物を、GCにより分析した。生成物は、電子衝突イオン化及びイオンイオン化(GC方法:使用される塔は、タイプRTX5 Aminのもの、長さ30m;直径0.32mm;層の厚さ1.5μm;温度プログラム:60℃にて注入、次いで280℃まで4℃/分で直線温度勾配、次いで280℃にて35分)を使用してGC-MS(213uでの分子質量ピーク)により同定した。
【0116】
粗生成物混合物は、7.4%出発材料、43.0%生成物、16.7%1,3-ビス(4-メチル-ピペラジン-1-イル)プロパンを含有していた(GC面積-%)。80℃及び20mbarにて、ロータリーエバポレーターのライトボイラーを除去し、次いで残りの粗生成物を、リングで満たした長さ30cmの塔で蒸留し、純度95%の1分画(13.8g)を保持する一方、残部(133.5g)を長さ20cmの小さい塔で再度蒸留し、48.6gの、純度87%の生成物を得た。残りは大半が、望ましいテストに関連性があると考えられない出発材料であった。
【0117】
生成物はGC-MSにより分析し、マススペクトルは、電子衝突イオン化(EI)(条件:質量範囲:25~785amu;イオン化エネルギー:70eV)を使用して記録した。選択されたピークは、電荷により割った精密質量及び丸括弧内の最も強力なシグナルに対する強度を用いて以下のように列挙される。さらに、分子フラグメントを考えられるピークに割り付ける。
m/z=213(<1%、M+);198(2%、M+-CH3);183(2%、M+-2CH3);182(8%、M+-CH3-H);169(12%);143(25%、M+-NC4H9);127(14%);113(63%、C6H13N2 +、フラグメント N,N'-ジメチルピペラジニル+)、101(5%、N-メチルピペラジン+H+);100(20%、N-メチルピペラジン+);99(10%);98(35%);97(6%);96(7%);72(8%) 71(27%);70(100%)、69(2%);58(18%、C4H9 +);57(24%);56(19%);55(5%);54(3%)。
【0118】
予想されるモルピークM+が見出された。構造は、フラグメント化パターンの分析により確認した。TBAP-MPIPのマススペクトルは、図2に示されている。
【0119】
[実施例2]
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル-tert-ブチルアミン(TBAE-MPIP)の合成
【0120】
【化6】
実施例1と同一の設定及び設備を使用して、200g(1.387mol)の1-(ヒドロキシエチル)-4-メチルピペラジンを、1014g(13.87mol)のtert-ブチルアミンと、実施例1に記載されている100gの触媒上で、120bar及び180℃にて反応させた。8時間後、反応器を室温に冷却し、減圧し、試料を取り出し、これを先に記載されているように分析した。これは、出発材料及び様々な生成物の面積-%から計算して、35%のみの変換を示した。
【0121】
粗反応混合物は、190℃及び全圧120barにてさらに12時間反応させた。ガスクロマトグラフィーにより分析した粗混合物の試料は、90%及び66%の生成物の変換を示した。過剰なTBA及び水を減圧下(60℃、50mbar)での蒸発により除去し、残渣を15cm塔の上で分別蒸留により精製した。約1mbarで、生成物は、54℃のヘッド温度にて蒸留した。90g生成物の純度93%の分画を収集し、さらなるテストに使用した。残りは、大半が出発材料であり、評価に関連性があると考えられなかった。
【0122】
生成物をGC-MSにより分析し、マススペクトルは、電子衝突イオン化(EI)を使用して記録した(条件:質量範囲:25~785amu;イオン化エネルギー:70eV)。選択されたピークは、電荷により割った精密質量及び丸括弧内の最も強力なシグナルに対する強度を用いて以下のように列挙される。さらに、分子フラグメントを考えられるピークに割り付ける。
m/z=199(1%、M+);184(1%、M+-CH3);168(1%、M+-H、-2CH3);114(15%、C6H14N2 +、N,N'-ジメチルピペラジン+);113(69%、C6H13N2 +、フラグメント N,N'-ジメチルピペラジニル+)、101(5%、N-メチルピペラジン+H+);100(20%、N-メチルピペラジン+);99(10%);98(11%);71(16%);70(100%)、69(1%);58(8%、C4H9 +);57(11%);56(10%);55(3%);54(2%)。
【0123】
予想されるモルピークM+が見出された。構造は、フラグメント化パターンの分析により確認した。TBAE-MPIPのマススペクトルは、図3に示されている。
【0124】
[実施例3]
相対揮発性
30wt.-%水溶液中のアミンTBAP-MPIP及びTBAE-MPIPの揮発性は、30%wt.-%水溶液中のアミンM3ETB、MDEA及びTBAEPYのものと比較した。
【0125】
5℃にて作動させるガラスコンデンサーは、サーモスタット付きジャケットを有するガラスシリンダーに装着した。ガラスシリンダーを50℃に温度調節し、200mLの吸収剤を各テストのために導入した。実験の持続時間8時間かけて、30L(STP)/hのN2を吸収剤に周囲圧力で通過させた。各アミンでは、テストを3回実施した。凝縮物をGC及びKarl Fischer滴定によって分析した。結果は、以下の表に示されている。
【0126】
【表1】
【0127】
TBAP-MPIP及びTBAE-MPIPが、好適に低い揮発性を有することは明白である。
【0128】
[実施例4]
酸性ガス担持能力
担持実験、続いてストリッピング実験を実施した。5℃にて作動させるガラスコンデンサーは、サーモスタット付きジャケットを有するガラスシリンダーに装着した。実験の経過中に得られた凝縮物は、吸収剤の部分的な蒸発によるテスト結果の歪みを防止するように、ガラスシリンダーへ戻した。
【0129】
ガラスシリンダーに、約100mLの未吸収吸収剤(水中に30重量%のアミン)を最初に入れた。周囲圧力及び40℃での吸収能力を判定するために、8L(STP)/hのCO2又はH2Sを、フリットを経由して吸収液体に約4時間かけて通過させた。続いて、CO2又はH2Sの担持量は、以下のように判定された:
【0130】
H2Sの判定は、硝酸銀溶液を用いた滴定により遂行された。この目的のために、分析される試料は、約2重量%の酢酸ナトリウム及び約3重量%のアンモニアと共に、水溶液中で計量した。続いて、H2S含有量を、硝酸銀での電位差転換点滴定により判定した。転換点において、H2Sは、Ag2Sとして完全に結合する。CO2含有量は、全無機炭素として判定された(TOC-V Series Shimadzu)。
【0131】
吸収した溶液のストリッピングは、同一の装置設定を80℃に加熱すること、吸収した吸収剤を導入すること、及びN2流(8L(STP)/h)を用いてこれをストリッピングすることにより行った。60分後、試料を取り出し、吸収剤のCO2又はH2S担持量を、上記のように判定した。
【0132】
担持実験の終わりの担持量、及びストリッピング実験の終わりの担持量の差により、それぞれのサイクル能力が示される。
【0133】
結果は、以下の表に示されている。
【0134】
【表2】
【0135】
TBAP-MPIP及びTBAE-MPIPベースの吸収剤は、同等又はより一層高いサイクル酸性ガス能力において、TBAEE及びMDEAベースの吸収剤より著しく高い酸性ガス担持能力を有することは明白である。DEAE-EPIPは、TBAE-MPIPと同様のサイクルCO2能力を顕示するが、DEAE-EPIPのサイクルH2S能力は、TBAP-MPIP及びTBAE-MPIPの両方の能力より著しく低い。
【0136】
[実施例5]
pKA
MDEA、TBAP-MPIP、TBAE-MPIP及びDEAE-EPIPのアミノ基のpKa値はそれぞれ、20℃にて、リットル当たり0.005molのアミンと塩酸(0.1mol/L)を含む水溶液の滴定によって判定された。結果は、以下の表に示されている:
【0137】
【表3】
【0138】
TBAP-MPIP及びTBAE-MPIPは、吸収ステップにおいて見られる比較的低い温度で高い第1のpKA値を有することは明白である。比較的低い温度で高いpKA値は、効率的な酸性ガス吸収を促進する。さらに、第2のpKA値は、MDEAのpKa値に近く、これは、実施例4で測定されたアミン1モル当たりの高いCO2及びH2S担持能力と一致する。
【0139】
[実施例6]
熱安定性
TBAP-MPIP(水中30wt.-%)及びTBAE-MPIP(水中25wt.-%)の熱安定性を、酸性ガス担持を伴う、また伴わないMDEA(水中に40wt.-%のMDEA)及びDEAE-EPIP(水中に30wt.-%のDEAE-EPIP)の両方と比較した。
【0140】
シリンダー(10mL)にそれぞれの溶液(8mL)を最初に入れ、シリンダーを閉じた。シリンダーを150℃に125時間加熱した。酸性ガスの担持下で実施される実験では、溶液の酸性ガス担持量は、CO2 20m3(STP)/t溶媒及びH2S 20m3(STP)/t溶媒であった。アミンの分解レベルは、実験の前後にガスクロマトグラフィーにより測定したアミン濃度から計算した。結果は、以下の表に示されている。
【0141】
【表4】
【0142】
TBAP-MPIP及びTBAE-MPIPはそれぞれ、水溶液中で、MDEAと同等の、またDEAE-EPIPより高い安定性を有することは明白である。
いくつかの実施形態を以下に示す。
項1
酸性ガスを流体ストリームから除去する方法であって、流体ストリームを吸収剤と接触させて、処理した流体ストリーム及び吸収した吸収剤を得、吸収剤が、希釈剤及び一般式(I)
【化7】
(式中、
R 1 は、C 1 ~C 8 -アルキル及びC 2 ~C 8 -ヒドロキシアルキルから選択され、
R 2 は、水素及びC 1 ~C 8 -アルキルから選択され、
R 3 は、水素及びC 1 ~C 8 -アルキルから選択され、
R 4 は、水素及びC 1 ~C 8 -アルキルから選択され、
R 5 はC 1 ~C 8 -アルキルであり、
但し、以下の条件(i)及び(ii):
(i)R 5 が、第二級又は第三級炭素原子を経由して窒素原子に結合しているC 3 ~C 8 -アルキルである、
(ii)R 4 が水素である場合、R 3 がC 1 ~C 8 -アルキルであるか、又はR 4 がC 1 ~C 8 -アルキルである場合、R 2 及びR 3 の少なくとも1つが、C 1 ~C 8 -アルキルである、
の少なくとも1つを満たすことを条件とし、
nは、0から6の整数である)の化合物を含む、方法。
項2
R 1 がC 1 ~C 5 -アルキルであり、
R 2 が水素であり、
R 3 が水素であり、
R 4 が水素であり、
R 5 が、イソプロピル、tert-ブチル又はtert-ペンチル、好ましくはtert-ブチルから選択され、
nが0又は1である、項1に記載の方法。
項3
R 1 がC 1 ~C 5 -アルキルであり、
R 2 が水素であり、
R 3 が水素であり、
R 4 がC 1 ~C 5 -アルキルであり、
R 5 が、イソプロピル、tert-ブチル又はtert-ペンチル、好ましくはtert-ブチルから選択され、
nが0又は1である、項1に記載の方法。
項4
一般式(I)の化合物が、2-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル-ジメチルアミン、
1-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル-ジメチルアミン、
3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル-tert-ブチルアミン、及び
2-(4-メチル-ピペラジン-1-イル)エチル-tert-ブチルアミンから、
好ましくは3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル-tert-ブチルアミン、及び
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル-tert-ブチルアミンから選択される、項1に記載の方法。
項5
吸収剤が、吸収剤の合計重量に対して、10重量%から70重量%の合計量の一般式(I)の化合物を含む、項1から4のいずれか一項に記載の方法。
項6
希釈剤が、水、有機溶媒及びそれらの組合せから選択される、項1から5のいずれか一項に記載の方法。
項7
吸収剤が、一般式(I)の化合物以外に、第三級アミン又は高度立体障害第一級アミン又は高度立体障害第二級アミンを含み、高度立体障害が、第一級又は第二級窒素原子に直接隣接している第三級炭素原子を意味すると理解される、項1から6のいずれか一項に記載の方法。
項8
流体ストリームから二酸化炭素よりも硫化水素を選択的に除去する、項1から7のいずれか一項に記載の方法。
項9
吸収した吸収剤が、加熱、減圧及びストリッピングの手段の少なくとも1つによって再生される、項1から8のいずれか一項に記載の方法。
項10
希釈剤及び一般式(I)
【化8】
(式中、
R 1 は、C 1 ~C 8 -アルキル及びC 2 ~C 8 -ヒドロキシアルキルから選択され、
R 2 は、水素及びC 1 ~C 8 -アルキルから選択され、
R 3 は、水素及びC 1 ~C 8 -アルキルから選択され、
R 4 は、水素及びC 1 ~C 8 -アルキルから選択され、
R 5 はC 1 ~C 8 -アルキルであり、
但し、以下の条件(i)及び(ii):
(i)R 5 が、第二級又は第三級炭素原子を経由して窒素原子に結合しているC 3 ~C 8 -アルキルである、
(ii)R 4 が水素である場合、R 3 がC 1 ~C 8 -アルキルであるか、又は
R 4 がC 1 ~C 8 -アルキルである場合、R 2 及びR 3 の少なくとも1つが、C 1 ~C 8 -アルキルである、
の少なくとも1つを満たすことを条件とし、
nは、0から6の整数である、)の化合物を含む、酸性ガスを流体ストリームから吸収するための吸収剤。
項11
R 1 がC 1 ~C 5 -アルキルであり、
R 2 が水素であり、
R 3 が水素であり、
R 4 が水素であり、
R 5 が、イソプロピル、tert-ブチル又はtert-ペンチル、好ましくはtert-ブチルから選択され、
nが0又は1である、項10に記載の吸収剤。
項12
R 1 がC 1 ~C 5 -アルキルであり、
R 2 が水素であり、
R 3 が水素であり、
R 4 がC 1 ~C 5 -アルキルであり、
R 5 が、イソプロピル、tert-ブチル又はtert-ペンチル、好ましくはtert-ブチルから選択され、
nが0又は1である、項10に記載の吸収剤。
項13
一般式(I)の化合物が、2-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル-ジメチルアミン、
1-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル-ジメチルアミン、
3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル-tert-ブチルアミン、及び
2-(4-メチル-ピペラジン-1-イル)エチル-tert-ブチルアミンから、
好ましくは3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル-tert-ブチルアミン、及び
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル-tert-ブチルアミンから選択される、項10に記載の吸収剤。
項14
希釈剤が、水、有機溶媒及びそれらの組合せから選択される、項10から13のいずれか一項に記載の吸収剤。
項15
酸性ガスを流体ストリームから除去するための、項1から4のいずれか一項に記載の一般式(I)の化合物の使用。
図1
図2
図3