(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ベースレス接着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/10 20180101AFI20241002BHJP
C09J 129/04 20060101ALI20241002BHJP
C09J 109/02 20060101ALI20241002BHJP
C09J 161/04 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
C09J7/10
C09J129/04
C09J109/02
C09J161/04
(21)【出願番号】P 2022156268
(22)【出願日】2022-09-29
【審査請求日】2024-05-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518282543
【氏名又は名称】大阪屋商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146927
【氏名又は名称】船越 巧子
(74)【代理人】
【識別番号】100188640
【氏名又は名称】後藤 圭次
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸司
(72)【発明者】
【氏名】弓削 隆一郎
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-097463(JP,U)
【文献】特表2010-510367(JP,A)
【文献】特公昭43-028608(JP,B1)
【文献】特開2011-190351(JP,A)
【文献】特開平02-091177(JP,A)
【文献】特開昭63-213676(JP,A)
【文献】特開平07-112506(JP,A)
【文献】特開2010-077364(JP,A)
【文献】特開2021-082727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の層の表面が粘着性であり、他方の層の表面が非粘着性である、支持体を有しない2層構造の熱硬化性接着シートであって、粘着性を有しない層は、接着剤成分がフェノール樹脂とアルキルアセタール化ポリビニルアルコール樹脂であり、粘着性を有する層は、接着剤成分がレゾール型フェノール樹脂とアクリロニトリルブタジエンゴムである熱硬化性の接着シート。
【請求項2】
前記粘着性を有しない層の接着剤成分において、フェノール樹脂100重量部に対し、アルキルアセタール化ポリビニルアルコール樹脂が30~50重量部である請求項1に記載の熱硬化性の接着シート。
【請求項3】
前記粘着性を有しない層の接着剤成分におけるフェノール樹脂がレゾール型フェノール樹脂であり、アルキルアセタール化ポリビニルアルコール樹脂がポリビニルブチラール樹脂である請求項1または2に記載の熱硬化性の接着シート。
【請求項4】
前記粘着性を有する層の接着剤成分において、アクリロニトリルブタジエンゴム100重量部に対し、レゾール型フェノール樹脂が75~200重量部である
請求項1に記載の熱硬化性の接着シート。
【請求項5】
前記粘着性を有する層の接着剤成分におけるアクリロニトリルブタジエンゴムがアクリロニトリル含有量41%、ムーニー粘度73の高分子量熱可塑性エラストマーであり、レゾール型フェノール樹脂がアルキル変性フェノール樹脂とエポキシ変性フェノール樹脂の比が1:1の混合物である
請求項1または4に記載の熱硬化性の接着シート。
【請求項6】
前記接着シートは、厚さが80~240μmであり、前記粘着性を有しない層と前記粘着性を有する層の厚さの比が1:1~1:3である
請求項1に記載の熱硬化性の接着シート。
【請求項7】
請求項1に記載の接着シートの製造方法であって、接着剤成分がフェノール樹脂とアルキルアセタール化ポリビニルアルコール樹脂である接着剤により粘着性を有しない層を形成した後、接着剤成分がレゾール型フェノール樹脂とアクリロニトリルブタジエンゴムである接着剤により粘着性を有する層を形成する工程からなる熱硬化性の接着シートの製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の接着シートの製造方法であって、接着剤成分がレゾール型フェノール樹脂とアクリロニトリルブタジエンゴムである接着剤により粘着性を有する層を形成した後、接着剤成分がフェノール樹脂とアルキルアセタール化ポリビニルアルコール樹脂である接着剤により粘着性を有しない層を形成する工程からなる熱硬化性の接着シートの製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の接着シートの製造方法であって、接着剤成分がフェノール樹脂とアルキルアセタール化ポリビニルアルコール樹脂である接着剤により粘着性を有しない層を形成し、また別途、接着剤成分がレゾール型フェノール樹脂とアクリロニトリルブタジエンゴムである接着剤により粘着性を有する層を形成し、それぞれの層を貼り合わせる工程からなる熱硬化性の接着シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車ブレーキの摩擦材・金属、金属・金属及び金属・ゴムの接着に使用する接着シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブレーキのディスクパッドの製造において、金属板にプライマーを塗布、乾燥した後、摩擦材に接着剤を塗布、乾燥する工程を経て製造していた。しかし、プライマー及び接着剤は有機溶剤を含有しており作業環境が人体に及ぼす影響が大きく、また、液体の塗布量の均一さ、ひいては製品の品質にも問題があった。
【0003】
そこで、近年では接着剤をあらかじめフィルム状にした接着シートが用いられるようになっているが、粘着性によりシートの取扱い、貼付けの際の作業性に問題があり、また、接着剤と被着材との特性の関係から必ずしも十分な接着力が得られるものではなかった。
【0004】
このことから、被着体の特性に適する異なる接着剤を層状とした接着シートが開発されている。層状接着シートの多くは接着剤を支持体に含浸させ、乾燥後他の接着剤を塗布している。支持体を有する層状接着シートにより接着されたものは、支持体中の残留溶剤のため、例えば、JIS-D4422の温度300℃の高温試験では接着力が低下するという欠点があった。また、自動車用ディスクブレーキでのJIS-D4419接着面さび発生試験後においてJIS-D4422の300℃の高温試験においても摩擦材が材料破壊するほどの接着力を有する接着シートは無かった。
【0005】
また、支持体を有しない2層構造の接着シートも知られている(特許文献1、2)が、JIS-D4422の300℃の高温試験に耐えうるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実公昭51-25563号公報
【文献】特開2010-77364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、自動車ブレーキの摩擦材・金属、金属・金属及び金属・ゴムを接合するにあたり、300℃の高温であっても接着力が低下することのない、取扱い、作業性に優れた熱硬化性の接着シート及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、摩擦材と金属を接着する熱硬化性の接着シートを開発すべく、さまざまな組成の接着剤を製造し試験を重ねてきたが、単層の接着シートでは、接着力、取扱い、作業性の点で満足のできるものが得られなかった。そこで、特性の異なる2層の接着シートの製造を試みた。その際、作業性の面から、表面に粘着性の有しない接着剤層と粘着性を有する接着剤層の2層からなる種々の接着シートを製造し検討をした。製造した2層接着シートのうち、特定の組成の接着剤からなる層の組み合わせからなるものが、取扱い、作業性、接着力に優れ、さらには、高温においても接着力の低下がないことを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、表面が粘着性を有しない層と表面が粘着性を有する層からなる2層構造の熱硬化性接着シートであって、以下の技術を基礎とする。
【0010】
(1)一方の層の表面が粘着性であり、他方の層の表面が非粘着性である、支持体を有しない2層構造の熱硬化性接着シートであって、粘着性を有しない層は、接着剤成分がフェノール樹脂とアルキルアセタール化ポリビニルアルコール樹脂であり、粘着性を有する層は、接着剤成分がレゾール型フェノール樹脂とアクリロニトリルブタジエンゴムである熱硬化性の接着シート。
【0011】
(2)前記粘着性を有しない層の接着剤成分が、フェノール樹脂100重量部に対し、アルキルアセタール化ポリビニルアルコール樹脂が30~50重量部である(1)に記載の熱硬化性の接着シート。
【0012】
(3)前記粘着性を有しない層の接着剤成分が、フェノール樹脂はレゾール型フェノール樹脂であり、アルキルアセタール化ポリビニルアルコール樹脂はポリビニルブチラール樹脂である(1)または(2)に記載の熱硬化性の接着シート。
【0013】
(4)前記粘着性を有する層の接着剤成分が、アクリロニトリルブタジエンゴム100重量部に対し、レゾール型フェノール樹脂が75~200重量部である(1)から(3)のいずれかに記載の熱硬化性の接着シート。
【0014】
(5)前記粘着性を有する層の接着剤成分が、アクリロニトリルブタジエンゴムはアクリロニトリル含有量41%、ムーニー粘度73の高分子量熱可塑性エラストマーであり、レゾール型フェノール樹脂はアルキル変性フェノール樹脂とエポキシ変性フェノール樹脂の比が1:1の混合物である(1)から(4)のいずれかに記載の熱硬化性の接着シート。
【0015】
(6)前記接着シートが、厚さが80~240μmであり、前記粘着性を有しない層と前記粘着性を有する層の厚さの比が1:1~1:3である(1)から(5)のいずれかに記載の熱硬化性の接着シート。
【0016】
(7)(1)~(6)のいずれかに記載の接着シートの製造方法であって、接着剤成分がフェノール樹脂とアルキルアセタール化ポリビニルアルコール樹脂である接着剤により粘着性を有しない層を形成した後、接着剤成分がレゾール型フェノール樹脂とアクリロニトリルブタジエンゴムである接着剤により粘着性を有する層を形成する工程からなる熱硬化性の接着シートの製造方法。
【0017】
(8)(1)~(6)のいずれかに記載の接着シートの製造方法であって、接着剤成分がレゾール型フェノール樹脂とアクリロニトリルブタジエンゴムである接着剤により粘着性を有する層を形成した後、接着剤成分がフェノール樹脂とアルキルアセタール化ポリビニルアルコール樹脂である接着剤により粘着性を有しない層を形成する工程からなる熱硬化性の接着シートの製造方法。
【0018】
(9)(1)~(6)のいずれかに記載の接着シートの製造方法であって、接着剤成分がフェノール樹脂とアルキルアセタール化ポリビニルアルコール樹脂である接着剤により粘着性を有しない層を形成し、また別途、接着剤成分がレゾール型フェノール樹脂とアクリロニトリルブタジエンゴムである接着剤により粘着性を有する層を形成し、それぞれの層を貼り合わせる工程からなる熱硬化性の接着シートの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の接着シートは、支持体を有しない2層構造の熱硬化性接着シートであって、優れた接着力を有し、高温においても接着力が低下することのないものであり、また、一方の層の表面が粘着性であり、他方の層の表面が非粘着性であることから取扱い、作業性に優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の2層構造の熱硬化性接着シートは、表面が粘着性を有しない層と表面が粘着性を有する層からなる。
【0021】
〈 粘着性を有しない層 〉
粘着性を有しない層の接着剤(以下、「A接着剤」という。)は、成分としてフェノール樹脂とアルキルアセタール化ポリビニルアルコール樹脂を含み、これを溶剤に溶解して使用する。
【0022】
フェノール樹脂としては、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂のいずれでも使用できる。
アルキルアセタール化ポリビニルアルコール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化した樹脂であり、特に限定されるものではないが、ブチラールでアセタール化したポリビニルブチラール樹脂が好ましい。
【0023】
溶剤はこれらの樹脂を溶解するものであれば使用できるが、溶解性、乾燥の容易さからメタノールとメチルエチルケトンの混合溶剤が好ましい。
粘着性を有しない層の接着剤成分において、フェノール樹脂100重量部に対し、アルキルアセタール化ポリビニルアルコール樹脂が30~50重量部が使用される。
【0024】
〈 粘着性を有する層 〉
粘着性を有する層の接着剤(以下、「B接着剤」という。)は、成分としてレゾール型フェノール樹脂とアクリロニトリルブタジエンゴムを含み、これを溶剤に溶解して使用する。
【0025】
フェノール樹脂としては、レゾール型フェノール樹脂が使用される。レゾール型フェノール樹脂として、アルキル変性、エポキシ変性されたもの、及び、これらの混合物の使用が好ましい。
【0026】
アクリロニトリルブタジエンゴムには、ゴム中の結合アクリルニトリル(AN)量、ムーニー粘度(分子量)の違いにより物性の異なるものが多くあるが、フェノール樹脂との相溶性からAN含有量が多いもの、力学的強度の点からムーニー粘度の大きいものが使用される。
溶剤はこれらを溶解するものであれば使用できるが、溶解性、乾燥の容易さからメタノールとメチルエチルケトンの混合溶剤が好ましい。
【0027】
粘着性を有する層の接着剤成分において、アクリロニトリルブタジエンゴム100重量部に対し、レゾール型フェノール樹脂が75~200重量部が使用される。
【0028】
溶剤はこれらの樹脂を溶解するものであれば使用できるが、溶解性、乾燥の容易さからメタノールとメチルエチルケトンの混合溶剤が好ましい。
なお、接着シートとした後加熱硬化にあたり、フェノール樹脂が架橋剤として作用するので、特に必要ではないが、硫黄系、過酸化物系、フェニレンビスアミド系などの架橋剤をさらに配合してもよい。
【0029】
< 熱硬化性接着シートの製造方法 >
熱硬化性接着シートの製造方法としては、例えば、以下の工程からなる製造方法が挙げられる。
(1)剥離シート上に、A接着剤の溶液を塗布し、乾燥させて粘着性を有しない層を形成する工程
(2)生成した層上にB接着剤の溶液を塗布し、乾燥させて粘着性を有する層を形成する工程
【0030】
先に粘着性を有する層を形成し、次いで粘着性を有しない層を形成してもよい。また、剥離シート上に形成した粘着性を有しない層、別途、剥離シート上に形成した粘着性を有する層を貼り合わせて接着シートとしてもよい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0032】
< A接着剤 >
粘着性を有しない層を形成するためのA接着剤溶液として表-1に記載される組成のものを調製した。
【0033】
【表1】
*1:商品名 レジトップPGA-2400(群栄化学工業社製)
*2:商品名 レジトップPL-4222(群栄化学工業社製)
*3:商品名 フェノライトJ-325(DIC社製)
*4:商品名 BMK-2620(アイカ工業社製)
*5:商品名 ポリビニルブチラール樹脂エスレックB BH-3(積水化学社製)
【0034】
< B接着剤 >
粘着性を有する層を形成するためのB接着剤溶液として表-2に記載される組成のものを調製した。
【0035】
【表2】
*1:高ニトリルアクリロニトリルブタジエンゴム、商品名 T-4103(JSR社製)
*2:商品名 サーマル造粒(旭カーボン社製)
*3:商品名 Zinca #20(堺化学工業社製)
*4:アルキル変性レゾール型フェノール樹脂、商品名 フェノライト TD-2620(DIC社製)
*5:エポキシ変性レゾール型フェノール樹脂、商品名 フェノライト 5592(DIC社製)
【0036】
< 接着シートの作成 >
剥離シート上に表1のA-5のA接着剤溶液をアプリケーター(卓上コーター)により乾燥後の厚さが40~120μmになるように塗布し、その後80℃の熱風乾燥機に入れ5分間乾燥し溶剤を除去して、粘着性を有しない層を形成した。また同様に、剥離シート上に表2のB-3のB接着剤溶液をアプリケーター(卓上コーター)により乾燥後の厚さが40~120μmになるように塗布し、熱風乾燥機にて溶剤を除去し、粘着性を有する層を形成した。その後、ゴムローラーを用いて両者を貼り合わせ、表-3の実施例1~9に記載の2層接着シートを製造した。
【0037】
【0038】
また、剥離シート上にPET不織布を置き、表2のB-3のB接着剤溶液をコーターにより乾燥後の厚さが40~80μmになるように塗布し、乾燥機中にて溶剤を除去し、支持体のある粘着性を有する層を形成した。これに別途形成した厚さが40~80μmの粘着性を有しない層を貼り合わせ、表-4の比較例1~3に記載される支持体を有する2層接着シートを製造した。なお、表-4にはA、B接着剤層の厚さが一致する実施例を合わせて記載した。
【0039】
【表4】
*1:100%摩擦材材料破壊
*2:50%以上界面破壊
*3:商品名 スパンボンド90123WSO(12g)(ユニチカ社製)
【0040】
< 常態及び熱間接着強さ試験 >
試験片として、幅25mm、長さ150mm、厚さ1.6mmの冷感圧延鋼板(SPCC-SD)を用いた。
常態品は重ね合わせ部分を10mm×25mm、熱間品は25mm×25mmとし、接着シートを2枚のSPCC板の間に挟み貼り合わせた。3MPaの圧締圧をかけたまま200℃・30分の条件で硬化させて試験片を得た。常温で3日放置後、常温せん断接着力は25℃(±2℃)で、熱間せん断接着力は300℃(±10℃)に5分間保持後1分以内に常温で測定をした。
【0041】
< JIS-D4422試験 >
バックプレート(鉄板材/SAPH400)と摩擦材の間に接着シートを挟み3MPaの圧力下200℃で30分間加熱してブレーキパッドを作製し、これを試料として試験を行った。なお、摩擦材は錆に対して難点があるセミメタリック(スチールウール40~65重量部)を用いた。
また、ブレーキパッドに対してJIS-D4419(自動車用ディスクブレーキパッドの接着面さび発生試験方法)に準じた塩水雰囲気下試験を行った後、JIS-D4422試験を行った。
【0042】
< 評価 >
表4における支持体のない積層シートの実施例1、2、5と、A、B接着剤層の厚さの同じ支持体を有する比較例1、2、3を比較すると、JIS-D4422の試験結果が支持体のない積層シートで優れており、特に錆の発生するような雰囲気下では、支持体のない積層シートを用いたものが摩擦材材料破壊するのに対し、支持体のあるものは界面破壊が起きている。このことから、本発明の支持体を有しない2層接着シートは、錆の発生もあり得る自動車用ブレーキパッドの接着に好適であるといえる。
【0043】
< 参考例 >
本発明の接着シートが2つの接着剤層からなることの効果をみるために、表-1のA-5のA接着剤、表-3のB-3のB接着剤それぞれの単独の層からなる接着シートを作製し、参考例1~3、参考例4~6とした。シートの厚さの対応する2層構造の接着シートの実施例と併せて表-5に記載した。
【0044】
【0045】
A接着剤、B接着剤の単一の層からなる接着シートは、A、B接着剤の2層構からなる接着シートと比べて熱間せん断接着力、D4422の試験結果がいずれも劣っていた。2層構造の接着シートとすることによる接着力の向上が確認できた。
【0046】
また、ブレーキライニング、ブレーキパッドの製造に広く用いられている液状接着剤を用いて試料を作成し、常態及び熱間接着強さ試験、JIS-D4422試験を行った。使用した接着剤と試験結果を参考例7~10として表-6に一部の実施例の結果と併せて記載した。
【0047】
【表6】
*1:エポキシ変性フェノール樹脂、商品名 110(セメダイン社製)
*2:ニトリルゴム+フェノール樹脂系、商品名 680(パーカーアサヒ社製)
*3:フェノール樹脂、商品名 PL-2239(群栄化学工業社製)
*4:ニトリルゴム+フェノール樹脂系、商品名 NT-752(ノーテープ工業社製)
*5:ブチラール+フェノール樹脂、商品名 687F(パーカーアサヒ社製)
*6:エポキシ変性フェノール樹脂、商品名 No.2545(カシュー社製)
*7:ニトリルゴム+フェノール樹脂系、商品名 Y-900(横浜ゴム社製)
【0048】
参考例のものは、常態及び熱間せん断接力において一部を除き実施例を超えるものではなく、JIS-D4422試験において界面破壊を起こすものが多くあった。また、界面破壊を起こすことのなかったものでも、錆の発生するような条件下でのJIS-D4422試験において摩擦材の材料破壊が見られず満足することができなかった。本発明の接着シートは、接着力の点、さらには、取扱い、作業性の点からも、液体接着剤と比較して有効なものであるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、自動車ブレーキの摩擦材・金属、金属・金属及び金属・ゴムを接合するにあたり、300℃の高温にも接着力が低下することのない、取扱い、作業性に優れた熱硬化性の接着シートを提供することができ、きわめて実用的価値の高いものである。
自動車ブレーキの摩擦材と金属材との接着のみならず、各種分野において、金属・金属及び金属・ゴムの接着が必要とする箇所に使用する接着シートとして、広く応用できるものである。