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特許7566825独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニット
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/14 20060101AFI20241007BHJP
【FI】
F02D41/14
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022116209
(22)【出願日】2022-07-21
(65)【公開番号】P2024013828
(43)【公開日】2024-02-01
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】平野 敦士
(72)【発明者】
【氏名】岩本 一輝
(72)【発明者】
【氏名】笠原 龍哉
(72)【発明者】
【氏名】干鯛 敦也
(72)【発明者】
【氏名】木下 久寿
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-038731(JP,A)
【文献】国際公開第2012/085989(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/104831(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/179340(WO,A1)
【文献】特許第3076556(JP,B1)
【文献】特開2019-085889(JP,A)
【文献】実開平02-127755(JP,U)
【文献】特開2013-083186(JP,A)
【文献】特開2012-077713(JP,A)
【文献】特開2019-019755(JP,A)
【文献】特開2003-056374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00 - 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットは、
それぞれがピストンとともに燃焼室を形成する2-4つの気筒と、
前記燃焼室において燃料が燃焼することで回転するクランクシャフトと、
前記2-4つの気筒それぞれに対応して設けられ、対応する前記気筒からの排気ガスが流れる2-4つの独立排気管と、
前記2-4つの独立排気管が集合する集合部及び前記排気ガスの流れ方向において前記集合部よりも下流に設けられた触媒を含む集合排気管と、
前記集合排気管の前記集合部に設けられ、前記2-4つの気筒それぞれから前記触媒に流入する前記排気ガス中の酸素割合又は酸素濃度を検出する触媒前センサと、
制御装置と、を備え、
前記クランクシャフトは、前記クランクシャフトの回転サイクルにおける少なくとも一つの燃焼間隔がクランク角で240度以上となるように構成されることで、前記少なくとも一つの燃焼間隔を構成する各燃焼に対応する各気筒から前記触媒に流入する前記排気ガス同士の干渉が低減され、
前記制御装置は、少なくとも一つの燃焼間隔がクランク角で240度以上となることで前記干渉が低減されて前記2-4つの気筒から前記触媒に流入する前記排気ガス中の酸素割合又は酸素濃度を前記触媒前センサが前記集合部において検出した検出結果を用いて、前記独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットに備えられた前記2-4つの気筒のうちの少なくとも1つの気筒における空燃比の異常を検出することで空燃比の気筒間インバランスを検出するように構成される。
【請求項2】
請求項1に記載の独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットであって、
前記触媒前センサは、前記2-4つの気筒それぞれから前記触媒に流入する前記排気ガス中の酸素割合を検出する触媒前酸素センサである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の一種として、独立スロットル型の多気筒エンジンが知られている。独立スロットル型の多気筒エンジンでは、複数の気筒それぞれに独立した吸気路が設けられる。各吸気路にはスロットル弁が設けられる。各吸気路のスロットル弁が開閉されることで、燃料と空気との混合気が各気筒に流入する。このような独立スロットル型の多気筒エンジンは、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4400402号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、各気筒に供給される空気量がばらつくことを前提とした独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットにおいて、単一のセンサを用いた空燃比の気筒間インバランスの検出精度を向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の実施形態に係る独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットは、それぞれがピストンとともに燃焼室を形成する2-4つの気筒と、燃焼室において燃料が燃焼することで回転するクランクシャフトと、2-4つの気筒それぞれに対応して設けられ、対応する気筒からの排気ガスが流れる2-4つの独立排気管と、2-4つの独立排気管が集合する集合部及び排気ガスの流れ方向において集合部よりも下流に設けられた触媒を含む集合排気管と、集合排気管の集合部に設けられ、2-4つの気筒それぞれから触媒に流入する排気ガス中の酸素割合又は酸素濃度を検出する触媒前センサと、制御装置と、を備える。クランクシャフトは、クランクシャフトの回転サイクルにおける少なくとも一つの燃焼間隔がクランク角で240度以上となるように構成されることで、少なくとも一つの燃焼間隔を構成する各燃焼に対応する各気筒から触媒に流入する排気ガス同士の干渉が低減される。制御装置は、触媒前センサが集合部において2-4つの気筒それぞれから触媒に流入する干渉が低減された排気ガス中の酸素割合又は酸素濃度を検出した検出結果を用いて、2-4つの気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出するように構成される。
【0006】
上記独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットでは、集合部に触媒前センサが設けられる。集合部には各独立排気管からの排気ガスが順次流入するため、触媒前センサは各気筒から触媒に流入する排気ガス中の酸素割合又は酸素濃度を検出することができる。また、上記独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットにおいて、ある燃焼から次の燃焼までの燃焼間隔はクランク角で240度以上となる。240度以上の燃焼間隔は、例えば4ストロークエンジンで言えば、クランクシャフトの回転サイクル(720度)における1/3以上を占める長い期間である。この燃焼間隔を構成するある燃焼によって生成された排気ガスが集合部に流入してから、次の燃焼によって生成された排気ガスが集合部に流入するまでの期間が長い。そのため、異なる気筒から排出される排気ガス同士が集合部において混ざりにくく、触媒前センサが各気筒から排出される排気ガス中の酸素割合又は酸素濃度を検出しやすい。制御装置は、触媒前センサが検出した干渉の低減された排気ガス中の酸素割合又は酸素濃度を用いて、各気筒に供給される混合気の空燃比がリッチであるかリーンであるかを判定することができる。したがって、各気筒に供給される空気量がばらつくことを前提とした独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットにおいて、単一のセンサを用いた空燃比の気筒間インバランスの検出精度を向上することができる。
【0007】
(2)上記(1)の独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットにおいて、触媒前センサは、2-4つの気筒それぞれから触媒に流入する排気ガス中の酸素割合を検出する触媒前酸素センサであってもよい。
【0008】
一般に、空燃比の気筒間インバランスの検出には、空燃比センサ又は酸素センサが用いられる。空燃比センサは、排気ガス中の酸素濃度を連続的又は線形的に検出する。酸素センサは、排気ガス中の酸素割合をリーン又はリッチの二値で検出する。上記(2)の独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットでは、触媒前センサが酸素センサで構成される。そのため、空燃比センサを用いる場合と比べて、検出データ量が低減され、更に安価である。
【0009】
「2-4気筒エンジンユニット」は、例えば、エンジン及び吸排気系の総称である。2-4気筒エンジンユニットは、例えば、2-4気筒エンジンユニットが搭載される車両の走行のための動力を生成するエンジンを含む。エンジンは、内燃機関である。エンジンは、電気モータではない。エンジンは、例えば、レシプロケーティングエンジンである。エンジンは、例えば、4ストロークエンジンである。エンジンは、例えば、点火プラグによって燃料が燃焼するガソリンエンジンであるのが好ましい。エンジンは、圧縮空気によって燃料が燃焼するディーゼルエンジンであってもよい。エンジンは、例えば、直列、V型又は水平対向型の2-4気筒エンジンである。エンジンは、例えば、自然吸気エンジンであるのが好ましい。エンジンは、例えば、2-4つの気筒と、ピストンと、クランクシャフトとを含む。2-4気筒エンジンユニットは、エンジンと、電気モータとを含むハイブリッドエンジンユニットであってもよい。ハイブリッドエンジンユニットは、例えば、パラレル型ハイブリッドエンジンユニットであってもよいし、シリーズ型ハイブリッドエンジンユニットであってもよい。
【0010】
「独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニット」は、例えば、傾斜車両に搭載される。傾斜車両は、輸送機器である。傾斜車両は、人が運転する乗物である。傾斜車両は、例えば、傾斜車両が左に旋回するときには左に傾斜し、傾斜車両が右に旋回するときには右に傾斜する車体を含む。傾斜車両は、例えば、自動二輪車である。傾斜車両は、自動二輪車に限定されず、例えば、自動三輪車、自動四輪車であってもよい。傾斜車両は、例えば、少なくとも1つの前輪と、少なくとも1つの後輪とを備える。傾斜車両としては、特に限定されず、例えば、スクータ型、モペット型、オフロード型、オンロード型の傾斜車両が挙げられる。
【0011】
独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットは、例えば、鞍乗型車両に搭載される。鞍乗型車両は、傾斜車両の一種である。鞍乗型車両は、運転者がサドルに跨って着座する形式の車両である。鞍乗型車両では、着座した運転者の左足は鞍乗型車両の左右方向における中央より左に位置し、右足は鞍乗型車両の左右方向における中央より右に位置する。上述した自動二輪車及び自動三輪車は、それぞれ鞍乗型車両の一例である。更に、鞍乗型車両としては、例えば、ATV(All-Terrain Vehicle)が挙げられる。ATVは、鞍乗型の自動四輪車の一例である。更に、鞍乗型車両は、例えば、車輪を備えていなくてもよい。このような鞍乗型車両としては、例えば、スノーモービルが挙げられる。スノーモービルは、例えば、車輪の代わりにトラックベルトを備える。ただし、独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットは、傾斜車両ではない自動四輪車に搭載されていてもよい。傾斜車両ではない自動四輪車において、例えば、2-4気筒エンジンユニットは車両の前部又は後部に配置される。前部及び後部は、車両の上下方向視で、運転手と重複する位置に設けられない。傾斜車両ではない自動四輪車に搭載された2-4気筒エンジンユニットのクランクシャフトの回転速度は、例えば、通常可動時、低速である。傾斜車両ではない自動四輪車に搭載された2-4気筒エンジンユニットのクランクシャフトの回転速度の最大値は、例えば、傾斜車両及び鞍乗型車両と比べて低い。
【0012】
独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットは、例えば、2-4つの気筒それぞれに供給する空気が通る複数の吸気路を含む。独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットは、例えば、2-4つの気筒と同数の吸気路を含む。複数の吸気路は、例えば、互いに独立している。複数の吸気路はそれぞれ、対応する気筒に接続される。ただし、複数の吸気路は、外気を取り入れる吸気口において一体にまとめられていてもよい。
【0013】
独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットは、例えば、複数の吸気路それぞれに設けられたスロットル弁を含む。複数のスロットル弁は、例えば、対応する気筒に流入する空気量を調整する。複数のスロットル弁は、例えば、一斉に制御される。複数のスロットル弁は、個別に制御されてもよい。複数のスロットル弁の開度は、例えば、公称値で同一となるように制御される。複数のスロットル弁の開度は、公称値で異なるように制御されてもよい。
【0014】
独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットは、例えば、複数の吸気路それぞれに設けられ、燃料を噴射するインジェクタを含む。複数のインジェクタはそれぞれ、例えば、吸気の流れ方向において、スロットル弁の下流に設けられる。複数のインジェクタはそれぞれ、例えば、電子制御される。複数のインジェクタはそれぞれ、例えば、吸気路内に燃料を噴射する。複数のインジェクタはそれぞれ、例えば、気筒内に燃料を直接噴射しない。
【0015】
独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットは、例えば、不等間隔燃焼型且つ独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットである。不等間隔燃焼型且つ独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットは、クランクシャフトの回転サイクルにおいて、クランク角で表された燃焼間隔全てが等しくならないように構成されたエンジンユニットを意味する。クランク角で表された燃焼間隔とは、ある気筒での燃焼を基準(クランク角が0度)としたとき、次に燃焼を行う別の気筒での燃焼までのクランクシャフトの回転角を意味する。例えば、不等間隔燃焼型且つ独立スロットル型の4ストローク2気筒エンジンユニットを考える。このエンジンユニットでは、1番気筒での燃焼を基準とすると、1番気筒での燃焼からクランクシャフトが270度回転したときに2番気筒で燃焼が行われる。2番気筒での燃焼からクランクシャフトが450度回転したときに再び1番気筒で燃焼が行われる。この場合、不等間隔燃焼型且つ独立スロットル型の2気筒エンジンユニットは、クランク角で270度・450度の燃焼間隔を有する。不等間隔燃焼型且つ独立スロットル型の2気筒エンジンユニットは、クランク角で180度・540度の燃焼間隔を有していてもよい。不等間隔燃焼型且つ独立スロットル型の3気筒エンジンユニットは、例えば、180度・270度・270度の燃焼間隔を有する。不等間隔燃焼型且つ独立スロットル型の4気筒エンジンユニットは、例えば、クランク角で270度・180度・90度・180度の燃焼間隔を有する。
【0016】
独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットは、等間隔燃焼型且つ独立スロットル型の2-3気筒エンジンユニットであってもよい。等間隔燃焼型且つ独立スロットル型の2-3気筒エンジンユニットは、クランクシャフトの回転サイクルにおいて、クランク角で表された燃焼間隔全てが等しくなるように構成されたエンジンユニットを意味する。等間隔燃焼型且つ独立スロットル型の2-3気筒エンジンユニットは、例えば、等間隔燃焼型の4気筒以上のエンジンユニットを含まない。
【0017】
「2-4つの気筒」はそれぞれ、例えば、円柱形状の内部空間を有する。2-4つの気筒はそれぞれ、内部空間にピストンを収容する。2-4つの気筒の内部空間それぞれは、ピストンとともに燃料と空気との混合気を燃焼させる燃焼室を形成する。燃焼室それぞれにおいて混合気が燃焼することでピストンは往復運動する。
【0018】
「クランクシャフト」は、例えば、ジャーナルと、ジャーナルに対して偏心したクランクピンと、ジャーナルとクランクピンとを繋ぐクランクアームとを含む。クランクシャフトは、例えば、コネクティングロッドを介してピストンと繋がる。コネクティングロッドは、ピストンとクランクピンとを繋ぐ。クランクシャフトは、例えば、ピストンの往復運動を回転運動に変換する。
【0019】
「2-4つの独立排気管」はそれぞれ、対応する1つの気筒に接続される。2-4つの独立排気管はそれぞれ、例えば、2-4つの気筒それぞれに設けられた排気ポートに接続される。2-4つの独立排気管それぞれには、例えば、実質的に、対応する1つの気筒からの排気ガスのみが流れる。2-4つの独立排気管それぞれには、対応していない気筒からの排気ガスは実質的に流れない。2-4つの独立排気管それぞれには、2つ以上の気筒それぞれからの排気ガスは実質的に流れない。2-4つの独立排気管それぞれの上流端(エンジンの排気ポートとの接続部)では、各独立排気管は、例えば、互いに独立している。2-4つの独立排気管はそれぞれ、例えば、集合部に至るまで互いに独立している。なお、2-4つの独立排気管は、集合部に至るまでに、2-4つの独立排気管のうちの幾つかと合流していてもよい。つまり、幾つかの独立排気管と、集合部との間には、合流部が介在していてもよい。2-4つの独立排気管は、集合排気管と繋がる。2-4つの独立排気管は、例えば、排気ガスの経路において、対応する気筒から集合排気管の集合部までの部分である。2-4つの独立排気管はそれぞれ、例えば、直線状に延伸する直線部を含む。2-4つの独立排気管はそれぞれ、例えば、曲線状に延伸する湾曲部を含む。独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットが車両に搭載された場合、2-4つの独立排気管は車両の前後方向及び左右方向よりも上下方向に最も長い。
【0020】
排気ガスは、例えば、独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットが搭載された車両の外部から取り入れた吸気と燃料との混合気が燃焼することで生成される。排気ガスは、吸気と排気ガスと燃料との混合気が燃焼することで生成されてもよい。すなわち、独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットは、排気ガスの少なくとも一部を再度吸気するEGRシステム(Exhaust Gas Recirculation system)を採用していてもよい。
【0021】
「集合排気管」は、例えば、2-4つの独立排気管全てを一つにまとめた排気管である。集合排気管は、排気ガスの流れ方向において、2-4つの独立排気管の下流に設けられる。集合排気管は、集合部及び触媒を含む。
【0022】
「集合部」は、例えば、2-4つの独立排気管が一つに集まる部分である。集合部には、例えば、2-4つの気筒それぞれからの排気ガスが流れる。集合部は、例えば、2-4つの独立排気管の下流端から触媒までの部分である。集合部は、例えば、2-4つの独立排気管が集まる分岐部と、分岐部から排気ガスの流れ方向において下流に向けて直線状に延伸する直線部とを含む。
【0023】
「触媒」は、例えば、集合排気管における集合部よりも下流の部分に設けられる。触媒は、例えば、集合排気管内に設けられる。触媒は、集合排気管を流れる排気ガスを浄化する。触媒は、例えば、酸素吸蔵能を有する。触媒は、例えば、三元触媒である。触媒は、酸化触媒、窒素酸化物選択還元触媒、窒素酸化物吸蔵還元触媒等でもよい。触媒は、酸化還元触媒でなくてもよい。触媒は、酸化又は還元だけで排気ガスを浄化する酸化触媒又は還元触媒であってもよい。触媒は、例えば、排気ガス中の炭化水素、一酸化炭素及び窒素酸化物を酸化又は還元する。触媒は、炭化水素、一酸化炭素及び窒素酸化物のいずれか1つ又は2つを酸化又は還元してもよい。触媒は、例えば、炭化水素を水と二酸化炭素に酸化する。触媒は、例えば、一酸化炭素を二酸化炭素に酸化する。触媒は、例えば、窒素酸化物を窒素と酸素に還元する。触媒は、例えば、基材と、基材表面に設けられた排気ガス浄化作用を有する貴金属とを含む。貴金属は、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等である。
【0024】
「触媒前センサ」は、例えば、集合排気管に1つだけ設けられる。触媒前センサは、例えば、集合排気管の集合部に設けられる。触媒前センサは、例えば、集合部の直線部に設けられる。触媒前センサは、例えば、触媒によって浄化される前の排気ガス中の酸素割合又は酸素濃度を検出する。触媒前センサは、例えば、2-4つの気筒それぞれから順次流入する排気ガス中の酸素割合又は酸素濃度を検出する。すなわち、触媒前センサは、例えば、2-4つ気筒全てから排出された排気ガス中の酸素割合又は酸素濃度を検出する。
【0025】
触媒前センサは、例えば、排気ガス中の酸素割合を検出する触媒前酸素センサである。酸素割合は、例えば、排気ガス中における酸素濃度を二値で表した指標である。別の言葉で言えば、触媒前酸素センサは、例えば、排気ガス中の酸素割合が高いか低いかだけを検出する。触媒前酸素センサは、例えば排気ガス中の酸素割合が所定の閾値を超える場合、排気ガス中の酸素割合が高いと検出する。触媒前酸素センサは、例えば排気ガス中の酸素割合が所定の閾値以下の場合、排気ガス中の酸素割合が低いと検出する。酸素割合が高いと検出する際に用いる閾値と、酸素割合が低いと検出する際に用いる閾値とは個別に設定されてもよい。触媒前酸素センサは、例えば、ジルコニアを主体とした固体電解質体からなるセンサ素子部を有する。センサ素子部は、例えば、高温に加熱されて活性化状態となったときに、触媒前酸素センサは排気ガス中の酸素割合を検出する。
【0026】
触媒前センサは、例えば、排気ガス中の酸素濃度を検出する触媒前空燃比センサである。酸素濃度は、例えば、連続的又は線形的な値である。触媒前空燃比センサは、例えば、排気ガス中の酸素濃度の変化を連続的又は線形的に検出する。
【0027】
このような触媒前センサによって検出された酸素割合又は酸素濃度に基づいて各気筒に供給される混合気の空燃比が判断される。なお、目標空燃比に対して燃料が過剰な状態を、空燃比がリッチであると言う。目標空燃比に対して空気が過剰な状態を、空燃比がリーンであると言う。目標空燃比は、理論空燃比を含む値又は範囲であってもよく、理論空燃比から若干ずれた値又は範囲であってもよい。触媒前センサは、例えば、制御装置と電気的に接続される。触媒前センサは、例えば、検出した酸素割合又は酸素濃度を検出結果として制御装置へ送る。より詳細には、触媒前センサは、例えば、検出した酸素割合又は酸素濃度を示す電気信号を制御装置へ送る。
【0028】
「制御装置」は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)である。制御装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサを含む。制御装置は、例えば、制御装置が実行する演算処理の一部又は全部を含む1又は複数のプログラムが記録された不揮発性メモリを含んでいてもよい。制御装置は、例えば、プロセッサが不揮発性メモリに記録された1又は複数のプログラムを読み出して実行することで、少なくとも空燃比の気筒間インバランスの検出を実現する。
【0029】
制御装置は、例えば、触媒前センサから受けた各気筒に対応した検出結果を用いて、2-4つの気筒それぞれに供給される燃料と空気との混合気の空燃比が目標空燃比となるように、2-4つの気筒それぞれに供給される燃料を個別にフィードバック制御する。より詳細には、制御装置は、例えば、触媒前センサから受けた検出結果を用いて、2-4つの気筒それぞれにおける空燃比を判定する。制御装置は、例えば、判定した結果を解消するように2-4つの気筒それぞれに供給する燃料の量を補正するフィードバック制御を実行する。すなわち、制御装置は、2-4つの気筒それぞれについて、リーンと判定した場合には供給する燃料を増量し、リッチと判定した場合には供給する燃料を減量する。ただし、制御装置は、1回のフィードバック制御で判定した結果を解消しなくてもよい。制御装置は、例えば、所定の期間で区切って見れば、全体として目標空燃比に対してリッチとリーンとを交互に繰り返すように2-4つの気筒それぞれに供給する燃料の量を制御する。すなわち、制御装置は、例えば、2-4つの気筒それぞれにおける空燃比が目標空燃比又は実質的に目標空燃比を維持するように2-4つの気筒それぞれに供給する燃料の量を制御する。
【0030】
上述したように独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットでは、各気筒に供給される空気量がばらつくことが前提となる。制御装置は、例えば、各気筒に供給される空気量はばらつくが、各気筒に供給される燃料を個別に制御することで、各気筒における空燃比を目標空燃比から所定の範囲内に収める。しかしながら、ある気筒における空燃比が、何らかの要因によって目標空燃比から許容範囲を超えて大きくずれたとする。この場合、2-4つの気筒間において空燃比が大きくばらつき、排気ガス中の成分が想定と異なり、触媒の浄化機能にも影響を与える。そのため、このような場合、独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットが搭載されている車両の運転者等に空燃比が目標空燃比から大きくずれていることを通知するのが望ましい。
【0031】
そこで、制御装置は、例えば、2-4つの気筒の少なくとも1つにおいて、N回目に判定した空燃比の判定結果がN-1回目の判定結果と同じ場合、N-1回目に実行したフィードバック制御で用いた補正量よりも大きい値の積算補正量を算出する。ここで言う「大きい値の積算補正量」とは、N-1回目の燃料の補正量が増量である場合はN回目の燃料の補正量をN-1回目よりも増量し、N-1回目の燃料の補正量が減量である場合はN回目の燃料の補正量をN-1回目よりも減量するという意味である。制御装置は、N回目の判定結果がN-1回目の判定結果と異なるまで、フィードバック制御毎に積算補正量を大きくする。制御装置は、例えば、算出した積算補正量と予め定められた閾値とを比較する。制御装置は、例えば、積算補正量が閾値以下の場合、対象の気筒に供給する燃料の量を、積算補正量を用いて補正するフィードバック制御を実行する。制御装置は、例えば、積算補正量が閾値よりも大きい場合、当該気筒において空燃比の異常が発生していると判定する。このように、制御装置が、2-4つの気筒のうちの少なくとも一つの気筒における空燃比の異常を検出することを、空燃比の気筒間インバランスを検出すると言う。ここで言う異常は、フィードバック制御による燃料の補正量が予め定めた閾値を超えることを言う。制御装置は、例えば、少なくとも一つの気筒において空燃比の気筒間インバランスを検出すると、運転者等に2-4気筒エンジンユニットを点検するように通知するための処理を実行する。なお、ここで説明したフィードバック制御及び気筒間インバランス検出の手法は、一例であり、この例に限定されない。
【0032】
制御装置は、例えば、触媒前センサがクランク角で最も広い燃焼間隔を構成する各燃焼に対応する各気筒から触媒に流入する排気ガス中の酸素割合又は酸素濃度を検出した検出結果を少なくとも用いて、2-4つの気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出するように構成される。不等間隔燃焼型の2気筒エンジンユニットにおいて、最も広い燃焼間隔は、例えば、450度又は540度の燃焼間隔である。この450度又は540度の燃焼間隔は、あるクランクシャフトの回転サイクルにおける2番目の燃焼から次の回転サイクルにおける1番目の燃焼までの間隔である。不等間隔燃焼型の3気筒エンジンユニットにおいて、最も広い燃焼間隔は、例えば、270度の燃焼間隔である。この270度の燃焼間隔は、クランクシャフトの回転サイクルにおける2番目の燃焼から3番目の燃焼、又は、3番目の燃焼から次の回転サイクルにおける1番目の燃焼までの間隔である。不等間隔燃焼型の4気筒エンジンユニットにおいて、最も広い燃焼間隔は、例えば、270度の燃焼間隔である。この270度の燃焼間隔は、クランクシャフトの回転サイクルにおける1番目の燃焼から2番目の燃焼までの間隔である。
【0033】
この発明の上述の目的及びその他の目的、特徴、局面及び利点は、添付図面に関連して行われる以下のこの発明の実施形態の詳細な説明から一層明らかとなろう。本明細書にて使用される場合、用語「及び/又は(and/or)」は1つの、又は複数の関連した列挙されたアイテム(items)のあらゆる又は全ての組み合わせを含む。本明細書中で使用される場合、用語「含む、備える(including)」、「含む、備える(comprising)」又は「有する(having)」及びその変形の使用は、記載された特徴、工程、操作、要素、成分及び/又はそれらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/又はそれらのグループのうちの1つ又は複数を含むことができる。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されることはない。本発明の説明においては、多数の技術及び工程が開示されていると理解される。これらの各々は個別の利益を有し、それぞれは、他の開示された技術の1つ以上、又は、場合によっては全てと共に使用することもできる。従って、明確にするために、この説明は、不要に個々のステップの可能な組み合わせの全てを繰り返すことを控える。それにもかかわらず、明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせが全て本発明及び特許請求の範囲内にあることを理解して読まれるべきである。以下の説明では、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な詳細を述べる。しかしながら、当業者には、これらの特定の詳細なしに本発明を実施できることが明らかである。本開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面又は説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、各気筒に供給される空気量がばらつくことを前提とした独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットにおいて、単一のセンサを用いた空燃比の気筒間インバランスの検出精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1(A)は、本実施形態の独立スロットル型の2気筒エンジンユニットの燃焼室近傍の概略図であり、図1(B)は、本実施形態の独立スロットル型の2気筒エンジンユニット全体の概略図であり、図1(C)は、本実施形態の独立スロットル型の2気筒エンジンユニットにおける燃焼タイミングとクランクシャフトの回転速度との関係を示す図である。
図2図2は、本実施形態の空燃比の気筒間インバランスの検出処理を示すフローチャートである。
図3図3は、本実施形態の2気筒エンジンユニットのある気筒において気筒間インバランスが生じた際の燃料補正量の変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットについて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、あくまでも一例である。本発明は、以下に説明する実施形態によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0037】
図1(A)は、本実施形態の独立スロットル型の2気筒エンジンユニットの燃焼室近傍の概略図である。2気筒エンジンユニット1は、独立スロットル型且つ不等間隔燃焼型の2気筒エンジンユニットである。2気筒エンジンユニット1は、2つの気筒11A,11Bと、クランクシャフト12と、を備える。
【0038】
2つの気筒11A,11Bはそれぞれ、ピストン111とともに燃焼室112を形成する。2つの気筒11A,11Bは、直列に配置される。2つの気筒11A,11Bはそれぞれ、燃焼室112の一部を形成する円柱形状の内部空間を有する。ピストン111はそれぞれ、円柱形状を有する。ピストン111はそれぞれ、対応する気筒11A,11Bの内部空間に配置され、往復運動する。ピストン111はそれぞれ、コネクティングロッドを介してクランクシャフト12に繋がる。燃焼室112は、2つの気筒11A,11Bそれぞれに形成される。燃焼室112はそれぞれ、吸気管と繋がる。各燃焼室112では、吸気管から流入する燃料と空気との混合気が燃焼する。混合気の燃焼は、排気ガスを生成する。
【0039】
図1(B)は、本実施形態の独立スロットル型の2気筒エンジンユニット全体の概略図である。2気筒エンジンユニット1は更に、2つの独立排気管13A,13Bと、集合排気管14と、触媒前センサ15と、制御装置16とを備える。
【0040】
2つの独立排気管13A,13Bは、2つの気筒11A,11Bそれぞれに対応して設けられる。2つの独立排気管13A,13Bはそれぞれ、独立している。2つの独立排気管13A,13Bそれぞれには、対応する気筒11A,11Bからの排気ガスが流れる。2つの独立排気管13A,13Bの下流端はそれぞれ、集合排気管14に繋がる。
【0041】
集合排気管14は、2つの独立排気管13A,13Bが集合する集合部141及び排気ガスの流れ方向において集合部141よりも下流に設けられた触媒142を含む。集合部141には、2つの気筒11A,11Bそれぞれからの排気ガスが流れる。触媒142は、例えば、三元触媒である。触媒142は、集合排気管14を流れる排気ガスを浄化する。
【0042】
触媒前センサ15は、集合排気管14の集合部141に1つ設けられる。触媒前センサ15は、2つの気筒11A,11Bそれぞれから触媒142に流入する排気ガス中の酸素割合又は酸素濃度を検出する。本実施形態では、触媒前センサ15は、2つの気筒11A,11Bそれぞれから触媒142に流入する排気ガス中の酸素割合(リッチ/リーン)を検出する触媒前酸素センサである。触媒前センサ15は、制御装置16と電気的に接続される。触媒前センサ15は、検出した酸素割合を検出結果として制御装置16へ送る。
【0043】
図1(C)は、本実施形態の独立スロットル型の2気筒エンジンユニットにおける燃焼タイミングとクランクシャフトの回転速度との関係を示す図である。クランクシャフト12は、クランクシャフト12の回転サイクルにおける少なくとも一つの燃焼間隔X1がクランク角で240度以上となるように構成される。これにより、少なくとも一つの燃焼間隔X1を構成する各燃焼に対応する各気筒11A,11Bから触媒142に流入する排気ガス同士の干渉が低減される。
【0044】
制御装置16は、触媒前センサ15が集合部141において2つの気筒11A,11Bそれぞれから触媒142に流入する干渉が低減された排気ガス中の酸素割合又は酸素濃度を検出した検出結果を用いて、2つの気筒11A,11Bにおける空燃比の気筒間インバランスを検出するように構成される。
【0045】
<空燃比の気筒間インバランスの検出>
図2は、本実施形態の空燃比の気筒間インバランスの検出処理を示すフローチャートである。制御装置16は、2つの気筒11A,11Bそれぞれについて空燃比の気筒間インバランスの検出処理を行う。ここでは、2気筒エンジンユニット1が既に稼働している状態を想定する。
【0046】
まず、制御装置16は、触媒前センサ15が検出した集合部141における排気ガス中の酸素割合を取得する。制御装置16は、定期的又は不定期に触媒前センサ15から酸素割合を取得する(ステップS11)。
【0047】
次に、制御装置16は、触媒前センサ15から取得した検出結果に基づき、各気筒11A,11Bにおける空燃比が目標空燃比に対してリッチであるか、リーンであるかを判定する(ステップS12)。
【0048】
次に、制御装置16は、判定した結果と前回の判定結果とを比較する。例えば、制御装置16は、2気筒エンジンユニット1の稼働後、初めて触媒前センサ15が検出した酸素割合を取得した場合、前回(0回目)の判定結果は存在しないため、初回の判定結果と前回の判定結果とは異なると判断する。すなわち、制御装置16は、N回目の判定結果とN-1回目の判定結果とを比較する(ステップS13)。
【0049】
制御装置16は、ある気筒について、N回目の判定結果とN-1回目の判定結果とが異なる場合(ステップS13でNO)、N回目の判定結果を解消するように判定対象の気筒へ供給する燃料の量を予め定められた初期補正量だけ補正するフィードバック制御を実行する。ただし、初期補正量を用いたフィードバック制御によって、次のN+1回目の判定結果がN回目の判定結果と異ならなくてもよい。例えば、制御装置16は、ある気筒について、N-1回目の判定結果がリーンであり、N回目の判定結果がリッチである場合、N+1回目の判定結果がリーンとなるように(リッチ判定を解消しようとするように)供給する燃料を所定量だけ減量する(ステップS14)。
【0050】
制御装置16は、各気筒11A,11Bにおいて、空燃比の判定結果がリッチ及びリーンをある程度の間隔を空けて交互に繰り返すように、各気筒11A,11Bに供給する燃料を制御する。これにより、各気筒11A,11Bにおける空燃比は、目標空燃比に近い値を維持することができる。しかしながら、このようなフィードバック制御を実行しても、何らかの要因で、空燃比のリッチ又はリーンが改善されない場合がある。
【0051】
制御装置16は、N回目の判定結果とN-1回目の判定結果とが同じ場合(ステップS13でYES)、積算補正量を算出する(ステップS15)。
【0052】
次に、制御装置16は、算出した積算補正量と予め定められた閾値とを比較する(ステップS16)。
【0053】
制御装置16は、積算補正量が閾値以下の場合(ステップS16でNO)、判定対象の気筒について、N回目の判定結果を解消するように供給する燃料の量を算出された積算補正量だけ補正するフィードバック制御を実行する(ステップS17)。
【0054】
制御装置16は、積算補正量を用いたフィードバック制御の実行後、新たな判定結果が前回の判定結果と異なる場合(ステップS13でNO)、再び初期補正量を用いて新たな判定結果を解消するようにフィードバック制御を実行する。一方、制御装置16は、積算補正量を用いたフィードバック制御を実行しても、新たな判定結果が前回の判定結果と同じ場合(ステップS13でYES)、前回の積算補正量よりも更に値を大きくした新たな積算補正量を算出する(ステップS15)。すなわち、制御装置16は、積算補正量を用いたフィードバック制御を実行しても、空燃比のリッチ又はリーンが改善されない場合、積算補正量をフィードバック制御毎に大きくしていく。なお、初回の積算補正量及びフィードバック制御毎の補正量の変化量は、予め定められていてもよい。このようなフィードバック制御を繰り返した結果、算出された積算補正量が閾値を超える場合がある。
【0055】
制御装置16は、積算補正量が閾値よりも大きい場合(ステップS16でYES)、判定対象の気筒について、空燃比の気筒間インバランスが生じていると判定する(ステップS18)。
【0056】
図3は、本実施形態の2気筒エンジンユニットのある気筒において気筒間インバランスが生じた際の燃料補正量の変化の一例を示す図である。図中において、横軸は時間を示し、縦軸はフィードバック制御において対象となる気筒11Aに供給する燃料の補正量を示す。また、期間T1では対象の気筒11Aは正常であり、期間T2では対象の気筒11Aにおいて空燃比の気筒間インバランスが生じているとする。また、参考として、対象の気筒に対する空燃比の判定結果も記載している。判定結果の欄における矢印の1つ1つは、1回の判定を表している。
【0057】
期間T1の始めにおいて、制御装置16は、触媒前センサ15から取得した検出結果に基づいて対象の気筒11Aの空燃比について複数回連続してリーンと判定する。この場合、制御装置16は、積算補正量A1を用いたフィードバック制御を繰り返し実行する。制御装置16は、フィードバック制御毎に積算補正量A1を大きくする。すなわち、制御装置16は、対象の気筒11Aへ供給する燃料をフィードバック制御毎に増量させる。
【0058】
その後、制御装置16は、対象の気筒11Aの空燃比についてリッチと判定する。この場合、制御装置16は、初期補正量A2を用いたフィードバック制御を実行する。制御装置16は、前回の判定結果であるリーンを解消するようにフィードバック制御を実行する。すなわち、制御装置16は、対象の気筒11Aへ供給する燃料を初期補正量分だけ減量させる。
【0059】
その後、制御装置16は、対象の気筒11Aの空燃比について複数回連続してリッチと判定する。この場合、制御装置16は、対象の気筒11Aへ供給する燃料をフィードバック制御毎に積算補正量A1分だけ減量させる。期間T1では対象の気筒11Aが正常であるため、制御装置16の対象の気筒11Aに対する空燃比の判定結果は、ある程度の期間で区切って見れば、全体としてリッチとリーンとを交互に繰り返す。これにより、対象の気筒11Aにおける空燃比は、目標空燃比に近い値に維持される。
【0060】
期間T2においても、制御装置16は、触媒前センサ15から取得した検出結果に基づいて対象の気筒11Aの空燃比について判定を続ける。しかしながら、期間T2では、対象の気筒11Aにおいて空燃比の気筒間インバランスが生じているため、フィードバック制御を実行しても判定結果が解消しない場合がある。例えば、図中に示されるように、空燃比の気筒間インバランスが生じる境界線Lの直後では、対象の気筒11Aに供給する燃料を減少させるフィードバック制御(積算補正量を用いたフィードバック制御)を実行している。このフィードバック制御の実行により、対象の気筒11Aに供給される燃料がフィードバック制御毎に減少するため、複数回フィードバック制御を繰り返せば制御装置16は対象の気筒11Aの空燃比をリーンと判定するはずである。
【0061】
しかしながら、対象の気筒11Aには何らかの異常が生じているため、対象の気筒11Aにおける空燃比の判定はリッチのままである。そのため、フィードバック制御毎に積算補正量は大きくなり、対象の気筒11Aに供給する燃料は減量され続ける。
【0062】
ただし、フィードバック制御で用いる積算補正量については、予め閾値が定められている。制御装置16は、算出した積算補正量が閾値を超える場合、対象気筒11Aにおいて空燃比の気筒間インバランスが生じていると判定する。制御装置16は、気筒間インバランスを検出すると、運転者等にエンジンユニットを点検するように通知するための処理を実行する。
【0063】
上述の説明では、独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットが、2気筒エンジンユニット1である場合について説明した。しかしながら、独立スロットル型の2-4気筒エンジンユニットは、3気筒又は4気筒エンジンユニットであってもよい。要するに、クランクシャフトの回転サイクルにおいて、少なくとも一つの燃焼間隔が240度以上であれば、2-4気筒エンジンユニットの形式は特に限定されない。
【0064】
本明細書において記載と図示の少なくとも一方がなされた実施形態及び変形例は、本開示の理解を容易にするためのものであって、本開示の思想を限定するものではない。上記の実施形態及び変形例は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得る。当該趣旨は、本明細書に開示された実施形態に基づいて当業者によって認識されうる、均等な要素、修正、削除、組み合わせ(例えば、実施形態及び変形例に跨る特徴の組み合わせ)、改良、変更を包含する。特許請求の範囲における限定事項は当該特許請求の範囲で用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態及び変形例に限定されるべきではない。そのような実施形態及び変形例は非排他的であると解釈されるべきである。例えば、本明細書において、「好ましくは」、「よい」という用語は非排他的なものであって、「好ましいがこれに限定されるものではない」、「よいがこれに限定されるものではない」ということを意味する。
【符号の説明】
【0065】
1 :2気筒エンジンユニット
11A,11B :気筒
111 :ピストン
112 :燃焼室
12 :クランクシャフト
13A,13B :独立排気管
14 :集合排気管
141 :集合部
142 :触媒
15 :触媒前センサ
16 :制御装置
X1 :燃焼間隔
図1
図2
図3