(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】入れ子式キャピラリを有する反共振中空コアファイバ用のプリフォームを製造する方法、プリフォーム、及び中間製品
(51)【国際特許分類】
C03B 37/012 20060101AFI20241007BHJP
C03B 37/027 20060101ALI20241007BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
C03B37/012 A
C03B37/027 A
G02B6/02 466
(21)【出願番号】P 2023529035
(86)(22)【出願日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 EP2021081390
(87)【国際公開番号】W WO2022128271
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-05-16
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507332918
【氏名又は名称】ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Heraeusstr.12-14, 63450 Hanau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンベルガー、マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】プラス、ジャクリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】シュスター、カイ
【審査官】三村 潤一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-520804(JP,A)
【文献】特表2020-525391(JP,A)
【文献】特表2020-533264(JP,A)
【文献】A. F. KOSOLAPOV et al.,“Hollow-core revolver fibre with a double-capillary reflective cladding”,Quantum Electronics,2016年03月29日,Vol. 46, No. 3,p.267-270,DOI: 10.1070/QEL15972
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00 - 37/16
G02B 6/00 - 6/54
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反共振中空コアファイバを製造する方法であって、前記反共振中空コアファイバは、前記ファイバの長手方向軸線に沿って延びる中空コアと、前記中空コアを取り囲んでいる内側シース領域とを備え、前記シース領域は、複数の反共振要素を備え、前記方法は、
(a)スリーブ管(14)を提供する工程であって、前記スリーブ管は、前記スリーブ管の内側ボア(16)と、前記スリーブ管の長手方向軸線とを備え、前記長手方向軸線に沿って、内側及び外側によって画定されるスリーブ管壁が延びる、工程と、
(b)管状の反共振要素プリフォーム(5)を提供する工程であって、前記管状の反共振要素プリフォーム(5)の少なくとも一部分は、少なくとも1つのARE外部キャピラリ(11)と、前記ARE外部キャピラリ(11)の内側面に接続された少なくとも1つの入れ子式NE内部キャピラリ(12)とを備えるキャピラリブランク(5)として存在し、前記キャピラリブランクの前記製造は、
(b1)外径OD
ARE及び内径ID
AREを有するARE外管(1)の内側面上に、外径OD
NE及び内径ID
NEを有するNE内管(2)を固定して、キャピラリブランク集合体(4)を形成する工程と、
(b2)前記キャピラリブランク集合体(4)を熱延伸して、最大外径OD
ARE_cap及び最大壁厚WT
ARE_capを有する前記キャピラリブランク(5)を形成する工程と、
を含む、工程と、
(c)前記キャピラリブランク(5)を前記スリーブ管壁の前記内側の目標位置に装着して、中空コア領域(16)とシース領域とを備える一次プリフォーム(15)を形成する工程と、
(d)前記一次プリフォーム(15)を伸長して前記中空コアファイバを形成する工程、又は、前記中空コアファイバが線引きされる二次プリフォームを形成するための前記一次プリフォームの更なる処理の工程と、
を含み
、
前記幾何学的寸法OD
NE、ID
NE、OD
ARE、ID
ARE、並びにOD
ARE_cap及びWT
ARE_capが、前記キャピラリブランク(5)の前記ARE外部キャピラリ(11)が1.025未満の楕円度を有するようなやり方で互いに対して調整され
、かつ石英ガラス製のARE外管(1)又は石英ガラス製のNE内管(2)の直径寸法は、前記ARE外管(1)の平衡圧力p
eq_ARE
が25~50Paの範囲内であり、かつ
p
eq_ARE
=(2/OD
ARE
+2/ID
ARE
)×σ
から求められ、かつ前記NE内管(2)の平衡圧力p
eq_NE
が60~90Paの範囲内であり、かつ
p
eq_NE
=(2/OD
NE
+2/ID
NE
)×σ
から求められ、式中、σは、線引き温度における表面張力である、ように選択されることを特徴とする、
反共振中空コアファイバを製造する方法。
【請求項2】
前記幾何学的寸法が、以下の因子(F1)~(F4)、すなわち、
(F1)前記NE内管(2)の平衡圧力
p
eq_NE
の比と前記ARE外管(1)の平衡圧力p
eq_AREの比、
(F2)前記ARE外管(1)の前記内径に対する前記ARE外管(1)と前記NE内管(2)との間の距離(ID
ARE-OD
NE)/ID
ARE、
(F3)工程(b2)に従った前記キャピラリブランク集合体(4)の熱延伸中のテーパ比OD
ARE/OD
ARE_cap、及び
(F4)前記キャピラリブランク(5)の外径と壁厚との比OD
ARE_cap/WT
ARE_cap
に関連して調整されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ARE外管又は前記NE内管の直径寸法は、前記平衡圧力
p
eq_NE
が65~80Paの範囲内であり、平衡圧力p
eq_ARE
が30~40Paの範囲内であるように選択されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記平衡圧力
p
eq_NE
及び
p
eq_ARE
は、前記因子(F1)が、有利には、1.5~2.5の範囲内の値、好ましくは1.5~2の範囲内の値を取るように調整されることを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記因子(F2)が、0.2~0.5の範囲内の値、好ましくは0.3~0.4の範囲内の値に調整されることを特徴とする、請求項2~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記因子(F3)が、5~10の範囲内の値、好ましくは5~8の範囲内の値に調整されることを特徴とする、請求項2~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記因子(F4)が、15~25の範囲内の値、好ましくは15~20の範囲内の値に調整されることを特徴とする、請求項2~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記因子(F1)~(F4)は、前記キャピラリブランク(5)が1.025未満の楕円度を有するように調整されることを特徴とする、請求項2~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
因子(F1)~(F4)の数学的積が、35~75の範囲内、好ましくは40~60の範囲内である幾何学的パラメータ、
【数1】
を定義することを特徴とする、請求項2~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記一次プリフォーム(15)が、26~230mm、好ましくは30~200mmの範囲内の外径を有することを特徴とする、請求項2~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
反共振中空コアファイバ用のプリフォーム(15)を製造する方法であって、前記反共振中空コアファイバは、前記ファイバの長手方向軸線に沿って延びる中空コアと、前記中空コアを取り囲んでいる内側シース領域とを備え、前記シース領域は、複数の反共振要素を備え、前記方法は、
(a)スリーブ管(14)を提供する工程であって、前記スリーブ管は、前記スリーブ管の内側ボア(16)と、前記スリーブ管の長手方向軸線とを備え、前記長手方向軸線に沿って、内側及び外側によって画定されるスリーブ管壁が延びる、工程と、
(b)管状の反共振要素プリフォームを提供する工程であって、前記管状の反共振要素プリフォームの少なくとも一部分は、少なくとも1つのARE外部キャピラリ(11)と、前記ARE外部キャピラリ(11)の内側面に接続された少なくとも1つの入れ子式NE内部キャピラリ(12)とを備えるキャピラリブランク(5)として存在し、前記キャピラリブランク(5)の前記製造は、
(b1)外径OD
ARE及び内径ID
AREを有するARE外管(1)の内側面上に、外径OD
NE及び内径ID
NEを有するNE内管(2)を固定して、キャピラリブランク集合体(4)を形成する工程と、
(b2)前記キャピラリブランク集合体(4)を熱延伸して、最大外径OD
ARE_cap及び最大壁厚WT
ARE_capを有する前記キャピラリブランク(5)を形成する工程と、
を含む、工程と、
(c)前記キャピラリブランク(5)を前記スリーブ管壁の前記内側の目標位置に装着して、中空コア領域(16)とシース領域とを備える一次プリフォーム(15)を形成する工程と、
(d)任意選択で、前記一次プリフォーム(15)を更に処理して、前記中空コアファイバ用の二次プリフォームを形成する工程であって、前記更なる処理が、以下の熱間成形プロセス、すなわち、
(i)伸長、
(ii)コラップス、
(iii)コラップス及び同時伸長、
(iv)追加のシース材料のコラップス、
(v)追加のシース材料のコラップス及びその後の伸長、
(vi)追加のシース材料のコラップス及び同時伸長
のうちの1つ以上の1回の実行又は反復実行を含む、工程と、
を含み、
前記幾何学的寸法OD
NE、ID
NE、OD
ARE、ID
ARE、並びにOD
ARE_cap及びWT
ARE_capが、前記キャピラリブランクの前記ARE外部キャピラリが1.025未満の楕円度を有するようなやり方で互いに対して調整されて
おり、かつ石英ガラス製のARE外管(1)又は石英ガラス製のNE内管(2)の直径寸法は、前記ARE外管(1)の平衡圧力p
eq_ARE
が25~50Paの範囲内であり、かつ
p
eq_ARE
=(2/OD
ARE
+2/ID
ARE
)×σ
から求められ、かつ前記NE内管(2)の平衡圧力p
eq_NE
が60~90Paの範囲内であり、かつ
p
eq_NE
=(2/OD
NE
+2/ID
NE
)×σ
から求められ、式中、σは、線引き温度における表面張力である、ように選択されることを特徴とする、
反共振中空コアファイバ用のプリフォーム(15)を製造する方法。
【請求項12】
前記幾何学的寸法が、以下の因子(F1)~(F4)、すなわち、
(F1)前記NE内管(2)の平衡圧力
p
eq_NE
の比と前記ARE外管(1)の平衡圧力p
eq_AREの比、
(F2)前記ARE外管(1)の前記内径に対する前記ARE外管(1)と前記NE内管(2)との間の距離(ID
ARE-OD
NE)/ID
ARE、
(F3)工程(b2)に従った前記キャピラリブランク集合体(4)の熱延伸中のテーパ比OD
ARE/OD
ARE_cap、及び
(F4)前記キャピラリブランク(5)の外径と壁厚との比OD
ARE_cap/WT
ARE_cap
に関連して設定されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ技術の分野に属し、特に、反共振中空コアファイバの分野に属する。当該ファイバにより、真空であるか、又はガスを充填している「中空」コア内に光を誘導することが可能になる。このファイバ技術は、低い光減衰、(特に、UV波長範囲又はIR波長範囲内でも)非常に広い透過スペクトル、及びデータ伝送における低いレイテンシを約束する。更に、これらのファイバは、分光法及び短レーザパルスの伝送に好適である。
【0002】
特に、本発明は、反共振中空コアファイバを製造する方法に関し、反共振中空コアファイバは、ファイバの長手方向軸線に沿って延びる中空コアと、中空コアを取り囲んでいるシース領域とを備え、シース領域は、複数の反共振要素を備え、本方法は、
(a)スリーブ管を提供する工程であって、スリーブ管は、スリーブ管の内側ボアと、スリーブ管の長手方向軸線とを備え、長手方向軸線に沿って、内側及び外側によって画定されるスリーブ管壁が延びる、工程と、
(b)管状の反共振要素プリフォームを提供する工程であって、管状の反共振要素プリフォームの少なくとも一部分は、少なくとも1つのARE外部キャピラリと、ARE外部キャピラリの内側面に接続された少なくとも1つの入れ子式NE内部キャピラリとを備えるキャピラリブランクとして存在し、キャピラリブランクの製造は、
(b1)外径ODARE及び内径IDAREを有するARE外管の内側面上に、外径ODNE及び内径IDNEを有するNE内管を固定して、キャピラリブランク集合体を形成する工程と、
(b2)キャピラリブランク集合体を熱延伸して、最大外径ODARE_cap及び最大壁厚WTARE_capを有するキャピラリブランクを形成する工程と、
を含む、工程と、
(c)キャピラリブランクをスリーブ管壁の内側の目標位置に装着して、中空コア領域とシース領域とを備える一次プリフォームを形成する工程と、
(d)一次プリフォームを伸長して中空コアファイバを形成する工程、又は、中空コアファイバが線引きされる二次プリフォームを形成するための一次プリフォームの更なる処理の工程と、
を含む。
【0003】
本発明はまた、反共振中空コアファイバ用のプリフォームを製造する方法に関し、反共振中空コアファイバは、ファイバの長手方向軸線に沿って延びる中空コアと、中空コアを取り囲んでいる内側シース領域とを備え、シース領域は、複数の反共振要素を備え、本方法は、
(a)スリーブ管を提供する工程であって、スリーブ管は、スリーブ管の内側ボアと、スリーブ管の長手方向軸線とを備え、長手方向軸線に沿って、内側及び外側によって画定されるスリーブ管壁が延びる、工程と、
(b)管状の反共振要素プリフォームを提供する工程であって、管状の反共振要素プリフォームの少なくとも一部分は、少なくとも1つのARE外部キャピラリと、ARE外部キャピラリの内側面に接続された少なくとも1つの入れ子式NE内部キャピラリとを備えるキャピラリブランクとして存在し、キャピラリブランクの製造は、
(b1)外径ODARE及び内径IDAREを有するARE外管の内側面上に、外径ODNE及び内径IDNEを有するNE内管を固定して、キャピラリブランク集合体を形成する工程と、
(b2)キャピラリブランク集合体を熱延伸して、最大外径ODARE_cap及び最大壁厚WTARE_capを有するキャピラリブランクを形成する工程と、
を含む、工程と、
(c)キャピラリブランクをスリーブ管壁の内側の目標位置に装着して、中空コア領域とシース領域とを備える一次プリフォームを形成する工程と、
(d)任意選択で、一次プリフォームを更に処理して、中空コアファイバ用の二次プリフォームを形成する工程であって、更なる処理が、以下の熱間成形プロセス、すなわち、
(i)伸長、
(ii)コラップス、
(iii)コラップス及び同時伸長、
(iv)追加のシース材料のコラップス、
(v)追加のシース材料のコラップス及びその後の伸長、
(vi)追加のシース材料のコラップス及び同時伸長
のうちの1つ以上の1回の実行又は反復実行を含む、工程と、
を含む。
【0004】
更に、本発明は、少なくとも1つのARE外部キャピラリと、ARE外部キャピラリの内側面に接続された少なくとも1つの入れ子式内部キャピラリとを備える、反共振中空コアファイバを製造するための中間製品としてのキャピラリブランクに関する。
【0005】
加えて、本発明は、反共振中空コアファイバ用のプリフォームに関し、本プリフォームは、中空コア領域とシース領域とを有し、シース領域は、スリーブ管壁を有するスリーブ管と、スリーブ管壁の内側に配置された複数の管状の反共振要素プリフォームとを備える。
【0006】
中実材料製の従来のシングルモード光ファイバは、ガラス製のコア領域を有し、コア領域は、より低い屈折率を有するガラス製のシース領域によって取り囲まれている。光誘導は、コア領域とシース領域との間の全反射に基づく。しかしながら、誘導された光と中実材料との相互作用は、データ伝送におけるレイテンシの増大及び高エネルギー放射に対する損傷閾値が比較的低いことに関連付けられる。
【0007】
これらの欠点は、コアがガス又は液体を充填した真空の空洞を備えている「中空コアファイバ」によって防止又は低減される。中空コアファイバにおいて、光とガラスとの相互作用は、中実コアファイバよりも小さい。コアの屈折率はシースの屈折率よりも小さく、それにより、全反射による光誘導が不可能であり、光は通常、コアからシース内へと逃げることになる。光誘導の物理的メカニズムに応じて、中空コアファイバは、「フォトニックバンドギャップファイバ」と「反共振反射ファイバ」とに分けられる。
【0008】
「フォトニックバンドギャップファイバ」の場合、中空コア領域は、小さな中空チャネルが周期的に配置されているシースによって取り囲まれている。シース内の中空チャネルの周期的構造は、半導体技術に基づいて「フォトニックバンドギャップ」と呼ばれる効果をもたらし、それに従って、シース構造で散乱する特定の波長範囲の光は、中心の空洞内のブラッグ反射に起因して構造的に干渉する可能性があり、シース内を横方向に伝播することはできない。
【0009】
「反共振中空コアファイバ」(anti-resonant hollow-core fiber、ARHCF)と呼ばれる中空コアファイバの実施形態では、中空コア領域は、いわゆる「反共振要素(anti-resonant element)」(又は「反共振要素(anti-resonance element)」、略して「ARE」)が配置されている内側シース領域によって取り囲まれている。中空コアの周りに均等に分布している反共振要素の壁は、反共振で動作するファブリーペロー空洞として作用することができ、入射光を反射し、それをファイバコアを通して誘導する。
【0010】
このファイバ技術は、低い光減衰、(UV波長範囲又はIR波長範囲内であっても)非常に広い透過スペクトル、及びデータ伝送における低いレイテンシを約束する。
【0011】
中空コアファイバは、データ伝送、例えば材料加工のための高出力ビーム誘導、モーダルフィルタリング、特に紫外線波長範囲から赤外線波長範囲までのスーパーコンティニューム生成のための非線形光学の分野で使用される。更に、当該ファイバは、分光応用及び短レーザパルスの伝送に好適である。
【背景技術】
【0012】
反共振中空コアファイバの欠点は、高次モードが必ずしも抑制されず、それにより、反共振中空コアファイバは、長い伝送距離にわたって純粋なシングルモードとは限らないことが多く、出力ビームの品質が劣化することである。
【0013】
Francesco Polettiによる文献「Nested anti-resonant nodeless hollow core fiber」(Optics Express,Vol.22,No.20(2014);DOI:10.1364/OE 22.023807)には、反共振要素が単純な単一の構造要素として設計されていないが、代わりに、複数の入れ子式構造要素で構成されているファイバ設計が提案されている。入れ子式反共振要素は、基本コアモードではなく高次コアモードが、シースモードに位相整合され、抑制されるように設計されている。その結果、基本コアモードの伝播が常に保証され、中空コアファイバは、制限された波長範囲にわたって効率的にシングルモードであることが可能である。
【0014】
このような「入れ子式反共振ノードレス中空コア光ファイバ」(nested anti-resonant nodeless hollow core fiber、NANF)用のプリフォームは、複数の反共振要素(ARE)で構成されている。それらは、いわゆる「スタックアンドドロー(stack and draw)」法で製造されることが多い。例えば、「NANF」設計の中空コアファイバ用プリフォームを製造するために、各々が、反共振要素性外管(以下、ARE外管と略す)と、ARE外管の内側面の片側に配置された反共振要素内管(以下、NE内管と略す)とからなる、複数の反共振要素プリフォームが、スリーブ管の内側に取り付けられる。
【0015】
反共振プリフォームの各々は、その設定点形状からある偏差を有し、各位置決めステップ及び成形ステップは、プリフォームにおける絶対幾何学形状誤差に加えられ得る幾何学形状偏差を必然的にもたらす。これは、出力要素をそれらのそれぞれの目標位置に位置決めし、固定するときに、特に配置がコンパクトであり、出力要素の互いからの距離が短い場合に、高い精度を要求する。低い減衰値及び広い伝送範囲を達成するために、反共振要素の均一な壁厚に加えて、特にスリーブ管の内壁上のそれらの方位角位置も重要である。ARE外管上のNE内管の取り付け点は、シース管の内壁上のARE外管の取り付け点と同じ方位角位置を有さなければならない。加えて、個々の取り付け点の間の距離とARE外管の間の外周距離の両方が、可能な限り均一でなければならない。これは、「スタックアンドドロー」技術を用いても容易には達成することができない。
【0016】
これに関する簡略化は、ARE外部キャピラリと、ARE外部キャピラリの内壁に固定された少なくとも1つのNE内部キャピラリとを備える予備製造型キャピラリブランクが製造される技術からもたらされる。この技術は、例えば、A.F.Kosolapov、G.K.Alagashev、A.N.Kolyadin、A.D.Pryamikov、A.S.Biriukov、I.A.Bufetov、E.M.Dianovによる文献「Hollow-core revolver fibre with a double-capillary reflective cladding」(Kvantovaya Elektronika、2016年、Vol.46、no.3、267頁~270頁)に記載されている。キャピラリブランクの予備製造は、この場合、石英ガラス製のARE外管と、その内壁に溶接された石英ガラス製のNE内管とを一緒に伸長してキャピラリブランクを形成することからなる。したがって、伸長されたキャピラリブランクは、ARE外部キャピラリと、それに固定して接続されたNE内部キャピラリとで構成される。伸長されたキャピラリブランクのうちの5つが、石英ガラス製のスリーブ管の内壁に装着される。この装着には、5回対称性を有するテンプレートが使用される。キャピラリブランクを内壁と融着させ、この集合体を伸長して一次プリフォームを形成し、続いて、その一次プリフォームから中空コアファイバを線引きする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
予備製造型キャピラリブランクは、組み立ての容易さ及び精度の点で利点を有するが、構成要素集合体を伸長するとき、最初は円形の管断面の長円(楕円形)変形が生じやすいことが分かった。軟化及び延伸中、NE内管は、ARE外管の内側面上で溶融される。この接触の結果として、断面の変形及び長円形の断面形状をもたらし得る力が、ARE外管の内側面に対して作用する。
【0018】
したがって、既知の方法では伸長されたキャピラリブランクは、6.28mmの長い断面軸と6.12mmの短い断面軸とを有する楕円形の断面を有する。したがって、最長断面軸ALの軸長比AL/AKと最短断面軸AKの軸長比AL/AKは、1.026である。この軸比は、本明細書では、「楕円率」又は「楕円度」とも呼ばれる。
【0019】
キャピラリブランクの楕円率により、スリーブ管内壁上での正確な装着がより困難になる。例えば、装着に使用されるテンプレートは一般に、円断面となるように設計される。また、当該テンプレートにより、後続の線引きプロセスのためにその外径を判定することが困難になり、したがって、中空コアファイバの形態での線引き結果の正確かつ再現可能な予測が妨げられる。
【0020】
しかしながら、共振条件又は反共振条件を維持するためには、誘導される光の動作波長の大きさのオーダの小さな寸法ばらつきであっても許容することができない。
【0021】
したがって、本発明の目的は、組み立ての容易さ及び精度に関して予備製造型キャピラリブランクの利点を維持することができるが、楕円率による関連する欠点を非常に低く保つことができ、かつ反共振要素の高い精度及び中空コアファイバ内の正確な位置決めを再現可能に達成することができることを予測可能であり得る、反共振中空コアファイバを製造する方法及び反共振中空コアファイバ用プリフォームを提供することである。
【0022】
加えて、スリーブ管の所定の方位角位置における正確な位置決め及び線引き結果の再現可能な予測を容易にする、低い楕円率を有するキャピラリブランクが提供される。
【0023】
加えて、本発明の目的は、可能な限り精密に位置決めされている幾何学的に正確な反共振要素を有する反共振中空コアファイバを引き出すことができるプリフォームを特定することである。
【0024】
反共振中空コアファイバを製造するための方法に関して、この目的は、断面寸法ODNE、IDNE、ODARE、IDARE並びにODARE_cap及びWTARE_capが、キャピラリブランク(5)のARE外部キャピラリ(11)が1.025未満の楕円度を有するようなやり方で調整されている点で、前述のタイプの方法に基づく本発明に従って達成される。
【0025】
反共振中空コアファイバを製造するための出発点は、本明細書において「一次プリフォーム」と呼ばれるプリフォームである。通常、一次プリフォームの製造は、スリーブ管への反共振要素プリフォームの設置及び接続を含む。反共振要素プリフォームの少なくとも一部分は、入れ子式反共振要素を有する予備製造型キャピラリブランクの形態で存在する。本明細書では、これは、ARE外部キャピラリを備えるブランクであって、ARE外部キャピラリの内側面に少なくとも1つのNE内部キャピラリが固定され、ARE外部キャピラリは外部キャピラリの長手方向軸線に平行に延びている、ブランクを意味すると理解される。多重入れ子式反共振要素の場合、同様に外部キャピラリの長手方向軸線に平行に延びる少なくとも1つの更なる内部NE内部キャピラリが、外部NE内部キャピラリの内側面に固定される。ARE外部キャピラリとNE内部キャピラリ(単数又は複数)とは一緒に融着され、反共振要素プリフォームを形成する。
【0026】
予備製造型キャピラリブランクを使用して製造された一次プリフォームを直接線引きして、中空コアファイバを形成することができる。原則として、一次プリフォームを更に処理して、そこから、本明細書では「二次プリフォーム」と呼ばれるプリフォームを製造することができる。任意選択で、中空コアファイバは、二次プリフォームから線引きされる。二次プリフォームの製造は、中空コアファイバの出力要素が製造され、互いに対して位置決めされる工程と、少なくとも1つの熱間成形ステップとを含む。
【0027】
一次プリフォーム及び二次プリフォームは、中空コアファイバを直接形成するために線引きされる、モノリシック体、あるいは、1つの集合シリンダもしくは複数の集合シリンダを有する構成要素の同軸集合体の一部のいずれかである。「プリフォーム」という一般的な用語は、本明細書では、中空コアファイバが最終的に線引きされる構成要素又は構成要素の同軸集合体を意味すると理解される。
【0028】
シース材料の付加は、例えば、集合シリンダを一次プリフォーム上へとコラップスすることによって達成される。一次プリフォーム及び集合シリンダの同軸配置体は、伸長される、又は集合シリンダがコラップスするときに伸長される、又は伸長されない。ここで、反共振要素プリフォームは、それらの形状又は配置が変更される、又は、それらの形状又は配置が変更されない。
【0029】
単純な入れ子式NE内部キャピラリを有するキャピラリブランクを製造するために、本明細書ではARE外管及びNE内管と呼ばれる円形断面を有する出力管が使用される。NE内管は、ARE外管の内側面に固定されている。好ましくは、集合体の2つの反対側の端面端部上で接続され、例えば、構造的保持手段を用いて、好ましくは局所的なスポット接合又は熱接合(スポット溶接)によって接続される。
【0030】
この構成要素集合体を、ゾーンごとに軟化し、延伸(伸長)して、ARE外部キャピラリとNE内部キャピラリとが互いに対して固定された所定の検証可能な位置及び配向を有する予備製造型キャピラリブランクを形成する。予備製造により、そうでない場合には一次プリフォームを製造するための組み立て中に必要となる位置決め手段及び位置合わせ手段が排除される。この点において、これらの組み立てステップが容易になり、反共振要素プリフォームの寸法安定性が改善される。
【0031】
しかしながら、構成要素集合体を伸長するとき、最初は円形の管断面の長円(楕円形)変形が生じやすいことが分かった。これはNE内部キャピラリにも関連するが、特にARE外部キャピラリに関連する。ARE外部キャピラリの長円変形の程度は、出力管の断面幾何学形状(ODNE、IDNE、ODARE、IDARE)及びARE外部キャピラリの断面幾何学形状(ODARE_cap、WTARE_cap)によって、並びに熱延伸中のテーパ比によって(しかし、出力管及びARE外部キャピラリの断面幾何学形状の関数としても)実質的に判定されることが分かった。対照的に、温度、送り込み及び引き抜き速度などの線引きパラメータは、楕円率に対して比較的わずかな影響しか及ぼさない。しかしながら、圧力及びガス流などの他の線引きパラメータは、ARE外部キャピラリの楕円率に対して顕著な影響を及ぼす。例えば、ガス流は局所的な冷却を引き起こす可能性があり、これはARE外部キャピラリの幾何学形状に影響を及ぼす。他の場合の所定の線引きパラメータでは、ARE外部キャピラリの楕円率は、主に、出力管及びARE外部キャピラリの幾何学的断面寸法の関数である。
【0032】
本発明は、熱延伸によって製造されたキャピラリブランクにおいて、例えば1.025の、ARE外部キャピラリの所定の最大楕円率を再現可能に維持することができるように、当該幾何学的パラメータをどのように調整すべきかの教示を特定する。
【0033】
好ましい方法の変形例では、幾何学的寸法は、以下の因子(F1)~(F4)、すなわち、
(F1)NE内管の平衡圧力peg_NEの比とARE外管の平衡圧力peq_AREの比、
(F2)ARE外管の内径に対するARE外管とNE内管との間の距離(IDARE-ODNE)/IDARE、
(F3)工程(b2)に従ったキャピラリブランク集合体の熱延伸中のテーパ比ODARE/ODARE_cap、及び
(F4)キャピラリブランクの外径と壁厚との比ODARE_cap/WTARE_cap
に関連して調整される。
【0034】
平衡圧力peqは、ガラス管がコラップスも膨張もしないように、ガラス管の伸長中に必要とされる圧力である。NE内管の平衡圧力peq;NEは、
peq;NE=(2/ODNE+2/IDNE)×σ (1),
から求められ、
ARE外管の平衡圧力peq;AREは、
peq,ARE=(2/ODARE+2/IDARE×σ (2),
から求められ、
式中、σは、石英ガラスに対して0.4N/mで適用することができる線引き温度における表面張力である。
【0035】
有利には、石英ガラス製のARE外管又は石英ガラス製のNE内管の直径寸法は、平衡圧力peq,NEが60~90Paの範囲、好ましくは65~80Paの範囲内であり、平衡圧力peq_AREが25~50Paの範囲、好ましくは30~40Paの範囲内であるように選択される。
【0036】
因子(F1)に従った平衡圧力の比peq;NE/peq;AREは、キャピラリブランクにおける単一のキャピラリの表面張力の有効性の尺度である。この値が大きいほど、外部キャピラリ(ARE)の楕円率に対する内部キャピラリ(NE)の影響がより大きくなる。
【0037】
したがって、平衡圧力peq;NE及びpeq;AREは、因子(F1)が、有利には、1.5~2.5の範囲内の値、好ましくは1.5~2の範囲内の値を取るように調整される。
【0038】
ARE外管とNE内管との間の自由距離が大きいほど、1つには、ARE外側キャピラリからの自由距離が大きくなるにつれて内径IDNE_capが小さくなるので、ファイバの最終処理がより複雑かつより困難になる。したがって、例えば、圧力接続を伴う高温耐性接続は、技術的により複雑である。もう1つには、平衡圧力の比は、NE内管からAR外管の自由距離が大きくなるにつれて大きくなる。
【0039】
この観点から、因子(F2)を、0.2~0.5の範囲内の値、好ましくは0.3~0.4の範囲内の値に調整することが有利であることが証明された。
【0040】
絶対幾何学形状誤差を低減するために、熱延伸中には、大きなテーパ比ODARE/ODARE_capが望ましい。一方で、大きなドローダウン比は、それに対応する大きな成形プロセス及び材料移動に関連付けられ、これは、繊細な反共振要素プリフォームにおける望ましくない変形をもたらしやすい可能性がある。
【0041】
因子(F3)に従ったテーパ比を、5~10の範囲内の値、好ましくは5~8の範囲内の値に設定することが、好適な妥協点であることが証明された。
【0042】
キャピラリブランクの外径と壁厚との比ODARE_cap/WTARE_capは、キャピラリブランクの寸法安定性の尺度である。外径と比較して壁が薄くなるほど、より変形が生じやすくなる。
【0043】
可能な最低楕円度に関して、因子(F4)を、15~25の範囲内の値、好ましくは15~20の範囲内の値に調整すると成功することが証明された。
【0044】
加えて、測定値は、キャピラリドローの寸法安定性の指標を提供する。
【0045】
特に好ましい方法の変形例では、因子(F1)~(F4)は、キャピラリブランクが1.020未満の楕円度を有するように調整される。
【0046】
因子(F1)~(F4)の数学的積が楕円度の尺度であることが分かった。積が小さいほど、キャピラリブランクにおけるARE外部キャピラリの楕円率は小さくなる。この尺度は、以下で「幾何学的パラメータ」(P(geom.))と呼ばれる。
【0047】
【0048】
因子(F1)~(F4)の各個々の因子は、幾何学的パラメータに対して影響を及ぼす。因子が小さいほど、ARE外部キャピラリの楕円率に対する寄与が小さくなる。幾何学的パラメータに基づいて、当業者は、出力管(NE内管及びARE外管)の断面寸法が、計画されたテーパ比を有する楕円度をどのようにもたらすかを確実に推定することができる。したがって、実証的な試験及び失敗を防止することができ、あるいは、少なくともその回数を低減することができる。例えば、幾何学的パラメータが94である場合、1.04の楕円率が予想される。楕円率が1.025未満である場合、幾何学的パラメータは77.5を超えてはならない。1.010の楕円率のみが許容可能である場合、幾何学的パラメータを55以下に設定すべきである。
【0049】
したがって、最小楕円率を達成するためには、幾何学的パラメータが、35~75の範囲内、好ましくは40~60の範囲内の値に設定される。
【0050】
特に、そのような多重入れ子式キャピラリブランクの場合、個々の構成要素と比較して位置決めし、位置合わせするための労力が著しく低減される。
【0051】
一次プリフォームを形成するための更なる処理中に、複数の予備製造型キャピラリブランクが、スリーブ管の内側面に装着される。
【0052】
本方法を活用して製造される一次プリフォームは、好ましくは26~230mmの範囲内の、特に好ましくは30~200mmの範囲内の外径を有する。
【0053】
一次プリフォームの伸長中に、中空コアファイバを形成するために又は二次プリフォームを形成するために、追加のシース材料が適用される、又は追加のシース材料が適用されない。伸長中、一次プリフォームは、加熱ゾーン内でゾーンごとに加熱される。直径が大きいほど、加熱ゾーンへの前進速度が遅くなり、プリフォームの各軸方向部分が加熱ゾーンの高温に曝露される持続時間が長くなる。しかしながら、伸長中に前進速度が遅すぎる場合、反共振要素プリフォームは変形する。したがって、一次プリフォームの直径は、好ましくは最大で230mm、好ましくは最大で200mmである。また、一次プリフォームの直径は、好ましくは少なくとも26mm、好ましくは少なくとも30mmである。これは、直径がより小さい場合、加熱ゾーン内の任意の温度変動を補償するには、プリフォームの熱慣性が低すぎることが分かったからである。
【0054】
中空コアファイバを形成するために、工程(d)に従って一次プリフォーム又は二次プリフォームを線引きしているとき、好ましくは、伸長された中空コア領域に対して、ARE外部キャピラリ内及びNE内部キャピラリ内で過圧が生成され、維持される。ARE外部キャピラリ内の圧力は、一般に、NE内部キャピラリ内の圧力とは異なる。中空コア領域と内側シース領域とを有する中空コアファイバが得られ、以前のARE外部キャピラリは、好ましくは円形又はわずかに長円形の断面を有する反共振要素を形成する。
【0055】
スリーブ管の内側面上におけるプリフォームの位置決めの精度は、スリーブ管の内側及び/若しくはスリーブ管の外側、並びに/又はARE外管の内側及び/若しくはARE外管の外側を機械加工、特にドリル加工、フライス加工、研削、ホーニング及び/又は研磨により製造することによって更に改善される。
【0056】
他の既知の形成技術と比較して、上記機械加工技術は、熱及び圧力を使用することによってより精密でより微細な構造を提供し、ノズル、プレス又は溶融金型などの成形ツールによる表面の汚染を回避する。
【0057】
更に、ARE外管が、石英ガラスの粘度を低下させる少なくとも1種のドーパントを含有する石英ガラスからなる手順、及び/又は少なくとも1つのNE内管が、石英ガラスの粘度を上昇させる少なくとも1種のドーパントを含有する石英ガラスからなる手順が有効であることが証明されている。
【0058】
石英ガラスの粘度を低下させるために使用されるドーパントは、好ましくはフッ素、塩素及び/又は水酸基である。石英ガラスの粘度を上昇させるドーパントは、Al2O3(15重量ppmの最大濃度)及び窒素であると考えられる。
【0059】
ドーピングにより、応力を回避又は低減させるために、隣接するプリフォーム構成要素の熱膨張係数を適合させることが可能になる。また、少なくとも1つの入れ子式NE内管の熱安定性に対してARE外管の熱安定性を低減させるために使用することもできる。
【0060】
これに関して、例えば、1250℃の測定温度では、ARE外管の石英ガラスが、入れ子式NE内管の石英ガラスよりも少なくとも、0.1dPa・s低い粘度、好ましくは少なくとも0.2dPa・s低い粘度を有する場合(粘度がdPa・s単位の対数値として与えられる場合)に有利である。
【0061】
好ましい方法では、ARE外部キャピラリが0.2~3mmの範囲内の壁厚、好ましくは0.25~1mmの範囲内の壁厚を有し、90~230mmの範囲内の外径、好ましくは120~200mmの範囲内の外径を有するスリーブ管が使用される点で、スリーブ管内のキャピラリブランクの位置決め精度が更に改善される。当該構成要素は各々、少なくとも700mm、好ましくは少なくとも1mの長さを有する。当該構成要素は、その取り扱いを簡略化する比較的大きな体積の構造要素である。加えて、スリーブ管及びキャピラリブランクの垂直配置の場合、重力は、キャピラリブランクが各々、それらの上面端部の目標位置に位置決めされ固定されるとき、キャピラリの長手方向軸線の平行性及び垂直方向の位置合わせをサポートする。
【0062】
中空コアファイバ用のプリフォームの製造に関して、上記の技術的目的は、幾何学的寸法ODNE、IDNE、ODARE、IDARE並びにODARE_cap及びWTARE_capが、キャピラリブランクのARE外部キャピラリが1.025未満の楕円度を有するように構成されている点で、前述のタイプの方法に基づく本発明によって達成される。
【0063】
この目的のために、ARE外部キャピラリが少なくとも1つのNE内部キャピラリと融着され、ARE外部キャピラリとNE内部キャピラリとが互いに対して固定された所定の検証可能な位置及び配向を有する予備製造型キャピラリブランクが提供される。
【0064】
予備製造により、そうでない場合には一次プリフォームを製造するための組み立て中に必要となる位置決め手段及び位置合わせ手段が排除される。この点において、これらの組み立てステップが容易になり、反共振要素プリフォームの寸法安定性が改善される。
【0065】
予備製造型キャピラリブランクの製造は、ARE外管とNE内管とからなる構成要素集合体の熱延伸を含み、これは、最初は円形の管断面の長円(楕円形)の変形をもたらしやすい可能性がある。これはNE内部キャピラリに関連するが、特にARE外部キャピラリに関連する。ARE外部キャピラリの長円変形の程度は、出力管の断面幾何学形状(ODNE、IDNE、ODARE、IDARE)及びARE外部キャピラリの断面幾何学形状(ODARE_cap、WTARE_cap)によって、並びに熱延伸中のテーパ比によって(しかし、出力管及びARE外部キャピラリの断面幾何学形状の関数としても)実質的に判定されることが分かった。対照的に、温度、送り込み及び引き抜き速度などの線引きパラメータは、楕円率に対して比較的わずかな影響しか及ぼさない。しかしながら、圧力及びガス流などの他の線引きパラメータは、ARE外部キャピラリの楕円率に対して顕著な影響を及ぼす。例えば、ガス流は局所的な冷却を引き起こす可能性があり、これはARE外部キャピラリの幾何学形状に影響を及ぼす。しかしながら、他の場合には所定の線引きパラメータにより、ARE外部キャピラリの楕円率は、主に、出力管の及び伸長されたARE外部キャピラリの幾何学的断面寸法の関数である。
【0066】
本発明は、熱延伸によって製造されたキャピラリブランクにおいて、例えば1.025の、ARE外部キャピラリの所定の最大楕円率を再現可能に維持することができるように、当該幾何学的パラメータをどのように調整すべきかの教示を特定する。
【0067】
中空コアファイバの製造に関連して、プリフォームを製造するための手段が上記で説明されており、これらの説明は本明細書に含まれる。
【0068】
反共振中空コアファイバを製造するための中間製品としての予備製造型キャピラリブランクに関して、上記の技術的目的は、ARE外部キャピラリが1.025未満の楕円度を有するという点で、最初に述べたタイプのキャピラリブランクに基づく本発明に従って達成される。
【0069】
予備製造型キャピラリブランクでは、少なくとも2つのキャピラリが互いに一体的に接続され、管状の構成要素を形成する。予備製造により、そうでない場合には一次プリフォームを製造するための組み立て中に必要となる位置決め手段及び位置合わせ手段が排除される。この点において、これらの組み立てステップが容易になり、反共振要素プリフォームの寸法安定性が改善される。
【0070】
キャピラリブランクのARE外部キャピラリの断面は、円形であり、あるいは、最大で最大で1.025未満、好ましくは1.020未満の低い不透明度を有する。結果として、スリーブ管の内壁上でのキャピラリブランクの正確な位置決め、及び後続の線引きプロセスのためのスリーブ管の外径の固定、並びに線引き結果の正確かつ再現可能な予測及び中空コアファイバのより精密な製造が容易になる。
【0071】
中空コアファイバの製造に関連して、キャピラリブランク及びプリフォームを製造するための手段が上記で説明されており、これらの説明は本明細書に組み込まれる。
【0072】
プリフォームに関して、上述した技術的目的は、反共振要素プリフォームの少なくとも一部分が本発明によるキャピラリブランクとして設計されるという点で、上述したタイプのプリフォームに基づいて本発明によって達成される。
【0073】
プリフォームは、本発明の意味では、一次プリフォームである。プリフォームのシース領域は、少なくとも1つの更なるシース管によって包囲することができるスリーブ管を備える。反共振要素プリフォームは、スリーブ管の内側に配置され、例えば接着又は熱接合によってスリーブ管に接続される。当該反共振要素プリフォームの、好ましくは全ての反共振要素プリフォームの少なくとも一部分は、少なくとも2つのキャピラリが互いに一体的に接続されている予備製造型キャピラリブランクの形態である。予備製造により、そうでない場合には一次プリフォームを製造するための組み立て中に必要となる位置決め手段及び位置合わせ手段が排除される。この点において、これらの組み立てステップが容易になり、反共振要素プリフォームの寸法安定性が改善される。
【0074】
キャピラリブランクのARE外部キャピラリの断面は、円形であり、あるいは、最大で1.025未満、好ましくは1.020未満の低い不透明度を有する。結果として、スリーブ管の内壁上でのキャピラリブランクの正確な位置決め、及び後続の線引きプロセスのためのスリーブ管の外径の固定、並びに線引き結果の正確かつ再現可能な予測及び中空コアファイバのより精密な製造が容易になる。
【0075】
中空コアファイバの製造に関連して、キャピラリブランク及びプリフォームを製造するための手段が上記で説明されており、これらの説明は本明細書に組み込まれる。
【0076】
定義
上記の説明の個々の方法ステップ及び用語は、以下で更に定義される。定義は、本発明の説明の一部を形成する。以下の定義のうちの1つと残りの説明との間で事実上矛盾した場合には、残りの説明が最終的である。
【0077】
反共振要素
反共振要素は、中空コアファイバの単純な構造要素であっても、あるいは入れ子式の構造要素であってもよい。反共振要素は、中空コアの方向から見たときに負の曲率を有する(凸状である)又は曲率を有さない(平面状、直線状である)、少なくとも2つの壁を有する。反共振要素は、一般に、動作光に対して透明な材料、例えば、ガラス、特にドープされたSiO2又はドープされていないSiO2、プラスチック、特にポリマー、複合材料又は結晶材料からなる。
【0078】
反共振要素用プリフォーム
反共振要素プリフォームと呼ばれるものは、ファイバ線引きプロセス中の単純な伸長によって、中空コアファイバ内で実質的に反共振要素になるプリフォームの構成要素、あるいは、構成成分である。入れ子式反共振要素プリフォームは、中空コアファイバ内で入れ子式反共振要素を形成する。入れ子式反共振要素は、ARE外管と、ARE外管の内側ボア内に配置されている少なくとも1つの更なる構造要素とで構成される。更なる構造要素は、外管の内面に接している更なる管とすることができる。更なる管は、「入れ子式要素(nested element)」もしくは略して「NE内管」と呼ばれ、あるいは「入れ子式NE内管」とも呼ばれる。
【0079】
多重入れ子式反共振要素プリフォームの場合、少なくとも1つの更なる構造要素、例えば、入れ子式NE内管の内面に当接している第3の管を、NE内管の内側ボア内に配置することができる。多重入れ子式反共振要素プリフォームが存在する場合、ARE外管内に配置される複数の管を区別するために、任意選択で、「外側NE内管」と「内側NE内管」とが区別される。
【0080】
円筒形の反共振要素プリフォーム及びそれらの円筒形の構造要素並びにキャピラリブランクに関連して、「断面」という用語は、常に、円筒形の関連する長手方向軸線に対して垂直な断面を指し、すなわち、別段の指示がない限り、管状の構成要素の外側輪郭の断面(内側輪郭の断面ではない)を指す。
【0081】
一次プリフォームの更なる処理、特に熱間成形ステップによる更なる処理は、中間製品をもたらすことができ、中間製品では、元の反共振要素プリフォームは、元の形状と比較して変化した形状で存在する。本明細書では、変更された形状は、反共振要素プリフォームとも呼ばれる。
【0082】
プリフォーム/一次プリフォーム/二次プリフォーム/コアプリフォーム(ケーン)
プリフォームは、反共振中空コアファイバがそこから線引きされる構成要素である。プリフォームは、一次プリフォーム、又は一次プリフォームの更なる加工によって製造される二次プリフォームである。一次プリフォームは、少なくとも1つのスリーブ管と、その内部に緩く収容されている又はしっかりと固定されている、反共振要素のためのプリフォーム又は前駆体とからなる集合体として存在することができる。中空コアファイバがそこから線引きされる二次プリフォームへの一次プリフォームの更なる処理は、以下の熱間成形プロセス、すなわち、
(i)伸長、
(ii)コラップス、
(iii)コラップス及び同時伸長、
(iv)追加のシース材料のコラップス、
(v)追加のシース材料のコラップス及びその後の伸長、
(vi)追加のシース材料のコラップス及び同時伸長
のうちの1つ以上の1回の実行又は反復実行を含むことができる。
【0083】
ケーンとして、本明細書は、一次プリフォームのコラップス及び/又は伸長によって得られるプリフォーム、したがって二次プリフォームの定義に含まれるプリフォームについて言及する。典型的には、ケーンは、中空コアファイバの線引き前又は線引き中、追加のシース材料で被覆される。
【0084】
伸長/コラップス
伸長中、一次プリフォームは熱延伸される。延伸は、同時にコラップスすることなく行うことができる。縮尺通りに伸長を行うことができ、それにより、例えば、一次プリフォームの構成要素又は構成成分の形状及び配置が、延伸され伸長された最終製品に反映される。しかしながら、伸長中、一次プリフォームは、縮尺通りに線引きされないことがあり、その幾何学形状が変化させられることがある。
【0085】
コラップス中に、内側ボアは狭くなり、あるいは、管状の構成要素の間の環状間隙が閉じる又は狭くなる。一般に、コラップスは伸長によって生じる。
【0086】
中空コア/内側シース領域/外側シース領域
本明細書では、少なくとも1つのスリーブ管と、その内部に緩く収容されている又はしっかりと固定されているAREプリフォームとを備える集合体は、「一次プリフォーム」とも呼ばれる。一次プリフォームは、中空コアとシース領域を備える。このシース領域は、例えば集合体上へとコラップスすることによって製造された「外側シース領域」も存在する場合、及び当該シース領域を区別すべき場合、「内側シース領域」とも呼ばれる。「内側シース領域」及び「外側シース領域」という用語は、中空コアファイバにおける対応する領域、又は一次プリフォームの更なる処理によって得られる中間製品における対応する領域についても使用される。
【0087】
「管の内側」という表記は、「管の内面」の同義語としても使用され、「管の外側」という表記は、「管の外面」の同義語としても使用される。管に関連する「内側ボア」という用語は、内側ボアがドリル加工プロセスによって製造されたことを意味するものではない。
【0088】
平衡圧力
平衡圧力peqは、ガラス管がコラップスも膨張もしないように、ガラス管の伸長中に必要とされる圧力である。
【0089】
計算は、K.Schuster、J.Kobelke、A.Schwuchow、M.Leich、M.Becker、M.Rothhardt、U.Ropke、J.Kirchhof、H.Bartelt、T.Geernaertの「Preparation and applications of germanium and fluorine doped microstructured fibers」、Proc.SPIE 6588,Photoonic Crystal Fibers,658804(2007年5月22日)、doi:10.1117/12.722470に従って行われ、ガラス管の内半径(rinternal)及び外半径(rexternal)に基づき、以下の式の通りである。
【0090】
peq=(1/rexternal+1/rinternal)×σ (4),
式中、σは線引き温度における表面張力である。線引き温度の石英ガラスには、σ=0.4N/mを適用することができる。
【0091】
楕円度
円形断面を有する管では、楕円度は1である。楕円形の断面を有する管の場合、楕円度は、最長断面軸ALと最短断面軸AKとの比から求められる。キャピラリブランクの楕円度は、そのARE外部キャピラリの楕円度から求められる。
【実施例】
【0092】
【図面の簡単な説明】
【0093】
以下の実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。詳細は以下の通りである。
【
図1】キャピラリブランクを製造するためのARE外管とNE内管との緩い集合体の断面写真を示す。
【
図2】熱接合プロセスを使用して管の端部を互いに固定した後の、
図1のARE外管とNE内管との集合体の写真を示す。
【
図3】
図2の集合体を使用してキャピラリブランクを製造する工程を説明するための略図を示す。
【
図4a】理想的な形態のキャピラリブランクを製造するための複数の集合体の断面を示す。
【
図4b】
図4aの集合体を使用して製造されたキャピラリブランクの断面の写真を示す。
【
図5】楕円度と幾何学的パラメータとの関係を説明する図である。
【
図6】複数のキャピラリブランクを使用して製造された一次プリフォームの概略断面図を示す。
【0094】
図1は、予備製造型キャピラリブランクを製造するための前駆体を示している。前駆体は、複数の入れ子式出力管、すなわち、ARE外管1及びNE内管2の緩い集合体4の形態をしている。全ての管(1、2)は、石英ガラスからなり、円形断面を有している。これらの管の長手方向軸線は平行に延び、所与の図では、紙面に対して垂直である。NE内管2の外側面は、ARE外管1の内側面に当接している。出力管(1、2)の直径は異なっているが、壁厚及び長さは実質的に同じである。
図4a及び表1は、出力管(1、2)及び更なる集合体の出力管の半径方向寸法に関する詳細な情報を含んでいる。
【0095】
出力管(1、2)は、2つの端面の領域において点状に互いに融着されている。局所的接続点は、
図2において参照符号6で示されている。
【0096】
図3は、キャピラリブランク5を形成するために集合体4を更に処理するための工程を概略的に示している。接続点6を用いて固定された出力管集合体4は、垂直に配向された長手方向軸線を用いて上から下に環状の加熱ゾーン7に送り込まれ、ゾーンごとに軟化され、引き抜きローラ8を用いて軟化領域からストランド(5)が取り出され、そこからストランドキャピラリブランク5が切断される。延伸プロセス中、キャピラリブランクの内部ボアを通して、25ml/分の一定のヘリウムガス流が流される。出力管(1、2)の内側ボアは、このプロセスの間、開いたままであり、それにより、ほぼ同じ内圧が内部に確立される。
【0097】
以前の出力管(1、2)が伸長され、それらの接触面に沿って一緒に融着される、軟化及び延伸プロセスの後、キャピラリブランク5が得られる。軟化領域における表面張力が有効である結果、それらは、断面形状を長円形状に変化させた。
【0098】
これは、
図4aのサンプル1~6の集合体4の理想的な表現と、
図4bのそこから製造されたキャピラリブランクの写真との比較を示す。キャピラリブランク5において、以前のARE外管(1)はARE外部キャピラリ11を形成し、以前のNE内管(2)は入れ子式NE内部キャピラリ12を形成する。全てのキャピラリ(11、12)は、程度の差はあるが、長円形の断面積を示す。キャピラリブランクのうちの1つに対して、寸法を示す矢印が例として描かれており、寸法を示す矢印A
radialは、入れ子式NE内部キャピラリ12との接触点で測定された場合のARE外部キャピラリ11の外径を示す。ここで、これは同時にARE外部キャピラリ11の最大外径である。寸法を示す矢印A
tangentialは、A
radialに対して垂直に測定された場合の、ARE外部キャピラリ11の断面寸法を示す。この寸法は同時に、ARE外部キャピラリ11の最小外径に対応する。他のキャピラリブランクについて、A
radial及びA
tangentialが同様に判定される。
【0099】
表1は、出力管(1、2)の幾何学的断面寸法を、サンプル1~6及びそこから伸長されたキャピラリブランク、並びにこれらのデータに基づいて計算された幾何学的パラメータについての上述の式(3)の因子1~4について示す。
【0100】
【0101】
【表2】
*1)これらは、測定データではなく、むしろ、比引張り(伸長に起因する縮尺通りの直径減少)を仮定して計算された直径の目標値である。
【0102】
サンプル1及び2において、幾何学的パラメータは77.5未満であり、楕円率は1.025未満である。これらは本発明の実施例である。サンプル3~6は比較例である。
【0103】
図5の図では、サンプル1~6のキャピラリブランクについて判定された楕円度「O」が、無次元の幾何学的パラメータ「P(geom.)」に対してプロットされている。それによれば、楕円度及び幾何学的パラメータは、非常に良好に、すなわち、線引き温度並びに送り込み速度及び引き抜き速度とはほとんど無関係にスケーリングされる。回帰直線の直線方程式はy=0.9682+0.008xであり、式中、R
2=0.9886である。幾何学的断面寸法を特定することによって、この関係はそれにより、キャピラリブランクの予想楕円率の特定の調整又は予測を可能にする。
【0104】
線形関係に従うサンプル1~7は、中程度の壁厚から大きい壁厚を有する。より具体的には、それらは、ARE外管の断面積(CSA断面積)について、238.8~863.9mm2の広い範囲をカバーし、ARE外部キャピラリの断面積について、5.95~15.17mm2の同様に広い範囲をカバーする。断面積比(CSA_ARE/CSA_ARE_cap)は、28.75~57.68の範囲である。
【0105】
より大きな(表面/体積)比を有する非常に薄い壁のサンプルの場合、他の効果は、例えば、サンプルの加熱及び冷却挙動などの影響を受け、それが、いくらか異なる回帰直線をもたらし得ることを排除できない。また、上述の直線方程式を使用すると、25超の、特に28超の断面積比(CSA_ARE/CSA_ARE_cap)を有するサンプルの楕円率も非常に良好に予測することができる。
【0106】
サンプル1~6の場合、出力管は、ドープされていない石英ガラスからなる。式(3)による線形関係は、ドープされた石英ガラスにも当てはまる。任意選択で、異なる表面張力は、因子(F1)に従って異なる平衡圧力をもたらす。
【0107】
図6は、サンプル1(表1)のキャピラリブランク5を使用して構築された一次プリフォーム15の断面を概略的に示す。これは、中空コアファイバを製造するための中間製品を表す。一次プリフォーム15は、長さ1000mm、外径30mm、内径24mmの石英ガラス製のスリーブ管14で構成されている。全てのキャピラリブランク5は、いずれの場合にも、ARE外部キャピラリ11と入れ子式NE内部キャピラリ12とからなる入れ子式構造要素の接合された集合体として存在する。ARE外管11は7.46mmの外径を有し、入れ子式NE内管12は4.6mmの領域の外径を有する。全ての構造要素(11、12)の壁厚は同じであり、0.37mmである。ARE外管11及び入れ子式ARE内管12の長さは、スリーブ管14の長さに対応する。
【0108】
スリーブ管14は、2段階伸長プロセスによる垂直線引きプロセスにおいて、成形ツールを用いずに製造される。第1段階において、ガラス製の中空出力円筒は、その中空出力円筒の最終寸法を設定するように機械処理される。最終寸法当たり、外径は90mmであり、外径と内径との直径比は2.5である。第1の伸長プロセスにおいて、垂直に配向された長手方向軸線を有する出力円筒は、200mmの加熱ゾーン長さを有する加熱ゾーンに連続的に供給され、内部の領域において軟化され、中間円筒が軟化領域から引き出される。第2の伸長プロセスにおいて、垂直に配向された長手方向軸線を有する中間円筒は、100mmの加熱ゾーン長さを有する異なる加熱ゾーンに連続的に供給され、内部の領域において軟化され、管部分が軟化領域から引き出される。スリーブ管は、連続する管を所定の長さに切断することによって連続する管から得られる。
【0109】
キャピラリブランク5は、SiO2をベースとする接合化合物16を用いてスリーブ管14の内壁に固定される。接合化合物16は、端部の領域内のスリーブ管の内側面に局所的に適用され、その上に、個々のキャピラリブランク5のための保持アームの構造的に所定の星形配置を有する位置決めテンプレートを使用して、キャピラリブランク5が配置される。この場合、位置決めテンプレートは、スリーブ管の2つの端面端部の周りの領域に制限される。
【0110】
このようにして製造された一次プリフォーム15は、20mmの外径を有するいわゆる「ケーン」を形成するために、伸長プロセスにおいて熱延伸される。この場合、キャピラリブランク5は、全長にわたってスリーブ管14の内壁に接続する。次いで、延伸されたスリーブ管14は、石英ガラス製の集合シリンダを用いて収集され、集合シリンダは、延伸されたスリーブ管14上へとコラップスし、それと同時に、集合体が伸長されて、二次プリフォームが形成される。集合シリンダは、75mmの外径及び25mmの壁厚を有する。
【0111】
コラップス及び伸長プロセスにおいて、垂直に配向された長手方向軸線において下から延びるスリーブ管1とバッファ管との同軸配置体は、温度制御された加熱ゾーンへと送り込まれ、その中で配置体の上端から始まるゾーンごとに軟化する。
【0112】
加熱ゾーンは、+/-0.1℃の制御精度で1600℃の目標温度に保たれる。それによって、熱間成形プロセスにおける温度変動を+/-0.5℃未満に制限することができる。
【0113】
コラップス及び伸長ステップ中、集合シリンダとケーンとの間の間隙は真空にされる。
【0114】
このようにしてコラップス及び伸長プロセス中に形成された二次プリフォームの外径は50mmであり、外側シースと内側シースとで構成されるシース壁厚は19.55mmである(内径:10.9mm)。二次プリフォームは、反共振中空コアファイバを形成するために伸長される。この目的のために、以前のキャピラリブランク5の全ての構造要素は、前述のシーリング化合物又は接合化合物を使用して閉じられる。シーリング化合物は、ファイバ線引きプロセス中に上を向いているキャピラリブランクの端面にのみ適用される。
【0115】
次いで、同じ端面が石英ガラス製の保持管に接続され、保持管は同時にガス接続部として機能する。リテーナは、シーリング化合物又は接合化合物を用いて集合シリンダ及びスリーブ管に固定される。ファイバ線引きプロセスにおいて、二次プリフォームは、垂直に配向された長手方向軸線の場合に、温度制御された加熱ゾーンへと上から送り込まれ、その中で下端から始まるゾーンごとに軟化する。加熱ゾーンは、+/-0.1℃の制御精度で約2100℃の目標温度に保たれる。それによって、熱間成形プロセスにおける温度変動を+/-0.5℃未満に制限することができる。同時に、コア領域(中空コア)内に4mbarの内圧が確立されるように、コア領域にガスが供給される。
【0116】
このように制御されたファイバ線引きプロセスを用いて、円形の断面形状を有する反共振要素がその中に埋め込まれた反共振中空コアファイバが得られる。