(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】グロメットユニット及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/22 20060101AFI20241008BHJP
H01B 17/58 20060101ALI20241008BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20241008BHJP
F16L 5/02 20060101ALI20241008BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H02G3/22
H01B17/58 C
H01B7/00 301
F16L5/02 A
B60R16/02 622
(21)【出願番号】P 2021035532
(22)【出願日】2021-03-05
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 泰輝
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-140011(JP,A)
【文献】特開2016-046909(JP,A)
【文献】特開2016-003725(JP,A)
【文献】特開2016-005405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
H01B 17/58
H01B 7/00
F16L 5/02
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線が挿通される筒状の本体部と、取付対象への取付に用いられる取付部と、を有するグロメットと、
前記取付部を一方向から覆い、前記取付部を取付対象に固定するブラケットと、
を備え、
前記取付部は、挿通方向に交差するように前記本体部から延びる鍔部と、前記鍔部から前記鍔部に交差するように前記一方向側に突出する複数の突出部と、を有し、
前記ブラケットには、前記突出部が貫通する孔が設けられ、
前記突出部は、前記鍔部側から先端側に向かう順に、前記孔に少なくとも一部が収まる基端部と、前記基端部及び前記孔よりも太い中間部と、前記孔よりも細い先端部と、を有し、
前記取付部には、前記鍔部のうち前記突出部とは反対側に開口を有し、前記開口から前記基端部の少なくとも一部まで凹む凹部が設けられている、グロメットユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のグロメットユニットであって、
前記凹部は、前記開口から前記中間部の少なくとも一部まで凹むように設けられている、グロメットユニット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のグロメットユニットであって、
前記先端部は中実である、グロメットユニット。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のグロメットユニットであって、
前記中間部は、太さが最大となる最大部分を有し、
前記突出部は、前記最大部分から前記先端部に向かうにつれて細くなる、グロメットユニット。
【請求項5】
請求項4に記載のグロメットユニットであって、
前記最大部分の太さは、前記孔の大きさの1.2倍から3倍の間の値である、グロメットユニット。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のグロメットユニットであって、
前記取付部は、前記鍔部のうち前記凹部の前記開口がある面から突出し、取付対象における挿通孔の周りに密着可能なリップ部をさらに有し、
前記凹部は、前記リップ部よりも前記本体部側に設けられている、グロメットユニット。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のグロメットユニットと、
前記グロメットの前記本体部に挿通された電線と、
を備える、ワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グロメットユニット及びワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ブラケットを用いてグロメットをボディパネルに固定する技術を開示している。特許文献1に記載のグロメットユニットにおいて、ブラケットは、グロメットの抜け止め部の外面に全周にわたって形成された係止凹部に嵌って装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のグロメットユニットにおいて、グロメットへブラケットを装着する際には、鍔部を変形させる必要がある。グロメットへのブラケット装着作業の作業性向上が求められている。
【0005】
そこで、グロメットへのブラケット装着作業の作業性向上を図ることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のグロメットユニットは、電線が挿通される筒状の本体部と、取付対象への取付に用いられる取付部と、を有するグロメットと、前記取付部を一方向から覆い、前記取付部を取付対象に固定するブラケットと、を備え、前記取付部は、挿通方向に交差するように前記本体部から延びる鍔部と、前記鍔部から前記鍔部に交差するように前記一方向側に突出する複数の突出部と、を有し、前記ブラケットには、前記突出部が貫通する孔が設けられ、前記突出部は、前記鍔部側から先端側に向かう順に、前記孔に少なくとも一部が収まる基端部と、前記基端部及び前記孔よりも太い中間部と、前記孔よりも細い先端部と、を有し、前記取付部には、前記鍔部のうち前記突出部とは反対側に開口を有し、前記開口から前記基端部の少なくとも一部まで凹む凹部が設けられている、グロメットユニットである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、グロメットへのブラケット装着作業の作業性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は実施形態1にかかるグロメットユニットを示す平面図である。
【
図6】
図6はグロメットへブラケットが装着される様子を説明する図である。
【
図7】
図7はグロメットへブラケットが装着される様子を説明する図である。
【
図8】
図8はブラケットにグロメットから抜かれる力がかかったときの様子を説明する図である。
【
図9】
図9はブラケットにグロメットから抜かれる力がかかったときの様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示のグロメットユニット及びワイヤハーネスは、次の通りである。
【0011】
(1)電線が挿通される筒状の本体部と、取付対象への取付に用いられる取付部と、を有するグロメットと、前記取付部を一方向から覆い、前記取付部を取付対象に固定するブラケットと、を備え、前記取付部は、挿通方向に交差するように前記本体部から延びる鍔部と、前記鍔部から前記鍔部に交差するように前記一方向側に突出する複数の突出部と、を有し、前記ブラケットには、前記突出部が貫通する孔が設けられ、前記突出部は、前記鍔部側から先端側に向かう順に、前記孔に少なくとも一部が収まる基端部と、前記基端部及び前記孔よりも太い中間部と、前記孔よりも細い先端部と、を有し、前記取付部には、前記鍔部のうち前記突出部とは反対側に開口を有し、前記開口から前記基端部の少なくとも一部まで凹む凹部が設けられている、グロメットユニットである。取付部に凹部が設けられていることによって、孔への突出部の挿入時に、突出部の変形が容易となり、孔への突出部の挿入が容易となる。これにより、グロメットにブラケットを装着する作業の作業性の向上を図ることができる。
【0012】
(2)(1)のグロメットユニットにおいて、前記凹部は、前記開口から前記中間部の少なくとも一部まで凹むように設けられていてもよい。これにより、孔への突出部の挿入時に、突出部の変形がより容易となる。
【0013】
(3)(1)又は(2)のグロメットユニットにおいて、前記先端部は中実であってもよい。これにより、孔に突出部が挿入された状態で、突出部に孔から抜かれる向きの力がかかった際、突出部が形状を維持しやすくなり、孔からの突出部の抜け止めの性能向上を図ることができる。
【0014】
(4)(1)から(3)のいずれか1つのグロメットユニットにおいて、前記中間部は、太さが最大となる最大部分を有し、前記突出部は、前記最大部分から前記先端部に向かうにつれて細くなってもよい。これにより、突出部を先端部から孔に挿入しやすくなる。
【0015】
(5)(4)のグロメットユニットにおいて、前記最大部分の太さは、前記孔の大きさの1.2倍から3倍の間の値であってもよい。最大部分の太さが、孔の大きさの3倍と同じかそれよりも小さいことによって、孔への突出部の挿入が困難となることを抑制できる。また、最大部分の太さが、孔の大きさの1.2倍と同じかそれよりも大きいことによって、孔に突出部が挿入された状態で、孔から突出部が抜けにくくなる。
【0016】
(6)(1)から(5)のいずれか1つのグロメットユニットにおいて、前記取付部は、前記鍔部のうち前記凹部の前記開口がある面から突出し、取付対象における挿通孔の周りに密着可能なリップ部をさらに有し、前記凹部は、前記リップ部よりも前記本体部側に設けられていてもよい。これにより、鍔部の同じ面にリップ部と凹部の開口との両方を設けることができる。
【0017】
(7)また、本開示のワイヤハーネスは、(1)から(6)のいずれか1つのグロメットユニットと、前記グロメットの前記本体部に挿通された電線と、を備える、ワイヤハーネスである。取付部に凹部が設けられていることによって、孔への突出部の挿入時に、突出部の変形が容易となり、孔への突出部の挿入が容易となる。これにより、グロメットにブラケットを装着する作業の作業性の向上を図ることができる。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のグロメットユニット及びワイヤハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0019】
[実施形態1]
以下、実施形態1にかかるグロメットユニット及びワイヤハーネスについて説明する。
図1は実施形態1にかかるグロメットユニットを示す平面図である。
図2は
図1のII-II線に沿った断面図である。
【0020】
グロメットユニットは、グロメット及びブラケットを備える。グロメット20は、ブラケットを介して取付対象に取付けられる。取付対象は、車両において空間を仕切る部材であるとよい。以下では、取付対象が車体パネル80であるものとして説明される。例えば、車体パネル80は、車両において室内空間と室外空間を仕切るパネル(例えば、フロアパネルなど)であってもよい。また例えば、車体パネル80は、車両において複数の室内空間同士を仕切るパネル(例えば、客室と前室とを仕切るダッシュパネルなど)であってもよい。
【0021】
車体パネル80には、車体パネル80を貫通する挿通孔82が形成される。挿通孔82には、電線60が通される。これにより、電線60が、車体パネル80によって隔てられた2つの空間の一方から他方にわたるように配置される。グロメット20は、挿通孔82の止水及び電線60の保護を行う。具体的には、グロメット20は、挿通孔82の周辺で車体パネル80と共に2つの空間を仕切る。グロメット20は、車体パネル80によって隔てられた2つの空間の一方から他方に、挿通孔82を通じて水、ほこり等が侵入することを抑制する。グロメット20は、車体パネル80における挿通孔82の周縁部又は挿通孔82の周辺に配置される部材から電線60を保護する。
【0022】
本開示において、
図2に示されるように、互いに直交するX方向、Y方向及びZ方向のうち、X方向が車体パネル80の厚み方向(挿通孔82の軸方向)に平行な方向とされる。車体パネル80の表面のうち挿通孔82の開口部の周辺は、YZ平面に平行な平面状とされる。取付状態にないグロメット20については、取付状態とされた場合のX方向、Y方向及びZ方向に対応する方向を用いて説明される。
【0023】
以下、グロメットユニット10の各部材について、
図1及び
図2に加えて、
図3から
図5を参照しつつ説明する。
図3はグロメット20を示す斜視図である。
図4はグロメット20を示す底面図である。
図5は
図2の領域Aの拡大図である。
【0024】
<グロメット>
グロメット20は、本体部22と取付部30とを備える。グロメット20は、本体部22と取付部30とが一体に形成された一体成形品である。グロメット20は、弾性を有する材料によって形成される。グロメット20の材料としては、例えば、弾性が高いEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)などのエラストマを用いることができる。グロメット20は、上記のような弾性を有する材料によって、金型一体形成されてもよい。
【0025】
本体部22は、電線60が挿通される部分である。本体部22は筒状に形成されている。ここではグロメット20における電線60の挿通方向は、X方向に平行である。グロメット20における電線60の挿通方向は、直交以外の角度でX方向と交差していてもよい。
【0026】
本体部22は電線60を保持している。本体部22は円筒状に形成される。本体部22の内面の横断面及び外面の横断面は円形状である。本体部22は、同一の内径でX方向に連続する。本体部22が電線60を保持する態様は、特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。例えば、本体部22に電線60が挿通された状態で、本体部22及び本体部22から延び出る電線60の周囲にテープが巻かれて、電線60を保持するものであってよい。また例えば、本体部22に電線60が挿通された状態で、本体部22の外周部にかしめ部材がかしめられて、電線60を保持するものであってよい。また例えば、本体部22は、内面が電線60と同じかそれよりも小さく形成されて、本体部22自体の弾性による締め付けによって電線60を保持するものであってよい。
【0027】
電線60が挿通された状態で、本体部22の内部は止水されると良い。ここでは、本体部22の内部の止水性を高めるためにリップ部24が設けられている。リップ部24は、本体部22の内面から本体部22の内部空間に向けて突出する。リップ部24は、本体部22に挿通される電線60と接触可能である。リップ部24は、本体部22の内面を一周する環状に形成されている。リップ部24及び電線60が周方向全体にわたって密着することによって、本体部22の内部の止水性が高まる。本例では、3つのリップ部24が形成されている。3つのリップ部24は、X方向に互いに間隔をあけて形成されている。もっとも、リップ部24の数は、1つ又は2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0028】
取付部30は、取付対象(ここでは車体パネル80)への取付に用いられる部分である。取付部30は、挿通方向に交差する方向に沿って本体部22から延びている。取付部30は、鍔部31とリップ部35と突出部36とを有する。鍔部31のうち本体部22側(X方向正の側)を向く面に突出部36が設けられる。当該面に対抗するようにブラケット50が配置される。取付部30における鍔部31は、車体パネル80とブラケット50とに挟まれる。また、鍔部31のうち本体部22側(X方向正の側)を向く面とは反対側の面が、車体パネル80を向く面である。当該面にリップ部35が設けられる。
【0029】
鍔部31は、本体部22の端部から挿通方向に交差するように延びている。鍔部31として、第1鍔部32、第2鍔部33、第3鍔部34が設けられている。第1鍔部32、第2鍔部33及び第3鍔部34それぞれの外縁は円形状に形成されている。第1鍔部32が本体部22の端部とつながる。第2鍔部33は第1鍔部32の外周側に設けられる。第3鍔部34は第2鍔部33の外周側に設けられる。第2鍔部33及び第3鍔部34が車体パネル80とブラケット50とに挟まれる。
【0030】
第1鍔部32のうち本体部22側(X方向正の側)を向く面と第2鍔部33のうち本体部22側(X方向正の側)を向く面とは、X方向にずれて設けられている。このため第1鍔部32のうち本体部22側(X方向正の側)を向く面と第2鍔部33のうち本体部22側(X方向正の側)を向く面との間には、段差が生じている。第2鍔部33のうち本体部22側(X方向正の側)を向く面と第3鍔部34のうち本体部22側(X方向正の側)を向く面とは、X方向にずれて設けられている。このため第2鍔部33のうち本体部22側(X方向正の側)を向く面と第3鍔部34のうち本体部22側(X方向正の側)を向く面との間には、段差が生じている。第1鍔部32と第2鍔部33との間の段差、及び第2鍔部33と第3鍔部34との間の段差があることによって、グロメット20とブラケット50との位置決めが容易となる。さらに第2鍔部33と第3鍔部34との段差があることによって、より適切なシール圧を得やすくなる。
【0031】
第1鍔部32と第2鍔部33とは、厚さが異なっている。第2鍔部33と第3鍔部34とは、厚さが異なっている。第2鍔部33の厚さは、第1鍔部32の厚さ及び第3鍔部34の厚さよりも厚い。また、第2鍔部33の厚さは、本体部22の厚さよりも厚い。もっとも、グロメット20における各部の厚さはこれに限られず、適宜設定可能である。
【0032】
リップ部35は、グロメット20と車体パネル80との間を止水する。リップ部35は、円環状に形成されている。リップ部35は、挿通孔82の開口部の周囲全体を囲みつつ、車体パネル80に密着可能である。本例では、リップ部35が2つ設けられている。2つのリップ部35a、35bのうちリップ部35aが内周側に位置し、リップ部35bが外周側に位置する。従って、リップ部35bはリップ部35aよりも大径である。2つのリップ部35は、第2鍔部33と第3鍔部34との段差の近くに設けられる。リップ部35aは、第2鍔部33に設けられ、リップ部35bは第2鍔部33及び第3鍔部34に跨って設けられている。
【0033】
突出部36は、鍔部31(ここでは、第2鍔部33)から鍔部31に交差するようにX方向に突出する。突出部36は、基端部37と中間部38と先端部39とを有する。基端部37は鍔部31とつながる部分である。基端部37は鍔部31側から先端側に向かって延びる。基端部37よりも先端側に中間部38及び先端部39が設けられる。中間部38は基端部37とつながる。中間部38は、基端部37及び先端部39よりも太く形成されている。先端部39は中間部38とつながる。例えば、作業者は、先端部39をつかみつつ、突出部36を係止孔55に挿入係止させる作業を行うことができる。先端部39は、基端部37及び中間部38よりも長い。
【0034】
中間部38は、太さが最大となる最大部分38aを有する。突出部36は、最大部分38aから先端部39に向かうにつれて細くなる。中間部38は、最大部分38aから最大部分38aよりも先端部39側に向けて順次細くなる。先端部39は、全体的に中間部38側から先端側に向けて順次細くなる。先端部39は、外面の傾斜角度が一定で細くなる。中間部38における最大部分38aと先端部39との間の部分の傾斜は、先端部39の傾斜よりも旧出ある。中間部38は、最大部分38aよりも基端部37側から最大部分38aに向けて順次太くなる。
【0035】
取付部30には、凹部40が形成されている。凹部40は、鍔部31のうち突出部36とは反対側に開口を有する。凹部40は、鍔部31のうちリップ部35が設けられた面に開口を有する。凹部40は、リップ部35よりも本体部22側に設けられている。凹部40は、当該開口から基端部37の少なくとも一部まで凹むように設けられている。凹部40は、当該開口から中間部38の少なくとも一部まで凹むように設けられている。ここでは、凹部40は、当該開口から中間部38の一部まで凹むように設けられている。従って、ここでは、中間部38の他の一部及び先端部39は中実(内部に空洞がなく埋った状態)である。凹部40は、突出部36の表面には開口していない。これにより、凹部40を通じて水がグロメット20を貫通することが抑制される。
【0036】
<ブラケット>
ブラケット50は、取付部30を一方向から覆い、取付部30を車体パネル80に固定する。ブラケット50は、ブラケット本体52と固定部56とを有する。ブラケット50は、一つの金属板材が曲げ加工、プレス加工等されて、ブラケット本体52と固定部56とを有する形状に形成されている。
【0037】
ブラケット本体52は、鍔部31と厚さ方向に面接触する。ブラケット本体52は、車体パネル80のうち挿通孔82の周りの部分に向けて鍔部31を押さえつけることが可能である。ブラケット本体52は円環状に形成される。ブラケット本体52には、グロメット20の本体部22が挿通される貫通孔51が形成されている。貫通孔51は、第1鍔部32と同じかそれよりも大きく(ここではわずかに大きく)形成される。第1鍔部32は、貫通孔51に通される。これにより、グロメット20とブラケット50とが位置決めされる。ブラケット本体52は、第2鍔部33及び第3鍔部34と面接触する。ブラケット本体52は、第1部分53と第2部分54とを有する。第1部分53は第2鍔部33に対応する形状に形成されている。第1部分53は第2鍔部33に面接触する。第2部分54は第3鍔部34に対応する形状に形成されている。第2部分54は第3鍔部34に面接触する。第1部分53と第2部分54との間に、第2鍔部33と第3鍔部34との段差に応じた段差が設けられている。
【0038】
固定部56は、車体パネル80との固定に用いられる。固定部56は、挿通孔82から外周側に離れた位置において、車体パネル80に対して周方向に沿って部分的に固定可能に設けられる。固定部56は、ブラケット本体52の外縁の一部から径方向外側に延びる。本例では、固定部56は、180度間隔で一対設けられている。固定部は3つ以上設けられていてもよい。3つ以上の固定部は、周方向に等間隔に配置されてもよい。また、各固定部56には、固定部56を貫通する固定孔57が形成されている。車体パネル80に固定されたボルト84が固定孔57を貫通して締結される。なお、図2に示す例では、ボルト84は、車体パネル80のうちブラケット50が配置される側の表面に対して頭部が溶接等によって固定されている。もっとも、車体パネル80に対するボルト84の固定態様は、これに限られない。例えば、ボルト84は、車体パネル80に対して軸部が貫通するように配置されて固定されてもよい。
【0039】
ブラケット50は、ブラケット本体52と車体パネル80とでグロメット20の鍔部31を挟持するように配置される。固定孔57を貫通するボルト84にナット86が螺合されることで、ブラケット50が車体パネル80に固定され、このブラケット50と車体パネル80との固定を介してグロメット20が車体パネル80に固定される。このように固定されたグロメット20は、リップ部35が車体パネル80に密着する。これにより、グロメット20と車体パネル80との間が止水される。
【0040】
ブラケット50には、突出部36が貫通する孔として係止孔55が設けられている。突出部36及び係止孔55は、ブラケット50が車体パネル80に固定される前の状態で、グロメット20及びブラケット50の仮固定を行う仮固定部として機能する。
【0041】
係止孔55は、ブラケット本体52のうち突出部36に対応する位置に形成される。係止孔55はブラケット本体52を貫通する貫通孔である。突出部36は、係止孔55を貫通する。車体パネル80に固定される前の状態で、突出部36が係止孔55に挿入係止されて、ブラケット50がグロメット20に保持されている。基端部37の少なくとも一部は係止孔55に収まる。
【0042】
先端部39は係止孔55よりも細い。先端部39は、容易に係止孔55を貫通することができる。中間部38は係止孔55よりも太い。中間部38は係止孔55を貫通するときに係止孔55の周縁部、内面などからの力を受けて圧縮するように弾性変形する。中間部38は、係止孔55を貫通後に、ブラケット50からの力が弱まることによって弾性復帰し、係止孔55の周縁部に係止する。
【0043】
突出部36及び係止孔55の組は、複数組設けられる。本例では、突出部36及び係止孔55の組は、180度間隔で、2組設けられている。突出部36及び係止孔55の組は、3組以上設けられていてもよい。この場合、3組以上の突出部36及び係止孔55の組は、周方向に等間隔で設けられているとよい。
【0044】
また突出部36の外面及び係止孔55の内面は、円形状に形成されている。突出部36の外面及び係止孔55の内面は円形状以外の形状であってもよい。
【0045】
図5において、実線で記載されたブラケットは、グロメットへの装着前の状態を示し、仮想線で記載されたブラケットは、グロメットへの装着後の状態を示す。
図5の直径R1は、最大部分38aの太さを示す。また
図5の直径R2は、係止孔55の大きさを示す。ここでは直径R1の値は、直径R2の値の1.2倍から3倍の間の値である。
【0046】
<グロメット及びブラケットの装着態様について>
グロメット20及びブラケット50の装着態様について、
図6から
図9を参照しつつ説明する。
図6及び
図7はグロメット20へブラケット50が装着される様子を説明する図である。
図8及び
図9はブラケット50にグロメット20から抜かれる力がかかったときの様子を説明する図である。
【0047】
グロメット20へブラケット50が装着される際、先端部39から係止孔55に挿入される。そして、先端部39のうち中間部38と連なる部分まで係止孔55に挿入されると、中間部38が係止孔55の開口の周縁部に接触する。このまま、挿入が続けられると、
図6に示すように、中間部38が係止孔55の開口の周縁部からの力F1を受ける。この力F1を受けて、
図7に示すように、中間部38は縮径するように変形する。このとき、凹部40が少なくとも基端部37の一部まで設けられていることによって、凹部40を小さくするように基端部37及び中間部38が変形することができる。また、力F1の先に凹部40が位置することができる。これにより、中間部38が、縮径変形しやすい。また、凹部40が少なくとも中間部38の一部まで設けられていると、力F1の先にある凹部40が大きくなり、中間部38がさらに縮径変形しやすい。これにより、中間部38が係止孔55に挿入されやすくなる。
【0048】
ブラケット50がグロメット20に装着された状態で、係止孔55の周縁部は、鍔部31と中間部38との間に位置する。基端部37の全部が係止孔55に収まることによって、係止孔55の周縁部が鍔部31及び中間部38の両方に密着していてもよい。これにより、ブラケット50がグロメット20に装着された状態で、両者ががたつきにくくなる。基端部37の一部のみが係止孔55に収まって、係止孔55の周縁部が鍔部31及び中間部38のいずれか一方のみに密着していてもよい。
【0049】
グロメット20へブラケット50が装着された後に、
図8に示すように、突出部36に係止孔55から抜かれる力F2が、かかることがあり得る。この場合、
図9に示すように、中間部38が、縮径変形し得る。この場合でも、先端部39が中実であると、係止孔55の周縁部から突出部36にかかる力F2を、中実の先端部39で受けることができる。これにより、中間部38が縮径変形しにくくなり、突出部36が係止孔55から抜かれにくくなる。
【0050】
<ワイヤハーネス>
上記のように、ワイヤハーネス70は、グロメットユニット10におけるグロメット20が電線60に装着されたものである。ワイヤハーネス70は、上記グロメットユニット10と、電線60とを備える。電線60は、グロメット20に挿通されて、本体部22に保持されている。
【0051】
電線60は、電線60単体でグロメット20に挿通されてもよい。この場合、本体部22の内面が電線60の被覆部に接触する。電線60の外周部に外装部材が装着されて、電線60が外装部材と共にグロメット20に挿通されてもよい。この場合、少なくとも一部において、本体部22の内面が外装部材の外面に接触する。
【0052】
外装部材としては、特に限定されるものではなく、電線60と共にグロメット20に挿通可能なものであればよい。例えば、外装部材は、複数の電線60を結束する粘着テープであってもよい。また例えば、外装部材は、コルゲートチューブなどのチューブ状の部材であってもよい。また例えば、外装部材は、電線60の周りに巻き付けられたシート状の部材であってもよい。
【0053】
また、グロメット20に挿通される電線60は、1本でもよいし、複数本でもよい。電線60の用途は、電源用であってもよいし、信号用であってもよい。電源用の電線としては、低圧電線であってもよいし、高圧電線であってもよい。例えば、高圧用の電線60が1本単体でグロメット20に挿通されてもよい。
【0054】
<効果等>
以上のように構成されたグロメットユニット10及びこれを備えるワイヤハーネス70によると、取付部30に凹部40が設けられていることによって、係止孔55への突出部36の挿入時に、突出部36の変形が容易となり、係止孔55への突出部36の挿入が容易となる。これにより、グロメット20にブラケット50を装着する作業の作業性の向上を図ることができる。
【0055】
また、凹部は、鍔部31側の開口から中間部38の少なくとも一部まで凹むように設けられている。これにより、係止孔55への突出部36の挿入時に、突出部36の変形がより容易となる。
【0056】
また、先端部39は中実である。これにより、係止孔55に突出部36が挿入された状態で、突出部36に係止孔55から抜かれる向きの力がかかった際、突出部36が形状を維持しやすくなり、係止孔55からの突出部36の抜け止めの性能向上を図ることができる。
【0057】
また、中間部38は、太さが最大となる最大部分38aを有し、突出部36は、最大部分38aから先端部39に向かうにつれて細くなる。これにより、突出部36を先端部39から係止孔55に挿入しやすくなる。
【0058】
また、最大部分38aの太さは、係止孔55の大きさの1.2倍から3倍の間の値である。最大部分38aの太さが、係止孔55の大きさの3倍と同じかそれよりも小さいことによって、係止孔55への突出部36の挿入が困難となることを抑制できる。また、最大部分38aの太さが、係止孔55の大きさの1.2倍と同じかそれよりも大きいことによって、係止孔55に突出部36が挿入係止された状態で、係止孔55から突出部36が抜けにくくなる。
【0059】
また、取付部30は、鍔部31のうち凹部40の開口がある面から突出し、車体パネル80における挿通孔82の周りに密着可能なリップ部35をさらに有し、凹部40は、リップ部35よりも本体部22側に設けられている。これにより、鍔部31の同じ面にリップ部35と凹部40の開口との両方を設けることができる。
【0060】
[変形例]
これまで、凹部40が鍔部31側の開口から中間部38の一部まで凹むように設けられているものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。例えば、凹部は、先端部39が中実を保ちつつ、中間部38の全部まで凹むように設けられていてもよい。また例えば、凹部は、中間部38まで凹んでいなくてもよい。凹部は、基端部37の一部又は全部まで凹むだけであってもよい。
【0061】
またこれまで先端部39が中実であるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。先端部39は中実でなくてもよい。例えば、凹部は、先端部39の一部まで凹むように設けられていてもよい。また例えば、凹部は、突出部36を貫通する貫通孔であってもよい。また例えば、取付部には、先端部39に開口を有する凹部であって、凹部40とはつながっていない凹部が設けられていてもよい。
【0062】
またこれまで、突出部36が最大部分38aから先端部39に向かうにつれて細くなるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。例えば、先端部39は同じ太さで連続していてもよい。
【0063】
またこれまで最大部分38aの太さが係止孔55の大きさの1.2倍から3倍の間の値であるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。例えば、最大部分38aの太さが係止孔55よりも大きければ、係止孔55の大きさの1.2倍よりも小さい値であってもよい。また例えば、最大部分38aの太さが係止孔55の大きさの3倍よりも大きい値であってもよい。
【0064】
またこれまで凹部40がリップ部35よりも本体部22側に設けられているものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。例えば、リップ部35が凹部40よりも本体部22側に設けられていてもよい。
【0065】
またこれまで本体部22が1つの例が説明されたが、このことは必須の構成ではない。1つのグロメット20に複数の本体部22が設けられていてもよい。複数の本体部22は、挿通方向に交差する方向(YZ平面と平行な方向)に離れて設けられている。複数の本体部22は、同じ形状に形成されていてもよい。複数の本体部22は、互いに異なる形状に形成されていてもよい。例えば、第1の本体部における保持部の内径が、第2の本体部における保持部の内径よりも大きくてもよい。これにより、第1の本体部と第2の本体部との間で、挿通される電線60の大きさ、本数等を変えることができる。
【0066】
またこれまで挿通孔82が円形状であるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。挿通孔は円形状以外の形状であってもよい。例えば、挿通孔は、楕円状、長円状、角形状などに形成されていてもよい。グロメットの取付部も、挿通孔の形状に応じて、楕円状、長円状、角形状などに形成されていてもよい。
【0067】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0068】
10 グロメットユニット
20 グロメット
22 本体部
24 リップ部
30 取付部
31 鍔部
32 第1鍔部
33 第2鍔部
34 第3鍔部
35、35a、35b リップ部
36 突出部
37 基端部
38 中間部
38a 最大部分
39 先端部
40 凹部
50 ブラケット
51 貫通孔
52 ブラケット本体
53 第1部分
54 第2部分
55 係止孔
56 固定部
57 固定孔
60 電線
70 ワイヤハーネス
80 車体パネル(取付対象)
82 挿通孔
84 ボルト
86 ナット