IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オムロン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-光学計測装置 図1
  • 特許-光学計測装置 図2
  • 特許-光学計測装置 図3
  • 特許-光学計測装置 図4
  • 特許-光学計測装置 図5
  • 特許-光学計測装置 図6
  • 特許-光学計測装置 図7
  • 特許-光学計測装置 図8
  • 特許-光学計測装置 図9
  • 特許-光学計測装置 図10
  • 特許-光学計測装置 図11
  • 特許-光学計測装置 図12
  • 特許-光学計測装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】光学計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 3/06 20060101AFI20241008BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G01C3/06 120P
G01B11/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023033698
(22)【出願日】2023-03-06
(62)【分割の表示】P 2022010088の分割
【原出願日】2016-03-24
(65)【公開番号】P2023065632
(43)【公開日】2023-05-12
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森野 久康
(72)【発明者】
【氏名】的場 賢一
(72)【発明者】
【氏名】菅 孝博
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-174593(JP,A)
【文献】特開2010-261960(JP,A)
【文献】特開2015-014604(JP,A)
【文献】特開2009-122105(JP,A)
【文献】特開2009-133630(JP,A)
【文献】特開平09-243314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01C 3/00-3/32
G01N 21/84-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の波長を有する照射光を発生する光源と、
前記光源からの照射光に対して軸上色収差を生じさせるとともに、光軸の延長線上に少なくともその一部が配置される計測対象物からの反射光を受光するセンサヘッドと、
前記センサヘッドで受光される反射光を波ごとに分光て受光する受光部と、
前記受光部の分光した波長の受光量に基づいて、前記計測対象物までの距離を算出する処理部と、
前記光源、前記センサヘッドおよび前記受光部の間で光を光ケーブルによって導き、かつ、前記光源と前記センサヘッドとの間および前記センサヘッドと前記受光部との間に合波/分波部を有する導光部と、を備え、
前記処理部は、前記受光部に入射した光の前記受光量に基づいて、前記合波/分波部の不良によって起こり得る異常を検出する、光学計測装置。
【請求項2】
複数の波長を有する照射光を発生する光源と、
前記光源からの照射光に対して軸上色収差を生じさせるとともに、光軸の延長線上に少なくともその一部が配置される計測対象物からの反射光を受光するセンサヘッドと、
前記センサヘッドで受光される反射光を波ごとに分光て受光する受光部と、
前記受光部の分光した波長の受光量に基づいて、前記計測対象物までの距離を算出する処理部と、
前記光源、前記センサヘッドおよび前記受光部の間で光を複数の光ケーブルによって導き、かつ、前記複数の光ケーブルを直列接続するための少なくとも1つのコネクタを有する導光部と、を備え、
前記処理部は、前記受光部に入射した光の前記受光量に基づいて、前記少なくとも1つのコネクタの不良によって起こり得る異常を検出する、光学計測装置。
【請求項3】
複数の波長を有する照射光を発生する光源と、
前記光源からの照射光に対して軸上色収差を生じさせるとともに、光軸の延長線上に少なくともその一部が配置される計測対象物からの反射光を受光するセンサヘッドと、
前記センサヘッドで受光される反射光を波ごとに分光て受光する受光部と、
前記受光部の分光した波長の受光量に基づいて、前記計測対象物までの距離を算出する処理部と、
前記光源、前記センサヘッドおよび前記受光部の間で光を複数の光ケーブルによって導き、かつ、前記複数の光ケーブルを直列接続するための少なくとも1つのコネクタを有する導光部と、を備え、
前記処理部は、前記受光部に入射した光の前記受光量に基づいて、前記複数の光ケーブルの前記直列接続の長さに関連して起こり得る異常を検出する、光学計測装置。
【請求項4】
複数の波長を有する照射光を発生する光源と、
前記光源からの照射光に対して軸上色収差を生じさせるとともに、光軸の延長線上に少なくともその一部が配置される計測対象物からの反射光を受光するセンサヘッドと、
前記センサヘッドで受光される反射光を波ごとに分光て受光する受光部と、
前記受光部の分光した波長の受光量に基づいて、前記計測対象物までの距離を算出する処理部と、
前記光源、前記センサヘッドおよび前記受光部の間で光を複数の光ケーブルによって導き、かつ、前記複数の光ケーブルを直列接続するための少なくとも1つのコネクタを有する導光部と、を備え、
前記処理部は、前記受光部に入射した光の前記受光量に基づいて、前記少なくとも1つのコネクタの傷または汚れに起因して起こり得る異常を検出する、光学計測装置。
【請求項5】
複数の波長を有する照射光を発生する光源と、
前記光源からの前記照射光に対して軸上色収差を生じさせるとともに、光軸の延長線上に少なくともその一部が配置される計測対象物からの反射光を受光するセンサヘッドと、
前記センサヘッドで受光される反射光を波長ごと分光して、前記各波長成分の光を受光する受光部と、
前記受光部の分光した波長の受光量に基づいて、前記計測対象物までの距離を算出する処理部と、
前記光源、前記センサヘッドおよび前記受光部の間で光を複数の光ケーブルによって導く導光部とを備え、前記複数の光ケーブルは光ファイバであり、
前記処理部は、前記受光部に入射した光の前記受光量に基づいて、前記光ファイバの端面の傷または汚れに起因して起こり得る異常を検出する、光学計測装置。
【請求項6】
複数の波長を有する照射光を発生する光源と、
前記光源からの照射光に対して軸上色収差を生じさせるとともに、光軸の延長線上に少なくともその一部が配置される計測対象物からの反射光を受光するセンサヘッドと、
前記センサヘッドで受光される反射光を波長ごとに分光して、前記各波長成分の光を受光する受光部と、
前記受光部の分光した波長の受光量に基づいて、前記計測対象物までの距離を算出する処理部と、
前記光源、前記センサヘッドおよび前記受光部の間で光を導く導光部と、を備え、
前記処理部は、前記受光部に入射した光の前記受光量に基づいて、前記導光部の途中において前記光源からの前記照射光の一部が反射することによって起こり得る異常を検出する、光学計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、白色共焦点方式で計測対象物の表面形状などを計測可能な光学計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
計測対象物の表面形状などを検査する装置として、白色共焦点方式の光学計測装置が知られている。この種の光学計測装置は、複数の波長成分を有する照射光を発生する光源と、光源からの照射光に対して軸上色収差を生じさせる光学系と、光学系で受光される反射光を各波長成分に分離して、各波長成分の光を受光する受光部と、光源と受光部と前記光学系とを光学的に接続する導光部とを含む。例えば、特開2012-208102号公報(特許文献1)は、共焦点光学系を利用して非接触で計測対象物の変位を計測する共焦点計測装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-208102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
白色共焦点原理の変位センサにおいて、戻り光の増加等によって受光波形が変化することは、計測に影響を及ぼす原因となる。従来はそのような受光波形の変化を検出することができず、ユーザは受光波形が異常であることに気づくことができなかった。戻り光の増加はセンサの計測精度の低下をもたらすが、ユーザがそのことを知らずにセンサを使い続ける可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、受光波形の異常を検出可能な、白色共焦点原理の光学計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある局面に従う光学計測装置は、複数の波長成分を有する照射光を発生する光源と、光源からの照射光に対して軸上色収差を生じさせるとともに、光軸の延長線上に少なくともその一部が配置される計測対象物からの反射光を受光する光学系と、光学系で受光される反射光を各波長成分に分離して、各波長成分の光を受光する受光部と、受光部における各波長成分の受光量に基づいて、光学系から計測対象物までの距離を算出する処理部とを備える。処理部は、受光波形における複数の波長成分の各々の受光量を受光量の基準値と比較して、受光量の基準値に対する変化量が複数の波長成分のいずれにおいても予め定められた閾値以上である場合には、受光波形の異常を検出する。
【0007】
上記の構成によれば、受光波形の異常を検出可能な、白色共焦点原理の光学計測装置を提供することができる。なお、「光学系から計測対象物までの距離」とは、光学系から計測対象物における計測対象位置までの距離であり、光学系から計測対象物までの最短距離に限定されない。計測対象位置とは、光源からの照射光が照射される計測対象物上の位置である。計測対象位置は1つに限定されない。
【0008】
好ましくは、処理部は、複数の波長成分のうちの少なくとも1つにおける受光量の変化量が閾値未満である場合には、受光波形におけるピーク波長に基づいて、計測対象物の変位を計測する。
【0009】
上記の構成によれば、選択された複数の波長のうちの1つが、計測波長と一致した場合であっても、他の波長における受光量に基づいて異常波形を検出することができる。
【0010】
好ましくは、複数の波長成分は、5つの波長を含む。
上記の構成によれば、たとえば計測対象物が、2枚の透明体(ガラス等)の間にスペーサ等によって空間が設けられた構成を有し、選択された5つの波長のうちの4つが計測波長と一致した場合であっても、残りの1つの波長における受光量に基づいて異常波形を検出することができる。
【0011】
好ましくは、閾値は、光源のスペクトルに基づいて、波長ごとに定められる。
上記の構成によれば、波長ごとに閾値を設定することによって、異常波形をより正確に検出することができる。
【0012】
本発明の他の局面に従う光学計測装置は、複数の波長成分を有する照射光を発生する光源と、光源からの照射光に対して軸上色収差を生じさせるとともに、光軸の延長線上に少なくともその一部が配置される計測対象物からの反射光を受光する光学系と、光学系で受光される反射光を各波長成分に分離して、各波長成分の光を受光する受光部と、受光部における各波長成分の受光量に基づいて、光学系から計測対象物までの距離を算出する処理部とを備える。処理部は、計測対象物の変位の計測範囲に対応する波長領域の外にある波長成分の受光量を受光量の基準値と比較して、受光量の前記基準値に対する変化量が予め定められた閾値以上である場合には、受光量を表す受光波形の異常を検出する。
【0013】
上記の構成によれば、対象物の変位の測定への影響を少なくしながら受光波形をモニタすることができる。
【0014】
好ましくは、上記のいずれかの光学計測装置において、異常を検出した場合に、処理部は、その異常を通知する。
【0015】
上記の構成によれば、ユーザは、光学計測装置の受光波形が異常であることに気づくことができる。これにより、ユーザは、異常の原因を取り除くための適切な対応を取ることができる。したがって、対象物の変位の測定精度を高いままに維持することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、白色共焦点原理の光学計測装置において、受光波形の異常を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】白色共焦点方式による距離計測の原理を説明するための図である。
図2】本実施の形態に従う光学計測装置の導光部の構成を説明するための模式図である。
図3】本実施の形態に従う光学計測装置の装置構成の一例を示す模式図である。
図4】導光部の途中における照射光の一部の反射を説明するための模式図である。
図5】導光部の途中において照射光の一部が反射した場合における課題を説明するための図である。
図6】本実施の形態に係る光学計測装置における受光信号の処理を説明するための図である。
図7】第1の実施の形態による、光学計測装置の異常の判定を説明するための模式的な波形図である。
図8】本実施の形態に係る光学計測装置による、計測対象物の複数の表面の変位の測定を説明した図である。
図9】照射光の一部が導光部の途中で反射して戻る場合における、バックグラウンド成分の受光量の変化を模式的に示した図である。
図10】モニタリング波長と閾値との関係の例を示した図である。
図11】第1の実施の形態に係る異常波形の検出処理を説明するためのフローチャートである。
図12】第2の実施の形態に係る異常波形の検出を説明するための光源のスペクトルを説明した図である。
図13】第2の実施の形態に係る異常波形の検出処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0019】
<A.概要>
まず、本実施の形態に従う光学計測装置により解決される課題およびそれを実現するための構成について概要を説明する。
【0020】
図1は、白色共焦点方式による距離計測の原理を説明するための図である。図1を参照して、光学計測装置1は、光源10と、導光部20と、センサヘッド30と、受光部40と、処理部50とを含む。センサヘッド30は、色収差ユニット32および対物レンズ34を含み、受光部40は、分光器42および検出器44を含む。
【0021】
光源10で発生した所定の波長広がりをもつ照射光は、導光部20を伝搬してセンサヘッド30に到達する。センサヘッド30において、光源10からの照射光は対物レンズ34により集束されて計測対象物2へ照射される。照射光には、色収差ユニット32を通過することで軸上色収差が生じるため、対物レンズ34から照射される照射光の焦点位置は波長ごとに異なる。計測対象物2の表面で反射される波長のうち、計測対象物2に焦点の合った波長の光のみがセンサヘッド30の導光部20のうち共焦点となるファイバのみに再入射することになる。以下では、説明の便宜上、計測対象物2に焦点の合った波長の光が計測光として検出される状態を「特定の波長のみ反射する」とも表現する。
【0022】
センサヘッド30に再入射した反射光は、導光部20を伝搬して受光部40へ入射する。受光部40では、分光器42にて入射した反射光が各波長成分に分離され、検出器44にて各波長成分の強度が検出される。処理部50は、検出器44での検出結果に基づいて、センサヘッド30から計測対象物2までの距離(変位)を算出する。
【0023】
図1に示す例では、例えば、複数の波長λ1,λ2,λ3を含む照射光が波長分散されて、光軸AX上のそれぞれ異なる位置(焦点位置1,焦点位置2,焦点位置3)に像が描かれることになる。光軸AX上において、計測対象物2の表面は焦点位置2と一致するので、照射光のうち波長λ2の成分のみが反射される。受光部40では、波長λ2の成分を検出して、センサヘッド30から計測対象物2までの距離が波長λ2の焦点位置に相当する距離であると算出する。
【0024】
受光部40の検出器44を構成する複数の受光素子のうち反射光を受光する受光素子は、センサヘッド30に対する計測対象物2の表面の形状に応じて変化することになるため、検出器44の複数の受光素子による検出結果(画素情報)から計測対象物2に対する距離変化(変位)を計測することができる。これにより、光学計測装置1によって計測対象物2の表面の形状を測定することができる。なお、センサヘッド30から計測対象物2までの距離とは、センサヘッド30から計測対象物2における計測対象位置までの距離であり、センサヘッド30から計測対象物2までの最短距離に限定されない。計測対象位置とは、光源10からの照射光が照射される計測対象物2上の位置である。計測対象位置は1つに限定されない。たとえばセンサヘッド30の光軸方向に沿って、異なる2つの計測対象位置が選択されてもよい。センサヘッド30から各計測対象位置までの距離を算出し、2つの距離の差を算出することによって、たとえば計測対象物2の厚みを算出することができる。
【0025】
図2に、本実施の形態に従う光学計測装置1の導光部の構成を模式的に示す。図2(A)に示されるように、光学計測装置1は、導光部20として、光源10と光学的に接続される入力側ケーブル21と、受光部40と光学的に接続される出力側ケーブル22と、センサヘッド30と光学的に接続されるヘッド側ケーブル24とを含む。入力側ケーブル21および出力側ケーブル22のそれぞれの端と、ヘッド側ケーブル24の端とは、合波/分波構造をもつカプラ23を介して、光学的に結合される。カプラ23は、Y分岐カプラに相当する2×1スターカプラ(2入力1出力/1入力2出力)であり、入力側ケーブル21から入射した光をヘッド側ケーブル24へ伝達するとともに、ヘッド側ケーブル24から入射した光を分割して入力側ケーブル21および出力側ケーブル22へそれぞれ伝達する。
【0026】
入力側ケーブル21、出力側ケーブル22、およびヘッド側ケーブル24は、いずれも単一のコア202を有する光ファイバであり、その断面構造としては、コア202から外周に向けて、クラッド204、被覆206および外装208が、コア202の周囲に順に設けられる。なお、図2(B)に示すように、本実施の形態に従う光学計測装置1は、複数のコアを有する光ファイバを導光部20として採用してもよい。
【0027】
<B.装置構成>
図3は、本実施の形態に従う光学計測装置1の装置構成の一例を示す模式図である。図3を参照して、本実施の形態に従う光学計測装置1は、光源10と、導光部20と、センサヘッド30と、受光部40と、処理部50とを含む。
【0028】
光源10は、複数の波長成分を有する照射光を発生し、典型的には、白色LED(Light Emitting Diode)を用いて実現される。軸上色収差によって生じる焦点位置の変位幅が、要求される計測レンジをカバーできるだけの波長範囲を有する照射光を発生できれば、どのような光源を用いてもよい。
【0029】
センサヘッド30は、色収差ユニット32および対物レンズ34を含み、光源10からの照射光に対して軸上色収差を生じさせるとともに、光軸AXの延長線上に少なくともその一部が配置される計測対象物2からの反射光を受光する光学系に相当する。
【0030】
受光部40は、光学系であるセンサヘッド30で受光される反射光を各波長成分に分離する分光器42と、分光器42による分光方向に対応させて配置された複数の受光素子を含む検出器44とを含む。分光器42としては、典型的には、回折格子が採用されるが、それ以外にも任意のデバイスを採用してもよい。検出器44は、分光器42による分光方向に対応させて複数の受光素子が一次元配置されたラインセンサ(一次元センサ)を用いてもよいし、検出面上に複数の受光素子が二次元配置された画像センサ(二次元センサ)を用いてもよい。
【0031】
受光部40は、分光器42および検出器44に加えて、出力側ケーブル22から射出された反射光を平行化するコリメートレンズ41と、検出器44での検出結果を処理部50へ出力するための読出回路45とを含む。さらに、必要に応じて、分光器42にて分離された波長別の反射光のスポット径を調整する縮小光学系43を設けてもよい。
【0032】
処理部50は、受光部40の複数の受光素子によるそれぞれの検出値に基づいて、センサヘッド30から計測対象物2までの距離を算出する。画素と波長と距離値との間の関係式は、予め設定される(たとえば製品出荷時に処理部50の内部に不揮発的に記憶される)。したがって、処理部50は、受光部40の出力する受光波形(画素情報)から変位を算出することができる。
【0033】
図3には、ユーザビリティを高めるために、複数のケーブルを直列接続してヘッド側ケーブルを構成する例を示す。すなわち、ヘッド側ケーブルとしては、3つのケーブル241,243,245が採用されている。ケーブル241とケーブル243との間はコネクタ242を介して光学的に接続され、ケーブル243とケーブル245との間はコネクタ244を介して光学的に接続される。
【0034】
導光部20は、入力側ケーブル21および出力側ケーブル22と、ヘッド側ケーブルとを光学的に結合するための合波/分波部(カプラ)23を含む。合波/分波部23の機能については、図2を参照して説明したので、詳細な説明は繰り返さない。
【0035】
このように、本実施の形態に従う光学計測装置1では、合波/分波構造としてカプラを採用することで、導光部20内での光の分離が可能となり、複数のコアをそれぞれ伝搬する計測対象物2からの反射光(計測光)を単一の検出器44で受光することができる。
【0036】
<C.反射光の問題>
原理的には、光軸AX上において、計測対象物2の表面の位置で焦点を結ぶ波長成分のみが反射されて受光部40に入射する。しかしながら、導光部20(すなわち光源10からセンサヘッドへの照射光の光路)の途中において、照射光の一部が反射して、その反射光が受光部40に入射することが起こり得る。
【0037】
図4は、導光部20の途中における照射光の一部の反射を説明するための模式図である。図4に示されるように、たとえば、合波/分波部23(カプラ231,232)、コネクタ242、コネクタ244、あるいは、センサヘッド30とケーブル245との接続部において照射光の一部が反射し得る。また、光源10のパワーの増減は、戻り光量異常の要因となる。
【0038】
たとえば合波/分波部23が不良である場合、あるいは、コネクタ242,244に傷もしくは汚れがある場合には、照射光の一部が反射して戻される可能性が考えられる。また、ケーブルに含まれる光ファイバの距離が長いことによって、照射光が光ファイバの内部で散乱する可能性がある。さらに、光ファイバの端面の傷あるいは汚れによっても、照射光の一部が反射し得る。
【0039】
図5は、導光部20の途中において照射光の一部が反射した場合における課題を説明するための図である。図5を参照して、処理部50は、受光波形(受光強度のプロファイル)に基づいて、受光強度のピーク位置を特定する。処理部50は、当該ピーク位置に対応する波長から反射光に含まれている波長の主成分を特定し、特定した主成分波長(たとえば波長λ2)に基づき、センサヘッド30から計測対象物2までの距離(変位)を算出する。
【0040】
光学計測装置1が正常である場合には、ノイズ成分(バックグラウンドノイズ)が十分に小さい。しかし、導光部20において照射光の一部が反射して受光部40に入射する場合には、ノイズ成分、すなわち波長λ2以外の波長成分の受光強度が大きくなる。
【0041】
図6は、本実施の形態に係る光学計測装置1における受光信号の処理を説明するための図である。図6(A)は、光学計測装置1の正常時に得られる受光波形を説明した波形図である。図6(B)は、光学計測装置1の異常時に得られる受光波形を説明した波形図である。
【0042】
図6(A)および図6(B)に示されるように、本実施の形態に係る光学計測装置1は、受光波形と、戻り光成分波形との差分によって生成された波形(計測波形)に基づいて、主成分波長を特定する。戻り光成分波形は、たとえば変位の測定に先立って取得され、光学計測装置1の内部に記憶される。
【0043】
光学計測装置1の正常時には、受光波形に含まれる戻り光成分と、予め取得された波形における戻り光成分との間の差は小さい。計測波形では、戻り光成分がほぼ相殺されるので、S/N比が高い。したがって、主成分波長を高い精度で特定することができる。
【0044】
一方、図6(B)に示されるように、受光波形に含まれる戻り光成分が大きい場合、受光波形と、予め記憶された戻り光成分波形との差分を生成しても、受光波形に含まれる戻り光成分を相殺しきれない。このために計測波形のS/N比は低い。S/N比の低下によって、ピーク波長の検出精度が低下するため、変位の計測の精度が低下する。
【0045】
本実施の形態においては、処理部50は、特定の波長の受光量をモニタする。その波長における受光量が正常時の受光量に対して閾値以上変化した場合には、処理部50は、受光波形の異常を検出する。さらに処理部50は、その異常を通知する。ユーザは、たとえばコネクタ242,244のクリーニング、導光部20の交換等によって、異常波形が発生した原因を取り除くことができる。また、戻り光の増加が、光ファイバを延長したことによる場合には、再度、戻り光成分の値を光学計測装置1の内部に記憶させることによって、異常波形が発生した原因を取り除くことができる。したがって、対象物の変位の測定精度を高いままに維持することができる。以下、本実施の形態の詳細を説明する。
【0046】
<D.第1の実施の形態>
図7は、第1の実施の形態による、光学計測装置1の異常の判定を説明するための模式的な波形図である。図3および図7を参照して、波長λ1,λ2,λ3,λ4,λ5のそれぞれにおける受光量I1,I2,I3,I4,I5が受光部40によって測定される。処理部50は、各波長における受光量を、その波長に対応した基準値(正常時の受光量)と比較する。たとえば基準値は、工場出荷時に初期設定される。現場でセンサヘッドの挿抜等が行われた場合に、たとえばユーザが光学計測装置1の操作ボタン(図示せず)を操作することにより、基準値を再設定することができる。
【0047】
処理部50は、波長ごとに、受光量と基準値との差が閾値を上回るかどうかを判定する。波長λ1,λ2,λ3,λ4,λ5のすべてにおいて、受光量と基準値との差が閾値を上回る場合には、処理部50は、光学計測装置1において異常が発生したと判定する。基準値および閾値は、波長ごとに設定されるとともに、処理部50の内部に記憶される。
【0048】
受光量と基準値とが比較される波長の数は、変位の測定を要する計測対象物2の表面の数よりも多ければよい。光学計測装置1が複数の面を検出する場合があるが、それは計測対象物2が透明体の場合である。この場合には、透明体である計測対象物2の表面および裏面の数に対応する数の波長において、受光波形のピークが現れる。この受光波形のピークに応じて閾値の数が決定される。変位の測定の対象となる表面の数の最小値は1である。選択された複数の波長のうちの1つが、計測波長と一致した場合であっても、他の波長における受光量に基づいて異常波形を検出することができる。
【0049】
第1の実施の形態において5つの波長を用いる理由を以下に説明する。図8は、本実施の形態に係る光学計測装置1による、計測対象物2の複数の表面の変位の測定を説明した図である。
【0050】
図8に示されるように、たとえば計測対象物2は、2枚の透明体(ガラス等)の間にスペーサ等によって空間が設けられた構成を有する。計測対象物2は、変位の異なる4つの表面2a,2b,2c,2dを有するが、それらは、透明体の2つの表面(2a,2c)および透明体の2つの裏面(2b,2d)である。したがって光学計測装置1は、透明体の2つの表面および2つの裏面の変位を測定できる。異常波形の検出のための波長は任意に選ぶことができる。ただし、異常波形の検出のために4つの波長を選んだ場合には、計測対象物2(2つの透明体)の2つの表面および2つの裏面において焦点の合う波長と、その選択された4つの波長とが一致する可能性を考慮する必要がある。そのために、検出される面の数と選択される波長の数とは異なる必要がある。
【0051】
図8に示された例においては、照射光のうちの波長λ5の成分の焦点位置は、表面2a,2b,2c,2dの位置のいずれとも異なる。したがって、受光波形における波長λ5の成分を基準値と比較することによって、光学計測装置1の異常を検出することができる。
【0052】
各波長の設定、および閾値の設定は、ティーチングの結果に基づいてユーザが設定してもよい。光源10の発光スペクトルに応じて、波長および閾値を設定することができる。なお、各波長の設定および閾値は、たとえば工場出荷時に予め設定されていてもよい。
【0053】
図9は、照射光の一部が導光部20の途中で反射して戻る場合における、バックグラウンド成分の受光量の変化を模式的に示した図である。図9を参照して、照射光の一部が導光部20の途中で反射して戻る場合、戻り光成分の変化量は、波長に依存する。たとえば戻り光成分のピークに近い波長では、戻り光成分の変化量は大きくなりやすいため、閾値が相対的に大きく設定する。逆に、戻り光成分のピーク波長よりも短い波長あるいは長い波長においては、戻り光成分の変化量が小さくなりやすいので、その波長における閾値を相対的に小さく設定する。これにより、異常波形をより正確に検出することができる。
【0054】
図10は、モニタリング波長と閾値との関係の例を示した図である。図10に示されるように、n個の波長λ1,λ2,・・・,λnのそれぞれに対して、閾値Th1,Th2,・・・,Thnが設定される(nは2以上の整数)。なお、図8は、n=5の例を示す。図10に示された関係は、処理部50の内部に記憶される。
【0055】
図11は、第1の実施の形態に係る異常波形の検出処理を説明するためのフローチャートである。図3および図11を参照して、処理が開始されると、ステップS1において、処理部50は、波長λ1,λ2,・・・,λnの各々における受光量(すなわち波長成分)を基準値と比較する。ステップS2において、処理部50は、すべての波長において、受光量の変化量が閾値以上であるかどうかを判定する。
【0056】
すべての波長において、基準値に対する受光量の変化量が閾値以上である場合(ステップS2においてYES)、ステップS3において、処理部50は異常波形を検出する。この場合、ステップS4において、処理部50は異常波形が検出されたことをユーザに通知するための通知処理を実行する。通知の方法は特に限定されず、たとえば音、および光などを用いた周知の方法を採用することができる。
【0057】
一方、少なくとも1つの波長において、基準値に対する受光量の変化量が閾値未満である場合(ステップS2においてNO)、処理部50は、ステップS5において、受光波形に基づいて変位計測処理を実行する。変位計測処理の終了後に、処理はステップS1に戻される。
<E.第2の実施の形態>
第2の実施の形態では、光学計測装置1は、単一の波長における受光量の変化量に基づいて、異常波形を検出する。光学計測装置1の構成は実施の形態1に係る構成と同じであるので、以後の説明は繰り返さない。
【0058】
図12は、第2の実施の形態に係る異常波形の検出を説明するための光源10のスペクトルを説明した図である。図12を参照して、波長領域60は、変位の計測に使用する波長領域であり、ここでは「計測範囲」と呼ぶ。第2の実施の形態では、計測範囲外の波長領域61または波長領域62から選択された1つの波長を用いて、異常波形が検出される。第1の実施の形態と同じく、その選択された波長において、受光量(波長成分)の変化量が閾値以上である場合に、異常波形が検出される。計測範囲外の波長領域から選択された1つの波長における受光量がモニタされるので、対象物の変位の測定への影響を少なくすることができる。
【0059】
図13は、第2の実施の形態に係る異常波形の検出処理を説明するためのフローチャートである。図11および図13を参照して、第2の実施の形態では、ステップS1,S2に代えてステップS11,S12の処理が実行される。ステップS11において、処理部50は、波長領域60外の波長λoにおける受光量を、基準値と比較する。波長λoは予め設定される。ステップS12において、処理部50は、波長λoにおいて、受光量の変化量が閾値以上であるかどうかを判定する。
【0060】
基準値に対する受光量の変化量が閾値以上である場合(ステップS12においてYES)、処理はステップS3に進み、処理部50は異常波形を検出する。ステップS4において、処理部50は、異常波形が検出されたことをユーザに通知するための通知処理を実行する。一方、基準値に対する受光量の変化量が閾値未満である場合(ステップS12においてNO)、処理はステップS5に進む。この場合には、処理部50は変位計測処理を実行する。変位計測処理の終了後に、処理はステップS11に戻される。
【0061】
なお、第2の実施の形態では、計測範囲外の波長における受光量の変化量に基づいて、受光波形が異常かどうかが判定される。したがって、計測範囲外の波長領域の中から選択された複数の波長の各々における受光量の変化量に基づいて異常波形が検出されてもよい。
【0062】
<F.利点>
上述したように、本実施の形態に係る光学計測装置1では、受光波形の異常を検出することができる。さらに、受光波形の異常をユーザに気づかせることができる。戻り光が増加したために計測の精度が悪化した場合には、受光波形の異常が検出される。ユーザは、光学計測装置1からの通知によって、低下した精度を高めるための適切な対策(たとえばコネクタのクリーニング、ファイバを延長したことによる戻り光の増加の場合は再度、戻り光成分の値を光学計測装置1の内部に記憶させること)を取ることができる。したがって、光学計測装置における変位測定の精度が低下した場合にも、高い計測精度を再び達成することができる。
【0063】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
1 光学計測装置、2 計測対象物、2a,2b,2c,2d 表面(計測対象物)、10 光源、20 導光部、21 入力側ケーブル、22 出力側ケーブル、23 カプラ、231,232 カプラ(合波/分波構造)、24 ヘッド側ケーブル、30 センサヘッド、32 色収差ユニット、34 対物レンズ、40 受光部、41 コリメートレンズ、42 分光器、43 縮小光学系、44 検出器、45 読出回路、50 処理部、60,61,62 波長領域、202 コア、204 クラッド、206 被覆、208 外装、241,243,245 ケーブル、242,244 コネクタ、AX 光軸、I1,I2,I3,I4,I5 受光量、S1~S5,S11,S12 ステップ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13