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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】高容量の分注可能なゲッター
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/06 20060101AFI20241008BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20241008BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20241008BHJP
   H01L 23/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B01J20/06 A
B01J20/18 B
B01D53/26 210
H01L23/00 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022548770
(86)(22)【出願日】2021-02-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2021053111
(87)【国際公開番号】W WO2021160622
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2024-01-12
(31)【優先権主張番号】102020000002758
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511020829
【氏名又は名称】サエス・ゲッターズ・エッセ・ピ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミリアム・リヴァ
(72)【発明者】
【氏名】パオロ・ヴァッカ
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-144448(JP,A)
【文献】米国特許第04405487(US,A)
【文献】米国特許第05888925(US,A)
【文献】中国特許出願公開第106810982(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J20/00-20/34
H01L23/00-23/66
B01D53/26-53/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機結合剤、水分吸着剤および水素吸着剤を含む分注可能なゲッター組成物であって、
a.前記水素吸着剤は、前記分注可能なゲッター組成物の重量の5wt%から25wt%の間に含まれる量の酸化パラジウムであり、
b.前記水分吸着剤は、前記分注可能なゲッター組成物の重量の35wt%から55wt%の間に含まれる量のゼオライトであり、
c.前記有機結合剤は、前記分注可能なゲッター組成物の重量の30wt%から50wt%の間に含まれる量であり、
前記分注可能なゲッター組成物は、熱硬化剤、顔料、安定剤のような追加の材料を10wt%までさらに含み、前記熱硬化剤は、1wt%以上である、
分注可能なゲッター組成物において、
前記有機結合剤は、F型のビスフェノール樹脂であることを特徴とする、分注可能なゲッター組成物。
【請求項2】
前記追加の材料は、9wt%までの揮発性有機化合物ゲッターを含む、請求項1に記載の分注可能なゲッター組成物。
【請求項3】
前記水分吸着剤は、LTAゼオライトである、請求項1または2に記載の分注可能なゲッター組成物。
【請求項4】
前記LTAゼオライトは、フォージャサイト、MFIおよびモルデナイトからなる群において選択される少なくとも1つのゼオライトと組み合わされている、請求項3に記載の分注可能なゲッター組成物。
【請求項5】
前記水分吸着剤は、粒子の形態であり、前記粒子の少なくとも90%が、10μm未満の大きさを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の分注可能なゲッター組成物。
【請求項6】
前記酸化パラジウムは、粒子の形態であり、前記粒子の少なくとも90%が、15μm未満の大きさを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の分注可能なゲッター組成物。
【請求項7】
有機結合剤、水分吸着剤および水素吸着剤を含む分注可能なゲッター組成物の使用であって、
a.前記水素吸着剤は、前記分注可能なゲッター組成物の重量の5wt%から25wt%の間に含まれる量の酸化パラジウムであり、
b.前記水分吸着剤は、前記分注可能なゲッター組成物の重量の35wt%から55wt%の間に含まれる量のゼオライトであり、
c.前記有機結合剤は、前記分注可能なゲッター組成物の重量の30wt%から50wt%の間に含まれる量であり、
前記分注可能なゲッター組成物は、熱硬化剤、顔料、安定剤のような追加の材料を10wt%までさらに含み、前記熱硬化剤は、1wt%以上である、
分注可能なゲッター組成物の使用において、
粘度が50sec-1の剪断速度で500Pa・s(500.000cP)以上の、支持表面上に堆積された固化した硬化したゲッターを得るため、前記有機結合剤は、F型のビスフェノール樹脂であることを特徴とする、分注可能なゲッター組成物の使用。
【請求項8】
記支持表面は、シリコン、金属、ガラス、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、環状オレフィン共重合体で作製されている、請求項7に記載の分注可能なゲッター組成物の使用。
【請求項9】
前記固化したゲッター堆積物の平均厚さは、100μmから300μmの間に含まれる、請求項8に記載の分注可能なゲッター組成物の使用。
【請求項10】
有機結合剤、水分吸着剤および水素吸着剤を含む分注可能なゲッター組成物を分注および硬化することによって敏感デバイス内部の混入物のレベルを制御する方法であって、
a.前記水素吸着剤は、前記分注可能なゲッター組成物の重量の5wt%から25wt%の間に含まれる量の酸化パラジウムであり、
b.前記水分吸着剤は、前記分注可能なゲッター組成物の重量の35wt%から55wt%の間に含まれる量のゼオライトであり、
c.前記有機結合剤は、前記分注可能なゲッター組成物の重量の30wt%から50wt%の間に含まれる量であり、
d.前記有機結合剤は、F型のビスフェノール樹脂であり、
前記分注可能なゲッター組成物は、熱硬化剤、顔料、安定剤のような追加の材料を10wt%までさらに含み、前記熱硬化剤の量は、1wt%以上である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高容量の分注可能な水分および水素ゲッターであって、たとえば電子デバイスまたは光電子デバイスにおいて、これらの物質のレベルを制御するために用いられるべき、高容量の分注可能な水分および水素ゲッターに関する。
【背景技術】
【0002】
水分および水素の存在は、たとえ低レベルであっても(一般に5000ppmの水分および1000ppmの水素ほど低い量でも致命的であると考えられている)、ほとんどの密封されたデバイスの動作にとって有害である。完全な気密性は理想的で達成不可能な条件であるため、外部環境からのケース/封止要素を通したデバイス内への浸透のような外部要因、および内部要因、主にデバイスコンポーネントからのアウトガスにより、デバイス内部のこれらの濃度は、時間の経過とともに増加する。
【0003】
さまざまな参考文献に、密封されたデバイスにおける水素および水分の有害な役割が記載されている。たとえば、Albarghoutiら「Moisture and Hydrogen Release in Optoelectronic Hermetic Packages」、Journal of Microelectronics and Electronic Packaging (2014) 11、75-79に、光電子気密パッケージにおける1つの好ましくない水分の作用は、マイクロクラックにおける水分の浸透および滞留であり、この水分が凍結および膨張するときこれにより気密性の問題が引き起こされることが開示されている。また、水素は酸素との親和性が高く、気密パッケージ内部の表面酸化物と反応し、水分の形成を引き起こす可能性がある。DfR Solutionsによる白書「Reliability Issues for Optical Transceivers」では、金属化されたコバールパッケージに閉じ込められた水素による腐食および光トランシーバについてのデバイスコンポーネントの水分感受性が強調されている。光ファイバーケーブルのような、大きくそして主に水素の影響を受けているように見えるコンポーネントも、水素と水分の複合吸収剤の存在から利益を得るが、これは水分自体がケーブルにおいて水素源になる可能性があるためである。たとえば、2004年の白書WP9007、水素の有害な役割に関するCorningによる「The Impact of Hydrogen on Optical Fiber」、およびOhnishiら「Loss stability assurance against hydrogen for submarine optical cable」、Journal of Lightwave Technology、issue 2 (1988)を参照されたい。
【0004】
薄膜トランジスタ(TFT)も、水分と水素の複合作用が電気的特性の急速な劣化を引き起こす可能性があるデバイスの一種のように報告されている。Namらは、RCS Adv. 2018, 8, 5622-5628において、水素不純物がアモルファス酸化物半導体に基づくTFTの電気的特性に影響を与えることを報告した。また、LeeおよびJeongは、同じタイプのデバイスについて、高湿度条件にさらされると電界効果移動度が大幅に低下することを記載した(IEEE Journal of the Electron Devices Society (2019, 7, 26-32)。
【0005】
水素および水分の同時存在が有害である他のタイプのデバイスは、米国特許第6,958,846号に記載のような空間光変調器である。
【0006】
水素および水分がマイクロ波モジュールまたはハイブリッドモジュールにも与える悪影響は、リンクhttps://www.microwaves101.com/encyclopedias/hybrid-modulesおよびhttps://www.microwaves101.com/encyclopedias/hermeticityで報告されている技術ページにおいて説明されている。
【0007】
封止された電子デバイスおよびコンポーネントにおける水素および水分の存在に関連する問題は、適切な結合剤を添加して複合ゲッターを錠剤の形に固めることを開示している米国特許出願公開第2016/0175805号に記載されている。
【0008】
考慮すべき重大な側面の1つは、要求されるデバイスの寿命を確保するために加えられるべきゲッターの量でもあるが、これは、ゲッター容量がゲッター材料の量に明確に関連しているからである。しかしながら、絶え間ない小型化の傾向を考慮すると、使用可能なスペースが減少しており、錠剤の形のゲッターは、電子デバイス、特に、たとえば、WO2019/066987に記載されている最新規格(5G)用の通信チップのような新たに開発されたデバイスには不適である。
【0009】
米国特許第5,888,925号は、結合剤、たとえば加硫シリコーンを使用してゲッターを保持し、特定の形状に適合させることを提案する水素および水分ゲッターを記載しているが、分注可能な溶液に含めることができるゲッター材料の量を最大化するという問題にはこれも取り組んでいない。
【0010】
したがって、密封されたデバイスの製造において、適切な量のゲッター材料を容易に分配し、上記デバイスの製造プロセスにおいてこれを容易に統合することが可能な、当該技術および本明細書において通常「ゲッター」と呼ばれる、水および/または水素を除去する組成物を有することは非常に有用であろう。本発明の文脈において、「分注可能」という用語は「塗布可能」も意味し、これは、さまざまな表面上および/またはさまざまな形状に容易に分注させ、塗布させ、分配させまたは堆積させることができ、本明細書に記載のタイプのデバイスに容易に統合することもできる組成物を示すために用いられる。分注可能な組成物という用語は、本発明によれば、硬化前、50sec-1の剪断速度で40.000cPから90.000cPの間に含まれる粘度を有する組成物を意味することもできる。
【0011】
本発明のゲッター組成物の利点はその分注可能な特徴であり、その容易な統合、および同時に、新たな標準通信の採用(5G)および関連する新たな技術要件ならびに制約にも照らして、最も要求の厳しいデバイスにおけるその有利な使用を保証する高い吸着容量を可能にする。本発明の解決策の使用が特に有益である例示的なデバイスは光トランシーバであり、特にいわゆる高速光トランシーバ(すなわちデータ転送速度が100Gbpsを超えるデバイス)、光受信機、マイクロ波GaAsベースモジュールを指す。
【0012】
分注可能なゲッター組成物は当該技術において長い間知られている。たとえば、適切なマトリクスに分散された粉末の使用を概して開示している米国特許第5,244,707号、適切なマトリクスに分散された金属酸化物と吸着剤粒子の混合物を開示している米国特許第5,997,829号、または活性材料が中に含まれていないエポキシ樹脂に基づく分注可能な接着剤を記載している、本出願人名義の、米国特許第9,845,416号を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第6,958,846号
【文献】米国特許出願公開第2016/0175805号
【文献】WO2019/066987
【文献】米国特許第5,888,925号
【文献】米国特許第5,244,707号
【文献】米国特許第5,997,829号
【文献】米国特許第9,845,416号
【非特許文献】
【0014】
【文献】Albarghoutiら「Moisture and Hydrogen Release in Optoelectronic Hermetic Packages」、Journal of Microelectronics and Electronic Packaging (2014) 11、75-79
【文献】白書「Reliability Issues for Optical Transceivers」、DfR Solutions
【文献】Corning「The Impact of Hydrogen on Optical Fiber」、2004年白書WP9007
【文献】Ohnishiら「Loss stability assurance against hydrogen for submarine optical cable」、Journal of Lightwave Technology、issue 2 (1988)
【文献】Namら、RCS Adv. 2018, 8, 5622-5628
【文献】LeeおよびJeong、IEEE Journal of the Electron Devices Society (2019, 7, 26-32)
【文献】https://www.microwaves101.com/encyclopedias/hybrid-modules
【文献】https://www.microwaves101.com/encyclopedias/hermeticity
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の1つの目的は、分注可能な高容量の水分および水素ゲッターを提供することによって、当該技術において知られているゲッターベースの解決策の限界を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明の第1の態様は、結合剤、水分吸着剤および水素吸着剤を含む分注可能なゲッター組成物であり、
水素吸着剤は、分注可能なゲッター組成物の重量の5wt%から25wt%の間に含まれる量の酸化パラジウムであり、
水分吸着剤は、分注可能なゲッター組成物の重量の35wt%から55wt%の間に含まれる量のゼオライトであり、
有機結合剤は、分注可能なゲッター組成物の重量の30wt%から50wt%の間に含まれる量であり、
熱硬化剤、顔料、および安定剤のような追加の材料を10wt%まで、および好ましくは5wt%まで、好ましくは熱硬化剤の量は、1wt%以上であり、
上記有機結合剤は、F型、S型またはこれらの組み合わせから選択されるビスフェノール樹脂であることを特徴とする分注可能なゲッター組成物である。
【0017】
本発明の分注可能な組成物は、揮発性有機化合物(VOC)のような、他の不純物用のゲッターも、いずれの場合も10wt%の制限内、1wt%以上の量の硬化剤という好ましい場合において9wt%以下、含むことができる。最も一般的なVOCは、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘプテン、ヘプタン、ドデカン、ウンデカン、これらのアルキル(たとえばメチル)誘導体、エチレングリコールおよび他のエーテル、アルデヒド、ホルムアルデヒド、ケトン、アミン、塩化メチレン、テトラクロロエチレン、1,3-ブタジエンおよび他の共役ジエン、シラノールおよびそのアルキル誘導体である。
【0018】
本発明のゲッター組成物は、8から15wt%の間に含まれる水分容量および20から60トルリットル/グラムの間に含まれる水素容量を達成し、同時に最も一般的な技術および装置によって分注可能であるという特徴を維持することができ、すなわちその粘度は50sec-1の剪断速度で40.000cPから90.000cPの間に含まれる。
【0019】
本発明は特定の熱硬化剤または特定の部類の硬化剤に限定されるものではなく、第一級および第二級アミン(脂肪族、脂環式および芳香族)、有機酸無水物、またはポリアミドのような、ビスフェノール樹脂と適合する任意の硬化剤を用いることができる。適切な硬化剤の選択は、当業者にとって容易に入手可能である情報であり、容易に検索することができるということが強調されるべきである。たとえばR.G. Weatherheadによる1980年の書籍「FRP Technology Fibre Reinforced Resin Systems」、Applied Science Publishers LTD London Editorを参照、特にその第12章「Curing agents for epoxide resins」の266から283頁までを参照されたい。
【0020】
硬化剤という用語は架橋要素に類似していることも強調されるべきである。適切な硬化剤/架橋要素は、たとえば、多官能性アミン、酸無水物、フェノール、アルコールおよびチオールである。
【0021】
下記の図の助けを借りて本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に従って作製された分注可能なゲッターサンプルについての水分容量試験の結果を示すグラフである。
図2】本発明に従って作製された分注可能なゲッターサンプルについての水素容量試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明者らは、驚くべきことに、F、Sまたはこれらの混合物間で選択される、特定のビスフェノール樹脂を使用することによって累積的に多量の水分および水素ゲッター(40wt%以上)を添加しても、標準的な分注装置において搭載および使用されるべきシリンジに本発明のゲッターを供給することが可能になる適切な粘度が達成されることを発見した。本発明の分注可能なゲッターは、通常50sec-1の剪断速度で40.000センチポイズcPから90.000cPの間に含まれる粘度(明らかに硬化前)を有するため、これが可能である。この結果は、後で説明する比較例の通り先験的に予測可能ではなかった。
【0024】
本発明の他の追加の利点は、複合ゲッターは環境に有害な溶媒の使用を想定していないこと、その水素容量を著しく阻害することなく、水分容量を部分的に飽和させるのみで、空気中で分注することができるということ(分注されたゲッター層について10分間空気にさらした後で50%の損失)、たとえば、100℃~150℃で1~3時間加熱するような熱処理を通して水分吸着容量を完全に回復させることができるということである。
【0025】
水分吸着剤はゼオライトであり、好ましくはリンデA型ゼオライト(LTA)であり、さらなる実施形態において上記LTAゼオライトは、フォージャサイト、MFIおよびモルデナイトからなる群において選択される少なくとも1つのゼオライトと組み合わされている。本発明によれば水分吸着剤は、粒子の少なくとも90%が10μm未満の大きさ(直径)である粒子の形態とすることができ、分注可能なゲッター組成物が非常に均一であるため、本明細書に開示される実施形態のいずれかによる分注可能なゲッター組成物の任意の1gにわたって上の大きさ条件を確認することができる。
【0026】
水素吸着剤は、粒子の少なくとも90%が15μm未満の大きさ(直径)である粒子の形態のパラジウム金属酸化物であり、分注可能なゲッター組成物が非常に均一であるため、分注可能なゲッター組成物の任意の1gにわたって上の大きさ条件を確認することができる。
【0027】
粒子は完全な球形ではない可能性があるので、同等の球形の直径を決定するため、これらの直径は包囲する球の直径として意図される。分布は数で評価されるべきであり、市販のレーザ回折装置の使用のような、任意の適切な技術を使用することができる。
【0028】
本発明の分注可能なゲッター組成物は気密デバイスに最も有効に採用されるが、いわゆる半気密デバイスにも有効に採用することができるということが強調されるべきである。
【0029】
気密デバイスは、標準TM 1014.11に従ってその漏れ量に基づいて定義され、より詳細には気密デバイスは、
- 0.01cc以下の体積では5*10-8atm cc/s未満の空気
- 0.01ccから0.4ccの体積では1*10-7atm cc/s未満の空気
- 0.4cc以上の体積では1*10-6atm cc/s未満の空気
を有するものである。
【0030】
一方、半気密デバイスの厳密な定義は存在しないが、本発明の目的のため、これらは空気漏れ量が気密デバイスに対して2桁以下の大きさだけ高いデバイスと見なすことができる。
【0031】
上に開示された実施形態のいずれか1つによる組成物は、デバイス、好ましくは電子または光電子デバイスを封止または充填するため、および/または、たとえば、上記デバイス内の水素および水分のような混入物のレベルを制御するために用いることができる。あるいは、上に開示された実施形態のいずれか1つによる組成物は、支持表面上にゲッターの堆積物を得るために用いることができ、支持体は、たとえば、デバイスパッケージまたは筐体の一部として有利に用いられる。したがって、本発明は、本明細書に開示された実施形態のいずれか1つによる組成物を用いて、デバイス、好ましくは電子もしくは光電子デバイスを封止もしくは充填し、またはこの中に含まれるべきゲッター堆積物支持体もしくは支持表面を提供し、それによってデバイス内の混入物のレベルを制御することにも言及する。
【0032】
特に、本発明の分注可能なゲッター組成物は、気密デバイス内で、たとえば、活性堆積物として、もしくはさらには充填剤として、および/または半気密デバイスにおいて(活性)封止剤として用いることができる。
【0033】
その第2の態様において、本発明は、結合剤、水分吸着剤および水素吸着剤を含む分注可能なゲッター組成物の使用をカバーし、
水素吸着剤は、分注可能なゲッター組成物の重量の5wt%から25wt%の間に含まれる量の酸化パラジウムであり、
水分吸着剤は、分注可能なゲッター組成物の重量の35wt%から55wt%の間に含まれる量のゼオライトであり、
有機結合剤は、分注可能なゲッター組成物の重量の30wt%から50wt%の間に含まれる量であり、
有機結合剤は、4,4’-メチレンジフェノール(ビスフェノールF型)、4,4’-スルホニルジフェノール(ビスフェノールS型)またはこれらの混合物から選択されるビスフェノール樹脂であり、
硬化剤、顔料、安定剤のような追加の材料の10wt%まで、および好ましくは5wt%まで、硬化剤の量は好ましくは1wt%以上であり、
支持表面上にゲッターの硬化した固化堆積物を得るため、支持体はデバイスの筐体の一部として有利に用いられる。
【0034】
明らかに硬化後、分注されたゲッター組成物は、無視できる量の未反応の硬化剤のみを提示するはずである。硬化プロセスの結果としてビスフェノールは、流動特性が非常に限定された、すなわち粘度が50sec-1の剪断速度で500.000cP以上のエポキシ樹脂に変化することになる。
【0035】
ゲッターは、たとえば、支持体の表面(デバイスの内部に露出することになるもの)上に堆積させることができる。したがって、本発明の他の一態様は、本明細書に開示された実施形態のいずれか1つによるゲッター組成物で覆われた、または上にこれを有する支持体または支持体表面である。適切な表面支持材料はたとえば、シリコン、ガラス、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、環状オレフィン共重合体および適切な熱安定性を備えた他のポリマー基板または金属である。好ましい金属または金属化支持体は、コバール、金メッキコバール、金メッキ鉄、ニッケルメッキ鉄である。いくつかの実施形態において支持体全体が上に列挙された材料で作製され、他のものにおいてその大部分が異なる材料で作製され、ゲッターを堆積させるべきその表面のみが上に列挙された材料で作製される。
【0036】
硬化したゲッター堆積物のための最も有用なフォーマットは、100μmから300μmの間に含まれる平均厚さを有するものである一方、面積は、敏感デバイスおよびその寸法に強く関連するパラメータであり、これは本発明のではなくデバイス自体の明らかな特徴である。
【0037】
好ましくはゲッター材料の固化堆積物を備えた支持体は、デバイスの蓋の一部として用いられるか、またはデバイスの蓋の一部である。
【0038】
本発明による硬化した分注可能なゲッター組成物で覆われた、またはこれを有する支持体の使用は、デバイス製造業者がデバイスの製造プロセスにおいてただ支持体を統合することを可能にし、したがって分注および硬化装置を必要としないため有利である(オフラインゲッター統合)。
【0039】
硬化した分注可能なゲッターを備えた支持体はしたがって、デバイス製造業者に出荷されるべき半製品と見なすことができ、この点においてこの分注可能な特徴(硬化前)は、異なるタイプのデバイスまたは異なる大きさもしくは材料の量における異なる要件を有するデバイスにおいて統合するための異なるフォーマットを容易に製造することを可能にするため、依然として興味深い特徴である。
【0040】
その第3の態様において、本発明は、有機結合剤、水分吸着剤および水素吸着剤を含む分注可能なゲッター組成物で敏感デバイス内部の混入物のレベルを制御する方法をカバーし、
水素吸着剤は、分注可能なゲッター組成物の重量の5wt%から25wt%の間に含まれる量の酸化パラジウムであり、
水分吸着剤は、分注可能なゲッター組成物の重量の35wt%から55wt%の間に含まれる量のゼオライトであり、
有機結合剤は、分注可能なゲッター組成物の重量の30wt%から50wt%の間に含まれる量であり、
有機結合剤は、4,4’-メチレンジフェノール(ビスフェノールF型)、4,4’-スルホニルジフェノール(ビスフェノールS型)またはこれらの混合物から選択されるビスフェノール樹脂であり、
硬化剤、顔料、安定剤のような追加の材料の10wt%まで、および好ましくは5wt%まで、硬化剤の量は好ましくは1wt%以上である。
【0041】
「敏感デバイス」という用語は、水分については5000ppm(百万分率)より高い、水素については1000ppmより高いレベルのような、比較的高レベルの水分または水素の存在によってその性能または寿命が損なわれる電子または光電子デバイスを示す。例示的なデバイスは、光トランシーバ、送信機、受信機、増幅器、レーザダイオード、マルチプレクサ、フォトダイオード、RFデバイス、マイクロ波モジュールまたはハイブリッドモジュールである。
【0042】
本発明は、デバイスのための活性封止剤および/もしくは充填剤として、または特定の接着機能がないデバイス内部のゲッターとして、分注可能なゲッターを用いることを想定する方法にも言及し、すなわち吸着機能は本発明の分注可能なゲッターによって対処され、封止機能から切り離される。
【0043】
したがって、本発明の他の目的は、デバイス、好ましくは気密もしくは半気密デバイスを封止もしくは充填し、および/またはその中の混入物のレベルを制御する方法であり、
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つに従って、デバイスの1つもしくは複数の表面上、デバイス内部、および/または上記デバイスに含まれるべき支持体もしくは支持表面上へ、分注可能なゲッター組成物を分注するステップと、次いで
デバイス、支持体またはその表面を、それぞれ硬化させるステップと、
を含む。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、硬化したゲッター組成物は電子デバイスの外側の環境から隔離され、100μmから300μmの間に含まれる平均厚さを有し、または硬化した分注可能なゲッター組成物は電子デバイスの外側の環境と接触し、1mmから4mmの間に含まれる平均厚さを有する。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、分注可能なゲッター封止剤として適用されるとき、封止剤という用語は、電子デバイスパッケージにおける分注可能なゲッター組成物の配置に、すなわち敏感デバイスの内部容積と外部環境との間に介在する要素として言及する。この点において、本発明による封止剤は、デバイスの外側と直接接触することができ、または既に述べた本出願人名義の米国特許第9,845,416号に記載されているようなゲッターレス封止剤のような他の要素と接触することもできるということを強調することが重要である。
【0046】
本発明の高容量の分注可能な水分および水素ゲッターは通常シリンジに供給され、ニードル分注ツールによって分注され、次いで、通常熱硬化によって、0.5時間から4時間の間に含まれる持続時間の間、100℃から250℃までの範囲の温度で、硬化プロセスにかけられ、明らかに温度が低いほど硬化プロセスの持続時間は長くなる。本発明はこの特定の分注技術に限定されるものではなく、ドクターブレーディング、バーコーティング、スロットダイコーティング、スクリーンプリンティングのような他のものも通常使用することができる。
【0047】
この方法がゲッターとしての使用(封止機能がない)を想定するとき、硬化後の本発明の分注可能な組成物は、平均厚さが好ましくは100から300μmの間に含まれ、面積が敏感デバイスの寸法に合わせて調整される材料の連続堆積物の形態を有する一方、活性封止剤として用いられるとき、平均厚さは好ましくは1から4mmの間に含まれる。
【0048】
分注可能なゲッター組成の、およびその使用によって混入物のレベルを制御する方法の利点の1つは、デバイス製造業者が要求される装置を有さなければ(オフラインの解決策)半製品(堆積物支持体)によって、または標準の分注装置を通して容易に実装可能な分注可能な解決策(インラインの解決策)で、ゲッターを統合する最良の方法を選択する可能性があることである。
【0049】
次の非限定的な例の助けを借りて本発明をさらに説明する。
【0050】
本発明によるサンプルS1の調製
直径が10μm未満の1.5グラムの酸化パラジウム粒子(数で90%)と、直径が10μm未満の4.5グラムのLTA型ゼオライト粒子(数で90%)を、硬化剤として0.4グラムのシアン酸エステルを含むビスフェノールFマトリクスに加えて、本発明による10グラムの分注可能なゲッター組成物を調製した。
【0051】
分注可能なゲッター組成物を次いで、均質な組成物/粒子分布を得るための速度混合プロセスにかけ、後で圧延プロセスにかけた。
【0052】
分注可能なゲッター組成物の一部を次いで3ccのシリンジ内へ挿入し、100μmの平均高さを有する一連の10個の9×5mmの長方形としてアルミニウムホイル上へ堆積させ、他の部分をレオロジー特性試験用に保存する。
【0053】
ホイルを次いで、最初に150℃で1時間加熱し、続いて最後に200℃で1時間加熱する二段階加熱プロセスによって硬化させる。次いで、真空下で3時間、100℃の高温で活性化させた単一のゲッター堆積物をそれぞれ含むサンプルにホイルを切断する。このさらなる活性化のステップは、サンプル調製中のゼオライトによる物理吸着水を除去するものである。
【0054】
比較サンプルC1の調製
直径が10μm未満の0.4グラムの酸化パラジウム粒子(数で90%)と、直径が10μm未満の3.0グラムのLTA型ゼオライト粒子(数で90%)を、ビスフェノールAジグリシジルエーテルおよびメチルフタル酸無水物エポキシ樹脂に加えて、本発明の範囲外の10グラムの分注可能なゲッター組成物を調製した。分注可能なゲッター組成物を次いで、均質な組成物/粒子分布を得るための速度混合プロセスにかけ、後で圧延プロセスにかけた。
【0055】
比較サンプルC2の調製
直径が10μm未満の0.4グラムの酸化パラジウム粒子(数で90%)と、直径が10μm未満の1.5グラムのLTA型ゼオライト粒子(数で90%)を、ビスフェノールAジグリシジルエーテルおよびメチルフタル酸無水物エポキシ樹脂に加えて、本発明の範囲外の10グラムの分注可能なゲッター組成物を調製した。分注可能なゲッター組成物を次いで、均質な組成物/粒子分布を得るための速度混合プロセスにかけ、後で圧延プロセスにかけた。
【0056】
サンプルS1の水分容量試験
10個のサンプルの中の4個を、室温で、5mbarの分圧に飽和状態までさらす動的条件下に保たれた微量天秤において同時に試験し、12wt%の全体容量を達成した。
【0057】
図1は上の試験の結果を示し、t1は5mbarの水分圧力への曝露の開始時間を示している。
【0058】
サンプルS1の水素容量試験
10個のサンプルの中の4個を室温で容積測定ベンチにおいて純水素の8トルの一定圧力で、飽和状態まで、同時に試験し、試験されたサンプルの全体容量は33トルリットル/グラムであり、0.36wt%の複合ゲッターの相対重量増加に相当するものであった。
【0059】
図2は上の試験の結果を示す。
【0060】
水分に対して水素捕捉による重量増加がはるかに少ないことは、水素の分子重量が低いこと、ならびにサンプルS1の調製用に選択された吸着剤の比率に関連している。
【0061】
レオロジー特性試験
本発明に従って作製されたサンプルS1(ビスフェノールFを用いて作製)のレオロジー特性を、比較例C1およびC2(両方ともビスフェノールAを用いて作製)と比較する。次のtable 1(表1)は、吸着材料のサンプル荷重および測定されたレオロジー特性を報告するものである。
【0062】
【表1】
【0063】
Table 1(表1)に報告されているサンプルをレオロジー分析によって試験して50sec-1の剪断速度での粘度を判定する。通常、ニードル分注のような分注技術には、50sec-1の剪断速度で10.000から90.000cPまでの範囲の材料粘度が要求される。結果から明らかなように、サンプルS1は、低ゲッター荷重で高粘度を特徴とする比較例C1およびC2に対して、多量の水分および水素ゲッターで良好な粘度を提示する。
【0064】
水素および水分吸着剤の両方について、吸着材料の荷重が減少しても、比較サンプルC1およびC2は両方とも最も一般的な分注技術にとって有用な上記の範囲外であったことを観察することが可能である。
図1
図2