(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】記録ヘッド位置調整機構、記録ヘッドモジュール、及び、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
B41J2/01 307
(21)【出願番号】P 2020185909
(22)【出願日】2020-11-06
【審査請求日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2019215566
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100117215
【氏名又は名称】北島 有二
(72)【発明者】
【氏名】椿 健悟
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-038231(JP,A)
【文献】特開2009-262471(JP,A)
【文献】特開2013-052526(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0224968(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する記録ヘッドの位置を調整する記録ヘッド位置調整機構であって、
前記記録ヘッドの長手方向一端側を支持する第1支持部材と、
前記記録ヘッドの長手方向他端側を支持する第2支持部材と、
前記第1支持部材に対して前記第2支持部材を長手方向に交差する方向に移動させることで、前記記録ヘッドの傾きを調整する調整部材と、
を備
え、
前記記録ヘッドは、前記第1支持部材と前記第2支持部材とによって長手方向一端側と長手方向他端側とを分割して別々に支持され、
前記第1支持部材は、前記記録ヘッドの長手方向一端側であって短手方向一端側を支持する一端側第1支持部と、前記記録ヘッドの長手方向一端側であって短手方向他端側を支持する一端側第2支持部と、を具備して、前記記録ヘッドの長手方向一端側を短手方向両側から挟むように支持し、
前記第2支持部材は、前記記録ヘッドの長手方向他端側であって短手方向一端側を支持する他端側第1支持部と、前記記録ヘッドの長手方向他端側であって短手方向他端側を支持する他端側第2支持部と、を具備して、前記記録ヘッドの長手方向他端側を短手方向両側から挟むように支持することを特徴とする記録ヘッド位置調整機構。
【請求項2】
前記第1支持部材と前記第2支持部材とを保持する保持部を備え、
前記第1支持部材は、
前記保持部に対して固定して設けられ、
前記調整部材は、前記他端側第1支持部を前記交差する方向に移動することで、前記記録ヘッドの長手方向他端側であって短手方向一端側を前記他端側第1支持部の移動に追従して移動させ、かつ、前記記録ヘッドを長手方向一端側を中心に回動させて、前記記録ヘッドの傾きを調整することを特徴とする請求項1に記載の記録ヘッド位置調整機構。
【請求項3】
前記一端側第1支持部は、前記記録ヘッドの第1滑動部に対して前記交差する方向への移動を規制された状態で、前記第1滑動部を前記記録ヘッドの長手方向へと滑動可能に支持する第1回転体であって、
前記一端側第2支持部は、前記記録ヘッドの第2滑動部を前記記録ヘッドの長手方向へと滑動可能に支持する第2回転体であって、
前記他端側第1支持部は、前記第1滑動部に対して前記交差する方向への移動を規制された状態で、前記第1滑動部を前記記録ヘッドの長手方向へと滑動可能に支持する第3回転体であって、
前記他端側第2支持部は、前記第2滑動部を前記記録ヘッドの長手方向へと滑動可能に支持する第4回転体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の記録ヘッド位置調整機構。
【請求項4】
前記第2回転体は、前記第2滑動部を前記記録ヘッドの短手方向へとスライド可能に支持し、
前記第4回転体は、前記第2滑動部を前記記録ヘッドの短手方向へとスライド可能に支持することを特徴とする請求項3に記載の記録ヘッド位置調整機構。
【請求項5】
前記第1支持部材は、前記記録ヘッドに隣接する他の記録ヘッドを支持するために、前記一端側第1支持部又は前記一端側第2支持部が形成された部分の反対側に前記一端側第2支持部又は前記一端側第1支持部が形成され、
前記第2支持部材は、前記記録ヘッドに隣接する他の記録ヘッドを支持するために、前記他端側第1支持部又は前記他端側第2支持部が形成された部分の反対側に前記他端側第2支持部又は前記他端側第1支持部が形成されたことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の記録ヘッド位置調整機構。
【請求項6】
前記記録ヘッドは、長手方向を着脱方向として着脱可能に設置され、
前記交差する方向は、シートが搬送される方向であって、
前記第2支持部材と前記調整部材とは、前記記録ヘッドの装着方向の手前側に対応する位置に設置されたことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の記録ヘッド位置調整機構。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれかに記載の記録ヘッド位置調整機構と前記記録ヘッドとがユニット化されたことを特徴とする記録ヘッドモジュール。
【請求項8】
複数の前記記録ヘッド位置調整機構と複数の前記記録ヘッドとがユニット化されたことを特徴とする請求項7に記載の記録ヘッドモジュール。
【請求項9】
請求項1~請求項6のいずれかに記載の記録ヘッド位置調整機構を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液滴を吐出する記録ヘッドの位置を調整する記録ヘッド位置調整機構と、それを備えた記録ヘッドモジュールと画像形成装置と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェットプリンタなどの画像形成装置において、位置ズレのない良好な画像を形成することを目的として、記録ヘッド(印字モジュール)の位置を調整する技術が広く知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
詳しくは、画像形成装置では、搬送手段によって搬送されるシートに対向するように複数色の記録ヘッド(印字モジュール)が配列されている。そして、搬送されるシートに向けて、複数色の記録ヘッドからそれぞれ液滴が吐出されて、シート上に所望のカラー画像が形成される。
【0004】
一方、特許文献1には、調整部材を手動回転させることで、記録ヘッドを支持する梁部材を支軸を中心にして回動させて、記録ヘッドの傾きを調整する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の記録ヘッド位置調整機構は、記録ヘッドの長手方向サイズに合わせた大型の梁部材を回転させることで、記録ヘッドの位置(傾き)を調整していたため、装置が大型化するとともに、調整に手間がかかっていた。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、装置が大型化することなく、記録ヘッドの位置を簡単に調整することができる、記録ヘッド位置調整機構、記録ヘッドモジュール、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明における記録ヘッド位置調整機構は、液滴を吐出する記録ヘッドの位置を調整する記録ヘッド位置調整機構であって、前記記録ヘッドの長手方向一端側を支持する第1支持部材と、前記記録ヘッドの長手方向他端側を支持する第2支持部材と、前記第1支持部材に対して前記第2支持部材を長手方向に交差する方向に移動させることで、前記記録ヘッドの傾きを調整する調整部材と、を備え、前記記録ヘッドは、前記第1支持部材と前記第2支持部材とによって長手方向一端側と長手方向他端側とを分割して別々に支持され、前記第1支持部材は、前記記録ヘッドの長手方向一端側であって短手方向一端側を支持する一端側第1支持部と、前記記録ヘッドの長手方向一端側であって短手方向他端側を支持する一端側第2支持部と、を具備して、前記記録ヘッドの長手方向一端側を短手方向両側から挟むように支持し、前記第2支持部材は、前記記録ヘッドの長手方向他端側であって短手方向一端側を支持する他端側第1支持部と、前記記録ヘッドの長手方向他端側であって短手方向他端側を支持する他端側第2支持部と、を具備して、前記記録ヘッドの長手方向他端側を短手方向両側から挟むように支持するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、装置が大型化することなく、記録ヘッドの位置を簡単に調整することができる、記録ヘッド位置調整機構、記録ヘッドモジュール、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
【
図2】記録ヘッドが支持部材に懸架された状態を示す概略図である。
【
図3】記録ヘッドが第1、第2支持部材に支持された状態を示す上面図である。
【
図4】記録ヘッド位置調整機構の要部を示す、(A)側面図と、(B)正面図と、(C)上面図と、である。
【
図6】変形例としての、4つのアレイ式の記録ヘッドが配列された状態を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
まず、
図1にて、画像形成装置1の全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としてのインクジェットプリンタ、2はシートPを搬送する搬送ドラム、3は印刷前のシートPが積載された給紙カセット、5は搬送ドラム2上でシートPを把持するクリッパ、を示す。
また、6は搬送ドラム2からシートPを分離する分離部材、7は搬送ドラム2から分離されたシートPを搬送する搬送ベルト、8は印刷後のシートPが排紙・積載される排紙トレイ、を示す。
10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2はインクジェット方式により印字・印画するための画像形成部がユニット化された記録ヘッド(印字モジュール)、19、20は記録ヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2を支持(懸架)する支持部材、30は支持部材19、20を保持するためのベースフレーム、を示す。
【0012】
ここで、本実施の形態における画像形成装置1は、カラー画像を形成するためのものであって、
図1に示すように、黒色用の記録ヘッド10Kと、カラー用の3色(イエロー、マゼンタ、シアン)の記録ヘッド10Y、10M、10Cと、コーティング用(特殊色用)の2色の記録ヘッド10S1、10S2と、が設置されている。これらの6つの記録ヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2は、搬送ドラム2に対向して、搬送ドラム2の回転方向に沿うように並設されている。
なお、6つの記録ヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2は、印刷に用いられるインクの色(種類)が異なる以外はほぼ同一構造であるため、
図2、
図3では、記録ヘッド10に付した符号のアルファベット(Y、M、C、K、S1、S2)を除して図示する。
図2に示すように、記録ヘッド10は、その主部が圧電アクチュエータやサーマルアクチュエータなどで構成されていて、液滴としてのインクを吐出するノズル10aや、インクが充填されたインクタンク10bや、制御基板(制御部)などが設けられている。
【0013】
図1を参照して、画像形成装置1の動作について簡単に説明する。
まず、パソコンなどから画像形成装置1の制御部に画像情報とともにプリント指令が入力されると、給紙ローラによって給紙カセット3からシートPが給送される。給紙カセット3から給送されたシートPは、搬送ローラ4によって、搬送ドラム2に向けて搬送される。他方、各色の記録ヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2では、入力された画像情報に基づいて各色の書込み情報に変換される。
そして、搬送ドラム2に搬送されたシートPは、クリッパ5に把持された状態で搬送ドラム2上に位置決めされて、搬送ドラム2の反時計方向に回転に沿うように搬送される。
そして、搬送ドラム2の回転によって
図1の矢印方向に搬送されるシートP上に、各色の記録ヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2から書込み情報に基づいて液滴としてのインクが順次吹き付けられて、シートP上に所望の画像が形成される。
その後、所望の画像が形成されたシートPは、分離部材6によって搬送ドラム2から分離される。そして、搬送ドラム2から分離されたシートPは、搬送ベルト7によって搬送されて、排紙トレイ8上に排出されることになる。
【0014】
以下、このように構成された画像形成装置1において、インク(液滴)を吐出する記録ヘッド10の位置を調整する記録ヘッド位置調整機構について詳述する。
図2~
図4等に示すように、画像形成装置1には、記録ヘッド10を所定方向(+Y方向である。)に引出し可能に支持する支持部材19、20が設けられている。
すなわち、記録ヘッド10は、画像形成装置1に対して、+Y方向に引出したり-Y方向に装着したり、着脱可能(交換可能)に設置されている。そして、記録ヘッド10は、インクタンク10bに貯留されたインクが空になると、既設のものが引出されて、新品のものが装着されて交換されることになる。
【0015】
ここで、記録ヘッド位置調整機構には、記録ヘッド10の長手方向一端側(第1所定位置)を支持する第1支持部材19と、記録ヘッド10の長手方向他端側(第1所定位置とは異なる第2所定位置)を支持する第2支持部材20と、が設置されている。
なお、記録ヘッド10は、長手方向(
図3において白矢印で示すシートPの搬送方向に略直交する方向であって、±Y方向である。)を着脱方向として着脱可能に設置されている。
記録ヘッド10は、
図3に示すように、シートPの搬送方向に略直交する方向に延びて設けられ、シートPの全幅にわたって複数のノズル10aを有するラインヘッド方式の記録ヘッドである。
【0016】
詳しくは、支持部材19、20は、記録ヘッド10を略水平方向に挟むように記録ヘッド10の両側に対となって配置されている。そして、本実施の形態において、支持部材は、
図3等に示すように、記録ヘッド10の長手方向一端側を支持する第1支持部材19と、記録ヘッド10の長手方向他端側を支持する第2支持部材20と、に分割されている。すなわち、記録ヘッド10は、長手方向一端側の両側が挟まれるように一対の第1支持部材19(一端側第1支持部と一端側第2支持部とである。)によって支持され、長手方向他端側の両側が挟まれるように一対の第2支持部材20(他端側第1支持部と他端側第2支持部とである。)によって支持されている。
【0017】
また、
図3等を参照して、第1支持部材19には、記録ヘッド10の長手方向一端側であって短手方向一端側を支持する(嵌合して支持する)一端側第1支持部としての第1溝付コロ21Aと、記録ヘッド10の長手方向一端側であって短手方向他端側を移動可能に支持する一端側第2支持部としての第1円柱状コロ22Aと、が設けられている。
同様に、第2支持部材20には、記録ヘッド10の長手方向他端側であって短手方向一端側を支持する(嵌合して支持する)他端側第1支持部としての第2溝付コロ21Bと、記録ヘッド10の長手方向他端側であって短手方向他端側を移動可能に支持する他端側第2支持部としての第2円柱状コロ22Bと、が設けられている。
【0018】
詳しくは、記録ヘッド10には、短手方向(長手方向に直交する方向であって、シートPの搬送方向に略一致する方向である。)の一端側に第1滑動部としての溝付レール11が形成され、短手方向の他端側に第2滑動部としての平面状レール12が形成されている。
図2等に示すように、溝付レール11は、案内面にV字状の突起が形成されたものであり、平面状レール12は、案内面が平面状に形成されたものである。これらのレール11、12は、着脱方向(±Y方向)に延在するように形成されている。
また、第1、第2溝付コロ21A、21Bは、その外周面にV字状の溝が形成されたものであって、第1、第2支持部材19、20に回転可能に軸支されている。また、第1、第2円柱状コロ22A、22Bは、その外周面が円状に形成されたものであって、第1、第2支持部材19、20に回転可能に軸支されている。
そして、第1溝付コロ21A(一端側第1支持部)は、記録ヘッド10の溝付レール11(第1滑動部)に嵌合して、第1円柱状コロ22A(一端側第2支持部)は、記録ヘッド10の平面状レール12(第2滑動部)に当接することになる。詳しくは、第1回転体としての第1溝付コロ21A(一端側第1支持部)は、記録ヘッド10の溝付レール11(第1滑動部)に対して短手方向(長手方向に交差する方向)への移動を規制された状態で、溝付レール11を記録ヘッド10の長手方向へと滑動可能に支持する。また、第2回転体としての第1円柱状コロ22A(一端側第2支持部)は、記録ヘッド10の平面状レール12(第2滑動部)を記録ヘッド10の長手方向へと滑動可能に支持する。また、第2回転体としての第1円柱状コロ22A(一端側第2支持部)は、第2滑動部としての平面状レール12を記録ヘッド10の短手方向へとスライド可能に支持する。
同様に、第2溝付コロ21B(他端側第1支持部)は、記録ヘッド10の溝付レール11に嵌合して、第2円柱状コロ22B(他端側第2支持部)は、記録ヘッド10の平面状レール12に当接することになる。詳しくは、第3回転体としての第2溝付コロ21B(他端側第1支持部)は、記録ヘッド10の溝付レール11(第1滑動部)に対して短手方向(長手方向に交差する方向)への移動を規制された状態で、溝付レール11を記録ヘッド10の長手方向へと滑動可能に支持する。また、第4回転体としての第2円柱状コロ22B(他端側第2支持部)は、記録ヘッド10の平面状レール12(第2滑動部)を記録ヘッド10の長手方向へと滑動可能に支持する。また、第4回転体としての第2円柱状コロ22B(他端側第2支持部)は、第2滑動部としての平面状レール12を記録ヘッド10の短手方向へとスライド可能に支持する。
そして、レール11、12上をコロ21A、22A、21B、22Bが回転しながら相対的に移動することで記録ヘッド10が±Y方向に着脱されることになる。
【0019】
このように構成することにより、記録ヘッド10は、V字溝を有する溝付コロ21A、21Bによって±X方向の位置が規制されながら、画像形成装置1に対して着脱されることになる。そのため、記録ヘッド10が着脱時に他の部材に干渉して損傷するような不具合が生じることなく、記録ヘッド10の着脱操作をスムーズにおこなうことができる。すなわち、溝付コロ21A、21Bは、記録ヘッド10の位置決め部材として機能するとともに、記録ヘッド10の着脱操作を促す部材としても機能することになる。
なお、本実施の形態では、溝付コロ21A、21BにV字溝を設けて、溝付レール11にV字突起を設けて、これらを係合させることで、±X方向の位置を規制するように構成した。しかし、溝付コロ21A、21Bに設ける溝の形状や、溝付レール11に設ける突起の形状は、そのような機能を満足するものであればよくて、V字に限定されることなく、例えば、W字であっても良いし、V字をさらに複数並べたものであっても良い。
【0020】
ここで、
図2、
図3等を参照して、本実施の形態において、第1支持部材19は、記録ヘッド10に隣接する他の記録ヘッド10を支持するために、一端側第1支持部としての第1溝付コロ21A(又は、一端側第2支持部としての第1円柱状コロ22A)が形成された部分の反対側に第1円柱状コロ22A(又は、第1溝付コロ21A)が形成されている。
同様に、第2支持部材20は、記録ヘッド10に隣接する他の記録ヘッド10を支持するために、他端側第1支持部としての第2溝付コロ21B(又は、他端側第2支持部としての第2円柱状コロ22B)が形成された部分の反対側に第2円柱状コロ22B(又は、第2溝付コロ21B)が形成されている。
このように構成することにより、画像形成装置1において、複数の記録ヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2を、シートPの搬送方向に沿ってコンパクトに着脱可能に設置することができる。
【0021】
なお、
図4(A)に示すように、本実施の形態において、第1支持部材19は、画像形成装置1の天井部に設置されたベースフレーム30に接続された側方フレーム31に固設されている。すなわち、第1支持部材19は、画像形成装置1において固定して設けられている(固定された位置に設置されている)。
これに対して、第2支持部材20は、ベースフレーム30に接続された側方フレーム32に対して、短手方向(
図4(A)の紙面垂直方向であって、
図4(C)の両矢印方向である。)にスライド移動可能に設置されている。すなわち、第2支持部材20は、画像形成装置1においてスライド移動可能に保持されている。
【0022】
ここで、
図3、
図4等を参照して、本実施の形態における画像形成装置1(記録ヘッド位置調整機構)には、第1支持部材19に対して第2支持部材20を長手方向に交差する方向(シートPが搬送される方向であって、短手方向である。)に移動させることで、記録ヘッド10の長手方向の傾きを調整する調整部材50が設けられている。
詳しくは、調整部材50は、第2溝付コロ21B(他端側第1支持部)を短手方向(交差する方向)に移動することで、記録ヘッド10の長手方向他端側であって短手方向一端側を第2溝付コロ21Bの移動に追従して移動させ、かつ、記録ヘッド10を長手方向一端側(第1溝付コロ21Aの位置である。)を中心に回動させて、記録ヘッド10の長手方向の傾きを調整するものである。
【0023】
具体的に、調整部材50は、偏心軸50aを有するツマミ部材(回転部材)であって、その外周面が側方フレーム32(
図4(A)、(B)参照)に両矢印方向に回転可能に保持されている。調整部材50は、その外周面(軸方向の一部である。)が側方フレーム32に形成された円形穴部に嵌合して、その偏心軸50aが第2支持部材20に固定されるように接合されている。また、調整部材50は、その偏心軸50aの外周部が、第2支持部材20に形成された長穴20a(上下方向を長手方向とする長穴である。)に摺接可能に設置されている。
【0024】
このような構成により、調整部材50が
図4(A)の両矢印方向に手動回転されることで、第2支持部材20が
図4(A)の紙面垂直方向(短手方向)にスライド移動することになる。これにより、記録ヘッド10は、第2支持部材20の溝付コロ21Bに引っ張られるように、長手方向一端側を中心に
図3の破線両矢印方向に回転することになる。そして、記録ヘッド10の長手方向の傾き(シートPの搬送方向に対する直角度)が調整されることになる。このとき、記録ヘッド10の短手方向他端側は、平面状レール12が円柱状コロ22A、22B上を滑るように移動することになるため、上述した記録ヘッド10の回転が妨げられることはない。また、同様の理由で、1つの記録ヘッド10の回転(傾き補正)をおこなっても、隣接する記録ヘッド10が回転されることはなく、隣接する記録ヘッド10の位置(傾き)に影響することはない。
そして、そのように記録ヘッド10の位置(傾き)が精度良く調整されることで、位置ズレのない良好な画像をシートP上に形成することができる。
【0025】
なお、上述したような記録ヘッド10の傾きを調整するときには、
図4(A)、(B)に示す固定部材55の螺合が一時的に解除される。固定部材55は、側方フレーム32を介して第2支持部材20に形成された雌ネジ部に螺合することで、側方フレーム32(画像形成装置1)に対して第2支持部材20を固定するためのネジ部材である。
したがって、調整部材50による第2支持部材20のスライド移動(記録ヘッド10の傾き)が調整された後に固定部材55が螺合されて、第2支持部材20が調整後の位置に固定されることになる。
【0026】
このように、本実施の形態における記録ヘッド位置調整機構は、記録ヘッド10の長手方向サイズに合わせた大型の支持部材を回転させることで記録ヘッド10の位置(傾き)を調整するのではなくて、長手方向に分割された一方の支持部材(第1支持部材19)を固定したまま、他方の支持部材(第2支持部材20)のみを調整部材50によってスライド移動させることで、記録ヘッド10の位置(傾き)を調整している。したがって、装置が大型化することなく、記録ヘッド10の位置(傾き)を簡単に調整することができる。
なお、本実施の形態における第1支持部材19と第2支持部材20とは、別体の部品として製造され、いずれも本体部分がアルミダイカストによって製造されたものである。特に、第2支持部材20の主要部(コロ21B、22Bなどを除く筐体部分である。)をアルミニウムで形成することで、第2支持部材20が軽量化されて、調整部材50の手動操作による第2支持部材20の移動が容易になる。
また、一方の支持部材(第1支持部材19)と他方の支持部材(第2支持部材20)とは、長手方向において隙間を空けて設けられている。したがって、支持部材を長手方向全域にわたって設ける構成に比べて、支持部材を小型にでき、装置を小型にできる。
【0027】
また、本実施の形態では、先に
図3等を用いて説明したように、記録ヘッド10は、溝付レール11が第1、第2溝付コロ21A、21Bに嵌合して、平面状レール12が第1、第2円柱状コロ22A、22Bを滑動可能に形成されていているため、上述した調整部材50の操作による回転移動が妨げられることなく、記録ヘッド10が4つのコロ21A、21B、22A、22Bによってバランス良く支持されることになる。
また、4つのコロ21A、21B、22A、22Bは、長手方向一端側の短手方向一端側、長手方向一端側の短手方向他端側、長手方向他端側の短手方向一端側、長手方向他端側の短手方向他端側の4箇所にバランス良く配置されているため、装置が小型化されることになる。
【0028】
ここで、
図5を参照して、溝付コロ21A、21Bと溝付レール11との嵌合状態について説明する。
V字状の溝が形成された溝付コロ21A、21Bは、2つの円錐を小径側の先端を合わせたような形状であって、
図5(C)に示すように、V字状の突起が形成された溝付レール11に対して線接触している。そのため、
図5(A)に示すように、記録ヘッド10が長手方向に対して傾斜して、溝付コロ21A、21Bに対して溝付レール11が相対的に傾斜しても、その線接触した状態はほとんど変化しない。そのため、溝付コロ21A、21Bに対して溝付レール11が浮くようなことはない。すなわち、記録ヘッド10の傾斜方向の姿勢に関わらず、記録ヘッド10は4つのコロ21A、21B、22A、22Bによって浮きなく支持されることになる。
【0029】
ここで、本実施の形態において、第2支持部材20と調整部材50とは、記録ヘッド10の装着方向の手前側に対応する位置に設置されている。
具体的に、記録ヘッド10は、画像形成装置1の装着方向手前側に設置された開閉ドアを開けた状態で、操作者によって、装着方向手前側から取り出されたり、装着方向奥側に向けて装着されたりする。そして、調整部材50は、その開閉ドアを開けた状態で、操作者の側に露呈するように配置されている。また、第2支持部材20は画像形成装置1の装着方向手前側に設置されて、第1支持部材19は画像形成装置1の装着方向奥側に設置されている。
このような構成により、操作者は、本体ドアを開放した状態で、調整部材50を操作して、記録ヘッド10の傾き調整をスムーズにおこなうことができる。
【0030】
<変形例>
図6は、変形例として、4つのアレイ式の記録ヘッド10Y、10M、10C、10Kが白矢印で示すシート搬送方向に配列された状態を上方から示している。
図6に示すアレイ式の記録ヘッド10Y、10M、10C、10Kは、1つの記録ヘッドに複数のヘッド110(
図6の例では11個のヘッド110である。)が並設されている点が、シート幅以上の幅の1つのヘッドからなる単一式の6つの記録ヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2を用いた本実施の形態のものと異なる。
このようにアレイ式の記録ヘッド10Y、10M、10C、10Kに対しても、本実施の形態のものと同様の記録ヘッド位置調整機構を用いることで、装置が大型化することなく、記録ヘッド10Y、10M、10C、10Kの位置を簡単に調整することができる。
なお、
図6は、4つの記録ヘッド10Y、10M、10C、10Kのうち、マゼンタ用の記録ヘッド10Mを反時計方向に回転調整して、黒色用の記録ヘッド10Kを時計方向に回転調整している状態を示している。
【0031】
以上説明したように、本実施の形態における記録ヘッド位置調整機構(画像形成装置1)は、記録ヘッド10の長手方向一端側を支持する第1支持部材19と、記録ヘッド10の長手方向他端側を支持する第2支持部材20と、が設けられている。さらに、第1支持部材19に対して第2支持部材20を長手方向に交差する方向に移動させることで、記録ヘッド10の傾きを調整する調整部材50が設けられている。
これにより、装置が大型化することなく、記録ヘッド10の位置を簡単に調整することができる。
【0032】
なお、本実施の形態では、6つの記録ヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2が設置された画像形成装置1に対して本発明を適用したが、記録ヘッドの数はこれに限定されることはない。
また、本実施の形態では、複数の記録ヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2を搬送ドラム2の外周面に沿うように放射状(曲面状)に並設したが、シートPが平面状に搬送される場合などには、複数の記録ヘッドをその搬送面に沿うように平面状に並設することもできる。
そして、それらのような場合であっても、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0033】
また、本実施の形態において、第1、第2支持部材19、20、ベースフレーム30.側方フレーム31、32などからなる記録ヘッド位置調整機構と、記録ヘッド10と、をユニット化して記録ヘッドモジュールを形成することもできる。その場合、その記録ヘッドモジュールの単位で、画像形成装置1に対して着脱されることになる。
さらに、その場合に、複数の記録ヘッド位置調整機構と複数の記録ヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2とがユニット化された記録ヘッドモジュールとすることもできる。
そして、それらのような場合であっても、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0034】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 画像形成装置(インクジェットプリンタ)、
2 搬送ドラム、
10、10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2 記録ヘッド、
11 溝付レール(第1滑動部、第1レール)、
12 平面状レール(第2滑動部、第2レール)、
19 第1支持部材、
20 第2支持部材、
21A 第1溝付コロ(第1回転体、一端側第1支持部)、
21B 第2溝付コロ(第3回転体、他端側第1支持部)、
22A 第1円柱状コロ(第2回転体、一端側第2支持部)、
22B 第2円柱状コロ(第4回転体、他端側第2支持部)、
50 調整部材、
55 固定部材、
P シート。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】