(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】配線部品
(51)【国際特許分類】
H02G 3/32 20060101AFI20241016BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20241016BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H02G3/32
H02G3/30
H02G3/04
(21)【出願番号】P 2021014995
(22)【出願日】2021-02-02
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 範行
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-183486(JP,A)
【文献】米国特許第05941483(US,A)
【文献】特開2018-207605(JP,A)
【文献】特開2014-003169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H02G 3/30
H02G 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の並び方向に並ぶ複数の電線と
、
樹脂成形体である一対の樹脂部材を有し、前記一対の樹脂部材によって前記複数の電線を保持するホルダと
、
を備えた配線部品であって、
前記一対の樹脂部材は、前記複数の電線の長手方向の一部を前記並び方向に対して垂直な垂直方向に挟む
挟持部をそれぞれ有し、
前記一対の樹脂部材のぞれぞれの前記挟持部は、前記複数の電線を収容する複数の溝部を有し、
前記一対の樹脂部材のうち一方の樹脂部材の前記挟持部は、前記複数の溝部の間に凸部を有し、
前記一対の樹脂部材のうち他方の樹脂部材の前記挟持部は、前記複数の溝部の間に凹部を有し、
前記凸部が前記凹部に嵌合しており、
前記凸部は、前記複数の溝部に沿って前記一方の樹脂部材の前記挟持部の略全長にわたって延在しており、
前記凹部は、前記複数の溝部に沿って前記他方の樹脂部材の前記挟持部の略全長にわたって延在している、
配線部品。
【請求項2】
前記一対の樹脂部材は、複数の
前記挟持部と前記複数の
前記挟持部を連結する連結部とをそれぞれ有し、
前記一対の樹脂部材のそれぞれの前記複数の
前記挟持部が前記複数の電線の長手方向の一部を異なる位置で挟持し、
前記複数の
前記挟持部の間では、前記複数の電線の間に前記連結部が介在している、
請求項
1に記載の配線部品。
【請求項3】
前記一方の樹脂部材の前記連結部と
前記他方の樹脂部材の前記連結部とが互いに接触して前記垂直方向に並び、前記複数の
前記挟持部の間における前記複数の電線を仕切る壁部を形成しており、
前記垂直方向における前記壁部の幅が、前記垂直な方向における前記複数の電線のそれぞれの太さよりも広い、
請求項
2に記載の配線部品。
【請求項4】
前記垂直方向における前記壁部の幅が、前記一対の樹脂部材のそれぞれの前記複数の
前記挟持部を前記垂直方向に重ね合わせた厚み以下である、
請求項
3に記載の配線部品。
【請求項5】
前記ホルダは、前記一対の樹脂部材を覆って一体化す
るように成形されたモールド樹脂部材を有する、
請求項1乃至
4の何れか1項に記載の配線部品。
【請求項6】
前記一対の樹脂部材は、前記複数の
前記挟持部における前記複数の電線の長手方向の端部に、前記モールド樹脂部材の成形時における溶融樹脂の流れを堰き止める突起を有している、
請求項2乃至4の何れか1項に従属する請求項
5に記載の配線部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電線をホルダに保持してなる配線部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の並び方向に並ぶ複数の電線を一括して保持する樹脂製のホルダが知られている。本出願人は、このようなホルダとして、特許文献1に記載のものを提案している。
【0003】
特許文献1に記載のホルダ(ケーブルホルダ)は、樹脂からなる一対の保持部材を組み合わせて構成されている。一対の保持部材のそれぞれは、複数の電線の並び方向に延在する平面と、この平面から窪むように形成された複数の溝部とを有している。また、一対の保持部材は、互いの平面同士が対向するように配置され、それぞれの溝部同士を組み合わせてなる保持孔に複数の電線がそれぞれ挿通されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように一対の樹脂部材を組み合わせてなるホルダを、例えば電動モータの巻線に電流を供給するための複数の電線を保持するために用いる場合には、これらの電線の間での部分放電を防ぐべく、要求されるPDIV(Partial Discharge Inception Voltage:部分放電開始電圧)が満たされる程度の十分な電線間の沿面距離を確保する必要がある。
【0006】
特許文献1に記載されたホルダでは、上記の平面における複数の溝部の間の距離が電線間の沿面距離となるため、この沿面距離を十分に確保するためには、複数の電線の並び方向における一対の保持部材の長さを長くして電線同士の間隔を広げる必要があり、ホルダが長大化してしまう。このため、例えば省スペース化が求められる自動車の駆動源としての電動モータに電流を供給する電線をホルダにより保持する場合には、複数の電線及びホルダの設置場所の確保が困難となるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、複数の電線同士の間隔を抑制しながらも、これら複数の電線の間で放電が発生することを防ぐことが可能な配線部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、所定の並び方向に並ぶ複数の電線と、樹脂成形体である一対の樹脂部材を有し、前記一対の樹脂部材によって前記複数の電線を保持するホルダと、を備えた配線部品であって、前記一対の樹脂部材は、前記複数の電線の長手方向の一部を前記並び方向に対して垂直な垂直方向に挟む挟持部をそれぞれ有し、前記一対の樹脂部材のぞれぞれの前記挟持部は、前記複数の電線を収容する複数の溝部を有し、前記一対の樹脂部材のうち一方の樹脂部材の前記挟持部は、前記複数の溝部の間に凸部を有し、前記一対の樹脂部材のうち他方の樹脂部材の前記挟持部は、前記複数の溝部の間に凹部を有し、前記凸部が前記凹部に嵌合しており、前記凸部は、前記複数の溝部に沿って前記一方の樹脂部材の前記挟持部の略全長にわたって延在しており、前記凹部は、前記複数の溝部に沿って前記他方の樹脂部材の前記挟持部の略全長にわたって延在している、配線部品を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る配線部品によれば、複数の電線同士の間隔を抑制しながらも、これら複数の電線の間で放電が発生することを防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は、本発明の実施の形態に係る配線部品を示す外観斜視図である。(b)は、モールド樹脂部材が形成されていない状態の下側リテーナ及び上側リテーナを複数の電線と共に示す斜視図である。(c)は、下側リテーナ及び複数の電線を示している。
【
図2】(a)は、
図1(a)のA-A線断面図である。(b)は、
図1(b)のB-B線断面図である。(c)は、
図1(c)のC-C線断面図である。
【
図3】(a)は、下側リテーナを示す斜視図であり、(b)は、(a)のD-D線断面図である。
【
図4】(a)は、上側リテーナを示す斜視図であり、(b)は、(a)のE-E線断面図である。
【
図5】(a)は、ホルダの第2のブロックにおける第1及び第2の電線の周辺部を、第1及び第2の電線の長手方向に垂直な断面で示す断面図である。(b)は、第1及び第2の電線及び壁部を示す断面図である。
【
図6】(a)及び(b)は、比較例に係る断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
図1(a)は、本発明の実施の形態に係る配線部品を示す外観斜視図である。この配線部品1は、例えば自動車に搭載され、自動車の走行のための駆動力を発生する電動モータ(三相交流モータ)に電流を供給するために用いられる。なお、以下の説明では、説明の便宜上、「上」及び「下」の語を用いるが、これらは必ずしも配線部品1の使用時における配置を特定するものではない。
【0012】
(配線部品1の全体構成)
この配線部品1は、所定の並び方向に並ぶ複数の電線11~13と、これらの電線11~13を保持するホルダ2とを備えている。ホルダ2は、複数の電線11~13の長手方向に沿って並ぶ第1乃至第3のブロック21~23と、複数の電線11~13の間に介在して第1乃至第3のブロック21~23を連結する壁部241,242,251,252とを一体に有している。
【0013】
また、ホルダ2は、複数の電線11~13の長手方向の一部を挟む一対の樹脂部材としての下側リテーナ3及び上側リテーナ4と、下側リテーナ3及び上側リテーナ4を覆って一体化するするように成形されたモールド樹脂部材5とによって構成されている。
【0014】
下側リテーナ3及び上側リテーナ4は、射出成形された樹脂成形体であり、複数の電線11~13の長手方向の一部を、この並び方向に対して垂直な垂直方向に挟んでいる。下側リテーナ3、上側リテーナ4、及びモールド樹脂部材5の樹脂材料としては、例えば耐熱性及び電気絶縁性に優れたPPS(ポリフェニレンサルファイド)等を好適に用いることができる。
【0015】
図1(b)は、モールド樹脂部材5が形成されていない状態の下側リテーナ3及び上側リテーナ4を電線11~13と共に示している。
図1(c)は、さらに上側リテーナ4の図示を省略し、下側リテーナ3と電線11~13を示している。
図2(a)は、
図1(a)のA-A線断面図である。
図2(b)は、
図1(b)のB-B線断面図であり、
図2(c)は、
図1(c)のC-C線断面図である。
図3(a)は、下側リテーナ3を示す斜視図であり、
図3(b)は、
図3(a)のD-D線断面図である。
図4(a)は、上側リテーナ4を示す斜視図であり、
図4(b)は、
図4(a)のE-E線断面図である。
【0016】
電線11~13は、エナメル被覆された単線であり、複数箇所で塑性変形して屈曲されている。また、電線11~13は、長手方向に対して垂直な断面が円形状の丸線であり、電線11~13の太さ(直径)は共通である。電線11~13の断面の直径は、例えば1mm以上である。電線11~13のそれぞれの一端部は、例えば三相交流モータのU相巻線、V相巻線、及びW相巻線にそれぞれ接続される。電線11~13のそれぞれの他端部は、例えば端子台に固定され、三相交流モータに相電流を供給するインバータに接続される。なお、以下の説明において、電線11~13のそれぞれを、第1の電線11、第2の電線12、及び第3の電線13という場合がある。
【0017】
(下側リテーナ3の構成)
下側リテーナ3は、第1乃至第3の挟持部31~33と、第1乃至第3の挟持部31~33を電線11~13の長手方向に沿って連結する第1及び第2の連結部34,35とを一体に有している。
【0018】
第1の挟持部31は、第1乃至第3の電線11~13のそれぞれの一部を収容する第1乃至第3の溝部310a,310b,310cが形成された基体部310を有している。基体部310には、第1の溝部310aと第2の溝部310bとの間、及び第2の溝部310bと第3の溝部310cとの間に、第1乃至第3の溝部310a,310b,310cと平行に延在する凹部311,312がそれぞれ形成されている。また、第1の挟持部31は、電線11~13の長手方向の両端部に、モールド樹脂部材5の成形時における溶融樹脂の流れを堰き止める突起313,314を有している。
【0019】
第2及び第3の挟持部32,33は、第1の挟持部31と同様に構成されている。すなわち、第2の挟持部32は、第1乃至第3の電線11~13のそれぞれの一部を収容する第1乃至第3の溝部320a,320b,320cが形成された基体部320と、モールド樹脂部材5の成形時における溶融樹脂の流れを堰き止める突起323,324とを一体に有しており、第1の溝部320aと第2の溝部320bとの間、及び第2の溝部320bと第3の溝部320cとの間に、凹部321,322がそれぞれ形成されている。
【0020】
また、第3の挟持部33は、第1乃至第3の電線11~13のそれぞれの一部を収容する第1乃至第3の溝部330a,330b,330cが形成された基体部330と、モールド樹脂部材5の成形時における溶融樹脂の流れを堰き止める突起333,334とを一体に有しており、第1の溝部330aと第2の溝部330bとの間、及び第2の溝部330bと第3の溝部330cとの間に、凹部331,332がそれぞれ形成されている。
【0021】
第1の連結部34は、第1の電線11と第2の電線12との間に介在する連結板341、及び第2の電線12と第3の電線13との間に介在する連結板342からなり、第1の挟持部31と第2の挟持部32とを連結している。また、第2の連結部35は、第1の電線11と第2の電線12との間に介在する連結板351、及び第2の電線12と第3の電線13との間に介在する連結板352からなり、第2の挟持部32と第3の挟持部33とを連結している。
【0022】
(上側リテーナ4の構成)
上側リテーナ4は、第1乃至第3の挟持部41~43と、第1乃至第3の挟持部41~43を電線11~13の長手方向に沿って連結する第1及び第2の連結部44,45とを一体に有している。
【0023】
第1の挟持部41は、第1乃至第3の電線11~13のそれぞれの一部を収容する第1乃至第3の溝部410a,410b,410cが形成された基体部410を有している。基体部410には、第1の溝部410aと第2の溝部410bとの間、及び第2の溝部410bと第3の溝部410cとの間に、第1乃至第3の溝部410a,410b,410cと平行に延在する凸部411,412がそれぞれ形成されている。また、第1の挟持部41は、電線11~13の長手方向の両端部に、モールド樹脂部材5の成形時における溶融樹脂の流れを堰き止める突起413,414を有している。
【0024】
第2及び第3の挟持部42,43は、第1の挟持部41と同様に構成されている。すなわち、第2の挟持部42は、第1乃至第3の電線11~13のそれぞれの一部を収容する第1乃至第3の溝部420a,420b,420cが形成された基体部420と、モールド樹脂部材5の成形時における溶融樹脂の流れを堰き止める突起423,424とを一体に有しており、第1の溝部420aと第2の溝部420bとの間、及び第2の溝部420bと第3の溝部420cとの間に、凸部421,422がそれぞれ形成されている。
【0025】
また、第3の挟持部43は、第1乃至第3の電線11~13のそれぞれの一部を収容する第1乃至第3の溝部430a,430b,430cが形成された基体部430と、モールド樹脂部材5の成形時における溶融樹脂の流れを堰き止める突起433,434とを一体に有しており、第1の溝部430aと第2の溝部430bとの間、及び第2の溝部430bと第3の溝部430cとの間に、凸部431,432がそれぞれ形成されている。
【0026】
第1の連結部44は、第1の電線11と第2の電線12との間に介在する連結板441、及び第2の電線12と第3の電線13との間に介在する連結板442からなり、第1の挟持部41と第2の挟持部42とを連結している。また、第2の連結部45は、第1の電線11と第2の電線12との間に介在する連結板451、及び第2の電線12と第3の電線13との間に介在する連結板452からなり、第2の挟持部42と第3の挟持部43とを連結している。
【0027】
(下側リテーナ3と上側リテーナ4とを組み合わせた構成)
下側リテーナ3及び上側リテーナ4のそれぞれの第1の挟持部31,41、下側リテーナ3及び上側リテーナ4のそれぞれの第2の挟持部32,42、及び下側リテーナ3及び上側リテーナ4のそれぞれの第3の挟持部33,43は、第1乃至第3の電線11~13の長手方向の一部を異なる位置で挟持する。これにより、ホルダ2に保持された部分の第1乃至第3の電線11~13の間隔が一定に保たれる。
【0028】
上側リテーナ4の凸部411,421,431は、第1の電線11と第2の電線12との間で、下側リテーナ3の凹部311,321,331にそれぞれ嵌合している。また、上側リテーナ4の凸部412,422,432は、第2の電線12と第3の電線13との間で、下側リテーナ3の凹部312,322,332にそれぞれ嵌合している。
【0029】
第1の挟持部31,41と第2の挟持部32,42との間では、第1乃至第3の電線11~13の間に、下側リテーナ3の第1の連結部34の連結板341,342、及び上側リテーナ4の第1の連結部44の連結板441,442がそれぞれ介在する。また、第2の挟持部32,42と第3の挟持部33,43との間では、第1乃至第3の電線11~13の間に、下側リテーナ3の第2の連結部35の連結板351,352、及び上側リテーナ4の第2の連結部45の連結板451,452がそれぞれ介在する。
【0030】
第1乃至第3の電線11~13は、第1の挟持部31,41と第2の挟持部32,42との間、及び第2の挟持部32,42と第3の挟持部33,43との間で屈曲されている。第1の連結部34,44の連結板341,342,441,442は、第1の挟持部31,41と第2の挟持部32,42との間で第1乃至第3の電線31~33に沿うように湾曲している。また、第2の連結部35,45の連結板351,352,451,452は、第2の挟持部32,42と第3の挟持部33,43との間で第1乃至第3の電線31~33に沿うように湾曲している。
【0031】
下側リテーナ3の第1の連結部34の連結板341と上側リテーナ4の第1の連結部44の連結板441とは、電線11~13の並び方向に対する垂直方向に沿って互いに接触して並び、壁部241(
図1(a)及び(b)に示す)を構成する。同様に、下側リテーナ3の第1の連結部34の連結板342と上側リテーナ4の第1の連結部44の連結板442とは、互いに接触して垂直方向に並び、壁部242を構成する。壁部241は、第1の挟持部31,41と第2の挟持部32,42との間の第1の電線11と第2の電線12とを仕切り、壁部242は、第1の挟持部31,41と第2の挟持部32,42との間の第2の電線12と第3の電線13とを仕切る。
【0032】
また、下側リテーナ3の第2の連結部35の連結板351と上側リテーナ4の第2の連結部45の連結板451とは、電線11~13の並び方向に対する垂直方向に沿って互いに接触して並び、壁部251を構成する。同様に、下側リテーナ3の第2の連結部35の連結板352と上側リテーナ4の第2の連結部45の連結板452とは、互いに接触して垂直方向に並び、壁部252を構成する。壁部251は、第2の挟持部32,42と第3の挟持部33,43との間の第1の電線11と第2の電線12とを仕切り、壁部252は、第2の挟持部32,42と第3の挟持部33,43との間の第2の電線12と第3の電線13とを仕切る。
【0033】
モールド樹脂部材5は、
図1(a)に示すように、下側リテーナ3の第1の挟持部31における基体部310及び上側リテーナ4の第1の挟持部41における基体部410を囲う第1の囲繞部51と、下側リテーナ3の第2の挟持部32における基体部320及び上側リテーナ4の第2の挟持部42における基体部420を囲う第2の囲繞部52と、下側リテーナ3の第3の挟持部33における基体部330及び上側リテーナ4の第3の挟持部43における基体部430を囲う第3の囲繞部53とを含んで構成されている。
【0034】
モールド樹脂部材5は、
図1(b)に示すように第1乃至第3の電線11~13と下側リテーナ3及び上側リテーナ4とを組み合わせた組立体10を金型内に配置し、この金型のキャビティに溶融樹脂を注入することにより形成される。下側リテーナ3には、キャビティ内での固定のための複数のボス部300が設けられている。
図2(b)及び(c)では、このうち一つのボス部300を図示している。また、
図1(a)及び(b)に示すように、上側リテーナ4には、キャビティ内での固定のための複数のボス部400が設けられている。
【0035】
ホルダ2の第1のブロック21は、下側リテーナ3及び上側リテーナ4の第1の挟持部31,41、ならびにモールド樹脂部材5の第1の囲繞部51によって構成されている。ホルダ2の第2のブロック22は、下側リテーナ3及び上側リテーナ4の第1の挟持部32,42、ならびにモールド樹脂部材5の第2の囲繞部52によって構成されている。また、ホルダ2の第3のブロック23は、下側リテーナ3及び上側リテーナ4の第3の挟持部33,43、ならびにモールド樹脂部材5の第3の囲繞部53によって構成されている。
【0036】
(電線11~13の間の沿面距離)
図5(a)は、第2のブロック22における第1及び第2の電線11,12の周辺部を、第1及び第2の電線11,12の長手方向に垂直な断面で示す断面図である。
図5(a)では、下側リテーナ3の基体部320と上側リテーナ4の基体部420との間に僅かな隙間が形成された場合について図示している。このような隙間は、例えば下側リテーナ3及び上側リテーナ4の成形時に発生する歪などによって発生する場合がある。
【0037】
下側リテーナ3の凹部321、及び上側リテーナ4の凸部421は、
図5(a)に示す断面において矩形状である。下側リテーナ3の基体部320における上側リテーナ4の基体部420との対向面320d、及び上側リテーナ4の基体部420における下側リテーナ3の基体部320との対向面420dは、第1及び第2の電線11,12の並び方向(
図5(a)の左右方向)に対して平行な平面である。
【0038】
下側リテーナ3の凹部321は、下側リテーナ3の対向面320dから第1及び第2の電線11,12の並び方向に対して垂直に窪んで形成されている。上側リテーナ4の凸部421は、上側リテーナ4の対向面420dから第1及び第2の電線11,12の並び方向に対して垂直に突出して形成されている。
【0039】
凹部321の深さD
1は、凸部421の高さH
2よりも深く、凹部321の幅W
11は、凸部421の幅W
21よりも狭く形成されている。
図5(a)では、下側リテーナ3の対向面320dにおける第1の溝部320aと凹部321との間の長さをL
11で示し、第2の溝部320bと凹部321との間の長さをL
12で示している。また、
図5(a)では、上側リテーナ4の対向面420dにおける第1の溝部420aと凸部421との間の長さをL
21で示し、第2の溝部420bと凸部421との間の長さをL
22で示している。
【0040】
下側リテーナ3における第1の電線11と第2の電線12との間の沿面距離をL1とすると、L1は下記式(1)で表される。
L1=L11+W11+L12+D1×2 ・・・(1)
【0041】
また、上側リテーナ4における第1の電線11と第2の電線12との間の沿面距離をL2とすると、L2は下記式(2)で表される。
L2=L21+W21+L22+H2×2 ・・・(2)
【0042】
ここで、凹部321の深さD1は、凸部421の高さH2よりも深いため、上側リテーナ4における沿面距離L2は、下側リテーナ3における沿面距離L1よりも短い。また、第1の電線11と第2の電線12との間に発生し得る最大の電位差において第1の電線11と第2の電線12との間で部分放電が発生することを防ぐために最低限必要な距離をD01とすると、上側リテーナ4及び下側リテーナ3における沿面距離L2,L1は、距離D01よりも長い。
【0043】
なお、詳細な図示は省略しているが、第2のブロック22における第2及び第3の電線12,13の周辺部や、第1及び第3のブロック21,23における第1乃至第3の電線11~13の周辺部も、同様に構成されている。
【0044】
図5(b)は、第2のブロック22と第3のブロック23との間における第1及び第2の電線11,12、及び第2のブロック22と第3のブロック23とを連結する壁部251を、第1及び第2の電線11,12の長手方向に垂直な断面で示す断面図である。壁部251は、前述のように、下側リテーナ3の第2の連結部35の連結板351と上側リテーナ4の第2の連結部45の連結板451によって構成されており、これらの連結板351,451が互いの当接面351a,451aにおいて接触している。本実施の形態では、これらの当接面351a,451aが第1及び第2の電線11,12の並び方向に平行な平面である。なお、下側リテーナ3の連結板351の当接面351aと上側リテーナ4の連結板451の当接面451aとは、例えば下側リテーナ3と上側リテーナ4とを組み合わせて組立体10を構成した際に互いに弾接することが望ましい。
【0045】
第1及び第2の電線11,12の並び方向に対する垂直方向(
図5(b)の上下方向)における壁部251の幅Wは、第1及び第2の電線11,12の太さ(直径D)よりも広い。また、壁部251の幅Wは、下側リテーナ3の第1乃至第3の挟持部31~33と上側リテーナ4の第1乃至第3の挟持部41~43とを垂直方向に重ね合わせた厚みT(
図2(b)参照)以下である。
【0046】
また、
図5(b)では、垂直方向における第1の電線11の下端部11aと第2の電線12の下端部12aとを結ぶ下側直線La、及び垂直方向における第1の電線11の上端部11bと第2の電線12の上端部12bとを結ぶ上側直線Lbを、それぞれ二点鎖線で示している。壁部251は、垂直方向における一端部が下側直線Laよりも下方に突出しており、垂直方向における他端部が上側直線Lbよりも上方に突出している。
【0047】
壁部251の幅方向における下端面251aを経由する第1の電線11と第2の電線12との間の最短距離をL3とすると、L3は下記式(3)で表される。
L3=D11+T1+D12 ・・・(3)
ただし、D11は、下端面251aにおける第1の電線11側の端部と第1の電線11との間の最短距離、T1は、第1及び第2の電線11,12の並び方向における下端面251aの長さ、D12は、下端面251aにおける第2の電線12側の端部と第2の電線12との間の最短距離である。
【0048】
また、壁部251の幅方向における上端面251bを経由する第1の電線11と第2の電線12との間の最短距離をL4とすると、L4は下記式(4)で表される。
L4=D21+T2+D22 ・・・(4)
ただし、D21は、上端面251bにおける第1の電線11側の端部と第1の電線11との間の最短距離、T2は、第1及び第2の電線11,12の並び方向における上端面251bの長さ、D22は、上端面251bにおける第2の電線12側の端部と第2の電線12との間の最短距離である。
【0049】
第1の電線11と第2の電線12との間に発生し得る最大の電位差において壁部251を超えて第1の電線11と第2の電線12との間で部分放電が発生することを防ぐために最低限必要な距離をD02とすると、最短距離L3,L4は、距離D02よりも長い。
【0050】
なお、詳細な図示は省略しているが、他の壁部241,242,252も同様に構成されている。
【0051】
(比較例)
次に、比較例として、
図5(a)に示す凹部321及び凸部421を設けることなく第1の電線11と第2の電線12との間の距離を上記のD
01とした場合の断面図を
図6(a)に示す。また、
図5(b)に示す壁部251を設けることなく第1の電線11と第2の電線12との間の距離を上記のD
02とした場合の断面図を
図6(b)に示す。
【0052】
図6(a)及び(b)に示すように、凹部321及び凸部421や壁部251を設けない場合には、部分放電を防ぐために第1の電線11と第2の電線12を広く開けることが必要となる。
【0053】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した実施の形態によれば、複数の電線11~13同士の間隔を抑制しながらも、これら複数の電線11~13の間で放電が発生することを防ぐことが可能となる。このため、配線部品1の配置スペースを小さくすることができ、例えば配線部品1が自動車の駆動源としての電動モータに電流を供給するために用いられる場合の車両搭載性が高められる。
【0054】
また、上記の実施の形態では、壁部251の幅Wが、下側リテーナ3の第1乃至第3の挟持部31~33と上側リテーナ4の第1乃至第3の挟持部41~43とを垂直方向に重ね合わせた厚みT以下であるので、ホルダ2の最大厚さをこの厚みTに抑えることができ、配線部品1を小型化できる。
【0055】
また、上記の実施の形態では、下側リテーナ3の基体部310,320,330と上側リテーナ4の基体部410,420,430とが、モールド樹脂部材5の第1乃至第3の囲繞部51,52,53によって囲われて一体化されているので、下側リテーナ3と上側リテーナ4とが強固に固定され、複数の電線11~13の保持剛性を高めることができると共に、耐震動性も向上する。
【0056】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0057】
[1]所定の並び方向に並ぶ複数の電線(31~33)と前記複数の電線(31~33)を保持するホルダ(2)とを備えた配線部品(1)であって、前記ホルダ(2)は、前記複数の電線(31~33)の長手方向の一部を前記並び方向に対して垂直な垂直方向に挟む一対の樹脂部材(下側リテーナ3及び上側リテーナ4)を有し、前記一対の樹脂部材(3,4)が前記複数の電線(31~33)の間で凹凸嵌合している、配線部品(1)。
【0058】
[2]前記一対の樹脂部材(3,4)は、前記複数の電線(31~33)を収容する複数の溝部(310a,310b,310c,320a,320b,320c,330a,330b,330c、及び410a,410b,410c,420a,420b,420c,430a,430b,430c)をそれぞれ有し、前記一対の樹脂部材(3,4)のうち一方の樹脂部材(4)が前記複数の溝部(410a,410b,410c,420a,420b,420c,430a,430b,430c)の間に凸部(411,412,421,422,431,432)を有し、前記一対の樹脂部材(3,4)のうち他方の樹脂部材(3)が前記複数の溝部(310a,310b,310c,320a,320b,320c,330a,330b,330c)の間に凹部(311,312,321,322,331,332)を有し、前記凸部(411,412,421,422,431,432)が前記凹部(311,312,321,322,331,332)に嵌合している、上記[1]に記載の配線部品(1)。
【0059】
[3]前記一対の樹脂部材(3,4)は、複数の挟持部(31~33、及び41~43)と前記複数の挟持部(31~33、及び41~43)を連結する連結部(34,35、及び44,45)とをそれぞれ有し、前記一対の樹脂部材(3,4)のそれぞれの前記複数の挟持部(31~33、及び41~43)が前記複数の電線(11~13)の長手方向の一部を異なる位置で挟持し、前記複数の挟持部(31~33、及び41~43)の間では、前記複数の電線(11~13)の間に前記連結部(34,35、及び44,45)が介在している、上記[1]又は[2]に記載の配線部品(1)。
【0060】
[4]前記一対の樹脂部材(3,4)のうち一方の樹脂部材(3)の前記連結部(34,35)と他方の樹脂部材(4)の前記連結部(44,45)とが互いに接触して前記垂直方向に並び、前記複数の挟持部(31~33、及び41~43)の間における前記複数の電線(11~13)を仕切る壁部(241,242,251,252)を形成しており、前記垂直方向における前記壁部(241,242,251,252)の幅が、前記垂直な方向における前記複数の電線(11~13)のそれぞれの太さ(直径D)よりも広い、上記[3]に記載の配線部品(1)。
【0061】
[5]前記垂直方向における前記壁部(241,242,251,252)の幅が、前記一対の樹脂部材(3,4)のそれぞれの前記複数の挟持部(31~33、及び41~43)を前記垂直方向に重ね合わせた厚み(T)以下である、上記[4]に記載の配線部品(1)。
【0062】
[6]前記ホルダ(2)は、前記一対の樹脂部材(3,4)を覆って一体化するするように成形されたモールド樹脂部材(5)を有する、上記[1]乃至[5]の何れか1つに記載の配線部品(1)。
【0063】
[7]前記一対の樹脂部材(3,4)は、前記挟持部(31~33、及び41~43)における前記複数の電線(11~13)の長手方向の端部に、前記モールド樹脂部材(5)の成形時における溶融樹脂の流れを堰き止める突起(313,314,323,324,333,334,413,414,423,424,433,434)を有している、上記[6]に記載の配線部品(1)。
【0064】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0065】
また、上記の実施の形態では、配線部品1が3本の電線11~13を有する場合について説明したが、電線の数はこれに限らず、2本でもよいし、4本以上でもよい。電線の断面形状も円形に限らず、電線の断面が矩形状であってもよい。
【0066】
また、上記の実施の形態では、凹部321及び凸部421が断面矩形状である場合について説明したが、これに限らず、下側リテーナ3及び上側リテーナ4に例えば断面三角形状あるいは断面台形状の凹部及び凸部を設けてもよい。
【0067】
また、上記の実施の形態では、
図5(a)に示すように、第1及び第2の電線11,12の並び方向に対して平行な平面である対向面320d,420dが凹部321及び凸部421の近傍に設けられた場合について説明したが、これらの対向面320c,420cが設けられておらず、第1及び第2の電線11,12の間の全体が凹部又は凸部であってもよい。
【0068】
また、上記の実施の形態では、
図5(b)に示すように、下側リテーナ3の連結板351と上側リテーナ4の連結板451とが平坦な当接面351a,451aで互いに接触する場合について説明したが、これに限らず、これらの連結板351,451を凹凸嵌合させてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…配線部品
11…第1の電線
12…第2の電線
13…第3の電線
2…ホルダ
241,242,251,252…壁部
3…下側リテーナ(樹脂部材)
4…上側リテーナ(樹脂部材)
31,41…第1の挟持部
32,42…第2の挟持部
33,43…第3の挟持部
310a,310b,310c,320a,320b,320c,330a,330b,330c,410a,410b,410c,420a,420b,420c,430a,430b,430c…第1乃至第3の溝部
311,312,321,322,331,332…凹部
411,412,421,422,431,432…凸部
313,314,323,324,333,334,413,414,423,424,433,434…突起
34,44…第1の連結部
35,45…第2の連結部
5…モールド樹脂部材