(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリウレタンを有する低塩基価の製造物
(51)【国際特許分類】
C08L 75/04 20060101AFI20241016BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20241016BHJP
C08K 5/521 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C08L75/04
C08K5/3492
C08K5/521
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022026007
(22)【出願日】2022-02-22
(62)【分割の表示】P 2020014825の分割
【原出願日】2015-05-13
【審査請求日】2022-03-15
(32)【優先日】2014-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ヘンツェ,オリファー シュテッフェン
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-534725(JP,A)
【文献】特開2014-084435(JP,A)
【文献】特開平07-048509(JP,A)
【文献】特表2017-515954(JP,A)
【文献】特表2011-512449(JP,A)
【文献】特表2009-519367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)少なくとも次の出発材料:(a)イソシアネート、(b)イソシアネートに対して反応性であり、500g/mol~100×10
3g/molの数平均モル質量を有し、ポリオールである物質、ならびにさらに、(c)連鎖延長剤および/または(d)触媒から生成される熱可塑性ポリウレタン、
B)他の出発材料として、
(e)生成方法の間に前記熱可塑性ポリウレタンに加えられ、したがって前記熱可塑性ポリウレタン中に含まれる、
かつ/または
前記熱可塑性ポリウレタンに加えて製造物中に含まれる、
さらなる物質および/または補助物質
を含む製造物であって、
前記
他の出発材料の少なくとも1つは、フェノキシ基または前記フェノキシ基の誘導体を含み、
前記製造物の塩基価、または前記製造物中に含まれる前記熱可塑性ポリウレタンおよび存在する全ての他の出発材料の混合物の塩基価が、1未満であり、
前記フェノキシ基または前記フェノキシ基の誘導体が、難燃剤である補助物質および/または
難燃剤であるさらなる物質(e)の構成物であり、前記難燃剤が、イソプロピル化されたトリフェニルホスフェート(ITP)、異なるイソプロピル化度を有するモノ、ビス、およびトリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレシルホスフェート(TCP)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(BDP)、ジフェニルクレシルホスフェート(DPC)、ジフェニル2-エチルヘキシルホスフェート(DPO)、および/またはキシレノール-レゾルシノール(RDXP)から選択され、
メラミンシアヌレートが、他の補助物質および/または他のさらなる物質(e)として含まれ、且つ、
全ての前記出発材料の総水分含有率が、前記製造物中の全ての前記出発材料の全質量に対して、0.1質量%未満であり、
前記メラミンシアヌレートは、前記製造物中に20質量%~40質量%含まれ、
前記製造物中のフェノールの含量が20質量ppm未満であり、フェノールの含量が、前記製造物の全質量に対する、製造物。
【請求項2】
前記製造物の酸価、または前記製造物中に含まれる前記熱可塑性ポリウレタンおよび前記製造物中に含まれる全ての前記出発材料の混合物の酸価が、20未満である、請求項1に記載の製造物。
【請求項3】
前記フェノキシ基または前記フェノキシ基の誘導体が、
前記他の出発材料中でエステル結合を介して結合して存在する、請求項1又は2に記載の製造物。
【請求項4】
前記エステル結合が、有機ホスフェートおよび/またはホスホネートの一部分である、請求項3に記載の製造物。
【請求項5】
前記メラミンシアヌレートが、1質量%未満の過剰なメラミンを含み、過剰なシアヌル酸が、1質量%未満である、請求項1に記載の製造物。
【請求項6】
イソシアネートに対して反応性である前記物質が、ポリエーテルおよび/またはポリカーボネートである、請求項1から5のいずれか一項に記載の製造物。
【請求項7】
前記ポリエーテルが、ポリテトラヒドロフラン(PTHF)である、請求項6に記載の製造物。
【請求項8】
前記ポリテトラヒドロフラン(PTHF)の数平均モル質量が、0.5×10
3g/mol~5×10
3g/molである、請求項7に記載の製造物。
【請求項9】
全ての前記出発材料の総水分含有率が、前記製造物中の全ての前記出発材料の全質量に対して、0.05質量%未満である、請求項1から8のいずれか一項に記載の製造物。
【請求項10】
補助物質および/またはさらなる物質(e)としてポリエステルを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の製造物。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の製造物に加えて、ポリエステルをさらに含む、複合体。
【請求項12】
160℃~250℃の温度にて前記出発材料を加工して、前記製造物を得ることを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の製造物の生成のための方法。
【請求項13】
使用される前記出発材料のフェノール含量の合計が、100質量ppm未満であり、前記含量が、全ての前記出発材料の全質量に対する、請求項12に記載の製造物の生成のための方法。
【請求項14】
前記製造物中のフェノールの含量が、10質量ppm未満であり、フェノールの含量が、前記製造物の全質量に対する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から10のいずれか一項に記載の製造物から生成される、押し出された、粉末焼結された、かつ/または射出成形されたパーツ。
【請求項16】
前記パーツがポリエステルと直接接触している用途のための、請求項15に記載のパーツを使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリウレタンを含み、少なくとも1種の出発材料、好ましくは難燃剤が、フェノキシ基および/またはフェノキシ基の誘導体を含む、製造物に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノキシ基および/または対応する誘導体を含む出発材料、好ましくは難燃剤を伴う、公知の熱可塑性ポリウレタンが存在する。例として、EP0617079B1は、自己消炎性熱可塑性ポリウレタン、およびまたその生成のための方法について記載している。WO03/099896は、低い発煙性を有する熱可塑性ポリウレタンに関する。
【0003】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)、特に難燃剤、特にフェノキシ基および/または対応する誘導体を含むものにおいて使用される出発材料の多くは、非常に高い含量のフェノールまたはフェノールの誘導体を展開する。熱可塑性ポリウレタン中のフェノールおよびその誘導体、特に、フェノールは、不快な匂いをもたらし、非常に毒性であり、特に、TPU、好ましくは難燃性TPU中に存在するか、または難燃性TPUと直接接触するポリエステルの加水分解の程度を増加させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】EP0617079B1
【文献】WO03/099896
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明によって取り組む問題は、良好な微生物抵抗、僅かな匂い、低毒性、および良好な加水分解抵抗と一緒に、良好な難燃性、良好な機械的性質、特に、低い摩耗、高い引張強度、高い引張破壊ひずみ、高い引裂伝ぱ抵抗、適当な低温柔軟度を有する熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含む製造物を提供することにあり、ここで加水分解抵抗は特に、ポリエステルがTPU中に存在するか、またはTPUと接触する状況において有効であることを意図する。
【0006】
本発明によって取り組む別の問題は、TPUを含む前記製造物を生成するための適切な方法を提供し、製造物における前記有利な特性を示し、かつまたポリエステルと関連する望ましくない加水分解をもたらさないこれらのTPUを同定し、また対応する適用分野を同定することであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚いたことに、製造物または熱可塑性ポリウレタンおよび出発材料の塩基価もしくは酸価、または塩基価および酸価が、本明細書の下記で定義する特定の値を超えないとき、少なくとも1個のフェノキシ基、もしくはフェノキシ基の少なくとも1つの誘導体、好ましくは、少なくとも1個のフェノキシ基を含む出発材料、好ましくは、フェノキシ基を有する難燃剤を含む、かつ/または少なくとも1個のフェノキシ基、もしくはフェノキシ基の少なくとも1つの誘導体、好ましくは、少なくとも1個のフェノキシ基を含む出発材料、好ましくは、フェノキシ基を有する難燃剤で生成される熱可塑性ポリウレタンを含む製造物は、前記問題を有利に解決することが見出された。
【0008】
フェノキシ基という表現は、フェノキシラジカルを意味する。フェノキシ基の誘導体は、フェノキシラジカルの芳香族系が他のアリールまたはアルキル部分によって置換されている、フェノキシラジカルのこれらの誘導体であり、芳香族系上の各置換基は好ましくは、1~14個の炭素原子、好ましくは1~7個の炭素原子、より好ましくは1~3個の炭素原子、特に好ましくは1個の炭素原子を含み、置換基の数は、1、2、または3である。
【0009】
フェノキシ基の好ましい誘導体は、イソプロピルフェニル、クレシル、またはキシレノール基、および対応するラジカルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
したがって、本発明は、第一に、
A)少なくとも次の出発材料:(a)イソシアネート、(b)イソシアネートに対して反応性であり、500g/mol~100×103g/molの数平均モル質量を好ましくは有し、好ましくはポリオールである物質、ならびにさらに、他の好ましい実施形態では(c)連鎖延長剤および/または(d)触媒から生成される熱可塑性ポリウレタン、
ならびに、
B)他の出発材料(複数可)として、(e)生成方法の間に熱可塑性ポリウレタンに加えられ、したがって熱可塑性ポリウレタン中に含まれる、かつ/または熱可塑性ポリウレタンに加えて製造物中に含まれる、さらなる物質および/または補助物質、すなわち、少なくとも1種のさらなる物質および/または補助物質を含む製造物1を提供し、少なくとも1種の出発材料は、フェノキシ基および/またはフェノキシ基の誘導体、好ましくはフェノキシ基を含み、製造物の塩基価、または別の実施形態では、製造物中に含まれる熱可塑性ポリウレタンおよび全ての出発材料の混合物の塩基価は、2未満、好ましくは、1未満、より好ましくは0.5未満、より好ましくは0.3未満、さらにより好ましくは0.2未満、非常に特に好ましくは0.15未満である。熱可塑性ポリウレタンおよび製造物中に含まれる他の出発材料の製造物の塩基価は、実施例2および4におけるように決定する。
【0011】
本発明はさらに、前記製造物およびその好ましい実施形態の生成のための方法を提供し、出発材料は、160℃~250℃の温度にて加工され、製造物が得られる。本発明はまた、本発明の製造物から生成される、押し出された、粉末焼結された、かつ/または射出成形されたパーツ、ならびにパーツがポリエステルを含む、かつ/またはポリエステルと直接接触する用途のための前記パーツを使用する方法を提供する。
【0012】
本発明の製造物および対応する生成方法の利点は、通常の材料と比較して、製造物が、低減したフェノール含量および/またはフェノール誘導体の低減した含量を含み、これは関連するより低い匂いレベルを伴い、これは屋内空間、とりわけ乗り物において特に関連性があることである。より低いフェノール含量および/または低減したフェノール誘導体の含量、好ましくは、低減したフェノール含量と関連する別の要因は、さらに低減した毒性である。熱可塑性ポリウレタンを含む本発明の製造物はさらに改善された加水分解抵抗を有し、これによって特に、ポリエステルを含む製造物および/またはポリエステルと接触している製造物における僅かではない利点をこれらに与える。これらの利点は、好ましい実施形態では顕著であり、通常の材料の機械的性質と同程度の機械的性質が、非常に良好な難燃性と一緒に存在する。
【0013】
難燃性は、UL94V試験(ISBN0-7629-0082-2、UL94、Standard for Tests for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances、第5版、1996年10月29日、20mm垂直燃焼試験;V-0、V-1、またはV-2)によって決定する。難燃性の評価のための特に決定的な要因は、UL94V垂直試験において決定される分類である。UL94V試験における結果が、少なくともV-2、より好ましくは、V-0であり、好ましくは、3.2mm、好ましくは、1.5mmの厚さ、とりわけ好ましくは、0.75mmの厚さであるこれらの製造物が好ましい。
【0014】
本発明の製造物において使用される熱可塑性ポリウレタンは、原理的に公知である。これらは、(a)イソシアネートと、(b)0.5×103g/mol~100×103g/molの数平均モル質量を好ましくは有し、好ましくはポリオールである、イソシアネートに対して反応性である化合物、および好ましい実施形態では、(c)好ましくは、0.05×103g/mol~0.499×103g/molのモル質量を有する連鎖延長剤との反応によって、他の好ましい実施形態では、(d)触媒および/または通常の(e)補助物質および/またはさらなる物質の存在下で生成される。
【0015】
個々に、または組み合わせて、成分であるイソシアネート(a)、イソシアネートに対して反応性である化合物(b)、好ましくはポリオール、およびさらに連鎖延長剤(c)について使用される別の用語は、構造成分である。
【0016】
触媒(d)および/または補助物質および/またはさらなる物質(e)と一緒の構造成分、すなわち、製造物に加えられる材料の全てのために使用される別の用語は、出発材料である。出発材料という表現は、熱可塑性ポリウレタンの生成のために使用される材料だけでなく、生成方法の間に熱可塑性ポリウレタンに加えられるが、反応して熱可塑性ポリウレタンを生じないか、または熱可塑性ポリウレタンと反応しないが、その中に含まれている材料を含む。製造物中の熱可塑性ポリウレタンと並んで存在するか、または製造物の生成の間に熱可塑性ポリウレタンに加えられる材料の全ては、さらに出発材料である。
【0017】
製造物の好ましい実施形態は、それぞれ、別のタイプの他の出発材料と並んで、1つのタイプの1種のみの出発材料、例えば、1種のみのイソシアネート、1種のみのさらなる物質などを使用する。他の好ましい実施形態は、他の出発材料と並んで、それぞれ、同じタイプの複数種の出発材料、すなわち、複数種のイソシアネート、複数種のさらなる物質などを使用し、他の好ましい実施形態は、少なくとも1種の出発材料の1つのみの好ましい実施形態、および少なくとも第2の出発材料の少なくとも2つの異なる好ましい実施形態を使用する。本発明は、全ての考えられ得る組合せを含む。
【0018】
TPUの硬度およびメルトインデックスを、構造成分(b)および(c)の使用される量のモル比を変化させることによって調節し、硬度および溶融粘度は、増加する含量の連鎖延長剤(c)と共に上昇し、一方、メルトインデックスは減少する。
【0019】
可撓性熱可塑性ポリウレタン、例えば、95未満のショアA硬度、好ましくは、95~75ショアA、より好ましくは、94~85ショアAを有するものは、好ましくは要するに有利に、1:1~1:5、好ましくは1:1.5~1:4.5であるモル比で、イソシアネートに対して反応性であり、かつ好ましくは、500g/mol~100×103g/molのモル質量を有する二官能性物質(b)、好ましくは、ポリオール、および連鎖延長剤(c)を使用することによって生成することができ、構造成分(b)および(c)の生成した混合物は、200超、特に230~450のヒドロキシ当量を有し、一方では、より大きな強剛性のTPU、例えば、95超のショアA硬度、好ましくは、55ショアD~85ショアDを有するものの生成のための、(b)と(c)のモル比は、1:5.5~1:15、好ましくは1:6~1:12の範囲であり、その結果、(b)および(c)の生成した混合物は、110~200、好ましくは120~180のヒドロキシ当量を有する。
【0020】
本発明の製造物のためのTPUは、ジイソシアネート(a)のNCO基と、成分(b)および(c)のヒドロキシ基の全体の当量比が、0.95~1.10:1、好ましくは0.98~1.08:1、特に約1.0~1.05:1であるであるような量で、反応性構造成分(a)および(b)、ならびにさらに、好ましい実施形態では(c)によって、好ましい実施形態では触媒(d)の存在下で、他の好ましい実施形態では補助物質および/またはさらなる物質(e)の存在下で生成される。
【0021】
TPUが、少なくとも0.1×106g/mol、好ましくは少なくとも0.2×106g/mol、特に0.3×106g/mol超の質量平均モル質量を有する製造物を生成することが本発明において好ましい。TPUの質量平均モル質量についての上限は、加工性およびまた所望の特性プロファイルによって決定される。製造物中のTPUの質量平均モル質量は、好ましくは0.8×106g/mol以下である。TPU、ならびに構造成分(a)および(b)について上で記述した質量平均モル質量は、実施例15におけるようにゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて決定した質量平均である。
【0022】
しかし、明細書において記述する数平均モル質量は、実施例16におけるように決定する。
【0023】
製造物中の熱可塑性ポリウレタンのために使用される有機イソシアネート(a)は好ましくは、2個のイソシアネート基を好ましくは含む、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、および/または芳香族イソシアネート、より好ましくは、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタおよび/もしくはオクタメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、2-エチルブチレン1,4-ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、ブチレン1,4-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(ジイソシアン酸イソホロン、IPDI)、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ならびに/または1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、パラフェニレン2,4-ジイソシアネート(PPDI)、テトラメチレンキシレン2,4-ジイソシアネート(TMXDI)、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキサン2,4-および/もしくは2,6-ジイソシアネート、ならびに/またはジシクロヘキシルメタン4,4’-、2,4’-、および2,2’-ジイソシアネート(H12MDI)、ジフェニルメタン2,2’-、2,4’-および/もしくは4,4’-ジイソシアネート(MDI)、ナフチレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4-および/もしくは2,6-ジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニル3,3’-ジイソシアネート、1,2-ジフェニルエタンジイソシアネート、ならびに/またはフェニレンジイソシアネートである。ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)からのイソシアネート(a)、ジシクロヘキシルメタン4,4’-、2,4’-、および2,2’-ジイソシアネート(H12MDI)の混合物、ならびに/またはジフェニルメタン4,4’-、2,4’-、および2,2’-ジイソシアネート(MDI)の混合物の選択がさらに好ましい。ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート(MDI)を使用することは特に好ましい。
【0024】
好ましい一実施形態では、1種のイソシアネート、好ましくは、上記で好ましいと言及されたイソシアネートの1つが存在する。別の好ましい実施形態では、多数、好ましくは、上記で好ましいと言及されたイソシアネートの混合物が存在する。
【0025】
イソシアネートに対して反応性である好ましい化合物(b)は、500g/mol~8×103g/mol、好ましくは0.6×103g/mol~5×103g/mol、特に0.8×103g/mol~3×103g/molのモル質量(Mn)を有するものである。これらは、ポリカーボネート、ポリエステロール、またはポリエーテロールであることがさらに好ましく、これらについての別の集合用語は、「ポリオール」である。ポリカーボネートおよびポリエーテロールがさらに好ましく、ポリエーテロールが特に好ましく、酸化エチレン、酸化プロピレン、および/または酸化ブチレンをベースとするものがさらに好ましく、ポリテトラヒドロフラン(PTHF)がとりわけ好ましい。
【0026】
イソシアネートに対して反応性である化合物(b)(これらは好ましくは、上記のポリオールである)は、1.8~2.3、好ましくは1.9~2.2、特に2の平均官能価を有することが好ましく、これらが第一級ヒドロキシ基のみを有することがさらに好ましい。
【0027】
1つの好ましい実施形態は、イソシアネートに対して反応性である化合物(b)として、少なくとも1個のポリカーボネートジオール、好ましくは、脂肪族ポリカーボネートジオールを使用する。さらに好ましいポリカーボネートジオールは、アルカンジオールをベースとするポリカーボネートジオールである。特に適切なポリカーボネートジオールは、厳密に二官能性のOH官能性ポリカーボネートジオール、好ましくは、厳密に二官能性のOH官能性脂肪族ポリカーボネートジオールである。適切なポリカーボネートジオールは好ましくは、ブタンジオール、ペンタンジオール、またはヘキサンジオール、特に、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチルペンタン-(1,5)-ジオール、またはこれらの混合物をベースとしており、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、またはこれらの混合物が特に好ましい。ブタンジオールおよびヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、ヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、ならびにこれらのポリカーボネートジオールの2つ以上の混合物を使用することが好ましい。
【0028】
使用されるポリカーボネートジオールが、GPCによって決定して500g/mol~4.0×103g/molの範囲、好ましくは、GPCによって決定して0.65×103g/mol~3.5×103g/molの範囲、特に好ましくは、GPCによって決定して0.8×103g/mol~3.0×103g/molの範囲の数平均モル質量(Mn)を有することが好ましい。
【0029】
使用される好ましい連鎖延長剤(c)は、50g/mol~499g/molのモル質量を伴い、好ましくは、官能基も記載される、イソシアネートに対して反応性である2つの結合した系を有する、脂肪族、芳香脂肪族、芳香族、および/または脂環式化合物である。好ましい連鎖延長剤は、ジアミンおよび/またはアルカンジオールであり、アルキレン部分において2~10個の炭素原子、好ましくは、3~8個の炭素原子を有するアルカンジオール、すなわち、さらに好ましくは第一級ヒドロキシ基のみを有する、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ、ノナおよび/もしくはデカアルキレングリコールがさらに好ましい。エチレン1,2-グリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、および1,6-ヘキサンジオールが特に好ましく、1,4-ブタンジオールがさらに好ましい。別の好ましい実施形態はまた、連鎖延長剤の混合物を使用する。
【0030】
好ましい実施形態は、構造成分と共に触媒(d)を使用する。触媒は、特に、イソシアネート(a)のNCO基、およびイソシアネートに対して反応性である化合物(b)のヒドロキシ基、およびこれが使用される場合は、連鎖延長剤(c)の間の反応を促進するものである。好ましい触媒は、第三級アミン、特に、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N,N’-ジメチルピペラジン、2-(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである。別の好ましい実施形態では、触媒は、有機金属化合物、例えば、チタン酸エステル、鉄化合物、好ましくは、鉄(III)アセチルアセトネート、スズ化合物、好ましくは、カルボン酸のもの、特に好ましくは、二酢酸スズ、ジオクタン酸スズ、ジラウリン酸スズ、またはジアルキルスズ塩であり、二酢酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、またはカルボン酸のビスマス塩、好ましくは、デカン酸ビスマスおよび/またはネオデカン酸ビスマス(III)がさらに好ましい。
【0031】
特に好ましい触媒は、ジオクタン酸スズおよび/またはネオデカン酸ビスマス(III)であり、これは好ましくは個々にも使用される。
【0032】
触媒(d)の使用される好ましい量は、100質量部の、イソシアネートに対して反応性である化合物(b)当たり0.0001~0.1質量部である。スズ触媒および/またはカルボン酸のビスマス塩、特に、ジオクタン酸スズおよび/またはネオデカン酸ビスマス(III)を使用することが好ましく、これは好ましくは個々にも使用される。
【0033】
出発材料として通常のさらなる物質および/または通常の補助物質(e)を、触媒(d)と並んで、熱可塑性TPUの生成の間に、構造成分(a)から(c)に加えることも可能である。言及し得る例は、表面活性物質、充填剤、難燃剤、成核剤、滑沢剤および離型助剤、染料および顔料、任意に好ましくは、加水分解、光、熱、酸化、もしくは変色と関連する安定剤、無機および/もしくは有機充填剤、ならびに好ましくは、またポリマー、好ましくは、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリオキシメチレン、ポリスチレン、および/もしくはスチレンコポリマー、強化剤、ならびに/または可塑剤である。
【0034】
本発明の目的のために、安定剤は、補助物質および/またはさらなる物質とも記載される添加物であり、これは有害な環境効果から熱可塑性ポリウレタンおよび/または製造物を保護する。例は、抗酸化剤であり、フェノール系抗酸化剤、ヒンダードアミン光安定剤、紫外線吸収剤、加水分解安定剤、失活剤、および難燃剤が好ましい。市販の安定剤の例は、Plastics Additives Handbook、第5版、H.Zweifel編、Hanser Publishers、Munich、2001年([1])、98~136頁に記載されている。
【0035】
紫外線吸収剤は、好ましい一実施形態では、0.3×103g/mol超、特に、0.39×103g/mol超の数平均モル質量を有する。使用される好ましい紫外線吸収剤は、さらに5.0×103g/mol以下、特に好ましくは、2.0×103g/mol以下であるモル質量を有するべきである。
【0036】
紫外線吸収剤の特に適切な群は、ベンゾトリアゾールのものである。特に適切なベンゾトリアゾールの例は、Tinuvin(登録商標)213、Tinuvin(登録商標)234、Tinuvin(登録商標)571、およびまたTinuvin(登録商標)384、およびEversorb(登録商標)82である。紫外線吸収剤の加えられる量は通常、TPUの全体に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.1質量%~2.0質量%、特に0.2質量%~0.5質量%である。
【0037】
抗酸化剤および紫外線吸収剤をベースとする上記のUV安定化系は、紫外線の有害な効果に関して本発明のTPUの良好な安定性を確実にするのに適当でないことが多い。その場合には、本発明のTPUに、抗酸化剤およびUB吸収剤に加えて、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)を加えることも可能である。HALS化合物の活性は、ポリマーの酸化の機序に介在するニトロキシルラジカルを形成するこれらの能力に基づく。HALSは、大部分のポリマーについて高効率な紫外線安定剤である。
【0038】
HALS化合物は周知であり、商業的に得ることができる。商業的に得ることができるHALS安定剤の例は、Plastics Additives Handbook、第5版、H.Zweifel、Hanser Publishers、Munich、2001年123~136頁において見出される。
【0039】
好ましいヒンダードアミン光安定剤は、0.5×103g/mol超の数平均モル質量を有するものである。好ましいHALS化合物のモル質量は、さらに10×103g/mol以下、特に好ましくは、5.0×103g/mol以下であるべきである。
【0040】
特に好ましいヒンダードアミン光安定剤は、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジル)セバケート(Tinuvin(登録商標)765、Ciba Spezialitaetenchemie AG)、ならびに1-ヒドロキシエチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジンおよびコハク酸の縮合物(Tinuvin(登録商標)622)である。使用される構造成分に基づいた最終生成物のチタン含量が、<150質量ppm、好ましくは、<50質量ppm、特に、<10質量ppmであるとき、1-ヒドロキシエチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジンおよびコハク酸の縮合物(Tinuvin(登録商標)622)が特に好ましい。
【0041】
HALS化合物の使用される濃度は好ましくは、使用される構造成分の全質量に対して、0.01質量%~5質量%、特に好ましくは0.1質量%~1質量%、特に0.15質量%~0.3質量%である。
【0042】
特に好ましいUV安定化系は、上記の好ましい量でフェノール系安定剤、ベンゾトリアゾール、およびHALS化合物の混合物を含む。
【0043】
上記の補助剤およびさらなる物質に関するさらなる詳細は、例えば、Plastics Additives Handbook、第5版、H.Zweifel編、Hanser Publishers、Munich、2001年からの技術文献において見出される。
【0044】
製造物中で使用されるTPU、およびまた一実施形態では、製造物自体は好ましくは、例えば、反応押出機を使用した公知のプロセス、または「ワンショット」法もしくはプレポリマー法を使用した、好ましくは、「ワンショット」法を使用したベルトプロセスによって、バッチ式または連続的に生成される。「ワンショット」法において、反応構造成分である(a)イソシアネートおよび(b)イソシアネートに対して反応性である化合物、ならびに好ましい実施形態ではさらに連鎖延長剤(c)、触媒(d)、ならびに/または他の出発材料であるさらなる物質および/もしくは補助物質(e)は、互いに連続してまたは同時に混合され、その結果、重合反応が直ちに始まる。
【0045】
押出機プロセスにおいて、構造成分(a)および(b)、ならびにさらに、好ましい実施形態では(c)、(d)、および/または(e)はまた、押出機中に個々にまたは混合物として導入され、好ましくは、160℃~250℃の温度にて反応する。生成した熱可塑性ポリウレタンを、押し出し、冷却し、ペレット化する。二軸スクリュー押出機は、実際的に圧力の増加を伴わずに作動し、このように押出機温度のより正確な調節を可能とするため、二軸スクリュー押出機を使用することが好ましい。
【0046】
反応混合物中で第1の工程において単に成分(a)、(b)、および任意に(c)、好ましい実施形態では、少なくとも1種の触媒(d)の存在下で反応を完了させて、TPUを得ることがさらに好ましい。ここで反応混合物へと抗酸化剤、好ましくは、上記のようなフェノール系抗酸化剤を加えることがさらに好ましい。さらに好ましいのは、上記の通りである。
【0047】
好ましい方法において、TPUの生成のために必要とされる出発材料の全ては、第1の工程において互いに反応し、第2の工程において、他の出発材料を、製造物と混合する。
【0048】
記載された方法によって得られるポリウレタンを冷却およびペレット化し、すなわち、製造物は好ましくはペレットの形態を取り、これはそこから生成される、押し出された、粉末焼結された、または射出成形されたパーツのためのベースを形成する。
【0049】
好ましい製造物2において、製造物自体の酸価、または別の実施形態では、製造物中に含まれる熱可塑性ポリウレタンおよび含まれる全ての出発材料の混合物の酸価は、上記で説明した製造物1またはその好ましい実施形態の1つにおいて、20未満、好ましくは10未満、より好ましくは5未満、特に好ましくは2.5未満である。酸価は、実施例3および4におけるように決定する。
【0050】
好ましい製造物3は、A)上記のように、少なくとも次の出発材料:(a)イソシアネート、(b)イソシアネートに対して反応性であり、500g/mol~100×103g/molの数平均モル質量を好ましくは有し、好ましくはポリオールである物質、ならびにさらに、好ましい一実施形態では(c)連鎖延長剤および/または触媒(d)から生成される熱可塑性ポリウレタン、ならびにB)他の出発材料として、(e)生成方法の間に熱可塑性ポリウレタンに加えられ、したがって熱可塑性ポリウレタン中に含まれる、かつ/または熱可塑性ポリウレタンに加えて製造物中に含まれる、さらなる物質および/または補助物質を含む製造物であり、少なくとも1種の出発材料が含まれ、出発材料の少なくとも1つは、フェノキシ基を含み、製造物中のフェノール含量は、100質量ppm未満、好ましくは50質量ppm未満、より好ましくは20質量ppm未満、特に好ましくは10質量ppm未満である。
【0051】
さらに好ましい製造物4は、製造物1~3の1つまたはさらに好ましいこれらの実施形態の特徴の全てを含み、全ての出発材料のフェノール含量の合計、または別の好ましい実施形態では、上記のように生成されたTPUおよび製造物の他の出発材料のフェノール含量の合計は、100質量ppm未満、好ましくは50質量ppm未満、より好ましくは20質量ppm未満、特に好ましくは10質量ppm未満である。
【0052】
次の製造物:製造物1および製造物3もしくはその好ましい実施形態の1つの特徴の全てを含む製造物4a、または製造物2および製造物3もしくはその好ましい実施形態の1つの特徴の全てを含む製造物4bが同様に好ましい。
【0053】
製造物5がさらに好ましく、これは、製造物1~4およびその好ましい実施形態(製造物4aおよび4bはまた、これらと共にカウントされる)の特徴に加えて、出発材料の1つ中でエステル結合を介して結合して存在する、フェノキシ基またはフェノキシ基の誘導体、好ましくはフェノキシ基をさらに含む。
【0054】
製造物5の特徴の全てを含む製造物6がさらに好ましく、エステル結合は、有機ホスフェートおよび/またはホスホネートの一部分である。
【0055】
製造物6の特徴の全てを含む製造物7がさらに好ましく、有機ホスフェートおよび/またはホスホネートの一部分であるエステル結合は、製造物のさらなる物質および/または補助物質(e)中に存在し、前記物質は、さらに好ましくは難燃剤である。
【0056】
製造物7の1つまたはその好ましい実施形態の1つの特徴の全てを含む製造物8がさらに好ましく、難燃剤は、次の群:イソプロピル化されたトリフェニルホスフェート(ITP)、異なる程度のイソプロピル化を有するモノ、ビス、およびトリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレシルホスフェート(TCP)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(BDP)、ジフェニルクレシルホスフェート(DPC)、ジフェニル2-エチルヘキシルホスフェート(DPO)、および/またはキシレノール-レゾルシノール(RDXP)から選択され、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)が特に好ましい。
【0057】
製造物1~8の1つの特徴の全てを含み、かつさらなる物質としてメラミンシアヌレートをさらに含む製造物9がさらに好ましい。
【0058】
特に好ましい製造物10は、熱可塑性ポリウレタンとして、出発材料イソシアネートであるジシクロヘキシルメタン4,4’-、2,4’-および/もしくは2,2’-ジイソシアネート(MDI)、特に好ましくは、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート(4,4’-MDI)と、1.0×103g/molの数平均モル質量を有するポリオールであるポリテトラヒドロフラン、連鎖延長剤である1,4-ブタンジオール、およびまたさらに10質量%~40質量%、20%~35質量%、好ましくは、22質量%~28質量%のメラミンシアヌレート、および5質量%~20質量%、好ましくは、5質量%~10質量%、より好ましくは、7~8質量%のレゾルシノールビス(ジフェニル)ホスフェート(RDP)との反応生成物を含み、製造物、または製造物中に含まれる熱可塑性ポリウレタンおよび存在する出発材料の全ての混合物の塩基価は、2未満、好ましくは1未満、特に好ましくは0.5未満であり、製造物、または製造物中に含まれる熱可塑性ポリウレタンおよび製造物中に存在する出発材料の全ての混合物の酸価は、20未満、好ましくは10未満、より好ましくは5未満、特に好ましくは2.5未満であることがさらに好ましく、より好ましくは、製造物のフェノール含量、または製造物中に含まれる熱可塑性ポリウレタンおよび他の出発材料の全てのフェノール含量の合計は、100質量ppm未満、好ましくは50質量ppm未満、より好ましくは20質量ppm未満、特に好ましくは10質量ppm未満である。
【0059】
製造物10の特徴の全てを含むさらに好ましい製造物11において、1.0×103g/molの数平均モル質量を有するポリテトラヒドロフランと1,4-ブタンジオールの投入質量の質量による比はさらに、10:1~10:1.5の範囲である。
【0060】
さらに好ましい製造物12は、製造物9、10、もしくは11、またはその好ましい実施形態の特徴の全てを含み、メラミンシアヌレートは、使用するメラミンシアヌレートの全量に対して、1質量%未満、好ましくは0.5質量%未満、より好ましくは0.25質量%未満、特に好ましくは0.1質量%未満の過剰なメラミンを含み、過剰なシアヌル酸は、使用するメラミンシアヌレートの全量に対して、1質量%未満、好ましくは0.5質量%未満、より好ましくは0.3質量%未満、特に好ましくは0.15質量%未満である。
【0061】
別の好ましい製造物13は、前述の製造物1~12の1つまたはその好ましい実施形態の特徴の全てを含み、イソシアネートに対して反応性である物質は、ポリエーテルおよび/またはポリカーボネート、好ましくはポリエーテルである。製造物13の特徴の全てを含むさらに好ましい製造物14は、ポリエーテルとしてポリテトラヒドロフラン(PTHF)を含む。製造物14の特徴の全てを含むさらに好ましい製造物15において、ポリテトラヒドロフラン(PTHF)の数平均モル質量は、0.5×103g/mol~5×103g/mol、好ましくは0.6×103g/mol~2.2×103g/mol、より好ましくは0.8×103g/mol~1.5×103g/molであり、数平均モル質量は特に好ましくは1.0×103g/molである。
【0062】
前述の製造物の1つの特徴の全てを含む好ましい製造物16は、35質量%~85質量%の熱可塑性ポリウレタン、より好ましくは、50質量%~75質量%、およびとりわけ好ましくは、65質量%~70質量%を含む。質量%による質量単位は、製造物の全質量に対する。
【0063】
製造物1~16の1つの特徴の全てを含むか、またはその好ましい実施形態の1つを含む好ましい製造物17は、エステルもしくはポリエステルを含むか、またはポリエステルと直接接触している。この製造物、およびそれと直接接触しているポリエステルはまた、複合体と称される。複合体において、製造物は好ましくは、ポリエステルから空間的に分離している。好ましい実施形態では、ポリエステルは、製造物から分離しているが、製造物と共通した少なくとも1つの接触領域を有する。より好ましくは、複合体は、一方ではポリエステルの層および他方では製造物の層を含む。特に好ましい実施形態では、製造物およびポリエステルは、2つのホース中に形成されており、1つのホースの内側または外側は、第2のホースの内側または外側と接触している。
【0064】
製造物1~17の1つまたはその好ましい実施形態の特徴の全てを含む1つの好ましい製造物18は、87~91Aのショア硬度および少なくとも25MPaの引張強度を有する。
【0065】
別の好ましい製造物19は、製造物1~18の1つまたはそれぞれに好ましい実施形態の1つの特徴の全てを含み、さらに、全ての出発材料の総水分含有率が、0.1質量%未満、好ましくは0.05質量%未満、特に好ましくは0.02質量%未満であるものである。出発材料中の水分含有率は、望ましくない副生成物、連鎖停止、加水分解、または機械的性質の障害を回避するのに既に十分に小さくあるべきである。混合物の水分含有率は、DIN EN ISO15512、方法Bに従って決定する。製造物において水分含有率を低く保つために、熱可塑性ポリウレタンまたはそれと共に生成される製造物は、好ましくは、80℃にて少なくとも20時間乾燥させる。
【0066】
ショア硬度値は、DIN ISO7619-1に従って本発明において決定され、引張強度は、DIN53504に従って決定される。フェノール含量は、実施例5におけるように決定する。
【0067】
本発明は、160℃~250℃の温度にて出発材料を加工し、製造物を得ることによって、製造物1~20の1つまたはそれぞれに好ましい実施形態の1つの生成のための方法1をさらに提供する。
【0068】
方法1の特徴を含む方法がさらに好ましく、製造物中の使用される出発材料のフェノール含量の合計は、100質量ppm未満、好ましくは50質量ppm未満、より好ましくは20質量ppm未満、特に好ましくは10質量ppm未満であり、含量は、製造物中の全ての出発材料の全質量に対する。
【0069】
方法1または2の工程の全てを含む方法3がさらに好ましく、生成方法の直後の製造物中のフェノールの含量は、100質量ppm未満、好ましくは50質量ppm未満、より好ましくは20質量ppm未満、特に好ましくは10質量ppm未満であり、フェノールの含量は、製造物の全質量に対する。
【0070】
本発明は、製造物1~20の1つまたはそれぞれに好ましい実施形態の1つから生成される、押し出された、粉末焼結された、かつ/または射出成形されたパーツをさらに提供する。
【0071】
さらに好ましい一実施形態において、製造物1~20の1つから生成される前記押し出されたか、粉末焼結された、かつ/または射出成形されたパーツは、ポリエステルと直接接触している。
【0072】
前記押し出された、粉末焼結された、かつ/または射出成形されたパーツは、コーティング、ダンピングエレメント、折り畳み式蛇腹、ホイル、繊維、モールディング、建物および輸送機関のための床、不織織物、ガスケット、ロール、靴底、ホース、ケーブル、ケーブルプラグ、ケーブルシース、クッション、ラミネート、形材、ベルト、サドル、製造物のさらなる発泡成形からの気泡、プラグコネクター、ドラッグケーブル、ソーラーモジュール、自動車におけるクラッディング、ワイパーブレード、熱可塑性材料のためのモディファイヤー、すなわち、別の材料の特性に影響を与える物質の群から選択されることが好ましい。これらの使用のそれぞれそれ自体は、好ましい一実施形態であり、これはまた用途と称される。用途の好ましい群は、ケーブル、ケーブルプラグ、ケーブルシースである。押し出された、粉末焼結された、かつ/または射出成形されたパーツは、名称が暗示するように、好ましくは、射出成形、カレンダー加工、粉末焼結、または押出によって生成される。
【0073】
本発明は同様に、パーツがポリエステルと直接接触している用途のための、押し出された、粉末焼結された、かつ/または射出成形されたパーツを使用する方法を提供する。
【0074】
本明細書の下記の実施例は、本発明の主題を展開するが、本発明の主題を制限すると決して見なされるべきでない。
【実施例】
【0075】
[実施例1]
出発材料
TPU1:1000g/molの数平均モル質量を有するポリテトラヒドロフランポリオール(PTHF)、1,4-ブタンジオール、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)をベースとするショア硬度85Aの熱可塑性ポリウレタンTPU、フェノール含量<1質量ppm。
【0076】
Melapur MC15ED:メラミンシアヌレート(1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)トリオン、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミンを有する化合物(1:1))、CAS#:37640-57-6、BASF SE、67056Ludwigshafen、ドイツ、粒径D99%</=50μm、D50%<=4.5μm、水分含有率%(w/w)<0.2、フェノール含量<1質量ppm。
【0077】
Fyrolflex RDP:レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、CAS#:125997-21-9、Supresta Netherlands B.V.、Office Park De Hoef、Hoefseweg 1、3821AE Amersfoort、オランダ、25℃での粘度=700mPas、酸価<0.1mg KOH/g、水分含有率%(w/w)<0.1、フェノール含量<100質量ppm。
【0078】
メラミン:1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、CAS#:108-78-1、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Riedstrasse 2、D-89555 Steinheim、99%、フェノール含量<1質量ppm。
【0079】
シアヌル酸:1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオール、CAS#:108-80-5、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Riedstrasse 2、D-89555 Steinheim、98%、フェノール含量<1質量ppm。
【0080】
水酸化カルシウム:CAS#:1305-62-0、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Riedstrasse 2、D-89555Steinheim p.a.>96%、フェノール含量<1質量ppm。
【0081】
p-トルエンスルホン酸:p-トルエンスルホン酸一水和物、CAS#:6192-52-5、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Riedstrasse 2、D-89555 Steinheim、>98.5%、フェノール含量<1質量ppm。
【0082】
クエン酸:CAS#:77-92-9、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Riedstrasse 2、D-89555 Steinheim、>99.5%、フェノール含量<1質量ppm。
【0083】
[実施例2]
アミン価(塩基価とまた称される)の決定
正確に秤量した約1gの製造物、または製造物中に使用され、かつTPUの生成のために使用する出発材料(a)および(b)、ならびにまたこれらがTPUの生成において使用される限り、出発材料(c)、(d)、および(e)を含むTPUを、25℃にて溶解または懸濁し、これらが既にTPU中に含まれておらず、TPUの生成の後のみにこれらが製造物に加えられる限り、製造物の他の出発材料、すなわち、他の補助物質および/またはさらなる物質(e)と共に混合仕様によって処方された比で100.0mlのDMF(溶媒)中で24時間撹拌する。次いで、10.0mlの水、およびまた3滴のブロモクレシルブルーを、溶液に加え(メタノール中1質量%)、次いで、混合物を、0.1Nのブタノール塩酸でエンドポイントまで滴定する。水およびブロモクレシルブルーを有する溶媒を、ブランク試験と同様に決定に供する。
【0084】
[実施例3]
酸価の決定
正確に秤量した約1gの製造物、または製造物中に使用され、かつTPUの生成のために使用する出発材料(a)および(b)、ならびにさらに、これらがTPUの生成において使用される限り出発材料(c)、(d)、および(e)を含むTPUを、25℃にて溶解または懸濁し、これらが既にTPU中に含まれておらず、TPUの生成の後のみにこれらが製造物に加えられる限り、製造物の他の出発材料と共に混合仕様によって処方された比で100.0mlのDMF(溶媒)中で24時間撹拌する。次いで、10.0mlの水、およびまた3滴のフェノールフタレインを、溶液に加える(メタノール中1質量%)。
【0085】
次いで、混合物を、0.1Nのエタノール性水酸化カリウム溶液でエンドポイントまで滴定する。水およびフェノールフタレインを有する溶媒を、ブランク試験と同様に決定に供する。
【0086】
[実施例4]
アミン価(塩基価)および酸価の計算
関連性のある消費データを決定する。分析における試薬の消費は、計算においてAとして含め、ブランク試験における消費は、Bとして含める。
【0087】
E=投入質量[g]
酸価=(5.6×(A-B))/E
アミン価=(5.6×(A-B))/E
【0088】
計算式の詳細な誘導:
(56[mg/mmol]×0.1[mmol/ml]×(A[ml]-B[ml]))/E[g]
【0089】
アミン価および酸価の両方は、mg KOH/gで記述する。
【0090】
[実施例5]
フェノール含量の決定
この方法は、Verband der deutschen Automobilindustrie[ドイツ自動車産業協会](VDA278)の分析法をベースとしているが、急速なフェノール検出のために最適化した。フェノール(および他の揮発性物質)は、熱脱着(120℃/ヘリウム流で60分-VDA278FOG条件による)を用いてポリマーから蒸発させ、低温濃縮によって集める。これに続いてガスクロマトグラフィー分離、および質量分析計によるフェノールの検出を行う。量はガスクロマトグラムを使用することによって決定し、メタノールに溶解したフェノールを、ここでは外部標準として使用した。
【0091】
[実施例6]
水分含有率の決定
混合物の水分含有率を、DIN EN ISO 15512方法Bに従って決定した。水は、製造物のための記述した出発材料ではないが、出発材料中に含まれる。製造物中のその含量を最小化することが望ましい。
【0092】
[実施例7]
TPU1を含む製造物の生成
下記の表は組成物を列挙し、ここでは使用されるTPU1、および出発材料は質量部(pw)で記述する。均一な混合物のそれぞれを、10バレルセクションに分割されたスクリュー長さ35Dを有するBerstorffからのZE40A二軸スクリュー押出機を使用することによって生成した。
【0093】
ここで押出プロセスの設計は、TPUを適切な混練剤および混合剤によって最初に溶融し、次いで、さらなる出発材料をTPU溶融物に加えるものであった。
【0094】
処理量は、いずれの場合にも30kg/hであった。押出機回転速度は、160rpmであった。ゾーン温度は、Z1 199℃、Z2 199℃、Z3 207℃、Z4 190℃、Z5 187℃、Z6 190℃、Z7 189℃、Z8 190℃、Z9 190℃、Z10 194℃、多孔板195℃であった。
【0095】
アミン価または酸価、およびフェノール含量を決定するために、押出プロセスに続く水面下のペレット化の後および80℃にて20時間乾燥させた後で穿孔処理のペレットを使用した。
【0096】
[実施例8]
【0097】
【0098】
10ppm未満のフェノール含量は、0.5未満のアミン価で得られることが示された。高い水分含有率は、フェノール含量を有意に増加させない。
【0099】
[実施例9]
メラミン
【0100】
【0101】
10ppm超のフェノール含量は、>0.5のアミン価と共に決定されることが示された。フェノール含量はまた、混合物の水分含有率によって決まる。
【0102】
[実施例10]
メラミン
【0103】
【0104】
10ppm超のフェノール含量は、>0.5のアミン価と共に決定されることが示された。フェノール含量はまた、リン酸エステルの量によって決まる。
【0105】
[実施例11]
シアヌル酸
【0106】
【0107】
高い酸価および水分含有率は、相対的に少ないフェノール含量のみをもたらすことが示された。
【0108】
[実施例12]
シアヌル酸
【0109】
【0110】
高い酸価および水分含有率は、相対的に少ないフェノール含量のみをもたらすことが示された。
【0111】
[実施例13]
水酸化カルシウム
【0112】
【0113】
高いアミン価は、高いフェノール含量をもたらすことが示された。
【0114】
[実施例14]
クエン酸およびp-トルエンスルホン酸
【0115】
【0116】
高い酸価、および熱可塑性ポリウレタンについて、非常に高い水分含有率、すなわち、>0.05質量%は、高いアミン価および高い水分含有率を有する熱可塑性ポリウレタンと比較して、相対的に低いフェノール含量の増加のみをもたらすことが示された。
【0117】
[実施例15]
質量平均モル質量(Mw)の決定
試料を、1%で(ジメチルホルムアミド+0.1%のジブチルアミン)に溶解し、次いで、0.45μmのPTFEフィルターの使用によって濾過する。GPCパラメーターセットは、下記の通りであった。
【0118】
直列の2つのGPCカラム:PSS-ゲル、100A;5μm、300*8mm;Jordi-Gel DVB、MixedBed、5μm;250*10mm;カラム温度60℃;流量1mL/分;RI検出器。較正はここで、ポリメチルメタクリレート(EasyCal;PSS、Mainz)と共に行い、ジメチルホルムアミドを溶離液として使用する。
【0119】
質量平均モル質量を決定する評価は、例えば、Encyclopedic Dictionary of Polymers、第1巻、Jan W. Gooch、Springer、2010年11月6日による。
【0120】
[実施例16]
数平均モル質量の決定
試料を、1%で(ジメチルホルムアミド+0.1%のジブチルアミン)に溶解し、次いで、0.45μmのPTFEフィルターの使用によって濾過する。GPCパラメーターセットは下記の通りであった。
【0121】
4つの直列で連結したGPCカラム:2×PSS_SDV500 300*8mm、5μm;PSS_SDV100、300*8mm、5μm;PSS_SDV50 300*8mm、5μm;カラム温度35℃;流量1.5mL/分;RI検出器。較正方法は、ポリオールのベースに対応し、PEGエーテルについて、PEG較正物質を使用し、PPGについて、PPG相同体を使用し、PTHFエーテルについて、PTHFの相同体を使用し、アジピン酸エステルについて、ポリブタンジオールアジペートの相同体を使用する。他のポリオールについて、PMMAの相同体を較正のために使用する。
【0122】
数平均モル質量を決定する評価は、例えば、Encyclopedic Dictionary of Polymers、第1巻、Jan W. Gooch、Springer、2010年11月6日による。