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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】バッテリ装置を保護するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20241018BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20241018BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20241018BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01M10/48 P
G01R31/389
G01R31/392
H01M10/44 P
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021559940
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-15
(86)【国際出願番号】 AT2020060155
(87)【国際公開番号】W WO2020210853
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】A50350/2019
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】521104458
【氏名又は名称】エイヴィエル リスト ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】AVL List GmbH
【住所又は居所原語表記】Hans-List-Platz 1, 8020 Graz, AUSTRIA
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デーメル, マティアス
(72)【発明者】
【氏名】フリッツベルグ, ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】グシュヴェイテル, クルト
(72)【発明者】
【氏名】ディングラ, ヴィープル
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-070510(JP,A)
【文献】Yong-Duk LEE et al.,ElectrochemicalState-Based Sinusoidal Ripple Current Charging Control,IEEE Transactions on Power Electronics,IEEE,2015年08月,Vol. 30,No. 8,p.4232-4243,DOI: 10.1109/TPEL.2014.2354013
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R31/36-31/396
H01M10/42-10/48
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ装置(100)を保護するための方法であって、
-前記バッテリ装置(100)の少なくとも1つの電気的バッテリパラメータ(EBP)を決定する工程であって、前記少なくとも1つの電気的バッテリパラメータ(EBP)は、前記バッテリ装置(100)のバッテリ状況を表す、工程と、
-前記バッテリ装置の動作電流(IB)の動作パラメータ(BP)を決定する工程と、
-前記動作パラメータ(BP)に基づいて外乱電流(IS)の外乱パラメータ(SP)を計算する工程と、
-前記外乱電流(IS)を生成する工程と、
-前記動作電流(IB)に前記外乱電流(IS)を印加する工程と、
を有し、
前記外乱パラメータ(SP)の前記計算のために、前記バッテリ装置(100)の実部インピーダンスと、前記バッテリ状況における前記バッテリ装置(100)のシミュレーションに基づく前記バッテリ装置(100)の虚部インピーダンスとが使用されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記外乱パラメータ(SP)が前記動作パラメータ(BP)と異なり、以下の電流パラメータ、
-電流振幅、
-電流周波数、
のうちの1つを有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
記動作パラメータ(BP)及び/又は前記少なくとも1つの電気的バッテリパラメータ(EBP)が、少なくとも1つの測定センサ値に基づいて決定されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
記動作パラメータ(BP)及び/又は前記少なくとも1つの電気的バッテリパラメータ(EBP)が、シミュレーションモデル(110)に少なくとも部分的に基づいて決定されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記外乱パラメータ(SP)が、1kHz未満である前記外乱電流(IS)の電流周波数を有することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
記外乱パラメータ(SP)としての電流周波数の前記計算のために、インピーダンス曲線(IK)の極小値の周波数範囲が選択され、前記虚部インピーダンスは、前記実部インピーダンスと相関関係にあることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記バッテリ装置(100)の前記実部インピーダンス及び前記虚部インピーダンスの使用のために、前記決定されたバッテリパラメータ(EBP)及び/又は前記決定された動作パラメータ(BP)に固有のインピーダンス曲線(IK)が使用されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記外乱パラメータ(SP)の計算時に、少なくとも1つの絶対限界が遵守されることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
上限としての、電流振幅の形式の外乱パラメータ(SP)の絶対限界として、前記動作電流(IB)の現在の電流振幅の2分の1が使用されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記外乱電流(IS)を生成するために、独自の所要電流を有する電力消費機器である少なくとも1つの電気的二次部品(130)が前記バッテリ装置(100)の回路に挿入されることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記バッテリ装置(100)の前記回路のインバータが二次部品(130)として使用されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも2つの二次部品(130)が、前記外乱電流(IS)を生成するために、少なくとも部分的に時間的に並行して使用されることを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも2つの二次部品(130)が同期の外乱電流(IS)で動作することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも2つの二次部品(130)が非同期の外乱電流(IS)で動作することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
バッテリ装置(100)を検査するための検査装置(10)であって、前記バッテリ装置(100)の少なくとも1つの電気的バッテリパラメータ(EBP)を決定するため、及び前記バッテリ装置の動作電流(IB)の動作パラメータ(BP)を決定するための決定モジュール(20)であって、前記少なくとも1つの電気的バッテリパラメータ(EBP)は、前記バッテリ装置(100)のバッテリ状況を表す、決定モジュール(20)と、前記動作パラメータ(BP)に基づいて外乱電流(IS)の外乱パラメータ(SP)を計算するための計算モジュール(30)と、前記外乱電流(IS)を生成するための生成モジュール(40)と、前記動作電流(IB)に前記外乱電流(IS)を印加するための印加モジュール(50)と、を有し、
前記計算モジュール(30)は、前記外乱パラメータ(SP)の前記計算のために、前記バッテリ装置(100)の実部インピーダンスと、前記バッテリ状況における前記バッテリ装置(100)のシミュレーションに基づく前記バッテリ装置(100)の虚部インピーダンスとを使用するように適合されることを特徴とする検査装置。
【請求項16】
前記決定モジュール(20)、前記計算モジュール(30)、前記生成モジュール(40)、及び/又は前記印加モジュール(50)が、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の特徴を有する方法を実行するように設計されていることを特徴とする、請求項15に記載の検査装置(10)。
【請求項17】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムがコンピュータによって実行される場合に、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の特徴を有する方法をこれに実行させる命令を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ装置、特にバッテリ装置の電極を保護するための方法、バッテリ装置の検査のための検査装置、及びその種の方法を実行するためのコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリ装置は、使用時にある程度の摩耗及び経年劣化プロセスにさらされることが知られている。これらは特に、電極若しくはバッテリ装置の電極に化学的及び物理的変化が生じることに基づく。この経年劣化プロセスは、例えば、バッテリ装置の1つ又は複数の電極に堆積物が堆積することに基づく。この堆積物が層を形成し、この層がそれぞれの電極でのイオン若しくは電子の遷移を妨げるか、面の一部で完全に阻止さえする。この種の層がそれぞれの電極表面に厚く形成されればされるほど、この電極、したがってバッテリ装置の動作が悪化する。それぞれの電極のその種の層の厚さがバッテリ装置の耐用年数にわたって増し、その結果、バッテリ装置の効率及び容量が低下する。
【0003】
既知の解決策は、電極へのこの層の蓄積を減らすか、若しくは層の蓄積に必要な時間を増加させて、バッテリ装置がより長い期間にわたってより高い容量を有するようにしようと試みる。この化学的及び物理的な経年劣化プロセスを阻止するために、既知の解決策は、特に、バッテリ装置の相応の温度調節を使用する。これは、さまざまな使用状況においてさまざまな温度でさまざまな経年劣化が生じることに基づいている。ただし、的確な温度調節の使用には、そのためにエネルギーを消費する必要もあるため、比較的コストがかかる。すなわち、車両にバッテリ装置がある場合、エネルギーの一部がバッテリ装置の温度調節のための保護電力として必要とされるため、それを駆動電力又は使用電力に利用できない。このことは、バッテリ装置の動作状況だけでなく、バッテリ装置の保管状況にも当てはまる。さらに、そのような温度調節オプションの保護メカニズムは制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、上記の欠点を少なくとも部分的に解消することである。特に、本発明の課題は、バッテリ装置、特にバッテリ装置の電極の改善された保護を安価に、かつ簡単に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、請求項1の特徴を有する方法、請求項16の特徴を有する検査装置、及び請求項18の特徴を有するコンピュータプログラム製品によって解決される。本発明の他の特徴及び詳細は、従属請求項、以下の記載、及び図面から明らかになる。その場合、本発明による方法との関連で説明される特徴及び詳細は、当然、本発明による検査装置及び本発明によるコンピュータプログラム製品との関連でも、かつその逆も当てはまり、それにより個々の発明の態様の開示に関して常に相互に参照される、若しくは参照することができる。
【0006】
本発明によれば、方法は、バッテリ装置、特にバッテリ装置の電極を保護するために用いられる。このために、この方法は、
-バッテリ装置の少なくとも1つの電気的バッテリパラメータを決定する工程と、
-バッテリ装置の動作電流のバッテリパラメータを決定する工程と、
-動作パラメータに基づいて外乱電流の外乱パラメータを計算する工程と、
-電流を生成する工程と、
-動作電流に外乱電流を印加する工程と、を有する。
【0007】
本発明による方法は、それぞれの動作電流の動作が、バッテリ装置、特にバッテリ装置の電極又は他の構成要素及びそれらの経年劣化プロセスにも影響を及ぼすということに基づいている。電極の現在の電流状況に応じて、この電流状況に基づいて対応する経年劣化状況が生じるだろう。すなわち、本発明によれば、この電流状況は、動作電流の少なくとも1つの動作パラメータが決定可能であることにより決定される。この動作パラメータ及び動作電流をバッテリ装置のそれぞれの動作状況に適合させるために、本発明によれば、バッテリ装置の電気的バッテリパラメータの決定工程がさらに前置される。
【0008】
少なくとも1つの電気的バッテリパラメータの決定とは、特に、バッテリ装置のバッテリ状況の基本的決定と解される。例えば、電気的バッテリパラメータは、バッテリ装置が現在充電状態にあるのか、放電状態にあるのかに関する情報を含むことができる。バッテリ装置が利用されていないホールド状態を電気的バッテリパラメータと定義することもできる。これに加えて、又はこれに代えて、本発明の意味においてステート・オブ・チャージ(SOC)とも呼ばれる充電状態、ステート・オブ・ヘルス(SOH)とも呼ばれる経年劣化状態などの他のバッテリパラメータも考えられる。本発明の意味において考えられる。すなわち、バッテリパラメータの決定は、本発明による方法を現在のバッテリの状況に基づいて実施するか、又は適合させることさえ可能にする。
【0009】
本発明による中心思想は、現在の動作電流に加えて外乱電流を生成することである。この外乱電流は動作電流に依存するが、それは外乱電流が少なくとも1つの電流パラメータに関して動作電流とは意図的に区別されるからである。これは、例えば、振幅及び周波数という個々のパラメータが追加された電流パラメータとしての交流成分である。この区別を提供するために、そして特に動作電流への外乱電流の適合を可能にするために、本発明の意味における決定工程及び計算工程が必要である。一方では、バッテリ装置の作動時に、動作電流の少なくとも1つの動作パラメータを決定する必要がある。動作電流の動作パラメータは、動作電流の電流パラメータである。例えば、動作電流の電流振幅及び/又は電流周波数を動作パラメータとして決定することができる。次に、この決定された動作パラメータに基づいて外乱電流の少なくとも1つの外乱パラメータが計算される。この計算は、特に同一又は本質的に同一の電流パラメータに関し、それにより外乱パラメータは、例えば、外乱電流の電流振幅及び/又は電流周波数を提供することもできる。続いて、計算された外乱パラメータに基づいて外乱電流が生成され、それにより動作電流に外乱電流を印加することができる。
【0010】
すなわち、本発明によれば、バッテリ装置で本発明による方法が実行される場合、動作電流に加えて外乱電流の印加が生じる。このことは、全体として、動作電流への外乱電流の重畳をもたらす。基本的に、このような外乱電流を、いわゆるリップル電流と呼ぶこともできる。そのようなリップル電流は、既知のバッテリ装置及び対応する制御方法では望ましくないが、本発明による方法では意識的に、かつ意図的に使用される。外乱電流を形成することにより、特に化学的及び/又は物理的に、バッテリ装置の電極の経年劣化プロセスを妨げるか、又は少なくとも経年劣化の速度を低下させるという利点を得ることができる。
【0011】
したがって、例えば、変化した電流振幅及び/又は変化した電流周波数に関して変化した外乱電流により動作電流を妨害することによって、電極における個々のイオン遷移について化学的観点から不調和な状況を提供することが可能である。換言すれば、電極での連続的な電流遷移が解消し、電極での不連続な電流遷移、したがってイオン遷移に移行する。電子を特に波状に、したがってひとかたまりずつ電極に渡す、若しくは再び引き出すこの不連続な形態は、電極におけるイオン停滞を回避できることにつながる。したがって、バッテリ装置のそれぞれの電極における電子の不調和な伝導によって、電極への層の蓄積が困難にされるか、又は少なくとも一時的に完全に防がれさえする。
【0012】
上記の効果の他に、それぞれの電極における外乱電流によって生成され得る他の物理的効果も考えられる。これは、例えば、電極への遷移時に外乱電流によって堆積する可能性を低くできるような個々のイオンの実際の配置である。その結果、外乱電流と動作電流を重ね合わせることで、電極の経年劣化速度を低減することができる。物理的効果の他に、化学的効果も考えられる。これは、例えば、電極上の層堆積物の形成に対する外乱電流の影響である。これは特に高温及び/又は低温の場合に当てはまるが、それはリチウムイオンの不活性化が減速されるからである。
【0013】
上記の説明からわかるように、極めて多様な効果を考慮に入れることができ、このようにして、バッテリ装置の電極の経年劣化速度を低下させるか、又は部分的に阻止することさえできる。これは、本発明によれば、動作電流に特定の外乱電流が重畳されることによるものである。その場合、この外乱電流はランダムに生成されるのではなく、動作電流の現在の状況に基づき、それにより外乱パラメータが外乱電流をそれぞれの動作状況に適合させることができる。さらに、外乱パラメータを計算する場合に、バッテリ装置のすでに決定された少なくとも1つのバッテリパラメータを含めることも好ましい。その場合、特に、外乱パラメータは、それぞれの動作電流の動作パラメータとは異なる。
【0014】
本発明による方法において、外乱パラメータが動作パラメータと区別され、特に以下の電流パラメータのうちの1つを有する場合に利点をもたらすことができる。
-電流振幅
-電流周波数
【0015】
上記の列挙は最終的なリストではない。当然、2つ以上のそのようなパラメータを1つの外乱パラメータに一緒に組み合わせることができ、又は複数の外乱パラメータ及び動作パラメータを使用することができる。定量的数値に関する外乱パラメータと動作パラメータとの区別は、詳細に説明したように、本発明による外乱機能を支援する。少なくとも動作パラメータと外乱パラメータとを区別することにより、動作電流のみを使用した場合の動作状況とは異なる結果として生じる電流状況を生成することができる。このようにして、冒頭で述べた化学的及び物理的観点からの効果を意図的に、殊に予め設定して得ることができる。このようにして、例えば、不調和又は非対称の周波数及びそれに対応して異なる振幅に関していわゆるリップル電流を能動的に利用可能にすることができる。
【0016】
本発明による方法において、少なくとも1つの動作パラメータ及び/又は少なくとも1つのバッテリパラメータの決定が、少なくとも1つの測定センサ値に基づいて行われる場合に別の利点を得ることができる。例えば、センサ値を直接的又は間接的に決定することができるセンサ装置を設けることができる。最も単純な事例では、そのようなセンサ値は、バッテリ装置がどの動作状態にあるのかを表すことができる。例えば、バッテリ装置の放電状態によって充電状態を定義することができる。その種のセンサ系は、バッテリ装置に、又は使用状況での別の箇所に、例えば車両に直接配置することができる。さらに、対応するセンサ値は、例えば、動作電流の個々の電流パラメータを相応に測定することによって、動作パラメータを決定するために使用することもできる。
【0017】
本発明による方法において、少なくとも1つの動作パラメータ及び/又は少なくとも1つのバッテリパラメータの決定が、少なくとも部分的にシミュレーションモデルに基づいて行われる場合にも利点を伴う。シミュレーションモデルは、特に数学的な、若しくはコンピュータベースのシミュレーションモデルである。シミュレーションモデルのこのような使用は、純粋なセンサ値を考慮した場合に可能であるよりも複雑な可能性を考慮に入れることも可能にする。シミュレーションモデルは、例えばバッテリ装置のテストベンチによって計算若しくは生成できる。当然、本発明の範囲内で、大規模なデータセットの使用及びシミュレーションモデルの純粋に数学的な生成も考えられる。基本的に、本発明による方法においてセンサ値とシミュレーションモデルを組み合わせて使用することもできる。この種のシミュレーションモデルは、純粋に数値的なモデルとして、しかし例えば人工知能を使用して、したがっていわゆるニューラルネットワークを使用してフレキシブルなモデルとしても用いることもできる。
【0018】
本発明による方法において、外乱パラメータが、特に1kHz未満又は実質的に1kHz未満である外乱電流の電流周波数を有する場合、さらなる利点を伴う。その場合、外乱パラメータは、殊に、さらに動作電流の動作パラメータとしての相応の動作周波数よりも大きい電流周波数を有する。その場合、最大周波数は、特に、例えば約0.5kHz~約1kHzの外乱パラメータの高周波数範囲である。外乱パラメータの場合、外乱電流の電流周波数は、特に外乱電流の振幅とは無関係に形成されている。
【0019】
さらに、本発明による方法において、外乱パラメータを計算するために、バッテリ装置の実部インピーダンスと虚部インピーダンスの比較が行われる場合に有利である。実部インピーダンスとは、それぞれの状況でのバッテリ装置の実際のインピーダンスと解されるべきである。虚部インピーダンスは、それぞれのバッテリ状況でのバッテリ装置のそれぞれのシミュレーションに基づく。実部インピーダンスと虚部インピーダンスの相関関係によって、外乱パラメータの計算に対して追加の影響を及ぼすことができる。特に、このようにして、外乱パラメータを現在のバッテリ状況にさらに正確に適合させることが可能であり、それにより外乱電流が導入されたときの化学的及び/又は物理的保護メカニズムをより意図的に、かつより効果的に達成することができる。
【0020】
さらに、前の段落に記載の本発明による方法において、比較時に、外乱パラメータ(SP)を特に電流周波数の形式で計算するために極小値の範囲が選択される場合に利点を伴う。この種の極小値は、特に絶対最小値としても形成されている。周波数範囲が様々に異なる場合、インピーダンス曲線は、この実施形態では、実部インピーダンスと虚部インピーダンスとの様々に異なる相関関係にある。実部インピーダンスに対する虚部インピーダンスの極小値の選択は、化学的及び物理的保護に関する本発明による利点をさらに、及び改善して得ることができることにつながる。
【0021】
先行する2つの段落のうちの1つに記載の本発明による方法において、バッテリ装置の実部インピーダンスを虚部インピーダンスと比較するために、決定されたバッテリパラメータ及び/又は決定された動作パラメータに固有のインピーダンス曲線が使用される場合も有利であり得る。すでに冒頭で述べたように、バッテリ装置の現在の動作状況に本発明による方法の適合を行うこともできる。様々に異なったインピーダンス曲線は、例えばバッテリ装置の充電状態を放電状態から区別することができる。しかしながら、異なったインピーダンス曲線をもたらし、したがって、この実施形態における比較結果に異なった影響を及ぼす異なった電流強度及び電流周波数も考えられる。異なったインピーダンス曲線を、例えばシミュレーションモデルとして利用可能にすることもでき、殊にテストベンチ試験によって生成することができる。したがって、その種の2つ以上のインピーダンス曲線のセットは、本発明による方法が、本発明による電極の保護の利点をさらに正確かつより具体的に達成できることをもたらす。
【0022】
さらに、本発明による方法において、外乱パラメータを計算する場合に少なくとも1つの絶対限界が遵守される場合に有利である。このような絶対限界は、特に絶対上限である。しかしながら、それに加えて、又はそれに代えて、本発明の意味において絶対下限も考えられる。少なくとも2つの絶対限界によって、それぞれの外乱パラメータが入るべき限界回廊が提供される。2つ以上の外乱パラメータ、例えば外乱周波数及び外乱振幅が使用される場合、対応する限界形態を、当然これらの外乱パラメータごとに提供することができる。これは、一方では、望ましくない副次的効果、そしてとりわけ外乱パラメータが大きすぎる場合の損傷効果も限定するか、又は完全に排除することさえできることをもたらす。
【0023】
同様に、前の段落に記載の本発明による方法において、上限としての、電流振幅の形式の外乱パラメータの絶対限界として、動作電流の現在の電流振幅の半分、特に3分の1が使用される場合に有利である。すなわちこれは、外乱電流の電流強度が動作電流の電流強度よりも小さいことを意味する。とりわけ、これは、動作電流と外乱電流との組み合わせによって、組み合わせ振幅としての最大振幅がバッテリ装置の個々の部品を過度の負荷から保護することをもたらす。さらに、動作保護と電極保護との間に最適化を提供することが可能になる。当然、この場合、純粋な開ループ制御方法の他に、結果として組み合わせ振幅を監視及び再調整できるようにするために閉ループ制御方法を用いることもできる。
【0024】
本発明による方法において、外乱電流を生成するために、独自の所要電力を有する少なくとも1つの電気的二次部品がバッテリ装置の電気回路で使用される場合に別の利点を得ることができる。すなわち、そのような二次部品は、バッテリ装置の電気回路で使用される電力消費機器である。これは、標準電力消費機器、又は本発明による明示的に方法のために企図されている電力消費機器であり得る。ただし、既存の電力消費機器、特にそれぞれの状況で実際にも利用される電力消費機器の使用が好ましい。したがって、追加の電力を必要とすることなしに、相応の外乱電流を提供するために既存の電力消費機器を利用することで十分であり得る。言い換えれば、計算された外乱パラメータに基づいて外乱電流を生成するため、及びバッテリ装置の電気回路に形成することによりバッテリ装置に印加するために、それぞれの、特に能動的な二次部品が生成モジュールとして選択される。当然、外乱パラメータを生成する場合、したがって外乱電流を生成する場合に、二次部品の不都合な損傷又は不利な影響を回避するために、又は少なくとも可能な限り少なく抑えるために、生成するこの二次部品のそれぞれの限界負荷が考慮される。
【0025】
先行する請求項に記載の方法において、バッテリ装置の電気回路のインバータを二次部品として使用する場合に有利である。特に大きな利点は、インバータの出力が相応に大きいことであり、それにより電流振幅及び/又は電流周波数の形式の外乱パラメータに関して種々異なる外乱電流を生成するために広い帯域幅が利用可能になる。先行する段落ですでに述べたように、この場合もインバータの損傷周波数と損傷振幅が回避される。
【0026】
本発明による方法において、少なくとも2つの二次部品が、少なくとも部分的に時間的に並行して外乱電流を生成するために使用される場合に、さらなる利点を得ることができる。少なくとも部分的な時間的オーバーラップは、二次部品が時間的オーバーラップ中にそれぞれの外乱電流を適応させて利用可能にするために、より広い帯域幅を利用可能にできることをもたらす。これは、特に外乱電流の可能な最大振幅及び/又は周波数に該当する。当然、完全に後置され、かつ時間的オーバーラップのない2つ以上の二次部品が本発明による方法を実行することもできる。
【0027】
本発明による方法において、少なくとも2つの二次部品が同期又は実質的に同期の外乱電流で動作する場合に、さらなる利点を得ることができる。すなわちこれは、特に外乱電流の拡大した電流振幅を得るための付加的作用が利用可能になることを意味する。同期して動作する各二次部品の組み合わせは、いわば外乱電流の共同の増幅につながり、個々の二次部品の電力が低い場合、外乱電流の振幅として所望の電流強度を提供することができる。
【0028】
本発明による方法において、少なくとも2つの二次部品が非同期、又は実質的に非同期の外乱電流で動作する場合も有利であり得る。これは、動作電流に一緒に印加される2つの異なる外乱電流の形成と解することもできる。すなわち、いわば2倍の外乱電流又は2倍のリップル電流が発生する。これは特に、重畳された保護作用を提供するために、それぞれの周波数を妨害するために用いられる。化学的及び物理的保護効果に関して、上記の利点をさらに強化することができる。
【0029】
本発明の主題は、本発明による方法でバッテリ装置の検査のための検査装置でもある。そのような検査装置は、バッテリ装置の少なくとも1つの電気的動作パラメータを決定するため、及びバッテリ装置の動作電流の動作パラメータを決定するための決定モジュールを有する。さらに、計算モジュールは、動作パラメータに基づいて外乱電流の外乱パラメータを計算するために企図されている。検査装置はさらに、外乱電流を生成するための生成モジュールと、外乱電流を動作電流に印加するための印加モジュールとを備えている。本発明によれば、動作モジュール、計算モジュール及び/又は生成モジュール及び/又は印加モジュールは、本発明による方法を実行するように形成されている。したがって、本発明による検査装置は、本発明による方法との関連で詳しく説明されたのと同じ利点を伴う。このような検査装置は、例えば、定置形バッテリ装置に使用することができる。しかし、基本的に、移動型バッテリ装置、特に車両のバッテリ装置での使用も考えられる。特に、そのような検査装置は、例えば、すでに述べたシミュレーションモデルを生成するために、バッテリ装置のテストベンチで使用することもできる。
【0030】
本発明の別の主題は、コンピュータプログラム製品であって、プログラムがコンピュータによって実行される場合に、本発明による方法をコンピュータに実行させる命令を含む、コンピュータプログラム製品である。したがって、本発明によるコンプータプログラム製品は、本発明による方法との関連で詳しく説明されたのと同じ利点をもたらす。
【0031】
本発明の他の利点、特徴及び詳細は、本発明の実施例が図面を参照して詳細に説明される以下の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明によるバッテリ装置の一実施形態の模式図である。
図2】動作電流を用いる状況の図である。
図3】外乱電流を用いる状況の図である。
図4】本発明による制御装置の一実施形態の図である。
図5】インピーダンス曲線の可能性の図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1には、バッテリ装置100の使用例として車両が模式的に示されている。その場合、バッテリ装置100は、複数の個々のバッテリセルを有し、これらのバッテリセルはそれぞれ2つの電極を備えている。車両、したがってさらにバッテリ装置100がどの動作モードであるのかに応じて、バッテリパラメータEBPをバッテリ装置100に割り当てることができる。これは、例えば、充電状態、放電状態、現在の充電状態(SOC)、又は例えば経年劣化状態(SOH)であり得る。ここには、バッテリ装置100を監視するために、制御装置10と、バッテリ装置100の電気回路内の少なくとも1つの二次部品130が模式的に示されている。二次部品130は、例えば、バッテリ装置100用のインバータの形式の電力消費機器であり得る。
【0034】
図2及び図3は、本発明による方法の機能方式の基本的な中心思想を模式的に示している。図1のバッテリ装置100を出発点として、ここで、制御装置10を用いて決定工程を実行することができる。ここで、決定モジュール20は、例えば図4に示されるように、第1工程において、バッテリ装置100の電気的バッテリパラメータEBPを決定する。次に、動作パラメータBP又は動作電流IBの少なくとも1つの動作パラメータBPの決定工程が行われる。これは、図2に模式的に示されている。図2には、動作電流IBの電流周波数の周期が示されている。動作電流IBは、ここでは特に2つの電流パラメータに関して動作パラメータBPを有することができる。
【0035】
一方では、これは動作電流IBの正方向の振幅の大きさの半分である。さらに、周波数、すなわち動作電流IBの周期の長さが、ここでは動作パラメータBPとして模式的に示されている。動作電流IBの電流パラメータの1つ又は2つ、あるいはそれどころかさらなる組み合わせを決定モジュール20によって決定することができ、さらなる方法の基礎とすることができる。
【0036】
図3は、動作電流IB及び決定された動作パラメータBPに基づいて外乱パラメータSPがどのように利用可能になるかを示している。この実施形態では、外乱パラメータSPのこの生成は、動作電流IBと比較して異なった電流パラメータの生成に基づく。図3の例では、これは、一方で、第1の外乱パラメータSPより大きい振幅と、第2の外乱パラメータSPより短い周波数若しくは周期の長さが生成されることをもたらす。これらの2つの外乱パラメータSPに基づいて、図2による動作急上昇(Betriebssprung)に続いて印加される図3による外乱電流ISを生成することができる。ここで、図2による電流状況を図3の電流状況と組み合わせた場合、関係電流若しくは組み合わせ電流が生じ、この電流は、バッテリ装置100のそれぞれの電極に所望の不調和効果を有し、それに化学的及び/又は物理的観点から相応の保護作用を達成することができる。図2及び図3の実施形態の他に、基本的に、当然、動作電流IBと外乱電流ISとの間で上記の、若しくは唯一の電流パラメータの1つの形態のみを変化させることでも十分であろう。
【0037】
図4は、制御装置10の形態を模式的に示す。決定する、計算する、生成する、及び印加する個々の工程を保証するために、ここで、検査装置10が決定モジュール20、計算モジュール30、生成モジュール40、及び印加モジュール50を備えている。ここでは、入力量として、及び/又は個々の方法工程中に使用するために、シミュレーションモデル110及びセンサ装置120もさらに設けられている。
【0038】
対応する外乱パラメータSPを選択するための1つの可能性は、図5に示されるような、インピーダンス曲線IKを使用することである。ここで、バッテリ装置100の実部インピーダンスが虚部インピーダンスと互いに関係付けられる。図5から良好に見て取れるように、ここでは外乱パラメータSPの選択のための好ましい範囲である2つの極小値が形成されている。特に、インピーダンス曲線IK(図5に図示せず)は、対応する周波数範囲と結合され、それにより、極小値の選択に基づいて、対応する周波数範囲の選択も外乱電流ISの外乱パラメータSPとして選択することができる。
【0039】
上記の実施形態の説明は、本発明を例の範囲内で説明するにすぎない。当然、実施形態の個々の特徴は、技術的に有意義である限り、本発明の範囲から逸脱することなしに自由に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0040】
10 検査装置
20 決定モジュール
30 計算モジュール
40 生成モジュール
50 印加モジュール
1000 バッテリ装置
110 シミュレーションモデル
120 センサ装置
130 二次部品
EBP バッテリパラメータ
BP 動作パラメータ
IB 動作電流
SP 外乱パラメータ
IS 外乱電流
IK インピーダンス曲線
図1
図2
図3
図4
図5