(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】タイヤ及びベルト層
(51)【国際特許分類】
B60C 9/20 20060101AFI20241022BHJP
D07B 1/06 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B60C9/20 E
D07B1/06 A
(21)【出願番号】P 2019234856
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】繆 冬
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 益任
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-108763(JP,A)
【文献】特開2014-237263(JP,A)
【文献】特開2003-063209(JP,A)
【文献】特開2018-058515(JP,A)
【文献】実開平05-046997(JP,U)
【文献】特開2001-328407(JP,A)
【文献】特開2017-185984(JP,A)
【文献】特開2006-111104(JP,A)
【文献】特開2004-204391(JP,A)
【文献】特開2015-178301(JP,A)
【文献】特開2021-054356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00-19/12
D07B1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部の内部にベルト層が配されたタイヤであって、
前記ベルト層は、少なくとも1枚のベルトプライを含み、
前記ベルトプライは、断面偏平形状のスチール単線を含む複数のベルトコードを含み、
前記ベルトコードの少なくとも1つは、前記スチール単線の短径方向が前記ベルトプライの厚さ方向に対して90°未満の角度で傾斜して
おり、
前記ベルトコードは、前記スチール単線の短径方向の前記角度の平均値が前記ベルトプライの厚さ方向に対して第1方向に傾斜する第1ベルトコードと、前記スチール単線の短径方向の前記角度の平均値が前記ベルトプライの厚さ方向に対して前記第1方向と反対側の第2方向に傾斜する第2ベルトコードとを含む、
タイヤ。
【請求項2】
前記第1ベルトコードの前記角度の平均値と前記第2ベルトコードの前記角度の平均値とが等しい、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
タイヤ軸方向に隣接する5つの前記ベルトコードは、少なくとも1つの前記第1ベルトコードと、少なくとも1つの前記第2ベルトコードとを含む、請求項
1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ベルトコードの
前記角度が、5~45°である、請求項
1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
トレッド部の内部にベルト層が配されたタイヤであって、
前記ベルト層は、少なくとも1枚のベルトプライを含み、
前記ベルトプライは、断面偏平形状のスチール単線を含む複数のベルトコードを含み、
前記ベルトコードの少なくとも1つは、前記スチール単線の短径方向が前記ベルトプライの厚さ方向に対して90°未満の角度で傾斜しており、
前記ベルトコードの
前記角度
の平均値が、10~35°である
、
タイヤ。
【請求項6】
前記スチール単線は、断面形状における短径SDが0.15~0.42mmである、請求項
1ないし5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記スチール単線は、断面形状における短径SDと長径LDとの比(SD/LD)が0.70以下である、請求項
1ないし6のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記ベルトプライは、前記ベルトコードを被覆するトッピングゴムを含み、
前記トッピングゴムは、70℃における複素弾性率(E*)が7~20MPaである、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
トレッド部の内部に配されるベルト層
であって、
少なくとも1枚のベルトプライを含み、
前記ベルトプライは、断面偏平形状のスチール単線を含む複数のベルトコードを含み、
前記ベルトコードの少なくとも1つは、前記スチール単線の短径方向が前記ベルトプライの厚さ方向に対して90°未満の角度で傾斜しており、
前記ベルトコードは、前記スチール単線の短径方向の前記角度の平均値が前記ベルトプライの厚さ方向に対して第1方向に傾斜する第1ベルトコードと、前記スチール単線の短径方向の前記角度の平均値が前記ベルトプライの厚さ方向に対して前記第1方向と反対側の第2方向に傾斜する第2ベルトコードとを含む、
ベルト層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド部にベルト層を備えたタイヤ及び当該ベルト層に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベルト層に断面偏平形状のスチール単線からなるベルトコードを用いたタイヤが知られている。例えば、下記特許文献1には、扁平断面形状を有する単線スチールワイヤが引き揃えられたベルト層を埋設することで、ベルト折れに対する耐久性を良好に維持した空気入りタイヤが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の空気入りタイヤは、単線スチールワイヤ間の距離が小さく、当該部位から発生した亀裂が成長してベルト層を破損させることがあり、耐久性能に対して更なる改善が要望されていた。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、操縦安定性能、乗り心地性能及び耐久性能をバランスよく向上させ得るベルト層を備えたタイヤ及び当該ベルト層を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部の内部にベルト層が配されたタイヤであって、前記ベルト層は、少なくとも1枚のベルトプライを含み、前記ベルトプライは、断面偏平形状のスチール単線を含む複数のベルトコードを含み、前記ベルトコードの少なくとも1つは、前記スチール単線の短径方向が前記ベルトプライの厚さ方向に対して90°未満の角度で傾斜していることを特徴とする。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記ベルトコードの角度が、5~45°であるのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記ベルトコードの角度が、10~35°であるのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記スチール単線は、断面形状における短径SDが0.15~0.42mmであるのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記スチール単線は、断面形状における短径SDと長径LDとの比(SD/LD)が0.70以下であるのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記ベルトコードは、前記スチール単線の短径方向が前記ベルトプライの厚さ方向に対して第1方向に傾斜する第1ベルトコードと、前記スチール単線の短径方向が前記ベルトプライの厚さ方向に対して前記第1方向と反対側の第2方向に傾斜する第2ベルトコードとを含むのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、タイヤ軸方向に隣接する5つの前記ベルトコードは、少なくとも1つの前記第1ベルトコードと、少なくとも1つの前記第2ベルトコードとを含むのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記ベルトプライは、前記ベルトコードを被覆するトッピングゴムを含み、前記トッピングゴムは、70℃における複素弾性率(E*)が7~20MPaであるのが望ましい。
【0014】
本発明は、トレッド部の内部に配されるベルト層あって、少なくとも1枚のベルトプライを含み、前記ベルトプライは、断面偏平形状のスチール単線を含む複数のベルトコードを含み、前記ベルトコードの少なくとも1つは、前記スチール単線の短径方向が前記ベルトプライの厚さ方向に対して90°未満の角度で傾斜していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のタイヤにおいて、ベルトプライは、断面偏平形状のスチール単線を含む複数のベルトコードを含み、前記ベルトコードの少なくとも1つは、前記スチール単線の短径方向が前記ベルトプライの厚さ方向に対して90°未満の角度で傾斜している。
【0016】
このようなベルトプライは、スチール単線間の距離を大きくすることができ、当該部位の応力が緩和され、当該部位での亀裂の発生を抑制して耐久性能を向上することができる。このため、本発明のタイヤは、操縦安定性能、乗り心地性能及び耐久性能をバランスよく向上することができる。
【0017】
本発明のベルト層において、ベルトプライは、断面偏平形状のスチール単線を含む複数のベルトコードを含み、前記ベルトコードの少なくとも1つは、前記スチール単線の短径方向が前記ベルトプライの厚さ方向に対して90°未満の角度で傾斜している。
【0018】
このようなベルトプライは、スチール単線間の距離を大きくすることができ、当該部位の応力が緩和され、当該部位での亀裂の発生を抑制してタイヤの耐久性能を向上させることができる。このため、本発明のベルト層は、タイヤの操縦安定性能、乗り心地性能及び耐久性能をバランスよく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明のタイヤの一実施形態を示す断面図である。
【
図3】他の実施形態のベルトプライの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1には、本実施形態のタイヤ1の正規状態における回転軸を含むタイヤ子午線断面図が示されている。本実施形態のタイヤ1は、乗用車等に装着されるゴム製の空気入りタイヤとして好適に用いられる。なお、タイヤ1は、乗用車用のゴム製空気入りタイヤに特定されるものではなく、例えば、重荷重用の空気入りタイヤや樹脂製の空気入りタイヤ、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤ等の様々なタイヤに応用され得る。
【0021】
ここで、「正規状態」とは、タイヤ1がゴム製空気入りタイヤの場合、タイヤ1が正規リムにリム組みされ、かつ、正規内圧に調整された無負荷の状態である。以下、特に言及しない場合、タイヤ1の各部の寸法等は、この正規状態で測定された値である。
【0022】
「正規リム」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0023】
「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0024】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、環状に延びるトレッド部2と、トレッド部2の両側に延びる一対のサイドウォール部3と、サイドウォール部3に連なって延びる一対のビード部4とを含んでいる。本実施形態のタイヤ1は、一対のビード部4のビードコア5間に跨って延びるトロイド状のカーカス6と、カーカス6の半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されたベルト層7とを有している。
【0025】
カーカス6は、少なくとも1枚、本実施形態では1枚のカーカスプライ6Aを含んでいる。カーカスプライ6Aは、例えば、タイヤ周方向に対して75~90度の角度で配されたカーカスコード(図示省略)を含んでいる。カーカスコードとしては、例えば、芳香族ポリアミド又はレーヨン等の有機繊維コードが採用され得る。
【0026】
カーカスプライ6Aは、例えば、一対のビードコア5間を跨って延びる本体部6aと、この本体部6aに連なり、かつ、ビードコア5の周りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返された折返し部6bとを含んでいる。カーカスプライ6Aの本体部6aと折返し部6bとの間には、例えば、ビードコア5からタイヤ半径方向外側に延びるビードエーペックスゴム8が配されている。
【0027】
ベルト層7は、少なくとも1枚、本実施形態では2枚のベルトプライ9を含んでいる。2枚のベルトプライ9は、例えば、タイヤ半径方向内側に位置する第1ベルトプライ9Aと、第1ベルトプライ9Aの外側に位置する第2ベルトプライ9Bとを含んでいる。このようなベルト層7は、トレッド部2の剛性を高め、タイヤ1の耐久性能を向上させることができる。
【0028】
図2は、ベルトプライ9の拡大断面図である。
図2に示されるように、本実施形態のベルトプライ9の少なくとも1枚は、断面偏平形状のスチール単線11を含む複数のベルトコード10と、ベルトコード10を被覆するトッピングゴム12とを含んでいる。このようなベルトコード10は、ベルト層7の剛性を過度に向上させることなく強度を向上させることができ、タイヤ1の操縦安定性能と乗り心地性能とを両立させることができる。
【0029】
本実施形態のベルトコード10の少なくとも1つは、スチール単線11の短径方向がベルトプライ9の厚さ方向に対して90°未満の角度θで傾斜している。このようなベルトプライ9は、スチール単線11間の距離を大きくすることができ、当該部位の応力が緩和されることで、ベルトプライ9のエッジを起点とする剥離の発生を抑制して、タイヤ1の耐久性能を向上させることができる。このため、本実施形態のタイヤ1は、操縦安定性能、乗り心地性能及び耐久性能をバランスよく向上することができる。
【0030】
このような観点から、ベルトコード10の角度θは、より好ましくは、5~45°であり、さらに好ましくは、10~35°である。ベルトコード10のそれぞれは、例えば、同じ角度θで傾斜している。ベルトコード10の角度θは、スチール単線11毎に異なるものであってもよい。
【0031】
ベルトコード10の角度θがスチール単線11毎に異なる場合、各スチール単線11の角度θの平均値が上記範囲内であるのが好ましく、各スチール単線11の角度θのそれぞれが上記範囲内であるのがより好ましい。このようなスチール単線11を含むベルトプライ9は、タイヤ1の良好な操縦安定性能及び乗り心地性能を維持しつつ、タイヤ1の耐久性能を大幅に向上させることができる。
【0032】
スチール単線11は、好ましくは、断面形状における短径SDが0.15~0.42mmである。スチール単線11の短径SDが0.15mm以上であることで、スチール単線11の強度を維持し、タイヤ1の耐久性能を向上させることができる。スチール単線11の短径SDが0.42mm以下であることで、ベルト層7の剛性が過度に高くなることを抑制し、乗り心地性能を向上させることができる。
【0033】
スチール単線11は、断面形状における短径SDと長径LDとの比(SD/LD)が0.70以下であるのが好ましい。スチール単線11の比(SD/LD)が0.70以下であることで、ベルト層7の剛性が過度に高くなることを抑制し、タイヤ1の乗り心地性能を向上させることができる。
【0034】
スチール単線11は、断面形状における短径SDと長径LDとの比(SD/LD)が0.50以上であるのが好ましい。スチール単線11の比(SD/LD)が0.50以上であることで、短径SDの長さを大きくすることができ、その結果、スチール単線11の強度を維持し、タイヤ1の耐久性能を向上させることができる。
【0035】
ベルトコード10は、例えば、スチール単線11の短径方向がベルトプライ9の厚さ方向に対して第1方向に傾斜する第1ベルトコード10Aを含んでいる。ベルトコード10は、スチール単線11の短径方向がベルトプライ9の厚さ方向に対して第1方向と反対側の第2方向に傾斜する第2ベルトコード10Bをさらに含むのが望ましい。このようなベルトプライ9は、スチール単線11の傾斜に伴う応力の方向が均等になり、タイヤ軸方向の操縦安定性能を向上させることができる。
【0036】
本実施形態の第2ベルトコード10Bは、第1ベルトコード10Aと同じ角度θで反対側に傾斜している。すなわち、第1ベルトコード10Aのスチール単線11及び第2ベルトコード10Bのスチール単線11のそれぞれは、同じ角度θで互いに逆向きに傾斜している。
【0037】
スチール単線11毎に角度θが異なる場合、第1ベルトコード10Aの各スチール単線11の角度θの平均値と第2ベルトコード10Bの各スチール単線11の角度θの平均値とが略等しいのが望ましい。このようなベルトコード10は、タイヤ軸方向の操縦安定性能をより向上させることができる。
【0038】
トッピングゴム12は、好ましくは、70℃における複素弾性率(E*)が7~20MPaである。トッピングゴム12の複素弾性率(E*)が7MPa以上であることで、トッピングゴム12の歪を抑制し、タイヤ1の耐久性能を向上させることができる。トッピングゴム12の複素弾性率(E*)が20MPa以下であることで、ベルト層7の剛性が過度に高くなることを抑制し、タイヤ1の乗り心地性能を向上させることができる。
【0039】
ここで、トッピングゴム12の70℃における複素弾性率(E*)は、JIS-K6394の規定に準拠して、下記の条件で、GABO社製動的粘弾性測定装置(イプレクサーシリーズ)を用いて測定された値である。
初期歪:10%
動歪の振幅:±1%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:70℃
【0040】
トッピングゴム12のゴム組成物は、複素弾性率(E*)が上記範囲内であれば、特にその配合が限定されるものではない。トッピングゴム12に用いられるゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)等のイソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。トッピングゴム12のゴム成分としては、耐久性能の観点から、天然ゴム(NR)又は天然ゴム(NR)とイソプレンゴム(IR)とを併用することが好ましい。
【0041】
トッピングゴム12は、例えば、有機酸コバルト塩をさらに含有していてもよい。有機酸コバルト塩としては、例えば、ステアリン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ホウ素三ネオデカン酸コバルト等が挙げられる。このようなトッピングゴム12は、加硫成形時にコバルト元素によりベルトコード10との架橋が促進され、ベルトコード10との接着性を向上させることができる。
【0042】
図3は、他の実施形態のベルトプライ13の拡大断面図である。
図3に示されるように、この実施形態のベルトプライ13のベルトコード10は、第1ベルトコード10Aと、第2ベルトコード10Bと、スチール単線11の短径方向がベルトプライ9の厚さ方向に沿う第3ベルトコード10Cとを含んでいる。
【0043】
この実施形態の第1ベルトコード10Aは、スチール単線11の短径方向がベルトプライ9の厚さ方向に対して90°未満の第1角度θ1で第1方向に傾斜している。また、第2ベルトコード10Bは、スチール単線11の短径方向がベルトプライ9の厚さ方向に対して90°未満の第2角度θ2で第2方向に傾斜している。
【0044】
第3ベルトコード10Cは、スチール単線11の短径方向がベルトプライ9の厚さ方向に対してなす第3角度θ3が±5°以内であるのが望ましい。このようなベルトプライ13は、曲げ剛性のバランスが良好であり、タイヤ1の操縦安定性能、乗り心地性能及び耐久性能をバランスよく向上させることができる。
【0045】
この実施形態では、第1ベルトコード10Aの第1角度θ1と第2ベルトコード10Bの第2角度θ2とが略等しい。第1ベルトコード10Aの本数と第2ベルトコード10Bの本数とが等しい場合は、少なくとも第1角度θ1の平均値と第2角度θ2の平均値とが等しいのが望ましい。このようなベルトコード10を含むベルトプライ13は、タイヤ軸方向の操縦安定性能をより向上させることができる。
【0046】
図2及び
図3に示されるように、タイヤ軸方向に隣接する5つのベルトコード10は、少なくとも1つの第1ベルトコード10Aと、少なくとも1つの第2ベルトコード10Bとを含むのが望ましい。このようなベルトコード10を含むベルトプライ9、13は、タイヤ1の操縦安定性能、乗り心地性能及び耐久性能をバランスよく向上させることに役立つ。
【0047】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。
【実施例】
【0048】
図1のタイヤ子午線断面を有するタイヤが、表1及び表2の仕様に基づいて試作された。試作されたタイヤを用いて、操縦安定性能、乗り心地性能及び耐久性能が評価された。各試作タイヤの共通仕様及びテスト方法は、以下のとおりである。
【0049】
<共通仕様>
テスト車両 : 前輪駆動の中型乗用車
タイヤサイズ : 195/65R15
内圧 : 230kPa
【0050】
<操縦安定性能>
試作タイヤを全輪に装着したテスト車両にテストドライバー1名が乗車し、テストコースを走行した際の操縦安定性能がテストドライバーの官能により評価された。結果は、比較例1を100とする指数で表され、数値が大きいほど、操縦安定性能に優れていることを示す。
【0051】
<乗り心地性能>
試作タイヤを全輪に装着したテスト車両にテストドライバー1名が乗車し、テストコースを走行した際の乗り心地性能がテストドライバーの官能により評価された。結果は、比較例1を100とする指数で表され、数値が大きいほど、乗り心地性能に優れていることを示す。
【0052】
<耐久性能>
試作タイヤが台上耐久試験機に装着され、タイヤが破損するまでの走行距離が測定された。結果は、比較例1を100とする指数で表され、数値が大きいほど走行距離が長く、耐久性能に優れていることを示す。
【0053】
<総合評価>
操縦安定性能、乗り心地性能及び耐久性能の総合評価として、操縦安定性能、乗り心地性能及び耐久性能の平均値が算出された。結果は、比較例1を100とする指数で表され、数値が大きいほど操縦安定性能、乗り心地性能及び耐久性能がバランスよく向上していることを示す。
【0054】
テストの結果が表1及び表2に示される。
【表1】
【表2】
【0055】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに対して、操縦安定性能、乗り心地性能及び耐久性能をバランスよく向上し得ることが確認された。
【符号の説明】
【0056】
1 タイヤ
2 トレッド部
7 ベルト層
9 ベルトプライ
10 ベルトコード
11 スチール単線