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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/06 20060101AFI20241022BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20241022BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20241022BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20241022BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20241022BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C08L9/06
C08L9/00
C08L23/08
C08K3/36
C08K3/04
B60C1/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020139976
(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公開番号】P2022035560
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】冨田 皓太
(72)【発明者】
【氏名】中島 郭葵
(72)【発明者】
【氏名】遠矢 昴
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/032053(WO,A1)
【文献】特開2019-014796(JP,A)
【文献】特開2014-189698(JP,A)
【文献】特開2018-016768(JP,A)
【文献】特開2018-035235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、樹脂成分と、前記樹脂成分Aとは異なる化合物であるエチレン共重合体とを含み、
前記樹脂成分の含有量>|前記シリカの含有量-前記カーボンブラックの含有量|であり、
前記カーボンブラックの含有量>前記ブタジエンゴムの含有量であり、
前記ブタジエンゴムの含有量>前記エチレン共重合体の含有量であるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ブタジエンゴムのシス量が90%以下である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
24時間アセトン浸漬時にアセトン中に可溶なスチレンブタジエンゴム及び/又はブタジエンゴムを含有する請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記シリカの含有量>前記カーボンブラックの含有量である請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積が180m/g以上である請求項1~4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記エチレン共重合体がエチレン単位、スチレン単位及びブタジエン単位を有する共重合体である請求項1~5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
前記樹脂成分がフェノール系樹脂を含む請求項1~6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
求項1~7のいずれかに記載のゴム組成物を用いたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、乾燥路面での操縦安定性(ドライ操縦安定性)及びウェット路面での操縦安定性(ウェット操縦安定性)を改善する手法が種々検討されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、近年では、これらの性能の更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-186567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記課題を解決し、ドライ操縦安定性及びウェット操縦安定性の総合性能を改善できるタイヤ用ゴム組成物及びタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、スチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、樹脂成分と、エチレン共重合体とを含み、前記樹脂成分の含有量>|前記シリカの含有量-前記カーボンブラックの含有量|であり、前記カーボンブラックの含有量>前記ブタジエンゴムの含有量であり、前記ブタジエンゴムの含有量>前記エチレン共重合体の含有量であるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0006】
前記ブタジエンゴムのシス量が90%以下であることが好ましい。
【0007】
前記ゴム組成物が24時間アセトン浸漬時にアセトン中に可溶なスチレンブタジエンゴム及び/又はブタジエンゴムを含有することが好ましい。
【0008】
前記シリカの含有量>前記カーボンブラックの含有量であることが好ましい。
【0009】
前記シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積が180m/g以上であることが好ましい。
【0010】
前記エチレン共重合体がエチレン単位、スチレン単位及びブタジエン単位を有する共重合体であることが好ましい。
【0011】
前記樹脂成分がフェノール系樹脂を含むことが好ましい。
【0012】
本発明はまた、前記ゴム組成物を用いたタイヤに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、スチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、樹脂成分と、エチレン共重合体とを含み、樹脂成分の含有量>|シリカの含有量-カーボンブラックの含有量|であり、カーボンブラックの含有量>ブタジエンゴムの含有量であり、ブタジエンゴムの含有量>エチレン共重合体の含有量であるタイヤ用ゴム組成物であるので、ドライ操縦安定性及びウェット操縦安定性の総合性能が良好となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、スチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、樹脂成分と、エチレン共重合体とを含み、樹脂成分の含有量>|シリカの含有量-カーボンブラックの含有量|であり、カーボンブラックの含有量>ブタジエンゴムの含有量であり、ブタジエンゴムの含有量>エチレン共重合体の含有量である。
【0015】
上記ゴム組成物で前述の効果が得られる理由は、以下のように推察される。
シリカ及びカーボンブラックを配合した場合、それぞれのゴムへの分散性の違いにより、一方のみが分散したドメインが発生し、系内の硬さが不均一になることが懸念される。これに対し、上記ゴム組成物では、樹脂成分の含有量>|シリカの含有量-カーボンブラックの含有量|とすることで、樹脂成分によってゴム相が均一化(相溶化)されると同時に、系内の硬さの差を縮めることが可能となる。その結果、ゴム組成物全体で反力を発生させることができるため、ドライ操縦安定性及びウェット操縦安定性が向上すると考えられる。
また、上記ゴム組成物では、カーボンブラックの含有量をブタジエンゴムの含有量よりも多くすることで、スチレンブタジエンゴム相中に存在するカーボンブラック量が増加するため、スチレンブタジエンゴムのスチレン部とカーボンブラックとの相互作用が発生しやすくなり、ドライ操縦安定性能が更に向上すると考えられる。
また、上記ゴム組成物では、極性の低いエチレン部を持つエチレン共重合体の含有量を、ブタジエンゴムの含有量よりも少なくすることで、適度に樹脂成分をゴム表面に析出させることが可能となる。その結果、ゴム組成物の粘着性が発揮され、良好なドライ操縦安定性及びウェット操縦安定性を得ることができると考えられる。
これらの作用の組み合わせにより、ドライ操縦安定性及びウェット操縦安定性の総合性能が顕著に改善されると考えられる。
【0016】
上記ゴム組成物は、ゴム成分を含有する。
ここで、ゴム成分は、架橋に寄与する成分であり、一般的に、重量平均分子量(Mw)が1万以上のものである。
【0017】
ゴム成分の重量平均分子量は、好ましくは5万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは20万以上であり、また、好ましくは200万以下、より好ましくは150万以下、更に好ましくは100万以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0018】
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0019】
ゴム成分中の総スチレン量は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは28質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0020】
ここで、ゴム成分中の総スチレン量は、ゴム成分全量中に含まれるスチレン部の合計含有量(単位:質量%)であり、Σ(各ゴム成分の含有量×各ゴム成分中のスチレン量/100)で算出できる。例えば、ゴム成分100質量%中、スチレン量:40質量%のSBRが85質量%、スチレン量:25質量%のSBRが5質量%、スチレン量:0質量%のBRが10質量%である場合、ゴム成分中の総スチレン量は、35.25質量%(=85×40/100+5×25/100+10×0/100))である。
【0021】
ゴム成分中の総ビニル量は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、また、好ましくは55質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0022】
ここで、ゴム成分中の総ビニル量は、ゴム成分全量中に含まれるビニル部の合計含有量(単位:質量%)であり、Σ(各ゴム成分の含有量×各ゴム成分中のビニル量/100)で算出できる。例えば、ゴム成分100質量%中、ビニル量:30質量%のSBRが85質量%、ビニル量:20質量%のSBRが5質量%、ビニル量:10質量%のBRが10質量%である場合、ゴム成分中の総ビニル量は、27.5質量%(=(85×30/100+5×20/100+10×10/100))である。
【0023】
ドライ操縦安定性及びウェット操縦安定性の総合性能等の観点から、上記ゴム組成物では、ゴム成分中の総ビニル量≧ゴム成分中の総スチレン量であることが好ましい。
【0024】
ゴム成分中の総ビニル量/ゴム成分中の総スチレン量は、好ましくは1.1以上であり、また、好ましくは2.5以下、より好ましくは1.8以下、更に好ましくは1.5以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0025】
なお、各ゴム成分中のスチレン量、ビニル量は、核磁気共鳴(NMR)法によって測定できる。
また、ゴム成分中の総スチレン量、総ビニル量について、本明細書の実施例では、上述の計算式に沿って算出しているが、例えば、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析装置(Py-GC/MS)等により、タイヤから分析してもよい。
【0026】
上記ゴム組成物は、ゴム成分として、スチレンブタジエンゴム(SBR)を含有する。
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。市販品としては、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品が挙げられる。
【0027】
SBRのスチレン量は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは35質量%以上であり、また、好ましくは55質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0028】
SBRのビニル量は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは35質量%以上であり、また、好ましくは55質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0029】
なお、上述のSBRのスチレン量、ビニル量は、SBRが1種である場合、当該SBRのスチレン量、ビニル量を意味し、複数種である場合、平均スチレン量、平均ビニル量を意味する。
SBRの平均スチレン量は、{Σ(各SBRの含有量×各SBRのスチレン量)}/全SBRの合計含有量で算出でき、例えば、ゴム成分100質量%中、スチレン量:40質量%のSBRが85質量%、スチレン量:25質量%のSBRが5質量%である場合、SBRの平均スチレン量は、39.2質量%(=(85×40+5×25)/(85+5))である。
同様に、SBRの平均ビニル量は、{Σ(各SBRの含有量×各SBRのビニル量)}/全SBRの合計含有量で算出でき、例えば、ゴム成分100質量%中、ビニル量:30質量%のSBRが85質量%、ビニル量:20質量%のSBRが5質量%である場合、SBRの平均ビニル量は、29.4質量%(=(85×30+5×20)/(85+5))である。
【0030】
ゴム成分100質量%中、SBRの含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、また、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0031】
上記ゴム組成物は、ゴム成分として、ブタジエンゴム(BR)を含有する。
BRとしては特に限定されず、高シス含量のBR、低シス含量のBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。市販品としては、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品が挙げられる。
【0032】
BRのシス量(シス含量)は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは35質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、BRのシス量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0033】
なお、上述のBRのシス量は、BRが1種である場合、当該BRのシス量を意味し、複数種である場合、平均シス量を意味する。
BRの平均シス量は、{Σ(各BRの含有量×各BRのシス量)}/全BRの合計含有量で算出でき、例えば、ゴム成分100質量%中、シス量:90質量%のBRが20質量%、シス量:40質量%のBRが10質量%である場合、BRの平均シス量は、73.3質量%(=(20×90+10×40)/(20+10))である。
【0034】
ゴム成分100質量%中、BRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0035】
SBR、BR以外に使用できるゴム成分としては、イソプレン系ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
ゴム成分は、変性により、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基が導入されていてもよい。
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0037】
上記官能基を有する化合物(変性剤)の具体例としては、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0038】
上記ゴム組成物は、シリカを含有する。
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、EVONIK社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)比表面積は、好ましくは160m/g以上、より好ましくは180m/g以上、更に好ましくは190m/g以上であり、また、好ましくは250m/g以下、より好ましくは230m/g以下、更に好ましくは210m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、シリカのCTAB比表面積は、ASTM D3765-92に準拠して測定される。
【0040】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは50質量部以上であり、また、好ましくは80質量部以下、より好ましくは70質量部以下、更に好ましくは60質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0041】
上記ゴム組成物は、カーボンブラックを含有する。
カーボンブラックとしては、特に限定されず、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
カーボンブラックのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)比表面積は、好ましくは110m/g以上、より好ましくは120m/g以上、更に好ましくは130m/g以上であり、また、好ましくは180m/g以下、より好ましくは160m/g以下、更に好ましくは150m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックのCTAB比表面積は、JIS K6217-3:2001に準拠して測定される値である。
【0043】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは35質量部以上、更に好ましくは45質量部以上であり、また、好ましくは80質量部以下、より好ましくは65質量部以下、更に好ましくは55質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0044】
上記ゴム組成物では、カーボンブラックの含有量>BRの含有量である。
【0045】
カーボンブラックの含有量/BRの含有量は、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上、更に好ましくは2.2以上であり、また、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、更に好ましくは3.0以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0046】
なお、これらの関係において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対する含有量(単位:質量部)であり、BRの含有量は、ゴム成分100質量%中の含有量(単位:質量%)である。
【0047】
ドライ操縦安定性及びウェット操縦安定性の総合性能等の観点から、上記ゴム組成物では、シリカの含有量>カーボンブラックの含有量であることが好ましい。
【0048】
シリカの含有量/カーボンブラックの含有量は、好ましくは1.1以上であり、また、好ましくは2.5以下、より好ましくは1.8以下、更に好ましくは1.5以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0049】
なお、これらの関係において、カーボンブラックの含有量、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対する含有量(単位:質量部)である。
【0050】
上記ゴム組成物は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド等のスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン等のメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロ系等があげられる。市販されているものとしては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフィド系が好ましい。
【0051】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは6質量部以上、更に好ましくは8質量部以上であり、また、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0052】
上記ゴム組成物は、樹脂成分を含有する。
樹脂成分としては、例えば、芳香族系樹脂、テルペン系樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、芳香族系樹脂が好ましい。
【0053】
芳香族系樹脂は、芳香族系単量体を構成モノマーとして含むポリマーであり、例えば、芳香族系単量体1種を単独で重合した単独重合体、2種以上の芳香族系単量体を共重合した共重合体の他、芳香族系単量体及びこれと共重合し得る他の単量体との共重合体も挙げられる。
【0054】
芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等のスチレン系単量体;フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール等のフェノール系単量体;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール等のナフトール系単量体;クマロン、インデン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
効果がより良好に得られる傾向があるという理由から、芳香族系樹脂は、フェノール系単量体を構成モノマーとして含むポリマー(フェノール系樹脂)、クマロン、インデンを構成モノマーとして含むポリマー(クマロンインデン系樹脂)が好ましく、フェノール系樹脂がより好ましい。
【0056】
フェノール系樹脂としては、フェノール系単量体と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類とを酸又はアルカリ触媒で反応させることにより得られるフェノールアルデヒド縮合樹脂;フェノール系単量体と、アセチレンなどのアルキンとを反応させて得られるフェノールアルキン縮合樹脂;これらの樹脂をカシューオイル等の化合物を用いて変性した変性フェノール樹脂;等が挙げられる。なかでも、フェノールアルキン縮合樹脂が好ましく、アルキルフェノール・アセチレン縮合樹脂がより好ましい。
【0057】
上述の樹脂の市販品としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXTGエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0058】
樹脂成分の含有量(複数種の樹脂を併用する場合、その合計含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0059】
上記ゴム組成物では、樹脂成分の含有量>|シリカの含有量-カーボンブラックの含有量|である。
【0060】
樹脂成分の含有量/|シリカの含有量-カーボンブラックの含有量|は、好ましくは1.2以上、より好ましくは2.0以上、更に好ましくは3.0以上、特に好ましくは3.5以上であり、また、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.5以下、更に好ましくは4.0以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0061】
なお、これらの関係において、樹脂成分の含有量、シリカの含有量、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対する含有量(単位:質量部)である。
【0062】
上記ゴム組成物において、樹脂成分の含有量/シリカの含有量は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.4以上であり、また、好ましくは1.2以下、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.6以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、この関係において、樹脂成分の含有量、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対する含有量(単位:質量部)である。
【0063】
上記ゴム組成物において、樹脂成分の含有量/カーボンブラックの含有量は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.4以上であり、また、好ましくは1.2以下、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.6以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、この関係において、樹脂成分の含有量、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対する含有量(単位:質量部)である。
【0064】
上記ゴム組成物は、エチレン共重合体を含有する。
エチレン共重合体は、エチレン由来の構成単位(エチレン単位)を含む共重合体であり、例えば、エチレン及び芳香族系単量体(例えば、スチレン)の共重合体や、エチレン、芳香族系単量体及び共役ジエン系単量体(例えば、1,3-ブタジエン)の共重合体等が挙げられる。具体例としては、エチレン-スチレン共重合体、エチレン-スチレン-ブタジエン共重合体等が挙げられ、市販品としては、ストラクトール社等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、エチレン共重合体は、樹脂成分には含まれない。
【0065】
エチレン共重合体において、エチレン単位は、1,3-ブタジエン由来の構成単位(ブタジエン単位)への水素添加によって形成されたものであってもよい。すなわち、エチレン共重合体は、ブタジエン単位を有する(共)重合体の水素添加物であってもよい。
【0066】
効果がより良好に得られる傾向があるという理由から、エチレン共重合体としては、エチレン単位とともに、スチレン由来の構成単位(スチレン単位)及び1,3-ブタジエン由来の構成単位(ブタジエン単位)を有する共重合体が好ましく、エチレン-スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体の水素添加物がより好ましく、スチレン-ブタジエン共重合体の水素添加物が更に好ましい。
【0067】
エチレン共重合体がスチレン-ブタジエン共重合体の水素添加物である場合、その水素添加率は、水素添加前のブタジエン単位全体を100モル%として、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上であり、また、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、水素添加率は、H-NMRを測定して得られたスペクトルの不飽和結合部のスペクトル減少率から計算することができる。
【0068】
エチレン共重合体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0069】
上記ゴム組成物では、BRの含有量>エチレン共重合体の含有量である。
【0070】
BRの含有量/エチレン共重合体は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.8以上、更に好ましくは2.0以上であり、また、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.5以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0071】
なお、これらの関係において、BRの含有量は、ゴム成分100質量%中の含有量(単位:質量%)であり、エチレン共重合体の含有量は、ゴム成分100質量部に対する含有量(単位:質量部)である。
【0072】
上記ゴム組成物は、24時間アセトン浸漬時にアセトン中に可溶なSBR及び/又はBRを含有することが好ましい。
なお、本明細書において、24時間アセトン浸漬時にアセトン中に可溶なSBR、BRとは、加硫後の上記ゴム組成物について、JIS K 6229:2015に準拠した方法で、24時間アセトン抽出した際に、少なくとも一部がアセトン中に溶出するSBR、BRである。当該SBR、BRは、ゴム成分、樹脂成分には含まれない。
【0073】
24時間アセトン浸漬時にアセトン中に可溶なSBR、BRとしては、常温(25℃)で液状のSBR、BR(以下、液状SBR、液状BRともいう)を使用することができ、市販品としては、Cray valley社、(株)クラレ等の製品を使用できる。
【0074】
24時間アセトン浸漬時にアセトン中に可溶なSBR、BR(液状SBR、液状BR)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは9000以下、より好ましくは6000以下、更に好ましくは4500以下であり、また、好ましくは100以上、より好ましくは1000以上、更に好ましくは2000以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0075】
24時間アセトン浸漬時にアセトン中に可溶なSBR、BR(液状SBR、液状BR)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0076】
上記ゴム組成物は、加工助剤として、ホウ酸塩化合物を含有することが好ましい。
ホウ酸塩化合物としては、例えば、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム等のアルカリ金属塩、ホウ酸マグネシウム等のアルカリ土類金属塩や、これらの水和物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、アルカリ金属塩及びその水和物が好ましく、ホウ酸ナトリウム及びその水和物がより好ましく、四ホウ酸ナトリウムの十水和物(ホウ砂)が更に好ましい。
【0077】
ホウ酸塩化合物の市販品としては、キシダ化学(株)、健栄製薬(株)等の製品を使用できる。
【0078】
ホウ酸塩化合物の含有量は、好ましくは0.8質量部以上、より好ましくは1.2質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上であり、また、好ましくは4.5質量部以下、より好ましくは3.5質量部以下、更に好ましくは2.5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0079】
上記ゴム組成物は、オイルを含有してもよい。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等を用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。市販品としては、出光興産(株)、三共油化工業(株)、JXTGエネルギー(株)、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0080】
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは15質量部以上、より好ましくは25質量部以上、更に好ましくは30質量部以上であり、また、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0081】
上記ゴム組成物は、老化防止剤を含有してもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤等が挙げられる。市販品としては、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0083】
上記ゴム組成物は、ワックスを含有してもよい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックス等が挙げられる。市販品としては、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0084】
ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0085】
上記ゴム組成物は、ステアリン酸を含有してもよい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、市販品としては、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0086】
ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0087】
上記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、市販品としては、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0088】
酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0089】
上記ゴム組成物は、硫黄を含有してもよい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄等が挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.8質量部以上、より好ましくは1.2質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上であり、また、好ましくは6質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0091】
上記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、ジベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS)等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N′-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。市販品としては、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0092】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは4質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0093】
上記ゴム組成物には、上記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、有機過酸化物等を更に配合してもよい。添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましい。
【0094】
上記ゴム組成物は、例えば、上述の各成分をオープンロール、バンバリーミキサー等のゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0095】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは85~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫等の加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。加硫時間は、通常5~15分である。
【0096】
上記ゴム組成物は、例えば、トレッド(キャップトレッド)、サイドウォール、ベーストレッド、アンダートレッド、ショルダー、クリンチ、ビードエイペックス、ブレーカークッションゴム、カーカスコード被覆用ゴム、インスレーション、チェーファー、インナーライナー等や、ランフラットタイヤのサイド補強層などのタイヤ部材に(タイヤ用ゴム組成物として)用いることができる。なかでも、トレッドに好適である。
【0097】
本発明のタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、上記ゴム組成物を、未加硫の段階でトレッド等の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤを得る。
【0098】
上記タイヤ(空気入りタイヤ等)は、乗用車用タイヤ;トラック・バス用タイヤ;二輪車用タイヤ;高性能タイヤ;スタッドレスタイヤ等の冬用タイヤ;サイド補強層を備えるランフラットタイヤ;スポンジ等の吸音部材をタイヤ内腔に備える吸音部材付タイヤ;パンク時に封止可能なシーラントをタイヤ内部又はタイヤ内腔に備える封止部材付タイヤ;センサや無線タグ等の電子部品をタイヤ内部又はタイヤ内腔に備える電子部品付タイヤ等に使用可能であり、乗用車用タイヤに好適である。
【0099】
上記タイヤのサイズは特に限定されず、例えば、タイヤ幅は100~400mmの範囲内で、扁平率は25~85%の範囲内で、リム径は10~25インチの範囲内で、適宜選択可能である。具体例としては、105/50R16、115/50R17、125/55R20、135/45R21、145/45R21、155/45R18、165/45R22、175/45R23、185/60R20、195/55R14、205/40R16、215/40R16、225/40R17、235/40R17、245/40R16、255/40R17、265/40R17、275/35R18、285/30R19、295/45R20等が挙げられる。
【実施例
【0100】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0101】
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
【0102】
(ゴム成分)
SBR1:下記製造例1で合成した変性SBR(スチレン量:25質量%、ビニル量:55質量%、Mw:45万)
SBR2:下記製造例2で合成した変性SBR(スチレン量:40質量%、ビニル量:30質量%、Mw:95万)
SBR3:LANXESS社製のBuna VSL5025-2 HM(スチレン量:25質量%、ビニル量:50質量%、ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有)
SBR4:LANXESS社製のBuna VSL 2438-2 HM(スチレン量:38質量%、ビニル量:24質量%、ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有)
BR1:宇部興産(株)製のBR150B(シス量:97質量%、ビニル量:1質量%)
BR2:旭化成ケミカルズ(株)製のN103(シス量:38質量%、ビニル量:12質量%)
【0103】
(ゴム成分以外の薬品)
カーボンブラック:N134(CTAB:135m/g)
シリカ1:エボニックデグッサ社製のウルトラシルVN3(CTAB:165m/g)
シリカ2:Rhodia社製のZeosil Premium 200MP(CTAB:203m/g)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
液状SBR:Cray valley社製のRicon100(液状SBR、Mw:4500)
樹脂1:日塗化学(株)製のニットレジン クマロンV-120(クマロンインデン系樹脂)
樹脂2:BASF社製のコレシン(p-t-ブチルフェノール・アセチレン縮合樹脂)
オイル:三共油化工業(株)製のA/Oミックス
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
老化防止剤1:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
老化防止剤2:大内新興化学工業(株)製のノクラックRD(ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン))
エチレン共重合体1:ストラクトール社製のストラクトール40MS(エチレン-スチレン共重合体)
エチレン共重合体2:Cray valley社製のRicon100の水添品(スチレン-ブタジエン共重合体の水素添加物、水素添加率:50モル%)
ホウ酸塩化合物:キシダ化学(株)製の四ホウ酸ナトリウムの十水和物
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(ジフェニルグアニジン)
【0104】
(製造例1)
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、スチレン、及び1,3-ブタジエンを仕込んだ。反応器の内容物の温度を20℃に調整した後、n-ブチルリチウムを添加して重合を開始した。断熱条件で重合し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点で1,3-ブタジエンを追加し、更に5分重合させた後、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシランを変性剤として加えて反応を行った。重合反応終了後、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥してSBR1を得た。
【0105】
(製造例2)
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、スチレン、及び1,3-ブタジエンを仕込んだ。反応器の内容物の温度を20℃に調整した後、n-ブチルリチウムを添加して重合を開始した。断熱条件で重合し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点で1,3-ブタジエンを追加し、更に5分重合させた後、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリエトキシシランを変性剤として加えて反応を行った。重合反応終了後、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥してSBR2を得た。
【0106】
(実施例及び比較例)
表1に示す配合内容に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、150℃の条件下で12分間プレス加硫し、試験用タイヤ(サイズ:175/60R18)を製造した。得られた試験用タイヤを用いて下記評価を行い、結果を表1に示した。
なお、表1において、油展ゴム中のゴム分はゴムの欄に記載し、油展ゴム中のオイル分はオイルの欄に加算している。
【0107】
(ドライ操縦安定性)
上記試験用タイヤを全輪に装着した車両でドライ路面のテストコースを10周走行した際の周回時間を測定した。また、いずれの実施例及び比較例よりも周回時間が長い基準タイヤを用いて同様の条件で走行した。そして、各実施例及び比較例と基準タイヤとの周回時間の差を、比較例3を100として指数表示した。指数が大きいほど、基準タイヤの周回時間との差(周回時間の短縮量)が大きく、ドライ操縦安定性(ドライ路面での操縦安定性)に優れることを示す。
【0108】
(ウェット操縦安定性)
上記試験用タイヤを全輪に装着した車両でウェット路面のテストコースを10周走行した際の周回時間を測定した。また、いずれの実施例及び比較例よりも周回時間が長い基準タイヤを用いて同様の条件で走行した。そして、各実施例及び比較例と基準タイヤとの周回時間の差を、比較例4を100として指数表示した。指数が大きいほど、基準タイヤの周回時間との差(周回時間の短縮量)が大きく、ウェット操縦安定性(ウェット路面での操縦安定性)に優れることを示す。
【0109】
【表1】
【0110】
表1より、実施例は、目的とするドライ操縦安定性及びウェット操縦安定性の総合性能(各指数の合計)が比較例より優れていた。