(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 13/00 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
B60C13/00 C
B60C13/00 H
(21)【出願番号】P 2020141062
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】中島 幸一
(72)【発明者】
【氏名】阪口 哲也
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-521662(JP,A)
【文献】特開2019-104279(JP,A)
【文献】特開2020-029209(JP,A)
【文献】特表2016-523763(JP,A)
【文献】特表2016-521661(JP,A)
【文献】特開2019-104396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドウォール部を有するタイヤであって、
前記サイドウォール部の表面に、文字又は図形からなる少なくとも一つのマークが設けられ、
前記サイドウォール部の表面かつ前記マークの外側に、複数の微小突起が配された装飾領域が前記マークに隣接して形成されており、
前記装飾領域は、前記微小突起の高さが前記マークから離れるに従って小さくなる第1領域を少なくとも一部に含
み、
前記装飾領域は、その外縁を規定する輪郭縁を有し、
前記第1領域が、前記輪郭縁に沿って設けられている、
タイヤ。
【請求項2】
サイドウォール部を有するタイヤであって、
前記サイドウォール部の表面に、文字又は図形からなる少なくとも一つのマークが設けられ、
前記サイドウォール部の表面かつ前記マークの外側に、複数の微小突起が配された装飾領域が前記マークに隣接して形成されており、
前記装飾領域は、前記微小突起の高さが前記マークから離れるに従って小さくなる第1領域を少なくとも一部に含み、
前記マークが、深さdを有する凹みマークを含み、
前記サイドウォール部の正面視において、前記マークの外縁から前記装飾領域の外縁までの最短距離A1は、前記深さdよりも大きい、
タイヤ。
【請求項3】
サイドウォール部を有するタイヤであって、
前記サイドウォール部の表面に、文字又は図形からなる少なくとも一つのマークが設けられ、
前記サイドウォール部の表面かつ前記マークの外側に、複数の微小突起が配された装飾領域が前記マークに隣接して形成されており、
前記装飾領域は、前記微小突起の高さが前記マークから離れるに従って小さくなる第1領域を少なくとも一部に含み、
前記マークが、高さhを有する凸マークを含み、
前記サイドウォール部の正面視において、前記マークの外縁から前記装飾領域の外縁までの最短距離A2は、前記高さhよりも大きい、
タイヤ。
【請求項4】
サイドウォール部を有するタイヤであって、
前記サイドウォール部の表面に、文字又は図形からなる少なくとも一つのマークが設けられ、
前記サイドウォール部の表面かつ前記マークの外側に、複数の微小突起が配された装飾領域が前記マークに隣接して形成されており、
前記装飾領域は、前記微小突起の高さが前記マークから離れるに従って小さくなる第1領域を少なくとも一部に含み、
前記マークが、高さhを有する凸マークを含み、
前記サイドウォール部の正面視において、前記マークの外縁から前記装飾領域の外縁までの最短距離A2は、前記マークの前記高さhの0.6~30倍である、
タイヤ。
【請求項5】
サイドウォール部を有するタイヤであって、
前記サイドウォール部の表面に、文字又は図形からなる少なくとも一つのマークが設けられ、
前記サイドウォール部の表面かつ前記マークの外側に、複数の微小突起が配された装飾領域が前記マークに隣接して形成されており、
前記装飾領域は、前記微小突起の高さが前記マークから離れるに従って小さくなる第1領域を少なくとも一部に含み、
前記装飾領域は、前記第1領域と前記マークとの間に、高さが一定の前記微小突起が配された第2領域を含む、
タイヤ。
【請求項6】
サイドウォール部を有するタイヤであって、
前記サイドウォール部の表面に、文字又は図形からなる少なくとも一つのマークが設けられ、
前記サイドウォール部の表面かつ前記マークの外側に、複数の微小突起が配された装飾領域が前記マークに隣接して形成されており、
前記装飾領域は、前記微小突起の高さが前記マークから離れるに従って小さくなる第1領域を少なくとも一部に含み、
前記微小突起は、凹部と、前記凹部の周囲を囲んで頂面を形成する外壁部とを含む、
タイヤ。
【請求項7】
前記最短距離A1は、前記マークの前記深さdの4~30倍である、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第1領域の幅は、前記第2領域の幅の2~6倍である、
請求項5に記載のタイヤ。
【請求項9】
サイドウォール部を有するタイヤであって、
前記サイドウォール部の表面に、文字又は図形からなる少なくとも一つのマークが設けられ、
前記サイドウォール部の表面かつ前記マークの外側に、複数の微小突起が配された装飾領域が前記マークに隣接して形成されており、
前記装飾領域は、前記微小突起の密度が前記マークから離れるに従って小さくなる第3領域を少なくとも一部に含
み、
前記装飾領域は、その外縁を規定する輪郭縁を有し、
前記第3領域が、前記輪郭縁に沿って設けられている、
タイヤ。
【請求項10】
サイドウォール部を有するタイヤであって、
前記サイドウォール部の表面に、文字又は図形からなる少なくとも一つのマークが設けられ、
前記サイドウォール部の表面かつ前記マークの外側に、複数の微小突起が配された装飾領域が前記マークに隣接して形成されており、
前記装飾領域は、前記微小突起の密度が前記マークから離れるに従って小さくなる第3領域を少なくとも一部に含み、
前記マークが、深さdを有する凹みマークを含み、
前記サイドウォール部の正面視において、前記マークの外縁から前記装飾領域の外縁までの最短距離A3は、前記深さdよりも大きい、
タイヤ。
【請求項11】
サイドウォール部を有するタイヤであって、
前記サイドウォール部の表面に、文字又は図形からなる少なくとも一つのマークが設けられ、
前記サイドウォール部の表面かつ前記マークの外側に、複数の微小突起が配された装飾領域が前記マークに隣接して形成されており、
前記装飾領域は、前記微小突起の密度が前記マークから離れるに従って小さくなる第3領域を少なくとも一部に含み、
前記マークが、高さhを有する凸マークを含み、
前記サイドウォール部の正面視において、前記マークの外縁から前記装飾領域の外縁までの最短距離A4は、前記高さhよりも大きい、
タイヤ。
【請求項12】
サイドウォール部を有するタイヤであって、
前記サイドウォール部の表面に、文字又は図形からなる少なくとも一つのマークが設けられ、
前記サイドウォール部の表面かつ前記マークの外側に、複数の微小突起が配された装飾領域が前記マークに隣接して形成されており、
前記装飾領域は、前記微小突起の密度が前記マークから離れるに従って小さくなる第3領域を少なくとも一部に含み、
前記マークが、高さhを有する凸マークを含み、
前記サイドウォール部の正面視において、前記マークの外縁から前記装飾領域の外縁までの 最短距離A4は、前記マークの前記高さhの0.6~30倍である、
タイヤ。
【請求項13】
サイドウォール部を有するタイヤであって、
前記サイドウォール部の表面に、文字又は図形からなる少なくとも一つのマークが設けられ、
前記サイドウォール部の表面かつ前記マークの外側に、複数の微小突起が配された装飾領域が前記マークに隣接して形成されており、
前記装飾領域は、前記微小突起の密度が前記マークから離れるに従って小さくなる第3領域を少なくとも一部に含み、
前記装飾領域は、前記第3領域と前記マークとの間に、前記微小突起が一定の密度で配された第4領域を含む、
タイヤ。
【請求項14】
サイドウォール部を有するタイヤであって、
前記サイドウォール部の表面に、文字又は図形からなる少なくとも一つのマークが設けられ、
前記サイドウォール部の表面かつ前記マークの外側に、複数の微小突起が配された装飾領域が前記マークに隣接して形成されており、
前記装飾領域は、前記微小突起の密度が前記マークから離れるに従って小さくなる第3領域を少なくとも一部に含み、
前記微小突起は、凹部と、前記凹部の周囲を囲んで頂面を形成する外壁部とを含む、
タイヤ。
【請求項15】
前記最短距離A3は、前記マークの前記深さdの4~30倍である、請求項10に記載のタイヤ。
【請求項16】
前記第3領域の幅は、前記第4領域の幅の2~6倍である、
請求項13に記載のタイヤ。
【請求項17】
前記外壁部の前記頂面は、突起高さ方向において前記突起高さが大きい山部分を少なくとも2箇所含む、請求項6又は14に記載のタイヤ。
【請求項18】
前記頂面は、前記山部分と、前記突起高さが小さい谷部分とが周方向に交互に配される、請求項17に記載のタイヤ。
【請求項19】
前記頂面は、前記山部分と前記谷部分とが滑らかな曲面で連なる湾曲面である、請求項18に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドウォール部の外面に装飾模様が形成されたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのサイドウォール部の表面には、タイヤのメーカ名、ブランド名等を表すための文字又は図形からなるマークが形成されている。このようなマークは、視認性を高めるために、サイドウォール部の表面から突出する凸マーク、或いは表面から凹む凹みマークとして形成されている。
【0003】
しかし凸マークの場合、空気抵抗の悪化の要因となるため、あまり高くすることができない。又凹みマークの場合、サイドウォール部のゴムゲージ厚さの制約上あまり深くすることができない。このような理由により、マークの視認性を充分に高めることは難しい。
【0004】
他方、下記の特許文献1には、サイドウォール部の表面に、マークを表示する第2の地模様と、この第2の地模様に隣接する第1の地模様とを有するタイヤが記載されている。前記第1の地模様は、複数の面模様により遮断された多数のリッジによって形成された不規則なモザイク模様をなす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このタイヤは、モザイク模様が意匠性を高め、バルジデントと呼ばれる製造時の外観不良を目立たなくさせうる。しかし、マークの視認性に対しては、不充分であり、さらなる向上が望まれる。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、サイドウォール部の表面に設けるマークの視認性を高めうるタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、サイドウォール部を有するタイヤであって、
前記サイドウォール部の表面に、文字又は図形からなる少なくとも一つのマークが設けられ、
前記サイドウォール部の表面かつ前記マークの外側に、複数の微小突起が配された装飾領域が前記マークに隣接して形成されており、
前記装飾領域は、前記微小突起の高さが前記マークから離れるに従って小さくなる第1領域を少なくとも一部に含む。
【0009】
本発明に係るタイヤにおいて、前記装飾領域は、その外縁を規定する輪郭縁を有し、前記第1領域が、前記輪郭縁に沿って設けられているのが好ましい。
【0010】
本発明に係るタイヤにおいて、前記マークが、深さdを有する凹みマークを含み、前記サイドウォール部の正面視において、前記マークの外縁から前記装飾領域の外縁までの最短距離A1は、前記深さdよりも大きいのが好ましい。
【0011】
本発明に係るタイヤにおいて、前記最短距離A1は、前記マークの深さdの4~30倍であるのが好ましい。
【0012】
本発明に係るタイヤにおいて、前記マークが、高さhを有する凸マークを含み、前記サイドウォール部の正面視において、前記マークの外縁から前記装飾領域の外縁までの最短距離A2は、前記高さhよりも大きいのが好ましい。
【0013】
本発明に係るタイヤにおいて、前記最短距離A2は、前記マークの高さhの0.6~30倍であるのが好ましい。
【0014】
本発明に係るタイヤにおいて、前記装飾領域は、前記第1領域と前記マークとの間に、高さが一定の微小突起が配された第2領域を含むのが好ましい。
【0015】
本発明に係るタイヤにおいて、前記第1領域の幅は、前記第2領域の幅の2~6倍であるのが好ましい。
【0016】
本発明に係るタイヤにおいて、サイドウォール部を有するタイヤであって、
前記サイドウォール部の表面に、文字又は図形からなる少なくとも一つのマークが設けられ、
前記サイドウォール部の表面かつ前記マークの外側に、複数の微小突起が配された装飾領域が前記マークに隣接して形成されており、
前記装飾領域は、前記微小突起の密度が前記マークから離れるに従って小さくなる第3領域を少なくとも一部に含む。
【0017】
本発明に係るタイヤにおいて、前記装飾領域は、その外縁を規定する輪郭縁を有し、前記第3領域が、前記輪郭縁に沿って設けられているのが好ましい。
【0018】
本発明に係るタイヤにおいて、前記マークが、深さdを有する凹みマークを含み、前記サイドウォール部の正面視において、前記マークの外縁から前記装飾領域の外縁までの最短距離A3は、前記深さdよりも大きいのが好ましい。
【0019】
本発明に係るタイヤにおいて、前記最短距離A3は、前記マークの深さdの4~30倍であるのが好ましい。
【0020】
本発明に係るタイヤにおいて、前記マークが、高さhを有する凸マークを含み、
前記サイドウォール部の正面視において、前記マークの外縁から前記装飾領域の外縁までの最短距離A4は、前記高さhよりも大きいのが好ましい。
【0021】
本発明に係るタイヤにおいて、前記最短距離A4は、前記マークの高さhの0.6~30倍であるのが好ましい。
【0022】
本発明に係るタイヤにおいて、前記装飾領域は、前記第3領域と前記マークとの間に、前記微小突起が一定の密度で配された第4領域を含むのが好ましい。
【0023】
本発明に係るタイヤにおいて、前記第3領域の幅は、前記第4領域の幅の2~6倍であるのが好ましい。
【0024】
本発明に係るタイヤにおいて、前記微小突起は、凹部と、前記凹部の周囲を囲んで頂面を形成する外壁部とを含むのが好ましい。
【0025】
本発明に係るタイヤにおいて、前記外壁部の頂面は、突起高さ方向において前記突起高さが大きい山部分を少なくとも2箇所含むのが好ましい。
【0026】
本発明に係るタイヤにおいて、前記頂面は、前記山部分と、突起高さが小さい谷部分とが周方向に交互に配されるのが好ましい。
【0027】
本発明に係るタイヤにおいて、前記頂面は、前記山部分と谷部分とが滑らかな曲面で連なる湾曲面であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明は叙上の如く、複数の微小突起が配された装飾領域が、マークの外側に隣接して形成されている。前記装飾領域は、微小突起の高さがマークから離れるに従って小さくなる第1領域、或いは微小突起の密度がマークから離れるに従って小さくなる第3領域を少なくとも一部に含む。
【0029】
このような装飾領域では、複数の微小突起が、光を反射しにくくさせて光の吸収率を高める。そのため、装飾領域以外の領域に比して、装飾領域を暗く見せることができる。しかも、第1領域では、微小突起の高さがマークから離れるに従って小さくなることにより、又第3領域では、微小突起の密度がマークから離れるに従って小さくなることにより、それぞれ、光の吸収率が徐々に低下し、マークから離れるに従って明るくなっていく。
【0030】
これにより、装飾領域によって、マークの影を表現することが可能になり、例えば、マークが浮遊しているように見せることができる。その結果、意匠性を高めるとともに、マークに立体感を持たせることができ、マークの視認性を向上しうる。
【0031】
特に、装飾領域が、第1領域或いは第3領域を含む。これにより、装飾領域の周囲がぼやけるように見せることができ、実際の影に近づけることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】第1発明のタイヤにおける一実施形態のサイドウォール部の部分側面図である。
【
図2】凹みマークと装飾領域とを概念的に示す部分拡大側面図である。
【
図3】凹みマークと装飾領域とを示す
図2のI-I線断面図である。
【
図4】凸マークと装飾領域とを概念的に示す部分拡大側面図である。
【
図5】凸マークと装飾領域とを示す
図4のII-II線断面図である。
【
図6】第2発明のタイヤにおける凹みマークと装飾領域とを示す断面図である。
【
図7】第2発明のタイヤにおける凸マークと装飾領域とを示す断面図である。
【
図8】(a)、(b)は微小突起の斜視図、及びの側面図である。
【
図10】(a)~(c)は、さらに他の実施形態の微小突起の側面図、及びそのc-c線の位置における微小突起の横断面輪郭を示す平面図である。
【
図11】(a)、(b)は、さらに他の実施形態の微小突起の側面図、及びそのd-d線の位置における凹部の横断面輪郭を示す平面図である。
【
図12】(a)、(b)は、さらに他の実施形態の微小突起の斜視図、及び
その
平面図である。
【
図13】さらに他の実施形態の微小突起の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1、2に示すように、第1発明のタイヤ1は、少なくとも一方のサイドウォール部2の表面2Sに、タイヤのメーカ名、ブランド名、サイズ等である標章3を具える。
【0034】
標章3は、少なくとも1つのマーク4から構成される。マーク4は、文字又は図形からなり、標章3を構成する最小単位をなす。本例では、「A」、「L」、「K」、「E」である4つのマーク4により、「ALKE」の文字列である標章3、例えばブランド名が形成されている。
【0035】
サイドウォール部2の表面2Sかつマーク4の外側には、装飾領域5がマーク4に隣接して形成されている。
【0036】
装飾領域5は、その外縁を規定する輪郭縁5Eを有する。本例では、輪郭縁5Eの形状と、マーク4の輪郭形状とが実質的に同形状をなす。また輪郭縁5Eが、マーク4から例えばタイヤ半径方向内側かつタイヤ周方向一方側に位置ズレしたときの、マーク4からのはみ出し部分として、装飾領域5が形成されている。
【0037】
図3は、
図2のI-I線断面である
。図3に示すように、装飾領域5には、複数の微小突起6が互いに隣り合って配される。
【0038】
装飾領域5は、第1領域7を少なくとも含む。本例では、装飾領域5が、第1領域7と第2領域8とを含む場合が示される。
【0039】
第1領域7は、微小突起6の高さH6が、マーク4から離れるに従って小さくなる領域である。この第1領域7は、装飾領域5の輪郭縁5Eに沿って設けられている。本実施形態の第1領域7では、特に好ましい態様として、隣接する微小突起6の高さH6が連続して小さくなるように形成されている。他の態様では、隣接する微小突起6の高さH6が段階的に小さくなるように形成されても良い。
【0040】
これに対して、第2領域8は、高さH6が一定の微小突起6が配された領域である。この第2領域8は、第1領域7とマーク4との間に配される。
【0041】
本例の装飾領域5では、第1領域7と第2領域8とは、微小突起6の高さのみ相違し、微小突起6の配置の密度は一定である。本例では、第1領域7と第2領域8とにおいて、微小突起6が互いに隣接して配されている。しかし微小突起6同士が一定の間隔を隔てて配されても良い。
【0042】
このような装飾領域5では、複数の微小突起6が、光を反射しにくくさせて光の吸収率を高める。そのため、装飾領域5以外の領域に比して、装飾領域5を暗く見せることができる。しかも、第1領域7では、微小突起6の高さH6がマーク4から離れるに従って小さくなることにより光の吸収率が徐々に低下し、マーク4から離れるに従って明るくなる。
【0043】
これにより
図1、2に示すように、装飾領域5によって、マーク4の影を表現することが可能になり、例えば、マーク4が浮遊しているように見せることができる。その結果、意匠性を高めるとともに、マーク4に立体感を持たせることができ、マーク4の視認性を向上しうる。特に、第1領域7により、装飾領域5の周囲をぼやけるように見せることができ、実際の影により近づけることが可能になる。
【0044】
図1~3では、マーク4が深さdを有する凹みマーク4Aとして形成される場合が示される。この場合、
図3に示すように、サイドウォール部2の正面視において、凹みマーク4Aの外縁から装飾領域5の外縁(輪郭縁5E)までの最短距離A1は、深さdよりも大きいことが好ましい。特には、最短距離A1は、凹みマーク4Aの深さdの4~30倍であるのがより好ましい。
【0045】
このように最短距離A1を設定することにより、凹みマーク4Aの見かけの浮き上がり高さを高め、凹みマーク4Aの視認性をより向上することができる。最短距離A1が深さdの4倍を下回ると、立体感が不足し、視認性の向上効果が充分に発揮されない。逆に最短距離A1が深さdの30倍を越えると、影としての印象が弱くなり、凹みマーク4Aが浮き上がって見えなくなって立体感を損ねる傾向となる。このような観点から、最短距離A1の下限は、深さdの8倍以上がより好ましく、上限12倍以下がより好ましい。
【0046】
なお第2領域8を設けることにより、最短距離A1を充分に確保しながら、装飾領域5の周囲のみをぼかすことができ、実際の影により近づけることが可能になる。なお第2領域8がない場合、及び最短距離A1に占める第2領域8の幅W8の割合が少ない場合、装飾領域5の黒色度が減じ、影としての印象が弱くなる。
【0047】
そのために、第1領域7の幅W7は、第2領域8の幅W8の2~6倍の範囲であるのが好ましい。幅W7が幅W8の2倍を下回ると、装飾領域5の周囲をぼやかせる効果が不足し、影との認識から遠ざかる。逆に幅W7が幅W8の6倍を越えると、マーク4とのコントラストが減じて、マーク4の浮遊感や立体感が弱くなる。このような観点から、幅W7の下限は、幅W8の4倍以上がより好ましく、上限は5倍以下がより好ましい。
【0048】
図4、5に、マーク4が、高さhを有する凸マーク4Bとして形成される場合が示される。この場合、
図5に示すように、サイドウォール部2の正面視において、マーク4の外縁から装飾領域5の外縁(輪郭縁5E)までの最短距離A2は、マーク4の高さhの0.6~30倍であるのがより好ましい。
【0049】
このように最短距離A2を設定することにより、凹みマーク4Aの場合と同様に、凸マーク4Bの見かけの浮き上がり高さを高め、凸マーク4Bの視認性をより向上することができる。最短距離A2が高さhの0.6倍を下回ると、立体感が不足し、視認性の向上効果が充分に発揮されない。逆に最短距離A2が高さhの30倍を越えると、影としての印象が弱くなり、凸マーク4Bが浮き上がって見えなくなって立体感を損ねる傾向となる。このような観点から、最短距離A2の下限は、高さhの10倍以上がより好ましく、上限は15倍以下がより好ましい。
【0050】
なお凸マーク4Bの場合にも、凹みマーク4Aと同様、第1領域7とマーク4との間に第2領域8を設けることが好ましく、第1領域7の幅W7は、第2領域8の幅W8の2~6倍の範囲であるのが好ましい。特には、幅W7の下限は、幅W8の4倍以上がより好ましく、上限は5倍以下がより好ましい。
【0051】
次に第2発明のタイヤ21を説明する。第2発明のタイヤ21は、
図6、7に示すように、第1領域7に代えて第3領域22が形成される以外、第1発明のタイヤ1と実質的に同じ構造が採用される。
【0052】
具体的には、サイドウォール部2の表面2Sに、少なくとも一つのマーク4が形成される。またサイドウォール部2の表面2Sかつマーク4の外側には、複数の微小突起6が互いに隣り合って配された装飾領域5が、マーク4に隣接して形成されている。
【0053】
第2発明のタイヤ21において、装飾領域5は、第3領域22を少なくとも含む。本例では、装飾領域5が、第3領域22と第4領域23とを含む場合が示される。
【0054】
第3領域22は、微小突起6の密度がマーク4から離れるに従って小さくなる領域である。本実施形態の第3領域22では、特に好ましい態様として、微小突起6の密度が連続して小さくなるように形成されている。他の態様では、微小突起6の密度が段階的に小さくなるように形成されても良い。この第3領域22は、装飾領域5の外縁を規定する輪郭縁5Eに沿って設けられる。これに対して、第4領域23は、微小突起6が一定の密度で配された領域であって、第3領域22とマーク4との間に設けられる。本例では第4領域23において、微小突起6が互いに隣接して配されている場合が示されるが、微小突起6同士が一定の間隔を隔てて配されても良い。
【0055】
前記微小突起6の「密度」は、単位面積に占める微小突起6の底面積の総和の割合で定義される。言い換えると、単位面積の面内に形成される微小突起6の底面の面積s(微小突起6の下端での断面積に相当。)の総和Σsと、単位面積Sとの比、Σs/Sで定義される。
【0056】
このような装飾領域5では、複数の微小突起6が、光を反射しにくくさせて光の吸収率を高める。そのため、装飾領域5以外の領域に比して、装飾領域5を暗く見せることができる。しかも第3領域22では、微小突起6の密度がマーク4から離れるに従って小さくなるため、第1領域7と同様に、光の吸収率が徐々に低下し、マーク4から離れるに従って明るくなる。
【0057】
これにより、装飾領域5によって、マーク4の影を表現することが可能になり、例えば、マーク4が浮遊しているように見せることができる。その結果、意匠性を高めるとともに、マーク4に立体感を持たせることができ、マーク4の視認性を向上しうる。特に、第3領域22により、装飾領域5の周囲をぼやけるように見せることができ、実際の影により近づけることが可能になる。
【0058】
図6では、マーク4が深さdを有する凹みマーク4Aとして形成される場合が示されている。この場合、サイドウォール部2の正面視において、凹みマーク4Aの外縁から装飾領域5の外縁(輪郭縁5E)までの最短距離A3は、深さdよりも大きいことが好ましい。特には、最短距離A3は、凹みマーク4Aの深さdの4~30倍であるのが、第1発明における最短距離A1と同じ理由により好ましい。特には最短距離A3の下限は深さdの8倍以上がより好ましく、上限は12倍以下がより好ましい。
【0059】
なお第4領域23を設けることにより、最短距離A3を充分に確保しながら、装飾領域5の周囲のみをぼかすことができ、実際の影により近づけることが可能になる。なお第4領域23がない場合、及び最短距離A3に占める第4領域23の幅W23の割合が少ない場合、装飾領域5の黒色度が減じ、影としての印象が弱くなる。
【0060】
そのために、第3領域22の幅W22は、第4領域23の幅W23の2~6倍の範囲であるのが、第1発明における幅W7と幅W8との関係W7/W8と同理由によってより好ましい。特には、幅W22の下限は、幅W23の4倍以上がより好ましく、上限は5倍以下がより好ましい。
【0061】
図7では、マーク4が、高さhを有する凸マーク4Bとして形成される場合が示される。この場合、サイドウォール部2の正面視において、凸マーク4Bの外縁から装飾領域5の外縁(輪郭縁5E)までの最短距離A4は、凸マーク4Bの高さhの0.6~30倍であるのが、最短距離A2と同じ理由により好ましい。
【0062】
なお凸マーク4Bの場合にも、凹みマーク4Aと同様、第3領域22とマーク4との間に第4領域23を設けることが好ましく、第3領域22の幅W22は、第4領域23の幅W23の2~6倍の範囲であるのが好ましい。特には、幅W22の下限は、幅W23の4倍以上がより好ましく、上限は5倍以下がより好ましい。
【0063】
図示されないが、第3領域22において、微小突起6の高さは一定でなくても良いが、この場合、第1領域7と同様、第3領域22における微小突起6の高さはマーク4から離れるに従って小さくなるのが好ましい。この場合、装飾領域5の周囲を、より一層ぼやけて見せることができ、実際の影により近づけることが可能になる。
第1発明のタイヤ1、第2発明のタイヤ21において、微小突起6の高H6は、マーク4の深さd或いは高さhより小であるのが好ましい。
【0064】
<微小突起6>
次に、第1発明のタイヤ1及び第2発明のタイヤ21において使用される微小突起6について説明する。
【0065】
図8(a)、(b)に示すように、微小突起6として柱状の突起が好適に採用される。柱状とは、サイドウォール部2の表面2Sから、例えば、円柱状、角柱状、円錐状、円錐台状、角錐状等で突出するもので、サイドウォール部2に沿って細長く延びるリッジとは区別される。柱状の微小突起6は、上端が平坦でも良いし、先鋭でも良い。特に好ましくは、本例の如く、微小突起6が、上端に配される凹部14と、この凹部14の周囲を囲んで突起頂部6Eを形成する例えば管状の外壁部15とを具えるものが好ましい。
【0066】
このような微小突起6に光が照射されると、微小突起6の外側面6S(外壁部15の外側面に相当。)に照射された光が拡散し、装飾領域5が黒く見える。又突起頂部6Eに照射された光は、主に外壁部15の頂面15Sのみで反射され、凹部14では光が吸収される。そのため、突起頂部6Eも黒く見え、装飾領域5以外の領域、例えばマーク4とのコントラストが高められ、視認性が向上する。
【0067】
本例では、微小突起6の外壁部15には、突起高さ方向において、突起高さが大きい山部分16を少なくとも2箇所含む。本例では外壁部15が管状をなし、山部分16と、突起高さが小さい谷部分17とが周方向に交互に配される場合が示される。なお
図13に示すように、頂面15Sを平面とすることもできる。
【0068】
本例では、外壁部15の頂面15Sは、山部分16と谷部分17とが滑らかな曲面で波状に連なる湾曲面18をなす。
【0069】
このような微小突起6は、外壁部15の頂面15Sが、山部分16を2箇所以上含む面で形成されるため、頂面15Sでも光の拡散が起こり、突起頂部6Eを一層黒く見せることができる。このように、本例の微小突起6は、外側面6Sによる光の拡散と、凹部14による光の吸収と、外壁部15の頂面15Sによる光の拡散との相乗効果により、上端に凹部14が無い例えば円錐台状の微小突起に比して、装飾領域5を一層暗く(黒く)見せることができる。
【0070】
山部分16の形成数は、3~6の範囲が、光の拡散の効果を高める上で好ましい。
【0071】
微小突起6は、突起高さ方向と直交する横断面輪郭6aを有する。横断面輪郭6aは、円形状又は楕円形状であるのが望ましい。円形状の場合、いずれの方向から照射された光に対しても、同じように光を拡散しうる。そのため、方向性を有することなく、安定してコントラストを高めることができる。これに対して、楕円形状の場合、楕円の長軸側から照射される光の拡散と、短軸側から照射される光の拡散とに差を持たせることができる。そのため、コントラストに方向性を持たせることができ、外観に意外性を与えうる。
【0072】
微小突起6では、その横断面輪郭6aが下端側(突起の根元側)よりも上端側(突起頂部6Eの側)が小さいのが好ましい。このような微小突起6は、下端側に高い剛性を有する。そのため、変形し難く、欠けやクラックが抑制され、視認性が長期で確保される。本例では、微小突起6の横断面輪郭6aが、下端側から上端側に向かって漸減している場合が示される。より具体的には、本例の微小突起6は、その外側面6Sが、全長に亘って、下端側から上端側に向かってテーパ状に形成されている。しかし横断面輪郭6aは、このような態様に限定されるものではない。
【0073】
図8(b)に示されるように、微小突起6の最大幅L1は、0.30~1.00mmであるのが望ましい。微小突起6は、その下端において最大幅L1を有する。このような微小突起6は、照射された光による影の暗い部分を大きく確保できる。微小突起6の最大幅L1が0.30mm未満の場合、微小突起6の剛性が小さくなり、クラックや欠けが生じ易くなるおそれがある。微小突起6の最大幅L1が1.00mmを超える場合、微小突起6の外側面6Sに照射される光が増加し明るくなり、マーク4とのコントラストが小さくなる恐れがある。
【0074】
上述の作用を効果的に発揮させるために、微小突起6の最小幅L2は、0.25~0.95mmであるのが望ましい。微小突起6は、その上端において最小幅L2を有する。これにより、剛性を確保しながら暗くなる部分を作ることができる。
【0075】
微小突起6は、山部分16において最大高さH1maxを有し、谷部分17において最小高さH1minを有する。最大高さH1maxは、0.20~0.60mmが望ましい。最大高さH1maxが、0.20mm未満の場合、微小突起6が低すぎて、光の拡散の効果が減じ、充分なコントラストが得られなくなる。又最大高さH1maxが、0.60mmを越える場合、微小突起6に損傷を招く傾向となる。
【0076】
微小突起6が最大高さH1maxを有する場合、この最大高さH1maxが、微小突起6の高さH6として、定義される。
【0077】
又最小高さH1minは、0.10~0.50mmが望ましく、特には、最大高さH1maxと最小高さH1minとの差ΔH=(H1max-H1min)が、0.10~0.40mmであるのが好ましい。差ΔHが0.10mm未満の場合、外壁部15の頂面15Sにおける光の拡散の効果を有効に得るのが難しい。逆に0.40mmを越えると、山部分16で損傷を招く傾向となる。
【0078】
又外壁部15の上端における厚さW2は0.20mm以下であるのが望ましい。厚さW2が0.20mmを超える場合、凹部14が小さくなり、微小突起6を黒く見せる効果が小さくなる傾向がある。なお、厚さW2の下限は0.05mm以上であるのが好ましい。これを下回ると、微小突起6の剛性が小さくなり、微小突起6に損傷を招く傾向となる。
【0079】
図8(a)に示されるように、凹部14は、その深さ方向と直交する横断面輪郭14aを有する。この横断面輪郭14aは、円形状又は楕円形状であるのが望ましい。このような凹部14は、微小突起6の剛性を高く維持するとともに、多方向からの光を吸収でき、微小突起6を黒く見せるのに役立つ。本例では、凹部14の横断面輪郭14aが円形状の場合が示される。なお楕円形状の場合、コントラストに方向性を持たせることができ、外観に意外性を与えうる。
【0080】
凹部14の横断面輪郭14aは、下端部側よりも上端部側が大きいのが好ましい。このような微小突起6は、下端側に高い剛性を有するため、変形し難く、欠けやクラックが抑制される。本例では、横断面輪郭14aが、下端側から上端側に向かって漸増している場合が示される。より具体的には、本例の微小突起6は、凹部14の内側面14Sが、全長に亘って、下端側から上端側に向かって逆テーパ状に形成されている。しかし横断面輪郭14aは、このような態様に限定されるものではない。
【0081】
図8(b)に示されるように、凹部14の山部分16からの深さHcは、微小突起6の前記最大高さH1maxの15%~100%の範囲が好ましい。15%を下回ると、凹部14の底面で光が反射する傾向となり、微小突起6を黒く見せる効果が減じる。又100%を越えると、微小突起6の剛性が減じ、微小突起6に損傷を招く傾向となる。そのため、深さHcは、最大高さH1maxの90%以下が好ましい。なお深さHcは、0.15~0.60mmの範囲であるのも好ましい。
【0082】
凹部14の最大幅L3は、0.10~0.90mmであるのが望ましい。凹部14は、その上端において最大幅L3を有する。最大幅L3が0.10mm未満の場合、凹部14による光の吸収効果が小さくなる傾向を招く。最大幅L3が0.90mmを超える場合、微小突起6の剛性が減じ、微小突起6に損傷を招く傾向となる。
【0083】
特に限定されないが、凹部14の最小幅L4は、最大幅L3以下であり、好ましくは、最大幅L3の70%以下が望ましい。凹部14は、その下端において最小幅L4を有する。
【0084】
図9は、微小突起6の他の実施形態の斜視図である。この実施形態の微小突起6と、本実施形態の微小突起6とで同じ構成要素については、同じ符号が付されその詳細な説明が省略される。
図9に示されるように、微小突起6では、凹部14を囲む外壁部15の頂面15Sは、山部分16と谷部分17とが平らな傾斜面で連なる屈曲面19として形成される。この場合にも、頂面15Sが前記湾曲面18(
図8に示す)の場合と同様の効果を奏することができる。
【0085】
図10(a)~(c)に、それぞれ、微小突起6のさらに他の実施形態における側面図、及びそのc-c線の位置における微小突起6の横断面輪郭6aが示される。この実施形態の微小突起6と、本実施形態の微小突起6とで同じ構成要素については、同じ符号が付されその詳細な説明が省略される。
【0086】
図10(a)の微小突起6は、例えば、横断面輪郭6aが下端側から上端側まで同じ大きさで形成される。即ち、微小突起6が円柱状をなす。このような微小突起6は、剛性には不利を招くものの、テーパ状の微小突起6(
図8に示す)と同様に、微小突起6を黒く見せる効果を発揮し、マーク4とのコントラストを強調することができる。また、この実施形態では、凹部14の横断面輪郭14aが下端側から上端側まで同じ大きさで形成される。このような凹部14は、剛性には不利を招くものの、逆テーパ状の凹部14(
図8に示す)と同様に、光の吸収効果を発揮し、マーク4とのコントラストを強調することができる。
【0087】
図10(b)の微小突起6は、その横断面輪郭6aが、下端側から上端側に向かって段階的に小さくなる部分
P、即ち、段差部分
Pを含む。この実施形態では、段差が一段の場合が示されるが、複数段であっても良い。このような微小突起6は、テーパ状の微小突起6(
図8に示す)と同様に、剛性を高く確保しながら、微小突起6を黒く見せる効果を発揮し、マーク4とのコントラストを強調することができる。この実施形態の微小突起6では、段差部分
Pの上方側の部分Y1及び下方側の部分Y2が、それぞれ円柱状で形成されている。しかし各部分Y1、Y2を、
図8に示すようにテーパ状に構成することもできる。
【0088】
図10(c)の微小突起6では、横断面輪郭6aが段階的に小さくなる部分(段差部分)
Pにおいて、一方の横断面輪郭6aと他方の横断面輪郭6aとは
、一部Kが接している。このような、微小突起6は、コントラストに方向性を持たせることができ、外観に意外性を与えうる。
【0089】
図11(a)、(b)に、それぞれ、微小突起6のさらに他の実施形態における側面図、及びそのd-d線の位置における凹部14の横断面輪郭14aが示される。この実施形態の微小突起6と、本実施形態の微小突起6とで同じ構成要素については、同じ符号が付されその詳細な説明が省略される。
【0090】
図11(a)において、凹部14は、その横断面輪郭14aが、下端側から上端側に向かって段階的に大きくなる部分P2、即ち、段差部分P2を含む。この実施形態では、段差が一段の場合が示されるが、複数段であっても良い。このような凹部14は、逆テーパ状の凹部14(
図8に示す)と同様に、剛性を高く確保しながら、光の吸収効果を発揮し、マーク4とのコントラストを強調することができる。
【0091】
図11(b)の微小突起6では、横断面輪郭14aが段階的に小さくなる部分(段差部分)P2において、一方の横断面輪郭14aと他方の横断面輪郭14aとは
、一部
Jが接している。
【0092】
図12(a)、(b)に、微小突起6のさらに他の実施形態における斜視図及び平面図が示される。この実施形態の微小突起6と、本実施形態の微小突起6とで同じ構成要素については、同じ符号が付されその詳細な説明が省略される。
【0093】
図12(a)、(b)において、微小突起6は、外壁部15が2つの山部分16と1つの谷部分17とを具える。具体的には、凹部14の周囲を囲む外壁部15が、管状ではなく、スリット20により周方向に途切れるC字状に形成される。そして外壁部15の頂面15Sでは、2つの山部分16と1つの谷部分17とが段差状に形成される。この実施形態では、山部分16が平面をなす。
【0094】
なお図示されないが、微小突起6として、上端に向かって厚さが減じるリブ状突起(例えばリッジ)を採用することもできる。この場合、リブ状突起(微小突起6)は、マーク4の外縁と平行にのびるのが好ましい。
【0095】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0096】
(1)
図1に示すように、サイドウォール部の表面に、マークからなる標章(「ALKE」の文字列)を具える空気入りタイヤが形成された。各タイヤには、複数の微小突起が配された表1~4の仕様の装飾領域が各マークに隣接して形成されている。
【0097】
表1、2は、第1発明のタイヤであって、表1にはマークが凹みマークの場合が、表2にはマークが凸マークの場合がそれぞれ記載されている。表1、2において、比較例1A、1Bは、装飾領域自体が無いタイヤであり、比較例2A、2Bは、装飾領域に第1領域が無いタイヤである。
【0098】
表3、4は、第2発明のタイヤであって、表3にはマークが凹みマークの場合が、表4にはマークが凸マークの場合がそれぞれ記載されている。表3、4において、比較例1C、1Dは、装飾領域自体が無いタイヤであり、比較例2C、2Dは、装飾領域に第3領域が無いタイヤである。
【0099】
各タイヤにおいて、標章の視認性がテストされた。共通仕様及びテスト方法は、以下の通りである。
<共通仕様>
微小突起:柱状の突起(
図8)
--凹部:有
--山部分の形成数:4
--上端面の形状:湾曲面
--最大高さH1max <mm>:0.3
--最小高さH1min <mm>: 0.2
--差ΔH <mm>:0.1
--最小幅L2 <mm>:0.41
--最大幅L1 <mm>:0.54
--凹部の深さHc <mm>:0.3
--凹部の最大幅L3 <mm>:0.31
--凹部の最小幅L4 <mm>:0.2
--厚さW2 <mm>:0.05
【0100】
<視認性>
視認性は、目視による官能評価により、表1では比較例1Aを100とする指数により、表2では比較例1Bを100とする指数により、表3では比較例1Cを100とする指数により、表4では比較例1Dを100とする指数により、評価されている。数値が大なほど視認性に優れている。
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
表1~4に示すように実施例のタイヤは、標章に対する視認性に優れているのが確認できる。
【符号の説明】
【0106】
1 タイヤ
2 サイドウォール部
2S 表面
4 マーク
4A 凹みマーク
4B 凸マーク
5 装飾領域
5E 輪郭縁
6 微小突起
7 第1領域
8 第2領域
14 凹部
15 外壁部
15S 頂面
16 山部分
17 谷部分
18 湾曲面
21 タイヤ
22 第3領域
23 第4領域
H6 高さ