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特許7578140交通監視装置、交通監視システム、交通監視方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】交通監視装置、交通監視システム、交通監視方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20241029BHJP
   G08G 1/01 20060101ALI20241029BHJP
   G08G 1/04 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
G08G1/00 A
G08G1/01 E
G08G1/04 A
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022539825
(86)(22)【出願日】2020-07-28
(86)【国際出願番号】 JP2020028845
(87)【国際公開番号】W WO2022024208
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 尚武
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 均
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-019510(JP,A)
【文献】特開2014-078148(JP,A)
【文献】国際公開第2020/100451(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/047687(WO,A1)
【文献】特開2017-215759(JP,A)
【文献】特開2016-095695(JP,A)
【文献】特表2004-524618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路における車両の位置である車両位置を示す位置情報を取得する位置取得手段と、
前記位置情報に基づいて、前記車両位置の経時的な変化を示す第1履歴情報を生成する履歴生成手段と、
道路における異常事象の種別に対応する車両位置の経時的な変化のパターンを示す事象別履歴パターンと前記第1履歴情報が示す前記車両位置の経時的な変化とに基づいて、前記道路における前記異常事象を検出する異常検出手段と、
前記履歴生成手段によって生成された第1履歴情報に基づいて、前記道路について予測される車両位置の経時的な変化を示す予測情報を生成する予測手段と
前記事象別履歴パターンと前記予測情報が示す経時的な変化とに基づいて、前記道路において発生する異常事象の種別を予測する異常予測手段とを備え、
前記事象別履歴パターンは、前記異常事象としての渋滞に対応する渋滞パターンと、前記異常事象としての路上障害物に対応する障害物パターンと、の少なくとも1つを含み、
前記渋滞パターンは、前記車両の速度が基準速度よりも低速であり、かつ、車間距離が基準距離よりも短いことを示し、
前記障害物パターンは、前記車両が減速して車線を変更した後に、元の車線に戻ることを示す
交通監視装置。
【請求項2】
前記位置取得手段は、前記道路に敷設された光ファイバを利用した光ファイバセンシングに基づいて得られる前記道路における前記位置情報を取得する
請求項1に記載の交通監視装置。
【請求項3】
前記事象別履歴パターンは、前記異常事象としての前記車両の停止に対応する停止パターンをさらに含む
請求項1又は2に記載の交通監視装置。
【請求項4】
画面を表示手段に表示させる表示制御手段をさらに含み、
前記表示制御手段は、前記異常検出手段によって異常事象が検出された場合に、当該異常事象の発生場所を示す道路図を前記画面に表示させる
請求項1から3のいずれか1項に記載の交通監視装置。
【請求項5】
前記道路を撮影する撮像手段を制御する撮像制御手段をさらに含み、
前記撮像制御手段は、前記異常検出手段によって異常事象が検出された場合に、当該異常事象の発生場所を撮像手段に拡大して撮影させる
請求項1から4のいずれか1項に記載の交通監視装置。
【請求項6】
前記予測手段は、訓練用の前記第1履歴情報を入力として前記予測情報を生成する機械学習をした学習済みの学習モデルに基づいて、前記履歴生成手段によって生成された第1履歴情報を入力として前記道路についての予測情報を生成する
請求項1から5のいずれか1項に記載の交通監視装置。
【請求項7】
前記予測手段は、前記異常検出手段によって異常事象が検出された場合に、当該異常事象の種別と前記履歴生成手段によって生成された第1履歴情報とに基づいて、前記予測情報を生成する
請求項1から6のいずれか1項に記載の交通監視装置。
【請求項8】
前記予測手段は、訓練用の前記第1履歴情報と前記異常事象の種別とを入力として前記予測情報を生成する機械学習をした学習済みの学習モデルに基づいて、前記履歴生成手段によって生成された第1履歴情報と前記異常検出手段によって検出された異常事象の種別とを入力として前記道路についての予測情報を生成する
請求項7に記載の交通監視装置。
【請求項9】
画面を表示手段に表示させる表示制御手段をさらに含み、
前記表示制御手段は、前記異常予測手段によって異常事象の発生が予測される場合に、当該発生が予測される異常事象の発生場所を示す道路図を前記画面に表示させる
請求項1から8のいずれか1項に記載の交通監視装置。
【請求項10】
前記車両に搭載された運転制御装置と通信する通信手段をさらに含み、
前記通信手段は、前記異常予測手段によって異常事象の発生が予測される場合に、当該発生が予測される異常事象の発生場所を示す情報を前記運転制御装置に送信する
請求項に記載の交通監視装置。
【請求項11】
前記異常予測手段によって異常事象の発生が予測される場合に、当該発生が予測される異常事象の種別に基づいて、当該異常事象を緩和するための交通管制手段を含む交通管制情報を生成する管制手段をさらに備える
請求項から10のいずれか1項に記載の交通監視装置。
【請求項12】
前記管制手段は、さらに、過去の前記異常事象に対して採用された前記交通管制手段と、当該交通管制手段によって緩和された程度を示す評価値、又は、当該交通管制手段によって緩和されたか否かと、を含む実績情報に基づいて、前記異常予測手段によって発生が予測される異常事象が前記管制手段によって生成される交通管制手段によって緩和される程度の予想を示す評価値、又は、当該交通管制手段によって緩和されると予想されるか否か、を示す評価情報を生成する
請求項11に記載の交通監視装置。
【請求項13】
前記管制手段は、さらに、前記生成した交通管制情報が示す交通管制手段の中から、ユーザが選定する交通管制手段を受け付け、当該選定された交通管制手段を示す決定情報を生成する
請求項11又は12に記載の交通監視装置。
【請求項14】
画面を表示手段に表示させる表示制御手段をさらに含み、
前記表示制御手段は、前記管制手段から出力される決定情報を前記画面に表示させる
請求項13に記載の交通監視装置。
【請求項15】
前記車両に搭載された運転制御装置と通信する通信手段をさらに含み、
前記通信手段は、前記管制手段から出力される決定情報を前記運転制御装置に送信する
請求項13又は14に記載の交通監視装置。
【請求項16】
前記交通管制手段は、インターチェンジの閉鎖、前記発生が予測される異常事象の発生地点を回避する別ルート、道路の通行料金の変更、緊急人員の派遣計画の少なくとも1つを含む
請求項11から13のいずれか1項に記載の交通監視装置。
【請求項17】
前記履歴生成手段は、
前記位置情報に基づいて、前記車両位置の経時的な変化を求める位置変化取得手段と、
前記求められた経時的な変化に基づいて、前記車両の走行方向が第1方向であるか、当該第1方向とは逆の第2方向であるかを判別する走行方向判別手段と、
前記第1方向に走行する前記車両に関する前記第1履歴情報を生成する第1生成手段と、
前記第2方向に走行する前記車両に関する前記車両位置の経時的な変化を示す第2履歴情報を生成する第2生成手段とを含む
請求項1から16のいずれか1項に記載の交通監視装置。
【請求項18】
前記第1履歴情報に基づいて、前記道路の交通状況を示す交通パラメータの値を求める交通状況取得手段をさらに備え、
前記交通パラメータは、道路を走行する車両の速度、道路の交通密度、道路において予め定められた地点を単位時間当たりに走行する車両の量である交通量、道路が車両によって占められる割合を示す占有率、の少なくとも1つを含む
請求項1から17のいずれか1項に記載の交通監視装置。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか1項に記載の交通監視装置と、
前記道路に敷設され、光信号の反射を抑制する終端処理が一端に施された光ファイバと、
前記光ファイバに光信号を入力するとともに、当該光信号の入力に伴って生じる後方散乱光同士が干渉した光の強度である光干渉強度の変化量を観測するセンシング装置とを備え、
前記位置取得手段は、前記センシング装置によって観測された前記光干渉強度の変化量に基づいて得られる前記道路における前記位置情報を取得する
交通監視システム。
【請求項20】
コンピュータが、
道路における車両の位置である車両位置を示す位置情報を取得することと、
前記位置情報に基づいて、前記車両位置の経時的な変化を示す第1履歴情報を生成することと、
道路における異常事象の種別に対応する車両位置の経時的な変化のパターンを示す事象別履歴パターンと前記第1履歴情報が示す前記車両位置の経時的な変化とに基づいて、前記道路における前記異常事象を検出することと、
前記生成された第1履歴情報に基づいて、前記道路について予測される車両位置の経時的な変化を示す予測情報を生成することと
前記事象別履歴パターンと前記予測情報が示す経時的な変化とに基づいて、前記道路において発生する異常事象の種別を予測することとを含み、
前記事象別履歴パターンは、前記異常事象としての渋滞に対応する渋滞パターンと、前記異常事象としての路上障害物に対応する障害物パターンと、の少なくとも1つを含み、
前記渋滞パターンは、前記車両の速度が基準速度よりも低速であり、かつ、車間距離が基準距離よりも短いことを示し、
前記障害物パターンは、前記車両が減速して車線を変更した後に、元の車線に戻ることを示す
交通監視方法。
【請求項21】
コンピュータに、
道路における車両の位置である車両位置を示す位置情報を取得することと、
前記位置情報に基づいて、前記車両位置の経時的な変化を示す第1履歴情報を生成することと、
道路における異常事象の種別に対応する車両位置の経時的な変化のパターンを示す事象別履歴パターンと前記第1履歴情報が示す前記車両位置の経時的な変化とに基づいて、前記道路における前記異常事象を検出することと、
前記生成された第1履歴情報に基づいて、前記道路について予測される車両位置の経時的な変化を示す予測情報を生成することと
前記事象別履歴パターンと前記予測情報が示す経時的な変化とに基づいて、前記道路において発生する異常事象の種別を予測することとを実行させ、
前記事象別履歴パターンは、前記異常事象としての渋滞に対応する渋滞パターンと、前記異常事象としての路上障害物に対応する障害物パターンと、の少なくとも1つを含み、
前記渋滞パターンは、前記車両の速度が基準速度よりも低速であり、かつ、車間距離が基準距離よりも短いことを示し、
前記障害物パターンは、前記車両が減速して車線を変更した後に、元の車線に戻ることを示すプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通監視装置、交通監視システム、交通監視方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、地点Aから地点Bまでの路線上の対象区間での移動体の分布状況を把握する技術が開示されている。特許文献1に記載の経路誘導装置は、ある時断面において、対象区間を数百メートルごとに分割した小区間の各々に存在する移動体の存在台数を、車両感知器の検出結果に基づいて算出することにより、移動体の分布状況を把握する。
【0003】
特許文献1に記載の車両感知器は、主として道路交通において道路上を走行する自動車の速度や通過交通量等を検知するために小区間に数個設置され、道路交通管制分野において広く用いられる旨の記載がある。
【0004】
しかし、車両感知器(トラフィックカウンタ)はその地点を通過する車両の情報を取得するだけなので、車両感知器その地点を含む区間の車両の平均速度などの情報を正確に取得できるとは限らない。そこで、特許文献2では、プローブ情報の適切な利用を支援する技術を開示する。
【0005】
特許文献2に記載の交通情報管理システムは、道路の複数の区間ごとに、道路に設置されている車両感知器から取得した情報を用いて第1の交通状況を算出するとともに、道路を走行する車両から取得したプローブ情報を用いて第2の交通状況を算出する。そして、当該交通情報管理システムは、第1の交通状況と第2の交通状況に所定の閾値以上の差異がある区間に関する第1の交通状況と第2の交通状況を表示部に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-203594号公報
【文献】特開2018-190117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、道路のある区間の交通状況が他の区間に影響することがあるので、道路管制のためには、道路における移動体の交通状況を広域で俯瞰的に把握できることが望ましい。また、道路の交通状況は、例えば交通事故があると比較的短時間で渋滞が発生するなど、時々刻々と変化するものであるので、リアルタイムで把握できることが望ましい。
【0008】
しかし、特許文献1に記載の技術で把握される対象区間での移動体の分布状況は、対象区間を分割した小区間の各々における移動体の存在台数であり、道路における移動体の交通状況を広域で俯瞰的に、かつ、リアルタイムで把握することが困難である。
【0009】
また、特許文献2に記載の交通情報管理システムによれば、第1の交通状況と第2の交通状況とに閾値以上の差異がある区間をユーザに知らせることができたとしても、当該区間における交通状況、例えば車両の平均速度を求めることは困難である。従って、特許文献2に記載の技術によっても、道路における移動体の交通状況を広域で俯瞰的に、かつ、リアルタイムで把握することは困難である。
【0010】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、広域の交通状況を俯瞰的にリアルタイムで把握することが可能な交通監視装置、交通監視システム、交通監視方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る交通監視装置は、
道路における車両の位置である車両位置を示す位置情報を取得する位置取得手段と、
前記位置情報に基づいて、前記車両位置の経時的な変化を示す第1履歴情報を生成する履歴生成手段と、
道路における異常事象の種別に対応する車両位置の経時的な変化のパターンを示す事象別履歴パターンと前記第1履歴情報が示す前記車両位置の経時的な変化とに基づいて、前記道路における前記異常事象を検出する異常検出手段と、
前記履歴生成手段によって生成された第1履歴情報に基づいて、前記道路について予測される車両位置の経時的な変化を示す予測情報を生成する予測手段と
前記事象別履歴パターンと前記予測情報が示す経時的な変化とに基づいて、前記道路において発生する異常事象の種別を予測する異常予測手段とを備え、
前記事象別履歴パターンは、前記異常事象としての渋滞に対応する渋滞パターンと、前記異常事象としての路上障害物に対応する障害物パターンと、の少なくとも1つを含み、
前記渋滞パターンは、前記車両の速度が基準速度よりも低速であり、かつ、車間距離が基準距離よりも短いことを示し、
前記障害物パターンは、前記車両が減速して車線を変更した後に、元の車線に戻ることを示す。
【0012】
本発明の第2の観点に係る交通監視システムは、
上記の交通監視装置と、
前記道路に敷設され、光信号の反射を抑制する終端処理が一端に施された光ファイバと、
前記光ファイバに光信号を入力するとともに、当該光信号の入力に伴って生じる後方散乱光同士が干渉した光の強度である光干渉強度の変化量を観測するセンシング装置とを備え、
前記位置取得手段は、前記センシング装置によって観測された前記光干渉強度の変化量に基づいて得られる前記道路における前記位置情報を取得する。
【0013】
本発明の第3の観点に係る交通監視方法は、
コンピュータが、
道路における車両の位置である車両位置を示す位置情報を取得することと、
前記位置情報に基づいて、前記車両位置の経時的な変化を示す第1履歴情報を生成することと、
道路における異常事象の種別に対応する車両位置の経時的な変化のパターンを示す事象別履歴パターンと前記第1履歴情報が示す前記車両位置の経時的な変化とに基づいて、前記道路における前記異常事象を検出することと、
前記生成された第1履歴情報に基づいて、前記道路について予測される車両位置の経時的な変化を示す予測情報を生成することと
前記事象別履歴パターンと前記予測情報が示す経時的な変化とに基づいて、前記道路において発生する異常事象の種別を予測することとを含み、
前記事象別履歴パターンは、前記異常事象としての渋滞に対応する渋滞パターンと、前記異常事象としての路上障害物に対応する障害物パターンと、の少なくとも1つを含み、
前記渋滞パターンは、前記車両の速度が基準速度よりも低速であり、かつ、車間距離が基準距離よりも短いことを示し、
前記障害物パターンは、前記車両が減速して車線を変更した後に、元の車線に戻ることを示す。
【0014】
本発明の第4の観点に係るプログラムは、
道路における車両の位置である車両位置を示す位置情報を取得することと、
前記位置情報に基づいて、前記車両位置の経時的な変化を示す第1履歴情報を生成することと、
道路における異常事象の種別に対応する車両位置の経時的な変化のパターンを示す事象別履歴パターンと前記第1履歴情報が示す前記車両位置の経時的な変化とに基づいて、前記道路における前記異常事象を検出することと、
前記生成された第1履歴情報に基づいて、前記道路について予測される車両位置の経時的な変化を示す予測情報を生成することと
前記事象別履歴パターンと前記予測情報が示す経時的な変化とに基づいて、前記道路において発生する異常事象の種別を予測することとを実行させ、
前記事象別履歴パターンは、前記異常事象としての渋滞に対応する渋滞パターンと、前記異常事象としての路上障害物に対応する障害物パターンと、の少なくとも1つを含み、
前記渋滞パターンは、前記車両の速度が基準速度よりも低速であり、かつ、車間距離が基準距離よりも短いことを示し、
前記障害物パターンは、前記車両が減速して車線を変更した後に、元の車線に戻ることを示す。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、広域の交通状況を俯瞰的にリアルタイムで把握することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態に係る交通監視システムの構成を示す図である。
図2】一実施の形態に係る交通監視装置の機能的な構成を示す図である。
図3】一実施の形態に係る交通監視装置の物理的な構成を示す図である。
図4A】一実施の形態に係る交通監視処理の一例を示すフローチャートである。
図4B】一実施の形態に係る交通監視処理の一例を示すフローチャートである。
図5】車両位置の経時的な変化から、交通パラメータを求める方法を説明するための図である。
図6】渋滞が発生した時の車両位置の経時的な変化のパターンである渋滞パターンの一例を示す図である。
図7】車両の停止が発生した時の車両位置の経時的な変化のパターンである停止パターンの一例を示す図である。
図8】路上障害物が発生した時の図であり、(a)は、車両位置の経時的な変化のパターンである障害物パターンの一例を示し、(b)は、道路を通行する車両の移動経路の一例を示す図である。
図9】交通管制処理の一例を示すフローチャートである。
図10】一変形例に係る履歴生成部の機能的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。全図を通じて同一の要素には同一の符号を付す。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0018】
<本実施の形態に係る交通監視システムの構成>
本実施の形態に係る交通監視システム100は、図1に示すように、光ファイバセンシング技術を利用して、道路Rを走行する車両101の交通を監視するためのシステムである。道路Rは、典型的には高速道路であるが、一般的なその他の道路であってもよい。また、車両101は、自動車、二輪車、バス、トラックなどである。
【0019】
交通監視システム100は、光ファイバOFと、センシング装置102と、カメラ103と、交通監視装置104とを備える。
【0020】
光ファイバOFは、道路Rに敷設された光ファイバケーブルである。光ファイバOFは、例えば、一般的に高速道路の路肩部や中央分離帯などに敷設された通信用の多芯光ファイバケーブルのうちの1芯であり、一端にはセンシング装置102が接続され、他端には光信号の反射を抑制する終端処理が施されている。なお、多芯光ファイバケーブルのうちの複数のファイバケーブルが、光ファイバセンシングのための光ファイバOFとして採用されてもよい。
【0021】
センシング装置102は、光ファイバOFに光信号を入力するとともに、当該光信号の入力に伴って生じる後方散乱光同士が干渉した光の強度である光干渉強度の変化量を観測する。
【0022】
詳細には例えば、センシング装置102は、光ファイバOFの一端からパルス波形の光信号を入力する。これにより、光ファイバOFのすべての位置から微弱な後方散乱光と呼ばれる戻り光が生じる。センシング装置102は、当該後方散乱光を観測する。
【0023】
光ファイバOFの周囲で環境変化が生じると、環境変化に伴って光ファイバを構成する石英ガラスの構造及び特性パラメータが変化し、当該変化が生じた場所からの後方散乱光の信号品質も変化する。
【0024】
コヒーレンス性が高い光信号を入力し、車両101が道路Rを通行する際の振動が光ファイバOFに伝わると、後方散乱光の位相状態が変化する。この後方散乱光の位相状態の変化は、同時刻に受信する他の後方散乱光との干渉により光強度の変化として観測される。すなわち、センシング装置102は、光ファイバOFに光信号を入力し、振動印加によって生じる光干渉強度の変化量を観測する。
【0025】
振動の発生場所は、光信号を入力してから後方散乱光を観測するまでの往復時間と、光信号の伝搬速度とから算出される。光信号は、光ファイバOFの他端(すなわち、センシング装置102から見て最遠端)からの後方散乱光と、次に入力される光信号とが混在しないように一定の周波数で繰り返し入力される。これにより、光ファイバOFの周辺で生じる振動などの環境変化の推移を正確に、かつ、リアルタイムで観測することができる。
【0026】
このように、光ファイバセンシングとは、光ファイバOFをセンシング媒体として、振動の発生場所などを検出する技術である。当該技術では、通信データの伝送媒体である一般的な光ファイバOFを、線形状のパッシブセンサとして利用することができるので、新たなセンサなどを設置しなくても、広域の交通状況をリアルタイムで把握することができる。
【0027】
カメラ103は、道路Rの交通状況を把握するために、道路Rを撮影する撮像手段の一例である。カメラ103は、例えば、道路Rに間隔を空けて設置されるCCTV(closed-circuit television)カメラなどである。
【0028】
交通監視装置104は、道路Rにおける振動の発生場所を含む観測情報をセンシング装置102から繰り返し取得する。振動の発生場所は、道路Rにおける車両101の位置(車両位置)に対応する。そのため、観測情報は、車両位置を示す位置情報を含む。
【0029】
交通監視装置104は、繰り返し取得した位置情報から、車両位置の経時的な変化を求める。そして、交通監視装置104は、車両位置の経時的な変化に基づいて、道路の交通状況を示す交通パラメータの算出、道路Rで発生した異常事象の検出、将来の車両位置の経時的な変化の予測及び異常事象の発生の予測、交通管制手段の提示を含む交通管制支援などを行う。
【0030】
異常事象の例として、渋滞、車両の停止、路上障害物を挙げることができる。路上障害物とは、車両101の通行の障害となる物(例えば、事故で停車した車両、落下した積み荷、強風による飛来物)が路上に存在することである。
【0031】
交通パラメータの例として、道路Rを走行する車両101の速度、道路Rの交通密度、道路Rにおいて予め定められた地点を単位時間当たりに走行する車両101の量である交通量、道路Rが車両101によって占められる割合を示す占有率(オキュパンシー)を挙げることができる。
【0032】
車両位置の経時的な変化は、図1に示すような、車両位置を横軸、時間を縦軸とする図によって示される。
【0033】
図1に示す実線HP1は、上り車線を通行する車両101に関する車両位置の経時的な変化を示しており、点線HP2は、図示しない下り車線を通行する車両101に関する車両位置の経時的な変化を示す。
【0034】
また、一点鎖線Pで囲んだ領域内の実線HP1及び点線HP2は、過去から現在までの車両位置の経時的な変化の例である。過去から現在までの車両位置の経時的な変化、すなわち車両位置の履歴を示す情報を、履歴情報と称する。
【0035】
二点鎖線Fで囲んだ領域内の実線HP1及び点線HP2は、予測される将来の車両位置の経時的な変化の例である、予測される将来の車両位置の経時的な変化を示す情報を、予測情報と称する。
【0036】
本実施の形態では、一方向に向かう車両101(上り車線を通行する車両101)の履歴情報を生成する例を説明する。そして、当該生成した履歴情報に基づいて、交通パラメータの取得、異常事象の検出、車両位置の経時的な変化の予測、異常事象の発生の予測、交通管制手段の提示などを行う例を説明する。
【0037】
なお、反対方向に走行する車両101についても同様に、当該反対方向に走行する車両101の車両位置の経時的な変化に基づいて、交通パラメータの取得、異常事象の検出、車両位置の経時的な変化の予測及び異常事象の発生の予測、交通管制手段の提示を行うことができる。
【0038】
<本実施の形態に係る交通監視装置の機能的な構成>
本実施の形態に係る交通監視装置104は、入力部105と、位置取得部106と、履歴生成部107と、第1学習モデル記憶部108と、交通状況取得部109と、異常検出部110と、事象別履歴パターン記憶部111と、予測部112と、第2学習モデル記憶部113と、異常予測部114と、管制部115と、表示部116と、表示制御部117と、撮像制御部118と、通信部119と、を備える。
【0039】
入力部105は、ユーザが指示などを入力するためのキーボード、マウス、タッチパネルなどである。
【0040】
位置取得部106は、道路Rに敷設された光ファイバOFを利用した光ファイバセンシングに基づいて得られる道路Rにおける位置情報を、センシング装置102から取得する。
【0041】
詳細には、位置取得部106は、センシング装置102によって観測された光干渉強度の変化量に基づいて得られる道路Rにおける位置情報を、センシング装置102から繰り返し取得する。
【0042】
なお、本実施の形態では位置情報が、光ファイバセンシングに基づいて得られる例により説明するが、CCTVカメラ、交通量計(コイル)などの道路Rに設定される各種のセンサから得られる情報に基づいて取得されてもよい。さらに、位置情報は、ETC(Electronic Toll Collection System)2.0のプローブ情報などに基づいて取得されてもよい。
【0043】
履歴生成部107は、位置取得部106によって取得される位置情報に基づいて、過去から現在までの車両位置の経時的な変化を示す履歴情報を生成する。
【0044】
詳細には、位置情報は、上述の通り、一定の周波数で入力される光信号に基づいて取得される観測情報に含まれる。そのため、位置取得部106によって繰り返し取得される位置情報は、比較的短い時間間隔ではあるものの、離散的な車両位置を示す。
【0045】
履歴生成部107は、離散的な車両位置を入力として、第1学習モデルに従って車両位置の経時的な変化を、図1の線HP1に示すように連続的に示す履歴情報を生成する。
【0046】
なお、履歴生成部107は、離散的な車両位置の近似曲線、近似直線又はこれらの組み合わせを求めることによって、当該求めた近似曲線、近似直線又はこれらの組み合わせを示す履歴情報を生成してもよい。
【0047】
第1学習モデル記憶部108は、履歴生成部107が参照する第1学習モデルを予め格納するための記憶部である。
【0048】
第1学習モデルは、センシング装置102からの観測情報に含まれる位置情報を入力として、履歴情報を生成する機械学習をした学習済みの学習モデルである。第1学習モデルの学習には、教師あり学習が採用されるとよい。この場合の教師データは、実際に走行した車両101のプローブ情報、車載カメラなどを基に作成されるとよい。
【0049】
交通状況取得部109は、履歴情報に基づいて、交通パラメータの値を求める。
【0050】
異常検出部110は、履歴生成部107によって生成された履歴情報が示す車両位置の経時的な変化と、事象別履歴パターンとに基づいて、道路Rにおける異常事象を検出する。
【0051】
事象別履歴パターンは、道路Rにおける異常事象の種別に対応する車両位置の経時的な変化のパターンを示す。
【0052】
事象別履歴パターン記憶部111は、事象別履歴パターンを示す事象別履歴パターン情報を予め格納するための記憶部であり、異常検出部110によって参照される。
【0053】
予測部112は、異常検出部110によって異常事象が検出された場合に、当該検出された異常事象の種別と、履歴生成部107によって生成された履歴情報とに基づいて、道路Rについての予測情報を生成する。例えば、予測部112は、履歴生成部107によって生成された履歴情報と異常検出部110によって検出された異常事象の種別とを入力として、第2学習モデルに基づいて、道路についての予測情報を出力する。
【0054】
第2学習モデル記憶部113は、予測部112が参照する第2学習モデルを予め格納するための記憶部である。
【0055】
第2学習モデルは、訓練用の第1履歴情報と検出された異常事象の種別とを入力として予測情報を生成する機械学習をした学習済みの学習モデルである。第2学習モデルの学習には、教師あり学習が採用されるとよい。この場合の教師データには、実際に生じた過去の履歴情報と異常事象の種別とを示すデータが採用されるとよい。
【0056】
なお、異常検出部110によって異常事象が検出されるか否かに関わらず、予測部112は、履歴生成部107によって生成された履歴情報に基づいて、道路Rについて予測される車両位置の経時的な変化を示す予測情報を出力してもよい。この場合の予測部112は、履歴生成部107によって生成された履歴情報を入力として、第2学習モデルに基づいて、道路Rについての予測情報を生成するとよい。
【0057】
この場合の第2学習モデルは、訓練用の第1履歴情報を入力として予測情報を生成する機械学習をした学習済みの学習モデルである。第2学習モデルの学習には、教師あり学習が採用されるとよい。この場合の教師データには、実際に生じた過去の履歴情報を含むデータが採用されるとよい。
【0058】
異常予測部114は、予測部112によって生成された予測情報が示す経時的な変化と、事象別履歴パターンとに基づいて、道路Rにおいて発生する異常事象の種別を予測する。事象別履歴パターンは、事象別履歴パターン記憶部111に格納された事象別履歴パターン情報が示すものである。
【0059】
すなわち、上述の異常検出部110が車両位置の経時的な変化を示す情報として履歴情報を採用するのに対して、異常予測部114は車両位置の経時的な変化を示す情報として予測情報を採用する。この点を除いて、異常予測部114と異常検出部110との機能は同様でよい。
【0060】
管制部115は、異常予測部114によって異常事象の発生が予測される場合に、当該発生が予測される異常事象の種別に基づいて、交通管制情報を生成する。交通管制情報は、発生が予測される異常事象を緩和するための交通管制手段などを含む。
【0061】
交通管制手段としては例えば、インターチェンジの閉鎖、発生が予測される異常事象の発生地点を回避する別ルート、道路の通行料金の変更、緊急人員の派遣計画の少なくとも1つを含む。緊急人員の派遣計画とは、異常事象を処理するための人員の派遣に関する計画であって、当該人員の人数、緊急車両の台数、現地へ向かう緊急車両の手配、到着予定時間などが含まれる。
【0062】
例えば、管制部115は、異常予測部114によって発生が予測される異常事象の種別と履歴情報とを入力として、学習モデルに基づいて、当該異常事象を緩和するための交通管制手段を含む交通管制情報を生成する。
【0063】
学習モデルは、過去の異常事象の種別と履歴情報とを入力として、当該異常事象を緩和するための交通管制手段を含む交通管制情報を生成する機械学習をした学習済みのものが予め図示しない記憶部に格納されるとよい。学習には教師あり学習が採用されるとよく、教師データには、例えば、過去の異常事象の種別と履歴情報とを入力として、当該異常事象を緩和するために有効であった交通管制手段を含む交通管制情報が採用されるとよい。
【0064】
なお、管制部115は、学習モデルによらず、例えば、異常事象の種別と交通管制手段とを対応付けた管制情報を予め保持してもよい。この場合、管制部115は、発生が予測される異常事象の種別に対応付けられた交通管制手段を管制情報から取得し、当該取得した交通管制手段を含む交通管制情報を生成するとよい。
【0065】
また、管制部115は、実績情報を予め保持する。
【0066】
実績情報は、異常事象の種別ごとに過去に採用された交通管制手段と、当該交通管制手段に対する評価とを含む。評価は、例えば、異常事象が当該交通管制手段によって緩和された程度を示す評価値、又は、異常事象が当該交通管制手段によって緩和されたか否か、によってあらわされる。
【0067】
そして、管制部115は、実績情報に基づいて、管制部115が生成した交通管制手段に対する評価情報を生成する。評価情報は、管制部115が生成した交通管制手段によって異常予測部114によって発生が予測される異常事象が緩和される程度の予想を示す評価値、又は、当該交通管制手段によって当該異常事象が緩和されると予想されるか否か、を示す。
【0068】
さらに、管制部115は、管制部115が生成した交通管制情報が示す交通管制手段の中から、ユーザが選定する交通管制手段を受け付け、当該選定された交通管制手段を示す決定情報を生成する。
【0069】
表示部116は、画面を表示する。表示制御部117は、画面を表示部116に表示させる。
【0070】
表示制御部117は、例えば、履歴情報、交通パラメータの値、予測情報、現在又は将来の異常事象の発生場所を示す道路図、交通管制手段の提示、管制部115によって生成される交通管制情報、評価情報、決定情報などを表示部116の画面に表示させる。
【0071】
撮像制御部118は、道路Rを撮影するカメラ103を制御する。
【0072】
例えば、撮像制御部118は、異常検出部110によって異常事象が検出された場合に、当該異常事象の発生場所をカメラ103に拡大して撮影させる。例えば、異常予測部114によって異常事象の発生が予測された場合に、撮像制御部118は、当該異常事象の発生が予測される場所カメラ103に拡大して撮影させる。
【0073】
例えば、カメラ103の撮影画像が表示制御部117の制御の下で表示部116の画面に表示されることによって、異常事象の発生場所や発生が予測される場所の現在の状況を把握することができる。
【0074】
通信部119は、車両101に搭載された運転制御装置120と通信する。運転制御装置120は、車両101の自動運転を制御する装置であることが望ましい。
【0075】
例えば、通信部119は、異常検出部110によって異常事象が検出された場合に、当該異常事象の発生場所を示す情報を運転制御装置120に送信する。例えば、通信部119は、異常予測部114によって異常事象の発生が予測される場合に、当該発生が予測される異常事象の発生場所を示す情報を運転制御装置120に送信する。例えば、通信部119は、管制部115によって生成される決定情報を運転制御装置120に送信する。
【0076】
<本実施の形態に係る交通監視装置の物理的構成>
ここから、本実施の形態に係る交通監視装置10の物理的構成の例について、図を参照して説明する。
【0077】
交通監視装置10は物理的には、図3に示すように、バス1010、プロセッサ1020、メモリ1030、ストレージデバイス1040、ネットワークインタフェース1050、ユーザインタフェース1060を有する。
【0078】
バス1010は、プロセッサ1020、メモリ1030、ストレージデバイス1040、ネットワークインタフェース1050、及びユーザインタフェース1060が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ1020などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。
【0079】
プロセッサ1020は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などで実現されるプロセッサである。
【0080】
メモリ1030は、RAM(Random Access Memory)などで実現される主記憶装置である。
【0081】
ストレージデバイス1040は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、メモリカード、又はROM(Read Only Memory)などで実現される補助記憶装置である。
【0082】
ストレージデバイス1040は、交通監視装置10の記憶部(第1学習モデル記憶部108、事象別履歴パターン記憶部111、第2学習モデル記憶部113)や情報を保持する機能を実現する。
【0083】
また、ストレージデバイス1040は、交通監視装置10の各機能部(位置取得部106、履歴生成部107、交通状況取得部109、異常検出部110、予測部112、異常予測部114、管制部115、表示制御部117、撮像制御部118、通信部119)を実現するためのプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ1020がこれら各プログラムモジュールをメモリ1030上に読み込んで実行することで、そのプログラムモジュールに対応する各機能部が実現される。
【0084】
ネットワークインタフェース1050は、有線、無線又はこれらを組み合わせて構成されるネットワークに交通監視装置102を接続するためのインタフェースである。本実施の形態に係る交通監視装置10は、ネットワークインタフェース1050を通じてネットワークに接続されることによって、センシング装置102、カメラ103、運転制御装置120と通信する。
【0085】
ユーザインタフェース1070は、ユーザから情報が入力されるインタフェース及びユーザに情報を提示するインタフェースであり、例えば、入力部105としてのマウス、キーボード、タッチセンサなど、表示部116としての液晶ディスプレイなどを含む。
【0086】
このように交通監視装置10の機能は、ソフトウェアプログラムを物理的な各構成要素が協働して実行することによって実現することができる。そのため、本発明は、ソフトウェアプログラム(以下、単に「プログラム」ともいう。)として実現されてもよく、そのプログラムが記録された非一時的な記憶媒体として実現されてもよい。
【0087】
<本実施の形態に係る交通監視処理>
ここから、本発明の一実施の形態に係る交通監視処理について図を参照して説明する。
【0088】
図4A及び4Bは、本実施の形態に係る交通監視処理の一例を示すフローチャートである。
【0089】
交通監視処理は、道路Rの交通を監視するための処理であって、センシング装置102から、例えば一定の時間間隔で繰り返し取得される位置情報を参照して行われる。交通監視処理は、例えば、入力部103からのユーザの指示を受けて開始される。
【0090】
図4Aに示すように、位置取得部106は、センシング装置102から位置情報を取得することによって、道路Rを通行する車両101の車両位置を取得する(ステップS101)。
【0091】
履歴生成部107は、ステップS101にて取得された車両位置に基づいて、過去から現在までの車両位置の経時的な変化、すなわち車両位置の履歴を求める(ステップS102)。
【0092】
ここで、車両位置は、ステップS101にて比較的短周期で取得することができるため、履歴生成部107は、車両位置の取得周期よりも長い予め定められた時間の車両位置がステップS101にて取得されたときに行われるとよい。
【0093】
交通状況取得部109は、ステップS102で求められた車両位置の履歴に基づいて、車両101の速度(車速)、交通密度、交通量、占有率など、道路Rのおける交通パラメータを求める(ステップS103)。
【0094】
図5の車両位置の経時的な変化の例を参照すると分かるように、車速[km/h]は、車両位置の変化量(同図では例えば、車両位置P1から車両位置P2までの距離)を、当該変化に要した時間で割ることによって求められる。同図において車速は、車両位置の経時的な変化の傾きに表れ、車両位置の経時的な変化を示す線HPa,HPb,HPcのうち、線HPaに対応する車両101が最も速く、線HPcに対応する車両101が最も遅い。
【0095】
交通密度[台/km]は、ある瞬間における単位区間当たりの車両101の台数である。同図では、交通密度[台/km]は、ある時間に対応する横線を引いた場合に、単位区間に対応する領域内で当該横線と交差する、車両位置の経時的な変化を示す線HPa,HPb,HPcの数により表される。
【0096】
交通量[台/h]は、ある地点を単位時間の間に通過する車両101の台数である。同図では、交通量[台/h]は、ある地点に対応する縦線を引いた場合に、単位時間に対応する領域内で当該縦線と交差する、車両位置の経時的な変化を示す線HPa,HPb,HPcの数により表される。
【0097】
占有率は、ある瞬間における対象区間のうち車両101で占有されている距離の割合(空間オキュパンシー)、或いは、ある地点における対象時間のうち車両101で占有されている時間の割合(時間オキュパンシー)である。これらは、例えば、車両101の長さ(車長)を平均的な長さとして、交通密度、交通量などに基づいて求めることができる。
【0098】
表示制御部117は、ステップS103で求められた交通パラメータの値を表示部116に表示させる(ステップS104)。
【0099】
異常検出部110は、ステップS102で求められた車両位置の履歴と、事象別履歴パターン記憶部111に格納された事象別履歴パターン情報によって示される事象別履歴パターンとに基づいて、道路Rに発生している異常事象を検出する。そして、異常検出部110は、検出結果に基づいて、道路Rに異常事象が発生しているか否かを判別する(ステップS105)。
【0100】
詳細には例えば、事象別履歴パターンは、渋滞に対応する渋滞パターン、車両の停止に対応する停止パターンと、路上障害物に対応する障害物パターンとの少なくとも1つを含む。
【0101】
図6は、渋滞が発生した時の車両位置の経時的な変化のパターンである渋滞パターンの一例を示す。渋滞が発生すると、車両101は、適宜定められる基準速度よりも低速で通行し、それらの車間距離は適宜定められる基準距離よりも短くなる。そのため、渋滞パターンは同図に示すように、各車両101の車両位置の変化を示す線の傾きが低速を示すことや、時間T1における各車両101の車両位置P4~P9の距離が短いことをその特徴に含む。
【0102】
図7は、車両101の停止が発生した時の車両位置の経時的な変化のパターンである停止パターンの一例を示す。車両101の停止が発生すると、当該車両101の車両位置は、時間が経過しても変化しなくなるので、停止パターンは時間が経過しても車両位置が一定であるという特徴を含む。同図の例では、車両101は、次第に減速して時間T2に車両位置P10で停止している。なお、停止が予め定められる時間よりも長く続きことが、停止パターンに含められてもよい。
【0103】
図8(a)は、路上障害物が発生した時の車両位置の経時的な変化のパターンである障害物パターンの一例を示す。
【0104】
例えば図8(b)に示すように、路上障害物Fが道路R上の走行車線の位置P11にあるとする。この場合、走行車線を走行して来た車両101は、隣り車線へ移動して路上障害物Fを避けるために、路上障害物Fの手前の位置101aから減速する。そして、隣り車線の位置101bへ移動して、路上障害物Fを通り過ぎると、車両101は、図8(b)に示すように、走行車線に戻って加速する。
【0105】
図8(a)の障害物パターンは、路上障害物Fが道路R上の走行車線にある場合に、複数の車両101が路上障害物Fから予め定められた範囲内で低速で走行した後に、加速するという特徴を含む。なお、道路Rでの減速が路上障害物Fを避けるための減速か否かを判別するために、障害物パターンは、予め定められる速度よりも遅い速度に減速することを含んでもよい。
【0106】
ここで図6~8に示す事象別履歴パターンは、それぞれ、渋滞、車両101の停止、路上障害物という異常事象の各種別に対応する事象別履歴パターンの一例に過ぎない。異常事象の種別ごとに複数の事象別履歴パターンを含む事象別履歴パターン情報が事象別履歴パターン記憶部111に予め格納されてもよい。そして、異常検出部110は、各事象別履歴パターンと車両位置の履歴とを照合(例えば、パターンマッチング)することによって、両者の類似度を求める。
【0107】
類似度が予め定められた閾値より大きい場合に、異常検出部110は、現在の道路Rで発生している異常事象を検出するので、道路Rで異常事象が発生していると判別する(ステップS105;Yes)。このとき、類似度が大きい事象別履歴パターンが対応する異常事象の種別から、道路Rで発生している異常事象の種別も特定される。
【0108】
また、類似度が閾値以下の場合、異常検出部110は、現在の道路Rで発生している異常事象を検出しないので、道路Rで異常事象が発生していないと判別する(ステップS105;No)。
【0109】
なお、事象別履歴パターンは、上述の通り、事象別に種々のパターンが想定される。そこで、異常検出部110は、車両位置の経時的な変化を入力として、学習モデルに基づいて、異常事象を検出し、異常事象が検出された場合に当該異常事象の種別を示す情報を生成してもよい。この場合の学習モデルには、車両位置の経時的な変化を入力として、当該変化と事象別履歴パターンとの類似度に応じた異常事象の種別を示す情報を生成する機械学習をした学習済みの学習モデルが採用されるとよい。この学習は教師あり学習であればよく、学習モデルは、事象別履歴パターン記憶部111に代わる記憶部に予め格納されるとよい。
【0110】
また、異常検出部110は、異常事象の種別ごとの事象別履歴パターンの特徴の1つ又は複数が車両位置の経時的な変化に含まれるか否かに従って、異常事象を検出し、検出された異常事象の種別を特定してもよい。
【0111】
異常事象が発生していないと判別された場合(ステップS105;No)、位置取得部106は、ステップS101の処理を行う。
【0112】
異常事象が発生していると判別された場合(ステップS105;Yes)、表示制御部117は、表示部116の画面に、当該異常事象の発生場所を示す道路図を表示させる(ステップS106)。また、撮像制御部118は、カメラ103に、当該異常事象の発生場所を拡大して撮影させる(ステップS107)。
【0113】
ここから、図4Bを参照する。
予測部112は、ステップS102で求められた車両位置の履歴と、ステップS105にて検出された異常事象の種別とに基づいて、道路Rについての将来の車両位置の経時的変化を予測する(ステップS108)。
【0114】
ここで予測される将来の車両位置の経時的変化は、例えば、図1において二点鎖線Fで囲んだ領域内の実線HP1によって示される車両位置の経時的な変化である。
【0115】
図4Bを参照する。
異常予測部114は、ステップ108で予測された将来の車両位置の経時的変化と、事象別履歴パターン記憶部111に格納された事象別履歴パターン情報によって示される事象別履歴パターンとに基づいて、道路Rに発生する異常事象を予測する。そして、異常予測部114は、予測結果に基づいて、道路Rに異常事象の発生が予測されるか否かを判別する(ステップS109)。
【0116】
ステップS109における異常事象の発生の予測の方法は、ステップS105の処理における車両位置の履歴を、将来の車両位置の経時的変化に代えたものと概ね同様である。
【0117】
そして、ステップS109においても、ステップS105と同様に類似度が予め定められた閾値より大きい場合に、異常予測部114は、道路Rに異常事象の発生が予測されると判別する(ステップS109;Yes)。このとき、類似度が大きい事象別履歴パターンが対応する異常事象の種別から、道路Rで発生が予測される異常事象の種別も特定される。
【0118】
また、類似度が閾値以下の場合、異常予測部114は、道路Rに異常事象の発生が予測されないと判別する(ステップS109;No)。
【0119】
異常事象の発生が予測されないと判別された場合(ステップS109;No)、図4Aを再び参照して、位置取得部106は、ステップS101の処理を行う。
【0120】
図4Bに戻って、異常事象の発生が予測されると判別された場合(ステップS109;Yes)、表示制御部117は、表示部116の画面に、異常事象の発生が予測される場所である予測発生場所を示す道路図を表示させる(ステップS110)。また、通信部119は、当該異常事象の予測発生場所を示す予測発生場所情報を運転制御装置120へ送信する(ステップS111)。
【0121】
管制部115は、現在発生している異常事象及び将来の発生が予測される異常事象を緩和するための交通管制のための交通管制処理(ステップS112)を行う。
【0122】
図9は、交通管制処理(ステップS112)の詳細を示すフローチャートである。
【0123】
管制部115は、ステップS109にて発生が予測されると判定された異常事象の種別に基づいて、交通管制情報を生成する(ステップS201)。表示制御部117は、ステップS201にて生成された交通管制情報を表示部116に表示させる(ステップS202)。
【0124】
例えば、発生が予測される異常事象が渋滞であるとする。この場合、交通管制情報に含まれる交通管制手段は、渋滞の予測発生場所よりも手前のインターチェンジの閉鎖や料金所からの通行料金の一時的な値上げ、当該予測発生場所を回避する別ルートの提示などである。別ルートは、地図情報と予測発生場所とに基づいて探索されるとよい。
【0125】
また、交通事故に伴う渋滞が予測される場合、交通管制情報に含まれる交通管制手段は、交通事故を処理するための緊急人員の派遣計画を含んでもよい。
【0126】
管制部115は、ステップS201にて生成された交通管制情報に含まれる交通管制手段の中から、選択肢がある交通管制手段を抽出する(ステップS203)。
【0127】
選択肢がある交通管制手段には、交通管制手段として複数の別ルートが提示される例を挙げることができる。
【0128】
管制部115は、ステップS203にて抽出された交通管制手段について、選択肢ごとの評価情報を生成する(ステップS204)。表示制御部117は、ステップ204にて生成された評価情報を表示部116に表示させる(ステップS205)。
【0129】
管制部115は、ステップS202にて表示された交通管制手段の採否に関するユーザの指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS206)。ユーザの指示を受け付けていないと判定した場合(ステップS206;No)、管制部115は、当該指示を受け付けるまで、ステップS205の処理を続ける。
【0130】
ユーザの指示を受け付けたと判定した場合(ステップS206;Yes)、管制部115は、ユーザによって採用された交通管制手段を決定情報として出力する(ステップS207)。
【0131】
すなわち、ユーザは、ステップS202にて表示された交通管制手段と、ステップS205にて表示された評価とを参照して、実際に採用する交通管制手段を選定することができる。そして、採用する交通管制手段を入力部105から指示することによって、管制部115は、採用される交通管制手段を含む決定情報を生成する。
【0132】
なお、ステップS203の処理が行われず、ステップS201にて生成された交通管制情報に含まれる交通管制手段のすべて、或いは予め定められた一部について、ステップS204~S205の処理が行われてもよい。
【0133】
表示制御部117は、ステップ207にて出力された決定情報を表示部116に表示させる(ステップS208)。通部119は、決定情報を自動車の運転制御装置120へ送信する(ステップS209)。
【0134】
ここで、ステップS09にて決定情報が送信される運転制御装置120が搭載される自動車は、車両101の一例であり、自動運転の自動車であることが望ましい。これにより、運転制御装置120は、決定情報を参照して、望ましい運転ルートを求めて自動車の走行を制御することができる。
【0135】
交通管制処理(ステップS112)が終了すると、図4B及びAに示すように、位置取得部106は、ステップS101の処理を行う。交通監視処理は、例えば、ユーザの終了の指示を入力部105から受け付けるまで続けて実行される。
【0136】
これまで、本発明の一実施の形態について説明した。
【0137】
本実施の形態によれば、道路における車両位置を示す位置情報に基づいて、車両位置の経時的な変化を示す履歴情報が生成される。
【0138】
道路における車両位置であれば、広域に設置されるセンサなどから把握することができる。また、履歴情報によれば、場所的にも時間的にも連続した車両位置の経時的な変化を把握することができる。
【0139】
従って、広域の交通状況を俯瞰的にリアルタイムで把握することが可能になる。
【0140】
本実施の形態によれば、道路Rで発生している異常事象が、事象別履歴パターンと車両位置の経時的な変化とに基づいて検出される。
【0141】
車両位置の経時的な変化を利用することで、道路Rで発生している異常事象をリアルタイムで把握することができる。また、車両位置の経時的な変化は、異常事象の種別ごとに特徴的なパターンを有するので、事象別履歴パターンを用いて異常事象を検出することで、道路Rで発生している異常事象を正確に検出することができる。
【0142】
従って、道路Rで発生している異常事象をリアルタイムで正確に把握することが可能になる。
【0143】
本実施の形態によれば、異常事象の発生場所を示す道路図を画面に表示させる。これにより、ユーザは、発生場所を容易に認識することが可能になる。また、発生場所をカメラ103に拡大して撮影させる。これにより、ユーザは、発生場所の現状をリアルタイムで正確に認識することが可能になる。
【0144】
本実施の形態によれば、車両位置の経時的な変化を示す履歴情報に基づいて、道路Rにおける車両位置の経時的な変化を予測する。
【0145】
同様の道路状況において同様の位置の変化をする車両101は、将来においても同様の位置の変化をすることが多いので、履歴情報に基づいて、道路Rにおける車両位置の経時的な変化を精度良く予測することができる。
【0146】
広域の交通状況を俯瞰的に、かつ、精度良く予測することが可能になる。
【0147】
本実施の形態によれば、道路Rで発生する異常事象が、道路Rにおいて予測される車両位置の経時的な変化と事象別履歴パターンと車両位置の経時的な変化とに基づいて予測される。
【0148】
道路Rにおいて予測される車両位置の経時的な変化が広域かつ俯瞰的に、精度良く予測され得ることは、上述の通りである。また、車両位置の経時的な変化は、現在発生している異常事象を検出する場合と同様に、異常事象の種別ごとに特徴的なパターンを有するので、事象別履歴パターンを用いて道路Rで発生する異常事象を精度良く予測できる。
【0149】
従って、道路Rで発生する異常事象を精度良く予測することが可能になる。
【0150】
本実施の形態によれば、異常事象の予測発生場所を示す道路図を画面に表示させる。これにより、ユーザは、予測発生場所を容易に認識することが可能になる。また、予測発生場所を運転制御装置120に送信する。これにより、予測発生場所を考慮して運転計画を立案できるので、道路Rの混雑する場所を避けることなどにより効率的な移動が可能になる。
【0151】
本実施の形態によれば、発生が予測される異常事象の種別に基づいて、当該異常事象を緩和するための交通管制手段を含む交通管制情報を生成する。これにより、異常事象を緩和することができるので、道路Rを利用した効率的な移動が可能になる。
【0152】
本実施の形態によれば、過去に異常事象に対して採用された交通管制手段の実績情報に基づいて、交通管制手段に対する評価情報が生成される。これにより、ユーザは、過去の実績に基づく評価を参考にして、現在又は将来の異常事象を緩和するための交通管制手段を選定することができる。従って、有効な交通管制手段を選定できる可能性が高くなるので、道路Rを利用したより一層効率的な移動が可能になる。
【0153】
本実施の形態によれば、ユーザによって選定された交通管制手段を示す決定情報が画面に表示される。これにより、ユーザは、決定情報を容易に認識することが可能になる。また、決定情報が運転制御装置120に送信される。これにより、決定情報を考慮して運転計画を立案できるので、道路Rの混雑する場所を避けることなどにより効率的な移動が可能になる。
【0154】
<変形例>
実施の形態では、一方向に向かう車両101の履歴情報を生成する例を説明した。しかし、図1を参照して説明したように、履歴情報では、傾きの正負、或いは、基準位置に対して近づく方向及び遠くなる方向によって、車両101の走行方向を容易に判別することができる。本変形例では、異なる方向へ向かう車両101(例えば、上り車線と下り車線の各々を通行する車両101)の履歴情報を取得する履歴生成部の例を説明する。
【0155】
変形例に係る履歴生成部207は、機能的には、図10に示すように、位置変化取得部207aと、走行方向判別部207bと、第1生成部207cと、第2生成部207dとを含む。
【0156】
位置変化取得部207aは、繰り返し取得された位置情報に基づいて、車両位置の経時的な変化を求める。
【0157】
走行方向判別部207bは、位置変化取得部207aによって求められた経時的な変化に基づいて、車両101の走行方向が第1方向であるか、当該第1方向とは逆の第2方向であるかを判別する。
【0158】
第1生成部207cは、第1方向に走行する車両101に関する車両位置の履歴を示す第1履歴情報を生成する。
【0159】
第2生成部207dは、第2方向に走行する車両101に関する車両位置の履歴を示す第2履歴情報を生成する。
【0160】
このような履歴生成部207は、実施の形態に係る交通監視装置104において、履歴生成部107に代えて採用されるとよい。
【0161】
本変形例によれば、対向車線の各々を通行する車両101を把握することができるので、広域の交通状況を俯瞰的にリアルタイムで把握することが可能になる。
【0162】
また例えば、逆走する車両101の走行方向は、反対車線を走行する車両101の走行方向と同じであるため、例えば図1に示す履歴情報に含まれる線HP1,HP2の傾きの正負は同じになる。
【0163】
そこで、反対車線を通行する車両101と逆走する車両101とを区別するために、光ファイバセンシングにおいて観測する戻り光の信号強度が利用されてもよい。
【0164】
例えば、光ファイバOFに近い車線での振動印加であれば信号強度が大きくなり、光ファイバOFから離れた車線での振動印加であれば、信号強度が小さくなる。そのため、光ファイバセンシングによる信号強度を利用することで、各車両101がどの車線を走行しているか分離でき、反対車線の状況把握、逆走車の検知が可能である。
【0165】
なお、各車両101がどの車線を走行しているかを分離する手法は、光ファイバセンシングによる信号強度を利用した上述の手法に限られず、その他の手法が採用されてもよい。
【0166】
以上、本発明の実施の形態及び変形例について説明したが、本発明は、これらに限られるものではない。例えば、本発明は、これまで説明した実施の形態及び変形例の一部又は全部を適宜組み合わせた形態、その形態に適宜変更を加えた形態をも含む。
【0167】
上記の実施の形態の一手段または全手段は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下に限られない。
【0168】
1.道路における車両位置を示す位置情報を取得する位置取得手段と、
前記位置情報に基づいて、前記車両位置の経時的な変化を示す第1履歴情報を生成する履歴生成手段とを備える
交通監視装置。
【0169】
2.前記位置取得手段は、前記道路に敷設された光ファイバを利用した光ファイバセンシングに基づいて得られる前記道路における前記位置情報を取得する
上記1に記載の交通監視装置。
【0170】
3.道路における異常事象の種別に対応する車両位置の経時的な変化のパターンを示す事象別履歴パターンと前記第1履歴情報が示す前記車両位置の経時的な変化とに基づいて、前記道路における前記異常事象を検出する異常検出手段をさらに備える
上記1又は2に記載の交通監視装置。
【0171】
4.前記事象別履歴パターンは、前記異常事象としての渋滞に対応する渋滞パターンと、前記異常事象としての車両の停止に対応する停止パターンと、前記異常事象としての路上障害物に対応する障害物パターンと、の少なくとも1つを含む
上記3に記載の交通監視装置。
【0172】
5.画面を表示手段に表示させる表示制御手段をさらに含み、
前記表示制御手段は、前記異常検出手段によって異常事象が検出された場合に、当該異常事象の発生場所を示す道路図を前記画面に表示させる
上記3又は4に記載の交通監視装置。
【0173】
6.前記道路を撮影する撮像手段を制御する撮像制御手段をさらに含み、
前記撮像制御手段は、前記異常検出手段によって異常事象が検出された場合に、当該異常事象の発生場所を撮像手段に拡大して撮影させる
上記3から5のいずれか1つに記載の交通監視装置。
【0174】
7.前記履歴生成手段によって生成された第1履歴情報に基づいて、前記道路について予測される車両位置の経時的な変化を示す予測情報を生成する予測手段をさらに備える
上記1から6のいずれか1つに記載の交通監視装置。
【0175】
8.前記予測手段は、訓練用の前記第1履歴情報を入力として前記予測情報を生成する機械学習をした学習済みの学習モデルに基づいて、前記履歴生成手段によって生成された第1履歴情報を入力として前記道路についての予測情報を生成する
上記7に記載の交通監視装置。
【0176】
9.前記異常検出手段によって異常事象が検出された場合に、当該異常事象の種別と前記履歴生成手段によって生成された第1履歴情報とに基づいて、前記道路について予測される車両位置の経時的な変化を示す予測情報を生成する予測手段をさらに備える
上記3から6のいずれか1つに記載の交通監視装置。
【0177】
10.前記予測手段は、訓練用の前記第1履歴情報と前記異常事象の種別とを入力として前記予測情報を生成する機械学習をした学習済みの学習モデルに基づいて、前記履歴生成手段によって生成された第1履歴情報と前記異常検出手段によって検出された異常事象の種別とを入力として前記道路についての予測情報を生成する
上記9に記載の交通監視装置。
【0178】
11.前記事象別履歴パターンと前記予測情報が示す経時的な変化とに基づいて、前記道路において発生する異常事象の種別を予測する異常予測手段をさらに備える
上記9又は10に記載の交通監視装置。
【0179】
12.画面を表示手段に表示させる表示制御手段をさらに含み、
前記表示制御手段は、前記異常予測手段によって異常事象の発生が予測される場合に、当該発生が予測される異常事象の発生場所を示す道路図を前記画面に表示させる
上記11に記載の交通監視装置。
【0180】
13.前記車両に搭載された運転制御装置と通信する通信手段をさらに含み、
前記通信手段は、前記異常予測手段によって異常事象の発生が予測される場合に、当該発生が予測される異常事象の発生場所を示す情報を前記運転制御装置に送信する
上記12に記載の交通監視装置。
【0181】
14.前記異常予測手段によって異常事象の発生が予測される場合に、当該発生が予測される異常事象の種別に基づいて、当該異常事象を緩和するための交通管制手段を含む交通管制情報を生成する管制手段をさらに備える
上記11から13のいずれか1つに記載の交通監視装置。
【0182】
15.前記管制手段は、さらに、過去の前記異常事象に対して採用された前記交通管制手段と、当該交通管制手段によって緩和された程度を示す評価値、又は、当該交通管制手段によって緩和されたか否かと、を含む実績情報に基づいて、前記異常予測手段によって発生が予測される異常事象が前記管制手段によって生成される交通管制手段によって緩和される程度の予想を示す評価値、又は、当該交通管制手段によって緩和されると予想されるか否か、を示す前記評価情報を生成する
上記14に記載の交通監視装置。
【0183】
16.前記管制手段は、さらに、前記生成した交通管制情報が示す交通管制手段の中から、ユーザが選定する交通管制手段を受け付け、当該選定された交通管制手段を示す決定情報を生成する
上記14又は15に記載の交通監視装置。
【0184】
17.画面を表示手段に表示させる表示制御手段をさらに含み、
前記表示制御手段は、前記管制手段から出力される決定情報を前記画面に表示させる
上記16に記載の交通監視装置。
【0185】
18.前記車両に搭載された運転制御装置と通信する通信手段をさらに含み、
前記通信手段は、前記管制手段から出力される決定情報を前記運転制御装置に送信する
上記16又は17に記載の交通監視装置。
【0186】
19.前記交通管制手段は、インターチェンジの閉鎖、前記発生が予測される異常事象の発生地点を回避する別ルート、道路の通行料金の変更、緊急人員の派遣計画の少なくとも1つを含む
上記14から16のいずれか1つに記載の交通監視装置。
【0187】
20.前記履歴生成手段は、
前記位置情報に基づいて、前記車両位置の経時的な変化を求める位置変化取得手段と、
前記求められた経時的な変化に基づいて、前記車両の走行方向が第1方向であるか、当該第1方向とは逆の第2方向であるかを判別する走行方向判別手段と、
前記第1方向に走行する前記車両に関する前記第1履歴情報を生成する第1生成手段と、
前記第2方向に走行する前記車両に関する前記車両位置の経時的な変化を示す第2履歴情報を生成する第2生成手段とを含む
上記1から19のいずれか1つに記載の交通監視装置。
【0188】
21.前記第1履歴情報に基づいて、前記道路の交通状況を示す交通パラメータの値を求める交通状況取得手段をさらに備え、
前記交通パラメータは、道路を走行する車両の速度、道路の交通密度、道路において予め定められた地点を単位時間当たりに走行する車両の量である交通量、道路が車両によって占められる割合を示す占有率、の少なくとも1つを含む
上記1から20のいずれか1つに記載の交通監視装置。
【0189】
22.上記1から21のいずれか1つに記載の交通監視装置と、
前記道路に敷設され、光信号の反射を抑制する終端処理が一端に施された光ファイバと、
前記光ファイバに光信号を入力するとともに、当該光信号の入力に伴って生じる後方散乱光同士が干渉した光の強度である光干渉強度の変化量を観測するセンシング装置とを備え、
前記位置取得手段は、前記センシング装置によって観測された前記光干渉強度の変化量に基づいて得られる前記道路における前記位置情報を取得する
交通監視システム。
【0190】
23.コンピュータが、
道路における車両位置を示す位置情報を取得することと、
前記位置情報に基づいて、前記車両位置の経時的な変化を示す第1履歴情報を生成することとを含む
交通監視方法。
【0191】
24.コンピュータに、
道路における車両位置を示す位置情報を取得することと、
前記位置情報に基づいて、前記車両位置の経時的な変化を示す第1履歴情報を生成することとを実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0192】
100 交通監視システム
101 車両
102 センシング装置
103 カメラ
104 交通監視装置
105 入力部
106 位置取得部
107,207 履歴生成部
108 第1学習モデル記憶部
109 交通状況取得部
110 異常検出部
111 事象別履歴パターン記憶部
112 予測部
113 第2学習モデル記憶部
114 異常予測部
115 管制部
116 表示部
117 表示制御部
118 撮像制御部
119 通信部
120 運転制御装置
207a 位置変化取得部
207b 走行方向判別部
207c 第1生成部
207d 第2生成部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10