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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】座席用表皮材
(51)【国際特許分類】
   A47C 31/02 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
A47C31/02 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021558223
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(86)【国際出願番号】 JP2020039038
(87)【国際公開番号】W WO2021100375
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2019207676
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】不破 順清
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-112737(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006556(WO,A1)
【文献】特開2017-213865(JP,A)
【文献】特開2010-125842(JP,A)
【文献】特開2017-222962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 31/02
B60N 2/00-90
B68G 1/00-99/00
B32B 3/00-30
B32B 27/00-42
D06C 23/00-04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層と、裏面層と、孔部とを備えた座席用表皮材であって、
前記孔部の内壁が前記表面層により被覆されており、
前記孔部は貫通孔であり、前記裏面層における前記貫通孔の開口周縁部のみが前記表面層及び/又は前記裏面層に含まれる成分の融着物で構成されており、
前記座席用表皮材の裏面が上凸円弧状になめらかに湾曲するように構成されている座席用表皮材。
【請求項2】
前記孔部は、深さによって孔径が異なるように構成されている請求項1に記載の座席用表皮材。
【請求項3】
前記表面層と前記裏面層との間に中間層が設けられている請求項1又は2に記載の座席用表皮材。
【請求項4】
前記裏面層がクッション材で構成されている請求項1~3の何れか一項に記載の座席用表皮材。
【請求項5】
前記裏面層の下面に裏布を設けてある請求項1~4の何れか一項に記載の座席用表皮材。
【請求項6】
前記表面層及び前記裏面層は、共に又は互いに独立して、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、及びポリウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含むように構成される請求項1~5の何れか一項に記載の座席用表皮材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面層と、裏面層と、孔部とを有する座席用表皮材、及び座席用表皮材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、人造皮革において、使用時の蒸れ感を抑制するために、陥没穴又は貫通孔を形成したものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-222962号公報
【0004】
特許文献1に係る人造皮革は、熱可塑性合成繊維からなる布帛に熱可塑性樹脂を付与してなるものである。このような人造皮革において、陥没穴又は貫通孔は、レーザ光線照射装置を用いてレーザ光線を人造皮革の表面に照射し、レーザ光線によって熱可塑性合成繊維と熱可塑性樹脂とを加熱することによって形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る人造皮革において形成される陥没穴又は貫通孔の内壁は、レーザ光線によって加熱溶融された熱可塑性合成繊維と熱可塑性樹脂とからなる熱溶融物によって被覆されている。このため、陥没穴又は貫通孔の周りの表面層と、陥没穴又は貫通孔の内壁との質感が異なり、意匠性が良好であるとはいい難い。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、座席用の表皮材としての使用において蒸れ感を抑える機能を有し、且つ、意匠性が良好な座席用表皮材、及び座席用表皮材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明に係る座席用表皮材の特徴構成は、
表面層と、裏面層と、孔部とを備えた座席用表皮材であって、
前記孔部の内壁が前記表面層により被覆されていることにある。
【0008】
本構成の座席用表皮材によれば、座席用の表皮材としての使用において、当該座席用表皮材が備える孔部により蒸れ感を抑えることができる。また、本構成の座席用表皮材によれば、孔部の内壁が表面層その物で被覆されているので、孔部の周りの表面層と孔部の内壁との質感に統一性を持たせることができるとともに、孔部が設けられている箇所を深みのあるデザインとすることができ、意匠性が良好なものとなる。
【0009】
本発明に係る座席用表皮材において、
前記孔部は貫通孔であり、前記裏面層における前記貫通孔の開口周縁部が前記表面層及び/又は前記裏面層に含まれる成分の融着物で構成されていることが好ましい。
【0010】
本構成の座席用表皮材によれば、孔部は貫通孔であり、裏面層における貫通孔の開口周縁部が表面層及び/又は裏面層に含まれる成分の融着物で構成されているので、貫通孔であることによって通気性に優れるとともに、貫通孔の開口周縁部が融着物によって強固に接合されることから耐久性に優れるものとなる。
【0011】
本発明に係る座席用表皮材において、
前記孔部は陥没孔であり、当該陥没孔の底面は前記裏面層の接合面よりも深い位置に形成されていることが好ましい。
【0012】
本構成の座席用表皮材によれば、孔部は陥没孔であり、当該陥没孔の底面は裏面層の接合面よりも深い位置に形成されているので、柔軟可撓で肌触りが良く、肌身に良く馴染むようになる。
【0013】
本発明に係る座席用表皮材において、
前記孔部は、深さによって孔径が異なるように構成されていることが好ましい。
【0014】
本構成の座席用表皮材によれば、孔部は、深さによって孔径が異なるように構成されているので、変化に富んだデザインとすることができる。
【0015】
本発明に係る座席用表皮材において、
前記表面層と前記裏面層との間に中間層が設けられていることが好ましい。
【0016】
本構成の座席用表皮材によれば、表面層と裏面層との間に中間層が設けられているので、当該中間層により強度や耐久性が向上するとともに、表皮材全体として重厚感を持たせることができる。
【0017】
本発明に係る座席用表皮材において、
前記裏面層がクッション材で構成されていることが好ましい。
【0018】
本構成の座席用表皮材によれば、裏面層がクッション材で構成されているので、柔軟性を高めることができるとともに、表面層の側から裏面層の側に向けて縮径するような孔部を形成し易くなる。
【0019】
本発明に係る座席用表皮材において、
前記裏面層の下面に裏布を設けてあることが好ましい。
【0020】
本構成の座席用表皮材によれば、裏面層の下面に裏布が設けられるので、孔部を形成する際に、裏面層の破壊を防止することができる。
【0021】
本発明に係る座席用表皮材において、
前記表面層及び前記裏面層は、共に又は互いに独立して、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、及びポリウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含むように構成されることが好ましい。
【0022】
本構成の座席用表皮材によれば、表面層及び裏面層が上記の樹脂を含むように構成されるため、孔部の内壁が表面層その物で被覆されるとともに、孔部に形成される融着物は樹脂のブレンドとなってその強度を保つことができる。
【0023】
次に、本発明に係る座席用表皮材の製造方法の特徴構成は、
孔部を有する座席用表皮材の製造方法であって、
少なくとも表面層と裏面層とを有する基材を形成する基材形成工程と、
前記基材を、前記孔部の型を備えた押し板と当該押し板と対向する受け板との間に挟み込む狭持工程と、
前記表面層に含まれる成分が溶融しない温度で加熱しながら、前記押し板を前記受け板に押圧して前記基材に前記孔部を形成する押圧工程と、
前記孔部が形成された基材を、前記押し板と前記受け板との間から取り出す搬出工程と、
を包含することにある。
【0024】
本構成の座席用表皮材の製造方法によれば、基材形成工程によって形成された、少なくとも表面層と裏面層とを有する基材に対し、孔部の型を備えた押し板と当該押し板と対向する受け板との間に挟み込む狭持工程を実施するとともに、表面層に含まれる成分が溶融しない温度で加熱しながら、押し板を受け板に押圧して基材に孔部を形成する押圧工程を実施し、その後、孔部が形成された基材を、押し板と受け板との間から取り出す搬出工程を実施することによって座席用表皮材が製造される。このようにして製造された座席用表皮材によれば、座席用の表皮材としての使用において、当該座席用表皮材が備える孔部により蒸れ感を抑えることができる。また、本構成の座席用表皮材の製造方法によって得られた座席用表皮材によれば、孔部の内壁が表面層その物で被覆されているので、孔部の周りの表面層と孔部の内壁との質感に統一性を持たせることができるとともに、孔部が設けられている箇所を深みのあるデザインとすることができ、意匠性が良好なものとなる。
【0025】
本発明に係る座席用表皮材の製造方法において、
前記狭持工程において、前記基材と前記受け板との間に保護シートを介挿することが好ましい。
【0026】
本構成の座席用表皮材の製造方法によれば、基材と受け板との間に保護シートが介挿されるので、孔部の型の損傷を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る座席用表皮材の積層構造を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の第一実施形態に係る座席用表皮材の製造方法の説明図であって、(a)は基材形成工程の一例を示す図、(a´)は基材形成工程の他の例を示す図、(b)は挟持工程を示す図、(c)は押圧工程を示す図、(d)は搬出工程を示す図である。
図3図3は、本発明の第二実施形態に係る座席用表皮材の積層構造を模式的に示す断面図である。
図4図4は、本発明の第三実施形態に係る座席用表皮材の積層構造を模式的に示す断面図である。
図5図5は、本発明の第四実施形態に係る座席用表皮材の積層構造を模式的に示す断面図である。
図6図6は、本発明の第五実施形態に係る座席用表皮材の積層構造を模式的に示す断面図であって、(a)は孔部が貫通孔である場合、(b)は孔部が段付き貫通孔である場合、(c)は孔部が陥没孔である場合、(d)は孔部が段付き陥没孔である場合である。
図7図7は、本発明の第六実施形態に係る座席用表皮材の積層構造を模式的に示す断面図であって、(a)は孔部が貫通孔である場合、(b)は孔部が段付き貫通孔である場合、(c)は孔部が陥没孔である場合、(d)は孔部が段付き陥没孔である場合である。
図8図8は、本発明の第七実施形態に係る座席用表皮材の積層構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について、図1図8を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。なお、各図において、座席用表皮材の積層構造における各層の厚み関係等は、実際の座席用表皮材における構造物間のサイズ関係を厳密に再現したものではなく、説明容易化のため適宜誇張してある。
【0029】
〔第一実施形態〕
<全体構成>
図1は、本発明の第一実施形態に係る座席用表皮材の積層構造を模式的に示す断面図である。図1に示されるように、第一実施形態に係る座席用表皮材11は、表面層12と、裏面層13と、裏布14とを有し、表面層12の側から裏面層13の側に向けて貫通孔15(本発明の「孔部」に相当する。)が形成されている。なお、裏布14は、設けることが好ましい構成であるが、省略することも可能である。
【0030】
<表面層>
表面層12としては、例えば、織物、編物、不織布等の布帛類、人工皮革、合成皮革、天然皮革等の皮革類等を用いることができる。
【0031】
表面層12を構成する材料は、特に限定されるものではないが、貫通孔15を形成する手段を考慮すると、その一部に熱可塑性樹脂を含有していることが好ましい。熱可塑性樹脂の形態についても特に限定されず、熱可塑性繊維を用いた布帛類であってもよいし、熱可塑性樹脂を含浸したり、熱可塑性樹脂を積層したりした皮革類であってもよい。
【0032】
表面層12として、織物、編物、不織布等の布帛類、人工皮革、合成皮革、天然皮革等の皮革類を用いる場合、織物、編物、不織布等の布帛類、人工皮革と合成皮革の基材、及び合成皮革の裏布の糸条を構成する繊維(単繊維)の素材は、特に限定するものではなく、例えば、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維等が挙げられる。なかでも、耐久性、特には、機械的強度、耐熱性、耐光性の観点から、合成繊維が好ましく、合成繊維のなかでもポリエステルが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、又はポリエチレンテレフタレートを一成分とする複合繊維がさらに好ましい。なお、織物の組織は、特に限定されるものではなく、例えば、三元組織である平織、斜文織、朱子織、これら三元組織の変化組織、なし地織等の特別組織、さらにこれらを2種以上組み合わせた混合組織等を挙げることができる。
【0033】
また、表面層12として編物を用いる場合、例えば、丸編、横編などの緯編、トリコット編、ラッセル編、及びミラニーズ編などの経編などが挙げられるが、編物の種類は特に限定されない。
【0034】
表面層12として不織布を用いる場合、例えば、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ポリオレフィン系等の合成樹脂製長繊維フィラメント又は短繊維(ステープル)が高密度、且つ無方向に堆積接合されたものが好ましく、これらの合成樹脂には、撥水剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、難燃剤などを含有させてもよい。
【0035】
表面層12として人工皮革を用いる場合、例えば、不織布、織物、編物等からなる基布に、合成樹脂(ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂など)溶液を含浸させ、起毛加工やエンボス加工などをして、スエードやヌバックなどの皮革に似せて仕上げたものが挙げられる。
【0036】
表面層12として合成皮革を用いる場合、例えば、織物、編物、不織布等からなる基布の上に合成樹脂(ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂等)を積層し、エンボス加工やもみ加工などをして、皮革に似せて仕上げたものが挙げられる。なお、合成皮革は、湿式法、乾式法いずれの方法で形成してもよい。
【0037】
表面層12として天然皮革を用いる場合、例えば、牛、馬、豚、山羊、羊、鹿、カンガルー等の哺乳類革、ダチョウ等の鳥類革、ウミガメ、オオトカゲ、ニシキヘビ、ワニ等の爬虫類革など従来公知の天然皮革を挙げることができる。なかでも、汎用性が高く、面積が大きく、厚さのある牛革が好ましい。また、動物の皮(原皮)を鞣して、耐久性(耐熱性、耐腐敗性、耐薬品性など)を付与するとともに、革らしさを引き出した「本革」、すなわち、従来公知の製革工程(鞣し工程、染色工程、仕上げ工程)を施したものを用いることが好ましい。
【0038】
表面層12の厚さは、特に限定されるものではないが、貫通孔15を形成し易いという観点から、20mm以下であることが好ましい。また、表面層12の側から裏面層13の側に向けて縮径する貫通孔15を形成し易いという観点から、0.3mm以上であることが好ましい。
【0039】
<裏面層>
裏面層13を構成する材料としては、表面層12と同等のものを使用することができる。また、裏面層13は、例えば、クッション材で構成されることが好ましい。裏面層13をクッション材で構成することにより、着座感、及び触感が向上する。
【0040】
表面層12に対しクッション材(裏面層13)を一体化する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、接着剤を用いる方法、フレームラミネートによる方法等を挙げることができる。工程負荷や軽量化の観点から、フレームラミネートによる方法が好ましい。表面層12と裏面層13とを積層シートとして一体化する場合、積層シートの厚さは、1.3~30mmとするのが好ましい。積層シートにおいて、裏面層13としてクッション材を用いる場合、クッション材の厚さは、1.0~10mmであることが好ましい。
【0041】
クッション材の材料としては、特に限定されるものではなく、ポリウレタンフォーム等の合成樹脂発泡体、立体織物、立体編物、不織布等の布帛類等が挙げられる。表面層12の側から裏面層13の側に向けて縮径する貫通孔15を形成し易いという観点から、合成樹脂発泡体が好ましく、汎用性の観点からポリウレタンフォームシートが好ましい。
【0042】
表面層12に使用される樹脂と、裏面層13に使用される樹脂とは、共に同種のものが選択されてもよいし、互いに独立して異種のものが選択されてもよい。表面層12及び裏面層13に適切な樹脂を使用することで、後述する貫通孔15の内壁が表面層12その物で被覆されるとともに、貫通孔15の開口周縁部に形成される融着物16は樹脂のブレンドとなってその強度を保つことができる。
【0043】
<裏布>
裏面層13の下面には、貫通孔15の形成時の裏面層13(クッション材)の破損防止等の観点から、裏布14を設けることが好ましい。裏布14としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエステル等の合成繊維からなる布帛が挙げられる。また、貫通孔15を形成する際の積層シートの打抜片を効率的に除去できるという観点から、低融点の繊維を用いた布帛を用いることが好ましい。なお、裏面層13の上面と下面とについて、表面層12と接触する側の面が上面であり、表面層12と接触する側の面の反対側の面が下面である。
【0044】
<貫通孔>
貫通孔15は、表面層12の側から裏面層13の側に向けて縮径し、深さによって孔径が異なるように構成されている。このような貫通孔15は、深みのあるデザインとなり、意匠性が向上する。
【0045】
貫通孔15の内壁は、表面層12その物によって被覆されている。つまり、特許文献1に係る人造皮革では熱溶融物で貫通孔の内壁が被覆されているが、これとは異なり、貫通孔15の内壁は、表面層12のみで被覆されている。裏面層13における貫通孔15の開口周縁部は、表面層12、裏面層13及び裏布14の1種以上(本例では3種全て)に含まれる成分の融着物16で構成されている。こうして、貫通孔15であることによって通気性に優れるとともに、貫通孔15の開口周縁部が融着物16によって強固に接合されていることから開口周縁部がほつれ難く耐久性に優れる座席用表皮材11を得ることができる。
【0046】
貫通孔15を形成する方法としては、特に限定されず、表面層12の側から裏面層13の側に向けて押し付けすることによって貫通孔15が形成される後述の型押部17(本発明の「孔部の型」に相当する)を用いて表面層12の側から裏面層13の側に向けて押圧することにより、貫通孔15の開口周縁部が、表面層12、裏面層13及び裏布14の1種以上(本例では3種全て)に含まれる成分の融着物16によって強固に接合されるものであればよい。例えば、加熱穿孔法、エンボス加工法、ウェルダー加工法等を挙げることができる。なかでも、加工安定性及びコストの観点からエンボス加工法が好ましく、座席用表皮材の表面に不必要な熱が当たることを防止する観点からウェルダー加工法が好ましく、目的に応じて何れかを選択すればよい。
【0047】
エンボス加工法としては、ロールエンボス加工法、平板エンボス加工法のいずれも採用できる。エンボス加工法においては、後述の型押部17を有するエンボスロール(押し板80)と、受けロール(受け板81)との間に、少なくとも表面層12と裏面層13とが積層された積層シートを通し、エンボスロール(押し板80)と受けロール(受け板81)とで加熱押圧して、貫通孔15を形成する。
【0048】
<座席用表皮材の製造方法>
次に、起毛又はバフ処理が施されたポリエステル織物によって表面層12が形成され、ポリウレタンフォームシートによって裏面層13が形成され、ポリエステル編物によって裏布14が形成される座席用表皮材11をエンボス加工法(平板エンボス加工法)によって製造する方法について説明する。なお、この製造方法の説明において例示する、表面層12、裏面層13、及び裏布14のそれぞれの構成材については、一例を挙げたにすぎず、ここで挙げた構成材に限定されるものではない。また、裏布14は省略される場合がある。
【0049】
図2は、本発明の第一実施形態に係る座席用表皮材の製造方法の説明図であって、(a)は基材形成工程の一例を示す図、(a´)は基材形成工程の他の例を示す図、(b)は挟持工程を示す図、(c)は押圧工程を示す図、(d)は搬出工程を示す図である。
【0050】
[基材形成工程]
まず、図2(a)に示されるように、第一ドラム91から、表面層12を構成するポリエステル織物シートを繰り出し、第二ドラム92から、裏面層13を構成するポリウレタンフォームシートを繰り出し、ポリウレタンフォームシートの表面を加熱手段(本例ではバーナー93を例示する)で加熱し、ポリウレタンフォームシートの表面が溶融したところにポリエステル織物シートを貼り合わせるように一対のピンチロール94,95で挟みながら下流側へと送り、ポリエステル織物シートとポリウレタンフォームシートとが重ね合わされて溶着された二層シート(積層シート)を巻取りロール96で巻き取る。二層シートを巻き取った巻取りロール96は、第二ドラム92としてセットする。第一ドラム91に裏布14を構成するポリエステル編物シートをセットした後、これを繰り出しながら、第二ドラム92から、二層シートを繰り出し、二層シートにおけるポリウレタンフォームシートの表面を加熱手段で加熱し、ポリウレタンフォームシートの表面が溶融したところにポリエステル編物シートを貼り合わせるように一対のピンチロール94,95で挟みながら下流側へと送り、ポリエステル織物シート、ポリウレタンフォームシート、及びポリエステル編物シートが重ね合わされて溶着された三層シートを座席用表皮材の基材70として巻取りロール96で巻き取る。
【0051】
基材形成工程の他の例としては、図2(a´)に示されるようなものもある。図2(a´)に示されるように、図示されない第一ドラムから、裏面層13を構成するポリウレタンフォームシートを繰り出し、図示されない第二ドラムから、裏布14を構成するポリエステル編物シートを繰り出す。ポリウレタンフォームシートの表面を加熱手段(バーナー93)で加熱し、ポリウレタンフォームシートの表面が溶融したところにポリエステル編物シートを貼り合わせるようにピンチロール97,98で挟みながら下流側へと送る。ポリエステル編物シートとポリウレタンフォームシートとが重ね合わされて溶着された二層シート(積層シート)におけるポリウレタンフォームシートの表面を加熱手段(バーナー93´)で加熱し、ポリウレタンフォームシートの表面が溶融したところに、図示されない第三ドラムから繰り出される、表面層12を構成するポリエステル織物シートを貼り合せるようにピンチロール98,99で挟みながら下流側へと送る。そして、ポリエステル織物シート、ポリウレタンフォームシート、及びポリエステル編物シートが重ね合わされて溶着された三層シートを座席用表皮材の基材70として図示されない巻取りロールで巻き取る。
【0052】
[挟持工程]
次いで、図2(b)に示されるように、上記の基材形成工程にて形成された基材70を、貫通孔15を形成するための型押部17が基板18に立設されて構成される押し板80と、当該押し板80と対向する受け板81との間に挟み込む。このとき、基材70と受け板81との間に保護シート82が介挿されるように、受け板81上に保護シート82を予め載置しておくことが好ましい。
【0053】
ここで、型押部17の形状については、特に限定されず、所望の形状でよいが、貫通孔15を形成しやすいという観点から、型押部17は錐台状であることが好ましい。また、同様の理由により、型押部17の頂面が円形であることが好ましく、さらに好ましくは型押部17の頂面の周縁以外(頂面の内側)が凹部となっていることが好ましい。型押部17の頂面は斜面としてもよい(片刃の断面のような形状)。これにより、基材70に型押部17が入り込みやすくなり、貫通孔15の形成が容易になる。また、型押部17は、型押部17の頂面にさらにパンチング用のピンを設けた形状としてもよい。ピンを設けることにより、貫通孔15の形成が容易になる。さらに、後述する押圧工程にて型押部17が基材70を厚み方向に押込むため、貫通孔15の内壁をポリエステル織物シートからなる表面層12で形成することが容易になる。
【0054】
エンボス加工法に用いる受け板81の形状は、平滑板状でもよいし、型押部17に対応した凹部を形成(所謂雄雌型)としてもよい。押し板80や受け板81の形状は、上述の形状を適宜組合せて用いることができる。
【0055】
保護シート82は、型押部17の損傷を防いだり、貫通孔15を形成する際の打抜片(図示省略)を効率的に除去したり、貫通孔15の形成を容易にしたりするために設けられるものである。保護シート82としては、特に限定されるものではなく、例えば、紙、フィルム、織物、編物、不織布等が挙げられる。なかでも、打抜片を効率的に除去できるという観点から、織物、編物、不織布、特には、低融点の繊維からなる織物、編物、不織布が好ましく、貫通孔15の形成を容易にするという観点から、紙が好ましい。
【0056】
[押圧工程]
次いで、図2(c)に示されるように、表面層12を構成するポリエステル織物シートが溶融しない温度で受け板81を図示されない電熱線で加熱しながら、押し板80を受け板81に近づけるように相対移動させ、押し板80の型押部17を受け板81に押圧して基材70に貫通孔15を形成する。なお、裏面層13を構成するポリウレタンフォームシートは、表面層12を構成するポリエステル織物シートよりも熱によって軟化し易い。このため、座席用表皮材11においては、図1及び図2(d)に示されるように、裏面層13と共に裏布14が表面層12側に引き上げられて、当該座席用表皮材11の裏面は上凸円弧状に湾曲する(後述する図3図8に示される第二実施形態乃至第七実施形態についても同様)。
【0057】
[搬出工程]
次いで、図2(d)に示されるように、受け板81から押し板80を引き離すように押し板80を相対移動させ、貫通孔15が形成された基材70を、押し板80と受け板81との間から取り出す。こうして、貫通孔15を有する座席用表皮材11を製造することができる。
【0058】
上記の製造方法により製造された座席用表皮材11においては、表面層12の側から裏面層13の側に向けて貫通孔15が形成されているので、通気性を格段に向上させることができ、座席用の表皮材としての使用において、当該座席用表皮材11が備える貫通孔15により蒸れ感を確実に抑えることができる。また、上記の製造方法により製造された座席用表皮材11においては、貫通孔15の内壁が表面層12その物で被覆されているので、貫通孔15の周りの表面層12と貫通孔15の内壁との質感に統一性を持たせることができるとともに、貫通孔15が設けられている箇所を深みのあるデザインとすることができ、意匠性が良好なものとなる。
【0059】
〔第二実施形態〕
図3は、本発明の第二実施形態に係る座席用表皮材の積層構造を模式的に示す断面図である。第二実施形態において、第一実施形態と同一又は同様のものについては図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、第二実施形態に特有の部分を中心に説明することとする(後述する第三実施形態乃至第七実施形態についても同様)。
【0060】
図3に示される第二実施形態に係る座席用表皮材21において、貫通孔25の内壁は、表面層12の側から裏面層13の側に向かう途中に形成される円環状の段面26を有し、段面26を境にして孔径が大きく変化するように構成されている。
【0061】
第二実施形態の座席用表皮材21によれば、第一実施形態の座席用表皮材11と同様の作用効果を得ることができるのは勿論のこと、深みのあるデザインとすることができる。なお、ここでは、貫通孔25の内壁に段面26を1つだけ設ける例を示したが、段面26を複数設けて、深さによって孔径が複数段階で変化するようにしてもよい。
【0062】
第二実施形態に係る座席用表皮材21の製造方法については、第一実施形態に係る座席用表皮材11の製造方法において用いられる型押部17に代えて、段面26を形成するための段部を有する型押部27が用いられること以外は第一実施形態に係る座席用表皮材11の製造方法と同じである。
【0063】
〔第三実施形態〕
図4は、本発明の第三実施形態に係る座席用表皮材の積層構造を模式的に示す断面図である。図4に示される第三実施形態に係る座席用表皮材31においては、表面層12の側から裏面層13の側に向けて陥没孔35(本発明の「孔部」に相当する。)が形成されている。陥没孔35の内壁は、表面層12その物で被覆されている。つまり、特許文献1に係る人造皮革では熱溶融物で貫通孔の内壁が被覆されているが、これとは異なり、陥没孔35の内壁は、表面層12のみで被覆されている。また、陥没孔35の底面は、裏面層13の接合面よりも深い位置に形成されている。これにより、柔軟可撓で肌触りが良く、肌身に良く馴染むようにすることができる。なお、座席用表皮材31において、陥没孔35を形成する場合、裏布14は溶融しない。このため、陥没孔35の底部下方における表面層12と裏面層13とは、表面層12及び/又は裏面層13(本例では表面層12及び裏面層13の両方)に含まれる成分の融着物116によって接合されている。
【0064】
第三実施形態に係る座席用表皮材31の製造方法については、第一実施形態に係る座席用表皮材11の製造方法において用いられる型押部17に代えて、陥没孔35を形成するために先端部に丸みを持たせた型押部37が用いられること以外は第一実施形態に係る座席用表皮材11の製造方法と同じである。
【0065】
第三実施形態の座席用表皮材31によれば、表面層12の側から裏面層13の側に向けて陥没孔35が形成されているので、座席用の表皮材としての使用において、当該座席用表皮材31が備える陥没孔35により蒸れ感を抑えることができる。また、陥没孔35の内壁は、表面層12その物で被覆されている。従って、陥没孔35の周りの表面層12と陥没孔35の内壁との質感に統一性を持たせることができるとともに、陥没孔35が設けられている箇所を深みのあるデザインとすることができ、意匠性が良好なものとなる。
【0066】
〔第四実施形態〕
図5は、本発明の第四実施形態に係る座席用表皮材の積層構造を模式的に示す断面図である。図5に示される第四実施形態に係る座席用表皮材41において、陥没孔45の内壁は、表面層12の側から裏面層13の側に向かう途中に形成される円環状の段面46を有し、段面46を境にして孔径が大きく変化するように構成されている。なお、座席用表皮材41において、陥没孔45を形成する場合、裏布14は溶融しない。このため、陥没孔45の底部下方における表面層12と裏面層13とは、表面層12及び/又は裏面層13(本例では表面層12及び裏面層13の両方)に含まれる成分の融着物116によって接合されている。
【0067】
第四実施形態の座席用表皮材41によっても、第三実施形態の座席用表皮材31と同様の作用効果を得ることができるのは勿論のこと、デザイン上の深みにアクセントを設けることができる。なお、ここでは、陥没孔45の内壁に段面46を1つだけ設ける例を示したが、段面46を複数設けて、深さによって孔径が複数段階で変化するようにしてもよい。
【0068】
第四実施形態に係る座席用表皮材41の製造方法については、第一実施形態に係る座席用表皮材11の製造方法において用いられる型押部17に代えて、陥没孔45を形成するために先端部に丸みを持たせ、且つ段面46を形成するための段部を有する型押部47が用いられること以外は第一実施形態に係る座席用表皮材11の製造方法と同じである。
【0069】
〔第五実施形態〕
図6は、本発明の第五実施形態に係る座席用表皮材の積層構造を模式的に示す断面図で、(a)は孔部が貫通孔である場合、(b)は孔部が段付き貫通孔である場合、(c)は孔部が陥没孔である場合、(d)は孔部が段付き陥没孔である場合である。図6(a)~(d)に示されるように、第五実施形態に係る座席用表皮材51A~51Dは、表面層(表面組織)112に編み込まれた図示されない接結糸と、裏面層(裏面組織)113に編み込まれた図示されない接結糸とが互いに交絡することにより、表面層112と裏面層113とが接結されてなるダブルラッセル経編地を用いたものである。これら座席用表皮材51A~51Dにおいては、表面層112の側から裏面層113の側に向けて貫通孔55A(図6(a)参照)、及び段付き貫通孔55B(図6(b)参照)、並びに陥没孔55C(図6(c)参照)、及び段付き陥没孔55D(図6(d)参照)が形成されている。なお、座席用表皮材51A,51Bにおいて、裏面層113における貫通孔55A,55Bの開口周縁部は、表面層112、裏面層113、及び接結糸の1種以上(本例では3種全て)に含まれる成分の融着物216によって接合されている。また、座席用表皮材51C,51Dにおいて、陥没孔55C,55Dの底部下方における表面層112と裏面層113とは、表面層112、裏面層113、及び接結糸の1種以上(本例では接結糸)に含まれる成分の融着物316によって接合されている。
【0070】
第五実施形態の座席用表皮材51A~51Dにおいても、表面層112の側から裏面層113の側に向けて貫通孔55A,55B、及び陥没孔55C,55Dが形成されているので、通気性を向上させることができ、座席用の表皮材としての使用において、当該座席用表皮材51A~51Dが備える貫通孔55A,55B、及び陥没孔55C,55Dにより蒸れ感を抑えることができる。また、貫通孔55A,55B、及び陥没孔55C,55Dの各々の内壁は、表面層112その物で被覆されている。従って、貫通孔55A,55B、及び陥没孔55C,55Dの周りの表面層112と貫通孔55A,55B、及び陥没孔55C,55Dの内壁との質感に統一性を持たせることができるとともに、貫通孔55A,55B、及び陥没孔55C,55Dが設けられている箇所を深みのあるデザインとすることができ、意匠性が良好なものとなる。
【0071】
第五実施形態に係る座席用表皮材51A~51Dの製造方法については、第一実施形態に係る座席用表皮材11の製造方法において用いられる型押部17に代えて、貫通孔55A,55B、及び陥没孔55C,55Dを形成するのに適した形状等を備えた型押部57A~57Dが用いられること以外は第一実施形態に係る座席用表皮材11の製造方法と同じである。
【0072】
〔第六実施形態〕
図7は、本発明の座席用表皮材の第六実施形態の説明図である。図7(a)~(d)に示される座席用表皮材61A,61B,61C,61Dは、第一実施形態乃至第四実施形態の座席用表皮材11,21,31,41において、表面層12と裏面層13との間に中間層200を設けるようにしたものである。こうして、中間層200を設けることにより、重厚感を持たせることができる。中間層200としては、例えば、織物、編物、不織布等の布帛類等や、ポリウレタンフォーム等の合成樹脂発泡体を用いることができる。なお、座席用表皮材61A,61Bにおいて、裏面層13における貫通孔15,25の開口周縁部は、表面層12、中間層200、裏面層13、及び裏布14の1種以上(本例では4種全て)に含まれる成分の融着物416によって接合されている。また、座席用表皮材61C,61Dにおいて、陥没孔35,45を形成する場合、裏布14は溶融しない。このため、陥没孔35,45の底部下方における表面層12と中間層200と裏面層13とは、表面層12、中間層200、及び裏面層13の1種以上(本例では3種全て)に含まれる成分の融着物516によって接合されている。
【0073】
上記の第一~第六実施形態においては、表面層12の側から裏面層13の側に向けて孔部(貫通孔、陥没孔)が形成された例を示したが、これに限定されるものではなく、裏面層13の側から表面層12の側に向けて孔部(貫通孔、陥没孔)が形成される態様例もある。
【0074】
〔第七実施形態〕
図8は、本発明の第七実施形態に係る座席用表皮材の積層構造を模式的に示す断面図である。図8に示される第七実施形態に係る座席用表皮材71においては、貫通孔75の内壁が、表面層12で被覆された部分だけでなく、裏面層13や裏布14等が露出した部分が存在している。このような構造となるケースとしては、例えば、裏面からの孔開け加工の場合や、表面層12の加熱押圧によるダメージを防ぐために加熱押圧の条件を弱くした場合などが挙げられる。この場合、表面層12及び/又は裏面層13に含まれる成分の融着物が必ずしも存在するとは限らない。このような第七実施形態の座席用表皮材71によっても、当該座席用表皮材71が備える貫通孔75により蒸れ感を抑えることができるとともに、意匠性や耐久性を向上することできる。なお、第七実施形態に係る座席用表皮材71の製造に際しては、貫通孔75を形成するのに適した形状の型押部77が用いられる。
【0075】
以上、本発明の座席用表皮材、及び座席用表皮材の製造方法について、複数の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、各実施形態に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。具体的な別実施形態は以下のとおりである。
【0076】
〔別実施形態〕
上記の実施形態においては、エンボス加工法(平板エンボス加工法)により座席用表皮材11,21,31,41,51A~51D,61A~61D,71を製造する例を示したが、ウェルダー加工法により座席用表皮材11,21,31,41,51A~51D,61A~61D,71を製造することもできる。図示による詳細説明は省略するが、ウェルダー加工法においては、型押部17,27,37,47,57A~57Dを取り付けた可動定盤と、固定定盤上の絶縁紙との間に、基材70を通し、高周波により加熱された型押部17,27,37,47,57A~57Dによって、基材70を加熱押圧することで貫通孔15,25,55A,55B、又は陥没孔35,45,55C,55Dを形成する。ウェルダー加工法に用いられる型押部17,27,37,47,57A~57Dの形状については、エンボス加工法と同様の形状を用いることができる。ウェルダー加工法に用いられる絶縁紙としては、例えば、シリコーンシート、テフロン(登録商標)シート、ベークライト板、紙等が挙げられ、これらを単独、又は組み合わせて使用することができる。なかでも、貫通孔15,25,55A,55Bの形成し易さの観点から、紙を用いることが好ましい。なお、ウェルダー加工法においても、上記のエンボス加工法と同様に、型押部の損傷を防いだり、貫通孔を形成する際の打抜片を効率的に除去したり、貫通孔の形成を容易にしたりするために、保護シート(例えば、フィルム等)を併せて用いることもある。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の座席用表皮材は、例えば車両内装材や椅子張り地において利用可能である。
【符号の説明】
【0078】
11,21,31,41 座席用表皮材
51A~51D 座席用表皮材
61A~61D 座席用表皮材
71 座席用表皮材
12 表面層
13 裏面層
14 裏布
15,25,55A,55B,75 貫通孔(孔部)
16,116,216 融着物
316,416,516 融着物
17,27,57A,57B,77 型押部(孔部の型)
18 基板
26,46 円環状の段面
35,45,55C,55D 陥没孔(孔部)
37,47,57C,57D 型押部(孔部の型)
70 基材
80 押し板
81 受け板
82 保護シート
91 第一ドラム
92 第二ドラム
93,93´ バーナー
94,95 ピンチロール
96 巻き取りロール
97,98,99 ピンチロール
112 表面層(表面組織)
113 裏面層(裏面組織)
200 中間層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8