IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立建機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-施工現場管理システム 図1
  • 特許-施工現場管理システム 図2
  • 特許-施工現場管理システム 図3
  • 特許-施工現場管理システム 図4
  • 特許-施工現場管理システム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】施工現場管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20241030BHJP
【FI】
G06Q50/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021007683
(22)【出願日】2021-01-21
(65)【公開番号】P2022112060
(43)【公開日】2022-08-02
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 理沙
(72)【発明者】
【氏名】荒井 雅嗣
(72)【発明者】
【氏名】関根 和也
(72)【発明者】
【氏名】岡野 康雄
(72)【発明者】
【氏名】多胡 尚
(72)【発明者】
【氏名】日暮 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 繁則
【審査官】深津 始
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-095617(JP,A)
【文献】特開2010-198519(JP,A)
【文献】特開2003-105807(JP,A)
【文献】特開2015-154920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 -G06Q 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業員と建設機械とが協働して作業を行う施工現場に用いられる施工現場管理システムであって、
前記作業員に配置され、該作業員の生体情報、位置情報及び動作情報を作業員情報として取得する作業員情報取得部を有する作業員携帯装置と、
前記建設機械に搭載され、該建設機械の操作情報及び位置情報を車体情報として取得する車体情報取得部を有し、前記建設機械の制御を行うコントローラと、
前記作業員携帯装置の前記作業員情報取得部により取得された作業員情報と前記コントローラの前記車体情報取得部により取得された車体情報とを管理する管理サーバと、
を備え、
前記施工現場には、前記建設機械を中心とした危険領域と、該危険領域を取り囲む認識領域とがそれぞれ設定され、
前記作業員携帯装置は、当該作業員携帯装置を所持する前記作業員が前記建設機械への接近により前記認識領域内に進入した場合、前記建設機械と自動的にペアリングを開始して通信可能な状態となって、前記作業員情報を前記コントローラに送信し、
前記コントローラは、前記作業員情報取得部により取得された作業員情報と前記車体情報取得部により取得された車体情報とに基づいて前記建設機械を減速制御または停止制御し、前記作業員情報を前記管理サーバへ送信し、
前記管理サーバは、前記作業員情報取得部により取得された前記作業員の生体情報に基づいて前記作業員の体調の危険度を予測することを特徴とする施工現場管理システム。
【請求項2】
記コントローラは、前記作業員携帯装置から送信された前記作業員の生体情報及び動作情報に基づいて、前記作業員情報の前記管理サーバへの送信又は前記建設機械の前記減速制御を行う請求項1に記載の施工現場管理システム。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記作業員の動作情報に基づいて推定された前記作業員の転倒危険度が予め設定された転倒閾値を超えた場合、又は、前記作業員の生体情報が予め設定された生体閾値を超えた場合に、前記車体情報取得部により取得された前記建設機械の操作情報に基づいて前記建設機械への前記減速制御を行い、それ以外の場合に、前記作業員情報を前記管理サーバに送信する請求項2に記載の施工現場管理システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記作業員携帯装置から送信された前記作業員の位置情報と前記車体情報取得部により取得された前記建設機械の位置情報とに基づいて前記作業員が前記危険領域に進入するか否かを判定し、前記作業員が前記危険領域に進入したと判定した場合に、前記車体情報取得部により取得された前記建設機械の操作情報に基づいて前記建設機械への前記停止制御を行う請求項に記載の施工現場管理システム。
【請求項5】
前記施工現場の管理者が持つ端末を更に備え、
前記管理サーバは、送信された前記作業員の生体情報と該管理サーバに蓄積された気象情報とに基づいて前記作業員の体調の危険度を予測し、予測した結果を前記端末に表示させるとともに前記作業員携帯装置を介して前記作業員に注意喚起を行う請求項2~4のいずれか一項に記載の施工現場管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工現場管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
施工現場において、作業員と油圧ショベル等の建設機械とが協働して作業を行うのが多い。作業員を建設機械との接触事故から守るために、作業員と建設機械との接近を検知して注意喚起を行うシステムが開発されている。
【0003】
例えば特許文献1では、作業員の着用物に取り付けられ作業員と建設機械とが接近又は接触した旨の危険発生情報を送信できる取り付け部材と、取り付け部材が送信してきた危険発生情報を受信して送信する多機能携帯端末と、多機能携帯端末が送信した危険発生情報を管理して統計を取る管理サーバと、を備える管理システムが提案されている。そして、工事管理者は、管理サーバで蓄積した情報を介して危険の発生をいち早く把握でき、適切な対処を実施することで危険の回避を図っている。
【0004】
また、作業員に関しては、位置を検知するほか、作業員の健康状態、動作及び姿勢をセンシングするセンサ技術も開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6600932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1に記載の管理システムでは、建設機械と作業員との接近または接触した旨の危険発生情報と位置情報のやり取りで事態が発生した際のみの接触を抑制し、適切な対処を行うことができるが、将来に生じる危険の回避に関しては十分とは言えない。すなわち、作業員の動作内容、動作速度、生体情報等を鑑みて将来の危険を予測する仕組みがない。また、上述のセンサ技術では、作業員の瞬時における不安定な動作等を認識することが可能であるが、事前に察知することはできない。
【0007】
本発明は、作業員と建設機械との接触を防止するとともに、将来の危険性を予測して事故を防止できる施工現場管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る施工現場管理システムは、作業員と建設機械とが協働して作業を行う施工現場に用いられる施工現場管理システムであって、前記作業員に配置され、該作業員の生体情報、位置情報及び動作情報を作業員情報として取得する作業員情報取得部を有する作業員携帯装置と、前記建設機械に搭載され、該建設機械の操作情報及び位置情報を車体情報として取得する車体情報取得部を有し、前記建設機械の制御を行うコントローラと、前記作業員携帯装置の前記作業員情報取得部により取得された作業員情報と前記コントローラの前記車体情報取得部により取得された車体情報とを管理する管理サーバと、を備え、前記コントローラは、前記作業員情報取得部により取得された作業員情報と前記車体情報取得部により取得された車体情報とに基づいて前記建設機械を制御し、前記管理サーバは、前記作業員情報取得部により取得された前記作業員の生体情報に基づいて前記作業員の体調の危険度を予測することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る施工現場管理システムでは、コントローラは、作業員携帯装置の作業員情報取得部により取得された作業員情報と車体情報取得部により取得された車体情報とに基づいて建設機械を制御する。従って、例えば作業員が建設機械に接近した場合、コントローラは建設機械のエンジン停止などの制御を行うことで作業員と建設機械との接触を防ぐことができる。加えて、管理サーバは作業員情報取得部により取得された作業員の生体情報に基づいて作業員の体調の危険度を予測するので、将来に生じ得る危険を回避することができる。その結果、作業員と建設機械との接触を防止するとともに、将来の危険性を予測して事故を防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業員と建設機械との接触を防止するとともに、将来の危険性を予測して事故を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る施工現場管理システムを示す概略構成図である。
図2】実施形態に係る施工現場管理システムを示す機能ブロック図である。
図3】情報処理部の制御処理を示すフローチャートである。
図4】端末に表示される画面の一例である。
図5】端末に表示される画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明に係る施工現場管理システムの実施形態について説明する。図面の説明において同一の要素には同一符号を付し、重複説明は省略する。
【0013】
図1は実施形態に係る施工現場管理システムを示す概略構成図であり、図2は実施形態に係る施工現場管理システムを示す機能ブロック図である。本実施形態の施工現場管理システム1は、複数の作業員Mと建設機械2とが協働して作業を行う施工現場に用いられ、作業員Mを建設機械2との接触事故から守るシステムである。
【0014】
図1に示すように、この施工現場管理システム1は、主に、施工現場で作業を行う建設機械2と、各作業員Mに配置された作業員携帯装置3と、管理サーバ(クラウド)4とを備えている。建設機械2と作業員携帯装置3とは、建設機械2の認識範囲(後述する)内であれば無線回線を介して互いに通信可能に構成されている。建設機械2と管理サーバ4とは無線基地局5を介して互いに通信可能に構成されている。一方、管理サーバ4は無線基地局5を介して作業員携帯装置3に送信可能となっている。
【0015】
作業員携帯装置3は、作業の邪魔にならないように、例えば作業員Mに装着できる腕時計型、ヘルメット装着型、リストバンド型、巻付くベルト型、着用シャツ型、イヤホン型、耳たぶにつけるイヤ型であっても良く、あるいは作業員Mが携帯できるキーホルダー型などであっても良い。図2に示すように、作業員携帯装置3は主に、作業員情報取得部31と、受信部32と、報知部33とを備えている。
【0016】
作業員情報取得部31は、作業員Mの生体情報、位置情報及び動作情報を取得するセンサ等によって構成されている。作業員情報取得部31は、生体情報取得部311、位置情報取得部312、及び動作情報取得部313を有する。生体情報取得部311は、作業員Mの体表面温度、体温、心拍、脈拍、活動量、環境情報と組み合わせて熱ストレス情報を提供するパルス数、心電図波形などを取得する。位置情報取得部312は、作業員Mの位置を取得する。
【0017】
動作情報取得部313は、作業員Mの速度、方角、加速度及び作業姿勢等を取得する。また、動作情報取得部313は、取得した作業員Mの作業姿勢に基づいて作業員Mの作業内容を推定できるように構成されても良い。このようにすれば、作業員携帯装置3は、動作情報取得部313により推定された作業内容に基づいて作業員Mにその作業に関する注意を促すことができる。また、推定された作業内容が作業員Mと建設機械2との協働作業の場合、作業員携帯装置3は、例えば建設機械2の運転席に配置されたモニタを介して建設機械2のオペレータにも注意を促すことができる。更に、動作情報取得部313は、取得した作業員Mの加速度に基づいて作業員Mの転倒の危険度を推定できるように構成されても良い。この場合、作業員携帯装置3は、動作情報取得部313により推定された転倒危険度を予め設定された転倒閾値と比較し、転倒閾値を超えた場合に作業員Mに注意喚起を促すのが好ましい。
【0018】
そして、作業員情報取得部31は、取得したこれらの情報を作業員情報として無線回線を介し建設機械2に送信する。
【0019】
受信部32は、無線基地局5を介して管理サーバ4から送信された情報を受信し、報知部33に出力する。報知部33は、例えばブザーや警告灯などからなり、受信部32を介して受信された管理サーバ4の内容に基づいて報知音や警告灯の点滅で作業員Mへの注意喚起を行う。
【0020】
図1の施工現場では、建設機械2を1台のみ示しているが、建設機械2が複数台であっても良い。そして、建設機械2が複数台の場合、作業員Mに配置された作業員携帯装置3は、複数の建設機械2のいずれかと通信可能に接続されれば良い。本実施形態では、作業員Mが複数台の建設機械2のいずれかの認識領域内に入ると、作業員Mに配置された作業員携帯装置3と該建設機械2とが自動的にペアリングされる。すなわち、作業員携帯装置3は、無線回線で該建設機械2と通信できる状態になる。従って、作業員携帯装置3の作業員情報取得部31は、取得した作業員情報をペアリングされた建設機械2に送信する。これによって、該作業員携帯装置3が配置された作業員Mは、建設機械2と接近する判定対象になる。
【0021】
建設機械2としては、油圧ショベル、クレーン、ホイールローダ、ブルドーザ、ダンプトラックなどが挙げられるが、ここでは掘削作業、運搬作業及び積込作業を行う油圧ショベルの例を挙げる。
【0022】
建設機械2には、該建設機械2の制御を行うコントローラ20が搭載されている。コントローラ20は、例えば演算を実行するCPU(Central Processing Unit)と、演算のためのプログラムを記録した二次記憶装置としてのROM(Read Only Memory)と、演算経過の保存や一時的な制御変数を保存する一時記憶装置としてのRAM(Random Access Memory)とを組み合わせてなるマイクロコンピュータにより構成されており、記憶されたプログラムの実行によって建設機械2全体の制御を行う。
【0023】
図2に示すように、本実施形態のコントローラ20は、作業員Mに配置された作業員携帯装置3及び管理サーバ4とそれぞれ通信する通信部21、建設機械2の車体情報を取得する車体情報取得部22、作業員情報及び車体情報に対して各処理を行う情報処理部23、及び建設機械2の運転を制御する車体制御部24とを備えている。
【0024】
通信部21は、作業員携帯装置3から送信された作業員情報を受信する情報受信部211と、管理サーバ4に情報を送信する管理サーバ用送信部212と、管理サーバ4から送信された情報を受信する管理サーバ用受信部213とを有する。
【0025】
情報受信部211は、作業員携帯装置3から送信された作業員情報を受信し、受信した作業員情報を情報処理部23に出力する。なお、作業員情報には、上述した作業員Mの生体情報、位置情報及び動作情報が含まれている。
【0026】
管理サーバ用送信部212は、情報処理部23の処理結果(言い換えれば、情報処理部23の指示)に基づいて作業員Mの作業員情報を管理サーバ4に送信する。また、管理サーバ用送信部212は、情報処理部23の指示に関わらず、作業員Mの作業員情報を定期的に管理サーバ4に送信しても良い。また、管理サーバ用送信部212は、車体制御部24からの情報を管理サーバ4に送信する。更に、管理サーバ用送信部212は、車体情報取得部22により取得された車体情報を定期的に管理サーバ4に送信しても良い。
【0027】
管理サーバ用受信部213は、管理サーバ4から送信された情報を受信し、受信した情報を車体制御部24に出力する。
【0028】
車体情報取得部22は、建設機械2に設けられた各種センサからの信号が入力され、これらのセンサ情報から建設機械2の操作情報及び位置情報を車体情報として取得し、取得した車体情報を情報処理部23に出力する。建設機械2の操作情報には、車体の動作速度、旋回や走行などの動作内容などが含まれている。各種センサは、位置情報や動作速度を検出するGNSS(Global Navigation Satellite System)やIMU(Inertial Measurement Unit)や、操作情報を検出する圧力センサ等を含み、建設機械の車体情報を取得するための種々のセンサからなる。
【0029】
情報処理部23は、作業員情報取得部31により取得された作業員情報と、車体情報取得部22により取得された車体情報に対して判定、推定及び演算などの処理を行う。例えば、情報処理部23は、作業員Mの位置情報及び動作情報と建設機械2の操作情報及び位置情報とに基づいて、作業員Mが建設機械2に接近する状態を判定して監視する。更に、情報処理部23は、その処理結果に基づいて車体制御部24に減速指示又は停止指示を出力し、車体制御部24を介して建設機械2の制御を行う。
【0030】
また、この情報処理部23は、作業員携帯装置3の作業員情報取得部31から送信された作業員Mの生体情報及び動作情報に基づいて、作業員情報の管理サーバ4への送信又は建設機械2の制御を行う。
【0031】
車体制御部24は、情報処理部23からの指示と、管理サーバ4から送信された指令とに基づいて、エンジンの回転数や動作などの運転制御を行う。また、この車体制御部24は、車体に対する各制御の内容及び結果を管理サーバ用送信部212を介して管理サーバ4に送信する。
【0032】
ここで、図3を参照して情報処理部23の制御処理を詳細に説明する。図3は情報処理部の制御処理を示すフローチャートである。
【0033】
施工現場には、建設機械2を中心とした危険領域と認識領域がそれぞれ設定されている(図1参照)。危険領域は、例えば建設機械2を中心とした半径10mの円形領域である(図1の斜線部分参照)。認識領域は、例えば建設機械2を中心とした半径15mの円形領域から上記危険領域を取り除いた領域、すなわち危険領域を取り囲む円環状の領域である。
【0034】
上述したように、作業員Mが建設機械2に接近して建設機械2の認識領域内に進入すると、作業員Mに配置された作業員携帯装置3と該建設機械2とが自動的にペアリングされ、作業員情報取得部31により取得された作業員情報は、該建設機械2の情報受信部211に送信される。そして、情報受信部211は、送信されてきた作業員情報を受信し、受信した作業員情報を情報処理部23に出力する。これによって、情報処理部23は作業員情報を取得する(ステップS11)。続いて、情報処理部23は、車体情報取得部22から車体情報を取得する(ステップS12)。
【0035】
次に、情報処理部23は、作業員Mの転倒危険度が予め設定された転倒閾値を超えたか否かを判定する(ステップS13)。作業員Mの転倒危険度は、上述したように作業員携帯装置3の動作情報取得部313によって推定され、動作情報取得部313からその推定結果を取得しても良く、あるいは情報処理部23が自ら推定しても良い。自ら推定した場合、情報処理部23は、取得した作業員Mの動作情報に含まれた作業員Mの加速度を抽出し、抽出した作業員Mの加速度に基づいて作業員Mの転倒の危険度を推定できる。なお、加速度から転倒の危険度を推定する方法は、既に周知された技術を用いることができるので、その詳細な説明を省略する。また、転倒閾値については、例えば作業員Mの身長、体重、加速度等に基づいて設定される。
【0036】
そして、作業員Mの転倒危険度が転倒閾値を超えたと判定された場合、制御処理はステップS14に進む。ステップS14では、情報処理部23は、取得された建設機械2の操作情報に基づいて建設機械2を減速するように車体制御部24に指示する。このようにすれば、例えば作業員Mが認識領域で転倒した場合、建設機械2を減速する制御が行われることで、作業員Mに危険を及ぼさないようにすることができる。ステップS14が終わると、制御処理は後述するステップS17に進む。
【0037】
一方、ステップS13で作業員Mの転倒危険度が転倒閾値を超えていないと判定された場合、制御処理はステップS15に進む。ステップS15では、情報処理部23は、作業員Mの生体情報が予め設定された生体閾値を超えたか否かを判定する。例えば情報処理部23は、取得された作業員Mの生体情報に含まれた心拍数を抽出し、抽出した心拍数を予め設定された心拍数閾値と比較し、該心拍数閾値を超えたか否かを判定する。ここでは、心拍に代えて作業員Mの脈拍、体表面温度、心電図波形、活動量等を用いても良く、又はこれらのうちの2つ以上を用いても良い。
【0038】
そして、作業員Mの生体情報が生体閾値を超えたと判定された場合、制御処理はステップS14に進み、上述の減速指示が行われる。一方、作業員Mの生体情報が生体閾値を超えていないと判定された場合、制御処理はステップS16に進む。ステップS16では、情報処理部23は、取得した作業員Mの生体情報を管理サーバ用送信部212を介して管理サーバ4に送信する。なお、このとき、作業員Mの生体情報とともに、作業員Mの位置情報及び動作情報と車体情報とを管理サーバ4に送信するのが好ましい。
【0039】
続いて、情報処理部23は、取得された作業員Mの位置情報と建設機械2の位置情報とに基づいて、作業員Mが建設機械2の危険領域に進入したか否かを判定する(ステップS17)。作業員Mが危険領域に進入したと判定した場合、情報処理部23は、取得された建設機械2の操作情報に基づいて建設機械2を停止するように車体制御部24に指示する(ステップS18)。
【0040】
一方、作業員Mが危険領域に進入していないと判定した場合、ステップS17が繰り返し実施される。すなわち、情報処理部23は、作業員Mが建設機械2に接近する状態を常に監視する。
【0041】
そして、ステップS18が終わると、一連の制御処理は終了する。
【0042】
なお、情報処理部23の制御処理は上述したものに限定されない。例えばステップS11とステップS12とを入れ替えても良い。また、ステップS13とステップS15とを入れ替えても良い。
【0043】
図2に示すように、管理サーバ4は、作業員情報取得部31により取得された作業員情報と車体情報取得部22により取得された車体情報とを管理するものである。管理サーバ4は、例えば演算を実行するCPU(Central Processing Unit)と、演算のためのプログラムを記録した二次記憶装置としてのROM(Read Only Memory)と、演算経過の保存や一時的な制御変数を保存する一時記憶装置としてのRAM(Random Access Memory)とを組み合わせてなるマイクロコンピュータにより構成されており、記憶されたプログラムの実行によって情報管理、情報分析及び予測演算などを行う。
【0044】
管理サーバ4は主に、受信部41、送信部42、情報保持部43、情報分析部44及び表示情報生成部45を備えている。
【0045】
受信部41は、建設機械2の管理サーバ用送信部212から送信された作業員情報、車体情報、車体制御部24の制御内容及び結果に関する情報を受信し、受信したこれらの情報を情報保持部43と情報分析部44にそれぞれ出力する。
【0046】
情報保持部43は、受信部41から出力された情報を保存して蓄積する。情報保持部43には、施工現場の地形などの情報、施工現場が存在する地域の気象情報も蓄積されている。これらの情報は、情報の分析などを行う時に利用される。
【0047】
情報分析部44は、受信部41から出力された情報と、情報保持部43に蓄積された情報に基づいて各分析を行う。例えば、情報分析部44は、建設機械2から送信された情報と情報保持部43に蓄積された情報とを組み合わせた分析を行うことにより、現時点での結果の分析、過去の情報を用いて結果の予測、建設機械と作業員の情報を基に危険の予測を行う。
【0048】
具体的には、情報分析部44は、受信部41から出力された作業員Mの生体情報と情報保持部43に蓄積された気象情報とに基づいて作業員Mの体調の危険度を予測する。例えば情報分析部44は、作業員Mの心拍、体温、活動量、発汗量などの生体情報と、情報保持部43に蓄積された気温や湿度などの気象情報とを組み合わせて高度な分析を行い、分析した結果に基づいて作業員Mの熱中症の危険度、脱水症状の危険度等を予測する。生体情報及び気象情報から体調の危険度を予測する方法は、周知された技術を用いることができるので、その詳細な説明を省略する。
【0049】
そして、情報分析部44は、その分析した結果を送信部42と表示情報生成部45にそれぞれ出力する。
【0050】
送信部42は、情報分析部44によって分析された結果に基づいて作成した報知指令を作業員携帯装置3の受信部32に送信する。受信部32は、送信部42から送信された報知指令を受信し、作業員携帯装置3の報知部33に出力する。報知部33は、該報知指令に基づいて報知音や警告灯の点滅で作業員Mへの注意喚起を行う。
【0051】
また、送信部42は、情報分析部44により分析された結果に基づいて作成した制御指令を建設機械2の管理サーバ用受信部213に送信する。建設機械2の管理サーバ用受信部213は、送信部42から送信された結果を受信し、車体制御部24に出力するとともに、例えば運転席に配置されたモニタを表示させることで建設機械2のオペレータにも注意を促すことができる。このようにすれば、作業員Mの安全を確保することができる。
【0052】
表示情報生成部45は、情報分析部44の分析結果をスマートフォン61、タブレット端末62、PC(Personal Computer)63などの端末6に表示するための情報を生成し、生成した情報を端末6に送信する。
【0053】
端末6は、例えば施工現場の管理者(監督者ともいう)が持つものである。施工現場の管理者は、端末6を介して管理サーバ4からの分析結果を把握し、施工現場における作業員の安全確保を行うことができる。また、施工現場の管理者は、端末6を介して管理サーバ4に蓄積された各情報を閲覧することができる。
【0054】
例えば図4に示すように、端末6の画面には、施工現場名称や施工現場の稼働日などの施工現場情報を表示する施工現場情報表示欄601と、施工現場で稼働している建設機械一覧を表示する車両情報表示欄602と、情報分析部44の分析結果を表示する分析結果表示欄603と、情報分析結果の解説やコメントを表示する解説表示欄604とが設けられている。
【0055】
分析結果表示欄603には、例えば情報分析結果を示すグラフが表示される。情報分析結果を示すグラフとしては、車体の制御回数を示すグラフ、作業員の体温の遷移や作業員の発汗量を示すグラフ、又はこれらの情報を組み合わせて分析し得られた作業員の体調と車体の制御回数との相関関係を示すグラフ等が挙げられる。そして、施工現場の管理者は、端末6の画面に表示されたこれらの情報を見て、作業員の体調の実態や傾向を把握し、適切な対処を行うことで、事故の未然防止を図ることができる。
【0056】
更に、施工現場の管理者は、端末6の画面に表示された施工現場のマップなどを閲覧することで、施工現場のリアルタイムな状態を把握することができる。例えば図5に示すように、端末6の画面には、上述の施工現場情報表示欄601及び車両情報表示欄602に加えて、施工現場の地図を表示する施工現場マップ表示欄605が更に設けられている。
【0057】
施工現場マップ表示欄605には、稼働している建設機械と作業員の位置がリアルタイムに表示される。これらの建設機械及び作業員の位置は、管理サーバ4に送信された建設機械の位置情報及び作業員の位置情報に基づいて管理されたものである。更に、施工現場マップ表示欄605には、管理者が施工現場の危険であると思われる場所や積み込み場所などの任意の場所を設定し表示できる設定エリア情報表示欄606が設けられている。
【0058】
このように管理者が施工現場の危険であると思われる場所や積み込み場所などの任意の場所を設定して端末6の画面上に表示することによって、作業員や建設機械の現状を把握することができる。また、これによって、例えば作業員や建設機械が設定された該エリアに進入した場合、管理者は作業員や建設機械のオペレータに注意を促すことができる。
【0059】
本実施形態に係る施工現場管理システム1では、コントローラ20の情報処理部23は、作業員携帯装置3の作業員情報取得部31により取得された作業員情報と車体情報取得部22により取得された車体情報とに基づいて建設機械2を制御する。例えば作業員Mが建設機械2の認識領域に進入し、作業員Mの動作情報に基づいて推定された作業員Mの転倒危険度が転倒閾値を超えた場合、又は、作業員Mの生体情報が生体閾値を超えた場合に、情報処理部23は、建設機械2への減速制御を行い、それ以外の場合に、情報処理部23は作業員情報を管理サーバ4に送信する。また、作業員Mが建設機械2の危険領域に進入した場合、情報処理部23は建設機械2への停止制御を瞬時に行うことで、作業員Mと建設機械2との接触を防ぐことができる。
【0060】
更に、管理サーバ4の情報分析部44は、作業員Mの生体情報と蓄積された気象情報とに基づいて作業員の体調の危険度を予測するので、将来に生じ得る危険を回避することができる。その結果、作業員と建設機械との接触を防止するとともに、将来の危険性を予測して事故を防止できる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0062】
1 施工現場管理システム
2 建設機械
3 作業員携帯装置
4 管理サーバ
5 無線基地局
6 端末
20 コントローラ
21 通信部
22 車体情報取得部
23 情報処理部
24 車体制御部
31 作業員情報取得部
32 受信部
33 報知部
41 受信部
42 送信部
43 情報保持部
44 情報分析部
45 表示情報生成部
61 スマートフォン
62 タブレット端末
63 PC
211 情報受信部
212 管理サーバ用送信部
213 管理サーバ用受信部
311 生体情報取得部
312 位置情報取得部
313 動作情報取得部
図1
図2
図3
図4
図5