(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20241030BHJP
E02F 9/08 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
E02F9/00 J
E02F9/00 B
E02F9/08 Z
(21)【出願番号】P 2024512477
(86)(22)【出願日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2023012281
(87)【国際公開番号】W WO2023190379
(87)【国際公開日】2023-10-05
【審査請求日】2024-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2022053302
(32)【優先日】2022-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】簗瀬 祥隆
(72)【発明者】
【氏名】岡野 一
(72)【発明者】
【氏名】村山 雄二
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-227544(JP,A)
【文献】国際公開第2021/066892(WO,A1)
【文献】特表2022-545522(JP,A)
【文献】特開2002-121765(JP,A)
【文献】特開平11-124879(JP,A)
【文献】実開平02-011851(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
E02F 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレームに設けられた作業装置と、
前記車体フレームに設けられた原動機と、
前記原動機を上側から覆う
ように前記車体フレーム上に設けられた上部構造体を備えた建屋と、
前記作業装置を駆動する油圧アクチュエータと、
前記原動機によって駆動される閉回路用油圧ポンプ、および、前記閉回路用油圧ポンプと前記油圧アクチュエータとを接続する複数の閉回路用配管からなる閉回路用配管群、を含む閉回路システムと、
前記原動機によって駆動される開回路用油圧ポンプ、および、前記開回路用油圧ポンプと前記複数の閉回路用配管とを接続する複数の開回路用配管からなる開回路用配管群、を含む開回路システムと、
前記原動機の前側に位置して前記車体フレームに設けられ、前記油圧アクチュエータを制御する閉回路用制御弁装置、および、開回路用制御弁装置と、
を備えた建設機械において、
前記閉回路用配管群および前記開回路用配管群のうち、一方の配管群が前記上部構造体に沿って
前記建屋の前記上部構造体の位置となる前記閉回路用油圧ポンプおよび前記開回路用油圧ポンプの上部位置を経由して配策され、他方の配管群が前記車体フレームに沿って
前記車体フレームの上面よりも低い位置となる前記閉回路用油圧ポンプおよび前記開回路用油圧ポンプの下部位置を経由して配策され
、
前記一方の配管群と前記他方の配管群との間であって、前記建屋と前記閉回路用制御弁装置、前記開回路用制御弁装置との間に作業を行うことができる作業通路が設けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記閉回路用油圧ポンプは、前記開回路用油圧ポンプよりも上側に配置されていることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械において、
前記一方の配管群は、前記閉回路用配管群であり、前記他方の配管群は、前記開回路用配管群であることを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械において、
前記上部構造体には、強度部材からなる支持フレームが設けられ、
前記一方の配管群は、前記支持フレームに支持されていることを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項1に記載の建設機械において、
前記一方の配管群と前記他方の配管群との間には、前記閉回路用油圧ポンプおよび前記開回路用油圧ポンプに面した
前記作業通路をなす足場が設けられていることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル等の建設機械に関し、特に、油圧ポンプと油圧アクチュエータとの間を閉回路接続した閉回路システムを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例としての油圧ショベルは、原動機によって油圧ポンプを駆動し、油圧ポンプから吐出された作動油(圧油)を油圧アクチュエータに供給することにより、油圧アクチュエータを動作させる。
【0003】
また、油圧ポンプから吐出された作動油によって油圧アクチュエータを動作させるシステムとしては、閉回路システムと開回路システムとが知られている。閉回路システムは、原動機によって駆動される閉回路用油圧ポンプ、閉回路用油圧ポンプと油圧アクチュエータとを接続する複数の閉回路用配管からなる。開回路システムは、原動機によって駆動される開回路用油圧ポンプ、開回路用油圧ポンプと複数の閉回路用配管とを接続する複数の開回路用配管からなる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
ところで、閉回路システムでは、油圧ポンプと油圧アクチュエータとの間で作動油を行き来させる2本の閉回路用配管が必要になる。具体的には、例えば、油圧ショベルのブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダおよび旋回モータの4個の油圧アクチュエータを閉回路システムで動作させる場合には、少なくとも4個の閉回路用油圧ポンプと8本の閉回路用配管が必要になる。これに加え、特許文献1に開示されているように開回路ポンプによって走行装置の駆動システムを構成する場合でも、走行用の油圧モータを動作させるための複数本の開回路用配管が必要になる。
【0006】
従って、複数個の油圧ポンプと複数個の油圧アクチュエータを制御する制御弁装置との間には、多くの油圧配管が配設されている。これにより、油圧ポンプや制御弁装置のメンテナンスを行うときに、複数個の油圧ポンプと制御弁装置との間を延びた多くの油圧配管が邪魔になって作業スペースを確保することができず、メンテナンス等を行う場合の作業性が悪いという問題がある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、閉回路用配管群、開回路用配管群を整理することにより、作業スペースを確保して作業性を向上できるようにした建設機械を提供することにある。
【0008】
本発明は、車体フレームと、前記車体フレームに設けられた作業装置と、前記車体フレームに設けられた原動機と、前記原動機を上側から覆うように前記車体フレーム上に設けられた上部構造体を備えた建屋と、前記作業装置を駆動する油圧アクチュエータと、前記原動機によって駆動される閉回路用油圧ポンプ、および、前記閉回路用油圧ポンプと前記油圧アクチュエータとを接続する複数の閉回路用配管からなる閉回路用配管群、を含む閉回路システムと、前記原動機によって駆動される開回路用油圧ポンプ、および、前記開回路用油圧ポンプと前記複数の閉回路用配管とを接続する複数の開回路用配管からなる開回路用配管群、を含む開回路システムと、前記原動機の前側に位置して前記車体フレームに設けられ、前記油圧アクチュエータを制御する閉回路用制御弁装置、および、開回路用制御弁装置と、を備えた建設機械において、前記閉回路用配管群および前記開回路用配管群のうち、一方の配管群が前記上部構造体に沿って前記建屋の前記上部構造体の位置となる前記閉回路用油圧ポンプおよび前記開回路用油圧ポンプの上部位置を経由して配策され、他方の配管群が前記車体フレームに沿って前記車体フレームの上面よりも低い位置となる前記閉回路用油圧ポンプおよび前記開回路用油圧ポンプの下部位置を経由して配策され、前記一方の配管群と前記他方の配管群との間であって、前記建屋と前記閉回路用制御弁装置、前記開回路用制御弁装置との間に作業を行うことができる作業通路が設けられている。
【0009】
本発明によれば、閉回路用配管群、開回路用配管群は、整理することができ、作業スペースを確保して作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態による油圧ショベルを示す右側面図である。
【
図2】
図1の上部旋回体の後部を示す平面図である。
【
図4】支持フレームによって閉回路用配管群を支持している状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態による建設機械の代表例として、油圧ショベルを例に挙げ、
図1ないし
図5を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図1において、建設機械の代表例となる油圧ショベル1は、土砂の掘削作業等に用いられる。油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に設けられ、下部走行体2と共に車体を構成する上部旋回体5と、上部旋回体5の前側に回動可能に取付けられた後述の作業装置12と、を備えている。油圧ショベル1は、作業装置12を用いて土砂の掘削作業等を行う。
【0013】
下部走行体2は、トラックフレーム2Aと、トラックフレーム2Aの左右両側に設けられた駆動輪2Bと、トラックフレーム2Aの左右両側で駆動輪2Bと前後方向の反対側に設けられた遊動輪2Cと、駆動輪2Bと遊動輪2Cに巻回された履帯2D(いずれも右側のみ図示)と、を備えている。左側の駆動輪は、左側の走行油圧モータ3(
図5参照)によって回転駆動される。また、右側の駆動輪2Bは、右側の走行油圧モータ4(
図5参照)によって回転駆動される。
【0014】
一方、上部旋回体5は、旋回装置6(
図1参照)を介して下部走行体2上に旋回可能に取付けられている。旋回装置6は、油圧アクチュエータとしての旋回油圧モータ7(
図5参照)、減速機構、旋回軸受を含んで構成されている。旋回装置6(旋回油圧モータ7)は、下部走行体2に対して上部旋回体5を旋回駆動する。
【0015】
上部旋回体5は、支持構造体をなし前側に作業装置12が取付けられた車体フレームとしての旋回フレーム8と、旋回フレーム8の左前側に搭載され、内部に運転室を形成するキャブ9と、キャブ9の後側に位置して旋回フレーム8に搭載された後述のエンジン19、閉回路用油圧ポンプ29、開回路用油圧ポンプ35等(
図3参照)を収容する建屋20と、旋回フレーム8の後部に取付けられ、作業装置12との重量バランスをとるカウンタウエイト10と、を含んで構成されている。
【0016】
ここで、キャブ9の内部には、オペレータが着座する運転席(図示せず)が設けられている。また、運転席の前方、左側、右側には、油圧ショベル1を操作する操作装置11(
図5参照)が設けられている。操作対象とレバー操作との組み合わせの一例として、操作装置11は、旋回油圧モータ7と後述のアームシリンダ17を操作するための左操作レバー11A、後述のブームシリンダ16とバケットシリンダ18を操作するための右操作レバー11B、左側の走行油圧モータ3、右側の走行油圧モータ4を操作する左右の走行用レバー・ペダル11C,11Dを含んで構成されている。
【0017】
操作装置11は、後述のコントローラ41に信号線等を介して接続されている。オペレータは、操作装置11を操作することにより、上部旋回体5を旋回させたり、作業装置12を回動させたり、下部走行体2を走行させたりすることができる。例えば、オペレータは、左操作レバー11Aを操作することにより、アームシリンダ17を伸長、縮小させ、後述のアーム14を回動させることができる。また、オペレータは、右操作レバー11Bを操作することによりブームシリンダ16を伸長、縮小させ、後述のブーム13を回動させることができる。
【0018】
図1に示すように、作業装置12は、旋回フレーム8の前部に回動可能に取付けられたブーム13と、ブーム13の先端側に回動可能に取付けられたアーム14と、アーム14の先端側に回動可能に取付けられたバケット15と、を備えている。これらブーム13、アーム14、バケット15は、それぞれが油圧シリンダからなるブームシリンダ16、アームシリンダ17、バケットシリンダ18によって駆動される。ブームシリンダ16は、旋回フレーム8に対してブーム13を回動させ、アームシリンダ17は、ブーム13に対してアーム14を回動させ、バケットシリンダ18は、アーム14に対してバケット15を回動させる。
【0019】
油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ16、アームシリンダ17、バケットシリンダ18は、後述の閉回路用油圧ポンプ29、開回路用油圧ポンプ35からの作動油(圧油)に基づいて伸長、縮小することにより、作業装置12の姿勢を変化させる。即ち、土砂等の掘削作業時には、例えば左操作レバー11Aと右操作レバー11Bの操作に基づいて、ブームシリンダ16、アームシリンダ17、バケットシリンダ18が伸長、縮小することで、ブーム13、アーム14、バケット15が回動する。これにより、バケット15によって土砂等を掘削することができる。
【0020】
ここで、ブームシリンダ16、アームシリンダ17、バケットシリンダ18は、片ロッド式油圧シリンダとして構成され、作動油の供給、排出に基づいて伸長、縮小する。即ち、ブームシリンダ16、アームシリンダ17、バケットシリンダ18は、チューブと、チューブ内に摺動可能に挿嵌され、チューブ内をボトム側油室とロッド側油室とに画成するピストンと、基端側がピストンに取付けられ、先端側がチューブ外に突出したロッドと、により構成されている。
【0021】
図3に示すように、原動機としてのエンジン19は、カウンタウエイト10の前側に位置して旋回フレーム8上に設けられている。エンジン19は、例えばディーゼルエンジンとして構成されている。エンジン19は、旋回フレーム8の後側に左右方向に延在する横置き状態で1基設けられている。例えば、エンジン19の右側には、複数の閉回路用油圧ポンプ29、開回路用油圧ポンプ35等が取付けられている。エンジン19は、その出力軸が歯車機構等を介し、複数の閉回路用油圧ポンプ29、開回路用油圧ポンプ35等に連結されている。また、エンジン19の左側には、図示しない熱交換装置(ラジエータ、オイルクーラ、コンデンサ等)が配設されている。
【0022】
なお、原動機としては、ディーゼルエンジンと電動モータとを組み合わせたハイブリッド式の原動機または電動モータ単体としてもよい。一方で、原動機は、上部旋回体5の前後方向に延在する縦置き状態で設けてもよく、また、左右方向で2台並べて配置する構成としてもよい。
【0023】
建屋20は、エンジン19、閉回路用油圧ポンプ29、開回路用油圧ポンプ35、熱交換装置を含む機器を覆うように、旋回フレーム8上に設けられている。建屋20は、左側面板(図示せず)、右側面板21および上面板22を含んで構成されている。また、建屋20は、エンジン19の前側を覆う前面板23を有している。上面板22は、上部構造体を構成するもので、例えば、複数本の鋼材からなる骨組みに鉄板等を取付けることにより形成されている。
【0024】
建屋20は、上面板22の前側位置に支持フレーム24(
図2参照)を有している。この支持フレーム24は、強度部材として形成されている。具体的には、
図4に示すように、支持フレーム24は、例えば、管、アングル材、チャンネル材等の鋼材を用いて左右方向に長尺な長方形状の枠体として形成され、その後縁部が前面板23の上部位置に取付けられている。
図3に示すように、支持フレーム24は、上面板22の前側に庇状に配置され、エンジン19と後述する閉回路用制御弁装置37、開回路用制御弁装置38との間に設けられた作業通路39の上側を覆っている。さらに、支持フレーム24の上側には、閉回路用配管群30が取付けられている。
【0025】
次に、閉回路システム25~28と開回路システム31~34との構成について説明する。
【0026】
本実施形態においては、油圧ショベル1の油圧システムは、4つの閉回路用油圧ポンプ29と、4つの油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ16、アームシリンダ17、バケットシリンダ18および旋回油圧モータ7と、の間において、閉回路用制御弁装置37によって、任意の1つの閉回路用油圧ポンプ29が任意の1つの油圧アクチュエータに閉回路状に(閉回路を構成するように)接続されることが可能なように構成されている。そして、コントローラ41は、操作状況、作業状況に応じて、閉回路用制御弁装置37を制御することで、各アクチュエータと各閉回路用油圧ポンプ29との間の接続関係を切り替える制御を行う。
【0027】
本実施形態においては、各アクチュエータに対して各閉回路用油圧ポンプ29がそれぞれ1対1で接続されて4つの閉回路システムが構成される場合について説明する。具体的には、閉回路システム25は、ブームシリンダ16を駆動するための油圧システムである。閉回路システム26は、アームシリンダ17を駆動するための油圧システムである。閉回路システム27は、バケットシリンダ18を駆動するための油圧システムである。さらに、閉回路システム28は、旋回油圧モータ7を駆動するための油圧システムである。以下においては、この最も単純な4つの閉回路システム25~28が構成される場合について説明する。
【0028】
閉回路システム25は、エンジン19によって駆動される閉回路用油圧ポンプ29と、閉回路用油圧ポンプ29とブームシリンダ16とを接続する閉回路用配管群30と、を備えている。また、閉回路システム25は、閉回路用配管群30の途中に後述する閉回路用制御弁装置37の複数の切換弁37B~37E(
図5参照)が設けられている。閉回路用配管群30は、例えば、金属管とホースとを組み合わせて形成されている。
【0029】
ここで、閉回路システム26~28の構成は、閉回路システム25の構成とほぼ同様である。このため、閉回路システム26~28には、閉回路システム25の説明で用いた符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0030】
図3に示すように、閉回路システム25~28を構成する複数、例えば4個の閉回路用油圧ポンプ29は、後述の開回路用油圧ポンプ35よりも上側に位置してエンジン19の右側に取付けられている。4個の閉回路用油圧ポンプ29は、例えば、可変容量型の斜板式油圧ポンプ、斜軸式油圧ポンプ、ラジアルピストン式油圧ポンプ等により構成されている。なお、
図3では、4個の閉回路用油圧ポンプ29を左右方向で2個直列に連結した上で、前後に2列並べて配置した場合を例示している。4個の閉回路用油圧ポンプ29は、この配置例以外の配置としてもよい。
【0031】
閉回路用配管群30は、2本で1組のポンプ側配管30Aと、2本で1組のアクチュエータ側配管30Bと、を含んで構成されている。ポンプ側配管30Aとアクチュエータ側配管30Bとは、閉回路用配管を構成している。ポンプ側配管30Aは、ブームシリンダ16用の閉回路用油圧ポンプ29と後述する閉回路用制御弁装置37とを接続している。アクチュエータ側配管30Bは、閉回路用制御弁装置37とブームシリンダ16(ボトム側油室、ロッド側油室)とを接続している。
【0032】
閉回路システム26の閉回路用配管群30のポンプ側配管30Aは、アームシリンダ17用の閉回路用油圧ポンプ29と閉回路用制御弁装置37とを接続している。閉回路システム26の閉回路用配管群30のアクチュエータ側配管30Bは、閉回路用制御弁装置37とアームシリンダ17とを接続している。閉回路システム27の閉回路用配管群30のポンプ側配管30Aは、バケットシリンダ18用の閉回路用油圧ポンプ29と閉回路用制御弁装置37とを接続している。閉回路システム27の閉回路用配管群30のアクチュエータ側配管30Bは、閉回路用制御弁装置37とバケットシリンダ18とを接続している。さらに、閉回路システム28の閉回路用配管群30のポンプ側配管30Aは、旋回油圧モータ7用の閉回路用油圧ポンプ29と閉回路用制御弁装置37とを接続している。閉回路システム28の閉回路用配管群30のアクチュエータ側配管30Bは、閉回路用制御弁装置37と旋回油圧モータ7とを接続している。
【0033】
なお、上記したように、本実施形態においては、どの閉回路用油圧ポンプ29がどの油圧アクチュエータに接続されるかは、任意に切り替えることが可能である。従って、各閉回路用油圧ポンプ29および当該閉回路ポンプ29に接続されたポンプ側配管30Aは、閉回路用制御弁装置37の状態に応じて、選択的に種々の油圧アクチュエータに接続される場合がある。
【0034】
ここで、閉回路システム25~28にそれぞれ2本ずつ設けられた合計8本のポンプ側配管30Aからなる閉回路用配管群30の配策経路について説明する。
図3に示すように、一方の配管群としての閉回路用配管群30、即ち、8本のポンプ側配管30Aは、上部構造体としての上面板22に沿って、閉回路用油圧ポンプ29および開回路用油圧ポンプ35の上部位置を経由して配策されている。具体的には、8本のポンプ側配管30Aは、対応する閉回路用油圧ポンプ29から上側に延びて建屋20の上面板22の上面に突出した位置で屈曲して前側に延び、支持フレーム24を越えた位置で屈曲して下側に延び、その先端が閉回路用制御弁装置37に接続されている。これにより、8本のポンプ側配管30Aの下側には、後述する作業通路39を形成する足場39Aを設けることができる。また、ポンプ側配管30Aは、作業通路39と閉回路用制御弁装置37との間から排除できるから、作業通路39から閉回路用制御弁装置37に容易に手が届くようになる。
【0035】
さらに、
図4に示すように、8本のポンプ側配管30Aは、支持フレーム24の上側位置で、クランプ部材24Aを用いて支持フレーム24に支持(固定)されている。これにより、8本のポンプ側配管30Aを上面板22上に強固に固定することができる。
【0036】
次に、開回路システム31は、閉回路システム25に対する作動油の過不足を補うための油圧システムである。開回路システム32は、閉回路システム26に対する作動油の過不足を補うための油圧システムである。開回路システム33は、閉回路システム27に対する作動油の過不足を補うための油圧システムである。さらに、開回路システム34は、閉回路システム28に対する作動油の過不足を補うための油圧システムである。また、各開回路システム31~34は、左右の走行油圧モータ3,4に圧油を供給している。
【0037】
開回路システム31は、エンジン19によって駆動される開回路用油圧ポンプ35と、開回路用油圧ポンプ35と閉回路システム25の閉回路用配管群30のアクチュエータ側配管30Bとを接続する開回路用配管36Aと、を備えている。また、開回路システム31は、開回路用配管36Aの途中に後述する開回路用制御弁装置38の複数の切換弁38B~38E(
図5参照)を備えている。開回路用配管36Aは、後述の開回路用配管36B~36Dと共に開回路用配管群36を構成している。開回路用配管36A~36Dは、例えば、金属管とホースとを組み合わせて形成されている。
【0038】
ここで、開回路システム32~34の構成は、開回路システム31の構成とほぼ同様である。このため、開回路システム32~34には、開回路システム31の説明で用いた符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0039】
図3に示すように、開回路システム31~34を構成する複数、例えば4個の開回路用油圧ポンプ35は、閉回路用油圧ポンプ29よりも下側に位置してエンジン19の右側に取付けられている。4個の開回路用油圧ポンプ35は、例えば、可変容量型の斜板式油圧ポンプ、斜軸式油圧ポンプ、ラジアルピストン式油圧ポンプ等により構成されている。なお、
図3では、4個の開回路用油圧ポンプ35を左右方向で2個直列に連結した上で、前後に2列並べて配置した場合を例示している。4個の開回路用油圧ポンプ35は、この配置例以外の配置としてもよい。
【0040】
また、開回路システム31~34を構成する4個の開回路用油圧ポンプ35は、切換弁38B~38Eを介して左側の走行油圧モータ3と右側の走行油圧モータ4に圧油を供給している。
【0041】
開回路システム32の開回路用配管36Bは、開回路用油圧ポンプ35と閉回路システム26の閉回路用配管群30のアクチュエータ側配管30Bとを接続している。また、開回路システム32の開回路用配管36Bの途中には、複数の切換弁38B~38Eが設けられている。開回路システム33の開回路用配管36Cは、開回路用油圧ポンプ35と閉回路システム27の閉回路用配管群30のアクチュエータ側配管30Bとを接続している。また、開回路システム33の開回路用配管36Cの途中には、複数の切換弁38B~38Eが設けられている。さらに、開回路システム34の開回路用配管36Dは、開回路用油圧ポンプ35と閉回路システム28の閉回路用配管群30のアクチュエータ側配管30Bとを接続している。また、開回路システム34の開回路用配管36Dの途中には、複数の切換弁38B~38Eが設けられている。
【0042】
ここで、開回路システム31~34にそれぞれ設けられた合計4本の開回路用配管36A~36Dからなる開回路用配管群36の配策経路について説明する。
図3に示すように、他方の配管群としての開回路用配管群36、即ち、4本の開回路用配管36A~36Dは、車体フレームとしての旋回フレーム8に沿って閉回路用油圧ポンプ29および開回路用油圧ポンプ35の下部位置を経由して配策されている。具体的には、4本の開回路用配管36A~36Dは、対応する開回路用油圧ポンプ35から下側に延びて旋回フレーム8の上面よりも低い位置で屈曲して前側に延び、作業通路39を越えた位置で屈曲して上側に延び、その先端が開回路用制御弁装置38に接続されている。これにより、4本の開回路用配管36A~36Dの上側には、作業通路39を形成することができる。また、開回路用配管36A~36Dは、作業通路39と開回路用制御弁装置38との間から排除できるから、作業通路39から開回路用制御弁装置38に容易に手が届くようになる。
【0043】
このように、本実施形態では、閉回路用配管群30を建屋20の上面板22に沿って閉回路用油圧ポンプ29および開回路用油圧ポンプ35の上部位置を経由して配策し、開回路用配管群36を旋回フレーム8に沿って閉回路用油圧ポンプ29および開回路用油圧ポンプ35の下部位置を経由して配策している。これにより、建屋20の前面板23と閉回路用制御弁装置37、開回路用制御弁装置38との間では、閉回路用配管群30と開回路用配管群36との間に空間を形成することができる。この空間が後述の作業通路39を含んだ作業空間となっている。
【0044】
閉回路用制御弁装置37と開回路用制御弁装置38とは、建屋20の前面板23から前側に間隔を持った位置で、例えば、左右方向で並んだ状態で旋回フレーム8上に設けられている。また、閉回路用制御弁装置37と開回路用制御弁装置38とは、例えば、閉回路用制御弁装置37が左側に配置され、開回路用制御弁装置38が右側に配置されている。
【0045】
閉回路用制御弁装置37は、前後方向に薄肉なブロック形状の構造体からなり、内部に作動油が流れる複数の通路が形成されたマニホールド37A(
図2参照)と、マニホールド37Aに取付けられた複数の切換弁37B~37E(
図5参照)と、を備えている。切換弁37B~37Eは、閉回路システム25~28の閉回路用配管群30の途中に設けられている。
【0046】
開回路用制御弁装置38は、前後方向に薄肉なブロック形状の構造体からなり、内部に作動油が流れる複数の通路が形成されたマニホールド38A(
図2、
図3参照)と、マニホールド38Aに取付けられた複数の切換弁38B~38E(
図5参照)と、を備えている。切換弁38B~38Eは、開回路システム31~34の開回路用配管群36の途中に設けられている。
【0047】
作業通路39は、閉回路用配管群30と開回路用配管群36との間で、建屋20の前面板23と閉回路用制御弁装置37、開回路用制御弁装置38との間に左右方向に延びて形成された作業を行うことができる空間である。作業通路39をなす足場39Aは、エンジン19、閉回路用油圧ポンプ29、開回路用油圧ポンプ35、閉回路用制御弁装置37、開回路用制御弁装置38等の機器に面している。これにより、作業通路39の作業者は、これらの機器に容易に手を伸ばすことができる。
【0048】
作動油タンク40は、開回路用油圧ポンプ35等に供給するための作動油を貯溜するもので、旋回フレーム8上に設けられている。また、コントローラ41は、操作装置11、閉回路用制御弁装置37の複数の切換弁37B~37E、開回路用制御弁装置38の切換弁38B~38Eと信号線を介して接続されている。コントローラ41は、操作装置11からの信号に基づいて切換弁37B~37E、切換弁38B~38Eを切換えるものである。
【0049】
本実施形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0050】
キャブ9に搭乗したオペレータは、エンジン19を始動して閉回路用油圧ポンプ29、開回路用油圧ポンプ35を駆動する。この状態で、左右の走行用レバー・ペダル11C,11Dを操作することにより、下部走行体2を前進または後退させることができる。一方、作業用の左操作レバー11A、右操作レバー11Bを操作することにより、作業装置12を回動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0051】
かくして、本実施形態では、閉回路システム25~28を構成する閉回路用配管群30が建屋20の上面板22に沿って閉回路用油圧ポンプ29および開回路用油圧ポンプ35の上部位置を経由して配策されている。また、開回路システム31~34を構成する開回路用配管群36が旋回フレーム8に沿って閉回路用油圧ポンプ29および開回路用油圧ポンプ35の下部位置を経由して配策されている。
【0052】
従って、閉回路用配管群30と開回路用配管群36とを整理して配策することができる。これにより、閉回路用配管群30と開回路用配管群36との間には、空間を形成することができる。
【0053】
この結果、閉回路用配管群30と開回路用配管群36との間の空間を作業スペースとして確保することができ、作業性を向上することができる。また、閉回路用配管群30と開回路用配管群36とを別個に配策したことにより、ポンプ脈動を分散させることができ、閉回路用配管群30、開回路用配管群36に近い構造物の負担を軽減することができる。
【0054】
閉回路用油圧ポンプ29は、開回路用油圧ポンプ35よりも上側に配置されている。これにより、閉回路用配管群30は、上側に位置する閉回路用油圧ポンプ29から建屋20の上面板22に向けて最短で導くことができる。また、開回路用配管群36は、下側に位置する開回路用油圧ポンプ35から旋回フレーム8に向けて最短で導くことができる。
【0055】
これにより、閉回路用油圧ポンプ29に対する閉回路用配管群30の着脱作業、閉回路用油圧ポンプ29等のメンテナンス、開回路用油圧ポンプ35に対する開回路用配管群36の着脱作業、開回路用油圧ポンプ35等のメンテナンスを容易に行うことができる。しかも、閉回路用配管群30、開回路用配管群36を短くすることができるから、管路内で発生する圧力損失を低減することができる。
【0056】
さらに、閉回路用配管群30と開回路用配管群36との間には、閉回路用油圧ポンプ29および開回路用油圧ポンプ35に面した作業通路39をなす足場39Aが設けられている。これにより、閉回路用油圧ポンプ29、開回路用油圧ポンプ35、閉回路用制御弁装置37、開回路用制御弁装置38等のメンテナンスを、作業通路39の足場39Aから容易に行うことができる。
【0057】
なお、実施形態では、建設機械としてバックホー式の作業装置12を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、ローディングショベル式の作業装置を備えた油圧ショベル等の他の建設機械にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 油圧ショベル(建設機械)
6 旋回装置
7 旋回油圧モータ(油圧アクチュエータ)
8 旋回フレーム(車体フレーム)
12 作業装置
16 ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)
17 アームシリンダ(油圧アクチュエータ)
18 バケットシリンダ(油圧アクチュエータ)
19 エンジン(原動機)
20 建屋
22 上面板(上部構造体)
24 支持フレーム
25~28 閉回路システム
29 閉回路用油圧ポンプ
30 閉回路用配管群(一方の配管群)
30A ポンプ側配管(閉回路用配管)
30B アクチュエータ側配管(閉回路用配管)
31~34 開回路システム
35 開回路用油圧ポンプ
36 開回路用配管群(他方の配管群)
36A~36D 開回路用配管
39 作業通路
39A 足場