(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】RANタンパク質関連神経学的疾患を処置するための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20241031BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20241031BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20241031BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241031BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241031BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20241031BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241031BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241031BHJP
A61K 31/155 20060101ALI20241031BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20241031BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20241031BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20241031BHJP
A61K 31/445 20060101ALI20241031BHJP
A61K 31/55 20060101ALI20241031BHJP
A61K 31/13 20060101ALI20241031BHJP
A61K 31/27 20060101ALI20241031BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20241031BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20241031BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241031BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20241031BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20241031BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241031BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20241031BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20241031BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20241031BHJP
C12Q 1/6841 20180101ALN20241031BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALN20241031BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALN20241031BHJP
【FI】
G01N33/68
A61P21/00 ZNA
A61P25/14
A61P25/28
A61P43/00 111
A61K31/7088
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K45/00
A61K31/155
A61K31/7105
A61K35/76
A61K45/06
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A61K31/55
A61K31/13
A61K31/27
C07K14/47
C07K16/18
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/113 Z
C12N5/10
G01N33/50 P
G01N33/53 D
C12N15/864 100Z
C12Q1/6841 Z
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6869 Z
(21)【出願番号】P 2022500544
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 US2020040725
(87)【国際公開番号】W WO2021007110
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-06-30
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501453307
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ フロリダ リサーチ ファンデーション, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ラヌム,ローラ
(72)【発明者】
【氏名】グェン,リーエン
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0292416(US,A1)
【文献】特表2016-515208(JP,A)
【文献】国際公開第2019/060918(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0361166(US,A1)
【文献】国際公開第2017/176813(WO,A1)
【文献】特開2016-108249(JP,A)
【文献】Xin Liu,In Situ Capture of Chromatin Interactions by Biotinylated dCas9,Cell,2017年08月24日,Vol.170,Page.1028-1043
【文献】Yuanjing Liu,C9orf72 BAC Mouse Model with Motor Deficits and Neurodegenerative Features of ALS/FTD,Neuron,2016年05月04日,Vol.90,Page.521-534
【文献】Tao Zu,RAN Translation Regulated by Muscleblind Proteins in Myotonic Dystrophy Type 2,Neuron,2017年09月13日,Vol.95,Page.1292-1305
【文献】Melinda L Moseley,Bidirectional expression of CUG and CAG expansion transcripts and intranuclear polyglutamine inclusions in spinocerebellar ataxia type 8,NATURE GENETICS,2006年06月25日,Vol.38 No.7,Page.758-769
【文献】名宮井尊史,リピート病の病態機構UPDATE―RNA毒性とRAN翻訳 Fuchs角膜内皮変性症におけるリピート病態,医学のあゆみ,2018年12月22日,Vol.267 No.11/12,Page.814-816
【文献】塩田倫史,脆弱X関連振戦/失調症候群(FXTAS)におけるRANタンパク質FMRpolyGの産生と病態との関与,日本生化学会大会,2017年,Vol.90th,Page.ROMBUNNO.3PW23-5
【文献】宮崎雄,リピート病の病態機構UPDATE―RNA毒性とRAN翻訳 トリプレットリピート病におけるRAN翻訳の関与,医学のあゆみ,2018年12月22日,Vol.267 No.11/12,Page.823-829
【文献】佐々木秀直,SCA14における起因遺伝子の検索 (厚生労働省S),運動失調に関する調査及び病態機序に関する研究班 平成13年度研究報告書,2002年,Page.67-68
【文献】石川欽也,<シンポジウム 29―2>脊髄小脳変性症 update 脊髄小脳失調症(SCA31)の分子病態解明,臨床神経,2011年,Vol.51,Paeg.1122-1124
【文献】永井義隆,特集 神経細胞変性のメカニズム ポリグルタミン病における神経変性,BRAIN MEDICAL,2014年10月,Vol.26 No.3,Page.225-229
【文献】永井義隆,コンフォメーション病としての神経変性疾患,ファルマシア,2013年09月01日,Vol.49 No.9,Page.849-853
【文献】塩田 倫史,リピート病におけるRNA毒性仮説とRAN翻訳仮説,日本薬理学雑誌,2017年,150巻 3号,Pgae.165
【文献】後藤順,トリプレットリピート病UPDATE トリプレットリピート病とは,医学のあゆみ,2006年10月28日,Vol.219 No.4,Page.241-244
【文献】佐々木 秀直,4.脊髄小脳変性症 最近の進歩,日本内科学会雑誌,2013年09月10日,102巻 9号,Page.2375-2381
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/68
A61P 21/00
A61P 25/14
A61P 25/28
A61P 43/00
A61K 31/7088
A61K 39/395
A61K 45/00
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A61K 35/76
A61K 45/06
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C07K 14/47
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C12Q 1/6841
C12Q 1/6813
C12Q 1/6869
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルツハイマー病(AD)を診断するのを補助するための方法であって、以下:
(a)対象から得られた生体試料において少なくとも1つのRANタンパク質を検出すること
、ここで、生体試料が、中枢神経系(CNS)組織、血液、または脳脊髄液(CSF)であり;
ここで、当該少なくとも1つのRANタンパク質は、対象のC9orf72遺伝子座から転写されたものではないものであり、ここで、検出は、
(i)生体試料を、抗RAN抗体と接触させることを含む、抗体ベースの結合アッセイ、イムノブロット分析、ウェスタンブロット分析、免疫組織化学、および/またはELISA、ならびに/あるいは
(ii)生体試料を、RANタンパク質をコードする核酸配列に特異的に結合する核酸プローブと接触させることを含む、ハイブリダイゼーションアッセイ
を含み;および
(
b)
当該検出された、対象のC9orf72遺伝子座から転写されたものではない少なくとも1つのRANタンパク質の存在に基づいて、対象を、
アルツハイマー病(AD)を有するものとして決定する
ためのデータを提供すること、
を含む、前記方法。
【請求項2】
RANタンパク質が、ポリ(CP)、ポリ(GP)、ポリSer、ポリ(G)、ポリ(A)、ポリ(GA)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GR)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC)(配列番号260)、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(PA)、ポリ(QAGR)(配列番号261)、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、ポリ(GK)、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、またはポリ(PGGRGE)(配列番号258)である、請求項
1に記載の方
法。
【請求項3】
ELISA
が、RCAベースのELISAまたはrtPCRベースのELISAである、請求項
1または2に記載の方
法。
【請求項4】
抗RAN抗体が、ポリ(GR)、ポリ(PR)、ポリ(GP)、ポリSer、ポリ(CP)、ポリ(G)、ポリ(A)、ポリ(GA)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC)(配列番号260)、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(PA)、ポリ(QAGR)(配列番号261)、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、ポリ(GK)、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、および/またはポリ(PGGRGE)(配列番号258)を標的とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
抗RAN抗体が、RANタンパク質のC末端を標的と
する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
抗RAN抗体が、リピートアミノ酸配列:ポリ(CP)、ポリ(GP)、ポリ(Ser)、ポリ(G)、ポリ(GA)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GR)、ポリ(GT)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC)(配列番号260)、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(PA)、ポリ(PR)、ポリ(QAGR)(配列番号261)、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、ポリ(GK)、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、またはポリ(PGGRGE)(配列番号258)ではないアミノ酸配列を含むRANタンパク質のC末端を標的とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ハイブリダイゼーションアッセイが、dCas9ベースの濃縮および/または蛍光In Situハイブリダイゼーション(FISH)を含
む、
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
FISHが、リピートを含むCCCCGG(配列番号71)またはCCCCGT(配列番号59)プローブにより行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
検出
が、または
、対象のアルツハイマー病(AD)を有するものとしての決定が
、さらに、核酸のシークエンシングを含
む、
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
シークエンシングが、次世代シークエンシング(NGS)である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法における使用のための、RANタンパク質に特異的に結合する抗RANタンパク質抗体またはその抗原結合フラグメントを
含む組成物または組成物のセットであって、ここで
(a)抗体または抗原結合フラグメントが、ポリ(GR)、ポリ(PR)、ポリ(GP)、ポリSer、ポリ(CP)、ポリ(G)、ポリ(A)、ポリ(GA)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC)(配列番号260)、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(PA)、ポリ(QAGR)(配列番号261)、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、ポリ(GK)、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、および/またはポリ(PGGRGE)(配列番号258)タンパク質のいずれか1つまたは2つ以上に特異的に結合し;または
(b)抗体または抗原結合フラグメントが、
(i)配列番号117、119、121および123からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR1領域;
(ii)配列番号125、127、129および131からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR2領域;および/または
(iii)配列番号133、135、137および139からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR3領域
を含む重鎖可変領域(VH)を含み;または、
(c)抗体または抗原結合フラグメントが、
(i)配列番号118、120、122および124からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR1領域;
(ii)配列番号126、128、130および132からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR2領域;および/または
(iii)配列番号134、136、138および140からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR3領域
を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、
前記組成物または組成物のセット。
【請求項12】
配列番号109、111、113または115に記載される可変性の重鎖アミノ酸配列を含み、および/または
、配列番号110、112、114または116に記載される可変性の軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項
11に記載の
組成物または組成物のセット。
【請求項13】
薬学的に受入可能なキャリアおよび/または薬学的に受入可能なバッファーを
さらに含む、
請求項11または12に記載の組成物
または組成物のセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2019年7月5日に出願された米国仮出願シリアル番号62/871,031、表題「METHODS FOR TREATING ALZHEIMER’S DISEASE」、および2020年5月14日に出願された米国仮出願シリアル番号63/025,096、表題「METHODS FOR TREATING RAN PROTEIN-ASSOCIATED NEUROLOGICAL DISEASES」の35U.S.C.§119(e)下における利益を主張し、当該仮出願の各々の全内容は、本明細書において参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
マイクロサテライトリピート伸長は、40種を超える神経変性障害を引き起こすことが知られている。これらの障害の多くに共通する分子的特徴として、センスおよびアンチセンス伸長トランスクリプトを含むRNA凝集体(RNA focus)の蓄積、およびリピート関連非AUG(RAN)の翻訳からのタンパク質の蓄積が挙げられる。RANの翻訳は、変異前の長さ(約30~40個のリピート)から完全伸長(10,000個までのリピート)までの広範囲のリピート長にわたり起こり得る。反復性のエレメントは、ヒトゲノムの大部分を占めるが、一方で、リピートおよびリピート伸長変異の検出は、困難である。
【発明の概要】
【0003】
要旨
本明細書において記載されるのは、例えばポリセリン[ポリSer]、ポリ(プロリン-アルギニン)[ポリ(PR)]、およびポリ(グリシン-アルギニン)[ポリ(GR)]などを含むリピート関連非ATG(RAN)タンパク質に関連する特定の神経学的疾患の診断および処置のための組成物および方法である。特定のリピート伸長(例えば、CAGG、CCTG、GGGGCC、GGCCCC、GGGGCA、CAGおよびCTG)の変異は、多数の異なる神経学的疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、または前頭側頭葉型認知症;1型筋強直性ジストロフィー(DM1)および2型筋強直性ジストロフィー(DM2);1、2、3、6、7、8、10、12、17、31および36型脊髄小脳変性症;球脊髄性筋萎縮症;歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA);ハンチントン病(HD);脆弱X振戦失調症候群(FXTAS);フックス内皮角膜ジストロフィー(FECD);ハンチントン病類症2型症候群(HDL2);脆弱X症候群(FXS);7pl l.2葉酸感受性脆弱部位FRA7Aに関する障害;葉酸感受性脆弱部位2ql 1 FRA2Aに関する障害;ならびに脆弱XE症候群(FRAXE)に関連する。
【0004】
限定されないがALSまたはFTD、FXTAS、HD、SCA8、DM1およびDM2を含む、漸増するこれらの疾患において、伸長変異は、複数の読み枠において起こり、正準のAUG開始コドンを必要としない、新規の型のタンパク質翻訳を経験することが示されてきた。この型の翻訳は、リピート関連非ATG(RAN)翻訳と称され、生成されるタンパク質は、RANタンパク質と称される。RANタンパク質が毒性であり、ますます多くの疾患の原因であるという証拠が、漸増している。したがって、リピート伸長変異により引き起こされる神経学的疾患を処置するために、RANタンパク質のレベルを低下させるための治療戦略を開発することが重要である。
【0005】
いくつかの態様において、RANタンパク質に関連する特定の神経学的疾患の診断および処置のための組成物および方法が開示される。いくつかの態様において、RANタンパク質に関連する神経学的疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、または前頭側頭葉型認知症;1型筋強直性ジストロフィー(DM1)および2型筋強直性ジストロフィー(DM2);1、2、3、6、7、8、10、12、17、31および36型脊髄小脳変性症;球脊髄性筋萎縮症;歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA);ハンチントン病(HD);脆弱X振戦失調症候群(FXTAS);フックス内皮角膜ジストロフィー(FECD);ハンチントン病類症2型症候群(HDL2);脆弱X症候群(FXS);7pl l.2葉酸感受性脆弱部位FRA7Aに関する障害;葉酸感受性脆弱部位2ql 1 FRA2Aに関する障害;ならびに脆弱XE症候群(FRAXE)からなる群より選択される。特定の態様において、RANタンパク質に関連する神経学的疾患は、アルツハイマー病(AD)である。
【0006】
本開示の側面は、特定のRANタンパク質関連疾患、例えばアルツハイマー病および他の神経学的疾患または障害の診断および処置のための方法および組成物に関する。本開示は、部分的に、例えばポリセリン[ポリSer]、ポリ(プロリン-アルギニン)[ポリ(PR)]、およびポリ(グリシン-アルギニン)[ポリ(GR)]を含む特定のRANタンパク質が、かかる疾患を有する特定の対象の脳において蓄積するという、およびこれらのRANタンパク質が、ADを発症するリスクを有する対象の生体試料(例えば、血液、血清、または脳脊髄液(CSF)において検出され得るという知見に基づく。ADを有する特定の対象の脳において蓄積するRANタンパク質であって、ADを発症するリスクを有する対象の生体試料において検出することができるもののさらなる非限定的な例として、以下が挙げられる:ポリ(システイン-プロリン)[ポリ(CP)];ポリ(グリシン-プロリン)[(ポリ(GP)];ポリ(グリシン)[ポリ(G)];ポリ(アラニン)[ポリAla];ポリ(グリシン-アラニン)[ポリ(GA)];ポリ(グリシン-アスパラギン酸)[ポリ(GD)];ポリ(グリシン-グルタミン酸)[ポリ(GE)];ポリ(グリシン-グルタミン)[ポリ(GQ)];ポリ(グリシン-スレオニン)[ポリ(GT)];ポリ(ロイシン)[ポリLeu];ポリ(ロイシン-プロリン)[ポリ(LP)];ポリ(ロイシン-プロリン-アラニン-システイン)[ポリ(LPAC)](配列番号260);ポリ(ロイシン-セリン)[ポリ(LS)];ポリ(プロリン)[ポリ(P)];ポリ(プロリン-アラニン)[ポリ(PA)];ポリ(グルタミン-アラニン-グリシン-アルギニン)[ポリ(QAGR)](配列番号261);ポリ(アルギニン-グルタミン酸)[ポリ(RE)];ポリ(セリン-プロリン)[ポリ(SP)]、ポリ(バリン-プロリン)[ポリ(VP)]、ポリ(フェニルアラニン-プロリン)[ポリ(FP)]、ポリ(グリシン-リジン)[ポリ(GK)]、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、ポリ(PGGRGE)(配列番号258)、ポリ(GRQRGVNT)(配列番号266)、および/またはポリ(GSKHREAE)(配列番号267)。
【0007】
いくつかの態様において、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、電気化学発光(ElectroChemiLuminescence)イムノアッセイ(Meso Scale Discovery, MSD)、デジタルELISA技術(Single molecule array, SIMOA)、および/またはドットブロットアッセイが、RANタンパク質を検出するために用いられる。いくつかの態様において、ローリングサークル増幅ベースのELISA(RCAベースのELISA)が、RANタンパク質を検出するために用いられる。いくつかの態様において、リアルタイムPCRベースのELISA(rtPCRベースのELISA)が、RANタンパク質を検出するために用いられる。いくつかの態様において、アッセイは、本明細書において記載されるRANタンパク質のリピートモチーフに対する抗体を含む。いくつかの態様において、アッセイは、RANタンパク質のC末端特異的配列に対する抗体を含む。いくつかの態様において、伸長変異を検出するために、アッセイが用いられる。いくつかの態様において、伸長変異を検出するためのアッセイは、リピートプライムPCR、ロングレンジPCR、および/またはサザンブロットである。これらのアッセイは、リピートの中、上流および/もしくは下流の、またはリピートに隣接するDNA配列に結合するプライマーを使用する。
【0008】
いくつかの態様において、RANタンパク質に関連する神経学的疾患を有するかまたはこれを発症するリスクがある対象において存在するRANタンパク質は、対象におけるC9orf72遺伝子座から転写されたものではない。いくつかの態様において、リピート伸長を含むセンスまたはアンチセンスRNAを含むリピートの蓄積は、蓄積しているRNAを検出するための蛍光in situハイブリダイゼーションプローブを用いて検出してもよい。いくつかの態様において、RANタンパク質に関連する神経学的疾患を有するかまたはこれを発症するリスクがある対象において存在するRNA蓄積は、対象におけるC9orf72遺伝子座から転写されたものではない。いくつかの態様において、新規RANタンパク質を生成する遺伝子として、2番染色体のオープンリーディングフレーム80(C2orf80)、LRP8、CASP8、CRNDE、EXOC6B、SV2B、PPML1、ADARB2、GREB1、および/またはMSMO1が挙げられる。いくつかの態様において、アッセイは、RANタンパク質が、C2orf80、LRP8、CASP8、CRNDE、EXOC6B、SV2B、PPML1、ADARB2、GREB1およびMSMO1のうちの1つ以上から発現されたものであるか否かを決定するために用いられる。いくつかの態様において、RNA凝集体を同定するためのアッセイは、蛍光in situハイブリダイゼーションである;プローブ=伸長された遺伝子座におけるリピート配列に対して相補的な、フルオロフォア(例えば、Cy3、Cy5、A555、A549、A488)で標識されたDNA配列である。いくつかの態様において、RNA凝集体を同定するためのアッセイは、不活性化されたCas9ベースのハイブリダイゼーションである;プローブ=伸長された遺伝子座におけるリピート配列に対して相補的なDNA配列、およびフルオロフォア標識された不活性化Cas9である。
【0009】
いくつかの側面において、本開示は、RANタンパク質に関連する神経学的疾患を有するか、またはこれについてのリスクがあるものとして診断された対象に、治療剤(例えば、1つ以上のアンチセンスオリゴヌクレオチド、抗RAN抗体、他の治療剤、またはこれらのうちの2つ以上の組み合わせ)を、RANタンパク質に関連する神経学的疾患の処置のために投与することにより、RANタンパク質関連神経学的疾患を処置するための方法を提供し、ここで、対象は、対象から得られた生体試料中の、少なくとも1つのRANタンパク質の検出および/またはRANタンパク質をコードする少なくとも1つのRNAにより、RANタンパク質に関連する神経学的疾患を有するものとして特徴づけられている。対象は、伸長変異から発現されるRANタンパク質のうちの複数のものを有していてもよい。いくつかの態様において、本明細書において開示されるRANタンパク質を標的とする抗体は、1つまたは複数のRANタンパク質を標的とするものであってよい。いくつかの態様において、個々の抗体は、1つ以上のRANタンパク質を標的としていてもよい。いくつかの態様において、2つ以上の異なる抗体の組み合わせを用いてもよく、ここで、各々の抗体は、異なるRANタンパク質を標的とする。いくつかの態様において、RANタンパク質は、センスおよびアンチセンスの両方のトランスクリプトから、3つ全ての読み枠において発現される。
【0010】
いくつかの態様において、RANタンパク質は、ポリ(GR)、ポリ(PR)および/またはポリSerである。いくつかの態様において、RANタンパク質は、ポリ(CP)、ポリ(GP)、ポリ(G)、ポリ(A)、ポリ(GA)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC)(配列番号260)、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(PA)、ポリ(QAGR)(配列番号261)、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、ポリ(GK)、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、ポリ(PGGRGE)(配列番号258)、ポリ(GRQRGVNT)(配列番号266)、および/またはポリ(GSKHREAE)(配列番号267)である。いくつかの態様において、RANタンパク質は、対象のC9orf72遺伝子座から転写されたものではない。
【0011】
いくつかの態様において、少なくとも1つのRANタンパク質が、表1、表2または表3から選択される配列の2~10,000個のリピートを含む遺伝子によりコードされる。
いくつかの態様において、治療剤は、小分子、干渉核酸、修飾された干渉核酸、DNAアプタマー、RNAアプタマー、ペプチド、タンパク質、抗体、抗体薬物抱合体、他の大分子、遺伝子治療(他の列挙される型の治療剤のうちの1つ以上を送達するように設計された遺伝子治療を含む)、天然の生成物、または生薬である。
【0012】
いくつかの態様において、小分子は、真核生物開始因子2(eIF2)、真核生物開始因子3(eIF3)、タンパク質キナーゼR(PKR)、p62(セクエストソーム-1またはユビキチン結合タンパク質)、LC3(微小管関連タンパク質1軽鎖3)Iサブユニット、LC3 IIサブユニット、またはToll様受容体3(TLR3)の修飾因子である。
【0013】
いくつかの態様において、小分子は、メトホルミン、またはその薬学的に受入可能な塩、共結晶、互変異性体、立体異性体、溶媒和物、水和物、多型、同位体的に濃縮された誘導体もしくはプロドラッグである。いくつかの態様において、小分子は、ブホルミン、フェンホルミン、メトホルミン、またはその誘導体もしくは機能的アナログである。いくつかの態様において、小分子は、TARBP2などのPKRの阻害剤である。
【0014】
いくつかの態様において、干渉核酸は、dsRNA、siRNA、shRNA、miRNA、人工miRNA(amiRNA)、またはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)である。いくつかの態様において、干渉核酸は、真核生物開始因子2(eIF2)、真核生物開始因子3(eIF3)、タンパク質キナーゼR(PKR)、p62、LC3 Iサブユニット、LC3 IIサブユニット、またはToll様受容体3(TLR3)の発現を修飾する。
【0015】
いくつかの態様において、干渉核酸は、eIF2AまたはeIF2αの発現を修飾する。いくつかの態様において、干渉核酸は、eIF3a、eIF3b、eIF3c、eIF3d、eIF3e、eIF3f、eIF3g、eIF3h、eIF3i、eIF3j、eIF3k、eIF3lおよびeIF3mからなる群より選択される1つ以上のeIF3サブユニットの発現を阻害する。いくつかの態様において、干渉核酸は、タンパク質キナーゼR(PKR)の発現を阻害する。いくつかの態様において、干渉核酸は、表1、2および3のうちのいずれか1つにおいて記載される核酸リピートを含む遺伝子の発現を阻害する。いくつかの態様において、干渉核酸は、表1、2および3のうちのいずれか1つにおいて記載されるリピート配列(例えば、表1、2および3において記載される配列のうちのいずれか1つを含むマイクロサテライト伸長)に直接的に結合する。
【0016】
いくつかの態様において、タンパク質(例えば、治療用タンパク質)は、真核生物開始因子2(eIF2)、真核生物開始因子3(eIF3)、タンパク質キナーゼR(PKR)、p62、LC3 Iサブユニット、LC3 IIサブユニット、またはToll様受容体3(TLR3)を修飾する。
【0017】
いくつかの態様において、タンパク質(例えば、治療用タンパク質)は、タンパク質キナーゼR(PKR)のドミナントネガティブバリアントまたはTLR3タンパク質のドミナントネガティブバリアントである。いくつかの態様において、ドミナントネガティブバリアントは、アミノ酸位置296において変異を含む。いくつかの態様において、変異は、K296Rである。
【0018】
いくつかの態様において、治療剤(例えば、治療用タンパク質をコードする核酸、干渉核酸など)は、ベクターにより対象に送達される。いくつかの態様において、ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの態様において、ウイルスベクターは、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)である。いくつかの態様において、rAAVは、AAV8キャプシドタンパク質またはそのバリアントを含む。
【0019】
いくつかの態様において、治療用タンパク質は、抗RANタンパク質ワクチンである。いくつかの態様において、抗RANタンパク質ワクチンは、ポリ(プロリン-アルギニン)[ポリ(PR)];ポリ(グリシン-アルギニン)[ポリ(GR)];ポリ(セリン)[ポリSer];ポリ(システイン-プロリン)[ポリ(CP)];ポリ(グリシン-プロリン)[(ポリ(GP)];ポリ(グリシン)[ポリ(G)];ポリ(アラニン)[ポリAla];ポリ(グリシン-アラニン)[ポリ(GA)];ポリ(グリシン-アスパラギン酸)[ポリ(GD)];ポリ(グリシン-グルタミン酸)[ポリ(GE)];ポリ(グリシン-グルタミン)[ポリ(GQ)];ポリ(グリシン-スレオニン)[ポリ(GT)];ポリ(ロイシン)[ポリLeu];ポリ(ロイシン-プロリン)[ポリ(LP)];ポリ(ロイシン-プロリン-アラニン-システイン)[ポリ(LPAC)](配列番号260);ポリ(ロイシン-セリン)[ポリ(LS)];ポリ(プロリン)[ポリ(P)];ポリ(プロリン-アラニン)[ポリ(PA)];ポリ(グルタミン-アラニン-グリシン-アルギニン)[ポリ(QAGR)](配列番号261);ポリ(アルギニン-グルタミン酸)[ポリ(RE)];ポリ(セリン-プロリン)[ポリ(SP)]、ポリ(バリン-プロリン)[ポリ(VP)]、ポリ(フェニルアラニン-プロリン)[ポリ(FP)]、ポリ(グリシン-リジン)[ポリ(GK)]、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、ポリ(PGGRGE)(配列番号258)、ポリ(GRQRGVNT)(配列番号266)、およびポリ(GSKHREAE)(配列番号267)から選択されるアミノ酸リピート配列を含む、ペプチド抗原を含む。
【0020】
いくつかの態様において、治療用タンパク質は、抗体である。いくつかの態様において、抗体は、真核生物開始因子2(eIF2)、真核生物開始因子3(eIF3)、タンパク質キナーゼR(PKR)、p62、LC3 Iサブユニット、LC3 IIサブユニット、またはToll様受容体3(TLR3)を標的とする。かかる抗体は、当該分野において公知である(例えば、Duffy et al. Cell Immunol. 2007 Aug;248(2):103-14. PubMed PMID: 18048020を参照)。当業者は、抗体を列挙されたタンパク質標的に結合させる方法、および標的タンパク質の機能の所望される修飾についてスクリーニングする方法を理解するであろう。
【0021】
いくつかの態様において、抗体は、抗RANタンパク質抗体である。いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体は、以下のいずれか1つ以上を標的とする:ポリ(プロリン-アルギニン)[ポリ(PR)];ポリ(グリシン-アルギニン)[ポリ(GR)];ポリ(セリン)[ポリSer];ポリ(システイン-プロリン)[ポリ(CP)];ポリ(グリシン-プロリン)[(ポリ(GP)];ポリ(グリシン)[ポリ(G)];ポリ(アラニン)[ポリAla];ポリ(グリシン-アラニン)[ポリ(GA)];ポリ(グリシン-アスパラギン酸)[ポリ(GD)];ポリ(グリシン-グルタミン酸)[ポリ(GE)];ポリ(グリシン-グルタミン)[ポリ(GQ)];ポリ(グリシン-スレオニン)[ポリ(GT)];ポリ(ロイシン)[ポリLeu];ポリ(ロイシン-プロリン)[ポリ(LP)];ポリ(ロイシン-プロリン-アラニン-システイン)[ポリ(LPAC)](配列番号260);ポリ(ロイシン-セリン)[ポリ(LS)];ポリ(プロリン)[ポリ(P)];ポリ(プロリン-アラニン)[ポリ(PA)];ポリ(グルタミン-アラニン-グリシン-アルギニン)[ポリ(QAGR)](配列番号261);ポリ(アルギニン-グルタミン酸)[ポリ(RE)];ポリ(セリン-プロリン)[ポリ(SP)]、ポリ(バリン-プロリン)[ポリ(VP)]、ポリ(フェニルアラニン-プロリン)[ポリ(FP)]、ポリ(グリシン-リジン)[ポリ(GK)]、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、ポリ(PGGRGE)(配列番号258)、ポリ(GRQRGVNT)(配列番号266)、およびポリ(GSKHREAE)(配列番号267)。いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体は、RANタンパク質のポリ-アミノ酸リピートに特異的に結合する。いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体は、RANタンパク質のC末端に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体は、ポリクローナル抗体である。いくつかの態様において、新規の濃縮されたリピート伸長変異の配列により予測される、RANタンパク質に関連する神経学的疾患(すなわちAD)において生じる、新たに同定されたRANタンパク質に対する結合活性を有する、抗RAN抗体が作成される。いくつかの態様において、遺伝子座は、今や1つ以上の型のRANタンパク質を生成することができる新規のリピート伸長変異を含むものとして同定された、RANタンパク質に関連する神経学的疾患についての既知のリスク因子を含む。
【0022】
いくつかの態様において、遺伝子座は、LRP8遺伝子および/またはCASP8遺伝子を含む。いくつかの態様において、LRP8遺伝子リピート伸長モチーフは、(センス・アンチセンス)GGGGCA・TGCCCC(配列番号1)リピートモチーフを含み、これは、センスおよびアンチセンスのトランスクリプトからのプロリン-アルギニン(PR)、グリシン-アルギニン(GR)、グリシン-アスパラギン酸(GD)、グリシン-スレオニン(GT)、バリン-プロリン(VP)およびセリン-プロリン(SP)ジペプチドリピートモチーフを含むタンパク質をコードする。いくつかの態様において、CASP8遺伝子座中のリピート伸長変異は、GAGAGG・CCTCTC(配列番号2)リピートモチーフを含み、これは、センスおよびアンチセンスのトランスクリプトから、グリシン-アルギニン(GR)、グリシン-グルタミン酸(GE)、アルギニン-グルタミン酸(RE)、セリン-プロリン(SP)、ロイシン-プロリン(LP)およびロイシン-セリン(LS)ジペプチドリピートモチーフを含む新規RANタンパク質を生成することができる。いくつかの態様において、C2orf80遺伝子座におけるリピート伸長変異は、GAGAGGリピートモチーフを含み、これは、グリシン-アルギニン(GR)、グリシン-グルタミン酸(GE)、アルギニン-グルタミン酸(RE)、セリン-プロリン(SP)、ロイシン-プロリン(LP)およびロイシン-セリン(LS)ジペプチドリピートモチーフを含む新規RANタンパク質を生成することができる。
【0023】
いくつかの態様において、遺伝子座は、GREB1遺伝子を含む。いくつかの態様において、GREB1遺伝子座中のリピート伸長変異は、GGGGCAリピートモチーフを含み、これは、センスおよびアンチセンスのトランスクリプトから、グリシン-アルギニン(GR)、グリシン-アラニン(GA)、グリシン-グルタミン(GQ)、プロリン-アラニン(PA)、ロイシン-プロリン(LP)およびシステイン-プロリン(CP)ジペプチドリピートモチーフを含む新規RANタンパク質を生成することができる。
【0024】
いくつかの態様において、本開示により記載される方法は、第2の治療剤を対象に投与することをさらに含む(例えば、アルツハイマー病の処置のためにFDAにより承認された治療剤)。いくつかの態様において、第2の治療剤は、ドネペジル、ガランタミン、メマンチン、リバスチグミン、またはこれらの組み合わせから選択される。
いくつかの態様において、生体試料は、血液、血清、または脳脊髄液(CSF)である。
【0025】
いくつかの態様において、1つ以上のRANタンパク質の検出は、結合アッセイ(例えば、抗体ベースの結合アッセイ)、ハイブリダイゼーションアッセイ、イムノブロット分析、ウェスタンブロット分析、免疫組織化学、および/またはELISA(例えば、RCAベースのELISA、rtPCRベースのELISAなど)を行うことを含む。いくつかの態様において、ハイブリダイゼーションアッセイは、試料を、1つ以上の検出可能な核酸プローブ(例えば、RANタンパク質をコードする配列に特異的に結合する、検出可能な核酸プローブ)と接触させることを含む。いくつかの態様において、ハイブリダイゼーションアッセイは、蛍光In Situハイブリダイゼーション(FISH)および/またはdCas9ベースの濃縮を含む。いくつかの態様において、RANタンパク質の検出はさらに、核酸のシークエンシング、例えば次世代シークエンシング(NGS)を含み、これは、試料に対して濃縮ステップ(例えば、dCas9ベースの濃縮)を行うことを含んでもまたはこれを含まなくともよい。
【0026】
いくつかの態様において、1つ以上のRANタンパク質の検出は、次世代シークエンシング(NGS)を含み、これは、試料に対して、ガイドRNAを用いる濃縮ステップ(例えば、dCas9ベースの濃縮)を行うことを含んでもまたはこれを含まなくともよい。いくつかの態様において、濃縮において用いられるガイドRNAは、NGGプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を含むリピートを標的とする。いくつかの態様において、濃縮において用いられるガイドRNAは、非NGG PAM含有リピートを標的とする。いくつかの態様において、非NGG PAM含有リピートは、CAGおよびCTG伸長リピート(例えば、ALS/FTDにおけるGGGGCCおよびDM2におけるCCTG)を含む。いくつかの態様において、濃縮において用いられるガイドRNAは、対応する正常なアレルより長い(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、100リピート長い)非NGG PAM含有リピート伸長を濃縮する。いくつかの態様において、濃縮において用いられるガイドRNAは、(いくつかの態様においては非NGG PAMを有する配列を含む)複数のリピート伸長を同時に同定する。
【0027】
いくつかの態様において、dCas9ベースの濃縮は、Streptococcus pyogenes由来dCas9(spdCas9)分子を用いて行われる。いくつかの態様において、dCas9ベースの濃縮は、Staphylococcus aureus由来、Streptococcus pyogenes由来、Campylobacter jejuni由来、Corynebacterium diphtheria由来、Eubacterium ventriosum由来、Streptococcus pasteurianus由来、Lactobacillus farciminis由来、Sphaerochaeta globus由来、Azospirillum(例えば、株B510)由来、Gluconacetobacter diazotrophicus由来、Neisseria cinerea-由来、Roseburia intestinalis由来、Parvibaculum lavamentivorans由来、Nitratifractor salsuginis(例えば、株DSM 16511)由来、Campylobacter lari(例えば、株CF89-12)由来、またはStreptococcus thermophilus(例えば、株LMD-9)由来のdCas9分子からなる群より選択されるdCas9タンパクを用いて行われる。なお他の態様において、dCas9分子は、野生型Cas9分子の変異体、例えばそのCas9ヌクレアーゼ活性が不活性化されているものである。いくつかの態様において、変異体Cas9分子は、Cas9ヌクレアーゼ活性を不活化する変異、例えばCas9分子のDNA切断ドメインにおける変異を含む。いくつかの態様において、変異体Cas9分子は、Cas9ヌクレアーゼ活性を不活化する変異、例えば、RuvCドメインにおける変異、および/またはHNHドメインにおける変異を含む。
【0028】
いくつかの側面において、本開示は、対象から得られた試料において少なくとも1つのRANタンパク質を検出すること;少なくとも1つのRANタンパク質は、対象のC9orf72遺伝子座から転写されたものではないことを決定すること;ならびに、C9orf72遺伝子座から転写されたものではない少なくとも1つのRANタンパク質の存在に基づいて、対象を、RANタンパク質関連疾患を有するものとして診断することにより、RANタンパク質関連疾患を診断するための方法を提供する。いくつかの態様において、方法は、1つ以上の特異的な遺伝子座におけるリピート伸長の存在を決定することを含む。いくつかの態様において、特異的な遺伝子座におけるリピート伸長の存在を決定することは、リピートプライムPCR、ロングレンジPCR、および/またはサザンブロット、および各々の遺伝子座に対して特異的なプライマーを用いて行われる。いくつかの側面において、本開示は、RANタンパク質が生体試料中に存在するか否かを決定するために、対象から得られた生体試料に対してアッセイを行うこと;ならびに、RANタンパク質が生体試料中に存在する場合、対象を、RANタンパク質関連疾患についてのリスクがあるものとして同定することにより、RANタンパク質関連疾患の診断において補助する方法を提供する。
【0029】
いくつかの態様において、試料は、中枢神経系(CNS)組織、血液、または脳脊髄液(CSF)である。いくつかの態様において、検出することは、試料を、抗RAN抗体と接触させること(例えば、インキュベートすること)を含む。いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体は、以下のいずれか1つ以上を標的とする:ポリ(プロリン-アルギニン)[ポリ(PR)];ポリ(グリシン-アルギニン)[ポリ(GR)];ポリ(セリン)[ポリSer];ポリ(システイン-プロリン)[ポリ(CP)];ポリ(グリシン-プロリン)[(ポリ(GP)];ポリ(グリシン)[ポリ(G)];ポリ(アラニン)[ポリAla];ポリ(グリシン-アラニン)[ポリ(GA)];ポリ(グリシン-アスパラギン酸)[ポリ(GD)];ポリ(グリシン-グルタミン酸)[ポリ(GE)];ポリ(グリシン-グルタミン)[ポリ(GQ)];ポリ(グリシン-スレオニン)[ポリ(GT)];ポリ(ロイシン)[ポリLeu];ポリ(ロイシン-プロリン)[ポリ(LP)];ポリ(ロイシン-プロリン-アラニン-システイン)[ポリ(LPAC)](配列番号260);ポリ(ロイシン-セリン)[ポリ(LS)];ポリ(プロリン)[ポリ(P)];ポリ(プロリン-アラニン)[ポリ(PA)];ポリ(グルタミン-アラニン-グリシン-アルギニン)[ポリ(QAGR)](配列番号261);ポリ(アルギニン-グルタミン酸)[ポリ(RE)];ポリ(セリン-プロリン)[ポリ(SP)]、ポリ(バリン-プロリン)[ポリ(VP)]、ポリ(フェニルアラニン-プロリン)[ポリ(FP)]、ポリ(グリシン-リジン)[ポリ(GK)]、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、ポリ(PGGRGE)(配列番号258)、ポリ(GRQRGVNT)(配列番号266)、およびポリ(GSKHREAE)(配列番号267)。いくつかの態様において、検出することは、試料に対してdCas9ベースの濃縮を行うことを含む。いくつかの態様において、検出することは、核酸シークエンシングをさらに含む。いくつかの態様において、シークエンシングは、次世代シークエンシング(NGS)である。
【0030】
いくつかの側面において、本開示は、細胞におけるプロテアソーム活性を増大させるための方法を提供し、該方法は、抗RANタンパク質抗体を、細胞におけるRANタンパク質凝集を減少させるために十分な量において投与することを含む。いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体は、以下の1つ以上を標的とする:RANタンパク質ポリ(プロリン-アルギニン)[ポリ(PR)];ポリ(グリシン-アルギニン)[ポリ(GR)];ポリ(セリン)[ポリSer];ポリ(システイン-プロリン)[ポリ(CP)];ポリ(グリシン-プロリン)[(ポリ(GP)];ポリ(グリシン)[ポリ(G)];ポリ(アラニン)[ポリAla];ポリ(グリシン-アラニン)[ポリ(GA)];ポリ(グリシン-アスパラギン酸)[ポリ(GD)];ポリ(グリシン-グルタミン酸)[ポリ(GE)];ポリ(グリシン-グルタミン)[ポリ(GQ)];ポリ(グリシン-スレオニン)[ポリ(GT)];ポリ(ロイシン)[ポリLeu];ポリ(ロイシン-プロリン)[ポリ(LP)];ポリ(ロイシン-プロリン-アラニン-システイン)[ポリ(LPAC)](配列番号260);ポリ(ロイシン-セリン)[ポリ(LS)];ポリ(プロリン)[ポリ(P)];ポリ(プロリン-アラニン)[ポリ(PA)];ポリ(グルタミン-アラニン-グリシン-アルギニン)[ポリ(QAGR)](配列番号261);ポリ(アルギニン-グルタミン酸)[ポリ(RE)];ポリ(セリン-プロリン)[ポリ(SP)]、ポリ(バリン-プロリン)[ポリ(VP)]、ポリ(フェニルアラニン-プロリン)[ポリ(FP)]、ポリ(グリシン-リジン)[ポリ(GK)]、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、ポリ(PGGRGE)(配列番号258)、ポリ(GRQRGVNT)(配列番号266)、およびポリ(GSKHREAE)(配列番号267)。
【0031】
いくつかの側面において、本開示は、対象に、RANタンパク質疾患に対してワクチン接種するための方法を提供し、該方法は、対象に、1つ以上のRANタンパク質を標的とするペプチド抗原を投与することを含む。いくつかの態様において、ペプチド抗原は、RANタンパク質:ポリ(プロリン-アルギニン)[ポリ(PR)];ポリ(グリシン-アルギニン)[ポリ(GR)];ポリ(セリン)[ポリSer];ポリ(システイン-プロリン)[ポリ(CP)];ポリ(グリシン-プロリン)[(ポリ(GP)];ポリ(グリシン)[ポリ(G)];ポリ(アラニン)[ポリAla];ポリ(グリシン-アラニン)[ポリ(GA)];ポリ(グリシン-アスパラギン酸)[ポリ(GD)];ポリ(グリシン-グルタミン酸)[ポリ(GE)];ポリ(グリシン-グルタミン)[ポリ(GQ)];ポリ(グリシン-スレオニン)[ポリ(GT)];ポリ(ロイシン)[ポリLeu];ポリ(ロイシン-プロリン)[ポリ(LP)];ポリ(ロイシン-プロリン-アラニン-システイン)[ポリ(LPAC)](配列番号260);ポリ(ロイシン-セリン)[ポリ(LS)];ポリ(プロリン)[ポリ(P)];ポリ(プロリン-アラニン)[ポリ(PA)];ポリ(グルタミン-アラニン-グリシン-アルギニン)[ポリ(QAGR)](配列番号261);ポリ(アルギニン-グルタミン酸)[ポリ(RE)];ポリ(セリン-プロリン)[ポリ(SP)]、ポリ(バリン-プロリン)[ポリ(VP)]、ポリ(フェニルアラニン-プロリン)[ポリ(FP)]、ポリ(グリシン-リジン)[ポリ(GK)]、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、ポリ(PGGRGE)(配列番号258)、ポリ(GRQRGVNT)(配列番号266)、およびポリ(GSKHREAE)(配列番号267)の1つ以上を標的とする(例えば、これをコードするアミノ酸配列を含む)。
【0032】
いくつかの態様において、細胞は、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞、マウス細胞、ラット細胞、ネコ細胞、イヌ細胞、モルモット細胞、ブタ細胞、サル細胞など)である。いくつかの態様において、細胞は、神経細胞、星状膠細胞、またはグリア細胞である。いくつかの態様において、細胞は、表1、2および3のうちのいずれか1つにおいて記載される配列の少なくとも35個のリピートを含む核酸配列を有する遺伝子を含む。いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体は、モノクローナル抗体である。
【0033】
いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体の投与は、投与の前の細胞におけるプロテアソーム活性と比較して、細胞におけるプロテアソーム活性の増大をもたらす。いくつかの態様において、プロテアソーム活性の増大は、細胞におけるP62サブユニットのレベルまたは含有物または活性の低下により示される。いくつかの態様において、増大したプロテアソーム活性は、RANタンパク質により(例えばポリ(GA)により)隔離されたプロテアソームサブユニットの、典型的には点状のシグナルと比較して拡散したシグナルにより検出することができる。いくつかの態様において、プロテアソーム活性の増大は、タンパク質ライセートにおいて、または細胞において、蛍光ベースの方法を用いて測定することができる。いくつかの態様において、抗RAN抗体の投与の後で、疾患により媒介される細胞外プロテアソーム系の調節不全の改善を測定することができる。
【0034】
また本明細書において開示されるのは、以下のいずれか1つ以上に特異的に結合する抗体および/または抗原結合フラグメントである:ポリSer、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(CP)、ポリ(GP);ポリ(G)、ポリ(A)、ポリ(GA)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC)(配列番号260)、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(PA)、ポリ(QAGR)(配列番号261)、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、ポリ(GK)、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、ポリ(PGGRGE)(配列番号258)、ポリ(GRQRGVNT)(配列番号266)、および/またはポリ(GSKHREAE)(配列番号267)。例えば、抗体または抗体フラグメントは、1つのみの型のRANタンパク質(例えば、ポリSerまたはポリGA)に結合してもよく、あるいは、抗体または抗体フラグメントは、複数のRANタンパク質に結合してもよい(例えば、異なるアフィニティーで)。いくつかの態様において、RANタンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント、および抗体または抗原結合フラグメントは、以下:(i)配列番号117、119、121および123からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR1領域;(ii)配列番号125、127、129および131からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR2領域;および/または(iii)配列番号133、135、137および139からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR3領域を含む、重鎖可変領域(VH)を含む。
【0035】
いくつかの態様において、RANタンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント、および抗体または抗原結合フラグメントは、以下:(i)配列番号118、120、122および124からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR1領域;(ii)配列番号126、128、130および132からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR2領域;および/または(iii)配列番号134、136、138および140からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR3領域を含む、軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0036】
いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号109、111、113または115に記載される可変性の重鎖アミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号110、112、114または116に記載される可変性の軽鎖アミノ酸配列を含む。
いくつかの態様において、抗体は、ポリGAに結合する。いくつかの態様において、抗体は、ポリSerに結合する。いくつかの態様において、抗体は、ポリPRに結合する。
【0037】
また本明細書において開示されるのは、本明細書において開示される抗体または抗原結合フラグメント、ならびに薬学的に受入可能なキャリアおよび/または薬学的に受入可能なバッファーを含む、組成物である。いくつかの態様において、組成物は、リピート伸長疾患を処置することにおける使用のためのものである。いくつかの態様において、組成物は、以下からなる群より選択されるリピート伸長疾患を処置することにおける使用のためのものである:筋萎縮性側索硬化症(ALS)、または前頭側頭葉型認知症;1型筋強直性ジストロフィー(DM1)および2型筋強直性ジストロフィー(DM2);1、2、3、6、7、8、10、12、17、31および36型脊髄小脳変性症;球脊髄性筋萎縮症;歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA);ハンチントン病(HD);脆弱X振戦失調症候群(FXTAS);フックス内皮角膜ジストロフィー(FECD);ハンチントン病類症2型症候群(HDL2);脆弱X症候群(FXS);7pl l.2葉酸感受性脆弱部位FRA7Aに関する障害;葉酸感受性脆弱部位2ql 1 FRA2Aに関する障害;ならびに脆弱XE症候群(FRAXE)。いくつかの態様において、組成物は、アルツハイマー病を処置することにおける使用のためのものである。
【0038】
本明細書においてさらに開示されるのは、本明細書において開示される抗体または抗原結合フラグメントをコードする、単離された核酸分子である。また提供されるのは、開示される核酸で形質転換された細胞である。いくつかの態様において、細胞は、哺乳動物細胞である。いくつかの態様において、細胞は、ヒト細胞である。
【0039】
対象においてRANタンパク質関連疾患を処置する方法もまた、本明細書において提供される。いくつかの態様において、方法は、本明細書において開示される抗体のうちのいずれか1つ、または本明細書において開示される2つ以上の抗体(例えば、1、2、3、4、5、6、5~10、10~15、またはそれより多くの抗体)の組み合わせを投与することを含み、ここで、対象は、対象から得られた生体試料中の少なくとも1つのRANタンパク質の検出により、RANタンパク質関連疾患を有するものとして特徴づけられている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1A-B】
図1A~1Cは、アルツハイマー病(AD)に関連するリピート伸長およびRNAi凝集体についてのスクリーニングを示す。
図1Aは、抗RANタンパク質抗体、RNA凝集体スクリーニング、およびdCas9プルダウン濃縮を用いたRANタンパク質発現についての試料の分析を表す模式図を示す。
図1Bは、dCas9リピート伸長濃縮を表す模式図を示す。
【
図1C】
図1A~1Cは、アルツハイマー病(AD)に関連するリピート伸長およびRNAi凝集体についてのスクリーニングを示す。
図1Cは、sgRNA-dCas9複合体を用いてC9orf72 G4C2リピートの濃縮を検証するデータを示す。
【0041】
【
図2A】
図2A~2Cは、ポリ(GR)およびポリ(PR)タンパク質のスクリーニングデータを示す。
図2Aは、RAN-タンパク質陽性試料についてのドットブロットスクリーニングのデータを示す。抗ポリ(GR)抗体を、スクリーニングのために用いた。ブロットスクリーニングのデータを示す。抗ポリ(Ser)抗体を、スクリーニングのために用いた。
【
図2B】
図2A~2Cは、ポリ(GR)およびポリ(PR)タンパク質のスクリーニングデータを示す。
図2Bは、RAN-タンパク質陽性試料についてのドットブロットスクリーニングのデータを示す。抗ポリ(Ser)抗体を、スクリーニングのために用いた。
【
図2C】
図2A~2Cは、ポリ(GR)およびポリ(PR)タンパク質のスクリーニングデータを示す。
図2Cは、RAN陽性(上)、RAN陰性(下)、および健康な対照脳組織(中)についての、RANタンパク質(ポリ(GR)およびポリ(PR)タンパク質)ならびにリン酸化TDP-43についての、試料の組織学的染色を示す。
【0042】
【
図3A】
図3A~3Cは、RANタンパク質の局在は、3Rタウなどの典型的なADタンパク質とは区別し得ることを示す免疫蛍光データを示す。
図3Aは、3Rタウとは区別し得るポリ(PR)およびポリ(GR)の染色を示す。
【
図3B】
図3A~3Cは、RANタンパク質の局在は、3Rタウなどの典型的なADタンパク質とは区別し得ることを示す免疫蛍光データを示す。
図3Bは、抗ポリ(PR)および抗ポリ(GR)抗体は、3Rタウ抗体とは交差反応しないことを示す。
【
図3C】
図3A~3Cは、RANタンパク質の局在は、3Rタウなどの典型的なADタンパク質とは区別し得ることを示す免疫蛍光データを示す。
図3Cは、GR
60コンストラクト(左)またはPR
60コンストラクト(右)を発現する陽性対照細胞を示す。
【0043】
【
図4】
図4は、GCリッチなDNAプローブによる細胞の蛍光In Situハイブリダイゼーション(FISH)スクリーニングを示す。RNA凝集体の染色は、RANタンパク質翻訳により特徴づけられるADの症例(上)において存在したが、RAN陰性の症例(下)においては存在しなかった。
【0044】
【
図5A】
図5A~5Bは、細胞プロテアソームおよびオートファジーに対するRANタンパク質翻訳の効果を示す。
図5Aは、GFP-GA
60で形質転換された細胞における、ポリ(GA)RANタンパク質によるLC3Bおよび26Sサブユニットの隔離を示す。
【
図5B】
図5A~5Bは、細胞プロテアソームおよびオートファジーに対するRANタンパク質翻訳の効果を示す。
図5Bは、ポリ(GA)RANタンパク質発現細胞において低下したプロテアソーム活性は、抗ポリ(GA)抗体による処置によりレスキューされることを示す。
【0045】
【
図6】
図6は、RANタンパク質の発現により影響を受ける、オートファジーを制御する分子経路の模式図を示す。
【0046】
【
図7】
図7は、dCas9ベースのリピート伸長の濃縮および検出(dCas9READ)を示す。sgRNA-dCas9複合体のリピート伸長への優先的な結合により、リピートおよびユニークな隣接配列の濃縮および同定が可能になる。
【0047】
【
図8A】
図8A~8Dは、dCas9READを用いたC9ALS/FTDおよびDM2伸長の濃縮を示す。
図8Aは、dCas9READを用いたG4C2 CCTGの濃縮を示すqPCRを示す。平均値+/-SEM、独立両側t検定、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【
図8B】
図8A~8Dは、dCas9READを用いたC9ALS/FTDおよびDM2伸長の濃縮を示す。
図8Bは、dCas9READを用いたG4C2伸長変異の濃縮を示すqPCRを示す。平均値+/-SEM、独立両側t検定、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【
図8C】
図8A~8Dは、dCas9READを用いたC9ALS/FTDおよびDM2伸長の濃縮を示す。
図8Cは、C9orf72およびCNBP(DM2)遺伝子座への隣接配列のマッピングの同定を示す。
【
図8D】
図8A~8Dは、dCas9READを用いたC9ALS/FTDおよびDM2伸長の濃縮を示す。
図8Dは、対照DNAに対する、患者からのC9orf72およびCNBPの濃縮を示す総読み値を示す。平均値+/-SEM、独立両側t検定、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【0048】
【
図9A-B】
図9A~9Gは、ADにおける陽性RANタンパク質シグナルを示す。
図9Aは、ADにおいてRANタンパク質についてスクリーニングするために用いられた抗体を示す。
図9Bは、α-GRスクリーニングのドットブロットの例およびα-GRシグナルの定量を示す(独立両側t検定)。平均値+/-SEM、**p<0.01、***p<0.001。
【
図9C】
図9A~9Gは、ADにおける陽性RANタンパク質シグナルを示す。
図9Cは、AD剖検脳のCA1領域における、p-タウ、AβおよびpTDP43と比較した、GRおよびPRの代表的な陽性IHC染色を示す。
【
図9D-E】
図9A~9Gは、ADにおける陽性RANタンパク質シグナルを示す。
図9Dは、遅発性AD症例および対照におけるPRシグナルの定量を示す(多重比較のためのTukey分析を伴う一方向ANOVA)。
図9Eは、GR60およびPR60タンパク質を発現するT98細胞におけるα-GRおよびα-PRの染色を示す。平均値+/-SEM、**p<0.01、***p<0.001。
【
図9F】
図9A~9Gは、ADにおける陽性RANタンパク質シグナルを示す。
図9Fは、PR60またはGR60と共にまたはこれを伴わず3-リピートタウタンパク質を発現する細胞におけるα-PR染色を示す。
【
図9G】
図9A~9Gは、ADにおける陽性RANタンパク質シグナルを示す。
図9Gは、PR60またはGR60と共にまたはこれを伴わず3-リピートタウタンパク質を発現する細胞におけるα-GR染色を示す。
【0049】
【
図10A】
図10A~Cは、AD症例において検出されたRNA凝集体および蓄積を示す。
図10Aは、ADにおいてC4G2およびC4GTのDNAプローブにより検出されたRNA凝集体、ならびにα-GR、α-GAまたはα-GPについての陽性のドットブロットシグナルによるAD試料における凝集体の定量を示す。データは、平均値+/-SEMを表し、*<0.05、**p<0.01。
【
図10B】
図10A~Cは、AD症例において検出されたRNA凝集体および蓄積を示す。
図10Bは、ADの死後組織における歯状回(DG)領域におけるdsRNAシグナル、ならびに、認知性の健康な対照、SCA対照およびAD症例を比較する定量を示す(多重比較のためのTurkey分析による一方ANOVA)。データは、平均値+/-SEMを表し、*<0.05、**p<0.01。
【
図10C】
図10A~Cは、AD症例において検出されたRNA凝集体および蓄積を示す。
図10Cは、組織がRNAse Aで処置された対照実験におけるdsRNAの染色を示す(独立両側t検定)。データは、平均値+/-SEMを表し、*<0.05、**p<0.01。
【0050】
【
図11】
図11は、病理学から遺伝学への戦略(Pathology-to-Genetics strategy)を示す。患者の組織を、α-RAN抗体を用いてスクリーニングする。RANリピートモチーフを用いて、RNA凝集体スクリーニングのための可能なリピートモチーフ、およびdCas9READを用いるリピートの同定のためのsgRNAを決定する。RANリピートおよび対応するユニークなC末端領域に対する新規の抗体は、推定の伸長変異を確認するため、および病理学を試験するために用いられるであろう。
【0051】
【
図12】
図12A~12Bは、CASP8およびADARB2の伸長遺伝子座を示す。
図12Aは、ロングレンジPCR生成物のサンガーシークエンシングにより確認されたCASP8リピート配列を示す。
図12Bは、LOAD症例および非AD対照における、ADARB2遺伝子座における、伸長した、または正常なアレルを示す。各々のレーンは、個々のAD患者または対照試料を表す。黄色のアスタリスクは、参照ゲノムにおいて報告されるアレルのサイズを示す。赤色のアスタリスクは、伸長したアレルを示す。
【0052】
【
図13A】
図13A~13Eは、作製された抗RAN抗体を、組み換えタンパク質を発現する形質転換細胞において検証する、免疫蛍光データを示す。
図13Aは、抗ポリER抗体の検証を示す。HEK293T細胞を、3xFlag-(ER)30または対照プラスミドのいずれかで形質転換した。
【
図13B】
図13A~13Eは、作製された抗RAN抗体を、組み換えタンパク質を発現する形質転換細胞において検証する、免疫蛍光データを示す。
図13Bは、抗ポリEG抗体の検証を示す。HEK293T細胞を、3xFlag-(EG)30または対照プラスミドのいずれかで形質転換した。
【
図13C】
図13A~13Eは、作製された抗RAN抗体を、組み換えタンパク質を発現する形質転換細胞において検証する、免疫蛍光データを示す。
図13Cは、抗ポリLS抗体の検証を示す。HEK293T細胞を、3xFlag-(LS)30または対照プラスミドのいずれかで形質転換した。
【
図13D-E】
図13A~13Eは、作製された抗RAN抗体を、組み換えタンパク質を発現する形質転換細胞において検証する、免疫蛍光データを示す。
図13Dは、抗GAGAGG-ASF1抗体の検証を示す。HEK293T細胞を、CMV-3xFlag-ASF2または対照プラスミドのいずれかで形質転換した。
図13Eは、抗GAGAGG-ASF2抗体の検証を示す。HEK293T細胞を、CMV-3xFlag-ASF2または対照プラスミドのいずれかで形質転換した。
【発明を実施するための形態】
【0053】
詳細な説明
いくつかの側面において、本開示は、RANタンパク質の発現、翻訳および/または蓄積に関連する疾患(例えば、神経学的疾患)を有するか、またはこれを発症するリスクがある対象の診断および/または処置のために有用である、方法および組成物に関する。いくつかの態様において、RANタンパク質の発現、翻訳および/または蓄積と関連する疾患は、以下からなる群より選択される:筋萎縮性側索硬化症(ALS)、または前頭側頭葉型認知症;1型筋強直性ジストロフィー(DM1)および2型筋強直性ジストロフィー(DM2);1、2、3、6、7、8、10、12、17、31および36型脊髄小脳変性症;球脊髄性筋萎縮症;歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA);ハンチントン病(HD);脆弱X振戦失調症候群(FXTAS);フックス内皮角膜ジストロフィー(FECD);ハンチントン病類症2型症候群(HDL2);脆弱X症候群(FXS);7pl l.2葉酸感受性脆弱部位FRA7Aに関する障害;葉酸感受性脆弱部位2ql 1 FRA2Aに関する障害;ならびに脆弱XE症候群(FRAXE)。いくつかの態様において、RANタンパク質に関連する神経学的疾患は、アルツハイマー病(AD)である。
【0054】
いくつかの側面において、本開示は、RANタンパク質の発現、翻訳および/または蓄積に関連する疾患(例えば、神経学的疾患)を有するか、またはこれを発症するリスクがある対象の診断および/または処置のための方法に関する。本開示は、部分的に、特定のRANタンパク質(例えば、ポリ(プロリン-アルギニン)[ポリ(PR)];ポリ(グリシン-アルギニン)[ポリ(GR)];ポリ(セリン)[ポリSer];ポリ(システイン-プロリン)[ポリ(CP)];ポリ(グリシン-プロリン)[(ポリ(GP)];ポリ(グリシン)[ポリ(G)];ポリ(アラニン)[ポリAla];ポリ(グリシン-アラニン)[ポリ(GA)];ポリ(グリシン-アスパラギン酸)[ポリ(GD)];ポリ(グリシン-グルタミン酸)[ポリ(GE)];ポリ(グリシン-グルタミン)[ポリ(GQ)];ポリ(グリシン-スレオニン)[ポリ(GT)];ポリ(ロイシン)[ポリLeu];ポリ(ロイシン-プロリン)[ポリ(LP)];ポリ(ロイシン-プロリン-アラニン-システイン)[ポリ(LPAC)](配列番号260);ポリ(ロイシン-セリン)[ポリ(LS)];ポリ(プロリン)[ポリ(P)];ポリ(プロリン-アラニン)[ポリ(PA)];ポリ(グルタミン-アラニン-グリシン-アルギニン)[ポリ(QAGR)](配列番号261);ポリ(アルギニン-グルタミン酸)[ポリ(RE)];ポリ(セリン-プロリン)[ポリ(SP)]、ポリ(バリン-プロリン)[ポリ(VP)]、ポリ(フェニルアラニン-プロリン)[ポリ(FP)]、ポリ(グリシン-リジン)[ポリ(GK)]、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、ポリ(PGGRGE)(配列番号258)、ポリ(GRQRGVNT)(配列番号266)、および/またはポリ(GSKHREAE)(配列番号267)の発現および蓄積により特徴づけられる、特定の患者の同定に基づく。
【0055】
本開示の側面は、特定のリピート関連非ATG(RAN)タンパク質(例えば、ポリセリン[ポリSer]、ポリ(プロリン-アルギニン)[ポリ(PR)]、およびポリ(グリシン-アルギニン)[ポリ(GR)];ポリ(システイン-プロリン)[ポリ(CP)];ポリ(グリシン-プロリン)[(ポリ(GP)];ポリ(グリシン)[ポリ(G)];ポリ(アラニン)[ポリAla];ポリ(グリシン-アラニン)[ポリ(GA)];ポリ(グリシン-アスパラギン酸)[ポリ(GD)];ポリ(グリシン-グルタミン酸)[ポリ(GE)];ポリ(グリシン-グルタミン)[ポリ(GQ)];ポリ(グリシン-スレオニン)[ポリ(GT)];ポリ(ロイシン)[ポリLeu];ポリ(ロイシン-プロリン)[ポリ(LP)];ポリ(ロイシン-プロリン-アラニン-システイン)[ポリ(LPAC)](配列番号260);ポリ(ロイシン-セリン)[ポリ(LS)];ポリ(プロリン)[ポリ(P)];ポリ(プロリン-アラニン)[ポリ(PA)];ポリ(グルタミン-アラニン-グリシン-アルギニン)[ポリ(QAGR)](配列番号261);ポリ(アルギニン-グルタミン酸)[ポリ(RE)];ポリ(セリン-プロリン)[ポリ(SP)]、ポリ(バリン-プロリン)[ポリ(VP)]、ポリ(フェニルアラニン-プロリン)[ポリ(FP)]、ポリ(グリシン-リジン)[ポリ(GK)]、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、ポリ(PGGRGE)(配列番号258)、ポリ(GRQRGVNT)(配列番号266)、および/またはポリ(GSKHREAE)(配列番号267))に基づき、これは、対象の、C9orf72ではない遺伝子座から発現され、アルツハイマー病(AD)、またはRANタンパク質の発現、翻訳および/もしくは蓄積に関連する別の疾患(例えば、神経学的疾患)を有するか、またはこれを有することが疑われる対象の生体試料において検出可能である。生体試料は、RANタンパク質の発現、翻訳および/または蓄積に関連する疾患(例えば、神経学的疾患)、例えばADを有するか、またはこれを有することが疑われる対象に由来するか、またはこれから得られた任意の標本であってよい。いくつかの態様において、生体試料は、血液、血清(例えば、血漿から凝固性タンパク質を取り除いたもの)または脳脊髄液(CSF)である。いくつかの態様において、生体試料は、組織試料、例えば脳組織または脊髄組織などの中枢神経系(CNS)組織である。当業者は、本開示により記載される方法のために好適な他の生体試料、例えば細胞(例えば、脳細胞、神経細胞、皮膚細胞など)を認識するであろう。
【0056】
「RANタンパク質の発現、翻訳および/または蓄積に関連する疾患(例えば、神経学的疾患)を有するか、またはこれを有することが疑われる対象」とは、一般に、神経変性疾患の1つ以上の徴候および症状(記憶欠損(例えば、短期記憶喪失)、錯乱、実行機能(例えば、注意、計画、柔軟性、抽象思考など)の欠損、失語、運動技能の変性または喪失などを含むがこれらに限定されない)を示している対象、またはRANタンパク質の発現、翻訳および/または蓄積に関連する1つ以上の遺伝子変異を有するか、またはこれを有するものとして同定されている対象を指す。
【0057】
「アルツハイマー病を有するか、またはこれを有することが疑われる対象」は、ADの1つ以上の徴候および症状(記憶欠損(例えば、短期記憶喪失)、錯乱、実行機能(例えば、注意、計画、柔軟性、抽象思考など)の欠損、失語、運動技能の変性または喪失などを含むがこれらに限定されない)を示す対象、またはADに関連する1つ以上の遺伝子変異、例えば、アポリポタンパク質(APP)、プレセニリン遺伝子(PSEN1およびPSEN2)、またはタウタンパク質を含む特定の遺伝子における変異を有するか、またはこれを有するものとして同定されている対象であってよい。いくつかの態様において、ADを有するか、またはこれを有することが疑われる対象は、対象の脳組織全体にわたるβ-アミロイド(Aβ)ペプチドおよび過剰リン酸化されたタウタンパク質の蓄積により特徴づけられる。いくつかの態様において、対象は、医学の専門化により、McKhannら(1984年)「Clinical diagnosis of Alzheimer's disease: report of the NINCDS-ADRDA Work Group under the auspices of Department of Health and Human Services Task Force on Alzheimer's Disease」、Neurology. 34 (7): 939-44により記載されるとおりNINCDS-ADRDAアルツハイマー基準に従って、ADを有するものとして診断されている。対象は、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、イヌ、ネコまたはブタ)であってよい。いくつかの態様において、対象は、非ヒト動物、例えばマウス、ラット、モルモット、ネコ、イヌ、ウマ、ラクダなどである。いくつかの態様において、対象は、ヒトである。
【0058】
RANタンパク質
「RANタンパク質(リピート関連非ATG翻訳タンパク質)」とは、リピート伸長変異からAUG開始コドンの不在下において双方向的に転写されたセンスまたはアンチセンスのRNA配列から翻訳されるポリペプチドである。RANタンパク質をコードする配列は、9番染色体のオープンリーディングフレーム72(C9orf72)、2番染色体のオープンリーディングフレーム80(C2orf80)、LRP8、CASP8、CRNDE、EXOC6B、SV2B、PPML1、ADARB2、GREB1およびMSMO1を含むがこれらに限定されない複数の遺伝子座におけるゲノムにおいて見出すことができる。C9orf72に関連するタンパク質は、現在、ほとんど特徴づけられていないが、ニューロン、特に大脳皮質および運動ニューロンにおいて豊富であることが知られている。C9orf72タンパク質は、シナプス前終末において局在すると考えられている。C9orf72タンパク質は、RNAの転写、翻訳および細胞内局在に影響を及ぼす可能性がある。C9orf72遺伝子は、GGGGCCリピートを含む。このヘキサヌクレオチドリピートは、変わり得るリピート数で起こり、小さい数のリピートは、いかなる病態とも関連しない。
【0059】
C2orf80に関連するタンパク質は、特徴づけられていないタンパク質であり、その発現は、脳組織において、およびより低い程度で精巣組織において局在することが知られている。C2orf80の遺伝子座は、GAGAGGリピートモチーフを含み、これは、翻訳が開始される読み枠に依存して、ポリ(GR)、ポリ(GE)、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(LP)およびポリ(LS)ジペプチドリピートモチーフを含む新規のRANタンパク質を生成することができる。翻訳がC2orf80ポリ(ロイシン-プロリン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列PCSSPVHLIPDLFVVEFREWSEMDRVGKKGEREEGSLFFQLWALSCNVQSEEKI(配列番号203)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(LP)nPCSSPVHLIPDLFVVEFREWSEMDRVGKKGEREEGSLFFQLWALSCNVQSEEKI(配列番号204)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたLPリピートの数である)。翻訳がC2orf80ポリ(セリン-プロリン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列LLLPCPSDS(配列番号205)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(SP)nLLLPCPSDS(配列番号206)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたSPリピートの数である)。翻訳がC2orf80ポリ(セリン-ロイシン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列PAPPLSI(配列番号207)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(SL)nPAPPLSI(配列番号208)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたSLリピートの数である)。翻訳がC2orf80ポリ(グリシン-グルタミン酸)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列GDFKQEKRKLLLLREGSRIETFGIQKLIQTFSSTCLFASTE(配列番号209)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(GE)nGDFKQEKRKLLLLREGSRIETFGIQKLIQTFSSTCLFASTE(配列番号210)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたGEリピートの数である)。翻訳がC2orf80ポリ(グリシン-アルギニン)RANを生じる読み枠において開始される場合、さらなるアミノ酸が翻訳される可能性は低く、したがって、全長RANタンパク質は、単純に、(GR)n(配列番号27)であろう(nは、組み込まれたGRリピートの数である)。翻訳がC2orf80ポリ(アルギニン-グルタミン酸)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列TLSRKKENYYC(配列番号212)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(RE)nTLSRKKENYYC(配列番号213)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたREリピートの数である)。
【0060】
LRP8(低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8)は、他の既知の機能の中でも、脳の発達の間に、前脳のニューロンの層化を支配するリーリン経路の重要な成分として働く。LRP8遺伝子は、(センス・アンチセンス)GGGGCA・TGCCCC(配列番号1)リピートモチーフを含むリピート伸長モチーフを含み、これは、開始される読み枠に依存して、センスおよびアンチセンストランスクリプトから、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(GD)、ポリ(GT)、ポリ(VP)、およびポリ(SP)ジペプチドリピートモチーフを含むRANタンパク質をコードすることができる。翻訳がLRP8ポリ(グリシン-アラニン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列DSTSRKALGPLLSLAPSCQAPSIPKPCHNPMLQEVFLQPTPAHLPPS(配列番号214)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(GA)nDSTSRKALGPLLSLAPSCQAPSIPKPCHNPMLQEVFLQPTPAHLPPS(配列番号215)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたGAリピートの数である)。翻訳がLRP8ポリ(グリシン-グルタミン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列IPPPEKPLGPSSALPPPAKPPVSPSPATIPCSRRSSSSPPQPTSHPPDSDVLSPAKPCDLEEVIFLLCKWGMRTTCLTG(配列番号216)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(GQ)nIPPPEKPLGPSSALPPPAKPPVSPSPATIPCSRRSSSSPPQPTSHPPDSDVLSPAKPCDLEEVIFLLCKWGMRTTCLTG(配列番号217)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたGQリピートの数である)。翻訳がLRP8ポリ(グリシン-アルギニン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列FHLQKSPWAPPQPCPLLPSPQYPQALPQSHAPGGLPPAHPSPPPTLLTQMFCLLLSRVTWRKSFFSSVNGG(配列番号218)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(GR)nFHLQKSPWAPPQPCPLLPSPQYPQALPQSHAPGGLPPAHPSPPPTLLTQMFCLLLSRVTWRKSFFSSVNGG(配列番号219)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたGRリピートの数である)。翻訳がLRP8ポリ(システイン-プロリン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列PSPSLPSPHAVSKWIPDTKTPTGVVPEVRPVNLGPRALPVPLKARVWVCSGAELKAAKLTGKVSPVIRDVQGYGWGRGDSHLW(配列番号220)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(CP)nPSPSLPSPHAVSKWIPDTKTPTGVVPEVRPVNLGPRALPVPLKARVWVCSGAELKAAKLTGKVSPVIRDVQGYGWGRGDSHLW(配列番号221)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたCPリピートの数である)。翻訳がLRP8ポリ(プロリン-アラニン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列RLFPLPMLSPNGSLTPRLQLG(配列番号222)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(PA)nRLFPLPMLSPNGSLTPRLQLG(配列番号223)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたPAリピートの数である)。翻訳がLRP8ポリ(ロイシン-プロリン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列QPVSSLSPCCLQMDP(配列番号224)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(LP)nQPVSSLSPCCLQMDP(配列番号225)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたLPリピートの数である)。
【0061】
CASP8(カスパーゼ-8)は、多様な組織において発現され、TNFRSF6/FASにより媒介される、および/またはTNFRSF1Aにより誘導される細胞死の間に、カスパーゼのカスケード活性化において最上流のプロテアーゼとして働く。CASP8遺伝子は、GAGAGG・CCTCTC(配列番号2)リピートモチーフを含み、これは、翻訳が開始される読み枠に依存して、センスおよびアンチセンストランスクリプトから、ポリ(GR)、ポリ(GE)、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(LP)、およびポリ(LS)ジペプチドリピートモチーフを含む新規のRANタンパク質を生成することができる。翻訳がCASP8ポリ(ロイシン-セリン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列PSPSPSPSPRLPLPLMPSQSWTVLLPSRLTATSLPDSPASACRVPAIAGARRHA(配列番号226)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(LS)nPSPSPSPSPRLPLPLMPSQSWTVLLPSRLTATSLPDSPASACRVPAIAGARRHA(配列番号227)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたLSリピートの数である)。翻訳がCASP8ポリ(ロイシン-プロリン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列PVSLSLSLSPSPSPSHAEPKLDGTAAISAHCNLPA(配列番号228)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(LP)nPVSLSLSLSPSPSPSHAEPKLDGTAAISAHCNLPA(配列番号229)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたLPリピートの数である)。翻訳がCASP8ポリ(プロリン-セリン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列PRLPLPLPLPVSLSLSCRAKAGRYCCHLGSLQPPCLILLPQPAECLRLQARAATPDWFSFFFWWRWGFAVLAGLVSSS(配列番号230)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(PS)nPRLPLPLPLPVSLSLSCRAKAGRYCCHLGSLQPPCLILLPQPAECLRLQARAATPDWFSFFFWWRWGFAVLAGLVSSS(配列番号231)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたPSリピートの数である)。翻訳がCASP8ポリ(グリシン-アルギニン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列GVKFLSINVMPTVLSSCGL(配列番号232)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(GR)nGVKFLSINVMPTVLSSCGL(配列番号233)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたGRリピートの数である)。翻訳がCASP8ポリ(アルギニン-グルタミン酸)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列RGQILIYQCYAHCALQLWSVNYCGIT(配列番号234)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(RE)nRGQILIYQCYAHCALQLWSVNYCGIT(配列番号235)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたREリピートの数である)。翻訳がCASP8ポリ(グリシン-グルタミン酸)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列GSNSYLSMLCPLCSPAVVCELLWYNVTVQISLFRGFDHDL(配列番号236)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(GE)nGSNSYLSMLCPLCSPAVVCELLWYNVTVQISLFRGFDHDL(配列番号259)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたGEリピートの数である)。
【0062】
Colorectal Neoplasia Differentially Expressed(CRNDE)遺伝子座は、複数のトランスクリプトバリアントに転写されると考えられ、そのうちのいくつかは、非コードRNAとして機能し得る。1つのトランスクリプトバリアントは、核に局在する推定の短いタンパク質をコードする。CRNDEの発現は、結腸直腸の腺腫および腺癌などの、増殖中の組織において増大する。CRNDE遺伝子は、GGGGGC(G5C)リピートモチーフを含み、これは、翻訳が開始される読み枠に依存して、センスおよびアンチセンストランスクリプトから、ポリ(グリシン)[ポリGly]およびポリ(プロリン)[polyPro]タンパク質、ならびにジペプチドリピートポリ(GA)、ポリ(GR)、ポリ(PA)およびポリ(PR)を含む、新規RANタンパク質を生成することができる。典型的にはリピートモチーフの3’に位置する核酸配列に基づいて、翻訳がCRNDEポリGlyRANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列RKRGTAGVAG(配列番号3)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(G)nRKRGTAGVAG(配列番号4)有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたグリシンの数である)。翻訳がCRNDEポリProRANを生じる読み枠において開始されるべきである場合、C末端配列RGLFVGCFFNFFNPFSCTVFFLVSGAGETPARY(配列番号5)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(P)nRGLFVGCFFNFFNPFSCTVFFLVSGAGETPARY(配列番号6)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたプロリンの数である)。翻訳がCRNDEポリ(GA)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列GVGGESAGLPEWQDDVMRMSV(配列番号7)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(GA)nGVGGESAGLPEWQDDVMRMSV(配列番号8)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたグリシン-アラニンリピートの数である)。翻訳がCRNDEポリ(GR)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列GWGEKARDCRSGRMM(配列番号9)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(GR)nGWGEKARDCRSGRMM(配列番号10)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたグリシン-アルギニンリピートの数である)。翻訳がCRNDEポリ(PR)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列PVACLLVVFLIFLTPFLVLSSFWCQGLERLLQDIEAFRMYGSV(配列番号11)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(PR)nPVACLLVVFLIFLTPFLVLSSFWCQGLERLLQDIEAFRMYGSV(配列番号12)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたプロリン-アルギニンリピートの数である)。翻訳がCRNDEポリ(PA)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列PWLVCWLFF(配列番号13)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(PA)nPWLVCWLFF(配列番号14)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたプロリン-アラニンリピートの数である)。
【0063】
EXOC6B(エクソシスト複合体成分6B)は、開口分泌小胞(exocytic vesicle)の細胞膜上の融合部位とのドッキングに関与するエクソシスト複合体の一部分である。EXOC6B遺伝子は、GGGGCA(G4CA)リピートモチーフを含み、これは、翻訳が開始される読み枠に依存して、センスおよびアンチセンストランスクリプトから、ジペプチドリピートポリ(グリシン-アラニン)[ポリ(GA)]、ポリ(グリシン-グルタミン)[ポリ(GQ)]、ポリ(グリシン-アルギニン)[ポリ(GR)]、ポリ(システイン-プロリン)[ポリ(CP)]、ポリ(プロリン-アラニン)[ポリ(PA)]、およびポリ(ロイシン-プロリン)[ポリ(LP)]を含む、新規RANタンパク質を生成することができる。翻訳がEXOC6Bポリ(グリシン-アラニン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列GGRRREEVVLIPHFWLPEKALWQRDAGASKLKVQSACTEGKN(配列番号15)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(GA)nGGRRREEVVLIPHFWLPEKALWQRDAGASKLKVQSACTEGKN(配列番号16)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたグリシン-アラニンリピートの数である)。翻訳がEXOC6Bポリ(グリシン-グルタミン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列GAGGEKRWY(配列番号17)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(GQnGAGGEKRWY(配列番号18)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたグリシン-グルタミンリピートの数である)。翻訳がEXOC6Bポリ(グリシン-アルギニン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列GQEERRGGINSPFLASRESPLAKRCRC(配列番号19)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(GR)nGQEERRGGINSPFLASRESPLAKRCRC(配列番号20)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたグリシン-アルギニンリピートの数である)。翻訳がEXOC6Bポリ(プロリン-システイン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列PSSPQLITHGSWCINTSASLPTRKEDGVEYL(配列番号22)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(PC)nPSSPQLITHGSWCINTSASLPTRKEDGVEYL(配列番号23)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたプロリン-システインリピートの数である)。翻訳がEXOC6Bポリ(プロリン-アラニン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列PVVLSS(配列番号24)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(PA)nPVVLSS(配列番号25)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたプロリン-アラニンリピートの数である)。翻訳がEXOC6Bポリ(プロリン-リジン)RANを生じる読み枠において開始される場合、さらなるアミノ酸が翻訳される可能性は低く、したがって、全長RANタンパク質は、単純に(PL)n(配列番号26)であろう(nは、組み込まれたプロリン-リジンリピートの数である)。
【0064】
SV2B(シナプス小胞糖タンパク質2B)は、神経細胞および内分泌細胞からの分泌の制御において役割を果たすと考えられている。前者において、それは、ボツリヌス中毒の病態の構成成分であり、C. botulinum神経毒についての受容体として働く。SV2B遺伝子はまた、G4CAリピートモチーフを含み、したがって、上のEXOC6B遺伝子において同じモチーフについて記載されるRANタンパク質を生成することができる。翻訳がSV2Bポリ(グリシン-アルギニン)RANを生じる読み枠において開始される場合、さらなるアミノ酸が翻訳される可能性は低く、したがって、全長RANタンパク質は、単純に、(GR)n(配列番号27)であろう(nは、組み込まれたグリシン-アルギニンリピートの数である)。翻訳がSV2Bポリ(グリシン-アラニン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列GDSNTTSAKSQDTASLQM(配列番号28)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(GA)nGDSNTTSAKSQDTASLQM(配列番号29)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたグリシン-アラニンリピートの数である)。翻訳がSV2Bポリ(グリシン-グルタミン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列GTVTQHLPRVKTQPLCKCRQAMLRCV(配列番号30)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(GQnGTVTQHLPRVKTQPLCKCRQAMLRCV(配列番号31)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたグリシン-グルタミンリピートの数である)。翻訳がSV2Bポリ(プロリン-アラニン)RANを生じる読み枠において開始される場合、さらなるアミノ酸が翻訳される可能性は低く、したがって、全長RANタンパク質は、単純に、(PA)n(配列番号32)であろう(nは、組み込まれたプロリン-アラニンリピートの数である)。翻訳がSV2Bポリ(プロリン-リジン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列PSHNSLTLVSSLTLPLDTIGTDPQQSA(配列番号33)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(PL)nPSHNSLTLVSSLTLPLDTIGTDPQQSA(配列番号34)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたプロリン-リジンリピートの数である)。翻訳がSV2Bポリ(プロリン-システイン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列PHIILもまた翻訳されて、アミノ酸配列(PC)nPHIIL(配列番号35)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたプロリン-システインリピートの数である)。
【0065】
MSMO1遺伝子座によりコードされるタンパク質であるメチルステロールモノオキシゲナーゼ1は、小胞体に局在する酵素であり、ここでそれは、4,4-ジメチルジモステロール(dimethylzymosterol)からメチル基を取り除く触媒経路の一部であり、したがって、ステロイド生合成の一部であるジモステロール(zymosterol)の生合成に寄与する。MSMO1遺伝子はまた、G5Cリピートモチーフを含み、したがって、上のCRNDE遺伝子座におけるものと同じモチーフについて記載されるRANタンパク質を生成することができる。翻訳がMSMO1ポリ(プロリン-アラニン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列PGHSSSSTTIATTPGRSLPM(配列番号36)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(PA)nPGHSSSSTTIATTPGRSLPM(配列番号37)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたプロリン-アラニンリピートの数である)。翻訳がMSMO1ポリProRANを生じる読み枠において開始されるべきである場合、C末端配列GTHRPAQQLQQHLGVLCPCSEVKVLGAELSLDVQSF(配列番号38)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(P)nGTHRPAQQLQQHLGVLCPCSEVKVLGAELSLDVQSF(配列番号39)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたプロリンの数である)。翻訳がMSMO1ポリ(プロリン-アルギニン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列ALIVQHNNCNNTWAFSAHVARSRSWEPNSPLMFNLFKSFPAFISHLQNDDNRI(配列番号40)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(PR)nALIVQHNNCNNTWAFSAHVARSRSWEPNSPLMFNLFKSFPAFISHLQNDDNRI(配列番号41)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたプロリン-アルギニンリピートの数である)。翻訳がMSMO1ポリ(グリシン-アルギニン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列GLDAGLCSSKAQFTPSLNIKILCTGV(配列番号42)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(GR)nGLDAGLCSSKAQFTPSLNIKILCTGV(配列番号43)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたグリシン-アルギニンリピートの数である)。翻訳がMSMO1ポリGlyRANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列LTQVFAALKLSLHHLSTLKYCVLGFNNKTVQM(配列番号44)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(G)nLTQVFAALKLSLHHLSTLKYCVLGFNNKTVQM(配列番号45)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたグリシンの数である)。最後に、翻訳がMSMO1ポリ(グリシン-アラニン)RANを生じる読み枠において開始される場合、さらなるアミノ酸が翻訳される可能性は低く、したがって、全長RANタンパク質は、単純に(GA)n(配列番号46)であろう(nは、組み込まれたグリシン-アラニンリピートの数である)。
【0066】
PPM1L遺伝子座によりコードされるタンパク質であるタンパク質ホスファターゼ1Lは、マグネシウムまたはマンガン要求性ホスファターゼであり、シグナル伝達経路に関与する。当該タンパク質は、細胞傷害性ストレスの後のアポトーシスに関与するタンパク質であるアポトーシスシグナル調節キナーゼ1を下方調節する。このタンパク質は、またERからゴルジ体へのセラミド輸送の調節をも補助する、小胞体膜貫通タンパク質である。PPM1L遺伝子は、GGGGAAリピートモチーフを含む。翻訳がPPM1Lポリ(フェニルアラニン-プロリン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列PLPLPLPFPLPRSLPLPLPSPPLFDRVSLVTQSGVHWHNLGSLQPPPPRFR(配列番号237)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(FP)nLPLPLPFPLPRSLPLPLPSPPLFDRVSLVTQSGVHWHNLGSLQPPPPRFR(配列番号238)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたフェニルアラニン-プロリンのリピート数である)。翻訳がPPM1Lポリ(セリン-プロリン)RANを生じる読み枠において開始されるべきである場合、C末端配列FLSPSPFLSPSPFPFPFPFPFPFPVPFPFPSPPLPFLTESHWSPSLECTGTILAHCNLRLPGSGDC(配列番号239)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(SP)nFLSPSPFLSPSPFPFPFPFPFPFPVPFPFPSPPLPFLTESHWSPSLECTGTILAHCNLRLPGSGDC(配列番号240)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたセリン-プロリンリピートの数である)。翻訳がPPM1Lポリ(ロイシン-プロリン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列CPFPLPLSFPLPLSFPLPLSPSPSPSLSPSPFPSPSPPLPSPF(配列番号241)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(LP)nCPFPLPLSFPLPLSFPLPLSPSPSPSLSPSPFPSPSPPLPSPF(配列番号242)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたロイシン-プロリンリピートの数である)。翻訳がPPML1ポリ(グリシン-グルタミン酸)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列GDREGKKVSSAEYISRLRSHHSKHYCSSDMLKQNSQTLLSLVTSKSK(配列番号243)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(GE)nGDREGKKVSSAEYISRLRSHHSKHYCSSDMLKQNSQTLLSLVTSKSK(配列番号244)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたグリシン-グルタミン酸リピートの数である)。翻訳がPPML1ポリ(グリシン-リジン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列TGRERKFQALNIFQD(配列番号245)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(GK)nTGRERKFQALNIFQD(配列番号246)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたグリシン-リジンリピートの数である)。最後に、翻訳がPPML1ポリ(グリシン-アルギニン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列GQGGKESFKR(配列番号247)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(GR)nGQGGKESFKR(配列番号248)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたグリシン-アルギニンリピートの数である)。
【0067】
ADARB2(RNA特異的アデノシンデアミナーゼ(Adenosine Deaminase RNA Specific)B2)は、RNA編集酵素のうちの二本鎖RNAアデノシンデアミナーゼファミリーのメンバーをコードし、RNA編集において調節的役割を果たし得るが、編集活性そのものは欠いていると考えられ、他のADAR酵素の結合を防止し、これらの酵素の効率を低下させる。ADARB2遺伝子は、TTTACTCCCCTCTCCCTCCCGGTG(配列番号21)リピートモチーフを含む。いくつかの態様において、ADARB2遺伝子は、ポリ(GRQRGVNT)(配列番号266)リピートおよび/またはポリ(GSKHREAE)(配列番号267)リピートを含むRANタンパク質をコードする。翻訳がADARB2ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列PLPPGAYSPLPPGVYSPLLPGVYSLCPGVYSPASWPSTFCRSCCFHTFCPMGDGLCSVGP(配列番号249)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(FTPLSLPV)nPLPPGAYSPLPPGVYSPLLPGVYSLCPGVYSPASWPSTFCRSCCFHTFCPMGDGLCSVGP(配列番号250)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたFTPLSLPV(配列番号268)リピートの数である)。翻訳がADARB2ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列AGLAVFTRSAPWVMDCVLWGPEITQATEQTFSPQEVLAASSSLPASVPALCPQPPSPTAPAASPRTLGKCIPSLGPGTGPVSHVAALDPPSPVLVPHAGQASGAPVCGPPQLVAQHQACNQLLVNIGPVAFSDTNKSEGSW(配列番号251)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(LLPSPSRC)nAGLAVFTRSAPWVMDCVLWGPEITQATEQTFSPQEVLAASSSLPASVPALCPQPPSPTAPAASPRTLGKCIPSLGPGTGPVSHVAALDPPSPVLVPHAGQASGAPVCGPPQLVAQHQACNQLLVNIGPVAFSDTNKSEGSW(配列番号252)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたLLPSPSRC(配列番号269)リピートの数である)。翻訳がADARB2ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列CLLPSPSRCLLPSASRCLLPSPSRCLLPSSSRCLLPSASRCLLPSASRCLLPVSWCLLPCFLAIYLLPVLLFSHVLPHG(配列番号253)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(YSPLPPGV)nCLLPSPSRCLLPSASRCLLPSPSRCLLPSSSRCLLPSASRCLLPSASRCLLPVSWCLLPCFLAIYLLPVLLFSHVLPHG(配列番号254)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたYSPLPPGV(配列番号270)リピートの数である)。翻訳がADARB2ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)RANを生じる読み枠において開始される場合、さらなるアミノ酸が翻訳される可能性は低く、したがって、全長RANタンパク質は、単純に(HREGEGSK)n(配列番号255)であろう(nは、組み込まれたHREGEGSK(配列番号271)リピートの数である)。翻訳がADARB2ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列GKHRRRKCRHVRSAPTPMGQRWGCSAPASQLVGVLQQANHSPSERLGTLPPHLGHGWMQKESRFATVLHSHLCW(配列番号256)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(TGRERGVN)nGKHRRRKCRHVRSAPTPMGQRWGCSAPASQLVGVLQQANHSPSERLGTLPPHLGHGWMQKESRFATVLHSHLCW(配列番号257)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたTGRERGVN(配列番号272)リピートの数である)。翻訳がARARB2ポリ(PGGRGE)(配列番号258)RANを生じる読み枠において開始される場合、さらなるアミノ酸が翻訳される可能性は低く、したがって、全長RANタンパク質は、単純に(PGGRGE)n(配列番号258)であろう(nは、組み込まれたPGGRGE(配列番号273)リピートの数である)。
【0068】
GREB1(growth regulating estrogen receptor binding 1)は、エストロゲン応答性遺伝子であって、エストロゲン受容体により調節される経路における初期応答遺伝子である。それは、ホルモン応答性の組織およびがんにおいて重要な役割を果たすと考えられ、それは、GREB1タンパク質をコードする。GREB1遺伝子は、GGGGCAリピートモチーフを含む。翻訳がGREB1ポリ(グリシン-アルギニン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列DRMPSVGEGAEG(配列番号128)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(GR)nDRMPSVGEGAEG(配列番号136)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたグリシン-アルギニンリピートの数である)。翻訳がGREB1ポリ(グリシン-アラニン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列GTGCLQWVKVQKGRSEEVGMEEGEEGGGEELRK(配列番号182)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(GA)nGTGCLQWVKVQKGRSEEVGMEEGEEGGGEELRK(配列番号185)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたグリシン-アラニンリピートの数である)。翻訳がGREB1ポリ(グリシン-グルタミン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列DAFSG(配列番号186)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(GQ)nDAFSG(配列番号200)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたグリシン-グルタミンリピートの数である)。翻訳がGREB1ポリ(プロリン-アラニン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列WARGSLSSSRSPLTSLPWGLPQTQVSPRHTLHLCGASPDGP(配列番号211)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(PA)nWARGSLSSSRSPLTSLPWGLPQTQVSPRHTLHLCGASPDGP(配列番号274)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたプロリン-アラニンリピートの数である)。翻訳がGREB1ポリ(ロイシン-プロリン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列GHVAHSLPPGLL(配列番号275)もまた翻訳されて、が高いアミノ酸配列(LP)nGHVAHSLPPGLL(配列番号276)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性(nは、組み込まれたロイシン-プロリンリピートの数である)。翻訳がGREB1ポリ(システイン-プロリン)RANを生じる読み枠において開始される場合、C末端配列CLGTWLTLFLQVSFNITSLGTPTDSGLPATHTSPLWCFSRWSLTSHVSNICPSCWAGYS(配列番号277)もまた翻訳されて、アミノ酸配列(CP)nCLGTWLTLFLQVSFNITSLGTPTDSGLPATHTSPLWCFSRWSLTSHVSNICPSCWAGYS(配列番号278)を有する全長RANタンパク質を生じる可能性が高い(nは、組み込まれたシステイン-プロリンリピートの数である)。
【0069】
一般に、RANタンパク質は、ポリアミノ酸リピートと称される単一のアミノ酸、ジ-アミノ酸、トリ-アミノ酸、または4-アミノ酸(例えば、テトラ-アミノ酸)の伸長リピートを含む。例えば、「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAA」(ポリ-アラニン)(配列番号47)、「LLLLLLLLLLLLLLLLLL」(ポリ-ロイシン)(配列番号48)、「SSSSSSSSSSSSSSSSSSSS」(ポリ-セリン)(配列番号49)、または「CCCCCCCCCCCCCCCCCCCC」(ポリ-システイン)(配列番号50)は、各々20アミノ酸残基の長さであるポリアミノ酸リピートである。ジ-アミノ酸RANタンパク質の例として、GPGPGPGPGPGPGPGPGPGP(ポリ-GP)(配列番号51)、GAGAGAGAGAGAGAGAGAGA(ポリ-GA)(配列番号52)、GRGRGRGRGRGRGRGRGRGR(ポリ-GR)(配列番号53)、PAPAPAPAPAPAPAPAPAPA(ポリ-PA)(配列番号54)およびPRPRPRPRPRPRPRPRPRPR(ポリ-PR)(配列番号55)が挙げられる。テトラ-アミノ酸リピートの例として、LPACLPACLPAC(例えば、ポリ-LPAC)(配列番号56)およびQAGRQAGRQAGR(例えば、ポリ-QAGR)(配列番号57)が挙げられる。RANタンパク質は、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、または少なくとも200アミノ酸残基の長さのポリアミノ酸リピートを有していてもよい。いくつかの態様において、RANタンパク質は、200アミノ酸残基より長い(例えば、500、1000、5000、10,000など)長さのポリアミノ酸リピートを有する。
【0070】
一般に、RANタンパク質は、DNAの異常なリピート伸長(例えば、TCTリピート、ヘキサヌクレオチドリピートなど)から翻訳される。本開示は、部分的に、1つ以上(例えば、2、3、4、5またはそれより多く)のRANタンパク質、例えばポリ(プロリン-アルギニン)[ポリ(PR)];ポリ(グリシン-アルギニン)[ポリ(GR)];ポリ(セリン)[ポリSer];ポリ(システイン-プロリン)[ポリ(CP)];ポリ(グリシン-プロリン)[(ポリ(GP)];ポリ(グリシン)[ポリ(G)];ポリ(アラニン)[ポリAla];ポリ(グリシン-アラニン)[ポリ(GA)];ポリ(グリシン-アスパラギン酸)[ポリ(GD)];ポリ(グリシン-グルタミン酸)[ポリ(GE)];ポリ(グリシン-グルタミン)[ポリ(GQ)];ポリ(グリシン-スレオニン)[ポリ(GT)];ポリ(ロイシン)[ポリLeu];ポリ(ロイシン-プロリン)[ポリ(LP)];ポリ(ロイシン-プロリン-アラニン-システイン)[ポリ(LPAC)](配列番号260);ポリ(ロイシン-セリン)[ポリ(LS)];ポリ(プロリン)[ポリ(P)];ポリ(プロリン-アラニン)[ポリ(PA)];ポリ(グルタミン-アラニン-グリシン-アルギニン)[ポリ(QAGR)](配列番号261);ポリ(アルギニン-グルタミン酸)[ポリ(RE)];ポリ(セリン-プロリン)[ポリ(SP)]、ポリ(バリン-プロリン)[ポリ(VP)]、ポリ(フェニルアラニン-プロリン)[ポリ(FP)]、ポリ(グリシン-リジン)[ポリ(GK)]、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、および/またはポリ(PGGRGE)(配列番号258)の発現により特徴づけられるRANタンパク質関連疾患を有する特定の対象におけるマイクロサテライトリピートの同定に基づく。いくつかの態様において、RANタンパク質関連疾患を有するかまたはこれを有することが疑われる対象の疾患の状態は、対象において(例えば、対象のゲノムにおいて、または対象の遺伝子において)存在する(例えば、検出される)マイクロサテライトリピートの数および/または型により、分類される。いくつかの態様において、10より少ないリピート配列を有する対象は、RANタンパク質翻訳により特徴づけられるRANタンパク質関連疾患の徴候または症状を示さない。いくつかの態様において、10~40のリピートを有する対象は、RANタンパク質翻訳により特徴づけられるRANタンパク質関連疾患の1つ以上の徴候または症状を示す場合も、示さない場合もある。いくつかの態様において、40より多くのトリヌクレオチドリピートを有する対象は、RANタンパク質翻訳により特徴づけられるRANタンパク質関連疾患の1つ以上の徴候または症状を示す。特定の場合において、対象は、大きな(>100)数のリピートにより特徴づけられるRANタンパク質関連疾患を有するものとして同定される。RANタンパク質をコードするマイクロサテライトリピート配列は、一般に公知である。いくつかの態様において、RANタンパク質関連疾患は、アルツハイマー病である。
【0071】
いくつかの態様において、RANタンパク質関連疾患を有するか、またはこれを有することが疑われる対象は、ポリ(PR)RANタンパク質をコードする1つ以上のマイクロサテライトリピート配列を有する。ポリ(PR)タンパク質をコードするマイクロサテライトリピート配列の例として、CCTCGT(配列番号58)、CCCCGT(配列番号59)、CCACGT(配列番号60)、CCGCGT(配列番号61)、CCTCGC(配列番号62)、CCCCGC(配列番号63)、CCACGC(配列番号64)、CCGCGC(配列番号65)、CCTCGA(配列番号66)、CCCCGA(配列番号67)、CCACGA(配列番号68)、CCGCGA(配列番号69)、CCTCGG(配列番号70)、CCCCGG(配列番号71)、CCACGG(配列番号72)、CCGCGG(配列番号73)、CCTAGA(配列番号74)、CCCAGA(配列番号75)、CCAAGA(配列番号76)、CCGAGA(配列番号77)、CCTAGG(配列番号78)、CCCAGG(配列番号79)、CCAAGG(配列番号80)およびCCGAGG(配列番号81)が挙げられる。
【0072】
いくつかの態様において、RANタンパク質関連疾患を有するか、またはこれを有することが疑われる対象は、ポリ(GR)RANタンパク質をコードする1つ以上のマイクロサテライトリピート配列を有する。ポリ(GR)タンパク質をコードするマイクロサテライトリピート配列の例として、GGTCGT(配列番号82)、GGCCGT(配列番号83)、GGACGT(配列番号84)、GGGCGT(配列番号85)、GGTCGC(配列番号86)、GGCCGC(配列番号87)、GGACGC(配列番号88)、GGGCGC(配列番号89)、GGTCGA(配列番号90)、GGCCGA(配列番号91)、GGACGA(配列番号92)、GGGCGA(配列番号93)、GGTCGG(配列番号94)、GGCCGG(配列番号95)、GGACGG(配列番号96)、GGGCGG(配列番号97)、GGTAGA(配列番号98)、GGCAGA(配列番号99)、GGAAGA(配列番号100)、GGGAGA(配列番号101)、GGTAGG(配列番号102)、GGCAGG(配列番号103)、GGAAGG(配列番号104)およびGGGAGG(配列番号105)が挙げられる。
【0073】
上のRANタンパク質ポリ(PR)およびポリ(GR)を生じることができる可能なリピートモチーフの一覧の後で、当業者は、他のRANタンパク質、例えば、ポリ(セリン)[ポリSer];ポリ(システイン-プロリン)[ポリ(CP)];ポリ(グリシン-プロリン)[(ポリ(GP)];ポリ(グリシン)[ポリ(G)];ポリ(アラニン)[ポリAla];ポリ(グリシン-アラニン)[ポリ(GA)];ポリ(グリシン-アスパラギン酸)[ポリ(GD)];ポリ(グリシン-グルタミン酸)[ポリ(GE)];ポリ(グリシン-グルタミン)[ポリ(GQ)];ポリ(グリシン-スレオニン)[ポリ(GT)];ポリ(ロイシン)[ポリLeu];ポリ(ロイシン-プロリン)[ポリ(LP)];ポリ(ロイシン-プロリン-アラニン-システイン)[ポリ(LPAC)](配列番号260);ポリ(ロイシン-セリン)[ポリ(LS)];ポリ(プロリン)[ポリ(P)];ポリ(プロリン-アラニン)[ポリ(PA)];ポリ(グルタミン-アラニン-グリシン-アルギニン)[ポリ(QAGR)](配列番号261);ポリ(アルギニン-グルタミン酸)[ポリ(RE)];ポリ(セリン-プロリン)[ポリ(SP)]、ポリ(バリン-プロリン)[ポリ(VP)]、ポリ(フェニルアラニン-プロリン)[ポリ(FP)]、ポリ(グリシン-リジン)[ポリ(GK)]、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、ポリ(PGGRGE)(配列番号258)、ポリ(GRQRGVNT)(配列番号266)、および/またはポリ(GSKHREAE)(配列番号267)を生じ得る可能なヘキサヌクレオチドリピートを誘導する方法を理解するであろう。
【0074】
いくつかの態様において、RANタンパク質関連疾患を有するか、またはこれを有することが疑われる対象は、ポリSerRANタンパク質をコードする1つ以上のマイクロサテライトリピート配列を有する。ポリSerタンパク質をコードするマイクロサテライトリピート配列の例として、TCT、TCC、TCA、TCG、AGTおよびAGCが挙げられる。
【0075】
いくつかの側面において、本開示は、RANタンパク質(例えば、ポリ(プロリン-アルギニン)[ポリ(PR)];ポリ(グリシン-アルギニン)[ポリ(GR)];ポリ(セリン)[ポリSer];ポリ(システイン-プロリン)[ポリ(CP)];ポリ(グリシン-プロリン)[(ポリ(GP)];ポリ(グリシン)[ポリ(G)];ポリ(アラニン)[ポリAla];ポリ(グリシン-アラニン)[ポリ(GA)];ポリ(グリシン-アスパラギン酸)[ポリ(GD)];ポリ(グリシン-グルタミン酸)[ポリ(GE)];ポリ(グリシン-グルタミン)[ポリ(GQ)];ポリ(グリシン-スレオニン)[ポリ(GT)];ポリ(ロイシン)[ポリLeu];ポリ(ロイシン-プロリン)[ポリ(LP)];ポリ(ロイシン-プロリン-アラニン-システイン)[ポリ(LPAC)](配列番号260);ポリ(ロイシン-セリン)[ポリ(LS)];ポリ(プロリン)[ポリ(P)];ポリ(プロリン-アラニン)[ポリ(PA)];ポリ(グルタミン-アラニン-グリシン-アルギニン)[ポリ(QAGR)](配列番号261);ポリ(アルギニン-グルタミン酸)[ポリ(RE)];ポリ(セリン-プロリン)[ポリ(SP)]、ポリ(バリン-プロリン)[ポリ(VP)]、ポリ(フェニルアラニン-プロリン)[ポリ(FP)]、ポリ(グリシン-リジン)[ポリ(GK)]、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、ポリ(PGGRGE)(配列番号258)、ポリ(GRQRGVNT)(配列番号266)、および/またはポリ(GSKHREAE)(配列番号267)の凝集パターンが、長さ依存的であるという知見に関する。例えば、>20、>48、または>80の残基長であるポリアミノ酸リピートを有するRANタンパク質は、対象の脳において別々に凝集する。一般に、異なる長さを有するRANタンパク質の差次的な凝集特性は、生体試料においてRANタンパク質を検出するために用いることができる。より長いRANタンパク質は、血液、血清またはCSFなどの生体試料において、より高いレベルで見出される。いくつかの態様において、>40、>50、>60、>70または>80のアミノ酸残基の長さのポリアミノ酸リピートを有するRANタンパク質が、生体試料において検出可能である。
【0076】
RANタンパク質を検出する方法
本開示は、部分的に、特定の生体試料処理方法(例えば、抗体ベースの捕獲、ハイブリダイゼーションベースのアッセイ、dCas9ベースの濃縮、またはこれらの組み合わせ)により、生体試料中の1つ以上のRANタンパク質の、再現性のある検出が可能となるという知見に基づく。本開示により記載される方法のいくつかの態様において、試料(例えば、生体試料)は、試料中の1つ以上のRANタンパク質を単離するために、抗体ベースの捕獲プロセスにより処置される。典型的には、抗体ベースの捕獲方法は、試料を、1つ以上(例えば、2、3、4、5またはそれより多く)の抗RANタンパク質抗体と接触させることを含む。いくつかの態様において、1つ以上の抗RAN抗体は、固体支持体(例えば、スカフォールド、樹脂ビーズなど)に抱合している。いくつかの態様において、抗体ベースの捕獲方法は、抗RAN抗体が結合しているRANタンパク質を、例えば、アフィニティークロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーによる方法によりRANタンパク質を溶離させることにより、物理的に分離することおよび/または単離することを含む。
【0077】
生体試料は、抗RAN抗体と接触させられる前に、抗原賦活化(antigen retrieval)の手順に供されてもよい。本明細書において用いられる場合、「抗原賦活化」(また、エピトープ検索、または抗原アンマスキングとしても言及される)とは、生体試料(例えば、血液、血清、CSFなど)を、当該プロセスより以前には検出剤(例えば、抗体、アプタマー、および他の結合分子)に対してアクセス不可能であった抗原(例えば、エピトープ)を暴露する条件下において処置するプロセスを指す。一般に、抗原賦活化方法は、これらに限定されないが、加熱、圧力処置、酵素による消化、還元剤による処置、酸化剤による処置、架橋剤による処置、変性剤(例えば、洗剤、エタノール、酸)による処置、またはpHの変化、または前述のものの任意の組み合わせを含むステップを含む。いくつかの抗原賦活化方法は、当該分野において公知であり、これらに限定されないが、プロテアーゼ誘導性エピトープ検出(PIER)および熱誘導性エピトープ検出(HIER)を含む。いくつかの態様において、抗原賦活化手順は、バックグラウンドを軽減し、検出技術(例えば、免疫組織化学(IHC)、イムノブロット(ウェスタンブロットなど)、ELISAなど)の感度を増大させる。
【0078】
生体試料におけるRANタンパク質の検出は、ウェスタンブロットにより行われてもよい。ウェスタンブロットは、一般に、タンパク質またはペプチドの存在を同定するために、検出剤またはプローブの使用を用いる。いくつかの態様において、1つ以上のRANタンパク質の検出は、イムノブロット(例えば、ドットブロット、2-Dゲル電気泳動、ウェスタンブロットなど)、免疫組織化学(IHC)、ELISA(例えば、RCAベースのELISAまたはrtPCRベースのELISA)、表面プラズモン共鳴バイオレイヤーインターフェロメトリーなどのラベルフリーイムノアッセイ、免疫定量PCR、GC-MS、LC-MS、MALDI-TOF-MSなどの質量分析、ビーズベースのイムノアッセイ、免疫沈降、免疫染色、または免疫電気泳動により行われる。いくつかの態様において、検出剤は、抗体である。いくつかの態様において、抗体は、抗RANタンパク質抗体、例えば抗ポリSer、抗ポリ(GR)、抗ポリ(PR)、抗ポリ(CP)、抗ポリ(GP)、抗ポリ(G)、抗ポリ(A)、抗ポリ(GA)、抗ポリ(GD)、抗ポリ(GE)、抗ポリ(GQ)、抗ポリ(GT)、抗ポリ(L)、抗ポリ(LP)、抗ポリ(LPAC)(配列番号260)、抗ポリ(LS)、抗ポリ(P)、抗ポリ(PA)、抗ポリ(QAGR)(配列番号261)、抗ポリ(RE)、抗ポリ(SP)、抗ポリ(VP)、抗ポリ(FP)、抗ポリ(GK)、抗ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、抗ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、抗ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、抗ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、抗ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、抗ポリ(PGGRGE)(配列番号258)、抗ポリ(GRQRGVNT)(配列番号266)、および/または抗ポリ(GSKHREAE)(配列番号267)(またα-ポリSer、α-ポリ(PR)、α-ポリ(GR)などとしても言及される)である。いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体は、RANタンパク質のアミノ酸リピート領域(例えば、PRPRPRPRPR(配列番号106)、GRGRGRGRGR(配列番号107)、SSSSSSSSS(配列番号108)など)を標的とする(例えば、それに特異的に結合する)。いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体は、リピートされたアミノ酸の特徴的な読み枠に特異的なC末端が翻訳された3’におけるアミノ酸を含むエピトープを標的とする(例えば、それに特異的に結合する)。いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体は、アミノ酸リピート領域のC末端と、リピートされたアミノ酸の特徴的な読み枠に特異的なC末端が翻訳された3’のN末端とを架橋するアミノ酸を含む、エピトープを標的とする(例えば、それに特異的に結合する)。
【0079】
いくつかの態様において、抗RAN抗体は、RANタンパク質の、ポリアミノ酸リピートを含まない任意の部分、例えばRANタンパク質のC末端(例えば、ポリ(GR)、ポリ(PR)、ポリSer、ポリ(CP)、ポリ(GP)、ポリ(G)、ポリ(A)、ポリ(GA)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC)(配列番号260)、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(PA)、ポリ(QAGR)(配列番号261)、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、ポリ(GK)、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、ポリ(PGGRGE)(配列番号258)タンパク質)、ポリ(GRQRGVNT)(配列番号266)、および/またはポリ(GSKHREAE)(配列番号267)のC末端)を標的とする(例えば、それに特異的に結合する)。RANタンパク質ポリアミノ酸リピートを標的とする抗RAN抗体の例は、例えば、国際出願公開番号WO2014/159247において開示され、その全内容は、本明細書において参考として援用される。RANタンパク質のC末端を標的とする抗RAN抗体の例は、例えば、米国公開番号2013/0115603において開示され、その全内容は、本明細書において参考として援用される。いくつかの態様において、抗RAN抗体のセット(または組み合わせ)(例えば、抗ポリSer、抗ポリ(GR)、抗ポリ(PR)、抗ポリ(CP)、抗ポリ(GP)、抗ポリ(G)、抗ポリ(A)、抗ポリ(GA)、抗ポリ(GD)、抗ポリ(GE)、抗ポリ(GQ)、抗ポリ(GT)、抗ポリ(L)、抗ポリ(LP)、抗ポリ(LPAC)(配列番号260)、抗ポリ(LS)、抗ポリ(P)、抗ポリ(PA)、抗ポリ(QAGR)(配列番号261)、抗ポリ(RE)、抗ポリ(SP)、抗ポリ(VP)、抗ポリ(FP)、抗ポリ(GK)、抗ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、抗ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、抗ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、抗ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、抗ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、抗ポリ(PGGRGE)(配列番号258)、抗ポリ(GRQRGVNT)(配列番号266)、および/または抗ポリ(GSKHREAE)(配列番号267)から選択される2つ以上の抗RAN抗体の組み合わせ)が、生体試料において1つ以上のRANタンパク質を検出するために用いられる。
【0080】
抗RAN抗体は、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。典型的には、ポリクローナル抗体は、マウス、ウサギまたはヤギなどの好適な哺乳動物の接種により生成される。より大きな哺乳動物は、回収することができる血清の量がより多いことから、しばしば好ましい。抗原は、哺乳動物中に注射される。これが、Bリンパ球を、抗原に対して特異的なIgG免疫グロブリンを生成するように誘導する。このポリクローナルIgGは、哺乳動物の血清から精製される。モノクローナル抗体は、一般に、単一の細胞株(例えば、ハイブリドーマ細胞株)により生成される。いくつかの態様において、抗RAN抗体は、精製される(例えば、血清から単離される)。いくつかの態様において、抗原は、12~20アミノ酸である。リピートモチーフに対する抗体について、抗原は、リピート配列である。RANタンパク質のC末端配列に対する抗体について、抗原は、C末端特異的な配列である。いくつかの態様において、抗原は、C末端配列の部分、例えば、3~5または5~10、またはそれより長いアミノ酸長、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40または50アミノ酸長である(例えば、本願において記載されるC末端配列のうちの1つからの)、C末端配列のフラグメントである。
【0081】
いくつかの態様において、本開示は、抗体を生成する方法を提供し、該方法は、対象に、RANタンパク質リピート配列、例えば抗ポリSer、抗ポリ(GR)、抗ポリ(PR)、抗ポリ(CP)、抗ポリ(GP)、抗ポリ(G)、抗ポリ(A)、抗ポリ(GA)、抗ポリ(GD)、抗ポリ(GE)、抗ポリ(GQ)、抗ポリ(GT)、抗ポリ(L)、抗ポリ(LP)、抗ポリ(LPAC)(配列番号260)、抗ポリ(LS)、抗ポリ(P)、抗ポリ(PA)、抗ポリ(QAGR)(配列番号261)、抗ポリ(RE)、抗ポリ(SP)、抗ポリ(VP)、抗ポリ(FP)、抗ポリ(GK)、抗ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、抗ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、抗ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、抗ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、抗ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、抗ポリ(PGGRGE)(配列番号258)、抗ポリ(GRQRGVNT)(配列番号266)、および/または抗ポリ(GSKHREAE)(配列番号267)を含むペプチド抗原を投与することを含む。いくつかの態様において、対象は、哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、げっ歯類(例えば、ラット、ハムスター、モルモットなど)である。いくつかの態様において、対象は、ヒトである(例えば、対象に、ペプチド抗原、例えばRANタンパク質に対する宿主抗体応答を誘発する目的のために、ペプチド抗原を注射する)。いくつかの態様において、抗体は、細胞(例えば、B細胞、ハイブリドーマ細胞など)において、1つ以上のRANタンパク質またはRANタンパク質リピート配列を発現させることにより、生成される。
【0082】
抗RAN抗体を得るために、多数の方法を用いることができる。例えば、抗体は、組み換えDNA方法を用いて生成することができる。モノクローナル抗体はまた、既知の方法に従って、ハイブリドーマの作製によって生成してもよい(例えば、Kohler and Milstein (1975) Nature, 256: 495-499を参照)。この様式において形成されたハイブリドーマを、次いで、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA;例えば、RCAベースのELISAまたはrtPCRベースのELISA)および表面プラズモン共鳴(例えば、OCTETまたはBIACORE)分析などの標準的な方法を用いてスクリーニングして、特定された抗原に特異的に結合する抗体を生成する1つ以上のハイブリドーマを同定する。特定された抗原(例えば、RANタンパク質)の任意の形態、例えば組み換え抗原、天然に存在する形態、その任意のバリアントまたはフラグメントを、免疫原として用いることができる。抗体を作製する一つの例示的な方法として、抗体またはそのフラグメント(例えばscFv)を発現するタンパク質発現ライブラリー、例えばファージまたはリボソームディスプレイライブラリーをスクリーニングすることが挙げられる。ファージディスプレイは、例えば、Ladnerら、米国特許第5,223,409号;Smith (1985) Science 228:1315-1317;Clackson et al. (1991) Nature, 352: 624-628;Marks et al. (1991) J. Mol. Biol., 222: 581-597;WO92/18619;WO91/17271;WO92/20791;WO92/15679;WO93/01288;WO92/01047;WO92/09690;ならびにWO90/02809において記載される。
【0083】
ディスプレイライブラリーの使用に加えて、特定された抗原(例えば、1つ以上のRANタンパク質)を、非ヒト動物、例えばげっ歯類、例えばマウス、ハムスターまたはラットを免疫するために用いてもよい。一態様において、非ヒト動物は、マウスである。
【0084】
別の態様において、モノクローナル抗体は、非ヒト動物から得て、次いで修飾、例えば当該分野において公知の組み換えDNA技術を用いてキメラ化する。キメラ抗体を作製するための多様なアプローチが記載されている。例えば、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81:6851, 1985;Takeda et al., Nature 314:452, 1985;Cabillyら、米国特許第4,816,567号;Bossら、米国特許第4,816,397号;Tanaguchiら、欧州特許公開EP171496;欧州特許公開0173494、英国特許GB2177096B参照。
【0085】
抗体はまた、当該分野において公知の方法により、ヒト化することができる。例えば、所望される結合特異性を有するモノクローナル抗体を、商業的にヒト化することができる(Scotgene, Scotland;ならびにOxford Molecular, Palo Alto, Calif.)。トランスジェニック動物において発現するもののような完全ヒト化抗体は、本発明の範囲内である(例えば、Green et al. (1994) Nature Genetics 7, 13;ならびに米国特許第5,545,806号および同第5,569,825号を参照)。
【0086】
さらなる抗体生成技術については、Antibodies: A Laboratory Manual、第2版、Edward A. Greenfield編、Dana-Farber Cancer Institute(C)(2014年)を参照。本開示は、必ずしも、任意の特定のソース、生成の方法、または抗体の他の特定の特徴に限定されない。
【0087】
いくつかの態様において、生体試料において1つ以上のRANタンパク質を検出する方法は、RANタンパク質の発現、翻訳および/または蓄積と関連する疾患の進行をモニタリングするために有用である。いくつかの態様において、RANタンパク質に関連する疾患は、以下からなる群より選択される:筋萎縮性側索硬化症(ALS)、または前頭側頭葉型認知症;1型筋強直性ジストロフィー(DM1)および2型筋強直性ジストロフィー(DM2);1、2、3、6、7、8、10、12、17、31および36型脊髄小脳変性症;球脊髄性筋萎縮症;歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA);ハンチントン病(HD);脆弱X振戦失調症候群(FXTAS);フックス内皮角膜ジストロフィー(FECD);ハンチントン病類症2型症候群(HDL2);脆弱X症候群(FXS);7pl l.2葉酸感受性脆弱部位FRA7Aに関する障害;葉酸感受性脆弱部位2ql 1 FRA2Aに関する障害;ならびに脆弱XE症候群(FRAXE)。特定の態様において、RANタンパク質に関連する神経学的疾患は、アルツハイマー病(AD)である。例えば、いくつかの態様において、生体試料を、対象から、治療レジメンの開始の前および後(例えば、1週間、2週間、1か月、6か月、または1年後)に得て、試料中の検出されたRANタンパク質の量を比較する。いくつかの態様において、処置後の試料におけるRANタンパク質のレベル(例えば量)が、処置前のRANタンパク質のレベル(例えば量)と比較して低下している場合、治療レジメンは成功している。いくつかの態様において、対象の生体試料(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれより多くの試料)におけるRANタンパク質のレベルを、治療レジメンの間、持続的にモニタリングする(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回またはそれより多くの別々の機会において測定する)。
【0088】
いくつかの態様において、検出剤は、アプタマー(例えば、RNAアプタマー、DNAアプタマー、ペプチドアプタマー)である。いくつかの態様において、アプタマーは、RANタンパク質(例えば、ポリSer、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(CP)、ポリ(GP)、ポリ(G)、ポリ(A)、ポリ(GA)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC)(配列番号260)、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(PA)、ポリ(QAGR)(配列番号261)、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、ポリ(GK)、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、ポリ(PGGRGE)(配列番号258)、ポリ(GRQRGVNT)(配列番号266)、および/またはポリ(GSKHREAE)(配列番号267))に対して特異的に結合する。
【0089】
本開示の側面は、生体試料(例えば、対象から得られた生体試料)中のRANタンパク質またはRANタンパク質をコードするマイクロサテライトリピート配列の存在を同定するための、核酸ハイブリダイゼーションベースの方法に関する。本開示は、部分的に、検出可能な核酸プローブ(例えば、フルオロフォア抱合型DNAプローブ)によりRANタンパク質をコードする核酸配列を検出するための方法に基づく。一般に、「検出可能な核酸プローブ」とは、標的配列に特異的に結合し(例えば、これにハイブリダイズし)、検出可能な部分、例えば蛍光部分、放射活性部分、化学発光部分、電気発光部分、ビオチン、ペプチドタグ(例えば、ポリ-Hisタグ、FLAG-タグなど)などを含む核酸配列を指す。いくつかの態様において、検出可能な核酸プローブは、1つ以上のRANタンパク質をコードする核酸配列に対して相補性の領域を含む(例えば、これに対して相補的であり、これにハイブリダイズすることができる核酸配列)。相補性の領域は、約2ヌクレオチド長~約100ヌクレオチド長の範囲であってよい(例えば、2~100(境界を含む)の任意の数のヌクレオチド)。いくつかの態様において、核酸プローブは、表1、2および3のうちのいずれか1つにおいて記載される配列を有する相補性の領域、または表1、2および3のうちのいずれか1つにおいて記載される配列の複数のリピートを含むリピート配列を有する相補性の領域を含む。いくつかの態様において、検出可能な核酸プローブは、DNAプローブである。いくつかの態様において、DNAプローブは、フルオロフォアと抱合している。
【0090】
生体試料はまた、複数の検出可能な核酸プローブと接触させてもよい。複数の核酸プローブの数は、多様である。いくつかの態様において、複数の核酸プローブは、2~100(2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100)の核酸プローブを含む。いくつかの態様において、複数とは、100より多くのプローブを含む。核酸プローブは、同じまたは異なる配列であってよい。いくつかの態様において、複数の検出可能な核酸プローブは、ポリ(GR)RANタンパク質(例えば、表1において記載されるリピート配列)をコードする核酸配列にハイブリダイズするプローブを含む。いくつかの態様において、複数の検出可能な核酸プローブは、ポリ(PR)RANタンパク質(例えば、表2において記載されるリピート配列)をコードする核酸配列にハイブリダイズするプローブを含む。いくつかの態様において、複数の検出可能な核酸プローブは、ポリSerRANタンパク質(例えば、表3において記載されるリピート配列)をコードする核酸配列にハイブリダイズするプローブを含む。いくつかの態様において、複数の検出可能な核酸プローブは、ポリ(プロリン-アルギニン)[ポリ(PR)];ポリ(グリシン-アルギニン)[ポリ(GR)];ポリ(セリン)[ポリSer];ポリ(システイン-プロリン)[ポリ(CP)];ポリ(グリシン-プロリン)[(ポリ(GP)];ポリ(グリシン)[ポリ(G)];ポリ(アラニン)[ポリAla];ポリ(グリシン-アラニン)[ポリ(GA)];ポリ(グリシン-アスパラギン酸)[ポリ(GD)];ポリ(グリシン-グルタミン酸)[ポリ(GE)];ポリ(グリシン-グルタミン)[ポリ(GQ)];ポリ(グリシン-スレオニン)[ポリ(GT)];ポリ(ロイシン)[ポリLeu];ポリ(ロイシン-プロリン)[ポリ(LP)];ポリ(ロイシン-プロリン-アラニン-システイン)[ポリ(LPAC)](配列番号260);ポリ(ロイシン-セリン)[ポリ(LS)];ポリ(プロリン)[ポリ(P)];ポリ(プロリン-アラニン)[ポリ(PA)];ポリ(グルタミン-アラニン-グリシン-アルギニン)[ポリ(QAGR)](配列番号261);ポリ(アルギニン-グルタミン酸)[ポリ(RE)];ポリ(セリン-プロリン)[ポリ(SP)]、ポリ(バリン-プロリン)[ポリ(VP)]、ポリ(フェニルアラニン-プロリン)[ポリ(FP)]、ポリ(グリシン-リジン)[ポリ(GK)]、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、ポリ(PGGRGE)(配列番号258)、ポリ(GRQRGVNT)(配列番号266)、および/またはポリ(GSKHREAE)(配列番号267)をコードする核酸配列にハイブリダイズするプローブを含む。
【0091】
いくつかの態様において、検出可能な核酸プローブは、蛍光In situハイブリダイゼーション(FISH)によるRANタンパク質翻訳の局在決定のために有用である。
1つ以上のRANタンパク質を検出するための方法は、濃縮ステップを含んでもよい。「濃縮」とは、試料中の他の核酸に相対的に、試料中の標的核酸の量および/または濃度を増大させるプロセスを指す。一般に、濃縮は、(例えば、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などにより、標的配列を増幅することにより)試料中の標的核酸配列の数を増大させることにより、または、(例えば、標的核酸配列を非標的配列から分離または単離することにより)試料中の非標的核酸配列の量または濃度を減少させることにより、起こり得る。
【0092】
いくつかの態様において、本明細書において記載される方法は、生体試料を、RANタンパク質をコードする核酸配列(例えば、マイクロサテライトリピート配列)について濃縮するステップを含む。いくつかの態様において、濃縮は、生体試料を、1)標識された(例えば、ビオチン化された)dCas9タンパク、および2)RANタンパク質をコードする核酸リピート配列に特異的に結合する1つ以上の一本鎖ガイドRNA(sgRNA)と接触させることを含む。いくつかの態様において、標識されたdCas9タンパクおよび1つ以上のsgRNAは、単一の分子(例えば、dCas9-sgRNA複合体)として一緒に提供される。いくつかの態様において、生体試料を、標識されたdCas9タンパクおよび1つ以上のsgRNAと接触させた後、例えば、Liu et al. (2017) Cell 170: 1028-1043により記載されるように、アフィニティークロマトグラフィーにより、1つ以上のRANタンパク質をコードする核酸配列を、標識されたdCas9タンパクおよびsgRNAから単離する。
【0093】
いくつかの態様において、1つ以上のRANタンパク質の検出は、次世代シークエンシング(NGS)を含む。いくつかの態様において、濃縮ステップ(例えば、dCas9ベースの濃縮)は、ガイドRNAを用いて、試料に対して行われる。いくつかの態様において、濃縮において用いられるガイドRNAは、NGGプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を含むリピートを標的とする他の態様において、濃縮において用いられるガイドRNAは、非NGG PAM含有リピートを標的とする。いくつかの態様において、非NGG PAM含有リピートは、CAGおよびCTG伸長リピート(例えば、ALS/FTDにおけるGGGGCCおよびDM2におけるCCTG)を含む。いくつかの態様において、濃縮において用いられるガイドRNAは、対応する正常なアレルより長い(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、100リピート長い)、非NGG PAM含有リピート伸長を濃縮する。いくつかの態様において、濃縮において用いられるガイドRNAは、複数のリピート伸長を同時に同定し、これは、いくつかの態様においては、非NGG PAMを有する配列を含む。
【0094】
治療方法
RANタンパク質の発現、翻訳および/または蓄積と関連する疾患を処置する方法もまた、本開示により企図される。いくつかの態様において、RANタンパク質に関連する疾患は、以下からなる群より選択される:筋萎縮性側索硬化症(ALS)、または前頭側頭葉型認知症;1型筋強直性ジストロフィー(DM1)および2型筋強直性ジストロフィー(DM2);1、2、3、6、7、8、10、12、17、31および36型脊髄小脳変性症;球脊髄性筋萎縮症;歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA);ハンチントン病(HD);脆弱X振戦失調症候群(FXTAS);フックス内皮角膜ジストロフィー(FECD);ハンチントン病類症2型症候群(HDL2);脆弱X症候群(FXS);7pl l.2葉酸感受性脆弱部位FRA7Aに関する障害;葉酸感受性脆弱部位2ql 1 FRA2Aに関する障害;ならびに脆弱XE症候群(FRAXE)。特定の態様において、RANタンパク質に関連する神経学的疾患は、アルツハイマー病(AD)である。いくつかの態様において、本開示により記載される方法によりRANタンパク質に関連する疾患を診断されている対象に、RANタンパク質に関連する疾患を処置するために有用な治療薬を投与する。
【0095】
疾患(例えばAD)を「処置する」とは、当該用語が本明細書において用いられる場合、対象により経験されている疾患または障害の少なくとも1つの徴候または症状の頻度または重篤度を減少させることを意味する。本明細書において上または他の場所で記載される組成物は、典型的には、望ましい結果をもたらすことができる量である有効量において、対象に投与される。望ましい結果は、投与されている活性剤に依存するであろう。例えば、rAAV粒子の有効量は、発現コンストラクトを宿主細胞、組織または臓器へと伝達することができる粒子の量であってよい。抗RANタンパク質抗体の治療的に受入可能な量とは、RANタンパク質の発現および/もしくは凝集、ならびに/またはRANタンパク質をコードするマイクロサテライトリピート配列を含むRNA凝集体の外見もしくは数を減少させることにより、疾患、例えばアルツハイマー病を処置することができる量であってよい。医学および獣医学の分野において周知であるとおり、任意の1個体の対象のための投与量は、対象のサイズ、体表面積、年齢、投与されるべき特定の組成物、組成物中の活性成分、投与の時間および経路、一般的健康状態、および同時に投与されている他の薬物を含む多くの要因に依存する。
【0096】
RANタンパク質に関連する疾患を処置するために有用な治療薬は、小分子、タンパク質、ペプチド、核酸(例えば、干渉核酸)、または遺伝子治療ベクター(例えば、治療用タンパク質および/または干渉核酸をコードするウイルスベクター)であってよい。RANタンパク質に関連する疾患を処置するために有用な治療薬は、RANタンパク質またはRANタンパク質をコードする核酸を標的とする(例えば、その発現、活性、蓄積、凝集などを減少させる)か、および/または1つ以上のRANタンパク質と相互作用する別の遺伝子または遺伝子産物(例えばタンパク質)の活性を調節してもよい。1つ以上のRANタンパク質と相互作用する遺伝子および遺伝子産物の例として、真核生物開始因子2(eIF2)、真核生物開始因子3(eIF3)、タンパク質キナーゼR(PKR)、p62、LC3 Iサブユニット、LC3 IIサブユニット、およびToll様受容体3(TLR3)が挙げられる。いくつかの態様において、治療剤は、真核生物開始因子2(eIF2)、真核生物開始因子3(eIF3)、タンパク質キナーゼR(PKR)、p62、LC3 Iサブユニット、LC3 IIサブユニット、およびToll様受容体3(TLR3)の1つ以上の発現または活性を阻害する。
【0097】
いくつかの態様において、治療剤は、小分子である。いくつかの態様において、小分子は、1つ以上のRANタンパク質の発現または活性を阻害する。いくつかの態様において、小分子は、eIF3(またはeIF3サブユニット)の阻害剤である。eIF3の小分子阻害剤の例として、これらに限定されないが、mTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン、PP242)、S6キナーゼ(S6K)阻害剤などが挙げられる。
【0098】
いくつかの態様において、小分子は、真核生物開始因子2A(eIF2A)またはeIF2αの発現または活性を阻害する。eIF2Aの小分子阻害剤の例として、これらに限定されないが、サルブリナール、Sal003、ISRIBなどが挙げられる。いくつかの態様において、小分子は、TARBP2の阻害剤である。TARBP2阻害剤の例として、抗TARBP2抗体、TARBP2を標的とする干渉RNA(例えば、dsRNA、siRNA、shRNA、miRNAなど)、TARBP2のペプチド阻害剤、およびTARBP2の小分子阻害剤が挙げられる。いくつかの態様において、小分子は、メトホルミン、別名N,N-ジメチルビグアナイド(IUPAC N,N-ジメチルイミドジカルボンイミド酸ジアミド(N,N-Dimethylimidodicarbonimidic diamide)およびCAS 657-24-9)、またはクロログアニド[1-[アミノ-(4-クロロアニリノ)メチリデン]-2-プロパン-2-イル-グアニジン、CAS 500-92-5]、クロルプログアニル[1-[アミノ-(3,4-ジクロロアニリノ)メチリデン]-2-プロパン-2-イルグアニジン、CAS 537-21-3]、ブホルミン[N-ブチルイミドジカルボンイミド酸ジアミド、CAS 692-13-7]またはフェンホルミン[2-(N-フェネチルカルバムイミドイル)グアニジン、CAS 114-86-3]、またはビグアナイドのうちのいずれかの薬学的に受入可能な塩、共結晶、互変異性体、立体異性体、溶媒和物、水和物、多型、同位体的に濃縮された誘導体、またはプロドラッグを含む代わりの生理活性ビグアナイドである。
【0099】
用語「薬学的に受入可能な塩」とは、健全な医学的判断の範囲内において、ヒトおよびより低級な動物の組織と、過度の毒性、刺激、アレルギー性応答などを伴わずに接触して使用するために好適な塩であって、妥当な利益/リスク比が釣り合うものを指す。薬学的に受入可能な塩は、当該分野において周知である。例えば、Bergeらは、本明細書において参考として援用されるJ. Pharmaceutical Sciences, 1977, 66, 1-19において薬学的に受入可能な塩を詳細に記載する。本発明の化合物の薬学的に受入可能な塩として、好適な無機および有機の酸および塩基から誘導されるものが挙げられる。薬学的に受入可能な非毒性の酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸などの無機酸により、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸またはマロン酸などの有機酸により、あるいはイオン交換などの当該分野において公知の他の方法を用いることにより形成されるアミノ基の塩である。他の薬学的に受入可能な塩として、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコへプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩(hydroiodide)、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。好適な塩基から誘導される塩として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびN+(C1-4アルキル)4-塩が挙げられる。代表的なアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩として、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。さらなる薬学的に受入可能な塩として、適切な場合には、ハライド、水酸化物、カルボン酸、硫酸、リン酸、硝酸、低級アルキルスルホン酸、およびアリールスルホン酸などの対イオンを用いて形成された、非毒性のアンモニウム、四級アンモニウムおよびアミンのカチオンが挙げられる。
【0100】
用語「溶媒和物」とは、通常は可溶媒分解反応により溶媒と会合している化合物の形態を指す。この物理的会合は、水素結合を含んでもよい。従来の溶媒として、水、メタノール、エタノール、酢酸、DMSO、THF、ジエチルエーテルなどが挙げられる。メトホルミンは、例えば、結晶形態において調製することができ、溶媒和させることができる。好適な溶媒和物は、薬学的に受入可能な溶媒和物を含み、さらに化学量論的溶媒和物および非化学量論的溶媒和物の両方を含む。ある場合において、例えば1つ以上の溶媒分子が結晶固体の結晶格子中に組み込まれる場合、溶媒和物は単離することができるであろう。「溶媒和物」は、溶液相および不溶性の両方の溶媒和物をも包含する。代表的な溶媒和物として、水和物、エタノレートおよびメタノレートが挙げられる。
【0101】
用語「水和物」とは、水と会合している化合物を指す。典型的には、化合物の水和物中に含まれている水分子の数は、当該水和物中の化合物分子の数に対して一定の比にある。したがって、化合物の水和物は、例えば一般式R・x H2Oにより表すことができ、ここで、Rは化合物であり、ここで、xは、0より大きな数である。所与の化合物は、1つより多くの型の水和物を形成することができ、これは、例えば一水和物(xは1である)、低級水和物(xは0より大きく1より小さな数である;例えば半水和物(R・0.5 H2O))、ならびにポリ水和物(xは1より大きな数である;例えば二水和物(R・2 H2O)および六水和物(R・6 H2O))を含む。
【0102】
用語「互変異性体」または「互変異性の」とは、少なくとも1つの水素原子の形式的転位および少なくとも1つの価数の変更(例えば単結合から二重結合へ、三重結合から単結合へ、またはその逆もしかり)から生じる、2つ以上の相互転換可能な化合物を指す。互変異性体の正確な比は、いくつかの要因に依存し、これは、温度、溶媒およびpHを含む。互変異性化(すなわち、互変異性体のペアを提供する反応)は、酸または塩基により触媒され得る。例示的な互変異性化として、ケトからエノールへ、アミドからイミドへ、ラクタムからラクチムへ、エナミンからイミンへ、およびエナミンから(異なるエナミン)への互変異性化が挙げられる。
【0103】
また、同じ分子式を有するが、性質またはそれらの原子の結合の結合の順序またはそれらの原子の空間における配置が異なる化合物は、「異性体」と称されることが理解されるべきである。それらの原子の空間における配置が異なる異性体は、「立体異性体」と称される。
【0104】
互いの鏡像ではない立体異性体は、「ジアステレオマー」と称され、重ねることができ
ない互いの鏡像であるものは、「エナンチオマー」と称される。化合物が不斉中心を有す
る場合、例えばそれが4つの異なる基に結合している場合、一対のエナンチオマーが可能
である。エナンチオマーは、その不斉中心の絶対的な立体配置により特徴づけることがで
き、CahnおよびPrelogのRおよびS配列規則により記載されるか、または、分子が偏光の
平面を回転する様式により右旋性または左旋性として(すなわち、それぞれ(+)または
(-)異性体として)示される。キラル化合物は、個々のエナンチオマーとして、または
それらの混合物として、存在することができる。等しい割合のエナンチオマーを含む混合
物は、「ラセミ混合物」と称される。
【0105】
用語「プロドラッグ」とは、切断可能な基を有し、可溶媒分解により、または生理学的条件下において、in vivoで薬学的に活性である本明細書において記載される化合物となる化合物を指す。かかる例として、これらに限定されないが、コリンエステル誘導体など、N-アルキルモルホリンエステルなどが挙げられる。本明細書において記載される化合物の他の誘導体は、それらの酸および酸誘導体の形態において活性を有するが、酸感受性の形態において、しばしば、哺乳動物の生体における可溶性、組織適合性または遅延放出の利点を提供する(Bundgard, H., Design of Prodrugs, pp. 7-9, 21-24, Elsevier, Amsterdam 1985を参照)。プロドラッグは、例えば、親酸と好適なアルコールとの反応により調製されるエステル、または、親酸化合物と置換された、または置換されていないアミンとの反応により調製されるアミド、酸無水物、または混合された無水物などの、当業者に周知の酸誘導体を含む。本明細書において記載される化合物につり下がる(pendant on)酸性基から誘導される単純な脂肪族または芳香族のエステル、アミドおよび無水物は、特別なプロドラッグである。いくつかの場合においては、(アシルオキシ)アルキルエステルまたは((アルコキシカルボニル)オキシ)アルキルエステルなどの二重エステル型プロドラッグを調製することが望ましい。本明細書において記載される化合物の、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、アリール、C7-C12置換されたアリール、およびC7-C12アリールアルキルエステルが好ましい場合がある。いくつかの態様において、小分子は、ブホルミン、またはフェンホルミンである。
【0106】
治療剤は、抗RANタンパク質抗体であってよい。いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体は、抗ポリ-セリン、抗ポリ(GR)、抗ポリ(PR)、抗ポリ(CP)、抗ポリ(GP)、抗ポリ(G)、抗ポリ(A)、抗ポリ(GA)、抗ポリ(GD)、抗ポリ(GE)、抗ポリ(GQ)、抗ポリ(GT)、抗ポリ(L)、抗ポリ(LP)、抗ポリ(LPAC)(配列番号260)、抗ポリ(LS)、抗ポリ(P)、抗ポリ(PA)、抗ポリ(QAGR)(配列番号261)、抗ポリ(RE)、抗ポリ(SP)、抗ポリ(VP)、抗ポリ(FP)、抗ポリ(GK)、抗ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、抗ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、抗ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、抗ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、抗ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、抗ポリ(PGGRGE)(配列番号258)、抗ポリ(GRQRGVNT)(配列番号266)、および/または抗ポリ(GSKHREAE)(配列番号267)抗体(またα-ポリSer、α-ポリ(PR)、α-ポリ(GR)などとしても言及される)である。抗RANタンパク質抗体は、細胞外RANタンパク質、細胞内RANタンパク質、または細胞外および細胞内RANタンパク質の両方に結合してもよい。
【0107】
いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体は、RANタンパク質のアミノ酸リピート領域(例えば、PRPRPRPRPR(配列番号106)、GRGRGRGRGR(配列番号107)、SSSSSSSSS(配列番号108)など)を標的とする(例えば、それに特異的に結合する)。RANタンパク質ポリアミノ酸リピートを標的とする抗RAN抗体の例は、例えば、国際出願公開番号WO2014/159247において開示され、その全内容は、本明細書において参考として援用される。いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体は、以下のリストから選択される1つ以上のRANタンパク質のアミノ酸リピート領域を標的とする(例えば、それに特異的に結合する):ポリ(プロリン-アルギニン)[ポリ(PR)];ポリ(グリシン-アルギニン)[ポリ(GR)];ポリ(セリン)[ポリSer];ポリ(システイン-プロリン)[ポリ(CP)];ポリ(グリシン-プロリン)[(ポリ(GP)];ポリ(グリシン)[ポリ(G)];ポリ(アラニン)[ポリAla];ポリ(グリシン-アラニン)[ポリ(GA)];ポリ(グリシン-アスパラギン酸)[ポリ(GD)];ポリ(グリシン-グルタミン酸)[ポリ(GE)];ポリ(グリシン-グルタミン)[ポリ(GQ)];ポリ(グリシン-スレオニン)[ポリ(GT)];ポリ(ロイシン)[ポリLeu];ポリ(ロイシン-プロリン)[ポリ(LP)];ポリ(ロイシン-プロリン-アラニン-システイン)[ポリ(LPAC)](配列番号260);ポリ(ロイシン-セリン)[ポリ(LS)];ポリ(プロリン)[ポリ(P)];ポリ(プロリン-アラニン)[ポリ(PA)];ポリ(グルタミン-アラニン-グリシン-アルギニン)[ポリ(QAGR)](配列番号261);ポリ(アルギニン-グルタミン酸)[ポリ(RE)];ポリ(セリン-プロリン)[ポリ(SP)]、ポリ(バリン-プロリン)[ポリ(VP)]、ポリ(フェニルアラニン-プロリン)[ポリ(FP)]、ポリ(グリシン-リジン)[ポリ(GK)]、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、ポリ(PGGRGE)(配列番号258)、ポリ(GRQRGVNT)(配列番号266)、およびポリ(GSKHREAE)(配列番号267)。
【0108】
いくつかの態様において、抗RAN抗体は、ポリアミノ酸リピートを含まないRANタンパク質の任意の部分、例えばRANタンパク質のC末端(例えば、ポリ(CP)、ポリ(GP)、ポリ(G)、ポリ(A)、ポリ(GA)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GR)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC)(配列番号260)、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(PA)、ポリ(PR)、ポリ(QAGR)(配列番号261)、ポリ(RE)、ポリSer、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、ポリ(GK)、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、ポリ(PGGRGE)(配列番号258)タンパク質、ポリ(GRQRGVNT)(配列番号266)、および/またはポリ(GSKHREAE)(配列番号267)のC末端)を標的とする(例えば、それに特異的に結合する)。RANタンパク質のC末端を標的とする抗RAN抗体の例は、例えば、米国公開番号2013/0115603において開示され、その全内容は、本明細書において参考として援用される。いくつかの態様において、抗RAN抗体のセット(または組み合わせ)(例えば、ポリ(CP)、ポリ(GP)、ポリ(G)、ポリ(A)、ポリ(GA)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GR)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC)(配列番号260)、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(PA)、ポリ(PR)、ポリ(QAGR)(配列番号261)、ポリ(RE)、ポリSer、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、ポリ(GK)、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、ポリ(PGGRGE)(配列番号258)、ポリ(GRQRGVNT)(配列番号266)、およびポリ(GSKHREAE)(配列番号267)などから選択される2つ以上の抗RAN抗体の組み合わせ)が、RANタンパク質に関連する疾患を処置する目的のために、対象に投与される。
【0109】
抗RAN抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であってよい。典型的には、ポリクローナル抗体は、マウス、ウサギまたはヤギなどの好適な哺乳動物の接種により、生成される。より大きな哺乳動物は、回収することができる血清の量がより多いことから、しばしば好ましい。抗原は、哺乳動物中に注射される。これが、Bリンパ球を、抗原に対して特異的なIgG免疫グロブリンを生成するように誘導する。このポリクローナルIgGは、哺乳動物の血清から精製される。モノクローナル抗体は、一般に、単一の細胞株(例えば、ハイブリドーマ細胞株)により生成される。いくつかの態様において、抗RAN抗体は、精製される(例えば、血清から単離される)。
【0110】
治療用分子は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であってよい。一般的に、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的タンパク質をコードするmRNA配列にハイブリダイズすることにより標的タンパク質の翻訳を遮断し、それにより、リボソーム機構によるタンパク質合成を阻害する。いくつかの態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)は、マイクロサテライトリピート配列を含む遺伝子を標的とする。いくつかの態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ以上のRANタンパク質の翻訳を阻害する。当業者は、RANのmRNAに対して相補的な塩基配列を有する短い(約15~30の)ヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを構築する方法を理解するであろう。当業者は、RANのmRNAに対する相補性は、天然に存在する核酸を典型的に表す、リボース、リン酸、ならびにホスホジエステル架橋により架橋された塩基アデニン、グアニン、シトシンおよびウラシルのうちの1つを含む、正準のヌクレオチドを用いて確立することができること、あるいは、ヌクレオチドのうちのいくつかは、リボースを、2’-デオキシリボース、または2’-O-(2-メトキシエチル)リボースなどの代替的な糖部分により置き換えることにより、修飾することができること、ならびに/あるいは、ヌクレオチドのうちのいくつかまたは全ては、メチル化により修飾することができること、ならびに/あるいは、ヌクレオチド間のホスホジエステル結合のうちのいくつかまたは全ては、ホスホロチオエート架橋により置き換えることができることを理解するであろう。当業者は、遍在性の末端で活性のRNAヌクレアーゼによる分解を阻害するための、アンチセンスオリゴヌクレオチドの3’および5’末端の両方におけるいくつかのヌクレオチドの修飾が、アンチセンスオリゴの安定性を改善し、それによりその半減期を改善するであろうことを、理解するであろう。しかし、当業者は、アンチセンスオリゴのうちの少なくとも一部は、RANのmRNAと複合体化した後、リボヌクレアーゼHの活性を促進し、RANのmRNAがアンチセンスオリゴと複合体化した後、その酵素分解を促進するであろうことが望ましいことを理解するであろう。
【0111】
いくつかの態様において、治療剤は、阻害性核酸である。いくつかの態様において、阻害性核酸は、dsRNA、siRNA、shRNA、miRNAおよびami-RNAからなる群より選択される干渉RNAである。いくつかの態様において、阻害性核酸は、核酸アプタマー(例えば、RNAアプタマーまたはDNAアプタマー)である。一般に、阻害性RNA分子は、未修飾であっても修飾されていてもよい。いくつかの態様において、阻害性RNA分子は、1つ以上の修飾オリゴヌクレオチド、例えば、ホスホロチオエート-、2’-O-メチルなどで修飾されたオリゴヌクレオチドを含む。なぜならば、かかる修飾は、当該分野において、オリゴヌクレオチドの安定性をin vivoで改善するものとして認識されているからである。
【0112】
いくつかの態様において、治療剤は、真核生物開始因子2(eIF2)を阻害する剤またはタンパク質キナーゼR(PKR)を阻害する剤(例えば、eIF2および/またはPKRの阻害剤)の有効量である。いくつかの態様において、eIF2の阻害剤は、セリン/スレオニンキナーゼの阻害剤である。セリン/スレオニンキナーゼの例として、これらに限定されないが、タンパク質キナーゼA(PKA)、タンパク質キナーゼC(PKC)、Mos/Rafキナーゼ、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)、タンパク質キナーゼB(AKTキナーゼ)などが挙げられる。いくつかの態様において、eIF2阻害剤は、タンパク質キナーゼR(PKR)阻害剤である。eIF2およびPKRの阻害剤は、例えば国際出願公開番号WO2018/195110において記載され、その全内容は、本明細書において参考として援用される。
【0113】
いくつかの態様において、治療剤は、eIF2αのリン酸化を阻害するためにドミナントネガティブな様式において機能するタンパク質キナーゼR(PKR)バリアントである。本明細書において用いられる場合、「タンパク質キナーゼR(PKR)バリアント」とは、野生型タンパク質キナーゼR(PKR)(例えば、GenBankアクセッション番号NP_002750.1)に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含むタンパク質を指し、ここで、バリアントタンパク質は、野生型PKRのアミノ酸配列と比較して、少なくとも1つのアミノ酸のバリエーション(またときには「変異」として言及される)を含む。
【0114】
いくつかの態様において、PKRバリアントのアミノ酸配列は、野生型PKRのアミノ酸配列に対して、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%同一である。いくつかの態様において、アミノ酸配列は、野生型PKRのアミノ酸配列に対して、約95~99.9%同一である。いくつかの態様において、タンパク質は、野生型PKRのアミノ酸配列において記載されるアミノ酸の配列と比較して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、または少なくとも15個の異なるアミノ酸配列のバリエーションを含む。いくつかの態様において、PKRバリアントは、位置296(例えば、ヒト野生型PKRの位置296)において変異を含む。いくつかの態様において、位置296における変異は、K296Rである。
【0115】
eIF2阻害剤は、直接阻害剤であっても、間接阻害剤であってもよい。一般に、直接的な調節因子は、eIF2(もしくはeIF2α)をコードする遺伝子、またはeIF2タンパク質複合体と、相互作用する(例えば、これと相互作用するか、またはこれに結合する)ことにより機能する。一般に、間接的な調節因子は、eIF2またはeIF2αの発現または活性を調節する(例えば、eIF2またはeiF2αをコードする遺伝子またはタンパク質と直接的に相互作用しない)遺伝子またはタンパク質と相互作用することにより機能する。
【0116】
いくつかの態様において、eIF2またはPKRの阻害剤は、選択的阻害剤である。「選択的阻害剤」とは、eIF2またはPKRの阻害剤であって、eIF2サブユニットの他の型と比較して、eIF2サブユニットの1つの型の活性または発現を優先的に阻害するもの、または他のキナーゼと比較してPKRの活性または発現を優先的に阻害するものを指す。いくつかの態様において、eIF2の阻害剤は、eIF2αの選択的阻害剤である。いくつかの態様において、eIF2の阻害剤は、eIF2Aの選択的阻害剤である。いくつかの態様において、eIF2の阻害剤は、選択的PKR阻害剤などのタンパク質キナーゼR(PKR)の選択的阻害剤である。
【0117】
eiF2(例えば、eIF2サブユニット)を阻害するタンパク質の例として、これらに限定されないが、ポリクローナル抗eIF2抗体、モノクローナル抗eIF2抗体などが挙げられる。eiF2(例えば、eIF2サブユニット)を阻害する核酸分子の例として、これらに限定されないが、eIF2サブユニットをコードする遺伝子(例えば、GenBankアクセッション番号NM_004094.4において記載されるmRNAをコードする遺伝子)を標的とする、dsRNA、siRNA、miRNAなどが挙げられる。eIF2の小分子阻害剤の例として、これらに限定されないが、LY 364947、eIF-2α阻害剤II Sal003などが挙げられる。
【0118】
PKRを阻害するタンパク質の例として、これらに限定されないが、特定のドミナントネガティブPKRバリアント(例えば、K296R PKR変異体)、TARBP2などが挙げられる。PKRを阻害する核酸分子の例として、これらに限定されないが、PKRをコードする遺伝子を標的とする、dsRNA、siRNA、miRNAなどが挙げられる。PKRの小分子阻害剤の例として、これらに限定されないが、6-アミノ-3-メチル-2-オキソ-N-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-カルボキサミド、N-[2-(1H-インドール-3-イル)エチル]-4-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン、メトホルミン、ブホルミン、フェンホルミンなどが挙げられる。
【0119】
eIF2Aを阻害する核酸分子の例として、これらに限定されないが、eIF2Aをコードする遺伝子(例えば、GenBankアクセッション番号NM_032025.4において記載されるmRNAをコードする遺伝子)を標的とする、dsRNA、siRNA、miRNAなどが挙げられる。eIF2Aの小分子阻害剤の例として、これらに限定されないが、サルブリナール、Sal003、ISRIBなどが挙げられる。
【0120】
いくつかの態様において、eIF2阻害剤またはPKR阻害剤は、干渉性(例えば阻害性)核酸である。いくつかの態様において、阻害性核酸は、dsRNA、siRNA、shRNA、mi-RNAおよびami-RNAからなる群より選択される干渉RNAである。いくつかの態様において、阻害性核酸は、アンチセンス核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)またzは核酸アプタマー(例えば、RNAアプタマー)である。一般に、阻害性RNA分子は、未修飾であっても修飾されていてもよい。いくつかの態様において、阻害性RNA分子は、1つ以上の修飾オリゴヌクレオチド、例えば、ホスホロチオエート-、2’-O-メチル-など-修飾オリゴヌクレオチドを含む。なぜならば、かかる修飾は、当該分野において、オリゴヌクレオチドの安定性をin vivoで改善するものとして認識されているからである。
【0121】
いくつかの態様において、干渉RNAは、eIF2サブユニットをコードする核酸配列(RNA配列など)またはPKRをコードする核酸配列(RNA配列など)の5~50個の連続するヌクレオチド(例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、約30、約35、約40または約50個の連続するヌクレオチド)と相補的である配列を含む。
【0122】
いくつかの態様において、治療剤は、真核生物開始因子3(eIF3)の阻害剤であって、これは、真核生物のタンパク質翻訳の開始相に関与する多タンパク質複合体である。一般に、ヒトにおいて、eIF3は、13個の非同一のサブユニット(例えば、eIF3a-m)を含む。最大のもっとも複雑な開始因子である哺乳動物のeIF3は、13個までの非同一サブユニットを含む。典型的には、eIF3fは、三次元複合体の安定、mRNAの40Sサブユニットへの結合を媒介すること、ならびに40Sおよび60Sリボソームサブユニットの解離を促進することを含む、翻訳開始の多くのステップに関与する。いくつかの態様において、eIF3のサブユニット(例えば、eIF3f、eIF3m、eIF3h、または他のeIF3サブユニット)の発現または活性を阻害する治療剤は、細胞において、または対象(例えば、RANタンパク質翻訳により特徴づけられるアルツハイマー病を有する対象)において、RAN翻訳を低下させるかまたはこれを阻害するために用いることができる。eIF3サブユニットの阻害剤は、例えば国際出願公開番号WO2017/176813においてさらに記載され、その全内容は、本明細書において参考として援用される。
【0123】
eIF3阻害剤は、直接阻害剤であっても間接阻害剤であってもよい。一般に、直接的な調節因子は、eIF3(もしくはeIF3サブユニット)をコードする遺伝子、またはeIF3タンパク質複合体、またはeIF3サブユニットと相互作用する(例えば、これと相互作用するかまたはこれに結合する)ことにより機能する。一般に、間接的な調節因子は、eIF3またはeIF3サブユニットの発現または活性を調節する(例えば、eIF3またはeIF3サブユニットをコードする遺伝子またはタンパク質と直接的に相互作用しない)遺伝子またはタンパク質と相互作用することにより機能する。いくつかの態様において、eIF3の阻害剤は、選択的阻害剤である。「選択的阻害剤」とは、eIF3の調節因子であって、eIF3サブユニットの他の型と比較して、eIF3サブユニットの1つの型の活性または発現を優先的に阻害するものを指す。いくつかの態様において、eIF3の阻害剤は、eIF3fの選択的阻害剤である。
【0124】
eIF3阻害剤は、タンパク質(例えば抗体)、核酸、または小分子であってよい。eiF3(例えば、eIF3サブユニット)を阻害するタンパク質の例として、これらに限定されないが、ポリクローナル抗eIF3抗体、モノクローナル抗eIF3抗体、麻疹ウイルスNタンパク質、ウイルスストレス誘導性タンパク質p56などが挙げられる。eiF3(例えば、eIF3サブユニット)を阻害する核酸分子の例として、これらに限定されないが、eIF3サブユニットをコードする遺伝子を標的とするdsRNA、siRNA、miRNA、amiRNAなどが挙げられる。eIF3の小分子阻害剤の例として、これらに限定されないが、mTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン、PP242)、S6キナーゼ(S6K)阻害剤などが挙げられる。
【0125】
いくつかの態様において、干渉RNAは、eIF3サブユニットをコードする核酸配列(RNA配列など)の5~50個の連続するヌクレオチド(例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、約30、約35、約40または約50個の連続するヌクレオチド)と相補的である配列を含む。eIF3サブユニットをコードする核酸配列の例として、GenBankアクセッション番号NM_003750.2(eIF3a)、GenBankアクセッション番号NM_003751.3(eIF3b)、GenBankアクセッション番号NM_003752.4(eIF3c)、GenBankアクセッション番号NM_003753.3(eIF3d)、GenBankアクセッション番号NM_001568.2(eIF3e)、GenBankアクセッション番号NM_003754.2(eIF3f)、GenBankアクセッション番号NM_003755.4(eIF3g)、GenBankアクセッション番号NM_003756.2(eIF3h)、GenBankアクセッション番号NM_003757.3(eIF3i)、GenBankアクセッション番号NM_003758.3(eIF3j)、GenBankアクセッション番号NM_013234.3(eIF3k)、GenBankアクセッション番号NM_016091.3(eIF3l)、GenBankアクセッション番号NM_006360.5(eIF3m)などが挙げられる。いくつかの態様において、干渉RNAは、siRNAである。いくつかの態様において、eIF3fのsiRNAが投与される(例えば、Dharmacon Cat # J-019535-08)。いくつかの態様において、eIF3mのsiRNAが投与される(例えば、Dharmacon Cat # J-016219-12)。いくつかの態様において、eIF3hのsiRNAが投与される(例えば、Dharmacon Cat # J-003883-07)。
【0126】
いくつかの態様において、eIF3fは、RAN翻訳の負の調節因子であり、ヒトeIF3fのレベルの低下は、細胞におけるRANタンパク質の蓄積の低下と関連する。いくつかの態様において、RAN翻訳(例えば、RANタンパク質を発現する細胞において)は、近接したコグネートからの翻訳またはAUGの翻訳とは異なり、eIF3fノックダウンに対して感受性である。いくつかの態様において、RAN翻訳のために用いられる翻訳機構は、細胞におけるAUGおよびAUG近くの翻訳機構とは区別し得る。
【0127】
いくつかの態様において、治療剤は、TLR3の阻害剤である。TLR3の阻害剤は、タンパク質(例えば抗体)、核酸、または小分子であってよい。TLR3を阻害するタンパク質の例として、これらに限定されないが、ポリクローナル抗TLR3抗体、モノクローナル抗TLR3抗体などが挙げられる。TLR3を阻害する核酸分子の例として、これらに限定されないが、TLR3をコードする遺伝子を標的とする、dsRNA、siRNA、miRNA、amiRNAなどが挙げられる。TLR3の小分子阻害剤の例は、例えばCheng et al. (2011) J Am Chem Soc 133(11):3764-7において記載される。
【0128】
いくつかの態様において、治療剤は、p62プロテアーゼの阻害剤である。p62の阻害剤は、タンパク質(例えば、抗体)、核酸、または小分子であってよい。p62を阻害するタンパク質の例として、これらに限定されないが、ポリクローナル抗p62抗体、モノクローナル抗p62抗体などが挙げられる。p62を阻害する核酸分子の例として、これらに限定されないが、p62をコードする遺伝子を標的とする、dsRNA、siRNA、miRNA、amiRNAなどが挙げられる。いくつかの態様において、治療剤は、例えばLeestemaker et al. (2017) Cell Chemical Biology 24, 725-736において記載されるような、プロテアソーム活性を増大させる剤である。
【0129】
いくつかの態様において、治療剤は、1つ以上のRANタンパク質を標的とするペプチド抗原を含む(例えば、1つ以上のRANタンパク質を標的とするRANタンパク質ワクチンである)。いくつかの態様において、ペプチド抗原は、以下のRANタンパク質のうちの1つ以上を標的とする(例えば、これをコードするアミノ酸配列を含む):ポリ(プロリン-アルギニン)[ポリ(PR)];ポリ(グリシン-アルギニン)[ポリ(GR)];ポリ(セリン)[ポリSer];ポリ(システイン-プロリン)[ポリ(CP)];ポリ(グリシン-プロリン)[(ポリ(GP)];ポリ(グリシン)[ポリ(G)];ポリ(アラニン)[ポリAla];ポリ(グリシン-アラニン)[ポリ(GA)];ポリ(グリシン-アスパラギン酸)[ポリ(GD)];ポリ(グリシン-グルタミン酸)[ポリ(GE)];ポリ(グリシン-グルタミン)[ポリ(GQ)];ポリ(グリシン-スレオニン)[ポリ(GT)];ポリ(ロイシン)[ポリLeu];ポリ(ロイシン-プロリン)[ポリ(LP)];ポリ(ロイシン-プロリン-アラニン-システイン)[ポリ(LPAC)](配列番号260);ポリ(ロイシン-セリン)[ポリ(LS)];ポリ(プロリン)[ポリ(P)];ポリ(プロリン-アラニン)[ポリ(PA)];ポリ(グルタミン-アラニン-グリシン-アルギニン)[ポリ(QAGR)](配列番号261);ポリ(アルギニン-グルタミン酸)[ポリ(RE)];ポリ(セリン-プロリン)[ポリ(SP)]、ポリ(バリン-プロリン)[ポリ(VP)]、ポリ(フェニルアラニン-プロリン)[ポリ(FP)]、ポリ(グリシン-リジン)[ポリ(GK)]、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、ポリ(PGGRGE)(配列番号258)、ポリ(GRQRGVNT)(配列番号266)、およびポリ(GSKHREAE)(配列番号267)。
【0130】
いくつかの態様において、1つ以上の治療分子は、核酸リピートの伸長により特徴づけられる(例えば、リピート関連非ATG翻訳に関連する)、RANタンパク質に関連する疾患を処置するために対象に投与される。例えば、いくつかの態様において、対象は、2、3、4、5、6、7、8、9または10の治療剤(例えば、タンパク質、核酸、小分子など、またはそれらの任意の組み合わせ)を投与される。
【0131】
モノクローナル抗体
本開示の多様な側面は、RANタンパク質に特異的に結合する抗体および抗原結合フラグメント、ならびにこれを作製および使用する方法に関する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、以下の1つ以上に特異的に結合する:ポリ(グリシン-アラニン)[ポリ(GA)]、ポリ(プロリン-アルギニン)[ポリ(PR)]、ポリ(グリシン-アルギニン)[ポリ(GR)]、ポリ-セリン(ポリSer)、ポリ(グリシン-プロリン)[ポリ(GP)]、ポリ-ロイシン(ポリLeu)、ポリ-アラニン(ポリAla)、ポリ(ロイシン-プロリン-アラニン-システイン)[ポリ(LPAC)](配列番号260)、およびポリ(グルタミン-アラニン-グリシン-アルギニン)[ポリ(QAGR)](配列番号261)。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(GA)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリSerに特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(PR)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(GR)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリLeuに特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリAlaに特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(LPAC)(配列番号260)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(QAGR)(配列番号261)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(CP)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(GP)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(G)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(GD)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(GE)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(GQ)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(GT)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(LP)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(LS)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(P)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(PA)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(RE)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(SP)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(VP)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(FP)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(GK)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(PGGRGE)(配列番号258)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(GRQRGVNT)(配列番号266)に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、ポリ(GSKHREAE)(配列番号267)に特異的に結合する。
【0132】
抗体とは、本明細書において用いられる場合、広範に、免疫グロブリン分子またはその任意の機能的な変異体、バリアントもしくは誘導体を指す。機能的な変異体、バリアントおよびその誘導体、ならびに抗原結合フラグメントは、Ig分子の本質的なエピトープ結合特性を保持することが望ましい。抗体は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を通して、標的に特異的に結合することができる。一般に、完全なまたは全長の抗体は、2本の重鎖および2本の軽鎖を含む。各々の重鎖は、重鎖可変領域(VH)、ならびに第1、第2および第3の定常領域(CH1、CH2およびCH3)を含む。各々の軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)および定常領域(CL)を含む。VHおよびVL領域は、さらに、相補性決定領域(CDR)と称される高頻度可変性の領域に部分分割することができ、これは、より保存された、フレームワーク領域(FR)と称される領域により分散させられている。重鎖上のCDRの構成要素は、CDRH1、CDRH2およびCDRH3として言及され、一方、軽鎖上のCDR構成要素は、CDRL1、CDRL2およびCDRL3として言及される。
【0133】
CDRは、典型的には、Proteins of Immunological Interest(US Department of Health and Human Services(1991)、Kabatら編)の配列において記載されるような、KabatのCDRを指す。抗原結合部位を特徴づけるための別の標準は、Chothiaにより記載されるような高頻度可変性ループに言及すべきである。例えば、Chothia, D. et al. (1992) J. Mol. Biol. 227:799-817;ならびにTomlinson et al. (1995) EMBO J. 14:4628-4638を参照。なお別の標準は、Oxford Molecular’s AbM antibody modelingソフトウェアにより用いられるAbMの定義である。一般に、例えば、Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains(Antibody Engineering Lab Manual中(Duebel, SおよびKontermann, R.編、Springer-Verlag, Heidelberg))を参照。KabatのCDRに関して記載される態様は、代替的に、Chothiaの高頻度可変性ループに関して、またはAbMで定義されたループに関して記載される類似のもの、またはこれらの方法のうちのいずれかの組み合わせを用いて、実施することができる。
【0134】
各々のVHおよびVLは、以下の順序においてアミノ末端からカルボキシ末端へと配置された3つのCDRおよび4つのFRからなる:FRl、CDRl、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。全長抗体は、IgD、IgE、IgG、IgAまたはIgM(またはこれらのサブクラス)などの任意のクラスの抗体であってよく、抗体は、任意の特定のクラスのものである必要はない。その重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンを、異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2に分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューと称される。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元立体構造は、周知である。
【0135】
用語「抗原結合フラグメント」とは、抗体の全長より短い任意の誘導体であって、標的に特異的に結合することができるモノを指す。好ましくは、本明細書において提供される抗原結合フラグメントは、RANタンパク質に特異的に結合する能力を保持する。抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、または両方を含んでもよい。VHおよびVLの各々は、典型的には、3つの相補性決定領域CDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0136】
抗原結合フラグメントの例として、これらに限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、Fv、dsFv、ダイアボディー、アフィボディー(affibody(登録商標))およびFdフラグメントが挙げられる。抗原結合フラグメントは、適切な手段により生成することができる。例えば、抗原結合フラグメントは、酵素によりまたは化学的に完全な抗体の断片化により生成してもよく、または、それは、部分的な抗体配列をコードする遺伝子から組み換え的に生成してもよい。あるいは、抗原結合フラグメントは、完全にまたは部分的に合成により生成してもよい。抗原結合フラグメントは、単鎖抗体フラグメントであってもよい。あるいは、フラグメントは、例えばジスルフィド架橋により一緒に連結した複数の鎖を含んでもよい。抗原結合フラグメントはまた、任意に、多分子複合体であってもよい。機能的な抗原結合フラグメントは、典型的には少なくとも約50アミノ酸を含み、より典型的には少なくとも約200アミノ酸を含むであろう。
【0137】
単鎖Fv(scFv)は、ポリペプチドリンカーにより互いに共有結合により連結された可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)のみからなる、組み換え抗原結合フラグメントである。VLまたはVHのいずれかは、NH2末端ドメインであってよい。ポリペプチドリンカーは、2つの可変ドメインが深刻な立体的干渉を伴うことなく架橋される限り、様々な長さおよび組成のものであってよい。典型的には、リンカーは、主に、可溶性のためにいくらかのグルタミン酸またはリジン残基が分散した、グリシンおよびセリン残基の伸長部から構成される。ScFvは、用語「抗原結合フラグメント」中に包含される。
【0138】
ダイアボディーは、二量体scFvである。ダイアボディーの構成成分は、典型的には、ほとんどのscFvよりも短いペプチドリンカーを有し、それらは、ダイマーとして会合することに対して優先性を示す(例えば、Holliger, P., et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448;Poljak, R. J., et al. (1994) Structure 2: 1121-1123を参照)。ダイアボディーもまた、用語「抗原結合フラグメント」中に包含される。
【0139】
Fvフラグメントは、非共有結合性の相互作用により一緒に保持された1つのVHおよび1つのVLドメインからなる、抗原結合フラグメントである。Fvフラグメントの2つのドメイン、VLおよびVHは、別々の遺伝子によりコードされていてもよいが、それらは、組み換え方法を用いて、それらをVLおよびVH領域の対が一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖にすることができる合成リンカーにより、連結されていてもよい(単鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al. (1988) Science 242:423-426;ならびにHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照)。かかる単鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合フラグメント」という用語中に包含されることを意図される。用語dsFvは、本明細書において、VH-VL対を安定化させるために操作された分子間ジスルフィド結合を有するFvを指すために用いられる。dsFvもまた、用語「抗原結合フラグメント」中に包含される。
【0140】
F(ab’)2フラグメントは、免疫グロブリン(典型的にはIgG)から酵素ペプシンによるpH4.0~4.5における消化により得られるものと本質的に等価の抗原結合フラグメントである。フラグメントは、組み換えにより生成してもよい。F(ab’)2はまた、用語「抗原結合フラグメント」中に包含される。
【0141】
Fabフラグメントは、F(ab’)2フラグメント中の2つの重鎖片を連結しているジスルフィド架橋の還元により得られるものと本質的に等価の抗原結合フラグメントである。Fab’フラグメントは、組み換えにより生成してもよい。Fab’はまた、用語「抗原結合フラグメント」中に包含される。
【0142】
Fabフラグメントは、酵素ペプシンによる免疫グロブリン(典型的にはIgG)の消化により得られるものと本質的に等価の抗原結合フラグメントである。Fabフラグメントは、組み換えにより生成してもよい。Fabフラグメントの重鎖セグメントは、Fd片である。Fabフラグメントはまた、用語「抗原結合フラグメント」中に包含される。
【0143】
アフィボディーは、抗原結合分子(例えば抗体模倣物)として機能する3つのヘリックスの束を含む、小さいタンパク質である。一般に、アフィボディーは、約58アミノ酸長であり、約6kDaのモル質量を有する。ユニークな結合特性を有するアフィボディー分子は、親タンパク質ドメインの結合活性に関与する2つのアルファヘリックス中に位置する13のアミノ酸の無作為化により得られる。所望される標的タンパク質に結合する特異的なアフィボディー分子は、ファージディスプレイなどの方法を用いて、数十億の異なるバリアントを含むプール(ライブラリー)から単離することができる。アフィボディーはまた、用語「抗原結合フラグメント」中に包含される。
【0144】
用語「ヒト抗体」とは、例えば、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列またはそのバリアントによりコードされる、ヒト対象から得られた抗体に対して実質的に対応するか、またはこれから誘導される可変および定常領域を有する抗体を指す。ヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされない1つ以上のアミノ酸残基(例えば、in vitroでの無作為または部位特異的な変異誘発により、またはin vivoでの体細胞変異により誘導される変異)を含んでもよい。かかる変異は、CDRのうちの1つ以上、特にCDR3において、またはフレームワーク領域のうちの1つ以上において存在してもよい。いくつかの態様において、ヒト抗体は、少なくとも1、2、3、4、5またはそれより多くの、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってはコードされないアミノ酸残基で置き換えられた位置を有していてもよい。しかし、用語「ヒト抗体」とは、本明細書において用いられる場合、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植された抗体を含むことは意図されない。
【0145】
用語「組み換えヒト抗体」とは、本明細書において用いられる場合、組み換え手段により調製されるか、発現されるか、作製されるかまたは単離される全てのヒト抗体、例えば、宿主細胞中にトランスフェクトされた組み換え発現ベクターを用いて発現された抗体、組み換えの、コンビナトリアルなヒト抗体ライブラリーから単離された抗体(Hoogenboom H. R., (1997) TIB Tech. 15:62-70;Azzazy H., and Highsmith W. E., (2002) Clin. Biochem. 35:425-445;Gavilondo J. V., and Larrick J. W. (2002) BioTechniques 29: 128-145;Hoogenboom H., and Chames P. (2000) Immunology Today 21:371-378)、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックな動物(例えばマウス)から単離された抗体(例えば、Taylor, L. D., et al. (1992) Nucl. Acids Res. 20:6287-6295; Kellermann S-A., and Green L. L. (2002) Current Opinion in Biotechnology 13:593-597; Little M. et al (2000) Immunology Today 21:364-370を参照)、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段により調製されるか、発現されるか、作製されるかもしくは単離される抗体を含むことを意図される。かかる組み換えヒト抗体は、上で定義されるような可変および定常領域を有する。ある態様においては、しかし、かかる組み換えヒト抗体を、in vitroでの変異誘発(または、ヒトIg配列についてトランスジェニックな動物が用いられる場合は、in vivoでの体細胞変異誘発)に供してもよく、したがって、組み換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VHおよびVL配列に由来してこれに関連しつつも、in vivoではヒト抗体生殖系列のレパートリー(repertoire)中には天然には存在し得ない配列であってもよい。
【0146】
いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55および56のうちのいずれか1つ以上において記載されるようなアミノ酸配列に特異的に結合する。
【0147】
いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号195により表されるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号197により表されるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。いくつかの態様において、本開示の抗RAN抗体および抗原結合フラグメントは、配列番号196により表されるアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。いくつかの態様において、本開示の抗RAN抗体および抗原結合フラグメントは、配列番号198により表される核酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。
【0148】
いくつかの態様において、抗RAN抗体または抗原結合フラグメントは、抗体のフレームワーク領域、例えば配列番号155~186において記載されるフレームワーク領域アミノ酸配列を含んでも、これを含まなくともよい。いくつかの態様において、抗RAN抗体は、マウス抗体である。いくつかの態様において、抗RAN抗体は、キメラまたはヒト化抗体である。
【0149】
いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号109、111、113または115において記載されるようなVH配列を含む。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号110、112、114または116において記載されるようなVH配列を含む。
いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号109において記載されるようなVH配列、および配列番号110において記載されるようなVL配列を含む。
【0150】
いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号111において記載されるようなVH配列、および配列番号112において記載されるようなVL配列を含む。
いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号113において記載されるようなVH配列、および配列番号114において記載されるようなVL配列を含む。
【0151】
いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号115において記載されるようなVH配列、および配列番号116において記載されるようなVL配列を含む。
いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、6つの相補性決定領域(CDR):CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含み、ここで、CDRH1は、配列番号117において記載されるような配列を含み、CDRH2は、配列番号125において記載されるような配列を含み、CDRH3は、配列番号133において記載されるような配列を含み、CDRL1は、配列番号118において記載されるような配列を含み、CDRL2は、配列番号126において記載されるような配列を含み、およびCDRL3は、配列番号134において記載されるような配列を含む。
【0152】
いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、6つの相補性決定領域(CDR):CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含み、ここで、CDRH1は、配列番号119において記載されるような配列を含み、CDRH2は、配列番号127において記載されるような配列を含み、CDRH3は、配列番号135において記載されるような配列を含み、CDRL1は、配列番号120において記載されるような配列を含み、CDRL2は、配列番号128において記載されるような配列を含み、およびCDRL3は、配列番号136において記載されるような配列を含む。
【0153】
いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、6つの相補性決定領域(CDR):CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含み、ここで、CDRH1は、配列番号121において記載されるような配列を含み、CDRH2は、配列番号129において記載されるような配列を含み、CDRH3は、配列番号137において記載されるような配列を含み、CDRL1は、配列番号122において記載されるような配列を含み、CDRL2は、配列番号130において記載されるような配列を含み、およびCDRL3は、配列番号138において記載されるような配列を含む。
【0154】
いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、6つの相補性決定領域(CDR):CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含み、ここで、CDRH1は、配列番号123において記載されるような配列を含み、CDRH2は、配列番号131において記載されるような配列を含み、CDRH3は、配列番号139において記載されるような配列を含み、CDRL1は、配列番号124において記載されるような配列を含み、CDRL2は、配列番号132において記載されるような配列を含み、およびCDRL3は、配列番号140において記載されるような配列を含む。
【0155】
いくつかの態様において、本開示は、抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域についてのアミノ酸および核酸配列のバリアント(例えばホモログ)を企図することが、理解されるべきである。「相同性」とは、2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチド部分の間の同一性の割合を指す。用語「実質的な相同性」とは、核酸またはそのフラグメントに言及する場合、適切なヌクレオチドの挿入または欠失により別の核酸(またはその相補鎖)と最適にアラインメントされた場合に、アラインメントされた配列の約90~100%においてヌクレオチド配列同一性が存在することを示す。例えば、いくつかの態様において、実質的な相同性を共有する核酸配列は、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性である。ポリペプチドまたはそのフラグメントに言及する場合、用語「実質的な相同性」とは、適切なギャップ、挿入または欠失により別の最適にポリペプチドとアラインメントされた場合に、アラインメントされた配列の約90~100%においてヌクレオチド配列同一性が存在することを示す。用語「高度に保存された」とは、少なくとも80%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、およびより好ましくは、97%を超える同一性を意味する。例えば、いくつかの態様において、高度に保存されたタンパク質は、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を共有する。いくつかの場合において、高度に保存されたとは、100%の同一性を指してもよい。同一性は、当業者により、例えば当業者に公知のアルゴリズムおよびコンピュータープログラムを用いて、容易に決定される。
【0156】
いくつかの態様において、本開示のRAN抗体は、高いアフィニティーにより、例えば、10-7M、10-8M、10-9M、10-10Mより低い、10-11Mまたはそれより低いKdにより、RANタンパク質に結合することができる。例えば、抗RAN抗体または抗原結合フラグメントは、5pM~500nM、例えば、50pM~100nM、例えば、500pM~50nMのアフィニティーにより、RANタンパク質に結合することができる。本開示はまた、本明細書において記載される抗体のうちのいずれかと、RANタンパク質への結合について競合し、50nM以下(例えば、20nM以下、10nM以下、500pM以下、50pM以下、または5pM以下)のアフィニティーを有する、抗体または抗原結合フラグメントを含む。抗RANタンパク質抗体のアフィニティーおよび結合動態学は、バイオセンサー技術(例えば、OCTETまたはBIACORE)を含むがこれらに限定されない当該分野において公知の任意の方法を用いて試験することができる。
【0157】
いくつかの態様において、本開示の抗RAN抗体は、VH、VLおよびCDRを含み、アミノ酸配列を、下の表4において示す。
表4-抗RAN抗体のアミノ酸配列
【表A-1】
【表A-2】
【0158】
表5-抗RAN抗体の核酸配列
【表B-1】
【表B-2】
【表B-3】
表6-抗RAN抗体の核酸およびアミノ酸フレームワーク配列
【表C-1】
【表C-2】
【表C-3】
表7-定常領域の配列
【表D-1】
【表D-2】
【表D-3】
【0159】
いくつかの態様において、抗体クローン27B11.A7は、ポリGAに結合する。いくつかの態様において、クローン27B11.A7は、IgG1抗体である。いくつかの態様において、抗体クローン23H2.D1.B5は、ポリGAに結合する。いくつかの態様において、抗体クローン23H2.D1.B5は、IgG3抗体である。いくつかの態様において、抗体クローン16A3.C8は、ポリSerに結合する。いくつかの態様において、抗体クローン16A3.C8は、IgG1抗体である。いくつかの態様において、抗体クローンHL2362-2G4は、ポリPRに結合する。いくつかの態様において、抗体クローンHL2362-2G4は、IgG2Aカッパ抗体である。
【0160】
抗RAN抗体は、RANタンパク質に関連する疾患の1つ以上の症状を処置するか、またはその処置を補助するために用いることができる。いくつかの態様において、RANタンパク質に関連する疾患は、以下からなる群より選択される:筋萎縮性側索硬化症(ALS)、または前頭側頭葉型認知症;1型筋強直性ジストロフィー(DM1)および2型筋強直性ジストロフィー(DM2);1、2、3、6、7、8、10、12、17、31および36型脊髄小脳変性症;球脊髄性筋萎縮症;歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA);ハンチントン病(HD);脆弱X振戦失調症候群(FXTAS);フックス内皮角膜ジストロフィー(FECD);ハンチントン病類症2型症候群(HDL2);脆弱X症候群(FXS);7pl l.2葉酸感受性脆弱部位FRA7Aに関する障害;葉酸感受性脆弱部位2ql 1 FRA2Aに関する障害;ならびに脆弱XE症候群(FRAXE)。特定の態様において、RANタンパク質に関連する神経学的疾患は、アルツハイマー病(AD)である。
【0161】
いくつかの態様において、抗RAN抗体は、例えば、1つ以上の抗RAN抗体の治療有効量を、RANタンパク質に関連する疾患の1つ以上の症状(例えば、アルツハイマー病の早期ステージ)を有するか、またはRANタンパク質に関連する疾患を発症するリスクがある(例えば、本願において記載される1つ以上のアッセイに基づいて)ものと診断された対象に投与することにより、RANタンパク質に関連する疾患の1つ以上の症状を処置するか、またはその処置を補助するために用いることができる。いくつかの態様において、本明細書において開示される抗RAN抗体または抗原結合フラグメントのうちの1つ以上が、対象に投与され、ここで、対象は、対象から得られた生体試料中の少なくとも1つのRANタンパク質の検出により、RANタンパク質に関連する疾患を有するものとして特徴づけられている。
【0162】
抗RAN抗体の生成
典型的には、ポリクローナル抗体は、マウス、ウサギまたはヤギなどの好適な哺乳動物の接種により、生成される。抗原は、哺乳動物中に注射される。これが、Bリンパ球を、抗原に対して特異的なIgG免疫グロブリンを生成するように誘導する。このポリクローナルIgGは、哺乳動物の血清から精製される。モノクローナル抗体は、一般に、単一の細胞株(例えば、ハイブリドーマ細胞株)により生成される。いくつかの態様において、抗RAN抗体は、精製される(例えば、血清から単離される)。
【0163】
本明細書において開示される例示的な抗RAN抗体は、表8において記載される抗原を用いて生成された。いくつかの態様において、抗原は、以下から選択されるRANタンパク質リピート配列を含む:ポリ(プロリン-アルギニン)[ポリ(PR)];ポリ(グリシン-アルギニン)[ポリ(GR)];ポリ(セリン)[ポリSer];ポリ(システイン-プロリン)[ポリ(CP)];ポリ(グリシン-プロリン)[(ポリ(GP)];ポリ(グリシン)[ポリ(G)];ポリ(アラニン)[ポリAla];ポリ(グリシン-アラニン)[ポリ(GA)];ポリ(グリシン-アスパラギン酸)[ポリ(GD)];ポリ(グリシン-グルタミン酸)[ポリ(GE)];ポリ(グリシン-グルタミン)[ポリ(GQ)];ポリ(グリシン-スレオニン)[ポリ(GT)];ポリ(ロイシン)[ポリLeu];ポリ(ロイシン-プロリン)[ポリ(LP)];ポリ(ロイシン-プロリン-アラニン-システイン)[ポリ(LPAC)](配列番号260);ポリ(ロイシン-セリン)[ポリ(LS)];ポリ(プロリン)[ポリ(P)];ポリ(プロリン-アラニン)[ポリ(PA)];ポリ(グルタミン-アラニン-グリシン-アルギニン)[ポリ(QAGR)](配列番号261);ポリ(アルギニン-グルタミン酸)[ポリ(RE)];ポリ(セリン-プロリン)[ポリ(SP)]、ポリ(バリン-プロリン)[ポリ(VP)]、ポリ(フェニルアラニン-プロリン)[ポリ(FP)]、ポリ(グリシン-リジン)[ポリ(GK)]、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、ポリ(PGGRGE)(配列番号258)、ポリ(GRQRGVNT)(配列番号266)、およびポリ(GSKHREAE)(配列番号267)。
【0164】
【0165】
抗RAN抗体を得るために、多数の方法を用いることができる。例えば、抗体は、組み換えDNA方法を用いて生成することができる。モノクローナル抗体はまた、既知の方法に従って、ハイブリドーマの作製により生成してもよい(例えば、Kohler and Milstein (1975) Nature, 256: 495-499を参照)。この様式において形成されたハイブリドーマを、次いで、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA;例えば、RCAベースのELISAまたはrtPCRベースのELISA)および表面プラズモン共鳴(例えば、OCTETまたはBIACORE)分析などの標準的な方法を用いてスクリーニングして、特定の抗原に特異的に結合する抗体を産生する1つ以上のハイブリドーマを同定する。特定された抗原(例えば、RANタンパク質)の任意の形態、例えば、組み換え抗原、天然に存在する形態、その任意のバリアントまたはフラグメントを、免疫原として用いることができる。抗体を作製する一つの例示的な方法として、抗体またはそのフラグメント(例えばscFv)を発現するタンパク質発現ライブラリー、例えば、ファージまたはリボソームディスプレイライブラリーをスクリーニングすることが挙げられる。ファージディスプレイは、例えば、Ladnerら、米国特許第5,223,409号;Smith (1985) Science 228: 1315-1317;Clackson et al. (1991) Nature, 352: 624-628;Marks et al. (1991) J. Mol. Biol., 222: 581-597;W092/18619;WO91/17271;WO92/20791;WO92/15679;WO93/01288;WO92/01047;WO92/09690;ならびにWO90/02809において記載される。
【0166】
別の態様において、モノクローナル抗体を、非ヒト動物から得て、次いで修飾、例えば当該分野において公知の組み換えDNA技術を用いてキメラ化する。キメラ抗体を作製するための多様なアプローチが記載されている。例えば、以下を参照:Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81:6851, 1985;Takeda et al., Nature 314:452, 1985;Cabillyら、米国特許第4,816,567号;Bossら、米国特許第4,816,397号;Tanaguchiら、欧州特許公開EP171496;欧州特許公開0173494、英国特許GB2177096B。
【0167】
抗体はまた、当該分野において公知の方法により、ヒト化することができる。例えば、所望される結合特異性を有するモノクローナル抗体を、商業的にヒト化することができる(Scotgene, Scotland;ならびにOxford Molecular, Palo Alto, Calif.)。トランスジェニック動物において発現するもののような完全ヒト化抗体は、本発明の範囲内である(例えば、Green et al. (1994) Nature Genetics 7, 13;ならびに米国特許第5,545,806号および同第5,569,825号を参照)。さらなる抗体生成技術については、Antibodies: A Laboratory Manual, Second Edition. Edited by Edward A. Greenfield, Dana-Farber Cancer Institute(C)(2014年)を参照。本開示は、必ずしも、抗体の任意の特定のソース、生成の方法または特定の特徴に限定されない。
【0168】
本開示のいくつかの側面は、ポリヌクレオチドまたはベクターで形質転換された、単離された細胞(例えば宿主細胞)に関する。宿主細胞は、原核生物または真核生物の細胞であってよい。宿主細胞中に存在するポリヌクレオチドまたはベクターは、宿主細胞のゲノム中に組み込まれても、または、染色体外に維持されてもよい。宿主細胞は、任意の原核生物または真核生物の細胞、例えば細菌、昆虫、真菌、植物、動物またはヒト細胞であってよい。いくつかの態様において、真菌細胞は、例えば、Saccharomyces属のもの、特にS. cerevisiae種のものである。用語「原核生物の」は、抗体または対応する免疫グロブリン鎖の発現のためにDNAまたはRNA分子で形質転換または遺伝子導入することができる、全ての細菌を含む。原核生物宿主は、例えば、E. coli、S. typhimurium、Serratia marcescensおよびBacillus subtilisなどの、グラム陰性ならびにグラム陽性細菌を含んでもよい。用語「真核生物の」は、酵母、高等植物、昆虫および脊椎動物の細胞、例えばNSOおよびCHO細胞などの哺乳動物細胞を含む。組み換え生成の手順において使用される宿主に依存して、ポリヌクレオチドによりコードされる抗体または免疫グロブリン鎖をグリコシル化しても、または非グリコシル化してもよい。抗体または対応する免疫グロブリン鎖はまた、最初のメチオニンアミノ酸残基を含んでもよい。
【0169】
いくつかの態様において、ベクターが適切な宿主中に組み込まれた後は、宿主を高レベルのヌクレオチド配列の発現のために好適な条件下に維持してもよく、所望される場合は、その後に、免疫グロブリン軽鎖、重鎖、軽鎖/重鎖ダイマー、または完全な抗体、抗原結合フラグメント、または他の免疫グロブリンの形態の回収および精製を行ってもよい;Beychok, Cells of Immunoglobulin Synthesis, Academic Press, N.Y., (1979)を参照。したがって、ポリヌクレオチドまたはベクターは、細胞中に導入され、これが次いで、抗体または抗原結合フラグメントを生成する。さらに、前述の宿主細胞を含むトランスジェニック動物、好ましくは哺乳動物を、ラージスケールでの抗体または抗体フラグメントの生成のために用いてもよい。
【0170】
形質転換された宿主細胞は、当該分野において公知の技術に従って、発酵槽中で増殖させ、最適な細胞増殖を達成するまで培養することができる。発現された後、完全な抗体、それらのダイマー、個々の軽鎖および重鎖、他の免疫グロブリンの形態、または抗原結合フラグメントは、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む当該分野の標準的な手順に従って精製することができる;Scopes、「Protein Purification」、Springer Verlag, N.Y.(1982年)を参照。抗体または抗原結合フラグメントを、次いで、増殖培地、細胞ライセート、または細胞膜画分から単離することができる。例えば微生物により発現された、抗体または抗原結合フラグメントの単離および精製は、例えば調製クロマトグラフィー分離および免疫学的分離(例えば抗体の定常領域に対するモノクローナルまたはポリクローナル抗体の使用を含むものなど)などの、任意の従来の手段によるものであってよい。
【0171】
本開示の側面は、ハイブリドーマに関し、これは、無期限に延長されたモノクローナル抗体のソースを提供する。本明細書において用いられる場合、「ハイブリドーマ細胞」とは、Bリンパ芽球細胞とミエローマ融合パートナーとの融合から誘導される不死化された細胞を指す。モノクローナル抗体産生細胞(例えば、ハイブリドーマ細胞)を調製するために、その抗体力価が確認されている個々の動物(例えばマウス)を選択して、最終免疫の2日~5日後に、その脾臓またはリンパ節を採取して、その中に含まれる抗体産生細胞をミエローマ細胞と融合させて、所望されるモノクローナル抗体の産生者であるハイブリドーマを調製する。抗血清中の抗体力価の測定は、例えば、本明細書において後で記載されるような標識されたタンパク質と抗血清とを反応させて、次いで、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより、行うことができる。細胞融合は、既知の方法、例えばKochlerおよびMilstein(Nature 256:495 (1975))により記載される方法に従って行うことができる。融合プロモーター、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはセンダイウイルス(HVJ)が用いられる。
【0172】
ミエローマ細胞の例として、NS-1、P3U1、SP2/0、AP-1などが挙げられる。用いられるべき抗体産生者細胞(脾臓細胞)の数とミエローマ細胞の数との比率は、好ましくは約1:1~約20:1である。PEG(好ましくはPEG1000~PEG6000)は、好ましくは約10%~約80%の濃度で添加される。細胞融合は、両方の細胞の混合物を約20℃~約40℃、好ましくは約30℃~約37℃で、約1分間~10分間にわたりインキュベートすることにより、効率的に行うことができる。
【0173】
抗体(例えば、本発明の腫瘍抗原または自己抗体に対して)を産生するハイブリドーマについてのスクリーニングのために、多様な方法を用いることができる。例えば、ここで、ハイブリドーマの上清を、抗体が直接的にまたはキャリアと一緒に吸着している固相(例えばマイクロプレート)に添加して、次いで、放射活性物質または酵素により標識された抗免疫グロブリン抗体(細胞融合においてマウス細胞が用いられる場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはタンパク質Aを添加して、固相に結合したタンパク質に対するモノクローナル抗体を検出する。あるいは、ハイブリドーマの上清を、抗免疫グロブリン抗体またはタンパク質Aが吸着している固相に添加して、次いで、放射活性物質または酵素で標識されたタンパク質を添加して、固相に結合したタンパク質に対するモノクローナル抗体を検出する。
【0174】
モノクローナル抗体の選択は、任意の既知の方法またはその改変法に従って行うことができる。通常、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チジミン)が添加された動物細胞のための培地が使用される。ハイブリドーマが増殖することができる限りにおいて、任意の選択および増殖培地を使用することができる例えば、1%~20%、好ましくは10%~20%のウシ胎仔血清を含むRPMI 1640培地、1%~10%のウシ胎仔血清を含むGIT培地、ハイブリドーマの培養のための無血清培地(SFM-101、Nissui Seiyaku)などを用いることができる。通常、培養は、20℃~40℃、好ましくは37℃で、約5日間~3週間、好ましくは1週間~2週間にわたり、約5%のCO2ガス下において行われる。ハイブリドーマ培養物の上清の抗体力価は、抗血清中の抗タンパク質の抗体力価に関して上に記載されるものと同じ様式に従って測定することができる。
【0175】
ハイブリドーマの培養物から直接的に免疫グロブリンを得ることの代替として、再配列された重鎖および軽鎖の遺伝子座の、その後の発現および/または遺伝子操作のためのソースとして、不死化されたハイブリドーマ細胞を用いてもよい。再配列された抗体遺伝子を、適切なmRNAから逆転写させて、cDNAを生成することができる。所望される場合、重鎖定常領域を、異なるアイソタイプのものと交換するか、または完全に取り除くことができる。可変領域は、単鎖Fv領域をコードするように連結させることができる。1つより多くの標的に対する結合能力を付与するために、複数のFv領域を連結させてもよく、または、重鎖と軽鎖との組み合わせを使用してもよい。抗体可変領域のクローニングおよび組み換え抗体の作製のために、任意の適切な方法を用いることができる。
【0176】
いくつかの態様において、重鎖および/または軽鎖の可変領域をコードする適切な核酸を得て、これを、標準的な組み換え宿主細胞中に遺伝子導入することができる発現ベクター中に挿入する。多様なかかる宿主細胞を、用いることができる。いくつかの態様において、効率的なプロセッシングおよび生成のために、哺乳動物宿主細胞が有利である場合がある。この目的のために有用な典型的な哺乳動物細胞株として、CHO細胞、293細胞、またはNSO細胞が挙げられる。抗体または抗原結合フラグメントの生成は、改変された組み換え宿主を宿主細胞の増殖およびコード配列の発現のために適切な条件下において培養することにより、行うことができる。抗体または抗原結合フラグメントは、培養物からそれらを単離することにより、回収することができる。発現系を、生じた抗体が培地中に分泌されるように、シグナルペプチドを含むように設計してもよい;しかし、細胞内生成もまた、可能である。
【0177】
本開示はまた、本明細書において記載される抗体の免疫グロブリン鎖の少なくとも可変領域をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドによりコードされる可変領域は、上記のハイブリドーマのいずれか1つにより生成される抗体の可変領域のVHおよび/またはVLの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む。
【0178】
抗体または抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチドは、例えば、これらのポリヌクレオチドのうちのいずれかを単独でまたは組み合わせて含む、DNA、cDNA、RNAまたは合成で生成されたDNAもしくはRNA、または組み換え的に生成されたキメラ核酸分子であってよい。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、ベクターの一部である。かかるベクターは、好適な宿主細胞においておよび好適な条件下においてベクターの選択を可能にするマーカー遺伝子などの、さらなる遺伝子を含んでもよい。
【0179】
いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、原核生物または真核生物の細胞における発現を可能にする発現制御配列に作動的に連結される。ポリヌクレオチドの発現は、翻訳可能なmRNAへのポリヌクレオチドの転写を含む。真核生物細胞、好ましくは哺乳動物細胞における発現を保証する調節エレメントは、当業者に周知である。それらは、転写の開始を促進する調節配列、および任意に転写の終結およびトランスクリプトの安定化を促進するポリAシグナルを含んでもよい。さらなる調節エレメントは、転写ならびに翻訳のエンハンサー、および/または天然で関連するもしくは異種性のプロモーター領域を含んでもよい。原核生物宿主細胞における発現を許容する可能な調節エレメントとして、例えばE. coliにおけるPL、Lac、TrpまたはTacプロモーターが挙げられ、真核生物宿主細胞における発現を許容する調節エレメントの例は、酵母におけるAOX1もしくはGAL1プロモーター、または哺乳動物および他の動物細胞におけるCMV-プロモーター、SV40-プロモーター、RSV-プロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMV-エンハンサー、SV40-エンハンサーもしくはグロビンイントロンである。
【0180】
転写の開始の原因であるエレメントの他にも、かかる調節エレメントはまた、SV40-ポリA部位またはtk-ポリA部位などの転写終結シグナルを、ポリヌクレオチドの下流に含んでもよい。さらに、使用される発現系に依存して、ポリペプチドを細胞区画に方向づけるか、それを培地中に分泌することができるリーダー配列を、ポリヌクレオチドのコード配列に加えてもよく、これは、当該分野において周知である。リーダー配列は、適切な時期において、翻訳、開始および終結配列と共に組み立てられ、好ましくは、リーダー配列は、翻訳されたタンパク質またはその部分の、例えば細胞外培地中への分泌を指揮することができる。任意に、所望される特徴(例えば発現された組み換え生成物の安定化または簡便な精製)を付与するCまたはN末端の識別(identification)ペプチドを含む融合タンパク質をコードする、異種性ポリヌクレオチド配列を用いてもよい。
【0181】
いくつかの態様において、軽鎖および/または重鎖の少なくとも可変ドメインをコードするポリヌクレオチドは、両方の免疫グロブリン鎖または一方のみの可変ドメインをコードしていてよい。同様に、ポリヌクレオチドは、同じプロモーターの制御下にあっても、発現について別々に制御されていてもよい。さらに、いくつかの側面は、ベクター、特に、遺伝子操作において慣用的に用いられるプラスミド、コスミド、ウイルスおよびバクテリオファージであって、抗体または抗原結合フラグメントの免疫グロブリン鎖の可変ドメインをコードするポリヌクレオチドを(任意に抗体のもう一方の免疫グロブリン鎖の可変ドメインをコードするポリヌクレオチドと組み合わせて)含むものに関する。
【0182】
いくつかの態様において、発現制御配列は、真核生物宿主細胞を形質転換または遺伝子導入することができるベクターにおいて、真核生物プロモーター系として提供されるが、原核生物宿主のための制御配列もまた、用いることができる。レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、またはウシパピローマウイルスなどのウイルスに由来する発現ベクターは、ポリヌクレオチドまたはベクターの標的細胞集団中への送達のために用いることができる(例えば、細胞を、抗体または抗原結合フラグメントを発現するように操作するために)。組み換えウイルスベクターを構築するために、多様な適切な方法を用いることができる。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドおよびベクターは、標的細胞への送達のために、リポソームへと再構成することができる。ポリヌクレオチド(例えば、免疫グロブリン鎖をコードする配列の重鎖および/または軽鎖可変ドメインおよび発現制御配列)を含むベクターは、細胞宿主の型に依存して変化する好適な方法により、宿主細胞中にトランスファーすることができる。
【0183】
修飾
本開示のいくつかの側面は、1つ以上のRANタンパク質に対してターゲティングされた、抗体-薬物抱合体に関する。本明細書において用いられる場合、「抗体薬物抱合体」とは、ターゲティングされた分子(例えば、治療分子などの生物学的に活性な分子、および/または検出可能な標識)に連結された、抗体またはその抗原結合フラグメントを含む分子を指す。したがって、いくつかの態様において、本開示の抗体または抗原結合フラグメントは、検出可能な標識で修飾されていてもよく、これは、これらに限定されないが、1つ以上のRANタンパク質の検出および単離のための、酵素、補欠分子族(prosthetic group)、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射活性材料、ポジトロン放出性金属、非放射活性常磁性金属イオン、およびアフィニティー標識を含む。検出可能な物質は、当該分野において公知の技術を用いて、本開示のポリペプチドに、直接的に、または中間体(例えば、当該分野において公知のリンカーなど)を通して間接的に、カップリングまたは抱合させることができる。好適な酵素の非限定的な例として、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが挙げられる;好適な補欠分子族複合体の非限定的な例として、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられる;好適な蛍光材料の非限定的な例として、ビオチン、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、またはフィコエリトリンが挙げられる;発光材料の一例として、ルミノールが挙げられる;生物発光材料の非限定的な例として、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられる;ならびに好適な放射活性材料の例として、放射活性金属イオン、例えば、アルファ放出体または他の放射性同位体、例えば、ヨウ素(131I、125I、123I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(115mIn、113mIn、112In、111In)、およびテクネチウム(99Tc、99mTc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、86R、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、およびスズ(113Sn、117Sn)などが挙げられる。検出可能な物質は、当該分野において公知の技術を用いて、本開示の抗RAN抗体または抗原結合フラグメントに、直接的に、または中間体(例えば、当該分野において公知のリンカーなど)を通して間接的に、カップリングまたは抱合させることができる。検出可能な物質に抱合した抗RAN抗体は、本明細書において記載されるような診断アッセイのために用いることができる。
【0184】
いくつかの態様において、本開示の抗体または抗原結合フラグメントは、治療用部分(例えば治療剤)で修飾されていてもよい。いくつかの態様において、抗体は、リンカーを介してターゲティングされた剤にカップリングされる。本明細書において用いられる場合、用語「リンカー」とは、分子またはアミノ酸配列などの配列であって、架橋におけるもののように、1つの分子または配列を別の分子または配列に付着させるものを指す。「連結された」、「抱合した」、または「カップリングされた」とは、共有結合、または非共有結合、またはファンデルワールス力などの他の結合により、付着または結合されていることを意味する。本開示により記載される抗体は、直接的に、例えばタンパク質またはペプチドの検出可能な部分との融合タンパク質として(任意の連結配列、例えば可撓性のリンカー配列により、またはこれを用いずに)、または化学的なカップリング部分を介して、ターゲティングされた剤(例えば、治療用部分または検出可能な部分)に連結することができる。多数のかかるカップリング部分、例えば、例えば国際特許出願公開番号WO2009/036092において記載されるようなペプチドリンカーまたは化学リンカーが、当該分野において公知である。いくつかの態様において、リンカーは、可撓性のアミノ酸配列である。可撓性のアミノ酸配列の例として、グリシンおよびセリンリッチなリンカーが挙げられ、これは、2つ以上のグリシン残基の伸長部を含む。いくつかの態様において、リンカーは、フォトリンカーである。フォトリンカーの例として、ケチル反応性ベンゾフェノン(BP)、アントラキノン(AQ)、ニトレン反応性ニトロフェニルアジド(NPA)、およびカルベン反応性フェニル-(トリフルオロメチル)ジアジリン(PTD)が挙げられる。
【0185】
医薬組成物
いくつかの側面において、本開示は、抗RAN抗体または抗原結合フラグメントを含む医薬組成物に関する。いくつかの態様において、組成物は、抗RAN抗体および薬学的に受入可能なキャリアを含む。本明細書において用いられる場合、用語「薬学的に受入可能なキャリア」は、医薬の投与と適合性の、任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などを含むことを意図される。薬学的に活性な物質のためのかかる媒体および剤の使用は、当該分野において周知である。従来の媒体または剤が活性化合物と不適合性である場合を除いて、組成物中でのその使用が企図される。補充の活性化合物もまた、組成物中に組み込むことができる。医薬組成物は、以下に記載されるように調製することができる。活性成分は、任意の慣用的な薬学的に受入可能なキャリアまたは賦形剤と混合されるか、またはこれと配合することができる。組成物は、無菌であってよい。
【0186】
典型的には、医薬組成物は、剤(例えば抗RAN抗体)の有効量を送達するために処方される。一般的に、活性剤の「有効量」とは、所望される生物学的応答(例えば、アルツハイマー病の1つ以上の症状を寛解させること)を引き起こすために十分な量を指す。剤の有効量は、所望される生物学的エンドポイント、化合物の薬物動態、処置されている疾患(例えば、アルツハイマー病、リピート伸長疾患)、投与の様式、および患者などの要因に依存して、変化し得る。
【0187】
組成物は、その投与がレシピエントである患者により耐容され得る場合に、「薬学的に受入可能なキャリア」であると言われる。無菌のリン酸緩衝化食塩水は、薬学的に受入可能なキャリアの一例である。他の好適なキャリアは、当該分野において周知である。例えば、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES、第18版(1990年)を参照。
【0188】
慣用的に使用され、活性剤に関して不活性である、任意の投与の経路、ビヒクルまたはキャリアを、本開示の医薬組成物を調製および投与するために利用してよいことが、当業者により理解されるであろう。かかる方法、ビヒクルおよびキャリアの説明的なものは、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences、第4版(1970年)において記載されるものであり、その開示は、本明細書において参考として援用される。本開示の原理に触れた当業者は、好適かつ適切なビヒクル、賦形剤およびキャリアを決定することにおいて、または活性成分をそれと配合して本開示の医薬組成物を形成することにおいて、何ら困難を経験しないであろう。
【0189】
治療有効量としてもまた言及される、化合物(例えば抗RAN抗体)の有効量は、RANタンパク質に関連する疾患に関連する少なくとも1つの有害効果、例えば、記憶喪失、認知障害、協調の喪失、発話障害などを寛解させるために有効な量である。いくつかの態様において、RANタンパク質に関連する神経学的疾患は、以下からなる群より選択される:筋萎縮性側索硬化症(ALS)、または前頭側頭葉型認知症;1型筋強直性ジストロフィー(DM1)および2型筋強直性ジストロフィー(DM2);1、2、3、6、7、8、10、12、17、31および36型脊髄小脳変性症;球脊髄性筋萎縮症;歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA);ハンチントン病(HD);脆弱X振戦失調症候群(FXTAS);フックス内皮角膜ジストロフィー(FECD);ハンチントン病類症2型症候群(HDL2);脆弱X症候群(FXS);7pl l.2葉酸感受性脆弱部位FRA7Aに関する障害;葉酸感受性脆弱部位2ql 1 FRA2Aに関する障害;ならびに脆弱XE症候群(FRAXE)。特定の態様において、RANタンパク質に関連する神経学的疾患は、アルツハイマー病(AD)である。医薬組成物中に含まれるべき治療有効量は、いくつかの要因、例えば、処置されるべき患者の型、サイズおよび状態、意図される投与の様式、患者が意図される投与形態を取り込む能力などに依存する。一般に、活性剤の量は、約0.1~約250mg/kg、および好ましくは約0.1~約100mg/kgを提供するように、各々の投与形態中に含まれる。当業者は、適切な治療有効量を経験的に決定することができるであろう。
【0190】
本明細書において提供される教示と組み合わせて、多様な活性化合物の中から選択し、効力、相対的バイオアベイラビリティー、患者の体重、有害な副作用の重篤度、および選択された投与の様式などの要因を重みづけすることにより、有効な予防または治療処置レジメンを計画することができ、これは、実質的な毒性を引き起こさないが、特定の対象を処置するために全体として有効である。任意の特定の適用のための有効量は、処置されている疾患または状態、投与されている特定の治療剤、対象のサイズ、または疾患または状態の重篤度などの要因に依存して、変化し得る。当業者は、特定の核酸および/または他の治療剤の有効量を、過度の実験を必要とすることなく、経験的に決定することができる。
【0191】
いくつかの場合において、本開示の化合物は、コロイド分散系において調製される。コロイド分散系は、水中油型エマルジョン、ミセル、混合型ミセルおよびリポソームを含む、液体ベースの系を含む。いくつかの態様において、本開示のコロイド系は、リポソームである。リポソームは、in vivoまたはin vitroでの送達ベクターとして有用な人工の膜容器である。0.2~4.0μmの範囲のサイズの大型単層ビヒクル(LUV)は、大型の高分子をカプセル化することができることが示されている。
【0192】
リポソームを、モノクローナル抗体、糖、糖脂質またはタンパク質などの特定のリガンドにカップリングすることにより、リポソームを特定の組織にターゲティングすることができる。リポソームを、例えば平滑筋細胞にターゲティングするために有用であり得るリガンドとして、これらに限定されないが、平滑筋細胞特異的な受容体および分子と相互作用する抗体などの完全な分子または分子のフラグメント、癌細胞の細胞表面マーカーと相互作用する、抗体などの完全な分子または分子のフラグメントが挙げられる。かかるリガンドは、当業者に周知の結合アッセイにより容易に同定することができる。なお他の態様において、リポソームは、それを当該分野において公知の抗体にカップリングすることにより、組織にターゲティングすることができる。
【0193】
本開示により記載される化合物は、単独で(例えば、食塩水またはバッファー中で)、または当該分野において公知の任意の送達ビヒクルを用いて、投与することができる。例えば、以下の送達ビヒクルが記載されている:コクレアート(cochleate);エマルソーム(Emulsome);ISCOM;リポソーム;生細菌ベクター(例えば、サルモネラ、エシェリキア・コリ、Bacillus Calmette-Guerin、シゲラ、ラクトバチルス);生ウイルスベクター(例えば、ワクシニア、アデノウイルス、単純ヘルペス);マイクロスフェア;核酸ワクチン;ポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロース、キトサン);ポリマー環;プロテアソーム;フッ化ナトリウム;トランスジェニック植物;ビロソーム;ならびに、ウイルス様粒子。
【0194】
本開示の処方物は、薬学的に受入可能な溶液中で投与され、これは、慣用的に、薬学的に受入可能な濃度の塩、緩衝化剤、保存剤、適合性のキャリア、アジュバントおよび任意に他の治療成分を含んでもよい。
【0195】
薬学的に受入可能なキャリアという用語は、1つ以上の適合性の固体または液体の充填剤、希釈剤またはカプセル化用物質であって、ヒトまたは他の脊椎動物への投与のために好適であるものを意味する。キャリアという用語は、天然または合成の有機または無機の成分であって、適用を容易にするために、それと活性成分とを組み合わせるものを表す。医薬組成物の構成成分はまた、本開示の化合物と、および互いと、所望される薬学的効率を実質的に損なうであろう相互作用が存在しないような様式において、混合することができる。
【0196】
糖衣錠のコアに、好適なコーティング剤を提供する。この目的のために、濃縮された糖溶液を用いることができ、これは任意に、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ならびに好適な有機溶媒または溶媒混合物を含んでもよい。同定のため、または活性化合物の用量の様々な組み合わせを特徴づけるために、染料または色素を、錠剤または糖衣錠のコーティングに添加してもよい。
【0197】
本明細書において記載される処方物に加えて、化合物はまた、デポー調製物として処方してもよい。かかる長期作用型処方物は、好適なポリマー性もしくは疎水性の材料(例えば受入可能な油脂中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂と共に、あるいは、低溶解性の誘導体として、例えば低溶解性の塩として、処方することができる。
【0198】
医薬組成物はまた、好適な固相またはゲル相のキャリアまたは賦形剤を含んでもよい。かかるキャリアまたは賦形剤の例として、これらに限定されないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、多様な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられる。
【0199】
好適な液体または固体の医薬調製形態は、例えば、吸入のための水溶液または食塩水溶液、マイクロカプセル化されたもの、コクレアート化されたもの(encochleated)、顕微鏡的な金粒子上にコーティングされたもの、リポソーム中に含まれたもの、噴霧されたもの、エアロゾル、皮膚中への移植のためのペレット、または皮膚中へ掻きつけるための鋭い物体上に乾燥されたものである。医薬組成物はまた、顆粒、粉末、錠剤、コーティングされた錠剤、(マイクロ)カプセル、坐剤、シロップ、エマルジョン、懸濁液、クリーム、液滴、または活性化合物の遅延型放出を伴う調製物(この調製物において、賦形剤ならびに崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤潤滑剤、香味剤、甘未剤または可溶化剤などの添加剤および/または補助剤が、上記のように習慣的に用いられる。医薬組成物は、多様な薬物送達系における使用のために好適である。薬物送達のための方法の簡単な総説については、本明細書において参考として援用されるLanger R (1990) Science 249:1527-1533を参照。
【0200】
化合物は、それ自体(ニート)で、または薬学的に受入可能な塩の形態において投与してもよい。医薬中で用いられる場合、塩は、薬学的に受入可能であるべきであるが、薬学的に受入可能でない塩は、その薬学的に受入可能な塩を調製するために慣用的に用いてもよい。かかる塩として、これらに限定されないが、以下の酸から調製されるものが挙げられる:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン-2-スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸。また、かかる塩は、カルボン酸基のナトリウム、カリウムまたはカルシウムの塩などの、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩として調製することができる。
【0201】
好適な緩衝化剤として、以下が挙げられる:酢酸および塩(1~2%w/v);クエン酸および塩(1~3%w/v);ホウ酸および塩(0.5~2.5%w/v);ならびにリン酸および塩(0.8~2%w/v)。好適な保存剤として、塩化ベンザルコニウム(0.003~0.03%w/v);クロロブタノール(0.3~0.9%w/v);パラベン(0.01~0.25%w/v)およびチメロサール(0.004~0.02%w/v)が挙げられる。
【0202】
組成物は、単位投与形態において便利に提示してもよく、製薬の分野において周知の方法のうちのいずれを用いて調製してもよい。全ての方法は、化合物を、1つ以上の付属成分を構成するキャリアと関連づけるステップを含む。一般的に、組成物は、化合物を、液体のキャリア、微細に分割された固体のキャリア、または両方と、均一にかつ密接に関連づけ、次いで、必要である場合には、生成物を成形することにより、調製される。液体の用量単位は、バイアルまたはアンプルである。固体の用量単位は、錠剤、カプセルおよび坐剤である。
【0203】
投与
治療剤は、当該分野において公知の任意の好適なモダリティーにより送達することができる。いくつかの態様において、治療剤(例えば、タンパク質、抗体、干渉核酸など)は、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルスベクター、組み換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAVベクター)、レンチウイルスベクターなど)、またはプラスミドベースのベクターなどのベクターにより、対象に送達される。いくつかの態様において、治療剤は、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子中で、対象(例えば、1つ以上のRANタンパク質の発現により特徴づけられるアルツハイマー病を有する対象)に送達される。
【0204】
いくつかの態様において、組み換えrAAV粒子は、一本鎖(ss)または自己相補的(sc)AAV核酸ベクターなどの核酸ベクターを含む。いくつかの態様において、核酸ベクターは、本明細書において記載されるような治療剤(例えば、タンパク質、抗体、干渉核酸など)、および発現コンストラクトに隣接する逆位末端リピート(ITR)配列(例えば、野生型ITR配列または操作されたITR配列)を含む1つ以上の領域をコードする、導入遺伝子を含む。いくつかの態様において、核酸は、ウイルスのキャプシドによりキャプシド形成される。いくつかの態様において、導入遺伝子は、プロモーター、例えば構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターに作動的に連結される。いくつかの態様において、プロモーターは、組織特異的(例えばCNS特異的)プロモーターである。いくつかの態様において、rAAV粒子は、CNS組織に対して向性を有するウイルスのキャプシド、例えばAAV9キャプシドタンパク質またはAAV.PHPBキャプシドタンパク質を含む。
【0205】
本開示の側面は、治療剤の治療有効量の対象への送達に関する。いくつかの態様において、治療有効量は、対象においてリピート伸長を減少させることにおいて有効な量である。いくつかの態様において、治療有効量は、対象においてRANタンパク質を産生するRNAの転写を減少させることにおいて有効な量である。ある態様において、治療有効量は、対象においてRANタンパク質の翻訳を減少させることにおいて有効な量である。いくつかの態様において、治療有効量は、リピート伸長に関連するアルツハイマー病を処置するために有効な量である。リピート配列の発現またはRANタンパク質の翻訳を「減少させること」とは、対象において、リピート配列の発現またはRANタンパク質の翻訳の量またはレベルを、治療剤の投与の後で(および投与の前の対象における量またはレベルと比較して)低下させることを指す。
【0206】
ある態様において、有効量は、RANタンパク質のレベルを、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%(例えば、治療剤を投与されていない細胞または対象におけるRANタンパク質のレベルと比較したRANタンパク質のレベル)、減少させることにおいて有効な量である。ある態様において、有効量は、RANタンパク質の翻訳を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%(例えば、治療剤を投与されていない細胞または対象におけるRANタンパク質のレベルと比較したRANタンパク質のレベル)、減少させることにおいて有効な量である。
【0207】
本明細書において記載される医薬組成物は、製薬の分野において公知の任意の方法により、調製することができる。一般的に、かかる調製方法は、本明細書において記載される化合物(すなわち「活性成分」)を、キャリアまたは賦形剤、および/または1つ以上の他の補助成分と関連させること、および次いで、必要および/または望ましい場合には、成形すること、および/または製品を所望される単一または複数用量単位にパッケージングすることを含む。
【0208】
医薬組成物は、単一の単位用量として、および/または複数の単一の単位用量として、調製し、パッケージングし、および/またはバルクで販売することができる。「単位用量」は、既定量の活性成分を含む医薬組成物の個別の量である。活性成分 の量は、一般に、対象に投与されるであろう活性成分の投与量、および/またはかかる投与量の便利な画分、例えばかかる投与量の二分の一または三分の一に等しい。
【0209】
本明細書において記載される医薬組成物中の活性成分、薬学的に受入可能な賦形剤および/または任意のさらなる材料の相対量は、処置される対象のアイデンティティー、サイズおよび/または状態に依存して、およびさらに当該組成物が投与される経路に依存して、変化するであろう。組成物は、0.1%~100%(w/w)の活性成分を含んでもよい。
【0210】
提供される医薬組成物の製造において用いられる薬学的に受入可能な賦形剤として、不活性な希釈剤、分散剤および/または造粒剤、界面活性剤および/または乳化剤、崩壊剤、結合剤、保存剤、緩衝化剤、潤滑剤および/または油脂が挙げられる。カカオバターおよび坐剤用ロウなどの賦形剤、着色剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、および芳香剤もまた、組成物中に存在してもよい。
【0211】
例示的な希釈剤として、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム、ラクトース、スクロース、セルロース、微結晶性セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、コーンスターチ、粉糖、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0212】
例示的な造粒剤および/または分散剤として、馬鈴薯デンプン、コーンスターチ、タピオカデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、クレイ、アルギン酸、グアーガム、柑橘パルプ、寒天、ベントナイト、セルロース、および木材製品、天然の海綿、カチオン交換樹脂、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、炭酸ナトリウム、架橋ポリ(ビニル-ピロリドン)(クロスポピドン)、デンプンカルボキシメチルナトリウム(デンプングリコール酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロース)、メチルセルロース、アルファ化デンプン(スターチ1500)、微結晶性デンプン、非水溶性デンプン、カルシウムカルボキシメチルセルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム(Veegum)、ラウリル硫酸ナトリウム、四級アンモニウム化合物、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0213】
例示的な界面活性剤および/または乳化剤として、天然の乳化剤(例えばアラビアゴム、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、コンドラックス(chondrux)、コレステロール、キサンタン、ペクチン、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂、コレステロール、ロウおよびレシチン)、コロイド状クレイ(例えばベントナイト(ケイ酸アルミニウム)およびVeegum(ケイ酸マグネシウムアルミニウム))、長鎖アミノ酸誘導体、高分子アルコール(例えばステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、トリアセチンモノステアレート、エチレングリコールジステアレート、グリセリルモノステアレートおよびプロピレングリコールモノステアレート、ポリビニルアルコール)、カルボマー(例えばカルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、アクリル酸ポリマーおよびカルボキシビニルポリマー)、カラギーナン、セルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、粉末セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween(登録商標)20)、ポリオキシエチレンソルビタン(Tween(登録商標)60)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標)80)、ソルビタンモノパルミテート(Span(登録商標)40)、ソルビタンモノステアレート(Span(登録商標)60)、ソルビタントリステアレート(Span(登録商標)65)、グリセリルモノオレエート、ソルビタンモノオレエート(Span(登録商標)80)、ポリオキシエチレンエステル(例えばポリオキシエチレンモノステアレート(Myrj(登録商標)45)、ポリオキシエチレン水素付加ひまし油、ポリエトキシル化ひまし油、ポリオキシメチレンステアレートおよびSolutol(登録商標))、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えばCremophor(登録商標))、ポリオキシエチレンエーテル,(例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル(Brij(登録商標)30))、ポリ(ビニル-ピロリドン)、ジエチレングリコールモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミン、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸エチル、オレイン酸、ラウリン酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、Pluronic(登録商標)F-68、ポロキサマーP-188、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ドクサートナトリウム、および/またはそれらの混合物が挙げられる。
【0214】
例示的な結合剤として、デンプン(例えばコーンスターチおよびデンプン糊)、ゼラチン、糖(例えばスクロース、グルコース、デキストロース、デキストリン、糖蜜、ラクトース、ラクチトール、マンニトールなど)、天然および合成のゴム(例えばアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、アイリッシュモス抽出物、パンワー(panwar)ゴム、ゲッチ(ghatti)ゴム、イサポール皮の粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、酢酸セルロース、ポリ(ビニル-ピロリドン)、ケイ酸マグネシウムアルミニウム(Veegum(登録商標))、およびカラマツアラビノガラクタン)、アルギネート、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、無機カルシウム塩、ケイ酸、ポリメタクリレート、ロウ、水、アルコール、および/またはそれらの混合物が挙げられる。
【0215】
例示的な保存剤として、抗酸化剤、キレート剤、抗菌性保存剤、抗真菌性保存剤、抗原虫性保存剤、アルコール保存剤、酸性保存剤、および他の保存剤が挙げられる。ある態様において、保存剤は、抗酸化剤である。他の態様において、保存剤は、キレート剤である。
【0216】
例示的な抗酸化剤として、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、プロピル没食子酸、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、および亜硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0217】
例示的なキレート剤として、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)ならびにその塩および水和物(例えばエデト酸ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸二ナトリウムカルシウム、エデト酸二カリウムなど)、クエン酸ならびにその塩および水和物(例えばクエン酸一水和物)、フマル酸ならびにその塩および水和物、リンゴ酸ならびにその塩および水和物、リン酸ならびにその塩および水和物、および酒石酸ならびにその塩および水和物が挙げられる。例示的な抗菌性保存剤として、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミドウレア、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、フェニル硝酸第二水銀、プロピレングリコールおよびチメロサールが挙げられる。
【0218】
例示的な抗真菌性保存剤として、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウムおよびソルビン酸が挙げられる。
【0219】
例示的なアルコール保存剤として、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール性化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、ヒドロキシ安息香酸、およびフェニルエチルアルコールが挙げられる。
【0220】
例示的な酸性保存剤として、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ベータカロチン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸およびフィチン酸が挙げられる。
【0221】
他の保存剤として、トコフェロール、酢酸トコフェロール、メシル酸デテロキシム、セトリミド、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、亜硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、Glydant(登録商標)Plus、Phenonip(登録商標)、メチルパラベン、Germall(登録商標)115、Germaben(登録商標)II、Neolone(登録商標)、Kathon(登録商標)、およびEuxyl(登録商標)が挙げられる。
【0222】
例示的な緩衝化剤として、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D-グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、二塩基性リン酸カルシウム、リン酸、三塩基性リン酸カルシウム、リン酸カルシウム水酸化物、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、二塩基性リン酸カリウム、一塩基性リン酸カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、パイロジェンフリー水、等張食塩水、リンガー溶液、エチルアルコール、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0223】
例示的な潤滑剤として、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、麦芽、ベヘン酸グリセリル、水素付加植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0224】
例示的な天然の油脂として、アーモンド油、杏仁油、アボカド油、バッサウ油、ベルガモット油、クロフサスグリ種子油、ルリジサ油、カデ油、カミツレ油、キャノーラ油、キャラウェイ油、カルナウバロウ油、ヒマシ油、桂皮油、カカオバター、ココナッツ油、タラ肝油、コーヒー油、トウモロコシ油、綿実油、エミュー油、ユーカリ油、月見草油、魚油、亜麻仁油、ゲラニオール油、ヒョウタン(gourd)油、ブドウ種子油、ハシバミ実油、ヒソップ油、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ油、ククイナッツ油、ラバンジン油、ラベンダー油、レモン油、青文字油、マカダミアナッツ油、ゼニアオイ油、マンゴー種子油、メドウフォーム種子油、ミンク油、ナツメグ油、オリーブ油、オレンジ油、オレンジラフィー油、ヤシ油、パーム核油、桃仁油、ピーナッツ油、ケシ種子油、カボチャ種子油、ナタネ油、コメヌカ油、ローズマリー油、ベニバナ油、ビャクダン油、サザンカ(sasquana)油、セイボリー(savoury)油、シーバックソーン油、ゴマ油、シアバター油、シリコーン油、ダイズ油、ヒマワリ油、ティーツリー油、アザミ油、ツバキ油、ベチバー油、クルミ油およびコムギ胚芽油が挙げられる。例示的な合成油脂として、これらに限定されないが、ステアリン酸ブチル、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコン、セバシン酸ジエチル、ジメチコン360、ミリスチン酸イソプロピル、鉱油、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコーン油、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0225】
経口および非経口投与のための液体投与形態として、薬学的に受入可能なエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤が挙げられる。活性成分に加えて、液体投与形態は、当該分野において一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば水または他の溶媒など、可溶化剤および乳化剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカルボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油脂(例えば綿実油、ピーナッツ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびセサミ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、およびそれらの混合物などを含んでもよい。不活性な希釈剤の他に、経口組成物は、湿潤化剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、香味剤および芳香剤などのアジュバントを含んでもよい。非経口投与のためのある態様において、本明細書において記載されるコンジュゲートを、Cremophor(登録商標)、アルコール、油脂、変性油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマー、およびそれらの混合物などの可溶化剤と混合する。ある態様における例示的な液体投与形態は、嚥下を容易にするため、または栄養管を介する投与のために処方される。
【0226】
経口投与のための固体投与形態として、カプセル、錠剤、丸剤、散剤および顆粒が挙げられる。かかる固体投与形態において、活性成分を、以下のものと混合する:クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの、少なくとも1つの不活性な薬学的に受入可能な賦形剤またはキャリア、および/または(a)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸などの充填剤または増量剤、(b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアラビアゴムなどの結合剤、(c)グリセロールなどの保水剤、(d)寒天、炭酸カルシウム、馬鈴薯またはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、(e)パラフィンなどの溶解遅延剤(solution retarding agent)、(f)四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、(g)例えばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤化剤、(h)カオリンおよびベントナイトクレイなどの吸収剤、ならびに(i)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムなどの潤滑剤、ならびにそれらの混合物。カプセル、錠剤および丸剤の場合、投与形態は、緩衝化剤を含んでもよい。
【0227】
同様の型の固体組成物は、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いる、軟質および硬質の充填ゼラチンカプセルにおいて、充填剤として使用することができる。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤および顆粒の固体投与形態は、腸溶性コーティング剤および製薬の分野において周知の他のコーティング剤などのコーティング剤およびシェルにより、調製することができる。それらは、任意に不透明化剤を含んでもよく、腸管の特定の部分において、任意に遅延された様式において、活性成分のみを、または活性成分を優先的に放出する組成物であってよい。用いることができるカプセル化組成物の例として、ポリマー性物質およびロウが挙げられる。類似の型の固体組成物は、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いる、軟質および硬質の充填ゼラチンカプセルにおいて、充填剤として使用することができる。
【0228】
活性成分は、上記の1つ以上の賦形剤によりマイクロカプセル化することができる。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤および顆粒の固体投与形態は、腸溶性コーティング剤、放出制御コーティング剤、および医薬処方の分野において周知の他のコーティング剤などのコーティング剤およびシェルにより、調製することができる。かかる固体投与形態において、活性成分は、スクロース、ラクトースまたはデンプンなどの少なくとも1つの不活性な希釈剤と混合することができる。かかる投与形態は、常法として、不活性な希釈剤以外のさらなる物質、例えばステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロースなどの打錠用潤滑材および他の打錠用助剤を含んでもよい。カプセル、錠剤および丸剤の場合、投与形態は、緩衝化剤を含んでもよい。それらは、任意に不透明化剤を含んでもよく、腸管の特定の部分において、任意に遅延された様式において、活性成分のみを、または活性成分を優先的に放出する組成物であってよい。用いることができるカプセル化剤の例として、ポリマー性物質およびロウが挙げられる。
【0229】
本明細書において提供される医薬組成物の記載は、主に、ヒトへの投与のために好適である医薬組成物に向けられているが、当業者は、かかる組成物が、一般に全ての種類の動物への投与のために好適であることを理解するであろう。ヒトへの投与のために好適な医薬組成物の、当該組成物を、多様な動物への投与のために好適にするための改変は、よく理解されており、通常の技術を有する獣医薬理学者は、通常の実験により、かかる改変を設計し、および/または実施することができる。
【0230】
本明細書において記載される治療剤は、典型的には、投与の容易性のため、および投与量の均一性のために、投与単位形態において処方される。しかし、本明細書において記載される組成物の合計の一日の用法は、医師により、健全な医学的判断の範囲内において決定されることが、理解されるであろう。任意の特定の対象または生物のための特定の治療有効用量レベルは、以下を含む多様な要因に依存するであろう:処置されている疾患および障害の重篤度;使用される特定の活性成分の活性;使用される特定の組成;対象の年齢、体重、一般的健康状態、性別および食事;投与の時間、投与の経路、および使用される特定の活性成分の排出の速度;処置の期間;使用される特定の活性成分と組み合わせてまたはこれと同時に使用される薬物;ならびに医学分野において周知の同様の要因。
【0231】
治療剤は、腸内(例えば経口)、非経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、くも膜下内、皮下、脳室内、経皮、皮間(interdermal)、直腸、膣内、腹腔内、局所(粉末、軟膏、クリームおよび/もしくは液滴として)、粘膜、鼻、頬側、舌下を含む任意の経路により;気管内滴下、気管支滴下、および/もしくは吸入により;ならびに/または経口スプレー、鼻スプレーおよび/もしくはエアロゾルとして、投与することができる。特に企図される経路は、経口投与、静脈内投与(例えば全身静脈内注射)、血液および/もしくはリンパ供給を介した局所投与、ならびに/または罹患部位への直接投与である。一般的に、最も適切な投与の経路は、剤の性質(例えば、胃腸管の環境におけるその安定性)、および/または対象の状態(例えば、対象が経口投与を耐容することができるか否か)を含む、多様な要因に依存するであろう。ある態様において、本明細書において記載される化合物または医薬組成物は、対象の眼への局所投与のために好適である。
【0232】
有効量を達成するために必要とされる治療剤の正確な量は、対象ごとに異なり、例えば、対象の種、年齢、一般的状態、副作用または障害の重篤度、特定の化合物のアイデンティティー、投与の様式などに依存する。有効量は、単一用量(例えば単一の経口用量)中に含まれていても、複数用量(例えば複数の経口用量)中に含まれていてもよい。ある態様において、複数用量が、対象に投与されるか、または生物学的試料、組織もしくは細胞に適用される場合、複数用量のうちの任意の2つの用量は、異なる量、または実質的に同じ量の本明細書において記載される化合物を含む。ある態様において、複数用量が、対象に投与されるか、または生物学的試料、組織もしくは細胞に適用される場合、複数用量を対象に投与するか、または複数用量を生物学的試料、組織もしくは細胞に適用する頻度は、1日あたり3用量、1日あたり2用量、1日あたり1用量、2日毎に1用量、3日毎に1用量、1週間毎に1用量、2週間毎に1用量、3週間毎に1用量、または4週間毎に1用量である。ある態様において、複数用量を対象に投与するか、または複数用量を生物学的試料、組織もしくは細胞に適用する頻度は、1日あたり1用量である。ある態様において、複数用量を対象に投与するか、または複数用量を生物学的試料、組織もしくは細胞に適用する頻度は、1日あたり2用量である。ある態様において、複数用量を対象に投与するか、または複数用量を生物学的試料、組織もしくは細胞に適用する頻度は、1日あたり3用量である。ある態様において、複数用量が、対象に投与されるか、または生物学的試料、組織もしくは細胞に適用される場合、複数用量の第1の用量と最後の用量との間の期間は、1日、2日、4日、1週間、2週間、3週間、1か月、2か月、3か月、4か月、6か月、8か月、9か月、1年、2年、3年、4年、5年、7年、10年、15年、20年、または対象、組織、または細胞の寿命である。ある態様において、複数用量の第1の用量と最後の用量との間の期間は、3か月、6か月または1年である。ある態様において、複数用量の第1の用量と最後の用量との間の期間は、対象、組織、または細胞の寿命である。ある態様において、本明細書において記載される用量(例えば単一用量、または複数用量のうちの任意の用量)は、独立して、0.1μg~1μg、0.001mg~0.01mg、0.01mg~0.1mg、0.1mg~1mg、1mg~3mg、3mg~10mg、10mg~30mg、30mg~100mg、100mg~300mg、300mg~1,000mg、または1g~10g(境界を含む)の本明細書において記載される化合物を含む。ある態様において、本明細書において記載される用量は、独立して、1mg~3mg(境界を含む)の本明細書において記載される化合物を含む。ある態様において、本明細書において記載される用量は、独立して、3mg~10mg(境界を含む)の本明細書において記載される化合物を含む。ある態様において、本明細書において記載される用量は、独立して、10mg~30mg(境界を含む)の本明細書において記載される化合物を含む。ある態様において、本明細書において記載される用量は、独立して30mg~100mg(境界を含む)の本明細書において記載される化合物を含む。
【0233】
投与の経路として、これらに限定されないが、経口、非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻内、舌下、気管内、吸入、皮下、眼、膣および直腸が挙げられる。全身経路は、経口および非経口を含む。いくつかの型のデバイスは、吸入による投与のために、定期的に用いられる。デバイスのこれらの型として、定量噴霧式吸入器(MDI)、呼吸駆動型(breath-actuated)MDI、ドライパウダー吸入器(DPI)、MDIと組み合わせたスペーサー/ホールディングチャンバー、およびネブライザーが挙げられる。
【0234】
いくつかの態様において、RANタンパク質の発現に関連する疾患のための処置は、それを必要とする対象の中枢神経系(CNS)に投与される。本明細書において用いられる場合、「中枢神経系(CNS)」とは、対象の脳および脊髄の全ての細胞および組織を指し、これは、これらに限定されないが、神経細胞、グリア細胞、星状膠細胞、脳脊髄液などを含む。治療剤を対象のCNSに投与するモダリティーとして、脳内への直接注射(例えば、脳内注射、脳室内注射、実質内注射など)、対象の脊髄中への直接注射(例えば、クモ膜下内注射、腰椎注射など)、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0235】
いくつかの態様において、本開示により記載されるような処置は、例えば静脈内注射により、対象に全身投与される。全身投与された治療分子は、いくつかの態様においては、対象のCNSへの分子の送達を改善するために、修飾されていてもよい。治療分子のCNS送達を改善する修飾の例として、これらに限定されないが、血液脳関門を標的とする剤(例えば、Georgieva et al. Pharmaceuticals 6(4): 557-583 (2014)により開示されるような、トランスフェリン、メタノトランスフェリン(melanotransferrin)、低密度リポタンパク質(LDL)、アンギオペプ(angiopep)、RVGペプチドなど)への共投与または抱合、BBB破壊剤(例えばブラジキニン)との共投与、および投与の前のBBBの物理的破壊(例えば、MRI誘導型収束超音波(MRI-Guided Focused Ultrasound)による)などが挙げられる。
【0236】
以下の例は、本発明の利点を説明すること、および特定の態様を記載することを意図されるが、本発明の完全な範囲を例示することは意図されない。したがって、例は、本発明の範囲を限定することは意図されないことが、理解されるであろう。
【0237】
例
マイクロサテライトリピート伸長は、40を超える遺伝性の神経変性疾患および神経筋疾患を引き起こす。リピート配列(repeat tract)の長さは、典型的には、一般的な集団において<30、前変異(premutation)キャリアにおいては約30~40であり、罹患個体においては、疾患に依存して、約40~数千のリピートの範囲であり得る。伸長変異は、しばしば、双方向性転写を起こし、センスおよびアンチセンスのトランスクリプトを生じ、これは、RNA凝集体を形成し得る。リピート伸長RNAは、リピート関連非AUG翻訳(RAN)により翻訳されて、ポリマー性タンパク質を生成し得る。これらのリピート伸長は、一般に、ハイスループットシークエンシングによっては検出することが難しい。
【0238】
例1
アルツハイマー病(AD)は、65歳以上の一般的な人口の約10%が罹患する進行性の認知症である。アポリポタンパク質(APP)およびプレセニリン遺伝子(PSEN1およびPSEN2)を含む特定の遺伝子における変異が、ADの症例のサブセットにおいて観察されている一方で、ADの症例の大部分の原因は、現在は未知である。ADは、患者の剖検の脳全体にわたるβ-アミロイド(Aβ)ペプチドおよび過剰リン酸化されたタウタンパク質の蓄積により特徴づけられる。しかし、Aβの沈着と認知低下との弱い相関、ならびに現在までのAβおよびタウを標的とするアプローチの限定された効力は、他の要因が、ADにおいて重要な役割を果たすことを示す。
【0239】
この例は、アルツハイマー病、認知症および他の神経変性疾患に寄与するリピート伸長の同定を記載する。これらの推定の伸長は、単一の未同定のリピート伸長変異から、または各々がより小さな前変異の長さを有する複数の遺伝子の組み合わせた効果から、疾患に寄与し得る。データは、リピートRNAおよび/またはこれらの伸長変異から生成されるRANタンパク質が、タンパク質の恒常性、プロテアソームの機能およびオートファジーを破壊することにより、疾患に寄与することを示す。
【0240】
AD患者の試料中のRANタンパク質の翻訳の同定
AD患者の試料をRANタンパク質発現についてスクリーニングするために、抗体ベースのスクリーニングツールを開発した。
図1Aおよび1Bは、スクリーニングプロトコルの模式図を示す。第1に、試料中にRANタンパク質の凝集塊が存在するか否かを決定するために、試料を、多様な反復性ペプチドモチーフに結合する抗体のパネルと接触させる(
図1A)。この抗体ベースのアプローチは、120の試験されたヒトAD剖検脳のうちの21において陽性のRAN染色を同定した。簡単に述べると、凍結されたAD剖検脳組織から抽出されたタンパク質ライセートの可溶性および不溶性の画分の両方を、多様なRANタンパク質(例えば、α-ポリSer、α-ポリGP、α-ポリGA、α-ポリGR、α-ポリPR)に対する抗体と接触させた。年齢が一致する健康な対照と比較したこれらの抗体からの陽性シグナルは、120のADの症例のうちの21からの初期の不溶性タンパク質のドットブロットスクリーニングにより見出された。
【0241】
ドットブロットおよびシグナルの定量を、α-ポリGRおよびポリSerの染色について陽性の試料のサブセットについて示す(
図2Aおよび2B)。20の候補症例および約15の健康なおよび疾患の対照からの海馬および前頭皮質の切片の免疫組織化学的(IHC)染色は、ADの症例において強力なRAN陽性シグナルを示し、年齢が一致する健康なまたは疾患の対照においては類似の染色は存在しなかった。α-ポリGRおよびα-ポリPRによる例の染色を、
図2Cにおいて示す。α-ポリGRおよびα-ポリPRの染色は、リン酸化されたTDP43についての染色とは類似しなかった(例えば、
図2C)。加えて、ADの海馬におけるRAN-GRタンパク質およびタウ(3R)についての二重IHC染色は、矢印により表される、重複するシグナルおよび重複しないシグナルによる区別し得るパターンを示した(
図3A)。3Rタウおよび/またはGRもしくはPR RANタンパク質を一過性に発現する細胞におけるさらなる対照IF実験は、α-ポリGRおよびα-ポリPRは、それらの対応するタグ付けされたRANタンパク質を認識する(
図3C)が、3Rタウとは交差反応しない(
図3B)ことを示す。まとめると、これらのデータは、ADの症例のサブセットにおいてRAN染色が存在すること、ならびにこれらのタンパク質は、pTDP43および3Rタウとは区別し得るパターンにおいて蓄積することを示す。
【0242】
これらの候補のRAN陽性のADの症例をさらに特徴づけるために、AD剖検脳の多様な領域においてIHCによりRAN染色の分布を調べた。RANタンパク質の分布を、タウタンパク質の付加形態(例えば、4-リピート(4R)タウ、リン酸化されたタウ)およびAβと比較した。加えて、RANの染色および分布をBraakスコアと比較して、RANタンパク質蓄積が疾患のステージと相関するか否か、およびどのようにこれと相関するかを調べた。加えて、全てのRAN陽性候補症例をスクリーニングして、併存の既知のリピート伸長を有する症例を取り除いた。全てのポリ(GR)およびポリ(PR)RAN陽性試料は、C9ORF72伸長変異について陰性であることを示した。
【0243】
次に、RNA凝集体スクリーニングアプローチを用いて、候補RANタンパク質をコードするリピート伸長モチーフを同定し、これをビオチンでタグ付けされたヌクレアーゼ欠損Cas9(dCas9)と組み合わせて、RANタンパク質凝集塊およびRNA凝集体の両方について陽性のAD組織試料から単離されたゲノムDNAから、候補リピート伸長変異および対応する隣接配列をプルダウンした(
図1B)。リピートに隣接する上流および下流の領域のシークエンシングを用いて、リピート伸長の特定の位置を同定した。
【0244】
推定のADのRANタンパク質のリピートモチーフを用いて、RANタンパク質をコードし得る全ての可能なDNA配列を同定した。例えば、GR、PRおよびポリSerをコードする全ての可能なリピートモチーフを、以下に表1、2および3において示す。当業者は、ポリ(CP),ポリ(GP)、ポリ(G)、ポリ(GA)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC)(配列番号260)、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(PA)、ポリ(QAGR)(配列番号261)、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、ポリ(GK)、ポリ(FTPLSLPV)(配列番号262)、ポリ(LLPSPSRC)(配列番号263)、ポリ(YSPLPPGV)(配列番号264)、ポリ(HREGEGSK)(配列番号255)、ポリ(TGRERGVN)(配列番号265)、またはポリ(PGGRGE)(配列番号258)を含む、本明細書において同定される他のRANリピートをコードする全ての可能な核酸配列の類似の表を、標準的な脊椎動物DNA翻訳コードを用いて構築する方法を理解するであろう。
【0245】
表1:GRをコードする全ての可能な核酸配列
【表1】
【0246】
表2:PRをコードする全ての可能な核酸配列
【表2】
【0247】
表3:ポリSerをコードする全ての可能な核酸配列
【表3】
【0248】
配列を、所与の候補のRAN ADタンパク質をコードし得る全ての可能なリピートモチーフを標的とするフルオロフォア抱合型DNAプローブを設計するために用いた。RANタンパク質核酸プローブを用いる凍結AD脳の蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)スクリーニングは、リピート伸長疾患の特徴である点状のRNA凝集体を示した(
図4)。対照またはRAN陰性のAD症例において、類似のRNA凝集体は見出されなかった。候補AD脳組織におけるRNA凝集体およびRANタンパク質の染色の検出は、1つ以上の新規ADリピート伸長変異の存在を示す。
【0249】
RANおよびRNA凝集体陽性の候補AD症例におけるリピート伸長変異を含む特定の遺伝子座を同定するために、ビオチンでタグ付けされたヌクレアーゼ欠損Cas9(dCas9)アプローチを用いて、特異的なリピート伸長変異および対応する隣接配列を濃縮するために、プルダウンアッセイを用いる(
図1B)。このdCas9ベースの濃縮ツールは、シングルガイドRNA/dCas9(sgRNA-dCas9)複合体の迅速な動態学および高い安定性を利用して、標的DNAを変性することを必要とすることなく、特定のDNA配列をプルダウンし、濃縮する。伸長したリピートは、sgRNAのための複数の結合部位を提供し、したがって、より短いリピート配列と比較して、sgRNA-dCas9複合体と伸長したリピートとの間の相互作用の可能性を増大させる(
図1B)。
【0250】
データは、C9ORF72 G4C2伸長変異の濃縮は、この方法を用いて検出することができることを示す。PCRデータは、C9(+)の場合のいくつかにおける、C9(-)の場合と比較した、C9ORF72 G4C2リピートに隣接する5’および3’配列についての濃縮を示す(
図1C)。候補のADの症例について、ゲノムのリピート伸長を含むDNA試料を、IHCおよびRNA FISH実験により予測される推定のRAN伸長変異を標的とするsgRNAのセットを用いて濃縮する。濃縮された、および濃縮されていない試料を、次いで、次世代シークエンシング技術を用いて配列決定し、ADにおいてRANタンパク質を生成するリピート伸長遺伝子座を同定する。
【0251】
例2
RANタンパク質の翻訳により影響を受ける分子経路
この例は、RANタンパク質の翻訳が、ADおよび他のCNS障害を有する対象のニューロンおよびグリアにおけるタンパク質の恒常性を改変することを示すデータを提供する。リピート伸長患者のiPSC由来のニューロンおよびグリアを用いて、プロテアソーム活性、オートファジーのフラックス、プロテアソームおよびオートファジーマーカー(例えば、p62、LC3、プロテアソームサブユニット)ならびにトランスクリプトーム分析を介して、プロテアソームおよびオートファジー経路の破壊を研究する。リピート伸長がAD疾患の進行を加速させるか否かを決定するために、RANタンパク質をコードする短いおよび長いリピートを、ADのiPSC由来細胞において差次的に発現させ、プロテアソーム、オートファジー機能、β-アミロイドおよびタウの病態を測定する。
【0252】
iPSC由来細胞におけるプロテアソーム活性を、タンパク質ライセートにおけるプロテアソーム複合体によるペプチド切断の速度を決定する蛍光ベースのアッセイを用いて測定する。生細胞におけるプロテアソーム活性はまた、細胞に、GFPを発現するベクターを感染させて、GFPシグナルを経時的にモニタリングすることにより研究することができる。7-メチルクマリンの蛍光シグナルの低下、または、生細胞における、健康な対照細胞と比較して高いGFPシグナルにより、プロテアソーム機能の低下が示される。
【0253】
オートファジー活性を測定するために、オートファゴソームを染色する色素を用いてオートファジーのフラックスをモニタリングする。小分子ベースの色素であるDALGreenはまた、後期オートファジーをモニタリングするためにも用いることができる。プロテアソームおよびオートファジーのマーカーの細胞内の位置およびレベルを、免疫蛍光およびウェスタンブロットを用いてアッセイする(例えば、p62、LC3 I/II、プロテアソームサブユニット)。p62のレベルおよび/または蓄積の増大は、オートファジーおよびプロテアソームの阻害と関連することが観察されており、一方で、LC3 I/IIの比は、オートファジー活性に関連することが観察されており、プロテアソームサブユニットの蓄積は、プロテアソームの停止およびユビキチン-プロテアソーム活性の低下と関連することが観察されている。
【0254】
プロテアソームおよびオートファジーの活性を、特定の誘導細胞(例えば、iNeuron、iAstrocyte、iMGL細胞など)において測定して、細胞型のバリエーションを調べる。プロテアソームおよびオートファジーの機能を、細胞が分化して成熟する間、経時的に追跡し、これらの経路が影響を受ける場合に関して情報を提供する。ストレスは、神経変性疾患についてのリスクであり、C9 ALS/FTDにおけるRANタンパク質の発現の増大と関連付けられているので、多様なストレス条件下においてプロテアソームおよびオートファジーが、どのようにさらに影響を受けるかを試験する。プロテアソームおよびオートファジー系における変化と関連付けられる細胞における網羅的な効果を理解するために、RNAseq実験を行う。
【0255】
データは、培養神経膠芽腫細胞において、C9ポリ(GA)RANタンパク質凝集塊は、オートファジーマーカーLC3Bおよび26Sプロテアソームサブユニットと共局在することを示す(
図5A)。ポリGA RANタンパク質の発現は、HEK293T細胞におけるプロテアソーム活性の低下をもたらすことが観察された。これらの異常は、α-ポリGA抗体を用いてポリ(GA)タンパク質をターゲティングすることによりレスキューされる(
図5B)。これらの結果は、GA RANタンパク質凝集塊が、プロテアソームおよびオートファジー系に関与する重要なタンパク質を隔離し、それによりこれらの系の機能を破壊することを示す。
【0256】
免疫学的オートファジーを活性化することができるトール様受容体ファミリーのメンバーであるToll様受入体3(TLR3)は、二本鎖RNA(dsRNA)を標的とすることが観察されている。増大したeIF2αリン酸化は、dsRNA媒介性のPKR応答を引き起こす伸長RNAそれら自体から、ERストレスを引き起こすRAN凝集塊からもたらされ得る。リピートRNAおよびRANタンパク質の存在下におけるPKR、eIF2α、TLR3およびオートファジーのフラックスをモニタリングすることは、リピート伸長障害におけるオートファジー機能不全および疾患の進行への機械論的な洞察を提供する(
図6)。TLR3により媒介されるオートファジーはまた、siRNAおよびCRISPR技術を用いてTLR3をノックダウンまたはノックアウトすることにより、研究することができる。
【0257】
RANタンパク質の翻訳は、いくつかの態様において、細胞において、活性の低下または不適切な複合体形成などのプロテアソームおよびオートファジー経路の機能不全をもたらす。プロテアソームおよびオートファジーの機能不全は、特定の細胞の型において検出することができ、一方、ニューロンとグリア細胞とを共培養することにより、破壊が加速し得る。dsRNAは、TLR3により認識され、eIF2α-PKR経路を活性化することが知られているので、オートファジーは、ADにおいて早期に改変され得、これは、経時的に疾患を悪化させるネガティブフィードバックを生じる可能性がある。ポリ(GA)凝集塊がプロテアソームおよびオートファジーマーカーを隔離するという知見に基づいて、RANタンパク質は、プロテアソームおよびオートファジー複合体をRANタンパク質凝集塊中への隔離により阻害し得る。加えて、RANタンパク質の蓄積に起因するERストレス応答は、いくつかの態様において、eIF2α-PERK経路を通してオートファジーの活性化をもたらし得る。
【0258】
例3
この例は、単一のDNA試料からのリピート伸長変異の単離および遺伝子座特異的なユニークな隣接配列の同定を可能にする方法を記載する。これは、次いで、患者のより大きな群における、疾患に寄与するか否かの直接試験を可能にする。本明細書において記載される、不活化されたクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(clustered regularly interspaced short palindromic repeat)関連タンパク質9(dCas9)を利用する方法は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)中にAGG、TGG、CGGまたはGGG(NGG)配列を含むリピートモチーフを有するマイクロサテライト伸長変異をプルダウンすることが観察された。この方法は、本明細書において、Cas9ベースのリピート濃縮および検出(Cas9-based repeat enrichment and detection:dCas9READ)として言及される。
【0259】
リピート伸長変異は、従来のシークエンシング技術を用いては検出することが難しい。本明細書において示されるのは、sgRNAおよびdCas9を利用して、NGGプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)(例えば、ALS/FTDにおけるGGGGCCおよびDM2におけるCCTG)ならびにそれらのユニークな隣接配列ならびに非NGG PAMを含むリピート伸長を濃縮および検出する、新規アッセイ(dCas9READ)である(
図8)。非NGG PAMを含有するリピートとして、CAGおよびCTGリピートが挙げられる。本明細書において開示されるようなアッセイは、非NGG PAMを有する配列を含む複数のリピート伸長を同時に同定し、対応する正常なアレルよりも40~50リピート長いリピート伸長の同定を可能にする。DM1、DM2およびALS/FTDにおいて見出される非常に長い非コード伸長とは対照的に、脊髄小脳変性症およびハンチントン病におけるCAG伸長は、しばしば、正常なリピート範囲よりもわずかに長い(10~100リピート)だけである。したがって、これらの新規リピートプルダウン技術は、新規の伸長変異の同定を促進し、それにより、RANタンパク質関連疾患の診断および最終的な処置を補助する。dCas9READの基礎は、リピート伸長変異は、より短いリピートと比較して、シングルガイドRNA(sgRNA)-dCas9複合体が会合するためにより多くの結合部位を提供するという原理の上で働く(
図7)。伸長を含むDNAのビオチン-ストレプトアビジンプルダウンの後で、伸長が濃縮されたゲノムDNA(gDNA)の次世代シークエンシング(NGS)を用いて、リピート伸長および対応する隣接配列の両方を同定した。ユニークな隣接配列および候補のリピート伸長変異の同定は、推定の疾患を引き起こす変異としての特定のリピートのPCRおよびサザンブロット試験を可能にする。従来のプルダウン法と比較して、dCas9READは、標的DNAを変性することを必要とすることなく、sgRNA-dCas9-DNA複合体の迅速な結合動態学および高い安定性を提供する。
【0260】
dCas9READのプロトコルは、C9orf72 ALS/FTDおよび2型筋強直性ジストロフィー(DM2)患者からのヒトゲノムDNAを用いて行った。Streptococcus pyogenesのdCas9(spdCas9)を用いて、dCas9READは、C9ALS/FTD G4C2およびDM2 CCTGリピート伸長DNAの両方を、伸長陰性の対照と比較して4~6倍首尾よく濃縮したことが示される(
図8Aおよび
図8B)。バイオインフォマティクスと組み合わせたこの濃縮は、これらの伸長変異およびそれらの対応するユニークな隣接DNA配列の明確な同定を可能にした。
【0261】
G4C2 sgRNAを用いずに行われたさらなる対照実験は、C9 ALS/FTD遺伝子座の類似の濃縮を示さなかった。このことは、プルダウンの特異性が、リピート含有ガイドRNAにより決定されることを示している(
図8A)。C9およびDM2 DNA試料から濃縮されたGGGGCCおよびCCTGリピートの次世代シークエンシングは、伸長したC9orf72およびDM2リピートを有する試料において、陰性対照と比較して、総読み値数の著しい増大を示した(
図8Cおよび
図8D)。重要なことに、濃縮の位置づけを、濃縮された試料における、濃縮されていない試料と比較した、選択されたリピート領域(例えばG4C2)の周囲の2~4kbの領域の総読み値の比率として報告するNGSデータは、C9orf72遺伝子座が最も高い濃縮スコアを有することを示した。これらのデータは、dCas9READが、ヒトゲノムにおける伸長変異の位置の事前の知識を用いずに、リピート伸長遺伝子座および個々のリピート伸長の周囲のユニークな隣接配列を同定することができることを示す。
【0262】
例4
この例は、未知の遺伝病因学の神経変性疾患を有する患者のゲノムDNAから直接的にリピート伸長変異を単離するための、dCas9READの適用を記載する。リピート伸長遺伝子座における隣接配列を同定することにより、疾患における特定の伸長変異の役割の直接試験が可能になる。抗RANタンパク質抗体のサブセットを用いて、AD脳におけるRANタンパク質蓄積を同定した(
図9A)。これらの実験のために、60歳より後に臨床的特徴の発症を有した(遅発型)120のADの症例、および30の年齢が一致する対照からの、固定および凍結した脳組織をスクリーニングした。初期のイムノブロットスクリーニングは、グリシン-アルギニン(α-GR)に対する抗体(すなわち、抗GR)、プロリン-アルギニン(α-PR)に対する抗体(すなわち、抗PR)、グリシン-アラニン(α-GA)に対する抗体(すなわち、抗GA)、グリシン-プロリン(α-GP)に対する抗体(すなわち、抗GP)、およびセリン(α-Ser)に対する抗体(すなわち、抗Ser)抗体を用いて、AD症例において、対照のケースと比較して、より高いシグナルを示した。初期の不溶性タンパク質のドットブロットスクリーニングは、これらの抗体のうちの少なくとも1つからの陽性シグナルは、AD症例(120のうちの21または17.5%)において、神経性疾患を有しない年齢が一致する対照(30のうちの1または3.3%)と比較して、より高い頻度において見出されることを示した。α-GR染色を示す代表的なドットブロット画像およびシグナル定量を、
図9Bにおいて示す。
【0263】
ドットブロットによりα-GRまたはα-PR染色について陽性であったAD症例からの海馬切片に対して行われた免疫組織化学的(IHC)研究は、GRまたはPR凝集塊について強力な核周囲のRAN陽性染色を示し(
図9C)、年齢が一致する健康な対照または疾患対照においては、染色は存在しないか最小限であった(例えば、
図9D)。細胞内のGRおよびPR凝集塊は、ADにおいて典型的に見出される細胞外Aβプラークまたは細胞内p-タウのタングル(tangle)またはpTDP43の染色とは類似しない(
図9C)。p-タウとPRまたはGRとの二重標識IHCは、これらのRANタンパク質およびp-タウの細胞内蓄積のパターンが区別し得ることをさらに示す。GFP-タウおよび/またはGR60もしくはPR60タンパク質を過剰発現する細胞に対する対照IF実験は、α-GRおよびα-PR抗体は、それらの細胞内RANタンパク質標的を認識する(
図9C)が、GFP-タウは認識しない(
図9E~9G)ことを示す。これらのデータは、RANタンパク質の染色は、この初期のコホートにおけるAD症例のうちの17.5%において存在すること、ならびに、RANタンパク質は、Aβプラーク、p-タウのタングルおよびp-TDP43を含むADと典型的に関連する染色とは区別し得るパターンにおいて蓄積することを示す。
【0264】
α-GR、α-GAまたはα-GP、GCリッチDNAに対して特異的なプローブを用いて、リピート伸長RNAを検出した。リピートを含有するCCCCGG(配列番号71)またはCCCCGT(配列番号59)プローブによる蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)は、ドットブロットスクリーニングによりα-GR、α-GAまたはα-GP抗体について高いシグナルを示したAD症例のサブセットにおいて、点状のRNA凝集体(
図10A)を検出したが、これらの抗体について陰性であったAD症例においては、検出しなかった。
【0265】
リピート伸長変異から生成されるリピート含有トランスクリプトはまた、RNA G-四重鎖およびミスマッチを含むヘアピン構造から構成される二次構造を形成することができる。dsRNAが、RAN陽性のAD症例において蓄積するか否かを調べるために、α-dsRNA抗体を用いて、固定された脳組織を染色した。初期のデータは、RAN陽性AD症例の海馬において、非神経性疾患の対照、および小さなCAGリピート伸長変異により引き起こされるSCAのパネルを含む疾患の対照と比較して、dsRNAシグナルの増大を示す(
図10B)。RNAse A処置は、α-dsRNAの染色を著しく減少させ、このことは、この抗体が、二本鎖RNAを特異的に染色するという概念を支持する(
図10C)。
【0266】
この例において記載されるデータは、AD脳においてRANタンパク質凝集塊の蓄積をもたらすリピート伸長を同定するための方法を強調する(
図11)。RANタンパク質リピートモチーフに対する抗体はまた、ヒトAD剖検脳をRAN凝集塊についてスクリーニングするために用いられる。RANタンパク質凝集塊をコードする配列は、dCas9READを用いるリピートの濃縮および同定のためのsgRNAを設計するための配列の情報を提供するであろう特定のRNA凝集体シグナルを同定する蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)プローブを設計するために用いられる。
【0267】
例5
この例は、抗RAN抗体の作製を記載する。対象にペプチドリピート含有抗原を注射することにより、表9において記載されるRANタンパク質領域に対する抗体を生成した。組み換えタンパク質を発現する遺伝子導入された細胞において抗体を検証する免疫蛍光データは、
図13A~13Eにおいて示すとおりに得た。
【0268】
表9-標的RANタンパク質領域に対して作成された抗体
【表F-1】
【表F-2】
【0269】
均等物
いくつかの発明の態様は、本明細書において記載および説明されてきたが、一方で、当業者は、本明細書において記載される機能を行うか、ならびに/または結果および/もしくは利点の1つ以上を得るための、多様な他の手段および/または構造を、容易に想起することができるであろう。かかるバリエーションおよび/または修飾の各々は、本明細書において記載される発明の態様の範囲内であるとみなされる。より一般的に、当業者は、本明細書において記載される全てのパラメーター、寸法、材料および立体配置は例示的であることを意図されること、ならびに、実際のパラメーター、寸法、材料および/または体配置は、そのために発明の技術が用いられる特定の適用に依存するであろうことを、容易に理解するであろう。当業者は、本明細書において記載される特定の発明の態様に対する多くの均等物を認識するか、慣用的な実験のみを用いてこれを確認することができるであろう。したがって、前述の態様は単に例として提示されること、および添付の請求の範囲およびそれに対する均等物の範囲内において、発明の態様は、具体的に記載され請求されるものとは異なる方法で実施してもよいことが、理解されるべきである。本開示の発明の態様は、本明細書において記載される各々の個々の特徴、系、物品、材料、キット、および/または方法に向けられる。加えて、2つ以上のかかる特徴、系、物品、材料、キット、および/または方法の任意の組み合わせは、かかる特徴、系、物品、材料、キット、および/または方法が互いに相反しない場合には、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0270】
全ての定義は、本明細書において定義されて用いられる場合、辞書の定義、参考として援用される文書における定義、および/または定義される用語の通常の意味に対して優先される。
本明細書において開示される全ての参考文献、特許および特許出願は、各々がそれについて引用される主題に関して参考として援用され、これは、いくつかの場合においては、当該文書の全体を包含してもよい。
不定冠詞「a」および「an」は、本明細書において、および請求の範囲において用いられる場合、反対であることが明らかに示されない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解されるべきである。
【0271】
句「および/または(and/or)」は、本明細書において、および請求の範囲において用いられる場合、そのように結合された要素のうちの「いずれかまたは両方」、すなわち、いくつかの場合においては接続的に存在し、他の場合においては離接的に存在する要素を意味するものと理解されるべきである。「および/または」により列記される複数の要素は、同じ様式、すなわち、そのように結合された要素のうちの「1つ以上」において解釈されるべきである。他の要素は、「および/または」節により特に同定された要素の他に、特定の同定されたそれらの要素に関係するか無関係であるかにかかわらず、任意に存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含むこと(comprising)」などのオープンエンドの語法により合わせて用いられる場合、一態様においては、Aのみ(任意にB以外の要素を含む);別の態様においては、Bのみ(任意にA以外の要素を含む);さらに別の態様においては、AおよびBの両方(任意に他の要素を含む);などを指す。
【0272】
ここで、明細書において、および請求の範囲において用いられる場合、「または(or)」は、上で定義されるような「および/または」と同じ意味を有するものと理解されるべきである。例えば、リスト中で項目を分離している場合、「または」または「および/または」は、包括的(inclusive)である、すなわち、少なくとも1つの包含として解釈されるべきであるが、また、多くの要素または要素のリストのうちの1つより多く、および任意に、さらなる列記されていない項目をも含むものとして解釈されるべきである。逆であることが明らかに示される用語のみ、例えば、「~のうちの1つのみ(only one of)」または「~のうちの正確に1つ(exactly one of)」、または、請求の範囲において用いられる場合、「~からなる(consisting of)」が、多くの要素または要素のリストのうちの正確に1つの包含を指すであろう。一般的に、用語「または」は、本明細書において用いられる場合、「いずれか(either)」、「~のうちの1つ(one of)」、「~のうちの1つのみ(only one of)」、または「~のうちの正確に1つ(exactly one of)」などの排他性の用語に先行される場合には、排他的な選択肢を示すものとしてのみ解釈されるべきである(すなわち、「一方または他方であるが、両方ではない(one or the other but not both)」)。「~から本質的になる(consisting essentially of)」とは、請求の範囲において用いられる場合、特許法の分野において用いられるその通常の意味を有するべきである。
【0273】
ここで、明細書において、および請求の範囲において用いられる場合、1つ以上の要素のリストを参照した句「少なくとも1つ」は、要素のリスト中の要素のうちのいずれか1つ以上から選択される、少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト中に特に列記される各々および全ての要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含まず、要素のリスト中の要素の任意の組み合わせを除外するものではないことが理解されるべきである。この定義はまた、要素が、句「少なくとも1つ」が言及する要素のリスト中に特に同定された要素の他にも、特に同定されたそれらの要素に関係するか無関係であるかにかかわらず、任意に存在してもよいことを可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(または同等に「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、または同等に「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」)は、一態様においては、少なくとも1つを指すことができ、これは任意に、1つより多く、A(Bは存在しない)(および任意にB以外の要素を含む)を含む;別の態様においては、少なくとも1つを指すことができ、これは任意に、1つより多く、B(Aは存在しない)(および任意にA以外の要素を含む)を含む;さらに別の態様においては、少なくとも1つを指すことができ、これは任意に、1つより多く、A、および少なくとも1つ、任意に、1つより多く、B(および任意の他の要素を含む)を含む;など。
【0274】
逆であることが明らかに示されない限り、本明細書において請求される任意の方法であって、1つより多くのステップまたは行為を含むものにおいて、当該方法のステップまたは行為の順序は、必ずしも、当該方法のステップまたは行為が記述される順序に限定されない。
【0275】
請求の範囲において、ならびに上の明細書において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「担持する(carrying)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」、「~から構成される(composed of)」などの全ての移行句は、オープンエンドである、すなわち、それを含むがそれに限定されないことを意味するものと理解されるべきである。米国特許庁特許審査便覧(Manual of Patent Examining Procedures)、セクション2111.03において記載されるとおり、移行句「~からなる(consisting of)」および「~から本質的になる(consisting essentially of)」のみが、それぞれクローズまたはセミクローズの移行句であるべきである。オープンエンドの移行句(例えば「含む(comprising)」)を用いて本文書において記載される態様はまた、代替的な態様においては、オープンエンドの移行句により記載される特徴「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」ことを企図されることが、理解されるべきである。例えば、本開示が「AおよびBを含む組成物」を記載する場合、本開示はまた、「AおよびBからなる組成物」および「AおよびBから本質的になる組成物」を企図する。
【配列表】