(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】加湿機能付き換気装置
(51)【国際特許分類】
F24F 6/00 20060101AFI20241101BHJP
F24F 6/16 20060101ALI20241101BHJP
G01K 1/14 20210101ALI20241101BHJP
【FI】
F24F6/00 A
F24F6/16
G01K1/14 L
(21)【出願番号】P 2021011635
(22)【出願日】2021-01-28
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】堂本 和樹
(72)【発明者】
【氏名】橋野 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山本 岳人
(72)【発明者】
【氏名】飯田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々井 亨
(72)【発明者】
【氏名】山口 正太郎
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-106187(JP,A)
【文献】特開平07-260547(JP,A)
【文献】特開2001-159556(JP,A)
【文献】特開2015-058080(JP,A)
【文献】中国実用新案第212300656(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0075967(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00-13/32
G01K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外の空気を屋内へ給気するための給気風路と、
前記給気風路を流通する給気流を加湿する加湿部と、
前記加湿部が前記給気流を加湿するための水を貯水する貯水部と、
前記貯水部に水を供給する給水部と、
前記貯水部の水が浸漬可能な位置に配置され、前記給水部から前記貯水部への給水を検知するための第一サーミスタと、
前記給水部の水が浸漬不可能な位置に配置され、前記給気流の温度を検知するための第二サーミスタと、
前記第一サーミスタと前記第二サーミスタとの電圧差と、しきい値とをもとに前記第一サーミスタが水中に存在するかを判定する制御部と、
前記給気風路の前記第二サーミスタの上流における前記給気流を加熱する加熱部と、を備え、
前記制御部は、
前記給水部の水の温度に応じて前記しきい値を調節
し、
前記第一サーミスタの両端間の電圧差である第一電圧を算出する第一算出部と、
前記第二サーミスタの両端間の電圧差である第二電圧を算出する第二算出部と、
前記第一サーミスタが水中に存在する場合において、水の温度と、各温度に対応して前記第一サーミスタが出力すべき水中サーミスタ出力値とを関連付けて記憶する水中サーミスタテーブルを記憶する記憶部と、
前記給水部の水の温度をもとに前記水中サーミスタテーブルから水中サーミスタ出力値を取得し、取得した前記水中サーミスタ出力値と前記第二電圧とをもとにしきい値を導出する導出部と、
前記第一電圧と前記第二電圧との差の絶対値であるサーミスタ電圧差を算出するサーミスタ電圧差算出部と、
前記サーミスタ電圧差算出部が算出する前記サーミスタ電圧差と、前記導出部が導出したしきい値との比較結果をもとに、前記給水部から前記貯水部への給水が前記第一サーミスタが配置された位置まで行われたかを判定する判定部と、を備え、
前記導出部が導出した前記しきい値が所定の値以下である場合に、前記制御部は前記給水部による給水処理を不可とし、前記加熱部は前記給気流の加熱を開始し、
前記導出部が導出した前記しきい値が前記所定の値より大きくなった場合に、前記制御部は前記給水部による給水処理を可能とする加湿機能付き換気装置。
【請求項2】
屋外の空気を屋内へ給気するための給気風路と、
前記給気風路を流通する給気流を加湿する加湿部と、
前記加湿部が前記給気流を加湿するための水を貯水する貯水部と、
前記貯水部に水を供給する給水部と、
前記貯水部の水が浸漬可能な位置に配置され、前記給水部から前記貯水部への給水を検知するための第一サーミスタと、
前記給水部の水が浸漬不可能な位置に配置され、前記給気流の温度を検知するための第二サーミスタと、
前記第一サーミスタと前記第二サーミスタとの電圧差と、
前記第一サーミスタが水中に存在するかを判定するためのしきい値とをもとに前記第一サーミスタが水中に存在するかを判定する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記給水部の水の温度に応じて
前記第一サーミスタが水中に存在するかを判定するための前記しきい値を調節
し、
前記第一サーミスタの両端間の電圧差である第一電圧を算出する第一算出部と、
前記第二サーミスタの両端間の電圧差である第二電圧を算出する第二算出部と、
前記第一サーミスタが水中に存在する場合において、水の温度と、各温度に対応して前記第一サーミスタが出力すべき水中サーミスタ出力値とを関連付けて記憶する水中サーミスタテーブルを記憶する記憶部と、
前記給水部の水の温度をもとに前記水中サーミスタテーブルから水中サーミスタ出力値を取得し、前記第一サーミスタが水中に存在するかを判定するためのしきい値を、取得した前記水中サーミスタ出力値と前記第二電圧との差の絶対値以下に導出する導出部と、
前記第一電圧と前記第二電圧との差の絶対値であるサーミスタ電圧差を算出するサーミスタ電圧差算出部と、
前記サーミスタ電圧差算出部が算出する前記サーミスタ電圧差と、前記導出部が導出した前記第一サーミスタが水中に存在するかを判定するためのしきい値との比較結果をもとに、前記給水部から前記貯水部への給水が前記第一サーミスタが配置された位置まで行われたかを判定する判定部と、を備える加湿機能付き換気装置。
【請求項3】
前記導出部は、前記給水部の水の温度に対応する前記水中サーミスタテーブルの水中サーミスタ出力値と、前記第二電圧との差の絶対値以下となる前記しきい値を導出し、
前記判定部は、
前記サーミスタ電圧差が前記しきい値より小さい場合に、前記給水部から前記貯水部への給水が前記第一サーミスタが配置された位置まで行われていないと判定し、
前記サーミスタ電圧差が前記しきい値以上である場合に、前記給水部から前記貯水部への給水が前記第一サーミスタが配置された位置まで行われたと判定する請求項2に記載の加湿機能付き換気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加湿技術に関し、特に給気流を加湿する加湿機能付き換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、吸い込んだ空気に対して、貯水部に貯水された水を含ませて加湿し、加湿した空気を吹き出す加湿装置がある(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の加湿装置では、貯水部内の水位を水位センサにて検知して少なくとも自動給水弁を制御し、貯水部の水位を所定量に保持している。
【0003】
また、水位を検知する水位センサとして、NTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタ(自己発熱型サーミスタ)を用いたものが知られている(例えば、特許文献2)。この種の水位センサは、NTCサーミスタに電流を流し、NTCサーミスタの自己発熱を利用して水位検知を行う。
【0004】
具体的には、NTCサーミスタの自己発熱において、熱拡散定数(熱平衡状態でNTCサーミスタ素子の温度を自己発熱によって1℃上げるために必要な電力を表す定数)が空気中と水中で異なることを利用する。即ち、熱拡散定数が高い水中では発熱しにくいため、NTCサーミスタの抵抗値が高く、結果としてNTCサーミスタの両端電圧が高く現れる。一方、熱拡散定数が低い空気中では発熱しやすいため、NTCサーミスタの抵抗値が低く、結果としてNTCサーミスタの両端電圧が低く現れる。
【0005】
NTCサーミスタを用いた水位センサは、その水位センサが空気中に存在する状態から水中に存在する状態に変化したときに現れる両端電圧の変化に基づいて、その水位センサが設けられた位置に水が存在するか否かを検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-279514号公報
【文献】特開平7-260547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載された水位検知では、1つのNTCサーミスタにおける両端電圧の時間的な変化をみることで行われる。しかしながら、NTCサーミスタの両端電圧は、環境温度が高いほど低く現れる。これにより、貯水部に給水された水の温度が高い場合、NTCサーミスタが空気中に存在する状態から水中に存在する状態に変化しても、NTCサーミスタの両端電圧において、時間的な変化が大きく現れない場合が生じ得る。よって、この場合、貯水部の水位を正しく検知できないという問題点があった。
【0008】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、貯水部の水位を正しく検知する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のある態様の加湿機能付き換気装置は、屋外の空気を屋内へ給気するための給気風路と、給気風路を流通する給気流を加湿する加湿部と、加湿部が給気流を加湿するための水を貯水する貯水部と、貯水部に水を供給する給水部と、貯水部の水が浸漬可能な位置に配置され、給水部から貯水部への給水を検知するための第一サーミスタと、給水部の水が浸漬不可能な位置に配置され、給気流の温度を検知するための第二サーミスタと、第一サーミスタと第二サーミスタとの電圧差と、しきい値とをもとに第一サーミスタが水中に存在するかを判定する制御部と、給気風路の第二サーミスタの上流における給気流を加熱する加熱部と、を備え、制御部は、給水部の水の温度に応じてしきい値を調節し、第一サーミスタの両端間の電圧差である第一電圧を算出する第一算出部と、第二サーミスタの両端間の電圧差である第二電圧を算出する第二算出部と、第一サーミスタが水中に存在する場合において、水の温度と、各温度に対応して第一サーミスタが出力すべき水中サーミスタ出力値とを関連付けて記憶する水中サーミスタテーブルを記憶する記憶部と、給水部の水の温度をもとに水中サーミスタテーブルから水中サーミスタ出力値を取得し、取得した前記水中サーミスタ出力値と第二電圧とをもとにしきい値を導出する導出部と、第一電圧と第二電圧との差の絶対値であるサーミスタ電圧差を算出するサーミスタ電圧差算出部と、サーミスタ電圧差算出部が算出するサーミスタ電圧差と、導出部が導出したしきい値との比較結果をもとに、給水部から貯水部への給水が第一サーミスタが配置された位置まで行われたかを判定する判定部と、を備え、導出部が導出したしきい値が所定の値以下である場合に、制御部は給水部による給水処理を不可とし、加熱部は給気流の加熱を開始し、導出部が導出したしきい値が所定の値より大きくなった場合に、制御部は給水部による給水処理を可能とする等により、上記課題を解決する。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、貯水部の水位を正しく検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施例に係る加湿機能付き換気装置の家屋への設置例を示す概略図である。
【
図2】
図1の加湿機能付き換気装置の機器構成を示す概略図である。
【
図4】
図3の加湿装置の鉛直方向の概略断面図である。
【
図7】
図6の記憶部に記憶される水中サーミスタテーブルのデータ構造を示す図である。
【
図8】
図8(a)-(b)は、変形例に係る加湿装置の動作概要を示す図である。
【
図9】変形例に係る加湿装置の給水手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施例を具体的に説明する前に、実施例の概要を説明する。本実施例は、加湿機能付き換気装置における加湿装置に関する。加湿装置は、貯水部に貯水された水を使用して加湿を実行する。貯水部に水を貯水するために、給水部が貯水部への給水を実行する。その際、給水された水が所定の水位まで給水されているか、つまり水位の上昇を確実に検知することが必要とされる。特に、加湿のために給気される空気の温度と給水される水の温度に変化があっても、確実に給水検知可能にすることが目的とされる。
【0014】
本実施例では、水位に応じて水に浸漬されたり、されなかったりする位置に配置されるサーミスタ(以下、「第一サーミスタ」という)と、水位にかかわらず水に浸漬されない位置に配置されるサーミスタ(以下、「第二サーミスタ」という)が使用される。第一サーミスタが水に浸漬されていない場合、第一サーミスタから出力される電圧(以下、「第一電圧」という)と、第二サーミスタから出力される電圧(以下、「第二電圧」という)との電圧差は小さくなる。一方、第一サーミスタが水に浸漬される場合、第一電圧と第二電圧との電圧差は大きくなる。つまり、第一電圧と第二電圧との電圧差をしきい値と比較することによって、貯水部の水位の上昇が検知される。しかしながら、貯水部外の空気の温度が低く、貯水部の水の温度が高くなると、第一サーミスタが水に浸漬されていても、電圧差が小さくなる。その結果、給水による水位の上昇が検知されない。
【0015】
本実施例は、空気の温度と水の温度に変化があっても、貯水部の水位を確実に検知することを目的とする。加湿装置は、水に浸漬された第一サーミスタから出力されうる第一電圧の予想値(以下、「水中サーミスタ出力値」という)と水の温度との対応関係をテーブル(以下、「水中サーミスタテーブル」という)として予め記憶する。加湿装置は、貯水部に給水される水の温度をもとに水中サーミスタテーブルを参照することによって、当該温度に対応する水中サーミスタ出力値を取得する。加湿装置は、第二電圧と水中サーミスタ出力値とをもとにしきい値を導出し、第一電圧と第二電圧との電圧差を当該しきい値と比較することによって、貯水部の水位の上昇が検知される。つまり、空気の温度と水の温度がしきい値に反映されるので、空気の温度と水の温度に変化があっても、貯水部の水位が確実に検知される。
【0016】
以下に説明する実施例は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示す。よって、以下の実施例で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、並びに、ステップ(工程)及びステップの順序などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。したがって、以下の実施例における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0017】
図1及び
図2を参照して、本実施例に係る加湿機能付き換気装置104の機器構成について説明する。
図1は、加湿機能付き換気装置104の家屋100への設置例を示す概略図である。
図2は、加湿機能付き換気装置104の機器構成を示す概略図である。
【0018】
図1に示す通り、加湿機能付き換気装置104は、家屋100の階間または屋根裏等に設置され、熱交換形換気装置105と加湿装置1とを含む。加湿機能付き換気装置104は、熱交換形換気装置105において屋内102の空気(後述する排気流114)と屋外103の空気(後述する給気流115)とを熱交換しながら換気しつつ、給気流115を加湿装置1において必要に応じて加湿し、屋内102に導入する。つまり、加湿機能付き換気装置104は、換気を行うとともに、この換気時に、排気流114の熱を給気流115へと伝達し、不要な熱の放出を抑制している。さらに、加湿機能付き換気装置104は、給気流115に対して加湿を行い、屋内102における空気の湿度(屋内相対湿度)の低下を抑制している。
【0019】
ここで、排気流114は、屋内102の空気を屋外103に排出する空気の流れである。排気流114は、還気風路109を通じて、屋内102から熱交換形換気装置105へと搬送される。熱交換形換気装置105において給気流115と熱交換された排気流114は、排気風路110を通じて、熱交換形換気装置105から屋外103へと排出される。還気風路109は、家屋100の各室と熱交換形換気装置105とを繋げるように配置されている。排気風路110は、熱交換形換気装置105と家屋100の外壁面に設けられた排気口とを繋げるように配置されている。
【0020】
給気流115は、屋外103の空気を屋内102に導入する空気の流れである。給気流115は、外気風路111を通じて、屋外103から熱交換形換気装置105へと搬送される。熱交換形換気装置105において排気流114と熱交換された給気流115は、給気風路112を通じて、熱交換形換気装置105から加湿装置1へと搬送される。加湿装置1において必要に応じて加湿された給気流115は、給気風路113を通じて、加湿装置1から屋内102へと導入される。外気風路111は、家屋100の外壁面に設けられた給気口と熱交換形換気装置105とを繋げるように配置されている。給気風路112は、熱交換形換気装置105と加湿装置1とを繋げるように配置されている。給気風路113は、加湿装置1と家屋100の各室とを繋げるように配置されている。
【0021】
また、家屋100には、マルチ型の空調機器(マルチエアコン)が設置されている。マルチ型の空調機器は、屋内102の各室(例えば、天井側の壁面)に設けられた複数の室内機119と、屋外103に設けられた1台の共用の室外機120とを含む。室外機120は、複数の室内機119のそれぞれと冷媒回路121によって接続されるとともに、加湿装置1に設けられた第一加熱部116とも冷媒回路121によって接続されている。
【0022】
次に、
図2を参照して、加湿機能付き換気装置104の具体的な構成について説明する。加湿機能付き換気装置104は、
図2に示す通り、熱交換形換気装置105と加湿装置1とを含む。また、加湿装置1は、加湿部19の上流側に第一加熱部116及び第二加熱部117を備え、後述する制御部(図示せず)によって運転動作が制御される。
【0023】
熱交換形換気装置105は、屋内102の空気RA(排気流114)と屋外103の空気OA(給気流115)との間で熱交換しながら換気する。具体的には、熱交換形換気装置105は、
図2に示す通り、還気口105a、排気口105b、外気口105c、給気口105d、熱交換素子105e、湿度センサ105f、排気ファン105g、及び給気ファン105hを備えている。
【0024】
還気口105aは、屋内102の空気RA(排気流114)を還気風路109(
図1参照)から熱交換形換気装置105に取り入れる取入口である。排気口105bは、排気流114を排気EAとして熱交換形換気装置105から排気風路110(
図1参照)に吐き出す吐出口である。外気口105cは、給気流115を外気風路111(
図1参照)から熱交換形換気装置105に取り入れる取入口である。給気口105dは、給気流115を熱交換形換気装置105から給気風路112に吐き出す吐出口である。
【0025】
熱交換素子105eは、排気流114と給気流115との間で熱交換(顕熱と潜熱)を行うための部材である。熱交換素子105eは、セルロース繊維をベースとした伝熱紙(伝熱板)によって形成された全熱交換素子である。ただし、材質はこれに限定されない。熱交換素子105eを構成する伝熱板としては、例えば、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレートをベースとした透湿樹脂膜、あるいは、セルロース繊維、セラミック繊維、ガラス繊維をベースとした紙材料等を用いることができる。また、熱交換素子105eを構成する伝熱板は、伝熱性を備えた薄いシートであって、気体が透過しない性質のものを用いることができる。この場合、熱交換素子105eは、顕熱交換素子となる。
【0026】
湿度センサ105fは、還気口105aから取り入れた排気流114の湿度を検出するセンサである。排気ファン105gは、排気流114を還気口105aから取り入れ、排気口105bから吐き出すための送風機である。給気ファン105hは、給気流115を外気口105cから取り入れ、給気口105dから排出するための送風機である。
【0027】
また、熱交換形換気装置105の内部には、還気口105aと排気口105bとを連通する内部排気風路と、外気口105cと給気口105dとを連通する内部給気風路が構成されている。
【0028】
熱交換形換気装置105は、熱交換換気を行う場合には、排気ファン105g及び給気ファン105hを動作させ、熱交換素子105eにおいて内部排気風路を流通する排気流114と、内部給気風路を流通する給気流115との間で熱交換を行う。これにより、熱交換形換気装置105は、換気を行う際に、屋外103に放出する排気流114の熱を屋内102に取り入れる給気流115へと伝達し、不要な熱の放出を抑制し、屋内102に熱を回収する。この結果、冬季においては、換気を行う際に、屋外103の温度が低い空気によって屋内102の温度低下を抑制することができる。一方、夏季においては、換気を行う際に、屋外103の温度が高い空気によって屋内102の温度上昇を抑制することができる。
【0029】
加湿装置1は、熱交換形換気装置105からの熱交換後の給気流115を必要に応じて加湿する。具体的には、加湿装置1は、
図2に示す通り、吸込口2、吹出口3、加湿部19、第一加熱部116、及び第二加熱部117を備えている。
【0030】
吸込口2は、給気流115を給気風路112から加湿装置1に取り入れる取入口である。吹出口3は、加湿した給気流115(あるいは加湿していない給気流115)を給気SAとして給気風路113(
図1参照)に吐き出す吐出口である。加湿部19は、内部に取り入れた給気流115を加湿するためのユニットである。加湿部19の構成の詳細は後述する。加湿部19で空気に付加される液体は水以外でもよく、例えば、殺菌性あるいは消臭性を備えた次亜塩素酸水等の液体であってもよい。この場合には、次亜塩素酸水を給気流115に含ませて屋内102に供給することで、屋内102の殺菌あるいは消臭を行うことができる。
【0031】
続いて、第一加熱部116及び第二加熱部117は、
図2に示す通り、加湿装置1内に配置され、いずれも導入される給気流115を加熱するためのユニットである。第一加熱部116及び第二加熱部117は、制御部(図示せず)からの出力信号に応じて出力状態(オンまたはオフ)を変化させ、導入される給気流115に対する加熱能力(加熱量)を調整する。
【0032】
第一加熱部116は、第二加熱部117よりも上流側に配置される。第一加熱部116は、空調機器(室外機120)から導入される冷媒が内部を流通する際に放熱し、熱交換形換気装置105からの熱交換後の給気流115に対して必要に応じて加熱する。
【0033】
第二加熱部117は、第一加熱部116の下流側(第一加熱部116と加湿部19との間)に配置される。第二加熱部117は、通電することで発熱する発熱体により構成され、第一加熱部116によって加熱された給気流115に対して必要に応じて加熱する。発熱体としては、例えば、温度が上昇すると次第に電流が流れにくくなり、無駄な電力を消費しない性質を有するPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒーターが用いられる。
【0034】
マルチ型の空調機器は、共用の室外機120と各室に設けられた室内機119とによって各室の暖房または冷房を行う。マルチ型の空調機器では、室外機120は、冷媒回路121に設けられた分岐ユニット122を切り替えることによって、冷媒回路121を介して各室の室内機119と加湿装置1の第一加熱部116とにそれぞれ並列に接続される。以下では、マルチ型の空調機器の冷媒の流れ等に関して暖房運転時の動作として説明する。
【0035】
室内機119は、屋内102の各室(天井側の壁面)に設置される室内ユニットである。室内機119は、送風ファン119aと第一熱交換器119bとを含む。送風ファン119aは、屋内102から吸い込んだ空気RAを第一熱交換器119bに向けて送風する。第一熱交換器119bは、送風ファン119aから送風された空気RAと、冷媒回路121を流通する冷媒(後述する圧縮機120aによって高温・高圧となった冷媒ガス)との間で熱交換することによって、熱を外部(冷媒回路121外)に放出させる。このとき、冷媒ガスは、高圧下で凝縮されて液化する。暖房運転時の室内機119(第一熱交換器119b)では、導入される冷媒ガスの温度が空気の温度より高いため、熱交換すると空気RAは昇温され、冷媒ガスは冷却される。
【0036】
一方、室外機120は、屋外103に設置される室外ユニットである。室外機120は、圧縮機120aと、膨張器120bと、第二熱交換器120cと、送風ファン120dと、四方弁120eとを含む。圧縮機120aは、冷媒回路121における低温低圧の冷媒ガス(作動媒体ガス)を圧縮し、圧力を高めて高温化する。膨張器120bは、第一熱交換器119b(または第一加熱部116)によって液化した高圧の冷媒を減圧して元の低温低圧の液体とする。膨張器120bは、膨張弁ともいう。第二熱交換器120cは、膨張器120bを流通した冷媒が空気から熱を奪って蒸発し、液状の冷媒を低温低圧の冷媒ガスとする。第二熱交換器120cでは、導入される冷媒の温度が空気の温度より低いため、熱交換すると空気が冷却され、冷媒は昇温される。送風ファン120dは、第二熱交換器120cに向けて屋外103の空気OAを送風する。
【0037】
四方弁120eは、冷媒回路121内を流れる冷媒の流れる向きを切り替えるための機器(可逆弁)である。より詳細には、四方弁120eは、圧縮機120aと第一熱交換器119b(または第一加熱部116)との間及び圧縮機120aと第二熱交換器120cとの間において接続される。四方弁120eは、圧縮機120aと第一熱交換器119b(または第一加熱部116)と膨張器120bと第二熱交換器120cとをこの順序で冷媒が流通する第一状態(暖房運転時)と、圧縮機120aと第二熱交換器120cと膨張器120bと第一熱交換器119bとをこの順序で冷媒が流通する第二状態(冷房運転時)とを切り替える。第一状態と第二状態とでは、冷媒の流れが逆方向となる。
【0038】
分岐ユニット122(第一分岐ユニット122a~第四分岐ユニット122d等)は、冷媒回路121を流通する冷媒を、特定の一方向あるいは二方向に流れるように切り替える。第一分岐ユニット122aは、室外機120から導入される冷媒を、室内機119側の一方向に流通させる状態と、室内機119側と加湿装置1側の二方向に分岐して流通させる状態と、加湿装置1側の一方向に流通させる状態のいずれかの状態に切り替える。第二分岐ユニット122bは、第一分岐ユニット122aを経由して導入される冷媒を、室内機119の一方向に流通させる状態と、室内機119と他の室内機119側の二方向に分岐して流通させる状態と、他の室内機119側の一方向に流通させる状態のいずれかの状態に切り替える。
【0039】
第三分岐ユニット122cは、室内機119から導入される冷媒のみを第四分岐ユニット122d側に流通させる状態と、室内機119から導入される冷媒と他の室内機119側から導入される冷媒とを合流させて第四分岐ユニット122d側に流通させる状態と、他の室内機119側から導入される冷媒のみを第四分岐ユニット122d側に流通させる状態のいずれかの状態に切り替える。第四分岐ユニット122dは、第三分岐ユニット122c側から導入される冷媒のみを室外機120側に流通させる状態と、第三分岐ユニット122c側から導入される冷媒と加湿装置1側から導入される冷媒とを合流させて室外機120側に流通させる状態と、加湿装置1側から導入される冷媒のみを室外機120側に流通させる状態のいずれかの状態に切り替える。
【0040】
冷媒回路121には、分岐ユニット122(第一分岐ユニット122a~第四分岐ユニット122d等)の切り替え(各状態の組み合わせ)によって、室内機119の第一熱交換器119bを含む第一冷媒回路121aと、加湿装置1の第一加熱部116を含む第二冷媒回路121bとが並列する。
図2では、一つの第一冷媒回路121aのみを示しているが、実際には、図示していない分岐ユニット122の切り替えによって、各室の室内機119の第一熱交換器119bごとに複数の第一冷媒回路121aが構成されている。
【0041】
第一冷媒回路121aは、暖房運転時において、圧縮機120aと第一熱交換器119bと膨張器120bと第二熱交換器120cとの順に冷媒が流れるように配管接続されて構成される。ここで、第一冷媒回路121aは、マルチ型の空調機器における通常の冷媒回路に相当する。
【0042】
配管接続された第一冷媒回路121aでは、圧縮機120aから出た冷媒は、四方弁120eを流通して室内機119の第一熱交換器119bへと向かう。冷媒は、第一熱交換器119bを流通した後、膨張器120bを流通して第二熱交換器120cへと向かう。さらに、冷媒は、第二熱交換器120cを流通した後、四方弁120eを流通して圧縮機120aに戻る。このように冷媒(冷媒ガス)が流通する過程で、冷媒ガスは、圧縮機120aによって高温高圧に圧縮される。圧縮機120aで圧縮された高温高圧の冷媒ガスは、第一熱交換器119bを流通している間に送風ファン119aによって冷却されて液体となる。その後、膨張器120bに達した冷媒液は、減圧され低温の気液混合状態となり、第二熱交換器120cを流通している間に送風ファン120dによって温められて、元の冷媒ガスとなる。
【0043】
室内機119では、第一熱交換器119bの中を高温高圧の冷媒ガスが流通する状態となるため、送風ファン119aからの空気RAを第一熱交換器119bに流通させることで空気RAの昇温がなされ、昇温した空気RAが屋内102に吹き出される。つまり、室内機119によって屋内102の空気RAの暖房がなされる。
【0044】
一方、第二冷媒回路121bは、加熱運転時において、圧縮機120aと第一加熱部116と膨張器120bと第二熱交換器120cとの順に冷媒が流れるように配管接続されて構成される。室内機119の第一熱交換器119bと同じ原理により、第一加熱部116を流通する給気流115に対して加熱(昇温)させることができる。
【0045】
具体的には、配管接続された第二冷媒回路121bでは、圧縮機120aから出た冷媒は、四方弁120eを流通して加湿装置1の第一加熱部116へと向かう。冷媒は、第一加熱部116を流通した後、膨張器120bを流通して第二熱交換器120cへと向かう。さらに、冷媒は、第二熱交換器120cを流通した後、四方弁120eを流通して圧縮機120aに戻る。このように冷媒(冷媒ガス)が流通する過程で、冷媒ガスは、圧縮機120aによって高温高圧に圧縮される。圧縮機120aで圧縮された高温高圧の冷媒ガスは、第一加熱部116を流通している間に熱交換形換気装置105からの給気流115によって冷却されて液体となる。その後、膨張器120bに達した冷媒液は、減圧され低温の気液混合状態となり、第二熱交換器120cを流通している間に送風ファン120dによって温められて、元の冷媒ガスとなる。
【0046】
第一加熱部116では、その内部を高温高圧の冷媒ガスが流通する状態となるため、高温高圧の冷媒ガスと熱交換形換気装置105からの給気流115との間で熱交換がなされ、給気流115の加熱(昇温)がなされる。
【0047】
次に、
図3、
図4を参照して、加湿装置1の概略構成について説明する。
図3は、加湿装置1の斜視図である。
図4は、加湿装置1の鉛直方向の概略断面図である。加湿装置1は、空気を吸い込む吸込口2と、吸込口2と連通し下方が通風口7として開放された内筒5と、内筒5を内包した外筒9と、その吸込口2より吸い込まれ、内筒5及び外筒9を通過した空気を吹き出す外筒9の上方に設けられた吹出口3と、を備えている。
【0048】
加湿装置1は、吸込口2と吹出口3との間に、給気風路4と、内筒風路6と、外筒風路8と、が形成されている。給気風路4は、吸込口2で吸い込まれた空気が連通する内筒5に向けて流れる風路であり、屋外103の空気を屋内102へ給気する。内筒風路6は、内筒5内部に形成される風路であり、給気風路4から流れた空気が内筒5の通風口7に向けて流れる風路である。外筒風路8は、外筒9の内径と内筒5の外径との間に形成される風路であり、内筒5の通風口7より吹き出された空気が外筒9の内側を通って吹出口3へと導かれる風路である。
【0049】
加湿装置1は、給気風路4、内筒風路6、外筒風路8にて形成される風路内に設けられた加湿部19を備えており、加湿部19により微細化された水をその風路に流れる空気に含めることで、吸込口2から吸い込んだ空気を加湿する。
【0050】
加湿部19は、加湿装置1の主要部であり、水の微細化を行う。加湿装置1では、吸込口2で取り込んだ空気が、給気風路4を経由して加湿部19へ送られる。加湿装置1は、内筒風路6を通る空気に、加湿部19にて微細化された水を含ませて、その水の含んだ空気を、外筒風路8を経由して吹出口3より吹き出す。つまり、加湿部19は、給気風路4を流通する給気流115(
図2)を加湿する。
【0051】
加湿部19は、上方及び下方が開口された衝突壁5aを備えている。衝突壁5aは、内筒5の内側に固定されることで設けられている。また、加湿部19には、衝突壁5aに囲まれた内側において、回転しながら水を汲み上げる(揚水する)筒状の揚水管21が備えられている。揚水管21は、逆円錐形の中空構造を有し、逆円錐形状の天面中心に、鉛直方向に向けて配置された回転軸20が固定されている。回転軸20が、加湿部19の外面に備えられた回転モータ23と接続されることで、回転モータ23の回転運動が回転軸20を通じて揚水管21に伝導され、揚水管21が回転する。
【0052】
揚水管21は、揚水管21の外面から外側に突出するように形成された回転板22を複数備えている。複数の回転板22は、回転軸20の軸方向に所定間隔を設けて、揚水管21の外面から外側に突出するように形成されている。回転板22は揚水管21とともに回転するため、回転軸20と同軸の水平な円盤形状が好ましい。回転板22の枚数は、目標とする性能や揚水管21の寸法に合わせて適宜設定される。
【0053】
また、揚水管21の壁面には、揚水管21の壁面を貫通する開口(図示せず)を備えている。揚水管21の開口は、揚水管21の外面から外側に突出するように形成された回転板22と連通する位置に設けられている。開口の周方向の大きさは、揚水管21の開口が備えられた部位の外径に合わせてそれぞれ設計する必要があり、例えば揚水管21の外径の5%から50%に相当する径、より好ましくは、揚水管21の5%から20%に相当する径が挙げられる。上記範囲内において、各開口の寸法を同一としてもよい。
【0054】
加湿部19の下部には、揚水管21の鉛直方向下方に、空気を加湿するため揚水管21により揚水される水を貯水する貯水部10が設けられている。貯水部10は、加湿部19が給気流115を加湿するための水を貯水する。貯水部10は、揚水管21の下部の一部、例えば揚水管21の円錐高さの三分の一から百分の一程度の長さが浸るように、深さがとられている。この深さは必要な揚水量に合わせて設計できる。
【0055】
貯水部10への水の供給は、給水部15により行われる。給水部15には、給水管16が接続されており、例えば水道から給水弁17を通じて、給水管16により直接給水する。この給水部15は、貯水部10の底面よりも鉛直方向上方に設けられている。給水部15は、貯水部10の底面だけでなく、貯水部10の上面(貯水部10に貯水され得る最大水位の面)よりも鉛直方向上方に設けられるのが好ましい。
【0056】
貯水部10の底面中央には、排水部11が設けられている。排水部11の排水口は、貯水部10の最も低い位置に設けられている。水の微細化の運転を停止させた場合、排水部11に設けられた排水弁12を開けることで、貯水部10に貯水された水が、排水部11から排水される。
【0057】
また、貯水部10には、オーバーフロー排水口18が設けられている。貯水部10に必要以上の水が貯水された場合、水の抵抗によって揚水管21の回転が不足したり、加湿装置1から水漏れを起こしたり、場合によっては回転モータ23が水に浸かって故障したりする恐れがある。オーバーフロー排水口18は、そのような事態が生じすることを防ぐために設けられ、貯水部10おいて貯水された水が所定の水位以上とならないよう、所定の水位の位置に開口されている。これにより、貯水部10に所定の水位の水が貯水されると、それ以後に水が給水されてもオーバーフロー排水口18から水が排水され、貯水部10には所定の水位以上の水が貯水されない。
【0058】
加湿部19には、貯水部10の満水の水位を検知するために、第一サーミスタ25と第二サーミスタ26とが設けられている。第一サーミスタ25は、加湿部19による液体の微細化のために必要な貯水部10に貯水すべき水の水位を満水水位として検知しており、NTCサーミスタにより構成される。第一サーミスタ25は、オーバーフロー排水口18が設けられる所定の水位となる位置よりも低い第1の位置に設けられる。つまり、満水水位として検知される位置は、オーバーフロー排水口18が設けられる所定の水位となる位置よりも低い位置に設定される。これは、貯水部10の水が浸漬可能な位置といえる。
【0059】
第二サーミスタ26は、第一サーミスタ25と同一のNTCサーミスタにより構成され、オーバーフロー排水口18が設けられる所定の水位となる位置よりも高い第2の位置に設けられる。第2の位置は、例えば、給気風路4であり、給水部15の水が浸漬不可能な位置といえる。オーバーフロー排水口18により、貯水部10には所定の水位よりも高い位置に水が貯水されることはなく、第二サーミスタ26は常に空気中に存在することになる。そこで、第二サーミスタ26の出力値は、出力値の基準として用いられる。
【0060】
NTCサーミスタは、水中に存在する状態にある場合と、空気中に存在する状態にある場合とで、出力される電圧値が変化する。本実施例では、貯水部10に水を供給する場合に、第一サーミスタ25が出力する電圧値と、第二サーミスタ26が出力する電圧値とを比較する。その電圧差が所定範囲となった場合に、第一サーミスタ25が水中に存在する状態となったと判定し、貯水部10に満水水位まで水が貯水されたとして、給水弁17を閉じ、給水を停止する。
【0061】
ここで、加湿装置1における水の微細化の動作原理を説明する。回転モータ23により回転軸20が回転し、それに合わせて揚水管21が回転すると、その回転によって生じる遠心力により、貯水部10に貯水された水が揚水管21によって汲み上げられる。揚水管21の回転数は、1000-5000rpmの間に設定される。揚水管21は、逆円錐形の中空構造を有するので、回転によって汲み上げられた水は、揚水管21の内壁を伝って上部へ揚水される。揚水された水は、揚水管21の開口から回転板22を伝って遠心方向に放出され、水滴として飛散する。
【0062】
回転板22から飛散した水滴は、衝突壁5aに囲まれた空間を飛翔し、衝突壁5aに衝突し、微細化される。一方、内筒風路6を通過する空気は、衝突壁5aの上方開口部から衝突壁5a内部へ移動し、衝突壁5aによって破砕(微細化)された水滴を含みながら下方開口部から衝突壁5a外部へ移動する。これにより、加湿装置1の吸込口2より吸い込まれた空気に対して加湿を行い、吹出口3より加湿された空気を吹き出すことができる。
【0063】
回転板22から飛散した水の運動エネルギーは衝突壁5a内部の空気との摩擦により減衰するため、回転板22はなるべく衝突壁5aに近づけたほうが好ましい。一方で、衝突壁5aと回転板22を近づけるほど、衝突壁5a内部を通過する風量が減少するため、距離の下限値は衝突壁5a内部を通過する圧力損失と風量とで、任意に決まる。
【0064】
微細化される液体は水以外でもよく、例えば、殺菌性/消臭性を備えた次亜塩素酸水等の液体であってもよい。微細化された次亜塩素酸水を加湿装置1の吸込口2より吸い込まれた空気に含ませ、その空気を吹出口3より吹き出すことで、加湿装置1が置かれた空間の殺菌/消臭を行うことができる。
【0065】
図5は、加湿装置1の動作概要を示し、第一サーミスタ25と第二サーミスタ26から出力される電圧値と環境温度との対応関係を示す。第一サーミスタ25と第二サーミスタ26を「サーミスタ」と総称する場合もある。空気中サーミスタ出力値200は、空気中に存在するサーミスタから出力される電圧値を示す。これは、水に浸漬されていない第一サーミスタ25から出力される電圧値と、第二サーミスタ26から出力される電圧値とに相当する。水中サーミスタ出力値202は、水中に存在するサーミスタから出力される電圧値を示す。これは、水に浸漬されている第一サーミスタ25から出力される電圧値に相当する。
【0066】
空気の温度と水の温度がいずれも10℃である場合、第二サーミスタ26から出力される電圧値は「A1」となる。第一サーミスタ25から出力される電圧値は、空気中において「A1」となり、水中において「A2」となる。そのため、第一サーミスタ25から出力される電圧値と第二サーミスタ26から出力される電圧値との電圧差がしきい値より小さければ、第一サーミスタ25が空気中に存在し、電圧差以上であれば、第一サーミスタ25が水中に存在すると判定される。
【0067】
しかしながら、空気中サーミスタ出力値200と水中サーミスタ出力値202は温度に依存する。例えば、空気の温度が10℃であり、水の温度が30℃である場合、水中の第一サーミスタ25から出力される電圧値は「A3」となる。そのため、第一サーミスタ25が空気中に存在するか水中に存在するかを判定するためのしきい値は、環境温度に応じて変動する。
【0068】
本実施例では、空気中に存在するかあるいは水中に存在するかを温度にかかわらず正確に判定することによって、貯水部10の水位を確実に検知するために、次の処理を実行する。
図6は、加湿装置1の機能構成を示す。加湿装置1は、第一サーミスタ25、第二サーミスタ26、給水温度検知部27、制御部50、給水部15、第二加熱部117を含む。これまでと同様に、第一サーミスタ25は、給水部15から貯水部10への給水を検知可能であり、第二サーミスタ26は、給気流115の温度を検知可能である。第一算出部60は、第一サーミスタ25に接続され、第一サーミスタ25の両端間の電圧差である第一電圧を算出する。第二算出部62は、第二サーミスタ26に接続され、第二サーミスタ26の両端間の電圧差である第二電圧を算出する。
【0069】
給水温度検知部27は、
図4のように給水管16に設置され、貯水部10に給水される水の温度を検知する。給水温度検知部27は、検知した温度を導出部64に出力する。記憶部66は、水の温度と水中サーミスタ出力値とを関連付けて記憶する水中サーミスタテーブルを記憶する。
図7は、記憶部66に記憶される水中サーミスタテーブルのデータ構造を示す。水の温度と水中サーミスタ出力値とが対応付けられる。水中サーミスタ出力値は、前述のごとく、第一サーミスタ25が水中に存在する場合において、第一サーミスタ25が出力すべき電圧値である。
図6に戻る。
【0070】
導出部64は、給水温度検知部27から取得した水の温度をもとに、記憶部66に記憶した水中サーミスタテーブルから水中サーミスタ出力値を取得する。また、導出部64は、第二算出部62から第二電圧を取得する。導出部64は、水中サーミスタ出力値と第二電圧とをもとにしきい値を導出する。例えば、導出部64は、水中サーミスタ出力値と第二電圧との差の絶対値以下となるしきい値を導出する。具体的に説明すると、導出部64は、第二電圧が「A1」であり、水中サーミスタ出力値が「A3」である場合、|A3-A1|×αによりしきい値を導出する。αは1以下の定数であり、予め設定される。
【0071】
サーミスタ電圧差算出部68は、第一電圧と第二電圧との差の絶対値を算出する。当該絶対値がサーミスタ電圧差である。判定部70は、サーミスタ電圧差算出部68が算出するサーミスタ電圧差と、導出部64が導出したしきい値との比較結果をもとに、給水部15から貯水部10への給水が第一サーミスタ25が配置された位置まで行われたか否かを判定する。例えば、判定部70は、サーミスタ電圧差がしきい値より小さい場合に、給水部15から貯水部10への給水が第一サーミスタ25が配置された位置まで行われていないと判定する。一方、判定部70は、サーミスタ電圧差がしきい値以上である場合に、給水部15から貯水部10への給水が第一サーミスタ25が配置された位置まで行われたと判定する。
【0072】
このように、制御部50は、給水部15の水の温度に応じてしきい値を調節しながら、制御部は、第一サーミスタ25と第二サーミスタ26との電圧差と、しきい値とをもとに第一サーミスタ25が水中に存在するか否かを判定する。
【0073】
(変形例)
ここで、変形例を説明する。変形例では、第二加熱部117も使用する。
図8(a)-(b)は、加湿装置1の動作概要を示す。
図8(a)は、
図5と同様に、第一サーミスタ25と第二サーミスタ26から出力される電圧値と環境温度との対応関係を示す。空気の温度が20℃であり、水の温度が30℃である場合、第二サーミスタ26から出力される電圧値は「A4」となる。第一サーミスタ25から出力される電圧値は、空気中において「A4」となり、水中において「A3」となる。図示のごとく、A3とA4との差異は小さいので、これらをもとにしきい値を導出すると、しきい値も小さくなり、判定精度が低下する。
図8(b)は、後述して
図6に戻る。
【0074】
判定部70は、導出部64が導出したしきい値が所定の値以下である場合に、給水部15による給水処理を不可とし、第二加熱部117に給気流115の加熱を開始させる。第二加熱部117は、給気風路4の第二サーミスタ26の上流における給気流115を加熱する。給気流115の加熱により、第二サーミスタ26から出力される電圧値が低下するので、しきい値が増加していく。このような状況下において、導出部64はしきい値の導出を継続する。判定部70は、導出部64が導出したしきい値が所定の値より大きくなった場合に、給水部15による給水処理を可能にさせる。
【0075】
図8(b)は、
図8(a)と同様に、第一サーミスタ25と第二サーミスタ26から出力される電圧値と環境温度との対応関係を示す。
図8(a)のような空気の温度が20℃であり、水の温度が30℃である場合から給気流115を加熱することによって、空気の温度が30℃まで上昇する。そのような状況において、第二サーミスタ26から出力される電圧値は「A5」となる。「A5」は「A4」よりも小さい値である。第一サーミスタ25から出力される電圧値は、空気中において「A5」となり、水中において「A3」となる。図示のごとく、A3とA5との差異は、A3とA4との差異よりも大きいので、A3とA5とをもとに導出したしきい値も大きくなり、判定精度が向上する。
【0076】
本開示における装置、システム、または方法の主体は、コンピュータを備えている。このコンピュータがプログラムを実行することによって、本開示における装置、システム、または方法の主体の機能が実現される。コンピュータは、プログラムにしたがって動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC)、またはLSI(Large Scale Integration)を含む1つまたは複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM(Read Only Memory)、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0077】
以上の構成による加湿装置1の動作を説明する。
図9は、変形例に係る加湿装置1の給水手順を示すフローチャートである。導出部64はしきい値を導出する(S10)。しきい値が所定の値以下であれば(S12のY)、判定部70は、給水部15に給水を不可にさせ(S14)、第二加熱部117に加熱を実行させ(S16)、ステップ10に戻る。しきい値が所定の値以下でない場合(S12のN)、判定部70は、給水部15に給水を可にさせる(S18)。
【0078】
本実施例によれば、給水部15の水の温度に応じてしきい値を調節してから、第一サーミスタ25と第二サーミスタ26との電圧差としきい値とをもとに第一サーミスタ25が水中に存在するかを判定するので、水の温度と空気の温度が変化しても判定精度を向上できる。また、水の温度と空気の温度が変化しても判定精度が向上するので、貯水部10の水位を確実に検知できる。また、給水部15の水の温度をもとに水中サーミスタテーブルから水中サーミスタ出力値を取得し、取得した水中サーミスタ出力値と第二電圧とをもとにしきい値を導出するので、水の温度に適したしきい値を導出できる。
【0079】
また、サーミスタ電圧差がしきい値より小さい場合に給水が行われていないと判定し、サーミスタ電圧差がしきい値以上である場合に給水が行われていると判定するので、給水を簡易に判定できる。また、しきい値が所定の値以下である場合に、給水処理を不可とし、加熱部が加熱を開始するので、しきい値を大きくできる。また、しきい値が大きくなるので、判定精度を向上できる。
【0080】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様の加湿機能付き換気装置(104)は、屋外(103)の空気を屋内(102)へ給気するための給気風路(4)と、給気風路(4)を流通する給気流を加湿する加湿部(19)と、加湿部(19)が給気流を加湿するための水を貯水する貯水部(10)と、貯水部(10)に水を供給する給水部(15)と、貯水部(10)の水が浸漬可能な位置に配置され、給水部(15)から貯水部(10)への給水を検知するための第一サーミスタ(25)と、給水部(15)の水が浸漬不可能な位置に配置され、給気流の温度を検知するための第二サーミスタ(26)と、第一サーミスタ(25)と第二サーミスタ(26)との電圧差と、しきい値とをもとに第一サーミスタ(25)が水中に存在するかを判定する制御部(50)と、を備える。制御部(50)は、給水部(15)の水の温度に応じてしきい値を調節する。
【0081】
制御部(50)は、第一サーミスタ(25)の両端間の電圧差である第一電圧を算出する第一算出部(60)と、第二サーミスタ(26)の両端間の電圧差である第二電圧を算出する第二算出部(62)と、第一サーミスタ(25)が水中に存在する場合において、水の温度と、各温度に対応して第一サーミスタ(25)が出力すべき水中サーミスタ出力値とを関連付けて記憶する水中サーミスタテーブルを記憶する記憶部(66)と、給水部(15)の水の温度をもとに水中サーミスタテーブルから水中サーミスタ出力値を取得し、取得した水中サーミスタ出力値と第二電圧とをもとにしきい値を導出する導出部(64)と、第一電圧と第二電圧との差の絶対値であるサーミスタ電圧差を算出するサーミスタ電圧差算出部(68)と、サーミスタ電圧差算出部(68)が算出するサーミスタ電圧差と、導出部(64)が導出したしきい値との比較結果をもとに、給水部(15)から貯水部(10)への給水が第一サーミスタ(25)が配置された位置まで行われたかを判定する判定部(70)と、を備える。
【0082】
導出部(64)は、給水部(15)の水の温度に対応する水中サーミスタテーブルの水中サーミスタ出力値と、第二電圧との差の絶対値以下となるしきい値を導出し、判定部(70)は、サーミスタ電圧差がしきい値より小さい場合に、給水部(15)から貯水部(10)への給水が第一サーミスタ(25)が配置された位置まで行われていないと判定し、サーミスタ電圧差がしきい値以上である場合に、給水部(15)から貯水部(10)への給水が第一サーミスタ(25)が配置された位置まで行われたと判定する。
【0083】
給気風路(4)の第二サーミスタ(26)の上流における給気流を加熱する加熱部(117)を備えてもよい。導出部(64)が導出したしきい値が所定の値以下である場合に、制御部(50)は給水部(15)による給水処理を不可とし、加熱部(117)は給気流の加熱を開始し、導出部(64)が導出したしきい値が所定の値より大きくなった場合に、制御部(50)は給水部(15)による給水処理を可能とする。
【0084】
以上、本開示を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【産業上の利用可能性】
【0085】
貯水部の水位を正しく検知できる。
【符号の説明】
【0086】
1 加湿装置、 2 吸込口、 3 吹出口、 4 給気風路、 5 内筒、 5a 衝突壁、 6 内筒風路、 7 通風口、 8 外筒風路、 9 外筒、 10 貯水部、 11 排水部、 12 排水弁、 15 給水部、 16 給水管、 17 給水弁、 18 オーバーフロー排水口、 19 加湿部、 20 回転軸、 21 揚水管、 22 回転板、 23 回転モータ、 25 第一サーミスタ、 26 第二サーミスタ、 27 給水温度検知部、 50 制御部、 60 第一算出部、 62 第二算出部、 64 導出部、 66 記憶部、 68 サーミスタ電圧差算出部、 70 判定部、 100 家屋、 102 屋内、 103 屋外、 104 加湿機能付き換気装置、 105 熱交換形換気装置、 105a 還気口、 105b 排気口、 105c 外気口、 105d 給気口、 105e 熱交換素子、 105f 湿度センサ、 105g 排気ファン、 105h 給気ファン、 109 還気風路、 110 排気風路、 111 外気風路、 112,113 給気風路、 114 排気流、 115 給気流、 116 第一加熱部、 117 第二加熱部、 119 室内機、 119a 送風ファン、 119b 第一熱交換器、 120 室外機、 120a 圧縮機、 120b 膨張器、 120c 第二熱交換器、 120d 送風ファン、 120e 四方弁、 121 冷媒回路、 121a 第一冷媒回路、 121b 第二冷媒回路、 122 分岐ユニット、 122a 第一分岐ユニット、 122b 第二分岐ユニット、 122c 第三分岐ユニット、 122d 第四分岐ユニット、 200 空気中サーミスタ出力値、 202 水中サーミスタ出力値。