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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】像加熱装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20241105BHJP
【FI】
G03G15/20 555
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020217256
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102489
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 静磨
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-064548(JP,A)
【文献】特開2010-145835(JP,A)
【文献】特開2020-042240(JP,A)
【文献】特開2015-197653(JP,A)
【文献】特開2013-156570(JP,A)
【文献】特開2020-008646(JP,A)
【文献】特開2019-128385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材の搬送方向に対して直交する方向に並ぶ複数の発熱ブロックを有するヒータを備えた加熱部材と、
前記加熱部材に圧接してニップ部を形成し、かつ回転するローラであって、前記搬送方向に対して直交する方向における中央部から端部に向かって周長が長くなるローラと、
前記複数の発熱ブロックへ供給する電力を個々に制御する制御部と、
を有し、前記ニップ部で記録材を搬送しながら記録材に形成された画像を前記ヒータの熱によって加熱する像加熱装置において、
前記複数の発熱ブロックが加熱する前記ニップ部における複数の加熱領域のうち、一つの前記発熱ブロックの全域が、記録材が通過しない非通紙領域となる幅の記録材を加熱処理する時、
前記制御部は、前記複数の発熱ブロックのうち、前記非通紙領域に対応する発熱ブロックへの電力供給のために設定する制御目標温度を、前記ニップ部において記録材が通過する通紙領域に対応する発熱ブロックへの電力供給のために設定する制御目標温度のうち最も低い制御目標温度よりも、高く設定することを特徴とする像加熱装置。
【請求項2】
前記最も低い制御目標温度が設定される発熱ブロックが対応する前記通紙領域は、記録材上の画像がない領域が通過する非画像領域であることを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項3】
前記最も低い制御目標温度が設定される発熱ブロックが対応する前記通紙領域は、前記非通紙領域と隣接する前記通紙領域であることを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項4】
前記加熱部材は、内側に前記ヒータが配置される筒状のフィルムを有し、前記ニップ部は前記フィルムを介して前記ヒータと前記ローラによって形成されており、記録材上の画像は前記フィルムを介して加熱されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項5】
記録材に画像を形成する画像形成部と、
記録材に形成された画像を記録材に定着する定着部と、
を有する画像形成装置において、
前記定着部が請求項1~のいずれか1項に記載の像加熱装置であることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真方式を利用したプリンタ、複写機等の画像形成装置に関する。また、画像形成装置に搭載されている定着器や記録材に定着されたトナー画像を再度加熱することにより、トナー画像の光沢度を向上させる光沢付与装置等の像加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着器や光沢付与装置の像加熱装置としては、省電力性に優れたフィルム加熱方式の像加熱装置がある。また、このような像加熱装置の中には、記録材上に形成された画像部を選択的に加熱する方式も提案されている(特許文献1)。この方法では、記録材上の画像の有無に応じて、各発熱体を選択的に発熱制御し、記録材上に画像が無い部分(以下、非画像部)において発熱体への通電を減少させることでさらなる省電力化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-059508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、像加熱装置において、加圧ローラを、所謂、逆クラウン形状とするものがある。逆クラウン形状とは、加圧ローラの外径を、中央部から端部にかけて徐々に大きくする形状である。かかる方式により、中央部から端部にかけて記録材を相対的に速く搬送することによって、記録材のシワ発生を抑制する。しかしながら、特許文献1のように記録材上に形成された画像部を選択的に加熱する場合、画像は主に記録材の中央に描かれるため、加圧ローラの端部よりも中央部の熱膨張が大きくなり、上述の逆クラウン形状による記録材のシワ抑制効果が弱まる。このことは近年の画像形成装置の高速化とあいまって顕在化してきた。さらには定着フィルムを薄層化した構成によっては、極端な場合、定着フィルムの座屈破損に至るもあることも分かってきた。
【0005】
本発明の目的は、記録材のシワの発生の抑制と、省電力性とを両立することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の像加熱装置は、
記録材の搬送方向に対して直交する方向に並ぶ複数の発熱ブロックを有するヒータを備えた加熱部材と、
前記加熱部材に圧接してニップ部を形成し、かつ回転するローラであって、前記搬送方向に対して直交する方向における中央部から端部に向かって周長が長くなるローラと、
前記複数の発熱ブロックへ供給する電力を個々に制御する制御部と、
を有し、前記ニップ部で記録材を搬送しながら記録材に形成された画像を前記ヒータの熱によって加熱する像加熱装置において、
前記複数の発熱ブロックが加熱する前記ニップ部における複数の加熱領域のうち、一つの前記発熱ブロックの全域が、記録材が通過しない非通紙領域となる幅の記録材を加熱処理する時、
前記制御部は、前記複数の発熱ブロックのうち、前記非通紙領域に対応する発熱ブロックへの電力供給のために設定する制御目標温度を、前記ニップ部において記録材が通過する通紙領域に対応する発熱ブロックへの電力供給のために設定する制御目標温度のうち最も低い制御目標温度よりも、高く設定することを特徴とする
記目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、
記録材に画像を形成する画像形成部と、
記録材に形成された画像を記録材に定着する定着部と、
を有する画像形成装置において、
前記定着部が上記の像加熱装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、省電力性を保ちつつ、記録材のシワの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例に係る画像形成装置の概略断面図
図2】本発明の加熱装置の断面図
図3】本発明のヒータ構成図
図4】本発明のヒータ制御回路図
図5】本発明の加熱領域を示す図
図6】本発明の加熱領域の分類に関する具体例
図7】本発明の加熱領域の分類と制御温度を決定するフローチャート
図8】本発明の加熱領域の分類に関する複数の具体例
図9】実施例1と比較例における加圧ローラ逆クラウン量
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0010】
(実施例1)
1.画像形成装置の全体構成
図1は画像形成装置の概略正面断面図である。本発明が適用可能な画像形成装置としては、電子写真方式や静電記録方式を利用した複写機、プリンタなどが挙げられ、ここでは電子写真方式を利用して記録材P上に画像を形成するレーザプリンタに適用した場合について説明する。
【0011】
画像形成装置100は、ビデオコントローラ120と制御部113を備える。ビデオコントローラ120は、記録材に形成される画像の情報を取得する取得部として、パーソナルコンピュータ等の外部装置から送信される画像情報及びプリント指示を受信して処理するものである。制御部113は、ビデオコントローラ120と接続されており、ビデオコントローラ120からの指示に応じて画像形成装置100を構成する各部を制御するものである。ビデオコントローラ120が外部装置からプリント指示をうけると、以下の動作
で画像形成が実行される。
【0012】
画像形成装置本体100がプリント信号を受信すると、その画像情報に応じて変調されたレーザ光をスキャナユニット21が出射し、帯電ローラ16によって所定の極性に帯電された感光ドラム19表面を走査する。これにより感光ドラム19には静電潜像が形成される。この静電潜像に対して現像ローラ17からトナーが供給されることで、感光ドラム19上の静電潜像は、トナー画像(トナー像)として現像される。一方、給紙カセット11に積載された記録材(記録紙)Pはピックアップローラ12によって一枚ずつ給紙され、搬送ローラ対13によってレジストローラ対14に向けて搬送される。更に、記録材Pは、感光ドラム19上のトナー画像が感光ドラム19と転写ローラ20で形成される転写位置に到達するタイミングに合わせて、レジストローラ対14から転写位置へ搬送される。記録材Pが転写位置を通過する過程で感光ドラム19上のトナー画像は記録材Pに転写される。その後、記録材Pは像加熱装置(像加熱部)としての定着装置(定着部)200で加熱され、トナー画像が記録材Pに加熱定着される。定着済みのトナー画像を担持する記録材Pは、搬送ローラ対26、27によって画像形成装置100上部のトレイに排出される。ドラムクリーナ18は感光ドラム19に残存するトナーを清掃する。記録材Pのサイズに応じて幅調整可能な一対の記録材規制板である給紙トレイ28(手差しトレイ)は定型サイズ以外のサイズの記録材Pにも対応するために設けられている。ピックアップローラ29は給紙トレイ28から記録材Pを給紙する。画像形成装置本体100は、定着装置200等を駆動するモータ30を有する。商用の交流電源401に接続されたヒータ駆動手段、通電制御部としての制御回路400は、定着装置200へ電力供給を行う。上述した、感光ドラム19、帯電ローラ16、スキャナユニット21、現像ローラ17、転写ローラ20が、記録材Pに未定着画像を形成する画像形成部を構成している。また、本実施例では、感光ドラム19、帯電ローラ16、現像ローラ17を含む現像ユニット、ドラムクリーナ18を含むクリーニングユニットが、プロセスカートリッジ15として画像形成装置100の装置本体に対して着脱可能に構成されている。
【0013】
本実施例の画像形成装置100は、記録材Pの搬送方向に直交する方向における最大通紙幅が216mmであり、A4サイズの記録材Pを300mm/secの搬送速度が毎分60枚でプリントすることが可能である。
【0014】
2.像加熱装置の構成
図2は、本実施例の像加熱装置としての定着装置200の模式的断面図である。定着装置200は、エンドレスベルトとしての定着フィルム202と、定着フィルム202の内面に接触するヒータ300と、定着フィルム202を介してヒータ300に圧接する加圧ローラ208と、金属ステー204と、を有する。加圧ローラ208は、定着フィルム202の外面に圧接して定着ニップ部Nを形成する。本実施例における定着フィルム202、ヒータ300、及び定着フィルム202内側に配置される各種構成が、本発明における加熱部材に相当する。
【0015】
定着フィルム202は、筒状に形成された複層耐熱フィルムであり、ポリイミド等の耐熱樹脂、またはステンレス等の金属を基層としている。また、定着フィルム202の表面には、トナーの付着防止や記録材Pとの分離性を確保するため、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等の離型性にすぐれた耐熱樹脂を被覆して離型層を形成してある。更に、特にカラー画像を形成する装置では、画質向上のため、上記基層と離型層の間にシリコーンゴム等の耐熱ゴムを弾性層として形成してもよい。本実施例の定着フィルム202は外径が24mm、基層はポリイミドで形成し厚みは70μm、弾性層はシリコーンゴムで形成し厚みは200μm、離型層はPFAで形成し厚みは15μmとした。
【0016】
加圧ローラ208は、鉄やSUS、アルミニウム等の材質の芯金209と、シリコーンゴム等の材質の弾性層210を有する。また、加圧ローラ208の表面にはトナーの付着防止のため、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等の離型性にすぐれた耐熱樹脂を被覆して離型層211を形成してある。本実施例において、加圧ローラ208の外径は、最小径(最小周長)となる中央部において25mmであり、両端部に向かうにしたがって徐々に拡径し、最大径(最大周長)となる端部において25.16mmとなっている。すなわち、本実施例の加圧ローラ208は、いわゆる逆クラウン形状を有している。かかる形状により加圧ローラ208の中央部と両端部とで周速差が生じることで、定着ニップ部Nに挟持される記録材Pに、記録材Pの搬送方向と直交する長手方向の中央部から両端部に向かって適度な張力が与えられる。記録材Pに長手中央から端部方向へ引き延ばす力が付与されることで、記録材Pにシワが発生するのが抑制され、定着ニップ部Nにおける記録材Pの搬送性を安定させることができる。芯金209は、SUSで形成し、その外径は17mmで一定である。芯金209の外周に形成される弾性層210は、シリコーンゴムで形成し、厚みは中央部において4mmであり、両端部に向かうにしたがって徐々に厚みが増し、両端部において4.08mmとなっている。すなわち、弾性層210の層厚が軸方向に変化することで、加圧ローラ208は逆クラウン形状に構成されている。弾性層210の表面に形成される離型層211は、PFAで形成し、厚みは20μmとした。
【0017】
ここで、加圧ローラ208の逆クラウン形状の程度は、逆クラウン量として次のように定義される。
(逆クラウン量)=(加圧ローラ208の両端部の外径)―(加圧ローラ208の中央部の外径)
加圧ローラ208は、ヒータ300の熱により膨張変形を生じ、特に長手方向の両端部においては、昇温のし易さから、加熱が進むほど逆クラウン量が増大する傾向がある。一方で、端部昇温の弊害を抑制する観点あるいは省エネの観点から、定着ニップ部Nの端部における制御温度を低く抑える制御が採用される場合がある。かかる制御の結果、加圧ローラ208の端部における加熱が抑制され、記録材の搬送性を担保する上で必要となる逆クラウン量を確保できなくなる場合がある。
【0018】
ヒータ300は、耐熱樹脂製のヒータ保持部材201に保持されており、定着ニップ部N内に設けられた加熱領域A~A(詳細は後述する)を加熱することで、定着フィルム202を加熱する。ヒータ保持部材201は定着フィルム202の回転を案内するガイド機能も有している。ヒータ300には、定着ニップ部Nの反対側に電極Eが設けられており、電気接点Cより電極Eに給電を行っている。金属ステー204は、不図示の加圧力を受けて、ヒータ保持部材201を加圧ローラ208向けて付勢する。。これにより、加圧ローラ208が加熱部材の一部としての定着フィルム202に圧接して定着ニップ部が形成される。また、ヒータ300の異常発熱により作動してヒータ300に供給する電力を遮断するサーモスイッチや温度ヒューズ等の安全素子212が、ヒータ300に直接、もしくはヒータ保持部材201を介して間接的に当接している。これらヒータ300、ヒータ保持部材201、金属ステー204は、ヒータユニット311を構成する。なお、定着フィルム202とヒータ300との間には、伝熱部材等の他の部材を介在させてもよい。
【0019】
加圧ローラ208は、モータ30から動力を受けて矢印R1方向に回転する。加圧ローラ208が回転することによって、定着フィルム202が従動して矢印R2方向に回転する。定着ニップ部Nにおいて記録材Pを挟持搬送しつつ定着フィルム202の熱を与えることで、記録材P上の未定着トナー画像は定着処理される。また、定着フィルム202の摺動性を確保し安定した従動回転状態を得るために、ヒータ300と定着フィルム202の間には、耐熱性の高い摺動グリースを介在させている。
【0020】
3.ヒータの構成
図3を用いて、本実施例におけるヒータ300の構成を説明する。図3(A)はヒータ300の断面図、図3(B)はヒータ300の各層の平面図、図3(C)はヒータ300への電気接点Cの接続方法を説明する図である。図3(B)には、本実施例の画像形成装置100における記録材Pの搬送基準位置Xを示してある。本実施例における搬送基準は中央基準となっており、記録材Pはその搬送方向に直交する方向における中心線が搬送基準位置Xを沿うように搬送される。また、図3(A)は、搬送基準位置Xにおけるヒータ300の断面図となっている。
【0021】
ヒータ300は、セラミックス製の基板305と、基板305上に設けられた裏面層1と、裏面層1を覆う裏面層2と、基板305上の裏面層1とは反対側の面に設けられた摺動面層1と、摺動面層1を覆う摺動面層2と、より構成される。
【0022】
裏面層1は、ヒータ300の長手方向に沿って設けられている導電体301(301a、301b)を有する。導電体301は、導電体301aと導電体301bに分離されており、導電体301bは、導電体301aに対して記録材Pの搬送方向の下流側に配置されている。また、裏面層1は、導電体301a、301bに平行して設けられた導電体303(303-1~303-7)を有する。導電体303は、導電体301aと導電体301bの間にヒータ300の長手方向に沿って設けられている。
【0023】
更に、裏面層1は、通電により発熱する発熱抵抗体である、発熱体302a(302a-1~302a-7)と発熱体302b(302b-1~302b-7)を有する。発熱体302aは、導電体301aと導電体303の間に設けられており、導電体301aと導電体303を介して電力を供給することにより発熱する。発熱体302bは、導電体301bと導電体303の間に設けられており、導電体301bと導電体303を介して電力を供給することにより発熱する。
【0024】
導電体301と導電体303と発熱体302aと発熱体302bとから構成される発熱部位は、ヒータ300の長手方向に対し7つの発熱ブロック(HB1~HB7)に分割されている。すなわち、発熱体302aは、ヒータ300の長手方向に対し、発熱体302a-1~302a-7の7つの領域に分割されている。また、発熱体302bは、ヒータ300の長手方向に対し、発熱体302b-1~302b-7の7つの領域に分割されている。更に、導電体303は、発熱体302a、302bの分割位置に合わせて、導電体303-1~303-7の7つの領域に分割されている。7つの発熱ブロック(HB1~HB7)は、各ブロックにおける発熱抵抗体への通電量が個別に制御されることで、それぞれの発熱量が個別に制御される。
【0025】
本実施例の発熱範囲は、発熱ブロックHB1の図中左端から発熱ブロックHB7の図中右端までの範囲であり、その全長は220mmである。また、各発熱ブロックの長手方向長さは、すべて同じ約31mmとしているが、長さを異ならせても構わない。
【0026】
また、裏面層1は、電極E(E1~E7、およびE8-1、E8-2)を有する。電極E1~E7は、それぞれ導電体303-1~303-7の領域内に設けられており、導電体303-1~303-7を介して発熱ブロックHB1~HB7それぞれに電力供給するための電極である。電極E8-1、E8-2は、ヒータ300の長手方向端部に導電体301に接続するよう設けられており、導電体301を介して発熱ブロックHB1~HB7に電力供給するための電極である。本実施例ではヒータ300の長手方向両端に電極E8-1、E8-2を設けているが、例えば、電極E8-1のみを片側に設ける構成でも構わない。また、導電体301a、301bに対し共通の電極で電力供給を行っているが、導
電体301aと導電体301bそれぞれに個別の電極を設け、それぞれ電力供給を行っても構わない。
【0027】
裏面層2は、絶縁性を有する表面保護層307より構成(本実施例ではガラス)されており、導電体301、導電体303、発熱体302a、302bを覆っている。また、表面保護層307は、電極Eの箇所を除いて形成されており、電極Eに対して、ヒータの裏面層2側から電気接点Cを接続可能な構成となっている。
【0028】
摺動面層1は、基板305において裏面層1が設けられる面とは反対側の面に設けられており、各発熱ブロックHB1~HB7の温度を検知する検知手段としてサーミスタTH(TH1-1~TH1-4、およびTH2-5~TH2-7)を有している。サーミスタTHは、PTC特性、若しくはNTC特性(本実施例ではNTC特性)を有した材料から成り、その抵抗値を検出することにより、全ての発熱ブロックの温度を検知できる。
【0029】
また、摺動面層1は、サーミスタTHに通電しその抵抗値を検出するため、導電体ET(ET1-1~ET1-4、およびET2-5~ET2-7)と導電体EG(EG1、EG2)とを有している。導電体ET1-1~ET1-4は、それぞれサーミスタTH1-1~TH1-4に接続されている。導電体ET2-5~ET2-7は、それぞれサーミスタTH2-5~TH2-7に接続されている。導電体EG1は、4つのサーミスタTH1-1~TH1-4に接続され、共通の導電経路を形成している。導電体EG2は、3つのサーミスタTH2-5~TH2-7に接続され、共通の導電経路を形成している。導電体ETおよび導電体EGは、それぞれヒータ300の長手に沿って長手端部まで形成され、ヒータ長手端部において不図示の電気接点を介して制御回路400と接続されている。
【0030】
摺動面層2は、摺動性と絶縁性を有する表面保護層308より構成(本実施例ではガラス)されており、サーミスタTH、導電体ET、導電体EGを覆うとともに、定着フィルム202内面との摺動性を確保している。また、表面保護層308は、導電体ETおよび導電体EGに対して電気接点を設けるために、ヒータ300の長手両端部を除いて形成されている。
【0031】
続いて、各電極Eへの電気接点Cの接続方法を説明する。図3(C)は、各電極Eへ電気接点Cを接続した様子をヒータ保持部材201側から見た平面図である。ヒータ保持部材201には、電極E(E1~E7、およびE8-1、E8-2)に対応する位置に貫通穴が設けられている。各貫通穴位置において、電気接点C(C1~C7、およびC8-1、C8-2)が、電極E(E1~E7、およびE8-1、E8-2)に対して、バネによる付勢や溶接などの手法によって電気的に接続されている。電気接点Cは、金属ステー204とヒータ保持部材201の間に設けられた不図示の導電材料を介して、後述するヒータ300の制御回路400と接続されている。
【0032】
4.ヒータ制御回路の構成
図4は、実施例1のヒータ300の制御回路400の回路図を示す。401は、画像形成装置100に接続される商用の交流電源である。ヒータ300の電力制御は、トライアック411~トライアック417の通電/遮断により行われる。トライアック411~417は、それぞれ、CPU420からのFUSER1~FUSER7信号に従って動作する。トライアック411~417の駆動回路は省略して示してある。ヒータ300の制御回路400は、7つのトライアック411~417によって、7つの発熱ブロックHB1~HB7を個々に独立制御可能な回路構成となっている。ゼロクロス検知部421は、交流電源401のゼロクロスを検知する回路であり、CPU420にZEROX信号を出力している。ZEROX信号は、トライアック411~417の位相制御や波数制御のタイミングの検出等に用いている。
【0033】
ヒータ300の温度検知方法について説明する。ヒータ300の温度検知は、サーミスタTH(TH1-1~TH1-4、TH2-5~TH2-7)によって行われる。サーミスタTH1-1~TH1-4と抵抗451~454との分圧がTh1-1~Th1-4信号としてCPU420で検知されており、CPU420にてTh1-1~Th1-4信号を温度に変換している。同様に、サーミスタTH2-5~TH2-7と抵抗465~467との分圧が、Th2-5~Th2-7信号としてCPU420で検知されており、CPU420にてTh2-5~Th2-7信号を温度に変換している。
【0034】
CPU420の内部処理では、後述する各発熱ブロックの制御温度(制御目標温度)TGTiと、サーミスタの検知温度に基づき、例えばPI制御(比例積分制御)により、供給するべき電力を算出している。更に、供給する電力を、電力に対応した位相角(位相制御)や、波数(波数制御)の制御レベルに換算し、その制御条件によりトライアック411~417を制御している。CPU420は、本発明における制御部、取得部として、ヒータ300の温調制御にかかわる各種演算や通電制御等を実行する。
【0035】
リレー430、リレー440は、故障などによりヒータ300が過昇温した場合、ヒータ300への電力遮断手段として用いている。リレー430、リレー440の回路動作を説明する。RLON信号がHigh状態になると、トランジスタ433がON状態になり、電源電圧Vccからリレー430の2次側コイルに通電され、リレー430の1次側接点はON状態になる。RLON信号がLow状態になると、トランジスタ433がOFF状態になり、電源電圧Vccからリレー430の2次側コイルに流れる電流は遮断され、リレー430の1次側接点はOFF状態になる。同様に、RLON信号がHigh状態になると、トランジスタ443がON状態になり、電源電圧Vccからリレー440の2次側コイルに通電され、リレー440の1次側接点はON状態になる。RLON信号がLow状態になると、トランジスタ443がOFF状態になり、電源電圧Vccからリレー440の2次側コイルに流れる電流は遮断され、リレー440の1次側接点はOFF状態になる。なお、抵抗434、抵抗444は電流制限抵抗である。
【0036】
リレー430、リレー440を用いた安全回路の動作について説明する。サーミスタTH1-1~TH1-4による検知温度の何れか1つが、それぞれ設定された所定値を超えた場合、比較部431はラッチ部432を動作させ、ラッチ部432はRLOFF1信号をLow状態でラッチする。RLOFF1信号がLow状態になると、CPU420がRLON信号をHigh状態にしても、トランジスタ433がOFF状態で保たれるため、リレー430はOFF状態(安全な状態)で保つことができる。尚、ラッチ部432は非ラッチ状態において、RLOFF1信号をオープン状態の出力にしている。同様に、サーミスタTH2-5~TH2-7による検知温度の何れか1つが、それぞれ設定された所定値を超えた場合、比較部441はラッチ部442を動作させ、ラッチ部442はRLOFF2信号をLow状態でラッチする。RLOFF2信号がLow状態になると、CPU420がRLON信号をHigh状態にしても、トランジスタ443がOFF状態で保たれるため、リレー440はOFF状態(安全な状態)で保つことができる。同様に、ラッチ部442は非ラッチ状態において、RLOFF2信号をオープン状態の出力にしている。
【0037】
5.加熱領域の設定
図5は、本実施例における加熱領域A~Aを示す図であり、LETTERサイズ紙の紙幅と対比して表示している。加熱領域A~Aは、定着ニップ部N内の、発熱ブロックHB1~HB7に対応した位置に設けられており、発熱ブロックHBi(i=1~7)の発熱により、加熱領域A(i=1~7)がそれぞれ加熱される。すなわち複数の発熱ブロックHB1~HB7(複数の発熱体)に対応して複数の加熱領域A~Aが形成される。加熱領域A~Aの全長は220mmであり、各領域はこれを均等に7分割し
たものである(L=31.4mm)。
【0038】
図6を参照して、加熱領域Aの分類についての1例について説明する。本例では記録材Pは加熱領域A2から加熱領域A6を通過する。図6(A)に示す位置に記録材P、及び画像が存在する。また、記録材Pの長手方向における両端部をPEとする。図6(B)に加熱領域Aの分類を示す。ここで、画像データ(画像情報)と記録材情報(記録材サイズ)から、加熱領域A、A、Aは画像範囲(記録材上の画像が存在する範囲)が通過するため画像領域AIに分類される。一方、加熱領域A2、A6は画像範囲が通過しないため非画像領域APに分類される。また、加熱領域A1、A7は記録材Pが通過しないため非通紙領域ANに分類される。
【0039】
6.ヒータ制御方法の概要
続いて、本実施例のヒータ制御方法、すなわち発熱ブロックHBi(i=1~7)の発熱量制御方法を説明する。発熱ブロックHBiの発熱量は、発熱ブロックHBiへの供給電力によって決まる。発熱ブロックHBiへの供給電力を大きくすることで、発熱ブロックHBiの発熱量が大きくなり、発熱ブロックHBiへの供給電力を小さくすることで、発熱ブロックHBiの発熱量が小さくなる。発熱ブロックHBiへの供給電力は、発熱ブロック毎に設定される制御温度TGT(i=1~7)と、サーミスタの検知温度に基づき算出される。本実施例では、各サーミスタの検知温度が各発熱ブロックの制御温度TGTと等しくなるよう、PI制御(比例積分制御)によって供給電力が算出される。
【0040】
図7は、本実施例の加熱領域の分類と制御温度を決定するフローチャートである。図7に示すように、各加熱領域A(i=1~7)は、画像領域AIと非画像領域APと非通紙領域ANに分類される。加熱領域Aの分類は、ホストコンピュータ等の外部装置(不図示)から送られる画像情報(画像データ)と記録材情報(記録材サイズ)とに基づいて行われる。
【0041】
加熱領域Aは記録材情報(記録材サイズ)から記録材範囲か否か判断される(図7:S1001)。記録材範囲の場合、加熱領域Aは次に画像情報(画像データ)から画像範囲か否か判断される(図7:S1002)。画像範囲の場合は加熱領域Aを画像領域AIと分類し(図7:S1003)、画像範囲でない場合は加熱領域Aを非画像領域APと分類する(図7:S1004)。画像領域AIと分類された場合は、制御温度TGTをTGT=TAIと設定する(図7:S1006)。ここで、TAIは画像領域温度であり、未定着画像を記録材Pに定着させるために適切な温度として設定する。S1002で加熱領域Aが非画像領域APと分類された場合は、制御温度TGTをTGT=TAPと設定する(図7:S1007)。ここで、TAPは非画像領域温度である。非画像領域温度TAPは画像領域温度TAIよりも低い温度として設定することで、非画像領域APにおける発熱ブロックHBの発熱量を画像領域AIより下げ、定着装置200の省電力化を図っている。S1001で記録材範囲でなかった場合は加熱領域Aを非通紙領域ANと分類する(図7:S1005)。そして、制御温度TGTをTGT=TANと設定する(図7:S1008)。ここで、TAPは非通紙領域温度である。非通紙領
域温度TAPは非画像領域温度TAPよりも高い温度として設定することで、非通紙領域ANにおける発熱ブロックHBの発熱量を非画像領域APより上げ、加圧ローラ208の逆クラウン形状の維持を図っている。
【0042】
図8に、各加熱領域A(i=1~7)の様々な分類パターンを例示する。図8(A)では加熱領域A4が画像加領域AI、加熱領域A2、3、5、が非画像領域AP
、加熱領域A1、7が非通紙領域ANに分類される。図8(B)では加熱領域A2、
3、4、5が画像領域AI、加熱領域Aが非画像領域AP、加熱領域A1、7が非
通紙領域ANに分類される。加熱領域Aのように加熱領域に一部でも画像領域がある場
合は画像領域AIとなる。図8(C)では加熱領域A2、3、4、5が画像領域AI、加熱領域A1、6、7が非画像領域APに分類される。加熱領域A1、7のように加熱領域に一部でも非通紙領域があり、かつ画像領域がない場合は非画像領域APとなる。図8(D)では加熱領域A1、2、3、4、5、が画像領域AI、加熱領域A7が非画像領域APに分類される。加熱領域Aのように加熱領域に一部でも画像領域
がある場合は画像領域AIなる。
【0043】
7.ヒータ制御方法の詳細
前項で述べた画像領域温度TAI、非画像領域温度TAP、非通紙領域温度TANと加圧ローラ208の逆クラウン量の関係について説明する。図8(A)のパターンに当てはまる記録材P(紙幅155mm、紙長297mm、画像幅31mm、坪量60g/m)を通紙する場合、画像情報と記録材情報から、各加熱領域は次の通り分類される。すなわち、加熱領域A4が画像領域AI、加熱領域A2、3、5、が非画像領域AP、
加熱領域A1、7が非通紙領域ANに分類される。
【0044】
表1は、本実施例の各加熱領域の制御温度と、比較例の制御温度である。また、この制御温度に設定した時の加圧ローラ208の逆クラウン量として、外径の中央差分を図9に示す。図9において、実線が実施例1、破線が比較例1、点線が比較例2に設定した場合である。比較例1のように非画像領域温度TAPの温度が高いほど、加圧ローラ208の逆クラウン量も大きくなるため、記録材Pのシワ抑制効果は高くなるが、定着装置200の消費電力は増加してしまう。一方、比較例2のように非画像領域温度TAPの温度が低いほど、定着装置200の消費電力は小さくなる。しかしながら、加圧ローラ208の逆クラウン量も小さくなるため、記録材Pのシワを抑制する効果が低下してしまう。
【0045】
本実施例の構成では、実験により加圧ローラ208の逆クラウン量が100μm未満になると記録材Pにシワが発生する事が分かっている。比較例2の場合、記録材Pの通紙領域端部であるA2、の逆クラウン量は100μm未満であり記録材Pにシワが発生する。一方、比較例1のように設定した場合、記録材Pの通紙領域端部であるA2、の逆クラウン量は100μm以上となり記録材Pにシワは発生しないが定着装置200の消費電力は増加する。本実施例では、この点を鑑み非通紙領域温度TANに着目し、記録材Pのシワ抑制と省電力性の両立を図る。すなわち、表1に示すように非通紙領域温度TANを画像領域温度TAIより高い260℃に設定し、一方、非画像領域温度TAPを100℃に設定する。このように温度制御すると、加圧ローラ208の逆クラウン量は図9の実線のようになり、通紙領域端部であるA2、の逆クラウン量は100μm以上となり記録材Pのシワは抑制される。ここで、260℃に設定した加熱領域A1、7は、非
通紙領域であるため発熱ブロックHB1とHB7からの熱は記録材Pにより奪われないため消費電力は著しく増加しないため、省電力性が保たれる。
【0046】
(表1)実施例1と比較例1、2における制御温度
【0047】
8.発明の効果
比較実験として、表1における実施例1と比較例1、2の制御温度で、図8(A)に当たる記録材P(紙幅155mm、紙長297mm、坪量60g/m)を60枚通紙した時の紙シワ発生頻度を表2に示す。表2より比較例2の構成では60枚中30枚にて記録
材Pに軽微にシワが発生した一方、実施例1の構成では記録材Pにシワは発生しなかった。実施例1では、非記録材領領域ANである加熱領域A、Aを加熱したことにより、加圧ローラ208を介した記録材Pの中央領域から端部PE方向へ引き延ばす力が維持されたことにより、記録材Pのシワ発生を抑制する事ができた。表2にはまた、この通紙時における電力を比較例1と比較して示している。比較例1は実施例1と同様に記録材Pにシワは発生しなかったが、実施例1の方が電力は-7%低かった。これは、非画像領域APである加熱領域A2、3、5、の温度が低いためである。以上の比較より、本実施例の構成である非画像領域温度より非通紙領域温度を高くする設定は、記録材のシワ抑制と、省電力化を両立する効果がある事を確認できた。
【0048】
(表2)実施例1と比較例1、2におけるシワ発生頻度と省電力性
【0049】
(実施例2)
本実施例では図6のパターンに当てはまる記録材P(紙幅155mm、紙長297mm、画像幅93mm、坪量60g/m)を通紙する場合について説明する。本実施例の各加熱領域の制御温度を表3に示す。ここで、比較例は非通紙領域温度TANを実施例に対し±20℃で変更したものであるが、すべて非画像領域温度より非通紙領域温度を高い設定にした。
【0050】
(表3)実施例2と比較例3、4における制御温度
【0051】
記録材P(紙幅155mm、紙長297mm、画像幅93mm、坪量60g/m)を60枚通紙した時の紙シワ発生頻度を表4に示す。
【0052】
(表4)実施例2と比較例3、4におけるシワ発生頻度と省電力性
【0053】
本実施例では非通紙領域温度TANを実施例1や比較例3に対し20℃低い240℃に設定しているが、記録材Pにシワは発生しなかった。これは、実施例1に対し本実施例の方が画像領域AIが広く、非画像領域APが狭いため、加圧ローラ208の逆クラウン量を維持しやすいためである。しかしながら、非通紙領域温度TANがさらに20℃低い比
較例4の設定では電力は下がるものの、60枚中5枚にて記録材Pに軽微にシワが発生した。これより、シワ発生抑制と省電力の最大化のためには、非通紙領域温度TANは画像領域と非画像領域に応じて設定することが必要であることが確認された。このように、シワ発生抑制と省電力の最大化を図る場合、その他の通紙条件によっても非通紙領域温度TANを適時、変更することが好ましい。例えば、坪量が大きくシワが発生し難い記録材Pを通紙する場合は、非通紙領域温度TANをより下げ、逆に高湿度環境のようにシワが発生し易い場合などには、非通紙領域温度TANをより上げた方がよい。さらには、加圧ローラ208の累積使用状況、また記録材Pの通紙間隔に応じて非通紙領域温度TANを変更してもよい。
【0054】
以上、本実施例では、記録材のシワ抑制と省電力の最大化のためには非通紙領域温度TANを通紙条件により適切に設定する必要があることを説明した。
【0055】
(実施例3)
本実施例では図8(B)のパターンに当てはまる記録材P(紙幅155mm、紙長297mm、画像幅108mm、坪量60g/m)を通紙する場合について説明する。本実施例の各加熱領域の制御温度を表5に示す。本実施例の画像パターンは加熱領域Aが画像領域AIである以外は実施例2(表3)と同じである。よって加熱領域Aの制御温度は画像領域温度TAIである250℃にしたが、一方、加熱領域A1の制御温度は220
℃に設定した。
【0056】
(表5)実施例3における制御温度
【0057】
ここで、加熱領域A1の制御温度が同じである比較例4(表3)では紙シワ発生頻度は
5/60(表4)であった。これに対し、本実施例で記録材P(紙幅155mm、紙長108mm、画像幅93mm、坪量60g/m)を60枚通紙した時の紙シワ発生頻度は0/60であった。これは、比較例4では加熱領域Aが非画像領域APであったのに対し、本実施例では加熱領域Aが画像領域AIであったためである。すなわち、画像領域温度TAIは250℃と高いため、その隣接する加熱領域Aの温度が220℃と低くても、加圧ローラ208が逆クラウンを維持しやすいためである。
【0058】
表6にこの時の定着フィルム202の表面温度を示す。ここで、定着フィルム202の表面温度は非接触温度検知装置を用いて外部から測定した。
(表6)実施例3における定着フィルム表面温度
【0059】
表6より、記録材Pの非通紙領域である加熱領域AとA7の定着フィルム温度は、記
録材Pの通紙領域である加熱領域A2、3、4、5、より20℃以上高い。この定着フィルム202の端部高は、そのまま対面接触する加圧ローラ208に対しても作用するため、加圧ローラ208の逆クラウン化が上手く図られていることが確認された。また、加熱領域Aと加熱領域Aの定着フィルム温度が同じである。これは、加圧ローラ208端部の熱膨張量が同等化されることを示しており、これにより記録材Pの中央領
域から端部PE方向へ引き延ばす力も左右均等に働くため、シワ抑制につながっていることが確認された。一方、実施例1、2で説明してきたように、加熱領域AとA7の非通
紙領域であれは、発熱ブロックからの熱が記録材Pにより奪われないため、消費電力は著しく増加せず、省電力性は保たれる。
【0060】
以上、本実施例では、定着フィルムの記録材通紙領域内の温度よりも、記録材非通紙領域の温度が高いように制御することが、記録材のシワ抑制に効果があることを説明した。
【符号の説明】
【0061】
100…画像形成装置本体、200…定着装置、202…定着フィルム、300…ヒータ、302a-1~302a-7、302b-1~302b-7…発熱体、A~A‥‥加熱領域、HB1~HB7‥‥発熱ブロック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9