(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】振動波駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02N 2/04 20060101AFI20241105BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20241105BHJP
【FI】
H02N2/04
G02B7/04 E
(21)【出願番号】P 2021011537
(22)【出願日】2021-01-27
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 耕平
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-028217(JP,A)
【文献】特開2010-158127(JP,A)
【文献】特開2019-039997(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0129058(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/04
G02B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動子と、
前記振動子を加圧する加圧手段と、
前記加圧手段による加圧力を前記振動子に伝達する伝達部材と、
前記振動子を保持する保持部材と、
前記保持部材と前記伝達部材とを連結する粘弾性部材とを有
し、
前記伝達部材は、前記振動子に当接する少なくとも3つの凸部を備えることを特徴とする振動波駆動装置。
【請求項2】
前記粘弾性部材は
更に、前記保持部材と前記加圧手段とを連結することを特徴とする請求項1に記載の振動波駆動装置。
【請求項3】
前記少なくとも3つの凸部は、前記振動子に励振される複数の定在波振動におけるそれぞれの節が互いに交差し重なり合う共通の節のうち、前記振動子の支持部分と異なる節に当接することを特徴とする請求項
1または2に記載の振動波駆動装置。
【請求項4】
前記少なくとも3つの凸部は、前記振動子の短手方向の中心線に対して対称に配置されることを特徴とする請求項
1乃至3の何れか一項に記載の振動波駆動装置。
【請求項5】
前記保持部材は、前記粘弾性部材と連結するための連結部を備えることを特徴とする請求項1乃至
4の何れか一項に記載の振動波駆動装置。
【請求項6】
前記連結部は、前記振動子を加圧する加圧方向に直交
し且つ前記振動子が移動する第1の方向から見て凹形状であることを特徴とする請求項
5に記載の振動波駆動装置。
【請求項7】
振動子と、
前記振動子を加圧する加圧手段と、
前記加圧手段による加圧力を前記振動子に伝達する伝達部材と、
前記振動子を保持する保持部材と、
前記保持部材と前記伝達部材とを連結する粘弾性部材とを有し、
前記保持部材は、前記粘弾性部材と連結するための連結部を備え、
前記連結部は、前記振動子を加圧する加圧方向に直交し且つ前記振動子が移動する第1の方向から見て凹形状であることを特徴とする振動波駆動装置。
【請求項8】
前記粘弾性部材は、前記加圧方向及び前記第1の方向に直交する第2の方向において、前記保持部材と前記伝達部材との間に配置されることを特徴とする請求項
6または7に記載の振動波駆動装置。
【請求項9】
前記連結部は、前記振動子を加圧する加圧方向に直交する方向に沿って前記加圧方向に直交する面に前記粘弾性部材を配置可能な形状であることを特徴とする請求項
5乃至8の何れか一項に記載の振動波駆動装置。
【請求項10】
振動子と、
前記振動子を加圧する加圧手段と、
前記加圧手段による加圧力を前記振動子に伝達する伝達部材と、
前記振動子を保持する保持部材と、
前記保持部材と前記伝達部材とを連結する粘弾性部材とを有し、
前記保持部材は、前記粘弾性部材と連結するための連結部を備え、
前記連結部は、前記振動子を加圧する加圧方向に直交する方向に沿って前記加圧方向に直交する面に前記粘弾性部材を配置可能な形状であることを特徴とする振動波駆動装置。
【請求項11】
前記粘弾性部材は、前記加圧方向において、前記保持部材と前記伝達部材との間に配置されることを特徴とする請求項9
または10に記載の振動波駆動装置。
【請求項12】
請求項1乃至1
1の何れか一項に記載の振動波駆動装置と、
前記振動波駆動装置からの駆動力によって駆動する被駆動部材とを有することを特徴とする装置。
【請求項13】
前記装置は、レンズを備える光学機器であることを特徴とする請求項1
2に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動波駆動装置に関し、レンズ交換式のデジタル一眼レフカメラ、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、レンズ交換式のデジタルビデオカメラ等に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
圧電素子の変形を駆動源とする振動波駆動装置(超音波モータ)が駆動する際、振動子が摩擦部材に摩擦接触することで発生する振動が振動子を保持する保持部材に伝達され、保持部材がロッキング振動を起こし異音が発生することがある。特許文献1には、振動子と保持部材との間に緩衝部材を設ける振動波駆動装置が開示されている。また、特許文献2には、振動子からの不要な振動を抑制するための振動抑制部材を設ける振動波駆動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-19354号公報
【文献】特開2010―158127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の振動波駆動装置では、保持部材が直接加圧されるため、圧電素子が振動子から剥離し、駆動特性が損なわれる可能性がある。また、特許文献2の振動波駆動装置では、保持部材の振動を抑制することができないため、異音が発生する可能性がある。
【0005】
本発明は、振動子を保持する保持部材の振動を抑制しつつ、良好な駆動特性を維持可能な振動波駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての振動波駆動装置は、振動子と、振動子を加圧する加圧手段と、加圧手段による加圧力を振動子に伝達する伝達部材と、振動子を保持する保持部材と、保持部材と伝達部材とを連結する粘弾性部材とを有し、伝達部材は、振動子に当接する少なくとも3つの凸部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、振動子を保持する保持部材の振動を抑制しつつ、良好な駆動特性を維持可能な振動波駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1の保持部材とその周辺部材の説明図である。
【
図2】実施例1の保持部材と従来例の保持部材との比較図である。
【
図3】実施例1の伝達部材と従来例の伝達部材との比較図である。
【
図7】実施例2の保持部材とその周辺部材の説明図である。
【
図8】実施例2の保持部材と従来例の保持部材との比較図である。
【
図9】実施例2の伝達部材と従来例の伝達部材との比較図である。
【
図10】実施例2の振動波駆動装置の断面図である。
【
図13】従来例の振動波駆動装置の駆動力取り出し部の断面図である。
【
図14】従来例の振動波駆動装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
各実施例では、振動子及び摩擦部材の相対的な移動方向をX軸方向、X軸に直交し、振動子を摩擦部材に対して加圧する方向(加圧方向)をY軸方向、X軸方向及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向とする。なお、各実施例の座標系は説明の便宜上のものであって、本発明はこれに限定されない。
【0011】
図12乃至
図15を参照して、従来の振動波駆動装置の問題点について説明する。
図12乃至
図15はそれぞれ、従来例の振動波駆動装置1000の、斜視図、駆動力取り出し部の断面図、分解斜視図、及びX軸方向の断面図である。
【0012】
振動波駆動装置1000は、直動タイプのリニアアクチュエータで、X軸方向への駆動力を発生させる。被駆動部17に設けられた連結用突起部17aは、ムーブプレート16に設けられた溝形状の駆動力取り出し部16aに挿入される。これにより、振動波駆動装置1000は、被駆動部17に連結され、被駆動部17をX軸方向へ駆動することができる。
【0013】
引っ張りコイルバネ7は、加圧プレート8をY軸方向へ付勢する。伝達部材6は、Y軸方向において加圧プレート8から圧電素子1の側に加圧力を受け、フェルト5を介して振動子3に加圧力を伝達する。
【0014】
ここで、振動波駆動装置1000が駆動力を発生させるメカニズムについて説明する。振動波駆動装置1000は、接着剤等により互いに固着された圧電素子1及びボスプレート2から構成される振動子3を有する。フレキシブル基板12は、異方性導電ペースト等で機械的及び電気的に圧電素子1に接続される。圧電素子1には、2つの電極が設けられている。2つの電極にそれぞれ位相の異なる2相の高周波電圧を印加すると、振動子3には
図4(a),(b)に示される2つの振動モードが発生する。
図4(a)は、振動子3がY軸方向へ曲げ振動する突き上げ振動モードにおける振動子3の変形状態を示している。色の濃淡は、Y軸方向の変化を表している。突き上げ振動モードでは、振動子3は圧電素子1との接合部である中央の矩形部の短辺方向において1次の曲げ変形をし(2つの振動の節を有し)、長辺方向において変形しない(振動の節を有しない)。
図4(b)は、振動子3が矩形部の長辺方向において2次の曲げ変形をし(3つの振動の節を有し)、短辺方向において変形しない(振動の節を有しない)送り振動モードにおける振動子3の変形状態を示している。圧電素子1に設けられた2つの電極に時間的な位相差π/2をもって電圧を印加すると、2つの振動モードが時間的にズレて重なり合うため、ボスプレート2の突起部(凸部)2aには楕円運動が発生する。圧電素子1に印加する高周波電圧の周波数や位相を変えることで、楕円運動の回転方向や楕円比を適宜変化させ、振動子3に所望の動きをさせることができる。振動子3は、ベース部材13に固定された摩擦部材14に摩擦接触することで、摩擦部材14に対して相対的に移動する駆動力を発生させることができる。すなわち、振動子3は、摩擦部材14に対して、X軸方向へ相対的に移動可能となる。ボールベース15は、摩擦部材14に対して振動子3と反対側に配置されている。ボールベース15とムーブプレート16との間には、3つの転動ボール(不図示)が配置されている。
【0015】
以下、振動子3を保持する保持部材4と保持部材保持枠11の連結について説明する。ボスプレート2には、X軸方向へ離間した2つの穴部2bが設けられている。保持部材4は、2つの穴部2bに対向する固定用のピン4aを有する。ピン4aは、穴部2bに挿入された後、接着剤等によって固定される。保持部材保持枠11は、ネジによりムーブプレート16に連結されると共に、保持部材4に係合する。
【0016】
保持部材4のX軸方向の各端部において、ローラー部材9を挟んで内側に保持部材4、外側に保持部材保持枠11が配置されている。板バネ10は、接着等により保持部材保持枠11に固定され、ローラー部材9を介して保持部材4をX軸方向へ付勢する。すなわち、保持部材4は、ローラー部材9を介して保持部材保持枠11に付勢される。保持部材4は、X軸方向へ付勢されるだけでなく、ローラー部材9の転動によってY軸方向へ移動可能である。すなわち、保持部材保持枠11は、X軸方向及びY軸方向へイコライズ可能である。
【0017】
以上説明した構成により、保持部材4と保持部材保持枠11の連結では、駆動方向であるX軸方向においてガタの発生がなく、Y軸方向においてローラー部材9の転動作用により摺動抵抗がほとんど発生しない。
【0018】
しかしながら、従来例の振動波駆動装置1000では、保持部材4にはY軸方向において摺動抵抗がほとんど発生しないため、他の部材からの振動等により励振が起こると、保持部材4の
図15の矢印方向のロッキング振動が起こりやすい。
【実施例1】
【0019】
図1は、本実施例の保持部材とその周辺部材の説明図である。
図1(a)及び
図1(b)はそれぞれ、保持部材とその周辺部材の斜視図及び分解斜視図である。本実施例では、従来例の構成と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0020】
本実施例の振動波駆動装置100は、従来例の保持部材4及び伝達部材6とは異なる形状の保持部材41及び伝達部材61を有する。また、本実施例の振動波駆動装置100は、粘弾性部材18を有する。
【0021】
伝達部材61は、加圧力を圧電素子1に直接伝達する。粘弾性部材18は、保持部材41と伝達部材61とを連結する。ここで、粘弾性部材18は、高減衰性を有する部材であり、例えば主成分にエラストマー系を用いる接着剤やブチルゴム等である。
【0022】
図2は、本実施例の保持部材41と従来例の保持部材4との比較図である。
図2(a)及び
図2(b)はそれぞれ、本実施例の保持部材41及び従来例の保持部材4を示している。
図2(a)及び
図2(b)において、上図は斜視図、下図は側面図である。
図3は、本実施例の伝達部材61と従来例の伝達部材6との比較図である。
図3(a)及び
図3(b)はそれぞれ、本実施例の伝達部材61及び従来例の伝達部材6を示している。
図3(a)及び
図3(b)において、上図はY軸方向の+側から見た図、下図はY軸方向の-側から見た図である。
【0023】
保持部材41には、X軸方向(第1の方向)から見て凹形状である切り欠き部(連結部)41aが設けられている。伝達部材61には、切り欠き部41aにある程度の隙間をもって嵌る腕部61aが設けられている。また、伝達部材61の圧電素子1側の面には、振動子3に当接する4つの凸部61bが設けられている。
【0024】
以下、
図4を参照して、凸部61bの位置について説明する。
図4(c)は、振動子3の2つの振動モードにおいて振動子3に励振される複数の定在波振動におけるそれぞれの節が互いに交差し重なり合う共通の節を示している。
図4(a)において、振動子3の中央は曲げ振動の変位が最も大きい(振動振幅が最も大きい)部分(振動の腹)である。また、
図4(a)のL1,L2で示される部分は、曲げ振動の変位がほとんどゼロの部分(振動の節)である。これらの節が点で存在する場合は節点とも呼ぶ。なお、本実施例のように矩形板の振動では、節が点で存在するのではなく線状に形成されるので、本発明ではこれらの節を特に節線と呼ぶ(振動板が円板の場合、半径方向に形成される節線は、同心円状になるので、この場合は節円と呼ぶ)。また、
図4(b)の節線L3~L5は、節線L1,L2と直交する方向に沿って形成される。
図4(c)には、2つの振動モードの節線L1~L5が示されている。節線L1,L2と節線L3~L5との交点、すなわち2つの振動モードの共通の節が共通節点Q1~Q6である。凸部61bは、共通節点Q1~Q6の何れかの位置に設けられる。本実施例では、凸部61bは、共通節点Q1,Q2,Q5,Q6の位置に設けられている。
【0025】
以下、
図1及び
図5を参照して、本実施例の構成の効果について説明する。
図5は、振動波駆動装置100の断面図である。本実施例では、伝達部材61は、振動子3の2つの振動モードの共通節点のうち、振動子3の支持部分と異なる共通節点を直接加圧する。すなわち、伝達部材61は、Y軸方向において加圧プレート8から圧電素子1の側に加圧力を受け、凸部61bを介して圧電素子1に加圧力を伝達する。このとき、凸部61bは振動子3の共通節点に当接しているため、伝達部材61は振動の影響を受けずに振動子3を加圧することができる。これにより、伝達部材61を安定させることができる。また、本実施例では、振動子3の両側の共通節点Q1,Q2,Q5,Q6、すなわち振動子3の短手方向の中心線に対して対称に配置された共通節点を加圧する。これにより、伝達部材61が振動子3の全域にわたり加圧力を伝達することができるため、駆動特性の悪化を抑制することが可能である。
【0026】
以上説明したように、伝達部材61は実質的に振動子3と一体化し、駆動中も安定するため、粘弾性部材18と共にダンパーとして機能する。これにより、保持部材41のロッキング振動を抑制し、異音の発生を抑制することが可能である。
【0027】
なお、本実施例では、4つの凸部61bが設けられているが、本発明はこれに限定されない。ただし、伝達部材61を安定させることができる数、すなわち少なくとも3つ以上の凸部61bを設けることが好ましい。また、本実施例では、共通節点Q1,Q2,Q5,Q6を加圧するが、本発明はこれに限定されない。ただし、振動子3の全域にわたり加圧力を伝達するために、振動子3の短手方向の中心線に対して対称に配置された共通節点を加圧することが好ましい。また、このような共通節点に振動子3の長手方向における両側に近い共通節点が含まれていることがより好ましい。
【0028】
以下、粘弾性部材18で保持部材41と伝達部材61とを連結する位置について説明する。粘弾性部材18は、伝達部材61の腕部61aの側面と保持部材41の切り欠き部41aの側面とを連結する。すなわち、粘弾性部材18は、Z軸方向(第2の方向)において、保持部材41と伝達部材61との間に配置される。これにより、粘弾性部材18として例えばシリコーン樹脂系接着剤等の塗布後に収縮する部材を使用した場合でも、収縮による力は側面に働き、保持部材41のピン41bとボスプレート2の穴部2bには力が働かない。そのため、圧電素子1とボスプレート2の剥がれ等による駆動特性の悪化を抑制することができる。また、粘弾性部材18は、保持部材41と加圧プレート8とを連結するように設けられていることが好ましい。これにより、保持部材41の振動をより抑制することが可能である。
【0029】
本実施例では、各部材を組み立てた後、
図6の矢印が示す位置に粘弾性部材18を配置する。すなわち、伝達部材61が加圧力を受けて安定していることを確認した後、粘弾性部材18で保持部材41と伝達部材61とを連結する。これにより、伝達部材61が傾いた状態で連結する等の駆動特性を悪化させる要因を取り除くことが可能である。
【実施例2】
【0030】
図7は、本実施例の保持部材42とその周辺部材の説明図である。
図7(a)及び
図7(b)はそれぞれ、保持部材42とその周辺部材の斜視図及び分解斜視図である。本実施例では、実施例1との変更点について説明する。また、本実施例では、従来例及び実施例1の構成と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0031】
本実施例の振動波駆動装置100は、実施例1の保持部材41、伝達部材61、及び粘弾性部材18とは異なる形状の保持部材42、伝達部材62、及び粘弾性部材182を有する。
【0032】
図8は、本実施例の保持部材42と従来例の保持部材4との比較図である。
図8(a)及び
図8(b)はそれぞれ、本実施例の保持部材42及び従来例の保持部材4を示している。
図9は、本実施例の伝達部材62と従来例の伝達部材6との比較図である。
図9(a)及び
図9(b)はそれぞれ、本実施例の伝達部材62及び従来例の伝達部材6を示している。
図9(a)及び
図9(b)において、上図はY軸方向の+側から見た図、下図はY軸方向の-側から見た図である。
【0033】
保持部材42には、Z軸方向に沿ってY軸方向に直交するX-Z平面に粘弾性部材182を配置可能な形状の溝部(連結部)42aが設けられている。伝達部材62には、溝部42aにある程度の隙間をもって嵌る矩形部62aが設けられている。また、伝達部材62の圧電素子1の側の面には、3つの凸部62bが設けられている。本実施例では、凸部62bは、
図4(c)に示される共通節点Q1,Q4,Q5を加圧する。
【0034】
本実施例では、振動波駆動装置100の組み立て方法が実施例1と異なる。以下、
図7及び
図10を参照して、本実施例の振動波駆動装置100の組み立て方法について説明する。
図10は、本実施例の振動波駆動装置100の断面図である。本実施例では、粘弾性部材182は、Y軸方向において、保持部材42と伝達部材62との間に配置される。本実施例では、粘弾性部材182は、例えばウレタンゴム等の高減衰性と収縮しない特性を有し、Y軸方向の厚みを調整可能な材料である。そのため、伝達部材62の凸部62bが圧電素子1に確実に接触するように、粘弾性部材182の厚みをコントロールすれば、組み立ての最後に粘弾性部材182を保持部材42と伝達部材62との間に配置する必要はない。すなわち、保持部材42の溝部42aに粘弾性部材182を事前に配置することができるため、組み立て性を向上させることが可能である。また、収縮しない粘弾性部材182を使用することで、不要な力が保持部材42のピン42b及びボスプレート2の穴部2bに加わらないので、圧電素子1とボスプレート2との剥がれ等による駆動特性の悪化を抑制することができる。
【実施例3】
【0035】
図11は、実施例1又は実施例2の振動波駆動装置100を備える撮像装置(光学機器)の断面図である。本実施例の撮像装置は、撮像レンズ部200及びカメラボディ300を備える。撮像レンズ部200の内部には、振動波駆動装置100と、振動波駆動装置100に取り付けられた合焦レンズ400が配置されている。カメラボディ300の内部には、撮像素子500が配置されている。合焦レンズ400は、撮影時に振動波駆動装置100により光軸Oに沿って移動する。被写体像は撮像素子500の位置で結像し、撮像素子500は合焦した像を生成する。なお、本実施例では振動波駆動装置100は撮像装置に搭載されているが、本発明はこれに限定されない。振動波駆動装置100は、例えば、レンズユニット等の他の光学機器に搭載されてもよいし、光学機器とは異なる装置に搭載されてもよい。また、本実施例では撮像レンズ部200及びカメラボディ300は一体的に構成されているが、本発明はこれに限定されない。撮像レンズ部200は、カメラボディ300に着脱可能に取り付けられてもよい。つまり、本発明でいうところの装置とは、各実施例の振動波駆動装置100と、振動波駆動装置100からの駆動力によって駆動する被駆動部材とを有する装置のことをいう。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の組合せ、変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
3 振動子
41,42 保持部材
8 加圧プレート(加圧手段)
18,182 粘弾性部材
61,62 伝達部材
100 振動波駆動装置