(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】コミュニケーション支援装置、コミュニケーション支援方法、コミュニケーション支援プログラム及びサーバ装置
(51)【国際特許分類】
G09B 21/00 20060101AFI20241106BHJP
A61F 9/08 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G09B21/00 A
A61F9/08 305
(21)【出願番号】P 2020131580
(22)【出願日】2020-08-03
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【氏名又は名称】和田 充夫
(72)【発明者】
【氏名】ラマ・エンドリ
(72)【発明者】
【氏名】山本 和夫
(72)【発明者】
【氏名】籔内 智浩
【審査官】柳 重幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-126160(JP,A)
【文献】特開2004-127285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 21/00-21/06
A61F 9/00-11/30
G06F 3/01
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの位置を示す位置情報を取得する位置取得部と、
前記ユーザの周囲環境を撮像して撮像画像を取得する撮像部と、
対象者の画像と、前記対象者の性質を示すカテゴリとを、前記対象者に対応付けた対象者データベースを格納する記憶部と、
前記位置情報に応じて、前記カテゴリに優先順位を設定するカテゴリ順位設定部と、
前記カテゴリ順位設定部によって設定された優先順位の順に、前記撮像画像内で、前記カテゴリに属する対象者を検出する対象者検出部と、
前記対象者検出部によって検出された対象者に関する情報を前記ユーザに対して報知する報知部と、
前記撮像画像に基づいて、前記対象者と前記撮像部との距離を測定する距離測定部と、
前記撮像画像に基づいて、前記対象者の表情を特定する表情特定部と、
前記撮像画像に基づいて、前記対象者の動作を特定する動作特定部と、を備え、
前記報知部は、
前記距離測定部によって測定された前記距離が第1閾値以下の交流距離である場合、前記対象者を識別するための識別情報を、音声により前記ユーザに報知し、
前記距離測定部によって測定された前記距離が前記第1閾値より大きい場合、前記表情特定部によって特定された表情に関する表情情報及び前記動作特定部によって特定された動作に関する動作情報のうちの少なくとも1つと、前記識別情報とを、音声により前記ユーザに報知する、コミュニケーション支援装置。
【請求項2】
前記報知部は、
前記距離測定部によって測定された前記距離が、前記第1閾値より長くかつ第2閾値以下である知覚距離である場合、前記表情情報及び前記動作情報のうちの1つと、前記識別情報とを前記ユーザに報知し、
前記距離測定部によって測定された前記距離が、前記第2閾値より大きい観察距離である場合、前記表情情報と、前記動作情報と、前記識別情報とを前記ユーザに報知する、請求項1に記載のコミュニケーション支援装置。
【請求項3】
前記報知部は、
前記対象者検出部によって検出された時点における、前記距離測定部によって測定された前記対象者と前記撮像部との距離が前記知覚距離であった場合、前記識別情報を音声により前記ユーザに報知した後に、前記表情情報及び前記動作情報のうちの一方を音声により前記ユーザに報知し、
その後に前記距離測定部によって測定された前記対象者と前記撮像部との距離が前記知覚距離であるときは、前記表情情報及び前記動作情報のうちの他方を音声により前記ユーザに報知する、請求項2に記載のコミュニケーション支援装置。
【請求項4】
前記報知部は、前記距離測定部による検出結果を振動により前記ユーザに報知する振動部を更に備え、
前記振動部は、前記距離測定部によって検出された前記対象者と前記撮像部との距離に応じて、振動のパターン及び大きさのうちの少なくとも一方を変更する、請求項1~3のいずれか1項に記載のコミュニケーション支援装置。
【請求項5】
前記撮像部は、前記ユーザの周囲環境を時系列で撮像して複数の撮像画像を取得し、
前記コミュニケーション支援装置は、前記対象者検出部によって検出された前記対象者を前記複数の撮像画像において追跡する対象者追跡部を更に備え、
前記振動部は、振動可能な2つ以上の振動要素を備え、
前記振動部は、
前記対象者追跡部が前記対象者を追跡している場合において、前記距離測定部によって検出された前記対象者と前記撮像部との距離が予め定められたフィードバック距離であるときは、予め定められた順序で各振動要素を順次振動させ、
前記対象者追跡部が、追跡していた前記対象者を追跡できなくなった場合、前記予め定められた順序と異なる順序で各振動要素を順次振動させる、請求項4に記載のコミュニケーション支援装置。
【請求項6】
前記振動要素は、規則的に配列された3つ以上の振動要素であり、
前記振動部は、
前記対象者追跡部が前記対象者を追跡している場合において、前記距離測定部によって検出された前記対象者と前記撮像部との距離が前記フィードバック距離であるときは、配列順に各振動要素を順次振動させ、
前記対象者追跡部が、追跡していた前記対象者を追跡できなくなった場合、前記配列順と逆順に各振動要素を順次振動させる、請求項5に記載のコミュニケーション支援装置。
【請求項7】
前記撮像画像に基づいて、前記撮像部に対する前記対象者の位置を検出する対象者位置検出部を更に備え、
前記振動要素は、右振動要素と、左振動要素とを含み、
前記振動部は、前記対象者位置検出部によって検出された前記撮像部に対する前記対象者の位置が、前記撮像部の光軸より右方にある場合、前記右振動要素を振動させ、前記撮像部の光軸より左方にある場合、前記左振動要素を振動させる、請求項5又は請求項6に記載のコミュニケーション支援装置。
【請求項8】
サーバ装置からデータを受信するコミュニケーション支援装置であって、
前記サーバ装置は、
ユーザの位置を示す位置情報を取得する位置取得部と、
対象者の画像と、前記対象者の性質を示すカテゴリとを、前記対象者に対応付けた対象者データベースと、
前記位置情報に応じて、前記カテゴリに優先順位を設定するカテゴリ順位設定部と、
前記対象者データベース内の情報と、前記カテゴリ順位設定部によって設定された優先順位を示す情報とを、これらの情報に基づいて前記対象者を検出して前記ユーザに対して報知するコミュニケーション支援装置に、前記データとして送信する送信部と、
を備え、
前記コミュニケーション支援装置は、
前記ユーザの周囲環境を撮像して撮像画像を取得する撮像部と、
前記サーバ装置から受信した優先順位の順に、前記撮像画像内で、前記カテゴリに属する対象者を検出する対象者検出部と、
前記対象者検出部によって検出された対象者に関する情報を前記ユーザに対して報知する報知部と、
前記撮像画像に基づいて、前記対象者と前記撮像部との距離を測定する距離測定部と、
前記撮像画像に基づいて、前記対象者の表情を特定する表情特定部と、
前記撮像画像に基づいて、前記対象者の動作を特定する動作特定部と、を備え、
前記報知部は、
前記距離測定部によって測定された前記距離が第1閾値以下の交流距離である場合、前記対象者を識別するための識別情報を、音声により前記ユーザに報知し、
前記距離測定部によって測定された前記距離が前記第1閾値より大きい場合、前記表情特定部によって特定された表情に関する表情情報及び前記動作特定部によって特定された動作に関する動作情報のうちの少なくとも1つと、前記識別情報とを、音声により前記ユーザに報知する、コミュニケーション支援装置。
【請求項9】
位置取得部が、ユーザの位置を示す位置情報を取得するステップと、
撮像部が、前記ユーザの周囲環境を撮像して撮像画像を取得するステップと、
対象者の画像と、前記対象者の性質を示すカテゴリとを、前記対象者に対応付けた対象者データベースを記憶部に格納するステップと、
カテゴリ順位設定部が、前記位置情報に応じて、前記カテゴリに優先順位を設定するステップと、
対象者検出部が、前記カテゴリ順位設定部によって設定された優先順位の順に、前記撮像画像内で、前記カテゴリに属する対象者を検出するステップと、
距離測定部が、前記撮像画像に基づいて、前記対象者と前記撮像部との距離を測定するステップと、
表情特定部が、前記撮像画像に基づいて、前記対象者の表情を特定するステップと、
動作特定部が、前記撮像画像に基づいて、前記対象者の動作を特定するステップと、を含むコミュニケーション支援方法であって、
前記コミュニケーション支援方法は、
前記距離測定部によって測定された前記距離が第1閾値以下の交流距離である場合、前記対象者を識別するための識別情報を、音声により前記ユーザに報知するステップを含み、
前記距離測定部によって測定された前記距離が前記第1閾値より大きい場合、前記表情特定部によって特定された表情に関する表情情報及び前記動作特定部によって特定された動作に関する動作情報のうちの少なくとも1つと、前記識別情報とを、音声により前記ユーザに報知するステップを含む、
コミュニケーション支援方法。
【請求項10】
請求項
9に記載のコミュニケーション支援方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コミュニケーション支援装置、コミュニケーション支援方法、コミュニケーション支援プログラム及びサーバ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、視覚障がい者の移動を補助する装置及び方法を開示する。この装置は、障害物検知モジュールの視覚センサによって画像を取得し、画像解析により画像内の人物、障害物等を検出し、音声によるフィードバックを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】中国特許出願公開第108836769号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像内にユーザの知人等の対象者が写っている場合、ユーザは、画像解析等の技術による当該対象者の識別結果を受け取ることにより、当該対象者と円滑にコミュニケーションを取り得る。しかしながら、装置がデータベースにアクセスして画像内に映った人物又は物を検出するのに時間を要し、応答時間が増大し、ユーザが対象者と円滑にコミュニケーションを行うことができないことがある。
【0005】
本開示の目的は、対象者を検出するのに要する時間を低減するコミュニケーション支援手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るコミュニケーション支援装置は、
ユーザの位置を示す位置情報を取得する位置取得部と、
前記ユーザの周囲環境を撮像して撮像画像を取得する撮像部と、
対象者の画像と、前記対象者の性質を示すカテゴリとを、前記対象者に対応付けた対象者データベースを格納する記憶部と、
前記位置情報に応じて、前記カテゴリに優先順位を設定するカテゴリ順位設定部と、
前記カテゴリ順位設定部によって設定された優先順位の順に、前記撮像画像内で、前記カテゴリに属する対象者を検出する対象者検出部と、
前記対象者検出部によって検出された対象者に関する情報を前記ユーザに対して報知する報知部と、を備える。
【0007】
本開示の他の態様に係るサーバ装置は、
ユーザの位置を示す位置情報を取得する位置取得部と、
対象者の画像と、前記対象者の性質を示すカテゴリとを、前記対象者に対応付けた対象者データベースと、
前記位置情報に応じて、前記カテゴリに優先順位を設定するカテゴリ順位設定部と、
前記対象者データベース内の情報と、前記カテゴリ順位設定部によって設定された優先順位を示す情報とを、これらの情報に基づいて前記対象者を検出して前記ユーザに対して報知するコミュニケーション支援装置に送信する送信部と、を備える。
【0008】
本開示の更に他の態様に係るコミュニケーション支援方法は、
位置取得部が、ユーザの位置を示す位置情報を取得するステップと、
撮像部が、前記ユーザの周囲環境を撮像して撮像画像を取得するステップと、
対象者の画像と、前記対象者の性質を示すカテゴリとを、前記対象者に対応付けた対象者データベースを記憶部に格納するステップと、
カテゴリ順位設定部が、前記位置情報に応じて、前記カテゴリに優先順位を設定するステップと、
対象者検出部が、前記カテゴリ順位設定部によって設定された優先順位の順に、前記撮像画像内で、前記カテゴリに属する対象者を検出するステップと、
報知部が、前記対象者検出部によって検出された対象者に関する情報を前記ユーザに対して報知するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、撮像画像に基づいてユーザが対象者とコミュニケーションを行うことを支援する際に、撮像画像内で対象者を検出するのに要する時間を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係るコミュニケーション支援装置の適用例を示す模式図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係るコミュニケーション支援装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図2に示したコミュニケーション支援装置の記憶部に格納される対象者データベースの一例を示す表である。
【
図4A】
図2に示したコミュニケーション支援装置の記憶部に格納されるカテゴリ順位情報の一例を示す表である。
【
図4B】
図2に示したコミュニケーション支援装置の記憶部に格納されるカテゴリ順位情報の他の例を示す表である。
【
図4C】
図2に示したコミュニケーション支援装置の記憶部に格納されるカテゴリ順位情報の更に他の例を示す表である。
【
図5】本開示の第1実施形態に係るコミュニケーション支援装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図6】
図5に示した対象者検出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】空間距離の一例を説明するための模式図である。
【
図8A】
図5に示した遠距離フローの詳細な流れを例示するフローチャートである。
【
図8B】
図5に示した遠距離フローの詳細な流れを例示するフローチャートである。
【
図9】
図8Bに示した表情特定処理ステップの詳細な流れを例示するフローチャートである。
【
図10】
図8Bに示した動作特定処理ステップの詳細な流れを例示するフローチャートである。
【
図11】
図8Bに示した交流後処理ステップの詳細な流れを例示するフローチャートである。
【
図12】本開示の第1実施形態に係るコミュニケーション支援装置の遠距離フローを含む動作の一例を示す模式図である。
【
図13】
図5に示した中距離フローの詳細な流れを例示するフローチャートである。
【
図14】本開示の第1実施形態に係るコミュニケーション支援装置の中距離フローを含む動作の一例を示す模式図である。
【
図15】
図5に示した近距離フローの詳細な流れを例示するフローチャートである。
【
図16】本開示の第1実施形態に係るコミュニケーション支援装置の近距離フローを含む動作の一例を示す模式図である。
【
図18】本開示の第2実施形態に係るコミュニケーション支援システムの構成例を示すブロック図である。
【
図19】カテゴリ順位設定処理の変形例を示すフローチャートである。
【
図20】本開示の実施形態の変形例に係るコミュニケーションロボットの動作例を説明するための模式図である。
【
図21】本開示の実施形態の変形例における対象者データベースの一例を示す表である。
【
図22】記憶部に格納されるカテゴリ順位情報の一例を示す表である。
【
図23】本開示の実施形態に係るコミュニケーション支援装置の出力態様の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して本開示に係るコミュニケーション支援装置の実施の形態を説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0012】
1.適用例
図1は、本開示の実施形態に係るコミュニケーション支援装置100の適用例を示す模式図である。コミュニケーション支援装置100は、例えば視覚障がい者であるユーザ90に対してコミュニケーション支援を行う。視覚障がい者は、知人等の対象者80が接近しても、視覚によりその姿、顔等を知覚することが困難である。したがって、対象者80の氏名、表情、及び動作等を認識することが困難である。そのため、ユーザ90は、対象者80が接近しても、対象者80に対して挨拶をする等の動作をすることができないことがある。
【0013】
そこで、コミュニケーション支援装置100は、例えば、カメラ3により周囲を撮像し、撮像画像を解析して対象者80を検出し、対象者80の氏名等の識別情報、位置、距離、表情、動作等の情報を出力してユーザ90に報知する。コミュニケーション支援装置100は、ユーザ90が動作を行っている間(例えば歩行中)及び/又は停止中(動作を行っていない間)に個人認識を実行することができる。
【0014】
コミュニケーション支援装置100は、例えば、ユーザ90のリュックサック70等の荷物に搭載される。あるいは、コミュニケーション支援装置100自体がウェアラブルなものであってもよい。対象者80の位置、及び対象者80とユーザ90との距離についての情報は、振動部2を用いてユーザ90に振動により報知することが可能である。一方、対象者80の氏名等の識別情報、表情、及び動作については、振動により報知することは困難であり、例えば、スピーカ等の音声出力部1を用いてユーザ90に音声により報知する。
【0015】
上記のように対象者80を検出するために、例えば、コミュニケーション支援装置100は、知人等の対象者を登録した対象者データベースの中から、撮像画像に写った者に一致又は類似するものを検索する。この際に、対象者データベース内を無秩序に検索していたのでは、対象者80を検出するのに多大な時間を要することがある。これでは、コミュニケーション支援装置100の応答時間が増大し、対象者80を検出して音声出力部1が対象者80に関する情報を読み上げている間に、ユーザ90が対象者80とすれ違ってしまう可能性がある。これでは、ユーザ90は、対象者80と円滑なコミュニケーションを行うことができない。
【0016】
そこで、本開示に係るコミュニケーション支援装置100は、例えば、対象者80に関する情報に、対象者80の性質を示すカテゴリを対応付けて対象者データベースに記録する。カテゴリは、例えば、
図1に示すように、家族、職場、友人、隣人、親戚、その他等の区分を含む。本開示に係るコミュニケーション支援装置100は、例えばGPS受信機7からユーザ90の位置を示す位置情報を取得し、位置情報に応じて、カテゴリに優先順位を設定する。例えば、ユーザ90がユーザ90の自宅付近にいる場合、
図1のカテゴリ順位情報50aに示した通りの優先順位を各カテゴリに付与する。ユーザ90がユーザ90の職場付近にいる場合、
図1のカテゴリ順位情報50bに示した通りの優先順位を各カテゴリに付与する。
【0017】
コミュニケーション支援装置100は、優先順位の順に、撮像画像内で、カテゴリに属する対象者を検出する。例えば、ユーザ90がユーザ90の自宅付近にいる場合、コミュニケーション支援装置100は、まず「家族」のカテゴリに属する対象者のみを検索して、撮像画像に写った者に一致又は類似するものを検出する(
図1のカテゴリ順位情報50aを参照)。次に、コミュニケーション支援装置100は、「隣人」のカテゴリに属する対象者のみを検索して、撮像画像に写った者に一致又は類似するものを検出する。以下、これより下位の優先順を付与されたカテゴリについても同様である。
【0018】
このように、コミュニケーション支援装置100は、設定された優先順位の順に、撮像画像内で、カテゴリに属する対象者を検出する。例えば、コミュニケーション支援装置100は、対象者データベースの中で、カテゴリ順位の高いものから順次、撮像画像に写った者に一致又は類似するものを検索する。これにより、対象者80を検出するのに要する時間を低減することができる。対象者80を早く検出できると、報知部10によるユーザ90への情報報知も早く行うことができる。したがって、ユーザ90は、周囲にいる対象者80に関する情報を素早く得ることができ、対象者80と円滑に又は自然にコミュニケーションを取ることができる。
【0019】
2.第1実施形態
2-1.構成例
図2は、本開示の第1実施形態に係るコミュニケーション支援装置100の構成例を示すブロック図である。コミュニケーション支援装置100は、GPS(Global Positioning System)受信機7と、カメラ3と、制御部4と、記憶部5と、通信インタフェース(I/F)6と、報知部10とを備える。
【0020】
GPS受信機7は、コミュニケーション支援装置100の位置を測定する測位装置である。GPS受信機7は、本開示の「測位部」の一例である。測位部は、例えば、GNSS(Global Naviga Navigation Satellite System :全地球的衛星測位システム)受信機等の衛星測位システムを含む。GNSSは、例えば、GPSを含む。GPS受信機7は、ユーザ90の位置を測定できればよく、ユーザ90が所持する携帯電話、スマートフォン等の情報処理装置内に搭載されてもよい。
【0021】
カメラ3は、ユーザ90の周囲の環境を撮像して撮像画像を形成する撮像装置である。カメラ3は、本開示の「撮像部」の一例である。カメラ3は、例えば所定のフレームレートでユーザ90の周辺を撮影し、逐次、画像データを生成する。カメラ3は、例えば、CMOS(Complementary MOS)、CCD(Charge Coupled Device)等の固体撮像素子によって撮像画像を形成する。カメラ3は、例えば、ユーザ90が装着できるウェアラブルカメラである。例えば、カメラ3は、眼鏡に搭載された眼鏡型カメラであり、ユーザ90の目線の方向を撮像する。カメラ3は、リュックサック、スーツケース等のユーザ90の荷物に搭載されてもよい。
【0022】
制御部4は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含み、情報処理に応じてコミュニケーション支援装置100の各構成要素の制御を行う情報処理装置である。制御部4は、構成要素として、例えば、位置取得部48と、カテゴリ順位設定部49と、画像取得部41と、対象者検出部42と、対象者追跡部43と、対象者位置検出部44と、距離測定部45と、表情特定部46と、動作特定部47とを含む。制御部4の各構成要素は、制御部4が必要なプログラムを実行することによって、それぞれが担当する処理を実行してもよい。このようなプログラムは、記憶部5に記憶されていてもよい。制御部4が必要なプログラムを実行する際は、記憶部5に記憶された対象となるプログラムをRAMに展開する。制御部4は、RAMに展開された当該プログラムをCPUにより解釈及び実行して、各構成要素を制御する。各構成要素の動作例については後述する。
【0023】
通信インタフェース6は、コミュニケーション支援装置100と外部機器との通信接続を可能とするためのインタフェース回路を含む。通信インタフェース6は、例えば、IEEE802.3、IEEE802.11又はWi-Fi(登録商標)、LTE、3G、4G、5G等の規格に従って通信を行う。通信インタフェース6は、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)、IEEE1394、Bluetooth(登録商標)等の規格に従って通信を行うインタフェース回路であってもよい。
【0024】
報知部10は、情報をユーザ90に伝達するための出力装置である。報知部10は、例えば、音声出力部1と振動部2とを含む。音声出力部1は、例えば制御部4による制御に従って音声を出力する出力装置である。音声出力部1は、例えば、スピーカ、イヤホン、及びヘッドホン等のオーディオ機器を含む。振動部2は、例えば制御部4による制御に従って振動を発生させるバイブレータである。
【0025】
本実施形態では、制御部4の各機能がCPUによって実現される例について説明する。しかしながら、以上の機能の一部又は全部は、1又は複数の専用のプロセッサにより実現されてもよい。また、制御部4の構成要素に関して、実施形態に応じて、適宜、機能の省略、置換及び追加が行われてもよい。制御部4は、CPU、MPU、GPU、マイコン、DSP、FPGA、ASIC等の種々の半導体集積回路で構成されてもよい。
【0026】
記憶部5は、コンピュータその他の装置、機械等が記録されたプログラム等の情報を読み取り可能なように、当該プログラム等の情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的又は化学的作用によって蓄積する媒体である。記憶部5は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置である。記憶部5は、例えば、カテゴリ順位情報50、対象者データベース51、表情データベース52、動作データベース53、及び制御部4が実行するプログラム等を記憶する。記憶部5は、RAM等の主記憶装置を含んでもよい。これらのデータが記憶部5に格納されることは一例に過ぎず、これらのデータは、例えば、コミュニケーション支援装置100が通信インタフェース6を介して通信可能な外部のサーバ装置に格納されてもよい。
【0027】
図3は、
図2に示したコミュニケーション支援装置100の記憶部5に格納される対象者データベース51の一例を示す表である。対象者データベース51には、対象者の識別番号(ID)、顔を含む画像、氏名、カテゴリ、関係係数(relationship coefficient)、住所、電話番号、メールアドレス、生年月日等の対象者に関する情報が格納される。対象者は、ユーザ90がコミュニケーションを取りたいと望む者又は取り得る者であり、例えばユーザ90の知人、著名人等を含む。対象者として、人だけではなく、ロボット等のコミュニケーションの対象となり得る物が登録されてもよい。
【0028】
図3において、カテゴリは、例えば当該対象者の性質を示す区分である。例えば、カテゴリは、当該対象者の住所、勤務先の名称又は住所等に基づいて決定される。このようなカテゴリは、対象者の生活圏に関する性質を示す区分といえる。あるいは、例えば、カテゴリは、当該対象者とユーザ90との関係に基づく当該対象者の性質を示す区分である。このようなカテゴリは、例えば、家族、職場、友人、隣人、親戚、その他等の区分を含む。職場カテゴリは、上司、部下、同僚等の職場に関する区分を含んでもよい。例えば、カテゴリは、ユーザ90が対象者を対象者データベース51に登録する際に、ユーザ90によって指定される。
【0029】
例えば、各カテゴリは、特定の場所に関連付けることができる。例えば、家族カテゴリ、隣人カテゴリ等は、自宅周辺の場所に関連付けられる。友人カテゴリ、親戚カテゴリも、自宅周辺の場所に関連付けられてもよい。同様に、例えば、職場カテゴリは職場の住所に関連付けられる。どのカテゴリがどの場所に関連付けられるかは、ユーザ90によって予め設定され、例えば対象者データベース51に記録されてもよい。
【0030】
また、
図3において、関係係数は、例えば、ユーザ90と対象者との関係の密接さを示す指標である。関係係数は、例えば、ユーザ90自身によって予め入力される。関係係数は、ユーザ90と対象者との面会回数、親等などの血縁関係等に基づいて決定されてもよい。関係係数は、例えば、ユーザ90と対象者との関係が密接であるほど高い値を有する。関係係数は、例えば0~1の数値で表される。
【0031】
図4A~4Cは、それぞれ、
図2に示した記憶部5に格納されるカテゴリ順位情報50の一例を示す表である。カテゴリ順位情報50においては、
図3に示した対象者データベース51に含まれる各カテゴリに対して、順位が設定される。
図4Aに示したカテゴリ順位情報50cでは、友人、親戚、職場、隣人、家族、その他のカテゴリに対して、1~6位の順位がそれぞれ設定されている。これらの順位は、初期値としてユーザ90によって指定されてもよい。カテゴリ順位情報50は、例えば、コミュニケーション支援装置100又はユーザ90の位置等の状況の変化に応じて、
図4Aに示した初期値から、
図4Bに示したカテゴリ順位情報50dに更新される。カテゴリ順位情報50内には、
図4Cのカテゴリ順位情報50eに示すように、コミュニケーション支援装置100又はユーザ90の位置に応じた順位が予め格納されていてもよい。
【0032】
2-2.動作例
2-2-1.全体フロー
本実施形態に係るコミュニケーション支援装置100は、知人等の対象者の氏名、位置、及び距離等をユーザ90に報知することにより、ユーザ90が当該対象者と円滑なコミュニケーションを取ることを支援する。例えば、コミュニケーション支援装置100は、視覚障がい者であるユーザ90が知人等の対象者と円滑なコミュニケーションを取ることを支援する。以下、コミュニケーション支援装置100の動作例について、
図5を参照して説明する。
【0033】
図5は、本実施形態に係るコミュニケーション支援装置100の動作例を示すフローチャートである。
図5に示した処理は、例えば制御部4によって繰り返し実行される。
【0034】
(ステップS91)
まず、位置取得部48は、GPS受信機7によって測定されたコミュニケーション支援装置100又はユーザ90の位置を示す位置情報を、GPS受信機7から取得する(S91)。
【0035】
(ステップS92)
次に、カテゴリ順位設定部49は、ステップS91において位置取得部48により取得された位置情報に基づいて、カテゴリ順位情報50内のカテゴリ順位を設定する(S92)。例えば、ステップS91において位置取得部48により取得された位置が職場領域内にある場合、カテゴリ順位設定部49は、記憶部5のカテゴリ順位情報50を、
図4Aに示した初期値から、
図4Bに示した現在値に更新する。ここで、「職場領域」とは、例えば、ユーザ90の職場の敷地内、又はユーザ90の職場の敷地から予め定められた距離だけ離れた地点を含む職場周辺の領域を表す。
【0036】
あるいは、ステップS91において位置取得部48により取得された位置が職場領域内にある場合、カテゴリ順位設定部49は、記憶部5のカテゴリ順位情報50を、
図4Cに示した初期値欄の順位から、職場領域欄の値に更新してもよい。また、ステップS91において位置取得部48により取得された位置が自宅領域内にある場合、カテゴリ順位設定部49は、記憶部5のカテゴリ順位情報50を、
図4Cに示した自宅領域欄の値に更新してもよい。ここで、「自宅領域」とは、例えば、ユーザ90の自宅の敷地内、又はユーザ90の自宅の敷地から予め定められた距離だけ離れた地点を含むユーザ90の自宅周辺の領域を表す。
【0037】
ステップS91において位置取得部48により取得された位置が予め定められた位置に含まれない場合、例えば、カテゴリ順位設定部49は、記憶部5のカテゴリ順位情報50を、初期値に設定してもよい。
【0038】
(ステップS1)
次に、画像取得部41は、カメラ3によって撮像された撮像画像を取得する(S1)。例えば、カメラ3は、ユーザ90の周囲環境を時系列で撮像して複数の撮像画像データを生成する。このように、カメラ3は、一定のフレームレートで撮像を行ってもよい。カメラ3は、動画を撮影するものであってもよい。ステップS1においては、画像取得部41は、複数の撮像画像を取得してもよい。画像取得部41は、複数フレームで構成される動画を取得してもよいし、複数枚の静止画像を取得してもよい。
【0039】
(ステップS2)
次に、対象者検出部42は、画像取得部41によって取得された撮像画像を解析し、人を検出する(S2)。ここで、人を検出するとは、撮像画像内において人が写っていると推定される領域を検出することを含む。ステップS2において人を検出しなかった場合(ステップS2でNoの場合)、制御部4は、
図5に示したフローを終了する。
【0040】
(ステップS93)
ステップS2において人を検出した場合(ステップS2でYesの場合)、対象者検出部42は、対象者の顔に関する情報が格納された対象者データベース51に基づいて、ステップS2において検出された人が知人等の対象者であるか否かを検出する(S93)。ステップS3で実行されるのは、ステップS2で検出された人の顔が対象者の顔に一致又は類似するか否かの同一性識別処理である。
【0041】
例えば、ステップS93では、対象者検出部42は、カテゴリ順位情報50及び対象者データベース51を参照し、カテゴリ順位情報50に格納された優先順位の順に、撮像画像内で、当該優先順位を有するカテゴリに属する対象者を検出する。例えば、ステップS93では、対象者検出部42は、最も高いカテゴリ順位を有するカテゴリに属する対象者から、最も低いカテゴリ順位を有するカテゴリに属する対象者まで、カテゴリ順位の順に、ステップS2において検出された人を検索する。対象者検出部42は、撮像画像内で、最も高い優先順位を有するカテゴリに属する対象者を検出し、検出しなかったときは、優先順位の順に、最も高い優先順位より低い優先順位を有するカテゴリに属する対象者を検出する。
【0042】
図6は、
図5に示した対象者検出処理の一例を示すフローチャートである。まず、対象者検出部42は、整数iを初期値である1に設定する(S931)。
【0043】
次に、対象者検出部42は、
図5のステップS2において検出された人を、対象者データベース51内のi位のカテゴリに属する対象者の中で検索する(S932)。例えば、整数iが1であるときは、対象者検出部42は、ステップS2において検出された人の顔が、1位のカテゴリ順位を有するカテゴリ(
図4Aでは友人)に属する対象者(
図3ではD及びE)の顔に一致又は類似するか否かを識別する。
【0044】
ステップS2において検出された人がi位のカテゴリに属する対象者のうちの1人に一致又は類似すると判断した場合(ステップS933でYesの場合)、対象者検出部42は、当該対象者を検出結果とする(S934)。その後、
図5のステップS3に進む。この場合、対象者データベース51から、既に検索した対象者以外の対象者、例えば優先順位がi+1位以下のカテゴリに属する対象者を検索する必要がないため、コミュニケーション支援装置100は、検索処理を早期に終えることができる。
【0045】
ステップS2において検出された人がi位のカテゴリに属する対象者に一致も類似もしないと判断した場合(ステップS933でNoの場合)、対象者検出部42は、対象者データベース51内の全対象者を検索し終えたか否かを判断する(S935)。
【0046】
まだ対象者データベース51内の全対象者を検索し終えていない場合(ステップS935でNoの場合)、対象者検出部42は、整数iをインクリメントし(S937)、ステップS932に戻る。
【0047】
対象者データベース51内の全対象者を検索し終えたと判断した場合(ステップS935でYesの場合)、対象者検出部42は、対象者を検出しなかったと判断する(S936)。この場合、対象者データベース51内には、ステップS2において検出された人に対応するデータが格納されていなかったことになる。その後、
図5のステップS3に進む。
【0048】
(ステップS3)
図5に戻り、ステップS93において対象者を検出した場合(ステップS3でYesの場合)、ステップS4に進み、それ以外の場合(ステップS3でNoの場合)、制御部4は、
図5に示したフローを終了する。
【0049】
(ステップS4)
対象者を検出した場合、振動部2は、対象者を検出したことをユーザ90に振動により報知する(S4)。具体的には、振動部2は、第1振動パターンで振動することにより、対象者を検出したことをユーザ90に報知する。このようにして、振動部2は、ユーザ90への注意喚起のために、対象者を検出したことをユーザ90にフィードバックする。振動パターンの詳細については後述する。
【0050】
ステップS4では、ステップS3で検出された対象者が、後述の観察距離、知覚距離、又は交流距離に進入した際に、第1振動パターンで振動することにより、フィードバックを行ってもよい。この意味で、観察距離、知覚距離、及び交流距離等の予め定められた距離を、フィードバックを行うためのフィードバック距離と呼ぶ。すなわち、振動部2は、対象者追跡部43が対象者を追跡している場合において、距離測定部45によって検出された対象者とカメラ3との距離が観察距離、知覚距離、又は交流距離であるときに、第1振動パターンで振動してもよい。
【0051】
(ステップS5)
次に、距離測定部45は、例えばステップS2で検出された情報に基づいて、カメラ3と対象者との空間距離を検出する(S5)。空間距離(spatial distance)は、本開示の「距離」の一例である。カメラ3は、ユーザ90が装着するウェアラブルカメラ、ユーザ90の荷物に搭載されるカメラ等のカメラであるため、カメラ3と対象者との空間距離は、ユーザ90と対象者との空間距離と同程度のものといえる。
【0052】
空間距離は、一般的に、2つの点の間の距離を意味し、これらの点間の経路によって異なり得る。ユーザ90と対象者との空間距離は、例えば、観察距離、知覚距離、交流距離という3つのカテゴリに大別できる。これらの空間距離に対応して、ユーザ90の周囲の空間は、観察スペース(Observation space)、知覚スペース(Perceptual space)、及び交流スペース(Interaction space)に大別できる。
図7は、空間距離の一例を説明するための模式図である。
【0053】
観察距離は、例えば、情報を取得するために、人が対象物又は対象者を注意深く観察する距離である。例えば、ユーザ90は、他人が観察距離にいる場合、その他人を観察し、その他人が知り合いであるか否か、及び、その知り合いが誰であるかを識別することができる。観察距離は、例えば、予め定められた第2閾値より長い距離を表す。観察距離は、個人間の空間距離が例えば3.6mより大きい場合に相当する。
【0054】
知覚距離は、例えば、感覚(例えば五感、特に視覚及び聴覚)を通して、他人の動作及び/又は感情を解釈したり、意識したりする距離である。例えばユーザ90は、他人が知覚距離にいる場合、その他人の表情、動作等を観察し、喜び、怒り、及び悲しみ等の感情を認識することができる。また、例えばユーザ90は、他人が知覚距離にいる場合、その他人がユーザ90の方を見ているか否か、電話、タブレット操作等の作業をしているか、及びユーザ90に向かって手を振っているか否か等の動作を認識することができる。知覚距離は、例えば、予め定められた第1閾値より長くかつ第2閾値以下である距離を表す。知覚距離は、個人間の空間距離が例えば1.2mより大きく3.6m以下である場合に相当する。
【0055】
交流距離は、例えば、通常、会話等の他人との相互作用が行われる距離である。交流距離は、例えば、第1閾値以下の距離を表す。交流距離は、個人間の空間距離が例えば1.2m以下である場合に相当する。
【0056】
ここでは、観察距離、知覚距離、交流距離という3つのカテゴリに区別可能な空間距離について例示した。しかしながら、空間距離の概念はこれらに限定されない。例えば、空間距離は、プロクセミス(Proxemics、Hall, E. T., The hidden dimension, New York: Doubleday, 1966)に基づいて、例えば公共スペース、社会スペース、パーソナルスペース等に大別されてもよい。また、空間距離は、人物間の親密度、人物が属する文化、人物の性別等によって異なり得る。
【0057】
(ステップS6~S11)
図5に戻り、制御部4は、ステップS5の測定の結果、カメラ3と対象者との空間距離が観察距離である場合(ステップS6でYesの場合)、ステップS7に進んで遠距離フローを実行する。知覚スペースである場合(ステップS8でYesの場合)、ステップS9に進んで中距離フローを実行する。交流スペースである場合(ステップS10でYesの場合)、ステップS11に進んで近距離フローを実行する。このように、コミュニケーション支援装置100は、ステップS3で対象者を発見した時点におけるカメラ3と対象者との空間距離に応じて、異なる処理を実行する。
【0058】
2-2-2.遠距離フロー
2-2-2-1.全体の流れ
図8A及び
図8Bは、
図5に示した遠距離フロー(S7)の詳細な流れを例示するフローチャートである。
図8A及び
図8Bは、結合子A及び結合子Bによって結合されている。
図8A及び
図8Bに示したフローは、リアルタイムに、すなわち画像取得部41が画像を取得する度に実行されてもよい。あるいは、
図8A及び
図8Bに示したフローは、画像取得部41によって数秒間~数十秒間に取得された複数フレームの撮像画像に対して実行されてもよい。
【0059】
(ステップS701)
まず、音声出力部1は、ステップS3で検出された対象者の氏名を音声によりユーザ90に報知する(S701)。これにより、ユーザ90は、自分の近くにいる対象者の氏名を知ることができ、誰が自分の近くにいるかを識別することができる。対象者の氏名は、本開示における、対象者を識別するための識別情報の一例である。
【0060】
(ステップS702)
次に、振動部2は、対象者との空間距離及び対象者の位置を、ユーザ90に振動により報知する(S702)。具体的には、振動部2は、第2振動パターンで振動することにより、対象者が観察距離にいることと、対象者の位置とを、ユーザ90に報知する。振動パターンの詳細については後述する。空間距離は、
図5のステップS5において距離測定部45によって測定されたものである。対象者の位置は、例えば対象者位置検出部44によって検出される。対象者の位置は、例えばカメラ3の光軸を基準として、対象者が右方、正面方向、左方のいずれの方向にいるかによって特定される。さらに、対象者の位置は、例えばカメラ3の光軸を基準として、対象者が上方、下方のいずれの方向にいるかによって特定されてもよい。言い換えれば、対象者の位置は、ユーザ90から見て対象者が上下左右及び正面のどの方向にいるかを特定する指標を表してもよい。
【0061】
(ステップS703)
次に、対象者追跡部43は、
図5のステップS3で検出された対象者を追跡する(S703)。具体的には、対象者追跡部43は、参照フレームにおいて検出又は追跡された対象者の画像内の位置に基づいて、参照フレームより後に撮像された現フレームにおいて対象者を追跡する。対象者の追跡は、例えば、参照フレーム内の対象者をテンプレートとして記憶部5に保存し、当該テンプレートを用いて、例えば公知のテンプレートマッチングなどの手法を適用し、現フレームの中を探索することで実現することができる。
【0062】
例えば、対象者追跡部43は、参照フレームにおいて検出又は追跡された対象者と、現フレームにおいて追跡された対象者と、が同一の対象者であることの確からしさを示すマッチングスコアを算出する。マッチングスコアは、例えば0~1の範囲内の値であり、値が大きいほど参照フレームにおいて検出された対象者と、現フレームにおいて検出された対象者と、が同一の対象者である可能性が高いことを意味する。対象者追跡部43は、マッチングスコアが所定の閾値以上である場合、参照フレームにおいて検出された対象者と、現フレームにおいて検出された対象者と、が同一の対象者であると決定し、当該対象者の追跡が成功したものとする。
【0063】
(ステップS704)
対象者追跡部43は、追跡過程において、検出又は追跡されていた対象者が撮像画像内に映っているか否かを判断する(S704)。例えば、対象者追跡部43は、対象者が現フレームに映っているか否かを判断する。対象者が撮像画像内に映っていると判断した場合(ステップS704でYesの場合)、ステップS705に進み、映っていないと判断した場合(ステップS704でNoの場合)、ステップS720に進む。
【0064】
(ステップS705)
距離測定部45は、対象者が知覚距離まで近付いたか否かを判断する(S705)。具体的には、距離測定部45は、
図5のステップS5で用いたフレームでは観察距離にいた対象者が、後の時刻に撮像されたフレームにおいて知覚距離にいるか否かを判断する。例えば、距離測定部45は、カメラ3と対象者との距離が3.6mとなった場合、対象者が知覚距離まで近付いたと判断する。対象者が知覚距離まで近付いた場合(ステップS705でYesの場合)、
図8BのステップS706に進み、対象者が知覚距離まで近付いていない場合(ステップS705でNoの場合)、ステップS703に戻る。対象者が知覚距離まで近付いていない場合、制御部4は、
図8A及び
図5の処理を終了してもよい。
【0065】
(ステップS706)
図8Bに示したステップS706では、表情特定部46は、撮像画像に基づいて、対象者の表情を特定する(S706)。表情特定処理ステップS706の詳細については後述する。
【0066】
(ステップS707)
次に、音声出力部1は、ステップS706で表情特定部46によって特定された表情に関する表情情報を、音声によりユーザ90に報知する(S707)。ここで、表情情報は、人の表情そのものを表す情報だけでなく、人が顔にマスク、眼帯、眼鏡、及びサングラス等の装着物又は遮蔽物を装着しているか否かを表す情報をも含んでもよい。例えば、音声出力部1は、「笑顔である」、「怒っている」、「表情が不明である」、「マスクを装着している」等の表情情報をユーザ90に報知する。これにより、ユーザ90は、自分の近くにいる対象者の表情を知ることができ、表情に応じた円滑なコミュニケーションを図ることができる。
【0067】
(ステップS708)
次に、振動部2は、対象者との空間距離及び対象者の位置を、ユーザ90に振動により報知する(S708)。具体的には、振動部2は、第3振動パターンで振動することにより、対象者が知覚距離にいることと、対象者の位置とを、ユーザ90に報知する。振動パターンの詳細については後述する。
【0068】
(ステップS709)
次に、動作特定部47は、撮像画像に基づいて、対象者の動作を特定する(S709)。動作特定処理ステップS709の詳細については後述する。
【0069】
(ステップS710)
次に、音声出力部1は、ステップS709で動作特定部47によって特定された動作に関する動作情報を、音声によりユーザ90に報知する(S710)。例えば、音声出力部1は、「対象者がこちらを見ている」、「対象者が手を振っている」、「対象者が電話をしている」、「対象者が咳をしている」、「対象者の動作が不明である」等の動作情報をユーザ90に報知する。これにより、ユーザ90は、対象者の動作を知ることができ、動作に応じた円滑なコミュニケーションを図ることができる。
【0070】
(ステップS711)
次に、距離測定部45は、対象者が交流距離まで近付いたか否かを判断する(S711)。具体的には、距離測定部45は、
図8AのステップS705で用いたフレームでは知覚距離にいた対象者が、後の時刻に撮像されたフレームにおいて交流距離にいるか否かを判断する。例えば、距離測定部45は、カメラ3と対象者との距離が1.2mとなった場合、対象者が交流距離まで近付いたと判断する。対象者が交流距離まで近付いた場合(ステップS711でYesの場合)、ステップS712に進み、対象者が交流距離まで近付いていない場合(ステップS711でNoの場合)、ステップS709に戻る。長時間経過しても対象者が交流距離まで近付かない場合、制御部4は、
図8B及び
図5の処理を終了してもよい。
【0071】
(ステップS712)
次に、振動部2は、対象者との空間距離及び対象者の位置を、ユーザ90に振動により報知する(S712)。具体的には、振動部2は、第4振動パターンで振動することにより、対象者が交流距離にいることと、対象者の位置とを、ユーザ90に報知する。振動パターンの詳細については後述する。これにより、ユーザ90は、対象者が交流距離にいることを知ることができ、対象者とコミュニケーションを開始することができる。
【0072】
(ステップS713)
ステップS712の次に、例えばユーザ90が対象者とのコミュニケーションを終えた後に、制御部4は、交流後処理を実行する(S713)。例えば、制御部4は、振動部2を制御して、対象者がユーザ90から離れたことを振動により報知する。これにより、ユーザ90は、対象者が去ったことを知ることができ、対象者とのコミュニケーションの前に行っていた、目的地への移動等の行動を再開することができる。
【0073】
(ステップS720)
図8Aに戻り、ステップS704において対象者が撮像画像内に映っていないと判断した場合、制御部4は、対象者が撮像画像内に映っていない期間が予め定められた期間より長いか否かを判断する。予め定められた期間は、例えば1秒~数分、例えば4秒である。期間の代わりに、フレーム数が予め定められてもよい。例えば、制御部4は、対象者が、連続した予め定められた数のフレーム画像内に映っているか否かを判断してもよい。対象者が撮像画像内に映っていない期間が予め定められた期間より長い場合(ステップS720でYesの場合)、ステップS721に進み、予め定められた期間以下である場合(ステップS720でNoの場合)、ステップS703に戻る。
【0074】
(ステップS721)
対象者が撮像画像内に映っていない期間が予め定められた期間より長い場合(ステップS720でYesの場合)、振動部2は、対象者を追跡できなくなった旨を、ユーザ90に振動により報知する(S721)。具体的には、振動部2は、第5振動パターンで振動することにより、対象者を追跡できなくなった旨をユーザ90に報知する。振動パターンの詳細については後述する。これにより、ユーザ90は、対象者を追跡できなくなった旨、又は対象者がユーザ90の周辺から去ったことを知ることができる。ステップS721の後には、制御部4、報知部10等の構成要素は、ユーザ90に対し、対象者の検出前に行っていた通常動作である目的地へのナビゲーション動作等を再開してもよい。
【0075】
2-2-2-2.表情特定処理
図9は、
図8Bに示した表情特定処理ステップS706の詳細な流れを例示するフローチャートである。
【0076】
(ステップS7061)
まず、表情特定部46は、撮像画像を解析し、対象者の顔を検出する(S7061)。ここで、顔を検出するとは、撮像画像内において人の顔が写っていると推定される領域を検出することを含む。
【0077】
(ステップS7062)
対象者の顔を検出した場合(ステップS7062でYesの場合)、ステップS7063に進む。対象者の顔を検出しなかった場合(ステップS7062でNoの場合)、ステップS7067に進む。
【0078】
(ステップS7063)
対象者の顔を検出した場合(ステップS7062でYesの場合)、表情特定部46は、対象者がマスク、眼帯、眼鏡、サングラス等の遮蔽物を装着しているか否かを検出する(S7063)。対象者が遮蔽物を装着しているために顔を検出できなかった場合があるため、本実施形態では遮蔽物検出処理が採用される。対象者が遮蔽物を装着しているか否かを検出する手法には、例えば、特開2018-151919号公報に開示されている技術が適用される。
【0079】
ステップS7063において対象者が遮蔽物を装着していることを検出した場合(ステップS7064でYesの場合)、表情特定部46は、対象者の表情に関する表情情報につき、遮蔽物を装着した顔であると特定する(S7068)。表情特定部46は、遮蔽物が何であるかを特定してもよい。例えば、ステップS7068において、表情特定部46は、対象者の表情に関する表情情報につき、マスクを装着した顔であると特定してもよい。
【0080】
ステップS7063において対象者が遮蔽物を装着していることを検出しなかった場合(ステップS7064でNoの場合)、表情特定部46は、対象者の顔の表情を識別する(S7065)。例えば、表情特定部46は、人の表情に関する情報が格納された表情データベース52と、撮像画像内の対象者の顔とを比較し、対象者の表情を識別する。
【0081】
表情の識別には、公知の手法が用いられてもよい。例えば、表情特定部46は、対象者の顔の中で、顔の器官(以下、「顔器官」という。)を検出する。顔器官は、組織の集まりであって、特定の機能を有するものを含む。例えば、顔器官は、目、鼻、口、及び耳を含む。顔器官は、皮膚を含んでもよい。顔全体が顔器官に含まれてもよい。表情特定部46は、検出された顔器官の情報に基づいて、表情を識別する。例えば、表情特定部46は、顔器官の情報から、眼、眉、口等の顔の特徴点間の距離、または顔表面のエッジを、表情を表す情報として検出する。
【0082】
例えば、表情特定部46は、顔器官の位置情報に基づき顔器官の相対位置や形状に関わる特徴量を抽出する。特徴量は、例えば、Haar-like特徴量、特徴点間距離、フーリエ記述子を含む。次に、抽出された特徴量が、表情を判別する表情判別器に入力され、表情のスコア(表情成分値)が出力されてもよい。表情のスコアは、例えば、笑顔の度合いを示す笑度、幸福の度合いを示す幸福度等を含む。表情判別器は、例えば、ニューラルネットワーク、自己組織化マップ等の機械学習により多数の顔のサンプル画像を学習して構築される。
【0083】
表情の識別とは、顔表情の種類を判別すること、すなわち認識の対象である顔の表情の種類を感情を示す語によって識別することを含む。ここで、顔表情の識別は、単一の感情を示す語による識別でもよいし、感情を示す語の組み合わせによる識別でもよい。感情を示す語を組み合わせる場合、各感情を示す語が重み付けされていてもよい。例えば、表情は、ポール・エックマン(Paul Ekman)の表情分析をもとに、顔表情を「真顔」、「喜び」、「怒り」、「嫌悪」、「驚き」、「怖れ」、及び「悲しみ」の7種類に分類される。表情の識別結果としては、7種類の表情それぞれの度合い(表情らしさ、表情度とも呼ぶ)を合計が1となるように数値化されたスコアが出力される。各表情のスコアは表情成分値とも呼ばれる。
【0084】
上記の表情判別器は、1つでなくてもよく、上記の7種類の表情をそれぞれ担当する7つの判別器で構成されてもよい。
【0085】
表情を推定する手法には、特開2019-111092号公報、特開2016-149063号公報、特開2014-206903号公報等に例示されている技術が適用されてもよい。
【0086】
(ステップS7066)
表情特定部46は、対象者の表情を、ステップS7065で識別したものに特定する(S7066)。例えば、表情特定部46は、対象者の表情を、「喜び」の表情であると特定する。
【0087】
(ステップS7067)
ステップS7061において対象者の顔を検出しなかった場合(ステップS7062でNoの場合)、表情特定部46は、対象者の表情が「不明である」と特定する(S7067)。表情特定部46は、対象者の表情が、「顔を検出しなかったため不明である」と特定してもよい。ここで、「対象者の顔を検出しなかった場合」とは、1フレームの撮像画像において対象者の顔を検出しなかった場合を含む。また、「対象者の顔を検出しなかった場合」とは、複数フレームの撮像画像に対して顔検出処理を試みたものの、いずれのフレームにおいても対象者の顔を検出しなかった場合を含んでもよい。
【0088】
図9の表情特定処理ステップS706で特定された表情情報は、前述のように、
図8Bに示したステップS707においてユーザ90に報知される。例えば、音声出力部1は、「笑顔である」、「怒っている」、「表情が不明である」、「マスクを装着している」等の表情情報をユーザ90に報知する。これにより、ユーザ90は、自分の近くにいる対象者の表情を知ることができ、表情に応じた円滑なコミュニケーションを図ることができる。例えば、ユーザ90は、対象者が怒っている旨の表情情報を報知された場合、対象者に話しかけないという選択をすることができる。
【0089】
また、例えば、ユーザ90は、感染症が流行している状況において、対象者がマスクを装着している旨の表情情報を報知されたときには、対象者から離れる等の動作を行い、対象者との社会距離を確保する動作を行うこと(ソーシャルディスタンシング、social distancing)を選択できる。あるいは、ユーザ90は、例えば、対象者がマスクを装着している旨の表情情報を報知された場合、対象者に対して、体調について尋ねることができる。対象者が病気である場合、及び体調が優れない場合等には、ユーザ90は、対象者との社会距離を確保する動作を行うことを選択することができる。このようにして、例えば感染症が流行している状況において、ユーザ90は、コミュニケーション支援装置100から報知された情報に基づいて、対象者等の他人からの感染のリスクを低減することができる。このように、状況に応じて他人との距離を調整しつつ他人とコミュニケーションを取ることも、円滑なコミュニケーションに含まれる。
【0090】
2-2-2-3.動作特定処理
図10は、
図8Bに示した動作特定処理ステップS709の詳細な流れを例示するフローチャートである。
【0091】
(ステップS7091)
まず、動作特定部47は、対象者がユーザ90を見ているか否かを検出する(S7091)。例えば、動作特定部47は、対象者の顔がカメラ3の方を向いているか否かを検出する。カメラ3は、ユーザ90が装着するウェアラブルカメラ、ユーザ90の荷物に搭載されるカメラ等のカメラであるため、対象者の顔がカメラ3の方を向いている場合、対象者がユーザ90を見ているものと同視できる。あるいは、動作特定部47は、対象者の虹彩又は瞳孔を検出し、検出された虹彩又は瞳孔の位置に基づいて、対象者の視線を検出してもよい。対象者の視線の方向とカメラ3の光軸方向との差が小さい場合、対象者がユーザ90を見ているものと同視できる。対象者がユーザ90を見ていることを検出した場合(S7091でYesの場合)、ステップS7094に進む。
【0092】
(ステップS7092,S7093)
対象者がユーザ90を見ていることを検出しなかった場合(S7091でNoの場合)、動作特定部47は、対象者の動作を識別する(S7092)。例えば、動作特定部47は、人の動作に関する情報が格納された動作データベース53と、撮像画像内の対象者の姿勢等の動作に関する情報とを比較し、対象者の動作を識別する。対象者の動作は、例えば、対象者が電話中であること、本を読んでいること、手を振っていること、走っていること、歩いていること、咳をしていること等の動作を含む。上記の例では、ステップS7091において対象者がユーザ90を見ているか否かを判断したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、対象者がユーザ90を見ているか否かの判断は、ステップS7092における動作識別に含まれてもよい。対象者の動作を識別した場合(ステップS7093でYesの場合)、ステップS7094に進み、対象者の動作を識別しなかった場合(ステップS7093でNoの場合)、ステップS7095に進む。
【0093】
(ステップS7094)
対象者の動作を識別した場合(ステップS7093でYesの場合)、動作特定部47は、対象者の動作を、ステップS7092において識別したものに特定する(ステップS7094)。また、ステップS7091において対象者がユーザ90を見ていることを検出した場合(S7091でYesの場合)、ステップS7094では、対象者の動作につき、ユーザ90を見ていると特定する。特定された動作は、前述のように、
図8BのステップS710においてユーザ90に報知される。
【0094】
(ステップS7095)
ステップS7093で対象者の動作を識別しなかった場合、動作特定部47は、ステップS7092で用いたフレーム画像が撮像された時刻より後の時刻に撮像された他のフレーム画像において、動作識別を試みるか否かを判断する(S7095)。どの期間に撮像されたフレーム画像に対して動作識別を試みるかについての情報、又は、何枚のフレーム画像に対して動作識別を試みるかについての情報は、予め定められていてもよい。
【0095】
(ステップS7096)
ステップS7095において、更なる動作識別を試みないと判断した場合(ステップS7095でNoの場合)、動作特定部47は、対象者の動作が「不明である」と特定する(S7096)。特定された動作は、前述のように、
図8BのステップS710においてユーザ90に報知される。
【0096】
(ステップS7097)
動作特定部47は、ステップS7092で用いたフレーム画像が撮像された時刻より後の時刻に撮像された他のフレーム画像を取得する(S7097)。
【0097】
(ステップS7098)
ステップS7098~S7100は、
図8AのステップS704,S720,S721とそれぞれ同様のステップである。ステップS7098では、動作特定部47は、ステップS7097で取得されたフレーム画像内に、対象者が映っているか否かを判断する(S7098)。対象者がフレーム画像内に映っていると判断した場合(ステップS7098でYesの場合)、ステップS7091に戻り、映っていないと判断した場合(ステップS7098でNoの場合)、ステップS7099に進む。
【0098】
(ステップS7099)
制御部4は、対象者が撮像画像内に映っていない期間が予め定められた期間より長いか否かを判断する(S7099)。対象者が撮像画像内に映っていない期間が予め定められた期間より長い場合(ステップS7099でYesの場合)、ステップS7100に進み、予め定められた期間以下である場合(ステップS7099でNoの場合)、ステップS7091に戻る。
【0099】
(ステップS7100)
対象者が撮像画像内に映っていない期間が予め定められた期間より長い場合(ステップS7099でYesの場合)、振動部2は、対象者を追跡できなくなった旨を、ユーザ90に振動により報知する(S7100)。具体的には、振動部2は、第5振動パターンで振動することにより、対象者を追跡できなくなった旨をユーザ90に報知する。これにより、ユーザ90は、対象者を追跡できなくなった旨、又は対象者がユーザ90の周辺から去ったことを知ることができる。ステップS7100の報知の後、制御部4は、
図5に示した一連の処理を終了する。
図5のフローは、繰り返し開始されてもよい。
図5のフローは、例えば、予め定められた周期ごとに開始される。
【0100】
2-2-2-4.交流後処理
図11は、
図8Bに示した交流後処理ステップS713の詳細な流れを例示するフローチャートである。
【0101】
(ステップS7131)
まず、対象者追跡部43は、対象者を追跡する(S7131)。追跡ステップS7131では、
図8Aに示した追跡ステップS703と同様の処理が実行されてもよい。
【0102】
(ステップS7132)
次に、対象者追跡部43は、追跡過程において、検出又は追跡されていた対象者が撮像画像内に映っているか否かを判断する(S7132)。例えば、対象者追跡部43は、対象者が現フレームに映っているか否かを判断する。対象者が撮像画像内に映っていると判断した場合(ステップS7132でNoの場合)、ステップS7133に進み、映っていないと判断した場合(ステップS7132でYesの場合)、ステップS7135に進む。
【0103】
(ステップS7133)
制御部4は、対象者が撮像画像内に映っていない期間が予め定められた期間より長いか否かを判断する(S7133)。対象者が撮像画像内に映っていない期間が予め定められた期間より長い場合(ステップS7133でYesの場合)、ステップS7134に進み、予め定められた期間以下である場合(ステップS7133でNoの場合)、ステップS7131に戻る。
【0104】
(ステップS7134)
対象者が撮像画像内に映っていない期間が予め定められた期間より長い場合(ステップS7133でYesの場合)、振動部2は、対象者を追跡できなくなった旨を、ユーザ90に振動により報知する(S7134)。具体的には、振動部2は、第5振動パターンで振動することにより、対象者を追跡できなくなった旨をユーザ90に報知する。これにより、ユーザ90は、対象者を追跡できなくなった旨、又は対象者がユーザ90の周辺から去ったことを知ることができる。これにより、ユーザ90は、目的地への移動等の動作に集中できる。ユーザ90が自己の動作に集中できるため、ユーザ90の安全も担保される。ステップS7134は、
図8Aに示したステップS721と同様のステップであってもよい。
【0105】
(ステップS7135)
ステップS7132において、対象者が撮像画像内に映っていると判断した場合(ステップS7132でYesの場合)、距離測定部45は、対象者が近付いて来ているか否かを検出する(S7135)。具体的には、距離測定部45は、異なる時刻に撮像された2つのフレーム画像におけるカメラ3と対象者との距離を比較し、対象者が近付いて来ているか否かを検出する。
【0106】
対象者が近付いて来ていることを検出した場合(ステップS7135でYesの場合)、ユーザ90が対象者と再びコミュニケーションを取る可能性がある。そこで、制御部4は、
図5に示した一連の処理を一旦終了し、再び
図5の処理を開始してもよい。
図5のフローは、例えば、予め定められた周期ごとに開始される。対象者が近付いて来ていることを検出しなかった場合(ステップS7135でNoの場合)、制御部4は、ステップS7131に戻り、追跡を続ける。
【0107】
2-2-2-5.遠距離フローの例
図12は、検出された対象者80との空間距離が観察距離である場合(
図5のステップS6でYesの場合)におけるコミュニケーション支援装置100の動作の一例を示す模式図である。コミュニケーション支援装置100は、観察スペースにいる対象者80を検出した場合、ユーザ90に対する注意喚起のために、振動部2を第1パターンで振動させる。次に、音声出力部1は、対象者80の氏名を音声によりユーザ90に報知し(S701)、振動部2は、対象者80との空間距離及び対象者80の位置を、第2振動パターンで振動することにより報知する(S702)。
【0108】
その後、対象者80が知覚スペースに進入した場合、音声出力部1は、対象者80の表情情報を、音声によりユーザ90に報知し(S707)、振動部2は、対象者との空間距離及び対象者の位置を、第3振動パターンで振動することにより報知する(S708)。さらに、音声出力部1は、対象者80の表情情報を、音声によりユーザ90に報知する(S710)。
【0109】
その後、対象者80が交流スペースに進入した場合、振動部2は、対象者との空間距離及び対象者の位置を、第4振動パターンで振動することにより報知する(S712)。これにより、ユーザ90は、対象者が交流距離にいることを知ることができ、対象者とコミュニケーションを開始することができる。ユーザ90が対象者とのコミュニケーションを終えた後、例えば、振動部2は、対象者がユーザ90から離れたことを第5振動パターンで振動することにより報知する(S7134)。その後、制御部4、報知部10等の構成要素は、ユーザ90に対し、対象者の検出前に行っていた通常動作である目的地へのナビゲーション動作等を再開してもよい。
【0110】
2-2-3.中距離フロー
図13は、
図5に示した中距離フロー(S9)の詳細な流れを例示するフローチャートである。中距離フローにおいては、前述の遠距離フローにおいて説明したステップと同一又は同様のステップについては、同一の符号を付している。このようなステップとして、中距離フローは、ステップS701,S706~S710,S712,S713を含む。このようなステップについては、重複説明を省略する場合がある。
【0111】
中距離フローでは、まず、音声出力部1は、ステップS3で検出された対象者の氏名を音声によりユーザ90に報知する(S701)。次に、振動部2は、対象者との空間距離及び対象者の位置を、ユーザ90に振動により報知する(S708)。具体的には、振動部2は、第3振動パターンで振動することにより、対象者が知覚距離にいることと、対象者の位置とを、ユーザ90に報知する。
【0112】
次に、表情特定部46は、撮像画像に基づいて、対象者の表情を特定する(S706)。次に、音声出力部1は、ステップS706で表情特定部46によって特定された表情に関する表情情報を、音声によりユーザ90に報知する(S707)。表情特定処理ステップS706は、対象者の氏名を報知するステップS701の前に実行されてもよい。
【0113】
次に、距離測定部45は、対象者が交流距離まで近付いたか否かを判断する(S94)。ステップS94は、
図8Bに示した前述のステップS711と同様のステップであってもよい。対象者が交流距離まで近付いたと判断した場合(ステップS94でYesの場合)、ステップS712に進み、対象者が交流距離まで近付いていないと判断した場合(ステップS94でNoの場合)、ステップS709に進む。
【0114】
対象者が交流距離まで近付いたと判断した場合(ステップS94でYesの場合)、振動部2は、対象者との空間距離及び対象者の位置を、ユーザ90に振動により報知する(S712)。具体的には、振動部2は、第4振動パターンで振動することにより、対象者が交流距離にいることと、対象者の位置とを、ユーザ90に報知する。
【0115】
次に、例えばユーザ90が対象者とのコミュニケーションを終えた後に、制御部4は、交流後処理を実行する(S713)。
【0116】
ステップS94において対象者が交流距離まで近付いていないと判断した場合(ステップS94でNoの場合)、動作特定部47は、撮像画像に基づいて、対象者の動作を特定する(S709)。次に、音声出力部1は、ステップS709で動作特定部47によって特定された動作に関する動作情報を、音声によりユーザ90に報知する(S710)。
【0117】
図14は、検出された対象者80との空間距離が知覚距離である場合(
図5のステップS8でYesの場合)におけるコミュニケーション支援装置100の動作の一例を示す模式図である。
図12に示した観察距離の場合の模式図と比較すると、
図14では、特に、対象者の動作を音声により報知するステップS710が省略されている。対象者が交流距離まで近付いた場合、対象者の動作を音声により報知するステップS710を実行していたのでは、例えば報知の間に相手とすれ違ってしまうことがあり、円滑なコミュニケーションを行うことができないことがある。したがって、中距離フローでは、対象者との距離に応じて、ステップS710を省略する。ただし、上記のように、中距離フローでは、制御部4は、例えば対象者が交流距離まで近付かずに知覚距離に留まっている場合に、追加的に動作特定処理ステップS709を実行する。これにより、コミュニケーション支援装置100は、知覚距離で初めて対象者が検出された場合であっても、状況に応じて、動作情報をもユーザ90に提供する。状況に応じて十分な情報を受け取ることにより、ユーザ90は、対象者と円滑なコミュニケーションを取ることができる。
【0118】
2-2-4.近距離フロー
図15は、
図5に示した近距離フロー(S11)の詳細な流れを例示するフローチャートである。近距離フローにおいては、前述の遠距離フローにおいて説明したステップと同一又は同様のステップについては、同一の符号を付している。このようなステップとして、近距離フローは、ステップS701,S712,S713を含む。このようなステップについては、重複説明を省略する場合がある。
【0119】
近距離フローでは、まず、音声出力部1は、ステップS3で検出された対象者の氏名を音声によりユーザ90に報知する(S701)。次に、振動部2は、対象者との空間距離及び対象者の位置を、ユーザ90に振動により報知する(S712)。具体的には、振動部2は、第4振動パターンで振動することにより、対象者が交流距離にいることと、対象者の位置とを、ユーザ90に報知する。次に、例えばユーザ90が対象者とのコミュニケーションを終えた後に、制御部4は、交流後処理を実行する(S713)。
【0120】
図16は、検出された対象者80との空間距離が交流距離である場合(
図5のステップS10でYesの場合)におけるコミュニケーション支援装置100の動作の一例を示す模式図である。
図14に示した知覚距離の場合の模式図と比較すると、
図16では、特に、対象者の表情を音声により報知するステップS707が更に省略されている。交流距離のような近距離で対象者を発見した場合、ユーザ90は、即時に対象者とコミュニケーションを開始できる。このような場合に、音声又は振動により対象者の表情及び動作等の多くの情報をユーザ90に報知する時間はなく、これらの情報をユーザ90に報知していたのでは、円滑なコミュニケーションを行うことができないことが通常である。したがって、近距離フローでは、コミュニケーション支援装置100は、対象者の氏名、距離、及び位置という最小限の情報のみをユーザ90に報知することにより、ユーザ90と対象者との円滑なコミュニケーションを図る。
【0121】
2-3.振動パターン
2-3-1.振動部の構成
図17を参照して、振動部2及び振動部2の振動パターンについて説明する。
図17は、振動部2の構成例を示す図である。振動部2は、例えば、リュックサック70の肩ベルトに取り付けられる。振動部2は、それぞれが制御部4からの制御信号に従って振動する2つ以上の振動要素を含む。
図17の例では、振動部2は、規則的に配列された第1~第6の振動要素21~26を備える。第1~第3の振動要素21~23は左肩ベルト71に、第4~第6の振動要素24~26は右肩ベルト72に取り付けられている。第1~第3の振動要素21~23は、左肩ベルト71が延びる方向に整列している。第4~第6の振動要素24~26は、右肩ベルト72が延びる方向に整列している。第1~第3の振動要素21~23は、本開示の「左振動要素」の一例である。第4~第6の振動要素24~26は、右肩ベルト72が延びる方向に整列している。第1~第3の振動要素21~23は、本開示の「右振動要素」の一例である。
【0122】
2-3-2.第1振動パターン
第1振動パターンは、前述の例では、
図5のステップS4で説明したように、対象者を検出したことをユーザ90に報知するための振動パターンである。第1振動パターンは、ユーザ90への注意喚起の機能を有する。
【0123】
第1振動パターンでは、制御部4は、振動部2の第1~第6の振動要素21~26を順次振動させる。すなわち、第1振動パターンでは、制御部4は、第1の振動要素21、第2の振動要素22、第3の振動要素23、第4の振動要素24、第5の振動要素25、第6の振動要素26の順に振動させるよう制御を行う。ユーザ90に背負われた状態のリュックサック70を上方から見ると、第1振動パターンでは、第1~第6の振動要素21~26は反時計回りに順番に振動する。ユーザ90は、反時計回りの振動を感じることにより、対象者が近くにいることを知ることができる。この反時計回りの振動は、1回又は複数回実行されてもよい。
【0124】
2-3-3.第2振動パターン
第2振動パターンは、前述の例では、
図8AのステップS702で説明したように、対象者が観察距離にいることと、対象者の位置とを、ユーザ90に報知するための振動パターンである。
【0125】
例えば、振動部2の各振動要素21~26は、弱、中、強の3段階の振動強度で振動可能である。第2振動パターンでは、振動部2の各振動要素21~26は、例えば弱振動により、対象者が観察距離にいることをユーザ90に報知する。あるいは、制御部4は、各振動要素21~26による振動の周波数、波形等の振動要素を変更することによって、対象者の位置をユーザ90に知らせてもよい。
【0126】
対象者の位置については、例えば、振動部2は、対象者が左方にいる場合は、左肩ベルト71に取り付けられた第1~第3の振動要素21~23のみを振動させることにより、対象者が左方にいることをユーザ90に報知する。また、例えば、振動部2は、対象者が右方にいる場合は、右肩ベルト72に取り付けられた第4~第6の振動要素24~26のみを振動させることにより、対象者が右方にいることをユーザ90に報知する。また、例えば、振動部2は、対象者が正面方向にいる場合は、第1~第6の振動要素21~26のすべてを振動させる。
【0127】
このようにして、振動部2は、振動の強度と振動の位置とを制御することにより、対象者との空間距離及び対象者の位置の両方をユーザ90にほぼ同時に報知することができる。
【0128】
2-3-4.第3振動パターン
第3振動パターンは、前述の例では、
図8B及び
図13のステップS708で説明したように、対象者が知覚距離にいることと、対象者の位置とを、ユーザ90に報知するための振動パターンである。第3振動パターンでは、振動部2の各振動要素21~26は、例えば中程度の強度の振動により、対象者が知覚距離にいることをユーザ90に報知する。第3振動パターンは、前述の第2振動パターンと振動の強度が異なる以外は同様であるため、重複説明を省略する。
【0129】
2-3-5.第4振動パターン
第4振動パターンは、前述の例では、
図8B及び
図13のステップS712で説明したように、対象者が交流距離にいることと、対象者の位置とを、ユーザ90に報知するための振動パターンである。第4振動パターンでは、振動部2の各振動要素21~26は、例えば強い強度の振動により、対象者が交流距離にいることをユーザ90に報知する。第4振動パターンは、前述の第2振動パターン及び第3振動パターンと振動の強度が異なる以外は同様であるため、重複説明を省略する。
【0130】
2-3-6.第5振動パターン
第5振動パターンは、前述の例では、
図8AのステップS721及び
図11のステップS7134で説明したように、追跡していた対象者を追跡できなくなったことをユーザ90に報知するための振動パターンである。第5振動パターンにより、ユーザ90は、対象者を追跡できなくなったこと、又は対象者がユーザ90の周辺から去ったことを知ることができる。
【0131】
第5振動パターンでは、制御部4は、振動部2の第1~第6の振動要素21~26を、第1振動パターンとは異なる順序で順次振動させる。例えば、第5振動パターンでは、制御部4は、第6の振動要素26、第5の振動要素25、第4の振動要素24、第3の振動要素23、第2の振動要素22、第1の振動要素21の順に振動させるよう制御を行う。ユーザ90に背負われた状態のリュックサック70を上方から見ると、第5振動パターンでは、第1~第6の振動要素21~26は時計回りに順番に振動する。ユーザ90は、時計回りの振動を感じることにより、対象者を追跡できなくなったこと、又は対象者がユーザ90の周辺から去ったことを知ることができる。この時計回りの振動は、1回又は複数回実行されてもよい。
【0132】
また、第1~第5の振動パターンは、上記のものに限定されず、ユーザ90が第1~第5の振動パターンを互いに区別できるものであればよい。例えば、第1~第5の振動パターンは、互いに異なる振動周期で振動するパターンであってもよい。
【0133】
2-3-7.変形例
図17の例では、振動部2の第1~第6の振動要素21~26がリュックサック70の肩ベルト71,72に取り付けられた例について説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されず、ユーザ90が第1~第5の振動パターンを互いに区別できればよい。例えば、振動部2の第1~第6の振動要素21~26は、ユーザ90のベルト、リストバンド、腕時計、帽子等に取り付けられてもよい。振動部2の第1~第6の振動要素21~26は、スマートウェアに組み込まれてもよい。ここで、スマートウェアは、例えば、センサ、出力デバイス等を衣類等のウェアラブル素材に備え付けたウェアラブルデバイスである。振動部2の第1~第6の振動要素21~26は、スマートウェアを構成するスマートテキスタイル及び材料等に組み込まれる。
【0134】
2-4.作用・効果
以上のように、本実施形態に係るコミュニケーション支援装置100は、位置取得部48と、カメラ3と、記憶部5と、カテゴリ順位設定部49と、対象者検出部42と、報知部10とを備える。位置取得部48は、ユーザ90の位置を示す位置情報を取得する。カメラ3は、ユーザ90の周囲環境を撮像して撮像画像を取得する。記憶部5は、対象者の画像と、対象者の性質を示すカテゴリとを、対象者に対応付けた対象者データベース51を格納する。カテゴリ順位設定部49は、位置取得部48によって取得された位置情報に応じて、カテゴリに優先順位を設定する。対象者検出部42は、カテゴリ順位設定部49によって設定された優先順位の順に、撮像画像内で、カテゴリに属する対象者を検出する。報知部10は、対象者検出部42によって検出された対象者に関する情報をユーザ90に対して報知する。
【0135】
このように、対象者検出部42は、カテゴリ順位設定部49によって設定された優先順位の順に、撮像画像内で、カテゴリに属する対象者を検出する。例えば、コミュニケーション支援装置100は、対象者データベースの中で、カテゴリ順位の高いものから順次、撮像画像に写った者に一致又は類似するものを検索する。これにより、コミュニケーション支援装置100は、対象者を検出するのに要する時間を低減することができる。対象者を早く検出できると、報知部10によるユーザ90への情報報知も早く行うことができる。したがって、ユーザ90は、周囲にいる対象者に関する情報を素早く得ることができ、当該対象者と円滑に又は自然にコミュニケーションを取ることができる。
【0136】
コミュニケーション支援装置100は、距離測定部45と、表情特定部46と、動作特定部47とを更に備えてもよい。距離測定部45は、撮像画像に基づいて、対象者とカメラ3との距離を測定する。表情特定部46は、撮像画像に基づいて、対象者の表情を特定する。動作特定部47は、撮像画像に基づいて、対象者の動作を特定する。報知部10は、距離測定部45によって測定された対象者とカメラ3との距離が、第1閾値以下の交流距離である場合、先対象者を識別するための識別情報を、音声によりユーザ90に報知してもよい。対象者とカメラ3との距離が第1閾値より大きい場合、報知部10は、表情特定部46によって特定された表情に関する表情情報及び動作特定部47によって特定された動作に関する動作情報のうちの少なくとも1つと、識別情報とを、音声によりユーザ90に報知してもよい。
【0137】
この構成により、コミュニケーション支援装置100は、対象者とカメラ3との距離が第1閾値より大きい場合には、識別情報に加えて表情情報及び動作情報のうちの少なくとも1つを報知し、できる限り多くの情報をユーザ90に報知する。一方、対象者とカメラ3との距離が小さい場合には、コミュニケーション支援装置100が検出した情報をすべて読み上げていたのでは、読み上げている間にユーザ90が対象者とすれ違ってしまう可能性がある。これでは、ユーザ90は、対象者と円滑なコミュニケーションを行うことができない。そこで、コミュニケーション支援装置100は、対象者とカメラ3との距離が第1閾値以下である場合には、識別情報のみをユーザ90に報知する。このように、コミュニケーション支援装置100は、対象者との距離が小さい場合には報知する情報を省き、ユーザ90が対象者と円滑なコミュニケーションを取ることを支援する。
【0138】
報知部10は、距離測定部45によって測定された距離が、第1閾値より長くかつ第2閾値以下である知覚距離である場合、表情情報及び動作情報のうちの1つと、識別情報とをユーザ90に報知してもよい。報知部10は、距離測定部45によって測定された距離が、第2閾値より大きい観察距離である場合、表情情報と、動作情報と、識別情報とをユーザ90に報知してもよい。
【0139】
このように、対象者とカメラ3との距離が短くなるに連れて、ユーザ90に報知する情報を漸次省くことにより、ユーザ90は、対象者に関する適切な情報を素早く知ることができ、対象者と円滑なコミュニケーションを取ることができる。
【0140】
報知部10は、対象者検出部によって検出された時点における、距離測定部45によって測定された対象者とカメラ3との距離が知覚距離であった場合、識別情報を音声によりユーザ90に報知した後に、表情情報及び動作情報のうちの一方を音声によりユーザ90に報知してもよい。その後に距離測定部45によって測定された対象者とカメラ3との距離が知覚距離であるときは、報知部10は、表情情報及び動作情報のうちの他方を音声によりユーザ90に報知してもよい。
【0141】
この構成により、知覚距離で初めて対象者が検出された場合であっても、対象者が交流距離まで近付かずに知覚距離に留まっているときには、ユーザ90は、表情情報及び動作情報の両方を知ることができる。このように、状況に応じて適切な量の情報を受け取ることにより、ユーザ90は、対象者と円滑なコミュニケーションを取ることができる。
【0142】
報知部10は、距離測定部45による検出結果を振動によりユーザ90に報知する振動部2を更に備えてもよい。振動部2は、距離測定部45によって検出された対象者とカメラ3との距離に応じて、振動のパターン及び大きさのうちの少なくとも一方を変更してもよい。
【0143】
振動部2により、コミュニケーション支援装置100は、検出結果の一部又は全部を音声報知に比べて短時間でユーザ90に報知することができる。また、音声による報知と振動による報知とを組み合わせることにより、コミュニケーション支援装置100は、音声による報知のみを用いる場合に比べて、多くの情報を短時間でユーザ90に伝えることができる。
【0144】
カメラ3は、ユーザ90の周囲環境を時系列で撮像して複数の撮像画像を取得してもよい。この場合、コミュニケーション支援装置100は、対象者検出部42によって検出された対象者を複数の撮像画像において追跡する対象者追跡部43を更に備えてもよい。振動部2は、振動可能な2つ以上の振動要素を備えてもよい。この場合、振動部2は、対象者追跡部43が対象者を追跡している場合において、距離測定部45によって検出された対象者とカメラ3との距離が予め定められたフィードバック距離であるときは、予め定められた順序で各振動要素を順次振動させてもよい。振動部2は、対象者追跡部43が、追跡していた対象者を追跡できなくなった場合、予め定められた順序と異なる順序で各振動要素を順次振動させてもよい。
【0145】
2つ以上の振動要素が異なる順序で振動する振動パターンを有することにより、コミュニケーション支援装置100は、様々な情報をユーザ90に振動により報知することができる。ユーザ90は、振動パターンの違いにより、対象者との距離がフィードバック距離であり、コミュニケーションの可能性があることと、追跡していた対象者を追跡できなくなったことと、の違いを認識することができる。
【0146】
振動要素は、規則的に配列された3つ以上の振動要素であってもよい。振動部2は、対象者追跡部43が対象者を追跡している場合において、距離測定部45によって検出された対象者とカメラ3との距離がフィードバック距離であるときは、配列順に各振動要素を順次振動させてもよい。対象者追跡部43が、追跡していた対象者を追跡できなくなった場合、配列順と逆順に各振動要素を順次振動させてもよい。
【0147】
3つ以上の振動要素が異なる順序で振動する振動パターンを有することにより、2つ以下の振動要素しかない場合に比べて、ユーザ90は、振動により報知される情報の違いをより明瞭に区別して認識することができる。
【0148】
コミュニケーション支援装置100は、撮像画像に基づいて、カメラ3に対する対象者の位置を検出する対象者位置検出部44を更に備えてもよい。振動要素は、右振動要素と、左振動要素とを含んでもよい。振動部2は、対象者位置検出部44によって検出されたカメラ3に対する対象者の位置が、カメラ3の光軸より右方にある場合、右振動要素を振動させ、カメラ3の光軸より左方にある場合、左振動要素を振動させてもよい。
【0149】
この構成により、コミュニケーション支援装置100は、対象者の相対位置をより明瞭にユーザ90に振動により報知することができる。
【0150】
3.第2実施形態
図18は、本開示の第2実施形態に係るコミュニケーション支援システム300の構成例を示すブロック図である。コミュニケーション支援システム300は、コミュニケーション支援装置200と、サーバ装置305と、GPS受信機7とを含む。GPS受信機7は、ユーザ90によって携帯される。GPS受信機7は、第1実施形態において説明したように、ユーザ90が所持する携帯電話、スマートフォン等の情報処理装置内に搭載されてもよい。
【0151】
サーバ装置305は、制御部306と記憶部307と通信インタフェース308とを備える情報処理装置である。サーバ装置305の制御部306は、制御部4と同様の情報処理装置である。通信インタフェース308は、本開示の「送信部」及び「受信部」の一例であり、例えば通信インタフェース6と同様のインタフェース回路である。
【0152】
コミュニケーション支援装置200は、カメラ3と、制御部304と、通信インタフェース6と、報知部10とを備える。
図2のコミュニケーション支援装置100と比較すると、
図18のコミュニケーション支援装置200は、記憶部にカテゴリ順位情報50、対象者データベース51、表情データベース52、及び動作データベース53を含まない。代わりに、カテゴリ順位情報50、対象者データベース51、表情データベース52、及び動作データベース53は、コミュニケーション支援装置200とネットワーク350を介して通信可能に接続されるサーバ装置305の記憶部307内に格納される。
【0153】
コミュニケーション支援装置200の制御部304は、画像取得部41と、対象者検出部42と、対象者追跡部43と、対象者位置検出部44と、距離測定部45と、表情特定部46と、動作特定部47とを含む。
図2の制御部4と比較すると、
図18の制御部304は、位置取得部48及びカテゴリ順位設定部49を含まない。代わりに、サーバ装置305の制御部306が、位置取得部48及びカテゴリ順位設定部49を含む。
【0154】
位置取得部48は、ネットワーク350と通信インタフェース308とを介して、GPS受信機7から、ユーザ90の位置を示す位置情報を取得する。
【0155】
上記の例では、報知部10がコミュニケーション支援装置200内に含まれる例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、報知部10は、ユーザ90が所持する携帯電話、スマートフォン等の情報処理装置内に搭載されてもよい。
【0156】
以上のように、本実施形態に係るサーバ装置305は、位置取得部48と、対象者データベース51と、カテゴリ順位設定部49と、通信インタフェース308とを備える。制御部306の位置取得部48は、例えばGPS受信機7から、ユーザ90の位置を示す位置情報を取得する。制御部306は、通信インタフェース308及びネットワーク350を介して、対象者データベース51内の情報と、カテゴリ順位設定部49によって設定された優先順位を示す情報とを、コミュニケーション支援装置200に送信する。
【0157】
コミュニケーション支援装置200は、サーバ装置305から、対象者データベース51内の情報と、カテゴリ順位設定部49によって設定された優先順位を示す情報とを受信する。コミュニケーション支援装置200は、カメラ3と、対象者検出部42と、報知部10とを備える。カメラ3は、ユーザ90の周囲環境を撮像して撮像画像を取得する。
対象者検出部42は、サーバ装置305のカテゴリ順位設定部49によって設定された優先順位の順に、撮像画像内で、カテゴリに属する対象者を検出する。報知部10は、対象者検出部42によって検出された対象者に関する情報をユーザ90に対して報知する。
【0158】
コミュニケーション支援装置200により、第1実施形態と同様に、ユーザ90は、周囲にいる対象者に関する情報を素早く得ることができる。したがって、ユーザ90は、当該対象者と円滑に又は自然にコミュニケーションを取ることができる。さらに、サーバ装置305は、大容量であり得るデータベースを格納するとともに、カテゴリ順位設定部49による処理を実行する。これにより、コミュニケーション支援装置200は、ネットワーク350を介して必要なデータを必要な時だけ取り出すことができ、制御部304に印加される処理負荷を低減することができる。また、コミュニケーション支援装置200に高い処理能力を有するプロセッサ、又は大容量の記憶装置を搭載する必要がないため、低コスト化及び省サイズ化を実現することができる。
【0159】
4.変形例
以上、本開示の実施形態を詳細に説明したが、前述までの説明はあらゆる点において本開示の例示に過ぎない。本開示の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができる。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略する。以下の変形例は適宜組み合わせることができる。また、以下では、主として本開示の第1実施形態の変形例を説明するが、これらの変形例は本開示の第2実施形態にも適用可能である。
【0160】
4-1.第1変形例
第1実施形態の
図5では、画像取得ステップS1の前に、ユーザ90の位置を取得するステップS91と、カテゴリ順位を設定するステップS92とを実行する処理例を説明した。しかしながら、本開示の実施形態はこれに限定されない。例えば、ステップS91及びステップS92は、
図5の画像取得ステップS1以降の処理とは別の処理として実行されてもよい。例えば、ユーザ90の位置を取得するステップS91及びカテゴリ順位を設定するステップS92は、
図5の画像取得ステップS1以降の処理と並列に処理されてもよい。
【0161】
また、カテゴリ順位を設定するステップは、ユーザ90が歩行、走行等を含む移動を行っていない場合には実行されなくてもよい。これにより、ユーザ90が移動を行っていない場合の処理を省略することができ、制御部4に対する負荷を低減することができる。
【0162】
図19は、このようなカテゴリ順位を設定するステップの第1変形例であるカテゴリ順位設定処理S192を示すフローチャートである。ユーザ90の位置を取得するステップS91(
図5参照)及びカテゴリ順位設定処理S192は、例えば制御部4によって所定の周期で繰り返し実行されてもよい。
【0163】
まず、カテゴリ順位設定部49は、ユーザ90の移動を検出する(S193)。例えば、ユーザ90の移動を検出するために、コミュニケーション支援装置100は、加速度計、速度計等のセンサを更に備えてもよい。あるいは、ユーザ90のスマートフォン等の携帯機器に搭載された加速度計、速度計等のセンサによって、ユーザ90の移動が検出されてもよい。この場合、検出結果は、ユーザ90のスマートフォン等の携帯機器から、例えばネットワークを介して又は無線通信により、コミュニケーション支援装置100に送信される。
【0164】
ユーザ90の移動を検出しなかった場合(ステップS194でNoの場合)、カテゴリ順位設定部49は、記憶部5のカテゴリ順位情報50を更新しない(S200)。
【0165】
ユーザ90の移動を検出した場合(ステップS194でYesの場合)、カテゴリ順位設定部49は、その時刻及びその位置からの、期間及び距離の計測を開始する(S195)。例えば、カテゴリ順位設定部49は、期間及び距離をリセットし、期間及び距離をカウントし始める。距離については、カテゴリ順位設定部49は、その位置を所定位置として記憶部5に記憶してもよい。
【0166】
次に、位置取得部48は、GPS受信機7によって測定されたコミュニケーション支援装置100又はユーザ90の位置を示す位置情報を、GPS受信機7から取得し、カテゴリ順位設定部49に送信する(S196)。ステップS196は、
図5に示したステップS91と同様のステップであってもよい。
【0167】
次に、カテゴリ順位設定部49は、コミュニケーション支援装置100又はユーザ90がステップS195における所定位置から所定距離以上移動したか否かを判断する(S197)。ここで、所定距離は、例えば100m以上の距離、例えば500m,1km,2km,5km,10km等の距離である。
【0168】
コミュニケーション支援装置100又はユーザ90が所定距離以上移動したと判断した場合(ステップS197でYesの場合)、カテゴリ順位設定部49は、記憶部5のカテゴリ順位情報50を更新する(S198)。
【0169】
ステップS197においてコミュニケーション支援装置100又はユーザ90が所定距離以上移動したと判断しなかった場合(ステップS197でNoの場合)、カテゴリ順位設定部49は、ステップS195における時刻から所定期間が経過したか否かを判断する(S199)。ここで、所定期間は、例えばユーザ90が歩いて1km移動するのに要する期間である。例えば、所定期間は、3分以上の期間、例えば5分,10分,12分,15分,30分等の期間である。
【0170】
所定期間が経過したと判断した場合(ステップS199でYesの場合)、ステップS193に戻る。所定期間が経過したと判断しなかった場合(ステップS199でNoの場合)、ステップS196に戻る。
【0171】
このように、ユーザ90が移動を行っていない場合の処理を省略することにより、カテゴリ順位設定部49を含む制御部4に対する負荷を低減することができる。これにより、例えば、制御部4は、
図5の画像取得ステップS1以降の処理等の他の処理に処理能力を割き、処理速度を向上させることができる。したがって、制御部4は、よりリアルタイムに近い処理速度でコミュニケーション支援処理を実行し、ユーザ90による円滑なコミュニケーションの実現を支援することができる。
【0172】
4-2.第2変形例
第1実施形態では、ユーザ90が所持するコミュニケーション支援装置100について説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されない。例えば、コミュニケーション支援装置100は、目的地までユーザ90を誘導する等の動作を行ってユーザ90の移動を支援するナビゲーションロボットに搭載されてもよい。このようなナビゲーションロボットは、ユーザ90の移動支援に加えて、ユーザ90による円滑なコミュニケーションを支援することができる。このようなナビゲーションロボットは、例えばユーザ90が行きたい場所まで自走して先導することにより、ユーザ90の移動を支援する自走式のロボットであってもよい。
【0173】
あるいは、本開示の実施形態に係るコミュニケーション支援装置は、ユーザがロボットである場合に適用されてもよい。
図20は、このような第2変形例に係るコミュニケーションロボット110の動作例を説明するための模式図である。コミュニケーションロボット110には、上記の実施形態に係るコミュニケーション支援装置100,200が搭載される。
【0174】
コミュニケーションロボット110は、例えば工場400の敷地内を走行して他の人、他のロボット等とコミュニケーションを行いながら作業をおこなう。例えば、コミュニケーションロボット110は、自走して建物401の中に入り、建物401内で製造された部品を作業者から受け取り、当該部品を建物402内の作業者に引き渡す搬送ロボットである。あるいは、コミュニケーションロボット110は、建物401~406内を移動して、建物401~406内で行われる製造作業を実行する作業ロボットであってもよい。コミュニケーションロボット110は、これらの作業を、人又は作業ロボットと協働して行う協調ロボットであってもよい。また、コミュニケーションロボット110は、工場400への来訪者を案内する案内ロボットであってもよい。
【0175】
コミュニケーションロボット110は、複数の建物及び工場400の敷地を移動するため、コミュニケーションを取り得る対象者の数が多く、対象者データベースのサイズが大きくなる。したがって、コミュニケーションロボット110が対象者データベースの中から周囲にいる人又はロボットを検索するのに時間がかかり、リアルタイムで対象者と円滑にコミュニケーションすることができないおそれがある。
【0176】
そこで、コミュニケーションロボット110は、例えばカテゴリとして
図21に示すように各対象者が所属する建物名を登録し、
図22に示すように、コミュニケーションロボット110の位置に応じてカテゴリ順位情報を更新する。
図21は、第2変形例における対象者データベース51aの一例を示す表である。対象者データベース51aには、対象者の識別番号(ID)、顔を含む画像、氏名、カテゴリとしての所属する建物等の対象者に関する情報が格納される。
【0177】
図22は、記憶部5に格納されるカテゴリ順位情報の一例を示す表である。カテゴリ順位情報は、コミュニケーションロボット110の位置の変化に応じて更新される。例えば、コミュニケーションロボット110が建物401の中又はその付近にいる場合、カテゴリ順位情報は、表50fに示した値に設定される。その後、コミュニケーションロボット110が建物402の中又はその付近に移動した場合、カテゴリ順位情報は、表50gに示した値に更新される。
【0178】
さらに、建物の敷地が広い場合、コミュニケーションロボット110が当該建物内でコミュニケーションを取り得る対象者の数が多く、対象者データベースのサイズが大きくなる。このような場合にも、コミュニケーションロボット110が対象者データベースの中から周囲にいる人又はロボットを検索するのに時間がかかり、リアルタイムで対象者と円滑にコミュニケーションすることができないおそれがある。そこで、カテゴリは、更に細かく分類されて、建物内の複数の区域に対して割り当てられてもよい。
【0179】
このように、コミュニケーションロボット110の位置に応じてカテゴリ順位情報を適切に設定することにより、コミュニケーションロボット110は、対象者を検出する応答時間を短縮することができ、対象者と円滑にコミュニケーションを取ることができる。
【0180】
4-3.第3変形例
図23は、コミュニケーション支援装置100の出力態様の変形例を示す模式図である。上記実施形態では、特に視覚障がい者であるユーザ90に対してコミュニケーション支援を行うコミュニケーション支援装置100の出力態様について説明した。このような出力態様として、特に、音声による報知を行う音声出力部1と、振動による報知を行う振動部2と、を含む報知部10について説明した。本開示の出力態様はこれらに限定されず、ユーザ90に情報を報知できるものであればよい。例えば、コミュニケーション支援装置100は、ユーザ90に対して視覚的に報知を行うためのディスプレイ8を備えてもよい。
【0181】
例えば、ディスプレイ8には、カメラ3による撮像画像、対象者の氏名、カメラ3又はユーザ90から対象者までの距離、対象者の位置、動作、及び表情が表示される。これにより、ユーザ90は、ディスプレイ8を一見するだけで上記のような情報を素早く把握することができ、対象者と円滑にコミュニケーションを取ることができる。
【符号の説明】
【0182】
1 音声出力部
2 振動部
3 カメラ(撮像部)
4 制御部
5 記憶部
6 通信インタフェース
7 GPS受信機(測位部)
8 ディスプレイ
10 報知部
21 第1の振動要素
22 第2の振動要素
23 第3の振動要素
24 第4の振動要素
25 第5の振動要素
26 第6の振動要素
41 画像取得部
42 対象者検出部
43 対象者追跡部
44 対象者位置検出部
45 距離測定部
46 表情特定部
47 動作特定部
48 位置取得部
49 カテゴリ順位設定部
50 カテゴリ順位情報
51 対象者データベース
52 表情データベース
53 動作データベース
70 リュックサック
71 左肩ベルト
72 右肩ベルト
80 対象者
90 ユーザ
100 コミュニケーション支援装置
110 コミュニケーションロボット
200 コミュニケーション支援装置
300 コミュニケーション支援システム
304 制御部
305 サーバ装置
306 制御部
307 記憶部
308 通信インタフェース
350 ネットワーク
400 工場
401~406 建物