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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】光測距装置及び光測距方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/4865 20200101AFI20241106BHJP
【FI】
G01S7/4865
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022556737
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(86)【国際出願番号】 JP2020038689
(87)【国際公開番号】W WO2022079816
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】野口 栄実
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-337302(JP,A)
【文献】特開2019-144230(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0116072(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
17/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光測距装置であって、
測定対象物に測距光を送信する光送信手段と、
前記送信した測距光により前記測定対象物から反射した反射光を受信する光受信手段と、
測距範囲に応じて光源を強度変調した参照光を生成する変調手段と、
前記受信した反射光と前記生成した参照光とを干渉させて受信信号を生成する検波手段と、
前記送信した測距光と前記生成した受信信号とに基づいて、前記測定対象物までの距離を算出する距離算出手段と、
を備
前記参照光は、前記測距範囲が前記光測距装置から遠い場合の強度が、前記測距範囲が前記光測距装置から近い場合の強度よりも強い、
光測距装置。
【請求項2】
前記参照光は、特定の測距範囲における強度が、他の測距範囲における強度よりも強い、
請求項に記載の光測距装置。
【請求項3】
前記参照光の平均パワーは、前記強度変調前の光源のパワーと同じである、
請求項1または2に記載の光測距装置。
【請求項4】
前記参照光の強度は、パルス型に変化する、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の光測距装置。
【請求項5】
前記参照光の幅は、前記測距光の幅よりも広い、
請求項に記載の光測距装置。
【請求項6】
前記光送信手段は、前記測距光を所定の測距周期で繰り返し送信し、
前記変調手段は、前記測距周期毎に前記参照光を生成する、
請求項またはに記載の光測距装置。
【請求項7】
前記変調手段は、前記測距周期毎に、前記光測距装置からの距離が異なる前記測距範囲で前記参照光を生成する、
請求項に記載の光測距装置。
【請求項8】
前記変調手段は、生成順に、前記測距範囲が前記光測距装置から遠くなるように、または、前記測距範囲が前記光測距装置に近くなるように、前記参照光を生成する、
請求項に記載の光測距装置。
【請求項9】
光測距装置における光測距方法であって、
測定対象物に測距光を送信し、
前記送信した測距光により前記測定対象物から反射した反射光を受信し、
測距範囲に応じて光源を強度変調した参照光を生成し、
前記受信した反射光と前記生成した参照光とを干渉させて受信信号を生成し、
前記送信した測距光と前記生成した受信信号とに基づいて、前記測定対象物までの距離を算出
前記参照光は、前記測距範囲が前記光測距装置から遠い場合の強度が、前記測距範囲が前記光測距装置から近い場合の強度よりも強い、
光測距方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光測距装置及び光測距方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光を用いて対象物までの距離を測定する光測距装置(LiDAR(Light Detection and Ranging)とも呼ばれる)が知られている。光測距装置は、遠隔から広範囲の対象物の距離を取得できるため、橋梁の歪み測定等によるインフラ設備の劣化診断及び予知や、山の斜面の歪み測定等による防災対策及び災害予知に利用されている。また、光測距装置は、暗闇でも広範囲にわたって障害物や不審物を検出及び特定できるため、空港の監視等、セキュリティ及び監視にも利用されている。さらに、光測距装置は、自動運転用のセンサーとしても注目され始めている。
【0003】
関連する技術として、例えば特許文献1が知られている。特許文献1には、ToF(Time of Flight)方式の光測距装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-202610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、関連する技術の光測距装置では、ToF方式が採用されている。ToF方式では、光パルスを送信した後、対象物から反射した反射パルスの受信を検知するまでの時間により、対象物の距離を測定する。しかしながら、関連する技術では、測定条件によっては所望の受信感度で測定することが困難な場合があるという問題がある。
【0006】
本開示は、このような課題に鑑み、高感度化を図ることが可能な光測距装置及び光測距方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る光測距装置は、測定対象物に測距光を送信する光送信手段と、前記送信した測距光により前記測定対象物から反射した反射光を受信する光受信手段と、測距範囲に応じて光源を強度変調した参照光を生成する変調手段と、前記受信した反射光と前記生成した参照光とを干渉させて受信信号を生成する検波手段と、前記送信した測距光と前記生成した受信信号とに基づいて、前記測定対象物までの距離を算出する距離算出手段と、を備えるものである。
【0008】
本開示に係る光測距方法は、測定対象物に測距光を送信し、前記送信した測距光により前記測定対象物から反射した反射光を受信し、測距範囲に応じて光源を強度変調した参照光を生成し、前記受信した反射光と前記生成した参照光とを干渉させて受信信号を生成し、前記送信した測距光と前記生成した受信信号とに基づいて、前記測定対象物までの距離を算出するものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、高感度化を図ることが可能な光測距装置及び光測距方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ToF方式の測距原理を説明するための図である。
図2】基本例の光測距装置の構成例を示す構成図である。
図3】基本例の光測距装置における信号例を示すタイミングチャートである。
図4】実施の形態に係る光測距装置の概要を示す構成図である。
図5】実施の形態1に係る光測距装置の構成例を示す構成図である。
図6】実施の形態1に係る光測距装置における信号例を示すタイミングチャートである。
図7】比較例の光測距装置における信号例を示すタイミングチャートである。
図8】実施の形態2に係る光測距装置における信号例を示すタイミングチャートである。
図9】実施の形態3に係る光測距装置における信号例を示すタイミングチャートである。
図10】実施の形態4に係る光測距装置における信号例を示すタイミングチャートである。
図11】実施の形態5に係る光測距装置における信号例を示すタイミングチャートである。
図12】実施の形態6に係る光測距装置における信号例を示すタイミングチャートである。
図13】実施の形態6に係る光測距装置における信号例を示すタイミングチャートである。
図14】実施の形態7に係る光測距装置における信号例を示すタイミングチャートである。
図15】実施の形態8に係る光測距装置における信号例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。各図面においては、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。なお、構成図(ブロック図)に付された矢印は説明のための例示であり、信号の種類や方向を限定するものではない。
【0012】
(基本例の検討)
まず、実施の形態の基本となるToF方式の測距原理と、基本例の光測距装置について説明する。図1は、ToF方式の測距原理を示している。図1に示すように、ToF方式では、光測距装置が、送信光パルスを含む測距光を送信し、測定対象物から反射した反射光を受信し、送信光パルスの送信時刻と反射光に含まれる受信光パルスの到着時刻(受信時刻)とに基づいて、光測距装置から測定対象物までの距離Rを測定する。
【0013】
図1に示すように、光測距装置は、例えば、測距周期Tpでパルス幅Twの送信光パルスを繰り返し送信する。測距周期やパルス幅は、測定用途や光測距装置の性能等に応じて設定される。例えば、パルス幅Twは数十nsである。送信光パルスの立ち上がり時刻T0から受信光パルスの立ち上がり時刻T1までのリターンパルス遅延時間をTdとすると、距離Rは次の式(1)で求められる。ここで、Cは光速であり、リターンパルス遅延時間Tdは約6.6ns/mの遅延時間となる。
【数1】
【0014】
図2は、基本例の光測距装置の構成を示している。基本例の光測距装置900は、コヒーレント検波を用いたToF方式のLiDAR装置である。図2に示すように、基本例の光測距装置900は、光源装置101、光測距パルス変調信号生成部102、光変調器103、光送信部104、光受信部105、コヒーレント光受信機106、ADC107、BPF108、タイミング抽出部109、距離算出部110を備えている。
【0015】
例えば、光源装置101、光測距パルス変調信号生成部102、光変調器103は、光測距パルスを生成する光測距パルス生成部であり、光測距パルス生成部と光送信部104は、光測距装置900の送信部(送信側)である。また、光受信部105、コヒーレント光受信機106、ADC107、BPF108、タイミング抽出部109、距離算出部110は、光測距装置900の受信部(受信側)である。
【0016】
光源装置101は、送信光パルスを生成するための光源r0(例えば周波数f0)を生成するレーザ等の光源装置である。光測距パルス変調信号生成部102は、送信光パルスを生成するために光源r0を変調する変調信号m0を生成する。また、光測距パルス変調信号生成部102は、送信光パルスを生成する(変調をかける)タイミングで送信トリガ信号Tgを出力する。
【0017】
光変調器103は、変調信号m0に基づき、光源r0に強度変調ならびに位相変調をかけた送信光パルスを生成し、送信光パルスを含む送信光信号p0を出力する。例えば、光変調器103は、変調信号m0(I、Q)に基づいて光源r0に位相変調をかけることで、所定の周波数オフセットを有する送信光パルスを生成する。光変調器103は、例えば、MZ(Mach-Zehnder)型IQ光変調器である。
【0018】
光送信部104は、送信光パルスを含む送信光信号p0を測距信号光として送信する。光送信部104は、レンズ等の送信光学系であり、送信光信号p0を平行光として測定対象物へ放射する。光受信部105は、測定対象物から反射した反射光を受信し、受信光パルスを含む受信光信号p1を出力する。光受信部105は、光送信部104と同様に、レンズ等の受信光学系である。なお、光送信部104及び光受信部105は、それぞれ独立した光学系により構成してもよいし、光送信部104及び光受信部105を含む光送受信ブロックとして、同一の光学系により構成してもよい。
【0019】
この例では、送信側の光源装置101の光を分岐して、受信光信号p1と干渉させるための参照光r1とする。なお、受信側に光源装置を設けて、受信側の光源装置が送信側の光源r0と同じ周波数(例えばf0)の参照光r1を生成してもよい。
【0020】
コヒーレント光受信機(コヒーレント検波器)106は、受信光パルスを含む受信光信号p1と参照光r1を干渉させて、受信信号m1を生成(検波)する。受信信号m1は、参照光r1に対し同相成分の信号(m1(I))と直交成分の信号(m1(Q))を含むIQ受信信号である。
【0021】
コヒーレント光受信機106は、光干渉系106a及び光/電変換器106bを有する。光干渉系106aは、受信光信号p1と参照光r1を干渉させて、同相成分の光信号p2(I)と直交成分の光信号p2(Q)を含む干渉光信号p2を生成する。光/電変換器106bは、干渉光信号p2の同相成分及び直交成分をそれぞれ光電変換して受信信号m1を生成する。
【0022】
なお、コヒーレント光受信機106には、一般的なデジタルコヒーレント光通信で用いられる90°ハイブリットミキサーおよびバランストレシーバーからなるコヒーレント光受信機を用いることが可能であり、これにより光通信と同様な原理で、送信側から送った信号を受信側で復調(コヒーレント検波)することが可能となる。
【0023】
ADC(Analog-to-Digital Converter)107は、光電変換された受信信号m1をAD変換するAD変換器である。BPF(Band Pass Filter)108は、AD変換された受信信号m1の周波数に基づき、受信信号の受信光パルス部分のみを抽出する。なお、所定の周波数に限らず、所定の信号強度に基づいて、受信光パルスを抽出してもよい。
【0024】
タイミング抽出部109は、BPF108により抽出された信号の立ち上がりタイミングから、受信光パルスの受信時刻(到達時刻)を特定する。距離算出部110は、送信光パルスの送信時刻と受信光パルスの受信時刻から測定対象物の距離を算出する。距離算出部110は、送信光パルスの送信タイミングを示す送信トリガ信号Tgの時刻と受信光パルスの立ち上がりタイミングの時刻との時間差に基づき、測定対象物の距離を算出する。
【0025】
図3は、基本例の光測距装置900における信号の例を示している。図3に示すように、送信側の光源装置101は、光周波数f0の光源r0を生成する。
【0026】
光変調器103は、変調信号m0にしたがって送信光パルスptを生成する。例えば、生成される送信光パルスptは、変調信号m0により位相が単調増加する光信号となり、この光信号の周波数は光源の周波数f0に周波数オフセットfoffsetを加えたf0+foffsetとなる。光送信部104は、生成された送信光パルスptを含む送信光信号p0を送信する。
【0027】
一方、受信側では、上記したように、送信側の光源装置101の光を分岐して光周波数f0の参照光r1とする。このため、基本例では、参照光r1は光源r0と同様に常に一定の強度となる。
【0028】
光受信部105は、受信光パルスprを含む受信光信号p1を受信する。例えば、理想的な受信信号として、送信側と同じ光周波数の光信号を受信する。すなわち、受信光パルスの光周波数はf0+foffsetである。
【0029】
コヒーレント光受信機106の光干渉系106aは、デジタルコヒーレント光通信で用いられる一般的なコヒーレントIQ受信の原理に従って、受信光信号p1と参照光r1を干渉させ、さらに、光/電変換器106bにより光電変換を行い、増幅することで受信信号m1を生成する。コヒーレント光受信機106から出力される受信信号m1(I)及びm1(Q)は、送信側の変調信号m0(I)及びm0(Q)と同じ波形となる。
【0030】
光電変換及び増幅された受信信号m1の光強度は、図3に示すように、受信光パルスprと同じタイミングで一定レベルのパルス波形となる。BPF108は、受信信号m1の周波数に基づき、受信信号の受信光パルス部分のみを抽出し、タイミング抽出部109は、抽出された受信光パルス部分の信号の立ち上がりから、受信光パルスの受信時刻を特定する。距離算出部110は、送信光パルスptの送信時刻と、受信光パルスprの受信時刻から測定対象物の距離を算出する。
【0031】
ここで、光測距装置の受信側(受信機)の受信感度について検討する。図3では、受信光信号p1(受信光パルスpr)の光強度を一定として示しているが、測定環境によって受信光信号p1の強度は変動する。例えば、光測距装置から遠く離れた対象物の距離を測定する場合、受信光信号p1の強度は大きく減衰する。受信光信号p1と参照光r1から得られる受信信号m1の電流値I及びIは、次の式(2)及び式(3)で表される。
【数2】
【数3】
【0032】
式(2)及び式(3)において、Rは光/電変換器106bの感度、Pは受信光信号p1の強度、PLOは参照光r1の強度、θは受信光信号p1の位相変調、θは受信光信号p1と参照光r1の位相揺らぎの差である。式(2)及び式(3)から、受信光信号p1の強度P及び参照光r1の強度PLOと、受信信号m1の増幅後の電圧との関係は、次の式(4)となる。すなわち、受信信号m1の電圧レベルVampは、P及びPLOを乗算した値の1/2乗に比例する。
【数4】
【0033】
式(4)において、Pは測定条件によって決まる値であるため、受信信号の振幅はPLOの大きさに依存する。このため、PLOを増大することで受信感度を向上することが可能となる。一方、PLOを大きくするためには大電力を消費する光増幅器(例えば光/電変換器に含まれる)が必要となるため、消費電力が増大するという問題が生じる。そこで、実施の形態では、コヒーレント検波を用いたToF方式の光測距装置において、消費電力の増大を抑えつつ、受信機の高感度化を図ることを可能とする。
【0034】
(実施の形態の概要)
図4は、実施の形態に係る光測距装置の概要を示している。図4に示すように、実施の形態に係る光測距装置10は、光送信部11、光受信部12、変調部13、検波部14、距離算出部15を備えている。
【0035】
光送信部11は、測定対象物に測距光を送信する。光受信部12は、送信した測距光により測定対象物から反射した反射光を受信する。変調部13は、測距範囲に応じて光源を強度変調した参照光を生成する。検波部14は、受信した反射光と強度変調により生成した参照光とを干渉させて受信信号を生成する。距離算出部15は、送信した測距光と生成した受信信号とに基づいて、測定対象物までの距離を算出する。
【0036】
このように、実施の形態では、参照光を測距範囲に応じて強度変調し、変調した参照光と受信光とを干渉させて受信信号を生成する。これにより、受信機の高感度化を図ることができる。例えば、光測距装置から測距範囲が遠い場合や所定の測距範囲の場合に、参照光の強度を強くすることで、必要な感度を得ることができる。また、参照光の平均パワーを一定とし、強度変調前の光源のパワーと同じにすることにより、大電力を消費する光増幅器を用いなくても、受信感度を向上することができ、更なる長距離測距が可能となる。
【0037】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して実施の形態1について説明する。本実施の形態では、参照光をパルス化する例について説明する。
【0038】
図5は、本実施の形態に係る光測距装置の構成を示している。光測距装置100は、基本例と同様に、コヒーレント検波を用いたToF方式のLiDAR装置である。図5に示すように、本実施の形態に係る光測距装置100は、基本例の構成に加えて、参照光変調信号生成部201、参照光変調器202を備えている。
【0039】
参照光変調信号生成部201は、参照光を生成するために光源r0を強度変調する変調信号m2を生成する。参照光変調信号生成部201は、送信光パルスが生成されてから(送信トリガ信号Tgから)所定のタイミングで、参照光r1が所定の強度となるように変調信号m2を生成する。
【0040】
参照光変調器202は、変調信号m2に基づき、光源r0に強度変調をかけて参照光r1を生成する。例えば、参照光変調器202は、後述のように測距範囲に応じて、所定のタイミングで、所定の強度及び所定の幅を有するパルスの参照光r1を生成する。変調をかける光源r0は、上記のように、送信側の光源装置101から分岐した光を用いてもよいし、受信側の光源装置から出力される光を用いてもよい。なお、参照光変調器202は、強度変調可能な変調器であればよく、具体的な構成は特に限定されない。
【0041】
図6は、本実施の形態に係る光測距装置100における信号の例を示している。基本例と同様、光測距装置100の送信側において、光源装置101は、光周波数f0の光源r0を生成し、光変調器103は、変調信号m0にしたがって、光周波数f0+foffsetの送信光パルスptを生成する。
【0042】
一方、光測距装置100の受信側において、参照光変調器202は、変調信号m2にしたがって光源r0を強度変調し、参照光r1を生成する。参照光r1の光周波数は、送信側の光源r0と同じf0である。本実施の形態では、光源r0を強度変調することで、参照光r1をパルス化し、ピークパワーを増大させる。すなわち、参照光r1の強度は、パルス型に変化する。また、参照光r1の平均パワーは、一定とし、実施の形態適用前の基本例の参照光r1のパワーと同じとする。すなわち、測距周期Tp(あるいは複数の測距周期Tp)において、参照光r1の平均パワーは、基本例の参照光r1のパワー(強度変調前の光源のパワー)と同じである。
【0043】
この例では、測距周期Tp毎に、1つのパルス化された参照光r1(参照光パルスr1_pと呼ぶ)を生成する。参照光パルスr1_pは、測距周期Tp内における所定の測距範囲(測距期間)Trに応じて生成される。測距範囲Trは、光測距装置100からの対象物の距離を測定する範囲であり、測距周期Tp内の第1の距離(第1のタイミング)から第2の距離(第2のタイミング)の範囲である。測距範囲Trは、受信光パルスprの受信を待ち受ける(受信可能な)範囲であり、送信光パルスptの生成(送信)からの経過時間により特定される範囲であるとも言える。また、参照光パルスr1_pのパルス幅は、送信光パルス(または受信光パルス)のパルス幅Twよりも広く、例えば、送信光パルスの2倍以上である。
【0044】
例えば、測距周期Tp毎(送信光パルスの送信毎)に、光測距装置100からの距離が異なる測距範囲Trで参照光パルスr1_pを生成する。例えば、測距周期Tp毎に測定(生成)する順に、測距周期Tp内で測定可能な最小値から最大値の間で、測距範囲Trが光測距装置100から遠くなるように、または、測距範囲Trが光測距装置100に近くなるように、参照光パルスr1_pを生成する。これにより、近距離(短距離)から遠距離(長距離)の全ての範囲で測定対象物の距離を測定できる。
【0045】
基本例と同様に、光受信部105が、光周波数f0+foffsetの受信光パルスprを含む受信光信号p1を受信すると、コヒーレント光受信機106は、受信光パルスprと参照光パルスr1_pを干渉させて、受信信号m1を生成する。強度変調された参照光r1を用いることで、参照光r1の強度に応じて受信信号m1の信号レベルが増大する。このため、測定対象物の距離が遠く、受信光パルスprの強度が小さい場合でも、参照光r1の強度により受信信号m1の信号レベルを大きくすることで、受信感度を向上することができる。
【0046】
参照光パルスr1_pの平均パワーとパルス幅の関係から、参照光パルスr1_pの強度を設定できる。このため、参照光パルスr1_pのパルス幅を狭くするにしたがって参照光の強度を強くし、感度を向上できるものの、測定可能な範囲が狭くなるため、全ての範囲を測定するための測定回数が増加する。一方、参照光パルスr1_pのパルス幅を広くするにしたがって測定可能な範囲が広くなり、測定回数を減らすことができるものの、参照光の強度が弱くなるため、感度が低下する。したがって、許容される感度と測定回数を考慮して、参照光パルスのパルス幅を設定することが好ましい。
【0047】
以上のように、本実施の形態では、測距範囲に応じて参照光を強度変調することによりパルス化し、パルス化した参照光を用いて受信信号を生成することで、測距範囲に応じて受信感度を向上することができる。例えば、測定毎に測距範囲を変えながら複数回測定を行うことで、全ての範囲の距離を測定することができる。また、測距範囲に応じて参照光をパルス化することにより、参照光の平均パワーを一定のまま(基本例と同じパワーのまま)とすることができ、光増幅器の電力を抑えつつ高感度化を図ることができる。
【0048】
(実施の形態2)
以下、図面を参照して実施の形態2について説明する。本実施の形態では、実施の形態1と同様に参照光をパルス化し、さらに、測定毎に参照光パルスをオーバーラップさせる例について説明する。なお、光測距装置の構成は、実施の形態1と同様である。
【0049】
図7は、実施の形態1に係る光測距装置に基づいた比較例の参照光を示している。図7に示すように、比較例では、pt1~pt3の順に送信光パルスを送信し、参照光変調器202は、送信光パルスの送信毎に、測距範囲Trを遠距離(長距離)側にずらしながら、参照光パルスr1_p1~r1_p3を生成する。
【0050】
例えば、測距周期Tp内に所定間隔の測距範囲Tr0~Tr8を設定し、測距範囲Tr0~Tr8に合わせて参照光パルスを生成する。例えば、送信光パルス(受信光パルス)のパルス幅は、設定した各測距範囲Tr(測距範囲単位)と同じであり、参照光パルスのパルス幅は、送信光パルスのパルス幅(測距範囲単位)の2倍である。
【0051】
図7の例では、まず、送信光パルスpt1の送信後、測距範囲Tr0~Tr1で参照光パルスr1_p1を生成し、次に、送信光パルスpt2の送信後、測距範囲Tr0~Tr1から2測距範囲単位ずれた測距範囲Tr2~Tr3で参照光パルスr1_p2を生成する。さらに、送信光パルスpt3の送信後、測距範囲Tr2~Tr3から2測距範囲単位ずれた測距範囲Tr4~Tr5で参照光パルスr1_p3を生成する。
【0052】
この例では、送信光パルスの送信毎(測定毎)に、測距範囲Trを2測距範囲単位(送信光パルスのパルス幅の2倍=参照光パルスのパルス幅)ずらしながら参照光パルスを生成している。この場合、測定順(生成順)の前後で測距周期Tpにおける参照光パルスの範囲(測距範囲)は重ならず、前回の参照光パルスと(前回の次の)次回の参照光パルスとの間に境目が生じる。例えば、参照光パルスr1_p1と参照光パルスr1_p2では、測距範囲Tr1と測距範囲Tr2の間に境目が生じ、例えば、参照光パルスr1_p2と参照光パルスr1_p3では、測距範囲Tr3と測距範囲Tr4の間に境目が生じる。
【0053】
このため、比較例では、この参照光パルスの境目(測距範囲の境目)のタイミングで、受信光パルスを受信すると、正常に受信信号を生成することができない。図7の例では、送信光パルスpt1~pt3に対して受信光パルスpr1~pr3を受信し、受信光パルスpr1~pr3が測距範囲Tr1と測距範囲Tr2の境目にまたがっている。すなわち、測距範囲Tr1の中間から測距範囲Tr2の中間にかけて、受信光パルスを受信している。測距範囲Tr1と測距範囲Tr2の間は、参照光パルスr1_p1と参照光パルスr1_p2の境目である。このため、参照光パルスr1_p2(またはr1_p1)と受信光パルスpr2(またはpr1)とを干渉させても、受信信号を生成することができない。本実施の形態では、このような場合でも、正常に受信信号を生成可能とする。
【0054】
図8は、本実施の形態に係る光測距装置の参照光の例を示している。図8に示すように、本実施の形態では、参照光変調器202は、送信光パルスpt1~pt3の送信毎に、測距範囲Trを遠距離側に比較例よりも小さい範囲(時間)でずらしながら参照光を生成する。
【0055】
図8の例では、まず、送信光パルスpt1の送信後、測距範囲Tr0~Tr1で参照光パルスr1_p1を生成し、次に、送信光パルスpt2の送信後、測距範囲Tr0~Tr1から1測距範囲単位ずれたTr1~Tr2で参照光パルスr1_p2を生成する。さらに、送信光パルスpt3の送信後、測距範囲Tr1~Tr2から1測距範囲単位ずれたTr2~Tr3で参照光パルスr1_p3を生成する。
【0056】
この例では、送信光パルスの送信毎(測定毎)に、測距範囲Trを1測距範囲単位(送信光パルスのパルス幅=参照光パルスのパルス幅の1/2)ずらしながら参照光パルスを生成している。つまり、測定順(生成順)の前後で測距周期Tpにおける参照光パルスの範囲(測距範囲)がオーバーラップしている。オーバーラップする幅は、例えば、1測距範囲単位(送信光パルス(受信光パルス)のパルス幅)である。参照光パルスの範囲で受信光パルスを受信できるように、少なくとも、オーバーラップする幅は送信光パルス(受信光パルス)以上であることが好ましい。
【0057】
図8の例では、参照光パルスr1_p1と参照光パルスr1_p2は、測距範囲Tr1でオーバーラップし、参照光パルスr1_p2と参照光パルスr1_p3は、測距範囲Tr2でオーバーラップしている。このため、受信光パルスpr1~pr3を測距範囲Tr1と測距範囲Tr2の境目にまたがって受信した場合でも、参照光パルスr1_p2と受信光パルスpr2とを干渉させることで、正常に受信信号m1を生成することができる。
【0058】
以上のように、本実施の形態では、測定毎(測距範囲毎)に、オーバーラップさせながら参照光をパルス化する。これにより、どのタイミングで受信光パルスを受信した場合でも、受信信号の生成が可能となる。例えば、測距範囲の境目で受信光パルスを受信した場合でも、確実に測距を行うことができる。
【0059】
(実施の形態3)
以下、図面を参照して実施の形態3について説明する。本実施の形態では、実施の形態1と同様に参照光をパルス化し、さらに、参照光パルスの強度を測距範囲に応じて可変する例について説明する。なお、光測距装置の構成は、実施の形態1と同様である。
【0060】
図9は、本実施の形態に係る光測距装置の参照光の例を示している。図9は、送信光パルスpt1により近距離(短距離)を測定し、送信光パルスpt2により近距離よりも遠い中距離を測定し、送信光パルスptにより中距離よりも遠い遠距離(長距離)を測定する例である。
【0061】
図9に示すように、本実施の形態では、参照光変調器202は、測定する距離(測距範囲)に応じて参照光の強度を可変にし、測定する距離が長くなるにしたがって参照光の強度を強くする。すなわち、測距範囲が光測距装置から遠い場合の参照光の強度は、測距範囲が光測距装置から近い場合の参照光の強度よりも強い。また、近距離から遠距離までの全体の測定における参照光の平均パワーは、実施の形態1と同様、一定のままとする。
【0062】
例えば、近距離の測距範囲Tr0~Tr1で測定する場合、第1の強度の参照光パルスr1_p1を生成する。また、中距離の測距範囲Tr3~Tr4で測定する場合、第1の強度よりも強い第2の強度の参照光パルスr1_p2を生成する。さらに、遠距離の測距範囲Tr6~Tr7で測定する場合、第2の強度よりも強い第3の強度の参照光パルスr1_p3を生成する。すなわち、測定する距離が長くなるにしたがって、受信光パルスの強度は弱くなるのに対して、参照光パルスの強度を強くする。例えば、測距周期毎に、参照光の強度を変えてもよい。なお、この例では、各参照光パルスのパルス幅は同じであり、実施の形態2と同様、例えば、送信光パルス(受信光パルス)のパルス幅の2倍である。
【0063】
以上のように、本実施の形態では、測定する距離に応じて参照光の強度を可変とし、測定する距離が長距離になるほど参照光の強度ほど強くする。これにより、測定する距離に応じて受信信号の信号レベルが小さくなることを抑えることができ、受信感度を向上することができる。また、参照光の平均パワーを一定としたままで、長距離ほど高感度化することが可能となる。
【0064】
(実施の形態4)
以下、図面を参照して実施の形態4について説明する。本実施の形態では、実施の形態1と同様に参照光をパルス化し、さらに、参照光パルスの強度を特定の測距範囲において可変する例について説明する。なお、光測距装置の構成は、実施の形態1と同様である。
【0065】
図10は、本実施の形態に係る光測距装置の参照光の例を示している。図10は、図9と同様、送信光パルスpt1、pt2、pt3に対し、近距離、中距離、遠距離の測定対象物における信号の例である。
【0066】
図10に示すように、本実施の形態では、参照光変調器202は、測定する距離(測距範囲)に応じて参照光の強度を可変にし、測定する距離が特定の距離の場合に参照光の強度を強くする。すなわち、特定の測距範囲における参照光の強度が、他の測距範囲における参照光の強度よりも強い。また、近距離から遠距離までの全体の測定における参照光の平均パワーは、実施の形態1と同様、一定のままとする。例えば、中距離の測距範囲Tr3~Tr4で測定する場合に参照光パルスr1_pを生成し、その他の距離(測距範囲)では、参照光パルスを生成(出力)しない。すなわち、特定の距離(中距離)を測定する場合にのみ参照光の強度を強くする。なお、その他の距離を測定する場合に、特定の距離における参照光よりも弱い強度の参照光を生成してもよい。
【0067】
以上のように、本実施の形態では、測定する距離に応じて参照光の強度を可変し、測定する距離が特定の距離(例えば中距離)の場合にのみ参照光の強度を強くし、その他の距離(近距離や長距離)では消光させる。すなわち、特定の距離を測定する場合にのみ参照光のパワーを集中し、その他の距離では測定を行わない。これにより、特定の距離の感度を向上させて、受信信号のSNRを稼ぐことができるため、特定の距離の測距精度を向上することができる。
【0068】
(実施の形態5)
以下、図面を参照して実施の形態5について説明する。本実施の形態では、実施の形態1と同様に参照光をパルス化し、さらに、参照光パルスの強度及びパルス幅を測距範囲に応じて可変する例について説明する。なお、光測距装置の構成は、実施の形態1と同様である。
【0069】
図11は、本実施の形態に係る光測距装置の参照光の例を示している。図11は、図9と同様に、送信光パルスpt1、pt2、pt3により、近距離、中距離、遠距離を測定する例である。
【0070】
図11に示すように、本実施の形態では、参照光変調器202は、測定する距離(測距範囲)に応じて参照光の強度を可変にし、測定する距離が長くなるにしたがって参照光の強度を強くし、かつ、パルス幅を狭くする。すなわち、測距範囲が光測距装置から遠い場合の参照光は、測距範囲が光測距装置から近い場合の参照光よりも、強度が強く、パルス幅が狭い。なお、特定の測距範囲における幅を、他の測距範囲における幅よりも狭くしてもよい。また、近距離から遠距離までの測定における参照光の平均パワーは、実施の形態1と同様、一定のままとする。
【0071】
例えば、近距離を測定する場合、第1の強度、かつ、第1のパルス幅の参照光パルスr1_p1を生成する。この例では、参照光パルスr1_p1は、測距範囲Tr0~Tr3で生成され、第1のパルス幅は、送信光パルス(受信光パルス)のパルス幅の4倍である。また、中距離を測定する場合、第1の強度よりも強い第2の強度、かつ、第1のパルス幅よりも狭い第2のパルス幅の参照光パルスr1_p2を生成する。この例では、参照光パルスr1_p2は、測距範囲Tr3~Tr4で生成され、第2のパルス幅は、送信光パルス(受信光パルス)のパルス幅の2倍である。さらに、長距離を測定する場合、第2の強度よりも強い第3の強度、かつ、第2のパルス幅よりも狭い第3のパルス幅の参照光パルスr1_p3を生成する。この例では、参照光パルスr1_p3は、測距範囲Tr6の中間~Tr7の中間で生成され、第3のパルス幅は、送信光パルス(受信光パルス)のパルス幅と同じである。
【0072】
以上のように、本実施の形態では、測定する距離に応じて参照光の強度だけでなくパルス幅も可変とする。測定する距離が近距離になるほど参照光の強度を弱く、かつ、パルス幅を広くし、測定する距離が長距離になるほど参照光の強度を強く、かつ、パルス幅を狭くすることで、長距離を測定する感度を更に向上できる。長距離ほどパルス幅を狭くすることで、参照光の平均パワーを一定としたままで、長距離ほど高感度化することが可能となる。また、近距離ほどパルス幅を広くすることで、近距離における測定回数を減らすことができる。
【0073】
(実施の形態6)
以下、図面を参照して実施の形態6について説明する。本実施の形態では、実施の形態1と同様に参照光をパルス化し、さらに、測距周期内に複数の参照光パルスを含む例について説明する。なお、光測距装置の構成は、実施の形態1と同様である。
【0074】
図12は、本実施の形態に係る光測距装置の参照光の例を示している。図12に示すように、本実施の形態では、参照光変調器202は、送信光パルスを繰り返し送信する測距周期Tp(フレームとも呼ぶ)毎に複数の参照光パルスを生成する。この例では、測距周期Tp内に2つの参照光パルスを生成する。例えば、参照光パルスのパルス幅は、送信光パルス(受信光パルス)の3倍である。送信光パルスpt1の送信後、参照光パルスr1_p1及びr1_p2を生成し、送信光パルスpt2の送信後、参照光パルスr1_p3及びr1_p4を生成し、送信光パルスpt3の送信後、参照光パルスr1_p5及びr1_p6を生成する。なお、測距周期Tp内に、2つに限らず、任意の数の参照光パルスを生成してもよいし、強度やパルス幅の異なる参照光を生成してもよい。
【0075】
また、図13に示すように、実施の形態2と同様に、フレーム(測距周期Tp)内の複数の参照光パルスを、前後のフレームでオーバーラップさせてもよい。図13では、測定1回目のフレームで、参照光パルスr1_p1及びr1_p2を生成し、測定2回目のフレームで、参照光パルスr1_p及びr1_pを生成する。例えば、測定1回目の参照光パルスr1_p1の後端部と、測定2回目の参照光パルスr1_p3の前端部をオーバーラップさせ、測定2回目の参照光パルスr1_p3の後端部と、測定1回目の参照光パルスr1_p2の前端部をオーバーラップさせ、測定1回目の参照光パルスr1_p2の後端部と、測定2回目の参照光パルスr1_p4の前端部をオーバーラップさせる。
【0076】
以上のように、本実施の形態では、送信光パルスの1フレーム(測距周期)内において複数の参照光パルスを生成する。これにより、1フレームで複数の測距範囲を測定することができるため、全ての範囲を測距するための測定回数(フレーム数)を減らすことができ、測定の高速化を図ることが可能となる。また、フレーム毎の複数の参照光パルスをオーバーラップさせることで、どのタイミングで受信光を受信した場合でも確実に受信信号を生成することができる。
【0077】
(実施の形態7)
以下、図面を参照して実施の形態7について説明する。本実施の形態では、参照光のパルスの強度を測距範囲に応じて直線状のテーパー型にする例について説明する。なお、光測距装置の構成は、実施の形態1と同様である。
【0078】
図14は、本実施の形態に係る光測距装置の参照光の例を示している。図14に示すように、本実施の形態では、参照光変調器202は、光源r0を強度変調し、送信光パルスの送信毎に(測距周期内で)、測距範囲に応じて参照光の強度を連続的に可変にする。具体的には、測定する距離が長くなる(測距範囲が遠くなる)にしたがって参照光の強度を直線状に徐々に増大させる。すなわち、参照光の強度は、直線状のテーパー型(線形テーパー型)に変化する。例えば、参照光の強度は、測定する距離(測距範囲の距離)に比例している。また、参照光の平均パワーは、実施の形態1等と同様に、一定である。
【0079】
以上のように、本実施の形態では、測定する距離に応じて参照光の強度を連続的に可変とし、測定する距離が長距離になるほど強くする。特に、参照光の強度を距離にしたがって直線状のテーパー型に増大させる。これにより、測定する距離に応じて受信信号の信号レベルが小さくなることを抑えることができ、受信感度を向上することができる。また、1回の測定において、参照光の平均パワーを一定としたままで、長距離ほど高感度化することが可能となる。
【0080】
(実施の形態8)
以下、図面を参照して実施の形態8について説明する。本実施の形態では、参照光のパルスの強度を測距範囲に応じて曲線状のテーパー型にする例について説明する。なお、光測距装置の構成は、実施の形態1と同様である。
【0081】
図15は、本実施の形態に係る光測距装置の参照光の例を示している。図15に示すように、本実施の形態では、参照光変調器202は、光源r0を強度変調し、送信光パルスの送信毎に(測距周期内で)、測距範囲に応じて強度を連続的に可変にする。具体的には、測定する距離が長くなる(測距範囲が遠くなる)にしたがって参照光の強度を曲線状に徐々に増大させる。すなわち、参照光の強度は、曲線状のテーパー型(放物線テーパー型、指数関数型テーパー型)に変化する。例えば、参照光の強度は、測定する距離(測距範囲の距離)の2乗に比例している。また、参照光の平均パワーは、実施の形態1等と同様に、一定である。
【0082】
本実施の形態では、参照光の強度を、測定する距離に対し2乗特性で増大させる。具体的には、LiDAR方程式の減衰特性に合わせて、参照光の強度を増大させる。LiDAR方程式は、光測距装置における送信光に対する受信光の特性を示しており、受信光の電力Pは、次の式(5)で表される。
【数5】
【0083】
式(5)において、Pは送信光の強度、Rは対象物までの距離、Aは受信開口面積、Kは送信受信光学系の全効率、λは受信波長、T(R)は大気の光透過率、δは対象物表面の散乱係数である。式(5)のように、受信光の電力は、距離の2乗に反比例する。この距離に応じた受信光の減衰特性をキャンセルするように、参照光の強度を可変にする。例えば、受信光の強度は、距離の2乗に反比例して減衰するため、参照光の強度を、距離の2乗に比例して増大させる。
【0084】
このような参照光を用いることで、測定する距離にかかわらず、受信信号の強度を一定に保つことができる。つまり、LiDAR方程式において距離の条件を考慮する必要がなくなり、その他の測定条件が同一であれば、受信信号の強度は一定となる。このことから、本実施の形態の参照光を用いて、受信信号の強度に応じて、距離以外の測定条件を検出できるようにしてもよい。例えば、対象物の表面がツルツル(滑らか)の場合とザラザラ(凸凹)の場合で対象物表面の散乱係数が変わるため、表面がザラザラであるほど反射光が拡散して受信光の強度が低下する。このため、受信信号の強度により、対象物の表面状態を検出してもよい。例えば、受信信号の強度を所定の閾値との比較結果に応じて、対象物の表面がザラザラであるか、またはツルツルであるかを判断してもよい。
【0085】
以上のように、本実施の形態では、測定する距離に応じて参照光の強度を連続的に可変とし、測定する距離が長距離になるほど強くする。特に、参照光の強度を距離にしたがって曲線状のテーパー型に増大させる。これにより、実施の形態7と同様に、長距離ほど高感度化することが可能となる。また、LiDAR方程式の受信光の減衰特性に合わせて参照光の強度を強くすることにより、同一反射条件であれば測距範囲に依らず受信信号の強度を一定にすることができる。これにより、距離以外の測定条件、例えば、対象物の表面状態等を検出することも可能となる。
【0086】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記の各実施の形態を適宜組み合わせて参照光を生成してもよい。例えば、実施の形態1~6のいずれかと、実施の形態7~8とを組み合わせて、参照光パルスの強度をテーパー状にしてもよい。
【0087】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上記実施の形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0088】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
測定対象物に測距光を送信する光送信手段と、
前記送信した測距光により前記測定対象物から反射した反射光を受信する光受信手段と、
測距範囲に応じて光源を強度変調した参照光を生成する変調手段と、
前記受信した反射光と前記生成した参照光とを干渉させて受信信号を生成する検波手段と、
前記送信した測距光と前記生成した受信信号とに基づいて、前記測定対象物までの距離を算出する距離算出手段と、
を備える、光測距装置。
(付記2)
前記参照光は、前記測距範囲が前記光測距装置から遠い場合の強度が、前記測距範囲が前記光測距装置から近い場合の強度よりも強い、
付記1に記載の光測距装置。
(付記3)
前記参照光は、特定の測距範囲における強度が、他の測距範囲における強度よりも強い、
付記1または2に記載の光測距装置。
(付記4)
前記参照光の平均パワーは、前記強度変調前の光源のパワーと同じである、
付記1乃至3のいずれか一項に記載の光測距装置。
(付記5)
前記参照光の強度は、パルス型に変化する、
付記1乃至4のいずれか一項に記載の光測距装置。
(付記6)
前記参照光の幅は、前記測距光の幅よりも広い、
付記5に記載の光測距装置。
(付記7)
前記光送信手段は、前記測距光を所定の測距周期で繰り返し送信し、
前記変調手段は、前記測距周期毎に前記参照光を生成する、
付記5または6に記載の光測距装置。
(付記8)
前記変調手段は、前記測距周期毎に、前記光測距装置からの距離が異なる前記測距範囲で前記参照光を生成する、
付記7に記載の光測距装置。
(付記9)
前記変調手段は、生成順に、前記測距範囲が前記光測距装置から遠くなるように、または、前記測距範囲が前記光測距装置に近くなるように、前記参照光を生成する、
付記8に記載の光測距装置。
(付記10)
前記変調手段は、前記生成順の前後の参照光における前記測距範囲がオーバーラップするように、前記参照光を生成する、
付記9に記載の光測距装置。
(付記11)
前記参照光の強度は、前記測距周期毎に異なる、
付記7乃至10のいずれか一項に記載の光測距装置。
(付記12)
前記参照光の幅は、前記測距範囲に応じて異なる、
付記7乃至11のいずれか一項に記載の光測距装置。
(付記13)
前記参照光は、前記測距範囲が前記光測距装置から遠い場合の幅が、前記測距範囲が前記光測距装置から近い場合の幅よりも狭い、
付記12に記載の光測距装置。
(付記14)
前記参照光は、特定の測距範囲における幅が、他の測距範囲における幅よりも狭い、
付記12または13に記載の光測距装置。
(付記15)
前記変調手段は、前記測距周期毎に複数の前記参照光を生成する、
付記7乃至14のいずれか一項に記載の光測距装置。
(付記16)
前記参照光の強度は、前記測距範囲に応じて連続的に変化する、
付記1乃至4のいずれか一項に記載の光測距装置。
(付記17)
前記参照光の強度は、直線状のテーパー型に変化する、
付記16に記載の光測距装置。
(付記18)
前記参照光の強度は、前記光測距装置からの距離に比例して変化する、
付記17に記載の光測距装置。
(付記19)
前記参照光の強度は、曲線状のテーパー型に強度が変化する、
付記16に記載の光測距装置。
(付記20)
前記参照光の強度は、前記光測距装置からの距離に対する前記反射光の減衰特性に合わせて変化する、
付記19に記載の光測距装置。
(付記21)
前記参照光の強度は、前記光測距装置からの距離の2乗に比例して変化する、
付記19または20に記載の光測距装置。
(付記22)
測定対象物に測距光を送信し、
前記送信した測距光により前記測定対象物から反射した反射光を受信し、
測距範囲に応じて光源を強度変調した参照光を生成し、
前記受信した反射光と前記生成した参照光とを干渉させて受信信号を生成し、
前記送信した測距光と前記生成した受信信号とに基づいて、前記測定対象物までの距離を算出する、
光測距方法。
【符号の説明】
【0089】
10 光測距装置
11 光送信部
12 光受信部
13 変調部
14 検波部
15 距離算出部
100 光測距装置
101 光源装置
102 光測距パルス変調信号生成部
103 光変調器
104 光送信部
105 光受信部
106 コヒーレント光受信機
106a 光干渉系
106b 光/電変換器
107 ADC
108 BPF
109 タイミング抽出部
110 距離算出部
201 参照光変調信号生成部
202 参照光変調器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15