(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】加工装置及び加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/352 20140101AFI20241106BHJP
B23K 26/364 20140101ALI20241106BHJP
B23K 26/067 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B23K26/352
B23K26/364
B23K26/067
(21)【出願番号】P 2023563375
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(86)【国際出願番号】 JP2021042957
(87)【国際公開番号】W WO2023095198
(87)【国際公開日】2023-06-01
【審査請求日】2024-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【氏名又は名称】江上 達夫
(72)【発明者】
【氏名】川辺 喜雄
(72)【発明者】
【氏名】小澤 稔彦
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-509864(JP,A)
【文献】特開2018-51626(JP,A)
【文献】特表2020-518458(JP,A)
【文献】国際公開第2019/082309(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
H01S 3/00 - 3/02,
3/04 - 3/0959,
3/098 - 3/102,
3/105 - 3/131,
3/136 - 3/213,
3/23 - 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を用いて物体の表面にリブレット加工を行う加工装置であって、
前記光源からの前記光を分岐することで生成される複数の加工光をそれぞれ異なる入射方向から前記物体に照射することで、前記物体の表面に干渉縞を形成する第1光学系と、
前記複数の加工光のうち前記物体に照射される少なくとも二つの加工光の間に強度差、位相差及び偏光差のうち少なくとも一つの差を与えて、前記物体の表面に形成されるリブレットの形状を調整する第2光学系と
を備える加工装置。
【請求項2】
前記第2光学系は、前記少なくとも一つの差を変更して前記リブレットの形状を制御する
請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記第2光学系は、前記少なくとも一つの差を調整して前記物体の表面に形成される前記干渉縞の暗部における最小フルエンスを、前記物体の表面を除去できるフルエンスに設定する
請求項1又は2に記載の加工装置。
【請求項4】
前記物体は、各加工光のフルエンスが所定閾値よりも小さい場合におけるフルエンスと加工量との第1関係が、各加工光のフルエンスが前記所定閾値よりも大きい場合におけるフルエンスと加工量との第2関係とは異なるものとなるという特性を有しており、
前記第2関係における前記加工光のフルエンスの増加分に対する加工量の増加分の割合は、前記第1関係における前記加工光のフルエンスの増加分に対する加工量の増加分の割合よりも大きく、
前記第2光学系は、前記干渉縞の暗部に達する加工光の最小フルエンスが前記所定閾値以上となるように、前記少なくとも一つの差を設定する
請求項1又は2に記載の加工装置。
【請求項5】
前記干渉縞の明部での加工により前記リブレットの凹部を形成し、
前記干渉縞の暗部での加工により前記リブレットの凸部を形成する
請求項4に記載の加工装置。
【請求項6】
前記物体は、前記第2光学系からの前記少なくとも二つの加工光によってアブレーション加工される
請求項1又は2に記載の加工装置。
【請求項7】
前記第2光学系は、前記光源からの前記光を分岐して前記複数の加工光を生成し、
前記第2光学系で生成された前記複数の加工光は、前記第1光学系に入射する
請求項1又は2に記載の加工装置。
【請求項8】
前記第2光学系は、前記光源からの前記光を分岐して前記複数の加工光を生成するときに、前記複数の加工光のうち前記少なくとも二つの加工光の間に与える強度差、位相差及び偏光差のうち少なくとも一つの差を変更する
請求項7に記載の加工装置。
【請求項9】
前記第2光学系は、前記少なくとも二つの加工光のうちの少なくとも一つの強度を調整可能な強度調整部材を備える
請求項1又は2に記載の加工装置。
【請求項10】
前記強度調整部材は、前記少なくとも二つの加工光のうちの一つの強度の調整度合いを変更可能である
請求項9に記載の加工装置。
【請求項11】
前記第2光学系は、前記少なくとも二つの加工光のうちの少なくとも一つの位相を調整可能な位相調整部材を備える
請求項1又は2に記載の加工装置。
【請求項12】
前記位相調整部材は、前記少なくとも二つの加工光のうちの一つの位相の調整度合いを変更可能である
請求項11に記載の加工装置。
【請求項13】
前記第2光学系は、前記少なくとも二つの加工光のうちの少なくとも一つの偏光状態を調整可能な偏光調整部材を備える
請求項1又は2に記載の加工装置。
【請求項14】
前記偏光調整部材は、前記少なくとも二つの加工光のうちの一つの偏光状態の調整度合いを変更可能である
請求項13に記載の加工装置。
【請求項15】
前記物体は、各加工光のフルエンスが所定閾値よりも小さい場合におけるフルエンスと加工量との第1関係が、各加工光のフルエンスが前記所定閾値よりも大きい場合におけるフルエンスと加工量との第2関係とは異なるものとなるという特性を有しており、
前記第2関係における前記加工光のフルエンスの増加分に対する加工量の増加分の割合は、前記第1関係における前記加工光のフルエンスの増加分に対する加工量の増加分の割合よりも大きく、
前記第2光学系は、前記干渉縞の暗部に達する加工光の最小フルエンスが前記所定閾値以上となるように、前記少なくとも一つの差を設定する
請求項3に記載の加工装置。
【請求項16】
前記干渉縞の明部での加工により前記リブレットの凹部を形成し、
前記干渉縞の暗部での加工により前記リブレットの凸部を形成する
請求項15に記載の加工装置。
【請求項17】
光源からの光を用いて物体の表面にリブレット加工を行う加工方法であって、
前記光源からの前記光を分岐して複数の加工光を生成することと、
前記複数の加工光をそれぞれ異なる入射方向から前記物体に照射することと、
前記物体の表面に干渉縞を形成することと、
前記複数の加工光のうち前記物体に照射される少なくとも二つの加工光の間に強度差、位相差及び偏光差のうち少なくとも一つの差を与えて、前記物体の表面に形成されるリブレットの形状を調整することと
を含む加工方法。
【請求項18】
前記調整することは、前記少なくとも一つの差を調整して前記物体の表面に形成される前記干渉縞の暗部における最小フルエンスを、前記物体の表面を除去できるフルエンスに設定することを含む
請求項17に記載の加工方法。
【請求項19】
前記物体は、各加工光のフルエンスが所定閾値よりも小さい場合におけるフルエンスと加工量との第1関係が、各加工光のフルエンスが前記所定閾値よりも大きい場合におけるフルエンスと加工量との第2関係とは異なるものとなるという特性を有しており、
前記第2関係における前記加工光のフルエンスの増加分に対する加工量の増加分の割合は、前記第1関係における前記加工光のフルエンスの増加分に対する加工量の増加分の割合よりも大きく、
前記調整することは、前記干渉縞の暗部に達する加工光の最小フルエンスが前記所定閾値以上となるように、前記少なくとも一つの差を設定することを含む
請求項17又は18に記載の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、物体を加工する加工装置及び加工方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、航空機の機体等の物体の表面にリブレットが形成されるように、物体を加工可能な加工装置が記載されている。このような加工装置は、物体を適切に加工することが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によれば、光源からの光を用いて物体の表面にリブレット加工を行う加工装置であって、前記光源からの前記光を分岐することで生成される複数の加工光をそれぞれ異なる入射方向から前記物体に照射することで、前記物体の表面に干渉縞を形成する第1光学系と、前記複数の加工光のうち前記物体に照射される少なくとも二つの加工光の間に強度差、位相差及び偏光差のうち少なくとも一つの差を与えて、前記物体の表面に形成されるリブレットの形状を調整する第2光学系とを備える加工装置が提供される。
【0005】
第2の態様によれば、光源からの光を用いて物体の表面にリブレット加工を行う加工方法であって、前記光源からの前記光を分岐して複数の加工光を生成することと、前記複数の加工光をそれぞれ異なる入射方向から前記物体に照射することと、前記物体の表面に干渉縞を形成することと、前記複数の加工光のうち前記物体に照射される少なくとも二つの加工光の間に強度差、位相差及び偏光差のうち少なくとも一つの差を与えて、前記物体の表面に形成されるリブレットの形状を調整することとを含む加工方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施形態の加工システムの全体構造を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の加工システムのシステム構成を示すシステム構成図である。
【
図3】
図3(a)は、リブレット構造を示す斜視図であり、
図3(b)は、リブレット構造を示す断面図(
図3(a)のIII-III’断面図)であり、
図3(c)は、リブレット構造を示す上面図である。
【
図5】
図5(a)は、少なくとも二つの加工光の間に光学特性に関する差分が与えられない比較例における干渉光のフルエンス分布と、比較例の干渉光によって形成されるリブレット構造の断面の形状を示し、
図5(b)は、少なくとも二つの加工光の間に光学特性に関する差分が与えられない本実施形態における干渉光のフルエンス分布と、本実施形態の干渉光によって形成されるリブレット構造の断面の形状を示す。
【
図6】
図6は、光のフルエンスとワークの加工量との関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、少なくとも二つの加工光の間に光学特性に関する差分が与えられない比較例における干渉光のフルエンス分布と、比較例の干渉光によって形成されるリブレット構造の断面の形状を示す。
【
図8】
図8は、少なくとも二つの加工光の間に光学特性に関する差分が与えられない本実施形態における干渉光のフルエンス分布と、本実施形態の干渉光によって形成されるリブレット構造の断面の形状を示す。
【
図9】
図9は、少なくとも二つの加工光の間に強度差を与える加工光学系の構造を示す断面図である。
【
図11】
図11は、
図9に示す加工光学系を介して発生する干渉光のフルエンス分布と、
図9に示す加工光学系を用いて形成されるリブレット構造の断面の形状を示す。
【
図12】
図12は、少なくとも二つの加工光の間に位相差を与える加工光学系の構造を示す断面図である。
【
図13】
図13は、
図12に示す加工光学系を介して発生する干渉光のフルエンス分布と、
図12に示す加工光学系を用いて形成されるリブレット構造の断面の形状を示す。
【
図14】
図14は、少なくとも二つの加工光の間に偏光差を与える加工光学系の構造を示す断面図である。
【
図15】
図15は、
図14に示す加工光学系を介して発生する干渉光のフルエンス分布と、
図12に示す加工光学系を用いて形成されるリブレット構造の断面の形状を示す。
【
図16】
図16は、第1偏光条件を満たす二つの加工光の電磁場ベクトルの先端の軌跡を示す。
【
図17】
図17は、第2偏光条件を満たす二つの加工光の電磁場ベクトルの先端の軌跡を示す。
【
図18】
図18は、第3偏光条件を満たす二つの加工光の電磁場ベクトルの先端の軌跡を示す。
【
図19】
図19は、少なくとも二つの加工光の間に強度差を与える加工光学系の第1変形例の構造を示す断面図である。
【
図20】
図20は、少なくとも二つの加工光の間に強度差を与える加工光学系の第2変形例の構造を示す断面図である。
【
図21】
図21は、少なくとも二つの加工光の間に位相差を与える加工光学系の変形例を介して発生する干渉光のフルエンス分布と、当該干渉光によって形成されるリブレット構造の断面の形状を示す。
【
図22】
図22は、少なくとも二つの加工光の間に偏光差を与える加工光学系の変形例の構造を示す断面図である。
【
図23】
図23は、第1変形例における加工システムのシステム構成を示すシステム構成図である。
【
図24】
図24は、照明光学系が強度分布を変更する前の加工光の強度分布と、照明光学系が強度分布を変更した後の加工光の強度分布とを示している。
【
図25】
図25は、第1変形例における第1の照明光学系の構造を示す断面図である。
【
図26】
図26は、第1変形例における第1の照明光学系が加工光の強度分布を変更する場合の加工光の強度分布を示す。
【
図27】
図27は、第1変形例における第2の照明光学系の構造を示す断面図である。
【
図28】
図28は、第1変形例における第2の照明光学系が加工光の強度分布を変更する場合の加工光の強度分布を示す。
【
図29】
図29は、第1変形例における加工システムのシステム構成の他の例を示すシステム構成図である。
【
図30】
図30は、第2変形例における加工システムのシステム構成を示すシステム構成図である。
【
図31】
図31は、気体を冷媒として用いる冷却装置の一例を示す。
【
図32】
図32は、液体を冷媒として用いる冷却装置の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、加工装置及び加工方法の実施形態について説明する。以下では、物体の一例であるワークWを加工可能な加工システムSYSを用いて、加工装置及び加工方法の実施形態を説明する。但し、本発明が以下に説明する実施形態に限定されることはない。
【0008】
また、以下の説明では、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸から定義されるXYZ直交座標系を用いて、加工システムSYSを構成する各種構成要素の位置関係について説明する。尚、以下の説明では、説明の便宜上、X軸方向及びY軸方向のそれぞれが水平方向(つまり、水平面内の所定方向)であり、Z軸方向が鉛直方向(つまり、水平面に直交する方向であり、実質的には上下方向)であるものとする。また、X軸、Y軸及びZ軸周りの回転方向(言い換えれば、傾斜方向)を、それぞれ、θX方向、θY方向及びθZ方向と称する。ここで、Z軸方向を重力方向としてもよい。また、XY平面を水平方向としてもよい。
【0009】
(1)加工システムSYSの構造
初めに、
図1及び
図2を参照しながら、本実施形態の加工システムSYSの構造について説明する。
図1は、本実施形態の加工システムSYSの構造を模式的に示す断面図である。
図2は、本実施形態の加工システムSYSのシステム構成を示すシステム構成図である。
【0010】
図1及び
図2に示すように、加工システムSYSは、加工装置1と、加工光源2(
図1では不図示)と、制御装置3(
図1では不図示)とを備えている。
【0011】
加工装置1は、制御装置3の制御下で、加工対象物(母材と称されてもよい)であるワークWを加工可能である。ワークWは、例えば、金属であってもよいし、合金(例えば、ジュラルミン等)であってもよいし、半導体(例えば、シリコン)であってもよいし、樹脂であってもよいし、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)等の複合材料であってもよいし、塗料(一例として基材に塗布された塗料層)であってもよいし、ガラスであってもよいし、それ以外の任意の材料から構成される物体であってもよい。
【0012】
ワークWの表面は、ワークWとは異なる材質の膜でコーティングされていてもよい。この場合、ワークWの表面にコーティングされた膜の表面が、加工装置1によって加工される面であってもよい。この場合であっても、加工装置1は、ワークWを加工する(つまり、膜でコーティングされたワークWを加工する)とみなしてもよい。
【0013】
加工装置1は、ワークWを加工するために、ワークWに対して加工光ELを照射する。加工光ELは、ワークWに照射されることでワークWを加工可能である限りは、どのような種類の光であってもよい。本実施形態では、加工光ELがレーザ光である例を用いて説明を進めるが、加工光ELは、レーザ光とは異なる種類の光であってもよい。更に、加工光ELの波長は、ワークWに照射されることでワークWを加工可能である限りは、どのような波長であってもよい。例えば、加工光ELは、可視光であってもよいし、不可視光(例えば、赤外光、紫外光及び極端紫外光等の少なくとも一つ)であってもよい。加工光ELは、パルス光(例えば、発光時間がピコ秒以下のパルス光)を含む。但し、加工光ELは、パルス光を含んでいなくてもよい。言い換えると、加工光ELは、連続光であってもよい。
【0014】
加工光ELは、加工光ELを生成する加工光源2から、不図示の光伝搬部材(例えば、光ファイバ及びミラーの少なくとも一方)を介して加工装置1に供給される。加工装置1は、加工光源2から供給される加工光ELを、ワークWに照射する。上述したように加工光ELがレーザ光である場合には、加工光源2は、レーザ光源(例えば、レーザダイオード(LD:Laser Diode)等の半導体レーザ)を含んでいてもよい。レーザ光源は、ファイバ・レーザ、CO2レーザ、YAGレーザ及びエキシマレーザ等の少なくとも一つを含んでいてもよい。但し、加工光ELがレーザ光でない場合には、加工光源2は、任意の光源(例えば、LED(Light Emitting Diode)及び放電ランプ等の少なくとも一つ)を含んでいてもよい。
【0015】
加工装置1は、ワークWに加工光ELを照射することでワークWの一部を除去する除去加工を行ってもよい。例えば、加工装置1は、熱加工の原理を利用して、ワークWの一部を除去する除去加工を行ってもよい。具体的には、ワークWの表面に加工光ELが照射されると、ワークWのうち加工光ELが照射された照射部分及びワークWのうちの照射部分と近接する近接部分に、加工光ELのエネルギーが伝達される。加工光ELのエネルギーに起因した熱が伝達されると、加工光ELのエネルギーに起因した熱によって、ワークWの照射部分及び近接部分を構成する材料が溶融する。溶融した材料は、液滴となって飛散する。或いは、溶融した材料は、加工光ELのエネルギーに起因した熱によって蒸発する。その結果、ワークWの照射部分及び近接部分が除去される。尚、熱加工が行われる場合には、加工光ELは、発光時間がミリ秒以上のパルス光又は連続光を含んでいてもよい。
【0016】
一方で、加工光ELの特性によっては、加工装置1は、非熱加工(例えば、アブレーション加工)の原理を利用して、ワークWの一部を除去する除去加工を行ってもよい。つまり、加工装置1は、ワークWに対して非熱加工(例えば、アブレーション加工)を行ってもよい。例えば、光子密度(言い換えれば、フルエンス)が高い光が加工光ELとして用いられると、ワークWの照射部分及び近接部分を構成する材料は、瞬時に蒸発及び飛散する。つまり、ワークWの照射部分及び近接部分を構成する材料は、ワークWの熱拡散時間よりも十分に短い時間内に蒸発及び飛散する。この場合、ワークWの照射部分及び近接部分を構成する材料は、イオン、原子、ラジカル、分子、クラスタ及び固体片のうちの少なくとも一つとして、ワークWから放出されてもよい。尚、非熱加工が行われる場合には、加工光ELは、発光時間がピコ秒以下(或いは、場合によっては、ナノ秒又はフェムト秒以下)のパルス光を含んでいてもよい。発光時間がピコ秒以下(或いは、場合によっては、ナノ秒又はフェムト秒以下)のパルス光が加工光ELとして用いられる場合、ワークWの照射部分及び近接部分を構成する材料は、溶融状態を経ずに昇華することもある。このため、加工光ELのエネルギーに起因した熱によるワークWへの影響を極力抑制しながら、ワークWを加工可能となる。
【0017】
本実施形態では、加工装置1は、除去加工を行うことで、リブレット構造RBをワークWの表面に形成してもよい。リブレット構造RBを形成する加工は、リブレット加工と称されてもよい。つまり、加工装置1は、ワークWの表面にリブレット加工を行ってもよい。
【0018】
リブレット構造RBは、ワークWの表面の流体に対する抵抗(特に、摩擦抵抗及び乱流摩擦抵抗の少なくとも一方)を低減可能な凹凸構造を含んでいてもよい。このため、リブレット構造RBは、流体中に設置される(言い換えれば、位置する)部材を有するワークWに形成されてもよい。言い換えれば、リブレット構造RBは、流体に対して相対的に移動する部材を有するワークWに形成されてもよい。尚、ここでいう「流体」とは、ワークWの表面に対して流れている媒質(例えば、気体及び液体の少なくとも一方)を意味する。例えば、媒質自体が静止している状況下でワークWの表面が媒質に対して移動する場合には、この媒質を流体と称してもよい。尚、媒質が静止している状態は、所定の基準物(例えば、地表面)に対して媒質が移動していない状態を意味していてもよい。
【0019】
このようなワークWの表面の流体に対する抵抗(特に、摩擦抵抗及び乱流摩擦抵抗の少なくとも一方)を低減可能な構造を含むリブレット構造RBがワークWに形成される場合には、ワークWは、流体に対して相対的に移動しやすくなる。このため、流体に対するワークWの移動を妨げる抵抗が低減されるがゆえに、省エネルギー化につながる。つまり、環境にやさしいワークWの製造が可能となる。例えば、流体に対して相対的に移動するワークWの一例として、動翼と称されてもよいタービンブレードがあげられる。タービンブレードにリブレット構造RBが形成される場合には、タービンブレードの移動(典型的には、回転)を妨げる抵抗が低減されるがゆえに、タービンブレードを用いた装置(例えば、タービン)の省エネルギー化につながる。つまり、環境にやさしいタービンブレード(タービン)の製造が可能となる。
【0020】
尚、リブレット構造RBは、タービンブレードとは異なるワークWに形成されてもよい。リブレット構造RBが形成されるワークWの一例として、静翼と称されてもよいタービンベーン、ファン、インペラ、プロペラ及びポンプの少なくとも一つがあげられる。ファンは、送風機等に用いられ、気体の流れを形成する部材(典型的には、回転体)である。インペラは、例えば、ポンプに用いられる部材であって、ポンプが流体を送り出す(或いは、吸い出す)力を発生させるように回転可能な羽根車である。プロペラは、例えば、エンジン及びモータの少なくとも一方を含む原動機から出力される回転力を、飛行機及び船舶等の少なくとも一つを含む移動体の推進力に変換する部材(典型的には、回転体)である。リブレット構造RBが形成されるワークWの他の一例として、飛行機及び船舶等の少なくとも一つを含む移動体の筐体(例えば、機体又は船体)があげられる。
【0021】
ここで、
図3(a)から
図3(b)を参照しながら、リブレット構造RBについて説明する。
図3(a)は、リブレット構造RBを示す斜視図であり、
図3(b)は、リブレット構造RBを示す断面図(
図3(a)のIII-III’断面図)であり、
図3(c)は、リブレット構造RBを示す上面図である。
【0022】
図3(a)から
図3(c)に示すように、リブレット構造RBは、ワークWの表面に沿った第1の方向に沿って延びる凸状構造体81が、ワークWの表面に沿っており且つ第1の方向に交差する第2の方向に沿って複数配列された構造を含んでいてもよい。つまり、リブレット構造RBは、それぞれが第1の方向に沿って延びるように形成される複数の凸状構造体81が、第2の方向に沿って並んだ構造を含んでいてもよい。
図3(a)から
図3(c)に示す例では、リブレット構造RBは、X軸方向に沿って延びる凸状構造体81が、Y軸方向に沿って複数配列された構造を含んでいる。
【0023】
凸状構造体81は、凸状構造体81が延びる方向及び凸状構造体81が配列される方向の双方に交差する方向に沿って突き出た構造体である。凸状構造体81は、ワークWの表面から突き出た構造体である。
図3(a)から
図3(c)に示す例では、凸状構造体81は、Z軸方向に沿って突き出た構造体である。尚、凸状構造体81は、ワークWの表面に対して突起となる突起形状の構造を含んでいてもよい。凸状構造体81は、ワークWの表面に対して凸となる凸形状の構造を含んでいてもよい。凸状構造体81は、ワークWの表面に対して山となる山形状の構造を含んでいてもよい。
【0024】
隣り合う凸状構造体81の間には、周囲と比較して窪んだ溝構造82が形成される。このため、リブレット構造RBは、ワークWの表面に沿った第1の方向に沿って延びる溝構造82が、ワークWの表面に沿っており且つ第1の方向に交差する第2の方向に沿って複数配列された構造を含んでいてもよい。つまり、リブレット構造RBは、それぞれが第1の方向に沿って延びるように形成される複数の溝構造82が、第2の方向に沿って並んだ構造を含んでいてもよい。
図3(a)から
図3(c)に示す例では、リブレット構造RBは、X軸方向に沿って延びる溝構造82が、Y軸方向に沿って複数配列された構造を含んでいる。尚、溝構造82は、溝状構造体と称されてもよい。
【0025】
尚、凸状構造体81は、溝構造82から突き出た構造であるとみなしてもよい。凸状構造体81は、隣り合う二つの溝構造82の間に、突起形状の構造、凸形状の構造及び山形状の構造の少なくとも一つを形成する構造であるとみなしてもよい。溝構造82は、凸状構造体81から窪んだ構造であるとみなしてもよい。溝構造82は、隣り合う二つの凸状構造体81の間に、溝形状の構造を形成する構造であるとみなしてもよい。尚、溝構造82は、溝状構造体と称されてもよい。
【0026】
複数の凸状構造体81の少なくとも一つの高さH_rbは、凸状構造体81のピッチP_rbに応じて定まる高さに設定されていてもよい。例えば、複数の凸状構造体81の少なくとも一つの高さH_rbは、凸状構造体81のピッチP_rb以下であってもよい。例えば、複数の凸状構造体81の少なくとも一つの高さH_rbは、凸状構造体81のピッチP_rbの半分以下であってもよい。一例として、凸状構造体81のピッチP_rbは、5マイクロメートルより大きく且つ200マイクロメートルよりも小さくてもよい。この場合、複数の凸状構造体81の少なくとも一つの高さH_rbは、2.5マイクロメートルより大きく且つ100マイクロメートルよりも小さくてもよい。
【0027】
再び
図1及び
図2において、ワークWを加工するために、加工装置1は、加工ヘッド11と、ヘッド駆動系12と、ステージ13と、ステージ駆動系14とを備える。
【0028】
加工ヘッド11は、加工光源2からの加工光ELをワークWに照射する。加工光ELをワークWに照射するために、加工ヘッド11は、加工光学系111を備える。加工ヘッド11は、加工光学系111を介して、加工光ELをワークWに照射する。
【0029】
本実施形態では、加工光学系111は、ワークWの表面に干渉縞ISを形成することで、ワークWの表面にリブレット構造RBを形成してもよい。具体的には、加工光学系111は、加工光源2からの加工光ELを分岐することで生成される複数の加工光EL(
図1に示す例では、二つの加工光EL)を、それぞれ異なる入射方向からワークWに照射する。その結果、複数の加工光ELが干渉することで、干渉光が発生する。この場合、加工光学系111は、実質的には、複数の加工光ELが干渉することで発生する干渉光をワークWに照射しているとみなしてもよい。その結果、ワークWの表面には、干渉光に起因した干渉縞ISが形成される。尚、以下の説明では、加工光源2が生成する加工光ELを、“加工光EL0”と称し、且つ、加工光学系111がワークWに照射する加工光ELを、“加工光EL1”と称することで、両者を区別する。加工光学系111が加工光EL0を分岐することで生成される加工光EL1は、“分岐光”と称されてもよい。また、加工光学系111の詳細な構造については、
図5等を参照しながら後に詳述するため、ここでの説明を省略する。
【0030】
干渉縞ISの一例が
図4に示されている。
図4に示すように、干渉縞ISは、明部ILと暗部IDとを有する縞であってもよい。明部ILは、干渉縞ISのうちのフルエンスが所定量よりも大きくなる(つまり、高くなる)部分を含んでいてもよい。明部ILは、干渉縞ISを形成する干渉光のうちのフルエンスが所定量よりも大きくなる光部分が照射される部分を含んでいてもよい。暗部IDは、干渉縞ISのうちのフルエンスが所定量よりも小さくなる(つまり、低くなる)部分を含んでいてもよい。暗部IDは、干渉縞ISを形成する干渉光のうちのフルエンスが所定量よりも小さくなる光部分が照射される部分を含んでいてもよい。また、明部ILでのフルエンスは暗部IDでのフルエンスより大きくてもよい。
【0031】
図4は更に、干渉縞ISとリブレット構造RBとの関係を示している。
図4に示すように、明部ILは、主として上述した溝構造82を形成するために用いられてもよい。この場合、加工光学系111は、干渉縞ISに含まれる明部ILをワークWの表面に形成してワークWの一部を除去することで、ワークWの表面に、リブレット構造RBを構成する溝構造82を形成してもよい。加工光学系111は、干渉光のうちの明部ILを形成する光部分をワークWの表面に照射してワークWの一部を除去することで、ワークWの表面に溝構造82を形成してもよい。加工光学系111は、明部ILに到達する加工光EL1を用いて(つまり、加工光EL1のうちの明部ILに到達する光部分を用いて)ワークWの一部を除去することで、ワークWの表面に溝構造82を形成してもよい。この場合、干渉縞ISは、溝構造82が延びる方向(
図4に示す例では、X軸方向)に沿って延びる明部ILが、溝構造82が並ぶ方向(
図4に示す例では、Y軸方向)に沿って複数配列された縞を含んでいてもよい。つまり、干渉縞ISは、溝構造82が延びる方向(
図4に示す例では、X軸方向)に沿って延びる複数の明部ILが、溝構造82が並ぶ方向(
図4に示す例では、Y軸方向)に沿って並ぶ縞を含んでいてもよい。
【0032】
図4に示すように、暗部IDは、主として上述した凸状構造体81を形成するために用いられてもよい。この場合、加工光学系111は、干渉縞ISに含まれる暗部IDをワークWの表面に形成してワークWの一部を除去する(或いは、場合によっては、ワークWの一部を除去しない)ことで、ワークWの表面に、リブレット構造RBを構成する凸状構造体81を形成してもよい。加工光学系111は、干渉光のうちの暗部IDを形成する光部分をワークWの表面に照射してワークWの一部を除去することで、ワークWの表面に凸状構造体81を形成してもよい。加工光学系111は、暗部IDに到達する加工光EL1を用いて(つまり、加工光EL1のうちの暗部IDに到達する光部分を用いて)ワークWの一部を除去することで、ワークWの表面に凸状構造体81を形成してもよい。この場合、干渉縞ISは、凸状構造体81が延びる方向(
図4に示す例では、X軸方向)に沿って延びる暗部IDが、凸状構造体81が並ぶ方向(
図4に示す例では、Y軸方向)に沿って複数配列された縞を含んでいてもよい。つまり、干渉縞ISは、凸状構造体81が延びる方向(
図4に示す例では、X軸方向)に沿って延びる複数の暗部IDが、凸状構造体81が並ぶ方向(
図4に示す例では、Y軸方向)に沿って並ぶ縞を含んでいてもよい。
【0033】
再び
図1及び
図2において、ヘッド駆動系12は、制御装置3の制御下で、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の少なくとも一つに沿って加工ヘッド11を移動させる。尚、ヘッド駆動系12は、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の少なくとも一つに加えて又は代えて、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つに沿って加工ヘッド11を移動させてもよい。加工ヘッド11が移動すると、ステージ13(更には、ステージ13に載置されたワークW)と加工ヘッド11との位置関係が変わる。その結果、ワークW上で加工ヘッド11が干渉縞ISを形成する干渉領域IA(
図4参照)とステージ13及びワークWとの位置関係が変わる。つまり、ワークW上で干渉領域IAが移動する。
【0034】
ステージ13上には、ワークWが載置される。ステージ13は、ステージ13に載置されたワークWを保持しなくてもよい。つまり、ステージ13は、ステージ13に載置されたワークWに対して、当該ワークWを保持するための保持力を加えなくてもよい。或いは、ステージ13は、ステージ13に載置されたワークWを保持してもよい。つまり、ステージ13は、ステージ13に載置されたワークWに対して、当該ワークWを保持するための保持力を加えてもよい。例えば、ステージ13は、ワークWを真空吸着及び/又は静電吸着することで、ワークWを保持してもよい。或いは、ワークWを保持するための治具がワークWを保持し、ステージ13は、ワークWを保持した治具を保持してもよい。
【0035】
ステージ駆動系14は、制御装置3の制御下で、ステージ13を移動させる。具体的には、ステージ駆動系14は、加工ヘッド11に対してステージ13を移動させる。例えば、ステージ駆動系14は、制御装置3の制御下で、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つに沿ってステージ13を移動させてもよい。尚、ステージ13をθX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つに沿って移動させることは、ステージ13(更には、ステージ13に載置されたワークW)のX軸、Y軸及びZ軸の少なくとも一つの廻りの姿勢を変更することと等価であるとみなしてもよい。或いは、ステージ13をθX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つに沿って移動させることは、ステージ13をX軸、Y軸及びZ軸の少なくとも一つの廻りに回転(又は回転移動)させることと等価であるとみなしてもよい。
【0036】
ステージ13が移動すると、ステージ13(更には、ステージ13に載置されたワークW)と加工ヘッド11との位置関係が変わる。更には、ステージ13及びワークWと加工その結果、ワークW上で加工ヘッド11が干渉縞ISを形成する干渉領域IA(
図4参照)とステージ13及びワークWとの位置関係が変わる。つまり、ワークW上で干渉領域IAが移動する。
【0037】
制御装置3は、加工システムSYSの動作を制御する。例えば、制御装置3は、ワークWを加工するための加工制御情報を生成すると共に、生成した加工制御情報に従ってワークWが加工されるように、加工制御情報に基づいて、加工装置1を制御してもよい。つまり、制御装置3は、ワークWの加工を制御してもよい。
【0038】
制御装置3は、例えば、演算装置と記憶装置とを含んでいてもよい。演算装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit))の少なくとも一方を含んでいてもよい。制御装置3は、演算装置がコンピュータプログラムを実行することで、加工システムSYSの動作を制御する装置として機能する。このコンピュータプログラムは、制御装置3が行うべき後述する動作を制御装置3(例えば、演算装置)に行わせる(つまり、実行させる)ためのコンピュータプログラムである。つまり、このコンピュータプログラムは、加工システムSYSに後述する動作を行わせるように制御装置3を機能させるためのコンピュータプログラムである。演算装置が実行するコンピュータプログラムは、制御装置3が備える記憶装置(つまり、記録媒体)に記録されていてもよいし、制御装置3に内蔵された又は制御装置3に外付け可能な任意の記憶媒体(例えば、ハードディスクや半導体メモリ)に記録されていてもよい。或いは、演算装置は、実行するべきコンピュータプログラムを、ネットワークインタフェースを介して、制御装置3の外部の装置からダウンロードしてもよい。
【0039】
制御装置3は、加工システムSYSの内部に設けられていなくてもよい。例えば、制御装置3は、加工システムSYS外にサーバ等として設けられていてもよい。この場合、制御装置3と加工システムSYSとは、有線及び/又は無線のネットワーク(或いは、データバス及び/又は通信回線)で接続されていてもよい。有線のネットワークとして、例えばIEEE1394、RS-232x、RS-422、RS-423、RS-485及びUSBの少なくとも一つに代表されるシリアルバス方式のインタフェースを用いるネットワークが用いられてもよい。有線のネットワークとして、パラレルバス方式のインタフェースを用いるネットワークが用いられてもよい。有線のネットワークとして、10BASE-T、100BASE-TX及び1000BASE-Tの少なくとも一つに代表されるイーサネット(登録商標)に準拠したインタフェースを用いるネットワークが用いられてもよい。無線のネットワークとして、電波を用いたネットワークが用いられてもよい。電波を用いたネットワークの一例として、IEEE802.1xに準拠したネットワーク(例えば、無線LAN及びBluetooth(登録商標)の少なくとも一方)があげられる。無線のネットワークとして、赤外線を用いたネットワークが用いられてもよい。無線のネットワークとして、光通信を用いたネットワークが用いられてもよい。この場合、制御装置3と加工システムSYSとはネットワークを介して各種の情報の送受信が可能となるように構成されていてもよい。また、制御装置3は、ネットワークを介して加工システムSYSにコマンドや制御パラメータ等の情報を送信可能であってもよい。加工システムSYSは、制御装置3からのコマンドや制御パラメータ等の情報を、上記ネットワークを介して受信する受信装置を備えていてもよい。或いは、制御装置3が行う処理のうちの一部を行う第1制御装置が加工システムSYSの内部に設けられている一方で、制御装置3が行う処理のうちの他の一部を行う第2制御装置が加工システムSYSの外部に設けられていてもよい。
【0040】
制御装置3内には、演算装置がコンピュータプログラムを実行することで、機械学習によって構築可能な演算モデルが実装されてもよい。機械学習によって構築可能な演算モデルの一例として、例えば、ニューラルネットワークを含む演算モデル(いわゆる、人工知能(AI:Artificial Intelligence))があげられる。この場合、演算モデルの学習は、ニューラルネットワークのパラメータ(例えば、重み及びバイアスの少なくとも一つ)の学習を含んでいてもよい。制御装置3は、演算モデルを用いて、加工システムSYSの動作を制御してもよい。つまり、加工システムSYSの動作を制御する動作は、演算モデルを用いて加工システムSYSの動作を制御する動作を含んでいてもよい。尚、制御装置3には、教師データを用いたオフラインでの機械学習により構築済みの演算モデルが実装されてもよい。また、制御装置3に実装された演算モデルは、制御装置3上においてオンラインでの機械学習によって更新されてもよい。或いは、制御装置3は、制御装置3に実装されている演算モデルに加えて又は代えて、制御装置3の外部の装置(つまり、加工システムSYSの外部に設けられる装置)に実装された演算モデルを用いて、加工システムSYSの動作を制御してもよい。
【0041】
尚、演算装置が実行するコンピュータプログラムを記録する記録媒体としては、CD-ROM、CD-R、CD-RWやフレキシブルディスク、MO、DVD-ROM、DVD-RAM、DVD-R、DVD+R、DVD-RW、DVD+RW及びBlu-ray(登録商標)等の光ディスク、磁気テープ等の磁気媒体、光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ、及び、その他プログラムを格納可能な任意の媒体の少なくとも一つが用いられてもよい。記録媒体には、コンピュータプログラムを記録可能な機器(例えば、コンピュータプログラムがソフトウェア及びファームウェア等の少なくとも一方の形態で実行可能な状態に実装された汎用機器又は専用機器)が含まれていてもよい。更に、コンピュータプログラムに含まれる各処理や機能は、制御装置3(つまり、コンピュータ)がコンピュータプログラムを実行することで制御装置3内に実現される論理的な処理ブロックによって実現されてもよいし、制御装置3が備える所定のゲートアレイ(FPGA、ASIC)等のハードウェアによって実現されてもよいし、論理的な処理ブロックとハードウェアの一部の要素を実現する部分的ハードウェアモジュールとが混在する形式で実現してもよい。
【0042】
(2)加工光学系111
(2-1)加工光学系111の概要
続いて、ワークWの表面に干渉縞ISを形成する加工光学系111について説明する。上述したように、加工光学系111は、複数の加工光EL1をそれぞれ異なる入射方向からワークWに照射することで、干渉縞ISを形成する。例えば、加工光学系111は、二つの加工光EL1をそれぞれ異なる入射方向からワークWに照射することで、干渉縞ISを形成してもよい。例えば、加工光学系111は、三つの加工光EL1をそれぞれ異なる入射方向からワークWに照射することで、干渉縞ISを形成してもよい。例えば、加工光学系111は、四つの加工光EL1をそれぞれ異なる入射方向からワークWに照射することで、干渉縞ISを形成してもよい。例えば、加工光学系111は、五つの加工光EL1をそれぞれ異なる入射方向からワークWに照射することで、干渉縞ISを形成してもよい。例えば、加工光学系111は、六つの加工光EL1をそれぞれ異なる入射方向からワークWに照射することで、干渉縞ISを形成してもよい。例えば、加工光学系111は、七つ以上の(例えば、七つの、九つの、十一個の、十三個の、二十一個の又は二十三個の)加工光EL1をそれぞれ異なる入射方向からワークWに照射することで、干渉縞ISを形成してもよい。
【0043】
本実施形態では、加工光学系111は、複数の加工光EL1のうちの少なくとも二つの加工光EL1の間に、光学特性に関する差分を与えてもよい。つまり、加工光学系111は、少なくとも二つの加工光EL1の光学特性が異なるものとなるように、少なくとも二つの加工光EL1のうちの少なくとも一つの光学特性を調整してもよい。加工光学系111は、ワークWの表面での少なくとも二つの加工光EL1の光学特性が異なるものとなるように、少なくとも二つの加工光EL1のうちの少なくとも一つの光学特性を調整してもよい。
【0044】
少なくとも二つの加工光EL1の間に光学特性に関する差分が与えられる本実施形態では、少なくとも二つの加工光EL1の間に光学特性に関する差分が与えられない比較例と比較して、ワークWの表面での干渉縞ISを形成する干渉光のフルエンス分布が変わる。具体的には、
図5(a)は、比較例における干渉光のフルエンス分布を示しており、
図5(b)は、本実施形態における干渉光のフルエンス分布を示している。
図5(a)及び
図5(b)に示すように、本実施形態では、比較例と比較して、干渉光の最小フルエンスが高くなる。尚、最小フルエンスは、干渉縞ISの暗部IDにおける干渉光のフルエンスの最小値であってもよい。最小フルエンスは、干渉縞ISの暗部IDに到達する加工光EL1のフルエンスの最小値であってもよい。このように本実施形態の最小フルエンスが比較例の最小フルエンスよりも大きくなる理由の一つとして、少なくとも二つの加工光EL1の間に光学特性に関する差分を与えることで、干渉縞ISの形成に影響を与えない一方でフルエンス分布に影響を与える光成分を干渉光に与えるという光学的効果が発生することがあげられる。つまり、加工光学系111は、少なくとも二つの加工光EL1の間に光学特性に関する差分を与えることで、干渉縞ISの形成に影響を与えない一方でフルエンス分布に影響を与える光成分(いわゆる、干渉縞ISのフルエンス分布のDC成分)を干渉光に与えている。加工光学系111は、少なくとも二つの加工光EL1の間に光学特性に関する差分を与えることで、干渉縞ISの形成に影響を与えるフルエンス分布のコントラスト成分(つまり、干渉縞ISの濃淡(明暗)に影響を与える成分)に影響を与えることなく、干渉縞ISのフルエンス分布のDC成分)を干渉光に与えている。
【0045】
逆に言えば、加工光学系111は、干渉縞ISの形成に影響を与えない一方でフルエンス分布に影響を与える光成分を干渉光に与えるように、少なくとも二つの加工光EL1の間に光学特性に関する差分を与えてもよい。加工光学系111は、干渉縞ISの形成に影響を与えない一方で最小フルエンスを増加させる光成分を干渉光に与えるように、少なくとも二つの加工光EL1の間に光学特性に関する差分を与えてもよい。また、少なくとも二つの加工光EL1の間に与える光学特性に関する差分は、干渉縞ISの形成に影響を与えない一方でフルエンス分布に影響を与える光成分を干渉光に与えることが可能な適切な差分に設定されていてもよい。干渉縞ISの形成に影響を与えない一方でフルエンス分布に影響を与える光成分を干渉光に与えることが可能な適切な差分は、加工光EL1の特性、干渉光の特性、ワークWの特性及びリブレット構造RBの特性の少なくとも一つに基づいて決定されていてもよい。干渉縞ISの形成に影響を与えない一方でフルエンス分布に影響を与える光成分を干渉光に与えることが可能な差分は、干渉縞ISを形成することでワークWにリブレット構造RBを形成する実験又はシミュレーションの結果に基づいて決定されていてもよい。
【0046】
図5(a)は更に、
図5(a)に示すフルエンス分布を有する干渉光が形成する干渉縞ISによって形成されるリブレット構造RBの形状(特に、断面形状)を示している。
図5(b)は更に、
図5(b)に示すフルエンス分布を有する干渉光が形成する干渉縞ISによって形成されるリブレット構造RBの形状(特に、断面形状)を示している。
図5(a)に示すように、比較例において形成されるリブレット構造RBでは、凸状構造体81の先端の形状が平坦な形状になる可能性がある。というのも、上述したように、比較例では、最小フルエンスが相対的に小さい。このため、
図5(a)に示すように、比較例では、干渉縞ISの暗部IDの少なくとも一部のフルエンスが、ワークWを加工可能な(つまり、ワークWの一部を除去可能な)フルエンスの下限値TH_lowestよりも小さくなってしまう可能性が相対的に高くなる。その結果、ワークWのうちの干渉縞ISの暗部IDが形成される部分の少なくとも一部が加工されず、結果として、凸状構造体81の先端の形状が平坦な形状になる可能性が相対的に高くなる。リブレット構造RBの特性を考慮すると、凸状構造体81の先端の形状が平坦な形状である場合には、凸状構造体81の先端の形状がとがった形状である場合と比較して、ワークWの表面の流体に対する抵抗を低減する効果が薄れてしまう可能性がある。一方で、
図5(b)に示すように、本実施形態において形成されるリブレット構造RBでは、比較例と比較して、凸状構造体81の先端の形状が平坦な形状になる可能性は低い。というのも、上述したように、本実施形態では、最小フルエンスが相対的に大きい。このため、
図5(b)に示すように、本実施形態では、干渉縞ISの暗部IDの少なくとも一部のフルエンスが、ワークWを加工可能なフルエンスの下限値TH_lowestよりも小さくなってしまう可能性が相対的に低くなる。つまり、干渉縞ISの暗部IDの少なくとも一部のフルエンスが、ワークWを加工可能なフルエンスに設定される可能性が相対的に高くなる。その結果、ワークWのうちの干渉縞ISの暗部IDが形成される部分が加工され、結果として、凸状構造体81の先端の形状が理想的な形状(例えば、とがった形状)に近づく又は一致する可能性が相対的に高くなる。つまり、本実施形態では、比較例と比較して、リブレット構造RBの形状の精度が改善される。その結果、本実施形態では、ワークWの表面の流体に対する抵抗を低減する効果が相対的に高いリブレット構造RBが形成される可能性が相対的に高くなる。
【0047】
このように、本実施形態の加工装置1は、比較例と比較して、リブレット構造RBの形状を理想的な形状に近づける又は一致させることができる。加工装置1は、比較例と比較して、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成することができる。この場合、加工装置1は、少なくとも二つの加工光EL1の間に光学特性に関する差分を与えることで、ワークWに形成されるリブレット構造RBの形状が、比較例において形成されるリブレット構造RBの形状よりも理想的な形状に近い所定の形状になるように、リブレット構造RBの形状を調整しているとみなしてもよい。その結果、加工装置1は、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成するように、ワークWを適切に加工することができるという効果を享受することができる。
【0048】
更に、少なくとも二つの加工光EL1の間に与える光学特性に関する差分が変わると、干渉光のフルエンス分布が変わる。つまり、少なくとも二つの加工光EL1の間に与える光学特性に関する差分が変わると、ワークWに形成されるリブレット構造RBの形状が変わる。このため、加工装置1は、少なくとも二つの加工光EL1の間に与える光学特性に関する差分を変更することで、リブレット構造RBの形状を適宜調整(言い換えれば、制御又は変更)してもよい。その結果、加工装置1は、理想的な形状が変わる場合であっても、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成するように、ワークWを適切に加工することができるという効果を享受することができる。
【0049】
例えば、加工光学系111は、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成するように、少なくとも二つの加工光EL1の間に光学特性に関する差分を変更してもよい。少なくとも二つの加工光EL1の間に与える光学特性に関する差分は、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成することが可能な適切な差分に設定されていてもよい。理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成することが可能な適切な差分は、加工光EL1の特性、干渉光の特性、ワークWの特性及びリブレット構造RBの特性の少なくとも一つに基づいて決定されていてもよい。理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成することが可能な適切な差分は、干渉縞ISを形成することでワークWにリブレット構造RBを形成する実験又はシミュレーションの結果に基づいて決定されていてもよい。
【0050】
尚、干渉光の最小フルエンスがワークWを加工可能なフルエンスの下限値TH_lowest以上になることで上述した効果が適切に享受可能になることを考慮すれば、加工光学系111は、干渉光の最小フルエンスが下限値TH_lowest以上に設定されるように、少なくとも二つの加工光EL1の間に光学特性に関する差分を与えてもよい。加工光学系111は、干渉光の最小フルエンスが、ワークWを加工可能なフルエンスに設定されるように、少なくとも二つの加工光EL1の間に光学特性に関する差分を与えてもよい。少なくとも二つの加工光EL1の間に与える光学特性に関する差分は、干渉光の最小フルエンスを、ワークWを加工可能なフルエンスに設定することが可能な適切な差分に設定されていてもよい。その結果、上述した効果が適切に享受可能となる。
【0051】
ワークWの特性によっては、ワークWに照射される光のフルエンスとワークWの加工量(例えば、単位時間当たりの除去量であり、一例として、1パルスあたりの加工量)との関係が、フルエンスに依存して変動する可能性がある。例えば、ワークWの特性によっては、
図6に示すように、ワークWに照射される干渉光のフルエンス(或いは、干渉光を発生させる加工光EL1のフルエンス、以下、この段落において同じ)が所定閾値Fthよりも小さい場合におけるフルエンスとワークWの加工量との第1関係が、ワークWに照射される干渉光のフルエンスが所定閾値Fthよりも大きい場合におけるフルエンスとワークWの加工量との第2関係と異なるものとなる可能性がある。この場合、仮に
図7の上部に示すように干渉縞ISを形成する干渉光のフルエンスが、所定閾値Fthよりも小さい第1範囲及び所定閾値Fthよりも大きい第2範囲の双方にまたがるように変化する場合には、干渉光のうちの所定閾値Fthよりも小さいフルエンスを有する光部分が照射されるワークWの第1部分での加工量が、干渉光のうちの所定閾値Fthよりも大きいフルエンスを有する光部分が照射されるワークWの第2部分での加工量と異なるものとなってしまう。
図6に示す例では、第2関係におけるフルエンスの増加分に対する加工量の増加分の割合は、第1関係におけるフルエンスの増加分に対する加工量の増加分の割合よりも大きい。この場合、干渉光のうちの所定閾値Fthよりも小さいフルエンスを有する光部分が照射されるワークWの第1部分での加工量が、干渉光のうちの所定閾値Fthよりも大きいフルエンスを有する光部分が照射されるワークWの第2部分での加工量よりも少なくなってしまう。その結果、ワークWの第1部分での加工量が不足する及び/又はワークWの第2部分での加工量が過剰になる可能性がある。このため、ワークWに形成されるリブレット構造RBの形状の精度が悪化する可能性がある。例えば、
図7の下部に示すように、干渉光のうちの相対的にフルエンスが小さい光部分(例えば、暗部IDに照射される光部分)によって主として形成される凸状構造体81の先端の形状が平坦な形状になる可能性がある。
【0052】
このため、
図8の上部に示すように、加工光学系111は、干渉光の最小フルエンスが所定閾値Fth以上になるように、少なくとも二つの加工光EL1の間に光学特性に関する差分を与えてもよい。或いは、加工光学系111は、干渉光の最小フルエンスが所定閾値Fthに対して所定のマージンを加算することで得られる閾値以上になるように、少なくとも二つの加工光EL1の間に光学特性に関する差分を与えてもよい。つまり、加工光学系111は、干渉光の最小フルエンスが所定閾値Fthに基づいて設定される閾値以上になるように、少なくとも二つの加工光EL1の間に光学特性に関する差分を与えてもよい。この場合、
図8の下部に示すように、干渉光のうちの相対的にフルエンスが小さい光部分(例えば、暗部IDに照射される光部分)によって主として形成される凸状構造体81の先端の形状が理想的な形状になる可能性が相対的に高くなる。その結果、上述した効果が適切に享受可能となる。
【0053】
上述した効果を実現可能な光学特性の一例として、波パラメータがあげられる。波パラメータは、加工光ELの波としての性質を定量的に又は定性的に示すパラメータであってもよい。この場合、加工光学系111は、少なくとも二つの加工光EL1の間に、波パラメータに関する差分を与えてもよい。つまり、加工光学系111は、少なくとも二つの加工光EL1の波パラメータが異なるものとなるように、少なくとも二つの加工光EL1のうちの少なくとも一つの波パラメータを調整してもよい。加工光学系111は、ワークWの表面での少なくとも二つの加工光EL1の波パラメータが異なるものとなるように、少なくとも二つの加工光EL1のうちの少なくとも一つの波パラメータを調整してもよい。
【0054】
波パラメータは、加工光EL1の強度(つまり、波としての加工光EL1の振幅)を含んでいてもよい。特に、波パラメータ、ワークWの表面における加工光EL1の強度を含んでいてもよい。この場合、加工光学系111は、少なくとも二つの加工光EL1の間に、強度差を与えてもよい。つまり、加工光学系111は、少なくとも二つの加工光EL1の強度が異なるものとなるように、少なくとも二つの加工光EL1のうちの少なくとも一つの強度を調整してもよい。加工光学系111は、ワークWの表面での少なくとも二つの加工光EL1の強度が異なるものとなるように、少なくとも二つの加工光EL1のうちの少なくとも一つの強度を調整してもよい。
【0055】
波パラメータは、加工光EL1の位相を含んでいてもよい。特に、波パラメータは、ワークWの表面における加工光EL1の位相を含んでいてもよい。この場合、加工光学系111は、少なくとも二つの加工光EL1の間に、位相差を与えてもよい。つまり、加工光学系111は、少なくとも二つの加工光EL1の位相が異なるものとなるように、少なくとも二つの加工光EL1のうちの少なくとも一つの位相を調整してもよい。加工光学系111は、ワークWの表面での少なくとも二つの加工光EL1の位相が異なるものとなるように、少なくとも二つの加工光EL1のうちの少なくとも一つの位相を調整してもよい。
【0056】
波パラメータは、加工光EL1の偏光状態を含んでいてもよい。特に、波パラメータは、ワークWの表面における加工光EL1の偏光状態を含んでいてもよい。この場合、加工光学系111は、少なくとも二つの加工光EL1の間に、偏光差(つまり、偏光状態に関する差分)を与えてもよい。つまり、加工光学系111は、少なくとも二つの加工光EL1の偏光状態が異なるものとなるように、少なくとも二つの加工光EL1のうちの少なくとも一つの偏光状態を調整してもよい。加工光学系111は、ワークWの表面での少なくとも二つの加工光EL1の偏光状態が異なるものとなるように、少なくとも二つの加工光EL1のうちの少なくとも一つの偏光状態を調整してもよい。
【0057】
以下、加工光学系111の一例として、少なくとも二つの加工光EL1の間に強度差を与える加工光学系111(以降、これを、“加工光学系111a”と称する)、少なくとも二つの加工光EL1の間に位相差を与える加工光学系111(以降、これを、“加工光学系111b”と称する)と、少なくとも二つの加工光EL1の間に偏光差を与える加工光学系111(以降、これを、“加工光学系111c”と称する)とについて順に説明する。
【0058】
(2-2)加工光学系111a
初めに、
図9を参照しながら、少なくとも二つの加工光EL1の間に強度差を与える加工光学系111aについて説明する。
図9は、少なくとも二つの加工光EL1の間に強度差を与える加工光学系111aの構造を示す断面図である。
【0059】
図9に示すように、加工光学系111aは、ビームスプリッタ1111aと、ミラー1112aと、ミラー1113aとを備える。
【0060】
ビームスプリッタ1111aには、加工光源2から射出される加工光EL0が入射する。ビームスプリッタ1111aは、加工光EL0を複数の加工光EL1に分岐する。つまり、ビームスプリッタ1111aは、加工光EL0を分岐することで複数の加工光EL1を生成する。このため、ビームスプリッタ1111aは、分岐光学系と称されてもよい。以下の説明では、説明の便宜上、
図9に示すように、ビームスプリッタ1111aが加工光EL0を二つの加工光EL1(具体的には、加工光EL1#1及びEL1#2)に分岐する例について説明する。
【0061】
ビームスプリッタ1111aは、振幅分割型のビームスプリッタであってもよい。この場合、加工光EL0のうちの一部は、加工光EL1#1としてビームスプリッタ1111aを通過する。一方で、加工光EL0のうちの他の一部は、加工光EL1#2としてビームスプリッタ1111aによって反射される。尚、ビームスプリッタ1111aは、振幅分割型のビームスプリッタには限定されず、偏光ビームスプリッタであってもよい。このとき、偏光ビームスプリッタで分岐された複数の加工光の光路のうちの1以上に、波長板等の偏光制御部材を配置してもよい。
【0062】
ビームスプリッタ1111aを通過した加工光EL1#1は、ミラー1112aに入射する。ミラー1112aは、加工光EL1#1をワークWに向けて反射する。ミラー1112aは、加工光EL1#1が入射方向D1から入射角度θ1でワークWに入射するように、加工光EL1#1を反射する。
【0063】
ビームスプリッタ1111aが反射した加工光EL1#2は、ミラー1113aに入射する。ミラー1113aは、加工光EL1#2をワークWに向けて反射する。ミラー1113aは、加工光EL1#2が入射方向D1とは異なる入射方向D2から入射角度θ1でワークWに入射するように、加工光EL1#1を反射する。
【0064】
ミラー1112aが反射した加工光EL1#1及びミラー1113aが反射した加工光EL1#2は、ワークW上に設定される干渉領域IAに照射される。その結果、干渉領域IA内において、加工光EL1#1及びEL1#2が干渉することで発生する干渉光が干渉縞ISを形成する。この場合、ビームスプリッタ1111a、ミラー1112a及びミラー1113aは、干渉縞ISを形成するための干渉光学系として機能しているとみなしてもよい。
【0065】
ここで、ビームスプリッタ1111aの分岐比が1である場合(つまり、1:1である場合)には、ビームスプリッタ1111aを通過した加工光EL1#1の強度と、ビームスプリッタ1111aが反射した加工光EL1#2の強度とが同じになる。一方で、ビームスプリッタ1111aの分岐比が1ではない場合(つまり、1:1でない場合)には、ビームスプリッタ1111aを通過した加工光EL1#1の強度と、ビームスプリッタ1111aが反射した加工光EL1#2の強度とが異なるものとなる。このため、加工光EL1#1及びEL1#2の間に強度差を与えるために、ビームスプリッタ1111aの分岐比は、1よりも大きい又は小さい比に設定されていてもよい。この場合、ビームスプリッタ1111aは、加工光EL1#1及びEL1#2の間に強度差を与える(つまり、加工光EL1#1及びEL1#2の少なくとも一方の強度を調整する)ための調整光学系、強度調整光学系又は強度調整部材として機能しているとみなしてもよい。
【0066】
このようにビームスプリッタ1111aを通過した加工光EL1#1の強度と、ビームスプリッタ1111aが反射した加工光EL1#2の強度とが異なる場合には、
図10に示すように、ワークWの表面での加工光EL1#1の強度と、ワークWの表面での加工光EL1#2の強度とが異なるものとなる。従って、加工光学系111aは、加工光EL1#1及びEL1#2の間に強度差を与えることで、干渉縞ISの形成に影響を与えない一方でフルエンス分布に影響を与える光成分(例えば、DC成分)を干渉光に与えている。このため、加工光EL1#1及びEL1#2の間に強度差が与えられない比較例(
図5(a)参照)と比較して、
図11の上部に示すように、干渉光の最小フルエンスが大きくなる。このため、比較例(
図5(a)参照)と比較して、
図11の下部に示すように、リブレット構造RBの形状の精度が改善される。一例として、干渉光のうちの相対的にフルエンスが小さい光部分(例えば、暗部IDに照射される光部分)によって主として形成される凸状構造体81の先端の形状が理想的な形状に近づく又は一致する可能性が相対的に高くなる。このため、加工装置1は、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成するように、ワークWを適切に加工することができるという効果を享受することができる。
【0067】
ビームスプリッタ1111aの分岐比が可変である場合には、ビームスプリッタ1111aは、加工光EL0を二つの加工光EL1#1及びEL1#2に分岐するときに、分岐比を変更することで、加工光EL1#1及びEL1#2の強度の調整度合い(言い換えれば、調整量又は変更量)を変更してもよい。つまり、ビームスプリッタ1111aは、分岐比を変更することで、加工光EL1#1及びEL1#2の間に与える強度差を変更してもよい。加工光EL1#1及びEL1#2の間に与える強度差が変わると、干渉光のフルエンス分布が変わる。この場合、加工装置1は、加工光EL1#1及びEL1#2の間に与える強度差を変更して干渉光のフルエンス分布を変更することで、リブレット構造RBの形状を適宜調整(言い換えれば、制御又は変更)してもよい。この場合、上述したように、加工装置1は、理想的な形状が変わる場合であっても、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成するように、ワークWを適切に加工することができるという効果を享受することができる。
【0068】
(2-3)加工光学系111bの構造
続いて、
図12を参照しながら、少なくとも二つの加工光EL1の間に位相差を与える加工光学系111bについて説明する。
図12は、少なくとも二つの加工光EL1の間に位相差を与える加工光学系111bの構造を示す断面図である。
【0069】
図12に示すように、加工光学系111bは、ビームスプリッタ1111bと、ビームスプリッタ1112bと、ビームスプリッタ1113bと、ミラー1114bと、ミラー1115bと、光路長調整素子1116bと、光路長調整素子1117bとを備える。
【0070】
ビームスプリッタ1111bには、加工光源2から射出される加工光EL0が入射する。ビームスプリッタ1111bは、加工光EL0を複数の加工光EL1に分岐する。つまり、ビームスプリッタ1111bは、加工光EL0を分岐することで複数の加工光EL1を生成する。このため、ビームスプリッタ1111bは、分岐光学系と称されてもよい。以下の説明では、説明の便宜上、
図12に示すように、ビームスプリッタ1111bが加工光EL0を二つの加工光EL1(具体的には、加工光EL1#1及びEL1#2)に分岐する例について説明する。
【0071】
ビームスプリッタ1111bは、振幅分割型のビームスプリッタであってもよい。この場合、加工光EL0のうちの一部は、加工光EL1#1としてビームスプリッタ1111bを通過する。一方で、加工光EL0のうちの他の一部は、加工光EL1#2としてビームスプリッタ1111bによって反射される。尚、ビームスプリッタ1111bの分岐比は、1であるが、1よりも大きくてもよいし、1よりも小さくてもよい。
【0072】
ビームスプリッタ1111bを通過した加工光EL1#1は、ビームスプリッタ1112bに入射する。ビームスプリッタ1112bは、加工光EL1#1を複数の加工光EL1に分岐する。つまり、ビームスプリッタ1112bは、加工光EL1#1を分岐することで複数の加工光EL1を生成する。このため、ビームスプリッタ1112bは、分岐光学系と称されてもよい。以下の説明では、説明の便宜上、
図12に示すように、ビームスプリッタ1112bが加工光EL1#1を二つの加工光EL1(具体的には、加工光EL1#11及びEL1#12)に分岐する例について説明する。
【0073】
ビームスプリッタ1112bは、振幅分割型のビームスプリッタであってもよい。この場合、加工光EL1#1のうちの一部は、加工光EL1#11としてビームスプリッタ1112bを通過する。一方で、加工光EL1#1のうちの他の一部は、加工光EL1#12としてビームスプリッタ1112bによって反射される。尚、ビームスプリッタ1112bの分岐比は、1であるが、1よりも大きくてもよいし、1よりも小さくてもよい。
【0074】
ビームスプリッタ1111bが反射した加工光EL1#2は、ビームスプリッタ1113bに入射する。ビームスプリッタ1113bは、加工光EL1#2を複数の加工光EL1に分岐する。つまり、ビームスプリッタ1113bは、加工光EL1#2を分岐することで複数の加工光EL1を生成する。このため、ビームスプリッタ1113bは、分岐光学系と称されてもよい。以下の説明では、説明の便宜上、
図12に示すように、ビームスプリッタ1113bが加工光EL1#2を二つの加工光EL1(具体的には、加工光EL1#21及びEL1#22)に分岐する例について説明する。
【0075】
ビームスプリッタ1113bは、振幅分割型のビームスプリッタであってもよい。この場合、加工光EL1#2のうちの一部は、加工光EL1#21としてビームスプリッタ1113bを通過する。一方で、加工光EL1#2のうちの他の一部は、加工光EL1#22としてビームスプリッタ1113bによって反射される。尚、ビームスプリッタ1113bの分岐比は、1であるが、1よりも大きくてもよいし、1よりも小さくてもよい。
【0076】
ビームスプリッタ1112bを通過した加工光EL1#11は、ミラー1114bに入射する。ミラー1114bは、加工光EL1#11をワークWに向けて反射する。ミラー1114bは、加工光EL1#11が入射方向D11から入射角度θ2でワークWに入射するように、加工光EL1#11を反射する。
【0077】
ビームスプリッタ1112bが反射した加工光EL1#12は、光路長調整素子1116bを介してワークWに入射する。ビームスプリッタ1112bは、加工光EL1#12が入射方向D11とは異なる入射方向D12から入射角度θ2とは異なる入射角度θ3でワークWに入射するように、加工光EL1#1の一部を加工光EL1#12として反射する。
【0078】
ビームスプリッタ1113bを通過した加工光EL1#21は、ミラー1115bに入射する。ミラー1115bは、加工光EL1#21をワークWに向けて反射する。ミラー1115bは、加工光EL1#21が入射方向D11及びD12とは異なる入射方向D21から入射角度θ2でワークWに入射するように、加工光EL1#21を反射する。
【0079】
ビームスプリッタ1113bが反射した加工光EL1#22は、光路長調整素子1117bを介してワークWに入射する。ビームスプリッタ1113bは、加工光EL1#22が入射方向D11、D12及びD21とは異なる入射方向D22から入射角度θ3でワークWに入射するように、加工光EL1#2の一部を加工光EL1#22として反射する。
【0080】
ミラー1114bが反射した加工光EL1#11、ビームスプリッタ1112bが反射した加工光EL1#12、ミラー1115bが反射した加工光EL1#21及びビームスプリッタ1113bが反射した加工光EL1#22は、ワークW上に設定される干渉領域IAに照射される。その結果、干渉領域IA内において、加工光EL1#11からEL1#22が干渉することで発生する干渉光が干渉縞ISを形成する。この場合、ビームスプリッタ1111bから1113b及びミラー1114bから1115bは、干渉縞ISを形成するための干渉光学系として機能しているとみなしてもよい。
【0081】
光路長調整素子1116bは、ビームスプリッタ1112bとワークWとの間における加工光EL1#12の光路上に配置される。光路長調整素子1116bは、加工光EL1#12の光路長を調整可能である。
図12に示す例では、光路長調整素子1116bは、再帰反射鏡11161bと、ビームスプリッタ1112bから射出される加工光EL1#12を再帰反射鏡11161bに向けて反射し且つ再帰反射鏡11161bから射出される加工光EL1#12をワークWに向けて反射するプリズムミラー11162bとを備えている。この場合、光路長調整素子1116bは、ビームスプリッタ1112bとワークWとの間における加工光EL1#12の光路に交差する方向に沿って再帰反射鏡11161bを移動させることで、加工光EL1#12の光路長を調整してもよい。
【0082】
加工光EL1#12の光路長が変わると、加工光EL1#12の位相が変わる。このため、光路長調整素子1116bは、加工光EL1#12の光路長を調整することで、加工光EL1#12の位相を調整しているとみなしてもよい。この場合、光路長調整素子1116bは、加工光EL1#11及びEL1#12の間に位相差を与えるように、加工光EL1#12の光路長を調整してもよい。つまり、光路長調整素子1116bは、加工光EL1#11の位相と加工光EL1#12の位相とが異なるものとなるように、加工光EL1#12の光路長を調整してもよい。この場合、光路長調整素子1116bは、加工光EL1#11及びEL1#12の間に位相差を与える(つまり、加工光EL1#11及びEL1#12の少なくとも一方の位相を調整する)ための調整光学系、位相調整光学系又は位相調整部材として機能しているとみなしてもよい。
【0083】
尚、光路長調整素子1116bは、加工光EL1#21及びEL1#12の間に位相差を与えるように、加工光EL1#12の光路長を調整してもよい。つまり、光路長調整素子1116bは、加工光EL1#21の位相と加工光EL1#12の位相とが異なるものとなるように、加工光EL1#12の光路長を調整してもよい。この場合、光路長調整素子1116bは、加工光EL1#21及びEL1#12の間に位相差を与える(つまり、加工光EL1#21及びEL1#12の少なくとも一方の位相を調整する)ための調整光学系、位相調整光学系又は位相調整部材として機能しているとみなしてもよい。
【0084】
一方で、光路長調整素子1116bは、加工光EL1#11及びEL1#12の間に位相差を与えないように、加工光EL1#12の光路長を調整してもよい。つまり、光路長調整素子1116bは、加工光EL1#11の位相と加工光EL1#12の位相とが揃うように、加工光EL1#12の光路長を調整してもよい。言い換えれば、光路長調整素子1116bは、ビームスプリッタ1112bとワークWとの間における加工光EL1#12の光路長と、ビームスプリッタ1113bとワークWとの間における加工光EL1#22の光路長とが同じになるように、加工光EL1#12の光路長を調整してもよい。
【0085】
光路長調整素子1117bは、ビームスプリッタ1113bとワークWとの間における加工光EL1#22の光路上に配置される。光路長調整素子1116bは、加工光EL1#22の光路長を調整可能である。
図12に示す例では、光路長調整素子1117bは、再帰反射鏡11171bと、ビームスプリッタ1113bから射出される加工光EL1#22を再帰反射鏡11171bに向けて反射し且つ再帰反射鏡11171bから射出される加工光EL1#22をワークWに向けて反射するプリズムミラー11172bとを備えている。この場合、光路長調整素子1117bは、ビームスプリッタ1113bとワークWとの間における加工光EL1#22の光路に交差する方向に沿って再帰反射鏡11171bを移動させることで、加工光EL1#22の光路長を調整してもよい。
【0086】
加工光EL1#22の光路長が変わると、加工光EL1#22の位相が変わる。このため、光路長調整素子1117bは、加工光EL1#22の光路長を調整することで、加工光EL1#22の位相を調整しているとみなしてもよい。この場合、光路長調整素子1117bは、加工光EL1#21及びEL1#22の間に位相差を与えるように、加工光EL1#22の光路長を調整してもよい。つまり、光路長調整素子1117bは、加工光EL1#21の位相と加工光EL1#22の位相とが異なるものとなるように、加工光EL1#22の光路長を調整してもよい。この場合、光路長調整素子1117bは、加工光EL1#21及びEL1#22の間に位相差を与える(つまり、加工光EL1#21及びEL1#22の少なくとも一方の位相を調整する)ための調整光学系、位相調整光学系又は位相調整部材として機能しているとみなしてもよい。
【0087】
尚、光路長調整素子1117bは、加工光EL1#11及びEL1#22の間に位相差を与えるように、加工光EL1#22の光路長を調整してもよい。つまり、光路長調整素子1117bは、加工光EL1#11の位相と加工光EL1#22の位相とが異なるものとなるように、加工光EL1#22の光路長を調整してもよい。この場合、光路長調整素子1117bは、加工光EL1#11及びEL1#22の間に位相差を与える(つまり、加工光EL1#11及びEL1#22の少なくとも一方の位相を調整する)ための調整光学系、位相調整光学系又は位相調整部材として機能しているとみなしてもよい。
【0088】
一方で、光路長調整素子1117bは、加工光EL1#11及びEL1#12の間に位相差を与えないように、加工光EL1#22の光路長を調整してもよい。つまり、光路長調整素子1117bは、加工光EL1#11の位相と加工光EL1#12の位相とが揃うように、加工光EL1#22の光路長を調整してもよい。言い換えれば、光路長調整素子1117bは、ビームスプリッタ1112bとワークWとの間における加工光EL1#12の光路長と、ビームスプリッタ1113bとワークWとの間における加工光EL1#22の光路長とが同じになるように、加工光EL1#22の光路長を調整してもよい。
【0089】
尚、
図12に示す例では、光路長調整素子1116b及び1117bのそれぞれは、加工光EL1#11及びEL#21のそれぞれの光路長を調整しない。つまり、光路長調整素子1116b及び1117bのそれぞれは、加工光EL1#11及びEL#21のそれぞれの位相を調整しない。この場合、加工光EL1#11の位相と加工光EL1#21の位相とが揃っていてもよい。つまり、ビームスプリッタ1112bとワークWとの間における加工光EL1#11の光路長と、ビームスプリッタ1113bとワークWとの間における加工光EL1#21の光路長とが同じであってもよい。
【0090】
光路長調整素子1116b及び1117bのそれぞれが与える位相差は、180+360×n°であってもよい。尚、nは整数を示す変数である。但し、光路長調整素子1116b及び1117bのそれぞれが与える位相差は、180+360×n°とは異なっていてもよい。
【0091】
このような光路長調整素子1116b及び1117bにより、ワークWの表面において、加工光EL1#11の位相と加工光EL1#12の位相とが異なるものとなり、且つ、加工光EL1#21の位相と加工光EL1#22の位相とが異なるものとなる。従って、加工光学系111bは、加工光EL1#11及びEL1#12の間、及び、加工光EL1#21及びEL1#22の間に位相差を与えることで、干渉縞ISの形成に影響を与えない一方でフルエンス分布に影響を与える光成分(例えば、DC成分)を干渉光に与えている。このため、加工光EL1#11及びEL1#12の間、及び、加工光EL1#21及びEL1#22の間に位相差が与えられない比較例(
図5(a)参照)と比較して、
図13の上部に示すように、最小フルエンスが大きくなる。このため、比較例(
図5(a)参照)と比較して、
図13の下部に示すように、リブレット構造RBの形状の精度が改善される。一例として、干渉光のうちの相対的にフルエンスが小さい光部分(例えば、暗部IDに照射される光部分)によって主として形成される凸状構造体81の先端の形状が理想的な形状に近づく又は一致する可能性が相対的に高くなる。このため、加工装置1は、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成するように、ワークWを適切に加工することができるという効果を享受することができる。
【0092】
光路長調整素子1116bは、加工光EL1#12の光路長の調整度合いを変更可能であってもよい。光路長調整素子1116bは、加工光EL1#12の光路長の調整度合いを変更することで、加工光EL1#12の位相の調整度合いを変更可能であってもよい。光路長調整素子1116bは、加工光EL1#12の光路長の調整度合いを変更することで、加工光EL1#11及びEL1#12の間に与える位相差を変更可能であってもよい。加工光EL1#11及びEL1#12の間に与える位相差が変わると、干渉光のフルエンス分布が変わる。この場合、加工装置1は、加工光EL11#1及びEL1#12の間に与える位相差を変更して干渉光のフルエンス分布を変更することで、リブレット構造RBの形状を適宜調整(言い換えれば、制御又は変更)してもよい。この場合、上述したように、加工装置1は、理想的な形状が変わる場合であっても、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成するように、ワークWを適切に加工することができるという効果を享受することができる。
【0093】
光路長調整素子1117bは、加工光EL1#22の光路長の調整度合いを変更可能であってもよい。光路長調整素子1117bは、加工光EL1#22の光路長の調整度合いを変更することで、加工光EL1#22の位相の調整度合いを変更可能であってもよい。光路長調整素子1117bは、加工光EL1#22の光路長の調整度合いを変更することで、加工光EL1#21及びEL1#22の間に与える位相差を変更可能であってもよい。加工光EL1#21及びEL1#22の間に与える位相差が変わると、干渉光のフルエンス分布が変わる。この場合、加工装置1は、加工光EL21#21及びEL2#22の間に与える位相差を変更して干渉光のフルエンス分布を変更することで、リブレット構造RBの形状を適宜調整(言い換えれば、制御又は変更)してもよい。この場合、上述したように、加工装置1は、理想的な形状が変わる場合であっても、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成するように、ワークWを適切に加工することができるという効果を享受することができる。
【0094】
但し、光路長調整素子1116bは、加工光EL1#12の光路長の調整度合いを変更可能でなくてもよい。光路長調整素子1116bは、加工光EL1#12の位相の調整度合いを変更可能でなくてもよい。光路長調整素子1116bは、加工光EL1#11及びEL1#12の間に与える位相差を変更可能でなくてもよい。この場合、光路長調整素子1116bは、加工光EL1#11及びEL1#12の間に固定の位相差を与えてもよい。この場合であっても、加工光EL1#11及びEL1#12の間に位相差が与えられる限りは、加工装置1は、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成するように、ワークWを適切に加工することができるという効果を享受することができる。
【0095】
また、光路長調整素子1117bは、加工光EL1#22の光路長の調整度合いを変更可能でなくてもよい。光路長調整素子1117bは、加工光EL1#22の位相の調整度合いを変更可能でなくてもよい。光路長調整素子1117bは、加工光EL1#21及びEL1#22の間に与える位相差を変更可能でなくてもよい。この場合、光路長調整素子1117bは、加工光EL1#21及びEL1#22の間に固定の位相差を与えてもよい。この場合であっても、加工光EL1#21及びEL1#22の間に位相差が与えられる限りは、加工装置1は、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成するように、ワークWを適切に加工することができるという効果を享受することができる。
【0096】
尚、加工光学系111bは、光路長調整素子1116b及び1117bのいずれか一方を備えている一方で、光路長調整素子1116b及び1117bのいずれか他方を備えていなくてもよい。つまり、加工光学系111bは、光路長調整素子1116b及び1117bの双方を必ずしも備えていなくてもよい。また、加工光学系111bは、光路長調整素子1116b及び1117bの少なくとも一方に加えて又は代えて、加工光EL#11の光路長を調整可能な光路長調整素子及び加工光EL#21の光路長を調整可能な光路長調整素子の少なくとも一つを備えていてもよい。要は、加工光学系111bは、加工光EL1#11及びEL1#21の少なくとも一つと加工光EL1#12及びEL1#22の少なくとも一つとの間に位相差を与えることができる限りは、どのような構造を有していてもよい。加工光学系111bが三つ又は五つ以上の加工光EL1をワークWに照射する場合においても同様に、加工光学系111bは、三つ又は五つ以上の加工光EL1のうちの少なくとも二つの間に位相差を与えることができる限りは、どのような構造を有していてもよい。
【0097】
(2-4)加工光学系111cの構造
続いて、
図14を参照しながら、少なくとも二つの加工光EL1の間に偏光差を与える加工光学系111cについて説明する。
図14は、少なくとも二つの加工光EL1の間に強度差を与える加工光学系111cの構造を示す断面図である。
【0098】
図9に示すように、加工光学系111cは、ビームスプリッタ1111cと、ミラー1112cと、ミラー1113cと、偏光調整光学系1114cと、偏光調整光学系1115cとを備える。
【0099】
ビームスプリッタ1111cには、加工光源2から射出される加工光EL0が入射する。ビームスプリッタ1111cは、加工光EL0を複数の加工光EL1に分岐する。つまり、ビームスプリッタ1111cは、加工光EL0を分岐することで複数の加工光EL1を生成する。このため、ビームスプリッタ1111cは、分岐光学系と称されてもよい。以下の説明では、説明の便宜上、
図14に示すように、ビームスプリッタ1111cが加工光EL0を二つの加工光EL1(具体的には、加工光EL1#1及びEL1#2)に分岐する例について説明する。
【0100】
ビームスプリッタ1111cは、振幅分割型のビームスプリッタであってもよい。この場合、加工光EL0のうちの一部は、加工光EL1#1としてビームスプリッタ1111cを通過する。一方で、加工光EL0のうちの他の一部は、加工光EL1#2としてビームスプリッタ1111cによって反射される。尚、ビームスプリッタ1111cの分岐比は、1であるが、1よりも大きくてもよいし、1よりも小さくてもよい。
【0101】
ビームスプリッタ1111cを通過した加工光EL1#1は、ミラー1112cに入射する。ミラー1112cは、加工光EL1#1をワークWに向けて反射する。ミラー1112cは、加工光EL1#1が入射方向D3から入射角度θ4でワークWに入射するように、加工光EL1#1を反射する。ミラー1112cが反射した加工光EL#1は、偏光調整光学系1114cを介してワークWに入射する。
【0102】
ビームスプリッタ1111cが反射した加工光EL1#2は、ミラー1113cに入射する。ミラー1113cは、加工光EL1#2をワークWに向けて反射する。ミラー1113cは、加工光EL1#1が入射方向D3とは異なる入射方向D4から入射角度θ4でワークWに入射するように、加工光EL1#2を反射する。ミラー1113cが反射した加工光EL#2は、偏光調整光学系1115cを介してワークWに入射する。
【0103】
ミラー1112cが反射した加工光EL1#1及びミラー1113cが反射した加工光EL1#2は、ワークW上に設定される干渉領域IAに照射される。その結果、干渉領域IA内において、加工光EL1#1及びEL1#2が干渉することで発生する干渉光が干渉縞ISを形成する。この場合、ビームスプリッタ1111c、ミラー1112c及びミラー1113cは、干渉縞ISを形成するための干渉光学系として機能しているとみなしてもよい。
【0104】
偏光調整光学系1114cは、ミラー1112cとワークWとの間における加工光EL1#1の光路上に配置される。但し、偏光調整光学系1114cは、ビームスプリッタ111cとミラー1112cとの間における加工光EL1#1の光路上に配置されていてもよい。ミラー1112cが反射した加工光EL1#1は、偏光調整光学系1114cに入射する。偏光調整光学系1114cは、偏光調整光学系1114cに入射した加工光EL1#1の偏光状態を調整可能である。加工光EL1#1の偏光状態を調整するために、偏光調整光学系1114cは、例えば、波長板を含んでいてもよい。偏光調整光学系1114cが偏光状態を調整した加工光EL1#1は、ワークWに入射する。つまり、ミラー1112cが反射した加工光EL#1は、偏光調整光学系1114cを通過してからワークWに入射する。
【0105】
偏光調整光学系1115cは、ミラー1113cとワークWとの間における加工光EL1#2の光路上に配置される。但し、偏光調整光学系1115cは、ビームスプリッタ111cとミラー1113cとの間における加工光EL1#2の光路上に配置されていてもよい。ミラー1113cが反射した加工光EL1#2は、偏光調整光学系1115cに入射する。偏光調整光学系1115cは、偏光調整光学系1115cに入射した加工光EL1#2の偏光状態を調整可能である。加工光EL1#2の偏光状態を調整するために、偏光調整光学系1115cは、例えば、波長板を含んでいてもよい。偏光調整光学系1115cが偏光状態を調整した加工光EL1#2は、ワークWに入射する。つまり、ミラー1113cが反射した加工光EL#2は、偏光調整光学系1115cを通過してからワークWに入射する。
【0106】
偏光調整光学系1114c及び1115cの少なくとも一方は、加工光EL1#1及びEL1#2の間に偏光差(つまり、偏光状態の差分)を与えるように、加工光EL1#1及びEL1#2の少なくとも一方の偏光状態を調整してもよい。つまり、偏光調整光学系1114c及び1115cの少なくとも一方は、加工光EL1#1の偏光状態と加工光EL1#2の偏光状態とが異なるものとなるように、加工光EL1#1及びEL1#2の少なくとも一方の偏光状態を調整してもよい。この場合、偏光調整光学系1114c及び1115cの少なくとも一方は、加工光EL1#1及びEL1#2の間に偏光差を与える(つまり、加工光EL1#21及びEL1#22の少なくとも一方の偏光状態を調整する)ための調整光学系、位相調整光学系又は位相調整部材として機能しているとみなしてもよい。
【0107】
このような偏光調整光学系1114c及び1115cにより、ワークWの表面において、加工光EL1#1の偏光状態と加工光EL1#2の偏光状態とが異なるものとなる。従って、加工光学系111cは、加工光EL1#1及びEL1#2の間に偏光差を与えることで、干渉縞ISの形成に影響を与えない一方でフルエンス分布に影響を与える光成分(例えば、DC成分)を干渉光に与えている。このため、加工光EL1#1及びEL1#2の間に位相差が与えられない比較例(
図5(a)参照)と比較して、
図15の上部に示すように、最小フルエンスが大きくなる。このため、比較例(
図5(a)参照)と比較して、
図15の下部に示すように、リブレット構造RBの形状の精度が改善される。一例として、干渉光のうちの相対的にフルエンスが小さい光部分(例えば、暗部IDに照射される光部分)によって主として形成される凸状構造体81の先端の形状が理想的な形状に近づく又は一致する可能性が相対的に高くなる。このため、加工装置1は、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成するように、ワークWを適切に加工することができるという効果を享受することができる。
【0108】
第1の例として、偏光調整光学系1114c及び1115cの少なくとも一方は、第1偏光条件が満たされるように、加工光EL1#1及びEL1#2の少なくとも一方の偏光状態を調整してもよい。第1偏光条件は、
図16の1段目に示すように、加工光EL1#1及びEL1#2のそれぞれが楕円偏光になるという第1楕円偏光条件を含んでいてもよい。更に、第1偏光条件は、第1楕円変更条件に加えて、
図16の1段目に示すように、加工光EL1#1及びEL1#2に交差する面(例えば、ワークWの表面)において、加工光EL1#1の回転方向(つまり、加工光EL1#1の電磁場ベクトルの先端の回転方向)と、加工光EL1#2の回転方向(つまり、加工光EL1#2の電磁場ベクトルの先端の回転方向)とが異なる(つまり、互いに逆方向になる)という第1回転方向条件を含んでいてもよい。更に、第1偏光条件は、第1楕円変更条件及び第1回転方向条件に加えて、
図16の1段目に示すように、加工光EL1#1及びEL1#2に交差する面(例えば、ワークWの表面)において、加工光EL1#1の電磁場ベクトルの先端の軌跡を表す楕円の長軸LA#1の方向と、加工光EL1#2の電磁場ベクトルの先端の軌跡を表す楕円の長軸LA#2とが揃う(つまり、平行になる)という第1長軸条件を含んでいてもよい。尚、
図16の1段目は、加工光EL1#1の電磁場ベクトルの先端の軌跡と、加工光EL1#2の電磁場ベクトルの先端の軌跡とを示している。
【0109】
ここで、
図16の2段目及び3段目に示すように、楕円偏光である加工光EL1#1及びEL1#2のそれぞれは、円偏光成分と直線偏光成分とを含んでいるとみなしてもよい。ここで、第1偏光条件が満たされている場合には、長軸LA#1の方向と長軸LA#2の方向とが揃っているがゆえに、加工光EL1#1に含まれる直線偏光成分の振動方向と加工光EL1#2に含まれる直線偏光成分の振動方向とが揃う。更には、加工光EL1#1に含まれる直線偏光成分の振動の向きと加工光EL1#2に含まれる直線偏光成分の振動向きもまた揃う。このため、加工光EL1#1に含まれる直線偏光成分と加工光EL1#2に含まれる直線偏光成分とは、互いに平行な平行成分(言い換えれば、互いに打ち消し合わない平行成分)となる。その結果、ワークWの表面上において、加工光EL1#1に含まれる直線偏光成分と加工光EL1#2に含まれる直線偏光成分とが干渉し合って干渉縞ISが形成される。一方で、第1偏光条件が満たされている場合には、加工光EL1#1の回転方向と加工光EL1#2の回転方向とが異なるがゆえに、加工光EL1#1に含まれる円偏光成分の回転方向と加工光EL1#2に含まれる円偏光成分の回転方向とが異なる。つまり、加工光EL1#1に含まれる円偏光成分と加工光EL1#2に含まれる円偏光成分とは、互いに直交する直交成分(言い換えれば、互いに打ち消し合う直交成分)となる。その結果、ワークWの表面上において、加工光EL1#1に含まれる円偏光成分と加工光EL1#2に含まれる円偏光成分とは、互いに打ち消しあう。その結果、加工光EL1#1及びEL1#2に含まれる円偏光成分は、干渉縞ISの形成(つまり、明部IL及び暗部IDの形成)には寄与しないものの、最小フルエンスを増加させるための光成分(いわゆる、DC成分)として干渉光に含まれる。このため、第1偏光条件が満たされている場合には、加工光EL1#1及びEL1#2のそれぞれに含まれる円偏光成分が、上述した効果を実現するための最小フルエンスの増加に主として寄与していると言える。
【0110】
第2の例として、偏光調整光学系1114c及び1115cの少なくとも一方は、第2偏光条件が満たされるように、加工光EL1#1及びEL1#2の少なくとも一方の偏光状態を調整してもよい。第2偏光条件は、
図17の1段目に示すように、加工光EL1#1及びEL1#2のそれぞれが直線偏光になるという第2直線偏光条件を含んでいてもよい。更に、第2偏光条件は、第2直線偏光条件に加えて、
図17の1段目に示すように、加工光EL1#1及びEL1#2に交差する面(例えば、ワークWの表面)において、加工光EL1#1の振動方向と、加工光EL1#2の振動方向とが非平行になるという第2振動方向条件を含んでいてもよい。つまり、第2偏光条件は、
図17の1段目に示すように、加工光EL1#1及びEL1#2に交差する面(例えば、ワークWの表面)において、加工光EL1#1の電磁場ベクトルの先端の軌跡を表す線分の方向と、加工光EL1#2の電磁場ベクトルの先端の軌跡を表す線分の方向とが非平行になるという第2振動方向条件を含んでいてもよい。尚、
図17の1段目は、加工光EL1#1の電磁場ベクトルの先端の軌跡と、加工光EL1#2の電磁場ベクトルの先端の軌跡とを示している。
【0111】
ここで、
図17の2段目及び3段目に示すように、直線偏光である加工光EL1#1及びEL1#2のそれぞれは、加工光EL1#1及びEL1#2に交差する面(例えば、ワークWの表面)において、第1の振動方向に沿って振動する第1の直線偏光成分と、第1の振動方向に沿って振動する第2の直線偏光成分とを含んでいるとみなしてもよい。ここで、第2偏光条件が満たされている場合には、加工光EL1#1に含まれる第1の直線偏光成分の振動方向と加工光EL1#2に含まれる第1の直線偏光成分の振動方向とが同じになる。
図17に示す例では、加工光EL1#1に含まれるX軸方向に沿って振動する第1の直線偏光成分の振動方向と加工光EL1#2に含まれるX軸方向に沿って振動する第1の直線偏光成分の振動方向とが揃う。更には、加工光EL1#1に含まれる第1の直線偏光成分の振動の向きと加工光EL1#2に含まれる第1の直線偏光成分の振動の向きもまた揃う。このため、加工光EL1#1に含まれる第1の直線偏光成分と加工光EL1#2に含まれる第1の直線偏光成分とは、互いに平行な平行成分となる。その結果、ワークWの表面上において、加工光EL1#1に含まれる第1の直線偏光成分と加工光EL1#2に含まれる第1の直線偏光成分とが干渉し合って干渉縞ISが形成される。一方で、第2偏光条件が満たされている場合には、加工光EL1#1に含まれる第2の直線偏光成分の振動方向と加工光EL1#2に含まれる第2の直線偏光成分の振動方向とが揃うものの、加工光EL1#1に含まれる第2の直線偏光成分の振動の向きと加工光EL1#2に含まれる第2の直線偏光成分の振動の向きとが互いに逆向きになる。
図17に示す例では、加工光EL1#1に含まれるY軸方向に沿って振動する第2の直線偏光成分の振動の向きと加工光EL1#2に含まれるY軸方向に沿って振動する第2の直線偏光成分の振動の向きとが互いに逆向きになる。例えば、電磁場ベクトルが-Y側を向くように加工光EL1#1に含まれる第2の直線偏光成分が振動している場合には、電磁場ベクトルが+Y側を向くように加工光EL1#2に含まれる第2の直線偏光成分が振動する。同様に、電磁場ベクトルが+Y側を向くように加工光EL1#1に含まれる第2の直線偏光成分が振動している場合には、電磁場ベクトルが-Y側を向くように加工光EL1#2に含まれる第2の直線偏光成分が振動する。このため、加工光EL1#1に含まれる第2の直線偏光成分と加工光EL1#2に含まれる第2の直線偏光成分とは、互いに直交する直交成分となる。その結果、ワークWの表面上において、加工光EL1#1に含まれる第2の直線偏光成分と加工光EL1#2に含まれる第2の直線偏光成分とは、互いに打ち消しあう。その結果、加工光EL1#1及びEL1#2に含まれる第2の直線偏光成分は、干渉縞ISの形成(つまり、明部IL及び暗部IDの形成)には寄与しないものの、最小フルエンスを増加させるための光成分(いわゆる、DC成分)として干渉光に含まれる。このため、第2偏光条件が満たされている場合には、加工光EL1#1及びEL1#2のそれぞれに含まれる第2の直線偏光成分が、上述した効果を実現するための最小フルエンスの増加に主として寄与していると言える。
【0112】
第3の例として、偏光調整光学系1114c及び1115cの少なくとも一方は、第3偏光条件が満たされるように、加工光EL1#1及びEL1#2の少なくとも一方の偏光状態を調整してもよい。第3偏光条件は、
図18の1段目に示すように、加工光EL1#1及びEL1#2のそれぞれが楕円偏光になるという第3楕円偏光条件を含んでいてもよい。更に、第3偏光条件は、第3楕円偏光条件に加えて、
図18の1段目に示すように、加工光EL1#1及びEL1#2に交差する面(例えば、ワークWの表面)において、加工光EL1#1の回転方向(つまり、加工光EL1#1の電磁場ベクトルの先端の回転方向)と、加工光EL1#2の回転方向(つまり、加工光EL1#2の電磁場ベクトルの先端の回転方向)とが同じになるという第3回転方向条件を含んでいてもよい。更に、第3偏光条件は、第3楕円偏光条件及び第3回転方向条件に加えて、
図18の1段目に示すように、加工光EL1#1及びEL1#2に交差する面(例えば、ワークWの表面)において、加工光EL1#1の電磁場ベクトルの先端の軌跡を表す楕円の長軸LA#1の方向と、加工光EL1#2の電磁場ベクトルの先端の軌跡を表す楕円の長軸LA#2とが非平行になるという第3長軸条件を含んでいてもよい。尚、
図18の1段目は、加工光EL1#1の電磁場ベクトルの先端の軌跡と、加工光EL1#2の電磁場ベクトルの先端の軌跡とを示している。
【0113】
ここで、
図18の2段目及び3段目に示すように、楕円偏光である加工光EL1#1及びEL1#2のそれぞれは、円偏光成分と直線偏光成分とを含んでいるとみなしてもよい。ここで、第3偏光条件が満たされている場合には、加工光EL1#1の回転方向と加工光EL1#2の回転方向とが同じであるがゆえに、加工光EL1#1に含まれる円偏光成分の回転方向と加工光EL1#2に含まれる円偏光成分の回転方向とが同じになる。このため、加工光EL1#1に含まれる円偏光成分と加工光EL1#2に含まれる円偏光成分とは、互いに平行な平行成分となる。その結果、ワークWの表面上において、加工光EL1#1に含まれる円偏光成分と加工光EL1#2に含まれる円偏光成分とが干渉し合って干渉縞ISが形成される。一方で、第3偏光条件が満たされている場合には、長軸LA#1の方向と長軸LA#2の方向とが非平行であるが、加工光EL1#1に含まれる直線偏光成分の振動方向と加工光EL1#2に含まれる直線偏光成分の振動方向とが非平行になる。つまり、加工光EL1#1に含まれる直線偏光成分及び加工光EL1#2に含まれる直線偏光成分は、上述した第2偏光条件を満たしている。このため、加工光EL1#1に含まれる直線偏光成分と加工光EL1#2に含まれる直線偏光成分とは、互いに直交する直交成分を含む。その結果、ワークWの表面上において、加工光EL1#1に含まれる直線偏光成分と加工光EL1#2に含まれる直線偏光成分(特に、互いに直交する直交成分)とは、互いに打ち消しあう。その結果、加工光EL1#1及びEL1#2に含まれる直線偏光成分(特に、互いに直交する直交成分)は、干渉縞ISの形成(つまり、明部IL及び暗部IDの形成)には寄与しないものの、最小フルエンスを増加させるための光成分(いわゆる、DC成分)として干渉光に含まれる。このため、第3偏光条件が満たされている場合には、加工光EL1#1及びEL1#2のそれぞれに含まれる直線偏光成分が、上述した効果を実現するための最小フルエンスの増加に主として寄与していると言える。
【0114】
以上説明した第1から第3の偏光条件は、いずれも、加工光EL1#1に含まれる第1の種類の偏光成分と加工光EL1#2に含まれる第1の種類の偏光成分とが互いに直交する(つまり、互いに打ち消し合う)直交成分になり、且つ、加工光EL1#1に含まれる第2の種類の偏光成分と加工光EL1#2に含まれる第2の種類の偏光成分とが互いに平行な(つまり、互いに強め合う)平行成分になるという第4の偏光条件の一具体例であるとも言える。このため、加工光学系111cは、第4の偏光条件が満たされるように、加工光EL1#1及びEL1#2の少なくとも一方の偏光状態を調整してもよい。
【0115】
第4の偏光条件は、加工光EL1#1に含まれる第1の種類の偏光成分の量(例えば、強度)と加工光EL1#2に含まれる第1の種類の偏光成分の量(例えば、強度)が同一であるという条件、及び、加工光EL1#1に含まれる第2の種類の偏光成分の量(例えば、強度)と加工光EL1#2に含まれる第2の種類の偏光成分の量(例えば、強度)が同一であるという条件を更に含んでいてもよい。この場合、ワークWの表面から離れた位置に収斂位置が設定されている加工光EL1#1及びEL1#2がワークWに照射されたとしても、互いに直交する直交成分に非対称な成分が生ずることはなく、且つ、互いに平行な平行成分に非対称な成分が生ずることはない。つまり、デフォーカス状態にある加工光EL1#1及びEL1#2がワークWに照射されたとしても、互いに直交する直交成分に非対称な成分が生ずることはなく、且つ、互いに平行な平行成分に非対称な成分が生ずることはない。このため、互いに平行な平行成分が干渉し合って干渉縞ISが形成され、且つ、互いに直交する直交成分が打ち消し合って最小フルエンスが大きくなることに変わりはない。このため、加工光EL1#1及びEL1#2がデフォーカス状態にある場合であっても、加工装置1は、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成するように、ワークWを適切に加工することができるという上述した効果を適切に享受することができる。
【0116】
偏光調整光学系1114cは、加工光EL1#1の偏光状態の調整度合いを変更可能であってもよい。偏光調整光学系1114cは、加工光EL1#1の偏光状態の調整度合いを変更することで、加工光EL1#1及びEL1#2の間に与える偏光差を変更可能であってもよい。加工光EL1#1及びEL1#2の間に与える偏光差が変わると、干渉光のフルエンス分布が変わる。この場合、加工装置1は、加工光EL1#1及びEL1#2の間に与える偏光差を変更して干渉光のフルエンス分布を変更することで、リブレット構造RBの形状を適宜調整(言い換えれば、制御又は変更)してもよい。この場合、上述したように、加工装置1は、理想的な形状が変わる場合であっても、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成するように、ワークWを適切に加工することができるという効果を享受することができる。
【0117】
偏光調整光学系1115cは、加工光EL1#2の偏光状態の調整度合いを変更可能であってもよい。偏光調整光学系1115cは、加工光EL1#2の偏光状態の調整度合いを変更することで、加工光EL1#1及びEL1#2の間に与える偏光差を変更可能であってもよい。加工光EL1#1及びEL1#2の間に与える偏光差が変わると、干渉光のフルエンス分布が変わる。この場合、加工装置1は、加工光EL1#1及びEL1#2の間に与える偏光差を変更して干渉光のフルエンス分布を変更することで、リブレット構造RBの形状を適宜調整(言い換えれば、制御又は変更)してもよい。この場合、上述したように、加工装置1は、理想的な形状が変わる場合であっても、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成するように、ワークWを適切に加工することができるという効果を享受することができる。
【0118】
但し、偏光調整光学系1114cは、加工光EL1#1の偏光状態の調整度合いを変更可能でなくてもよい。偏光調整光学系1114cは、加工光EL1#1及びEL1#2の間に与える偏光差を変更可能でなくてもよい。この場合、偏光調整光学系1114cは、加工光EL1#1及びEL1#2の間に固定の偏光差を与えてもよい。この場合であっても、加工光EL1#1及びEL1#2の間に偏光差が与えられる限りは、加工装置1は、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成するように、ワークWを適切に加工することができるという効果を享受することができる。
【0119】
また、偏光調整光学系1115cは、加工光EL1#2の偏光状態の調整度合いを変更可能でなくてもよい。偏光調整光学系1115cは、加工光EL1#1及びEL1#2の間に与える偏光差を変更可能でなくてもよい。この場合、偏光調整光学系1115cは、加工光EL1#1及びEL1#2の間に固定の偏光差を与えてもよい。この場合であっても、加工光EL1#1及びEL1#2の間に偏光差が与えられる限りは、加工装置1は、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成するように、ワークWを適切に加工することができるという効果を享受することができる。
【0120】
尚、加工光学系111cは、偏光調整光学系1114c及び1115cのいずれか一方を備えている一方で、偏光調整光学系1114c及び1115cのいずれか他方を備えていなくてもよい。つまり、加工光学系111cは、偏光調整光学系1114c及び1115cの双方を必ずしも備えていなくてもよい。
【0121】
(2-5)加工光学系111の変形例
続いて、加工光学系111の変形例について説明する。
【0122】
(2-5-1)加工光学系111aの変形例
上述した説明では、加工光学系111aは、ビームスプリッタ1111aを用いて、加工光EL1#1及びEL1#2の間に強度差を与えている。しかしながら、加工光学系111aは、ビームスプリッタ1111aを用いることなく、加工光EL1#1及びEL1#2の間に強度差を与えてもよい。以下、ビームスプリッタ1111aを用いることなく加工光EL1#1及びEL1#2の間に強度差を与える加工光学系111aの一例として、加工光学系111aの第1変形例及び第2変形例について順に説明する。
【0123】
(2-5-1-1)加工光学系111aの第1変形例
加工光学系111aの第1変形例の構造を示す断面図である
図19に示すように、第1変形例では、加工光学系111aは、ビームスプリッタ1111aに加えて又は代えて、偏光ビームスプリッタ1114aと、波長板1115aとを備えていてもよい。この場合、加工光学系111aは、偏光ビームスプリッタ1114a及び波長板1115aを用いて、加工光EL1#1及びEL1#2の間に強度差を与えてもよい。
【0124】
具体的には、加工光源2から射出される加工光EL0は、波長板1115aに入射する。波長板1115aは、波長板1115aを通過する加工光EL0の偏光状態を調整する。具体的には、波長板1115aは、波長板1115aを通過する加工光EL0の偏光方向を調整する。波長板1115aは、加工光EL0の偏光方向を調整することで、加工光EL0に含まれるs偏光とp偏光との比率を所望比率に設定する。
【0125】
波長板1115aを通過した加工光EL0は、偏光ビームスプリッタ1114aに入射する。加工光EL0に含まれるp偏光は、加工光EL1#1として偏光ビームスプリッタ1114aを通過する。一方で、加工光EL0に含まれるs偏光は、加工光EL1#2として偏光ビームスプリッタ1114aによって反射される。このため、偏光ビームスプリッタ1114aは、分岐光学系と称されてもよい。
【0126】
偏光ビームスプリッタ1114aから射出される加工光EL1#1及びEL1#2は、ミラー1112a及び1113aにそれぞれ入射する。その結果、第1変形例においても、上述したように、ミラー1112aが反射した加工光EL1#1及びミラー1113aが反射した加工光EL1#2は、ワークW上に設定される干渉領域IAに照射される。このため、干渉領域IA内において、加工光EL1#1及びEL1#2が干渉することで発生する干渉光が干渉縞ISを形成する。この場合、偏光ビームスプリッタ1114a、ミラー1112a及びミラー1113aは、干渉縞ISを形成するための干渉光学系として機能しているとみなしてもよい。
【0127】
ここで、上述したように、波長板1115aは、加工光EL0の偏光方向を調整することで、加工光EL0に含まれるs偏光とp偏光との比率を所望比率に設定する。つまり、波長板1115aは、加工光EL0の偏光方向を調整することで、偏光ビームスプリッタ1114aにおいて加工光EL0を分岐することで生成されるs偏光とp偏光との比率を所望比率に設定する。偏光ビームスプリッタ1114aを通過した加工光EL1#1の強度と、偏光ビームスプリッタ1114aが反射した加工光EL1#2の強度との比率は、加工光EL0に含まれるs偏光とp偏光との比率に応じた比率となる。このため、加工光EL1#1及びEL1#2の間に強度差を与えるために、波長板1115aは、波長板1115aを通過する加工光EL0に含まれるs偏光とp偏光との比率を、1よりも大きい又は小さい所望比率に設定してもよい。この場合、偏光ビームスプリッタ1114a及び波長板1115aは、加工光EL1#1及びEL1#2の間に強度差を与える(つまり、加工光EL1#1及びEL1#2の少なくとも一方の強度を調整する)ための調整光学系又は強度調整部材として機能しているとみなしてもよい。
【0128】
このように偏光ビームスプリッタ1114aを通過した加工光EL1#1の強度と、偏光ビームスプリッタ1114aが反射した加工光EL1#2の強度とが異なる場合には、ワークWの表面での加工光EL1#1の強度と、ワークWの表面での加工光EL1#2の強度とが異なるものとなる。従って、第1変形例においても、上述したように、加工装置1は、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成するように、ワークWを適切に加工することができるという効果を享受することができる。
【0129】
波長板1115aは、加工光EL0の進行方向に沿った軸周りに回転することで、加工光EL0に含まれるs偏光とp偏光との比率を変更してもよい。つまり、波長板1115aは、加工光EL0の進行方向に沿った軸周りに回転することで、加工光EL0に含まれるs偏光とp偏光との比率を変更してもよい。加工光EL0に含まれるs偏光とp偏光との比率が変わると、偏光ビームスプリッタ1114aから射出される加工光EL1#1及びEL1#2の強度の比率が変わる。その結果、波長板1115aは、加工光EL1#1及びEL1#2の強度の調整度合いを変更しているとみなしてもよい。つまり、波長板1115aは、加工光EL1#1及びEL1#2の間に与える強度差を変更してもよい。その結果、第1変形例においても、上述したように、加工装置1は、理想的な形状が変わる場合であっても、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成するように、ワークWを適切に加工することができるという効果を享受することができる。
【0130】
但し、波長板1115aは、回転可能でなくてもよい。波長板1115aは、加工光EL1#1及びEL1#2の間に与える強度差を変更しなくてもよい。この場合、波長板1115aは、加工光EL0に含まれるs偏光とp偏光との比率を、固定された所望比率(例えば、1よりも大きい又は小さい所望比率)に設定してもよい。この場合であっても、加工光EL1#1及びEL1#2の間に強度差が与えられる限りは、加工装置1は、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成するように、ワークWを適切に加工することができるという効果を享受することができる。
【0131】
第1変形例では、加工光学系111aは、波長板1116aと、波長板1117aとを更に備えていてもよい。波長板1116aは、偏光ビームスプリッタ1114aとワークWとの間における加工光EL1#1の光路に配置される。波長板1117aは、偏光ビームスプリッタ1114aとワークWとの間における加工光EL1#2の光路に配置される。波長板1116a及び1117aの少なくとも一方は、ワークWに照射される加工光EL1#1の偏光状態とワークWに照射される加工光EL1#2の偏光状態とが同じになるよう、加工光EL1#1及びEL1#2の少なくとも一方の偏光状態を調整してもよい。波長板1116a及び1117aの少なくとも一方は、ワークWに照射される加工光EL1#1の偏光状態とワークWに照射される加工光EL1#2の偏光状態とが所望状態となるよう、加工光EL1#1及びEL1#2の少なくとも一方の偏光状態を調整してもよい。1/2波長板及び1/4波長板のいずれか一方が、波長板1116aとして用いられ、1/2波長板及び1/4波長板のいずれか他方が、波長板1117aとして用いられてもよい。
【0132】
(2-5-1-2)加工光学系111aの第2変形例
加工光学系111aの第2変形例の構造を示す断面図である
図20に示すように、第2変形例では、加工光学系111aは、強度調整素子1118aと強度調整素子1119aとを更に備えていてもよい。この場合、加工光学系111aは、強度調整素子1118a及び1119aを用いて、加工光EL1#1及びEL1#2の間に強度差を与えてもよい。
【0133】
具体的には、強度調整素子1118aは、ビームスプリッタ1111aから射出される加工光EL1#1の光路に配置される。強度調整素子1118aは、強度調整素子1118aに入射する加工光EL1#1の強度を調整する。一方で、強度調整素子1119aは、ビームスプリッタ1111aから射出される加工光EL1#2の光路に配置される。強度調整素子1119aは、強度調整素子1119aに入射する加工光EL1#2の強度を調整する。強度調整素子1118a及び1119aの少なくとも一方は、ワークWの表面での加工光EL1#1の強度とワークWの表面での加工光EL1#2の強度とが異なるものとなるように、加工光EL1#1及びEL1#2の少なくとも一方の強度を調整してもよい。つまり、強度調整素子1118a及び1119aの少なくとも一方は、加工光EL1#1及びEL1#2の間に強度差を与えるように、加工光EL1#1及びEL1#2の少なくとも一方の強度を調整してもよい。この場合、強度調整素子1118a及び1119aは、加工光EL1#1及びEL1#2の間に強度差を与える(つまり、加工光EL1#1及びEL1#2の少なくとも一方の強度を調整する)ための調整光学系又は強度調整部材として機能しているとみなしてもよい。その結果、第2変形例においても、上述したように、加工装置1は、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成するように、ワークWを適切に加工することができるという効果を享受することができる。
【0134】
強度調整素子1118aは、加工光EL1#1の強度の調整度合いを変更可能であってもよい。強度調整素子1118aは、加工光EL1#1の強度の調整度合いを変更することで、加工光EL1#1及びEL1#2の間に与える強度差を変更してもよい。同様に、強度調整素子1119aは、加工光EL1#2の強度の調整度合いを変更可能であってもよい。特に、強度調整素子1119aは、加工光EL1#2の強度の調整度合いを変更することで、加工光EL1#1及びEL1#2の間に与える強度差を変更してもよい。この場合、第2変形例においても、上述したように、加工装置1は、理想的な形状が変わる場合であっても、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成するように、ワークWを適切に加工することができるという効果を享受することができる。尚、加工光EL1#1及びEL1#2の強度の調整度合いをそれぞれ変更可能な強度調整素子1118a及び1119aのそれぞれの一例として、液晶シャッタがあげられる。
【0135】
但し、強度調整素子1118aは、加工光EL1#1の強度の調整度合いを変更可能でなくてもよい。この場合、強度調整素子1118aは、加工光EL1#1の強度を、固定された一定量だけ又は固定された一定割合だけ増加又は減少させてもよい。同様に、強度調整素子1119aは、加工光EL1#1の強度の調整度合いを変更可能でなくてもよい。この場合、強度調整素子1119aは、加工光EL1#2の強度を、固定された一定量だけ又は固定された一定割合だけ増加又は減少させてもよい。この場合であっても、加工光EL1#1及びEL1#2の間に強度差が与えられる限りは、加工装置1は、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成するように、ワークWを適切に加工することができるという効果を享受することができる。尚、加工光EL1#1及びEL1#2の強度の調整度合いを変更可能でない強度調整素子1118a及び1119aのそれぞれの一例として、加工光EL1#1及びEL1#2に対して所定の透過率を有する光学フィルタがあげられる。
【0136】
尚、加工光学系111aは、強度調整素子1118a及び1119aのいずれか一方を備えている一方で、強度調整素子1118a及び1119aのいずれか他方を備えていなくてもよい。つまり、加工光学系111aは、強度調整素子1118a及び1119aの双方を必ずしも備えていなくてもよい。
【0137】
(2-5-2)加工光学系111bの変形例
加工光学系111bは、加工光EL1#11及びEL1#12の間、及び、加工光EL1#21及びEL1#22の間に位相差を与えることに加えて、加工光EL1#11及びEL1#12の少なくとも一方と加工光EL1#21及びEL1#22の少なくとも一方との間に強度差を与えてもよい。具体的には、加工光学系111bが備えるビームスプリッタ1111bの分岐比は、加工光学系111aが備えるビームスプリッタ1111aの分岐比と同様に、1よりも大きい又は小さい比に設定されていてもよい。この場合、加工光学系111bは、加工光EL1#11及びEL1#12の間、及び、加工光EL1#21及びEL1#22の間に位相差を与え、且つ、加工光EL1#11及びEL1#12の少なくとも一方と加工光EL1#21及びEL1#22の少なくとも一方との間に強度差を与えることで、干渉縞ISの形成に影響を与えない一方でフルエンス分布に影響を与える光成分を干渉光に与えている。このため、位相差及び強度差の双方が与えられない比較例(
図5(a)参照)と比較して、
図21の上部に示すように、最小フルエンスが大きくなる。このため、比較例(
図5(a)参照)と比較して、
図21の下部に示すように、リブレット構造RBの形状の精度が改善される。このため、加工装置1は、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成するように、ワークWを適切に加工することができるという効果を享受することができる。
【0138】
(2-5-3)加工光学系111cの変形例
加工光学系111cは、加工光EL1#1及びEL1#2の間に偏光差を与えることに加えて、加工光EL1#1及びEL1#2の間に強度差を与えてもよい。具体的には、加工光学系111cが備えるビームスプリッタ1111cの分岐比は、加工光学系111aが備えるビームスプリッタ1111aの分岐比と同様に、1よりも大きい又は小さい比に設定されていてもよい。この場合、加工光学系111cは、加工光EL1#1及びEL1#2の間に偏光差及び強度差の双方を与えることで、干渉縞ISの形成に影響を与えない一方でフルエンス分布に影響を与える光成分を干渉光に与えている。このため、加工装置1は、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成するように、ワークWを適切に加工することができるという効果を享受することができる。
【0139】
加工光学系111cは、加工光EL1#1及びEL1#2の間に偏光差を与えることに加えて、加工光EL1#1及びEL1#2の間に位相差を与えてもよい。具体的には、加工光学系111cは、ミラー1112a及び1113aに代えて、加工光学系111bが備えるビームスプリッタ1112b、ビームスプリッタ1113b、ミラー1114b及びミラー11115bを備えていてもよい。更に、加工光学系111cのビームスプリッタ1111cは、加工光学系111bのビームスプリッタ1111bとして機能してもよい。この場合、加工光学系111cは、加工光EL1#1及びEL1#2の間に偏光差及び位相差の双方を与えることで、干渉縞ISの形成に影響を与えない一方でフルエンス分布に影響を与える光成分を干渉光に与えている。このため、加工装置1は、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成するように、ワークWを適切に加工することができるという効果を享受することができる。
【0140】
加工光学系111cは、加工光EL1#1及びEL1#2の間に、偏光差、強度差及び位相差の全てを与えてもよい。この場合においても、加工装置1は、理想的な形状に近い又は一致している形状を有するリブレット構造RBを形成するように、ワークWを適切に加工することができるという効果を享受することができる。
【0141】
加工光学系111cは、加工光EL1#1の偏光状態と、加工光EL1#2の偏光状態とが同じになるように、加工光EL1#1及びEL1#2の少なくとも一方の偏光状態を調整してもよい。例えば、
図22に示すように、加工光学系111cは、加工光EL1#1及びEL1#2の双方がp偏光となるように、加工光EL1#1及びEL1#2の少なくとも一方の偏光状態を調整してもよい。p偏光である加工光EL1#1とp偏光である加工光EL1#2とが干渉することで発生する干渉光のフルエンス分布は、少なくとも二つの加工光EL1の間に光学特性に関する差分(例えば、強度差、位相差又は偏光差)を与えた場合に発生する干渉光のフルエンス分布と同様の特徴を有する。つまり、加工光学系111cは、p偏光である加工光EL1#1とp偏光である加工光EL1#2とを干渉させることで、実質的に、干渉縞ISの形成に影響を与えない一方でフルエンス分布に影響を与える光成分(いわゆる、干渉縞ISのフルエンス分布のDC成分)を干渉光に与えることができる。この現象は、特に加工光EL1#1及びEL1#2のワークWに対する入射角度が大きくなるほど顕著に表れる。従って、加工光EL1#1の偏光状態と加工光EL1#2の偏光状態とが同じになる場合であっても、加工光EL1#1及びEL1#2の間に偏光差を与える場合に享受可能な効果と同様の効果が享受可能となる。
【0142】
(2-5-4)加工光学系111aから111cに共通する変形例
上述した説明では、加工光学系111aから111cは、ビームスプリッタ1111aから1111cをそれぞれ用いて、加工光源2からの加工光EL0を複数の加工光EL1に分岐している。しかしながら、加工光学系111aから111cの少なくとも一つは、ビームスプリッタ1111aから1111cをそれぞれ用いて、加工光源2からの加工光EL0を複数の加工光EL1に分岐している。
【0143】
例えば、加工光学系111aから111cの少なくとも一つは、ハーフミラーを用いて、加工光EL0を複数の加工光EL1に分岐してもよい。加工光学系111aから111cの少なくとも一つは、波長板と偏光ビームスプリッタとを用いて、加工光EL0を複数の加工光EL1に分岐してもよい。加工光学系111aから111cの少なくとも一つは、回折光学素子(DOE:Diffractive Optical Element)を用いて、加工光EL0を複数の加工光EL1に分岐してもよい。加工光学系111aから111cの少なくとも一つは、音響光学素子(AOM:Acousto Optical Modulator)を用いて、加工光EL0を複数の加工光EL1に分岐してもよい。
【0144】
(3)変形例
続いて、加工システムSYSの変形例について説明する。
【0145】
(3-1)加工システムSYSの第1変形例
初めに、
図23を参照しながら、加工システムSYSの第1変形例について説明する。
図23は、加工システムSYSの第1変形例のシステム構成を示すシステム構成図である。尚、以下の説明では、加工システムSYSの第1変形例を、“加工システムSYSA”と称する。
【0146】
図23に示すように、第1変形例における加工システムSYSAは、上述した加工システムSYSと比較して、加工装置1に代えて加工装置1Aを備えているという点で異なる。加工システムSYSAのその他の特徴は、加工システムSYSのその他の特徴と同一であってもよい。加工装置1Aは、加工装置1と比較して、加工ヘッド11に代えて加工ヘッド11Aを備えているという点で異なる。加工装置1Aのその他の特徴は、加工装置1のその他の特徴と同一であってもよい。加工ヘッド11Aは、加工ヘッド11と比較して、照明光学系112Aと、照明光学系113Aとを更に備えているという点で異なる。加工ヘッド11Aのその他の特徴は、加工ヘッド11のその他の特徴と同一であってもよい。
【0147】
照明光学系112A及び113Aは、加工光源2からの加工光EL0の強度分布が所望の分布となるように、加工光EL0の強度分布を変更可能な光学系である。具体的には、加工光源2が射出する加工光EL0の強度分布は、通常、
図24の上部に示すように、加工光EL0の進行方向に交差する面内での位置が加工光EL0の主光線から離れるほど、当該位置での加工光EL0の強度が低くなるガウス分布となっている。加工光源2が射出する加工光EL0の強度分布は、通常、
図24の上部に示すように、加工光EL0の進行方向に交差する面内での位置が加工光EL0の主光線に近づくほど、当該位置での加工光EL0の強度が高くなるガウス分布となっている。照明光学系112A及び113Aは、ガウス分布となっている加工光EL0の強度分布が、
図24の下部に示す平坦分布となるように、加工光EL0の強度分布を変更してもよい。
図24の下部に示す平坦分布は、加工光EL0の進行方向に交差する面内での加工光EL0の強度のばらつきが、
図24の上部に示すガウス分布よりも小さい分布であってもよい。平坦分布は、加工光EL0の進行方向に交差する面内での加工光EL0の強度のばらつきが許容上限値を下回る分布であってもよい。
【0148】
尚、第1変形例では、加工光EL0の進行方向に交差する面がXY平面に沿った面であるものとして説明を進める。
【0149】
照明光学系112Aの構造が
図25に示されている。
図25に示すように、照明光学系112Aは、ミラー1120Aと、ミラー1121Aと、ミラー1122Aと、ミラー1123Aと、ミラー1124Aと、ミラー1125Aと、ハーフミラー1126Aと、反射型波長板1127Aと、反射型波長板1128Aと、偏光ビームスプリッタ1129Aとを備えている。
【0150】
加工光源2から射出される加工光EL0は、ミラー1120Aに入射する。尚、以下では、加工光源2から射出される加工光EL0が円偏光である例について説明する。ミラー1120Aは、加工光EL0を、加工光EL0の進行方向に交差する第1分割方向(
図25に示す例では、Y軸方向)に沿って分割する。具体的には、ミラー1120Aは、Y軸方向に沿って並ぶ二つのミラー11201A及び11202Aを含んでいる。ミラー11201Aは、加工光EL0の光束のうちの-Y側の半分の光束を加工光EL0#21として、ミラー1121Aに向けて反射する。加工光EL0#21の強度分布は、
図26の2段目に示すように、
図26の1段目に示すガウス分布のうちの-Y側の半分の分布と同じになる。また、ミラー11202Aは、加工光EL0の光束のうちの+Y側の半分の光束を、加工光EL0#22として、ミラー1123Aに向けて反射する。加工光EL0#22の強度分布は、
図26の2段目に示すように、
図26の1段目に示すガウス分布のうちの+Y側の半分の分布と同じになる。
【0151】
ミラー11201Aが反射した加工光EL0#21は、ミラー1121A及び1122Aを介して、ハーフミラー1126Aに入射する。ミラー11202Aが反射した加工光EL0#22は、ミラー1123Aから1125Aを介して、ハーフミラー1126Aに入射する。ハーフミラー1126Aに入射する加工光EL0#21の一部は、ハーフミラー1126Aを通過する。ハーフミラー1126Aに入射する加工光EL0#21の他の一部は、ハーフミラー1126Aによって反射される。ハーフミラー1126Aに入射する加工光EL0#22の一部は、ハーフミラー1126Aを通過する。ハーフミラー1126Aに入射する加工光EL0#22の他の一部は、ハーフミラー1126Aによって反射される。
【0152】
ハーフミラー1126Aは、ハーフミラー1126Aを通過した加工光EL0#21の一部とハーフミラー1126Aが反射した加工光EL0#22の一部とが合成された加工光EL0#23を射出する。この場合、加工光EL0#23の強度分布は、
図26の3段目に示すように、
図26の2段目に示す強度分布を加算することで得られる分布と同じになる。但し、ハーフミラー1126Aを介して加工光EL0#21の一部と加工光EL0#22の一部とが合成されているがゆえに、加工光EL0#23の強度は、加工光EL0#21及びEL#22の強度の概ね半分となる。
【0153】
ハーフミラー1126Aは、ハーフミラー1126Aが反射した加工光EL0#21の一部とハーフミラー1126Aを通過した加工光EL0#22の一部とが合成された加工光EL0#24を射出する。この場合、加工光EL0#24の強度分布は、
図26の3段目に示すように、
図26の2段目に示す強度分布を加算することで得られる分布と同じになる。但し、ハーフミラー1126Aを介して加工光EL0#21の一部と加工光EL0#22の一部とが合成されているがゆえに、加工光EL0#24の強度は、加工光EL0#21及びEL#22の強度の概ね半分となる。
【0154】
ハーフミラー1126Aが射出した加工光EL0#23は、反射型波長板1127Aを介して偏光ビームスプリッタ1129Aに入射する。ハーフミラー1126Aが射出した加工光EL0#24は、反射型波長板1128Aを介して偏光ビームスプリッタ1129Aに入射する。反射型波長板1127Aは、円偏光である加工光EL0#23をp偏光に変換する。反射型波長板1128Aは、円偏光である加工光EL0#24をs偏光に変換する。
【0155】
p偏光に変換された加工光EL0#23は、偏光ビームスプリッタ1129Aを通過する。s偏光に変換された加工光EL0#24は、偏光ビームスプリッタ1129Aによって反射される。偏光ビームスプリッタ1129Aは、偏光ビームスプリッタ1129Aを通過した加工光EL0#23と偏光ビームスプリッタ1129Aが反射した加工光EL0#24とが合成された加工光EL0#2を射出する。この場合、加工光EL0#2の強度分布は、
図26の4段目に示すように、
図26の3段目に示す強度分布を加算することで得られる分布と同じになる。
【0156】
この際、ミラー1123A及び1124Aは、照明光学系112Aが射出する加工光EL0#2が円偏光になるように、加工光EL0#22の光路長を調整してもよい。具体的には、ミラー1123A及び1124Aは、加工光EL0#22の光路長を調整するように移動可能であってもよい。
【0157】
このように、照明光学系112Aは、強度分布がガウス分布となる加工光EL0の強度分布が、Y軸方向において平坦分布となるように、加工光EL0の強度分布を変更している。つまり、照明光学系112Aは、Y軸方向における強度分布が平坦分布となる加工光EL0#2を射出する。一方で、照明光学系112Aが射出する加工光EL0#2のX軸方向における強度分布は、ガウス分布のままである。そこで、照明光学系113Aは、照明光学系112Aが射出する加工光EL0#2の強度分布が、X軸方向において平坦分布となるように、加工光EL0#2の強度分布を変更する。このために、
図27に示すように、照明光学系113Aは、ミラー1130Aと、ミラー1131Aと、ミラー1132Aと、ミラー1133Aと、ミラー1134Aと、ミラー1135Aと、ハーフミラー1136Aと、反射型波長板1137Aと、反射型波長板1138Aと、偏光ビームスプリッタ1139Aとを備えている。
【0158】
照明光学系113Aは、照明光学系112AをZ軸周りに90度回転させることで得られる光学系と同一であってもよい。つまり、照明光学系112AをZ軸周りに90度回転させることで得られる光学系が備えるミラー1120Aと、ミラー1121Aと、ミラー1122Aと、ミラー1123Aと、ミラー1124Aと、ミラー1125Aと、ハーフミラー1126Aと、反射型波長板1127Aと、反射型波長板1128Aと、偏光ビームスプリッタ1129Aとが、照明光学系113Aのミラー1130Aと、ミラー1131Aと、ミラー1132Aと、ミラー1133Aと、ミラー1134Aと、ミラー1135Aと、ハーフミラー1136Aと、反射型波長板1137Aと、反射型波長板1138Aと、偏光ビームスプリッタ1139Aとして用いられてもよい。
【0159】
具体的には、ミラー1130Aは、照明光学系112Aが射出する加工光EL0#2を、加工光EL0#2の進行方向に交差する第2分割方向(
図27に示す例では、X軸方向)に沿って分割する。具体的には、ミラー1130Aは、X軸方向に沿って並ぶ二つのミラー11301A及び11302Aを含んでいる。ミラー11301Aは、加工光EL0#2の光束のうちの-X側の半分の光束を加工光EL0#31として、ミラー1131Aに向けて反射する。加工光EL0#31の強度分布は、
図28の2段目に示すように、
図28の1段目に示すガウス分布のうちの-X側の半分の分布と同じになる。また、ミラー11302Aは、加工光EL0#2の光束のうちの+X側の半分の光束を、加工光EL0#32として、ミラー1133Aに向けて反射する。加工光EL0#32の強度分布は、
図28の2段目に示すように、
図28の1段目に示すガウス分布のうちの+X側の半分の分布と同じになる。
【0160】
ミラー11301Aが反射した加工光EL0#31は、ミラー1131A及び1122Aを介して、ハーフミラー1136Aに入射する。ミラー11302Aが反射した加工光EL0#32は、ミラー1133Aから1135Aを介して、ハーフミラー1136Aに入射する。ハーフミラー1136Aは、ハーフミラー1126Aと同様に、ハーフミラー1136Aを通過した加工光EL0#31の一部とハーフミラー1136Aが反射した加工光EL0#32の一部とが合成された加工光EL0#33を射出する。この場合、加工光EL0#33の強度分布は、
図28の3段目に示すように、
図28の2段目に示す強度分布を加算することで得られる分布と同じになる。但し、ハーフミラー1136Aを介して加工光EL0#31の一部と加工光EL0#32の一部とが合成されているがゆえに、加工光EL0#33の強度は、加工光EL0#31及びEL#32の強度の概ね半分となる。また、ハーフミラー1136Aは、ハーフミラー1136Aが反射した加工光EL0#31の一部とハーフミラー1136Aを通過した加工光EL0#32の一部とが合成された加工光EL0#34を射出する。この場合、加工光EL0#34の強度分布は、
図28の3段目に示すように、
図28の2段目に示す強度分布を加算することで得られる分布と同じになる。但し、ハーフミラー1136Aを介して加工光EL0#31の一部と加工光EL0#32の一部とが合成されているがゆえに、加工光EL0#34の強度は、加工光EL0#31及びEL#32の強度の概ね半分となる。
【0161】
ハーフミラー1136Aが射出した加工光EL0#33は、反射型波長板1137Aを介して偏光ビームスプリッタ1139Aに入射する。ハーフミラー1136Aが射出した加工光EL0#34は、反射型波長板1138Aを介して偏光ビームスプリッタ1139Aに入射する。反射型波長板1137Aは、円偏光である加工光EL0#33をp偏光に変換する。反射型波長板1138Aは、円偏光である加工光EL0#34をs偏光に変換する。偏光ビームスプリッタ1139Aは、偏光ビームスプリッタ1139Aを通過した加工光EL0#33と偏光ビームスプリッタ1139Aが反射した加工光EL0#34とが合成された加工光EL0#3を射出する。この場合、加工光EL0#3の強度分布は、
図28の4段目に示すように、
図28の3段目に示す強度分布を加算することで得られる分布と同じになる。
【0162】
この際、ミラー1133A及び1134Aは、照明光学系113Aが射出する加工光EL0#3が円偏光になるように、加工光EL0#32の光路長を調整してもよい。具体的には、ミラー1133A及び1134Aは、加工光EL0#32の光路長を調整するように移動可能であってもよい。
【0163】
このように、照明光学系113Aは、X軸方向における強度分布がガウス分布となる加工光EL0#2の強度分布が、X軸方向において平坦分布となるように、加工光EL0#2の強度分布を変更している。その結果、照明光学系113Aが射出する加工光EL0#3の強度分布は、X軸方向及びY軸方向の双方において平坦分布となる。第1変形例では、このような加工光EL0#3が加工光学系111に入射する。
【0164】
尚、上述した説明では、加工ヘッド11Aは、単一の照明光学系112Aと単一の照明光学系113Aとを備える照明光学ユニットを一つ備えている。しかしながら、
図29に示すように、加工ヘッド11Aは、単一の照明光学系112Aと単一の照明光学系113Aとを備える照明光学ユニットを複数備えていてもよい。この場合、第1の照明光学ユニットから射出される加工光EL0が、第1の照明光学ユニットとは異なる第2の照明光学ユニットに入射してもよい。つまり、照明光学系112A及び113Aを用いた加工光EL0の強度変換が複数回行われてもよい。この場合、加工光学系111に入射する加工光EL0の強度分布が理想的な平坦形状となる可能性が高くなる。
【0165】
また、第1変形例では、加工システムSYSAは、干渉縞ISを形成することなく、ワークWを加工してもよい。加工システムSYSAは、複数の加工光EL1のうちの少なくとも二つの加工光EL1の間に、光学特性に関する差分を与えなくてもよい。
【0166】
(3-2)加工システムSYSの第2変形例
続いて、
図30を参照しながら、加工システムSYSの第2変形例について説明する。
図30は、加工システムSYSの第2変形例のシステム構成を示すシステム構成図である。尚、以下の説明では、加工システムSYSの第2変形例を、“加工システムSYSB”と称する。
【0167】
図30に示すように、第2変形例における加工システムSYSBは、上述した加工システムSYS(或いは、上述した加工システムSYSA)と比較して、冷却装置4Bを備えているという点で異なる。加工システムSYSBのその他の特徴は、加工システムSYS(或いは、上述した加工システムSYSA)のその他の特徴と同一であってもよい。
【0168】
冷却装置4Bは、加工対象となる物体を冷却可能である。例えば、冷却装置4Bは、加工光学系111を冷却可能であってもよい。例えば、冷却装置4Bは、上述した加工光学系111aが備えるビームスプリッタ1111a、ミラー1112a、ミラー1113a、偏光ビームスプリッタ1114a、波長板1115a、波長板1116a、波長板1117a、強度調整素子1118a及び強度調整素子1119aの少なくとも一つを冷却可能であってもよい。例えば、冷却装置4Bは、上述した加工光学系111bが備えるビームスプリッタ1111b、ビームスプリッタ1112b、ビームスプリッタ1113b、ミラー1114b及びミラー1115bの少なくとも一つを冷却可能であってもよい。例えば、冷却装置4Bは、上述した加工光学系111cが備えるビームスプリッタ1111c、ミラー1112c、ミラー1113c、偏光調整光学系1114c及び偏光調整光学系1115cの少なくとも一つを冷却可能であってもよい。その結果、加工光学系111の発熱に起因した動作不良が発生する可能性が低くなる。
【0169】
冷却装置4Bは、気体を冷媒として用いることで、加工光学系111を冷却してもよい。気体を冷媒として用いる冷却装置4Bの一例が、
図31に示されている。
図31に示すように、冷却装置4Bは、気体供給管41Bを備えていてもよい。冷却装置4Bは、気体供給管41Bから、冷媒として気体を、冷却対象となる物体に向けて供給してもよい。冷却装置4Bは、気体供給管41Bから、冷媒として気体を、冷却対象となる物体の周囲の空間に向けて供給してもよい。その結果、気体供給管41Bから供給される気体によって、冷却対象となる物体が冷却される。冷媒として用いられる気体は、不活性ガスを含んでいてもよい。不活性ガスは、例えば、窒素ガス及びアルゴンガスの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0170】
冷却装置4Bは、加工光学系111を収容する筐体15内において、気体供給管41Bから、冷媒として気体を、冷却対象となる物体に向けて供給してもよい。尚、筐体15には、加工光学系111から射出される加工光EL1が通過可能な保護窓121が形成されていてもよい。
【0171】
尚、気体供給管41Bは、気体に加えて又は代えて、冷媒としての液体を、冷却対象となる物体に向けて供給してもよい。つまり、気体供給管41Bを備える冷却装置4Bは、液体を冷媒として用いる冷却装置として機能してもよい。この場合、気体供給管41Bは、液体供給管と称されてもよい
冷却装置4Bは、液体を冷媒として用いることで、加工光学系111を冷却してもよい。液体を冷媒として用いる冷却装置4Bの一例が、
図32に示されている。
図32に示すように、冷却装置4Bは、水冷管42Bを備えていてもよい。水冷管42Bの内部には、冷媒としての液体が流れる流路が形成されている。水冷管42Bは、冷却対象となる物体に接触するように配置されていてもよい。水冷管42Bは、冷却対象となる物体の周囲の空間に配置されていてもよい。その結果、水冷管42B内の流路を流れる液体によって、冷却対象となる物体が冷却される。冷媒として用いられる液体は、水及び油の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0172】
尚、水冷管42Bの流路には、液体に加えて又は代えて、気体が冷媒として流れていてもよい。つまり、水冷管42Bを備える冷却装置4Bは、気体を冷媒として用いる冷却装置として機能してもよい。この場合、水冷管42Bは、空冷管と称されてもよい
また、第2変形例では、加工システムSYSBは、干渉縞ISを形成することなく、ワークWを加工してもよい。加工システムSYSBは、複数の加工光EL1のうちの少なくとも二つの加工光EL1の間に、光学特性に関する差分を与えなくてもよい。
【0173】
(3-3)その他の変形例
加工光源2の波長幅範囲(つまり、加工光源2が射出する加工光EL0の波長幅範囲)が狭帯域化されていてもよい。この場合、加工光源2の波長幅範囲が狭帯域化されていない場合と比較して、加工装置1がワークW上で干渉縞ISを形成する干渉領域IAが大きくなる。
【0174】
上述した説明では、加工装置1は、ヘッド駆動系12を備えている。しかしながら、加工装置1は、ヘッド駆動系12を備えていなくてもよい。つまり、加工ヘッド11は、移動可能でなくてもよい。また、上述した説明では、加工装置1は、ステージ駆動系14を備えている。しかしながら、加工装置1は、ステージ駆動系14を備えていなくてもよい。つまり、ステージ13は、移動可能でなくてもよい。或いは、そもそも、加工装置1は、ステージ13を備えていなくてもよい。
【0175】
上述した説明では、加工装置1が、金属性のワークW(つまり、母材)にリブレット構造RBを形成する例、及び、加工装置1が、ワークWの表面にコーティングされた膜にリブレット構造RBを形成する例について説明した。しかしながら、加工装置1が行う加工が、上述した例に限定されることはない。例えば、加工装置1は、ワークWの表面にリブレット構造RBを形成し、リブレット構造RBが形成されたワークWの表面が膜でコーティングされてもよい。例えば、加工装置1がワークWの表面にコーティングされた膜にリブレット構造RBを形成する場合には、リブレット構造RBが形成された膜が更に別の膜でコーティングされてもよい。いずれの例においても、リブレット構造RBが膜でコーティングされてもよい。この場合、リブレット構造RBにコーティングされた膜によってリブレット構造RBの機能が低減しないように、膜の厚みが決定されていてもよい。例えば、リブレット構造RBが膜に埋もれてしまう場合に膜によってリブレット構造RBの機能が低減される可能性があるため、リブレット構造RBが膜に埋もれないように、膜の厚みが決定されていてもよい。リブレット構造RBにコーティングされた膜によってリブレット構造RBの機能が低減しないように、リブレット構造RBの形状に沿って(例えば、凸状構造体81又は溝構造82に沿って)膜が形成されていてもよい。
【0176】
加工装置1は、除去加工に加えて又は代えて、ワークWに加工光ELを照射することでワークWに新たな構造物を付加する付加加工を行ってもよい。この場合、加工装置1は、付加加工を行うことで、上述したリブレット構造RBをワークWの表面に形成してもよい。或いは、加工装置1は、除去加工及び付加加工の少なくとも一方に加えて又は代えて、ワークWに工具を接触させることでワークWを加工する機械加工を行ってもよい。この場合、加工装置1は、機械加工を行うことで、上述したリブレット構造RBをワークWの表面に形成してもよい。
【0177】
上述した説明では、加工システムSYSは、ワークWの表面の流体に対する抵抗を低減させる機能を有するリブレット構造RBを形成している。しかしながら、加工システムSYSは、ワークWの表面の流体に対する抵抗を低減させる機能とは異なる機能を有する構造をワークWに形成してもよい。例えば、加工システムSYSは、流体とワークWの表面とが相対的に移動するときに発生する騒音を低減するためのリブレット構造をワークWに形成してもよい。例えば、加工システムSYSは、ワークWの表面上の流体の流れに対して渦を発生するリブレット構造をワークWに形成してもよい。例えば、加工システムSYSは、ワークWの表面に疎水性を与えるための構造をワークWに形成してもよい。
【0178】
上述した説明では、加工システムSYSは、ワークWの表面にリブレット構造RBを形成している。しかしながら、加工システムSYSは、ワークWの表面上に、任意の形状を有する任意の構造を形成してもよい。任意の構造の一例として、ワークWの表面上の流体の流れに対して渦を発生させる構造があげられる。任意の構造の他の一例として、ワークWの表面に疎水性を与えるための構造があげられる。任意の構造の他の一例としては、規則的又は不規則的に形成されたマイクロ・ナノメートルオーダの微細テクスチャ構造(典型的には、山構造及び溝構造を含む凹凸構造)があげられる。微細テクスチャ構造は、流体(気体及び/又は液体)による抵抗を低減させる機能を有するサメ肌構造及びディンプル構造の少なくとも一方を含んでいてもよい。微細なテクスチャ構造は、撥液機能及びセルフクリーニング機能の少なくとも一方を有する(例えば、ロータス効果を有する)ハスの葉表面構造を含んでいてもよい。微細なテクスチャ構造は、液体輸送機能を有する微細突起構造(米国特許公開第2017/0044002号公報参照)、親液性機能を有する凹凸構造、防汚機能を有する凹凸構造、反射率低減機能及び撥液機能の少なくとも一方を有するモスアイ構造、特定波長の光のみを干渉で強めて構造色を呈する凹凸構造、ファンデルワールス力を利用した接着機能を有するピラーアレイ構造、空力騒音低減機能を有する凹凸構造、液滴捕集機能を有するハニカム構造、並びに、表面上に形成される層との密着性を向上させる凹凸構造、摩擦抵抗を低減するための凹凸構造等の少なくとも一つを含んでいてもよい。この場合においても、凹凸構造を構成する凸状構造体は、上述したリブレット構造RBを構成する凸状構造体81と同様の構造を有してもよい。凹凸構造を構成する溝構造は、上述したリブレット構造RBを構成する溝構造82と同様の構造を有してもよい。尚、微細なテクスチャ構造は、特定の機能を有していなくてもよい。
【0179】
上述した説明では、加工システムSYSは、ワークWの表面にリブレット構造RBを形成している。しかしながら、加工システムSYSは、ワークWの表面にリブレット構造RBを転写するための型を形成してもよい。この場合、ワークWは、移動体の表面であってもよいし、移動体に貼付可能なフィルムであってもよい。
【0180】
上述した説明では、加工システムSYSは、ワークWに加工光ELを照射することで、ワークWを加工している。しかしながら、加工システムSYSは、光とは異なる任意のエネルギービームをワークWに照射して、ワークWを加工させてもよい。この場合、加工システムSYSは、加工光源2に加えて又は代えて、任意のエネルギービームを照射可能なビーム照射装置を備えていてもよい。任意のエネルギービームの一例として、荷電粒子ビーム及び電磁波の少なくとも一方があげられる。荷電粒子ビームの一例として、電子ビーム及びイオンビームの少なくとも一方があげられる。
【0181】
(4)付記
以上説明した実施形態に関して、更に以下の付記を記載する。
[付記1]
光源からの光を用いて物体の表面にリブレット加工を行う加工装置であって、
前記光源からの前記光を分岐することで生成される複数の加工光をそれぞれ異なる入射方向から前記物体に照射することで、前記物体の表面に干渉縞を形成する第1光学系と、
前記複数の加工光のうち前記物体に照射される少なくとも二つの加工光の間に強度差を与えて、前記物体の表面に形成されるリブレットの形状を調整する第2光学系と
を備える加工装置。
[付記2]
光源からの光を用いて物体の表面にリブレット加工を行う加工装置であって、
前記光源からの前記光を分岐することで生成される複数の加工光をそれぞれ異なる入射方向から前記物体に照射することで、前記物体の表面に干渉縞を形成する第1光学系と、
前記複数の加工光のうち前記物体に照射される少なくとも二つの加工光の間に位相差を与えて、前記物体の表面に形成されるリブレットの形状を調整する第2光学系と
を備える加工装置。
[付記3]
光源からの光を用いて物体の表面にリブレット加工を行う加工装置であって、
前記光源からの前記光を分岐することで生成される複数の加工光をそれぞれ異なる入射方向から前記物体に照射することで、前記物体の表面に干渉縞を形成する第1光学系と、
前記複数の加工光のうち前記物体に照射される少なくとも二つの加工光の間に偏光差を与えて、前記物体の表面に形成されるリブレットの形状を調整する第2光学系と
を備える加工装置。
[付記4]
光源からの光を用いて物体の表面を加工する加工装置であって、
前記光源からの前記光を分岐することで生成される複数の加工光をそれぞれ異なる入射方向から前記物体に照射することで、前記物体の表面に干渉縞を形成する干渉光学系と、
前記複数の加工光のうち前記物体に照射される少なくとも二つの加工光の間で、前記加工光の波パラメータが互いに異なるものとなるように、前記少なくとも二つの加工光のうちの少なくとも一つの前記波パラメータを調整する調整光学系と
を備える加工装置。
[付記5]
前記干渉縞は、前記複数の加工光が干渉することで発生する干渉光によって形成され、
前記調整光学系は、前記少なくとも二つの加工光の間で前記波パラメータを互いに異なるものにすることで、前記物体の表面上での前記干渉光のフルエンス分布における最小フルエンスが所望値以上となるように、前記少なくとも二つの加工光のうちの少なくとも一つの前記波パラメータを調整する
付記4に記載の加工装置。
[付記6]
前記物体は、前記干渉光のフルエンスが所定閾値よりも小さい場合におけるフルエンスと加工量との第1関係が、前記干渉光のフルエンスが前記所定閾値よりも大きい場合におけるフルエンスと加工量との第2関係とは異なるものとなるという特性を有しており、
前記所望値は、前記所定閾値に基づいて設定される
付記5に記載の加工装置。
[付記7]
前記波パラメータは、前記加工光の強度に相当する前記加工光の振幅を含む
付記4から6のいずれか一項に記載の加工装置。
[付記8]
前記光源からの前記光を分岐して前記複数の加工光を生成する分岐光学系を含み、
前記調整光学系は、前記分岐光学系を含む
付記7に記載の加工装置。
[付記9]
前記分岐光学系は、振幅分割型ビームスプリッタを含む
付記8に記載の加工装置。
[付記10]
前記分岐光学系は、偏光ビームスプリッタを含み、
前記調整光学系は、前記偏光ビームスプリッタに入射する前記加工光の偏光状態を変更する偏光変更部材を含む
付記8又は9に記載の加工装置。
[付記11]
前記調整光学系は、前記少なくとも二つの加工光のうちの少なくとも一つの光路上に配置され、且つ、前記少なくとも二つの加工光のうちの少なくとも一つの強度を調整可能な強度調整光学系を含む
付記8から10のいずれか一項に記載の加工装置。
[付記12]
前記波パラメータは、前記加工光の位相を含む
付記4から11のいずれか一項に記載の加工装置。
[付記13]
前記少なくとも二つの加工光は、第1の入射方向から前記物体の表面に第1の入射角度で入射する第1の加工光と、前記第1の入射方向とは異なる第2の入射方向から前記物体の表面に前記第1の入射角度とは異なる第2の入射角度で入射する第2の加工光とを含み、
前記調整光学系は、前記第1の加工光の位相と前記第2の加工光の位相とが異なるものとなるように、前記第1及び第2の加工光の少なくとも一つの位相を調整する
付記12に記載の加工装置。
[付記14]
前記少なくとも二つの加工光は、前記第1から第2の入射方向とは異なる第3の入射方向から前記物体の表面に前記第2の入射角度で入射する第3の加工光を含み、
前記調整光学系は、前記第1の加工光の位相と前記第2及び第3の加工光のそれぞれの位相とが異なるものとなるように、前記第1から第3の加工光の少なくとも一つの位相を調整する
付記13に記載の加工装置。
[付記15]
前記少なくとも二つの加工光は、前記第1から第3の入射方向とは異なる第4の入射方向から前記物体の表面に前記第1の入射角度で入射する第4の加工光を含み、
前記調整光学系は、前記第1及び第4の加工光のそれぞれの位相と前記第2及び第3の加工光のそれぞれの位相とが異なるものとなるように、前記第1から第4の加工光の少なくとも一つの位相を調整する
付記14に記載の加工装置。
[付記16]
前記調整光学系は、前記少なくとも二つの加工光のうちの少なくとも一つの光路上に配置され、且つ、前記少なくとも二つの加工光のうちの少なくとも一つの位相を調整可能な位相調整光学系を含む
付記12から15のいずれか一項に記載の加工装置。
[付記17]
前記位相調整光学系は、前記少なくとも二つの加工光のうちの少なくとも一つの光路長を調整することで、前記少なくとも二つの加工光のうちの少なくとも一つの位相を調整可能である
付記16に記載の加工装置。
[付記18]
前記波パラメータは、偏光状態を含む
付記4から17のいずれか一項に記載の加工装置。
[付記19]
前記少なくとも二つの加工光は、第5の入射方向から前記物体の表面に第3の入射角度で入射する楕円偏光である第5の加工光と、前記第5の入射方向とは異なる第6の入射方向から前記物体の表面に前記第3の入射角度で入射し且つ楕円偏光である第6の加工光とを含み、
前記調整光学系は、前記第5及び第6の加工光に交差する面内において、前記第5の加工光に交差する面内前記第5の加工光の回転方向と前記第6の加工光の回転方向とが異なり、且つ、前記第5の加工光の電磁場ベクトルの先端の軌跡を表す楕円の長軸の方向と、前記第6の加工光の電磁場ベクトルの先端の軌跡を表す楕円の長軸の方向とが揃うように、前記第5及び第6の加工光のうちの少なくとも一つの偏光状態を調整する
付記18に記載の加工装置。
[付記20]
前記少なくとも二つの加工光は、第7の入射方向から前記物体の表面に第4の入射角度で入射する直線偏光である第7の加工光と、前記第7の入射方向とは異なる第8の入射方向から前記物体の表面に前記第4の入射角度で入射し且つ直線偏光である第8の加工光とを含み、
前記調整光学系は、前記第7及び第8の加工光に交差する面内において、前記第7の加工光の電磁場ベクトルの先端の軌跡を表す線分の方向と、前記第8の加工光の電磁場ベクトルの先端の軌跡を表す線分の方向とが非平行になるように、前記少なくとも二つの加工光のうちの少なくとも一つの偏光状態を調整する
付記18又は19に記載の加工装置。
[付記21]
前記少なくとも二つの加工光は、第9の入射方向から前記物体の表面に第5の入射角度で入射する楕円偏光である第9の加工光と、前記第9の入射方向とは異なる第10の入射方向から前記物体の表面に前記第5の入射角度で入射し且つ楕円偏光である第10の加工光とを含み、
前記調整光学系は、前記第9及び第10の加工光に交差する面内において、前記第9の加工光の回転方向と前記第10の加工光の回転方向とが同じになり、且つ、前記第9の加工光の電磁場ベクトルの先端の軌跡を表す楕円の長軸の方向と、前記第10の加工光の電磁場ベクトルの先端の軌跡を表す楕円の長軸の方向とが非平行になるように、前記第9及び第10の加工光のうちの少なくとも一つの偏光状態を調整する
付記18から20のいずれか一項に記載の加工装置。
[付記22]
前記調整光学系は、前記少なくとも二つの加工光のうちの少なくとも一つの光路上に配置され、且つ、前記少なくとも二つの加工光のうちの少なくとも一つの偏光状態を調整可能な偏光調整光学系を含む
付記18から21のいずれか一項に記載の加工装置。
[付記23]
前記偏光調整光学系は、波長板を含む
付記22に記載の加工装置。
[付記24]
前記光源からの前記光は、パルス光である
付記1から23のいずれか一項に記載の加工装置。
[付記25]
光源からの光を用いて物体の表面を加工する加工装置であって、
前記光源からの前記光を分岐することで生成される複数の加工光をそれぞれ異なる入射方向から前記物体に照射することで、前記物体の表面に明部と暗部とを有する干渉縞を形成する第1光学系と、
前記物体の表面に形成される前記干渉縞の前記暗部における最小フルエンスを、前記物体の表面を除去できるフルエンスに設定する第2光学系と
を備える加工装置。
[付記26]
前記第2光学系は、前記最小フルエンスが所望値以上となるように、前記複数の加工光のうちの少なくとも一つの波パラメータを調整する
付記25に記載の加工装置。
[付記27]
前記物体は、前記複数の加工光が干渉することで発生し且つ前記干渉縞を形成する干渉光のフルエンスが所定閾値よりも小さい場合におけるフルエンスと加工量との第1関係が、前記干渉光のフルエンスが前記所定閾値よりも大きい場合におけるフルエンスと加工量との第2関係とは異なるものとなるという特性を有しており、
前記第2関係における、前記加工光のフルエンスの増加分に対する加工量の増加分の割合は、前記第1関係における前記割合よりも大きく、
前記所望値は、前記所定閾値に基づいて設定される
付記26に記載の加工装置。
[付記28]
前記干渉縞を用いて前記物体の一部を除去して前記物体の表面に凹凸構造を形成する
付記25から27のいずれか一項に記載の加工装置。
[付記29]
前記干渉縞の前記明部に達する前記加工光によって前記凹凸構造の凹の部分を形成し、
前記干渉縞の前記暗部に達する前記加工光によって前記凹凸構造の凸の部分を形成する
付記28に記載の加工装置。
[付記30]
前記干渉縞の前記暗部に達する前記複数の加工光によって前記物体の一部が除去される
付記29に記載の加工装置。
[付記31]
前記第2光学系は、前記複数の加工光のうちの少なくとも一つの加工光の強度と、前記複数の加工光のうちの前記少なくとも一つの加工光とは異なる少なくとも他の一つの加工光の強度とを異ならせる
付記25から30のいずれか一項に記載の加工装置。
[付記32]
前記第2光学系は、前記複数の加工光のうちの少なくとも一つの加工光と、前記複数の加工光のうちの前記少なくとも一つの加工光とは異なる少なくとも他の一つの加工光とに位相差を与える
付記25から付記31のいずれか一項に記載の加工装置。
[付記33]
前記位相差は、180+360×n°である(但し、nは整数である)
付記32に記載の加工装置。
[付記34]
前記第2光学系は、前記複数の加工光のうちの少なくとも一つの加工光である第1加工光の第1偏光状態と、前記複数の加工光のうちの前記少なくとも一つの加工光とは異なる少なくとも他の一つの加工光である第2加工光の第2偏光状態とを異ならせる
付記25から33のいずれか一項に記載の加工装置。
[付記35]
前記第1加工光の偏光成分のうちの少なくとも一部は、前記第2加工光の偏光成分のうちの少なくとも一部に対して直交している
付記34に記載の加工装置。
[付記36]
前記光源からの前記光は、パルス光である
付記25から35のいずれか一項に記載の加工装置。
[付記37]
光源からの光を用いて物体の表面を加工する加工方法であって、
前記光源からの前記光を分岐して複数の加工光を生成することと、
前記複数の加工光をそれぞれ異なる入射方向から前記物体に照射することと、
前記複数の加工光で前記物体の表面に干渉縞を形成することと、
前記複数の加工光のうち前記物体に照射される少なくとも二つの加工光の間で、前記加工光の波パラメータが互いに異なるものとなるように、前記少なくとも二つの加工光のうちの少なくとも一つの前記波パラメータを調整することと
を含む加工方法。
[付記38]
光源からの光を用いて物体の表面を加工する加工方法であって、
前記光源からの前記光を分岐して複数の加工光を生成することと、
前記複数の加工光をそれぞれ異なる入射方向から前記物体に照射することと、
前記複数の加工光で前記物体の表面に前記物体の表面に明部と暗部とを有する干渉縞を形成することと、
前記物体の表面に形成される前記干渉縞の前記暗部における最小フルエンスを、前記物体の表面を除去できるフルエンスに設定することと
を含む加工方法。
【0182】
上述の各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。上述の各実施形態の要件のうちの一部が用いられなくてもよい。上述の各実施形態の要件は、適宜他の実施形態の要件と置き換えることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態で引用した装置等に関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【0183】
また、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う加工装置及び加工方法もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0184】
SYS 加工システム
1 加工装置
11 加工ヘッド
111
111a
1111a ビームスプリッタ
1112a、1113a ミラー
1114a 偏光ビームスプリッタ
1115a、1116a、1117a 波長板
1118a、1119a 強度調整素子
111b 加工光学系
1111b、1112b、1113b ビームスプリッタ
1114b、1115b ミラー
111c 加工光学系
1111c ビームスプリッタ
1112c、1113c ミラー
1114c、1115c 偏光調整光学系
W ワーク
IS 干渉縞
IL 明部
ID 暗部
IA 干渉領域
EL、EL0、EL1 加工光
RB リブレット構造
81 凸状構造体
82 溝構造