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特許7582851受電装置、送電電圧制御方法および水中給電システム
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  • 特許-受電装置、送電電圧制御方法および水中給電システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】受電装置、送電電圧制御方法および水中給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/80 20160101AFI20241106BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20241106BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241106BHJP
   B63C 11/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H02J50/80
H02J50/12
H02J7/00 301D
B63C11/00 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020198636
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086557
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-11-02
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、防衛装備庁、安全保障技術研究推進制度「(海中移動体へ大電力を送る革新的ワイヤレス給電に関する研究)」の委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木 達雄
(72)【発明者】
【氏名】山口 修一郎
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-028832(JP,A)
【文献】特開2012-210112(JP,A)
【文献】特開2017-022804(JP,A)
【文献】特表2020-516221(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0342024(US,A1)
【文献】特開2019-176316(JP,A)
【文献】ロシア国特許出願公開第02744064(RU,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/80
H02J 50/12
H02J 7/00
B63C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中を移動可能な受電装置であって、
前記水中において送電装置からワイヤレスで伝送された電力を受電する受電部と、
蓄電池を有し、前記受電部で受電された受電電力に基づいて前記蓄電池を充電する電源部と、
前記受電電力に基づいて整流された整流電圧値を検出する第1のセンサと、
前記電源部による前記蓄電池への充電電流値を検出する第2のセンサと、
前記第1のセンサにより検出された前記整流電圧値と前記第2のセンサにより検出された前記充電電流値とに基づいて、前記送電装置からワイヤレスで伝送される前記電力に対応する送電電圧値を決定する受電側プロセッサと、
前記受電側プロセッサにより決定された前記送電電圧値を前記送電装置に送信する通信部と、を備える、
受電装置。
【請求項2】
前記受電側プロセッサは、
前記第1のセンサにより検出された前記整流電圧値が所定範囲内でない場合に、前記第2のセンサにより検出された前記充電電流値に基づいて前記送電電圧値を決定する、
請求項1に受電装置。
【請求項3】
前記受電側プロセッサは、
前記第2のセンサにより検出される充電電流値と前記送電電圧値との対応関係を示すテーブルを保持し、前記テーブルに基づいて前記充電電流値に対応する前記送電電圧値を決定する、
請求項2に記載の受電装置。
【請求項4】
前記通信部は、
前記送電装置との間で、電力線通信を用いて前記送電電圧値を送信する、
請求項1に記載の受電装置。
【請求項5】
水中を移動可能な受電装置が行う送電電圧制御方法であって、
前記水中において送電装置からワイヤレスで伝送された電力を受電し、
蓄電池を有する電源部において、受電された受電電力に基づいて前記蓄電池を充電し、
前記受電電力に基づいて整流された整流電圧値を検出し、
前記電源部による前記蓄電池への充電電流値を検出し、
検出された前記整流電圧値と検出された前記充電電流値とに基づいて、前記送電装置からワイヤレスで伝送される前記電力に対応する送電電圧値を決定し、
決定された前記送電電圧値を前記送電装置に送信する、
送電電圧制御方法。
【請求項6】
水中を移動可能な受電装置と送電装置とを含む水中給電システムであって、
前記受電装置は、
前記水中において前記送電装置からワイヤレスで伝送された電力を受電する受電部と、
蓄電池を有し、前記受電部で受電された受電電力に基づいて前記蓄電池を充電する電源部と、
前記受電電力に基づいて整流された整流電圧値を検出する第1のセンサと、
前記電源部による前記蓄電池への充電電流値を検出する第2のセンサと、
前記第1のセンサにより検出された前記整流電圧値と前記第2のセンサにより検出された前記充電電流値とに基づいて、前記送電装置からワイヤレスで伝送される前記電力に対応する送電電圧値を決定する受電側プロセッサと、
前記受電側プロセッサにより決定された前記送電電圧値を前記送電装置に送信する通信部と、を備え、
前記送電装置は、
前記受電装置から送信された前記送電電圧値に基づいて、前記受電装置にワイヤレスで伝送する電力を制御する、
水中給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、受電装置、送電電圧制御方法および水中給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水中において、受電装置(例えば水中航走体)との間で磁気共鳴方式を用いて非接触で電力を伝送する送電装置(例えば水中基地局)が開示されている。この送電装置は、送電用共鳴コイルと、風船と、風船制御機構とを備える。送電用共鳴コイルは、磁界共鳴方式により受電装置の受電用共鳴コイルに非接触で電力を伝送する。風船は、送電用共鳴コイルを内包する。風船制御機構は、風船を電力伝送時に膨張させることにより、送電用共鳴コイルと受電用共鳴コイルとの間の水を排除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-015901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1のように水中で送電装置から受電装置へ電力を伝送することを想定する。自立型無人潜水機(AUV:Autonomous Underwater Vehicle)等の水中航走体(つまり受電装置)内に充電用電源としてDC/DC電源を採用する場合、受電装置に搭載される整流器(つまり二次側の受電装置に誘起された交流電圧を直流電圧に変換する整流器)を介してDC/DC電源に供給される入力電圧は受電装置内の充電電流に応じて変動する。一方で、充電電流は充電開始時点から段階的に増加される必要があるが、受電装置内に搭載される蓄電池(いわゆるバッテリ)の状況に応じて適宜可変する必要がある。このため、充電電流が適時変動することを踏まえて、入力電圧を適切な範囲内に制御できなければ、DC/DC電源の電圧変換効率が低下したり、使用定格を満たさなかったりする(例えば作動が停止)という課題があった。
【0005】
本開示は、上述した従来の状況に鑑みて案出され、搭載される蓄電池への充電電流に応じて一次側から二次側への送電電圧を適切に制御し、二次側でのDC/DC電源の効率劣化を抑制する受電装置、送電電圧制御方法および水中給電システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、水中を移動可能な受電装置であって、前記水中において送電装置からワイヤレスで伝送された電力を受電する受電部と、蓄電池を有し、前記受電部で受電された受電電力に基づいて前記蓄電池を充電する電源部と、前記受電電力に基づいて整流された整流電圧値を検出する第1のセンサと、前記電源部による前記蓄電池への充電電流値を検出する第2のセンサと、前記第1のセンサにより検出された前記整流電圧値と前記第2のセンサにより検出された前記充電電流値とに基づいて、前記送電装置からワイヤレスで伝送される前記電力に対応する送電電圧値を決定する受電側プロセッサと、前記受電側プロセッサにより決定された前記送電電圧値を前記送電装置に送信する通信部と、を備える、受電装置を提供する。
【0007】
また、本開示は、水中を移動可能な受電装置が行う送電電圧制御方法であって、前記水中において送電装置からワイヤレスで伝送された電力を受電し、蓄電池を有する電源部において、受電された受電電力に基づいて前記蓄電池を充電し、前記受電電力に基づいて整流された整流電圧値を検出し、前記電源部による前記蓄電池への充電電流値を検出し、検出された前記整流電圧値と検出された前記充電電流値とに基づいて、前記送電装置からワイヤレスで伝送される前記電力に対応する送電電圧値を決定し、決定された前記送電電圧値を前記送電装置に送信する、送電電圧制御方法を提供する。
【0008】
また、本開示は、水中を移動可能な受電装置と送電装置とを含む水中給電システムであって、前記受電装置は、前記水中において前記送電装置からワイヤレスで伝送された電力を受電する受電部と、蓄電池を有し、前記受電部で受電された受電電力に基づいて前記蓄電池を充電する電源部と、前記受電電力に基づいて整流された整流電圧値を検出する第1のセンサと、前記電源部による前記蓄電池への充電電流値を検出する第2のセンサと、前記第1のセンサにより検出された前記整流電圧値と前記第2のセンサにより検出された前記充電電流値とに基づいて、前記送電装置からワイヤレスで伝送される前記電力に対応する送電電圧値を決定する受電側プロセッサと、前記受電側プロセッサにより決定された前記送電電圧値を前記送電装置に送信する通信部と、を備え、前記送電装置は、前記受電装置から送信された前記送電電圧値に基づいて、前記受電装置にワイヤレスで伝送する電力を制御する、水中給電システムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、搭載される蓄電池への充電電流に応じて一次側から二次側への送電電圧を適切に制御でき、二次側でのDC/DC電源の効率劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る水中給電システムが設置される使用環境例を模式的に示す図
図2】実施の形態1に係る水中給電システムのハードウェア構成例を示す図
図3】受電側プロセッサの機能構成例を詳細に示すブロック図
図4】受電装置における充電電流に対する整流電圧の特性例を示すグラフ
図5】送電装置からの送電電圧ごとの、受電装置における充電電流に対する整流電圧の特性例を示すグラフ
図6】電流センサにより検出される充電電流の値と送電装置に通知するべき送電電圧制御値との対応関係例を示すテーブル
図7】実施の形態1に係る受電装置の送電電圧の決定に関する動作手順例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る受電装置、送電電圧制御方法および水中給電システムを具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0012】
図1は、実施の形態1に係る水中給電システム1000が設置される使用環境例を模式的に示す図である。水中給電システム1000は、送電装置100と、受電装置200と、複数のコイルCLとを有する(図2参照)。送電装置100は、受電装置200に対して、複数のコイルCLを介して、磁気共鳴方式に従ってワイヤレス(つまり無接点)で電力を伝送する。配置されるコイルCLの数は、n(n:2以上の整数)個であり、任意である。
【0013】
コイルCLは、例えば環状に形成され、樹脂のカバーにより被覆されることで絶縁される。コイルCLは、例えばキャブタイヤケーブル、ヘリカルコイル、あるいはスパイラルコイルにより形成される。ヘリカルコイルは、同一平面内ではなく、磁気共鳴方式による電力の伝送方向に沿って、螺旋状に巻回された環状のコイルである。スパイラルコイルは、同一平面内においてスパイラル形状に形成された環状のコイルである。スパイラルコイルの採用により、コイルCLの薄型化が可能となる。ヘリカルコイルの採用により、巻回されたコイルCLの内部の空間を広く確保できる。なお、図1ではスパイラルコイルの例が図示されている。
【0014】
電力伝送に使用されるコイルCLは、送電コイルCLAおよび受電コイルCLBを含む。送電コイルCLAは、一次コイル(Primary Coil)である。受電コイルCLBは、二次コイル(Secondary Coil)である。コイルCLは、送電コイルCLAと受電コイルCLBとの間に配置された少なくとも1つの中継コイルCLC(Booster Coil)を含んでよい。中継コイルCLCは、送電コイルの一例である。中継コイルCLCが複数ある場合には、それぞれの中継コイルCLC同士は略平行に配置され、中継コイルCLCにより形成される開口面の半分以上が重なる。複数の中継コイルCLC間の間隔は、例えば中継コイルCLCの半径以上確保される。中継コイルCLCは、送電コイルCLAによる電力伝送を補助する。
【0015】
送電コイルCLAは、送電装置100に設けられる(図2参照)。受電コイルCLBは、受電装置200に設けられる(図2参照)。中継コイルCLCは、送電装置100に設けられても、受電装置200に設けられても、送電装置100および受電装置200とは別に設けられてもよい。中継コイルCLCは、一部が送電装置100に設けられ、他の一部が受電装置200に設けられてもよい。
【0016】
送電装置100は、その一部が船舶50に設置されてもよいし、その他の箇所(例えば陸上に設置された給電設備1200)に配置されてよい。受電装置200は、移動可能な水中航走体70(例えば潜水艇、水底掘削機)に設定されてよいし、固定的に設置される水中設備(例えば地震計、監視カメラ、地熱発電機)に設置されてもよい。図1では、水中航走体70の一例として潜水艇が図示されている。各コイルCLは、水中(例えば海中)に配置されている。
【0017】
水中航走体70は、例えば遠隔操作無人探査機(ROV:Remotely Operated Vehicle)、無人潜水艇(UUV:Unmanned Underwater Vehicle)、あるいは自立型無人潜水機(AUV:Autonomous Underwater Vehicle)でよい。
【0018】
船舶50の一部は、水面90(例えば海面)より上部つまり水上に存在し、船舶50の他の一部は、水面90よりも下部つまり水中(例えば海中)に存在する。船舶50は、水上(例えば海上)で移動可能であり、例えばデータ取得場所の水上(例えば海上)へ自由に移動可能である。船舶50に設置された送電装置100と送電コイルCLAとの間は、電力ケーブル280により接続される。電力ケーブル280は、水上のコネクタを介して、送電装置100内のドライバ151(図2参照)と接続される。
【0019】
水中航走体70は、水中を潜行し、船舶50からの指示に基づいて所定のデータ取得ポイントへ自由に移動可能である。船舶50からの指示は、各コイルCLを介した通信により伝送されてもよいし、その他の通信方法により伝送されてもよい。
【0020】
各コイルCLは、例えば等間隔に配置される。隣り合うコイルCL間の距離(コイル間隔)は、例えば5mである。コイル間隔は、例えばコイルCLの直径の半分程度の長さである。伝送周波数は、水中(例えば海中)での磁界強度の減衰量を考慮すると、例えば40kHz以下であり10kHz未満とされることが好ましい。また、10kHz以上の送信周波数で電力伝送する場合には、電波法の規定に基づいて所定のシミュレーションを行う必要があり、10kHz未満の場合にはこの作業を省略できる。なお、伝送周波数が低周波であるほど、電力伝送距離が長くなり、コイルCLが大きくなり、コイル間隔が長くなる。なお、伝送周波数は、例えば通信信号が重畳される場合、40kHzよりも高い周波数でもよい。
【0021】
伝送周波数は、コイルCLのインダクタンス、コイルCLの直径、コイルのCLの巻き数等のコイル特性に基づき定まる。コイルCLの直径は、例えば数m~数10mである。また、コイルCLの太さが太い程、つまりコイルCLの線径が大きい程、コイルCLでの電気抵抗が減り、電力損失が小さくなる。また、コイルCLを介して伝送される電力は、例えば50W以上であり、kWオーダーでもよい。
【0022】
また、送電装置100は、コイルの線材が巻かれる、1つ以上のボビンbnを備えてよい。ボビンbnの材料は、非導電性あるいは弱磁性の材料(例えばポリ塩化ビニル、アクリル、ポリエステル等の樹脂)が用いられる。なお、ボビンbnの材料は、誘電性を有してもよい。例えば、ボビンbnの材料としてポリ塩化ビニルを用いると、安価で入手し易く、加工し易くなる。ボビンbnが非導電性を有することで、送電装置100は、コイルCLに流れる交流電流に起因して発生する磁界が、ボビンbnに吸収されることを抑制できる。図1では、水中給電(例えば海中給電)を行うために、水中に浮遊するボビンbn10を含む給電スタンドと、海底に配置されたボビンbn11を含む給電スタンドとが設置されている。
【0023】
ボビンbn10を含む給電スタンドでは、筒状のボビンbn10の外周には、送電コイルCLA11および中継コイルCLC11が巻回されて配置されている。送電コイルCLA11には、電力ケーブル280が接続されており、海上に係留している船舶50から電力ケーブル280を介して電力が供給される。電力ケーブル280は、この給電スタンドを海中で浮遊状態に支持する。浮遊状態では、筒状のボビンbn10の両側の開口は、水平方向を向いてよい。水中航走体70は、浮遊状態にある給電スタンドの出入口に対し、水平方向に進入し、ボビンbn10の内部に留まって受電してよい。
【0024】
ボビンbn11を含む給電スタンドは、海底910に埋め込まれた2本の支柱1101の上部に固定される。この給電スタンドの出入口は、水平方向を向いてよい。給電スタンドでは、筒状のボビンbn11に送電コイルCLA12が巻回されて配置されているが、中継コイルCLCは配置されていない。送電コイルCLA12には、例えば海底910に這わされた電力ケーブル280Aが接続され、給電設備1200から電力ケーブル280Aを介して電力が供給されてよい。水中航走体70は、海底910に設置された給電スタンドの出入口に対し、水平方向に進入し、ボビンbn11の内部に留まって受電してよい。
【0025】
図2は、実施の形態1に係る水中給電システム1000のハードウェア構成例を示す図である。前述したように、水中給電システム1000は、送電装置100と、受電装置200と、複数のコイルCLとを有する。
【0026】
送電装置100は、AC電源110と、ADC(AC/DC Converter)120と、送電側プロセッサ130と、情報通信回路140と、送電回路150とを備える。
【0027】
ADC120は、送電側プロセッサ130からの指示に基づいて、送電用電源の一例としてのAC電源110から供給される交流電力を、送電側プロセッサ130からの送電電圧制御値に対応する直流電力に変換する。変換された直流電力は、送電回路150へ送られる。
【0028】
送電側プロセッサ130は、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いて構成され、送電装置100の各部(例えばAC電源110、ADC120、情報通信回路140、送電回路150)の動作を統括して制御する。
【0029】
通信部の一例としての情報通信回路140は、例えばPLC(Power Line Communication)通信に対応したPLCアダプタと、受電装置200との間で通信される通信データを変調あるいは復調するための変復調回路とを有する。この変復調回路はPLCアダプタ内に設けられてもよく、PLCアダプタの構成例は例えば特開2019-176316号公報に開示されている。情報通信回路140は、例えば送電装置100から受電装置200への制御情報を、PLCアダプタ(図示略)およびコイルCLを介して送信する。情報通信回路140は、例えば受電装置200から送電装置100へのデータを、コイルCLおよびPLCアダプタを介して受信する。このデータには、例えば水中航走体70により水中探査もしくは水底探査された探査結果のデータが含まれる。情報通信回路140は、水中航走体70がデータ収集等の作業を行いながら、水中航走体70(言い換えると、受電装置200)との間で迅速にデータ通信できる。
【0030】
送電回路150は、ドライバ151、共振回路152、整合回路153を含む。ドライバ151は、ADC120からの直流電力を所定の周波数の交流電圧(例えばパルス波形)に変換する。共振回路152は、コンデンサCAと送電コイルCLAとを含んで構成され、ドライバ151からのパルス波形の交流電圧から正弦波波形の交流電圧を生成する。送電コイルCLAは、ドライバ151から印加される交流電圧に応じて、所定の共振周波数で共振する。なお、送電コイルCLAは、整合回路153により、送電装置100の出力インピーダンスにインピーダンス整合される。
【0031】
なお、ドライバ151が変換することで得られる交流電圧の周波数は、送電装置100と受電装置200との間での電力伝送の伝送周波数に相当し、共振周波数に相当する。伝送周波数は、例えば、各コイルCLのQ値に基づき設定されてよい。
【0032】
受電装置200は、受電回路210と、電源回路220と、受電側プロセッサ230と、情報通信回路240と、整流電圧センサ250と、電流センサ260とを備える。
【0033】
受電部の一例としての受電回路210は、整流回路211、共振回路212、整合回路213を含む。整流回路211は、受電コイルCLBに誘起された交流電力を直流電力に変換して動力源としての直流電圧(言い換えると、整流電圧)を電源回路220に供給する。共振回路212は、コンデンサCBと受電コイルCLBとを含んで構成され、送電コイルCLAから送電された交流電力を受電する。なお、受電コイルCLBは、整合回路213により、受電装置200の入力インピーダンスにインピーダンス整合される。
【0034】
電源部の一例としての電源回路220は、DC/DC電源回路221、充電制御回路222、蓄電池の一例としての二次電池223を含む。DC/DC電源回路221は、水中給電システム1000での二次電池223への充電用電源として、1つ以上の汎用的な回路部品(例えばDC/DCコンバータ)が使用された電源回路を構成し、受電回路210からの直流電圧(整流電圧)を昇圧、降圧等して充電制御回路222に供給する。充電制御回路222は、DC/DC電源回路221から供給される直流の電源電圧(整流電圧)に基づいて、二次電池223の種別に応じた充電電流を二次電池223に供給して二次電池223の充電もしくは放電を制御する。蓄電池の一例としての二次電池223は、送電装置100から伝送された電力を蓄電する。二次電池223は、例えばリチウムイオン電池である。
【0035】
ここで、図4および図5を参照して、実施の形態1に係る受電装置200における充電電流値と整流電流値との特性例について説明する。図4は、受電装置200における充電電流に対する整流電圧の特性例を示すグラフである。図5は、送電装置100からの送電電圧ごとの、受電装置200における充電電流に対する整流電圧の特性例を示すグラフである。図4および図5のそれぞれの横軸は充電電流値であり、図4および図5のそれぞれの縦軸は整流電圧値を示す。
【0036】
図4に示すように、実施の形態1に係る水中給電システム1000において、一次側(つまり送電装置100)からの送電電圧が一定となる場合、受電装置200の充電電流が増加すると、整流回路211を介して電源回路220に供給される直流電圧(言い換えると、整流電圧)は減少するという特性PTY1が見られる。図5に示すように、送電電圧がV1,V2,V3,V4,V5(V1<V2<V3<V4<V5)となる場合にも、図4と同様な特性(つまり充電電流が増加すると直流電圧が減少するという特性)が見られる。図5において、Va,Vbは、DC/DC電源回路221の効率が最も良くなる適正動作範囲の下限,上限となる基準電圧値である。つまり、整流電圧値が基準電圧値Va~Vbの間であれば、DC/DC電源回路221の効率が最も良くなる。
【0037】
そこで、実施の形態1では、受電装置200は、電源回路220のDC/DC電源回路221の効率が最も良くなるように受電装置200の整流電圧値が基準電圧値Va~Vbの間となっていない場合には、電源回路220において検出される充電電流に応じて、一次側(つまり送電装置100)からの送電電圧を可変に制御する。例えば、整流電圧値が基準電圧値Va~Vbの間となっていなく、かつ充電電流値が「0~I1」である場合には、受電装置200は、一次側(つまり送電装置100)からの送電電圧を「V1」となるように送電電圧制御値を決定する(図6参照)。これにより、受電装置200は、電源回路220のDC/DC電源回路221の効率の劣化を抑制できる。
【0038】
受電側プロセッサ230は、例えばCPUを用いて構成され、受電装置200の電源回路220による二次電池223への充電もしくは放電を制御する。例えば、受電側プロセッサ230は、上述した整流電圧および充電電流の各検出値(後述参照)に基づいて、受電装置200から送電装置100への帰還制御において整流電圧を周期的に制御するための周期割込み処理を実行する(図7参照)。周期割込み処理は、例えば10msごとに実行される。受電側プロセッサ230の詳細は図3を参照して後述する。
【0039】
通信部の一例としての情報通信回路240は、例えばPLC通信に対応したPLCアダプタと、送電装置100との間で通信される通信データを変調あるいは復調するための変復調回路とを有する。この変復調回路はPLCアダプタ内に設けられてもよく、PLCアダプタの構成例は例えば特開2019-176316号公報に開示されている。情報通信回路240は、例えば送電装置100から受電装置200への制御情報を、コイルCLおよびPLCアダプタを介して受信する。情報通信回路240は、例えば受電装置200から送電装置100へのデータを、PLCアダプタおよびコイルCLを介して送信する。このデータには、例えば水中航走体70により水中探査もしくは水底探査された探査結果のデータが含まれる。情報通信回路240は、水中航走体70がデータ収集等の作業を行いながら、船舶50(言い換えると、送電装置100)との間で迅速にデータ通信できる。
【0040】
第1のセンサの一例としての整流電圧センサ250は、受電回路210から電源回路220に供給される直流電圧(言い換えると、整流電圧)を、上述した周期割込み処理のタイミングと同期して検出して受電側プロセッサ230に送る。
【0041】
第2のセンサの一例としての電流センサ260は、電源回路220の充電制御回路222が二次電池223に供給している電流(つまり充電電流)を、上述した周期割込み処理のタイミングと同期して検出して受電側プロセッサ230に送る。
【0042】
なお、中継コイルCLCは、送電コイルCLAおよび受電コイルCLBと同様に、コンデンサCCとともに共振回路を構成する。つまり、本実施の形態では、共振回路が水中において多段に配置されることで、磁気共鳴方式により電力が伝送される。
【0043】
ここで、図2を参照して、送電装置100から受電装置200への電力伝送について簡単に説明する。
【0044】
送電装置100の共振回路152では、送電装置100の送電コイルCLAに電流が流れると送電コイルCLAの周囲に磁場が発生する。発生した磁場の振動は、共振回路152での共振周波数と同一の周波数で共振する中継コイルCLCを含む共振回路に伝達される。
【0045】
中継コイルCLCを含む共振回路では、磁場の振動により中継コイルCLCに電流が励起され、電流が流れ、中継コイルCLCの周囲に更に磁場が発生する。発生した磁場の振動は、共振回路152での共振周波数と同一の周波数で共振する他の中継コイルCLCを含む共振回路、受電コイルCLBを含む共振回路212にそれぞれ伝達される。
【0046】
受電装置200の共振回路212では、中継コイルCLCの磁場の振動により、受電コイルCLBに交流電力が誘起される。誘起された交流電力が整流回路211により整流され、電源回路220において所定の電圧に変換されて充電電流が流れることで、二次電池223が充電される。
【0047】
次に、受電側プロセッサ230の構成例について、図3を参照して説明する。図3は、受電側プロセッサ230の機能構成例を示すブロック図である。受電側プロセッサ230は、メモリ231、AD変換部232、整流電圧判定部233、メモリ234、AD変換部235、送電電圧判定部236を含む。
【0048】
メモリ231は、一次側(つまり送電装置100)からの送電電圧の帰還制御を行う必要があると判断するための目安(基準)となる電圧範囲の下限である基準電圧値Vaおよび同電圧範囲の上限である基準電圧値Vbを記憶する。基準電圧値Vaは基準電圧値Vbより小さい(Va<Vb、図5参照)。
【0049】
AD変換部232は、周期割込み処理の度に整流電圧センサ250により検出された現在の整流電圧値をデジタル値に変換し、デジタル値の整流電圧値を整流電圧判定部233に送る。
【0050】
整流電圧判定部233は、メモリ231に記憶されている基準電圧値Va,VbとAD変換部232により変換された現在の(最新の)整流電圧値とを比較し、現在の整流電圧値が基準電圧値Vaより小さいもしくは基準電圧値Vbより大きい値であるか否かを判定する。整流電圧判定部233は、前述の判定結果を送電電圧判定部236に送る。
【0051】
メモリ234は、一次側(つまり送電装置100)からの送電電圧の帰還制御を行う際に送電電圧制御値を判定するための目安(基準)となる充電電流値(図6のテーブル参照)を記憶する。
【0052】
AD変換部235は、周期割込み処理の度に電流センサ260により検出された現在の充電電流値をデジタル値に変換し、デジタル値の充電電流値を送電電圧判定部236に送る。
【0053】
送電電圧判定部236は、整流電圧判定部233からの判定結果が「現在の整流電圧値が基準電圧値Vaより小さいもしくは基準電圧値Vbより大きい」時、メモリ234から読み出したテーブル(図6参照)とAD変換部235の出力とを比較する。送電電圧判定部236は、前述のテーブル(図6参照)とAD変換部235の出力との比較結果に基づいて、一次側(つまり送電装置100)に帰還制御させるべき送電電圧値を決定する。ここで、図6を参照して、送電電圧制御値を判定するための目安(基準)となる充電電流値を説明する。
【0054】
図6は、電流センサ260により検出される充電電流の値と送電装置100に通知するべき送電電圧制御値との対応関係例を示すテーブルである。このテーブルは、電流センサ260により検出される充電電流値と、この充電電流値に応じて送電装置100に帰還制御させるべき適切な送電電圧制御値とを対応付けて登録しており、例えばメモリ234に保存される。
【0055】
例えば、送電電圧判定部236は、整流電圧値が基準電圧値Vaより小さいもしくは基準電圧値Vbより大きいであって、かつ充電電流値が「0~I1」の時には、送電電圧制御値を「V1」と決定する。
【0056】
例えば、送電電圧判定部236は、整流電圧値が基準電圧値Vaより小さいもしくは基準電圧値Vbより大きいであって、かつ充電電流値が「I1~I2」の時には、送電電圧制御値を「V2」と決定する。
【0057】
例えば、送電電圧判定部236は、整流電圧値が基準電圧値Vaより小さいもしくは基準電圧値Vbより大きいであって、かつ充電電流値が「I2~I3」の時には、送電電圧制御値を「V3」と決定する。
【0058】
例えば、送電電圧判定部236は、整流電圧値が基準電圧値Vaより小さいもしくは基準電圧値Vbより大きいであって、かつ充電電流値が「I3~I4」の時には、送電電圧制御値を「V4」と決定する。
【0059】
例えば、送電電圧判定部236は、整流電圧値が基準電圧値Vaより小さいもしくは基準電圧値Vbより大きいであって、かつ充電電流値が「I4~I5」の時には、送電電圧制御値を「V5」と決定する。
【0060】
情報通信回路240は、送電電圧判定部236により決定された送電電圧制御値を、一次側(つまり送電装置100)の情報通信回路140に送信する。情報通信回路140は、二次側(つまり受電装置200)の情報通信回路240から送信された送電電圧制御値を受信して送電側プロセッサ130に送る。送電側プロセッサ130は、情報通信回路140からの送電電圧制御値に基づいて、送電電圧制御値に対応する直流電力の送電回路150への供給をADC120に実行させる。
【0061】
次に、実施の形態1に係る受電装置200における送電装置100からの送電電圧制御値の決定に関する動作手順例について、図7を参照して説明する。図7は、実施の形態1に係る受電装置の送電電圧の決定に関する動作手順例を示すフローチャートである。図7の周期割込み処理は、主に受電側プロセッサ230により所定の周期(Xミリ秒)ごとに実行される。Xは例えば10である。
【0062】
図7において、受電側プロセッサ230は、電流センサ260により検出された現在の充電電流値をAD変換部235から取得するとともに(St1)、整流電圧センサ250により検出された現在の整流電圧値をAD変換部232から取得する(St2)。受電側プロセッサ230は、ステップSt2で取得された現在の整流電圧値が基準電圧値Vaより小さいもしくは基準電圧値Vbより大きいか否かを判定する(St3)。現在の整流電圧値が基準電圧値Vaから基準電圧値Vbの間であると判定された場合には(St3、NO)、現在の整流電圧値がDC/DC電源回路221の効率が最も良い範囲の値となっているので現在の送電電圧を可変する必要が無いとして、受電装置200の周期割込み処理が終了する。
【0063】
受電側プロセッサ230は、現在の整流電圧値が基準電圧値Vaより小さいもしくは基準電圧値Vbより大きいと判定した場合には(St3、YES)、現在の整流電圧値がDC/DC電源回路221の効率が最も良くなる範囲の値となっていないので、充電電流値に応じて一次側(つまり送電装置100)からの送電電圧を可変する必要があると決定する。
【0064】
先ず、受電側プロセッサ230は、ステップSt1で取得された現在の充電電流値が0(ゼロ)からI1までの間であるか否かを判定する(St4、図6参照)。受電側プロセッサ230は、現在の充電電流値が0(ゼロ)からI1までの間であると判定した場合には(St4、YES)、一次側(つまり送電装置100)からの送電電圧をV1となるように送電電圧制御値を算出して決定する(St5)。ステップSt5の後、受電装置200の周期割込み処理が終了する。
【0065】
受電側プロセッサ230は、現在の充電電流値が0(ゼロ)からI1までの間ではないと判定した場合には(St4、NO)、ステップSt1で取得された現在の充電電流値がI1からI2までの間であるか否かを判定する(St6、図6参照)。受電側プロセッサ230は、現在の充電電流値がI1からI2までの間であると判定した場合には(St6、YES)、一次側(つまり送電装置100)からの送電電圧をV2となるように送電電圧制御値を算出して決定する(St7)。ステップSt7の後、受電装置200の周期割込み処理が終了する。
【0066】
受電側プロセッサ230は、現在の充電電流値がI1からI2までの間ではないと判定した場合には(St6、NO)、ステップSt1で取得された現在の充電電流値がI2からI3までの間であるか否かを判定する(St8、図6参照)。受電側プロセッサ230は、現在の充電電流値がI2からI3までの間であると判定した場合には(St8、YES)、一次側(つまり送電装置100)からの送電電圧をV3となるように送電電圧制御値を算出して決定する(St9)。ステップSt9の後、受電装置200の周期割込み処理が終了する。
【0067】
受電側プロセッサ230は、現在の充電電流値がI2からI3までの間ではないと判定した場合には(St8、NO)、ステップSt1で取得された現在の充電電流値がI3からI4までの間であるか否かを判定する(St10、図6参照)。受電側プロセッサ230は、現在の充電電流値がI3からI4までの間であると判定した場合には(St10、YES)、一次側(つまり送電装置100)からの送電電圧をV4となるように送電電圧制御値を算出して決定する(St11)。ステップSt11の後、受電装置200の周期割込み処理が終了する。
【0068】
受電側プロセッサ230は、現在の充電電流値がI3からI4までの間ではないと判定した場合には(St10、NO)、一次側(つまり送電装置100)からの送電電圧をV5となるように送電電圧制御値を算出して決定する(St129)。ステップSt12の後、受電装置200の周期割込み処理が終了する。
【0069】
以上により、実施の形態1に係る受電装置200は、水中を移動可能であって、水中において送電装置100からワイヤレスで伝送された電力を受電する受電部(例えば受電回路210)と、蓄電池(例えば二次電池223)を有し、受電部で受電された受電電力に基づいて蓄電池を充電する電源部(例えば電源回路220)と、受電電力に基づいて整流された整流電圧値を検出する第1のセンサ(例えば整流電圧センサ250)と、電源部による蓄電池への充電電流値を検出する第2のセンサ(例えば電流センサ260)と、第1のセンサにより検出された整流電圧値と第2のセンサにより検出された充電電流値とに基づいて、送電装置100からワイヤレスで伝送される電力に対応する送電電圧値(例えば送電電圧制御値)を決定する受電側プロセッサ230と、受電側プロセッサ230により決定された送電電圧値を送電装置100に送信する通信部(例えば情報通信回路240)と、を備える。
【0070】
また、実施の形態1に係る送電電圧制御方法は、水中を移動可能な受電装置200により実行される。具体的には、送電電圧制御方法は、水中において送電装置100からワイヤレスで伝送された電力を受電し、蓄電池を有する電源部において、受電された受電電力に基づいて蓄電池を充電し、受電電力に基づいて整流された整流電圧値を検出し、電源部による蓄電池への充電電流値を検出し、検出された整流電圧値と検出された充電電流値とに基づいて、送電装置100からワイヤレスで伝送される電力に対応する送電電圧値を決定し、決定された送電電圧値を送電装置100に送信する。
【0071】
また、実施の形態1に係る水中給電システム1000は、水中を移動可能な水中航走体70内に搭載される受電装置200と送電装置100とを含む。受電装置200は、水中において送電装置100からワイヤレスで伝送された電力を受電する受電部と、蓄電池を有し、受電部で受電された受電電力に基づいて蓄電池を充電する電源部と、受電電力に基づいて整流された整流電圧値を検出する第1のセンサと、電源部による蓄電池への充電電流値を検出する第2のセンサと、第1のセンサにより検出された整流電圧値と第2のセンサにより検出された充電電流値とに基づいて、送電装置100からワイヤレスで伝送される電力に対応する送電電圧値を決定する受電側プロセッサ230と、受電側プロセッサ230により決定された送電電圧値を送電装置100に送信する通信部と、を備える。送電装置100は、受電装置200から送信された送電電圧値に基づいて、受電装置200にワイヤレスで伝送する電力を制御する。
【0072】
これにより、水中給電システム1000あるいは受電装置200は、水中航走体70内に搭載される蓄電池(例えば二次電池223)への充電電流に応じて一次側(つまり送電装置100)から二次側(つまり受電装置200)への送電電圧を適切に制御できる(つまり、整流電圧値が受電装置200に搭載される電源部の効率が最も良くなる範囲になるように制御できる)。したがって、水中給電システム1000あるいは受電装置200は、二次側(つまり受電装置200)でのDC/DC電源の効率劣化を抑制できる。
【0073】
また、受電側プロセッサ230は、第1のセンサにより検出された整流電圧値が所定範囲内(例えば基準電圧値Va~Vbの範囲)でない場合に、第2のセンサにより検出された充電電流値に基づいて送電電圧値を決定する。これにより、水中給電システム1000あるいは受電装置200は、電源回路220に供給された整流電圧値が基準電圧値Va~Vbの間であるか否かに応じて、送電電圧値を簡易に決定できて処理負荷の軽減を図ることができる。
【0074】
また、受電側プロセッサ230は、第2のセンサにより検出される充電電流値と送電電圧値との対応関係を示すテーブル(図6参照)を保持し、テーブルに基づいて充電電流値に対応する送電電圧値を決定する。これにより、水中給電システム1000あるいは受電装置200は、充電電流値に応じて送電電圧制御値を簡易に決定できて処理負荷の軽減を図ることができる。
【0075】
また、受電装置200は、送電装置100との間で、電力線通信(つまりPLC(Power Line Communication))を用いて送電電圧値を送信する。これにより、受電装置200と送電装置100との間がポジションフリーとなる場合でも、電力線を介したデータ通信によって送電装置100と受電装置200との間で安定的に通信が行える。
【0076】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0077】
上述した本実施の形態では、受電装置200は、海底に設置された発電機等でもよい。この場合、受電装置200は、水中に固定的に設置される。このように、海底に固定的に設置された構造物であって、構造物を移動させて充電することが困難である場合でも、送電装置100が受電装置200に近付くことで、水中での電力伝送効率を向上して充電できる。
【0078】
上述した本実施の形態では、送電コイルCLAおよび複数の中継コイルCLCの配列方向が海水中で横向き(水平方向)に配置されたが、縦向き(垂直方向)に配置されてもよい。縦向きの場合、送電コイルCLA及び中継コイルCLCの面は、水面と略平行となる。縦向きに配置される場合、AUV800に搭載される受電コイルCLBも磁界方向に合わせるように縦向きに搭載されてもよい。つまり、受電コイルCLBの面が水面と略平行となってよい。また、送電コイルCLAおよび中継コイルCLCが連結体を介して接続される送電コイル構造体の場合、送電コイル構造体が縦向きに配置されても、水中航走体70は、送電コイルに対し水平方向に進入および退出可能でよい。一方、送電コイルCLAおよび中継コイルCLCがボビンbnに巻回されて配置される送電コイルの場合に、送電コイルが縦向きに配置された場合、水中航走体70は、ボビンbnの上端および下端に位置するボビンbnの開口部から送電コイルの内側に進入してよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本開示は、搭載される蓄電池への充電電流に応じて一次側から二次側への送電電圧を適切に制御し、二次側でのDC/DC電源の効率劣化を抑制する受電装置、送電電圧制御方法および水中給電システムとして有用である。
【符号の説明】
【0080】
50 船舶
70 水中航走体
100 送電装置
110 AC電源
120 ADC
130 送電側プロセッサ
140、240 情報通信回路
150 送電回路
151 ドライバ
152、212 共振回路
153、213 整合回路
200 受電装置
210 受電回路
211 整流回路
220 電源回路
221 DC/DC電源回路
222 充電制御回路
223 二次電池
230 受電側プロセッサ
231、234 メモリ
232、235 AD変換部
233 整流電圧判定部
236 送電電圧判定部
250 整流電圧センサ
260 電流センサ
1000 水中給電システム
CLA 送電コイル
CLB 受電コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7