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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】水中測位システム及び水中測位方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/00 20240101AFI20241107BHJP
   B63B 79/00 20200101ALI20241107BHJP
   B63C 11/48 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
G05D1/00
B63B79/00
B63C11/48 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021159524
(22)【出願日】2021-09-29
(65)【公開番号】P2023049652
(43)【公開日】2023-04-10
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】川田 亮一
(72)【発明者】
【氏名】西谷 明彦
(72)【発明者】
【氏名】小島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】菅野 勝
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-033464(JP,A)
【文献】特開2019-043289(JP,A)
【文献】特開2020-149640(JP,A)
【文献】特開2000-194999(JP,A)
【文献】特表2018-514433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 - 1/87
B63B 79/00
B63C 11/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に配置され、水中を自律的に移動可能な複数の被測位移動体と、
水面に配置され、前記被測位移動体の水中の位置を測定する複数の測位移動体と、
自律的に又は遠隔制御によって移動可能な船舶と、を備え、
前記測位移動体は、
自己の水面上の現在位置を示す水面位置情報を取得する水面位置情報取得部と、
水中の音響パルス信号を受信可能な3個以上のハイドロフォンと、
前記水面位置情報取得部によって取得された水面位置情報と、前記ハイドロフォンによって受信された音響パルス信号とに基づいて、当該音響パルス信号の発信源の前記被測位移動体の水中の位置を測定する水中測位部と、
前記水中測位部によって測定された前記被測位移動体の水中の位置を示す水中位置情報を当該被測位移動体へ送信する水中通信部と、を備え、
前記被測位移動体は、
音響パルス信号を発信する音響パルス信号発信部と、
前記測位移動体によって送信された自己の水中の位置を示す水中位置情報を受信する水中通信部と、
前記水中通信部によって受信された水中位置情報に示される自己の水中の位置に基づいて、自己の移動を制御する制御部と、を備え、
各前記測位移動体の水面下には、前記水中測位部によって同時に測位可能な最大数以下の前記被測位移動体が配置され、
前記船舶は、前記複数の測位移動体及び前記複数の被測位移動体を所定の水域まで運搬し、
前記船舶と前記測位移動体とが近距離無線通信を行い、
前記船舶は、前記測位移動体と作業者が水中測位システムの監視を行うための監視所との間の通信を、前記測位移動体の側では近距離無線通信を利用し且つ前記監視所の側では無線通信システム又は衛星通信システムを利用することによって中継する、
水中測位システム。
【請求項2】
水中に配置され、水中を自律的に移動可能な複数の被測位移動体と、
水面に配置され、前記被測位移動体の水中の位置を測定する複数の測位移動体と、を備え、
前記測位移動体は、
自己の水面上の現在位置を示す水面位置情報を取得する水面位置情報取得部と、
水中の音響パルス信号を受信可能な3個以上のハイドロフォンと、
前記水面位置情報取得部によって取得された水面位置情報と、前記ハイドロフォンによって受信された音響パルス信号とに基づいて、当該音響パルス信号の発信源の前記被測位移動体の水中の位置を測定する水中測位部と、
前記水中測位部によって測定された前記被測位移動体の水中の位置を示す水中位置情報を当該被測位移動体へ送信する水中通信部と、を備え、
前記被測位移動体は、
音響パルス信号を発信する音響パルス信号発信部と、
前記測位移動体によって送信された自己の水中の位置を示す水中位置情報を受信する水中通信部と、
前記水中通信部によって受信された水中位置情報に示される自己の水中の位置に基づいて、自己の移動を制御する制御部と、を備え、
各前記測位移動体の水面下には、前記水中測位部によって同時に測位可能な最大数以下の前記被測位移動体が配置され、
複数の前記測位移動体が同じ前記被測位移動体から発信される音響パルス信号を受信可能である状況にある場合に、当該複数の前記測位移動体が連携して当該被測位移動体の水中の位置を求める、
水中測位システム。
【請求項3】
同じ前記被測位移動体から発信される音響パルス信号を受信可能である状況にある複数の前記測位移動体がそれぞれに測定する当該被測位移動体の水中の位置を用いた統計的手法によって、当該被測位移動体の水中の位置が求められる、
請求項に記載の水中測位システム。
【請求項4】
自律的に又は遠隔制御によって移動可能な船舶をさらに備え、
前記船舶は、前記複数の測位移動体及び前記複数の被測位移動体を所定の水域まで運搬する、
請求項又はのいずれか1項に記載の水中測位システム。
【請求項5】
前記被測位移動体が水中を巡回し、
前記測位移動体は、水面上を移動可能であり、前記被測位移動体の移動に応じて所定の位置関係になるように水面上を移動する、
請求項1からのいずれか1項に記載の水中測位システム。
【請求項6】
前記測位移動体は、水面上を移動可能であり、
複数の前記測位移動体及び複数の前記被測位移動体から構成される移動体群が、複数の所定の領域に順次移動しながら所定の作業を実施する、
請求項1からのいずれか1項に記載の水中測位システム。
【請求項7】
前記水中通信部は、水中光通信を行う、
請求項1からのいずれか1項に記載の水中測位システム。
【請求項8】
前記水中通信部は、水中音響通信を行う、
請求項1からのいずれか1項に記載の水中測位システム。
【請求項9】
水中に配置され、水中を自律的に移動可能な複数の被測位移動体と、
水面に配置され、前記被測位移動体の水中の位置を測定する複数の測位移動体と、
自律的に又は遠隔制御によって移動可能な船舶と、を備える水中測位システムの水中測位方法であって、
前記被測位移動体が、音響パルス信号を発信する音響パルス信号発信ステップと、
前記測位移動体が、水中の音響パルス信号を受信可能な3個以上のハイドロフォンによって、前記被測位移動体から発信された音響パルス信号を受信する音響パルス信号受信ステップと、
前記測位移動体が、自己の水面上の現在位置を示す水面位置情報を取得する水面位置情報取得ステップと、
前記測位移動体が、前記水面位置情報取得ステップによって取得された水面位置情報と、前記ハイドロフォンによって受信された音響パルス信号とに基づいて、当該音響パルス信号の発信源の前記被測位移動体の水中の位置を測定する水中測位ステップと、
前記測位移動体が、前記水中測位ステップによって測定された前記被測位移動体の水中の位置を示す水中位置情報を当該被測位移動体へ送信する水中送信ステップと、
前記被測位移動体が、前記測位移動体によって送信された自己の水中の位置を示す水中位置情報を受信する水中受信ステップと、
前記被測位移動体が、前記水中受信ステップによって受信された水中位置情報に示される自己の水中の位置に基づいて、自己の移動を制御する制御ステップと、を含み、
各前記測位移動体の水面下には、前記水中測位ステップによって同時に測位可能な最大数以下の前記被測位移動体が配置され、
前記船舶は、前記複数の測位移動体及び前記複数の被測位移動体を所定の水域まで運搬し、
前記船舶と前記測位移動体とが近距離無線通信を行い、
前記船舶は、前記測位移動体と作業者が水中測位システムの監視を行うための監視所との間の通信を、前記測位移動体の側では近距離無線通信を利用し且つ前記監視所の側では無線通信システム又は衛星通信システムを利用することによって中継する、
水中測位方法。
【請求項10】
水中に配置され、水中を自律的に移動可能な複数の被測位移動体と、
水面に配置され、前記被測位移動体の水中の位置を測定する複数の測位移動体と、を備える水中測位システムの水中測位方法であって、
前記被測位移動体が、音響パルス信号を発信する音響パルス信号発信ステップと、
前記測位移動体が、水中の音響パルス信号を受信可能な3個以上のハイドロフォンによって、前記被測位移動体から発信された音響パルス信号を受信する音響パルス信号受信ステップと、
前記測位移動体が、自己の水面上の現在位置を示す水面位置情報を取得する水面位置情報取得ステップと、
前記測位移動体が、前記水面位置情報取得ステップによって取得された水面位置情報と、前記ハイドロフォンによって受信された音響パルス信号とに基づいて、当該音響パルス信号の発信源の前記被測位移動体の水中の位置を測定する水中測位ステップと、
前記測位移動体が、前記水中測位ステップによって測定された前記被測位移動体の水中の位置を示す水中位置情報を当該被測位移動体へ送信する水中送信ステップと、
前記被測位移動体が、前記測位移動体によって送信された自己の水中の位置を示す水中位置情報を受信する水中受信ステップと、
前記被測位移動体が、前記水中受信ステップによって受信された水中位置情報に示される自己の水中の位置に基づいて、自己の移動を制御する制御ステップと、を含み、
各前記測位移動体の水面下には、前記水中測位ステップによって同時に測位可能な最大数以下の前記被測位移動体が配置され、
複数の前記測位移動体が同じ前記被測位移動体から発信される音響パルス信号を受信可能である状況にある場合に、当該複数の前記測位移動体が連携して当該被測位移動体の水中の位置を求める、
水中測位方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中測位システム及び水中測位方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば水中ドローン等の水中を移動する移動体が潜行している場所を水面上から把握するために、音響パルス信号を用いて水中の位置を測定する音響測位技術が知られている。音響測位技術として例えばSSBL(Super Short Base Line)方式は、音響パルス信号の受信側に設けられる複数のハイドロフォン(水中マイクロフォン)の配置場所の間隔を小さくすることができるという特長を有する。
【0003】
非特許文献1には、ダムや港湾設備点検や水産漁場監視などにおける省人化や安全確保を目的として、湖沼や海等の点検場所まで自律飛行する空中ドローン(親機)に、映像伝送および音波での測位が可能な水中ドローン(子機)を搭載した「水空合体ドローン」が記載されている。非特許文献1に記載された水空合体ドローンは、作業場所まで水空合体ドローンとして自律飛行し、着水後に水中ドローンを分離し、水中ドローンによって遠隔で水中の点検を行うことができる。
【0004】
非特許文献1に記載された水空合体ドローンにおける音響測位技術では、水面上に着水している空中ドローンから水中ドローンの位置を把握するために、空中ドローンの下部(水面下)にハイドロフォンを4個設置し、空中ドローンが水中ドローンから発信される音響パルス信号を受信し解析することによって水中ドローンの位置を求めている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】KDDI株式会社,株式会社KDDI総合研究所,株式会社プロドローン、「世界初、水空合体ドローンを開発 ~点検場所までドローンが自律飛行し、遠隔で水中点検が可能~」、ニュースリリース、2021年6月10日、インターネット<URL:https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2021/06/10/5181.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近い将来、複数の水中ドローンが、港湾や湖沼や養殖場などでの作業に利用されたり、マリンレジャーに利用されたりすることが想定される。その際には、複数のドローンを運用及び管制することが必要になると考えられる。このため、複数の水中ドローンのそれぞれが潜行している位置を水面上から同時に測定することが求められる。
【0007】
また、水中ドローンから発信された音響パルス信号が水面上の空中ドローンに届かなかったり、複数の水中ドローンから発信された音響パルス信号が重なったりすることで、複数の水中ドローンのそれぞれの水中の位置を測定することが難しいという課題が生じる。また、複数の水中ドローンを広範囲で活動させるためには、複数の水中ドローンをどのようにして目的地まで運搬するのかや、複数の水中ドローンの位置をどのようにして同時に把握するのかなどの課題が生じる。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、複数の被測位移動体(例えば水中ドローン)の水中の位置を水面上の測位移動体(例えば空中ドローン)によって同時に測定することを図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の一態様は、水中に配置され、水中を自律的に移動可能な複数の被測位移動体と、水面に配置され、前記被測位移動体の水中の位置を測定する複数の測位移動体と、自律的に又は遠隔制御によって移動可能な船舶と、を備え、前記測位移動体は、自己の水面上の現在位置を示す水面位置情報を取得する水面位置情報取得部と、水中の音響パルス信号を受信可能な3個以上のハイドロフォンと、前記水面位置情報取得部によって取得された水面位置情報と、前記ハイドロフォンによって受信された音響パルス信号とに基づいて、当該音響パルス信号の発信源の前記被測位移動体の水中の位置を測定する水中測位部と、前記水中測位部によって測定された前記被測位移動体の水中の位置を示す水中位置情報を当該被測位移動体へ送信する水中通信部と、を備え、前記被測位移動体は、音響パルス信号を発信する音響パルス信号発信部と、前記測位移動体によって送信された自己の水中の位置を示す水中位置情報を受信する水中通信部と、前記水中通信部によって受信された水中位置情報に示される自己の水中の位置に基づいて、自己の移動を制御する制御部と、を備え、各前記測位移動体の水面下には、前記水中測位部によって同時に測位可能な最大数以下の前記被測位移動体が配置され、前記船舶は、前記複数の測位移動体及び前記複数の被測位移動体を所定の水域まで運搬し、前記船舶と前記測位移動体とが近距離無線通信を行い、前記船舶は、前記測位移動体と作業者が水中測位システムの監視を行うための監視所との間の通信を、前記測位移動体の側では近距離無線通信を利用し且つ前記監視所の側では無線通信システム又は衛星通信システムを利用することによって中継する、水中測位システムである。
(2)本発明の一態様は、水中に配置され、水中を自律的に移動可能な複数の被測位移動体と、水面に配置され、前記被測位移動体の水中の位置を測定する複数の測位移動体と、自律的に又は遠隔制御によって移動可能な船舶と、を備え、前記測位移動体は、自己の水面上の現在位置を示す水面位置情報を取得する水面位置情報取得部と、水中の音響パルス信号を受信可能な3個以上のハイドロフォンと、前記水面位置情報取得部によって取得された水面位置情報と、前記ハイドロフォンによって受信された音響パルス信号とに基づいて、当該音響パルス信号の発信源の前記被測位移動体の水中の位置を測定する水中測位部と、前記水中測位部によって測定された前記被測位移動体の水中の位置を示す水中位置情報を当該被測位移動体へ送信する水中通信部と、を備え、前記被測位移動体は、音響パルス信号を発信する音響パルス信号発信部と、前記測位移動体によって送信された自己の水中の位置を示す水中位置情報を受信する水中通信部と、前記水中通信部によって受信された水中位置情報に示される自己の水中の位置に基づいて、自己の移動を制御する制御部と、を備え、各前記測位移動体の水面下には、前記水中測位部によって同時に測位可能な最大数以下の前記被測位移動体が配置され、前記船舶は、前記複数の測位移動体及び前記複数の被測位移動体を所定の水域まで運搬し、前記測位移動体は、無線通信システム又は衛星通信システムを利用して、前記船舶を介さずに、作業者が水中測位システムの監視を行うための監視所と直接通信を行う、水中測位システムである。
(3)本発明の一態様は、水中に配置され、水中を自律的に移動可能な複数の被測位移動体と、水面に配置され、前記被測位移動体の水中の位置を測定する複数の測位移動体と、を備え、前記測位移動体は、自己の水面上の現在位置を示す水面位置情報を取得する水面位置情報取得部と、水中の音響パルス信号を受信可能な3個以上のハイドロフォンと、前記水面位置情報取得部によって取得された水面位置情報と、前記ハイドロフォンによって受信された音響パルス信号とに基づいて、当該音響パルス信号の発信源の前記被測位移動体の水中の位置を測定する水中測位部と、前記水中測位部によって測定された前記被測位移動体の水中の位置を示す水中位置情報を当該被測位移動体へ送信する水中通信部と、を備え、前記被測位移動体は、音響パルス信号を発信する音響パルス信号発信部と、前記測位移動体によって送信された自己の水中の位置を示す水中位置情報を受信する水中通信部と、前記水中通信部によって受信された水中位置情報に示される自己の水中の位置に基づいて、自己の移動を制御する制御部と、を備え、各前記測位移動体の水面下には、前記水中測位部によって同時に測位可能な最大数以下の前記被測位移動体が配置され、複数の前記測位移動体が同じ前記被測位移動体から発信される音響パルス信号を受信可能である状況にある場合に、当該複数の前記測位移動体が連携して当該被測位移動体の水中の位置を求める、水中測位システムである。
)本発明の一態様は、同じ前記被測位移動体から発信される音響パルス信号を受信可能である状況にある複数の前記測位移動体がそれぞれに測定する当該被測位移動体の水中の位置を用いた統計的手法によって、当該被測位移動体の水中の位置が求められる、上記()の水中測位システムである。
)本発明の一態様は、自律的に又は遠隔制御によって移動可能な船舶をさらに備え、前記船舶は、前記複数の測位移動体及び前記複数の被測位移動体を所定の水域まで運搬する、上記(3)又は(4)のいずれかの水中測位システムである。
)本発明の一態様は、前記被測位移動体が水中を巡回し、前記測位移動体は、水面上を移動可能であり、前記被測位移動体の移動に応じて所定の位置関係になるように水面上を移動する、上記(1)から()のいずれかの水中測位システムである。
)本発明の一態様は、前記測位移動体は、水面上を移動可能であり、複数の前記測位移動体及び複数の前記被測位移動体から構成される移動体群が、複数の所定の領域に順次移動しながら所定の作業を実施する、上記(1)から()のいずれかの水中測位システムである。
)本発明の一態様は、前記水中通信部は、水中光通信を行う、上記(1)から()のいずれかの水中測位システムである。
(9)本発明の一態様は、前記水中通信部は、水中音響通信を行う、上記(1)から()のいずれかの水中測位システムである。
【0010】
10)本発明の一態様は、水中に配置され、水中を自律的に移動可能な複数の被測位移動体と、水面に配置され、前記被測位移動体の水中の位置を測定する複数の測位移動体と、自律的に又は遠隔制御によって移動可能な船舶と、を備える水中測位システムの水中測位方法であって、前記被測位移動体が、音響パルス信号を発信する音響パルス信号発信ステップと、前記測位移動体が、水中の音響パルス信号を受信可能な3個以上のハイドロフォンによって、前記被測位移動体から発信された音響パルス信号を受信する音響パルス信号受信ステップと、前記測位移動体が、自己の水面上の現在位置を示す水面位置情報を取得する水面位置情報取得ステップと、前記測位移動体が、前記水面位置情報取得ステップによって取得された水面位置情報と、前記ハイドロフォンによって受信された音響パルス信号とに基づいて、当該音響パルス信号の発信源の前記被測位移動体の水中の位置を測定する水中測位ステップと、前記測位移動体が、前記水中測位ステップによって測定された前記被測位移動体の水中の位置を示す水中位置情報を当該被測位移動体へ送信する水中送信ステップと、前記被測位移動体が、前記測位移動体によって送信された自己の水中の位置を示す水中位置情報を受信する水中受信ステップと、前記被測位移動体が、前記水中受信ステップによって受信された水中位置情報に示される自己の水中の位置に基づいて、自己の移動を制御する制御ステップと、を含み、各前記測位移動体の水面下には、前記水中測位ステップによって同時に測位可能な最大数以下の前記被測位移動体が配置され、前記船舶は、前記複数の測位移動体及び前記複数の被測位移動体を所定の水域まで運搬し、前記船舶と前記測位移動体とが近距離無線通信を行い、前記船舶は、前記測位移動体と作業者が水中測位システムの監視を行うための監視所との間の通信を、前記測位移動体の側では近距離無線通信を利用し且つ前記監視所の側では無線通信システム又は衛星通信システムを利用することによって中継する、水中測位方法である。
(11)本発明の一態様は、水中に配置され、水中を自律的に移動可能な複数の被測位移動体と、水面に配置され、前記被測位移動体の水中の位置を測定する複数の測位移動体と、自律的に又は遠隔制御によって移動可能な船舶と、を備える水中測位システムの水中測位方法であって、前記被測位移動体が、音響パルス信号を発信する音響パルス信号発信ステップと、前記測位移動体が、水中の音響パルス信号を受信可能な3個以上のハイドロフォンによって、前記被測位移動体から発信された音響パルス信号を受信する音響パルス信号受信ステップと、前記測位移動体が、自己の水面上の現在位置を示す水面位置情報を取得する水面位置情報取得ステップと、前記測位移動体が、前記水面位置情報取得ステップによって取得された水面位置情報と、前記ハイドロフォンによって受信された音響パルス信号とに基づいて、当該音響パルス信号の発信源の前記被測位移動体の水中の位置を測定する水中測位ステップと、前記測位移動体が、前記水中測位ステップによって測定された前記被測位移動体の水中の位置を示す水中位置情報を当該被測位移動体へ送信する水中送信ステップと、前記被測位移動体が、前記測位移動体によって送信された自己の水中の位置を示す水中位置情報を受信する水中受信ステップと、前記被測位移動体が、前記水中受信ステップによって受信された水中位置情報に示される自己の水中の位置に基づいて、自己の移動を制御する制御ステップと、を含み、各前記測位移動体の水面下には、前記水中測位ステップによって同時に測位可能な最大数以下の前記被測位移動体が配置され、前記船舶は、前記複数の測位移動体及び前記複数の被測位移動体を所定の水域まで運搬し、前記測位移動体は、無線通信システム又は衛星通信システムを利用して、前記船舶を介さずに、作業者が水中測位システムの監視を行うための監視所と直接通信を行う、水中測位方法である。
(12)本発明の一態様は、水中に配置され、水中を自律的に移動可能な複数の被測位移動体と、水面に配置され、前記被測位移動体の水中の位置を測定する複数の測位移動体と、を備える水中測位システムの水中測位方法であって、前記被測位移動体が、音響パルス信号を発信する音響パルス信号発信ステップと、前記測位移動体が、水中の音響パルス信号を受信可能な3個以上のハイドロフォンによって、前記被測位移動体から発信された音響パルス信号を受信する音響パルス信号受信ステップと、前記測位移動体が、自己の水面上の現在位置を示す水面位置情報を取得する水面位置情報取得ステップと、前記測位移動体が、前記水面位置情報取得ステップによって取得された水面位置情報と、前記ハイドロフォンによって受信された音響パルス信号とに基づいて、当該音響パルス信号の発信源の前記被測位移動体の水中の位置を測定する水中測位ステップと、前記測位移動体が、前記水中測位ステップによって測定された前記被測位移動体の水中の位置を示す水中位置情報を当該被測位移動体へ送信する水中送信ステップと、前記被測位移動体が、前記測位移動体によって送信された自己の水中の位置を示す水中位置情報を受信する水中受信ステップと、前記被測位移動体が、前記水中受信ステップによって受信された水中位置情報に示される自己の水中の位置に基づいて、自己の移動を制御する制御ステップと、を含み、各前記測位移動体の水面下には、前記水中測位ステップによって同時に測位可能な最大数以下の前記被測位移動体が配置され、複数の前記測位移動体が同じ前記被測位移動体から発信される音響パルス信号を受信可能である状況にある場合に、当該複数の前記測位移動体が連携して当該被測位移動体の水中の位置を求める、水中測位方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の被測位移動体(例えば水中ドローン)の水中の位置を水面上の測位移動体(例えば空中ドローン)によって同時に測定することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る水中測位システムの構成例を示すブロック図である。
図2】一実施形態に係る測位移動体2の構成例を示すブロック図である。
図3】一実施形態に係る被測位移動体3の構成例を示すブロック図である。
図4】一実施形態に係る水中測位方法の手順の例を示すフローチャートである。
図5】一実施形態に係る測位移動体及び被測位移動体の配置例を示す図である。
図6】一実施形態に係る測位移動体及び被測位移動体の可変配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、一実施形態に係る水中測位システムの構成例を示すブロック図である。図1に示される水中測位システム1において、複数の測位移動体2-1,・・・,2-n(nは2以上の整数)が水面に配置される。また、複数の被測位移動体3-1-1,・・・,3-1-m_1,・・・,3-n-1,・・・,3-n-m_n(m_1,・・・,m_nは1以上の整数)が水面に配置される。各測位移動体2-1,・・・,2-nを特に区別しないときは測位移動体2と称する。各被測位移動体3-1-1,・・・,3-1-m_1,・・・,3-n-1,・・・,3-n-m_nを特に区別しないときは被測位移動体3と称する。被測位移動体3は、水中を自律的に移動可能である。
【0014】
測位移動体2として、例えば空中ドローンが利用可能である。また、被測位移動体3として、例えば水中ドローンが利用可能である。空中ドローンは、自律的に又は遠隔制御によって、飛行可能であり、また水面上に着水し、水面上を移動可能である。水中ドローンは、水中を自律的に移動可能である。以下の説明では、測位移動体2として空中ドローンを利用し、また被測位移動体3として水中ドローンを利用する場合について説明する。
【0015】
母艦4は、自律的に又は遠隔制御によって移動可能な船舶である。母艦4は、複数の測位移動体2-1,・・・,2-n及び複数の被測位移動体3-1-1,・・・,3-1-m_1,・・・,3-n-1,・・・,3-n-m_nを所定の水域(目的水域)まで運搬する。次いで、母艦4が目的水域に到着後に、複数の測位移動体2-1,・・・,2-nが、母艦4から発進し、所定の水面上の位置(目的水面位置)まで自律飛行し、目的水面位置で着水する。また、母艦4が目的水域に到着後に、複数の被測位移動体3-1-1,・・・,3-1-m_1,・・・,3-n-1,・・・,3-n-m_nが水中に投入される。
【0016】
被測位移動体3は、水中に投入された後、水中における音響測位のための音響パルス信号101を発信する。目的水面位置は、母艦4から所定の範囲内の位置であって、水中に投入された被測位移動体3から発信される音響パルス信号101を受信することができる範囲内の位置である。測位移動体2は、被測位移動体3から発信された音響パルス信号101を受信し、受信した音響パルス信号101を用いる音響測位技術によって当該音響パルス信号101を発信した被測位移動体3の水中の位置を測定する。
【0017】
基地局BSは、無線通信システムNWの基地局である。無線通信システムNWは、例えばLTE(Long Term Evolution)や5G(第5世代移動通信システム)等の無線通信システムである。母艦4は、基地局BSの通信圏内に存在する場合に、無線回線110により基地局BSに接続し、無線通信システムNWを介して監視所5と通信する。監視所5は、作業者が水中測位システム1の運用や監視を行うための場所であって、通信装置や、作業者が遠隔操作や遠隔監視を行うための各種装置が設けられている。なお、母艦4は、衛星通信システムを利用して監視所5と通信を行ってもよい。衛星通信システムを利用すれば、母艦4は、基地局BSの通信圏外に在っても監視所5と通信することができる。
【0018】
母艦4と測位移動体2とは、近距離無線通信を行う。近距離無線通信は、例えば「Wi-Fi(登録商標)」等の無線LANの無線通信である。母艦4は、無線通信システムNW又は衛星通信システムを利用して測位移動体2との通信を中継する。これにより、測位移動体2は、母艦4を介して、監視所5と通信することができる。なお、測位移動体2が、無線通信システムNW又は衛星通信システムを利用して、母艦4を介さずに、監視所5と直接通信を行ってもよい。
【0019】
母艦4及び測位移動体2は、GPS衛星7から発信されるGPS信号を受信し、GPSにより、水面上の現在位置を示す水面位置情報(緯度、経度)を取得する。測位移動体2は、GPS(Global Positioning System)によって取得した水面位置情報を、被測位移動体3の水中の位置の測定に用いる。
【0020】
各測位移動体2-1,・・・,2-nの水面下には、音響パルス信号101を用いる音響測位技術によって同時に測位可能な最大数以下の各m_1,・・・,m_n台の被測位移動体3が配置される。これにより、水中測位システム1は、複数(n台)の測位移動体2によって、複数(m_1+・・・+m_n台)の被測位移動体3の水中の位置を同時に測定することができる。
【0021】
なお、水域は、湖沼や海等の自然の水域であってもよく、ダムやプール等の人工的な水域であってもよい。
【0022】
図2は、本実施形態に係る測位移動体2の構成例を示すブロック図である。図2において、測位移動体2は、制御部20と、GPS部21と、ハイドロフォン部22と、水中測位部23と、水中通信部24と、水面通信部25と、推進部26と、を備える。
【0023】
制御部20は、測位移動体2の各部を制御する。制御部20の機能は、制御部20がCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、制御部20として、汎用のコンピュータ装置を使用して構成してもよく、又は、専用のハードウェア装置として構成してもよい。
【0024】
GPS部21(水面位置情報取得部)は、GPSにより、自己の水面上の現在位置を示す水面位置情報(緯度、経度)を取得する。
【0025】
ハイドロフォン部22は、少なくとも3個のハイドロフォン(水中マイクロフォン)を有する。当該少なくとも3個のハイドロフォンは、測位移動体2の下部(水面下)に設置される。測位移動体2の下部(水面下)に設置されるハイドロフォンは、水中の被測位移動体3から発信される音響パルス信号101を受信可能なハイドロフォンである。なお、音響測位精度を向上させるために、4個以上のハイドロフォンが測位移動体2の下部(水面下)に設置されてもよい。
【0026】
水中測位部23は、GPS部21によって取得された水面位置情報と、ハイドロフォン部22の少なくとも3個のハイドロフォンによって受信された音響パルス信号101とに基づいて、当該音響パルス信号101の発信源の被測位移動体3の水中の位置(緯度、経度、水深)を測定する。水中測位部23は、水面位置情報に示される位置に対する相対的な位置を音響測位により求める。水中測位部23は、音響測位技術として例えばSSBL方式を用いる。SSBL方式によれば、測位移動体2の下部に設置される少なくとも3個のハイドロフォンの設置間隔を小さくすることができる。これは、測位移動体2の小型化に寄与し、小型化によって測位移動体2の省エネルギー化に寄与することができる。
【0027】
水中通信部24は、水中の被測位移動体3との間で、水中における通信を行う。測位移動体2と被測位移動体3との間の水中の通信は、光信号(例えば可視光など)を用いた光通信(水中光通信)であってもよく、又は音波(例えば超音波など)を用いた音響通信(水中音響通信)であってもよい。
【0028】
水中通信部24は、水中測位部23によって測定された被測位移動体3の水中の位置を示す水中位置情報を当該被測位移動体3へ送信する。
【0029】
水面通信部25は、母艦4との間で近距離無線通信を行う。水面通信部25は、母艦4を介して、監視所5と通信する。なお、水面通信部25は、基地局BSの通信圏内に存在する場合に、無線回線110により基地局BSに接続し、無線通信システムNWを介して監視所5と通信を行ってもよい。また、水面通信部25は、衛星通信システムを利用して、母艦4を介さずに、監視所5と直接通信を行ってもよい。
【0030】
推進部26は、制御部20からの移動指示に従って、自己の測位移動体2を移動させる。推進部26によって、測位移動体2は、飛行したり、水面上を移動したりすることができる。
【0031】
図3は、本実施形態に係る被測位移動体3の構成例を示すブロック図である。図3において、被測位移動体3は、制御部30と、音響パルス信号発信部31と、水中通信部32と、推進部33と、を備える。
【0032】
制御部30は、被測位移動体3の各部を制御する。制御部30の機能は、制御部30がCPU及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、制御部30として、汎用のコンピュータ装置を使用して構成してもよく、又は、専用のハードウェア装置として構成してもよい。
【0033】
音響パルス信号発信部31は、音響パルス信号101を発信する。音響パルス信号発信部31は、定期的に音響パルス信号101を発信する。音響パルス信号101の発信間隔は、例えば1秒間隔である。音響パルス信号発信部31によって発信される音響パルス信号101は、水中を伝搬し、測位移動体2の下部(水面下)に設置されたハイドロフォンによって受信可能な音響パルス信号である。
【0034】
水中通信部32は、水面上の測位移動体2との間で、水中における通信を行う。測位移動体2と被測位移動体3との間の水中の通信は、光信号(例えば可視光など)を用いた光通信(水中光通信)であってもよく、又は音波(例えば超音波など)を用いた音響通信(水中音響通信)であってもよい。
【0035】
水中通信部32は、測位移動体2によって送信された自己の水中の位置を示す水中位置情報を受信する。
【0036】
推進部33は、制御部30からの移動指示に従って、自己の被測位移動体3を移動させる。推進部33によって、被測位移動体3は、水中を移動することができる。
【0037】
制御部30は、水中通信部32によって受信された水中位置情報に示される自己の水中の位置に基づいて、自己の移動を制御する。制御部30は、当該水中位置情報に示される自己の水中の位置に基づいて、例えば所定の水中の位置(目的水中位置)へ移動するように、推進部33を制御する。
【0038】
なお、測位移動体2及び被測位移動体3は時計機能を備えており、全ての測位移動体2及び全ての被測位移動体3の時計機能は、母艦4を離れる前に事前に、時刻合わせが行われる。当該時計機能は、音響測位技術、例えばSSBL方式で利用される。
【0039】
次に図4を参照して本実施形態に係る水中測位方法を説明する。図4は、本実施形態に係る水中測位方法の手順の例を示すフローチャートである。
【0040】
(ステップS1) 母艦4は、複数の測位移動体2-1,・・・,2-n及び複数の被測位移動体3-1-1,・・・,3-1-m_1,・・・,3-n-1,・・・,3-n-m_nを載せて出発拠点の港を出発する。当該母艦4は、目的水域まで航行する。
【0041】
(ステップS2) 母艦4が目的水域に到着すると、複数の測位移動体2-1,・・・,2-n及び複数の被測位移動体3-1-1,・・・,3-1-m_1,・・・,3-n-1,・・・,3-n-m_nの配置を開始する。複数の測位移動体2-1,・・・,2-nは、母艦4から発進し、目的水面位置まで自律飛行し、目的水面位置で着水する。また、複数の被測位移動体3-1-1,・・・,3-1-m_1,・・・,3-n-1,・・・,3-n-m_nは水中に投入される。
【0042】
(ステップS3) 被測位移動体3は、水中に投入された後、水中における音響測位のための音響パルス信号101を発信する。測位移動体2は、被測位移動体3から発信された音響パルス信号101を受信すると、受信した音響パルス信号101と、GPS部21によって取得された水面位置情報とに基づいて、当該音響パルス信号101を発信した被測位移動体3の水中の位置を測定する。測位移動体2は、当該測定された被測位移動体3の水中の位置を示す水中位置情報を当該被測位移動体3へ送信する。
【0043】
(ステップS4) 被測位移動体3は、測位移動体2によって送信された自己の水中の位置を示す水中位置情報を受信すると、受信した水中位置情報に示される自己の水中の位置と目的水中位置とを比較し、自己の位置を修正する必要があるか否かを判断する。この判断の結果、位置を修正する必要がある場合にはステップS5に進む。一方、位置を修正する必要がない場合にはステップS6に進む。
【0044】
(ステップS5) 被測位移動体3は、測位移動体2から受信した水中位置情報に示される自己の水中の位置に基づいて、目的水中位置へ自律移動する。
【0045】
(ステップS6) 全ての測位移動体2の目的水面位置への配置及び全ての被測位移動体3の目的水中位置への配置が完了した場合には図4の処理を終了する。一方、当該全ての配置が未完了である場合にはステップS3に戻る。
【0046】
図5は、本実施形態に係る測位移動体及び被測位移動体の配置例を示す図である。図5において、9台の測位移動体2及び36台の被測位移動体3が母艦4によって出発拠点から目的水域まで運搬されて配置される。図5の例では、9台の測位移動体2が一定の間隔(例えば、20メートル間隔)で格子状に配置される。また、1台の測位移動体2の担当エリアPaの水面下には、4台の被測位移動体3が配置される。ある測位移動体2の担当エリアPaは、当該測位移動体2が水中の被測位移動体3から発信される音響パルス信号101を受信可能な範囲内である。図5の例では、担当エリアPaは所定長の辺の四角形である。また、図5の例では、測位移動体2の水中測位部23は、少なくとも4台の被測位移動体3の水中の位置を同時に測位可能である。これにより、図5の例では、9台の測位移動体2によって合計36台の被測位移動体3の水中の位置を同時に測定することができる。
【0047】
図5に例示されるような、複数の測位移動体2の配置及び複数の被測位移動体3の配置は、予め決定されて各測位移動体2及び各被測位移動体3に設定される。当該配置は、例えば、目的水域における水中の環境に応じて決定される。例えば、水中に存在する構築物や水中の地形の陰になって音響パルス信号101が水面上の測位移動体2に届かなくなることがないように、当該配置が決定される。
【0048】
図5の配置例によれば、36台の被測位移動体3によって同時に水中探査(例えば浅い水域の場合に水底の捜索等)を実施することができるので、短時間で集中して水中作業を完了することが可能になる。各被測位移動体3は、水中作業が完了すると、測位移動体2から受信する水中位置情報に示される自己の水中の位置に基づいて、母艦4まで帰還する。
【0049】
なお、図5の例では、測位移動体2及び被測位移動体3が固定的に配置されるが、これに限定されない。例えば、被測位移動体3が水中を巡回し、測位移動体2が被測位移動体3の移動に応じて所定の位置関係になるように水面上を移動するようにしてもよい。図6に、可変配置例を示す。
【0050】
図6において、40台の被測位移動体3は、それぞれに、目的水域内を所定の巡回経路で巡回する。10台の測位移動体2は、それぞれに、自己の担当エリアPb内の水面下に、所定の台数である4台の被測位移動体3が配置されるように、水面上を移動する。図6の例では、担当エリアPbは所定半径の円形である。これにより、図6の例では、10台の測位移動体2によって、目的水域内を巡回する合計40台の被測位移動体3の水中の位置を、当該被測位移動体3の移動に追従しながら同時に測定することができる。
【0051】
また、複数の測位移動体2及び複数の被測位移動体3から構成される移動体群が、目的水域において、複数の所定の領域に順次移動しながら所定の作業を実施するようにしてもよい。これにより、1つの配置では、目的水域内の複数の所定の領域をカバーすることができない場合に、当該複数の所定の領域に順次移動することによって全ての所定の領域で所定の作業を実施することができる。
【0052】
なお、複数の測位移動体2が同じ被測位移動体3から発信される音響パルス信号101を受信可能な場合に、当該複数の測位移動体2が連携して当該被測位移動体3の水中の位置を求めるようにしてもよい。例えば、同じ被測位移動体3から発信される音響パルス信号101を受信可能な複数の測位移動体2がそれぞれに測定する当該被測位移動体3の水中の位置を用いた統計的手法によって、当該被測位移動体3の水中の位置が求められる。統計的手法として、例えば、複数の測位移動体2による測定結果の水中の位置を平均することが挙げられる。このように、複数の測位移動体2が連携して1台の被測位移動体3の水中の位置を求めることによって、被測位移動体3の水中の位置の測定の精度を向上させることができる。
【0053】
例えば図5に示したように、各被測位移動体3にとっては、最も近くに在る測位移動体2が音響パルス信号101を受信して水中の位置を測定することが測位精度を保つ点で好ましい。ここで、被測位移動体3と測位移動体2との間の距離が遠くなると測位精度が劣化するが、複数の測位移動体2が同じ被測位移動体3の音響パルス信号101を受信することができる場合には、当該複数の測位移動体2がそれぞれの測定結果の水中の位置を例えば平均することによって、測位精度の劣化を抑制することができる。
【0054】
なお、上述した実施形態の例では、母艦4が複数の測位移動体2-1,・・・,2-n及び複数の被測位移動体3-1-1,・・・,3-1-m_1,・・・,3-n-1,・・・,3-n-m_nを目的水域まで運搬したが、これに限定されない。例えば、測位移動体2は、陸上の出発拠点から目的水域まで、自律的に又は遠隔制御によって飛行してもよい。また、被測位移動体3は、出発拠点の水辺から目的水域まで、自律的に又は遠隔制御によって水面上を移動してもよい。この場合、被測位移動体3は、GPS機能を備え、GPS機能によって自己の水面上の現在位置を示す水面位置情報を取得する。
【0055】
また、被測位移動体3は、慣性航法装置(INS:Inertial Navigation System)を備え、測位移動体2から受信する水中位置情報に示される水中の位置を慣性航法装置に組み合わせて、自己の位置を求めてもよい。
【0056】
本実施形態によれば、複数の被測位移動体3(例えば水中ドローン)の水中の位置を水面上の複数の測位移動体2(例えば空中ドローン)によって同時に測定することができる。これにより、1台の測位移動体2で全ての被測位移動体3の水中の位置を同時に測定しようとしても、音響パルス信号101の混信や遠方の被測位移動体3からの音響パルス信号101の不達などによって全ての被測位移動体3からの音響パルス信号101を受信することができない環境下であっても、複数の測位移動体2で分担して全ての被測位移動体3の水中の位置を同時に測定することができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、一度に複数の被測位移動体3によって同時に水中作業を実施することができるので、広範囲の目的水域においても短時間で水中作業を完了させることができるようになる。
【0058】
なお、これにより、例えば水中探査システムや水中監視システム等における総合的なサービス品質の向上を実現することができることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標13「気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る」に貢献することが可能となる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1…水中測位システム、2…測位移動体、3…被測位移動体、4…母艦、5…監視所、7…GPS衛星、20,30…制御部、21…GPS部、22…ハイドロフォン部、23…水中測位部、24,32…水中通信部、25…水面通信部、26,33…推進部、31…音響パルス信号発信部、BS…基地局、NW…無線通信システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6