(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】補強部材を用いた埋設構造物の上端部の修繕方法
(51)【国際特許分類】
E03F 5/04 20060101AFI20241108BHJP
E03F 7/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
E03F5/04 Z
E03F7/00
E03F5/04 A
(21)【出願番号】P 2021085765
(22)【出願日】2021-05-21
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】593159903
【氏名又は名称】株式会社宝機材
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 寛栄
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊彦
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-032685(JP,A)
【文献】特開平09-209439(JP,A)
【文献】実開昭55-028643(JP,U)
【文献】実開平05-032480(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0209196(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00-11/00
E01C 11/22
E01F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強部材を用いた、埋設構造物の上端部の修繕方法であって、
前記補強部材は、蓋体が載置される前記埋設構造物の蓋掛部よりも上方に取り付けられ、前記上端部の上面に宛がわれる上面部と、前記上端部の両側面にそれぞれ宛がわれる第一側面部と第二側面部と、前記埋設構造物の上端部の長尺方向に交差する方向に延びる交差部材と、を備え、
前記埋設構造物の上端部の上面に、当該上端部の長尺方向に交差するように延びる交差溝を形成し、
前記埋設構造物の上端部の欠損箇所を修繕材料により修繕し、
前記補強部材の裏面側に接着剤を塗布し、当該補強部材の交差部材を前記交差溝に挿入するように、前記補強部材を前記埋設構造物の上端部に取り付けることを特徴とする修繕方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、道路に設置される側溝等の埋設構造物において、上端部を補強する補強部材、及び当該補強部材を用いた埋設構造物の上端部の修繕方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、道路に設置される側溝等の埋設構造物の上端は、埋設構造物を横断する車両等の外力によって、その一部が欠損することがあった。そのため、その欠損箇所を修繕材料によって修繕した後、上端全体を覆う補強部材によって、埋設構造物の上端を保護及び補強していた。しかしながら、埋設構造物の上端は、グレーチング等の蓋体を設置できるように、段形状といった複雑な形状をしている。そのため、段形状をした上端全体を覆うように取り付ける補強部材には、段形状に対応した高い寸法精度が求められ、補強部材の製造コストが嵩んでいた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本願発明は上記問題に鑑み、より簡単に製造でき、尚且つ製造コストを安く抑えた補強部材、及び作業効率が良い修繕方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願発明の補強部材は、埋設構造物の上端部に取り付けられる補強部材であって、当該補強部材は、蓋体が載置される前記埋設構造物の蓋掛部よりも上方に取り付けられ、前記上端部の上面に宛がわれる上面部と、前記上端部の両側面にそれぞれ宛がわれる第一側面部と第二側面部と、を備えることを特徴とする。
【0005】
上記特徴によれば、蓋体を安定して載置するために寸法精度が求められる蓋掛部を、補強部材の一部によって覆うことがないため、補強部材の構成が単純で、簡単に製造でき、尚且つ製造コストを安く抑えることができる。
【0006】
本願発明の補強部材は、前記第一側面部の上端から下端までの長さと、前記第二側面部の上端から下端までの長さは、互いに異なることを特徴とする。
【0007】
上記特徴によれば、蓋体と各上端部の内側の側面との間の各隙間に、長さの異なる第一側面部と第二側面部をそれぞれ差し込むように宛がうことで、各隙間を無理なく適切に埋めることができる。そのため、蓋体と各上端部の内側の側面との間の各隙間を適宜調節することができ、蓋掛部に蓋体を載置した際に、蓋体がガタついたり、外れやすくなることを防止できる。
【0008】
本願発明の補強部材は、前記埋設構造物の上端部の長尺方向に交差する方向に延びる交差部材を備えたことを特徴とする。
【0009】
上記特徴によれば、補強部材が上端部に取り付けられた際に、交差部材は交差溝に挿入されるように取り付けられるので、補強部材は上端部により強固に固定される。
【0010】
本願発明の補強部材を用いた埋設構造物の上端部の修繕方法は、前記埋設構造物の上端部の欠損箇所を修繕材料により修繕し、前記補強部材の裏面側に接着剤を塗布し、当該補強部材を前記埋設構造物の上端部に取り付けることを特徴とする。
【0011】
上記特徴によれば、蓋体を安定して載置するために寸法精度が求められる蓋掛部を、補強部材の一部によって覆うことがないため、補強部材の構成が単純で、修繕作業の効率も向上する。
【0012】
本願発明の補強部材を用いた埋設構造物の上端部の修繕方法は、前記埋設構造物の上端部の欠損箇所を修繕材料により修繕し、前記補強部材の裏面側に接着剤を塗布し、一方の前記補強部材の第一側面部が、一方の上端部の蓋掛部側に位置する側面に宛がわれるように、一方の前記補強部材を一方の前記上端部に取り付け、他方の前記補強部材の第二側面部が、他方の上端部の蓋掛部側に位置する側面に宛がわれるように、他方の前記補強部材を他方の前記端部に取り付けることを特徴とする。
【0013】
上記特徴によれば、蓋体と各上端部の内側の側面との間の各隙間に、長さの異なる第一側面部と第二側面部をそれぞれ差し込むように宛がうことで、各隙間を無理なく適切に埋めることができる。そのため、蓋体と各上端部の内側の側面との間の各隙間を適宜調節することができ、蓋掛部に蓋体を載置した際に、蓋体がガタついたり、外れやすくなることを防止できる。
【0014】
本願発明の補強部材を用いた埋設構造物の上端部の修繕方法は、前記埋設構造物の上端部の上面に、当該上端部の長尺方向に交差するように延びる交差溝を形成し、前記埋設構造物の上端部の欠損箇所を修繕材料により修繕し、前記補強部材の裏面側に接着剤を塗布し、当該補強部材の交差部材を前記交差溝に挿入するように、前記補強部材を前記埋設構造物の上端部に取り付けることを特徴とする。
【0015】
上記特徴によれば、補強部材が上端部に取り付けられた際に、交差部材は交差溝に挿入されるように取り付けられるので、補強部材は上端部により強固に固定される。
【発明の効果】
【0016】
上述したように、本願発明の補強部材、及び当該補強部材を用いた埋設構造物の上端部の修繕方法によれば、補強部材をより簡単に製造でき、尚且つ製造コストを安く抑え、さらに作業効率が良い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(a)は、本願発明の実施形態1に係る補強部材の斜視図、(b)は、補強部材の側面図、(c)は、補強部材の底面図である。
【
図2】本願発明の補強部材を取り付ける対象である埋設構造物の平面図である。
【
図3】(a)は、
図2のA-A断面図、(b)は、
図2のB―B断面図である。
【
図4】(a)は、
図3(b)に示す状態から、欠損箇所を修繕した状態の断面図、(b)は、
図4(a)に示す状態から、補強部材を取り付ける様子を示した断面図である。
【
図5】(a)は、
図4(b)に示す状態から、補強部材を取り付けた後の状態の断面図、(b)は、
図5(a)に示す状態から、路面の窪みを埋めるように補修した状態の断面図である。
【
図6】(a)は、
図5(b)に示す状態から、グレーチング等の蓋体を配置した断面図、(b)は、グレーチング等の蓋体を配置した埋設構造物の平面図である。
【
図7】(a)は、本願発明の実施形態2に係る補強部材の斜視図、(b)は、補強部材の側面図、(c)は、補強部材の底面図である。
【
図8】(a)は、埋設構造物の平面図、(b)は、C-C断面図である。
【
図9】(a)は、上端部の修繕が完了した埋設構造物の平面図、(b)は、D-D断面図である。
【
図10】(a)は、本願発明の実施形態3に係る補強部材の斜視図、(b)は、補強部材の側面図、(c)は、補強部材を上端部に取り付けた状態の拡大断面図である。
【
図11】(a)は、本願発明の実施形態4に係る補強部材の斜視図、(b)は、補強部材の側面図である。
【
図12】(a)は、埋設構造物の平面図、(b)は、上端部の修繕が完了した埋設構造物の平面図である。
【符号の説明】
【0018】
100 補強部材
110 上面部
120 第一側面部
130 第二側面部
200 埋設構造物
221 蓋掛部
230 上端部
232 側面
233 側面
400 蓋体
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本願発明の各実施形態について説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本願発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。なお、本明細書で使用する「上方」とは、
図3に示すように、水平面に設置された側溝等の埋設構造物に対して、鉛直方向の上側に向かう方向のことであり、「下方」とは、鉛直方向の下側に向かう方向のことである。
【0020】
<実施形態1>
まず、
図1に、本願発明の実施形態1に係る補強部材100を示す。なお、
図1(a)は、補強部材100の斜視図、
図1(b)は、補強部材100の側面図、
図1(c)は、補強部材100の底面図である。
【0021】
図1に示すように、補強部材100は、一枚の金属製の板材を略コ字状に屈曲させて形成したもので、平坦な上面部110と、上面部110の一方の端部111から下方へ延びる第一側面部120と、上面部110の他方の端部112から下方へ延びる第二側面部130と、を備える。上面部110には、滑り止めの凹凸113が設けられており、上面部110の裏面側は、その凹凸113による窪みに、後述する接着剤が入り込んで接着力が増すようになっている。
【0022】
また、第一側面部120は、後述する埋設構造物の上端部の両側の側面のいずれかに宛がわれるように、平坦面となっている。この第一側面部120の長さ、すなわち、第一側面部120の上端121から下端122までの長さは、L1となっている。第二側面部130は、後述する埋設構造物の上端部の両側の側面のいずれかに宛がわれるように、平坦面となっている。この第二側面部130の長さ、すなわち、第二側面部130の上端131から下端132までの長さは、L2となっている。そして、第一側面部120の長さL1と第二側面部130の長さL2は、互いに異なるように設定されており、第一側面部120の長さL1は、第二側面部130の長さL2よりも長くなっている。また、後述するように補強部材100が上端部230に取り付けられた際に、補強部材100の第一側面部120及び第二側面部130は、上端部230の一方の側面232又は他方の側面233を覆うのみで、蓋掛部221を覆うことはない。
【0023】
なお、補強部材100は、金属製であるがこれに限定されず、実際の使用に耐える強度を備えるのであれば、任意の素材で構成できる。また、補強部材100は、側面視略コ字形状であるが、これに限定されず、後述する埋設構造物の上端部に取り付けることができるのであれば、任意の形状であってもよい。また、補強部材100の上面部110には凹凸113が形成されているが、これに限定されず、凹凸113を設けない、又は、貫通孔を設けるなど、任意の構成としてもよい。さらに、第一側面部120の長さL1と第二側面部130の長さL2は互いに異なるように構成されているが、これに限定されず、第一側面部120の長さL1と第二側面部130の長さL2を互いに等しくしてもよい。
【0024】
では次に、
図2及び
図3に、本願発明の補強部材100を取り付ける対象である埋設構造物200を示す。なお、
図2は、埋設構造物200の平面図、
図3(a)は、
図2のA-A断面図、
図3(b)は、
図2のB―B断面図である。
【0025】
埋設構造物200は、コンクリート製の側溝の形態であり、路面300に埋設された状態となっている。そして、埋設構造物200は、略U字形状をしており、下端側に集水した雨水等を排水する排水路210と、排水路210の両側から上方へ立設する側壁220とを備える。さらに、側壁220の上方には、上端部230が設けられており、上端部230は、上面231と内側の側面232と外側の側面233を備える。また、上端部230の側面232の下側には、段状の蓋掛部221が設けられており、両側の蓋掛部221に掛け渡されるように、グレーチング等の蓋体を載置できるようになっている。なお、埋設構造物200の上端部230とは、蓋掛部221よりも上方に位置する箇所であって、内側の側面232と外側の側面233を備えた部分である。
【0026】
そして、
図2及び
図3(a)に示すように、路面300に埋設された埋設構造物200は、上端部230の上面231が、路面300の表面310と面一となるように構成されている。通常時は、蓋掛部221に載置されたグレーチング等の蓋体を横断するように車両等が通過するため、通過時の外力によって上端部230には負荷がかかる。
図3(a)は、埋設構造物200の上端部230に欠損箇所がない状態を示しているが、
図3(b)に示すように、上端部230に外力が長期間繰り返しかかると、上端部230の一部に欠損箇所ができる。具体的には、
図3(b)に示すように、上端部230の比較的大部分(例えば、上面231と両側の側面232と側面233にわたる比較的広い範囲)が欠けた欠損箇所X1ができたり、上端部230の一部(例えば、上面231と側面232にわたる比較的狭い範囲)が欠けた欠損箇所X2が出来たりする。また、埋設構造物200を横断するように外力が長期間繰り返しかかるため、上端部230と路面300の境界付近が欠損して、路面300には窪み311が出来ている。そのため、上端部230の外側の側面233の一部が窪み311から外部に露出した状態となっている。
【0027】
なお、埋設構造物200は型枠を用いてコンクリート成形しているため、埋設構造物200を型枠から取り出し易いように、上端部230の内側の側面232は僅かに傾斜している。そして、図面上は見やすさを考慮して、側面232を実際よりも大きく傾斜させて表現している。また、本実施例では、補強部材100を取り付ける埋設構造物200の具体例として側溝を例示しているが、これに限定されず、集水桝や逆U字状の可変側溝など、路面に埋設されて利用され、車両等の外力によってその一部が欠損する可能性のある上端部を備えた構造物であれば、適宜、任意の埋設構造物に、補強部材100を取り付けることができる。
【0028】
次に、補強部材100を用いた、埋設構造物200の上端部230の修繕方法について、
図4から
図6を参照して説明する。なお、
図4(a)は、
図3(b)に示す状態から、欠損箇所を修繕した状態の断面図、
図4(b)は、
図4(a)に示す状態から、補強部材100を取り付ける様子を示した断面図、
図5(a)は、
図4(b)に示す状態から、補強部材100を取り付けた後の状態の断面図、
図5(b)は、
図5(a)に示す状態から、路面300の窪み311を埋めるように補修した状態の断面図、
図6(a)は、
図5(b)に示す状態から、グレーチング等の蓋体を配置した断面図、
図6(b)は、グレーチング等の蓋体を配置した埋設構造物200の平面図である。
【0029】
図4(a)に示すように、上端部230の欠損箇所X1及び欠損箇所X2をモルタル等の修繕材料で埋めて、欠損する前の上端部230の外形に戻るように、上端部230を修繕する。すると、欠損箇所X2が修繕材料で修繕されて、上端部230は、上面231´と内側の側面232´と外側の側面233´を備えた、欠損する前の上端部230の外形とほぼ同一の形状となる。同様に、欠損箇所X1が修繕材料で修繕されて、上端部230は、上面231´´と内側の側面232´´と外側の側面233´´を備えた、欠損する前の上端部230の外形に近い形状となる。ここで、上端部230の内側の側面232は、型抜きし易いように、上面231から蓋掛部221に向けて斜め下方へ傾斜している。そのため、後述するように、蓋掛部221にグレーチング等の蓋体400を載置した際に、蓋体400の垂直な側面410と傾斜した側面232との間には僅かな隙間ができる。そのため、上端部230の側面232´のように、欠損する前の元の上端部230の外形とほぼ同一の形状に、正確に修繕できれば、蓋体400の垂直な側面410と傾斜した側面232´との間には、僅かな隙間Y2ができることになる。
【0030】
しかしながら、上端部230の欠損箇所の修繕は、主に作業員の手作業で行うため、上端部230の側面232´´のように、欠損する前の元の上端部230の外形とほぼ同一ではなく、比較的近い形状にまでにしか、修繕できない場合もある。その場合は、蓋体400の垂直な側面410と傾斜した側面232´´との間には、隙間Y2と比較して大きな隙間Y1ができることになる。すると、後述するように、蓋掛部221に蓋体400を載置した際に、大きな隙間Y1によって、蓋体400がガタついたり、外れやすくなる虞がある。なお、隙間Y1が大きくなる原因として、作業員が手作業で、上端部230の側面232´´の修繕を行うことを例示したが、これに限定されず、その他にも、様々な原因によって、隙間Y1が大きくなることがある。
【0031】
そこで、
図4(b)に示すように、比較的広い隙間Y1が出来る側、すなわち一方の上端部230(図面上、左側)においては、一方の補強部材100の第一側面部120が、上端部230の蓋掛部221側に位置する側面232´´に宛がわれるように、一方の補強部材100が一方の上端部230に取り付けられる。また、比較的狭い隙間Y2が出来る側、すなわち他方の上端部230(図面上、右側)においては、他方の補強部材100の第二側面部130が、上端部230の蓋掛部221側に位置する側面232´に宛がわれるように、他方の補強部材100が他方の上端部230に取り付けられる。すると、
図5(a)に示すように、比較的広い隙間Y1は、一方の補強部材100の長い第一側面部120によって、下方の奥側までしっかりと埋められる。そのため、後述するように、蓋掛部221に蓋体400を載置した際に、蓋体400がガタついたり、外れやすくなることを防止できる。また、比較的狭い隙間Y2には、他方の補強部材100の短い第二側面部130が無理なく差し込まれるので、蓋掛部221に蓋体400を載置した際に、蓋体400がガタついたり、外れやすくなることを防止できる。
【0032】
このように、蓋体400と各上端部230の内側の側面232との間の各隙間(隙間Y1、隙間Y2)に、長さの異なる第一側面部120と第二側面部130をそれぞれ差し込むように宛がうことで、各隙間(隙間Y1、隙間Y2)を無理なく適切に埋めることができる。そのため、蓋体400と各上端部230の内側の側面232との間の各隙間(隙間Y1、隙間Y2)を適宜調節することができ、蓋掛部221に蓋体400を載置した際に、蓋体400がガタついたり、外れやすくなることを防止できる。なお、
図4では、隙間が広くなってしまった場合に、一方の補強部材100の長い第一側面部120を、隙間の下方の奥側までしっかりと挿入する態様について説明したが、これに限定されず、隙間が狭くなってしまった場合に、一方の補強部材100の短い第二側面部130を、隙間に浅く無理なく挿入する態様も実施でき、隙間が広い又は狭い場合のいずれであっても、適宜、長い第一側面部120又は短い第二側面部130を差し込むことで、隙間を容易に調節することが出来る。
【0033】
また、蓋体400と各上端部230の側面232との間の各隙間(隙間Y1、隙間Y2)に、長さの異なる第一側面部120と第二側面部130をそれぞれ差し込むように宛がう、つまり、埋設構造物200の両側の上端部230のそれぞれに、補強部材100を同じ姿勢(同じ取り付け方向)で取り付けているが、これに限定されない。例えば、各隙間(隙間Y1、隙間Y2)に、各補強部材100の各第一側面部120を差し込むように宛がう、つまり、各補強部材100の第一側面部120が互いに相対する姿勢(互いに反対の取り付け方向)となるように、各補強部材100を各上端部230に取り付けてもよい。また、各隙間(隙間Y1、隙間Y2)に、各補強部材100の各第二側面部130を差し込むように宛がう、つまり、各補強部材100の第二側面部130が互いに相対する姿勢(互いに反対の取り付け方向)となるように、各補強部材100を各上端部230に取り付けてもよい。
【0034】
また、
図4(b)に示すように、上端部230の欠損箇所X1及び欠損箇所X2をモルタル等の修繕材料で修繕した後、補強部材100を上端部230に取り付ける際は、補強部材100の裏面側に、ボンド等の接着剤を塗布してから、補強部材100を上端部230に取り付けている。そのため、接着剤によって、補強部材100は上端部230に強固に取り付けられるのである。なお、この接着剤としては、金属製の補強部材100とコンクリート製の上端部230とを接着できるものであれば、任意の接着剤を利用でき、例えば、エポキシ樹脂を主成分とする接着剤を利用できる。また、修繕材料は、モルタルの他にも、上端部230を修繕できるのであれば、任意の材料を利用できる。
【0035】
また、補強部材100が上端部230に取り付けられた状態では、補強部材100の上面部110が上端部230の上面231に宛がわれ、補強部材100の第一側面部120と第二側面部130が上端部230の両側の側面232と側面233にそれぞれ宛がわれている。そのため、補強部材100が、上端部230に覆いかぶさるように取り付けられるため、補強部材100が上端部230から外れにくいのである。さらに、補強部材100は、上端部230の上面231と両側の側面232と側面233に被さるように、上端部230と対応した形状をしており、蓋体が載置される蓋掛部221には被さらないように、蓋掛部221よりも上方位置に取り付けられる。つまり、補強部材100の第一側面部120及び第二側面部130は、蓋掛部221より上方に位置しているため、蓋体400と蓋掛部221の間に、補強部材100の一部が介在することはない。そのため、蓋体を安定して載置するために寸法精度が求められる蓋掛部221を、補強部材100の一部によって覆うことがないため、補強部材100の構成が単純で、簡単に製造でき、尚且つ製造コストを安く抑えることができる。また、寸法精度が求められる蓋掛部221を、補強部材100の一部によって覆うことがないため、修繕作業の効率も向上する。
【0036】
なお、
図5(a)に示すように、一方の補強部材100の第一側面部120と上端部230の側面232´´の間には空間が存在する。これは、図面上は見やすさを考慮して、側面232´´を実際よりも大きく傾斜させて表現しているため、空間が大きく表れている。しかし、実際は、狭い空間が存在するにとどまり、その狭い空間は、補強部材100を上端部230に取り付ける際に利用する接着剤によって埋められている。また、
図5(b)に示すように、補強部材100を上端部230に取り付けた後、路面300の窪み311を補修材312等で埋め戻しておく。
【0037】
そして、上端部230の修繕が完了したら、
図6に示すように、埋設構造物200の蓋掛部221に蓋体400を載置して、排水路210を塞いでおく。なお、補強部材100を上端部230に取り付けるためには、補強部材100の第一側面部120又は第二側面部130を上端部230の外側の側面233に宛がうために、路面300には窪み311があることが好ましい。そのため、窪み311が無い場合は、作業者は工具等を用いて窪み311を形成してもよい。なお、埋設構造物200の両側の上端部230に補強部材100を取り付けているが、これに限定されず、片側の上端部230のみに補強部材100を取り付けてもよい。
【0038】
<実施形態2>
次に、
図7には、本願発明の実施形態2に係る補強部材100Aを示す。なお、実施形態2の補強部材100Aに係る構成は、
図1に示す実施形態1に係る補強部材100と、交差部材140Aを備えた点で異なるだけで、他の構成は実施形態1に係る補強部材100と基本的に同一なので、詳細な説明は省略する。なお、
図7(a)は、補強部材100Aの斜視図、
図7(b)は、補強部材100Aの側面図、
図7(c)は、補強部材100Aの底面図である。
【0039】
図7に示すように、補強部材100Aの両側の端部101Aには、交差部材140Aが設けられている。この交差部材140Aは、板状部材であり、上面部110Aの裏側において、上面部110Aと第一側面部120Aと第二側面部130Aに囲まれるように配置され、後述する交差溝に挿入できるように構成されている。なお、交差部材140Aは、補強部材100Aの両側の端部101Aに設けられているため、長尺状の補強部材100Aを、その両側において上端部230Aにしっかりと固定できる。また、交差部材140Aは、補強部材100Aの両側の端部101Aに設けられているが、これに限定されず、補強部材100Aの中間部分や片側の端部101Aのみに設けるなど、補強部材100Aの任意の箇所に任意の数だけ設けることができる。また、交差部材140Aは、略扇形の板状部材であるが、これに限定されず、後述する交差溝に挿入できるように構成されていれば、任意の形状であってもよい。
【0040】
次に、
図8及び
図9には、本願発明の実施形態2に係る補強部材100Aを用いた埋設構造物200Aの上端部230Aの修繕方法を示す。なお、実施形態2の補強部材100Aを用いた埋設構造物200Aの上端部230Aの修繕方法では、埋設構造物200Aの上端部230Aに交差溝U1を設ける点で、
図2から6示す実施形態1に係る補強部材100を用いた修繕方法と異なるだけで、他の構成は実施形態1に係る修繕方法と基本的に同一なので、詳細な説明は省略する。なお、
図8(a)は、埋設構造物200Aの平面図、
図8(b)は、C-C断面図、
図9(a)は、上端部230Aの修繕が完了した埋設構造物200Aの平面図、
図9(b)は、D-D断面図である。
【0041】
図8に示すように、上端部230Aには、欠損箇所(欠損箇所X1A、欠損箇所X2A)が出来ているため、補強部材100Aを上端部230Aに取り付ける前に、欠損箇所(欠損箇所X1A、欠損箇所X2A)を修繕材料により修繕する。また、補強部材100Aを上端部230Aに取り付ける前に、作業員は電動カッター等の工具を用いて、上端部230Aに交差溝U1を形成する。この交差溝U1は、上端部230Aの長尺方向Kに交差する方向に延びるように形成されており、上面231Aにおいて、内側の側面232Aから外側の側面232Aまで横断するように直線状に延びている。なお、補強部材100Aを上端部230Aに取り付ける前であれば、欠損箇所(欠損箇所X1A、欠損箇所X2A)を修繕材料により修繕する工程と、上端部230Aに交差溝U1を形成する工程は、どちらを先に行ってもよく、当該工程の順序は任意である。また、交差溝U1は、上端部230Aの長尺方向Kに対して直角に交差するように延びているが、これに限定されず、交差溝U1は、上端部230Aの長尺方向Kに交差するように延びていれば、長尺方向Kに対して任意の角度で交差できる。
【0042】
次に、欠損箇所(欠損箇所X1A、欠損箇所X2A)を修繕材料により修繕し、上端部230Aに交差溝U1を形成した後、補強部材100Aを上端部230Aに取り付ける。その際、補強部材100Aの交差部材140Aが交差溝U1に挿入されるように取り付ける。交差部材140Aにも、補強部材100Aを上端部230Aに取り付ける際に利用する接着剤が塗布されているので、交差部材140Aは交差溝U1内に強固に固定されることになる。その後、路面300Aの窪み311Aを補修材312Aで埋め戻しておく。上端部230Aの修繕が完了したら、埋設構造物200Aの蓋掛部221Aに蓋体400を載置して、排水路210Aを塞いでおく。
【0043】
このように、補強部材100Aが上端部230Aに取り付けられた際に、交差部材140Aは交差溝U1に挿入されるように取り付けられるので、補強部材100Aは上端部230Aにより強固に固定される。特に、補強部材100Aは、第一側面部120A及び第二側面部130Aによって、上端部230Aの長尺方向Kに沿って、上端部230Aを両側から挟み込むように取り付けられている。そのため、長尺方向Kに交差するように延びる交差部材140Aによって、補強部材100Aはあらゆる方向からの外力(例えば、車両等が通過する際の外力)に対して強い固定力を維持でき、補強部材100Aは上端部230Aにより強固に取り付けられるのである。
【0044】
<実施形態3>
次に、
図10には、本願発明の実施形態3に係る補強部材100Bを示す。なお、実施形態3の補強部材100Bに係る構成は、
図1に示す実施形態1に係る補強部材100と、固定部材150Bを備えた点で異なるだけで、他の構成は実施形態1に係る補強部材100と基本的に同一なので、詳細な説明は省略する。なお、
図10(a)は、補強部材100Bの斜視図、
図10(b)は、補強部材100Bの側面図、
図10(c)は、補強部材100Bを上端部230Bに取り付けた状態の拡大断面図である。
【0045】
図10(a)及び(b)に示すように、第一側面部120Bには、略L字形状の固定部材150Bが設けられており、固定部材150Bの上面151Bは、上面部110Bと略同一、又は上面部110Bより下方に配置されて、上面部110Bから上方へ突出しないようになっている。また、固定部材150Bの先端152Bは下方へ屈曲している。そして、
図10(c)に示すように、先に、蓋体400Bを埋設構造物200Bに取り付けた状態で、補強部材100Bを埋設構造物200Bの上端部230Bに取り付けて固定すると、補強部材100Bの固定部材150Bが蓋体400Bの一部に係合するので、蓋体400Bは埋設構造物200Bから外れないように固定された状態となる。なお、固定部材150Bは、略L字形状をしているが、これに限定されず、蓋体400Bを固定できる構成であれば、任意の形状であってもよい。また、固定部材150Bは第一側面部120Bに取り付けられているが、これに限定されず、第二側面部に取り付けられてもよい。
【0046】
<実施形態4>
次に、
図11及び
図12には、本願発明の実施形態4に係る補強部材100Cを示す。なお、実施形態4の補強部材100Cに係る構成は、
図1に示す実施形態1に係る補強部材100と、固定部材150Cを備えた点で異なるだけで、他の構成は実施形態1に係る補強部材100と基本的に同一なので、詳細な説明は省略する。また、実施形態4の補強部材100Cを用いた埋設構造物200Cの上端部230Cの修繕方法では、蓋体400Cに固定溝U2を設ける点で、
図2から6示す実施形態1に係る修繕方法と異なるだけで、他の構成は実施形態1に係る補強部材100を用いた修繕方法と基本的に同一なので、詳細な説明は省略する。なお、
図11(a)は、補強部材100Cの斜視図、
図11(b)は、補強部材100Cの側面図、
図12(a)は、埋設構造物200Cの平面図、
図12(b)は、上端部230Cの修繕が完了した埋設構造物200Cの平面図である。
【0047】
図11に示すように、第一側面部120Cには、略四角形状の板状の固定部材150Cが設けられており、固定部材150Cの上端153Cは、上面部110Cと略同一、又は上面部110Cより下方に配置されて、上面部110Cから上方へ突出しないようになっている。また、固定部材150Cは、後述する固定溝U2に挿入できるように構成されている。さらに固定部材150Cには貫通孔154Cが設けられており、貫通孔154Cを介して、後述する接着剤が固定部材150Cの前後に回り込んで、固定部材150Cと固定溝U2とを、しっかりと固定することが出来る。なお、固定部材150Cは、略四角形の板状をしているが、これに限定されず、固定溝U2に挿入できる構成であれば、任意の形状であってもよい。
【0048】
そして、
図12(a)に示すように、埋設構造物200Cの上端部230Cには、欠損箇所(欠損箇所X1C、欠損箇所X2C)が出来ているため、補強部材100Cを上端部230Cに取り付ける前に、欠損箇所(欠損箇所X1C、欠損箇所X2C)を修繕材料により修繕する。また、蓋体400Cは、金属製のグレーチング等ではなく、コンクリート製の蓋体となっており、補強部材100Cを上端部230Cに取り付ける前に、作業員は電動カッター等の工具を用いて、蓋体400Cに固定溝U2を形成する。この固定溝U2は、上端部230C側に面するように配置されており、固定溝U2の端部U3は上端部230側に開口している。なお、補強部材100Cを上端部230Cに取り付ける前であれば、欠損箇所(欠損箇所X1C、欠損箇所X2C)を修繕材料により修繕する工程と、蓋体400Cに固定溝U2を形成する工程は、どちらを先に行ってもよく、当該工程の順序は任意である。
【0049】
次に、欠損箇所(欠損箇所X1C、欠損箇所X2C)を修繕材料により修繕し、蓋体400Cに固定溝U2を形成した後、補強部材100Cを上端部230Cに取り付ける。なお、先に、蓋体400Cを埋設構造物200Cに取り付けた状態で、補強部材100Cを上端部230Cに取り付ける。そして、補強部材100Cを埋設構造物200Cの上端部230Cに取り付ける際、補強部材100Cの固定部材150Cが固定溝U2に挿入されるように取り付ける。固定部材150Cにも、補強部材100Cを上端部230Cに取り付ける際に利用する接着剤が塗布されているので、固定部材150Cは固定溝U2内に強固に固定されることになる。その後、路面300Cの窪み311Cを補修材312Cで埋め戻しておく。
【0050】
補強部材100Cが埋設構造物200Cの上端部230Cに固定されると共に、補強部材100Cの固定部材150Cが蓋体400Cの固定溝U2にも固定されているので、蓋体400Cは埋設構造物200Cから外れないように固定された状態となるのである。
【0051】
なお、本願発明の補強部材、及び補強部材を用いた、埋設構造物の上端部の修繕方法は、上記の実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせもその権利範囲に含むものである。