(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】複数の免疫細胞タイプの同時増殖のための方法、関連する組成物および癌免疫療法におけるそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20241108BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20241108BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20241108BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241108BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20241108BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241108BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20241108BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20241108BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241108BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20241108BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
A61K35/17
A61K38/20
A61P35/00
A61P37/04
A61P43/00 105
A61P43/00 121
C12N5/0783
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
(21)【出願番号】P 2021529436
(86)(22)【出願日】2019-11-22
(86)【国際出願番号】 US2019062851
(87)【国際公開番号】W WO2020112563
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-16
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520438914
【氏名又は名称】ンカルタ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Nkarta, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】ダオフォン・リウ
(72)【発明者】
【氏名】グアンナン・リィ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・ビー・トレイガー
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/195175(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0028633(US,A1)
【文献】特表2018-516592(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0093605(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0296678(US,A1)
【文献】特表2018-504894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子改変免疫細胞の少なくとも2つの亜集団を含む遺伝子改変免疫細胞の混合集団を生成するための方法であって、
血液サンプルから単核細胞集団を単離する工程であって、ここで、前記単離された単核細胞集団が、少なくとも第1の免疫細胞亜集団および第2の免疫細胞亜集団を含む、工程;
前記単離された単核細胞から第1の免疫細胞亜集団を単離する工程;
前記単離された第1の免疫細胞亜集団を、フィーダー細胞集団と共に培養容器内で培養する工程であって、ここで、前記フィーダー細胞が、前記第1の免疫細胞亜集団内のナチュラルキラー(NK)細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子を発現するように構成されており、かつ前記少なくとも1つの分子が、4-1BBリガンド(4-1BBL)、インターロイキン15(IL-15)およびそれらの組合せから選択され、それにより、NK細胞の増殖集団を生成する、工程;
単離された単核細胞から、第2の免疫細胞亜集団を単離する工程;
第2の免疫細胞亜集団を、該第2の免疫細胞亜集団内のT細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子と共に培養容器内で培養する工程であって、ここで、T細胞増殖を刺激するための少なくとも1つの分子が、CD3に対する抗体またはCD28に対する抗体の1以上を含み、それにより、T細胞の増殖集団を生成する、工程;
癌細胞により発現されるCD19に結合し、結合時に癌細胞に対して細胞傷害活性を誘発するように構成された遺伝子改変受容体をコードする核酸を、増殖したNK細胞集団に導入して、遺伝子改変細胞傷害性NK細胞を生成する工程;
癌細胞によって発現されたCD19に結合し、結合時に癌細胞に対する細胞傷害活性を誘発するように構成された遺伝子改変受容体をコードする核酸を、増殖したT細胞集団に導入して、遺伝子改変細胞傷害性T細胞を生成する工程;
前記遺伝子改変細胞傷害性NK細胞の一部と前記遺伝子改変細胞傷害性T細胞の一部を組み合わせることにより、遺伝子改変免疫細胞の混合集団を生成する工程であって、ここで、前記遺伝子改変細胞傷害性NK細胞の数が前記遺伝子改変細胞傷害性T細胞の数よりも少なくとも5倍大きい比率で組み合わされる、工程;
を含む、方法。
【請求項2】
NK細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子が、4-1BBLおよ
びIL-15
の組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
IL-15がフィーダー細胞に膜結合されている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
単離された第1の免疫細胞亜集団を培養することが、可溶性インターロイキン2、可溶性インターロイキン12、可溶性インターロイキン18、またはそれらの組合せのうちの1以上を培養物に添加することをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
NK細胞およびT細胞の両方が同じキメラ抗原受容体をコードする核酸で形質転換されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
NK細胞およびT細胞が異なるキメラ抗原受容体をコードする核酸で形質転換されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
キメラ抗原受容体が、抗CD19 scFvに作動可能に連結されたOX40共刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
キメラ抗原受容体が、配列番号1と少なくとも95%の配列同一性を有する核酸によってコードされている、請求項5または7に記載の方法。
【請求項9】
キメラ抗原受容体が、配列番号2と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項5または7に記載の方法。
【請求項10】
T細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子が、抗CD3抗体を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
T細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子が、抗CD28抗体を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
血液サンプルが末梢血サンプルである、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
血液サンプルが臍帯血サンプルである、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
遺伝子改変免疫細胞の混合集団が、1×10
8個から1×10
10個の遺伝子改変細胞傷害性NK細胞と、1×10
6個から1×10
8個の遺伝子改変細胞傷害性T細胞とを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
遺伝子改変免疫細胞の混合集団が、(i)NK細胞単独またはT細胞単独と比較して、腫瘍細胞に対する迅速な細胞傷害効果を示し、その後、腫瘍細胞に対する増強された永続性の細胞傷害効果を示すか、あるいは(ii)NK細胞単独またはT細胞単独と比較して、腫瘍細胞に対する持続的な細胞傷害効果をより長く発揮する、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年11月26日出願の米国仮特許出願第62/771,482号に基づく優先権の利益を主張するものであり、その内容全体は引用により本明細書中に包含される。
【0002】
ASCIIテキストファイルの資料の引用による包含
本出願は、同時に提出された以下のASCIIテキストファイル:ファイル名:NKT0028WO_ST25.txt;2019年11月22日作成、サイズは9.4KB、に含まれる配列表を引用により包含させる。
【背景技術】
【0003】
背景
悪性腫瘍は、体内の細胞の無制御の増殖の結果である。同様に、多くの疾患または感染症は、正常な組織増殖および細胞死の調節不全に起因する。外科的方法または薬物療法は長い間、最前線の処置法として用いられてきたが、免疫療法は、癌組織または病変組織を処置するための新たな選択肢である。
【発明の概要】
【0004】
概要
従来の抗癌剤療法は、外科的アプローチ、放射線療法、化学療法またはこれらの方法の組み合わせに依存していた。同様に、多くの疾患または感染症は、従来の薬物療法で処置されているが、最近では生物学的製剤の開発が進み、治療方法が変わってきている。ある種の癌のメカニズムが研究によって解明されると、それを利用して癌の標的化治療法が開発された。標的療法とは、癌細胞または癌の増殖を補助する細胞(血管細胞など)に見出される特定の遺伝子またはタンパク質を標的として、癌細胞の増殖を抑制または阻止する特定の薬物を用いた癌治療法である。最近では、遺伝子工学を利用して、免疫系の特定の面を利用して癌と闘う方法を開発できるようになった。場合によっては、患者自身の免疫細胞を、その患者の癌タイプを特異的に根絶するように改変される。以下に詳述するように、T細胞またはナチュラルキラー(NK細胞)などの種々のタイプの免疫細胞を用いることができる。
【0005】
いくつかの態様において、免疫細胞の複数の集団の同時増殖法が提供される。一態様において、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の異なる細胞タイプが、(i)共に同時増殖されるか、または(ii)並行して同時増殖された後に組み合わされる。いくつかの態様において、NK細胞およびT細胞は、NK細胞:T細胞の比率が約5:1、約10:1、約20:1、例えば、5:1、7:1、10:1、12:1、15:1、17:1、20:1またはそれらの間の任意の比率で、共にまたは別個に増殖され、組み合わされる。別の態様において、T細胞よりもNK細胞が少なくとも2倍多い。これらの比率(T細胞よりもNK細胞が多い)は、いくつかの態様において特に有利であり、T細胞からの長期的な細胞傷害と併せて、(より増殖したNK細胞とその細胞傷害活性による)ロバストな急性抗腫瘍反応を可能にする。いくつかの態様において、T細胞の増殖が抑制されるだけでなく、NK細胞のT細胞に対する阻害効果により、T細胞のみのアプローチと比較して、T細胞のサイトカイン放出が調整される。T細胞のみの治療では、T細胞から放出された種々のサイトカインが自己分泌的に作用し、T細胞増殖および活性を上方制御する。増殖および活性化を放置すると、神経毒性、“標的/非標的”認識、アナフィラキシー、さらにはサイトカイン放出症候群(CRS、“抗体、養子T細胞療法の投与後に見られる、生命を脅かす可能性のある全身性炎症性反応”)などの様々な副作用を引き起こす可能性がある。いくつかの態様により、T細胞は依然として特定のサイトカインを放出するが、T細胞刺激(およびCRSを引き起こす可能性のあるさらなるサイトカインの放出)を引き起こすのではなく、これらのサイトカインはNK細胞を積極的に刺激するように作用する。従って、いくつかの対応において、NK細胞は、増殖(およびより多くの細胞傷害性)を誘導することによって、T細胞が自己刺激する能力を弱める。従って、NK細胞の存在は、T細胞の増殖性およびサイトカイン放出活性を低下させる。このように、いくつかの態様において、NK細胞およびT細胞の組み合わせにより、より効果的かつ安全な癌免疫療法製品が提供される。いくつかの態様において、T細胞は、以下のサブタイプ、すなわち細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、NKT細胞またはガンマデルタT細胞の1つ、2つ、3つまたはそれ以上を含む。一態様において、複数のサブタイプの総合計(collective total)は、本明細書に記載の比率(5~10:1、10~15:1、15~20:1を含むが、これらに限定されない)で計算される。別の態様において、サブタイプの1つの合計が、本明細書に記載された比(5:1を含むが、これに限定されない)について計算される。
【0006】
いくつかの態様において、第1の細胞タイプは、約5~10:1、例えば、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1および10:1の比率で第2の細胞タイプと組み合わされる。いくつかの態様において、第1の細胞タイプは、約11~15:1、例えば、11:1、12:1、13:1、14:1および15:1の比率で第2の細胞タイプと組み合わされる。いくつかの態様において、第1の細胞タイプは、約16~20:1、例えば、16:1、17:1、18:1、19:1および20:1の比率で第2の細胞タイプと組み合わされる。別の態様において、細胞タイプ2よりも細胞タイプ1の方が少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍またはそれ以上存在する。別の態様において、第3の細胞タイプも含まれる。一態様において、細胞タイプ1にはNK細胞が含まれ、細胞タイプ2にはT細胞が含まれる。他の態様では、他の細胞タイプが用いられる。
【0007】
従って、本発明は、混合集団の亜集団(subpopulation)の特定の相対的割合を有する免疫細胞(例えば、遺伝子改変免疫細胞(engineered immune cells))の混合集団を生成する方法を提供する。いくつかの態様において、これらの方法は、腫瘍細胞などの標的細胞に対してロバストな細胞傷害効果を提供する細胞集団の生成を可能にし、一方で、遺伝子改変免疫細胞の特定の亜集団がより多く存在する場合に生じる可能性のある有害な免疫効果の可能性を低減する。いくつかの態様において、少なくとも2つの遺伝子改変免疫細胞の亜集団を含む免疫細胞の混合集団を生成する方法であって、血液サンプルから単核細胞集団を単離すること、ここで、単離された単核細胞集団は、少なくとも第1および第2の免疫細胞亜集団を含み、単離された単核細胞から免疫細胞の第1の亜集団を単離し、単離された免疫細胞の第1の亜集団をフィーダー細胞の集団と共に培養容器内で培養すること、ここで、前記フィーダー細胞が、前記第1の免疫細胞亜集団内のナチュラルキラー(NK)細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子を発現して、NK細胞の増殖集団を生成するように構成されており、前記単離された単核細胞から第2の免疫細胞亜集団を単離し、前記第2の免疫細胞亜集団を前記第2の免疫細胞亜集団内のT細胞の増殖を刺激する少なくとも1つの分子と共に培養容器内で培養して、T細胞の集団を増殖すること、NK細胞および/またはT細胞を、細胞傷害性を向上させ、かつ/または副作用を低減させるタンパク質または薬物を発現するように遺伝子操作し、遺伝子操作された細胞傷害性NK細胞の一部と遺伝子操作された細胞傷害性T細胞の一部を組み合わせることにより、遺伝子改変免疫細胞の混合集団を生成すること、を含む方法を提供する。いくつかの態様において、2つ(またはそれ以上)の増殖された遺伝子改変免疫細胞の組み合わせはインビトロで行われ、一方、他の態様において、組み合わせはインビボで行われる(例えば、増殖された細胞タイプの併用投与または逐次投与による)。
【0008】
いくつかの態様において、NK細胞を刺激するための少なくとも1つの分子は、4-1BBリガンド(4-1BBL)、インターロイキン15(IL-15)およびそれらの組み合わせから選択される。いくつかの態様において、NK細胞の増殖を刺激するための分子は、4-1BBLおよびIL15の組み合わせを含む。いくつかの態様において、インターロイキン15(IL-15)は、フィーダー細胞に膜結合している。いくつかの態様において、単離された免疫細胞の第1の亜集団の培養は、可溶性インターロイキン2、可溶性インターロイキン12、可溶性インターロイキン18、またはそれらの組み合わせのうちの1以上を培養物に添加することをさらに含む。いくつかの態様において、T細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子は、CD3に対する抗体またはCD28に対する抗体の1以上を含む。いくつかの態様において、T細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子は、抗CD3抗体を含む。さらなる態様において、抗CD3抗体および抗CD28抗体の混合物が用いられる。いくつかの態様において、T細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子は、抗CD28抗体を含む。態様に応じて、CD3に対する抗体は、要すればOKT3抗体を含む。いくつかの態様において、OKT3抗体、他の抗CD3抗体または抗CD28抗体は、免疫細胞の第2の亜集団と共培養されるフィーダー細胞によって発現される。さらなる態様において、抗体または他の刺激分子は、固体支持体に結合している。固体支持体は、態様に応じて、培養容器、標識を含む生体適合性ビーズ、または超常磁性ビーズを含む。このように、いくつかの態様において、刺激分子はフィーダー細胞によって発現されることによって提供されるが、いくつかの態様において、無細胞増殖(cell-free exansion)が用いられる(例えば、刺激分子を培養液に添加するか、さもなければフィーダー細胞ではない固体支持体に結合させる)。
【0009】
いくつかの態様において、本方法は、増殖されたNK細胞集団に、癌細胞によって発現された標的に結合し、結合時に癌細胞に対する細胞傷害活性を誘発するように構成された遺伝子改変受容体をコードする核酸を導入して、遺伝子改変細胞傷害性NK細胞を生成することを含む。同様に、いくつかの実施形態では、この方法は、増殖したT細胞集団に、癌細胞によって発現された標的に結合し、結合時に癌細胞に対する細胞傷害活性を誘発するように構成された遺伝子改変受容体をコードする核酸を導入して、遺伝子改変細胞傷害性細胞を生成することをさらに含む。いくつかの態様において、NK細胞およびT細胞は同じ遺伝子改変受容体で導入され、他の態様において、NK細胞およびT細胞は異なる遺伝子改変受容体で導入される。いくつかの態様において、さらなるサブタイプの細胞が混合集団に用いられる場合、それらの細胞は、NK細胞および/またはT細胞と同じ遺伝子改変受容体を発現するように設計されてもよいし、異なる受容体タイプを発現するように設計されてもよい。いくつかの態様において、増殖された細胞に導入された核酸は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードしている。CARは、腫瘍細胞によって発現される様々な標的に対する受容体であり得て、これには、腫瘍細胞によって特異的に発現されるものだけでなく、腫瘍細胞によって過剰に発現されるものも含まれる(それによって、マーカーを用いた天然細胞の標的化が制限される)。いくつかの態様において、CARは、CD19、CD123、BCMA、ガラクチン、Ral-B、FLT3、CD70、DLL3、CD5、GUCY2C、EGFR、KREMEN2、PSMA、ALPPL2、CLDN6、CLDN18、GPR143、GRM8、LPAR3、GD2、ADAM12、LECT1またはTMEM186に対する受容体である。いくつかの態様において、CARは、MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、ULBP5および/またはULBP6を含むがこれらに限定されない、1以上のNKG2Dリガンドに対する受容体である。いくつかの態様において、遺伝子改変細胞は、ある態様では、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の異なる腫瘍標的に対して集合的に指向されるNK細胞およびT細胞の混合物を含む、異なる標的に対するCARを発現するように構成される。いくつかの態様において、CARは、CD19に対する受容体である。いくつかの態様において、混合集団の各亜集団は、抗CD19 CARを発現する。いくつかの態様において、抗CD19 CARは、抗CD19 scFvに作動可能に連結されたOX40共刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様において、抗CD19 CARは、配列番号1と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸によってコードされる。いくつかの態様において、抗CD19 CARは、配列番号2に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0010】
いくつかの態様において、遺伝子改変細胞傷害性NK細胞および遺伝子改変細胞傷害性T細胞を、(i)遺伝子改変NK細胞が、遺伝子改変NK細胞単独と比較して、癌細胞に対して増強された細胞傷害性を示す、(ii)遺伝子改変細胞傷害性T細胞が、増殖する遺伝子改変NK細胞の数を増加させることができる、および/または(iii)遺伝子改変T細胞が、遺伝子改変T細胞単独の場合と比較して、減少したサイトカイン放出を示す、比率で組み合わせる。用いられる比率は、所定の患者、腫瘍タイプ、重篤度または腫瘍進行段階に合わせて調整することができるか、または他の診断因子もしくは予後因子に基づき得る。いくつかの態様において、遺伝子改変NK細胞と遺伝子改変T細胞の比率は約5:1である。他の態様では、他の比率が用いられる。例えば、いくつかの態様では、第1の細胞タイプと第2の細胞タイプの比率は、約2:1、約4:1、約6:1、約8:1、約10:1、約12:1、約14:1、約16:1、約18:1、約20:1またはそれ以上(または記載されたそれらの間の任意の比率)である。
【0011】
いくつかの態様では、免疫細胞が単離される血液サンプルは、末梢血サンプルである。さらなる態様では、血液サンプルは臍帯血サンプルである。いくつかの態様では、遺伝子改変免疫細胞の混合集団は、約1x107~約1x1010個の遺伝子改変細胞傷害性NK細胞と、約1x105~約1x108個の遺伝子改変細胞傷害性T細胞とを含んでいる。本明細書に記載のように、様々な態様が、2種以上の免疫細胞タイプを、CRSを含む有害な免疫効果のリスクを低減または排除して、標的腫瘍細胞に対する効果的な細胞障害を可能にする比率で組み合わせている。いくつかの態様では、遺伝子改変免疫細胞の混合集団は、腫瘍細胞に対して迅速な細胞傷害効果を示し、その後、腫瘍細胞に対する永続性の細胞傷害効果が増強される。いくつかの態様では、遺伝子改変免疫細胞の混合集団のうちのNK部分は、NK細胞またはT細胞のみの場合と比較して、腫瘍細胞に対する永続性の細胞傷害効果の持続時間が長い。
【0012】
いくつかの態様において、遺伝子改変細胞傷害性免疫細胞の混合集団が提供され、これは、NK細胞を含む免疫細胞の第1の亜集団であって、NK細胞が、癌細胞によって発現された標的に結合し、結合時に癌細胞に対して細胞傷害活性を誘発するように構成された遺伝子改変受容体を発現するように設計されており、ここで、第1の亜集団は、約1x108~約1x1010のNK細胞を含み、第2の亜集団は、T細胞を含む免疫細胞を含み、ここで、T細胞は、癌細胞によって発現された標的に結合し、結合時に癌細胞に対して細胞傷害活性を誘発するように構成された遺伝子改変受容体を発現するように設計されており、第2の亜集団は、約1x104~約1x106個のT細胞を含み、遺伝子改変NK細胞および遺伝子改変T細胞の混合集団は、所定のエフェクター対標的細胞比において、同等のエフェクター対標的比において、NK細胞単独またはT細胞単独のいずれかよりも、癌細胞に対してより大きな細胞傷害性を示す。
【0013】
上記のように、いくつかの態様において、遺伝子改変受容体は、例えば、CD19、CD123、ガラクチン、Ral-B、FLT3、CD70、DLL3、CD5、GUCY2C、EGFR、KREMEN2、PSMA、ALPPL2、CLDN6、CLDN18、GPR143、GRM8、LPAR3、GD2、ADAM12、LECT1またはTMEM186などの様々な標的に対して向けられ得るキメラ抗原受容体を含む。いくつかの態様において、混合集団の各亜集団は、抗CD19 CARを発現している。いくつかの態様において、抗CD19 CARは、抗CD19 scFvに作動可能に連結されたOX40共刺激ドメインおよびCD3ζシグナリングドメインを含む。いくつかの態様において、抗CD19 CARは、配列番号1と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸によってコードされる。いくつかの態様において、抗CD19 CARは、配列番号2と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0014】
さらに、本発明は、少なくとも2つの免疫細胞の亜集団を含む免疫細胞の混合集団を増殖させる方法であって、血液サンプルから単核細胞の集団を単離すること、単離された単核細胞集団を少なくとも第1のサブパートおよび第2のサブパートに分割すること、単離された単核細胞の第1のサブパートを、第1の培地を含む培養容器内でフィーダー細胞の第1の集団と共に培養すること、ここで、フィーダー細胞の第1の集団が、単離された単核細胞の第1のサブパート内のナチュラルキラー(NK)細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子を発現し、および/または第1の培地が、単離された単核細胞の第1のサブパート内のナチュラルキラー(NK)細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子を含み、ここで、少なくとも1つの分子は、4-1BBリガンド(4-1BBL)、インターロイキン15(IL-15)およびそれらの組み合わせから選択され、それによってNK細胞の増殖集団を生成すること、単離された単核細胞の第2のサブパートを第2の培養液を含む培養容器内でフィーダー細胞の第2の集団と共に培養すること、ここで、フィーダー細胞の第2の集団が、単離された単核細胞の第2のサブパート内のT細胞の1以上の亜集団の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子を発現し、および/または第2の培養液が、単離された単核細胞の第2のサブパート内のT細胞の1以上の亜集団の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子を含み、それによってT細胞の1以上の亜集団の増殖集団を生成し、かつNK細胞の増殖集団の少なくとも一部をT細胞の1以上の亜集団の増殖集団の少なくとも一部と組み合わせて、免疫細胞の少なくとも2つの亜集団を含む免疫細胞の混合集団を生成することを含む、方法を提供する。
【0015】
いくつかの態様において、混合集団は、T細胞の1以上の亜集団の合計の割合と比較して、より高割合でNK細胞を含んでいる。いくつかの態様において、T細胞の1以上の亜集団は、ガンマ-デルタT細胞を含む。
【0016】
本発明は、本明細書に記載の方法によって産生される免疫細胞の混合集団を提供する。いくつかの態様において、免疫細胞の混合集団は、腫瘍が固形腫瘍であるか懸濁性腫瘍であるかにかかわらず、腫瘍の処置に用いられるように構成される。また、本発明は、癌の処置のための、本明細書に記載の免疫細胞の混合集団の使用を提供する。いくつかの態様において、癌の処置のための医薬品の製造における、免疫細胞の混合集団の使用を提供する。
【0017】
また、いくつかの態様において、遺伝子改変NK細胞および遺伝子改変T細胞の組み合わせが提供され、ここで、NK細胞とT細胞の比率は少なくとも5:1である。いくつかの態様において、遺伝子改変NK細胞および遺伝子改変T細胞の組み合わせが提供され、ここでNK細胞とT細胞の比率は少なくとも10:1である。いくつかの態様において、遺伝子改変NK細胞および遺伝子改変T細胞の組み合わせが提供され、ここで、NK細胞とT細胞の比率は少なくとも12:1である。いくつかの態様において、遺伝子改変NK細胞および遺伝子改変T細胞の組み合わせが提供され、ここで、NK細胞とT細胞の比率は少なくとも15:1である。いくつかの態様において、遺伝子改変NK細胞および遺伝子改変T細胞の組み合わせが提供され、ここで、NK細胞とT細胞の比率は少なくとも20:1である。
【0018】
いくつかの態様において、示された比率でまたはおよそ示された比率での細胞の組合せが、標的腫瘍に対する遺伝子改変NK細胞の増強された細胞傷害活性を誘導する。いくつかの態様において、示された比率でまたはおよそ示された比率での細胞の組合せは、遺伝子改変NK細胞単独と比較して、標的腫瘍に対する遺伝子改変NK細胞の細胞傷害活性の増強された持続性を誘導する。いくつかの態様において、示された比率でまたはおよそ示された比率での細胞の組合せは、遺伝子改変T細胞単独と比較して、遺伝子改変T細胞によるサイトカイン放出の減少を誘導する。いくつかの態様において、示された比率でまたはおよそ示された比率での細胞の組合せは、遺伝子改変T細胞単独と比較して、遺伝子改変T細胞の増殖の低下を誘導する。
【0019】
いくつかの態様において、本明細書に記載の細胞の混合集団を用いた癌の処置方法を提供する。本明細書に記載するように、いくつかの態様において、細胞の組合せは、増殖後および患者への送達の前に、所望の比率で細胞タイプを混合することによって達成される。いくつかの態様において、この組合せは、投与によって行われる(例えば、所望の比率がインビボで達成されるように、各細胞タイプからの必要数の細胞が投与される)。いくつかの態様において、処置方法は、IL2の投与をさらに含む。結果として得られる組合せをインビボで生成させることを含む態様では、第1の細胞タイプを最初に投与することによって達成されてもよいし、第2の細胞タイプを最初に投与することによって達成されてもよい。いくつかの態様において、第1のタイプの遺伝子改変免疫細胞の投与は、第2のタイプ(または第3タイプなど)の免疫細胞のための改善された微小環境を提供することができる。
【0020】
いくつかの態様において、複数の免疫細胞集団の共増殖のための方法、例えば、NK細胞とT細胞の共増殖のための方法を提供する。また、2以上の免疫細胞の亜集団の混合物を含む免疫細胞集団、ならびに、癌および他の疾患または損傷組織の原因の処置のための方法およびかかる組成物の使用も提供する。いくつかの態様において、NK細胞およびT細胞の混合細胞集団は、有利にも標的細胞に対する二重の効果、例えば、NK細胞によって誘導される細胞傷害効果の急速な段階と、T細胞活性の結果としての腫瘍制御のより長い期間とを合した効果を提供する。有利なことに、いくつかの態様において、2種類の細胞は単一のプロセスで共に製造され、互いに組み合わせて投与することができる。いくつかの態様において、増殖プロセスの第1の部分でNK細胞を製造し、次いでT細胞を製造し、増殖プロセスの第2の部分で、結果として得られるNK細胞集団およびT細胞集団を組み合わせて、NK:T細胞の所望の比率を達成する。さらなる態様において、NK細胞およびT細胞を共に培養し、方法(methodology)を調整して、合併された増殖培養プロセスの後に所望の比率が達成されるように、一方の細胞タイプの他方の細胞タイプに対する増殖率(ならびに、混合物に含まれる任意の第3、第4またはそれ以上の細胞タイプに関するもの)を制御する。
【0021】
いくつかの態様において、定義されたパラメーターの範囲内で、最適化された構築物を用いて、NK細胞およびT細胞(および要すれば追加の免疫細胞タイプ)の両方を増殖および導入することを可能にする方法を提供し、その結果得られる複合細胞集団は、構成される免疫細胞亜集団のそれぞれの最適化された活性を表す、標的細胞に対する相乗効果を有利に示す。
【0022】
いくつかの態様によれば、少なくとも2つの免疫細胞の亜集団を含む免疫細胞の混合集団を増殖させる方法であって、血液サンプルから単核細胞集団を単離すること、単離された単核細胞をフィーダー細胞の集団と共に培養容器内で培養すること(フィーダー細胞は、NK細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子を発現するように構成されている)、前記フィーダー細胞と共培養した単核細胞を単離された単核細胞内のT細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子に曝すこと、かつ前記フィーダー細胞と共培養し、前記T細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子に曝された単核細胞を、NK細胞およびT細胞の両亜集団の増殖を可能にするのに十分な期間、培養することを含み、これにより、少なくとも2つの免疫細胞の亜集団を含む免疫細胞の混合集団を生成する方法を提供する。いくつかの態様において、単離された単核細胞集団が、例えば、NK細胞および1以上のT細胞サブタイプ(例えば、細胞傷害性T細胞、NKT細胞、ガンマデルタT細胞など)などの、少なくとも2つの異なるタイプの免疫細胞を含むことを特徴とする。
【0023】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、単離された単核細胞集団と比較して、NK細胞の相対的な割合を増加させるために、単離された単核細胞を富化することをさらに含んでいてよい。いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、単離された単核細胞集団と比較して、T細胞の相対的な割合を減少させるために、単離された単核細胞を枯渇させることをさらに含んでいてよい。
【0024】
いくつかの態様において、単離された単核細胞内のナチュラルキラー(NK)細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子は、4-1BBリガンド(4-1BBL)、インターロイキン15(IL-15)またはそれらの組合せである。いくつかの態様において、他のインターロイキン類を含む、他の刺激分子を用いてもよい。いくつかの態様において、フィーダー細胞による刺激分子の発現に加えて、またはそれに代えて、培養液にそのような刺激分子を添加する。いくつかの態様において、NK細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子は、4-1BBLおよびIL15の組み合わせを含む。いくつかの態様において、インターロイキン15(IL-15)はフィーダー細胞に膜結合している。
【0025】
いくつかの態様において、T細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子は、T細胞上のT細胞受容体の一部と相互作用する抗体を含む。いくつかの態様において、用いられる抗体は、CD3に対するまたはCD28に対する抗体である。いくつかの態様において、二重特異的抗体(例えば、CD3およびCD28の両方を標的とする抗体)が用いられる。いくつかの態様において、抗体は、OKT3抗体を含む。いくつかの態様において、CD3、CD28および/またはOKT3抗体は、フィーダー細胞によって発現される。さらなる態様において、CD3、CD28および/またはOKT3抗体は、培養液中に提供される。
【0026】
いくつかの態様において、T細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子は、抗CD3抗体を含む。いくつかの態様において、T細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子は、抗CD28抗体を含む。いくつかの態様において、T細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子は、抗CD3抗体および抗CD28抗体の混合物を含む。いくつかの態様において、抗体は、固体支持体に結合している。いくつかの態様において、固体支持体は、培養容器、標識を含む生体適合性ビーズまたは超常磁性ビーズを含む。
【0027】
いくつかの態様において、フィーダー細胞と共培養された単核細胞を、単離された単核細胞内のT細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子に曝すことは、単核細胞がフィーダー細胞と共培養されるのと同時に行われる。しかしながら、いくつかの態様において、曝露は連続的に行われる(例えば、共培養の前または後に行われる)。例えば、いくつかの態様において、フィーダー細胞と共培養された単核細胞を、単離された単核細胞内のT細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子に曝露することは、単核細胞がフィーダー細胞と共培養されるよりも後の時点で行われる。態様によっては、フィーダー細胞と共培養された単核細胞が、T細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子に曝される時間が遅いほど、単核細胞集団からのT細胞の増殖の程度と逆相関する。したがって、いくつかの態様において、曝露のタイミングが、結果として得られる混合細胞集団におけるT細胞(またはT細胞のサブタイプ)の増殖の程度を調整するために用いられる。
【0028】
いくつかの態様において、フィーダー細胞と単核細胞の比率は、約10:1~1:10の範囲である。いくつかの態様において、フィーダー細胞と単核細胞との比は約1:1である。他の比率は、いくつかの態様で用いられ、例えば、フィーダー細胞:単核細胞の比率は、1000:1、500:1、250:1、100:1、50:1、または列挙された比率の間およびそれを含む何れか他の比率である。
【0029】
いくつかの態様において、血液サンプルは末梢血サンプルである。いくつかの態様において、血液サンプルは臍帯血サンプルである。いくつかの態様において、血液サンプルは、胎盤などの胎児-母体組織由来である。いくつかの態様において、供給源は、受容者と同種である混合免疫細胞集団を生成するために用いられる。いくつかの態様において、受容者はドナーである。いくつかの態様において、血液サンプルおよび/または増殖された混合集団は、受容者への送達の準備ができるまで貯蔵される(例えば、凍結)。
【0030】
いくつかの態様において、免疫細胞の混合集団は、約100:1~約1:100の範囲のNK細胞対T細胞(様々なT細胞亜集団を含む)の比率を有する。いくつかの態様において、ほぼ等分のNK細胞とT細胞が用いられ、その結果、免疫細胞の混合集団は、約1:1のNK細胞とT細胞の比率を有する。
【0031】
いくつかの態様において、NK細胞とT細胞の比率が約1:1~約100:1である免疫細胞の混合集団は、NK細胞単独またはT細胞単独と比較して、腫瘍細胞に対して迅速な細胞傷害効果を示し、その後、腫瘍細胞に対して持続的な細胞傷害効果を示す。いくつかのそのような態様において、約1:1~約1:100の間のNK細胞とT細胞の比率を有する免疫細胞の混合集団は、NK細胞単独またはT細胞単独と比較して、腫瘍細胞に対してより長い持続的な細胞傷害効果を示す。
【0032】
また、いくつかの態様において、本発明は、単核細胞集団からの免疫細胞の少なくとも2つの亜集団の増殖を刺激するように構成されたフィーダー細胞の集団であって、ここで、該フィーダー細胞が、NK細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つのシグナルと、T細胞(またはT細胞の亜集団)の増殖を刺激するための少なくとも1つのシグナルとを発現し、ここで、NK細胞の増殖のための少なくとも1つのシグナルは、4-1BBリガンド(4-1BBL)、インターロイキン15(IL-15)およびそれらの組合せから選択され、ここで、NK細胞の増殖のための少なくとも1つのシグナルは、T細胞受容体のCD3と相互作用する分子、および任意にT細胞上のCD28と相互作用する分子から選択される、フィーダー細胞の集団を提供する。
【0033】
本発明はまた、NK細胞およびT細胞を含む混合細胞集団を生成するために、フィーダー細胞のそのような集団の使用を提供する。いくつかの態様において、混合細胞集団中のNK細胞の割合が全体の約10%よりも大きく、混合細胞集団中のT細胞の割合が全体の約30%よりも大きくなる。いくつかの態様において、混合細胞集団におけるNK細胞の割合と、混合細胞集団におけるT細胞の割合とが、それぞれ全体の約40%から60%の間である。
【0034】
いくつかの態様において、NK細胞およびT細胞(T細胞の亜集団を含む)の混合集団も提供しており、混合細胞集団におけるNK細胞の割合は全体の約10%よりも大きく、混合細胞集団におけるT細胞の割合は全体の約30%よりも大きい。いくつかの態様において、混合細胞集団におけるNK細胞の割合と、混合細胞集団におけるT細胞の割合が、それぞれ全体の約40%から60%の間である。いくつかの態様において、混合細胞集団は、標的細胞に対して二相性(bi-phasic)の細胞傷害動態を示す。このようないくつかの態様において、二相性の細胞傷害動態は、急速で強烈な初期の細胞傷害相と、それに続く低強度の細胞傷害相を含む。いくつかの態様において、標的細胞は腫瘍組織を含む。いくつかの態様において、腫瘍組織は固体腫瘍であり、一方、さらなる態様において、腫瘍組織は懸濁性腫瘍(例えば、血液腫瘍)である。
【0035】
また、本発明は、癌の処置のための、および/または癌の処置のための医薬品の製造における、NK細胞およびT細胞の混合集団の使用を提供する。
【0036】
本明細書で提供されるいくつかの追加の態様は、少なくとも2つの免疫細胞の亜集団を含む免疫細胞の混合集団を増殖するための方法に関し、この方法は、血液サンプルから単核細胞の集団を単離すること、ここで、単離された単核細胞の集団は、少なくとも2つの異なるタイプの免疫細胞を含み、単離された単核細胞をフィーダー細胞の集団と共に培養液を含む培養容器内で培養すること、ここで、培養は、NK細胞亜集団およびT細胞亜集団の両方の増殖を可能にするのに十分な時間行われ、それによって、少なくとも2つの免疫細胞の亜集団を含む免疫細胞の混合集団を生成することを含む。
【0037】
いくつかの態様において、フィーダー細胞は、単離された単核細胞内のナチュラルキラー(NK)細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子を発現し、および/または培養液が、単離された単核細胞内のナチュラルキラー(NK)細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子を含む。いくつかの態様において、少なくとも1つの分子は、4-1BBリガンド(4-1BBL)、インターロイキン15(IL-15)およびそれらの組合せから選択される。いくつかの態様において、フィーダー細胞は、単離された単核細胞内のT細胞またはT細胞の1以上の亜集団の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子を発現し、および/または培養液が、単離された単核細胞内のT細胞またはT細胞の1以上の亜集団の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子を含む。いくつかの態様において、T細胞の1以上の亜集団は、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)、エフェクターT細胞、ヘルパーT細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞、ガンマデルタT細胞、粘膜関連不変性T細胞のうちの1以上である。いくつかの態様において、血液サンプルは臍帯血サンプルである。
【0038】
本発明はまた、少なくとも2つの免疫細胞の亜集団を含む免疫細胞の混合集団を増殖するための方法であって、この方法は、血液サンプルから単核細胞の集団を単離すること、ここで単離された単核細胞の集団は、少なくとも2つの異なるタイプの免疫細胞を含み、単離された単核細胞の集団を少なくとも第1のサブパートと第2のサブパートに分割すること、単離された単核細胞の第1のサブパートを、第1の培地を含む培養容器内でフィーダー細胞の第1の集団と共に培養すること、単離された単核細胞の第2のサブパートを、第2の培地を含む培養容器内でフィーダー細胞の第2の集団と共に培養し、増殖されたNK細胞の集団の少なくとも一部を、増殖された1以上のT細胞の亜集団の少なくとも一部と組み合わせて、少なくとも2つの免疫細胞の亜集団を含む免疫細胞の混合集団を生成することを含む方法を提供する。
【0039】
いくつかの態様において、フィーダー細胞の第1の集団は、単離された単核細胞の第1のサブパート内のナチュラルキラー(NK)細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子を発現し、および/または第1の培養液が単離された単核細胞の第1のサブパート内のナチュラルキラー(NK)細胞の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子を含む。いくつかの態様において、少なくとも1つの分子は、4-1BBリガンド(4-1BBL)、インターロイキン15(IL-15)およびそれらの組合せから選択され、第2のフィーダー細胞の集団は、を発現し、および/または第2の培養培地が、単離された単核細胞の第2のサブパート内の1以上のT細胞の亜集団の増殖を刺激するための少なくとも1つの分子を含む。
【0040】
いくつかの態様において、混合集団は、T細胞の1以上の亜集団の合計の割合と比較して、より高い割合のNK細胞を含む。いくつかの態様において、T細胞の1以上の亜集団は、ガンマ-デルタT細胞を含む。
【0041】
また、いくつかの態様において、本明細書に記載の態様のいずれか1つによる癌性腫瘍の処置における組成物またはその使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
以下の図面の説明は、本明細書に記載の発明の限定されない態様を表す試験および結果に関するものである。
【
図1】
図1A~1Dは、4名の健康なドナー由来のドナー細胞組成の概要図である。
図1Aは、第1のドナーから採血した血液サンプル中のT細胞、NK細胞およびその他の細胞のおおよその割合の内訳を示す。
図1B、1Cおよび1Dは、さらなる3名のドナー由来の対応するデータを示している。
【
図2】
図2は、本明細書に記載の特定の態様に従って、NK細胞およびT細胞の同時増殖に有効な種々のK562クローンを同定することができる概略的なプロセスフロー図を示す。すなわち、プールされたK562の集団を限界希釈し、選択された数の個々のクローンについて、培養中のNK細胞とT細胞の両方を増殖させる能力について試験する。
図1A~1Dに示される4名のドナーの血液サンプルが用いられる。NK細胞およびT細胞の同時増殖に用いたフィーダー細胞株(およびクローン)は、41BBL、膜結合型IL-15および膜結合型の抗CD3 scFv OKT3を発現するように遺伝子操作された改変K562細胞である。このフィーダークローンをマイトマイシンCで処理し、1ウェルあたり5×10
5個の細胞を培養容器に播種する。培養0日目に、ドナーの末梢血単核細胞を、フィーダークローンと同じウェルに、1ウェルあたり5×10
5細胞密度で播種する。共培養0日目にインターロイキン2(IL-2)を40ユニット/mLで添加し、共培養4日目にこれを反復し、共培養6日目には再び400ユニット/mLのIL-2を添加する。共培養7日目から13日目まで細胞を増殖させ、この期間にNK細胞とT細胞の比率を評価する。共培養14日目から20日目までを用いて、共培養工程の初期に調整された変数(variables)、例えば改変されたK562細胞によって提供される刺激を補足する二次刺激の導入などに基づいて、NK細胞とT細胞の比率で最終的に得られる細胞集団を決定する。
【0043】
【
図3】
図3A~3Bは、24個の異なるK562クローンを用いて7日間培養した後、4名のドナーから得られたNK細胞またはT細胞の増殖における変化倍数の増加に関係するデータを示す。
図3Aは、特定のK562クローンが、天然遺伝子改変K562刺激フィーダー細胞株(例えば、単一の複製クローンからなる集団ではなく、遺伝子改変K562細胞の混合集団)を用いた場合と同様の増殖効率を示したことを示している。
図3Bは、試験した各クローンが、T細胞増殖を強力に刺激する能力を有することを示す。
【
図4】
図4A~4Bは、24個の異なるK562クローンを用いて7日間増殖培養した後、4名の異なるドナーから得られた細胞組成に関係するデータを示す。
図4Aは、フィーダー細胞として用いた24個の個々のクローンのK562集団のそれぞれで増殖させたとき、4名のドナーのそれぞれから得られた、培養7日後の増殖した細胞集団に存在するNK細胞の割合に関するデータを示す。
図4Bは、培養7日後に示されたT細胞の割合についての対応するデータを示している。これらのデータは、一般的に、培養7日後に得られる細胞組成は、当初(例えば出発点)のNK:T細胞の比率を反映している。以下でより詳細に説明する、いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、NK細胞:T細胞の当初(incoming)の比率か、または方法の変更により、NK細胞および/またはT細胞の差次的増殖を可能にして所望の最終的なNK細胞とT細胞の比率の何れかを操作することを可能にした。
【
図5】
図5は、補充刺激(supplemental stimulation)源を可変時点で培養物に添加する本明細書に記載のいくつかの態様による増殖プロトコールの概略を示す。
図2と同様に、
図5は、増殖プロトコールの3つの段階のタイムラインを示している。再び0時点で、培養物に低用量のIL-2を添加し、これを4日目に繰り返し、さらに6日目に再び(高用量のIL-2を)添加する。
図5の概略図は、培養の最初の6日間の何れかでT細胞増殖のための補充刺激源(例えば、CD3/CD28ビーズ)の添加、または全く添加しない(“ビーズなし”、対照)を説明するマトリックスを示す。共培養中のいくつかのステップで経時的にFACS分析を行い、NK細胞およびT細胞の相対的な増殖ならびに形質導入効率を評価する。
【0044】
【
図6】
図6A~6Bは、補充増殖刺激を加えたときのNK細胞およびT細胞の増殖に関係するデータを示す。
図6Aは、ビーズの有無を評価した7日間の培養後のNK細胞の変化と、CD3/CD28ビーズ(T細胞に対する補充刺激)を共培養に添加した日を示す。
図6Bは、T細胞増殖に関する対応するデータを示す。
【
図7】
図7A~7Dは、CD3/CD28ビーズを培養物に添加する時間に関連して、発現のための外因性遺伝子を含むベクターをNK細胞およびT細胞の両方に同時に形質導入する能力、および形質導入された遺伝子の発現を維持する両細胞タイプの能力に関係するデータを示す。
図7Aおよび7Bは、フローサイトメトリーで測定した、導入3日後の4名のドナーにおける各細胞タイプの導入効率を示す。
図7Cおよび7Dは、導入後7日目における発現の維持を示す。
【
図8】
図8A~8Dは、共培養の増殖時間をより長くしたときのNK細胞とT細胞の比率の変化に関するデータを示す。
【
図9】
図9A~9Cは、NK/T細胞の混合集団をインビトロおよび/またはインビボで評価するための様々な遺伝子改変細胞の模式図である。
【
図10】
図10は、再暴露アッセイにおけるNK細胞、T細胞およびNK細胞+T細胞混合集団の細胞傷害効果に関するデータを示す。
【
図11】
図11は、インビトロ3-D培養環境における本明細書に記載の態様による免疫細胞集団の評価に関するデータを示す。
【0045】
【
図12】
図12Aは、標的腫瘍細胞に対する併用療法として、キメラ抗原受容体を含むNK細胞およびキメラ抗原受容体を含むT細胞の効果的な比率を同定するために設計された試験設定を示す。
図12Bは、IncuCyteアッセイで測定した細胞傷害性を示す(シグナルの消失は標的細胞に対する細胞傷害効果を示す)。Nalm6標的細胞に対して最大の細胞傷害を示すE:T比およびNK:T比を識別するためにボックスが加えられている。
【
図13】
図13は、示された対照NKのみ構築物、Tのみ構築物またはNK+T構築物の標的腫瘍細胞に対する細胞傷害に関するデータを、第1段階で、および腫瘍細胞の2回目の再暴露で示す。
【
図14】
図14A~14Bは、NK細胞およびT細胞のそれぞれが、他方の細胞タイプの細胞数に与える影響を決定する試験に関する。
図14Aは、NK CAR細胞が3つの異なるNK:Nalm6比で存在し、T細胞が示された比で存在するとき、NK細胞数を評価した結果を示す(X軸)。
図14Bは、T CAR細胞を6つの異なるT:Nalm6比で存在させ、NK細胞を示された比(X軸)で存在させたとき、T細胞数を評価した結果である。試験は、NK細胞およびT細胞(抗CD19 CAR(19-1と示す)の限定されない例を発現している)をNalm6細胞と共培養して7日後に行った。
【
図15】
図15A~15Fは、キメラ抗原受容体を有するT細胞の存在下でのNK細胞増殖に関するデータを示す。
図15Aは、T細胞の不存在下でのNK細胞(抗CD19 CARを含み、標的Nalm6細胞と1:1比で存在する)の増殖を示す。
図15Bは、同じ限定されない例のCARを有するT細胞が1:16のT:Nalm6比で存在するときのNK19-1細胞の増殖を示す。
図15Cは、CARの同じ限定されない例を有するT細胞が1:8のT:Nalm6比で存在するときのNK19-1細胞の増殖を示す。
図15Dは、CARの同じ限定されない例を有するT細胞が1:4のT:Nalm6比で存在するときのNK19-1細胞の増殖を示す。
図15Eは、CARの同じ限定されない例を有するT細胞が1:2のT:Nalm6比で存在するときのNK19-1細胞の増殖を示す。
図15Fは、NK細胞の2つの異なるE:T比における追加のNK細胞増殖データ(可変T細胞数)を示す。
【0046】
【
図16】
図16A~16Dは、抗CD19 CARを有するNK細胞の存在下でのT細胞増殖に関するデータを示す。
図16Aは、NK細胞が存在しない場合の、T細胞(抗CD19 CARを有し、1:2比で標的Nalm6細胞と共に存在する)の増殖を示す。
図16Bは、CARの同じ限定されない例を有するNK細胞が、1:1のNK:Nalm6比で存在する場合のT19-1細胞の増殖を示す。
図16Cは、CARの同じ限定されない例を有するNK細胞が2:1のNK:Nalm6比で存在する場合のT19-1細胞の増殖を示す。
図16Dは、NK細胞の多様なE:T比での追加のT細胞増殖データ(可変NK細胞数)を示す。
【
図17】
図17A~17Cは、増殖に関するNK細胞とT細胞の相互作用をまとめた概略図である。
図17Aは、腫瘍細胞のみが存在する場合のNK細胞増殖の概略図である。
図17Bは、腫瘍細胞のみが存在する場合のT細胞増殖の概略図である。
図17Cは、NK細胞およびT細胞の両方が腫瘍細胞と共に存在する場合の、NK細胞およびT細胞の増殖の概略図を示す。
【
図18】
図18A~18Lは、NK細胞およびT細胞の混合集団によるサイトカイン放出に関連するデータを示す。示されているのは、GM-CSF(18A)、IL6(18B)、IL4(18C)、IL10(18D)、IFNg(18E)、IL2(18F)、TNFa(18G)、IL21(18H)、IL5(18I)、IL13(18J)、IL9(18K)およびIL22(18L)の濃度である。
【0047】
【
図19】
図19は、本明細書に記載の態様に従って増殖されたNK細胞の細胞傷害性を評価するために用いられるインビボ腫瘍異種移植モデルの概略図である。
【
図20】
図20A~20Eは、示された処置を受けたマウスの腫瘍負荷を反映する生物発光および生存データを示す。
図20Aは、PBS(対照)、NK19-1(NK細胞によって発現された抗CD19 CAR)、T19-1(T細胞によって発現された抗CD19 CAR)を高用量または低用量で、NK細胞およびT細胞の組合せ(示された用量で)を投与された動物を示す。
図20Aのすべてのグループが、3日目に示された処置を受けた。
図20Bは、NK細胞およびT細胞の組合せを示された用量で投与したマウスを示し、左カラムのグループは3日目にNK細胞を投与され、4日目にT細胞を投与され、右カラムのグループは3日目にT細胞を投与後、4日目にNK細胞を投与される。
図20A-20Bは、腫瘍細胞を移植してから31日目までのデータを示す。
図20Cは、示されたタイミングおよび細胞用量で腫瘍細胞の移植後43日目から121日目までの選択グループ(マウスが生存しているグループ)のデータを示す。
図20Dは、実験グループそれぞれの生存データを示す。
図20Eは、選択された実験グループ(
図20Dに示すもののうち)の生存データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
詳細な説明
癌は、細胞の異常な増殖である。多種の癌が存在し、固形腫瘍として、または浮遊細胞(例えば、血液の癌)として現れる得る。最近まで、癌処置には、化学療法、放射線療法および/または外科手術が含まれていた。より最近では、癌特有の特徴が明らかになってきており、診断だけでなく、癌免疫療法の成長分野にも関連して、癌の識別が容易になってきている。癌免疫療法は、免疫系の様々な細胞の防御機構を利用して、癌細胞と相互作用し、癌細胞を減少させるかまたは除去するものである。この方法は、癌を標的にして処置するために使用できるだけでなく、例えば細菌またはウイルスに感染した細胞など、細胞が感染している可能性のある他の適応症を処置するためにも使用できる。いくつかの態様において、免疫細胞は、損傷したまたは罹患組織/細胞に対する有効性がさらに高まるように遺伝子操作されている。本明細書でより詳細に記載するようないくつかの態様において、治療に用いる免疫細胞の数を増やすために、免疫細胞の増殖が、それらの天然形態での患者への投与のためであれ、それらの天然形態の細胞の混合物として投与するためであれ、あるいはその後の細胞の遺伝子操作のためであれ、実施される。
【0049】
増殖のための免疫細胞および免疫療法における使用
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法により免疫系の細胞が収集され増殖され、該細胞は、特定の標的細胞に対して細胞傷害効果を発揮する能力を利用される。いくつかの態様において、収集された/増殖された細胞は、腫瘍細胞などの標的細胞に対する増強された細胞傷害効果を有するように遺伝子操作される。いくつかの態様において、白血球(white blood cell, leukocyte)は、異常な細胞の増殖および感染症から身体を守るというそれら本来の機能を有しているため、白血球が用いられる。白血球には、ヒト免疫系において特定の役割を果たす様々な種類があり、したがって、本明細書に記載の細胞の操作のための好ましい出発点である。白血球には、顆粒球および無顆粒球がある(それぞれ、細胞質に顆粒が存在するかどうかによる)。顆粒球には、好塩基球、好酸球、好中球およびマスト細胞が含まれる。無顆粒球には、リンパ球および単球が含まれる。
【0050】
免疫療法のための単球
単球は、白血球のサブタイプである。単球は、マクロファージおよび骨髄系樹状細胞に分化することができる。単球は、適応免疫系に関連し、貪食、抗原提示およびサイトカイン産生の主な機能を果たす。貪食(ファゴサイトーシス)とは、細胞物質または細胞全体を取り込み、その後、取り込まれた細胞物質を消化および破壊するプロセスである。いくつかの態様において、単球は、本明細書に記載の1以上のさらなる遺伝子操作された細胞と関連して用いられる。
【0051】
免疫療法のためのリンパ球
白血球の他の主要なサブタイプであるリンパ球には、T細胞(細胞介在性、細胞傷害性の適応免疫)、ナチュラルキラー細胞(細胞介在性、細胞傷害性の自然免疫)およびB細胞(体液性、抗体駆動性の適応免疫)が含まれる。B細胞は、本明細書に記載のいくつかの態様により遺伝子操作されているが、いくつかの態様は、遺伝子操作されたT細胞または遺伝子操作されたNK細胞にも関係している(いくつかの実施形態では、T細胞およびNK細胞の混合物が用いられる)。
【0052】
免疫療法のためのT細胞
T細胞は、細胞表面上のT細胞受容体の存在に基づいて、他のリンパ球サブタイプ(例えば、B細胞またはNK細胞)と区別される。T細胞は、エフェクターT細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、調節性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、粘膜関連不変性T細胞、ガンマデルタT細胞など、多種多様なサブタイプに分類できる。いくつかの態様において、T細胞の特定のサブタイプが遺伝子操作される。いくつかの態様において、T細胞サブタイプの混合プールが遺伝子操作される。いくつかの態様において、本明細書に記載の細胞傷害性受容体複合体を発現するように遺伝子操作されるT細胞のタイプの特定の選択はない。いくつかの態様において、特定のマーカープロファイルを有するT細胞の増殖/収集を促進するために、サイトカイン刺激の使用などの特定の技術が用いられる。例えば、いくつかの態様において、特定のヒトT細胞、例えば、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞の活性化は、刺激分子としてCD3および/またはCD28を用いることによって達成される。いくつかの態様において、治療的有効量のT細胞を、単独で、または本明細書に記載のNK細胞および/または他の免疫細胞と組み合わせて投与することを含む、癌または感染症を処置または予防する方法を提供する。いくつかの態様において、T細胞は、標的細胞に対する細胞傷害効果が強化されるように遺伝子操作される。いくつかの態様において、T細胞は自己細胞であり、一方、いくつかの態様において、T細胞は同種他家細胞である。
【0053】
免疫療法のためのNK細胞
いくつかの態様において、本明細書に記載の、治療的有効量のNK細胞を単独で、またはT細胞および/または他の免疫細胞と組み合わせて投与することを含む、癌または感染症の処置または予防の方法を提供する。いくつかの態様において、NK細胞は、標的細胞に対して増強された細胞傷害効果を有するように遺伝子操作される。いくつかの態様において、NK細胞は自己細胞であり、一方、いくつかの態様において、NK細胞は同種他家細胞である。いくつかの態様において、NK細胞の天然の細胞傷害性が比較的高いため、NK細胞が好ましい。いくつかの態様において、本明細書に記載の細胞の組み合わせ(例えば、NK細胞およびT細胞)が相乗的に相互作用して、NK細胞単独またはT細胞単独のいずれかと比較して、標的細胞(例えば、腫瘍細胞または他の罹患細胞)に対してさらに効果的な活性をもたらすことが予想外に有益である。
【0054】
癌免疫療法のための造血幹細胞
いくつかの実施形態では、造血幹細胞(HSC)は、本明細書に記載の免疫療法に用いられる。いくつかの態様において、細胞は、ホーミング部位および/または細胞傷害性受容体複合体を発現するように遺伝子操作される。いくつかの態様において、HSCは、その生着能力を利用して長期的な血球生産を行うために用いられ、これは、例えば、癌の寛解に対抗するために、標的化された抗癌エフェクター細胞の持続的な供給源となり得る。いくつかの態様において、この継続的な産生は、例えば、腫瘍微小環境に起因する他の細胞タイプのアレルギーまたは消耗を相殺するのに役立つ。いくつかの態様において、同種他家造血幹細胞が用いられ、一方、いくつかの態様において、自家造血幹細胞が用いられる。いくつかの態様において、HSCは、本明細書に記載の1以上のさらなる免疫細胞タイプと組み合わせて用いられる。
【0055】
免疫細胞増殖のためのフィーダー細胞
いくつかの態様において、ドナー(いくつかの態様において、患者でもあり得る)の血液サンプルからNK細胞およびT細胞の両方を増殖させるように機能するフィーダー細胞集団(クローン集団または混合集団のいずれか)の使用を提供する。
【0056】
いくつかの態様において、細胞株は、増殖されるべき免疫細胞の集団との共培養に用いられる。そのような細胞株は、本明細書中、“刺激細胞”と称されるか、または“フィーダー細胞”と称される。いくつかの態様において、免疫細胞の集団全体が増殖されるべきであるが、一方、いくつかの態様において、選択された免疫細胞の亜集団または複数の亜集団が優先的に増殖される。例えば、いくつかの態様において、NK細胞が他の免疫細胞亜集団に比べて優先的に増殖される。いくつかの態様において、2以上の亜集団が共に、いくつかの態様では、同時に、増殖される。態様によっては、以下でより詳細に説明するように、2以上の亜集団が互いに同じ程度に増殖される必要はない。むしろ、いくつかの態様において、増殖期間の終わりに集団1 対 集団2の所望の比率が得られるように、1つの亜集団を他の亜集団よりも多くまたは少なく増殖させることができる。
【0057】
いくつかの態様では、フィーダー細胞は野生型細胞であるが、いくつかの態様では、フィーダー細胞は、特に1以上の追加の刺激シグナルの存在下で、免疫細胞の増殖および/または活性化に特に適した状態になるように遺伝子改変されている。以下で詳しく説明するように、様々な細胞株は、NK活性化を刺激する特定の分子の表面発現をもたらすことができる遺伝子改変に適応している。主要組織適合性複合体(MHC)I分子の発現が低い、制限されている、またはそうでなければ欠如しているなどの特定の細胞種は、MHC I分子がNK細胞に対して阻害効果を有するため、NK細胞およびT細胞(および/または、態様によって、所望される他の単核細胞)の同時増殖に特に有用である。いくつかの態様において、K562細胞が用いられ、一方、いくつかの態様において、K562細胞、ウィルムス腫瘍細胞株HFWT、子宮内膜腫瘍細胞株HHUA、メラノーマ細胞株HMV-II、肝芽腫細胞株HuH-6、肺小細胞癌細胞株Lu-130またはLu-134-A、神経芽細胞腫細胞株NB19またはNB69、胚性癌精巣細胞株NEC14、子宮頸癌細胞株TCO-2、および神経芽細胞腫細胞株TNB1が用いられる。
【0058】
いくつかの態様において、細胞はMHC I発現を完全に欠く必要はないが、野生型細胞よりも低いレベルでMHC I分子を発現していてよい。例えば、いくつかの態様において、野生型細胞がXのレベルでMHCを発現する場合、用いられる細胞株は、Xの95%未満、Xの90%未満、Xの85%未満、Xの80%未満、Xの70%未満、Xの50%未満、Xの25%未満およびこれらの値の間(およびそれらを含む)の何れかの発現レベルでMHCを発現していてよい。いくつかの態様において、刺激細胞は不死化されており、例えば、癌細胞株である。しかしながら、いくつかの態様において、刺激細胞は初代細胞である。いくつかの態様において、フィーダー細胞はまた、MHC II発現が減少した(または欠失した)細胞でもある。いくつかの態様において、MHCクラスI分子を発現し得る他の細胞株(またはクローン株)を、MHC I発現を低減またはノックアウトするためにそれらの細胞の遺伝子改変と併せて用いることができる。そのような遺伝子改変は、ブロッキング抗体、干渉リガンド(例えば、競合的阻害剤、非競合的阻害剤など)に加えて、MHC I分子の発現を阻止および/または低下させるために、様々な遺伝子編集技術(例えば、crispr/cas-9システム)、阻害性RNA(例えば、siRNA)、または他の分子方法を用いることによって達成することができる。
【0059】
以下でより詳細に記載するように、特定の刺激分子がフィーダー細胞によって発現されるように任意に遺伝子操作され、そのような刺激分子は、免疫細胞の増殖および/または活性化を促進するように作用する。刺激分子は、いくつかの態様において、フィーダー細胞によって発現させることができるが、別個に提供することもできる。いくつかの態様において、刺激分子は培養液に直接添加することができ、その濃度を容易に評価し、補充(replenished)することができるという利点がある。いくつかの態様において、分子は、例えば、金属、ガラス、プラスチック、高分子材料、粒子(例えば、ビーズまたはミクロスフェア)、および/または脂質(天然または合成のいずれか)などの添加材、または刺激分子が結合され得る何らかの他の材料に、固定または他の方法で結合されて提供される。
【0060】
特定の分子は、免疫細胞の増殖、生存および/または活性化を促進し、いくつかの態様において、免疫細胞の特定の亜集団の増殖、生存および/または活性化を促進する。態様に応じて、刺激分子または分子は、免疫集団(または複数の集団)を増殖させるために用いられるフィーダー細胞の表面上に発現させることができる。さらなる態様において、1以上の刺激分子を、直接または何れかの添加材(例えば、ビーズ)に付着させて、細胞培養培地を補充するために用いる。いくつかの態様において、免疫細胞集団は比較的均一に増殖される(例えば、特定の亜集団が優先的に増殖されることはない)。しかしながら、いくつかの態様において、2以上の亜集団が増殖される。態様に応じて、2つの亜集団は、互いに同程度に増殖されてもよいし、そうでなくてもよい。いくつかの態様において、それらは、同じか、または類似の相対的な程度まで増殖されてもよいが、結果として得られる増殖された免疫細胞集団の細胞の絶対数に関しては、少なくとも部分的に、2つの亜集団のそれぞれの細胞の異なる開始数に基づいて、数が異なる。いくつかのそのような態様において、要すれば、すべての免疫細胞集団の増殖の前または後に、さらなる使用のために、所望の亜集団が選択的に分離される(例えば、NK細胞がT細胞から分離されるか、またはその逆である)。
【0061】
いくつかの態様において、インターロイキン15(IL15)が、NK細胞などの免疫細胞の増殖を促進するために用いられる。いくつかの態様において、IL15はフィーダー細胞上に膜結合している(本明細書中、“mbIL15”と称する)。いくつかの態様において、IL15は、膜貫通分子または内在性膜タンパク質に結合または複合体化されていることにより、膜結合している。いくつかの態様において、CD8αの膜貫通ドメインが用いられる。いくつかの態様において、野生型(例えば、完全長)IL15が、フィーダー細胞上で、またはフィーダー細胞によって発現される。いくつかの態様において、IL15は、完全長IL15と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の相同性を有する。いくつかの態様において、IL15の切断型が用いられる。この、および免疫細胞の増殖に関係するこのおよび他の構築物についてのさらなる詳細は、2018年3月27日に出願されたPCT出願番号PCT/SG2018/050138に記載されており、その内容全体は引用により本明細書に包含させる。
【0062】
いくつかの態様において、4-1BBリガンド(4-1BBL)は、免疫細胞の増殖を促進するために用いられる。4-1BBLは、T細胞上のその受容体である4-1BBと相互作用する細胞外ドメインを有し、それによってT細胞に生存、増殖および分化のための共刺激性シグナルを提供する。いくつかの態様において、4-1BBLは、膜貫通分子または内在性膜タンパク質に結合または複合体化されていることにより、フィーダー細胞上で膜結合している。いくつかの態様において、野生型(例えば、完全長)の4-1BBLは、フィーダー細胞上で、またはフィーダー細胞によって発現される。いくつかの態様において、4-1BBLは、完全長4-1BBLと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の相同性を有する。いくつかの態様において、4-1BBLの切断型が用いられる。いくつかの態様において、4-1BBLは、発現されるか、またはフィーダー細胞上での発現による以外の方法で培養に提供される。いくつかの態様において、4-1BBLは、mbIL-15と組み合わせて、フィーダー細胞の表面上で発現される(フィーダー細胞のクローン集団によるものを含む)。いくつかの態様において、この刺激シグナルの組み合わせは、免疫細胞または末梢血単核細胞の出発サンプルにおいて、NK細胞の増殖を誘導する刺激を提供する。
【0063】
本明細書で説明するように、いくつかの態様において、免疫細胞の1以上の亜集団の増殖をさらに増強するように機能する補足的な増殖激も提供される。例えば、いくつかの態様において、NK細胞の増殖拡張を増強する補足的な刺激が提供される。いくつかの態様において、補足的な刺激は、T細胞の増殖を増強するように機能する(一方で、別の刺激分子または分子が、NK細胞の増殖を誘導する)。いくつかの態様において、補足的な刺激は、単一の追加的な刺激分子によって達成され得る。しかしながら、いくつかの態様において、補足的な刺激は、互いに協調して作用する2つまたはそれ以上の刺激分子によってもたらされる。
【0064】
例えば、いくつかの態様において、1以上のサイトカインが、NK細胞およびT細胞が培養される培地に添加される。いくつかの態様において、IL12、IL18またはIL21(またはそれらの組み合わせ)が添加される。いくつかの態様において、サイトカイン(複数可)は、サイトカイン(複数可)を発現するようにフィーダー細胞を遺伝子操作することによって添加される。いくつかの態様において、膜結合型サイトカインを用い、他の態様において、可溶性サイトカインを発現するように設計されたフィーダー細胞を用いる。いくつかの態様において、1以上の可溶性サイトカインが、NK細胞およびT細胞の増殖の開始時、またはその間の様々な時点で培養液に添加される。
【0065】
いくつかの態様において、抗CD3抗体は、免疫細胞の増殖を促進するために用いられる。いくつかの態様において、抗CD3抗体はフィーダー細胞に膜結合している。いくつかの態様において、完全長抗CD3抗体がフィーダー細胞上で発現される。しかしながら、いくつかの態様において、抗CD3抗体は、一本鎖フラグメント可変領域(scFv)フラグメントを含む。態様に応じて、抗体はモノクローナルまたはポリクローナルであり得る。いくつかの態様において、抗CD3抗体は、Fab’、F(ab’)2、単一ドメイン抗体(例えば、二重特異性抗体、ナノボディ)から選択される様々な抗原性フラグメントおよび/または融合体を含む。いくつかの態様において、抗体は、ムロモナブ-CD3、オテリキシズマブ、テプリズマブおよびビシリズマブからなる群、またはムロモナブ-CD3、オテリキシズマブ、テプリズマブおよびビシリズマブの1以上と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の相同性(または機能的等価性)を有する抗体(またはフラグメント)からなる群より選択される。いくつかの態様において、抗CD3抗体は、フィーダー細胞を増殖すべき免疫細胞と共培養する際に培養液に添加されるさらなる材料に結合させて提供される。いくつかの態様において、このさらなる材料は、フィーダー細胞による抗CD3抗体の発現に加えて、その表面上にまたは分泌を介して提供される。
【0066】
いくつかの態様において、抗CD28抗体は、免疫細胞の増殖を促進するために用いられる。いくつかの態様において、抗CD28抗体はフィーダー細胞上に膜結合している。いくつかの態様において、完全長抗CD28抗体がフィーダー細胞上で発現される。しかしながら、いくつかの態様において、抗CD28抗体は、一本鎖フラグメント可変領域(scFv)フラグメントを含む。態様によっては、抗体はモノクローナルまたはポリクローナルである。いくつかの態様において、抗CD28抗体は、Fab’、F(ab’)2、単一ドメイン抗体(例えば、二重特異性抗体、ナノボディ)から選択される様々な抗原性フラグメントおよび/または融合体を含む。いくつかの態様において、抗体は、セラリズマブおよびセラリズマブの1以上と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の相同性(または機能的等価性)を有する抗体(またはフラグメント)からなる群より選択される。いくつかの態様において、抗CD28抗体は、フィーダー細胞を増殖すべき免疫細胞と共培養する際に培養液に添加されるさらなる材料に付着して提供される。いくつかの態様において、このさらなる材料は、フィーダー細胞による抗CD28抗体の発現に加えて、その表面上にまたは分泌を介して提供される。
【0067】
いくつかの態様において、T細胞の増殖を相乗的に高めるために、抗CD3抗体および抗CD28抗体が共に提供される。いくつかの態様において、抗CD3抗体および抗CD28抗体は、ビーズまたは他の幾何学的形状などの固体支持体または他のさらなる材料に結合して提供される。いくつかの態様において、ビーズの集団は、抗CD3抗体に結合された部分と抗CD28抗体に結合された別の部分を有し、一方、いくつかの態様において、抗体はビーズ(または他の材料)上に両方が存在する。
【0068】
態様に応じて、また目的の刺激分子(複数可)に応じて、刺激分子は、免疫細胞集団、または複数の免疫細胞亜集団との共培養の過程において、特定の時点で導入されてよい(例えば、培養物に添加されるか、またはフィーダー細胞によって発現されてもよい)。例えば、共培養中に構成的に発現されるのではなく、1つまたは複数の刺激分子が、誘導可能なプロモーター、またはそうでなければ制御可能なプロモーターの制御下にあり得る。このように、トリガーとなる分子や刺激物を所望の時点で共培養に添加することで、増殖・活性化プロトコールの特定の時点で所望の刺激分子(複数可)を発現させることができる。例えば、いくつかの態様において、最初にNK細胞を優先的に増殖させ、次いでT細胞を増殖させることが望ましい場合がある。そのため、増殖の初期段階では、NK細胞を刺激する分子を“オン(turned on)”にし、後の段階では、T細胞を刺激する分子を“オン”にすることができる。上記のように、“オン”とは、刺激分子の調節された発現の結果であるか、または単に刺激分子の培養物への添加の結果であり得る。本明細書で用いる用語“誘導可能なプロモーター”および“調節可能なプロモーター”は、その通常の意味を与えられるものとし、また、転写活性が特定の生物学的因子または非生物学的因子の存在によって調節される(例えば、刺激または阻害される)プロモーターを意味するものとする。本明細書で用いる用語“トリガー分子”または“トリガー刺激”とは、通常の意味で用いられるものとし、アルコール、テトラサイクリン、ステロイド、金属および他の化合物、ならびに培養温度の高低など、誘導可能なプロモーターまたは調節可能なプロモーターに作用する化学的または物理的な物質または条件を意味する。さらに、刺激分子の調節可能な発現を利用して、培養プロセス中に特定の刺激分子の発現を低減および/または排除することもできる。そのような態様は、例えば、NK細胞がそのようなシグナル伝達に対して特に感受性が高い活性化および増殖プロセス中のある時点で特定の刺激シグナルを提供することにより、NK細胞などの免疫細胞の特定の亜集団の優先的な増殖を促進することができる。いくつかの態様において、このようなアプローチは、NK細胞の予想外にロバストな活性化および増殖をもたらし得る。さらなる追加の態様において、NK細胞の増殖期間が延長され、最終的には、例えば癌免疫療法に用いるための活性化されたNK細胞のより大きな集団をもたらす。同様に、いくつかの態様において、T細胞などの免疫細胞の第2の(またはさらなる)所望の亜集団を増殖させるために、別のシグナルを提供することができる。その結果、いくつかの態様において、結果的に増殖された細胞集団は、ドナーに存在するNK:T細胞の相対的な量とは異なる程度に増殖された、NK細胞およびT細胞の混合物を含み得る。
【0069】
いくつかの態様において、フィーダー細胞の所定の集団内で、集団内の特定の個々の細胞が、NK細胞およびT細胞の両方を同時に増殖するなど、2種以上の所望の免疫細胞を増殖するのに特に適している。そのような個体(例えば、クローン)の同定については、以下でより詳細に説明する。いくつかの態様において、同定されたクローンは、フィーダー細胞のクローン集団が提供されるように複製され、各個体は、NK細胞およびT細胞などの2以上のタイプの免疫細胞を同時に増殖する能力に関して、元の親細胞の有益な特性を共有している。このように、いくつかの実施形態では、フィーダー細胞のクローン集団を用いて、免疫細胞の1以上の亜集団を一緒に、要すれば同時に(例えば、NK細胞およびT細胞など)増殖させる。
【0070】
ドナー材料およびプロセシング
いくつかの態様において、免疫細胞の複数の集団を増殖するための方法は、ドナー細胞集団の変動を考慮するための十分な柔軟性を提供するので、特に有利である。
図1Aから1Dに示すように、ベースラインの血液サンプルにおける他の細胞に対するNK細胞およびT細胞の相対的な分布は、かなり変化し得る。正常な末梢血では、T細胞の相対的存在率は約10~約25%の範囲であり、一方、正常なT細胞の存在率は約2~約5%の範囲である(例えば、https://www.bio-rad-antibodies.com/static/2017/flow/flow-cytometry-cell-frequency.pdf 参照)。
図1Aは、T細胞が約12.5%、NK細胞が約12.5%、残りの約75%が他の細胞タイプで構成されているドナー1からのそれらの割合を示している。
図1Bに示したドナー2は、T細胞が約35%で、NK細胞はわずか約5%であった。
図1Cに示したドナー3は、T細胞が約20%、NK細胞が約10%であった。同様に、
図1Dに示したドナー4は、T細胞が約25%、NK細胞が約5%であった。これらのサンプルデータは、ドナー間のばらつきがかなり大きく、時にはNK細胞とT細胞の“正常な”期待範囲外になることがあることを示している。
【0071】
上記のデータからわかるように、いくつかの態様により、培養方法または培養プロセスを調整することで、出発物質におけるこの変動に対応することができる。例えば、いくつかの態様において、本明細書に記載の方法およびプロセスにより、T細胞集団において実質的に異なる初期NKで開始する場合でさえ、所望のNK:T細胞比を達成することができる。いくつかの態様において、出発物質として提供されるNK細胞の割合は、血液サンプルの末梢血単核細胞の約0.5%~約35%の範囲とすることができ、これには約0.5%~約1%、約1%~約2%、約2%~約4%、約3%~約5%、約2%~約5%、約5%~約10%、約10%~約15%、約15%~約20%、約20%~約25%、約25%~約30%、約30%~約35%、および明示的に記載された値(エンドポイントを含む)の間の出発サンプル中のNK細胞の何れかの割合が含まれる。いくつかの態様において、出発サンプル中のNK細胞の割合は、約2%から約5%の範囲である。同様に、血液サンプル中に存在するT細胞の割合も変化し得る。例えば、いくつかの態様において、出発サンプル中に供されるT細胞の割合は、約5%から約30%の範囲であり、これには約5%から約10%、約10%から約15%、約15%から約20%、約20%から約25%、約25%から約30%、および明示的に記載された値(エンドポイントを含む)の間の出発サンプル中のT細胞の何れかの割合が含まれる。
【0072】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法およびプロセスの実施中に生じるかなりの程度の増殖により、出発物質のばらつきが最終的な混合細胞集団に与える影響は最小限である。言い換えれば、いくつかの態様において、細胞集団は、互いに比較して細胞の絶対数が異なる可能性があるにもかかわらず、結果として得られるNK細胞数、T細胞数および/または他の所望の免疫細胞亜集団の数が臨床的に適切であるように、かなりの程度まで増殖される。
【0073】
以下でより詳細に記載されるように、有利には、出発血液サンプルにおけるNK細胞 対 T細胞の相対的存在率に潜在的にかなりの違いがあるにもかかわらず、本明細書に記載の方法およびプロセスは、NK細胞およびT細胞の最終的な混合集団における所望の比率を達成するために、両細胞タイプ(要すれば、調整可能な追加の免疫細胞亜集団を含む)の調整された増殖を可能にする。例えば、いくつかの態様において、細胞の究極の混合集団におけるNK細胞とT細胞の比率は、態様に応じて、約100 対 1から約1対100の範囲とすることができる。
【0074】
免疫細胞の複合増殖
上記のように、いくつかの態様において、免疫細胞の複数の亜集団を互いに共に培養にて増殖させる。態様に応じて、単一の増殖プロトコールを用いて、複数の細胞集団を順に(例えば、NK細胞の最初の増殖、続いてT細胞の増殖)または並行して(例えば、NK細胞およびT細胞の同時共培養)増殖してもよい。いくつかの態様による単一の増殖プロトコールは、例えば、NK細胞とT細胞の両方が同時に培養物中に存在する場合であっても、1つの細胞タイプを他の細胞タイプよりも優先的に増殖するように向けられた複数の増殖期(フェーズ)を含んでもよい。
【0075】
上記の通り、様々なタイプのフィーダー細胞を用いて、複数のタイプの所望の免疫細胞の増殖を誘導することができる。用いるフィーダー細胞は、いくつかの態様において、全体的に刺激性の増殖促進効果を有するが、集団内の個々の細胞がフィーダー細胞集団の他のメンバーと比較して潜在的に様々な特性を有するフィーダー細胞集団を含む、フィーダー細胞の混合集団から構成されてもよい。しかしながら、いくつかの態様において、複数の免疫細胞亜集団の増殖を刺激するための望ましい特性を有するフィーダー細胞が特定され、クローン増殖され、その結果得られたフィーダー細胞のクローン集団が、複数の免疫細胞タイプの複合的な増殖のために用いられる。態様によっては、2種類、3種類、4種類(またはそれ以上)の免疫細胞を共に増殖させることができる。いくつかの態様において、共に増殖された免疫細胞は、NK細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)、エフェクターT細胞、ヘルパーT細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞、ガンマデルタT細胞、粘膜関連不変性T細胞および/または様々なタイプのNK細胞亜集団(例えば、阻害性受容体シグナル伝達と比較してより強力な活性化受容体シグナル伝達を有するNK細胞、またはその逆)のうちの2以上である。共増殖のためのアプローチの限定されない態様は、
図2に模式的に記載されており、以下の実施例でより詳細に説明される。
【0076】
態様に応じて、フィーダー細胞(混合集団またはクローン集団のいずれか)を培養容器に播種する。播種密度は、態様によって異なり、例えば、約0.5×105細胞/cm2~約5×107細胞/cm2の範囲であり、この範囲には約1.0×105細胞/cm2~約1.5×105細胞/cm2、約1.5×105細胞/cm2~約5×105細胞/cm2、約5×105細胞/cm2~約1.0×106細胞/cm2、約1.0×106細胞/cm2~約5×106細胞/cm2、約5×106細胞/cm2~約1.0×107細胞/cm2、約1.0×107細胞/cm2~約5.0×107細胞/cm2、およびそれらの間の任意の播種密度(エンドポイントを含む)が含まれる。いくつかの態様において、フィーダー細胞と共に培養される免疫細胞の予想される数に応じて、より多いまたは少ない初期播種密度を用いることができる。いくつかの態様において、1cm2あたり約1×106個の細胞の初期播種密度が用いられる。
【0077】
いくつかの態様において、フィーダー細胞は、フィーダー細胞自体の増殖速度を低下させるために、1以上の薬剤で前処理されてもよい。例えば、いくつかの態様において、フィーダー細胞は、増殖すべき免疫細胞集団と共に培養する前に放射線照射される。いくつかの態様において、放射線照射の代りにまたは補足として、フィーダー細胞は、例えばマイトマイシンCなどの抗増殖剤で処理される。
【0078】
上記のように、いくつかの態様において、フィーダー細胞のより大きな集団内の特定の個々の細胞は、2以上の免疫細胞サブタイプの増殖に望ましい特性を有する。いくつかの態様において、免疫細胞集団の増殖に用いられるフィーダー細胞は、フィーダー細胞のクローン由来の集団である。言い換えれば、1以上のタイプの免疫細胞の増殖に望ましい特性を有すると同定された個々のクローンは、それ自体がクローン的に増殖され、結果として生じる集団がすべてそれらの有益な特性を共有するようになる。いくつかの態様において、増殖すべき免疫細胞をフィーダー細胞のクローン集団に曝すことで、最終的に増殖された免疫細胞集団のばらつきを有利に低減することができる。その結果、いくつかの態様において、より大きな製品の一貫性が達成される。
【0079】
また、上記のように、いくつかの態様において、増殖培養液に1以上の刺激分子を補充することができる。いくつかの態様において、そのような分子は、フィーダー細胞層の一般的な健康状態を促進し、増殖される免疫細胞集団を刺激し、増殖前、増殖中または増殖後の免疫細胞集団の健康状態を強化し、またはこれらのいくつかの組み合わせを機能させる。いくつかの態様において、インターロイキン-2(IL2)を培養液の補充に用いる。態様によっては、インターロイキン2の濃度は、免疫細胞の増殖が行われる期間にわたって変化し得る。IL2濃度は、約10単位/mL~約20単位/mL、約20単位/mL~約40単位/mL、約40単位/mL~約60単位/mL、約60単位/mL~約80単位/mL、約80単位/mL~約100単位/mL、約100単位/mL~約150単位/mL、約150単位/mL~約200単位/mL、約200単位/mL~約300単位/mL、約300単位/mL~約400単位/mL、約400単位/mL~約500単位/mL、約500単位/mL~約750単位/mL、約750単位/mL~約1000単位/mL、およびこれらの間の任意の濃度(エンドポイントを含む)を含む、約10単位/mL~約1000単位/mLの範囲とすることができる。IL-2による刺激は、特定の態様によれば、増殖プロトコールごとに複数回繰り返すことができる。さらに、再刺激を行うことができるだけでなく、様々な濃度での刺激を、増殖プロトコール中の異なる時点で行うことができる。態様によっては、他のインターロイキン類または他の刺激分子を、本明細書に記載のプロセスで用いることができる。
【0080】
態様によっては、細胞の増殖期間は、約4日から約20日の範囲内である。いくつかの態様において、フィーダー細胞との培養期間に応じて、異なる免疫細胞亜集団が異なる速度で増殖する。例えば、特定の細胞タイプは初期の時点でより急速に増殖し、他の細胞タイプは後期の時点でより急速に増殖する。このように、最終的な免疫細胞集団内での異なる免疫細胞サブタイプの割合を所望する場合は、それに応じて増殖のタイミングを調整することができる。いくつかの態様において、増殖条件は、約4~6日、約6~8日、約8~10日、約10~14日または約14~21日間が採用される。いくつかの態様において、増殖培養時間を長くすることで、増殖細胞の全体的な絶対数を大きくすることができる。しかしながら、いくつかの態様において、予備的な濃縮ステップを実行して、増殖する各免疫細胞サブタイプの開始数が、元の収集されたサンプル中のそれよりも大きくなるようにして、増殖時間を調整的に短縮させることができる。
【0081】
態様によっては、増殖させる免疫細胞に対するフィーダー細胞の比率を、最終的な所望の結果および増殖させる免疫細胞集団の構成に応じて調整することができる。例えば、いくつかの態様において、フィーダー細胞:“標的”細胞の比率が約5:1で用いられる。いくつかの態様において、1:1の比率が用いられ、さらなる態様において、約1:10、1:20、1:50、1:100、1:1,000、1:10,000、1:50,000、1:100,000、100,000:1、50,000:1、10,000:1、1,000:1、100:1、50:1、20:1、10:1、および列記されたそれらの間のすべての比率の範囲およびエンドポイントを含むものとすることができる。いくつかの態様において、細胞タイプの組合せ(例えば、K562と1以上のさらなる細胞タイプとの組合せ)が用いられ、その結果、NK細胞の活性化および/または増殖は、何れかの単一細胞タイプを単独で用いた場合に達成され得るよりも大きい(例えば、細胞タイプ間の相乗効果の結果として)。いくつかのそのような態様において、MHC Iの発現は、組み合わせて用いられる細胞株のそれぞれにおいて、必ずしも減少および/または欠失される必要はない。いくつかの態様において、所望の免疫細胞集団の増殖および活性化を最大化するために、組み合わせた1つの細胞タイプと他の細胞タイプの相対頻度を変化させることができる。例えば、2つのフィーダー細胞集団を用いる場合、相対頻度は、1:10、1:20、1:50、1:100、1:1,000、1:10,000、1:50,000、1:100,000、100,000:1、50,000:1、10,000:1、1,000:1、100:1、50:1、20:1、10:1、および列記されたそれらの間のすべての比率の範囲およびエンドポイントを含むものとすることができる。
【0082】
同様に、本明細書に記載のいくつかの態様に従って、複数の免疫細胞亜集団が組み合わせて増殖されることを考慮すると、特定の態様において、互いに対する免疫細胞サブタイプの初期比率を調整することができる。例えば、上記のように、所定の血液サンプルにおけるT細胞に対するNK細胞の相対的な存在量には、ドナー間でばらつきがある可能性がある。したがって、いくつかの態様において、特定のサンプルにおいて一方の細胞タイプが他方の細胞タイプに比べて相対的に過剰である場合、細胞タイプ1と細胞タイプ2の所望の使用比(input ratio)を達成するために、濃縮工程または枯渇工程を実施することができる。例えば、限定されない例として、ドナーから採血された血液サンプルで、T細胞が収集された細胞集団の約25%を占め、NK細胞が収集された細胞集団の約5%を占めている場合を考えてみる。このような態様において、予備的な増殖工程を用いて、NK細胞の絶対数が収集した血液サンプルからのT細胞の絶対数とほぼ同等になるように、NK細胞数を増やすことができる。その後、同等のNK細胞数およびT細胞数で、NK細胞およびT細胞をフィーダー細胞と共に培養し、増殖を誘導して、最終的に増殖細胞集団におけるNK細胞とT細胞の比率を所望の比率、例えば1:1にすることができる。別のアプローチでは、T細胞の大きな集団を枯渇させてT細胞数をNK細胞数とほぼ同等の量に減らし、その後、本明細書に記載のように、同数のNK細胞およびT細胞をフィーダー細胞と共培養することができる。
【0083】
増殖すべき免疫細胞に対するフィーダー細胞の比率の調整と同様に、所定の培養内で増殖すべき様々なタイプの免疫細胞の比率を相対的に調整することができる。例えば、所定の培養の初期段階におけるNK細胞とT細胞の比率は、約10,000:1、約7500:1、約5000:1、約2500:1、約2000:1、約1500:1、約1000:1、約750:1、約500:1、約250:1、約100:1、約75:10、約50:1、約25:1、約15:1、約10:1、約5:1、約1:1、約1:5、約1:10、約1:25、約1:50、約1:75、約1:100、約1:250、約1:500、約1:750、約1:1000、約1:1500、約1:2000、約1:2500、約1:5000、約1:7500、約1:10,000、および列記されたそれらの間のすべての比率およびエンドポイントを含む、約10,000:1~約1:10,000細胞の範囲とすることができる。
【0084】
以下でより詳細に記載されるように、いくつかの態様において、他のタイプの免疫細胞ならびにフィーダー細胞との組み合わせで培養されている複数のタイプの免疫細胞のうちの1つの優先的な増殖を誘導することを意図する補助的刺激(supplemental stimulus)を使用する。いくつかの態様において、補助的刺激は、増殖段階の開始時に追加され、本質的に元の刺激環境の一部と見なされ得る。さらなる態様において、補助的刺激の導入を遅らせて、例えば、特定の細胞タイプの第1段階の増殖に続いて、異なる細胞タイプの第2段階の増殖を行い、後者を補助的刺激の導入によって誘導することができる。態様によっては、共培養開始から約3日後、約4日後、約5日後、約7日後、約10日後、約14日後、またはこれらの間の共培養開始後の何れかの時点で、補助的刺激を投与することができる。換言すれば、補助的刺激は、増殖プロトコールの約0%が完了した後、増殖プロトコールの約10%が完了した後、増殖プロトコールの約25%が完了した後、増殖プロトコールの約50%が完了した後、または増殖プロトコールの約75%が完了した後に追加することができる。
【0085】
態様によっては、以下でより詳細に説明するように、2以上の亜集団が互いに同じ程度に増殖される必要はない。むしろ、いくつかの態様において、増殖期間の終わりに集団1対集団2の所望の比率が得られるように、1つの亜集団を他の亜集団よりも多くまたは少なく増殖することができる。増殖後の所望の比率は、例えば、約10,000:1、約7500:1、約5000:1、約2500:1、約2000:1、約1500:1、約1000:1、約750:1、約500:1、約250:1、約100:1、約75:10、約50:1、約25:1、約15:1、約10:1、約5:1、約1:1、約1:5、約1:10、約1:25、約1:50、約1:75、約1:100、約1:250、約1:500、約1:750、約1:1000、約1:1500、約1:2000、約1:2500、約1:5000、約1:7500、約1:10,000、および列記されたそれらの間のすべての比率およびエンドポイントを含む、約10,000:1~約1:10,000細胞の範囲のNK細胞対T細胞の比率であり得る。
【0086】
増殖された細胞の遺伝子操作
態様によっては、増殖後の免疫細胞を、免疫療法を必要とする対象に、さらなる修飾なしに投与することができる。いくつかの態様において、増殖された免疫細胞集団は、薬学的に許容される担体と混合された後、投与される。以下に詳述するように、投与は、様々な経路のいずれかによって行うことができ、自己(autologous)または同種異系(allogeneic)の状況で行うことができる。いくつかの態様において、増殖された細胞は、標的腫瘍細胞に対する細胞傷害効果を高めるように遺伝子操作される。例えば、NK細胞および/またはT細胞は、該NK細胞および/またはT細胞が例えば腫瘍細胞を認識する能力および/または細胞傷害効果を発揮する能力を増強するキメラ受容体を発現するように遺伝子操作することができる。細胞は、2018年3月27日に出願されたPCT特許出願第PCT/US2018/024650号(その内容全体は引用により本明細書に包含させる)に詳細に記載されているものを含む、様々な異なる方法で遺伝子操作することができる。
【0087】
細胞傷害性受容体複合体
本明細書に記載のNK/T細胞によって、様々な細胞傷害性受容体が発現され得る。いくつかの態様において、受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む。いくつかの態様において、CARは、本明細書に記載の標的腫瘍マーカーの1以上に対して向けされる。いくつかの態様において、CARは、アミノ酸配列をコードする特定のポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの態様において、抗CD19部分/CD8ヒンジ/CD8TM/OX40/CD3ζキメラ抗原受容体複合体をコードするポリヌクレオチドが提供される。このポリヌクレオチドは、抗CD19 scFv、CD8aヒンジ、CD8a膜貫通ドメイン、OX40ドメインおよびCD3ζドメインを含むか、またはこれらからなる。いくつかの態様において、キメラ抗原受容体は、mbIL15をさらに含む。かかる態様において、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載のように、抗CD19 scFv、CD8aヒンジ、CD8a膜貫通ドメイン、OX40ドメイン、CD3zetaドメイン、2A切断部位およびmbIL-15ドメインを含むか、またはこれらからなる。いくつかの態様において、この受容体複合体は、配列番号1の配列を有する核酸分子によってコードされる。いくつかの態様において、NK19キメラ抗原受容体をコードする核酸配列は、配列番号1と少なくとも約90%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%の配列同一性、相同性(homology)および/または機能的等価性を有する配列を含む。いくつかの態様において、キメラ受容体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、NK19キメラ抗原受容体は、配列番号2と少なくとも約90%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%の配列同一性、相同性および/または機能的等価性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、CD19 scFvは、Flagタグを含まない。いくつかの態様において、ヒト化および/またはコドン最適化されたCARが用いられる。本明細書に記載の態様に従って用いられ得る腫瘍結合構築物のさらなる例は、2018年3月27日出願のPCT特許出願第PCT/US2018/024650号、2019年3月5日出願の米国仮特許出願第62/814,180号、2019年9月4日出願の米国仮特許出願第62/895,910号、2019年11月7日出願の米国仮特許出願第62/932,165号、および2019年10月23日出願の米国仮特許出願第62/924,967号に記載されており、それぞれの内容全体が引用により本明細書に包含される。
【0088】
投与および投与量
本明細書中、癌を有する対象を処置する方法であって、該対象に、増殖された免疫細胞の混合集団(例えば、NK細胞およびT細胞の混合物)を含む組成物を投与することを含む方法をさらに提供する。いくつかの態様において、増殖細胞は、細胞傷害性受容体複合体(例えば、キメラ受容体またはキメラ抗原受容体)を発現するように遺伝子操作される。癌を処置するためのそのような遺伝子改変免疫細胞の使用も提供される。特定の態様において、本明細書に記載の増殖された混合細胞集団による対象の処置は、例えば、以下の効果の1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上を達成する:(i)疾患またはそれに関連する症状の重篤度の軽減または改善、(ii)疾患に関連する症状の持続時間の短縮、(iii)疾患またはそれに関連する症状の進行に対する保護、(iv)疾患またはそれに関連する症状の退行、(v)疾患に関連する症状の発生または発症に対する保護、(vi)疾患に関連する症状の再発に対する保護、(vii)対象の入院の削減、(viii)入院期間の短縮、(ix)疾患を有する対象の生存期間の延長、(x)疾患に関連する症状の数の減少、(xi)別の治療法の予防または治療効果の強化、改善、補足、補完または増強、(xii)標的細胞に対する二相性(例えば、即効かつ長時間)の細胞傷害効果。これらの比較はそれぞれ、例えば、疾患に対する異なる治療法に対するものであり、これには、本明細書に記載の構築物を発現しない細胞を用いた疾患に対する細胞ベースの免疫療法が含まれる。
【0089】
投与は、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、肝臓内、腹腔内および/または罹患組織への局所的な送達を含むが、これらに限定されない、様々な経路によって行うことができる。免疫細胞の増殖された混合集団の投与量は、対象の体重、疾患の種類および状態ならびに処置の所望の侵攻性(aggressiveness)に基づいて、所定の対象に対して容易に決定することができるが、態様に応じて、1kgあたり約105細胞から1kgあたり約1012細胞の範囲(例えば、105-107、107-1010、1010-1012およびその中の重複範囲)である。いくつかの態様において、免疫細胞の混合集団は、様々な細胞タイプの遺伝子操作された比率を有する。例えば、NK細胞およびT細胞の混合集団では、NK:T細胞の比率は、約1000:1、約750:1、約500:1、約250:1、約100:1、約75:1、約50:1、約25:1、約10:1、約5:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:5、約1:10、約1:25、約1:50、約1:75、約1:100、約1:250、約1:500、約1:750または約1:1000(または列記されたそれらの間の何れかの比率)の範囲であり得る。いくつかの態様において、NK細胞とT細胞の比率は、標的細胞数に関して表される。例えば、いくつかの態様において、NK:標的細胞の比率は、約1:1、1:2、1:4、1:8または1:10であり、T細胞:標的細胞の比率は、約1:2、1:4、1:8または1:10である。いくつかの態様において、これらの比率の組合せが用いられ、例えば、NK細胞:標的細胞が1:4であり、T細胞:標的細胞が1:8である。
【0090】
同様に、いくつかの態様において、3つ(またはそれ以上)の異なるタイプまたはサブタイプの細胞を混合集団で用いることができる。そこでの比率は、3つのサブタイプの細胞が互いにほぼ同等である約1:1:1から、1つの細胞タイプが他の細胞タイプよりも優勢である約1000:1:1または約1:1:1000までの範囲とすることができる。同様に、態様に応じて、中間の比率も用いることができ、例えば、約10:5:1、または約1:5:10、または約5:1:10の比率などが挙げられる。さらに、亜集団は、互いに一定の比率の範囲で組み合わせることができる。例えば、集団を2つの細胞タイプで構成する場合、所定のパラメーターを用いて第1の細胞タイプの集団サイズを決定し、これを用いて第2の(または第3、第4などの)細胞タイプの集団サイズを決定することができる。限定されない例として、標的細胞集団に対するNK細胞の細胞傷害性を計算して、集団に加えるべきNK細胞数を決定することができ、これを、集団に加えるべきT細胞数を計算するその後の計算の入力値として使用する。顕著に効果的なNK細胞の集団を用いる場合、NK細胞は例えば混合集団の25%を占め、残りをガンマデルタT細胞が占めてもよい(第3または第4の細胞タイプを追加する場合、残りはより少なくなる)。
【0091】
いくつかの態様において、用量漸増レジメンも提供される。いくつかの態様において、例えば、約1×106細胞/kgから約1×108細胞/kgの間の範囲の免疫細胞(例えば、NK細胞およびT細胞)が投与される。態様に応じて、様々な種類の癌を処置することができる。いくつかの態様において、肝細胞癌が処置される。本明細書で提供されるさらなる態様には、以下の限定されない例の癌の処置または予防が含まれ、それらには、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、カポジ肉腫、リンパ腫、胃腸癌、虫垂癌、中枢神経系癌、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨腫瘍、脳腫瘍(星状細胞腫、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、神経膠芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣芽細胞腫、上衣腫、髄芽腫、髄上皮腫を含むがこれらに限定されない)、乳癌、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、子宮頸癌、大腸癌、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性疾患、管癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、毛細胞白血病、腎細胞癌、白血病、口腔癌、鼻咽頭癌、肝臓癌、肺癌(非小細胞肺癌(NSCLC)および小細胞肺癌を含むがこれらに限定されない)、膵臓癌、腸癌、リンパ腫、黒色腫、眼癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、下垂体癌、子宮癌および膣癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0092】
本明細書でより詳細に論じられるように、様々な遺伝子改変細胞を用いて、多数の異なる腫瘍タイプを標的化することができる。態様に応じて、固形腫瘍または浮遊腫瘍を標的とすることができる。いくつかの態様において、本明細書に記載の遺伝子改変細胞を用いて血液腫瘍を処置する。例えば、いくつかの態様において、急性骨髄性白血病(AML
)細胞が標的とされる。AMLは、骨髄、血液または他の組織における芽球のクローン性増殖に起因する。AMLは、全癌の約3%を占め、AMLの発生率は年齢とともに増加する。65歳以下の患者では、約70~80%の患者で完全寛解が得られ、全生存率は約35%となっている。65歳以上の患者では、その数は減少し、40~60%の症例で寛解し、全生存率は約5%に減少する。
図2の免疫組織化学パネルに示されているのは、白血病芽球が陽性に染色された骨髄吸引液である。
【0093】
本明細書に記載の遺伝子改変細胞を用いて、様々なマーカーを標的化することができる。CD19、CD123、NY-ESO、BCMAなどは、多くの癌で発現されている。いくつかの態様において、特にAMLでは、CD123およびNKG2Dリガンドが上方制御される。特定の患者(例えば、AML患者)では、NKG2Dリガンド(MICA、MICB、ULPB1、ULPB2、ULPB3を含むが、これらに限定されない)の表面発現が上方制御される。同様に、それらの患者の一部では、かなりの割合(例えば、約80%以上)の芽球細胞、白血病幹細胞および内皮細胞がCD123陽性である。したがって、いくつかの態様において、NKG2Dリガンドおよび/またはCD123を標的とするように免疫細胞が遺伝子操作される。
【0094】
以下のリストは、本明細書に記載の結合部位/活性化部位によって結合することができる抗原の限定されない例を含む:Her2、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、α-フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、CD123、CD19、クローディン6、NY-ESO、GD-2、GD-3、デクチン-1、癌抗原-125(CA-125)、CA19-9、カルレチニン、MUC-1、上皮膜タンパク質(EMA)、上皮腫瘍抗原(ETA)、チロシナーゼ、黒色腫関連抗原(MAGE)、CD34、CD45、CD99、CD117、クロモグラニン、サイトケラチン、デスミン、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、総嚢胞性疾患液タンパク質(GCDFP-15)、HMB-45抗原、高分子量メラノーマ関連抗原(HMW-MAA)、プロテインメランA(Tリンパ球によって認識されるメラノーマ抗原;MART-1)、Myo-Dol、筋特異的アクチン(MSA)、ニューロフィラメント、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、胎盤アルカリホスファターゼ、シナプトフィジン(synaptophysis)、サイログロブリン、甲状腺転写因子-1、ピルビン酸キナーゼアイソザイムタイプM2の二量体(腫瘍M2-PK)、異常なrasタンパク質、異常なp53タンパク質、fuc-GMl、GM2(胎児腫瘍性抗原-免疫原性-1;OFA-I-1);GD2(OFA-I-2)、GM3、GD3、α-アクチニン-4、Bage-1、BCR-ABL、BCR-Abl融合タンパク、β-カテニン、CA15-3(CA27.29/BCAA)、CA195、CA242、CA-50、CAM43、Casp-8、cdc27、cdk4、cdkn2a、Coa-1、dek-can融合タンパク質、EBNA、EF2、エプスタインバンウイルス抗原、ETV6-AML1融合タンパク質、HLA-A2、HLA-A11、hsp70-2、KIAAO205、Mart2、Mum-1、2、3、neo-PAP、ミオシンクラスI、OS-9、pml-RARa融合タンパク質、PTPRK、トリオースリン酸イソメラーゼ、Gage3,4,5,6,7、GnTV、Herv-K-mel、Lage-1、NA-88、NY-Eso-l/Lage-2、SP17、SSX-2、TRP2-Int2、gplOO(Pmel17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、RAGE、GAGE-1、GAGE-2、pl5(58)、RAGE、SCP-1、Hom/Mel-40、PRAME、HER-2/neu、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6およびE7、TSP-180、pl85erbB2、pl80erbB-3、c-met、nm-23Hl、PSA、TAG-72-4、CA19-9、CA72-4、CAM17.1、NuMa、13-カテニン、Mum-1、pi6、TAGE、PSMA、CT7、テロメラーゼ、43-9F、5T4、791Tgp72、13HCG、BCA225、BTAA、CD68/KP1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733(EpCAM)、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90、TAAL6、TAG72、TLP、TPS、CD19、CD22、CD27、CD30、CD70、EGFRvIII(上皮成長因子受容体バリアントIII)、精子タンパク質17(Spl7)、メソセリン、PAP(前立腺酸ホスファターゼ)、プロステイン、TARP(T細胞受容体ガンマ代替リーディングフレームタンパク質)、Trp-p8、STEAP1(前立腺の6回膜貫通上皮抗原1)、インテグリンανβ3(CD61)、ガラクチン、Ral-B、FLT3、CD70、DLL#、CD5、GUCY2C、EGFR、KREMEN2、PSMA、ALPPL2、CLDN6、CLDN18、GPR143、GRM8、LPAR3、GD2、ADAM12、LECT1、TMEM186など。
【実施例】
【0095】
実施例
以下は、下記の実施例で用いた試験方法および材料の限定されない説明である。
【0096】
実施例1-K562クローン配列決定
上記のように、いくつかの態様において、フィーダー細胞株を用いて、ドナーの血液サンプルからNK細胞およびT細胞の両方を増殖させる。この実施例は、改変されたK562の集団から識別するために実施された。
【0097】
上記の観点から、いくつかの態様において、ドナーから単離された免疫細胞の集団内の特定の細胞タイプの相対的な比率を調整するために予備的工程が実施される。例えば、いくつかの態様において、増殖プロセス中にT細胞がNK細胞を圧倒的に超えるのを防ぐために、初期サンプルからT細胞の一部を選択的に除去することができる。態様によっては、NK細胞とT細胞の任意の比率を、このような予備的ステップによって達成することができる。例えば、いくつかの態様において、1:1のNK:T細胞の比率が増殖の開始時に用いられる。さらなる態様において、必要に応じて、NK細胞をT細胞に対して開始材料プールで濃縮することができる。例えば、いくつかの態様において、これには、約1000:1、約750:1、約500:1、約250:1、約100:1、約75:1、約50:1、約25:1、約10:1、または明示的に記載されたそれらの間の何れかの比が含まれる、約1000:1~約10:1のNK:T細胞の開始比が用いられる。
【0098】
図2に示すように、限界希釈をK562細胞の集団に適用して、スクリーニングのためのより少ない数の個々のK562クローンを生成した。開始K562細胞は、4-1BBLならびに膜結合IL15を発現するように遺伝子操作された。態様によっては、K562細胞をさらに改変して、例えばIL12および/またはIL18などの1以上の追加の刺激分子を発現させることができる。さらなる態様において、K562細胞は改変される必要はないが、要すれば改変され、培養液には1以上のそのような追加の刺激分子が補充される。このようなK562細胞に関する詳細な情報は、2018年3月27日に出願されたPCT出願番号PCT/SG2018/050138に記載されており、その内容全体が引用より本明細書に包含される。他の態様でも適用されるこの特定の例では、K562-41BBL-mbIL15クローンは、免疫グロブリンIgG2aアイソタイプのマウスモノクローナル抗体であるOKT3抗体の一本鎖フラグメント可変(scFv)を発現するようにも遺伝子操作された。この抗体は、成熟T細胞にのみ存在する多分子複合体の一部であるCD3を標的としている。T細胞とOKT3の相互作用により、T細胞が活性化される。マウスOKT3抗体は、ヒトCD3複合体のイプシロンサブユニット上のエピトープと反応するため、NK細胞を刺激するK562細胞にT細胞を刺激する能力を増強させることができる。限られた希釈率でクローニングすることにより、導入された遺伝子(ここではmbIL15、4-1BBLおよびscFv OKT3)を異なる量で発現する可能性のある異なるサブクローンを同定することができる。特に、フィーダー細胞に導入された遺伝子の発現の変動性は、免疫細胞の増殖に関して異なる特徴をもたらし得る。換言すれば、所定のクローンは、T細胞よりもNK細胞をよりロバストに(例えば、効率的に)増殖することができる。いくつかの態様において、所定のクローンは、NK細胞よりもT細胞をよりロバストに(例えば、効率的に)増殖することができる。さらに別の態様において、所定のクローンは、一般的により健康であり、より長く生存することができ、標的細胞に対してより効果的であるなどの免疫細胞の増殖集団をもたらし得る。特定の増殖特性を有するクローンを同定することは、混合細胞集団の最終的な構成を調整する上で有用である。例えば、特定のクローンがT細胞増殖の2倍の速さでNK細胞を増殖させることが分かっており、約2:1の比率で混合細胞集団を形成したい場合、このクローンを用いて開始集団をその所望の比率まで増殖させることができる。いくつかの態様において、2以上のクローンを用いて独立して免疫細胞を増殖させ、最終的な混合細胞集団は、独立して増殖た免疫細胞集団の組合せとすることができる。このようなアプローチでは、特定の免疫細胞タイプを優先的に増殖する能力に基づいて、所定のクローンを選択することができる。例えば、NK細胞、細胞傷害性T細胞、ガンマデルタT細胞の混合集団の場合、これら3つの集団の1つを増殖するために3つのクローンを利用することができ、選択されたクローンは、細胞タイプのうち1つを増殖するために有益な特性を有するために選択される。
【0099】
この実施例では24個のクローンを同定し、クローン増殖させた(各クローンを3週間クローン増殖させた)が、より多数のクローンを容易に調製することができる。クローン増殖後、K562細胞(マイトマイシンCで前処理したもの)を1ウェルあたり5×105細胞でプレーティングした(24ウェルプレート)。この試験では、ガス透過性膜培養容器を用いた(G-Rex, Wilson Wolf, ST Paul Minnesota)。他の態様において、標準的な培養容器を使用することもできる。4名のドナーからそれぞれ5×105個の免疫細胞(NK細胞およびT細胞)を0日目にプレーティングし、各サンプルをクローン増殖したK562集団と共にプレーティングした。培養液には、0日目、4日目に40U/mLのIL-2を添加し、共培養の6日目には400U/mLの高濃度のIL-2を添加した。共培養は合計20日間行った。
【0100】
図3A~3Bは、NK細胞(
図3A)およびT細胞(
図3B)の増殖に関連するデータを示す。これらのデータを合わせると、NK細胞およびT細胞の両方が、フィーダー細胞としてクローン由来のK562細胞集団を用いて増殖できることが示される。
図3Aに示すように、特定のクローンは特に効果的なNK細胞の増殖を示した。特に
図3Aは、クローンK562フィーダー細胞が、用いるクローンおよびドナーに応じて、約15倍から約90倍の範囲でNK細胞の増殖を誘導することを示している。
図3Bは、試験したすべてのK562クローンによってT細胞増殖が強力に刺激され、試験したクローンおよびドナーに応じて、約50倍から約350倍の増殖が見られたことを示している。T細胞の倍加時間は、すべてのドナーで約24時間以下であった。これらのデータは、同じ培養でNK細胞とT細胞の両方を増殖することが可能であるだけでなく、個々の細胞タイプのロバストな増殖が起こり得ることを示している。
【0101】
図4A~4Bは、24個のK562クローンのそれぞれをフィーダー細胞として用いて、4名のドナーそれぞれからのNK細胞およびT細胞の混合集団を7日間に亘って増殖させたときのデータを示している。要するに、増殖した細胞集団の組成は、NK細胞とT細胞の比率を大きく反映している。
図4Aに示すように、増殖後のNK細胞は、親サンプルの細胞の約2%~約23%の範囲であった(例えば、
図1A~1Dに示す元のドナーサンプルからの同じ割合と比較して、増殖後に全集団のうち存在する細胞総数を大まかに比較)。
図4Bは、T細胞についての同様のデータを示しており、その割合は親集団の約65%~約95%の範囲である。一般に、増殖後のそれぞれのNK:T細胞の比率は、元のサンプル(例えば、
図1A~1Dのもの)からの相対的な比率を反映している。したがって、いくつかの態様において、開始時のNK細胞とT細胞の比率は、増殖後に生じる最終的なNK細胞とT細胞の比率のガイドラインとして使用することができる。上記の通り、特定の態様において、増殖を開始する前の細胞比の初期調整を、増殖が完了した後に異なる細胞タイプの最終的な比率を互いに指示するために用いることができる。さらに、以下に詳述するように、増殖後に生じる細胞の比率をさらに微調整するために、増殖中に方法の変更を実施することができる。
【0102】
実施例2-混合細胞集団のデュアルモダリティ増殖(Dual Modality Expansio)
上記のように、NK細胞およびT細胞は、培養中に共に増殖させることができ、最初の血液サンプルからの細胞の開始比率をほぼ反映した細胞タイプの比率を得ることができる。この実施例は、NK細胞およびT細胞の亜集団の相対的な増殖率の調整を可能にするデュアルモダリティ増殖プロトコールを実施するために行われた。
【0103】
図5は、実施した試験デザインの概略を示す。増殖タイムラインおよび細胞の初期播種は、上記のものと実質的に同様であるが、培養物は、共培養開始後の様々な時点で補足的な増殖刺激に曝されるか、または上記のように維持される(対照として)。
図5の模式図は、共培養の最初の6日間をカバーするマトリックスで、補足的な増殖刺激を追加したことを示している。この実施例では、上記のように、補足的な増殖刺激は、T細胞増殖を刺激するために、CD3/CD28ダイナビーズを培養液に添加することを含む。さらなる態様において、これらの(または他の)補足的な増殖刺激を加えることができる-例えば、T細胞増殖を刺激するために1以上の抗体を直接添加することができる。模式図に示すように、培養物には様々な時点でIL-2が補充され、FACS分析を用いて、増殖因子およびNK:T細胞比、ならびに増殖中および増殖後の形質導入効率を評価する。
【0104】
図6A~6Bは、培養7日後に測定したNK細胞(
図6A)およびT細胞(
図6B)の増殖に関連するデータを示しており、増殖開始後の様々な時点でCD3/CD28ポリスチレンビーズ(T細胞の補足的な増殖刺激として、抗CD3抗体および抗CD28抗体でコーティングしたビーズ)を添加した時のものである。換言すれば、2日目のカラムは、2日目にCD3/CD28ポリスチレンビーズを添加し、7日目(ビーズを用いて5日間のインキュベーション)に増殖を測定したときのNK細胞またはT細胞の相対的な増殖量である。
図6Aは、最初に、CD3/CD28ポリスチレンビーズを添加しても、NK細胞の増殖には悪影響がなかったことを示している。“ビーズなし”のデータ点に示されているように、倍数変化の拡大は、
図3Aのデータに示されているものと同程度であった。CD3/CD28ポリスチレンビーズを0日目(共培養開始時)と培養6日目の間に添加しても、4名のドナーのいずれにおいても、NK細胞の増殖に有意な変化は見られず、各集団は依然として約15倍からピーク時には約85~90倍の増殖を示した。さらに、NK細胞の増殖は、所定のドナー内で経時的に比較的一貫していた。例えば、ドナー669は、ビーズがない場合でも、あるいは培養の最初の6日以内の何れかの時点でビーズを追加した場合でも、一貫して約40倍のNK細胞の増加を示した。いくつかの態様において、CD3/CD28ポリスチレンビーズの添加は、単にプロセスを阻害するのではなく、実際にNK細胞の増殖を増強し得る。
【0105】
図6Bは、補足的な増殖刺激としてCD3/CD28ポリスチレンビーズを添加した場合のT細胞の増殖に関する関連データを示す。NK細胞とは対照的に、T細胞の増殖は、CD3/CD28ポリスチレンビーズの有無およびCD3/CD28ポリスチレンビーズの添加タイミングによって顕著に異なる。“ビーズなし”の部分に示されているように、CD3/CD28ポリスチレンビーズがない場合、7日目に測定すると、T細胞の増殖はほとんど乃至全く起こらなかった。
図6Bの曲線の一般的な形状から分かるように、CD3/CD28ポリスチレンビーズを培養プロセスの初期に添加した場合、T細胞はよりロバストに増殖した。例えば、NK細胞およびK562フィーダー細胞との共培養開始時にCD3/CD28ポリスチレンビーズを添加すると、すべてのドナーでT細胞が100倍近く増加した。この誘導は、培養1日後にビーズを追加すると、約75倍の増加に低下した。相対的な増殖は、ビーズの添加が後になるほど低下し続けた。このように、いくつかの態様において、補足的な増殖刺激が初期の時点、例えば、共培養の開始時、共培養の約6時間以内、共培養の約12時間以内、共培養の約18時間以内または共培養の約24時間以内に存在する場合に、最大のT細胞増殖が生じる。いくつかの態様において、T細胞の相対的な増殖は、最終的な増殖集団における所望のNK:T細胞の比率を達成するために、補足的な増殖刺激を提供する時期に基づいて微調整することができる。換言すれば、所望の最終集団がNK細胞と比較してT細胞の比率が大きい場合、補足的なT細胞増殖刺激を共培養プロセスの比較的早い段階で提供することができる。あるいは、所望の最終的な細胞集団がNK細胞とT細胞との間でより均等に分布している場合には、補足的なT細胞増殖刺激の添加を共培養プロセスの後半まで遅らせることができる。このように、態様に応じて、T細胞を増殖するための補足的な刺激を含める(または排除する)培養条件および相対的なタイミングを微調整して、最終的な増殖免疫細胞集団における細胞の最終的な比率を制御することができる。
【0106】
上記のように、いくつかの態様において、増殖された免疫細胞(例えば、NK細胞およびT細胞)の集団は、“そのまま”ベースで、および/または薬学的に許容される担体に組み込んだ後に、処置を必要とする対象に投与することができる。しかしながら、いくつかの態様において、細胞は、標的細胞に対する細胞傷害性を高めるために、キメラ構築物で遺伝子操作されている(例えば、2018年3月27日に出願されたPCT特許出願第PCT/US2018/024650号を参照のこと。その内容全体を引用により本明細書に包含させる)。増殖したNK細胞およびT細胞の集団の能力を評価するために、細胞を形質導入する能力を決定する試験を行った。
【0107】
共増殖させたNK細胞およびT細胞に、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするγレトロウイルスを導入した。7日目に細胞を形質導入し、10日目および14日目にFACSで形質導入効率を測定した。データを
図7Aから7Dに示す。
図7Aは、CD3/CD28ポリスチレンビーズの有無(“ビーズなし”対照)またはT細胞およびK562フィーダー細胞との共培養開始時に対するビーズの添加時間に応じて、10日目の培養液中に存在する全NK細胞に対するGFP陽性NK細胞の割合をドナーごとに示す。示されるように、ビーズの有無も添加時期も、10日目のNK細胞の導入効率に大きな影響を与えないようであった。全体として、4名のドナーすべてにおいて、導入効率は約80%から約95%の範囲であった(収集された元の血液サンプル中のNK細胞の開始集団との比較)。同様に、
図7Bに示すように、T細胞も10日目には容易に形質導入された。10日目の形質導入効率はNK細胞と比較してわずかに低いように見えるが、4名のドナーすべてにおいて、効率は約25%から約65%の範囲であった(収集した元の血液サンプルのNK細胞の開始集団と比較して)。
【0108】
形質導入効率の分析を共培養開始後14日まで行うと、導入後のNK細胞およびT細胞の両方における導入遺伝子発現の安定性は、最初のドナーのばらつきおよびCD3/CD28ビーズの有無、またはCD3/CD28ビーズの添加のタイミングとは無関係に、少なくとも培養2週目まで維持されることが示された。これらのデータは、
図7C(NK細胞の場合)および
図7D(T細胞の場合)に示されている。
図7Cは、すべてのドナーにおいて、T細胞を増殖させるためのCD3/CD28ビーズの添加、または添加のタイミングにかかわらず、導入効率は約78%から95%の間に留まることを示す。共培養10日目のT細胞と同様に、14日目では、4名のドナーすべてにおいて、T細胞の導入率は約30%から約70%の範囲であった。これらのデータを合すると、NK細胞およびT細胞の両方が互いの存在下で容易に増殖するだけでなく、それぞれの細胞タイプが形質導入を受けやすいことを示しており、このことは、標的細胞に対する細胞促成効果を高めるように該細胞を遺伝子操作できることを示している。
【0109】
上記のように、NK:T細胞の比率は、増殖期間中に用いられる条件に基づいて調整することができる(また、開始時の細胞集団の比率を調整したり、増殖後に調整したりするための特定の手順を踏むこともできる)。CD3/CD28ビーズの添加時期によってNK/T細胞の比率がどのように変化するかを調べるために、最終培養液中の各細胞タイプの比率を7日目と14日目に測定し、その結果を
図8Aから8Dに示した。
図8Aは、7日目のNK細胞数のデータを示す(“ビーズなしの対照”、または各ドナーの細胞集団をK562-41BB-mbIL15細胞と共培養し、様々な時点でCD3/CD28ビーズを添加したもの)。各細胞タイプの相対的な増殖と一致して、
図8Aは、CD3/CD28ビーズの添加が増殖期間の後半になるにつれて、最終培養物に占めるNK細胞の割合が増加するという興味深い傾向を示す。興味深いことに、
図8Cに示すように、14日目に最終培養液に占めるNK細胞の割合が増加し続けており、いくつかのドナーでは最初のサンプルに存在した細胞のほぼ100%がNK細胞であった。このことは、14日目の評価が形質導入後であるという点でも注目に値する。これは、T細胞がより早い刺激を必要としたり、培養期間中に疲弊したりする可能性があるのに対し、NK細胞は外因性ベクターによる形質導入の結果、その増殖能力を失わないことを示している。
【0110】
NK細胞とは対照的に、CD3/CD28ビーズを培養期間中に添加すると、T細胞の割合が減少する。共培養期間の後半にビーズに曝されたT細胞集団は、全体的なT細胞の割合が減少していることを示す。これは、おそらく、それらのT細胞集団がCD3/CD28ビーズの刺激効果にさらされた期間が短縮されたことによるものである。また、
図8Dのデータは、14日目のデータで表されるように、培養2週目にT細胞の割合が低下することを示している。これらのデータは、14日目のT細胞割合が、親細胞数の約70%でピークに達したが、1~2%程度の低さになったことを示している(例えば、CD3/CD28ビーズを共培養の4日目、5日目または6日目に添加したサンプルの場合)。これは、T細胞を刺激する期間が短くなったこと、および/または、形質導入プロトコール中に多数の刺激性ビーズが除去されたことによる影響を反映している可能性がある。また、T細胞の疲弊を反映している可能性もある。しかしながら、これらのデータを合すると、2週間の共培養期間中、NK細胞は増加し、T細胞は減少する傾向があることがわかる。この一般的な挙動を知ることで、所望の特性を有する増殖後の混合細胞集団を得るために、NK細胞の増加率とT細胞の減少率を最適化するように培養条件を調整することができる。
【0111】
この試験データ(実施例1と同様)をまとめると、本明細書に記載のいくつかの態様に従って、NK細胞およびT細胞を成功裏に共増殖させ得ることが示される。いくつかの態様によれば、NK細胞およびT細胞は、2つの免疫細胞集団を、いくつかの態様において4-1BBLおよび/またはmbIL15を発現するように改変されるK562細胞と共培養することによって同時に共増殖させることができる。さらに追加の態様において、K562細胞は、例えば、T細胞と相互作用してその増殖を刺激する抗体または他の分子などの特定のT細胞刺激シグナルを提示するようにさらに改変される。いくつかの態様において、K562細胞は、OKT3抗体を発現するように改変される。あるいは、またはそれに加えていくつかの態様によれば、別個のT細胞刺激が提供される。例えば、いくつかの態様によれば、T細胞増殖を刺激するために、抗CD3抗体および/または抗CD28抗体が提供される。このように、これらのデータは、NK細胞およびT細胞を共増殖させ得る複数の異なる方法があることを示している。有利なことに、用いる方法の選択は、最終的な増殖後の免疫細胞集団におけるNK細胞とT細胞の望ましい比率に応じて調整することができる。例えば、本明細書に記載するデータは、K562.41BBL.mbIL15.scFv-OKT3クローンは、NK細胞を増殖でき、一方でT細胞も確実に増殖できることを示す。従って、このようなアプローチは、T細胞:NK細胞の比率が高いことが望ましい場合に好適である。さらに、特定のK562クローンは、増殖後に高いNK比率をもたらすことが確認されている。したがって、ある態様において、NK細胞とT細胞の比率をよりバランスよくしたい場合に、そのようなクローンを用いることができる。さらに、最終的なNK/T細胞比をより細かく制御したい場合は、T細胞刺激をフィーダー細胞株に組み込むのではなく、NK細胞を優先的に増殖させるように遺伝子操作されたフィーダー細胞株を、別の補足的なT細胞増殖刺激と組み合わせることができる。いくつかの態様によれば、これは、K562.41BBL.mbIL15フィーダー細胞などのフィーダー細胞を、例えばCD3/CD28 T細胞刺激ビーズと組み合わせることで達成できる。別のT細胞刺激を導入するタイミングを、NK細胞とT細胞の最終的な比率を微調整するために用いることもできる。例えば、より高いNK:T比は、T細胞刺激を共培養プロセスの後半に導入することで達成でき、一方、より高いT:NK比は、別個のT細胞刺激を共培養プロセスの前半に導入することで達成できる。このように、本明細書に記載の増殖方法は、様々な出発物質および手順の調整に関して有利な柔軟であり、最終的に、得られる増殖集団における様々な細胞タイプ間の所望の比率を有する複合免疫細胞集団を得ることができる。
【0112】
実施例3-混合免疫細胞集団を評価するモデルシステム
理解できるように、本明細書に記載の方法の様々な態様によって行われた、本明細書に記載の新規の混合細胞集団の開発には、革新的な評価パネルが必要となる場合がある。従って、いくつかの態様において、混合免疫細胞集団の生存、増殖、持続性、血管内侵入および/または有効性(例えば、細胞傷害性)の1以上を評価するための特定のモデルシステムが提供される。
【0113】
図9A~9Cは、複合免疫細胞集団の有効性を評価するための様々なカスタム細胞タイプの生成を模式的に示す。Daudi細胞は、バーキットリンパ腫の患者に由来するBリンパ芽球性浮遊細胞である。
図9Aに示すように、レンチウイルス構築物を用いて、緑色蛍光タンパク質(GFP)、核赤色(NucRed)、ホタルルシフェラーゼに結合したCD19(細胞内ドメインを欠く)(fflucCD19)などの種々のレポーターをDaudi細胞にトランスフェクトすることができる。
図9Bに示すように、別のヒトBリンパ球浮遊細胞株であるRaji細胞も同様の方法で遺伝子操作される。
図9Bは、ヒト骨髄芽球浮遊細胞株であるHL60細胞にCD19(細胞内ドメインを欠く)およびルシフェラーゼを導入するための模式図である。これらのNucRedおよびGFPの構築物はインビトロの試験に使用し、ホタルルシフェラーゼの構築物はインビボの試験に使用した。各CD19構築物(細胞内ドメインを欠く)は、通常はCD19を発現していない腫瘍細胞が実際にCD19を発現するように遺伝子操作されており、CD19を発現する標的細胞に対して細胞傷害作用を引き起こすように遺伝子操作されたNK細胞およびT細胞の標的となり得る。また、NK細胞およびT細胞がそれぞれ標的細胞に対して細胞傷害効果を誘発する時間枠(timeframe)を決定するために、動態分析による細胞死アッセイ(killing assay)を用いて機能的評価も行った。
【0114】
CD19を発現するHL60標的細胞を再暴露アッセイに用い、NK細胞単独、T細胞単独あるいはNK+T細胞の組合せによる細胞傷害効果を評価した。0日目に、NK細胞集団、T細胞集団、NK+T細胞集団を、20,000個のCD19発現HL60細胞に暴露した。4日目に、これらの細胞集団にさらに10,000個のCD19発現HL60細胞を加えて再暴露した。標的のみの細胞を同じ条件で培養したが、2回目の標的細胞を加える前にPBSで洗浄した(対照として)。結果として得られたデータを
図10に示すが、NucRed数は、ウェルごとに計数された生きたCD19発現HL60細胞数を表している。
【0115】
NK(CAR19)曲線からわかるように、CD19を標的とするNK細胞は標的細胞の迅速な初期細胞死を示す。しかしながら、4日目に再暴露した後、生き残ったHL60細胞数は着実に増加した。対照的に、T細胞曲線(T(CAR19))では、初期細胞死の速度が遅いことがわかる。T細胞はほとんどの標的を排除したが、NK細胞での迅速な効果とは対照的に、T細胞は、最初のボーラスのCD19発現HL60細胞を排除するのに4日目までかかった。4日目に追加のHL60細胞を暴露後も、T細胞は、CD19発現HL60細胞に対する安定した細胞傷害効果を維持した。
【0116】
NK+T細胞集団は、NK(CAR19)細胞の集団の50%をT(CAR19)細胞で置換することによって生成された。CD19を発現するHL60細胞で最初に暴露したとき、集団のNK細胞部分は、標的細胞の迅速な細胞死を誘導する能力を保持していた。しかしながら、NKのみの集団とは対照的に、4日目にCD19発現HL60細胞で再暴露すると、T細胞の長期的な細胞傷害効果が発揮され、再暴露後の全体的な細胞傷害効果は、T細胞のみの集団と同様の結果となった。この試験で示されたように、エフェクター細胞(NK、TまたはNK+T)の総数を一定にしたとき、NK+T(1:1の比率)は、T(CAR19)単独よりも迅速な細胞死効果を示し、NK(CAR19)単独よりも持続的な細胞死効果を示した。
【0117】
このように、NK+T細胞集団は、有利には、迅速な細胞死効果および持続的な細胞死効果を保持していた。この“混合”細胞傷害性は、癌免疫療法においていくつかの利点をもたらす。多くの癌は適応性があり、免疫系による検出を避けるために“カモフラージュ”メカニズムを有していることが知られている。NK+T混合集団におけるNK細胞の迅速な細胞死効果は、そのようなカモフラージュ作用が働く前に癌細胞を排除するのに役立つ。さらに、癌細胞を速やかに死滅させたとしても、少数の細胞が残存することで腫瘍が再発する可能性がある。そのため、NK+T細胞集団のT細胞部分は、長期的な細胞傷害効果を誘発し、再発のリスクを低減することができる。この試験では、上記のようにエフェクター細胞の比率(NK:T)が1:1であることが示されたが、いくつかの態様において、本明細書に記載の方法で他の比率を達成することができる。いくつかの態様において、最終的な比率は、特定の治療状況に合わせて調整することができる。例えば、増殖が遅い腫瘍は、より低いNK:T比で最適に処置することができ、これはまた、細胞傷害動態をより遅いがより長い持続時間の抗癌作用に向かわせ得る。対照的に、侵攻性の腫瘍の場合、より高いNK:T比が望まれ得て、これは、初期の細胞傷害動態が速いことで、腫瘍細胞の迅速な破壊および/または腫瘍の除去が達成され、T細胞の動態が長いことで腫瘍の残りの部分が“クリーンアップ”されるためである。同様に、いくつかの態様において、様々な比率のNK+T細胞集団を、患者の処置期間中の異なる時点で投与することができる。例えば、初期の腫瘍増殖を抑制するために、投与初期に細胞傷害性の高い比率のNK:T細胞集団を投与し、その後、長期的に効果維持および腫瘍増殖を抑制するために、比率の低いNK:T細胞集団に移行することができる(医薬の負荷容量とその後の維持用量のようなもの)。
【0118】
実施例4-三次元培養での機能評価
いくつかの腫瘍、特に固形腫瘍の天然環境をより容易に再現するために、腫瘍内浸潤をモデル化し、混合免疫細胞集団がモデル化された腫瘍微小環境においてどのように反応し、挙動(perform)するかを試験するために、3-D培養システムを開発した。
【0119】
図11は、そのようなモデル環境の1つの概略図である。VersaGel(登録商標)(Cypre, Inc. San Francisco, CA)は、細胞をカプセル化するために使用することができるヒドロゲルであり、細胞を分析するための下流の光学イメージングに適した光学特性を有する。96ウェル培養皿の中央部にVersaGel(登録商標)を置き、10,000個のCD19発現HL60細胞をゲルに播種した。
図11の左上は、0日目の播種された細胞を示しており、ウェルの中央領域にゲルの縁を示す細胞があり、外側には通常の培養ウェルがある領域が円形になっていることに注意されたい。左下のパネルは、8日目の代表的な培養ウェルを示しており、中央の挿入図はスフェロイドの生成を示す。挿入図の左側の部分は、スフェロイドの生成がVersaGel(登録商標)の領域に限定されていることを示し、点線はゲルと通常の培養液の間の分かれ目を示し、右側の部分は、HL60細胞の通常の細胞培養の増殖を示す。
図11の右上部分は、NucRedを発現するHL60スフェロイド(ラベル/矢印)の短時間露光による視覚化を示す。より長時間の露光(左下)は、VersaGel(登録商標)境界の外側にあるためスフェロイドを形成していない単一のNucRed発現HL60細胞を示す。
【0120】
いくつかの態様において、スフェロイドは3D腫瘍微小環境を再現し、NK+T細胞の混合集団などの免疫細胞が再現された腫瘍微小環境でどのように機能するかを試験することができる。例えば、このアプローチは、NK+T細胞集団が、単に表面細胞に作用するたけでなく、腫瘍に浸潤し、腫瘍の深部で細胞傷害効果を発揮する能力を試験するために用いることができる。
【0121】
いくつかの態様において、3D腫瘍スフェロイドを様々な比率のNK+T細胞集団に暴露し、腫瘍細胞の生存率を、例えばCD19発現NucRed発現HL60(または他の)腫瘍細胞の場合には赤色チャンネル蛍光シグナルの検出によって評価する。いくつかの態様において、NK+T細胞の混合集団は、NK細胞単独またはT細胞単独のいずれかと比較して、増強された細胞傷害活性を示し得る。同様に、いくつかの態様において、NK+T細胞の混合集団は、NK細胞単独またはT細胞単独のいずれかと比較して、増強された腫瘍浸潤を示し得る。いくつかの態様において、NK細胞とT細胞の比率を変化させて細胞傷害の動態を変化させ、上記のように、初期の急速な細胞傷害効果の発現とそれに続く長期の細胞傷害効果を達成するか、あるいは、(T細胞に基づいて)初期段階が遅く、より長期の細胞傷害段階となるような比率を実施することができる。
【0122】
実施例5-NK細胞およびT細胞の併用療法の評価
NK細胞およびT細胞の併用療法における有益な相互作用をさらに評価するために、インビトロとインビボの両方でさらなる試験を行った。上記のように、また以下の実験データに基づいてさらに詳しく説明すると、いくつかの態様において、NK細胞およびT細胞は、細胞の増殖および標的腫瘍細胞に対するそれらの細胞傷害の影響に関して、相乗的に相互作用することが分かった。下記の試験の概要のように、NK細胞とT細胞の相互作用は、細胞傷害性(マトリックスアッセイを使用)と、細胞傷害性の持続性(腫瘍の再暴露アッセイを使用)の観点から評価された。さらに、NK細胞およびT細胞の相乗効果をもたらす細胞メカニズムを解明するための試験も行った。NK細胞およびT細胞のサイトカインプロファイルも、異種移植マウスモデルでのインビボ抗腫瘍効果と同様に評価された。
【0123】
この試験の目的は、NK細胞およびT細胞の組合せが、効率的な抗腫瘍活性(tumor killing activity)、活性の持続性の向上および改善されたサイトカイン放出を、改善された患者の安全性(例えば、サイトカイン放出症候群のリスクを低減するサイトカイン放出プロファイル)の観点から達成できるかどうかを決定することであった。
【0124】
図12Aは、(キメラ抗原受容体の限定されない例としての)抗CD19 CARを発現する様々な濃度のNK細胞およびT細胞、ならびに(標的癌種の例としての)Nalm6腫瘍細胞に対する結果としての細胞傷害効果を評価するための、概略的なマトリックスを示す。本明細書に記載の態様で用いられるNK細胞およびT細胞に使用できるCARの限定されない例である、この試験で用いられたCAR構築物に関しては、抗CD19結合体はFMC63 scFvである。いくつかの態様において、結合体はヒト化されている。本明細書に記載の試験では、CARはFlagタグを有するが、いくつかの態様によれば、例えば、臨床的な構築物では、タグが用いられないことが理解され得る。いくつかの態様において、CARは、OX40共刺激ドメインおよびCD3ζ刺激ドメインを含む。いくつかの態様において、CARをコードする核酸は、IL15ドメインをさらにコードしている。いくつかの態様において、IL15は、膜結合ポリペプチドとして、NK細胞および/またはT細胞によって別個に発現される。図に示すように、この構築物を発現するT細胞は、T19-1として示され、この構築物を発現するNK細胞は、NK19-1として示される。
図12Aは、マトリックスのX軸上の様々なT19-1とNalm6の比率を示す(T19-1=0、または1:1、1:2、1:4もしくは1:8として示す)。Y軸は、様々なNK19-1とNalm6の比率を示す(NK19-1=0、または1:1、1:2、1:4、1:8もしくは1:16と示す)。X軸とY軸の交点を辿ることで、Nalm6標的細胞に対してNK細胞とT細胞がどのような比率で存在していたかを確認することができる。Nalm6標的細胞は、CD19陽性のB細胞前駆体白血病細胞株であり、NucRedも安定的に発現しているので、Nalm6細胞の生存の指標として用いることができる(従って、NK/T細胞の細胞傷害性と相関する)。
【0125】
図12Bは、赤色蛍光シグナルの減少がNalm6腫瘍細胞に対するより強い細胞傷害と相関している試験結果を示す。データから分かるように、E:T比が減少すると(NK細胞またはT細胞のいずれかについて)、Nalm6細胞の生存率が上昇する。例えば、T19-1:Nalm6が1:8で、NK19-1=0の場合を参照(右上の円形画像のペア)。このE:Tでは、T細胞はNalm6標的細胞に対して顕著な細胞傷害効果を生じることができなかった。同様に、NK細胞およびT細胞の両方が存在していても、低濃度であれば、Nalm6細胞は増殖し続けた(1:8のT19-1と1:16のNK19-1の最右下のペアの円形画像を参照)。しかしながら、他の多くのE:T比では、NK細胞とT細胞の組合せが共に働き、強力な抗腫瘍効果を発揮した。この結果からわかるように、NK19-1またはT19-1のいずれかの細胞がE:T比1:1で存在するとき、他のエフェクター細胞と腫瘍細胞の比率にかかわらず、Nalm6の増殖はほぼ完全に阻止された。同様の結果は、NK細胞またはT細胞のどちらかが1:2で存在する場合にも見られた。これらの1:1のE:T比を、(各エフェクター細胞タイプを単独で用いて)漸減させた。注目すべきことに、E:Tが1:2の時にNK19-1細胞を単独で用いた場合と、T19-1細胞を単独で用いた場合に、Nalm6細胞の増殖が見られた。しかしながら、T細胞およびNK細胞をE:Tが1:2になるように併用して、エフェクターと標的の比率を1:1にすると、Nalm6の増殖は見られなくなった。これらの結果は、NK細胞およびT細胞が互いに相乗的に作用していることを示している。どちらの細胞種も単独では1:2でNalm6の増殖を抑えられないが、単独では“効果がない”濃度で組み合わせると、NK+T細胞の組合せで細胞傷害効果が増強された(“(NK+T):Nalm6=1:1”と記載された破線枠の画像参照)。NK細胞とT細胞の相乗効果は、2つの細胞タイプをそれぞれエフェクターと標的の比率を1:4にして組み合わせたときに、より顕著に現れた。NK細胞もT細胞も、1:4で単独で用いた場合はNalm6の顕著な増殖を可能にした。しかしながら、NK細胞とT細胞をE:T比1:4で併用した場合、全体の比率は1:2で、何れかの細胞を単独で用いた場合に比べて、Nalm6の増殖が大幅に抑制され、細胞傷害が増強されたことがわかった。繰り返しになるが、これらのデータは、NK細胞とT細胞の両方を用いた併用療法によって、2つの免疫細胞タイプが互いに相乗的に作用し、標的細胞に対する細胞傷害効果が高まることを示している。
【0126】
図13は、NK細胞およびT細胞の混合集団が標的腫瘍細胞に細胞傷害作用する能力の強化に関連する追加データを示す。
図13に示したデータは、T細胞またはNK細胞単独、ならびにNK細胞およびT細胞の組合せを用いた再暴露モデルにおけるNalm6腫瘍細胞の増殖を示す。腫瘍細胞への最初の暴露は試験のゼロ時点で、2回目の暴露は7日後に行われた。理解されるように、最初の7日間と2回目の再暴露の間に、標的となる腫瘍細胞のみが顕著に増殖している。T細胞を単独で用いた場合(この限定されない試験では、T細胞は抗CD19 CARを発現している)、最初の7日間でNalm6細胞の継続的な増殖が見られた。2回目の暴露で標的細胞の増殖が急増したが、そのレベルは試験期間中ほぼ一定に維持された。本明細書に記載のいくつかの態様に従って抗CD19 CARを発現させたNK細胞は、最初の暴露期間中の増殖を効果的に制御した。2回目の暴露の直後には標的細胞の増殖に若干の遅れが見られたが、その後は標的腫瘍細胞は顕著に増殖した。しかしながら、特に、NK細胞およびT細胞の組合せは、1回目の暴露期間中と2回目の暴露期間中の標的細胞の増殖を制御し、試験の全期間に亘って標的細胞の増殖を効果的に阻止した。これらのデータは、NK細胞およびT細胞の組合せが、(上記の結果からも分かるように)細胞傷害性を高めるだけでなく、細胞傷害性の持続性も高めることを示している。いくつかの態様によれば、この持続性の向上は、標的細胞に対する細胞傷害性の持続時間を長くすることができるだけでなく、投与間隔を短くすることができ、潜在的な副作用を抑制するのに有利である。
【0127】
NK細胞およびT細胞の組合せを用いた場合のメカニズムのいくつかを明らかにするために、さらなる試験を行った。NK細胞およびT細胞の組合せは、少なくとも免疫細胞数の質的な増加をもたらし、細胞数の増加が観察された増加した持続性の仲介者となるかどうかの調査につながることが特記される。さらに、細胞数の増加が、NK細胞、T細胞またはそれらの組合せのいずれの増加に起因するかどうかを明らかにすることも目的とした。
図14A-14Bは、蛍光細胞傷害性アッセイ(上記の試験で使用したもの)とFACSによる細胞の表現型を組み合わせて収集した細胞数データを示す。これらのデータは、免疫細胞と標的細胞を混合した後、7日目に収集した。
図14Aは、示されたT:標的比(X軸)で示されたNK:標的(Nalm6)比(トレース)を使用したときのNK細胞数を示す。この場合も、限定されない態様として、この試験のNK細胞およびT細胞の両方が、抗CD19 CAR(19-1)を発現するように遺伝子操作された。一番下のトレース(黒丸)に示すように、NK細胞の導入数(input number)がゼロのとき、どのT細胞:標的比でもNK細胞は検出されなかった。対照的に、NK細胞:Nalm6の比率が1:4のとき、T細胞:Nalm6の比率が低下する(例えば、より多くのT細胞が存在する)と、検出されるNK細胞の数(黒四角)が増えた。NK細胞数は、T細胞:Nalm6の比率が1:8から1:4になると、1:2よりも非線形的に増加した。この一般的なパターンはまた、NK細胞:Nalm6の比率が低いとき(1:2、黒三角)にも検出された。T細胞が存在しないときは、NK細胞の開始数に関わらず、NK細胞の増殖は限られていたことが特記される(T19-1=0参照)。T細胞が1:16の比率で存在するとき、NK:Nalm6が1:2または1:4の比率で開始しても、NK細胞数(NK細胞の増殖を示す)はほとんど変化しなかった。しかしながら、T細胞の相対濃度が高い場合、NK:Nalm6が1:2のサンプルでは、より高度なNK細胞の増殖が誘導された。
図14Bは、様々な濃度のNK細胞の存在下でのT細胞数の測定に関連する対応するデータを示す。各トレースは、Nalm6標的腫瘍細胞に対するT細胞の比率を示したものの1つに関係しており、X軸はNK細胞:Nalm6標的腫瘍細胞の様々な濃度を示す。T細胞:Nalm6の比率が1:4または1:2の場合の2つのトレースを除いて、NK細胞はT細胞数にほとんど影響を与えなかった。しかしながら、NK細胞と:Nalm6の比率が1:4または1:2のNK細胞の存在下では、最終的なT細胞数は著しく減少した(閉じた逆三角形と閉じたひし形のトレースを参照)。
【0128】
細胞数の変化が細胞増殖の変化に起因しているかどうかを監視するために、追加の調査を行った。細胞数の増加に伴う蛍光の変化をモニターするアプローチが用いられた。この方法では、ゼロ時点の細胞に蛍光色素を添加する(ThermoFisher社のCellTrace(商標) Violet Cell Proliferation Kit Violetを使用)。親細胞の有糸分裂毎に、蛍光シグナルは2つの細胞に分割されるため、同調的に減少する。同様に、2回目の有糸分裂時に、2つの第1世代の娘細胞のそれぞれが2つの孫娘細胞を生じ、それに応じて相対的な蛍光シグナルが減少する。従って、このアッセイでは、蛍光シグナルの減少が標識された細胞の増殖に相当する。これらの試験では、上記のように、NK細胞およびT細胞の両方を、抗CD19CARの限定されない態様を発現するように遺伝子操作し、Nalm6標的細胞に対して細胞傷害効果を発揮できるようにした。遺伝子導入後、NK細胞およびT細胞を共培養し、細胞増殖蛍光分析を行った。このNK/T細胞にNalm6細胞を暴露し、6日間インキュベートした。その後、CD56-PE色素およびCD3-APC色素で細胞を染色し、CD56
+CD3
-またはCD56
-CD3
+細胞(それぞれNK細胞またはT細胞)のゲートを用いてFACS解析を行い、NK細胞またはT細胞を検出した。FACS解析の結果データを
図15A-15Eに示す。
図15A~15Eのそれぞれは、T細胞の数の増加(減少したT細胞:Nalm6比)を有するNK細胞数と、1:1のNK19-1:Nalm6比を示す。理解できるように、T細胞数が増えるごとに、CD56
+CD3
-でゲートされた曲線の傾斜が広くなり、増殖しているNK細胞数が増えていることを示す。データは
図15Fにまとめられており、NK19-1:Nalm6の比率が1:1のときの曲線(
図15A-15Eの生データ)と、NK細胞:Nalm6の比率が2:1のときのNK細胞の増殖を示す曲線の2つが示される。この要約データは、NK細胞が増加するT細胞の存在に対応して、NK細胞の増殖が同調的に増加することを示す。
【0129】
対応するデータをT細胞について
図16A~16Dに示す。
図16A~16Cは、連続的に増加したNK細胞数(AではNK=0、BではNK:Nalm6=1:1、CではNK:Nalm6=2:1)の存在下でのT細胞数を測定する。T細胞:Nalm6の比率は1:2であった。
図15に示した曲線とは対照的に、増殖中のT細胞に関連するシグナルは、NK細胞数が増えるにつれて連続的に減少する。これらのデータは
図16Dにまとめられており、標的細胞に対するNK細胞の比率が増加すると、増殖しているT細胞の割合が一貫して減少することを示している。最も注目すべきは、最も希薄なT細胞濃度(1:16のT19-1:Nalm6)を用いて検出された実質的な減少である。
【0130】
理論にとらわれることなく、T細胞数の増加が増殖するNK細胞数の増加を促進することに関連するデータおよびNK細胞数の増加が増殖するT細胞数の減少につながることを示すデータをもとに、
図17A-17Cに示す概略モデルを開発した。
図17Aは、標的腫瘍細胞の存在下でのNK細胞単独の増殖と、その結果としてのCARを発現するNK細胞の制限された増殖を示す。
図17Bは、T細胞が標的腫瘍細胞の存在下で単独であるとき、該T細胞が強い増殖を示すときの対応する概略モデルを示す。
図17Cは、T細胞ならびに標的腫瘍細胞の存在下にあるときも、NK細胞の増殖を概略的に描いている。概略的に示されているように、そうでなければT細胞の増殖を引き起こし得る増殖シグナルの少なくとも一部が、NK細胞にプラスの影響を与える。その結果、NK細胞(それ自体では限られた増殖しかしなかった)が増殖する。これは、T細胞が標的腫瘍細胞と共に単独で培養されたとき強力な増殖を示すのと対照的に、NK細胞の存在下ではより限定された程度の増殖を示す。これらのデータを合すると、T細胞がNK細胞増殖に与える正の影響は、NK細胞の閾値集団または濃度が存在するときに開始されるようである。従って、NK細胞およびT細胞の混合集団を用するいくつかの態様において、NK細胞とT細胞の比率は、NK細胞の増殖に対する有益な影響が実現されるように調整される。従って、上記のように、本明細書に記載のいくつかの態様に従って、NK細胞およびT細胞の混合集団は、集団全体が標的腫瘍細胞に対して増強された細胞傷害性、ならびに増強された持続性を示すように生成され得て、これらの一方または両方は、少なくとも部分的には、T細胞ベースのNK細胞増殖の増強に起因する。
【0131】
NK細胞およびT細胞の混合集団の細胞傷害性の増強および持続性に役割を果たすメカニズムをさらに解明するために、サイトカインプロファイル分析を作成し、その結果を
図18A~18Lに示した。データは、2名の異なるドナーの細胞を用いて収集された。各ドナーについて、NK細胞の混合集団(NK=0、NK:Nalm6=1:4、NK:Nalm6=1:2のいずれか)を用いて、Nalm6細胞のみ(T=0)またはT細胞の存在下で、T:Nalm6の比率が1:2、1:4、1:8、1:16のいずれかの場合に、NK細胞およびT細胞によるサイトカイン産生の分析を測定した。評価は、免疫細胞と標的の共培養を開始してから5日目に行った。一般に、
図18A~18Lのデータは、T細胞の量の減少に対応する選択されたサイトカインの産生の減少を示し、重要なのは、サイトカイン放出症候群のようなT細胞療法からの潜在的な副作用に関連するGM-CSFおよびIL6のようなサイトカインである。例えば、
図18Aは、2名の異なるドナーのT細胞から放出されたGM-CSF濃度を示す。これらのデータは、T細胞:標的の比率が低いと、細胞から産生されるGM-CSFが少なくなり、CRSの可能性が低くなることを示す。この傾向はNK細胞の存在下でも同様であるが、
図18Aは、共培養におけるNK細胞の数を増やすと、開始時のT細胞濃度にかかわらず、システム内に蓄積するGM-CSFのレベルが低下することを示す。もう一つの特記すべき傾向を
図18Eに示す。この図は、NK細胞数を増やしても、標的細胞に対する細胞傷害の誘導に重要なサイトカインであるIFNg産生が減少しないことを示す。言い換えれば、本明細書に記載のいくつかの態様で用いられている細胞の組合せは、T細胞と共にNK細胞が存在することで、一方の細胞の活性が乱れるという自己限定的なものではない。むしろ、本明細書で記載のように、これらの2種類の細胞は互いに連携して働き、標的細胞に対する相乗的な細胞傷害効果をもたらす。
図18Fは、IL2の産生を示す。最初のドナーでは、存在するNK細胞数にかかわらず、T細胞によるIL-2の産生はほとんどなかった。2番目のドナーでは、IL-2産生はNK細胞が存在しない場合にのみT細胞によって検出されたが、産生は用量依存性とは相関していなかった。NK細胞の存在は、特定のT細胞による分泌の程度を変化させるか、サイトカインの蓄積に寄与するT細胞の全体的なレベルを変化させるか、あるいはNK細胞が分泌されたサイトカインの結合のシンクとして働く(その結果、NK細胞増殖または活性に影響を与える)かのいずれかである。また、ここで試験したサイトカインに加えて、T細胞によって産生される他のサイトカインが、直接的または間接的にNK細胞の増殖および/または持続に寄与する可能性もある。有利なことに、いくつかの態様において、NK細胞およびT細胞を併用した場合のサイトカイン産生の減少は、サイトカイン放出症候群のリスクを協調的に回復させると同時に、NK細胞の強化された細胞傷害性および持続性を誘導する。
【0132】
NK細胞およびT細胞の混合集団による増強された細胞傷害性および持続性をさらに評価するために、NSGマウスにNalm6標的腫瘍細胞を移植した異種移植モデルを用いた。Nalm6細胞はGFPならびにホタルルシフェラーゼを発現するように遺伝子操作されており、後者は、生物発光の測定により移植を受けたマウスの腫瘍量を検出することができる。
図19は、異種移植モデルの概略的な試験計画を示す。マウスには、抗CD19 CAR(19-1)の限定されない例を発現するように遺伝子操作されたNK細胞およびT細胞の組合せを注射した。腫瘍細胞は0日目に注入され、NK細胞およびT細胞は、3日目に単独で、または組み合わせて注入された(
図20A)。いくつかのグループでは、3日目にNK細胞を投与した後、4日目にT細胞を投与するか、または3日目にT細胞を投与した後、4日目にNK細胞を投与した(
図20B)。生物発光イメージングは、
図19に示した間隔で行った。生物発光の結果を
図20A~20Cに示し、この図は、データを移植後の日ごとに分けて示されるとともに、示された細胞の投与量および投与順で示される。
図20Aは、PBS、抗CD19 CAR 19-1構築物を発現させたNK細胞2.5×10
6個、抗CD19 CAR 19-1構築物発現させたT細胞を2.5×10
6個または5×10
5個、NK細胞およびT細胞の組合せ(いずれも2.5×10
6個)、あるいはNK細胞およびT細胞の組合せ(NK細胞は2.5×10
6個およびT細胞は5x10
5細胞)を投与した試験群の、試験開始から2日目から31日目までの発光データを示す。
図20Bは、3日目および4日目にNK細胞およびT細胞を時差投与した試験群の同じ時間枠のデータである。左2つのカラムは、3日目にNK細胞を投与され、4日目にT細胞を投与された試験群の結果を示し、右2つのカラムは、3日目にT細胞を投与され、4日目にNK細胞を投与された試験群の結果を示す。各グループは、NK細胞およびT細胞の両方を2.5x10
6細胞の用量で投与する群(高用量)と、NK細胞を2.5x10
6細胞およびT細胞を5x10
5細胞の用量で投与する群(低用量)の2つのサブグループに分けた。
【0133】
試験の最初の30日間に亘って、細胞の組合せを共に投与した場合、PBS対照と比較して、NK細胞だけがより効果的に腫瘍増殖を阻害したことが特記される。本明細書に記載のいくつかの態様に従い、高用量のNK細胞および低用量のT細胞の組合せ(
図20Aの右端カラム)は、NK細胞単独(NK細胞が同じ用量の場合)と比較して、顕著に改善された腫瘍制御を示す。この処置群はまた、T細胞単独と比較して(T細胞が同じ用量の場合)、改善された腫瘍制御を示す。いくつかの態様において、NK:T細胞の比率は、腫瘍制御を可能にするだけでなく、サイトカイン放出の減少やCRSのリスクの軽減と併せて同じことを達成している。高用量のT細胞のみ、および高用量のNK/T細胞の両方が、30日に亘って腫瘍制御を示した。
【0134】
腫瘍量の増加を防ぐという点で、次に最も有効な処置は、開始用量のNK細胞を投与し、翌日に低用量のT細胞を投与した処置法であった(
図20Bの第2カラム参照)。次に有効な処置は、T細胞のみを低用量で投与した場合であり、ほぼ3週間にわたって顕著に腫瘍増殖を防いだ。次に効果が高かったのは、T細胞およびNK細胞の組合せであり、まずT細胞を低用量で投与し、その1日後にNK細胞を投与した。次に効果が高かったのは、NK細胞および低用量のT細胞を同日に投与した場合であった。この場合も、この試験は、最初の30日間で腫瘍の進行がある程度見られた処置群を対象としている。しかしながら、最初の30日間のデータから、いくつかの態様に従って、T細胞と比較してより多くのNK細胞の比率、例えば態様に応じて約5:1、約10:1または約20:1の比率が、強固な急性および中期の細胞傷害をもたらすことが確認された。上記の通り、T細胞数が少なくても、十分なNK-細胞傷害およびNK-増殖刺激を与えることができる一方で、NK細胞がT細胞増殖をある程度抑制することができないほど大量ではなく、その結果、T細胞が誘導するサイトカイン放出を減少させることができる(従って、有害な炎症作用を軽減させることができる)。
【0135】
試験した他のグループは、その時点以降まで腫瘍増殖を阻止し、
図20Cに示した。理論にとらわれることなく、これらのデータは、おそらくこれらの群ではよりロバストな初期反応があり、それによって長期的な制御が容易になること、および/またはT細胞増殖に対する何らかの初期段階での阻害または他の抑制があり、それによって枯渇する前のより長期的な活性寿命が付与される可能性があることを示唆する。最初の74日間は、T細胞およびNK細胞を高用量で投与し、3日目にT細胞を、4日目にNK細胞を投与すると、約65日間腫瘍増殖が抑制され、腫瘍移植後74日目にやっと有意な腫瘍負荷が確認された。T細胞のみを高用量で投与した場合もまた、腫瘍の進行を大幅に遅らせることができ、74日目にはわずかな腫瘍増殖しか検出されなかった。全体的に最も効果的な2つの処置法は、NK細胞およびT細胞を組み合わせた処置法であった。3日目にNK細胞を投与し、その後4日目に高用量のT細胞を投与したところ、74日目にはほとんど腫瘍が検出されず、80%のマウスが生存した。同様に、3日目にNK細胞およびT細胞の両方を大量に投与した場合は、腫瘍移植後74日目に腫瘍がわずかに検出されただけで、処置群のマウスの100%が生存し、効果はさらに高まった。その後、腫瘍移植後81-121日目になっても、この傾向は続き、T細胞(高用量)を投与した後にNK細胞を投与し、さらに高用量のT細胞を投与しても、同様に腫瘍増殖を抑えることができた。特に、NK細胞およびT細胞の組合せでは腫瘍増殖をより強く制御し、NK細胞およびT細胞(高用量)の組合せを同日に投与した場合に最も効果的な制御が見られた。
図20Dは、すべてのグループの生存曲線をまとめて示しており、上記の生物発光データを反映している。
図20Eは、NK細胞およびT細胞を併用した場合に見られる4ヶ月間の腫瘍制御の強化をより明確に示すために、選択したグループのみを示している。特に、NK細胞を投与した後にT細胞を投与した場合と、NK細胞およびT細胞を共に投与した場合は、腫瘍制御が著しく向上していることを示す。これらのデータを総合すると、NK細胞およびT細胞の組合せは非常に有効な癌処置法であることを示す。いくつかの態様によれば、NK細胞とT細胞の濃度を変化させることで、複合製品の細胞傷害性だけでなく持続性も微調整し、長期的な腫瘍増殖の制御を達成することができる。同様に、いくつかの態様によれば、NK細胞およびT細胞の組合せは、高い効果を得るために必ずしも同時に投与する必要はない。いくつかの態様によれば、2つの細胞タイプのうちの一方を初期の時点で投与し、他方の細胞タイプを後の時点で投与することができる。これにより、NK細胞などの一方の細胞タイプが初期の時点で効果を発揮し、その効果が後にT細胞などの第2の細胞タイプの細胞傷害効果および/または増殖促進効果によって相乗的に補完されることになる。例えば、処置すべき腫瘍の種類に応じて、第1の細胞タイプの投与が、第2の細胞タイプの1以上の特性を増強および/または最大化する有益な環境(例えば、人工腫瘍微小環境)を作り出すように、投与の順序を変えてもよい。言い換えれば、いくつかの態様において、第1の細胞タイプおよび第2の細胞タイプを連続投与することにより、第1の細胞タイプが、第2の細胞タイプによる最適な細胞傷害能のために腫瘍微小環境を準備する。さらに、本明細書に記載のいくつかの態様で提供されているように、NK細胞およびT細胞の混合集団を共投与して、顕著に効果的な抗腫瘍効果を得ることができる。
【0136】
上記の態様の特定の特徴および面の様々な組み合わせまたはサブコンビネーションがなされても、本発明の1以上に該当することが企図される。さらに、ある態様に関連する何れかの特定の特徴、面、方法、特性、品質、属性、要素などの本明細書の記載は、本明細書に記載された他のすべての態様で使用することができる。従って、開示された態様の様々な特徴および面は、開示された発明の様々な態様を形成するために、互いに組み合わせたり、置換したりすることができることを理解すべきである。従って、本明細書に記載の本発明の範囲は、上記の特定の開示された態様によって限定されるべきではないことが意図される。さらに、本発明は様々な変更、および代替形態の影響を受けやすいが、その具体例が図面に示されており、本明細書で詳細に説明されている。しかしながら、本発明は、開示された特定の形態または方法に限定されるものではなく、逆に、本発明は、記載された様々な態様および添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に入るすべての改変、同等物および代替物を包含するものであることを理解すべきである。本明細書で開示されている方法は、記載されている順序で実行される必要はない。本明細書に開示された方法は、実施者が行う特定の行為を含むが、明示的または暗示的にそれらの行為を第三者が指示することも含み得る。例えば、“増殖したNK細胞集団を投与する”などの行為は、“増殖したNK細胞集団の投与を指示する”ことを含む。さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュグループの観点から記載されている場合、当業者は、本開示がそれによってマーカッシュグループのメンバーの何れかの個々のメンバーまたはサブグループの観点からも記載されていることを認識し得る。
【0137】
本明細書に記載の範囲はまた、何れかおよび全ての重複、部分範囲およびそれらの組み合わせを包含する。“~まで(up to)”、“少なくとも(at least)”、“より大きい(greater than)”、“より少ない(less than)”、“~の間(between)”などの用語は、記載された数を含む。“約”または“およそ”などの用語が先行する数字は、記載された数字を含む。例えば、“90%”は“90%”を含む。いくつかの態様において、少なくとも95%の相同性は、対照配列に対して96%、97%、98%、99%および100%の相同性を含む。さらに、配列がヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を“含む”として開示されている場合、そのような対照は、特記しない限り、その配列が記載された配列を“含む”、“からなる”または“本質的にからなる”ことも含むものとする。
【0138】
“a”、“an”および“the”などの冠詞は、反対の指示があるか、または文脈から明らかでない限り、1つまたは複数を意味する。本明細書および特許請求の範囲で用いられる“および/または”なる語句は、そのように結合された要素の“どちらかまたは両方”を意味すると理解されるべきである。“および/または”と共に記載されている複数の要素は、同じ方法で解釈されるべきであり、すなわち、そのように結合された要素の“1つまたは複数”を意味する。その他の要素は、“および/または”で具体的に特定された要素以外に、任意に存在してもよい。本明細書および特許請求の範囲で用いられる“または”は、上記で定義された“および/または”と同じ意味を有すると理解すべきである。例えば、要素のリストで用いられるとき、“または”または“および/または”は、包括的であると解釈されるものとし、すなわち、要素のリストのうち少なくとも1つ、要すれば1以上を含み、任意に追加のリストされていない要素を含むものとする。“ただ1つ(Only one of)”または“正確に1つ(actely one of)”など、明らかに反対を示す用語のみが、数または要素のリストのうち正確に1つの要素を含むことを意味する。従って、グループの1以上のメンバーの間に“または”を含む請求項は、反対の指示がない限り、グループメンバーの1つ、2以上または全てが所定の製品またはプロセスに存在するか、採用されているか、またはその他の関連性がある場合に満たされると考えられる。グループの正確に1つのメンバーが、所定の製品またはプロセスに存在する、採用される、またはその他の方法で関連する、態様が提供される。グループの複数のメンバー、または全てのメンバーが、所定の製品またはプロセスに存在し、採用され、またはその他の点で関連する態様が提供される。任意の1以上の請求項は、任意の態様、面、特徴、要素または特性あるいはそれらの組み合わせを明示的に除外するように修正されてもよい。何れか1以上の請求項は、任意の薬剤、組成物、量、投与量、投与経路、細胞タイプ、標的、細胞マーカー、抗原、標的化部位またはそれらの組み合わせを除外するように修正されてもよい。
【0139】
本明細書で用いる任意のタイトルまたは副見出しは、整理のためのものであり、本明細書に記載の態様の範囲を限定するために用いられるべきではない。
【配列表】